JP2005003449A - マイクロアレイ及びその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スポット形状、スポット内濃度が均一なマイクロアレイを作製する。
【解決手段】予めサンプルを結合させたマイクロビーズ12を平板基板11の表面に埋め込んでマイクロアレイ10を作製する。
【選択図】 図1
【解決手段】予めサンプルを結合させたマイクロビーズ12を平板基板11の表面に埋め込んでマイクロアレイ10を作製する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に複数種類の生体分子を配置したマイクロアレイ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生化学における遺伝子などの研究では、複数種類のDNA、RNA、たんぱく質等の生体分子からなるサンプル(プローブともいう)をガラスプレートやナイロン又はニトロセルロースメンブレン等の基板にスポットしたマイクロアレイを用いて、ハイブリダイズなどの実験が行われている。マイクロアレイの作成方法には、ピンを使って基板表面に生体分子からなるサンプルを付着させてスポットを形成する方式(例えば、特許文献1)や、細いノズルの先から一定量のサンプルを担体表面に吹きつけるインクジェット方式(例えば、特許文献2)などがある。ピン方式では、溶媒に溶かしたDNAやタンパク質などの高分子サンプルをピン先に付着させ、サンプルの付着したピンを平板基板上に接触させることで、平板基板上に円形のスポットを作成している。
【0003】
ピンには中実の棒状形状をした通常のピンや、中空の形状を有し、そこにサンプルを染み込ませて、先端を平板基板上に接触させる時間と圧力を加減することによってほぼ同量のサンプルを平板基板上に付着させる方式のピンなどがある。ピン方式ではどのような形状のピンを用いるとしても、ピンの先端を平板基板上に接触させることによって、平板基板上に円形のスポットを形成する。このとき作成されるマイクロアレイは、ハイブリダイゼーション結果を画像として読み取る際にサンプル間の誤差を少なくするため、各スポットが完全に円形であって形の歪みや中抜けがないことが望ましい。また、同じ理由により、円形スポット内部でサンプルの濃度むらがないことが望ましい。
【0004】
一方で、近年になってマイクロビーズと呼ばれる微小球体の作成方法(例えば、特許文献3)や、球体表面の生化学的修飾法が開発されており(例えば、特許文献4)、医薬品開発や学術研究で盛んに利用されている。マイクロビーズは、球体であることからサンプルを全面に均一に固定できる点、微粒子であるために溶媒に溶かして研究用チューブ内で扱うことができ、操作が簡便な点などを特徴として持っている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−181837号公報
【特許文献2】
特開2002−116205号公報
【特許文献3】
特開平8−155420号公報
【特許文献4】
特開2003−047485号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
マイクロアレイの作製を行う場合、例えば、ピンを用いてDNA、RNA、タンパク質又はペプチド等のサンプルを、ガラス製の平板基板のような担体に、円形スポットとして高密度に付着させていく方式では、ピン先を平板基板上に接触させる時の圧力、ピンの形状、サンプル粘度、周囲雰囲気の温度、湿度、その他様々な要因により、完全に円形で、円内が均一なサンプル濃度となったスポットを形成することは困難である。ピン方式では、特にピン自体の形状によって、平板基板上に形成されるスポットの形状が大きく左右されるという問題もある。また、平板基板上に形成したスポット内のサンプル濃度は、ピンを接触させる時の状態、溶媒の粘度、溶媒の乾燥過程で大きく変化し、スポット状に形成されたサンプルを例えば蛍光法で検出した際には蛍光の輝度値がスポット内で大きく変化するなどの問題があった。一方、インクジェット方式には、試料を吹き付けた後のノズルのメンテナンス、特に多種類の試料を扱う際のコンタミネーションに気を払わねばならない。また、ピン方式と同じく周囲雰囲気の温・湿度などにも影響を受けるなど問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、基板上に同一形状のスポットが多数形成され、各スポット内のサンプル濃度が均一なマイクロアレイ、及びその作成方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者らは、マイクロビーズ技術を利用することにより、従来完全な円形のスポットとすることが困難であったマイクロアレイ作製方式を、より簡便に真円形に近づける技術を開発した。
