JP2005006187A - Pll回路 - Google Patents

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Takashi Uchiumi
崇 内海
Sei Adachi
聖 安達
Hiroyuki Kosaka
広之 高坂
Danichi Komatsu
壇一 小松
Yoshiyuki Haraguchi
喜行 原口
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Abstract

【課題】常に、制御発振器がゲインの高い状態で動作できるように発信制御信号の発生制御が行えるPLL回路を得ること。
【解決手段】発振制御信号VCONTに従って発振動作を行う制御発振器2と、制御発振器2の出力信号と参照信号との位相・周波数の比較結果に基づき発振制御信号VCONTを出力するチャージポンプ1とを備えるPLL回路において、制御発振器2の高い制御ゲインを与える電圧に相当するバイアス電圧Vcenterを発生するバイアス電圧発生回路6を設け、バイアス電圧発生回路6の出力端を、任意の時に発生する初期化信号STP,STPBに応答して導通状態となるスイッチ素子4,5を介してチャージポンプ1における発振制御信号VCONTを出力する方のノード17に接続した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、チャージポンプを備えるPLL回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PLL回路には、位相補正と周波数補正とを同時に行うタイプと、位相補正と周波数補正とを別個独立に行うタイプとがある。以下、図6〜図9を参照して、両者についてその概要を説明する。
【0003】
図6は、位相補正と周波数補正とを同時に行うPLL回路の一般的な構成を示すブロック図である。図6に示すように、位相補正と周波数補正とを同時に行うPLL回路は、位相−周波数比較器(PFD)61と、フィルタ62と、制御発振器(VCO)63とで構成されている。
【0004】
位相−周波数比較器(PFD)61は、入力信号(リファレンスクロック)と制御発振器(VCO)63の出力fOUT(帰還信号:クロック)との周波数、位相を比較し、制御発振器63の発振周波数を上げるべきか下げるべきかを検出し、発振制御信号の電圧値(または電流値)を制御する。
【0005】
制御された発振制御信号は、フィルタ62にてノイズ除去処理(平滑化処理)を受けて制御発振器(VCO)63に入力する。制御発振器(VCO)63は、この帰還情報に基づいて自己の発振周波数を制御する。このように発振周波数は、入力信号(リファレンスクロック)と帰還信号(出力クロック)との周波数差、位相差が決められた値になるように制御され、最終的に位相差がなくなるよう制御される。
【0006】
図6において、位相一周波数比較器(PFD)61は、位相−周波数比較回路71とチャージポンプ72とで構成される。位相−周波数比較回路71は、入力信号と帰還信号との位相差、周波数差から制御発振器63の発振周波数が高いか低いかを検出し、高い場合はダウン(DOWN)信号をアサートし、低い場合はアップ(UP)信号をアサートする。
【0007】
チャージポンプ72は、図7に示すように構成され、アサートされたDOWN信号とUP信号とに従い、発振制御信号VCONTの電圧(または電流)を変化させる。図7において、電源(VDD)側には、Pチャネルトランジスタ81で構成されるカレントミラー回路からなる定電流源が配置され、グランド(GND)側には、Nチャネルトランジスタ86で構成されるカレントミラー回路からなる定電流源が配置されている。両定電流源の間に、Pチャネルトランジスタ82とNチャネルトランジスタ84との直列回路と、Pチャネルトランジスタ83とNチャネルトランジスタ85との直列回路とが並列に配置されている。
【0008】
Pチャネルトランジスタ83のゲート電極には、UP信号が入力され、Pチャネルトランジスタ82のゲート電極には、UP信号を反転したUPB信号が入力される。また、Nチャネルトランジスタ84のゲート電極には、DOWN信号が入力され、Nチャネルトランジスタ85のゲート電極には、DOWN信号を反転したDOWNB信号が入力される。そして、Pチャネルトランジスタ82とNチャネルトランジスタ84との接続端87が、発振制御信号VCONTを出力するノードになっている。
【0009】
図7に示すチャージポンプでは、UP信号がアサートされると、Pチャネルトランジスタ82がオン動作して、発振制御信号VCONTの出力ノード87に定電流を流し込み、発振制御信号VCONTの電位を上昇させる。また、DOWN信号がアサートされると、Nチャネルトランジスタ84がオン動作して、発振制御信号VCONTの出力ノード87から定電流を引き抜き、発振制御信号VCONTの電位を下げることができる。
