JP2005006507A - インキュベータ - Google Patents

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Isao Otsubo
功 大坪
Michio Oishi
道夫 大石
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Aisin Cosmos R&D Co Ltd
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Aisin Cosmos R&D Co Ltd
Kazusa DNA Research Institute Foundation
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Abstract

【課題】迅速な温度変化が可能であり、かつ耐久性に優れたインキュベータを提供すること。
【解決手段】試料を所定の温度に維持するためのインキュベータであって、試料を収容するための容器を保持する熱伝導性ホルダーと、前記熱伝導性ホルダーに熱を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを加熱するヒータと、前記熱伝導性ホルダーに冷温を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを冷却するための冷却調製された液体を流通させる冷却用パイプとを備えたことを特徴とするインキュベータ。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料を所定の温度に維持するためのインキュベータに関する。より具体的には、本発明は、試料を保持する熱伝導性ホルダーの温度を迅速に変化させることにより、試料を速やかに所定の温度に設定することが可能なインキュベータに関する。本発明のインキュベータは、試料を速やかに所定の温度に設定することが必要な場合、並びに試料の温度設定が複数回にわたって必要な場合に有用である。とりわけ、本発明のインキュベータは、複数回にわたって試料の温度設定を行い、所望のDNA断片を増幅するPCR(polymerase chain reaction)に有用である。
【0002】
【従来の技術】
試料を所定の温度に維持するためのインキュベータとして、PCRに使用されるインキュベータが公知である。PCRに使用されるインキュベータは、一般に図1に示す構造を有する。すなわち、図1に示すインキュベータは、複数の検体1を装着する反応ブロック2と、反応ブロック2に密着したペルチェ素子3と、ペルチェ素子3に密着した放熱器4と、放熱器を冷却するための冷却ファン5により構成される。この装置は、ペルチェ素子3の通電極性を反転することで、ペルチェ効果により、反応ブロック2を加熱または冷却して複数の検体1を温度制御する。しかし、この装置は、ペルチェ素子の通電方向を切り替えることで検体の加熱または冷却を行うため、反応ブロックおよびペルチェ素子の熱容量により、加熱から冷却、および冷却から加熱への温度変化が敏速に行われない。このため、この装置では、DNA断片の増幅反応効率に限界がある。また、ペルチェ素子の通電方向を反転して使用するため、ペルチェ素子に熱力学的な機械応力がかかるため、ペルチェ素子の劣化が激しく、耐久性にも問題がある。
【0003】
また、試料の温度制御を行う装置として、特許文献1(特開平7−151764)に記載の装置が知られている。この装置は、サーモユニットに検体をリング状に配置し、その周辺部に電気抵抗加熱器を配置し加熱を行い、サーモユニットの直下にペルチェ素子を配置し冷却する機構を有する。しかし、この装置は、検体をリング状に配置するため、検体容器の体積により、サーモユニットに装着できる検体数に制約があり、一度に処理できる検体数に制限がある。
【0004】
更に、DNA増幅反応を行うためのインキュベータとして、特許文献2(特開2000−270837)に記載の装置が知られている。この装置は、試料の温度を迅速に変化させるために、加熱用ブロックと冷却用ブロックをそれぞれ別々に用意し、検体を装着した反応ブロックを移送手段により、加熱または冷却用ブロックに接触させて検体の温度制御を行う。しかし、移送手段を必要とするため構成が大型化してしまうと共に、ブロック毎に1つの温度設定のため、複数の温度設定で反応を実施する場合に、その設定温度毎のブロックを必要とする欠点がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−151764号公報
【特許文献2】
特開2000−270837号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は上記問題点に着目し、これら問題点を解決したインキュベータを提供することを本発明の目的とする。すなわち、本発明は、迅速な温度変化が可能であり、かつ耐久性に優れたインキュベータを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を提供する。
(1)試料を所定の温度に維持するためのインキュベータであって、
試料を収容するための容器を保持する熱伝導性ホルダーと、
前記熱伝導性ホルダーに熱を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを加熱するヒータと、
前記熱伝導性ホルダーに冷温を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを冷却するための冷却調製された液体を流通させる冷却用パイプと
を備えたことを特徴とするインキュベータ。
(2)試料を所定の温度に維持するためのインキュベータであって、
試料を収容するための容器を保持する熱伝導性ホルダーと、
前記熱伝導性ホルダーに熱を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを加熱するヒータと、
前記熱伝導性ホルダーに冷温を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを冷却するための冷却調製された液体を流通させる冷却用パイプと、
前記冷却用パイプに流す液体を所定の温度に冷却調製するための冷却ユニットであって、前記液体を収容する冷却用液体収容部と、前記冷却用液体収容部を冷却する冷却手段と、前記冷却用液体収容部内で冷却調製された液体を前記冷却用パイプに送る送液用パイプとを備えた冷却ユニットと
