JP2005000526A - 転子下骨切り併用人工股関節器具 - Google Patents
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Abstract
【課題】転子下にて切骨分離した大腿骨における2個の切骨部位を所定形状に骨切りする際の、骨切りの精度を上げる。骨切り面とを接合した大腿骨の髄腔軸を一致させ、人工股関節設置術において骨折の恐れがないようにする。
【解決手段】所定間隔で一列に並ぶ複数のピン係合用孔を設けた大腿骨に嵌入する髄腔嵌入ブローチと、前記ピン係合用孔と同一の間隔でもって一列に並ぶ複数個のピン挿通用孔を設けた大腿骨の外表面上に設置するカットガイドプレートと、該カットガイドプレートの前記ピン挿通用孔を挿通するとともに前記髄腔嵌入ブローチの前記ピン係合用孔と係合することで前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを連結する連結用ピンとを具備してなり、前記カットガイドプレートは、前記一列に並ぶピン挿通用孔の左右において複数対をなすスリットが設けられている。
【選択図】 図1
【解決手段】所定間隔で一列に並ぶ複数のピン係合用孔を設けた大腿骨に嵌入する髄腔嵌入ブローチと、前記ピン係合用孔と同一の間隔でもって一列に並ぶ複数個のピン挿通用孔を設けた大腿骨の外表面上に設置するカットガイドプレートと、該カットガイドプレートの前記ピン挿通用孔を挿通するとともに前記髄腔嵌入ブローチの前記ピン係合用孔と係合することで前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを連結する連結用ピンとを具備してなり、前記カットガイドプレートは、前記一列に並ぶピン挿通用孔の左右において複数対をなすスリットが設けられている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大腿骨の大腿骨遠位部の変形や高位脱臼がある症例で、人工股関節を設置する必要がある場合に、術中に転子下にて一旦切骨分離した後、分離された近位と遠位の大腿骨を切骨面で適宜骨切りし、これら切骨面をステム挿入と同時に嵌合することで、大腿骨の高度な変形を修正したり、大腿骨を短縮する整形外科的補正術に用いる器具であって、特に、転子下にて一旦切骨分離した大腿骨における、切骨部位を所定形状に骨切りするために用いる転子下骨切り併用人工股関節器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は、前述の症例における転子下の接骨部位を所定形状に骨切りを行なう際の従来例を示す(非特許文献1)。
【0003】
同図に示すように、従来は直径2■程度の孔を所定の骨切り形状に沿うように大腿骨に穿孔した後に、骨ノミを用いて骨切りを行っていた。
【0004】
【非特許文献1】
“Double−chevron Subtrochanteric Shortening Derotational Demoral Osteotomy Combined With Total Hip Arthroplasty for the Treatment of Complete Congenital Dislocation of the Hip in the Adult − Preliminary Report and Description of a New Surgical Technique” Douglas A. Becker and Roman Gustilo, “The Journal of Arthoplasty”, Vol 10, No.3, 1995, pp313 ■ 318
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる方法によれば、骨切りラインの決定と骨切りを術者のマニュアル操作で行うため、大腿骨近位部及び遠位部骨切り面の整合をとることが極めて難しく、骨切り面相互の接触を良くするために術中に何度も修正を行わなければならなくなり、術者にかかる負担は多大なものがある。
【0006】
また、骨切りを併用した人工股関節置換術でも、通常の人工股関節置換術と同様に、髄空に挿入されるステムによって骨軸が決定され、新たな骨軸に沿って近位部と遠位部が連結されるが、従来の技術のように骨切りラインを大腿骨外表面から決定する方法では、ステム軸に一致する骨切り面を適切に配置することは不可能である。
【0007】
この軸のズレにより、術中ステム打ち込む時に往々にして大腿骨を骨折させることが生じる。術者は、対策として大腿骨にワイヤリングなどを行う必要があり余分な時間を要する。
【0008】
また、手術後の患者の予後についても特別な配慮が必要で、マニュアルによる骨切りでは骨切り面の整合性にばらつきが大きく、整合性が悪い症例では大腿骨の支持性が欠如につながり、術後早期の歩行を制限せざるを得なくなる。また、退院や社会復帰の時期が遅れる可能性がある。更には、骨切り面での骨癒合が得られず最終的に再置換を余儀なくされる症例もある。
【0009】
このように、従来の方法は術者には高度な手技が要求される一方、手術時間や出血量が増大し、術中骨折や骨癒合不全のリスクが大きく、患者の回復を遅らせる。
