JP2005000034A - 全能性幹細胞培養用フィーダー - Google Patents

全能性幹細胞培養用フィーダー Download PDF

Info

Publication number
JP2005000034A
JP2005000034A JP2003165315A JP2003165315A JP2005000034A JP 2005000034 A JP2005000034 A JP 2005000034A JP 2003165315 A JP2003165315 A JP 2003165315A JP 2003165315 A JP2003165315 A JP 2003165315A JP 2005000034 A JP2005000034 A JP 2005000034A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
cell
feeder
totipotent stem
stem cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2003165315A
Other languages
English (en)
Inventor
Tomoyuki Miyabayashi
朋之 宮林
Seiji Sakano
誠治 坂野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Corp filed Critical Asahi Kasei Corp
Priority to JP2003165315A priority Critical patent/JP2005000034A/ja
Publication of JP2005000034A publication Critical patent/JP2005000034A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】マウス初代線維芽細胞やその分泌成分を用いずに全能性幹細胞を未分化な状態で培養させることのできるフィーダー及びそれを用いる全能性幹細胞の培養方法の提供。
【解決手段】ノッチリガンド蛋白質が固定化されたフィーダーを全能性幹細胞培養用フィーダーとして用いる。ノッチリガンド蛋白質には、デルタ1、デルタ2、デルタ3、ジャグド1、ジャグド2が用いられる。ノッチリガンド蛋白質は、ヒト由来細胞の細胞膜に遺伝子工学的にノッチリガンド蛋白質を発現させることにより固定することが望ましい。
全能性幹細胞をこのフィーダー上で培養すると未分化状態を維持したまま全能性幹細胞を培養することができる。
細胞培養、細胞移植、創薬、遺伝子治療等の分野で利用することができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、全能性幹細胞の培養用フィーダーおよび該培養用フィーダーを用いた全能性幹細胞培養方法に関する。より詳細には、本発明は、マウス初代線維芽細胞およびマウス初代線維芽細胞由来成分非存在下での、未分化状態の全能性幹細胞培養用フィーダーおよび該培養用フィーダーを用いた全能性幹細胞の培養方法を提供するものである。本発明は、細胞培養、組織移植、創薬、および遺伝子治療の分野で応用することができる。
【0002】
【従来の技術】
外傷や病気、さらには加齢などによって傷害を受けた臓器・組織は再生を促進し、その機能を回復させる必要がある。特に、心臓・肝臓・腎臓・膵臓などの実質臓器は生命維持に必須であるためその機能低下・廃絶は死に直結することから、臓器移植により救命を図る移植医療が盛んに行われている。しかし、恒常的なドナー不足からその解決には新たなアプローチが必要になっている。
【0003】
最近になり、胚、或いは成体に存在し、無制限に分裂して、ひとつ或いは複数の方向に分化する能力を有すると考えられる幹細胞を利用して組織・器官の作製を行い、欠損組織の補填を行う再生医療が、従来の臓器移植の欠点を凌駕する治療法として注目されている。
【0004】
具体的には、幹細胞を増殖させた後、分化させ細胞移植に用いたり、人工支持組織の利用と併せ人工的な組織構築を行い、それを生体内へ移植したり人工臓器として利用したりすることなどが考えられている。幹細胞を細胞移植治療や組織工学に利用できれば、ドナーにおける移植片摘出後の組織欠損やドナー不足など、従来の自家移植を含む移植治療が抱える問題点を解決できると期待される。
【0005】
幹細胞は、血管、神経、血液、軟骨、骨、肝臓、膵臓など数々の分野で同定されているが、そのなかでも特に全ての細胞型に分化する能力を有する全能性幹細胞は、上述の再生医療分野のほか、創薬、および遺伝子治療に用いるための細胞ならびに組織を容易に提供し得る細胞として特に注目されている。
【0006】
