JP2005006564A - 硝酸イオン誘導性プロモーター - Google Patents

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Abstract

【課題】硝酸イオン濃度に応じて下流遺伝子の発現を調節することが可能な硝酸イオン誘導性プロモーターを提供すること。
【解決手段】特定の塩基配列からなる群より選択される何れか一の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロモーター遺伝子に関する。より詳しくは、プロモーターの下流に連結された外来タンパク質等の発現誘導を外部刺激によって調節可能なプロモーターに関する。
【0002】
【従来の技術】
植物にとって窒素は重要な栄養素であり、多くの植物は好硝酸性の性質を有し、植物培養細胞の増殖および植物体の成長は、硝酸態窒素の有無、あるいはその濃度によって大きく影響を受けることが知られている。植物が根から硝酸イオンを吸収し、吸収した硝酸イオンを植物体内で細胞間輸送する際に働く一群のタンパク質は、硝酸トランスポータータンパク質と称され公知である。
【0003】
硝酸トランスポータータンパク質は、硝酸イオン濃度が高い(即ち、0.5mM以上)ときに働く低親和性硝酸トランスポーターと硝酸イオン濃度が低い(即ち、0.5mM以下)ときに働く高親和性硝酸トランスポーターが知られており、それぞれの硝酸トランスポーターをコードする遺伝子(以下、低親和性硝酸トランスポーター遺伝子、高親和性硝酸トランスポーター遺伝子ともいう)が報告されている(化学と生物, Vol.38, p196−203, 2000(非特許文献1))。これまでに遺伝子レベルでの研究が進み、植物由来の低親和性硝酸トランスポーター遺伝子として、シロイヌナズナ由来のCHL1(AtNRT1)(Cell, Vol.72, p705−713, 1993, The Plant Cell, vol.8, p2183−2191, 1996(非特許文献2))、NTL1(AtNRT1:2)(The Plant Cell, Vol.11, p1381−1392, 1999(非特許文献3))、イネ由来のOsNRT1(Plant Physiol., Vol.122, p379−388, 2000(非特許文献4))、アブラナ由来のBnNRT1:2(J. Biol. Chem., Vol.273, p1201, 1998(非特許文献5))、トマト由来のLeNRT1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.93, p8139−8144, 1996(非特許文献6))などの報告がある。なお、CHL1については低親和性、高親和性両方の機能を併せ持っているとの報告もある(The Plant Cell, Vol.11, p865−874, 1999(非特許文献7))。これらの遺伝子のうち、硝酸イオン輸送活性が実験的に確認されているものは、CHL1、NTL1およびOsNRT1である。この他にも遺伝子レベルで相同性のある遺伝子が多数単離されているが、それらの硝酸イオン輸送活性は測定されておらず、硝酸トランスポーター遺伝子であるという明確な確認はなされていないのが現状である。
【0004】
以上、硝酸トランスポーターについては、それらの遺伝子とタンパク質の機能についてこれまでにも研究が行われており、数多くの報告があるが、硝酸トランスポーター遺伝子のプロモーターに関しての報告はない。
【0005】
一般に、遺伝子の発現調節領域であるプロモーターは、その下流に存在する遺伝子の発現を調節可能であるため、外来遺伝子を発現させる際に用いるプロモーターの選択は重要な意味を有している。すなわち、プロモーターは、遺伝子工学的に導入された外来遺伝子を発現させる際、外来遺伝子の発現時期、発現組織、発現強度を制御できるため、形質転換植物の作製においてその選択は重要な意味を有している。植物細胞で外来遺伝子を発現させる際に最もよく用いられる方法として、CaMV 35Sプロモーターまたはノパリン合成酵素遺伝子プロモーター(Sander P. R. et al., Nucleic Acid RES, 15 (1987) 1543−1558(非特許文献8))等の下流に外来遺伝子を連結して、植物細胞に導入する方法が挙げられる。また、外部刺激による誘導によって、植物細胞に導入した外来遺伝子の発現を制御する方法として、α−アミラーゼ遺伝子のプロモーター(Chan M.T. et al., J. Biol. Chem., 269 (1994) 17635−17641(非特許文献9))、リン酸トランスポーター遺伝子のプロモーター(N. Mitsukawa et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94 (1997) 7098−7102(非特許文献10))、あるいは傷害誘導性プロモーター(T.Yamada et al., Plant cell Physiol. (1994) 917−926(非特許文献11))、化学的誘導プロモーター(Ward et al., Plant Mol. Biol., 22 (1993) 361−366(非特許文献12))、光誘導プロモーター(Fluhr et al., Science, 232 (1986) 1106−1112(非特許文献13))を利用する方法が報告されている。しかし、硝酸イオン刺激により下流遺伝子の発現を誘導するプロモーターの存在については報告されたことがない。
