JP2005001349A - 木質成形品、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】天然木の風合いを活かしつつ、固有の木目を有する木質成形品、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】木肌シート2と支持体3とを貼り合わせる。木肌シート2は、天然木を厚さ0.1〜1mm程度に薄くスライスしたものである。支持体3としては、0.1mm程度の厚みを有するスチロール又はABS等の合成樹脂フィルムを適用できる。木肌シート2を貼り合わせた支持体3に所望の形状を転写する。木肌シート2を貼り合わせた支持体3を、そのまま、又はフッ素シートfの間に挟んだ状態で、樹脂成形金型のキャビティーに挿入し、同キャビティーの支持体3側の空隙に、射出成形機にて可塑性樹脂を射出する。
【選択図】 図1
【解決手段】木肌シート2と支持体3とを貼り合わせる。木肌シート2は、天然木を厚さ0.1〜1mm程度に薄くスライスしたものである。支持体3としては、0.1mm程度の厚みを有するスチロール又はABS等の合成樹脂フィルムを適用できる。木肌シート2を貼り合わせた支持体3に所望の形状を転写する。木肌シート2を貼り合わせた支持体3を、そのまま、又はフッ素シートfの間に挟んだ状態で、樹脂成形金型のキャビティーに挿入し、同キャビティーの支持体3側の空隙に、射出成形機にて可塑性樹脂を射出する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然木により木目模様を醸し出す木質成形品、言い換えれば、木材と合成樹脂との成形複合品に関する。更に、発明は、このような木質成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車内装飾パーツ、建材及び什器、文房具、家電製品、又は家具等の表装パネルとして、合成樹脂の射出成形により得られるパネル本体の表面に、恰も天然木を想起させる木目模様をスクリーン印刷することが広く知られる。これに係る技術が下記の特許文献に開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平08−034097号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スクリーン印刷では、その印刷された表面の肌触りや艶が微妙に天然木と異なり、天然木に見られるような独特の風合いを奏することはできない。また、スクリーン印刷では、予め唯一又は幾つかの木目パターンを準備し、これを繰り返し使用して大量の製品に木目パターンを成型するため、これらの中には酷似したものが多数出来てしまうことになる。このため、製品のオリジナリティーを欠くという難点がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、天然木の風合いを活かしつつ、固有の木目を有する木質成形品、及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る木質成形品は、天然木をスライスして得られる木肌シートを、フィルム状の支持体に貼り合わせ、これらを型押しにより形状成型したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る木質成形品は、天然木をスライスして得られる木肌シートと、フィルム状の支持体と、樹脂成形して得られる樹脂成形部材とを、当該順に積層したことを特徴とする。
【0008】
更に、本発明に係る木質成形品は、前記木肌シートにコーティング処理を施したことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る木質成形品の製造方法は、天然木をスライスして得られる木肌シートを、フィルム状の支持体に貼り合わせるステップと、前記木肌シートを貼り合わせた前記支持体を、樹脂成形金型に挿入するステップと、前記樹脂成形金型の内部に可塑性樹脂を供給することにより、前記支持体に結合する樹脂成形部材を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法は、前記木肌シートを貼り合わせた前記支持体に、型押しにより形状成型するステップを含むことを特徴とする。
【0011】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法は、前記木肌シートにコーティング処理を施すステップを含むことを特徴とする。
【0012】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法は、前記木肌シートを貼り合わせた前記支持体を、複数のフッ素シートの間に挟み込んだ状態で、前記樹脂成形金型に挿入することを特徴とする。前記木肌シートが、人工木又はコルク材をスライスして得られるものであっても良い。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1乃至図4に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る木質成形品1は、天然木をスライスして得られる木肌シート2を、フィルム状の支持体3に貼り合わせ、これらを型押しにより所望の形状を成型したものである。更に、図5乃至図7に示すように、第2の実施の形態に係る木質成形品10は、天然木をスライスして得られる木肌シート2と、フィルム状の支持体3と、合成樹脂を樹脂成形して得られる樹脂成形部材4とを、当該順に積層したものである。
【0014】
木質成形品1,10は、以下の文頭に付した英大文字にて区分した各ステップを、順次実行することにより製造される。また、木質成形品10の構成及び製造方法は、概ね木質成形品1に係る技術を包括している。
【0015】
A:図1に示すように、木肌シート2と支持体3とを貼り合わせる。これらは、着剤等を介して強固に接合することが好ましい。
【0016】
