JP2005005448A - 多結晶半導体薄膜の製造方法 - Google Patents

多結晶半導体薄膜の製造方法 Download PDF

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啓 綱沢
Junichiro Nakayama
純一郎 中山
Tetsuya Inui
哲也 乾
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Abstract

【課題】レーザアニール法によって多結晶半導体薄膜を製造するに際し、1回のレーザビーム照射により、粒径が5μm程度またはそれ以上の大きさの結晶を、ほぼ同一方向に成長させる。
【解決手段】絶縁性基板と半導体薄膜との間に、第1熱伝導層と第1熱伝導層よりも熱伝導率が低い第2熱伝導層とを含む下地膜を設ける。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多結晶半導体薄膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶、エレクトロルミネッセンス(EL)などを応用した表示装置に用いられる薄膜トランジスタは、多結晶シリコン薄膜または非晶質シリコン薄膜を活性層として含んでいる。このうち、多結晶シリコン薄膜を有するトランジスタは、電子の移動度が大きいことに基づき、多くの長所を有している。たとえば、画素部分にスイッチング素子を形成するとともに、その周辺部に駆動回路、周辺回路などを一体化して形成することができるので、表示装置にドライバICおよび駆動回路基板を別途実装する必要がなくなり、表示装置の構造が簡略化され、その耐用性が向上するとともに、低価格化が実現される。また、トランジスタの寸法を微細化できるので、画素部分に形成するスイッチング素子が小さくなり、単位画素あたりの光の透過面積すなわち開口率を向上させることができ、ひいては高輝度、高精細な表示装置を提供することが可能になる。
【0003】
従来から、多結晶シリコン薄膜は、たとえば、ガラス基板にCVD法などで非晶質シリコン薄膜を形成した後、非晶質シリコン薄膜を多結晶化することによって製造される。
【0004】
非晶質シリコン薄膜を多結晶化する方法としては、たとえば、熱アニール法が知られている。熱アニール法では、非晶質シリコン薄膜を600℃以上の高温に晒すので、非晶質シリコン薄膜を形成する基板には高耐熱性が要求される。高耐熱性の基板は高価格であり、表示装置の低価格化を妨げる。また、最近では、レーザアニール法が開発されている。レーザアニール法は、通常、ガラス基板などに高耐熱性の二酸化シリコン膜を形成し、さらにその上に非晶質シリコン薄膜を形成し、これに400℃程度の加熱下で長さ200〜400mm程度、幅0.2〜1.0mm程度の線状レーザビームを照射して非晶質シリコンを溶融させ、結晶を成長させる方法である。このとき、レーザビームを照射された全領域の非晶質シリコンが溶融するのではなく、溶融部と非溶融部とが発生し、非晶質シリコンである非溶融部には成長の核になる結晶が存在せず、溶融部の中に結晶核が点在するように発生するので、結晶がランダムな方位に成長し、結晶方位がランダムな粒径0.2〜0.5μm程度の結晶粒が形成される。なお、二酸化シリコン膜は、基板に由来する不純物がシリコン膜に拡散するのを防止するために設けられる。レーザアニール法では、安価なガラス基板を利用できるので、表示装置の価格を低くすることができる。しかしながら、液晶などの表示装置には、一層の高輝度化および高精細化が求められている。そのためには、多結晶体中におけるシリコン結晶粒の粒径をさらに大きくし、かつ結晶粒の成長方位を制御し、単結晶シリコンに近い性能を有する多結晶体を得ることが必要であり、レーザアニール法の改良法が種々提案されている。
【0005】
たとえば、基板の表面に二酸化シリコン膜を形成し、さらにその上に形成された非晶質シリコン膜にレーザビームを照射し、非晶質シリコン膜をレーザ照射領域の厚さ方向全域にわたって溶融させ、溶融部分と未溶融部分との境界から横方向、すなわち基板面に平行な方向に結晶粒が成長(スーパーラテラル成長)するように制御し、針状のシリコン多結晶体を得るレーザアニール法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この方法によれば、結晶粒の成長方位を揃えることができる。しかしながら、この方法では、結晶成長が、溶融部分と未溶融部分との境界から、レーザ照射領域の幅方向に対する中央部にまで達することがなく、該中央部においては別個に微細結晶からなる多結晶構造が形成され、照射領域全域にわたって膜特性が均一な多結晶シリコン膜を得ることができない。また、1回のレーザ照射による結晶粒の成長距離は1〜2μmにすぎず、大きな結晶粒を得るには、レーザを繰り返し照射する必要がある。しかも、結晶を引継いで成長させるためには、前回の照射で形成された結晶にオーバーラップするようにレーザを照射するという煩雑な作業が必要になる。
【0006】
また、基板上に、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基またはトリフロロメチル基を含有する酸化シリコンからなる断熱層を形成し、この断熱層の上に酸化シリコン、窒化シリコンなどからなる絶縁層を形成し、さらにその上に非晶質シリコン膜を形成し、これにレーザビームを照射して非晶質シリコンを結晶化し、多結晶シリコン薄膜を得る方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。この方法によれば、基板と非晶質シリコン膜との間に断熱層を設け、レーザビームの照射による熱エネルギーが基板側に流出するのを防止することによって、非晶質シリコンが溶融状態にある時間、ひいては結晶粒が成長する時間を延長し、一層大きな結晶粒を得ようとしている。しかしながら、この方法において、結晶が横方向に成長する距離は、非晶質シリコン膜の膜厚の2倍程度にすぎず、表示装置の周辺部への駆動回路、周辺回路などの一体化、表示装置の高輝度化および高精細化などに必要と考えられている5μm以上の結晶粒を得るためには、レーザビームの照射幅を拡大することが必要である。ところが、レーザビームの照射幅を拡大すると、特許文献1の技術と同様に、照射領域の中央部で微細な多結晶構造が形成され、均一な膜特性を有する多結晶シリコン膜を得ることができない。
【0007】