【0006】
【非特許文献1】
化学と生物, Vol.38, p196−203, 2000
【非特許文献2】
Cell, Vol.72, p705−713, 1993, The Plant Cell, vol.8, p2183−2191, 1996
【非特許文献3】
The Plant Cell, Vol.11, p1381−1392, 1999
【非特許文献4】
Plant Physiol., Vol.122, p379−388, 2000
【非特許文献5】
J. Biol. Chem., Vol.273, p1201, 1998
【非特許文献6】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.93, p8139−8144, 1996
【非特許文献7】
The Plant Cell, Vol.11, p865−874, 1999
【非特許文献8】
Sander P. R. et al., Nucleic Acid RES, 15 (1987) 1543−1558
【非特許文献9】
Chan M.T. et al., J. Biol. Chem., 269 (1994) 17635−17641
【非特許文献10】
N. Mitsukawa et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94 (1997) 7098−7102
【非特許文献11】
T.Yamada et al., Plant cell Physiol. (1994) 917−926
【非特許文献12】
Ward et al., Plant Mol. Biol., 22 (1993) 361−366
【非特許文献13】
Fluhr et al., Science, 232 (1986) 1106−1112
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、硝酸イオンの存在により下流遺伝子の発現を調節することが可能な硝酸イオン誘導性プロモーターを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のa)〜f)からなる群より選択されるプロモーターを提供する。
a)配列番号7に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター;
b)配列番号8に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター;
c)配列番号9に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター;
d)配列番号10に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター;
e)配列番号11に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター;および
f)配列番号12に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター。
【0009】
更に、本発明は、以下の手段を提供する。
(1)本発明のプロモーターを含む発現ベクター。
(2)本発明のプロモーターを含む発現ベクターを保持する細胞。
(3)本発明のプロモーターを含む発現ベクターを保持する細胞を含む形質転換体。
(4)本発明のプロモーターを含む発現ベクターを保持する細胞内において、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現量を調節する方法。
(5)本発明のプロモーターを含む発現ベクターを保持する細胞を含む形質転換体において、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現量を調節する方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の記載は本発明を説明するためのものであって本発明を限定するためのものではない。なお以下の説明において、DNAの切断、連結、大腸菌の形質転換、遺伝子の塩基配列決定、PCR等の一般の遺伝子組換えは、各操作に使用する市販の試薬、機械装置等に添付されている説明書や、実験書(Molecular cloning, Maniatis T. et al. Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されているものを参照して行うことができる。
【0011】
1.本発明の硝酸イオン誘導性プロモーター
(1)プロモーターの単離方法
本発明のプロモーターは、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能である。そのため、本発明のプロモーターは、硝酸イオン誘導性プロモーターともいう。
【0012】