を備えたことを特徴とするインキュベータ。
【0008】
(3)試料を所定の温度に維持するためのインキュベータであって、
試料を収容するための容器を保持する熱伝導性ホルダーと、
前記熱伝導性ホルダーに熱および冷温を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを加熱するための加熱調製された液体または前記熱伝導性ホルダーを冷却するための冷却調製された液体の何れかを流通させる加熱・冷却用パイプと
を備えたことを特徴とするインキュベータ。
(4)試料を所定の温度に維持するためのインキュベータであって、
試料を収容するための容器を保持する熱伝導性ホルダーと、
前記熱伝導性ホルダーに熱および冷温を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを加熱するための加熱調製された液体または前記熱伝導性ホルダーを冷却するための冷却調製された液体の何れかを流通させる加熱・冷却用パイプと、
前記加熱・冷却用パイプに流す液体を所定の温度に加熱調製するための加熱ユニットであって、前記液体を収容する加熱用液体収容部と、前記加熱用液体収容部を加熱する加熱手段と、前記加熱用液体収容部内で加熱調製された液体を前記加熱・冷却用パイプに送る送液用パイプとを備えた加熱ユニットと、
前記加熱・冷却用パイプに流す液体を所定の温度に冷却調製するための冷却ユニットであって、前記液体を収容する冷却用液体収容部と、前記冷却用液体収容部を冷却する冷却手段と、前記冷却用液体収容部内で冷却調製された液体を前記加熱・冷却用パイプに送る送液用パイプとを備えた冷却ユニットと
を備えたことを特徴とするインキュベータ。
【0009】
(5)前記熱伝導性ホルダーの温度を測る測温手段を更に備えたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1に記載のインキュベータ。
(6)前記熱伝導性ホルダーの温度を測る第一の測温手段と、
前記第一の測温手段により測定された温度信号に基づいて、前記ヒータの加熱動作および前記冷却調製された液体の前記冷却用パイプへの送液動作を制御する第一の温度調節器と、
前記冷却用液体収容部の温度を測る第二の測温手段と、
前記第二の測温手段により測定された温度信号に基づいて、前記冷却ユニットの冷却動作を制御する第二の温度調節器と
を更に備えたことを特徴とする(2)に記載のインキュベータ。
(7)前記熱伝導性ホルダーの温度を測る第一の測温手段と、
前記第一の測温手段により測定された温度信号に基づいて、前記加熱調製された液体の前記加熱・冷却用パイプへの送液動作および前記冷却調製された液体の前記加熱・冷却用パイプへの送液動作を制御する第一の温度調節器と、
前記冷却用液体収容部の温度を測る第二の測温手段と、
前記第二の測温手段により測定された温度信号に基づいて、前記冷却ユニットの冷却動作を制御する第二の温度調節器と、
前記加熱用液体収容部の温度を測る第三の測温手段と、
前記第三の測温手段により測定された温度信号に基づいて、前記加熱ユニットの加熱動作を制御する第三の温度調節器と
を更に備えたことを特徴とする(4)に記載のインキュベータ。
(8)プログラムされた設定温度と温度維持時間の信号を前記第一の温度調節器に送り、前記第一の温度調節器の動作を制御するコンピュータを更に備えたことを特徴とする(6)または(7)に記載のインキュベータ。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のインキュベータについて説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0011】
1.第一の実施の形態
本発明の第一の実施の形態に係るインキュベータは、
試料を収容するための容器を保持する試料保持部11を有する熱伝導性ホルダー12と、
試料保持部11に熱を伝えることが可能な位置に配置された、熱伝導性ホルダー12を加熱するヒータ13と、
試料保持部11に冷温を伝えることが可能な位置に配置された、熱伝導性ホルダー12を冷却するための冷却調製された液体を流通させる冷却用パイプ14と、
冷却用パイプ14に流す液体を所定の温度に冷却調製するための冷却ユニット15であって、該液体を収容する冷却用液体収容部15aと、冷却用液体収容部15aを冷却するペルチェ素子(冷却手段)15bと、冷却用液体収容部15a内で冷却調製された液体を冷却用パイプ14に送る送液用パイプ15cとを備えた冷却ユニット15と、
熱伝導性ホルダー12の温度を測る第一の測温手段16と、
第一の測温手段16により測定された温度信号を受信し、受信した温度信号に基づいて、ヒータ13の加熱動作を制御し、該冷却調製された液体の冷却用パイプ14への送液動作をポンプ17を介して制御する第一の温度調節器18と、
冷却用液体収容部15aの温度を測る第二の測温手段19と、
第二の測温手段19により測定された温度信号に基づいて、冷却ユニット15の冷却動作を制御する第二の温度調節器20と、
プログラムされた設定温度と温度維持時間の信号を第一の温度調節器18に送り、第一の温度調節器18の動作を制御するコンピュータ21と
を備える。
【0012】
ここでの参照符号は、図2の参照符号を指す。よって以下の第一の実施の形態の説明については、適宜、図2を参照されたい。
【0013】
以下、本発明の第一の実施の形態に係るインキュベータの各構成要件を順に説明する。
【0014】
本発明のインキュベータで処理される「試料」は、所定の温度に維持したい任意の試料であり得、例えば、当該インキュベータをPCR(polymerase chain reaction)用装置として使用する場合、増幅したいDNA断片の配列を含むDNA試料である。
【0015】
「熱伝導性ホルダー12」は、試料を収容するための容器を保持する試料保持部11を有し、熱伝導性のよい材質で形成される。熱伝導性ホルダー12の一例を図3に示す。図3に示す熱伝導性ホルダー12は、96穴プレートを保持し得るものである。図3(a)は、熱伝導性ホルダー12の底面図を示し、図3(b)は、図3(a)のA−A’線についての断面図を示す。
【0016】
図3において、熱伝導性ホルダー12は、96穴プレートを保持し得る96個の試料保持部11を有する。試料保持部11は、試料を収容する容器(96穴プレート)の側面と密接するように形成されていることが好ましく、このような構成により、試料を効率よく加熱、冷却することが可能となる。また、熱伝導性ホルダーは、試料を効率よく加熱、冷却するために、熱伝導率の高い材質で形成されることが好ましく、具体的には、銅、アルミニウムが挙げられる。図3において、熱伝導性ホルダー12の底部には、7本のヒータ13と1本の波形の冷却用パイプ14とが、交互に配置されるように埋め込まれている。