【特許文献1】
特許第3204986号公報
【特許文献2】
特開2001−274087号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液晶、ELなどを利用する表示装置の高輝度化および高精細化に有効な大きさを有する結晶粒が、ほぼ同じ方向に成長し、均一な膜特性を有する多結晶半導体薄膜を効率よく製造する方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、絶縁性基板に下地膜を形成する工程と、下地膜の上に半導体薄膜を形成する工程と、半導体薄膜にレーザビームを照射して、半導体薄膜を融解および結晶化する工程とを含む多結晶半導体薄膜の製造方法であって、
絶縁性基板に下地膜を形成する工程は、
第1熱伝導層を形成する工程と、
第1熱伝導層よりも熱伝導率が低い第2熱伝導層を、第1熱伝導層中に、第1熱伝導層の長手方向に対して平行に1層以上配置されるように形成する工程とを含むことを特徴とする多結晶半導体薄膜の製造方法である。
【0010】
本発明に従えば、絶縁性基板上に形成された半導体薄膜にレーザビームを照射して多結晶半導体薄膜を製造するに際し、絶縁性基板と半導体薄膜との間に、第1熱伝導層と第1熱伝導層よりも熱伝導率が低い第2熱伝導層とを含んで構成される下地膜を形成することによって、この下地膜がレーザビームの照射により溶融した半導体材料の結晶成長および成長の方位を制御するので、従来技術のようにレーザビーム照射領域の中央部に微細結晶からなる多結晶構造が形成されることがなく、表示装置の周辺部への駆動回路、周辺回路などの一体化、表示装置の高輝度化および高精細化などに有効とされる粒径5μm程度またはそれ以上の結晶粒がほぼ同一方向に成長し、膜全体が均一な特性を有する、良質な多結晶半導体薄膜を形成することができる。しかも、このような多結晶半導体薄膜を、1回のレーザビーム照射でも形成することができ、結晶成長は非常に急速に進行する。さらに、特殊な材料を必要とせず、レーザビームを照射するレーザアニール法によって結晶成長を行うことができる。したがって、本発明の方法によって、良質な多結晶半導体薄膜を効率よく、極めて短時間でかつ低コストで製造することができる。
【0011】
また本発明の製造方法は、半導体薄膜にレーザビームを照射する工程が、第2熱伝導層または第2熱伝導層およびその周囲に存在する第1熱伝導層の一部もしくは全部を含む領域の上層を構成する半導体薄膜にレーザビームを照射する工程であることを特徴とする。
【0012】
本発明に従えば、半導体薄膜の全面ではなく、第2熱伝導層または第2熱伝導層とその周囲の第1熱伝導層とを含む領域の上層に相当する部分の半導体薄膜にレーザビームを照射することによって、良質な多結晶半導体薄膜を一層効率良く製造することができる。
【0013】
また本発明の製造方法は、半導体薄膜にレーザビームを照射する工程が、半導体薄膜を融解および結晶化することができるエネルギを半導体薄膜に与える第1のレーザビームと、半導体薄膜による吸収率が第1のレーザビームよりも小さく、かつ半導体薄膜を融解および結晶化することができるエネルギよりも小さいエネルギを半導体薄膜に与える第2のレーザビームとを半導体薄膜に照射する工程であることを特徴とする。
【0014】
本発明に従えば、半導体薄膜にレーザビームを照射するにあたり、半導体薄膜を構成する半導体材料を融解および結晶化することができるエネルギを半導体薄膜に与える第1のレーザビームおよび第1のレーザビームよりも半導体薄膜に吸収され難く、かつ半導体薄膜を融解および結晶化することができるエネルギよりも小さいエネルギを半導体薄膜に与える第2のレーザビームという2種類のレーザビームを用いることによって、第2のレーザビームが、半導体薄膜を融解させることなく、絶縁性基板、下地膜および半導体薄膜を含む積層体全体の温度を上昇させるので、第1のレーザビームによる半導体薄膜の融解領域をさらに拡大することができ、また半導体薄膜を構成する半導体材料が融解状態にある時間を半導体薄膜全域にわたってさらに長くすることができる。したがって、一層大きな粒子径を有する半導体結晶からなる多結晶半導体薄膜を得ることができる。
【0015】
また本発明の製造方法は、前述の下地膜が、第2熱伝導層と、第2熱伝導層の長手方向に対して直交する方向に隣接するように配置される第1熱伝導層とから形成されることを特徴とする。
【0016】
また本発明の製造方法は、前述の第1熱伝導層の長手方向に直交する方向の幅が、前述の第2熱伝導層の長手方向に直交する方向の幅の1/2以上であることを特徴とする。
【0017】
また本発明の製造方法は、前述の第2熱伝導層の長手方向に直交する方向の幅が、3〜7μmであることを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、第2熱伝導層の長手方向の両側に隣接するように第1熱伝導層を配置するように下地膜を形成することによって、好ましくは第1熱伝導層の長手方向に直交する方向の幅を、第2熱伝導層の長手方向に直交する方向の幅の1/2以上にすることによって、さらに好ましくは第2熱伝導層の長手方向に直交する方向の幅を3〜7μmとすることによって、レーザビーム照射領域の中央部において、微細な結晶からなる多結晶構造が形成されるのが一層防止され、結晶化が一層均一に進行し、一層良好な多結晶半導体薄膜を製造することができる。
【0019】
また本発明の製造方法は、前述の第1熱伝導層が固体状の絶縁性無機化合物を含み、かつ前述の第2熱伝導層が多孔質性の絶縁性無機化合物を含むことを特徴とする。
【0020】
また本発明の製造方法は、前述の第1熱伝導層が固体状の酸化シリコンまたは窒化シリコンを含み、かつ前述の第2熱伝導層が多孔質性の酸化シリコンまたは窒化シリコンを含むことを特徴とする。
【0021】