本発明者らは、このような硝酸イオン誘導性プロモーターを単離するために、硝酸イオン吸収と深く係わり合いを有するタンパク質をコードする遺伝子の上流域を単離することを想定した。そこで、まず、硝酸イオン吸収と深く係わり合いを有するタンパク質をコードする硝酸トランスポーター遺伝子を複数種類単離した(後述の実施例1参照)。単離された4種類の硝酸トランスポーター遺伝子を、nrt1.1A、nrt1.1B、nrt1.2Aおよびnrt1.2Bと称し、これらの配列を、それぞれ配列番号13、15、17、及び19に示す。次いで、単離された硝酸トランスポーター遺伝子それぞれの上流域を単離した(後述の実施例2参照)。
【0013】
硝酸トランスポーター遺伝子の上流域の単離の仕方について以下説明する。単離された硝酸トランスポーター遺伝子(配列番号13、15、17および19)の共通塩基配列に基づいて作製した一対のオリゴヌクレオチド(配列番号25、26)をプライマーとして用いた逆PCR(Inverse−PCR)法により、植物の染色体DNAから硝酸トランスポーター遺伝子の上流域を単離することができる。すなわち、Inverse−PCR法については、植物の染色体DNAを制限酵素で完全消化、セルフライゲーションしたものを鋳型として、硝酸トランスポーター遺伝子配列から作製したプライマーを用いてInverse−PCRを行い、その上流域を単離することができる。単離された上流域について塩基配列解析を行うことにより、硝酸トランスポーター遺伝子の上流域の配列を決定することができる。
【0014】
(2)プロモーターの特徴
得られた複数種類の硝酸トランスポーター遺伝子の共通配列を利用して当該遺伝子の上流域を単離し、その配列を決定した。決定された上流域の配列を配列番号1〜6に示す。硝酸トランスポーター遺伝子nrt1.1Aおよびnrt1.1Bの上流域に相当する配列を、それぞれ配列番号1および2に示す。硝酸トランスポーター遺伝子nrt1.2Aまたはnrt1.2Bの上流域に相当する配列を、配列番号3〜6に示す。本来、nrt1.2Aの上流域とnrt1.2Bの上流域は、それぞれ一つずつしか単離されないはずであるが、後述の実施例において4種類の上流域の塩基配列が得られている。これは、硝酸トランスポーター遺伝子が、nrt1.1A、nrt1.1B、nrt1.2Aおよびnrt1.2B以外にも存在し、その上流域も単離されたためであると考えられる。また、後述の実施例で得られたnrt1.2Aの上流域またはnrt1.2Bの上流域の何れかに相当する可能性がある配列(配列番号3〜6)は、nrt1.2Aの上流域に相当する配列であるのか、nrt1.2Bの上流域に相当する配列であるのか、後述の実施例では確定されていない。
【0015】
本発明において、硝酸トランスポーター遺伝子nrt1.1群(nrt1.1Aおよびnrt1.1B)およびnrt1.2群(nrt1.2Aおよびnrt1.2B)の発現を調べることにより、これら遺伝子のプロモーター領域の硝酸イオン感受性を検討した。これにより、本発明のプロモーターの特徴付けを行った(後述の実施例3および4参照)。より具体的には、硝酸トランスポーター遺伝子nrt1.1群およびnrt1.2群の発現がどの組織で起こっているか(実施例3)、硝酸イオン濃度に応じてどのように変化するか(実施例4)を調べた。
【0016】
nrt1.1群は、タバコ植物の器官全体において発現し、nrt1.2群は、組織特異的に(主に根で、その他茎、花で)発現した(図1)。また、nrt1.1群は、硝酸イオンの存在の有無に関わらず、その発現は構成的に維持されたが、硝酸イオンの添加によりその発現は増大した(図2A)。一方、nrt1.2群は、硝酸イオンの存在しない条件下ではほとんど発現せず、硝酸イオンの添加によりその発現は誘導された(図2B)。
【0017】
よって、nrt1.1群の上流域に存在するプロモーターは、植物の全器官において、下流遺伝子の構成的発現を可能にするが、硝酸イオンの存在により発現を増大させる性質を有する。一方、nrt1.2群の上流域に存在するプロモーターは、下流遺伝子の発現を硝酸イオンの存在により初めて、とりわけ根で組織特異的に引き起こす性質を有する。
【0018】
また、配列番号1〜6に記載の上流域の塩基配列が、硝酸イオン誘導性プロモーターとして機能し得ることは、これら上流域の配列の下流にレポーター遺伝子を連結し、レポーター遺伝子の発現をみることにより証明された(後述の実施例5および6参照)。
【0019】
配列番号1〜6に示されるこれら上流域の配列は、転写開始反応に必要なDNAエレメントであるTATAボックスを含む。具体的には、配列番号1に示される塩基配列の617〜623位、配列番号2に示される塩基配列の821〜827位、配列番号3に示される塩基配列の941〜947位、配列番号4に示される塩基配列の704〜710位、配列番号5に示される塩基配列の810〜816位、配列番号6に示される塩基配列の1009〜1015位がTATAボックスに相当する。これらTATAボックスがプロモーター活性に必須の配列であることは、硝酸トランスポーター遺伝子の上流域の配列を種々の長さで切断した欠失プロモーターのプロモーター活性を調べることにより確認された(後述の実施例6参照)。
【0020】