【0017】
「ヒータ13」は、熱伝導性ホルダー12を加熱するためのものであり、熱伝導性ホルダー12に熱を伝えることが可能な位置に配置される。熱伝導性ホルダーは熱伝導性を有するため、該ホルダーが有する熱は、試料保持部11に伝わる。これにより、試料保持部11に密接して保持される容器内の試料が加熱される。
【0018】
図3において、ヒータ13は、容器内の試料を効率よく加熱できるように、試料保持部11の近傍に位置している。また図3において、ヒータ13は、96個の試料保持部11に保持された容器内の試料をすべて均一に加熱することが可能なように、各試料から等距離に複数位置している。
【0019】
「冷却用パイプ14」は、熱伝導性ホルダー12を冷却するための冷却調製された液体を流通させるためのものであり、熱伝導性ホルダー12に冷温を伝えることが可能な位置に配置される。熱伝導性ホルダーは熱伝導性を有するため、該ホルダーが有する冷温は、試料保持部11に伝わる。これにより、試料保持部11に密接して保持される容器内の試料が冷却されることになる。
【0020】
図3において、冷却用パイプ14は、容器内の試料を効率よく冷却できるように、試料保持部11の近傍に位置している。また図3において、冷却用パイプ14は、96個の試料保持部11に保持された容器内の試料をすべて均一に冷却することが可能なように、各試料から等しい距離で試料保持部11の間を縫うように位置している。
【0021】
ヒータ13と冷却用パイプ14は、各試料保持部11に保持された容器内の試料それぞれの加熱と冷却を効率的に行うため、図3に示すように交互に配置されていることが好ましい。試料保持部11が96穴プレートを保持する場合、各試料保持部11の間のピッチは約9mmであり、この場合、ヒータ13と冷却用パイプ14をそれぞれ、試料保持部11から数ミリという近距離に配置することができる。
【0022】
冷却用パイプ14は、熱伝導性ホルダー12と同様、熱伝導率の高い材質で形成されることが好ましい。また、冷却用パイプ14は、直径5〜6mmとすることができる。冷却用パイプ14は、熱伝導性ホルダー12に穴加工して流路を形成し、熱伝導性ホルダー12と一体型の構造とすることができる。あるいは、冷却用パイプ14を、熱伝導性ホルダー12とは別構造で形成し、熱伝導性ホルダーの底部に接着してもよい。また、冷却用パイプ14は、図3に示すように単管を波形に曲げたものであってもよいし、図4に示すように複数本のパイプをつないで形成したものであってもよい。このように冷却用パイプ14の形態は任意である。図4に示す冷却用パイプ14は、1本の流路(入口)が6本の流路に分枝し、その後6本の流路が1本の流路(出口)に集約される形態を有する。
【0023】
更に、熱伝導性ホルダー12は、その温度を測る「第一の測温手段16」を備える。第一の温度測定手段16は、熱伝導性ホルダーの温度をモニターすることができ、第一の測温手段16により測定された温度信号は、後述の第一の温度調節器18へと送られる。
【0024】
本実施の形態において「冷却調製された液体」は、後述の冷却ユニットで冷却調製されたものを使用することができるが、本発明のインキュベータが冷却ユニットを備えていない場合には、予め冷却調製された液体を使用すればよい。液体は、蒸発しないものであれば特に限定されず、蒸発しないように沸点の高いものが好ましく、例えばシリコンオイル、プロピレングリコール、不凍液を使用することができる。
【0025】
「冷却ユニット15」は、前述の冷却用パイプ14に流す液体を所定の温度に冷却調製するものである。図2に示すとおり、冷却ユニット15は、液体を予め冷却調製する場となる冷却用液体収容部15aと、冷却用液体収容部15aを冷却するペルチェ素子15bと、冷却用液体収容部15a内で冷却調製された液体を冷却用パイプ14に送る送液用パイプ15cと、冷却用液体収容部15aを支持する支持板15dと、ペルチェ素子15bの有する熱を放射する放熱器15eと、放熱器15eの冷却を行う冷却用ファン15fとを備えている。冷却ユニット15では、ペルチェ素子15bの作用により冷却用液体収容部15aが冷却され、これにより、冷却用液体収容部15a内の液体が冷却される。
【0026】
冷却ユニット15の一例の詳細を図5に示す。図5(a)は、冷却ユニット15の平面図を示し、図5(b)は、図5(a)のB−B’線についての断面図を示す。
【0027】
図5において、「冷却用液体収容部15a」は、波形のパイプであるが、液体を収容する空間を有しているものであればその形態は特に限定されず、偏平な直方体の空間であってもよい。一般に、冷却用液体収容部15aの容量は、冷却用パイプ14が保持し得る液体の容量より大きく、好ましくは冷却用パイプ14の容量の2倍以上である。また、冷却用液体収容部15aは、ベースとなる支持板15dの上に、好ましくは熱伝導性の良い接着剤またはセメントにより固定されている。冷却用液体収容部15aおよび支持板15dの何れも、熱伝導性の良い材質(例えば銅またはアルミニウム)で形成されていることが好ましい。
【0028】
「ペルチェ素子15b」は、冷却用液体収容部15aを冷却する冷却手段である。
【0029】
「送液用パイプ15c」は、冷却用液体収容部15a内で冷却調製された液体を冷却用パイプ14に送るためのものであり、冷却用液体収容部15aと冷却用パイプ14とをつなぐ。送液用パイプ15cの一方は、冷却用液体収容部15a内で冷却調製された液体を冷却用パイプ14に送るつなぎの役を果たし、もう一方は、冷却用パイプ14内にとどまって試料の冷却に供された後の当該液体を冷却用液体収容部15a内に戻すつなぎの役を果たす。送液用パイプ15cは、熱伝導性の低い材質(例えばシリコンチューブ、テフロンチューブ、フッ素チューブ)で形成されていることが好ましい。
【0030】
「放熱器15e」は、ペルチェ素子15bの有する熱を放射し、「冷却用ファン15f」は、放熱器15eの冷却を行う。
【0031】
冷却用液体収容部15a内における液体の冷却調製は、以下のように行われる。すなわち、冷却用液体収容部15aと支持板15dとの間に、冷却用液体収容部15aの温度を測る「第二の測温手段19」が装着されている。この第二の測温手段19により測定された温度信号を、第二の温度調節器20に送る。「第二の温度調節器20」は、送られた温度信号に基づいて、冷却ユニット15の冷却動作を制御する信号を送る。すなわち、測定された温度が所定の温度(例えば4℃)以上であれば、ペルチェ素子15bに通電する。所定の温度(例えば4℃)まで下がると、ペルチェ素子15bへの通電は切られる。
