JP2005005394A - ステージ装置、露光装置、およびデバイス製造方法 - Google Patents

ステージ装置、露光装置、およびデバイス製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大ストローク化にも対応でき、特に電子ビーム露光装置に搭載する上で最適なステージ装置を提供する。
【解決手段】X方向に沿って移動可能なX駆動体3と、Y方向に沿って移動可能なY駆動体2と、X駆動体に対してY横静圧軸受44を介してY方向に沿って移動可能で、かつY駆動体に対してX横静圧軸受45を介してX方向に沿って移動可能なXY移動体4と、前記Y横およびX横静圧軸受それぞれの周囲に設けられたY横およびX横排気溝とを具備するステージ装置において、X横静圧軸受より排出された流体を、Y横静圧軸受より排出される流体と合流させ、X駆動体に設けられた排気孔53”より排出する。
【選択図】 図9

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種測定器、および半導体リソグラフィ工程で用いる投影露光装置などにおいてウエハ等の基板を高速、高精度で移動、位置決めをするために用いられるステージ装置に関するものである。本発明のステージ装置は、特に、ウエハ直接描画またはマスク、レチクル露光のために、電子ビームを用いてパターン描画を行う電子ビーム露光装置や、EUV(Extreme Ultra Violet)光を露光光として使用するEUV露光装置等の真空雰囲気中で使用されるステージ装置として最適である。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置等のデバイスの製造においては、マスク上に形成された各種パターンを光でウエハ上に縮小転写するリソグラフィ技術が利用されている。このリソグラフィ技術で用いるマスクのパターンには極めて高い精度が要求され、これを作成するのに電子ビーム露光装置が使用されている。また、マスクを用いることなしにウエハ上に直接パターンを描画する場合も電子ビーム露光装置が使用されている。
【0003】
電子ビーム露光装置には、ビームをスポット状にして使用するポイントビーム型、サイズ可変の矩形断面にして使用する可変矩形ビーム型等の装置があるが、どの構成も一般的には電子ビームを発生させる電子銃部と、そこより発せられたビームを試料上に導くための電子光学系と、電子ビームに対して全面にわたって試料を走査するためのステージ系、および電子ビームを試料面上に高精度に位置決めしていくための対物偏向器を有している。
【0004】
対物偏向器により位置決め可能な領域は、電子光学系の収差を小さく抑えるために数ミリ程度である。これに対して、試料の大きさは例えばシリコンウエハであればφ200〜300mm程度あり、マスクに使用されるガラス基板では150mm角程度の大きさがある。従って、それら試料の全面を電子ビームに対して走査することが可能なステージを有している。
【0005】
ところで、電子ビームの位置決め応答性は極めて高いため、ステージの機械的制御特性を高めるより、ステージの姿勢や位置ずれ量を計測し、電子ビームを走査させる偏向器によりビームの位置決めにフィードバックしたシステム構成をとることが一般的であった。さらに、ステージは、真空チャンバに設置され、かつ電子ビームの位置決めに影響を与える磁場変動を引き起こしてはいけないという拘束があったため、従来のステージは平面方向に動きさえすればよく、例えば、転がりガイドやボールネジアクチュエータといった接触型の限られた機構要素で構成されていた。
【0006】
また、接触型では潤滑の問題や、発塵などの問題も生じる。その対応技術として、図10に示すような排気型エアベアリングが一般的になっている。スライダ側にエアパッド51が設けられ、ガイドを非接触に支持する。エアパッドより噴出したエアが外部雰囲気に流出しないように非接触シール52L、また非接触シール内側に設けられたエアのたまり溝52g、たまり溝52gに対応してガイド側に設けられた排気孔53という構成となっている。以上の方式により、真空雰囲気内でも非接触ガイドが可能となる。
一方、従来課題とされていたリソプロセスの高速化に対しても例えば、特許文献1のように複数の電子ビームを設計上の座標に沿って試料面に照射し、設計上の座標に沿ってその複数の電子ビームを偏向させて試料面を走査させるとともに、描画するパターンに応じて複数の電子ビームを個別にon/offしてパターンを描画するマルチ電子ビーム型露光装置がある。マルチ電子ビーム型露光装置は、複数の電子ビームで任意の描画パターンを描画できるのでスループットがより改善できるという特徴がある。