全能性幹細胞の一例として、胚性幹(Embryonic Stem、以下ES)細胞や、胚性生殖(Embryonic Germ、以下EG)細胞が知られている。ES細胞は、マウスの胚盤胞期の内部細胞塊(Inner Cell Mass, ICM)から分離された細胞株である(非特許文献1)。個体を構成する細胞は胚盤胞期の内部細胞塊(Inner Cell Mass,以下 ICM)あるいは原腸胚上層(epiblast、以下エピブラスト)から派生した一次外胚葉に由来しており、ICM およびエピブラストは全能性を持った幹細胞群であるといえる。ES細胞は各種個体形成組織への分化能を保持し、正常な胚とキメラ胚を形成させることにより、成体のあらゆる成熟細胞へと分化する能力を保有している。また、試験管内の分化誘導条件によっても、血液細胞、心筋細胞、血管内皮細胞、神経細胞、色素細胞、膵内分泌細胞など様々な細胞を生成させる能力をもっている(非特許文献2)。
【0007】
EG細胞は始原生殖細胞をLIF(Leukemia Inhibitory Factor)とbFGF(basic Fibroblast Growth Factor)存在下で培養することにより樹立された細胞であり(非特許文献3)、ES細胞と同様に各種組織への分化能を有している。
【0008】
最近になって、マウス以外でもES細胞株の樹立が報告され、マウスES細胞と同様多分化能を有していることが示されている(ウシES細胞:非特許文献4、 豚ES細胞:非特許文献5、羊ES細胞:非特許文献6、ハムスターES細胞:非特許文献7、 アカゲザルES細胞:非特許文献8、マーモセットES細胞:非特許文献9、ヒトES細胞:非特許文献10、非特許文献11)。
【0009】
ES細胞の未分化を維持するには、通常マウス胎仔由来の初代線維芽細胞をフィーダー細胞として用いて共培養することが必要である。霊長類のES細胞株の未分化維持においても同様の方法が用いられている(非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14)。
【0010】
しかし、マウス初代線維芽細胞の調製は煩雑である。即ち、妊娠マウスから13.5から15.5日の胚を取り出し、酵素処理によって胚体を分解し、ディッシュ上に得られた線維芽細胞を回収する。初代細胞であるため、品質管理は複雑で、GMP適応レベルの管理は困難であり、ES細胞の未分化維持能も、用いる胚体により異なる可能性が考えられる。この煩雑な調製作業を経由しないES細胞培養方法として、マウス胚線維芽細胞のセルラインであるSTO細胞(ATCC 56−X)を用いる方法がある。しかし、STO細胞のES細胞未分化維持能は変化しやすく、ES細胞の安定的な培養にはマウス初代線維芽細胞の方が優れている。
【0011】
また、ヒトES細胞に対してマウス由来の線維芽細胞を使用することは、異種間の培養であるため、内在性ウイルスの感染やさらに組換えによって新たな感染性ウイルスを生み出す危険性が指摘されている(非特許文献15)。このような観点から米国食品衛生局(FDA)では、異種移植に関して特段の注意を諮るように極めて重い規制案を提示しており、日本でも同様な条件で異種移植に関する規制制定に向かっている。したがって、医療用途でのヒトES細胞の利用を目的とした培養方法においては異種動物細胞間での接触をでき得る限り回避した培養方法の開発が安全性と製品開発コストの観点から望まれる。つまり、マウス由来細胞を用いる上記のES細胞未分化維持培養方法は、医療用途を目的としたES細胞の培養には適していない。マウス由来フィーダー細胞を用いない霊長類ES細胞の培養方法として、マウス初代線維芽細胞の分泌成分を培養培地中に加える方法が報告されている(特許文献1)。しかし、この場合においても培養中のES細胞がマウス細胞から分泌される未同定の因子に曝されることから、このような環境で培養されたES細胞は医療用途の使用には適していないうえに、内在性ウイルスの感染の危険性も残されている。従って、マウス初代線維芽細胞との共培養による欠点は完全に解消はされていない。
【0012】
マウス由来フィーダー細胞並びにマウスフィーダー細胞由来分泌成分を用いないマウスES細胞の未分化維持培養方法として、ゼラチンをコートした培養皿を用いる培養方法が既に知られているが、この場合には、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor, LIF)の培地への添加が必須である(非特許文献16)。加えて、LIFの効果は極めて特定のマウス系統(129/sv系やC57BL/6系)由来のES細胞に限定的である。特に霊長類のES細胞においては、培地中へのLIFの添加のみでは未分化状態を維持することができないことが明らかにされている(非特許文献17、非特許文献18)。
【0013】
従って、全能性幹細胞の医療用途ヘの使用を目的とした安全かつ簡便並びに低コストでの未分化状態を維持する培養方法は現時点では未確立である。
【0014】
【特許文献1】特開2001−17163号公報
【非特許文献1】Evansら、Nature, 292, p154, 1981年