木肌シート2は、天然木又は人工木を厚さ0.1乃至1mm程度にくスライスしたものである。例えば、木肌シート2として、桐、杉等を紙のように薄くスライスして得られる柾目天然木を適用しても良い。ここで、天然木とは、桐、杉、檜、樫、松、楠、楓、香木、又はコルクである。天然木をスライスする一般的な手法としてスライサーを用いることが挙げられる。
【0017】
木肌シート2の表面にはコーティング処理を施しても良い。例えば、木肌シート2の表面に撥水剤を塗布、透明の塗料を塗布、ニスを塗布、又は紫外線反射膜を形成する等しても良い。或いは、透明な合成樹脂又は合成樹脂フィルム11で木肌シート2の表面を被覆しても良い。また、木肌シート2に防腐剤、消臭剤、芳香剤、樟脳、その他の薬剤を浸透させても良い。これらは、防臭又は芳香作用を木肌シート2に付与し、或いは、木肌シート2の防腐処理、防虫処理、抗菌処理、又防黴処理を企図するものである。
【0018】
支持体3としては、0.1〜5mm程度の厚みを有するスチロール又はABS等の合成樹脂フィルムを適用できる。支持体3は強靱で可撓性に優れたものであれば紙でも良いが、和紙のように丈夫なものが望ましい。支持体3の生地は、白色又は透明のような無色彩である他、黒、赤、青、紫、茶、緑、金、銀、灰色であっても良い。このように有色の支持体3を適用した場合、支持体3の色彩が木肌シート2から僅かながら透けて見えるので、木肌シート2の色の深みが一段と増すことになる。
【0019】
B:木肌シート2を貼り合わせた支持体3に、図2に示すようなプレス金型20を用いて型押しする。これにより、木肌シート2及び支持体3に、所望の形状を成型する(プレフォーム)。
【0020】
ここで、所望の形状とは、図3に示すような平面視矩形の凹部12であっても良いが、図4に示すような丸皿又は舟形であっても良い。第1の実施の形態に係る木質成形品1は、これら丸皿又は舟形の形態を完成品としたものである。
【0021】
また、「型押し」とは、木肌シート2及び支持体3を、単にプレス金型20に挟み込んで変形させることに限らず、木肌シート2及び支持体3を加熱しつつこれらを変形させても良い。詳しくは、プレス金型20として、天然木が焦げない程度にヒータ等で加熱可能なホットプレス金型を適用し、木肌シート2及び支持体3を離型させた後、直ちに常温の空気に晒して冷却することにより、これらを塑性変形させる。
【0022】
具体的に、型押しする時間は3乃至4秒間が好ましい。プレス金型20を加熱する温度は、合成樹脂フィルム11で木肌シート2を被覆する場合には、摂氏160乃至200度、望ましくは摂氏180度に設定する。合成樹脂フィルム11を省略する場合は、木肌シート2がプレス金型20に直接触れて焦げないように、摂氏130乃至170度、望ましくは摂氏150度に設定する。
【0023】
以上のように型押しする過程で、プレス金型20のキャビティー21に高温の水蒸気を導入し、これにより、木肌シート2の撓みや伸縮を促すようにしても良い。図2(a)に例示した凹部12は、支持体3に対して落ち込み、木肌シート2に対して突出する形状である。以下の説明は、このような形態を前提として行うが、図中の木肌シート2と木肌シート2のそれぞれの位置を、相互に入れ換えても良い。
【0024】
また、凹部12を形状成型するのに伴って、このコーナ部に沿った形状となるように木肌シート2が湾曲するので、同コーナ部において、木肌シート2が著しく歪むことになる。これに起因して、木肌シート2に割れ又は細かい亀裂が生じるという不具合が起こる場合がある。そこで、同図(b)に示すように、木肌シート2及び支持体3を、2枚のフッ素シートfの間に挟み込み、このままプレス金型20を用いて型押しを実行すると、上記の不具合は解消される。フッ素シートfは、表面が極めて滑らかで物体を良好に滑らせるという性質に優れている。
【0025】
また、プレス金型20の温度を製造現場で厳密に管理するのは難しく、通常は摂氏±25度の範囲で上下するが、フッ素シートfをキャビティー21と木肌シート2との間に介在することで、木肌シート2が高温のキャビティー21に直接触れて焦げるのを確実に防止できる。このように2枚のフッ素シートfで挟み込む例を示したが、フッ素シートfを複数枚重ねて使用しても良い。或いは、木肌シート2を貼り合わせた支持体3の一面のみを1枚のフッ素シートfで被覆することによっても、同様の効果を期待できる。
【0026】
また、木肌シート2の表裏に、それぞれ合成樹脂フィルム11及び支持体3を貼り付けた場合には、この木肌シート2の温度が上昇すると、合成樹脂フィルム11と支持体3によって、木肌シート2に僅かに含まれる水分の蒸発が妨げられる。結果として、合成樹脂フィルム11と木肌シート2の間に気泡が生じる恐れがある。従って、合成樹脂フィルム11の外方へ水蒸気を逃がせるように、合成樹脂フィルム11に多数のピンホールを貫通することが望ましい。
【0027】
C:木肌シート2を貼り合わせて形成した支持体3を、図5に示すように、樹脂成形金型5のキャビティー6に挿入する。
【0028】
この時、キャビティー6の底面に木肌シート2が密接し、キャビティー6の木肌シート2側にのみ空隙を確保する。キャビティー6の寸法、形状、又はこれを樹脂成形金型5に設ける個数等は任意に選択できるものであり、同図はその概念のみを表している。
【0029】
D:支持体3に結合する樹脂成形部材4を樹脂成形する。即ち、キャビティー6の支持体3側の空隙に、図に表れていない射出成形機によって可塑性樹脂を射出する。
【0030】
これにより、キャビティー6の支持体3側が加圧状態の可塑性樹脂によって満たされる。この可塑性樹脂が硬化するのを待てば、樹脂成形部材4が形成される。樹脂成形部材4が支持体3に結合する原理としては、支持体3の表面が樹脂成形部材4に溶着すること、支持体3が繊維組織を有するものであればその繊維の間に上記の可塑性樹脂が浸入して固化すること、或いは、これらの両方が同時に起こること等が考えられる。何れにしても、樹脂成形部材4を支持体3に接着剤を用いて接着する等の手間が不要である。しかも、このような強固な結合を、上記の可塑性樹脂の一度の射出と成形金型5の一度の開閉を実行するだけで完了できるので、当該木質成形品10の製造に要する1サイクル時間を短縮できる。以上に述べた効果は、当該木質成形品10を大量生産する際に一層顕著になる。