【0007】
図11に、マルチ電子ビーム型露光装置の概要を示す。501a、501b、501cは、個別に電子ビームをon/offできる電子銃である。100は、電子銃501a、501b、501cからの複数の電子ビームをウエハ305上に縮小投影する縮小電子光学系で、306は、ウエハ305に縮小投影された複数の電子ビームを走査させる偏向器である。
【0008】
図12に上記構成により、ウエハ上を複数の電子ビームで走査した際の様子を示す。白丸は、各電子ビームが偏向器306により偏向を受けないときにウエハに入射するビーム基準位置(BS1、BS2、BS3)であって、各ビーム基準位置は設計上の直交座標系(Xs,Ys)に沿って配列される。一方、各電子ビームはビーム基準位置を基準としてこれも設計上の直交座標系(Xs,Ys)に沿って走査され、各電子ビーム毎の露光フィールド(EF1、EF2、EF3)を走査する。各電子ビームの露光フィールドが隣接してウエハを露光する。ウエハ305を搭載するステージは200のようにY方向スキャンが支配的な軌跡で動くことが電子ビーム露光装置の特徴である。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−330867号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来方式においては、エアのたまり溝52gの長さは必ずストローク分なくてはならず、それに伴い、スライダの長さが規定される。また、それに伴い、ガイドの長さが規定される。
今後、ウエハ大口径化が求められるリソグラフィにおいて、装置のストロークが増大することで、装置自体の大きさもさらに大きくなってしまい、結果的に、装置重量増、真空チャンバの容量も大きくなる。
本発明の課題は、大ストローク化にも対応できるステージ装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明のステージ装置は、基板を搭載して二次元方向に移動させるステージ装置であって、第1の方向に沿って移動可能な第1の駆動体と、第1の方向と直交もしくは略直交する第2の方向に沿って移動可能な第2の駆動体と、第1および第2の方向に直交もしくは略直交する第3の方向と第2の方向に平行な第1の駆動体に設けられた第1の案内面に対し第1の静圧軸受を介して支持されて第1の案内面に沿って第2の方向に移動可能で、かつ第2の駆動体に設けられた第3の方向と第1の方向とに平行な第2の案内面に対し第2の静圧軸受を介して支持されて第2の案内面に沿って第1の方向に移動可能な移動体と、第1および第2の静圧軸受それぞれの周囲に設けられた第1および第2の排出溝と、第2の静圧軸受より排出される流体を第1の静圧軸受より排出される流体と合流させ第1の駆動体に設けられた排出孔より排出する流体排出手段とを具備することを特徴としている。
【0012】
【作用】
本発明によれば、第2の駆動体に対向して移動体に設けられた第2の静圧軸受より排出される流体を第1の駆動体に対して移動体に設けられた第1の静圧軸受より排出される流体と合流させ第1の駆動体に設けられた排出孔より排出するようにしたため、移動体に設けられた第2の静圧軸受の第1の方向の寸法が移動体の第1の方向への移動ストロークに影響されない。したがって、例えば真空雰囲気や実質的に真空雰囲気、もしくは所望のガス雰囲気内にて大ストロークに対応できる高精度露光が実現できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態に係るステージ装置は、後述する実施例の符号を用いて記載すると、その内部を真空雰囲気または実質的に真空雰囲気とする真空室300内にて基板305を搭載し、直交もしくは略直交するXY方向に可動するステージ装置であって、X方向に沿って移動可能な第1の駆動体としてのX駆動体3と、Y方向に沿って移動可能な第2の駆動体としてのY駆動体2と、X駆動体に対してY横静圧軸受44を介してY方向に沿って移動可能で、かつY駆動体に対してX横静圧軸受45を介してX方向に沿って移動可能な移動体としてのXY移動体4と、前記Y横およびX横静圧軸受それぞれの周囲に設けられたY横およびX横排気溝52gとを具備し、X横静圧軸受より排出された流体は、Y横静圧軸受より排出される流体と合流し、X駆動体に設けられた排気孔より排出されることを特徴としている。なお、以下の説明において、Z方向とはX,Yの各方向に対して直交もしくは略直交する方向のことである。