【0010】
そして、図7に示すチャージポンプでは、UP信号とDOWN信号が共にネゲートされている場合に、定電流源を構成するPチャネルトランジスタ81のドレイン電極Aが電源電位に上がり、定電流源を構成するNチャネルトランジスタ86のドレイン電極BがGND電位に下がることがないようにするため、Pチャネルトランジスタ83とNチャネルトランジスタ85とを共にオン動作させて短絡状態にし、ドレイン電極Aとドレイン電極Bとの電位を中間電位にバイアスできるようにしている。
【0011】
次に、上記のように制御された発振制御信号VCONTがフィルタ62を介して入力される制御発振器(VCO)63は、V/I変換器91と電流制御発振器92とで構成されている。
【0012】
V/I変換器91は、入力された発振制御信号VCONTの電圧に対応した制御電流Ioutを発生する。電流制御発振器92は、V/I変換器91が変換出力する制御電流Ioutに従った発振動作を行い、周波数信号fOUTを出力する。
【0013】
図8は、制御発振器(VCO)63の発振特性を示す図である。図8において、横軸は、発振制御信号VCONTであり、縦軸は、出力する周波数信号fOUTである。
【0014】
図8に示すように、制御発振器(VCO)63の発振周波数は、発振制御信号VCONTの変動に伴い変化するが、発振制御信号VCONTの電位が低電位(GNDレベル)付近または高電位(VDDレベル)付近で変動する場合には大きな変化はない。発振周波数は、発振制御信号VCONTの電位が低電位(GNDレベル)付近と高電位(VDDレベル)付近との間で変動するとき大きく変化する。
【0015】
つまり、制御発振器(VCO)63のゲインは、発振制御信号VCONTの電位が低電位(GNDレベル)付近または高電位(VDDレベル)付近にあるときは低く、低電位(GNDレベル)付近と高電位(VDDレベル)付近との間にあるときに高くなる。
【0016】
したがって、制御発振器(VCO)63の設計では、ロックしたい周波数fLOCKに対する発振制御信号VCONTの電位を、図8に示すように、発振周波数の変化量の高い点、すなわちゲインが高い点に来るロック電圧VLOCKに設定し、周波数、位相の変化に対し追従する能力を高い状態に維持できるようにしている。
【0017】
なお、制御発振器(VCO)63の出力を位相−周波数比較器(PFD)61にフィードバックする際に発振周波数を1/nに分周しているので、制御発振器(VCO)63では、発振周波数を入力信号(リファレンスクロック)のn逓倍にロックすることができる。
【0018】
次に、図9は、位相補正と周波数補正とを別個独立に行うPLL回路の一般的な構成を示すブロック図である。図9に示すように、位相補正と周波数補正とを別個独立に行うPLL回路は、周波数比較器(FD)101と、位相比較器(PD)102と、フィルタ103,104と、制御発振器(VCO)105とで構成されている。周波数比較器(FD)101と位相比較器(PD)102とは、それぞれ、図7に示す構成のチャージポンプを備えている。
【0019】
入力信号(リファレンスクロック)は、周波数比較器(FD)101と位相比較器(PD)102とに並列に入力される。また、制御発振器(VCO)105が出力するクロックも周波数比較器(FD)101と位相比較器(PD)102とに並列に入力される。
【0020】
周波数比較器(FD)101内のチャージポンプが出力する周波数補正発振制御信号VCONTFは、フィルタ103を介して制御発振器(VCO)105に入力される。また、位相比較器(PD)102内のチャージポンプが出力する位相補正発振制御信号VCONTPは、フィルタ104を介して制御発振器(VCO)105に入力される。基本的に、周波数補正発振制御信号VCONTFは、周波数を変化させるべく大きな変動を見せるが、位相補正発振制御信号VCONTPは、位相成分を合わせるだけであるので、その変化量は小さい。
【0021】
制御発振器(VCO)105は、図9に示すように構成され、周波数補正発振制御信号VCONTFと位相補正発振制御信号VCONTPのそれぞれに従った制御電流を発生し、その制御電流の合計に従った発振動作を行う。入力信号(リファレンスクロック)へのロック動作手順は、まず、周波数成分を補正し、その後、位相成分をロックする流れとなる。
【0022】
このとき、例えば、位相補正発振制御信号VCONTPの電位が、図8に示すように、制御発振器(VCO)105のゲインが低い状態、すなわち電源(VDD)付近またはグランド(GND)付近にあっても、当該PLL回路は、周波数補正ループによってロックすべき周波数に補正することができる。しかし、位相補正ループのゲインが低いので、正常に位相をロックすることができなくなる。