従って、本発明の硝酸イオン誘導性プロモーターは、TATAボックスから硝酸トランスポーター遺伝子の開始コドンまでの配列(TATAボックスは含むが開始コドンは含まない)を少なくとも含み、プロモーター活性を有するものと定義することができる。配列番号1〜6に示される上流域の配列について、TATAボックスから硝酸トランスポーター遺伝子の開始コドンまでの配列(TATAボックスは含むが開始コドンは含まない)を、それぞれ配列番号7〜12に示す。本発明の硝酸イオン誘導性プロモーターは、配列番号7〜12の何れかの塩基配列を含み、当該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を硝酸イオンの存在下で誘導可能であれば、その他任意の配列を含んでいてもよい。また、本発明の硝酸イオン誘導性プロモーターは、プロモーター活性を保持し得る限り、その塩基配列において一ないし数個の塩基が置換、欠失、付加されていてもよいし、化学的な修飾がなされていてもよい。このように一部改変されたプロモーターも本発明の範囲に含まれる。
【0021】
本発明において「プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導する」とは、以下の場合を含む。すなわち、硝酸イオンの存在しない条件下で発現していなかった下流遺伝子の発現が、硝酸イオンの存在により初めて誘導される場合、および硝酸イオンの存在しない条件下で発現していた下流遺伝子の発現量が、硝酸イオンの存在により増大される場合を含む。ここで、硝酸イオンの存在とは、例えば0.1〜10mMの濃度をいい、好ましくは0.2〜5mMの硝酸イオンの濃度をいう。ただし、下流遺伝子の発現を誘導するのに必要な硝酸イオンの濃度は、上記硝酸イオン濃度に限定されず、各プロモーターの硝酸イオン感受性を検討した上で設定することが好ましい。
【0022】
本発明の硝酸イオン誘導性プロモーターには、例えば、後述の実施例6において作製された欠失プロモーターのうち、プロモーター活性を有するものが含まれる。
【0023】
なお、下記配列表の配列番号1〜6の配列(硝酸トランスポーター遺伝子の上流域の配列)および配列番号7〜12の配列(プロモーターに必須の配列)において、5’側の非翻訳領域(Untranslated region;UTR)を5’UTRとしてその位置を記す。
【0024】
2.本発明のプロモーターを含む発現ベクター
更に本発明は、上述の「本発明の硝酸イオン誘導性プロモーター」と、該プロモーターの下流に位置する目的タンパク質をコードする遺伝子と、該遺伝子の転写を終結させるための配列ターミネーターとを含む発現ベクターを、公知の手法に従って提供することができる。このような発現ベクターは、目的タンパク質をコードする遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能である。ここで目的タンパク質をコードする遺伝子は、硝酸トランスポーター遺伝子であってもよいし、その他、硝酸イオンの存在に依存して発現調節したい任意の遺伝子が考えられる。
【0025】
本発明の発現ベクターは、更に、形質転換体の選抜のためのマーカー遺伝子(例えば薬剤耐性遺伝子)を含んでいてもよい。また、本発明の発現ベクターをアグロバクテリウム感染法で使用する場合、アグロバクテリウムのTiプラスミド由来のバイナリーベクターを基に作製することが好ましい。
【0026】
3.本発明のプロモーターを含む発現ベクターを保持する細胞
更に本発明は、上述の「本発明のプロモーターを含む発現ベクター」を任意の細胞に導入した形質転換細胞を、公知の手法に従って提供することができる。例えば、上述の本発明のプロモーターを含む発現ベクターをアグロバクテリウムに導入することができる。形質転換により得られたアグロバクテリウムは、アグロバクテリウムの植物への感染力により、発現ベクター内の目的タンパク質コード遺伝子を植物に導入することができる。
【0027】
4.本発明のプロモーターを含む発現ベクターを保持する細胞を含む形質転換体
更に本発明は、上述の「本発明のプロモーターを含む発現ベクターを保持する細胞」を含む形質転換体を、公知の手法に従って提供することができる。例えば、上述の本発明のプロモーターを含む発現ベクターを導入したアグロバクテリウムを、アグロバクテリウムの有する植物への感染力を利用して、植物あるいは植物細胞に導入することができる。
【0028】
一般に、植物あるいは植物細胞の形質転換法として様々な方法が知られている。例えば、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法、リーフディスク法やバキュームインフィルトレーション法等のアグロバクテリウム感染法が挙げられる。パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法により植物細胞を形質転換する際は、市販のpUC19、pBluescript等の大腸菌で増殖可能なベクターを形質転換ベクターとして用いることができる。また、リーフディスク法やバキュームインフィルトレーション法等のアグロバクテリウム感染法によって植物体や植物細胞を形質転換する際は、Tiプラスミド由来のpGV3850(De Block M et al., EMBO J., 3 (1984) 1681−1689)等のベクターやpBI121(Clonetech社)等のバイナリーベクターを利用することができる。
【0029】
5.本発明のプロモーターの下流に存在する遺伝子の発現量を調節する方法