【0014】
【実施例】
図1は本発明の一実施例に係る電子ビーム露光装置の要部概略図である。図1において、300は真空試料室、301は、カソード301a、グリッド301bおよびアノード301cよりなる電子銃であって、カソード301aから放射された電子はグリッド301bとアノード301cの間でクロスオーバ像を形成する(以下、これらのクロスオーバ像を光源と記す)。
【0015】
この光源から放射される電子は、その前側焦点位置が前記光源位置にあるコンデンサーレンズ302によって略平行の電子ビームとなる。略平行な電子ビームは、要素電子光学系アレイ303に入射する。要素電子光学系アレイ303は、ブランキング電極と開口と電子レンズで構成される要素電子光学系がZ軸に平行な光軸に直交する方向に複数配列されて形成されたものである。要素電子光学系アレイ303の詳細については後述する。
【0016】
要素電子光学系アレイ303は、光源の中間像を複数形成し、各中間像は後述する縮小電子光学系100によって縮小投影され、ウエハ305上に光源像を形成する。その際、ウエハ305上の光源像の間隔が光源像の大きさの整数倍になるように、要素電子光学系アレイ303の各要素は設定されている。さらに、要素電子光学系アレイ303は、各中間像の光軸方向の位置を縮小電子光学系100の像面湾曲に応じて異ならせるとともに、各中間像が縮小電子光学系100によってウエハ305に縮小投影される際に発生する収差を予め補正している。
【0017】
縮小電子光学系100は、第1投影レンズ341(343)と第2投影レンズ342(344)とからなる2段の対称磁気タブレットで構成される。第1投影レンズ341(343)の焦点距離をf1、第2投影レンズ342(344)の焦点距離をf2とすると、この2つのレンズ間距離はf1+f2になっている。光軸上の物点は第1投影レンズ341(343)の焦点位置にあり、その像点は第2投影レンズ342(344)の焦点に結ぶ。この像は−f2/f1に縮小される。また、2つのレンズ磁界が互いに逆方向に作用するように決定されているので、理論上は、球面収差、等方性非点収差、等方性コマ収差、像面湾曲収差および軸上色収差の5つの収差を除いて他のザイデル収差および回転と倍率に関する色収差が打ち消される。
【0018】
306は、要素電子光学系アレイ303からの複数の電子ビームを偏向させて、複数の光源像をウエハ305上でXおよびY方向に略同一の変位量だけ変位させる偏向器である。偏向器306は、図示はされていないが、偏向幅が広い場合に用いられる主偏向器と偏向幅が狭い場合に用いられる副偏向器で構成されていて、主偏向器は電磁型偏向器で、副偏向器は静電型偏向器である。
【0019】
307は偏向器306を作動させた際に発生する偏向収差により光源像のフォーカス位置のずれを補正するダイナミックフォーカスコイルであり、308はダイナミックフォーカスコイル307と同様に、偏向により発生する偏向収差の非点収差を補正するダイナミックスティグコイルである。99はオフアクシスに配置されたアライメントスコープであり、すでにウエハに描画されているマークを検出する。
【0020】
310は、ウエハ305を載置するトップステージである。アライメントスコープ99によりウエハ305の全面を観察するためには、トップステージ310がアライメントスコープ99直下にてウエハ口径に相当するストロークを有する必要がある。
【0021】
4は、トップステージ310を載置し、光軸(Z軸)と直交するXおよびY方向に移動可能なXYスライダである。まず図2を用いてXYスライダの詳細を説明する。XYスライダ4は、XYスライダy41とXYスライダx42より構成されている。XYスライダy41の下面には真空対応軸受43がステージベース1の上面1fに対向して構成され、またXYスライダy41の側壁の内側には同様の真空対応軸受44がYガイド3fを挟み込むように構成されている。
また、XYスライダx42の側壁の内側には同様の真空対応軸受45がXガイド2fを挟み込むように構成されている。Yガイド3fはXスライダ3を構成するXビーム32の長手方向の両側壁に形成されている。Xガイド2fはYスライダ2を構成するYビーム22の長手方向の両側壁に形成されている。Yガイド3fを含むXスライダ3とXガイド2fを含むYスライダ2は、図3に示すように、田の字状に構成されており、XYスライダ4をX方向に動かす場合は、Xスライダ3をX方向に動かすことにより、Xガイド2fおよびステージベース上面1fに沿って滑らかに動くことができる。