【0009】
すなわち、本発明によるマイクロアレイは、平板状の基板と、基板の表面に一部露出するようにして埋め込まれ固定された複数のマイクロビーズとを備え、マイクロビーズは表面に生体分子が結合されていることを特徴とする。基板は埋め込みに適するだけの柔らかさを持っているのが好ましい。ビーズは埋め込む際に破壊されない程度の硬さを持っているのが好ましい。このような観点から、基板は例えばシリコーン製とすることができ、マイクロビーズはガラスもしくはアクリル製とすることができる。また、ガラスあるいはアクリル製のビーズは、表面修飾技術が進んでいることからも好ましい。
【0010】
マイクロビーズは直径が50μmから100μmの球体とすることができる。後述するキャピラリを用いた配列法でマイクロアレイを作製するには、あまり小さなマイクロビーズ(0.5〜10μmクラス)は好ましくない。また大きすぎるビーズ(200μm以上のクラス)もマイクロアレイの意味がなくなるため、好ましくない。
【0011】
本発明によるマイクロアレイ作製方法は、生体分子を粒径が揃った複数のマイクロビーズの表面全体に均一に結合させる工程と、そのマイクロビーズを基板の表面に一部が露出するようにして1箇所に1個づつ埋め込み固定する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明によるマイクロアレイ作製方法は、また、生体分子を粒径が揃った複数のマイクロビーズの表面全体に均一に結合させる工程と、表面に差し渡しがマイクロビーズの直径とほぼ等しく深さがマイクロビーズの半径とほぼ等しい複数のくぼみが整列して設けられた基板を用意する工程と、マイクロビーズを基板のくぼみに押し付け、基板の表面に一部が露出するようにして埋め込み固定する工程とを含むことを特徴とする。マイクロビーズは、内径がマイクロビーズの直径より小さなキャピラリの先端に吸引して基板のくぼみに搬送し、押し付けることで、基板の表面に一部が露出するようにして埋め込み固定することができる。マイクロビーズはガラスあるいはアクリル製とし、基板はシリコーン製とすることができる。生体分子としては、DNA、RNA、タンパク質、ポリアミノ酸又は合成高分子を用いることができる。
【0013】
このように、サンプル生体分子を結合させたマイクロビーズを平板基板上に規則的に配置することで、従来のマイクロアレイよりも高精度な形状で、濃度が均一なサンプルが配置されたマイクロアレイを作製することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施する場合の一形態を図面により具体的に説明する。
図1は本発明によるビーズ埋め込み式マイクロアレイの一例を示す模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はそのAA断面図である。このマイクロアレイ10は、平板状の基板11上に多数のマイクロビーズ12が規則的に配置された構造を有する。基板11は、ガラス、プラスチック、シリコーンゴム(PDMS)、金属などからなる。マイクロビーズ12は、例えば直径が50μm〜100μm程度のガラス製あるいはポリスチレン製の球体であり、図1(b)に示すように基板11の表面に一部分が埋め込まれた状態で固定されている。マイクロビーズ12の表面にはサンプルとして核酸、タンパク質等の生体分子が均一にコーティングされている。イオン性生体分子のマイクロビーズ12への結合は公知の方法、例えばカップリング反応(アミノ基−カルボキシル基)、ビオチン−アビジン結合、アミノ基−スクシニル基結合などによって行われる。
【0015】
次に、本発明によるビーズ埋め込み式マイクロアレイの製造方法について説明する。図2は基板上にマイクロビーズを配置、固定する方法の一例を説明する模式図であり、図は1個のマイクロビーズに着目して、それを基板表面に固定する工程を示している。
【0016】