【0023】
そのため、図9に示すPLL回路では、周波数補正発振制御信号VCONTFと位相補正発振制御信号VCONTPとの電位は、それぞれ、図8に示すように、制御発振器(VCO)105がゲインの高い状態を使用できる電位に設定し、周波数、位相の変化に敏感に追従できるようにしている。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように、チャージポンプを備えるPLL回路では、チャージポンプが出力する発振制御信号(VCONT、VCONTF、VCONTP)は、制御発振器がゲインの高い状態で動作するように発生しているが、回路動作前の初期状態では、発振制御信号を出力するノードの電位は不定であるので、回路動作を開始したときに発生する発振制御信号が制御発振器のゲインが高い状態に対応しているか否か不明である。つまり、従来のPLL回路では、回路動作の開始時に制御発振器がゲインの低い状態に陥る可能性がある。
【0025】
また、設計では、発振制御信号(VCONT、VCONTF、VCONTP)は、制御発振器がゲインの高い状態で動作するように発生しているが、実際の回路動作では、動作中に、制御発振器がゲインの低い状態に陥るような発振制御信号が発生する可能性がある。
【0026】
特に、位相補正と周波数補正とを別個独立に行うPLL回路では、自由に変動できる2つの発振制御信号(VCONTP、VCONTF)の一方が、動作中に、制御発振器がゲインの低い状態に陥るように発生する可能性がある。
【0027】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、常に、制御発振器がゲインの高い状態で動作できるように発信制御信号の発生制御が行えるPLL回路を得ることを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明にかかるPLL回路は、発振制御信号に従って発振動作を行う制御発振器と、前記制御発振器の出力信号と参照信号との位相・周波数の比較結果に基づき前記発振制御信号を出力するチャージポンプとを備えるPLL回路において、前記チャージポンプにおける発振制御信号を出力する方のノードの電圧を、任意の時に発生する初期化信号に応答して、前記制御発振器の高い制御ゲインを与える電圧にバイアスする回路、また、前記チャージポンプにおける発振制御信号を出力しない方のノードの電圧を前記制御発振器の高い制御ゲインを与える電圧にバイアスする回路を備えたことを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、初期化時に制御発振器がゲインの高い状態で動作できるような発振制御信号を発生するようにバイアスを掛けることができる。また、動作中において、制御発振器がゲインの高い状態で動作することが保証できる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるPLL回路の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0031】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1であるPLL回路の要部を示す回路図である。図1では、チャージポンプ1と制御発振器(VCO)2とが示されている。制御発振器(VCO)2は、図9にて説明したように、V/I変換器21と電流制御発振器22とを備えている。
【0032】
チャージポンプ1は、図6に示した位相−周波数比較器(PFD)61が備えるチャージポンプ、図9に示した周波数比較器(FD)101と位相比較器(PD)102とがそれぞれ備えるチャージポンプを示している。但し、ここでは、先に説明した発振制御信号(VCONT、VCONTF、VCONTP)を、区別する必要が生じない限り、単に、発振制御信号VCONTと表記する。
【0033】
チャージポンプ1は、電源(VDD)側に、Pチャネルトランジスタ11で構成されるカレントミラー回路から定電流源が配置され、グランド(GND)に、Nチャネルトランジスタ16で構成されるカレントミラー回路から定電流源が配置されている。両定電流源の間に、Pチャネルトランジスタ12とNチャネルトランジスタ14との直列回路と、Pチャネルトランジスタ13とNチャネルトランジスタ15との直列回路とが並列に配置されている。
【0034】