更に本発明は、本発明のプロモーターを含む発現ベクターを保持する細胞内において、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現量を調節する方法を提供する。また本発明は、本発明のプロモーターを含む発現ベクターを保持する細胞を含む形質転換体において、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現量を調節する方法を提供する。
【0030】
本発明の方法により、本発明のプロモーターの有する硝酸イオン感受性の性質に従って、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を調節することが可能である。より具体的には、nrt1.1群の上流域に由来するプロモーター(即ち、配列番号7または8に記載の塩基配列を少なくとも含むプロモーター)を使用した場合、植物の全器官において硝酸イオンの有無に関わらず外来遺伝子を発現させることが可能であるとともに、硝酸イオンの添加によりその発現量を増大させることが可能である(図2A参照)。一方、nrt1.2群の上流域に由来するプロモーター(即ち、配列番号9〜12の何れかに記載の塩基配列を少なくとも含むプロモーター)を使用した場合、特定の器官のみにおいて硝酸イオンの存在下でのみ外来遺伝子を誘導させることが可能である(図2B参照)。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0032】
実施例1:低親和性硝酸トランスポーター遺伝子の単離
(1)ニコチアナ タバカム cv.バーレー21の総RNAの抽出
標準的な水耕液(5mMのKNO、2.5mMのリン酸カリウム緩衝液(pH5.5)、2mMのMgSO、2mMのCa(NO)、0.05mMのFe−EDTA、70μMのHBO、14μMのMnCl、0.5μMのCuSO、1μMのZnSO、0.2μMのNaMoO、10μMのNaCl、0.01μMのCoCl)で2〜3週間栽培したニコチアナ タバカム cv.バーレー21(Nicotiana tabacum cv. Burley 21)の根を総RNAの調製に供した。0.5gの根をFast RNA−Green Kit(BIO 101)のチューブに入れ、これをFastPrep FP120装置にセットして磨砕した。更に、添付されたプロトコールに従い総RNAを得た。
【0033】
(2)RT−PCR法による低親和性硝酸トランスポーター遺伝子の単離
上記(1)で得られた総RNAを鋳型として使用し、逆転写反応を行った。即ち、総RNA1〜2μg、10×RT緩衝液、終濃度0.5mMのdNTPs、oligo dT(15)プライマー10 pmoles、RNase inhibitor 10ユニット(Applied Biosystems)、Omniscript Reverse Transcriptase 1ユニット(Qiagen)、合計10μLにRNase−フリー ウォーター(RNase−free water)で調製後、37℃で60分間逆転写反応を行い、93℃で5分間処理して酵素を失活した。
【0034】
次に、反応溶液の一部を鋳型にしてPCRを行った。即ち、反応液5μL、10×緩衝液10μL、終濃度0.2mMのdNTP、10pmolesのプライマーセット、5ユニットのEx−Taq DNA ポリメラーゼ(TaKaRa社製)、合計50μLに調整後、サーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9700)を用いて94℃で2分を1サイクル、94℃で30秒→55℃で30秒→72℃で1.5分を30サイクル、72℃で7分を1サイクルとして反応を行った。プライマーセットの配列は、配列番号21、配列番号22に示したN−1(5’−ATGGCACTTC CTGAAACACA ACAA−3’)とN−2(5’−TTAGTGGCAA GCTGGTTCTG AATC−3’),及び配列番号23および配列番号24に示したN−3(5’−ATGGCACTTC CTGAGACACA GC−3’)とN−4(5’−TCAATGACA AACCGGTCCA TCAT−3’)の2組を用いた。
【0035】
N−1とN−2、N−3とN−4の2組のプライマーセットを用いて、それぞれ約1.8kbのPCR産物が増幅された。それぞれの増幅産物をアガロースゲル電気泳動により精製し、pUC19(TaKaRa)にクローニングした。大腸菌数十コロニーからプラスミドDNAを抽出し,BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit v2.0(Applied Biosystems)で標識後、ABI PRISM 3700に供して塩基配列を解析した。その結果、各プライマーセットで2分子種ずつが増幅されることが判明した。その塩基配列を配列番号13、15、17、及び19に示す。これら塩基配列から構成される遺伝子を、それぞれnrt1.1A、nrt1.1B、nrt1.2A、及びnrt1.2Bと称する。これら塩基配列にコードされるアミノ酸配列を、それぞれ配列番号14、16、18、及び20に示す。
【0036】
このように、4種類の低親和性硝酸トランスポーター遺伝子を、ニコチアナ タバカム cv.バーレー21の各器官(例えば葉肉、中骨、茎および根など)の総RNAからRT−PCR法により単離することができた。