マイクロアレイ用の基板として、マイクロビーズの直径と同じか、又は僅かに小さい直径で、マイクロビーズの半径と同じ深さの小さなくぼみ22が形成された基板21を用意する。この基板21の作製は、金属やシリコーンなどによって型をつくり、そこにプラスチックやシリコーンゴムなどの原材料を流し込むなどの方法によって行うことができる。ここでは、アルミ素材の簡易金型によって、表面に直径90μm、深さ45μmの半球状のくぼみ22を相互の間隔200μmとして格子状に多数形成したシリコーン(PDMS)製の基板を用意した。シリコーン(PDMS)は、加工が容易でやわらかい材質のため、本発明によるビーズ埋め込み式マイクロアレイ用の基板材料に適している。
【0017】
また、マイクロビーズとして、球体表面をストレプトアビジン修飾された直径100μmのガラス製の球形ビーズを用意した。用意したマイクロビーズは複数の組みに分け、各組のマイクロビーズの表面にそれぞれ異なるサンプルを結合させた。今回は例として、ビオチン標識したオリゴヌクレオチドを各種用意した。各種ビオチン標識オリゴヌクレオチドと、ストレプトアビジン表面修飾マイクロビーズとを互いに混ぜてよく攪拌した後、室温(20〜25℃)で1時間反応させ、ビーズ表面上に均一にオリゴヌクレオチドを配列した。表面にサンプルを均一にコーティングした各種オリゴヌクレオチド結合マイクロビーズ24は、それぞれ別々の容器23に分けて入れておく。
【0018】
マイクロビーズを搬送するための手段としてビーズの直径よりも小さい内径を持つキャピラリ管を用いる。ここでは、内径80μm、外径100μmのガラス製のキャピラリ管25を用いた。キャピラリ管25は、先端から空気を吐き出したり、吸引したりできるようになっている。図2において、キャピラリ管25内に図示した矢印はキャピラリ管内を流れる空気の動きを示したものである。
【0019】
最初に、図2(a)に示すように、サンプルを均一にコーティングしたマイクロビーズ24の入った容器23にキャピラリ管25の先端を近づけ、キャピラリ管25の先端から空気を吸引することによって、キャピラリ管先端に1個のマイクロビーズ24を保持する。先端に1個のマイクロビーズを保持したら、そのまま吸引状態を保って、図2(b)に示すように、キャピラリ管25を基板21に設けられたくぼみ22の上方に移動する。その後、図2(c)に示すように、キャピラリ管25を基板21に向けて下降し、先端に保持しているマイクロビーズ24をくぼみ22上に押し付け、固定する。基板材料として用いたシリコーン(PDMS)はやわらかい材質であるため、その表面に形成されたくぼみにマイクロビーズを押し付けると、マイクロビーズはくぼみに挟まれ、固定される。次に、キャピラリ管25による空気の吸引を停止し、又は僅かに吐き出すことで、キャピラリ先端に保持していたマイクロビーズを解放し、くぼみに固定する。最後に、図2(d)に示すように、基板21の表面からキャピラリ管25を上昇させる。このとき、キャピラリ管25から空気を吐き出しながら上昇させるようにしてもよい。
【0020】
ここでは、基板として柔らかな材質を用い、そこに形成したくぼみにマイクロビーズを固定する例について説明したが、その他の固定方法としては、くぼみを形成した平板基板の材質と、マイクロビーズの材質の温度による膨張や収縮の作用により、相互の膨張、収縮の関係を利用することで、マイクロビーズをくぼみに固定する方法がある。
【0021】
図3は、表面に異なるサンプルをコーティングした複数種類のマイクロビーズを効率よく基板上の一定の位置に配置してマイクロアレイを作製することのできる装置の一例を示す図である。
【0022】
ビーズ埋め込み式マイクロアレイ用の複数の基板32は支持台31上に配置されている。支持台31は、Y方向駆動部34によってY方向に移動可能になっている。支持台31の横に配置されたマイクロタイタープレート33の各ウェルには、各種の生体高分子を結合させたマイクロビーズが所定の規則に従って配列されている。複数のキャピラリ管35が取り付けられた移動ヘッド36は、Z方向駆動部37によって上下方向であるZ方向に駆動可能であり、また、X方向駆動部38によってX方向に移動可能になっている。移動ヘッド36は吸排気制御エアポンプを有し、その下方に取り付けられた複数のキャピラリ管35の先端からの吸気・排気を制御する。また、超音波洗浄ユニット41及び吸引乾燥ユニット42が設けられている。X方向駆動部38、Y方向駆動部34、Z方向駆動部37、移動ヘッド36内の吸排気制御エアポンプ、超音波洗浄ユニット41及び吸引乾燥ユニット42は、ディスプレイ40が接続された制御ユニット39によって制御される。
【0023】