【0010】
一方、高度な変形の矯正と短縮が必要とされる症例には骨切り併用人工股関節置換術が有効である。従って、従来法の上記課題を克服すれば、これまで多くの整形外科医が手技的な限界からこの手術方法を敬遠し、手術適応から外してきたことから一転し、治療方法のなかった多くの患者に福音をもたらすことができる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため請求項1の転子下骨切り併用人工股関節器具は、転子下にて切骨分離した大腿骨における2個の切骨部位を所定形状に骨切りするために用いる器具であって、所定間隔で一列に並ぶ複数のピン係合用孔を設けた大腿骨に嵌入する髄腔嵌入ブローチと、前記ピン係合用孔と同一の間隔でもって一列に並ぶ複数個のピン挿通用孔を設けた大腿骨の外表面上に設置するカットガイドプレートと、該カットガイドプレートの前記ピン挿通用孔を挿通するとともに前記髄腔嵌入ブローチの前記ピン係合用孔と係合することで前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを連結する連結用ピンとを具備してなり、前記カットガイドプレートは、前記一列に並ぶピン挿通用孔の左右において複数対をなすスリットが設けられており、前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを前記連結用ピンで連結した状態で、前記スリットにより骨切用鋸刃を案内するようにしたことを特徴とする。
【0012】
かかる構成の器具を用いるにあたって、まず、切骨分離した大腿骨近位部における髄腔に前記髄腔嵌入ブローチを挿通する。このとき、髄腔嵌入ブローチの先端部分が大腿骨遠位部より先端側に露出するようにすると同時に、少なくとも2個の前記ピン係合用孔を大腿骨遠位部より先端側に露出させる。次に、前記カットガイドプレートと前記連結用ピンを用いる。前記カットガイドプレートを大腿骨の大腿骨遠位部の外表面上に載置し、且つそのピン挿入孔と前記露出した髄腔嵌入ブローチのピン係合用孔とが重なるように調整する。孔の重なりが調整された状態で、連結用ピンを、前記カットガイドプレートのピン挿通用孔に挿通してから、その先端部位を前記髄腔嵌入ブローチにおける前記露出している少なくとも2個のピン係合用孔に係合する。これにより、前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとが連結する。次に、前記カットガイドプレートの前記スリットを利用し、骨切用鋸によって前記転子部分の切骨部分に所定の切込みを入れる。この後、前記カットガイドプレートと前記髄腔嵌入ブローチを大腿骨近位部から取り外し、切込みの間の部分を骨切りし、切り離した転子部分に所定の骨切り面を形成する。
【0013】
次に、大腿骨近位部の骨髄腔内に前記髄腔嵌入ブローチを挿入する。このとき、髄腔嵌入ブローチの先端部分が大腿骨遠位部より先端側に露出するようにすると同時に、少なくとも2個の前記ピン係合用孔を大腿骨近位部よりも後端側に露出させる。そして、前述のように前記連結用ピンを用いて前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを連結する。次に、前記カットガイドプレートの前記スリットを利用し、骨切用鋸によって前記大腿骨近位部の切骨部分に所定の切込みを入れる。この後、前記カットガイドプレートと前記髄腔嵌入ブローチを大腿骨近位部の大腿骨遠位部から取り外し、切込みの間の部分を骨切りし、切り離した転子部分に所定形状の骨切り面を形成する。
【0014】
最後に、大腿骨遠位部の骨切り面と大腿骨近位部の骨切り面とを接合し、人工股関節設置術を行なう。
【0015】
請求項1の転子下骨切り併用人工股関節器具によれば、骨切りの精度を上げることができ、骨切りのやり直しをなくすことができる。また、大腿骨遠位部の骨切り面と大腿骨近位部の骨切り面とを接合した大腿骨の髄腔軸が一致し、髄腔の形状が補正されることで、人工股関節設置術においてステムを挿入するときに、骨折の恐れがない。
【0016】
また、髄腔に嵌合する部材が髄腔内の骨切りを行なうブローチであることから、骨切りの際に、ステム挿入のための骨切りも同時に行なえるので手術時間を短縮することができる。
【0017】
次に、請求項2の転子下骨切り併用人工股関節器具は、前記カットガイドプレートにおいて、前記ピン挿通用孔が前記各対のスリットの延長交線上に設けられていることを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、骨切りに用いる一対のスリットの延長交線上にも前記ピン挿通用孔が存在する。このピン挿通用孔にも、前記連結用ピンやキルシュナー鋼線を挿通し、該連結用ピンやキルシュナー鋼線を、さらに大腿骨の骨壁を貫通させて、前記髄腔嵌合部材におけるピン係合用孔と係合させる。前述のように所定の切込みを行なったときに、切込みの延長交線の部分に前記連結用ピンにより形成された孔が貫通しているので、この孔を基準に容易に骨切りを完了させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図によって詳しく述べる。