XYスライダ4をY方向に動かす場合は、Yスライダ2をY方向に動かすことにより、Yガイド3fおよびステージベース上面1fに沿って滑らかに動くことができる。
【0022】
次にYスライダ2に関して説明する。Yスライダ2は、Xガイド2fを含むYビーム22およびX方向において両側に配置されたYフット21、21’より構成される。Yフット21、21’の下面には真空対応軸受23がビームベース1b、1dの上面に対向して構成されている。
ビームベース1b、1dの上面はステージベース上面1fと略平行であり、Yスライダ2はビームベース1b、1d上面の範囲内にて、Y方向にはストローク分滑らかに動くことができ、X方向およびZ軸回転方向にも滑らかに動くことができる。すなわち、Yスライダ2は、Y方向には長ストロークで、X方向には短ストロークで移動可能であり、Z軸回転方向と合わせて3自由度の変位が可能である。
また、Yスライダ2をY方向に駆動するリニアモータ可動子24mがX方向両側に配置されている。リニアモータ可動子24mは永久磁石を内蔵しており、ステージ空間に磁場がもれないように磁気シールドカバーが取り付けてある。Yスライダ2をX方向に駆動するリニアモータも可動子24mに内蔵されている。詳細な説明は図4にて後述する。
Yフット21にはY方向位置を計測するための反射ミラー26およびX方向位置を計測するための反射ミラー26xが、Yフット21’にはY方向位置を計測するための反射ミラー26’が構成されており、干渉計システム126、126’、126xにより、Yスライダ2のX方向、Y方向およびZ軸回転の位置(x,y,θz)を計測することができる。
【0023】
同様にXスライダ3に関して説明する。Xスライダ3は、Yガイド3fを含むXビーム32およびY方向において両側に配置されたXフット31、31’より構成される。Xフット31、31’の下面には真空対応軸受33がビームベース1a、1cの上面に対向して構成されている。
ビームベース1a、1cの上面はステージベース上面1fと略平行であり、Xスライダはビームベース1a、1c上面の範囲内にて、X方向にはストローク分、Y方向およびZ軸回転方向にも滑らかに動くことができる。すなわち、Xスライダ3は、X方向には長ストロークで、Y方向には短ストロークで移動可能であり、Z軸回転方向と合わせて3自由度の変位が可能である。また、XスライダをX方向に駆動するリニアモータ可動子34mがY方向両側に配置されている。
リニアモータ可動子34mは永久磁石を内蔵しており、ステージ空間に磁場がもれないように磁気シールドカバーが取り付けてある。また、XスライダをY方向に駆動するリニアモータも可動子34mに内蔵されている。
Xフット31にはX方向位置を計測するための反射ミラー36が、Xフット31’にはY方向位置を計測するための反射ミラー36yおよびX方向位置を計測するための反射ミラー36’が構成されており、干渉計システム136、136’、136yにより、Xスライダ3のX方向、Y方向およびZ軸回転の位置(x,y,θz)を計測することができる。
【0024】
図3にXスライダおよびYスライダ制御系の構成図を示す。Xスライダ3に対応する干渉計システム136、136’および136yの値をXスライダ演算器130を介してXスライダ3のX方向の位置x、Y方向の位置yおよびZ軸回転の位置θzに変換し、Xスライダ制御器131へのフィードバック信号としている。Xスライダ制御器131よりドライバ指令値(Xfx,Xfx’,Xfy)が算出され、対応するX固定子34sに配置されているコイル列に電流を流すことにより、X方向およびZ軸回転方向駆動力Xfx、Xfx’ならびにY方向駆動力Xfyが生じる。
【0025】
Yスライダ2に対応する干渉計システム126、126’および126xの値をYスライダ演算器120を介してYスライダ2のX方向の位置xおよびY方向の位置yに変換し、Yスライダ制御器121へのフィードバック信号としている。Yスライダ制御器121よりドライバ指令値(Yfy,Yfx)が算出され、対応するY固定子24sに配置されているコイル列に電流を流すことにより、Y方向駆動力YfyおよびX方向駆動力Yfxが生じる。本制御系においては、Xスライダ3のZ軸回転を制御的に拘束し、Yスライダ2のZ軸回転はXスライダ3の回転に倣わせる方式を採用している。