ビーズ埋め込み式マイクロアレイの作製に当たっては、X方向駆動部38によって移動ヘッド36がマイクロタイタープレート33の上方に移動する。その後、Z方向駆動部37によって下降され、移動ヘッド36内の吸排気制御エアポンプによって吸気・排気を制御される複数のキャピラリ管35により、マイクロタイタープレート33中のサンプル結合マイクロビーズは配列どおりにキャピラリ管群によりピックアップされる。
【0024】
サンプル結合マイクロビーズをピックアップした複数のキャピラリ管35は指定された基板32上に移動し、図2にて説明した方法により、それぞれの先端に保持しているマイクロビーズを基板32上に配列どおりに固定する。マイクロビーズを固定する基板32及びその基板上での位置は、支持台31をY方向に駆動し、基盤のY方向位置を決定するY方向駆動部34、及び移動ヘッド36をX方向に駆動し各キャピラリ管35のX方向位置を決定するX方向駆動部38によって決められる。マイクロビーズを固定後のキャピラリ管は、超音波洗浄ユニット41により超音波洗浄と流水洗浄を受け、吸引乾燥ユニット42により真空乾燥される。こうして清浄な状態に戻されたキャピラリ管35は、基板32上に指定されたとおりのマイクロビーズの配列ができるまで、前記の作業を繰り返す。以上の作業は制御ユニット39によってプログラミングの指示どおりに制御される。
【0025】
このようにして、表面に均一にサンプルが付着した安価なビーズと、安価な基板を組み合わせ、ピン方式を用いるよりも形状が優れた、表面サンプル濃度が均一なマイクロアレイを作製することが可能となる。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、均一な形状で、濃度が均一なサンプルが配置されたマイクロアレイが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるビーズ埋め込み式マイクロアレイの一例を示す模式図。
【図2】基板上にマイクロビーズを配置、固定する方法の一例を説明する模式図。
【図3】マイクロアレイ作製装置の一例を示す図。
【符号の説明】
10:マイクロアレイ、11:基板、12:マイクロビーズ、21:基板、22:くぼみ、23:容器、24:マイクロビーズ、25:キャピラリ管、31:支持台、32:基板、33:マイクロタイタープレート、34:Y方向駆動部、35:キャピラリ管、36:移動ヘッド、37:Z方向駆動部、38:X方向駆動部、39:制御ユニット、40:ディスプレイ、41:超音波洗浄ユニット、42:吸引乾燥ユニット
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に複数種類の生体分子を配置したマイクロアレイ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生化学における遺伝子などの研究では、複数種類のDNA、RNA、たんぱく質等の生体分子からなるサンプル(プローブともいう)をガラスプレートやナイロン又はニトロセルロースメンブレン等の基板にスポットしたマイクロアレイを用いて、ハイブリダイズなどの実験が行われている。マイクロアレイの作成方法には、ピンを使って基板表面に生体分子からなるサンプルを付着させてスポットを形成する方式(例えば、特許文献1)や、細いノズルの先から一定量のサンプルを担体表面に吹きつけるインクジェット方式(例えば、特許文献2)などがある。ピン方式では、溶媒に溶かしたDNAやタンパク質などの高分子サンプルをピン先に付着させ、サンプルの付着したピンを平板基板上に接触させることで、平板基板上に円形のスポットを作成している。
【0003】
ピンには中実の棒状形状をした通常のピンや、中空の形状を有し、そこにサンプルを染み込ませて、先端を平板基板上に接触させる時間と圧力を加減することによってほぼ同量のサンプルを平板基板上に付着させる方式のピンなどがある。ピン方式ではどのような形状のピンを用いるとしても、ピンの先端を平板基板上に接触させることによって、平板基板上に円形のスポットを形成する。このとき作成されるマイクロアレイは、ハイブリダイゼーション結果を画像として読み取る際にサンプル間の誤差を少なくするため、各スポットが完全に円形であって形の歪みや中抜けがないことが望ましい。また、同じ理由により、円形スポット内部でサンプルの濃度むらがないことが望ましい。
【0004】