また本発明の製造方法は、前述の第1熱伝導層が固体状の窒化シリコンを含み、かつ前述の第2熱伝導層が多孔質性の酸化シリコンを含むことを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、第1熱伝導層を構成する物質として固体状の絶縁性無機化合物、好ましくは固体状酸化シリコンまたは窒化シリコン、より好ましくは固体状窒化シリコンを用い、かつ第2熱伝導層を構成する物質として多孔質性の絶縁性無機化合物、好ましくは多孔質性酸化シリコンまたは窒化シリコン、より好ましくは多孔質性酸化シリコンを用いる場合には、下地膜は、溶融した半導体の結晶化を制御するだけではなく、得られる多結晶半導体薄膜中に不純物が拡散するのを防止することができる。また、低熱伝導体として多孔質体を用い、レーザビーム照射条件(照射時間、照射照度、雰囲気温度など)に対し、多孔質体の空孔密度を適宜選択することによって、結晶成長長さを最大限に大きくすることができるという利点がある。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明による多結晶半導体薄膜は、絶縁性基板、第1熱伝導層と第1熱伝導層よりも熱伝導率が低い第2熱伝導層とを含み、第2熱伝導層は、第1熱伝導層中に、第1熱伝導層の長手方向に対して平行に1層以上配置されるように形成される下地膜、および半導体薄膜を順次積層して積層体を作成し、これにレーザビームを照射して半導体薄膜を構成する半導体材料を融解し、結晶化することによって製造することができる。
【0024】
図1〜図4は、本発明の製造方法において、レーザビームを照射するために作成する積層体の実施の第1〜第4形態である積層体1a〜1dの構成を模式的に示す、長手方向に対して直交する方向の断面図である。
【0025】
積層体1a〜1dは、いずれも、絶縁性基板2、絶縁性基板2上に形成される下地膜3および下地膜3上に形成される半導体薄膜4からなり、下地膜3が第1熱伝導層5と第2熱伝導層とを含む点で同一であり、下地膜3における第1熱伝導層5および第2熱伝導層6の配置が異なる。
【0026】
図1に示す積層体1aの下地膜3では、第2熱伝導層6は第1熱伝導層5中に形成され、第2熱伝導層6の長手方向の4面が第1熱伝導層5に接する。このような第2熱伝導層6を2層以上形成してもよい。
【0027】
図2に示す積層体1bの下地膜3では、第2熱伝導層6は第1熱伝導層5中に形成され、第2熱伝導層6における長手方向の一方の面6aが基板表面2aに接し、他の3面が第1熱伝導層5に接する。
【0028】
図3に示す積層体1cの下地膜3では、第2熱伝導層6は第1熱伝導層5中に形成され、第2熱伝導層6における長手方向の他方の面6bが、半導体薄膜面4aに接し、他の3面が第1熱伝導層5に接する。
【0029】
図4に示す積層体1dの下地膜3では、第2熱伝導層6の長手方向の、基板表面に対して直交する両端面6c,6dに隣接するように第1熱伝導層5a,5bが配置される。第2熱伝導層6の厚み方向の対向面は、一方の面6aが基板表面2aに接し、他方の面6bが半導体薄膜面4aに接する。第1熱伝導層5a,5bも同様に、その厚み方向の対向面のうち、一方の面が基板表面2aに接し、他方の面が半導体薄膜面4aに接する。すなわち、第2熱伝導層6が、その長手方向に対する直角方向において、2つの第1熱伝導層5a,5bによって挟まれるようにして下地膜3が形成される。
【0030】
本実施の形態において、下地膜3に第2熱伝導層6が存在する部分の幅xおよび第1熱伝導層5のみが存在する部分の幅y,zは特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、xは形成しようとする結晶粒の粒径(結晶粒の成長長さ)とほぼ等しくするのが好ましい。また、xとy,zとの関係も特に制限されないけれども、y≧x/2、z≧x/2の関係を満たすようにx、yおよびzを選択するのが好ましく、前記の関係を満たしかつyおよびzを等しくするのがさらに好ましい。たとえば、良好なトランジスタを形成するために必要とされる、粒径5μmまたはそれ以上の結晶粒を得ようとする場合には、xを3〜7μm、好ましくは5μm程度とし、yおよびzをそれぞれ1.5〜3.5μm以上、好ましくは2.5μm程度とすればよい。
【0031】
また本実施の形態において、第2熱伝導層6を、下地膜3の長手方向に対する直交する方向における中央部に配置するのが好ましい。
【0032】
また本実施の形態において、絶縁性基板2と下地膜3との間に、絶縁性基板2に由来する不純物が下地膜3を介して半導体薄膜4に拡散するのを防止するために、図示しない不純物拡散防止層を設けてもよい。
【0033】
本実施の形態の中でも、レーザビーム照射により溶融した半導体薄膜の結晶成長および成長方位を一層確実に制御するという観点から、積層体1dが好ましい。
【0034】
本実施の形態に用いられる絶縁性基板2としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ガラス基板(特に無アルカリガラス基板)、石英基板などが挙げられる。
【0035】
下地膜3中の第1熱伝導層5を構成する第1熱伝導物質および第2熱伝導層6を構成する第2熱伝導物質としては、特に制限されず、この分野で常用される絶縁性無機化合物の中から、第1熱伝導物質および第1熱伝導物質よりも熱伝導率が相対的に低い第2熱伝導物質を適宜選択して使用することができる。絶縁性無機化合物としては、たとえば、酸化シリコン、窒化シリコンなどが挙げられる。
【0036】
具体的には、たとえば、第1熱伝導物質として窒化シリコンを用い、第2熱伝導物質として酸化シリコンを用いることができる。このような構成を採用すると、下地膜が不純物拡散防止層としても働くので、絶縁性基板と下地膜との間に別途無機絶縁膜を形成することを省略することができ、本発明の製造方法の工程を簡略化することができる。
【0037】
また、第1熱伝導物質として固体状の絶縁性無機化合物を用い、第2熱伝導性物質として絶縁性無機化合物の多孔質体を用いることができる。このとき、絶縁性無機化合物は同じものを用いてもよい。たとえば、第1熱伝導化合物として固体状酸化シリコンを用い、第2熱伝導化合物として酸化シリコンの多孔質体を用いることができる。この場合にも、下地膜が不純物拡散防止層として働くので、絶縁性基板と下地膜との間に、別途無機絶縁膜を形成することを省略できる。また、第2熱伝導化合物として多孔質体を用いる場合には、レーザ照射時の諸条件(たとえばレーザ照射時間、照射照度、雰囲気温度など)に応じて、多孔質体の空孔密度すなわち熱伝導率を適宜選択することによって、結晶成長長さを最大にする最適化を極めて容易に実施することができる。さらに、第1熱伝導化合物として固体状窒化シリコンを用い、第2熱伝導化合物として窒化シリコンの多孔質体または酸化シリコンの多孔質体を用いることもできる。
【0038】
第1熱伝導層5および第2熱伝導層6は、蒸着法、スパッタ法、気相成長(CVD)法などの公知の薄膜形成法に従って形成することができる。
【0039】
