【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子材料表面にダイヤモンドライクカーボン(以下「DLC」という)の膜を形成する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
DLCの一種である水素含有非晶炭素膜(a−C:H films)は、超硬度、低摩擦性、耐摩耗性、耐腐食性、耐凝着性などの特性を有しているので、コーティング膜として、幅広い分野で使用されている。この様な使用例としては、電子部品、磁気ヘッド、ハードディスクなどの保護膜;切削工具、金型の表面層などの形態が挙げられる。
【0003】
従来、DLC膜は、主に金属表面に形成されていたが、最近、高分子基材表面にDLC膜を形成することにより、その優れた特性を活用する技術が発表されている。例えば、摺動性向上のために、ゴム製O−リング表面にDLC膜を形成する技術(非特許文献1)、ガスバリア性を改善するとともに、低分子有機化合物の吸着を阻止することを目的として、ペットボトルなどのプラスチック容器の内面にDLC膜を形成する技術(特許文献1)などが提案されている。しかしながら、耐熱性に優れた金属基材とは異なり、耐熱性に劣る高分子基材には、製膜技術とその条件に制約があり、また、高分子の種類によっては、DLC膜が基材と十分に密着しないため、良好な製膜ができない場合がある。例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シリコンゴムなどに対しては、実用に耐えるDLC膜は形成することはできない。
【0004】
【非特許文献1】第5回「トライボコーティングの現状と将来」シンポジウム予稿集(2003年2月25日)、トライボコーティング技術研究会、pp65−67
【0005】
【特許文献1】特開平10−226884号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、高分子基材表面に密着性に優れたDLC膜を形成する技術を提供することを主な目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意研究を行った結果、高分子基材表面に特定の条件下に炭素中間層膜を形成した後、DLC膜を形成する場合には、その目的を達成しうることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の高分子基材表面にDLC膜を形成する方法を提供する。
1.高分子基材表面にダイヤモンドライクカーボン膜を形成する方法において、
(1)高分子基材を、メタン−アルゴン混合ガスを用いるCVDプラズマ処理に供して、炭素中間層膜を形成させる工程、および
(2)炭素中間層膜を形成させた高分子基材を、炭化水素含有ガスを用いるCVDプラズマ処理に供して、ダイヤモンドライクカーボン膜を形成させる工程
を備えたことを特徴とする方法。
2.工程(1)において、メタン含有量が10〜80%(容積比)であるメタン−アルゴン混合ガスを用いる上記項1に記載の方法。
3.工程(1)において、メタン含有量が10〜50%(容積比)であるメタン−アルゴン混合ガスを用いる上記項2に記載の方法。
4.工程(2)において、炭化水素含有量が10〜100%(容積比)である炭化水素含有ガスを用いる上記項1に記載の方法。
5.工程(2)において、炭化水素含有量が25〜100%(容積比)である炭化水素含有ガスを用いる上記項4に記載の方法。
6.高分子基材が、ポリカーボネート、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリ塩化ビニルおよびポリフェニレンサルファイドからなる群から選ばれる1種である上記項1に記載の方法。
7.CVDプラズマ処理に際し、ガス圧力を所定値に維持した状態で、アルゴン含有量の減少と水素含有量の増加とを同時に行いつつ、工程(1)から工程(2)への移行を連続的に行うことにより、DLC膜の組成を傾斜的に変化させる上記項1に記載の方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明方法を適用できる高分子基材の材料としては、ポリカーボネート、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイドなどが例示される。
【0010】
本発明方法を適用できる高分子基材の形態は、特に制限されない。より具体的には、それぞれの材料と用途とに応じて、シート状、フィルム状、ボトル状、リング状、シリンダー状、パイプ状、レンズ状の形態が例示される。