【0020】
本発明による代表的な実施形態の転子下骨切り併用人工股関節器具を図1に示す。図1(a)は髄腔嵌入ブローチの側面図、同図(b)はカットガイドプレートの正面図、同図(c)は連結用ピンの側面図である。
【0021】
図1に示すように、前記転子下骨切り併用人工股関節器具は、複数のピン係合用孔4を設けた髄腔嵌入ブローチ1と、ピン係合用孔4と同一の間隔で一列に並ぶ複数個のピン挿通用孔5を設けたカットガイドプレート2、該カットガイドプレート2の前記ピン挿通用孔5を挿通するとともに前記髄腔嵌入ブローチ1の前記ピン係合用孔4と係合することで前記髄腔嵌入ブローチ1と前記カットガイドプレート2とを連結する連結用ピン3から構成される。
【0022】
前記カットガイドプレート2は、さらに、前記一列に並ぶピン挿通用孔5の左右において複数対をなすスリット6が設けられており、前記髄腔嵌入ブローチ1と前記カットガイドプレート2とを前記連結用ピン3で連結した状態で、前記スリット6により骨切用鋸刃を案内するようになっている。
【0023】
図2(a)は、本発明が適応される症例のレントゲン正面写真を模式化したものである。通常の変形性股関節症のように股関節の変形に留まらず、大腿骨頭が解剖学的にあるべき位置である原臼位から脱臼し高位脱臼に位置し、同時に大腿骨近位部に高度な変形がある症例を示している。同図(b)は、本発明の実施例であるDouble−chevron、すなわちV字形の骨切りを行った症例で、新たな股関節中心を原臼位に引き下げ、大腿骨の転子下で変形の修正と、V字及び短縮骨切り後、全人工股関節を設置した状態の模式図である。
【0024】
なお、人工股関節置換術は皮切と軟部組織の剥離、大腿骨頚部の骨切除、臼蓋カップ及び大腿骨ステムの設置、整復のプロセスに分かれる。本発明は主に大腿骨の骨切りに関するものであるから、大腿骨ステムの設置について説明する。
【0025】
図3は、大腿骨頚部を骨切用鋸によって切除した後、転子下にて同じく骨切用鋸により切骨し分離した大腿骨近位部における髄腔に髄腔嵌入ブローチ1を挿入した状態を示している。頚部骨切り位置から約30から60ミリの位置で転子下を切骨しているため髄腔嵌入ブローチ1の先端部と同時に複数のピン係合用孔4が、数センチ分離した大腿骨近位部から剥き出しとなる。
【0026】
次に、図4に示すように、剥き出しとなった髄腔嵌入ブローチ1の先端部に開けられたピン係合用孔4を利用し、これと同じ間隔で一列に並んだ複数個のピン挿通用孔5を設けたカットガイドプレート2を、連結用ピン3を2〜4本程度用いて組み立て、大腿骨近位部にキュルシュナー鋼線などにより穿孔し器具を固定する。このとき、骨切用鋸をガイドとして使用するV字状のスリット6、6の延長交線上に設けられている前記ピン挿入用孔5にキュルシュナー鋼線を挿入して固定するのが好ましい。その後、骨切用鋸によって図5に示すように近位部端にV字状の切込みを入れる。
【0027】
前記スリット6をガイドとし、髄腔嵌入ブローチ1を骨髄腔に挿入したまま、可能な限り広い範囲で切込みを入れた後、大腿骨から髄腔嵌入ブローチ1、カットガイドプレート2、連結用ピン3、キュルシュナー鋼線を外し、骨に開けた切込みをガイドに骨切り用鋸で完全に骨を切断する。この際、V字の谷の位置に開けた孔に連結用ピン3を挿入しておけば、誤って骨切用鋸で骨を切りすぎたり、切る方向を誤らないようにメルクマールとして使用できる。
【0028】
また、連結用ピン3により大腿骨近位部に貫通孔を最低2本開けておけば、全ての器具を取り除いた後、この貫通孔を利用して、カットガイドプレート2を連結用ピン3で大腿骨近位部に固定することができ、髄腔嵌入ブローチ1に骨切り鋸が当たることなく一気にV字骨切りを行うことができる。
【0029】
次に、大腿骨遠位部の骨切りは、前捻角度と骨切り位置を決定して実施するが、図6に示すように、前捻角度は髄腔嵌入ブローチ1の各ピン係合用孔4を結ぶラインと大腿骨遠位部の位置関係を調節することで決定することができる。
【0030】
このようにして大腿骨遠位部における髄腔に差し込まれた髄腔嵌入ブローチ1は、図7に示すように、その近位部が大腿骨よりはみ出ているため、大腿骨の近位部と同様に、カットガイドプレート2と連結用ビン3で器具を組み立て、キュルシュナー鋼線で骨に固定した後、大腿骨の短縮量を見込んだ位置で骨切り用鋸を用いてV字骨切りする。
【0031】
このような前記転子下骨切り併用人工股関節器具によれば、骨切りの精度を上げることができ、骨切りのやり直しをなくすことができる。また、大腿骨遠位部の骨切り面と大腿骨近位部の骨切り面とを接合した大腿骨の髄腔軸が一致し、髄腔の形状が補正されることで、人工股関節設置術においてステムを挿入するときに、骨折の恐れがない。
【0032】
また、髄腔に嵌合する部材が髄腔内の骨切りを行なうブローチ(髄腔嵌入ブローチ1)であることから、骨切りの際に、ステム挿入のための骨切りも同時に行なえるので手術時間を短縮することができる。
【0033】