【0026】
以上のようにXスライダの3自由度、Yスライダの2自由度を制御的に拘束することにより、XYスライダの3自由度を制御することができる。このとき、XYスライダ4のX方向位置はXスライダ3のX方向位置と、Y方向位置はYスライダ2のY方向位置と、Z軸回転はXスライダ3のZ軸回転とほぼ等価とみなしてよい。粗動の各スライダの計測はさまざまな組み合わせが考えられ、XYスライダを直接干渉計で計測する構成をとることも可能である。
また、Yスライダ2の回転方向位置情報は本実施例では計測値として積極的に用いてないが、例えば回転方向速度情報を積極的に用いて制御的に付加することは可能である。
【0027】
次に図4を用い、本実施例で使用したリニアモータについて、Xスライダ3のリニアモータ34を例に説明する。リニアモータ34は前述したように可動子34m、固定子34sより構成されている。可動子34mは可動磁石134magおよび磁気シールド134shより構成されている。固定子34はコイル列134a、134b、134c‥‥‥がストローク方向に配置され、かつそれぞれのコイルは2層になっている。真空試料室内にて、コイル列をむきだしにしないようにジャケット134jがコイル列を覆っている。可動磁石134magはY方向着磁磁石間にX方向着磁磁石を交互にはさんで、コイル空間の磁束分布を正弦波に近い状態を作っている。
【0028】
図4(a)は駆動力をX方向に働かせるときの状態を示している。コイルbにはY方向最大磁束Byが生じており、このときコイル134b_uおよび134b_dに同相の電流を流すことにより、ローレンツ力により、可動子34mにはX方向に力が働く。
【0029】
図4(b)は駆動力をY方向に働かせるときの状態を示している。コイルcにはX方向最大磁束Bxがコイル134b_uおよび134b_d位置にて逆向きに生じており、このときコイル134b_uおよび134b_dに逆相の電流を流すことにより、ローレンツ力により、可動子34mにはY方向に力が働く。このY方向の力はX方向の力に比べ弱い可能性があるが、Y方向の力はXスライダの加速には用いないため問題とならない。
【0030】
図5に、XスライダのY方向駆動力およびYスライダのX方向駆動力を与える第2の実施例としての電磁石構成を示す。Xスライダ3のXフット31、31’にはX方向駆動力を与えるリニアモータ可動子34m”が配置され、Xフット31’にはさらにY方向駆動力を与える電磁石ユニット34m’が配置されている。電磁石ユニット34m’は、可動側にE型コア234EM、コイル234coおよび磁気シールド234shが配置され、これらは非磁性材235によりXフット31’に固定されている。また固定側に磁性体バー234Iが配置され、非磁性材236によりビームベース1cに固定されている。電磁石ユニット34m’において、対向するコイルに選択的に通電、制御することで、Xスライダ3をY方向に駆動することができる。
【0031】
Yスライダ2のYフット21、21’にはY方向駆動力を与えるリニアモータ可動子24m” が配置され、Yフット21’にはさらにX方向駆動力を与える電磁石ユニット24m’が配置されている。電磁石ユニット24m’は、可動側にE型コア224EM、コイル224coおよび磁気シールド224shが配置され、これらは非磁性材からなる電磁石取付部材235によりYフット21’に固定されている。また固定側に磁性体バー(Iコア)224Iが配置され、非磁性材からなるIコア取付部材236によりビームベース1dに固定されている。電磁石ユニット24m’において、対向するコイルに選択的に通電、制御することで、Yスライダ2をX方向に駆動することができる。
【0032】
次に図6を用いて、各スライダの底面の構成について説明する。図6(a)は、スライダを支えるベース構成を説明するために装置全体を裏面より見た図、(b)は底パッド単品図である。図2を用いて前述したように、XYスライダy41の下面には真空対応軸受43がステージベース1の上面1fに対向して構成され、Yフット21、21’の下面には真空対応軸受23がビームベース1b、1dの上面に対向して構成され、Xフット31、31’の下面には真空対応軸受33がビームベース1a、1cの上面に対向して構成されている。