【0011】
本発明においては、必要ならば、予め高分子基材を低温プラズマ処理などに供することにより、清浄化(或いはエッチング)処理しておくことができる。さらに必要ならば、清浄化処理に先立ち、常法に従って、アルコール洗浄などによる基材の脱脂を行っても良い。低温プラズマ処理による清浄化処理は、Ar、H2、N2、He、CF4などの少なくとも1種を用いる公知の高周波プラズマ処理法、マイクロ波プラズマ処理法などにより、行うことができる。すなわち、高分子基材を熱的に劣化させない温度(高分子の種類により定まる)において、ガス圧力を10〜150Pa程度(より好ましくは13〜135Pa程度)に保持しつつ、行う。この低温プラズマ処理により、高分子基材の高度の清浄化と表面修飾とが行われる。
【0012】
次いで、必要に応じて上記の前処理工程により清浄化処理された高分子基材を、メタン−アルゴン混合ガスを用いるCVDプラズマ処理(工程(1))に供する。工程(1)は、上記前処理工程において使用したものと同様のプラズマ発生装置を用いて、同様の温度および圧力条件下に行うことができる。工程(2)におけるメタン−アルゴン混合ガス中のメタン含有量は、通常10〜80容量%程度であり、より好ましくは20〜50容量%程度である。この工程(2)により、高分子基材表面には、基材との密着性に極めて優れた炭素中間層が形成される。この炭素中間層は、主としてアモルファスカーボンからなっている。炭素中間層の厚さは、最終製品の用途などによって異なるが、通常10〜1000nm程度であり、より好ましくは20〜500nm程度である。炭素中間層の厚さは、混合ガス中のメタン含有量(メタン分圧)、CVDプラズマ処理における条件(温度、圧力、時間)などにより、制御することができる。
【0013】
次いで、工程(1)により炭素中間層を形成された高分子基材を、炭化水素ガス或いは炭化水素ガスと水素との混合ガスを用いるCVDプラズマ処理(工程(2))に供する。工程(2)は、上記工程(1)において使用したものと同様のプラズマ発生装置を用いて、同様の温度および圧力条件下に行うことができる。炭化水素としては、メタン、エタン、エチレン、アセチレンなどが挙げられる。工程(1)から工程(2)への移行は、雰囲気ガス圧力を所定値に維持した状態で、アルゴン含有量を減少させつつ、水素含有量を増大させることにより、プラズマ処理操作を中断することなく、連続的に行うことができる。この場合には、炭素中間層からDLC層までの構造と物性とを連続的に変化させた“傾斜性機能膜”を形成することができる。この傾斜性機能膜においては、炭素中間層(下層)とDLC層(上層)との間に明確な界面が存在しないので、DLC膜と高分子基材との密着性がさらに向上する。工程(2)の最終段階における炭化水素含有ガス中の炭化水素含有量は、10〜100 容量%程度であり、より好ましくは25〜100容量%程度である。この工程(2)により、高分子基材の最表面には、所望の高硬度のDLC層が形成される。DLC層の厚さも、最終製品の用途などによって任意に制御できる。DLC層の厚さは、特に制限されるものではないが、通常10〜1000nm程度であり、より好ましくは20〜500nm程度である。DLC層の厚さも、炭化水素含有ガス中の炭化水素含有量(炭化水素ガス分圧)、CVDプラズマ処理における諸条件(温度、圧力、時間など)などにより、制御することができる。
【0014】
【発明の効果】
本発明方法により形成されたDLC層は、その本来の優れた諸特性(超硬度、低摩擦性、高い耐摩耗性、高い耐食性、凝着防止性など)を備えているのみならず、高分子基材に対する高度の密着性を発揮する。従って、DLC層を設けた高分子材料の応用分野を大幅に拡大することができる。
【0015】
【実施例】
以下に、実施例を示し、本発明の特徴とするところをさらに明確にする。
【0016】
実施例1
前処理として、試料(試験材料)としてのシート状ポリカーボネート(50mm×50mm×1mm)をエタノールに浸漬して、超音波洗浄機((株)カイショー製、“SONO CLEANER 50Z”)を用いて、10分間超音波洗浄した。
【0017】