【0031】
上記の可塑性樹脂として、ポリカーボネート、アクリル、ABS、又はPET等のような熱可塑性樹脂を適用すれば、これらは射出した後、30乃至60秒程度待てば完全に硬化する。或いは、可塑性樹脂として、フェノール、エポキシ、又はアルキド等のような熱硬化性樹脂を適用しても良い。
【0032】
また、樹脂成形部材4の生地は、白色又は透明のような無色彩の他、黒、赤、青、紫、茶、緑、金、銀、灰色であっても良い。このように有色の樹脂成形部材4を適用した場合に、上記の支持体3の生地が白色又は透明であれば、樹脂成形部材4の色彩が木肌シート2及び支持体3を経て僅かながら透けて見えるので、木肌シート2の色の深みが一段と増すことになる。
【0033】
尚、上記Aのステップにおいて、木肌シート2及び支持体3を貼り合わせる接着剤として、樹脂成形部材4の溶融温度まで加熱してもガスの発生が比較的少ないものが望ましい。例えば、樹脂成形部材4にABSを適用する場合には、アクリル系の接着剤を用いるようにする。
【0034】
また、上記Bのステップにおいて、凹部12の周縁に平らなフランジ部13を残せるように、木肌シート2及び支持体3として、それぞれの外形寸法が凹部12よりもフランジ部13の幅寸法分広いものを適用することが望ましい。これは、図5に示す通り、樹脂成形金型5の可動型51のパーティング面にフランジ部13を沿わせれば、樹脂成形金型5を型締めした際に、フランジ部13が樹脂成形金型5の可動型51と固定型52との間に挟み込まれる。そして、上記Dのステップにおいて、フランジ部13は、可塑性樹脂が支持体3側から木肌シート2側へ浸入するのを確実に遮ることができる。つまり、フランジ部13は、支持体3の表裏を仕切るパッキン材の役割を果たす。
【0035】
E:木肌シート2、支持体3、及び樹脂成形部材4から成る木質成形品10を、樹脂成形金型5から離型させる。
【0036】
上記Bのステップにおいて、フランジ部13を形成した場合には、これが木質成形品10の周縁から延出した状態となるので、図6に示すように、木質成形品10からフランジ部13をカッター等を用いて切除する。この時点で、木質成形品10は完成品となる。或いは、フランジ部13の切除とこの切り口の仕上げを一度に均一にするためには、プレス型で抜く、又は、インサート成形時にフランジ部13を型内カットするようにしても良い。
【0037】
以上に述べた他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様で実施できるものである。例えば、図7に示すように、整理タンス16の表装パネルとして木質成形品10を適用する場合には、木質成形品10は平板状であれば良い。この場合、上記Bのステップを省略し、上記Cのステップにおいて、木肌シート2を貼り合わせた平板状の支持体3を、樹脂成形金型5のキャビティー6に挿入する。
【0038】
また、図に表していないが、樹脂成形金型5のキャビティー6に、天然木の木目間の方向に延びる細い縦溝を彫り込み、この縦溝によって図8に示すような第1のリブ14を、木質成形品10の裏面に成型しても良い。更に、樹脂成形金型5のキャビティー6に、図に表していないが、天然木の木目の長手方向に延びる細い横溝を彫り込み、この横溝によって図8に示すような第2のリブ15を、木質成形品10の裏面に成型しても良い。
【0039】
ここで、木目とは柾目と板目の両方を意味する。木目間とは、木肌シート2の原料である天然木の年輪同士の間隔であり、言い換えれば、天然木の幹の径方向に相当する。木目の長手方向とは、天然木の幹の長手方向に相当する。
【0040】
以上のように、第1,第2のリブ14,15を各々設けた理由は、上記Dのステップにおいて、木肌シート2と樹脂成形部材4との収縮率の差に起因して木質成形品10に内部応力が発生し、木質成形品10が全体として反り返ったり捩じれたりするのを防止するためである。特に、木肌シート2はその木目間の方向に収縮する傾向が強いので、図8に示すように、第1のリブ14を2本以上設けることが望ましい。
【0041】
更に、木質成形品10が全体として反り返ったり捩じれたりするのを確実に防止するには、図5に示すように、樹脂成形金型5に複数のゲート53を設けることが望ましい。この場合、可塑性樹脂が固化する過程で、これが複数のゲート53に向かって同時に収縮するので、複数のゲート53の間で可塑性樹脂が互いに引っ張ることにな。これにより、可塑性樹脂の固化に伴う内部応力が互いに打ち消し合うので、樹脂成形部材の反り返りや捩じれが抑えられる。また、複数のゲート53は、樹脂成形部材4の長手方向に間隔を開けるように配置しても良いが、天然木の木目の長手方向に間隔を開けて配置しても良い。また、ゲート53としては、ピンゲート、フィルムゲート、バルブゲート、又はトンネルゲート等が適用できる。
【0042】
次に、図9に基づいて、本発明の第3の実施の形態に係る木質成形品30の製造方法について説明する。当該製造方法について、既述したA乃至Eのステップと同様の手順については、その説明を省略する。また、以下の文頭に付した英大文字は、既述のステップの区分に対応する。
【0043】
C:図9(a)に示すように、樹脂成形を行うためのブロー成形金型50を準備し、支持体(図中に表れず)と共に木肌シート2を、左右に開型させたブロー成形金型50のキャビティー60の内周面の適所に密着させる。この時、木肌シート2をキャビティー60の内周面に密接し、支持体3は、キャビティー60の内方へ向ける。
【0044】
D:射出成形機のノズル501から可塑性樹脂を筒状又は袋状に押し出す。これを図中の符号502で指している。可塑性樹脂502の内側へ、ノズル501に連通する空気供給路503を経て空気を吹き込む。これにより、同図(b)に示すように、可塑性樹脂502が膨張し、ボトルを象ったキャビティー60の形状が可塑性樹脂502に成型する。この時点で、支持体3が可塑性樹脂502の外周面に結合する。このまま、可塑性樹脂502が硬化するのを待ってから、同図(c)に示すように開型すれば、ボトルラベルとして木肌シート2を貼り付けたボトルである木質成形品30が完成する。