さらに、前記転子下骨切り併用人工股関節器具において、前述のように、前記カットガイドプレート2における前記ピン挿通用孔5を前記各対のスリット6、6の延長交線上に設けた場合、骨切りに用いる一対のスリット6、6の延長交線上にも前記ピン挿通用孔5が存在する。このピン挿通用孔5に、前記連結用ピン3やキルシュナー鋼線を挿通し、該連結用ピン3やキルシュナー鋼線を、さらに大腿骨の骨壁を貫通させて、前記髄腔嵌合部材におけるピン係合用孔と係合させる。前述のように所定の切込みを行なったときに、切込みの延長交線の部分に前記連結用ピンにより形成された孔が貫通しているので、この孔を基準に容易に骨切りを完了させることができる。
【0034】
図8には、Double−chevron(V字)以外の骨切り方法に対応するカットガイドプレート2を示す。同図(a)は大腿骨を骨軸に対して直角に骨切りする水平(transverse)カット、ステップカット(stepcut)、同図(b)は斜め(oblique)カット用のカットガイド2である。これらを用いれば、精度の良い骨切りが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意のものとすることができることは云うまでもない。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、転子下にて切骨分離した大腿骨における2個の切骨部位を所定形状に骨切りするために用いる器具であって、所定間隔で一列に並ぶ複数のピン係合用孔を設けた大腿骨に嵌入する髄腔嵌入ブローチと、前記ピン係合用孔と同一の間隔でもって一列に並ぶ複数個のピン挿通用孔を設けた大腿骨の外表面上に設置するカットガイドプレートと、該カットガイドプレートの前記ピン挿通用孔を挿通するとともに前記髄腔嵌入ブローチの前記ピン係合用孔と係合することで前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを連結する連結用ピンとを具備してなり、前記カットガイドプレートは、前記一列に並ぶピン挿通用孔の左右において複数対をなすスリットが設けられており、前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを前記連結用ピンで連結した状態で、前記スリットにより骨切用鋸刃を案内するようにしたことから、骨切りの精度を上げることができ、骨切りのやり直しをなくすことができる。また、大腿骨遠位部の骨切り面と大腿骨近位部の骨切り面とを接合した大腿骨の髄腔軸が一致し、髄腔の形状が補正されることで、人工股関節設置術においてステムを挿入するときに、骨折の恐れがない。
【0037】
また、髄腔に嵌合する部材が髄腔内の骨切りを行なうブローチであることから、骨切りの際に、ステム挿入のための骨切りも同時に行なえるので手術時間を短縮することができる。
【0038】
次に、前記カットガイドプレートにおいて、前記ピン挿通用孔が前記各対のスリットの延長交線上に設けられている場合、骨切りに用いる一対のスリットの延長交線上にも前記ピン挿通用孔が存在する。このピン挿通用孔にも、前記連結用ピンやキルシュナー鋼線を挿通し、該連結用ピンやキルシュナー鋼線を、さらに大腿骨の骨壁を貫通させて、前記髄腔嵌合部材におけるピン係合用孔と係合させる。前述のように所定の切込みを行なったときに、切込みの延長交線の部分に前記連結用ピンにより形成された孔が貫通しているので、この孔を基準に容易に骨切りを完了させることができる。
【0039】
このような新しい手術器具により、従来の方法では手術時間が平均122分要したのに対し17分減の105分となった。それに伴い、術中出血量は543mlが500mlへ減少した。その結果、術中骨折の発生率が50%から15%へ低減し、入院期間は46日から半分の23日に短縮した。
【0040】
この結果は、骨切りが正確になったために、術中の操作が容易となっただけでなく、髄腔で支持されるステムの軸と同一の軸により骨切りが行われるために回旋抵抗などの支持性が飛躍的に向上したものである。
【0041】
また、本発明の器具を用いた骨切り併用人工股関節置換術は、骨の変形や脱臼などにより通常の人工股関節置換術の適応外となる症例も治療できるようになり、多くの方々に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態の転子下骨切り併用人工股関節器具を示し、(a)は髄腔嵌入ブローチの側面図、(b)はカットガイドプレートの正面図、(c)は連結用ピンの側面図である。
【図2】図1の転子下骨切り併用人工股関節器具の適用症例を示す説明図であり、(a)は変形した大腿骨の状態、(b)は図1の転子下骨切り併用人工股関節器具を用いて大腿骨を補正し、人工股関節設置術を行なった後の状態を示す。
【図3】本発明実施形態の転子下骨切り併用人工股関節器具の使用状態を示す説明図であり、特に、髄腔嵌入ブローチを大腿骨近位部髄腔に嵌入した状態を示す。
【図4】本発明実施形態の転子下骨切り併用人工股関節器具の使用状態を示す説明図である。
【図5】図4の状態で骨切りを行なった後の大腿骨近位部を示す、骨の側面図である。
【図6】本発明実施形態の転子下骨切り併用人工股関節器具の使用状態を示す説明図であり、特に、髄腔嵌入ブローチを大腿骨遠位部髄腔に嵌入した状態を示す。
【図7】カットガイドプレートの案内により、骨に切込みを入れる作業の様子を示す斜視図である。
【図8】別実施形態によるカットガイドプレートを示し正面図であり、(a)は水平またはステップカット用のもの、(b)は斜めカット用のものを示す。