一方で、近年になってマイクロビーズと呼ばれる微小球体の作成方法(例えば、特許文献3)や、球体表面の生化学的修飾法が開発されており(例えば、特許文献4)、医薬品開発や学術研究で盛んに利用されている。マイクロビーズは、球体であることからサンプルを全面に均一に固定できる点、微粒子であるために溶媒に溶かして研究用チューブ内で扱うことができ、操作が簡便な点などを特徴として持っている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−181837号公報
【特許文献2】
特開2002−116205号公報
【特許文献3】
特開平8−155420号公報
【特許文献4】
特開2003−047485号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
マイクロアレイの作製を行う場合、例えば、ピンを用いてDNA、RNA、タンパク質又はペプチド等のサンプルを、ガラス製の平板基板のような担体に、円形スポットとして高密度に付着させていく方式では、ピン先を平板基板上に接触させる時の圧力、ピンの形状、サンプル粘度、周囲雰囲気の温度、湿度、その他様々な要因により、完全に円形で、円内が均一なサンプル濃度となったスポットを形成することは困難である。ピン方式では、特にピン自体の形状によって、平板基板上に形成されるスポットの形状が大きく左右されるという問題もある。また、平板基板上に形成したスポット内のサンプル濃度は、ピンを接触させる時の状態、溶媒の粘度、溶媒の乾燥過程で大きく変化し、スポット状に形成されたサンプルを例えば蛍光法で検出した際には蛍光の輝度値がスポット内で大きく変化するなどの問題があった。一方、インクジェット方式には、試料を吹き付けた後のノズルのメンテナンス、特に多種類の試料を扱う際のコンタミネーションに気を払わねばならない。また、ピン方式と同じく周囲雰囲気の温・湿度などにも影響を受けるなど問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、基板上に同一形状のスポットが多数形成され、各スポット内のサンプル濃度が均一なマイクロアレイ、及びその作成方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者らは、マイクロビーズ技術を利用することにより、従来完全な円形のスポットとすることが困難であったマイクロアレイ作製方式を、より簡便に真円形に近づける技術を開発した。
【0009】
すなわち、本発明によるマイクロアレイは、平板状の基板と、基板の表面に一部露出するようにして埋め込まれ固定された複数のマイクロビーズとを備え、マイクロビーズは表面に生体分子が結合されていることを特徴とする。基板は埋め込みに適するだけの柔らかさを持っているのが好ましい。ビーズは埋め込む際に破壊されない程度の硬さを持っているのが好ましい。このような観点から、基板は例えばシリコーン製とすることができ、マイクロビーズはガラスもしくはアクリル製とすることができる。また、ガラスあるいはアクリル製のビーズは、表面修飾技術が進んでいることからも好ましい。
【0010】
マイクロビーズは直径が50μmから100μmの球体とすることができる。後述するキャピラリを用いた配列法でマイクロアレイを作製するには、あまり小さなマイクロビーズ(0.5〜10μmクラス)は好ましくない。また大きすぎるビーズ(200μm以上のクラス)もマイクロアレイの意味がなくなるため、好ましくない。
【0011】
本発明によるマイクロアレイ作製方法は、生体分子を粒径が揃った複数のマイクロビーズの表面全体に均一に結合させる工程と、そのマイクロビーズを基板の表面に一部が露出するようにして1箇所に1個づつ埋め込み固定する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明によるマイクロアレイ作製方法は、また、生体分子を粒径が揃った複数のマイクロビーズの表面全体に均一に結合させる工程と、表面に差し渡しがマイクロビーズの直径とほぼ等しく深さがマイクロビーズの半径とほぼ等しい複数のくぼみが整列して設けられた基板を用意する工程と、マイクロビーズを基板のくぼみに押し付け、基板の表面に一部が露出するようにして埋め込み固定する工程とを含むことを特徴とする。マイクロビーズは、内径がマイクロビーズの直径より小さなキャピラリの先端に吸引して基板のくぼみに搬送し、押し付けることで、基板の表面に一部が露出するようにして埋め込み固定することができる。マイクロビーズはガラスあるいはアクリル製とし、基板はシリコーン製とすることができる。生体分子としては、DNA、RNA、タンパク質、ポリアミノ酸又は合成高分子を用いることができる。