【0045】
【発明の効果】
本発明に係る木質成形品は、木肌シートを支持体に貼り合わせ、これらを型押しして所望の形状に仕上げたものであるため、例えば、使い切りの皿等のように手軽に持ち運べ、特に剛性が求められない製品として最適である。しかも、天然木をスライスして得られる木肌シートは、その表面の肌触りや艶等の点において、天然木の独特の風合いを保持しているので、年々稀少になる天然木の高級感を最小限の製造コストによって奏することができる。また、木肌シートは極めて薄く、当該木質成形品を大量に生産しても、実際に原料として必要とする天然木の量が少なくて済むので、天然木の消費を最小限に抑えることができる。
【0046】
しかも、本発明に係る木質成形品によれば、樹脂成形部材の形成と同時にこれが支持体に結合するので、樹脂成形部材を支持体に接着する等の手間が不要である。しかも、このような樹脂成形部材と支持体強固との結合を、上記の可塑性樹脂の成形を一度実行するだけで完了できるので、当該木質成形品の製造に要する1サイクル時間を短縮できるという顕著な効果を達成できる。このような効果は、当該木質成形品を大量生産する際には一層顕著になり、製造コストの大幅な削減を実現することができる。
【0047】
また、本発明に係る木質成形品は、木肌シートと支持体と樹脂成形部材とを、当該順に積層したものであるため、例えば、乗用車のダッシュボードや部屋の建具を装飾するためのパネルのように、その実用に耐えられる程度の剛性が求められ、又は、ある程度の肉厚が求められる製品として最適である。しかも、木肌シートは天然木をスライスして得られるので、上記と同様の顕著な効果に加え、極めて薄い木肌シートでありながら、当該木質成形品の総てが恰も肉厚の木工製品であるかのような重厚な質感と高級感を奏することができる。
【0048】
更に、本発明に係る木質成形品によれば、木肌シートの模様又はそのパターンは、極めて多様な天然木の木目に依存するので、当該木質成形品を大量に生産しても、その総ての木目模様は互いに異なる。また、同一の天然木から得られる木肌シートが似ているとしても、このようなものが継続して大量に出来ることはない。従って、個々の製品毎の木目模様の違いが顕著であり、一品制作したかのような高級感を奏し、商品価値を一層高揚させるという利点がある。
【0049】
本発明に係る木質成形品の製造方法によれば、木肌シートを支持体に貼り合わせた後に、この支持体に結合する樹脂成形部材を得るようにしているので、天然木から成る木肌シートと樹脂成形部材とを、それぞれの素材の相性に係わらず木肌シート及び樹脂成形部材を、支持体を媒介して強固に結合することができる。従って、当該木質成形品の製造後に木肌シートと樹脂成形部材との収縮率の差に起因して、当該木質成形品に内部応力が発生しても、木肌シートから樹脂成形部材が剥離するのを防止できる。
【0050】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法によれば、木肌シートを貼り合わせた支持体に、型押しにより形状成型することにより、木肌シートと共に支持体を所望の形状に仕上げた後に、これらに樹脂成形部材を積層するので、樹脂成形部材によって木肌シート及び支持体の形状が制約されることがなく、木質成形品の全体としての成形の自由度も大きくなるという利点がある。
【0051】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法において、木肌シートにコーティング処理を施した場合、当該木質成形品が水濡れしたり、或いは屋外で紫外線に常時曝される等しても、このような周囲の過酷な環境から木肌シートを保護し、木肌シートの劣化や変色を防止することができる。
【0052】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法において、木肌シートを貼り合わせた支持体を、複数のフッ素シートの間に挟み込んだ場合、これを樹脂成形金型に挿入して形状成型する過程で、木肌シートが湾曲するのに伴って木肌シートが割れたり、又は木肌シートに細かい亀裂が生じるという不具合を防止できる。従って、型押しによって木肌シートを自由に湾曲することが可能となり、多様な曲面形状を有する製品の造形に幅広く対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る木質成形品の分解斜視図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る木質成形品の型押し工程、及びその変形例の要部を表した断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る木質成形品の一例を表した斜視図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る木質成形品の種々の他例を表した斜視図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る木質成形品を樹脂成形する工程を表した断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る木質成形品を一部破断した斜視図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る木質成形品の使用例を表した分解斜視図。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る木質成形品を一部破断した裏面側の斜視図。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る木質成形品の製造方法を説明する一連の断面図。
【符号の説明】
1,10,30:木質成形品
2:木肌シート
3:支持体
4:樹脂成形部材
5:樹脂成形金型
6,60:キャビティー
11:合成樹脂フィルム
12:凹部
13:フランジ部
f:フッ素シート