Pチャネルトランジスタ13のゲート電極には、UP信号が入力され、Pチャネルトランジスタ12のゲート電極には、UP信号を反転したUPB信号が入力される。また、Nチャネルトランジスタ14のゲート電極には、DOWN信号が入力され、Nチャネルトランジスタ15のゲート電極には、DOWN信号を反転したDOWNB信号が入力される。そして、Pチャネルトランジスタ12とNチャネルトランジスタ14との接続端17が、発振制御信号VCONTを出力するノードになっている。
【0035】
発振制御信号VCONTを出力するノード17は、制御発振器(VCO)2に接続されている。そして、図7では、図示省略したが、チャージポンプ1のノード17と制御発振器(VCO)2との接続ラインと接地(グランド)との間に存在する容量素子3が具体的に示されている。
【0036】
このような構成のチャージポンプ1に対して、実施の形態1では、バイアス電圧発生回路6と、チャージポンプ1のノード17と制御発振器(VCO)2との接続ラインとバイアス電圧発生回路6の出力端との間を接離する並列接続のスイッチ素子4,5とが設けられている。
【0037】
スイッチ素子4は、Nチャネルトランジスタであり、そのゲート電極には初期化信号STPが印加される。スイッチ素子5は、Pチャネルトランジスタであり、そのゲート電極には初期化信号STPの反転信号STPBが印加されるとしている。
【0038】
バイアス電圧発生回路6は、例えば、電源とグランドとの間に配置される抵抗分圧回路で構成され、その分圧電圧としてバイアス電圧Vcenterを発生するようになっている。
【0039】
図2は、図1に示すバイアス電圧発生回路6が発生するバイアス電圧Vcenterと制御発振器(VCO)2のゲインとの関係を示す特性図である。図2において、横軸は、発振制御信号VCONTであり、縦軸は、制御発振器(VCO)2が出力する周波数信号fOUTである。図2に示すように、バイアス電圧発生回路6が発生するバイアス電圧Vcenterは、制御発振器(VCO)2のゲインを高い状態に維持できる電圧となっている。
【0040】
初期化信号STP,STPBは、電源投入時だけでなく、その後において当該PLL回路を初期状態に設定する必要のある任意のときに発生する。このときは、初期化信号STP=Hレベル、初期化信号STPB=Lレベルであるので、スイッチ素子4,5は共にオン動作を行う。
【0041】
その結果、チャージポンプ1のノード17と制御発振器(VCO)2との接続ラインがバイアス電圧Vcenterにクランプされるので、初期化後に回路動作を開始したときに発生する発振制御信号VCONTの電位は、制御発振器(VCO)2のゲインが高い状態にある場合に対応していることになる。
【0042】
このように、実施の形態1によれば、初期化時に制御発振器がゲインの高い状態で動作できるような発振制御信号を発生するようにバイアスを掛けることができるので、回路動作の開始時に制御発振器がゲインの低い状態に陥ることを確実に防止することができる。
【0043】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2であるPLL回路の要部を示す回路図である。なお、図3では、図1に示した構成と同一ないしは同等である構成要素には、同一の符号が付されている。ここでは、この実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。
【0044】
図3に示すように、実施の形態2では、発振制御信号VCONTを出力しないノード18であるPチャネルトランジスタ13とNチャネルトランジスタ15との接続端に、バイアス電圧発生回路21が接続されている。バイアス電圧発生回路21は、例えば、電源とグランドとの間に配置される抵抗分圧回路で構成され、その分圧電圧としてバイアス電圧Vcenterを発生するようになっている。バイアス電圧Vcenterは、実施の形態1にて説明した制御発振器(VCO)2がゲインの高い状態で動作できる電圧である。
【0045】
前述したように、チャージポンプ1では、動作していないときは、Pチャネルトランジスタ13とNチャネルトランジスタ15とを共にオン動作させ、定電流源を構成するPチャネルトランジスタ11のドレイン電極AとNチャネルトランジスタ16のドレイン電極Bとを中間電位でバイアスしている。
【0046】
そして、UP信号/DOWN信号をアサートしてチャージポンプ1を動作させると、発振制御信号VCONTを発生するノード17では、アサートされている間、定電流が流れるだけでなく、電流源のドレイン電極A,Bにたまった電荷が抜ける。したがって、高速でUP信号/DOWN信号をスイッチングすればするほど、このドレイン電極A,Bにたまった電荷が発振制御信号VCONTの電位を決めるのに支配的になってくる。
【0047】