【0013】
このように、サンプル生体分子を結合させたマイクロビーズを平板基板上に規則的に配置することで、従来のマイクロアレイよりも高精度な形状で、濃度が均一なサンプルが配置されたマイクロアレイを作製することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施する場合の一形態を図面により具体的に説明する。
図1は本発明によるビーズ埋め込み式マイクロアレイの一例を示す模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はそのAA断面図である。このマイクロアレイ10は、平板状の基板11上に多数のマイクロビーズ12が規則的に配置された構造を有する。基板11は、ガラス、プラスチック、シリコーンゴム(PDMS)、金属などからなる。マイクロビーズ12は、例えば直径が50μm〜100μm程度のガラス製あるいはポリスチレン製の球体であり、図1(b)に示すように基板11の表面に一部分が埋め込まれた状態で固定されている。マイクロビーズ12の表面にはサンプルとして核酸、タンパク質等の生体分子が均一にコーティングされている。イオン性生体分子のマイクロビーズ12への結合は公知の方法、例えばカップリング反応(アミノ基−カルボキシル基)、ビオチン−アビジン結合、アミノ基−スクシニル基結合などによって行われる。
【0015】
次に、本発明によるビーズ埋め込み式マイクロアレイの製造方法について説明する。図2は基板上にマイクロビーズを配置、固定する方法の一例を説明する模式図であり、図は1個のマイクロビーズに着目して、それを基板表面に固定する工程を示している。
【0016】
マイクロアレイ用の基板として、マイクロビーズの直径と同じか、又は僅かに小さい直径で、マイクロビーズの半径と同じ深さの小さなくぼみ22が形成された基板21を用意する。この基板21の作製は、金属やシリコーンなどによって型をつくり、そこにプラスチックやシリコーンゴムなどの原材料を流し込むなどの方法によって行うことができる。ここでは、アルミ素材の簡易金型によって、表面に直径90μm、深さ45μmの半球状のくぼみ22を相互の間隔200μmとして格子状に多数形成したシリコーン(PDMS)製の基板を用意した。シリコーン(PDMS)は、加工が容易でやわらかい材質のため、本発明によるビーズ埋め込み式マイクロアレイ用の基板材料に適している。
【0017】
また、マイクロビーズとして、球体表面をストレプトアビジン修飾された直径100μmのガラス製の球形ビーズを用意した。用意したマイクロビーズは複数の組みに分け、各組のマイクロビーズの表面にそれぞれ異なるサンプルを結合させた。今回は例として、ビオチン標識したオリゴヌクレオチドを各種用意した。各種ビオチン標識オリゴヌクレオチドと、ストレプトアビジン表面修飾マイクロビーズとを互いに混ぜてよく攪拌した後、室温(20〜25℃)で1時間反応させ、ビーズ表面上に均一にオリゴヌクレオチドを配列した。表面にサンプルを均一にコーティングした各種オリゴヌクレオチド結合マイクロビーズ24は、それぞれ別々の容器23に分けて入れておく。
【0018】
マイクロビーズを搬送するための手段としてビーズの直径よりも小さい内径を持つキャピラリ管を用いる。ここでは、内径80μm、外径100μmのガラス製のキャピラリ管25を用いた。キャピラリ管25は、先端から空気を吐き出したり、吸引したりできるようになっている。図2において、キャピラリ管25内に図示した矢印はキャピラリ管内を流れる空気の動きを示したものである。
【0019】
最初に、図2(a)に示すように、サンプルを均一にコーティングしたマイクロビーズ24の入った容器23にキャピラリ管25の先端を近づけ、キャピラリ管25の先端から空気を吸引することによって、キャピラリ管先端に1個のマイクロビーズ24を保持する。先端に1個のマイクロビーズを保持したら、そのまま吸引状態を保って、図2(b)に示すように、キャピラリ管25を基板21に設けられたくぼみ22の上方に移動する。その後、図2(c)に示すように、キャピラリ管25を基板21に向けて下降し、先端に保持しているマイクロビーズ24をくぼみ22上に押し付け、固定する。基板材料として用いたシリコーン(PDMS)はやわらかい材質であるため、その表面に形成されたくぼみにマイクロビーズを押し付けると、マイクロビーズはくぼみに挟まれ、固定される。次に、キャピラリ管25による空気の吸引を停止し、又は僅かに吐き出すことで、キャピラリ先端に保持していたマイクロビーズを解放し、くぼみに固定する。最後に、図2(d)に示すように、基板21の表面からキャピラリ管25を上昇させる。このとき、キャピラリ管25から空気を吐き出しながら上昇させるようにしてもよい。