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然木により木目模様を醸し出す木質成形品、言い換えれば、木材と合成樹脂との成形複合品に関する。更に、発明は、このような木質成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車内装飾パーツ、建材及び什器、文房具、家電製品、又は家具等の表装パネルとして、合成樹脂の射出成形により得られるパネル本体の表面に、恰も天然木を想起させる木目模様をスクリーン印刷することが広く知られる。これに係る技術が下記の特許文献に開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平08−034097号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スクリーン印刷では、その印刷された表面の肌触りや艶が微妙に天然木と異なり、天然木に見られるような独特の風合いを奏することはできない。また、スクリーン印刷では、予め唯一又は幾つかの木目パターンを準備し、これを繰り返し使用して大量の製品に木目パターンを成型するため、これらの中には酷似したものが多数出来てしまうことになる。このため、製品のオリジナリティーを欠くという難点がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、天然木の風合いを活かしつつ、固有の木目を有する木質成形品、及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る木質成形品は、天然木をスライスして得られる木肌シートを、フィルム状の支持体に貼り合わせ、これらを型押しにより形状成型したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る木質成形品は、天然木をスライスして得られる木肌シートと、フィルム状の支持体と、樹脂成形して得られる樹脂成形部材とを、当該順に積層したことを特徴とする。
【0008】
更に、本発明に係る木質成形品は、前記木肌シートにコーティング処理を施したことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る木質成形品の製造方法は、天然木をスライスして得られる木肌シートを、フィルム状の支持体に貼り合わせるステップと、前記木肌シートを貼り合わせた前記支持体を、樹脂成形金型に挿入するステップと、前記樹脂成形金型の内部に可塑性樹脂を供給することにより、前記支持体に結合する樹脂成形部材を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法は、前記木肌シートを貼り合わせた前記支持体に、型押しにより形状成型するステップを含むことを特徴とする。
【0011】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法は、前記木肌シートにコーティング処理を施すステップを含むことを特徴とする。
【0012】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法は、前記木肌シートを貼り合わせた前記支持体を、複数のフッ素シートの間に挟み込んだ状態で、前記樹脂成形金型に挿入することを特徴とする。前記木肌シートが、人工木又はコルク材をスライスして得られるものであっても良い。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1乃至図4に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る木質成形品1は、天然木をスライスして得られる木肌シート2を、フィルム状の支持体3に貼り合わせ、これらを型押しにより所望の形状を成型したものである。更に、図5乃至図7に示すように、第2の実施の形態に係る木質成形品10は、天然木をスライスして得られる木肌シート2と、フィルム状の支持体3と、合成樹脂を樹脂成形して得られる樹脂成形部材4とを、当該順に積層したものである。
【0014】
木質成形品1,10は、以下の文頭に付した英大文字にて区分した各ステップを、順次実行することにより製造される。また、木質成形品10の構成及び製造方法は、概ね木質成形品1に係る技術を包括している。
【0015】
A:図1に示すように、木肌シート2と支持体3とを貼り合わせる。これらは、着剤等を介して強固に接合することが好ましい。
【0016】
木肌シート2は、天然木又は人工木を厚さ0.1乃至1mm程度にくスライスしたものである。例えば、木肌シート2として、桐、杉等を紙のように薄くスライスして得られる柾目天然木を適用しても良い。ここで、天然木とは、桐、杉、檜、樫、松、楠、楓、香木、又はコルクである。天然木をスライスする一般的な手法としてスライサーを用いることが挙げられる。
【0017】
木肌シート2の表面にはコーティング処理を施しても良い。例えば、木肌シート2の表面に撥水剤を塗布、透明の塗料を塗布、ニスを塗布、又は紫外線反射膜を形成する等しても良い。或いは、透明な合成樹脂又は合成樹脂フィルム11で木肌シート2の表面を被覆しても良い。また、木肌シート2に防腐剤、消臭剤、芳香剤、樟脳、その他の薬剤を浸透させても良い。これらは、防臭又は芳香作用を木肌シート2に付与し、或いは、木肌シート2の防腐処理、防虫処理、抗菌処理、又防黴処理を企図するものである。
【0018】
支持体3としては、0.1〜5mm程度の厚みを有するスチロール又はABS等の合成樹脂フィルムを適用できる。支持体3は強靱で可撓性に優れたものであれば紙でも良いが、和紙のように丈夫なものが望ましい。支持体3の生地は、白色又は透明のような無色彩である他、黒、赤、青、紫、茶、緑、金、銀、灰色であっても良い。このように有色の支持体3を適用した場合、支持体3の色彩が木肌シート2から僅かながら透けて見えるので、木肌シート2の色の深みが一段と増すことになる。
【0019】
B:木肌シート2を貼り合わせた支持体3に、図2に示すようなプレス金型20を用いて型押しする。これにより、木肌シート2及び支持体3に、所望の形状を成型する(プレフォーム)。