第1熱伝導層5および第2熱伝導層6からなる下地膜3の膜厚は特に制限されないけれども、通常は数十〜数百nm、好ましくは50〜200nmである。
【0040】
半導体薄膜4は、通常、非晶質の半導体材料を含んで構成される。非晶質の半導体材料としては公知のものを使用でき、たとえば、シリコン、ゲルマニウム、AuSi、PdSi、Cu40Zr60、Fe2020、Co90Zr10、Ni78Si1012などの非晶質体が挙げられる。これらの中でも、シリコンが好ましい。また、前記半導体材料の微結晶からなる多結晶半導体薄膜を用いることもできる。半導体薄膜は、たとえば気相成長(CVD)法、スパッタ法、蒸着法などの公知の薄膜形成法に従って形成することができる。これらの中でも、気相成長法が好ましい。半導体薄膜の厚さは特に制限されず、求められるトランジスタの特性、半導体薄膜を形成するための条件などに応じて適宜選択することができるけれども、通常は数十〜数百nm、好ましくは30〜100nmである。
【0041】
絶縁性基板2と下地膜3との間に、必要に応じて設けられる不純物拡散防止層は、絶縁性無機化合物を含んで構成される。絶縁性無機化合物としてはこの分野で常用されるものを使用でき、その中でも酸化シリコンが好ましい。不純物拡散防止層は、蒸着法、スパッタ法、気相成長(CVD)法などの公知の薄膜形成法に従って形成することができる。
【0042】
たとえば、絶縁性基板2がガラス基板であり、第1熱伝導層5a,5bを構成する第1熱伝導物質が窒化シリコンであり、第2熱伝導層6を構成する第2熱伝導物質が酸化シリコンであり、および半導体薄膜4が非晶質シリコンである図4の構成を有する積層体は、公知の方法に従って、次のようにして製造できる。
【0043】
まず、ガラス基板2上の第2熱伝導層6が形成される面にマスクを設置し、第1熱伝導層5a,5bが形成される面を露出させ、この露出面に、窒化シリコンからなる膜を形成し、第1熱伝導層5a,5bとする。窒化シリコンからなる膜は、たとえば、気相成長法に従い、ソースガスとしてシランおよびキャリアガスとして水素と窒素との混合ガスを用い、これらを900℃までの加熱下に絶縁性基板2の表面に供給することによって形成することができる。プラズマ気相成長法によれば、450〜550℃の温度下に窒化シリコン膜を形成することができる。次いで、第2熱伝導層6が形成される面に設置されたマスクを取り除いて、第2熱伝導層6が形成される面を露出させ、一方、窒化シリコンからなる第1熱伝導層5a,5bの上に、これらの形に対応するマスクを設置し、第2熱伝導層6が形成される面に酸化シリコンからなる膜を形成する。酸化シリコンからなる膜は、たとえば、気相成長法に従い、ソースガスとしてシランおよびキャリアガスとして水素と一酸化炭素との混合ガスを用い、これらを400℃までの加熱下に絶縁性基板2の表面に供給することによって形成することができる。このようにして、ガラス基板2上に、第1熱伝導層5a,5bと第2熱伝導層6とからなる下地膜3が形成される。さらに、下地膜3の上に非晶質シリコンからなる膜を形成することによって、本発明の製造方法で使用する積層体が得られる。非晶質シリコンからなる膜は、たとえば、気相成長法(特にプラズマ気相成長法)に従い、ジシランガスを200〜300℃の温度下および100Pa程度の圧力下に下地膜3の表面に供給することによって形成することができる。
【0044】
本発明の製造方法においては、絶縁性基板、下地膜および半導体薄膜からなる積層体に、レーザビームを照射するレーザアニール処理を施す。
【0045】
レーザアニール処理は、たとえば、公知のレーザアニール処理装置を用いて行われる。
【0046】
図5は、本発明において使用するレーザアニール処理装置の構成を概略的に示す系統図である。レーザアニール処理装置11は、レーザ発振器12、図示しないホモジナイザ、エキスパンダなどを含む光学素子13、レーザ反射板14、フィールドレンズ15、フォトマスク16、対物レンズ17およびステージ18を含んで構成される。
【0047】
レーザ発振器12は、シリコンなどの半導体材料に充分吸収されかつ半導体材料を溶融することができるパルス状のレーザビーム19を放出するものであれば特に制限されないけれども、たとえば、エキシマレーザ、Nd−YAGレーザに代表される各種固体レーザなど、紫外域の波長を有する光源が好ましい。このような光源から発せられる2倍高調波が好ましい。エキシマレーザを用いる場合、パルス幅は10〜数10nsであり、半導体薄膜はほぼ瞬時に溶融するけれども、その後冷却され、その過程で結晶化が生じる。またレーザビーム19の波長は特に制限されず、レーザビーム19を照射する半導体材料の種類などに応じて適宜選択できる。たとえば、半導体材料が非晶質シリコンまたはシリコンである場合には、吸収率などを考慮すると、550nmまたはそれよりも短い波長であることが好ましい。
【0048】
光学素子13に含まれるホモジナイザは、レンズアレーまたはシリンドリカルレンズアレーより構成され、レーザビーム19を分割して再合成することによって、レーザビーム19断面内の放射照度を一様化するためのものである。またエキスパンダは、望遠系または縮小系を有する光学機器であり、レーザビーム19の大きさを適宜変換するためのものである。より具体的には、フォトマスク16上でのレーザビーム19の照射領域の大きさを決定するものである。
【0049】
反射板14は、レーザビーム19の進行方向を変えて、フィールドレンズ15に入射させるためのものである。
【0050】
フィールドレンズ15は、フォトマスク16を通過したレーザビーム19を結像面に垂直に入射させる機能を有する。ここでの結像面とは、半導体薄膜、下地膜および絶縁性基板からなる基板1の半導体薄膜表面である。
【0051】
フォトマスク16は、基板上に遮光部と開口部とを形成したものである。基板には、石英、ガラスなどが用いられる。遮光部には、クロム、ニッケル、アルミニウムなどの金属薄膜、誘電体を多層積層した反射膜または吸収膜などが用いられる。開口部は、フォトマスク16に照射されるレーザビーム19を通過させるためのものである。開口部の形状によって、基板1の半導体薄膜表面に結像される像の形状が決定される。開口部は、通常、1または2以上のスリットとして形成される。スリットの幅は特に制限されず、基板1における下地膜中の第2熱伝導層の形状などに応じて適宜選択できるけれども、通常は1〜100μmである。開口部におけるスリットの長さおよびスリット数は特に制限されず、結晶化条件、最終デバイス形状などに応じて適宜選択すればよい。