【図9】従来技術における転子下骨切りの方法と器具を示す説明図である。
【符号の説明】
1 髄腔嵌入ブローチ
2 カットガイドプレート
3 連結用ピン
4 ピン係合用孔
5 ピン挿通用孔
6 スリット
【発明の属する技術分野】
本発明は、大腿骨の大腿骨遠位部の変形や高位脱臼がある症例で、人工股関節を設置する必要がある場合に、術中に転子下にて一旦切骨分離した後、分離された近位と遠位の大腿骨を切骨面で適宜骨切りし、これら切骨面をステム挿入と同時に嵌合することで、大腿骨の高度な変形を修正したり、大腿骨を短縮する整形外科的補正術に用いる器具であって、特に、転子下にて一旦切骨分離した大腿骨における、切骨部位を所定形状に骨切りするために用いる転子下骨切り併用人工股関節器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は、前述の症例における転子下の接骨部位を所定形状に骨切りを行なう際の従来例を示す(非特許文献1)。
【0003】
同図に示すように、従来は直径2■程度の孔を所定の骨切り形状に沿うように大腿骨に穿孔した後に、骨ノミを用いて骨切りを行っていた。
【0004】
【非特許文献1】
“Double−chevron Subtrochanteric Shortening Derotational Demoral Osteotomy Combined With Total Hip Arthroplasty for the Treatment of Complete Congenital Dislocation of the Hip in the Adult − Preliminary Report and Description of a New Surgical Technique” Douglas A. Becker and Roman Gustilo, “The Journal of Arthoplasty”, Vol 10, No.3, 1995, pp313 ■ 318
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる方法によれば、骨切りラインの決定と骨切りを術者のマニュアル操作で行うため、大腿骨近位部及び遠位部骨切り面の整合をとることが極めて難しく、骨切り面相互の接触を良くするために術中に何度も修正を行わなければならなくなり、術者にかかる負担は多大なものがある。
【0006】
また、骨切りを併用した人工股関節置換術でも、通常の人工股関節置換術と同様に、髄空に挿入されるステムによって骨軸が決定され、新たな骨軸に沿って近位部と遠位部が連結されるが、従来の技術のように骨切りラインを大腿骨外表面から決定する方法では、ステム軸に一致する骨切り面を適切に配置することは不可能である。
【0007】
この軸のズレにより、術中ステム打ち込む時に往々にして大腿骨を骨折させることが生じる。術者は、対策として大腿骨にワイヤリングなどを行う必要があり余分な時間を要する。
【0008】
また、手術後の患者の予後についても特別な配慮が必要で、マニュアルによる骨切りでは骨切り面の整合性にばらつきが大きく、整合性が悪い症例では大腿骨の支持性が欠如につながり、術後早期の歩行を制限せざるを得なくなる。また、退院や社会復帰の時期が遅れる可能性がある。更には、骨切り面での骨癒合が得られず最終的に再置換を余儀なくされる症例もある。
【0009】
このように、従来の方法は術者には高度な手技が要求される一方、手術時間や出血量が増大し、術中骨折や骨癒合不全のリスクが大きく、患者の回復を遅らせる。
【0010】
一方、高度な変形の矯正と短縮が必要とされる症例には骨切り併用人工股関節置換術が有効である。従って、従来法の上記課題を克服すれば、これまで多くの整形外科医が手技的な限界からこの手術方法を敬遠し、手術適応から外してきたことから一転し、治療方法のなかった多くの患者に福音をもたらすことができる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため請求項1の転子下骨切り併用人工股関節器具は、転子下にて切骨分離した大腿骨における2個の切骨部位を所定形状に骨切りするために用いる器具であって、所定間隔で一列に並ぶ複数のピン係合用孔を設けた大腿骨に嵌入する髄腔嵌入ブローチと、前記ピン係合用孔と同一の間隔でもって一列に並ぶ複数個のピン挿通用孔を設けた大腿骨の外表面上に設置するカットガイドプレートと、該カットガイドプレートの前記ピン挿通用孔を挿通するとともに前記髄腔嵌入ブローチの前記ピン係合用孔と係合することで前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを連結する連結用ピンとを具備してなり、前記カットガイドプレートは、前記一列に並ぶピン挿通用孔の左右において複数対をなすスリットが設けられており、前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを前記連結用ピンで連結した状態で、前記スリットにより骨切用鋸刃を案内するようにしたことを特徴とする。
【0012】