それらのパッド詳細は図6(b)に示すとおりであり、多孔質を介して流体が噴出してくる静圧軸受部51、噴出した流体を雰囲気に流れ出ないようにするためのラビリンス部52、および排気孔53より構成されている。ラビリンス部は流体抵抗を非接触で与えるために複数のランド部52Lと溝部52gで構成されている。
【0033】
静圧軸受に所望の剛性を得るために、静圧軸受に予圧をかけることが一般的であり、本実施例においては、永久磁石の吸引力により予圧をかけている。この予圧のかけ方には、真空予圧(ただし、雰囲気が大気もしくは減圧雰囲気で用いる場合)や磁石予圧といった単純浮上型予圧と、静圧軸受を対向させて予圧をかける拘束型予圧がある。本実施例においては、真空雰囲気で使用されるため、磁石予圧による単純浮上型予圧を採用している。
図6において、29はYフットに固定した永久磁石、39はXフットに固定した永久磁石、49はXYスライダy41(図2)に固定した永久磁石であり、それぞれ磁場がもれないように磁気シールド29sh、39sh、49shに覆われている。拘束型予圧にしないことで、精度保証面を、軸受面およびガイド面のみに限定することができる。
【0034】
一方、拘束型予圧として、図2に示すように、XYスライダx42の側壁の内側両側に真空対応軸受45を形成し、対向するXガイド2fを挟み込む構成も採用しているが、その場合には精度保証面はXガイド2f両面の平行およびXYスライダ側の軸受45の両側の平行も管理する必要がある。ただし、剛性が上がることが期待できる。
【0035】
また、本実施例のように、電子ビーム露光装置にて永久磁石を用いる場合、各永久磁石に磁気シールドで覆う以外に以下のような工夫を行っている。図6(a)において、それぞれの永久磁石が吸引する対象である磁性体の各ベース(1、1a、1b、1c、1d)の相互間を磁気的に隔離している。具体的には、XYスライダの予圧磁石49にはステージベース1が、Yスライダ2の予圧磁石29にはビームベース1b、1dが、Xスライダ3の予圧磁石39にはビームベース1a、1cが対向しており、それぞれのベース(1、1a、1b、1c、1d)が相互間にある磁気抵抗をもって配置されている。
その効果を、図6(c)(d)を用いて説明する。図6(c)は、各ベースを磁気的に隔離していない場合、(d)は隔離した場合である。隔離していないと、複数磁石の作るそれぞれの磁気回路L1以外に、複数磁石間にも磁気回路L2が形成され、それがシールドsh(29sh、39sh、49sh)を越えて、外部にもれてしまう。しかし、磁気的に隔離すること(すなわち磁気抵抗を十分に高めること)により、複数磁石間に生じる磁束もれを極力少なくすることが可能となる。
【0036】
図7は、ベース構成の第2の実施例を裏面より見たものを示している。図7において、それぞれの永久磁石が対向するベース1’は一体に構成されており、各スライダの可動領域間にスリット1sを設け、複数磁石間の磁気抵抗を高めることにより、複数磁石間に生じる磁束もれを極力少なくしている。図7の構成においては、ベース1’のガイド面1fの精度出しは容易である。
【0037】
図8(a)は、ベース構成の第3の実施例を裏面より見たものを示している。図8(a)において、各スライダの底パッド可動領域は共通ベース1”および各スライダ2、3の永久磁石29、39が対向する磁性体ベース1mをそれぞれ磁気的に隔離して配置した構成である。
図8(b)はYフット21を横より見た図であり、ラビリンス部を含むY底パッド23は共通ベース1”の上面1fをガイド面としている。また、Y底パッド23に予圧を与えるための吸引磁石29および磁気シールド29shは共通ベース1”と磁気的に隔離された磁性体ベース1mと対向している。
図8(a)で示されるとおり、XYスライダ4の吸引磁石は共通ベース1”と対向しているが、共通ベース1”と磁性体ベース1mは磁気的に隔離されているため、複数磁石間に生じる磁束もれを極力少なくすることが可能となる。また、一般に軸受部が対向する面より、永久磁石が対向する面の方が、平面度に関して緩くすることが可能であり、加工・組み立て上有利である。
【0038】
図9は、XYスライダ4の横パッド44、45の排気孔53’、53”より回収した流体の流れに関して説明する図である。本発明の実施例に係る電子ビーム露光装置はすでに図1、2で説明したようにX方向にアライメントスコープ99を配置しており、アライメントスコープによりウエハ全面を観察するためには、トップステージがアライメントスコープ直下にてウエハ口径に相当するストロークを有する必要がある。投影光学系中心よりアライメントスコープまでの距離をベースラインと呼ぶが、本構成では、X方向ストロークXstは、Y方向ストロークYstよりベースラインだけ長い(Xst>Yst)。そこで、本実施例では以下のような工夫を施している。