【0037】
実施例2:低親和性硝酸トランスポーター遺伝子の上流域の単離
実施例1で単離された低親和性硝酸トランスポーター遺伝子のうち、nrt1.1群(nrt1.1Aおよびnrt1.1B)とnrt1.2群(nrt1.2Aおよびnrt1.2B)とは相同性が高く、共通配列部分が存在した。その共通配列部分を基にオリゴヌクレオチドプライマーを合成した。その塩基配列は、
433−458F:5’−AAACAACTTATGGTCCTATACATTGC−3’(5’側プライマー) (配列番号25)
777−751R:5’−AACTGAAGCAATTTGTGTCAATGGACT−3’(3’側プライマー) (配列番号26)
である。このプライマーを用いて、タバコBACライブラリーからPCRによって低親和性硝酸トランスポーター遺伝子を含むクローンをスクリーニングした。
【0038】
タバコBACライブラリーの作製方法は以下のとおりである。タバコ染色体DNAをHindIIIで部分分解し、pBACLacSpベクターに挿入した。これを大腸菌DH10B株にエレクトロポレーション法で導入することにより、平均挿入断片長140 kbのBACクローンを約10万個得た。
【0039】
前述のとおり、このタバコBACライブラリーを鋳型としてPCRを行った結果、14個の陽性クローンを得た。これらの大腸菌を液体培養してプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドを、BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit ver.2 (Applied Biosystems)で標識し、その後、ABI PRISM 3700に供して塩基配列を解析した。シークエンス用プライマーは、低親和性硝酸トランスポーター遺伝子のアンチセンス方向鎖を設計、合成して用いた。
【0040】
その結果、低親和性硝酸トランスポーター遺伝子の上流域の塩基配列が決定された。ここで、低親和性硝酸トランスポーター遺伝子の上流域の塩基配列は6種類得られた。これら6種類の上流域の塩基配列を、配列番号1〜6に示す。nrt1.1Aの上流域に相当する配列として、配列番号1で示される塩基配列が得られ、nrt1.1Bの上流域に相当する配列として、配列番号2で示される塩基配列が得られた。nrt1.2Aの上流域またはnrt1.2Bの上流域の何れかに相当する配列として、配列番号3〜6に示される塩基配列が得られた。実施の形態の欄でも説明したとおり、本来、nrt1.2Aの上流域とnrt1.2Bの上流域は、それぞれ一つずつしか単離されないはずであるが、本実施例において4種類の上流域の塩基配列が得られている。これは、硝酸トランスポーター遺伝子が、nrt1.1A、nrt1.1B、nrt1.2Aおよびnrt1.2B以外にも存在し、その上流域も単離されたためであると考えられる。また、本実施例で得られたnrt1.2Aの上流域またはnrt1.2Bの上流域の何れかに相当する可能性がある配列(配列番号3〜6)は、nrt1.2Aの上流域に相当する配列であるのか、nrt1.2Bの上流域に相当する配列であるのか、本実施例では確定されていない。
【0041】
実施例3:低親和性硝酸トランスポーター遺伝子の発現解析1
播種後1ヶ月のタバコの幼苗を水耕栽培し、開花時に花、ラミナ、中骨(主脈)、茎、および根から総RNAを抽出し、これを鋳型として逆転写反応を行った。即ち、総RNA1〜2μg、10×RT緩衝液、終濃度0.5mMのdNTPs、oligo dT(15)プライマー10 pmoles、RNase inhibitor 10ユニット(Applied Biosystems)、Omniscript Reverse Transcriptase 1ユニット(Qiagen)、合計10μLにRNase−フリー ウォーター(RNase−free water)で調製後、37℃で60分間逆転写反応を行い、93℃で5分間処理して酵素を失活した。
【0042】
この反応液を滅菌水で5倍に希釈し、そのうち5μLを鋳型として、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems)を用いて定量PCRを行った。定量PCRには、SYBR Green PCR Core Reagents Kit(Applied Biosystems)を使用し、方法は添付のプロトコールに従った。定量する遺伝子(低親和性硝酸トランスポーター遺伝子)のプライマーセットとして、nrt1.1群を特異的に増幅するプライマー、nrt1.2群を特異的に増幅するプライマーを用いた。また、内部標準としてATP synthase遺伝子を特異的に増幅するプライマーを用いた。各プライマーの塩基配列は以下のとおりである。
・nrt1.1群のプライマーセット
F : 5’−AACGTTGAGTGTGTTGAATTTGAT−3’(配列番号27)
R : 5’−CTGGTTCTGAATCCTCCATTTC−3’(配列番号28)
・nrt1.2群のプライマーセット
F : 5’−TGTTGTGACTGGGACAACAAATC−3’(配列番号29)
R : 5’−AATCCCCATTTCAGCAAGTCTCTT−3’(配列番号30)
・ATP synthase遺伝子のプライマーセット