【0032】
冷却用液体収容部15a内で冷却調製された液体を冷却用パイプ14に送る際、その搬送は、「ポンプ17」の駆動により行われる。ポンプ17は、図2に示すとおり、送液用パイプ15cの、冷却用パイプ14へ注入する側に設置される。
【0033】
ポンプ17の送液動作は、「第一の温度調節器18」により制御される。第一の温度調節器18は、第一の測温手段16(熱伝導性ホルダー12の温度を測定する手段)により測定された温度信号を受信し、受信した温度信号に基づいて、ヒータ13の加熱動作(ONもしくはOFF)を制御する信号、および冷却調製された液体の冷却用パイプ14への送液動作(ONもしくはOFF)を制御する信号をそれぞれヒータ13およびポンプ17に送る。
【0034】
「コンピュータ21」は、第一の温度調節器18の動作を制御し、プログラムされた設定温度と温度維持時間の信号を前記第一の温度調節器18に送る。
【0035】
以下、上述の第一の実施の形態に係るインキュベータを、PCRに用いた場合を例に、その動作について説明する。ただし、本発明のインキュベータは、PCR以外の様々な反応のため、すなわち、試料を迅速に所定の温度に維持したい様々な用途に利用することができる。
【0036】
本例においては、3タイプの温度設定が必要であり、1)94℃での変性によるDNA2本鎖の分離、2)55℃でのアニーリング(プライマーの結合)、3)72℃での伸長反応を行う。1)94℃で30秒、2)55℃で30秒、3)72℃で30秒を1サイクルとし、このサイクルを繰り返す。
【0037】
1)コンピュータ21より設定温度(94℃)と保持時間(30秒)の信号が、第一の温度調節器18に送られる。また、第一の測温手段16で検知された熱伝導性ホルダー12の温度信号が、第一の温度調節器18に送られる。検知された温度信号が設定温度以下であれば、第一の温度調節器18の加熱側出力リレーが入力され、ヒータ13が通電し、熱伝導性ホルダー12の温度を上昇させる。
同時に、冷却ユニット15の冷却用液体収容部15aは、第二の測温手段19により測温される。測定された温度が4℃以上の場合には、第二の温度調節器20により、ペルチェ素子15bに通電される設定にあり、冷却用液体収容部15aは、ペルチェ効果により支持板15dを介して冷却される。ペルチェ素子15bに通電中は、ペルチェ素子15bの排熱のため、冷却ファン15fより放熱器15eに強制冷風されている。この結果、冷却用液体収容部15a内の液体が冷却される。
加熱された熱伝導性ホルダー12は、設定温度(94℃)に到達し、設定した保持時間この温度が維持される。
【0038】
2)保持時間終了後、コンピュータ21より次の設定温度(55℃)と保持時間(30秒)の信号が、第一の温度調節器18に送られる。このとき、第一の測温手段16により検知される熱伝導性ホルダー12の温度が設定温度以上であるため、第一の温度調節器18の加熱側出力リレーがオフになり、ヒータ13への通電が切られる。同時に、第一の温度調節器18の冷却側出力リレーが入力され、ポンプ17を駆動させる。ポンプ17により、予め冷却されていた冷却用液体収容部15a内の液体が、冷却用パイプ14に流れ込み、温度差から熱伝導性ホルダー12が急速に冷却される。冷却開始時、冷却用パイプ14内にあった液体は、ポンプ17の駆動により、冷却用液体収容部15a内に移動し再度冷却される。ここで再度冷却調製された液体は、再びポンプ17により、冷却用パイプ14に送り込まれる。このような液体の循環を繰り返すことにより、熱伝導性ホルダー12の温度は設定温度まで下がり、設定した保持時間この温度が維持される。
【0039】
3)保持時間終了後、コンピュータ21より次の設定温度(72℃)と保持時間(30秒)の信号が、第一の温度調節器18に送られる。このとき、第一の測温手段16により検知される熱伝導性ホルダー12の温度が設定温度以下であるため、第一の温度調節器18の冷却側出力リレーがオフになり、ポンプ17の駆動は停止する。同時に、第一の温度調節器18の加熱側出力リレーが入力され、ヒータ13が通電される。これにより、熱伝導性ホルダー12の温度は設定温度まで上がり、設定した保持時間この温度が維持される。
上記1)〜3)のサイクルを繰り返すことにより、本実施の形態のインキュベータを用いたPCRを行うことができる。
【0040】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態に係るインキュベータは、従来のインキュベータのようにペルチェ素子の通電方向を切り替えることで加熱・冷却を行わないため、迅速な温度変化が可能である。すなわち、本実施の形態に係るインキュベータは、加熱時には、試料容器を保持する熱伝導性ホルダーを直接加熱し、冷却時には、該ホルダーが有する冷却用パイプに、予め冷却しておいた液体を流して該ホルダーを冷却する。これにより、加熱時および冷却時に、大きな温度差を発生させることができ、急速な加熱・冷却が可能となる。本発明のこのような効果は、冷却用液体収容部が保持する液体容量を、熱伝導性ホルダーの有する冷却用パイプ全体が保持する液体容量より大きくすることにより増大する。
【0041】
また、本実施の形態において、予め液体を冷却する冷却手段としてペルチェ素子を使用した場合、該ペルチェ素子は、冷却のみに使用され、その通電方向を切り替える必要がないため、本実施の形態に係るインキュベータは、耐久性に優れている。
【0042】
更に、本インキュベータにおいて、熱伝導性ホルダーから試料への熱伝導は、試料を収容する容器を熱伝導性ホルダーの試料保持部に密接させることにより行うため、該ホルダーの試料保持部の配置に、特に制限はない。そのため、保持可能な試料数に制約を受けない。また、本インキュベータは、特に大掛かりな構成を有するものでないため、従来のインキュベータ(図1参照)と比べても大型化しないという利点を有する。
【0043】
2.第二の実施の形態
本発明の第二の実施の形態に係るインキュベータは、
試料を収容するための容器を保持する試料保持部31を有する熱伝導性ホルダー32と、
試料保持部31に熱を伝えることが可能な位置に配置された、熱伝導性ホルダー32を加熱するための加熱調製された液体または熱伝導性ホルダー32を冷却するための冷却調製された液体を流通させる加熱・冷却用パイプ34と、