かかる構成の器具を用いるにあたって、まず、切骨分離した大腿骨近位部における髄腔に前記髄腔嵌入ブローチを挿通する。このとき、髄腔嵌入ブローチの先端部分が大腿骨遠位部より先端側に露出するようにすると同時に、少なくとも2個の前記ピン係合用孔を大腿骨遠位部より先端側に露出させる。次に、前記カットガイドプレートと前記連結用ピンを用いる。前記カットガイドプレートを大腿骨の大腿骨遠位部の外表面上に載置し、且つそのピン挿入孔と前記露出した髄腔嵌入ブローチのピン係合用孔とが重なるように調整する。孔の重なりが調整された状態で、連結用ピンを、前記カットガイドプレートのピン挿通用孔に挿通してから、その先端部位を前記髄腔嵌入ブローチにおける前記露出している少なくとも2個のピン係合用孔に係合する。これにより、前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとが連結する。次に、前記カットガイドプレートの前記スリットを利用し、骨切用鋸によって前記転子部分の切骨部分に所定の切込みを入れる。この後、前記カットガイドプレートと前記髄腔嵌入ブローチを大腿骨近位部から取り外し、切込みの間の部分を骨切りし、切り離した転子部分に所定の骨切り面を形成する。
【0013】
次に、大腿骨近位部の骨髄腔内に前記髄腔嵌入ブローチを挿入する。このとき、髄腔嵌入ブローチの先端部分が大腿骨遠位部より先端側に露出するようにすると同時に、少なくとも2個の前記ピン係合用孔を大腿骨近位部よりも後端側に露出させる。そして、前述のように前記連結用ピンを用いて前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを連結する。次に、前記カットガイドプレートの前記スリットを利用し、骨切用鋸によって前記大腿骨近位部の切骨部分に所定の切込みを入れる。この後、前記カットガイドプレートと前記髄腔嵌入ブローチを大腿骨近位部の大腿骨遠位部から取り外し、切込みの間の部分を骨切りし、切り離した転子部分に所定形状の骨切り面を形成する。
【0014】
最後に、大腿骨遠位部の骨切り面と大腿骨近位部の骨切り面とを接合し、人工股関節設置術を行なう。
【0015】
請求項1の転子下骨切り併用人工股関節器具によれば、骨切りの精度を上げることができ、骨切りのやり直しをなくすことができる。また、大腿骨遠位部の骨切り面と大腿骨近位部の骨切り面とを接合した大腿骨の髄腔軸が一致し、髄腔の形状が補正されることで、人工股関節設置術においてステムを挿入するときに、骨折の恐れがない。
【0016】
また、髄腔に嵌合する部材が髄腔内の骨切りを行なうブローチであることから、骨切りの際に、ステム挿入のための骨切りも同時に行なえるので手術時間を短縮することができる。
【0017】
次に、請求項2の転子下骨切り併用人工股関節器具は、前記カットガイドプレートにおいて、前記ピン挿通用孔が前記各対のスリットの延長交線上に設けられていることを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、骨切りに用いる一対のスリットの延長交線上にも前記ピン挿通用孔が存在する。このピン挿通用孔にも、前記連結用ピンやキルシュナー鋼線を挿通し、該連結用ピンやキルシュナー鋼線を、さらに大腿骨の骨壁を貫通させて、前記髄腔嵌合部材におけるピン係合用孔と係合させる。前述のように所定の切込みを行なったときに、切込みの延長交線の部分に前記連結用ピンにより形成された孔が貫通しているので、この孔を基準に容易に骨切りを完了させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図によって詳しく述べる。
【0020】
本発明による代表的な実施形態の転子下骨切り併用人工股関節器具を図1に示す。図1(a)は髄腔嵌入ブローチの側面図、同図(b)はカットガイドプレートの正面図、同図(c)は連結用ピンの側面図である。
【0021】
図1に示すように、前記転子下骨切り併用人工股関節器具は、複数のピン係合用孔4を設けた髄腔嵌入ブローチ1と、ピン係合用孔4と同一の間隔で一列に並ぶ複数個のピン挿通用孔5を設けたカットガイドプレート2、該カットガイドプレート2の前記ピン挿通用孔5を挿通するとともに前記髄腔嵌入ブローチ1の前記ピン係合用孔4と係合することで前記髄腔嵌入ブローチ1と前記カットガイドプレート2とを連結する連結用ピン3から構成される。
【0022】
前記カットガイドプレート2は、さらに、前記一列に並ぶピン挿通用孔5の左右において複数対をなすスリット6が設けられており、前記髄腔嵌入ブローチ1と前記カットガイドプレート2とを前記連結用ピン3で連結した状態で、前記スリット6により骨切用鋸刃を案内するようになっている。
【0023】
図2(a)は、本発明が適応される症例のレントゲン正面写真を模式化したものである。通常の変形性股関節症のように股関節の変形に留まらず、大腿骨頭が解剖学的にあるべき位置である原臼位から脱臼し高位脱臼に位置し、同時に大腿骨近位部に高度な変形がある症例を示している。同図(b)は、本発明の実施例であるDouble−chevron、すなわちV字形の骨切りを行った症例で、新たな股関節中心を原臼位に引き下げ、大腿骨の転子下で変形の修正と、V字及び短縮骨切り後、全人工股関節を設置した状態の模式図である。