【0052】
対物レンズ17は、フォトマスク16の開口部を通過した光を、積層体1の半導体薄膜表面に結像させる。
【0053】
ステージ18は、レーザビーム19の照射を受け、レーザビーム19による像が結像される積層体1を載置するためのものである。ステージ18は、ステージ18を2軸方向に移動可能にする手段および/またはレーザビーム19による結像を特定方向に走査することを可能にする手段を含んでいてもよい。
【0054】
このような構成を有するレーザアニール装置10によれば、まず、レーザ発振器12から出射されたレーザビーム19は、光学素子13中のエキスパンダによって適切なビームサイズに変換され、さらにホモジナイザによってビーム断面における放射照度の一様化が図られたうえ、反射板14によって進行方向を変えられ、フィールドレンズ15を通過してフォトマスク16に照射される。フォトマスク16に達したレーザビーム19の一部は開口部を通過し、さらに対物レンズ17を通過して、積層体1の半導体薄膜表面に結像する。この像は、フォトマスク16の開口部の形状に対応しているので、半導体薄膜の一部にレーザビーム19が照射され、その他の部分にはレーザビーム19が照射されない状態が得られる。
【0055】
積層体1の半導体薄膜上に結像される像の光学倍率は特に制限されないけれども、通常は等倍〜1/10程度である。すなわち、フォトマスク16上の開口部の像が、等倍像から1/10の大きさに縮小されて結像される。たとえば、開口部の幅を40μmおよび光学倍率を1/4にすると、半導体薄膜上に、1/4に縮小された、幅10μmの開口部の像が結像する。すなわち、像の幅を、所望する結晶粒の長さ、すなわち結晶粒の粒径(約5μm)の2倍である10μmに設定することができる。
【0056】
対物レンズの分解能は、開口部の像が半導体薄膜上の像として分解できる分解能に設定する。つまり、半導体薄膜上における開口部の像の幅を分解できる分解能に設定すればよい。具体的に、対物レンズの開口数をNA、レーザビームの波長をλとすると、分解能はおおむねλ/NAで表されるので、前記分解能λ/NAが半導体薄膜上における開口部の像の幅とほぼ同じ値になるように、開口部の幅を設定するか、分解能を開口部の幅に等しいか、より小さな値になるように対物レンズのNAを設定すればよい。
【0057】
このようにして、半導体薄膜上に開口部の像を結像させ、そのレーザパワーによって半導体薄膜を構成する半導体材料を溶融させた後、レーザビームの照射を止めると、半導体薄膜内の温度が低下し、レーザビーム照射領域の中央部においてランダムな方位に結晶粒が成長することがなく、溶融部と非溶融部との境界から中央部に向けて結晶粒が成長する。これは、半導体薄膜の下層にある下地膜が、その長手方向に直交する方向に、第1熱伝導層、第2熱伝導層および第1熱伝導層が並列配置された構造であり、下地膜の中央部付近に第2熱伝導層が位置し、第2熱伝導層の上層部分の半導体薄膜(すなわち半導体薄膜のレーザビーム照射領域における中央部)の温度が下がり難くなるので、半導体薄膜のレーザビーム照射領域における中央部の温度と、その端部(溶融部と非溶融部との境界に相当する部分)の温度との温度差が極めて大きい状態が生じることによるものであると考えられる。その結果、結晶粒の成長、すなわち結晶化は、半導体薄膜のレーザビーム照射領域の温度勾配に従って、レーザビーム照射領域の長手方向に直交する方向の両端部から中心部まで一気に進行し、有効な粒径を有する半導体材料の柱状晶または針状晶が形成され、良質の多結晶半導体薄膜が得られる。
【0058】
図6は、本発明において使用する別形態のレーザアニール処理装置の構成を概略的に示す系統図である。レーザアニール装置20は、第1のレーザビーム発生手段21と第2のレーザビーム発生手段22とを含んで構成される。
【0059】
第1のレーザビーム発生手段21は、レーザアニール装置11と同じ構成を有するので、同一の参照符号を付して説明を省略する。第1のレーザビーム発生手段21によって発生する第1のレーザビーム23は、半導体薄膜を融解および結晶化することができるエネルギを半導体薄膜に与えることができるレーザビームである。第1のレーザビーム23は、レーザアニール装置11の場合と同様にして、ステージ18に載置された積層体1に照射され、積層体1表面の半導体薄膜を融解および結晶化する。
【0060】
第2のレーザビーム発生手段22は、レーザ発振器24、光学素子25、レーザ反射板26、フィールドレンズ27および対物レンズ28を含んで構成される。レーザ発振器24は、半導体薄膜に吸収される割合が第1のレーザビーム23よりも小さく、かつ半導体薄膜を融解および結晶化することができるエネルギよりも小さいエネルギを半導体薄膜に与えるレーザビームを放出するものであれば特に制限されないけれども、たとえば、炭酸ガスレーザなどが挙げられる。炭酸ガスレーザによるレーザビームは半導体薄膜を透過し、下地膜または絶縁性基板に吸収されるので、炭酸ガスレーザのレーザ強度を適宜調整することで、半導体薄膜を融解させることなく、積層体1全体の温度を高くすることができる。炭酸ガスレーザは、パルス幅が数百μsec〜数十msec程度のものを使用すればよい。
【0061】
第2のレーザビーム発生手段22によれば、レーザ発振器24から出射された第2のレーザビーム29は、光学素子25中でビームサイズの変換およびビーム断面における放射照度の一様化を施されたうえ、レーザ反射板26によって進行方向を変えられ、フィールドレンズ27および対物レンズ28を通過し、積層体1の半導体薄膜表面に結像する。第2のレーザビーム29は、半導体薄膜を融解および結晶化することはないけれども、半導体薄膜を含む積層体1全体を高温状態にすることができる。これに、第1のレーザビーム23を照射することによって、半導体薄膜における溶融領域を拡大することができ、しかも半導体薄膜が溶融状態にある時間を長くすることができるので、結晶の粒子径をさらに大きくすることができる。このとき、第1熱伝導層および第2熱伝導層の長手方向に直交する方向の幅をさらに大きくすることによって、および/または、フォトマスク16の開口部のスリット幅をさらに拡大することによって、一層大きな粒子径を有する結晶からなる多結晶半導体薄膜を得ることができる。
【0062】