加熱・冷却用パイプ34に流す液体を所定の温度に加熱調製するための加熱ユニット42であって、該液体を収容する加熱用液体収容部42aと、加熱用液体収容部42aを加熱するヒータ(加熱手段)42bと、加熱用液体収容部42a内で加熱調製された液体を加熱・冷却用パイプ34に送る送液用パイプ42cとを備えた加熱ユニット42と、
加熱・冷却用パイプ34に流す液体を所定の温度に冷却調製するための冷却ユニット35であって、該液体を収容する冷却用液体収容部35aと、冷却用液体収容部35aを冷却するペルチェ素子35bと、冷却用液体収容部35a内で冷却調製された液体を加熱・冷却用パイプ34に送る送液用パイプ35cとを備えた冷却ユニット35と、
熱伝導性ホルダー32の温度を測る第一の測温手段36と、
第一の測温手段36により測定された温度信号を受信し、受信した温度信号に基づいて、該加熱調製された液体の加熱・冷却用パイプ34への送液動作および該冷却調製された液体の加熱・冷却用パイプ34への送液動作をそれぞれポンプ37を介して制御する第一の温度調節器38と、
冷却用液体収容部35aの温度を測る第二の測温手段39と、
第二の測温手段39により測定された温度信号を受信し、受信した温度信号に基づいて、冷却ユニット35の冷却動作を制御する第二の温度調節器40と、
加熱用液体収容部42aの温度を測る第三の測温手段43と、
第三の測温手段43により測定された温度信号を受信し、受信した温度信号に基づいて、加熱ユニット42の加熱動作を制御する第三の温度調節器44と、
プログラムされた設定温度と温度維持時間の信号を第一の温度調節器38に送り、第一の温度調節器38の動作を制御するコンピュータ41と
を備える。
【0044】
ここでの参照符号は、図6の参照符号を指す。よって以下の第二の実施の形態の説明については、適宜、図6を参照されたい。
【0045】
第二の実施の形態については、第一の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。適宜第一の実施の形態の説明も参照されたい。
【0046】
第二の実施の形態に係るインキュベータは、冷却調製された液体を準備するための冷却ユニット35に加えて、加熱調製された液体を準備するための加熱ユニット42を具備する。このように加熱ユニット42を備えている点で、本実施の形態は、第一の実施の形態と異なる。このような違いにより、本実施の形態では第一の実施の形態のように試料保持部31の近傍にヒータを備える必要がないため、熱伝導性ホルダー32は、例えば図7に示す構成とすることができる。図7(a)は、熱伝導性ホルダーの底面図を示し、図7(b)は、図7(a)のC−C’線についての断面図を示す。
【0047】
図7において、「熱伝導性ホルダー32」は、第一の実施の形態と同様、96穴プレートを保持し得る96個の試料保持部31を有する。図7に示すとおり、本実施の形態で使用される熱伝導性ホルダー32は、その底部に、加熱・冷却用パイプ34が試料保持部の間を縫うように埋め込まれている。
【0048】
「加熱・冷却用パイプ34」は、第一の実施の形態で使用される冷却用パイプ14と同様である。加熱・冷却用パイプ34は、試料保持部31に保持された容器内の試料を加熱するための加熱調製された液体または冷却するための冷却調製された液体の何れかを流通させるためのものであり、熱伝導性ホルダー32に熱および冷温を伝えることが可能な位置に配置される。熱伝導性ホルダー32が熱伝導性を有するため、該ホルダーが有する熱または冷温は、試料保持部31まで伝わる。これにより、試料保持部31に密接して保持される容器内の試料が加熱もしくは冷却される。
【0049】
熱伝導性ホルダー32および加熱・冷却用パイプ34はともに、第一の実施の形態と同様、熱伝導率の高い材質で形成されることが好ましい。加熱・冷却用パイプ34は、熱伝導性ホルダー32に穴加工して流路を形成し、熱伝導性ホルダー32と一体型の構造であってもよいし、熱伝導性ホルダー32とは別構造であってもよい。
【0050】
更に、熱伝導性ホルダー32は、その温度を測る「第一の測温手段36」を備える。第一の測温手段36は、第一の実施の形態で使用される第一の測温手段16と同様であり、ここで熱伝導性ホルダー32の温度を測定する。測定された温度信号は、後述の第一の温度調節器38に送られる。
【0051】
「冷却ユニット35」は、第一の実施の形態で使用される冷却ユニット15と同様、前述の加熱・冷却用パイプ34に流す液体を所定の温度に冷却調製するものである。図6に示すとおり、冷却ユニット35は、液体を予め冷却調製する場となる冷却用液体収容部35aと、冷却用液体収容部35aを冷却するペルチェ素子35bと、冷却用液体収容部35a内で冷却調製された液体を加熱・冷却用パイプ34に送る送液用パイプ35cと、冷却用液体収容部35aを支持する支持板35dと、ペルチェ素子35bの有する熱を放射する放熱器35eと、放熱器35eの冷却を行う冷却用ファン35fとを備えている。冷却ユニット35では、ペルチェ素子35bの作用により冷却用液体収容部35aが冷却され、これにより、冷却用液体収容部35a内の液体が冷却される。
【0052】
冷却ユニット35を構成する35a〜35fは、それぞれ、第一の実施の形態で使用される冷却ユニット15を構成する15a〜15fと同様である。また、本実施の形態においても、冷却用液体収容部35aの温度を測る「第二の測温手段39」および第二の測温度手段39により測定される温度信号を受信して冷却ユニット35の冷却動作を制御する「第二の温度調節器40」を備えている。これらは、それぞれ第一の実施の形態における「第二の測温手段19」および「第二の温度調節器20」と同様である。
【0053】
「加熱ユニット42」は、前述の加熱・冷却用パイプ34に流す液体を所定の温度に加熱するものである。図6に示すとおり、加熱ユニット42は、液体を予め加熱調製する場となる加熱用液体収容部42aと、加熱用液体収容部42aを加熱するヒータ42bと、加熱用液体収容部42a内で加熱調製された液体を加熱・冷却用パイプ34に送る送液用パイプ42cと、冷却用液体収容部42aを支持する支持板42dとを備えている。加熱ユニット42では、ヒータ42bの作用により加熱用液体収容部42aが加熱され、これにより、加熱用液体収容部42a内の液体が加熱される。なお図6において、作図スペースの問題上、加熱ユニット42は冷却ユニット35より小さく図示されているが、図6は、加熱ユニットが冷却ユニットと同等の大きさであることを妨げるものではない。
【0054】
加熱ユニット42の一例の詳細を図8に示す。図8(a)は、加熱ユニットの平面図を示し、図8(b)は、図8(a)のD−D’線についての断面図を示す。