そこで、図3に示すように、発振制御信号VCONTを出力しないノード18であるPチャネルトランジスタ13とNチャネルトランジスタ15との接続端に、制御発振器(VCO)2がゲインの高い状態で動作できるバイアス電圧Vcenterでバイアスする。これによって、連続動作中にノード17に現れる発振制御信号VCONTの電位がバイアス電圧Vcenterにバイアスされることになり、制御発振器(VCO)2が常にゲインの高い状態で動作することが保証される。
【0048】
ここで、位相補正と周波数補正とを別個独立に行うPLL回路では、位相補正側のチャージポンプと周波数補正側のチャージポンプの双方に上述した措置を施す必要はなく、位相補正側のチャージポンプのみに措置すればよい。位相補正ループは、入力信号との位相差を合わせることが役割で、周波数差を補正する必要はないからである。
【0049】
すなわち、位相補正ループで発生する電流は、基本的に一定であり、微小時間の間に周波数を上下するだけであるので、位相補正発振制御信号VCONTPは変動がほとんど変化なく、微小振幅の信号となる。
【0050】
この位相補正発振制御信号VCONTPを発生するチャージポンプに対し、図3に示した措置を採れば、バイアス電圧Vcenterを基準とした微小振幅の位相補正発振制御信号VCONTPが生成でき、制御発振器(VCO)2のゲインが高い状態で位相補正をすることができる。
【0051】
このとき、周波数補正ループの周波数補正発振制御信号VCONTFは、任意の電位を取ることになるが、周波数補正発振制御信号VCONTFから周波数差を補うべく電流を発生することが必要であり、周波数補正発振制御信号VCONTFの電圧は大きな範囲で変動する必要がある。したがって、周波数補正発振制御信号VCONTFを発生するチャージポンプに図3に示した措置を適用すると、周波数補正発振制御信号VCONTFは、バイアス電圧Vcenterにバイアスされることとなり、大きな範囲の周波数補正電流を発生することができなくなるので、妥当でない。
【0052】
また、もともとの問題は、位相補正発振制御信号VCONTPと周波数補正発振制御信号VCONTFが共に任意の値が取れるような構造の場合、ある周波数にロックする電流を発生させる電圧は、それぞれ不定であるために、制御発振器(VCO)2のゲインが低い状態に陥る可能性があるという点である。
【0053】
この実施の形態2では、図3に示すように、位相補正発振制御信号VCONTPを発生するチャージポンプの位相補正発振制御信号VCONTPを発生しないノード18をバイアス電圧Vcenterにバイアスしているので、位相補正発振制御信号VCONTPを発生する側のノード17に流れる電流も、位相補正のための微小な電流変動のみでほぼ一定とみなせる。
【0054】
したがって、ある周波数にロックしようとした場合、周波数補正発振制御信号VCONTFが取る電圧も一意に決定されることとなる。周波数補正発振制御信号VCONTFが、ロックする周波数に対し制御発振器(VCO)2のゲインが低い状態に陥らない電圧になることは、設計段階での回路シミュレーションによって容易に確認できる。
【0055】
要するに、実施の形態2によれば、周波数補正と位相補正とを同時並行的に実施するPLL回路のみならず、周波数補正ループと位相補正ループをそれぞれ独立した形態で持つPLL回路においても、動作中、両ループで制御発振器がゲインの高い状態で動作することが保証できる。
【0056】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3であるPLL回路の要部を示す回路図である。なお、図4では、図1に示した構成と同一ないしは同等である構成要素には、同一の符号が付されている。ここでは、この実施の形態3に関わる部分を中心に説明する。
【0057】
この実施の形態3では、実施の形態1にて示したバイアス電圧Vcenterと実施の形態1にて示したバイアス電圧Vcenterとが同値である点に着目し、実施の形態1と実施の形態2を組み合わせた構成例が示されている。
【0058】
すなわち、図4に示すように、共通のバイアス電圧Vcenterを発生するバイアス電圧発生回路31を設け、バイアス電圧発生回路31の出力端を発振制御信号VCONTを出力しないノード18であるPチャネルトランジスタ13とNチャネルトランジスタ15との接続端に直接接続する。また、バイアス電圧発生回路31の出力端をスイッチ素子4,5を介してチャージポンプ1の発振制御信号VCONTを出力するノード17に接続する。
【0059】
斯くして、実施の形態3によれば、PLL回路の初期状態、動作状態ともに発振制御信号の電圧が制御発振器のゲインを高い状態に維持する電圧になることが保証できる。また、バイアス電圧発生回路を1つに集約することができる。