【0020】
ここで、所望の形状とは、図3に示すような平面視矩形の凹部12であっても良いが、図4に示すような丸皿又は舟形であっても良い。第1の実施の形態に係る木質成形品1は、これら丸皿又は舟形の形態を完成品としたものである。
【0021】
また、「型押し」とは、木肌シート2及び支持体3を、単にプレス金型20に挟み込んで変形させることに限らず、木肌シート2及び支持体3を加熱しつつこれらを変形させても良い。詳しくは、プレス金型20として、天然木が焦げない程度にヒータ等で加熱可能なホットプレス金型を適用し、木肌シート2及び支持体3を離型させた後、直ちに常温の空気に晒して冷却することにより、これらを塑性変形させる。
【0022】
具体的に、型押しする時間は3乃至4秒間が好ましい。プレス金型20を加熱する温度は、合成樹脂フィルム11で木肌シート2を被覆する場合には、摂氏160乃至200度、望ましくは摂氏180度に設定する。合成樹脂フィルム11を省略する場合は、木肌シート2がプレス金型20に直接触れて焦げないように、摂氏130乃至170度、望ましくは摂氏150度に設定する。
【0023】
以上のように型押しする過程で、プレス金型20のキャビティー21に高温の水蒸気を導入し、これにより、木肌シート2の撓みや伸縮を促すようにしても良い。図2(a)に例示した凹部12は、支持体3に対して落ち込み、木肌シート2に対して突出する形状である。以下の説明は、このような形態を前提として行うが、図中の木肌シート2と木肌シート2のそれぞれの位置を、相互に入れ換えても良い。
【0024】
また、凹部12を形状成型するのに伴って、このコーナ部に沿った形状となるように木肌シート2が湾曲するので、同コーナ部において、木肌シート2が著しく歪むことになる。これに起因して、木肌シート2に割れ又は細かい亀裂が生じるという不具合が起こる場合がある。そこで、同図(b)に示すように、木肌シート2及び支持体3を、2枚のフッ素シートfの間に挟み込み、このままプレス金型20を用いて型押しを実行すると、上記の不具合は解消される。フッ素シートfは、表面が極めて滑らかで物体を良好に滑らせるという性質に優れている。
【0025】
また、プレス金型20の温度を製造現場で厳密に管理するのは難しく、通常は摂氏±25度の範囲で上下するが、フッ素シートfをキャビティー21と木肌シート2との間に介在することで、木肌シート2が高温のキャビティー21に直接触れて焦げるのを確実に防止できる。このように2枚のフッ素シートfで挟み込む例を示したが、フッ素シートfを複数枚重ねて使用しても良い。或いは、木肌シート2を貼り合わせた支持体3の一面のみを1枚のフッ素シートfで被覆することによっても、同様の効果を期待できる。
【0026】
また、木肌シート2の表裏に、それぞれ合成樹脂フィルム11及び支持体3を貼り付けた場合には、この木肌シート2の温度が上昇すると、合成樹脂フィルム11と支持体3によって、木肌シート2に僅かに含まれる水分の蒸発が妨げられる。結果として、合成樹脂フィルム11と木肌シート2の間に気泡が生じる恐れがある。従って、合成樹脂フィルム11の外方へ水蒸気を逃がせるように、合成樹脂フィルム11に多数のピンホールを貫通することが望ましい。
【0027】
C:木肌シート2を貼り合わせて形成した支持体3を、図5に示すように、樹脂成形金型5のキャビティー6に挿入する。
【0028】
この時、キャビティー6の底面に木肌シート2が密接し、キャビティー6の木肌シート2側にのみ空隙を確保する。キャビティー6の寸法、形状、又はこれを樹脂成形金型5に設ける個数等は任意に選択できるものであり、同図はその概念のみを表している。
【0029】
D:支持体3に結合する樹脂成形部材4を樹脂成形する。即ち、キャビティー6の支持体3側の空隙に、図に表れていない射出成形機によって可塑性樹脂を射出する。
【0030】
これにより、キャビティー6の支持体3側が加圧状態の可塑性樹脂によって満たされる。この可塑性樹脂が硬化するのを待てば、樹脂成形部材4が形成される。樹脂成形部材4が支持体3に結合する原理としては、支持体3の表面が樹脂成形部材4に溶着すること、支持体3が繊維組織を有するものであればその繊維の間に上記の可塑性樹脂が浸入して固化すること、或いは、これらの両方が同時に起こること等が考えられる。何れにしても、樹脂成形部材4を支持体3に接着剤を用いて接着する等の手間が不要である。しかも、このような強固な結合を、上記の可塑性樹脂の一度の射出と成形金型5の一度の開閉を実行するだけで完了できるので、当該木質成形品10の製造に要する1サイクル時間を短縮できる。以上に述べた効果は、当該木質成形品10を大量生産する際に一層顕著になる。
【0031】
上記の可塑性樹脂として、ポリカーボネート、アクリル、ABS、又はPET等のような熱可塑性樹脂を適用すれば、これらは射出した後、30乃至60秒程度待てば完全に硬化する。或いは、可塑性樹脂として、フェノール、エポキシ、又はアルキド等のような熱硬化性樹脂を適用しても良い。
【0032】
また、樹脂成形部材4の生地は、白色又は透明のような無色彩の他、黒、赤、青、紫、茶、緑、金、銀、灰色であっても良い。このように有色の樹脂成形部材4を適用した場合に、上記の支持体3の生地が白色又は透明であれば、樹脂成形部材4の色彩が木肌シート2及び支持体3を経て僅かながら透けて見えるので、木肌シート2の色の深みが一段と増すことになる。
【0033】
尚、上記Aのステップにおいて、木肌シート2及び支持体3を貼り合わせる接着剤として、樹脂成形部材4の溶融温度まで加熱してもガスの発生が比較的少ないものが望ましい。例えば、樹脂成形部材4にABSを適用する場合には、アクリル系の接着剤を用いるようにする。
【0034】
また、上記Bのステップにおいて、凹部12の周縁に平らなフランジ部13を残せるように、木肌シート2及び支持体3として、それぞれの外形寸法が凹部12よりもフランジ部13の幅寸法分広いものを適用することが望ましい。これは、図5に示す通り、樹脂成形金型5の可動型51のパーティング面にフランジ部13を沿わせれば、樹脂成形金型5を型締めした際に、フランジ部13が樹脂成形金型5の可動型51と固定型52との間に挟み込まれる。そして、上記Dのステップにおいて、フランジ部13は、可塑性樹脂が支持体3側から木肌シート2側へ浸入するのを確実に遮ることができる。つまり、フランジ部13は、支持体3の表裏を仕切るパッキン材の役割を果たす。