【0055】
図8に示すとおり、加熱ユニット42は、ペルチェ素子等の冷却手段の代わりにヒータ等の加熱手段を有している以外、冷却ユニット(図5参照)と同様の構成を有する。
【0056】
すなわち、「加熱用液体収容部42a」は、波形のパイプであるが、液体を収容する空間を有しているものであればその形態は特に限定されず、偏平な直方体の空間であってもよい。また、加熱用液体収容部42aの容量は、冷却用液体収容部35aと同様、一般に加熱・冷却用パイプ34が保持し得る液体の容量より大きく、好ましくは加熱・冷却用パイプ34の容量の2倍以上である。更に、加熱用液体収容部42aは、冷却用液体収容部35aと同様、ベースとなる支持板42dの上に、好ましくは熱伝導性の良い接着剤またはセメントにより固定されている。また同様に、加熱用液体収容部42aおよび支持板42dの何れも、熱伝導性の良い材質(銅またはアルミニウム)で形成されていることが好ましい。
【0057】
「ヒータ42b」は、加熱用液体主要部42aを加熱する加熱手段であり、その他ペルチェ素子であってもよい。
【0058】
「送液用パイプ42c」は、加熱用液体収容部42a内で加熱調製された液体を加熱・冷却用パイプ34に送るためのものであり、加熱用液体収容部42aと加熱・冷却用パイプ34とをつなぐ。送液用パイプ42cの一方は、加熱用液体収容部42a内で加熱調製された液体を加熱・冷却用パイプ34に送るつなぎの役を果たし、もう一方は、加熱・冷却用パイプ34内にとどまって試料の加熱に供された後の当該液体を加熱用液体収容部42aに戻すつなぎの役を果たす。本実施の形態において送液用パイプ42cは、図6に「符号35c、42c」と示される箇所において、冷却用液体のための送液用パイプ35cと共有される。
【0059】
本実施の形態においても、加熱用液体収容部42aの温度を測る「第三の測温手段43」および第三の測温度手段43により測定される温度信号を受信して加熱ユニット42の加熱動作を制御する「第三の温度調節器44」を備えている。これらは、それぞれ第一の実施の形態における「第二の測温手段19」および「第二の温度調節器20」と同様である。
【0060】
本実施の形態において「冷却調製された液体」および「加熱調製された液体」は、それぞれ冷却ユニットおよび加熱ユニットで調製されたものであるが、本発明のインキュベータがこれらユニットを備えていない場合には、予め所定の温度に調製された液体を使用すればよい。液体は何れも、蒸発しないものであれば特に限定されず、蒸発しないように沸点の高いものが好ましく、例えばシリコンオイル、プロピレングリコールを使用することができる。
【0061】
加熱用液体収容部42a内で加熱調製された液体または冷却用液体収容部35a内で冷却調製された液体を加熱・冷却用パイプ34に送る際、その搬送は、「ポンプ37」の駆動により行われる。ポンプ37は、送液用パイプ35c、送液用パイプ42cの、加熱・冷却用パイプ34へ注入する側に設置される。
【0062】
更に本実施の形態では、図6に示すとおり、「バルブ45」が設置される。バルブ45は、送液用パイプ35cおよび送液用パイプ42cの、加熱・冷却用パイプ34へ注入する側(注入側)並びに加熱・冷却用パイプ34から排出する側(排出側)の両方に設置される。注入側のバルブ45は、冷却調製された液体または加熱調製された液体の何れかを加熱・冷却用パイプ34へ搬送することができるように流路を切り替える役目を果たす。また、排出側のバルブ45は、冷却調製された液体が加熱・冷却用パイプ34へ搬送されている際には、冷却ユニット35へつながる流路が選択される。一方、排出側のバルブ45は、加熱調製された液体が加熱・冷却用パイプ34へ搬送されている際には、加熱ユニット42へつながる流路が選択される。バルブ45は、このように流路の切り替えが可能なものであれば任意のものを使用することができ、自動制御バルブ、例えば電磁弁が好ましい。
【0063】
本実施の形態において、ポンプ37とバルブ45は、第一の温度調節器38の出力リレーに接続される。すなわち、ポンプ37の送液動作およびバルブ45の流路の切り替えは、第一の温度調節器38により制御される。「第一の温度調節器38」は、第一の測温手段36(熱伝導性ホルダー32の温度を測定する手段)により測定された温度信号を受信し、受信した温度信号に基づいて、各バルブ45に対してその流路を切り替える信号を送るとともに、ポンプ37に対して送液動作(ONもしくはOFF)を制御する信号を送る。
【0064】
「コンピュータ41」は、第一の温度調節器38の動作を制御し、プログラムされた設定温度と温度維持時間の信号を前記第一の温度調節器38に送る。
【0065】
以下、上述の第二の実施の形態に係るインキュベータを、PCRに用いた場合を例に、その動作について説明する。ただし、本発明のインキュベータは、PCR以外の様々な反応のため、すなわち、試料を迅速に所定の温度に維持したい様々な用途に利用することができる。
【0066】
第一の実施の形態と同様、本例においては、3タイプの温度設定が必要であり、1)94℃での変性によるDNA2本鎖の分離、2)55℃でのアニーリング(プライマーの結合)、3)72℃での伸長反応を行う。1)94℃で30秒、2)55℃で30秒、3)72℃で30秒を1サイクルとし、このサイクルを繰り返す。
【0067】
1)電源投入と同時に冷却ユニット35と加熱ユニット42が以下のとおり運転を開始する。
冷却ユニット35の冷却用液体収容部35aが、第二の測温手段39により測温される。測定された温度が4℃以上の場合には、第二の温度調節器40により、ペルチェ素子35bに通電される設定にあり、冷却用液体収容部35aは、ペルチェ効果により支持板35dを介して冷却される。ペルチェ素子35bに通電中は、ペルチェ素子35bの排熱のため、冷却ファン35fより放熱器35eに強制冷風されている。この結果、冷却用液体収容部35a内の液体が冷却される。
一方、加熱ユニット42の加熱用液体収容部42aが、第三の測温手段43により測温される。測定された温度が95℃以下の場合には、第三の温度調節器44により、ヒータ42bに通電される設定にあり、加熱用液体収容部42aは支持板42dを介して加熱される。この結果、加熱用液体収容部42a内の液体が加熱される。