【0039】
Y横パッド45より噴出した流体は、ラビリンス部溝52g(図6)に構成された排気孔53’より回収される。回収された流体はY横パッド45、XYスライダ4およびX横パッド44に設けられた配管55を介して、X横パッド44のラビリンス部溝52gに排出される。排出された流体およびX横パッド44より噴出した流体は合流する。合流した流体は、Xビーム32に構成された排気孔53”より回収される。回収された流体はXビーム32およびXフット31、31’に構成された配管56を介して、Xフット31、31’に接続された可撓性のホース38により真空試料室300(図1)外に排出される。Y横パッド44のラビリンス部溝52gはY方向ストロークYstの長さと同じかまたはそれ以上必要である。X方向ストロークはさらに長いが、本実施例では、X横パッド45の噴出する流体の排出は、XYスライダ4側より回収するため、X横パッドのラビリンス部溝52gはX方向ストロークの長さXstと同一である必要がない。したがって、横パッド44、45を含めたXYスライダ構造体の大きさを抑えることが可能である。
【0040】
次に、上記した露光装置を利用した半導体デバイスの製造プロセスを説明する。図13は半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行う。ステップ2(マスク作製)では設計した回路パターンに基づいてマスクを作製する。
一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記のマスクとウエハを用いて、上記の露光装置によりリソグラフィ技術を利用してウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ5によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の組み立て工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、ステップ7でこれを出荷する。
上記ステップ4のウエハプロセスは以下のステップを有する。ウエハの表面を酸化させる酸化ステップ、ウエハ表面に絶縁膜を成膜するCVDステップ、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する電極形成ステップ、ウエハにイオンを打ち込むイオン打ち込みステップ、ウエハに感光剤を塗布するレジスト処理ステップ、上記の露光装置によって回路パターンをレジスト処理ステップ後のウエハに転写する露光ステップ、露光ステップで露光したウエハを現像する現像ステップ、現像ステップで現像したレジスト像以外の部分を削り取るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト剥離ステップ。これらのステップを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンを形成する。
【0041】
【発明の適用範囲】
以上、本発明を電子ビーム露光装置に適用した例を示したが、構成の変更により、電子ビームを使用しない真空中露光装置、例えばEUV(Extreme Ultra Violet)光を露光光として使用するEUV露光装置にも適用できる。また、本ステージは真空中だけでなく、所望のガス雰囲気中でも使用できる。
電子ビームを使用しない場合においては、磁場変動を問題にする必要がないため、リニアモータや永久磁石に磁気シールドを用いる必要がない。また、各定盤(ベース)を磁気的に隔離する必要もない。
また、電子ビーム露光装置においても、Xスライダ、Yスライダを前述した拘束型予圧にすることにより、各定盤を磁気的に隔離する必要がない。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、例えば真空雰囲気や実質的に真空雰囲気、もしくは所望のガス雰囲気内にて大ストロークに対応できる高精度露光が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る電子ビーム露光装置の要部概略図。
【図2】図1におけるステージ装置の要部斜視図。