【0035】
E:木肌シート2、支持体3、及び樹脂成形部材4から成る木質成形品10を、樹脂成形金型5から離型させる。
【0036】
上記Bのステップにおいて、フランジ部13を形成した場合には、これが木質成形品10の周縁から延出した状態となるので、図6に示すように、木質成形品10からフランジ部13をカッター等を用いて切除する。この時点で、木質成形品10は完成品となる。或いは、フランジ部13の切除とこの切り口の仕上げを一度に均一にするためには、プレス型で抜く、又は、インサート成形時にフランジ部13を型内カットするようにしても良い。
【0037】
以上に述べた他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様で実施できるものである。例えば、図7に示すように、整理タンス16の表装パネルとして木質成形品10を適用する場合には、木質成形品10は平板状であれば良い。この場合、上記Bのステップを省略し、上記Cのステップにおいて、木肌シート2を貼り合わせた平板状の支持体3を、樹脂成形金型5のキャビティー6に挿入する。
【0038】
また、図に表していないが、樹脂成形金型5のキャビティー6に、天然木の木目間の方向に延びる細い縦溝を彫り込み、この縦溝によって図8に示すような第1のリブ14を、木質成形品10の裏面に成型しても良い。更に、樹脂成形金型5のキャビティー6に、図に表していないが、天然木の木目の長手方向に延びる細い横溝を彫り込み、この横溝によって図8に示すような第2のリブ15を、木質成形品10の裏面に成型しても良い。
【0039】
ここで、木目とは柾目と板目の両方を意味する。木目間とは、木肌シート2の原料である天然木の年輪同士の間隔であり、言い換えれば、天然木の幹の径方向に相当する。木目の長手方向とは、天然木の幹の長手方向に相当する。
【0040】
以上のように、第1,第2のリブ14,15を各々設けた理由は、上記Dのステップにおいて、木肌シート2と樹脂成形部材4との収縮率の差に起因して木質成形品10に内部応力が発生し、木質成形品10が全体として反り返ったり捩じれたりするのを防止するためである。特に、木肌シート2はその木目間の方向に収縮する傾向が強いので、図8に示すように、第1のリブ14を2本以上設けることが望ましい。
【0041】
更に、木質成形品10が全体として反り返ったり捩じれたりするのを確実に防止するには、図5に示すように、樹脂成形金型5に複数のゲート53を設けることが望ましい。この場合、可塑性樹脂が固化する過程で、これが複数のゲート53に向かって同時に収縮するので、複数のゲート53の間で可塑性樹脂が互いに引っ張ることにな。これにより、可塑性樹脂の固化に伴う内部応力が互いに打ち消し合うので、樹脂成形部材の反り返りや捩じれが抑えられる。また、複数のゲート53は、樹脂成形部材4の長手方向に間隔を開けるように配置しても良いが、天然木の木目の長手方向に間隔を開けて配置しても良い。また、ゲート53としては、ピンゲート、フィルムゲート、バルブゲート、又はトンネルゲート等が適用できる。
【0042】
次に、図9に基づいて、本発明の第3の実施の形態に係る木質成形品30の製造方法について説明する。当該製造方法について、既述したA乃至Eのステップと同様の手順については、その説明を省略する。また、以下の文頭に付した英大文字は、既述のステップの区分に対応する。
【0043】
C:図9(a)に示すように、樹脂成形を行うためのブロー成形金型50を準備し、支持体(図中に表れず)と共に木肌シート2を、左右に開型させたブロー成形金型50のキャビティー60の内周面の適所に密着させる。この時、木肌シート2をキャビティー60の内周面に密接し、支持体3は、キャビティー60の内方へ向ける。
【0044】
D:射出成形機のノズル501から可塑性樹脂を筒状又は袋状に押し出す。これを図中の符号502で指している。可塑性樹脂502の内側へ、ノズル501に連通する空気供給路503を経て空気を吹き込む。これにより、同図(b)に示すように、可塑性樹脂502が膨張し、ボトルを象ったキャビティー60の形状が可塑性樹脂502に成型する。この時点で、支持体3が可塑性樹脂502の外周面に結合する。このまま、可塑性樹脂502が硬化するのを待ってから、同図(c)に示すように開型すれば、ボトルラベルとして木肌シート2を貼り付けたボトルである木質成形品30が完成する。
【0045】
【発明の効果】
本発明に係る木質成形品は、木肌シートを支持体に貼り合わせ、これらを型押しして所望の形状に仕上げたものであるため、例えば、使い切りの皿等のように手軽に持ち運べ、特に剛性が求められない製品として最適である。しかも、天然木をスライスして得られる木肌シートは、その表面の肌触りや艶等の点において、天然木の独特の風合いを保持しているので、年々稀少になる天然木の高級感を最小限の製造コストによって奏することができる。また、木肌シートは極めて薄く、当該木質成形品を大量に生産しても、実際に原料として必要とする天然木の量が少なくて済むので、天然木の消費を最小限に抑えることができる。
【0046】
しかも、本発明に係る木質成形品によれば、樹脂成形部材の形成と同時にこれが支持体に結合するので、樹脂成形部材を支持体に接着する等の手間が不要である。しかも、このような樹脂成形部材と支持体強固との結合を、上記の可塑性樹脂の成形を一度実行するだけで完了できるので、当該木質成形品の製造に要する1サイクル時間を短縮できるという顕著な効果を達成できる。このような効果は、当該木質成形品を大量生産する際には一層顕著になり、製造コストの大幅な削減を実現することができる。
【0047】