同時に、コンピュータ41より設定温度(94℃)と保持時間(30秒)の信号が、第一の温度調節器38に送られる。また、第一の測温手段36で検知された熱伝導性ホルダー32の温度信号が、第一の温度調節器38に送られる。検知された温度信号が設定温度以下であれば、第一の温度調節器38の加熱側出力リレーが入力され、各バルブ45を加熱側流路に切り替えて、ポンプ37を駆動させる。これにより、予め加熱されていた加熱用液体収容部42a内の液体が、ポンプ37により加熱・冷却用パイプ34に注入され、熱伝導性ホルダー32の温度を上昇させる。加熱開始時、加熱・冷却用パイプ34内にあった液体は、ポンプ37の駆動により、加熱用液体収容部42a内に移動し再度加熱される。ここで再度加熱調製された液体は、再びポンプ37により、加熱・冷却用パイプ34に送り込まれる。このような液体の循環を繰り返すことにより、熱伝導性ホルダー32は、設定温度(94℃)に到達し、設定した保持時間この温度が維持される。
【0068】
2)保持時間終了後、コンピュータ41より次の設定温度(55℃)と保持時間(30秒)の信号が、第一の温度調節器38に送られる。このとき、第一の測温手段36により検知される熱伝導性ホルダー32の温度が設定温度以上であるため、第一の温度調節器38の加熱側出力リレーがオフになる。同時に、第一の温度調節器38の冷却側出力リレーが入力され、各バルブ45を冷却側流路に切り替え、ポンプ37を駆動させる。ポンプ37により、予め冷却されていた冷却用液体収容部35a内の液体が、加熱・冷却用パイプ34に流れ込み、温度差から熱伝導性ホルダー32が急速に冷却される。冷却開始時、加熱・冷却用パイプ34内にあった液体は、ポンプ37の駆動により、冷却用液体収容部35a内に移動し再度冷却される。ここで再度冷却調製された液体は、再びポンプ37により、加熱・冷却用パイプ34に送り込まれる。このような液体の循環を繰り返すことにより、伝導性熱ホルダー32の温度は、設定温度まで下がり、設定した保持時間この温度が維持される。
【0069】
3)保持時間終了後、コンピュータ41より次の設定温度(72℃)と保持時間(30秒)の信号が、第一の温度調節器38に送られる。このとき、第一の測温手段36により検知される熱伝導性ホルダー32の温度が設定温度以下であるため、第一の温度調節器18の冷却側出力リレーがオフになる。同時に、第一の温度調節器38の加熱側出力リレーが入力され、各バルブ45を加熱側流路に切り替え、ポンプ37を駆動させる。ポンプ37により、予め加熱されていた加熱用液体収容部42a内の液体が、加熱・冷却用パイプ34に流れ込み、温度差から熱伝導性ホルダー32が急速に加熱される。加熱開始時、加熱・冷却用パイプ34内にあった液体は、ポンプ37の駆動により、加熱用液体収容部42aに移動し再度加熱される。ここで再度加熱調製された液体は、再びポンプ37により、加熱・冷却用パイプ34に送り込まれる。このような液体の循環を繰り返すことにより、伝導性熱ホルダー32の温度は、設定温度まで上がり、設定した保持時間この温度が維持される。
上記1)〜3)のサイクルを繰り返すことにより、本実施の形態のインキュベータを用いたPCRを行うことができる。
【0070】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態に係るインキュベータは、従来のインキュベータのようにペルチェ素子の通電方向を切り替えることで加熱・冷却を行わないため、迅速な温度変化が可能である。すなわち、本実施の形態に係るインキュベータは、予め加熱しておいた液体および予め冷却しておいた液体の両方を準備し、これら液体の何れかを熱伝導性ホルダーの有する加熱・冷却用パイプに流して該ホルダーを加熱もしくは冷却する。これにより、大きな温度差を発生させることができ、急速な加熱・冷却が可能となる。本発明のこのような効果は、加熱用液体収容部が保持する液体容量および冷却用液体収容部が保持する液体容量を、それぞれ、熱伝導性ホルダーの有する加熱・冷却用パイプ全体が保持する液体容量より大きくすることにより増大する。
【0071】
また、本実施の形態において、予め液体を加熱する加熱手段としてペルチェ素子を使用した場合、該ペルチェ素子は加熱のみに使用される。同様に、予め液体を冷却する冷却手段としてペルチェ素子を使用した場合、該ペルチェ素子は冷却のみに使用される。従って、各ペルチェ素子は、その通電方向を切り替える必要がないため、本実施の形態に係るインキュベータは、耐久性に優れている。
【0072】
更に、本インキュベータにおいて、熱伝導性ホルダーから試料への熱伝導は、試料を収容する容器を熱伝導性ホルダーの試料保持部に密接させることにより行うため、該ホルダーの試料保持部の配置に、特に制限はない。そのため、保持可能な試料数に制約を受けない。また、本インキュベータは、特に大掛かりな構成を有するものでないため、従来のインキュベータ(図1参照)と比べても大型化しないという利点を有する。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明のインキュベータを使用すれば、試料を保持する熱伝導性ホルダーの外部で加熱調製された液体および/または冷却調製された液体を予め準備しておき、該ホルダーの備えるパイプ内の液体を瞬時に入れ替えることにより、熱伝導性ホルダーの迅速な温度変化が可能である。さらに、本発明のインキュベータは、熱伝導性ホルダーの一部を液体で構成するため、すべてが金属製のホルダーに比べて熱容量が小さく、さらに効率的な温度変化を可能にしている。
【0075】
また、ペルチェ素子の通電方向を切り替えることにより加熱・冷却を行う従来のインキュベータ(図1参照)と比べて、本発明のインキュベータは、ペルチェ素子の通電方向を切り替える必要がないため、耐久性に優れている。
【0076】
更に、熱伝導性ホルダーから試料への熱伝導は、試料を収容する容器を熱伝導性ホルダーに密接させることにより行うため、本インキュベータで処理する試料の数に制約を受けないという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のインキュベータを示す図。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係るインキュベータを示す図。
【図3】(a)第一の実施の形態で使用される熱伝導性ホルダーの一例を示す底面図、(b)第一の実施の形態で使用される熱伝導性ホルダーの一例を示す断面図。
【図4】熱伝導性ホルダーの別の一例を示す底面図。
【図5】(a)冷却ユニットの一例を示す平面図、(b)冷却ユニットの一例を示す断面図。
【図6】本発明の第二の実施の形態に係るインキュベータを示す図。
【図7】(a)第二の実施の形態で使用される熱伝導性ホルダーの一例を示す底面図、(b)第二の実施の形態で使用される熱伝導性ホルダーの一例を示す断面図。