【0024】
なお、人工股関節置換術は皮切と軟部組織の剥離、大腿骨頚部の骨切除、臼蓋カップ及び大腿骨ステムの設置、整復のプロセスに分かれる。本発明は主に大腿骨の骨切りに関するものであるから、大腿骨ステムの設置について説明する。
【0025】
図3は、大腿骨頚部を骨切用鋸によって切除した後、転子下にて同じく骨切用鋸により切骨し分離した大腿骨近位部における髄腔に髄腔嵌入ブローチ1を挿入した状態を示している。頚部骨切り位置から約30から60ミリの位置で転子下を切骨しているため髄腔嵌入ブローチ1の先端部と同時に複数のピン係合用孔4が、数センチ分離した大腿骨近位部から剥き出しとなる。
【0026】
次に、図4に示すように、剥き出しとなった髄腔嵌入ブローチ1の先端部に開けられたピン係合用孔4を利用し、これと同じ間隔で一列に並んだ複数個のピン挿通用孔5を設けたカットガイドプレート2を、連結用ピン3を2〜4本程度用いて組み立て、大腿骨近位部にキュルシュナー鋼線などにより穿孔し器具を固定する。このとき、骨切用鋸をガイドとして使用するV字状のスリット6、6の延長交線上に設けられている前記ピン挿入用孔5にキュルシュナー鋼線を挿入して固定するのが好ましい。その後、骨切用鋸によって図5に示すように近位部端にV字状の切込みを入れる。
【0027】
前記スリット6をガイドとし、髄腔嵌入ブローチ1を骨髄腔に挿入したまま、可能な限り広い範囲で切込みを入れた後、大腿骨から髄腔嵌入ブローチ1、カットガイドプレート2、連結用ピン3、キュルシュナー鋼線を外し、骨に開けた切込みをガイドに骨切り用鋸で完全に骨を切断する。この際、V字の谷の位置に開けた孔に連結用ピン3を挿入しておけば、誤って骨切用鋸で骨を切りすぎたり、切る方向を誤らないようにメルクマールとして使用できる。
【0028】
また、連結用ピン3により大腿骨近位部に貫通孔を最低2本開けておけば、全ての器具を取り除いた後、この貫通孔を利用して、カットガイドプレート2を連結用ピン3で大腿骨近位部に固定することができ、髄腔嵌入ブローチ1に骨切り鋸が当たることなく一気にV字骨切りを行うことができる。
【0029】
次に、大腿骨遠位部の骨切りは、前捻角度と骨切り位置を決定して実施するが、図6に示すように、前捻角度は髄腔嵌入ブローチ1の各ピン係合用孔4を結ぶラインと大腿骨遠位部の位置関係を調節することで決定することができる。
【0030】
このようにして大腿骨遠位部における髄腔に差し込まれた髄腔嵌入ブローチ1は、図7に示すように、その近位部が大腿骨よりはみ出ているため、大腿骨の近位部と同様に、カットガイドプレート2と連結用ビン3で器具を組み立て、キュルシュナー鋼線で骨に固定した後、大腿骨の短縮量を見込んだ位置で骨切り用鋸を用いてV字骨切りする。
【0031】
このような前記転子下骨切り併用人工股関節器具によれば、骨切りの精度を上げることができ、骨切りのやり直しをなくすことができる。また、大腿骨遠位部の骨切り面と大腿骨近位部の骨切り面とを接合した大腿骨の髄腔軸が一致し、髄腔の形状が補正されることで、人工股関節設置術においてステムを挿入するときに、骨折の恐れがない。
【0032】
また、髄腔に嵌合する部材が髄腔内の骨切りを行なうブローチ(髄腔嵌入ブローチ1)であることから、骨切りの際に、ステム挿入のための骨切りも同時に行なえるので手術時間を短縮することができる。
【0033】
さらに、前記転子下骨切り併用人工股関節器具において、前述のように、前記カットガイドプレート2における前記ピン挿通用孔5を前記各対のスリット6、6の延長交線上に設けた場合、骨切りに用いる一対のスリット6、6の延長交線上にも前記ピン挿通用孔5が存在する。このピン挿通用孔5に、前記連結用ピン3やキルシュナー鋼線を挿通し、該連結用ピン3やキルシュナー鋼線を、さらに大腿骨の骨壁を貫通させて、前記髄腔嵌合部材におけるピン係合用孔と係合させる。前述のように所定の切込みを行なったときに、切込みの延長交線の部分に前記連結用ピンにより形成された孔が貫通しているので、この孔を基準に容易に骨切りを完了させることができる。
【0034】
図8には、Double−chevron(V字)以外の骨切り方法に対応するカットガイドプレート2を示す。同図(a)は大腿骨を骨軸に対して直角に骨切りする水平(transverse)カット、ステップカット(stepcut)、同図(b)は斜め(oblique)カット用のカットガイド2である。これらを用いれば、精度の良い骨切りが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意のものとすることができることは云うまでもない。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、転子下にて切骨分離した大腿骨における2個の切骨部位を所定形状に骨切りするために用いる器具であって、所定間隔で一列に並ぶ複数のピン係合用孔を設けた大腿骨に嵌入する髄腔嵌入ブローチと、前記ピン係合用孔と同一の間隔でもって一列に並ぶ複数個のピン挿通用孔を設けた大腿骨の外表面上に設置するカットガイドプレートと、該カットガイドプレートの前記ピン挿通用孔を挿通するとともに前記髄腔嵌入ブローチの前記ピン係合用孔と係合することで前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを連結する連結用ピンとを具備してなり、前記カットガイドプレートは、前記一列に並ぶピン挿通用孔の左右において複数対をなすスリットが設けられており、前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを前記連結用ピンで連結した状態で、前記スリットにより骨切用鋸刃を案内するようにしたことから、骨切りの精度を上げることができ、骨切りのやり直しをなくすことができる。また、大腿骨遠位部の骨切り面と大腿骨近位部の骨切り面とを接合した大腿骨の髄腔軸が一致し、髄腔の形状が補正されることで、人工股関節設置術においてステムを挿入するときに、骨折の恐れがない。