また、本発明に係る木質成形品は、木肌シートと支持体と樹脂成形部材とを、当該順に積層したものであるため、例えば、乗用車のダッシュボードや部屋の建具を装飾するためのパネルのように、その実用に耐えられる程度の剛性が求められ、又は、ある程度の肉厚が求められる製品として最適である。しかも、木肌シートは天然木をスライスして得られるので、上記と同様の顕著な効果に加え、極めて薄い木肌シートでありながら、当該木質成形品の総てが恰も肉厚の木工製品であるかのような重厚な質感と高級感を奏することができる。
【0048】
更に、本発明に係る木質成形品によれば、木肌シートの模様又はそのパターンは、極めて多様な天然木の木目に依存するので、当該木質成形品を大量に生産しても、その総ての木目模様は互いに異なる。また、同一の天然木から得られる木肌シートが似ているとしても、このようなものが継続して大量に出来ることはない。従って、個々の製品毎の木目模様の違いが顕著であり、一品制作したかのような高級感を奏し、商品価値を一層高揚させるという利点がある。
【0049】
本発明に係る木質成形品の製造方法によれば、木肌シートを支持体に貼り合わせた後に、この支持体に結合する樹脂成形部材を得るようにしているので、天然木から成る木肌シートと樹脂成形部材とを、それぞれの素材の相性に係わらず木肌シート及び樹脂成形部材を、支持体を媒介して強固に結合することができる。従って、当該木質成形品の製造後に木肌シートと樹脂成形部材との収縮率の差に起因して、当該木質成形品に内部応力が発生しても、木肌シートから樹脂成形部材が剥離するのを防止できる。
【0050】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法によれば、木肌シートを貼り合わせた支持体に、型押しにより形状成型することにより、木肌シートと共に支持体を所望の形状に仕上げた後に、これらに樹脂成形部材を積層するので、樹脂成形部材によって木肌シート及び支持体の形状が制約されることがなく、木質成形品の全体としての成形の自由度も大きくなるという利点がある。
【0051】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法において、木肌シートにコーティング処理を施した場合、当該木質成形品が水濡れしたり、或いは屋外で紫外線に常時曝される等しても、このような周囲の過酷な環境から木肌シートを保護し、木肌シートの劣化や変色を防止することができる。
【0052】
更に、本発明に係る木質成形品の製造方法において、木肌シートを貼り合わせた支持体を、複数のフッ素シートの間に挟み込んだ場合、これを樹脂成形金型に挿入して形状成型する過程で、木肌シートが湾曲するのに伴って木肌シートが割れたり、又は木肌シートに細かい亀裂が生じるという不具合を防止できる。従って、型押しによって木肌シートを自由に湾曲することが可能となり、多様な曲面形状を有する製品の造形に幅広く対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る木質成形品の分解斜視図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る木質成形品の型押し工程、及びその変形例の要部を表した断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る木質成形品の一例を表した斜視図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る木質成形品の種々の他例を表した斜視図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る木質成形品を樹脂成形する工程を表した断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る木質成形品を一部破断した斜視図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る木質成形品の使用例を表した分解斜視図。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る木質成形品を一部破断した裏面側の斜視図。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る木質成形品の製造方法を説明する一連の断面図。
【符号の説明】
1,10,30:木質成形品
2:木肌シート
3:支持体
4:樹脂成形部材
5:樹脂成形金型
6,60:キャビティー
11:合成樹脂フィルム
12:凹部
13:フランジ部
f:フッ素シート
Claims (8)
- 天然木をスライスして得られる木肌シートを、フィルム状の支持体に貼り合わせ、これらを型押しにより形状成型したことを特徴とする木質成形品。
- 天然木をスライスして得られる木肌シートと、フィルム状の支持体と、樹脂成形して得られる樹脂成形部材とを、当該順に積層したことを特徴とする木質成形品。
- 前記木肌シートにコーティング処理を施したことを特徴とする請求項1又は2に記載の木質成形品。
- 天然木をスライスして得られる木肌シートを、フィルム状の支持体に貼り合わせるステップと、
前記木肌シートを貼り合わせた前記支持体を、樹脂成形金型に挿入するステップと、
前記樹脂成形金型の内部に可塑性樹脂を供給することにより、前記支持体に結合する樹脂成形部材を形成するステップと、
を含むことを特徴とする木質成形品の製造方法。 - 前記木肌シートを貼り合わせた前記支持体に、型押しにより形状成型するステップを含むことを特徴とする請求項4に記載の木質成形品の製造方法。
- 前記木肌シートにコーティング処理を施すステップを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の木質成形品の製造方法。
- 前記木肌シートを貼り合わせた前記支持体を、複数のフッ素シートの間に挟み込んだ状態で、前記樹脂成形金型に挿入することを特徴とする請求項4乃至6に記載の木質成形品の製造方法。
- 前記木肌シートが、人工木又はコルク材をスライスして得られることを特徴とする請求項4乃至7に記載の木質成形品の製造方法。
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