【0020】
ここでは、基板として柔らかな材質を用い、そこに形成したくぼみにマイクロビーズを固定する例について説明したが、その他の固定方法としては、くぼみを形成した平板基板の材質と、マイクロビーズの材質の温度による膨張や収縮の作用により、相互の膨張、収縮の関係を利用することで、マイクロビーズをくぼみに固定する方法がある。
【0021】
図3は、表面に異なるサンプルをコーティングした複数種類のマイクロビーズを効率よく基板上の一定の位置に配置してマイクロアレイを作製することのできる装置の一例を示す図である。
【0022】
ビーズ埋め込み式マイクロアレイ用の複数の基板32は支持台31上に配置されている。支持台31は、Y方向駆動部34によってY方向に移動可能になっている。支持台31の横に配置されたマイクロタイタープレート33の各ウェルには、各種の生体高分子を結合させたマイクロビーズが所定の規則に従って配列されている。複数のキャピラリ管35が取り付けられた移動ヘッド36は、Z方向駆動部37によって上下方向であるZ方向に駆動可能であり、また、X方向駆動部38によってX方向に移動可能になっている。移動ヘッド36は吸排気制御エアポンプを有し、その下方に取り付けられた複数のキャピラリ管35の先端からの吸気・排気を制御する。また、超音波洗浄ユニット41及び吸引乾燥ユニット42が設けられている。X方向駆動部38、Y方向駆動部34、Z方向駆動部37、移動ヘッド36内の吸排気制御エアポンプ、超音波洗浄ユニット41及び吸引乾燥ユニット42は、ディスプレイ40が接続された制御ユニット39によって制御される。
【0023】
ビーズ埋め込み式マイクロアレイの作製に当たっては、X方向駆動部38によって移動ヘッド36がマイクロタイタープレート33の上方に移動する。その後、Z方向駆動部37によって下降され、移動ヘッド36内の吸排気制御エアポンプによって吸気・排気を制御される複数のキャピラリ管35により、マイクロタイタープレート33中のサンプル結合マイクロビーズは配列どおりにキャピラリ管群によりピックアップされる。
【0024】
サンプル結合マイクロビーズをピックアップした複数のキャピラリ管35は指定された基板32上に移動し、図2にて説明した方法により、それぞれの先端に保持しているマイクロビーズを基板32上に配列どおりに固定する。マイクロビーズを固定する基板32及びその基板上での位置は、支持台31をY方向に駆動し、基盤のY方向位置を決定するY方向駆動部34、及び移動ヘッド36をX方向に駆動し各キャピラリ管35のX方向位置を決定するX方向駆動部38によって決められる。マイクロビーズを固定後のキャピラリ管は、超音波洗浄ユニット41により超音波洗浄と流水洗浄を受け、吸引乾燥ユニット42により真空乾燥される。こうして清浄な状態に戻されたキャピラリ管35は、基板32上に指定されたとおりのマイクロビーズの配列ができるまで、前記の作業を繰り返す。以上の作業は制御ユニット39によってプログラミングの指示どおりに制御される。
【0025】
このようにして、表面に均一にサンプルが付着した安価なビーズと、安価な基板を組み合わせ、ピン方式を用いるよりも形状が優れた、表面サンプル濃度が均一なマイクロアレイを作製することが可能となる。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、均一な形状で、濃度が均一なサンプルが配置されたマイクロアレイが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるビーズ埋め込み式マイクロアレイの一例を示す模式図。
【図2】基板上にマイクロビーズを配置、固定する方法の一例を説明する模式図。
【図3】マイクロアレイ作製装置の一例を示す図。
【符号の説明】
10:マイクロアレイ、11:基板、12:マイクロビーズ、21:基板、22:くぼみ、23:容器、24:マイクロビーズ、25:キャピラリ管、31:支持台、32:基板、33:マイクロタイタープレート、34:Y方向駆動部、35:キャピラリ管、36:移動ヘッド、37:Z方向駆動部、38:X方向駆動部、39:制御ユニット、40:ディスプレイ、41:超音波洗浄ユニット、42:吸引乾燥ユニット