本実施の形態において、第1のレーザビーム23と第2のレーザビーム29とは、同時に積層体1に照射してもよく、または第2のレーザビーム29の照射を開始し、それを維持した状態でさらに第1のレーザビーム23を照射してもよい。第2のレーザビーム29を照射した後に、第1のレーザビーム23を照射してもよい。さらに、第1のレーザビーム23を照射した後に、第2のレーザビーム29を照射してもよい。
【0063】
また本実施の形態において、第1のレーザビーム23および第2のレーザビーム29の照射領域は特に制限されることはないけれども、第1のレーザビーム23は、第2熱伝導層または第2熱伝導層とその周囲の第1熱伝導層の一部もしくは全部を含む領域の上層を構成する半導体薄膜に照射するのが好ましい。また、第2のレーザビーム29は、第1のレーザビーム23が照射される領域の一部または全部を含む領域、好ましくは全部を含む領域に照射する。
【0064】
[実施例]
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
【0065】
実施例1
図7は、本発明の製造方法においてレーザビームを照射するための積層体30の構造を模式的に示す断面図および積層体30にレーザビームを照射したときの、半導体薄膜における温度の経時変化を示すグラフである。
【0066】
積層体30は、ガラス基板31、下地膜32および非晶質シリコン薄膜33を含んで構成される。下地膜32は、その長手方向に直交する方向の中央部に、多孔質性酸化シリコンからなる第2熱伝導層35が設けられ、第2熱伝導層35の両側に、固体状酸化シリコンからなる第1熱伝導層34a,34bが配置される。第1熱伝導層34a,34bの長手方向に直交する方向の幅は、それぞれ2.5μmである。第2熱伝導層35の長手方向に直交する方向の幅は、5μmである。下地膜32の膜厚は100nmである。非晶質シリコン薄膜33の膜厚は50nmである。
【0067】
また、図7のグラフにおいて、横軸は、非晶質シリコン薄膜33の中心線36から左右への長さ(μm)を示し、中心線36の位置が「0」になる。縦軸は、各位置におけるレーザビーム照射後の温度(℃)を示す。中心線36は、非晶質シリコン薄膜33の長手方向に直交する方向の中心線である。
【0068】
非晶質シリコン薄膜33に照射したレーザビームは、波長308nmおよびパルス幅25nsのXe−Clエキシマレーザであり、照射時間は70nsである。エキシマレーザの照射幅は、フォトマスク開口部のスリット幅を40μmおよび光学倍率を1/4とすることにより10μmである。照射領域は、第2熱伝導層35およびその周囲に存在する第1熱伝導層34a,34bを含む領域の上層を構成する非晶質シリコン薄膜33の領域であり、より具体的には非晶質シリコン薄膜33の中心線36から左右5μmずつの領域である。
【0069】
非晶質シリコン薄膜33にエキシマレーザを照射すると照射領域の非晶質シリコンが溶融し、レーザ照射を停止すると溶融したシリコンの結晶化が始まる。非晶質シリコン薄膜33のレーザ照射後40〜180nsの温度は、図7、グラフの温度曲線から明らかなように、非晶質シリコン薄膜33の中心線36に遠い部分ほど温度が低くなるのが早く、より早い時点でシリコンの融点(1414℃)を下回る。特に、非晶質シリコン薄膜33の第1熱伝導層34a,34bの上層に当たる部分は、レーザ非照射領域および熱伝導率の高い第1熱伝導層34a,34bに接するので、レーザ非照射領域および積層体30の厚み方向に向けて熱が放散し、温度の低下が早くなる。一方、非晶質シリコン薄膜33の中心線39に近い部分は、レーザ非照射領域に接しておらずかつ熱伝導率の低い第2熱伝導層35に接するので、熱の放散が少なく、照射後160nsを経過しても、シリコンが溶融状態を保つのに必要な約1400℃の温度が維持される。このため、溶融したシリコンの結晶化は、シリコンの溶融部分と非溶融部分との境界37a,37bから中心線36に向かって矢符38a,38bの方向(横方向)に進行し、中心線36まで達し、粒径Lが4μmを超える非常に大きな柱状晶からなる多結晶構造が得られる。
【0070】
すなわち本発明の方法によれば、非晶質シリコン薄膜にレーザビームを照射した領域の大部分が、粒径の大きな柱状晶からなり、その長手方向に直交する方向の幅Dが8μmを超える大きな多結晶シリコン薄膜に変換される。このような多結晶シリコン薄膜は、液晶、エレクトロルミネッセンス(EL)などを応用した表示装置に用いられる薄膜トランジスタとして非常に好適に使用できる。
【0071】
また、レーザビーム照射幅を大きくすることによって、粒径が一層大きな結晶からなる多結晶半導体薄膜を容易に得ることができる。
【0072】
図8は、本発明の製造方法により得られる多結晶シリコン薄膜40の構造を示す平面図である。多結晶シリコン薄膜40は、粒径Lの柱状シリコン結晶41が2列に並んだ多結晶シリコン層42を有し、多結晶シリコン層42の長手方向に直交する方向の幅Dは柱状シリコン結晶41の粒径Lの約2倍である。多結晶シリコン層42の両端部には、レーザビームを照射しない部分の非晶質シリコン層43a,43bが残存する。
【0073】
実施例2
図7に示す積層体30に、図6に示すレーザアニール処理装置20を用いて、2種類のレーザビームを照射し、多結晶半導体薄膜を製造した。
【0074】
第1のレーザビームには、波長308nmおよびパルス幅25nsのXe−Clエキシマレーザを用いる。照射時間は70nsである。照射幅は、実施例1と同様にして、フォトマスク開口部のスリット幅を40μmおよび光学倍率を1/4とすることにより10μmである。照射領域は、第2熱伝導層35およびその周囲に存在する第1熱伝導層34a,34bを含む領域の上層を構成する非晶質シリコン薄膜33の領域であり、具体的には非晶質シリコン薄膜33の中心線36から左右5μmずつの領域である。
【0075】
第2のレーザビームには、波長10.6μmおよびパルス幅4.0msecの炭酸ガスレーザを用いる。照射領域は、直径2mmの円形領域とし、エキシマレーザの照射領域を完全に含むように照射する。炭酸ガスレーザ照射後3.8msec経過後に、エキシマレーザの照射を行う。
【0076】
炭酸ガスレーザの非晶質シリコン薄膜33による吸収率は、第1のレーザビームであるXe−Clエキシマレーザの非晶質シリコン薄膜33による吸収率よりも小さい。また、前述の波長およびパルス幅を有する炭酸ガスレーザを照射するだけでは、非晶質シリコン薄膜33の融解および結晶化は起こらない。
【0077】