F : 5’−AAACGATTGCTCTGAAAGGTCATC−3’(配列番号31)
R : 5’−GCCCCTGGAAAGTATGTCGAC−3’(配列番号32)
【0043】
その結果を図1に示す。図1において、Fは花、Lはラミナ、Mは中骨、Sは茎、Rは根における遺伝子発現レベル(mRNAレベル)を示す。図1において遺伝子発現レベル(mRNAレベル)は、ATP synthaseのmRNA発現量に対する相対値である。
nrt1.1群は、根での発現が特に高かったが、花、ラミナ、中骨、茎といった他の器官でも一様に発現していた。nrt1.2群は、根で特に高く、茎、花でも発現が認められたが、ラミナや中骨ではほとんど発現していなかった。
【0044】
実施例4:低親和性硝酸トランスポーター遺伝子の発現解析2
播種後1ヶ月のタバコの幼苗を、10mMの硝酸イオン濃度の水耕液で10日間栽培し、更に、5mMの硝酸イオン濃度の水耕液、或いは無窒素の水耕液で7日間栽培した。その後、5mMの硝酸イオン濃度の水耕液で栽培したタバコは、無窒素水耕液に移し、経時的に根を採取して総RNAを抽出した。無窒素の水耕液で栽培したタバコは、0.2mMあるいは5mMの硝酸イオンを含む水耕液に移し、経時的に根を採取して総RNAを抽出した。
【0045】
実施例2に準じて、nrt1.1群およびnrt1.2群の発現量を定量RT−PCRで測定した。その結果を図2に示す。図2Aは、nrt1.1群の発現量を示し、図2Bはnrt1.2群の発現量を示す。図2AおよびBにおいて、「5mM→0mM」は、5mMの硝酸イオン濃度の水耕液で栽培したタバコを無窒素水耕液に移した場合を示し、「0mM→5mM」は、無窒素水耕液で栽培したタバコを5mMの硝酸イオンを含む水耕液に移した場合を示し、「0mM→0.2mM」は、無窒素水耕液で栽培したタバコを0.2mMの硝酸イオンを含む水耕液に移した場合を示す。それぞれ、移した時点を0時間として、横軸は時間(hour)を示す。縦軸は、図2Aではnrt1.1群 mRNA/ATP synthase mRNAを示し、図2Bではnrt1.2群 mRNA/ATP synthase mRNAを示す。
【0046】
nrt1.1群は、無窒素状態にしてもほとんど発現に変化はなかったが、硝酸イオンの添加により1時間で発現が誘導され、その後高い発現レベルで維持された(図2A)。一方、nrt1.2群は、無窒素状態にすると速やかにその発現は低下したが、硝酸イオンの添加により(添加後2時間までに)その発現は誘導された(図2B)。
【0047】
実施例5:GUS遺伝子を用いた低親和性硝酸トランスポーター遺伝子のプロモーター活性
nrt1.1B遺伝子(配列番号15)の上流域約1.6kbをクローニングし、この下流にGUS遺伝子を挿入した。即ち、バイナリーベクターpBI101.2(Clonetech社)のGUS遺伝子上流に、nrt1.1B遺伝子の上流域約1.6kbをリーディングフレームが合致するようにクローニングした。得られたベクターの塩基配列を解析してリーディングフレームが正確であることを確認後、エレクトロポレーション法でAgrobacterium tumefaciens LBA4404株に導入した。カナマイシン100ppmを含む培地で形質転換体を選抜し、多数の遺伝子導入株を得た。得られた形質転換体について組織学的にGUS染色を行った。即ち、1mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルグルクロニド(X−Gluc)、50mMリン酸バッファー(pH7.0)、20%メタノールの溶液に試料を浸し、37℃で一晩反応させた。次いで、100%メタノールで2〜3回、2時間おきに洗浄した。
【0048】
その結果、根では表層と中心柱、葉では維管束組織で強い発現を検出した。この結果から、nrt1.1Bのプロモーターは、根では外界からの硝酸イオンの吸収、並びに柔細胞から導管への輸送に関与し、葉では導管から葉肉細胞への輸送に関与していることが示唆された。
【0049】
実施例6: BY2培養細胞を用いた、低親和性硝酸トランスポーター遺伝子プロモーターによる下流遺伝子の一過的発現
(1)BY2培養細胞のプロトプラスト作製
1×MS salt mixture、200mg/L KHPO、100mg/L ミオイノシトール、1mg/Lチアミン塩酸塩、0.2mg/L 2,4−D、3%スクロース(pH5.8)で振とう培養した、植え継いで3〜4日目のBY2培養細胞を、自然沈降で集めた。上清を除き、0.4Mマンニトールを加えて30℃で10分間静置した。上清を除き、酵素液(1%セルラーゼオノズカRS、0.1%ペクトリアーゼY23、0.4Mマンニトール)を加えて30℃で1〜2時間反応させた。反応後、50mLの遠沈管に移し、1000rpmで2分間遠心した。上清を除き、氷冷した0.4Mマンニトールで6回以上遠心洗浄し、MES−マンニトール溶液(0.3Mマンニトール、5mM MES、70mM KCl、pH 5.8)に懸濁した。
【0050】
(2)欠失プロモーターの作製
nrt1.1A遺伝子(配列番号13)の上流域約3.3kbにGUS遺伝子を連結したDNA断片を、pBluescriptベクターのHindIII、EcoRIサイトに挿入した。これを大腸菌TB1株に導入して大量に抽出したプラスミドを、Kilo−Sequence用Deletion Kit(TaKara)を用いて、プロモーター領域の長さが異なるデリーションシリーズを得た。各クローンからプラスミドを抽出し、シークエンスを行うことによりプロモーター領域の長さを決定した。