Claims (8)
- 平板状の基板と、
前記基板の表面に一部露出するようにして埋め込まれ固定された複数のマイクロビーズとを備え、
前記マイクロビーズは表面に生体分子が結合されていることを特徴とするマイクロアレイ。 - 請求項1記載のマイクロアレイにおいて、前記基板はシリコーン製であり、前記マイクロビーズはガラスもしくはアクリル製であることを特徴とするマイクロアレイ。
- 請求項1又は2記載のマイクロアレイにおいて、前記マイクロビーズは直径が50μmから100μmの球体であることを特徴とするマイクロアレイ。
- 生体分子を粒径が揃った複数のマイクロビーズの表面全体に均一に結合させる工程と、
前記マイクロビーズを基板の表面に一部が露出するようにして1箇所に1個づつ埋め込み固定する工程と
を含むことを特徴とするマイクロアレイ作製方法。 - 生体分子を粒径が揃った複数のマイクロビーズの表面全体に均一に結合させる工程と、
表面に差し渡しが前記マイクロビーズの直径とほぼ等しく深さが前記マイクロビーズの半径とほぼ等しい複数のくぼみが整列して設けられた基板を用意する工程と、
前記マイクロビーズを前記基板の前記くぼみに押し付け、前記基板の表面に一部が露出するようにして埋め込み固定する工程と
を含むことを特徴とするマイクロアレイ作製方法。 - 請求項5記載のマイクロアレイ作製方法において、前記マイクロビーズを内径が前記マイクロビーズの直径より小さなキャピラリの先端に吸引して前記基板の前記くぼみに搬送し、押し付けることを特徴とするマイクロアレイ作製方法。
- 請求項5又は6記載のマイクロアレイ作製方法において、前記マイクロビーズはガラスあるいはアクリル製であり、前記基板はシリコーン製であることを特徴とするマイクロアレイ作製方法。
- 請求項5〜7のいずれか1項記載のマイクロアレイ作製方法において、前記生体分子はDNA、RNA、タンパク質、ポリアミノ酸又は合成高分子であることを特徴とするマイクロアレイ作製方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003165503A JP2005003449A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | マイクロアレイ及びその作製方法 |
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JP2003165503A JP2005003449A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | マイクロアレイ及びその作製方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2005003449A true JP2005003449A (ja) | 2005-01-06 |
Family
ID=34091964
Family Applications (1)
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JP2003165503A Pending JP2005003449A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | マイクロアレイ及びその作製方法 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2005003449A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107002071A (zh) * | 2014-11-27 | 2017-08-01 | 株式会社日立高新技术 | 光点阵列基板、其制造方法、核酸聚合物解析方法以及装置 |
-
2003
- 2003-06-10 JP JP2003165503A patent/JP2005003449A/ja active Pending
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CN107002071A (zh) * | 2014-11-27 | 2017-08-01 | 株式会社日立高新技术 | 光点阵列基板、其制造方法、核酸聚合物解析方法以及装置 |
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