これによって、図8に示すのと同様の、柱状シリコン結晶が2列に並んだ構造を有する多結晶半導体薄膜を得ることができた。1個の柱状シリコン結晶の粒子径は約5μmであった。
【0078】
比較例1
図9は、従来のレーザアニール法においてレーザビームを照射するための積層体100の構造を模式的に示す断面図および積層体100にレーザビームを照射したときの、半導体薄膜の温度の経時変化を示すグラフである。
【0079】
積層体100は、ガラス基板101、膜厚100nmの下地膜(二酸化シリコン膜)102および膜厚50nmの非晶質シリコン薄膜103を含んで構成される。
【0080】
また、図9のグラフにおいて、横軸は、非晶質シリコン薄膜103の中心線104から左右への長さ(μm)を示し、中心線104の位置が「0」になる。縦軸は、各位置における温度(℃)を示す。中心線104は、非晶質シリコン薄膜103の長手方向に直交する方向の中心線である。
【0081】
エキシマレーザの非晶質シリコン薄膜103への照射は、照射幅を6μm(アモルファスシリコン薄膜103の中心線104から左右に3μm)とする以外は実施例1と同様である。
【0082】
非晶質シリコン薄膜103にエキシマレーザを照射すると、非晶質シリコンが溶融するけれども、中心線104から遠い部分では矢符106a,106bとは反対方向および積層体100の厚み方向に熱の放散が起こり、また中心線104に近い部分では主に積層体100の厚み方向に熱の放散が起こるので、両方の部分で温度が顕著に低下する。中心線104に近い部分で約1400℃の温度が維持されるのは、レーザ照射終了後70nsまでにすぎない。したがって、非晶質シリコンの溶融部分と非溶融部分との境界105a,105aで始まる結晶化は、矢符106a,106bの方向へ進行するものの、中心線104に到達する前に停止し、長さL2程度(約1μm)の結晶が得られるだけである。結晶化非進行部分107には、急速な温度低下に伴って、ランダムな方位を有して結晶化した粒径1μmにも満たない微細シリコン結晶からなる多結晶層が形成される。
【0083】
図10は従来のレーザアニール法により得られる多結晶シリコン薄膜108の構造を示す平面図である。この多結晶シリコン薄膜108は、粒径1μm程度の柱状シリコン結晶109が2列に並び、その間に微細シリコン結晶からなる多結晶層110が存在するので、均一な膜特性を有する多結晶構造が得られない。
【0084】
比較例2
図11は、従来のレーザアニール法においてレーザビームを照射するための積層体112の構造を模式的に示す断面図および積層体112にレーザビームを照射したときの、半導体薄膜の温度の経時変化を示すグラフである。
【0085】
積層体112は、ガラス基板101、膜厚100nmの下地膜113および膜厚50nmの非晶質シリコン薄膜103を含んで構成される。
【0086】
下地膜113は、酸化シリコンよりも熱伝導率が低いシロキサン系樹脂からなる有機樹脂膜である。
【0087】
また、図11のグラフにおいて、横軸は、非晶質シリコン薄膜103の中心線104から左右への長さ(μm)を示し、中心線104の位置が「0」になる。縦軸は、各位置における温度(℃)を示す。中心線104は、非晶質シリコン薄膜103の長手方向に直交する方向の中心線である。
【0088】
エキシマレーザの非晶質シリコン薄膜103への照射は、比較例1と同様である。
【0089】
非晶質シリコン薄膜103の中心線104の近傍部分では、積層体112の厚み方向への熱の放散は比較例1よりも幾分抑制されるけれども、エキシマレーザ照射後80nsを超えると、温度は1400℃未満になる。したがって、非晶質シリコンの溶融部分と非溶融部分との境界105a,105bから始まる結晶化は、矢符106a,106bの方向へ進行するものの、中心線104に到達する前に、中心線104の近傍部分の温度が1400℃未満になって結晶化が停止するので、長さL3程度(約1.7μm)の結晶が得られるだけである。2つのシリコン結晶集合体の間には結晶化非進行部分107が存在し、結晶化非進行部分107には、急速な温度低下に伴って、ランダムな方位を有して結晶化した粒径1μmにも満たないような微細結晶からなる多結晶層が形成される。このような多結晶シリコン薄膜は、均一な膜特性を有しておらず、表示装置の高輝度化および高精細化に寄与することはできない。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、絶縁性基板と半導体薄膜との間に、第1熱伝導層と第1熱伝導層よりも熱伝導率が低い第2熱伝導層とを含む下地膜を形成し、これにレーザビームを照射することによって、粒径5μm程度またはそれ以上の結晶粒がほぼ同一方向に成長し、膜特性が均一な良質の多結晶半導体薄膜を、1回のレーザビーム照射で、効率よく、短時間かつ低コストで得ることができる。
【0091】
本発明によれば、下地膜の、第2熱伝導層または第2熱伝導層とその周囲の上層の半導体薄膜にレーザビームを照射することによって、一層効率良く良質な多結晶半導体薄膜を得ることができる。
【0092】
本発明によれば、半導体薄膜を融解および結晶化することができる第1のレーザビームおよび第1のレーザビームよりも半導体薄膜に吸収され難く、かつ半導体薄膜を融解および結晶化することがない第2のレーザビームという2種類のレーザビームを半導体薄膜に照射することによって、一層大きな粒子径を有する半導体結晶からなる多結晶半導体薄膜を得ることができる。
【0093】
本発明によれば、第2熱伝導層の両側に第1熱伝導層を配置し、好ましくは第1熱伝導層の幅を第2熱伝導層の幅の1/2以上とし、さらに好ましくは第2熱伝導層の幅を3〜7μmとすることによって、レーザビーム照射領域の中央部にまで結晶化が一層均一に進行し、一層良好な多結晶半導体薄膜が得られる。
【0094】
本発明によれば、第1熱伝導層を構成する物質として固体状の絶縁性無機化合物(固体状の酸化シリコンまたは窒化シリコン)を用い、第2熱伝導層を構成する物質として多孔質性の絶縁性無機化合物(多孔質性の酸化シリコンまたは窒化シリコン)を用いることによって、半導体材料の結晶化を制御するとともに、多結晶半導体薄膜中における不純物の拡散を防止することができる。また、レーザビーム照射条件(時間、照度、雰囲気温度など)に応じて、多孔質体の空孔密度を選択すれば、容易に結晶成長長さを最大にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法における積層体の実施の第1形態である積層体の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の製造方法における積層体の実施の第2形態である積層体の構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の製造方法における積層体の実施の第3形態である積層体の構成を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の製造方法における積層体の実施の第4形態である積層体の構成を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明で使用するレーザアニール装置の構成を概略的に示す系統図である。