次いで、低温アルゴンプラズマ処理により、ポリカーボネート試料表面のクリーニングおよびエッチングによる表面修飾を行った。すなわち、低温プラズマ処理に際しては、13.56 MHzのRF高周波を用いる平行平板電極型装置を使用して、両電極(145 mm×195 mm)の間の距離を80 mmに固定し、電極を水冷しながら、試料をホット側電極板(RF電源側)に置き、プラズマ処理した。アルゴンガスは、マスフローコントローラによってガス流量を調整しつつ導入し、その圧力は、隔膜式のバラトロンを使用して調整した。アルゴンプラズマ処理は、RF出力300 W、26.7Paの圧力下で5分間行った。
【0018】
その後、導入ガスをメタン:アルゴン=1:1の混合ガスに切り替え、上記と同様の出力および圧力において30分間プラズマ処理を行うことにより、試料の表面に炭素中間層膜を形成した。
【0019】
その後、導入ガスをメタン−水素混合ガスに切り替えて、上記と同様の出力および圧力において30分間プラズマ処理を行うことにより、炭素中間層膜表面に硬質なDLC膜を作製した。
【0020】
実施例2
試料としてシリコンゴムのシート(JIS B2401 4種C相当;50mm×50mm×2mm)を使用する以外は、実施例1と同様の手法により、試料上に炭素中間層およびDLC膜を順次形成した。
【0021】
比較例1
メタン−アルゴン混合ガスを用いる炭素中間層膜を形成しない以外は、実施例1と同様の手法(但し、処理時間は60分とした)により、ポリカーボネート試料表面に直接DLC膜を形成した。
【0022】
比較例2
メタン−アルゴン混合ガスを用いる炭素中間層膜を形成しない以外は、実施例2と同様の手法(但し、処理時間は60分とした)により、シリコンゴム試料表面に直接DLC膜を形成した。
【0023】
比較例3
実施例1と同様の手法により、導入ガスをメタン−アルゴン混合ガスのみとして(但し、処理時間は60分とした)、ポリカーボネート試料表面に炭素膜を形成した。
【0024】
試験例1
実施例1〜2ならびに比較例1により形成された各種膜の試料に対する密着性を次の2つの方法で測定した。
【0025】
(1)まず、膜を形成した各試料をエタノールに浸漬した状態で、超音波洗浄した。超音波洗浄は、実施例1で試験材料の前処理に使用したと同様の機器を使用した。
【0026】
その結果、実施例1および実施例2による試料では、DLC膜の剥離は認められなかった。これに対し、比較例1および比較例2による試料では、作製した膜が完全に剥離した。
【0027】
(2)次に、軸受鋼製のピンを使用するピンオンフラット型の摺動性試験機を用いて、荷重0.5 N、速度20mm/minの条件下に、7500回摺動試験を繰り返し行った後、摩擦係数の変化を測定した。なお、使用したピンオンフラット型の摺動性試験機の具体例は、例えば、「材料」(J. Soc. Mat. Sci., Japan), Vol. 42, No. 479, pp. 997−1003, Aug. 1993 に示されている。
【0028】
図1は、未処理のポリカーボネートシートについての結果と対比して、実施例1および比較例1で得られた試料による試験結果を示す。
【0029】
未処理のポリカーボネート試料の摩擦係数は、0.6以上で、ほぼ一定である。実施例1による試料の摩擦係数は、緩やかな増大傾向を示すものの、0.3以下にとどまっている。これに対し、炭素中間層を形成しない比較例1による試料は、摺動回数が少ない段階から摩擦係数が大きくなっており、作製したDLC膜が剥離していることがわかる。
【0030】
また、図2は未処理のシリコンゴムシートによる結果と対比して、実施例2で得られた試料による試験結果を示す。
【0031】
未処理のシリコンゴムシートの摩擦係数は0.9以上である。これに対し、実施例2による試料の摩擦係数は約0.3であり、その表面に密着性の高いDLC膜が作製できていることがわかる。
【0032】
なお、比較例2による試料では、その表面に粉体が堆積するだけで膜が形成されなかったので、摺動試験は行わなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および比較例1で得られた試料の摺動摩擦特性を、膜形成を行わない試料(ポリカーボネートシート)の結果と対比して示すグラフである。
【図2】実施例2で得られた試料の摺動摩擦特性を、膜形成を行わない試料(シリコンゴムシート)の結果と対比して示すグラフである。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a technique for forming a film of diamond-like carbon (hereinafter referred to as “DLC”) on the surface of a polymer material.