【0037】
また、髄腔に嵌合する部材が髄腔内の骨切りを行なうブローチであることから、骨切りの際に、ステム挿入のための骨切りも同時に行なえるので手術時間を短縮することができる。
【0038】
次に、前記カットガイドプレートにおいて、前記ピン挿通用孔が前記各対のスリットの延長交線上に設けられている場合、骨切りに用いる一対のスリットの延長交線上にも前記ピン挿通用孔が存在する。このピン挿通用孔にも、前記連結用ピンやキルシュナー鋼線を挿通し、該連結用ピンやキルシュナー鋼線を、さらに大腿骨の骨壁を貫通させて、前記髄腔嵌合部材におけるピン係合用孔と係合させる。前述のように所定の切込みを行なったときに、切込みの延長交線の部分に前記連結用ピンにより形成された孔が貫通しているので、この孔を基準に容易に骨切りを完了させることができる。
【0039】
このような新しい手術器具により、従来の方法では手術時間が平均122分要したのに対し17分減の105分となった。それに伴い、術中出血量は543mlが500mlへ減少した。その結果、術中骨折の発生率が50%から15%へ低減し、入院期間は46日から半分の23日に短縮した。
【0040】
この結果は、骨切りが正確になったために、術中の操作が容易となっただけでなく、髄腔で支持されるステムの軸と同一の軸により骨切りが行われるために回旋抵抗などの支持性が飛躍的に向上したものである。
【0041】
また、本発明の器具を用いた骨切り併用人工股関節置換術は、骨の変形や脱臼などにより通常の人工股関節置換術の適応外となる症例も治療できるようになり、多くの方々に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態の転子下骨切り併用人工股関節器具を示し、(a)は髄腔嵌入ブローチの側面図、(b)はカットガイドプレートの正面図、(c)は連結用ピンの側面図である。
【図2】図1の転子下骨切り併用人工股関節器具の適用症例を示す説明図であり、(a)は変形した大腿骨の状態、(b)は図1の転子下骨切り併用人工股関節器具を用いて大腿骨を補正し、人工股関節設置術を行なった後の状態を示す。
【図3】本発明実施形態の転子下骨切り併用人工股関節器具の使用状態を示す説明図であり、特に、髄腔嵌入ブローチを大腿骨近位部髄腔に嵌入した状態を示す。
【図4】本発明実施形態の転子下骨切り併用人工股関節器具の使用状態を示す説明図である。
【図5】図4の状態で骨切りを行なった後の大腿骨近位部を示す、骨の側面図である。
【図6】本発明実施形態の転子下骨切り併用人工股関節器具の使用状態を示す説明図であり、特に、髄腔嵌入ブローチを大腿骨遠位部髄腔に嵌入した状態を示す。
【図7】カットガイドプレートの案内により、骨に切込みを入れる作業の様子を示す斜視図である。
【図8】別実施形態によるカットガイドプレートを示し正面図であり、(a)は水平またはステップカット用のもの、(b)は斜めカット用のものを示す。
【図9】従来技術における転子下骨切りの方法と器具を示す説明図である。
【符号の説明】
1 髄腔嵌入ブローチ
2 カットガイドプレート
3 連結用ピン
4 ピン係合用孔
5 ピン挿通用孔
6 スリット
Claims (2)
- 転子下にて切骨分離した大腿骨における2個の切骨部位を所定形状に骨切りするために用いる器具であって、所定間隔で一列に並ぶ複数のピン係合用孔を設けた大腿骨に嵌入する髄腔嵌入ブローチと、前記ピン係合用孔と同一の間隔でもって一列に並ぶ複数個のピン挿通用孔を設けた大腿骨の外表面上に設置するカットガイドプレートと、該カットガイドプレートの前記ピン挿通用孔を挿通するとともに前記髄腔嵌入ブローチの前記ピン係合用孔と係合することで前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを連結する連結用ピンとを具備してなり、前記カットガイドプレートは、前記一列に並ぶピン挿通用孔の左右において複数対をなすスリットが設けられており、前記髄腔嵌入ブローチと前記カットガイドプレートとを前記連結用ピンで連結した状態で、前記スリットにより骨切用鋸刃を案内するようにしたことを特徴とする転子下骨切り併用人工股関節器具。
- 前記カットガイドプレートにおいて、前記ピン挿通用孔が前記各対のスリットの延長交線上に設けられていることを特徴とする請求項1記載の転子下骨切り併用人工股関節器具。
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