【図6】本発明で使用する別形態のレーザアニール装置の構成を概略的に示す系統図である。
【図7】本発明の製造方法においてレーザビームを照射する積層体の構造を模式的に示す断面図および該積層体にレーザビームを照射したときの、半導体薄膜における温度の経時変化を示すグラフである。
【図8】本発明の製造方法により得られる多結晶シリコン薄膜の構造を示す平面図である。
【図9】従来のレーザアニール法においてレーザビームを照射する積層体の構造を模式的に示す断面図および該積層体にレーザビームを照射したときの、半導体薄膜の温度の経時変化を示すグラフである。
【図10】従来のレーザアニール法により得られる多結晶シリコン薄膜の構造を示す平面図である。
【図11】従来のレーザアニール法においてレーザビームを照射する積層体の構造を模式的に示す断面図および該積層体にレーザビームを照射したときの、半導体薄膜の温度の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1,1a,1b,1c,1d,30,100,112 積層体
2 絶縁性基板
3,32,102,113 下地膜
4 半導体薄膜
5,34a,34b 第1熱伝導層
6,35 第2熱伝導層
11,20 レーザアニール処理装置
12,24 レーザ発振器
13,25 光学素子
14,26 レーザ反射板
15,27 フィールドレンズ
16 フォトマスク
17,28 対物レンズ
18 ステージ
19 レーザビーム
21 第1のレーザビーム発生手段
22 第2のレーザビーム発生手段
23 第1のレーザビーム
29 第2のレーザビーム
31,101 ガラス基板
33,103 非晶質シリコン薄膜
36,104 中心線
37a,37b,105a,105b 溶融部分と非溶融部分との境界
38a,38b,106a,106b 矢符
40,108 多結晶シリコン薄膜
41,109 柱状シリコン結晶
42 多結晶シリコン層
43a,43b,111a,111b 非晶質シリコン層
107 結晶化非進行部分
110 多結晶層

Claims (9)

  1. 絶縁性基板に下地膜を形成する工程と、下地膜の上に半導体薄膜を形成する工程と、半導体薄膜にレーザビームを照射して、半導体薄膜を融解および結晶化する工程とを含む多結晶半導体薄膜の製造方法であって、
    絶縁性基板に下地膜を形成する工程は、
    第1熱伝導層を形成する工程と、
    第1熱伝導層よりも熱伝導率が低い第2熱伝導層を、第1熱伝導層中に、第1熱伝導層の長手方向に対して平行に1層以上配置されるように形成する工程とを含むことを特徴とする多結晶半導体薄膜の製造方法。
  2. 半導体薄膜にレーザビームを照射する工程が、第2熱伝導層または第2熱伝導層およびその周囲に存在する第1熱伝導層の一部もしくは全部を含む領域の上層を構成する半導体薄膜にレーザビームを照射する工程であることを特徴とする請求項1記載の多結晶半導体薄膜の製造方法。
  3. 半導体薄膜にレーザビームを照射する工程が、半導体薄膜を融解および結晶化することができるエネルギを半導体薄膜に与える第1のレーザビームと、半導体薄膜による吸収率が第1のレーザビームよりも小さく、かつ半導体薄膜を融解および結晶化することができるエネルギよりも小さいエネルギを半導体薄膜に与える第2のレーザビームとを半導体薄膜に照射する工程であることを特徴とする請求項1または2記載の多結晶半導体薄膜の製造方法。
  4. 下地膜が、第2熱伝導層と、第2熱伝導層の長手方向に対して直交する方向に隣接するように配置される第1熱伝導層とから形成されることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の多結晶半導体薄膜の製造方法。
  5. 第1熱伝導層の長手方向に直交する方向の幅が、第2熱伝導層の長手方向に直交する方向の幅の1/2以上であることを特徴とする請求項4記載の多結晶半導体薄膜の製造方法。
  6. 第2熱伝導層の長手方向に直交する方向の幅が、3〜7μmであることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれかに記載の多結晶半導体薄膜の製造方法。
  7. 第1熱伝導層が固体状の絶縁性無機化合物を含み、かつ第2熱伝導体が多孔質性の絶縁性無機化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれかに記載の多結晶半導体薄膜の製造方法。
  8. 第1熱伝導層が固体状の酸化シリコンまたは窒化シリコンを含み、かつ第2熱伝導層が多孔質性の酸化シリコンまたは窒化シリコンを含むことを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれかに記載の多結晶半導体薄膜の製造方法。
  9. 第1熱伝導層が固体状の窒化シリコンを含み、かつ第2熱伝導層が多孔質性の酸化シリコンを含むことを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれかに記載の多結晶半導体薄膜の製造方法。
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WO2006073165A1 (ja) * 2005-01-07 2006-07-13 Sharp Kabushiki Kaisha 半導体デバイス、その製造方法および製造装置
JP2008085236A (ja) * 2006-09-29 2008-04-10 Hitachi Computer Peripherals Co Ltd 2波長レーザアニール装置

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