[0002]
[Prior art]
A hydrogen-containing amorphous carbon film (aC: H films), which is a type of DLC, has properties such as super hardness, low friction, wear resistance, corrosion resistance, and adhesion resistance. As a coating film, it is used in a wide range of fields. Examples of such use include forms of protective films for electronic parts, magnetic heads, hard disks, etc .; cutting tools, mold surface layers, and the like.
[0003]
Conventionally, a DLC film has been mainly formed on a metal surface, but recently, a technique for utilizing the excellent characteristics by forming a DLC film on the surface of a polymer substrate has been announced. For example, for the purpose of improving the slidability, a technique for forming a DLC film on the surface of a rubber O-ring (Non-Patent Document 1), improving gas barrier properties, and preventing adsorption of low molecular organic compounds. A technique of forming a DLC film on the inner surface of a plastic container such as a plastic bottle (Patent Document 1) has been proposed. However, unlike metal substrates with excellent heat resistance, polymer substrates with inferior heat resistance have limitations in film forming technology and conditions, and depending on the type of polymer, DLC film is a substrate. In some cases, good film formation may not be possible. For example, a DLC film that can withstand practical use cannot be formed on polycarbonate, acrylic resin, silicon rubber, or the like.
[0004]
[Non-Patent Document 1] Proceedings of the 5th "Present and Future of Tribo Coating" Symposium (February 25, 2003), Tribo Coating Technology Study Group, pp 65-67
[0005]
[Patent Document 1] Japanese Patent Application Laid-Open No. 10-226884
[Problems to be solved by the invention]
Therefore, the main object of the present invention is to provide a technique for forming a DLC film having excellent adhesion on the surface of a polymer substrate.
[0007]
[Means for Solving the Problems]
In order to solve the above-mentioned problems, the present inventor has conducted intensive research. As a result, after forming a carbon interlayer film on a polymer substrate surface under specific conditions, a DLC film is formed. It was found that the purpose can be achieved.
[0008]
That is, the present invention provides the following method for forming a DLC film on the surface of a polymer substrate.
1. In a method of forming a diamond-like carbon film on the surface of a polymer substrate,
(1) A step of subjecting the polymer substrate to a CVD plasma treatment using a methane-argon mixed gas to form a carbon interlayer film, and (2) a polymer substrate having the carbon interlayer film formed thereon, A method comprising a step of forming a diamond-like carbon film by subjecting to a CVD plasma treatment using a hydrocarbon-containing gas.
2. Item 2. The method according to Item 1, wherein in step (1), a methane-argon mixed gas having a methane content of 10 to 80% (volume ratio) is used.
3. Item 3. The method according to Item 2, wherein in step (1), a methane-argon mixed gas having a methane content of 10 to 50% (volume ratio) is used.
4). Item 2. The method according to Item 1, wherein in step (2), a hydrocarbon-containing gas having a hydrocarbon content of 10 to 100% (volume ratio) is used.
5. Item 5. The method according to Item 4, wherein a hydrocarbon-containing gas having a hydrocarbon content of 25 to 100% (volume ratio) is used in the step (2).
6). Item 2. The method according to Item 1, wherein the polymer substrate is one selected from the group consisting of polycarbonate, silicon rubber, fluororubber, polyethylene terephthalate, polyethylene, polypropylene, polyimide, polyamide, polyvinyl chloride, and polyphenylene sulfide.
7. During the CVD plasma treatment, the transition from the step (1) to the step (2) is continuously performed while simultaneously reducing the argon content and increasing the hydrogen content while maintaining the gas pressure at a predetermined value. The method according to Item 1, wherein the composition of the DLC film is changed in a gradient manner.
[0009]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Examples of the polymer substrate material to which the method of the present invention can be applied include polycarbonate, silicon rubber, fluororubber, polyethylene terephthalate, polyethylene, polypropylene, polyimide, polyamide, polyvinyl chloride, polyphenylene sulfide, and the like.
[0010]
The form of the polymer substrate to which the method of the present invention can be applied is not particularly limited. More specifically, according to each material and use, the form of a sheet form, a film form, a bottle form, a ring form, a cylinder form, a pipe form, and a lens form is illustrated.