【0060】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4であるPLL回路の要部を示す回路図である。なお、図5では、図4に示した構成と同一ないしは同等である構成要素には、同一の符号が付されている。ここでは、この実施の形態4に関わる部分を中心に説明する。
【0061】
図5に示すように、実施の形態4では、図4に示した構成において、バイアス電圧発生回路31の出力端とチャージポンプ1における前記両ノードへのラインとの間に、バッファアンプ41が設けられている。
【0062】
バイアス電圧発生回路31は、抵抗分圧回路で構成できるが、チャージポンプ1における発振制御信号VCONTを発生するノード17に流れ込む電流値によってバイアス電圧Vcenterに変動が生ずる可能性がある。
【0063】
実施の形態4によれば、バイアス電圧Vcenterをバッファアンプ41を介して与えるので、発振制御信号VCONTを発生するノード17に流れる電流値に依存せず、安定したバイアス電圧Vcenterを与えることができる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、チャージポンプにおける発振制御信号を出力する方のノードの電圧を、任意の時に発生する初期化信号に応答して、前記制御発振器の高い制御ゲインを与える電圧にバイアスする回路、また、前記チャージポンプにおける発振制御信号を出力しない方のノードの電圧を前記制御発振器の高い制御ゲインを与える電圧にバイアスする回路を備えたので、常に制御発振器がゲインの高い状態で動作することが保証できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1であるPLL回路の要部を示す回路図である。
【図2】図1に示すバイアス電圧発生回路が発生するバイアス電圧と制御発振器のゲインとの関係を示す特性図である。
【図3】この発明の実施の形態2であるPLL回路の要部を示す回路図である。
【図4】この発明の実施の形態3であるPLL回路の要部を示す回路図である。
【図5】この発明の実施の形態4であるPLL回路の要部を示す回路図である。
【図6】位相補正と周波数補正とを同時に行うPLL回路の一般的な構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示すチャージポンプの構成を示す回路図である。
【図8】図6に示す制御発振器の発振特性を示す図である。
【図9】位相補正と周波数補正とを別個独立に行うPLL回路の一般的な構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 チャージポンプ、2 制御発振器(VCO)、3 容量素子、4,5 スイッチ素子、6,21,31 バイアス電圧発生回路、17,18 ノード、41 バッファアンプ。

Claims (4)

  1. 発振制御信号に従って発振動作を行う制御発振器と、前記制御発振器の出力信号と参照信号との位相・周波数の比較結果に基づき前記発振制御信号を出力するチャージポンプとを備えるPLL回路において、
    前記チャージポンプにおける発振制御信号を出力する方のノードの電圧を、任意の時に発生する初期化信号に応答して、前記制御発振器の高い制御ゲインを与える電圧にバイアスする回路、を備えたことを特徴とするPLL回路。
  2. 発振制御信号に従って発振動作を行う制御発振器と、前記制御発振器の出力信号と参照信号との位相・周波数の比較結果に基づき前記発振制御信号を出力するチャージポンプとを備えるPLL回路において、
    前記チャージポンプにおける発振制御信号を出力しない方のノードの電圧を前記制御発振器の高い制御ゲインを与える電圧にバイアスする回路、を備えたことを特徴とするPLL回路。
  3. 発振制御信号に従って発振動作を行う制御発振器と、前記制御発振器の出力信号と参照信号との位相・周波数の比較結果に基づき前記発振制御信号を出力するチャージポンプとを備えるPLL回路において、
    前記制御発振器の高い制御ゲインを与える電圧に相当するバイアス電圧を発生するバイアス電圧発生回路を設け、
    前記バイアス電圧発生回路の出力端を、前記チャージポンプにおける発振制御信号を出力しない方のノードに直接接続するとともに、任意の時に発生する初期化信号に応答して導通状態となるスイッチ素子を介して前記チャージポンプにおける発振制御信号を出力する方のノードに接続した、ことを特徴とするPLL回路。
  4. 前記バイアス電圧発生回路の出力端と前記チャージポンプにおける前記両ノードへのラインとの間にバッファアンプが設けられていることを特徴とする請求項3に記載のPLL回路。
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