【図3】図2の装置のステージ制御系を示す図。
【図4】図2の装置のリニアモータの動作説明図。
【図5】本発明の第2の実施例に係るステージ装置の構成を示す図。
【図6】図2の装置の各スライダを支えるベース構成を示す図。
【図7】上記ベース構成の第2の実施例を示す図。
【図8】上記ベース構成の第3の実施例を示す図。
【図9】図2の装置の排気構成を示す図。
【図10】従来の排気型エアベアリングを示す図。
【図11】マルチ電子ビーム型露光装置の概要を示す図。
【図12】図11の装置においてウエハ上を複数の電子ビームを走査したときの様子を示す図。
【図13】デバイス製造プロセスを示すフローチャート。
【符号の説明】1,1’,1”:ステージベース、1f:XYガイド、1a〜1d:ビームベース、1m:マグネットベース、1s:スリット、2:Yスライダ、2f:Xガイド、21:Yフット、22:Yビーム、23:Y底パッド、24m,24m”,34m、34m”:リニアモータ可動子、24m’,34m’:電磁石ユニット、26,26’,26y,36,36’,36y:ミラー、29,39,49:予圧磁石、3:Xスライダ、3f:Yガイド、31:Xフット、32:Xビーム、33:X底パッド、38:排気ホース、4:XYスライダ、41:XYスライダy、42:XYスライダx、43:底パッド、44:Y横パッド、45:X横パッド、51:多孔質絞り軸受、52:ラビリンス、52g:ラビリンス溝、53,53’,53”:排気孔、99:アライメントスコープ、100:縮小電子光学系、120:Yスライダ演算器、121:Yスライダ制御器、126,136:干渉計、130:Xスライダ演算器、131:Xスライダ制御器、134a〜e:リニアモータ固定側のコイル、134mag:リニアモータ可動側のマグネット列、134sh:磁気シールド、224EM,234EM:E型コア、224I,234I:磁性体バー、224sh,234sh:磁気シールド、235:電磁石取付部材、236:Iコア取付部材。

Claims (8)

  1. 基板を搭載して二次元方向に移動させるステージ装置であって、
    第1の方向に沿って移動可能な第1の駆動体と、
    第1の方向と直交もしくは略直交する第2の方向に沿って移動可能な第2の駆動体と、
    第1および第2の方向に直交もしくは略直交する第3の方向と第2の方向に平行な第1の駆動体に設けられた第1の案内面に対し第1の静圧軸受を介して支持されて第1の案内面に沿って第2の方向に移動可能で、かつ第2の駆動体に設けられた第3の方向と第1の方向とに平行な第2の案内面に対し第2の静圧軸受を介して支持されて第2の案内面に沿って第1の方向に移動可能な移動体と、
    第1および第2の静圧軸受それぞれの周囲に設けられた第1および第2の排出溝と、
    第2の静圧軸受より排出される流体を第1の静圧軸受より排出される流体と合流させ第1の駆動体に設けられた排出孔より排出する流体排出手段と
    を具備することを特徴とするステージ装置。
  2. 前記移動体の第1の方向への移動範囲が第2の方向への移動範囲より長いことを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
  3. 前記流体排出手段は、第2の静圧軸受より排出される流体を第2の排出溝を介して回収し、第1の排出溝内で合流させることを特徴とする請求項1または2に記載のステージ装置。
  4. 前記流体排出手段は、前記合流させた流体を前記排出孔に接続された可撓性のホースを介して前記真空室の外部に排出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のステージ装置。
  5. 真空室内にて基板にパターンを焼き付ける露光装置において該基板を搭載して二次元方向に移動させるために配設されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のステージ装置。
  6. 前記露光装置は、パターニング処理を主として前記移動体の前記第2の方向への定速走行中に行うものであることを特徴とする請求項5に記載のステージ装置。
  7. 請求項1のステージ装置によって基板または原版あるいはその双方を位置決めすることを特徴とする露光装置。
  8. 請求項7の露光装置によってデバイスを製造する工程を有するデバイス製造方法。
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