[0011]
In the present invention, if necessary, the polymer substrate can be cleaned (or etched) in advance by subjecting it to a low temperature plasma treatment or the like. Further, if necessary, the base material may be degreased by alcohol washing or the like according to a conventional method prior to the cleaning treatment. The cleaning treatment by the low temperature plasma treatment can be performed by a known high-frequency plasma treatment method, microwave plasma treatment method, or the like using at least one of Ar, H 2 , N 2 , He, CF 4 and the like. That is, it is performed while maintaining the gas pressure at about 10 to 150 Pa (more preferably about 13 to 135 Pa) at a temperature at which the polymer base material is not thermally deteriorated (determined by the type of polymer). By this low-temperature plasma treatment, the polymer substrate is highly purified and surface-modified.
[0012]
Next, the polymer base material that has been cleaned in the pretreatment step as described above is subjected to a CVD plasma treatment (step (1)) using a methane-argon mixed gas. Step (1) can be performed under the same temperature and pressure conditions using the same plasma generator as that used in the pretreatment step. The methane content in the methane-argon mixed gas in the step (2) is usually about 10 to 80% by volume, more preferably about 20 to 50% by volume. By this step (2), a carbon intermediate layer having excellent adhesion to the substrate is formed on the surface of the polymer substrate. This carbon intermediate layer is mainly made of amorphous carbon. The thickness of the carbon intermediate layer varies depending on the use of the final product, but is usually about 10 to 1000 nm, and more preferably about 20 to 500 nm. The thickness of the carbon intermediate layer can be controlled by the methane content (methane partial pressure) in the mixed gas, the conditions (temperature, pressure, time) in the CVD plasma treatment, and the like.
[0013]
Next, the polymer base material on which the carbon intermediate layer is formed in the step (1) is subjected to a CVD plasma treatment (step (2)) using a hydrocarbon gas or a mixed gas of hydrocarbon gas and hydrogen. Step (2) can be performed under the same temperature and pressure conditions using the same plasma generator as that used in step (1). Examples of the hydrocarbon include methane, ethane, ethylene, acetylene and the like. The transition from step (1) to step (2) is to interrupt the plasma processing operation by increasing the hydrogen content while decreasing the argon content while maintaining the atmospheric gas pressure at a predetermined value. And can be performed continuously. In this case, a “gradient functional film” in which the structure and physical properties from the carbon intermediate layer to the DLC layer are continuously changed can be formed. In this functionally gradient film, since there is no clear interface between the carbon intermediate layer (lower layer) and the DLC layer (upper layer), the adhesion between the DLC film and the polymer substrate is further improved. The hydrocarbon content in the hydrocarbon-containing gas in the final stage of the step (2) is 10 to 100. It is about volume%, More preferably, it is about 25-100 volume%. By this step (2), a desired high hardness DLC layer is formed on the outermost surface of the polymer substrate. The thickness of the DLC layer can also be arbitrarily controlled depending on the use of the final product. The thickness of the DLC layer is not particularly limited, but is usually about 10 to 1000 nm, more preferably about 20 to 500 nm. The thickness of the DLC layer can also be controlled by the hydrocarbon content (hydrocarbon gas partial pressure) in the hydrocarbon-containing gas, various conditions (temperature, pressure, time, etc.) in the CVD plasma treatment.
[0014]
【The invention's effect】
The DLC layer formed by the method of the present invention has not only the original excellent properties (super hardness, low friction, high wear resistance, high corrosion resistance, anti-adhesion, etc.), but also a polymer Demonstrates a high degree of adhesion to the substrate. Therefore, the application field of the polymer material provided with the DLC layer can be greatly expanded.
[0015]
【Example】
Hereinafter, examples will be shown to further clarify the features of the present invention.
[0016]
Example 1
As a pretreatment, a sheet-like polycarbonate (50 mm × 50 mm × 1 mm) as a sample (test material) is immersed in ethanol, and an ultrasonic cleaner (“SONO CLEANER 50Z” manufactured by Kaisho Co., Ltd.) is used. Sonicate for minutes.