【0051】
(3)エレクトロポレーション
(1)で作製したBY2プロトプラストを6×10/mL用意し、これに(2)のベクターを混合した。用いたベクター量は、3μgずつで、対照としてGUS遺伝子を含むpBI121(clonetech社)を用いた。氷中で5分間冷却後、0.2cmキュベット(Bio−Rad社製)に移し、ジーンパルサーII(Bio−Rad社製)にて160kV、125μFの減衰波をかけた。チューブに移して氷中で30分間静置した後、30℃で5分間処理した。1000rpm、2分間の遠心後、プロトプラスト培地(1×MS salt mixture、100mg/L ミオイノシトール、1mg/L チアミン塩酸塩、0.2mg/L 2,4−D、0.4Mマンニトール、pH 5.8)で懸濁して28℃で16時間培養した。
【0052】
(4)GUS活性の解析
(3)のプロトプラストを1000rpm、2分間の遠心で集め、抽出緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0、1mM NaEDTA、0.1% TritonX−100、0.1% N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、10mM β−メルカプトエタノール)を加えて超音波破砕した。15000rpm、4℃で15分間遠心して得られて上清を試料とした。
【0053】
試料に終濃度1mMとなるように4−メチルウンベリフェリル グルクロニド(MUG)を加え、37℃で30分間反応させた。0.2M炭酸ナトリウムを加えて反応を停止し、蛍光分光光度計GUS酵素の反応産物4−メチルウンベリフェロン(4−MU)を測定した(励起波長365nm、蛍光波長455nm)。標準曲線は、200nM〜1000nMの4−MUで作製し、GUS酵素活性は1分、1mgタンパク質当りの4−MU量で産出した。
【0054】
その結果を表1に示す。
【表1】
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【0055】
表1は、BY2プロトプラストに導入した欠失プロモーターによるGUSの一過的発現量を示す。表1において「プロモーター領域の長さ(bp)」は、翻訳開始コドンATGから上流域の長さ(開始コドンATGは含まない)を示す。なお、「プロモーター領域の長さ(bp)」がマイナスの値を指す場合、プロモーターとして、開始コドンATGから下流の配列を使用したことを示す。本実施例で採用した欠失プロモーターが、開始コドンから上流域の配列である場合、その配列については配列番号1を参照されたい。また、欠失プロモーターとして、開始コドンから下流の配列を使用した場合、その配列については配列番号13を参照されたい。表1において「GUS相対活性」は、対照のpBI121におけるGUS活性を1.00とした場合の相対値で示す。
【0056】
プロモーター領域の長さを114bpまで短くしてプロモーター領域を欠失させてもプロモーター活性にほとんど変化はみられなかったが、28bpまで短くするとプロモーター活性が顕著に低下した。このことから、低親和性硝酸トランスポーター遺伝子の上流域の配列がプロモーターとして機能するためには、TATAボックスが必須であることが分かる。すなわち、低親和性硝酸トランスポーター遺伝子の上流域の配列のうち、TATAボックスからATGまでの配列(TATAボックスは含むがATGは含まない)がプロモーターとして必須であると推察される。
【0057】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】タバコの各器官におけるnrt1.1群の発現量およびnrt1.2群の発現量を示す図。
【図2】nrt1.1群の発現における硝酸イオンの影響を示す図(図2A)、およびnrt1.2群の発現における硝酸イオンの影響を示す図(図2B)。

Claims (1)

  1. 以下のa)〜f)からなる群より選択されるプロモーター:
    a)配列番号7に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター;
    b)配列番号8に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター;
    c)配列番号9に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター;
    d)配列番号10に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター;
    e)配列番号11に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター;および
    f)配列番号12に記載の塩基配列を含むプロモーターであって、該プロモーターの下流に存在する遺伝子の発現を、硝酸イオンの存在下で誘導することが可能なプロモーター。
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