【図8】(a)加熱ユニットの一例を示す平面図、(b)加熱ユニットの一例を示す断面図。
【符号の説明】
1…検体、2…反応ブロック、3…ペルチェ素子、4…放熱器、5…冷却ファン、11…試料保持部、12…熱伝導性ホルダー、13…ヒータ、14…冷却用パイプ、15…冷却ユニット、15a…冷却用液体収容部、15b…ペルチェ素子、15c…送液用パイプ、15d…支持板、15e…放熱器、15f…冷却ファン、16…第一の測温手段、17…ポンプ、18…第一の温度調節器、19…第二の測温手段、20…第二の温度調節器、21…コンピュータ、31…試料保持部、32…熱伝導性ホルダー、34…加熱・冷却用パイプ、35…冷却ユニット、35a…冷却用液体収容部、35b…ペルチェ素子、35c…送液用パイプ、35d…支持板、35e…放熱器、35f…冷却ファン、36…第一の測温手段、37…ポンプ、38…第一の温度調節器、39…第二の測温手段、40…第二の温度調節器、41…コンピュータ、42…加熱ユニット、42a…加熱用液体収容部、42b…ヒータ、42c…送液用パイプ、42d…支持板、43…第三の測温手段、44…第三の温度調節器、45…バルブ

Claims (8)

  1. 試料を所定の温度に維持するためのインキュベータであって、
    試料を収容するための容器を保持する熱伝導性ホルダーと、
    前記熱伝導性ホルダーに熱を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを加熱するヒータと、
    前記熱伝導性ホルダーに冷温を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを冷却するための冷却調製された液体を流通させる冷却用パイプと
    を備えたことを特徴とするインキュベータ。
  2. 試料を所定の温度に維持するためのインキュベータであって、
    試料を収容するための容器を保持する熱伝導性ホルダーと、
    前記熱伝導性ホルダーに熱を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを加熱するヒータと、
    前記熱伝導性ホルダーに冷温を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを冷却するための冷却調製された液体を流通させる冷却用パイプと、
    前記冷却用パイプに流す液体を所定の温度に冷却調製するための冷却ユニットであって、前記液体を収容する冷却用液体収容部と、前記冷却用液体収容部を冷却する冷却手段と、前記冷却用液体収容部内で冷却調製された液体を前記冷却用パイプに送る送液用パイプとを備えた冷却ユニットと
    を備えたことを特徴とするインキュベータ。
  3. 試料を所定の温度に維持するためのインキュベータであって、
    試料を収容するための容器を保持する熱伝導性ホルダーと、
    前記熱伝導性ホルダーに熱および冷温を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを加熱するための加熱調製された液体または前記熱伝導性ホルダーを冷却するための冷却調製された液体の何れかを流通させる加熱・冷却用パイプと
    を備えたことを特徴とするインキュベータ。
  4. 試料を所定の温度に維持するためのインキュベータであって、
    試料を収容するための容器を保持する熱伝導性ホルダーと、
    前記熱伝導性ホルダーに熱および冷温を伝えることが可能な位置に配置された、前記熱伝導性ホルダーを加熱するための加熱調製された液体または前記熱伝導性ホルダーを冷却するための冷却調製された液体の何れかを流通させる加熱・冷却用パイプと、
    前記加熱・冷却用パイプに流す液体を所定の温度に加熱調製するための加熱ユニットであって、前記液体を収容する加熱用液体収容部と、前記加熱用液体収容部を加熱する加熱手段と、前記加熱用液体収容部内で加熱調製された液体を前記加熱・冷却用パイプに送る送液用パイプとを備えた加熱ユニットと、
    前記加熱・冷却用パイプに流す液体を所定の温度に冷却調製するための冷却ユニットであって、前記液体を収容する冷却用液体収容部と、前記冷却用液体収容部を冷却する冷却手段と、前記冷却用液体収容部内で冷却調製された液体を前記加熱・冷却用パイプに送る送液用パイプとを備えた冷却ユニットと
    を備えたことを特徴とするインキュベータ。
  5. 前記熱伝導性ホルダーの温度を測る測温手段を更に備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインキュベータ。
  6. 前記熱伝導性ホルダーの温度を測る第一の測温手段と、
    前記第一の測温手段により測定された温度信号に基づいて、前記ヒータの加熱動作および前記冷却調製された液体の前記冷却用パイプへの送液動作を制御する第一の温度調節器と、
    前記冷却用液体収容部の温度を測る第二の測温手段と、
    前記第二の測温手段により測定された温度信号に基づいて、前記冷却ユニットの冷却動作を制御する第二の温度調節器と
    を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載のインキュベータ。
  7. 前記熱伝導性ホルダーの温度を測る第一の測温手段と、
    前記第一の測温手段により測定された温度信号に基づいて、前記加熱調製された液体の前記加熱・冷却用パイプへの送液動作および前記冷却調製された液体の前記加熱・冷却用パイプへの送液動作を制御する第一の温度調節器と、
    前記冷却用液体収容部の温度を測る第二の測温手段と、
    前記第二の測温手段により測定された温度信号に基づいて、前記冷却ユニットの冷却動作を制御する第二の温度調節器と、
    前記加熱用液体収容部の温度を測る第三の測温手段と、
    前記第三の測温手段により測定された温度信号に基づいて、前記加熱ユニットの加熱動作を制御する第三の温度調節器と
    を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載のインキュベータ。
  8. プログラムされた設定温度と温度維持時間の信号を前記第一の温度調節器に送り、前記第一の温度調節器の動作を制御するコンピュータを更に備えたことを特徴とする請求項6または7に記載のインキュベータ。
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