[0017]
Next, the surface of the polycarbonate sample was cleaned and etched by low-temperature argon plasma treatment. That is, in the low temperature plasma treatment, a parallel plate electrode type apparatus using an RF high frequency of 13.56 MHz is used, the distance between both electrodes (145 mm × 195 mm) is fixed to 80 mm, and the electrode is water-cooled. Then, the sample was placed on the hot side electrode plate (RF power source side) and plasma-treated. Argon gas was introduced while adjusting the gas flow rate with a mass flow controller, and the pressure was adjusted using a diaphragm type baratron. The argon plasma treatment was performed for 5 minutes under an RF output of 300 W and a pressure of 26.7 Pa.
[0018]
Thereafter, the introduced gas was switched to a mixed gas of methane: argon = 1: 1, and plasma treatment was performed for 30 minutes at the same output and pressure as above, thereby forming a carbon interlayer film on the surface of the sample.
[0019]
Thereafter, the introduced gas was switched to a methane-hydrogen mixed gas, and a plasma treatment was performed for 30 minutes at the same output and pressure as described above, thereby producing a hard DLC film on the surface of the carbon interlayer film.
[0020]
Example 2
A carbon intermediate layer and a DLC film were sequentially formed on the sample in the same manner as in Example 1 except that a silicon rubber sheet (equivalent to JIS B2401 4 type C; 50 mm × 50 mm × 2 mm) was used as the sample.
[0021]
Comparative Example 1
A DLC film was directly formed on the surface of the polycarbonate sample by the same method as in Example 1 (however, the processing time was 60 minutes) except that the carbon intermediate layer film using a methane-argon mixed gas was not formed.
[0022]
Comparative Example 2
A DLC film was directly formed on the surface of the silicon rubber sample by the same method as in Example 2 (however, the processing time was 60 minutes) except that the carbon intermediate layer film using a methane-argon mixed gas was not formed.
[0023]
Comparative Example 3
A carbon film was formed on the surface of the polycarbonate sample by the same method as in Example 1 with only the methane-argon mixed gas (however, the treatment time was 60 minutes).
[0024]
Test example 1
The adhesion of the various films formed in Examples 1 and 2 and Comparative Example 1 to the sample was measured by the following two methods.
[0025]
(1) First, each sample on which a film was formed was ultrasonically cleaned in a state of being immersed in ethanol. For ultrasonic cleaning, the same equipment used in Example 1 for pretreatment of the test material was used.
[0026]
As a result, in the samples according to Example 1 and Example 2, peeling of the DLC film was not observed. On the other hand, in the samples according to Comparative Example 1 and Comparative Example 2, the produced film was completely peeled off.
[0027]
(2) Next, using a pin-on-flat slidability tester that uses bearing steel pins, the sliding test was repeated 7500 times under the conditions of a load of 0.5 N and a speed of 20 mm / min. After doing, the change in coefficient of friction was measured. A specific example of the used pin-on-flat slidability tester is, for example, “Materials” (J. Soc. Mat. Sci., Japan), Vol. 42, no. 479, pp. 997-1003, Aug. 1993.
[0028]
FIG. 1 shows the test results for the samples obtained in Example 1 and Comparative Example 1 in contrast to the results for the untreated polycarbonate sheet.
[0029]
The coefficient of friction of the untreated polycarbonate sample is 0.6 or more and is almost constant. The coefficient of friction of the sample according to Example 1 shows a moderate increasing tendency, but remains below 0.3. On the other hand, the sample according to Comparative Example 1 in which no carbon intermediate layer is formed has a large friction coefficient from the stage where the number of sliding times is small, and it can be seen that the produced DLC film is peeled off.
[0030]
Moreover, FIG. 2 shows the test result by the sample obtained in Example 2 in contrast with the result by an untreated silicon rubber sheet.
[0031]
The coefficient of friction of the untreated silicon rubber sheet is 0.9 or more. On the other hand, the friction coefficient of the sample according to Example 2 is about 0.3, and it can be seen that a DLC film having high adhesion can be produced on the surface.
[0032]
In the sample according to Comparative Example 2, the powder was deposited on the surface and no film was formed. Therefore, the sliding test was not performed.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a graph showing the sliding friction characteristics of samples obtained in Example 1 and Comparative Example 1 in comparison with the results of a sample (polycarbonate sheet) on which no film is formed.
FIG. 2 is a graph showing the sliding friction characteristics of the sample obtained in Example 2 in comparison with the results of a sample (silicon rubber sheet) in which no film is formed.