【非特許文献2】仲野徹、最新医学別冊−再生医学、p81−89、2000
【非特許文献3】Matsuiら、Cell,70,p841,1992年、Resnicら、Nature,359,p550,1992年
【非特許文献4】Schellanderら、Theriogenology,31,p15−17,1989年
【非特許文献5】Strojekら、Theriogenology,33:p901, 1990年
【非特許文献6】Handyside、Roux’s Arch.De v.Biol.,196:p185,1987年
【非特許文献7】Doetschmanら,Dev.Biol.,127,p224,1988年
【非特許文献8】Thomsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92,p7844,1995年
【非特許文献9】Thomsonら、Biology of Production,55,p254,1996年
【非特許文献10】Thomsonら、Science, 282, P1145, 1998年
【非特許文献11】Reubinoffら、Nature Biotech, 18, p399, 2000年
【非特許文献12】Thomsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, p7844, 1995年
【非特許文献13】Thomsonら、Science, 282, p1145, 1998年
【非特許文献14】Reubinoffら、 Nature Biotech, 18, p399, 2000年
【非特許文献15】van der Laanら、Nature, 407, p90, 2000年
【非特許文献16】Smithら、 Dev. Biol., 121, p1, 1987年
【非特許文献17】Thomsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, p7844, 1995年
【非特許文献18】Thomsonら、Science, 282, p1145, 1998年
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、マウス由来フィーダー細胞、或いはその分泌成分を用いずに全能性幹細胞を未分化な状態で培養させ得る全能性幹細胞培養用フィーダー及びそれを用いて全能性幹細胞を培養する方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
ノッチ(Notch)はショウジョウバエで発見された神経細胞の分化制御に関わるリセプター型膜蛋白質であり、無脊椎動物、脊椎動物の分類を越えた広い動物種から見いだされている。このノッチリセプター蛋白質を活性化して細胞の分化を抑制するシグナルを伝達するリガンド分子としては、ショウジョウバエノッチのリガンド蛋白質としてショウジョウバエデルタ(Delta)およびショウジョウバエセレイト(Serrate)の2つが見いだされており、リセプターのノッチと同様に広い動物種からノッチリガンドホモログが見いだされている(Artavanis−Tsakonas et al., Science 285,770−776,1999)。
【0017】
ヒトノッチホモログは4種類の分子が報告され、ヒトノッチリガンド蛋白質に関しては5種類の分子が報告されている。詳細には、デルタ型リガンド蛋白質としてヒトデルタ1(国際公開公報WO97/19172およびGray et al., Am.J.Pathol. 154,785−795,1999)、ヒトデルタ2(国際公開公報WO98/51799、Shutter et al., Genes Dev. 14,1313−1318,2000:本願明細書ではDll4と命名、および国際公開公報WO98/45434:本出願ではDelta−3と命名;本出願ではこれら分子をデルタ2とする)、ヒトデルタ3(日本公開特許公報平11−299493及びBulman et al., Nature Genetics 24,438−441,2000)が、セレイト型リガンド蛋白質としてヒトジャグド1(国際公開公報WO96/27610、国際公開公報WO97/19172及びOda et al., Genomics 43,376−379,1997)、ヒトジャグド2(国際公開公報WO98/02458及びLuo et al., Mol.Cell.Biol. 17,6057−6067,1997)がこれまでに報告されている。
【0018】
これらノッチリガンド分子について、特定の細胞において細胞の分化を抑制することが知られている。たとえば、ラットノッチリガンド蛋白質の一つラットジャグド1は筋肉未分化細胞株の分化抑制作用を有していることが示されている(Lindsell et al.,Cell80,909−917,1995)。また、血液細胞に関しては、これら5種のヒトノッチリガンド蛋白質が血液細胞の分化を抑制することが、国際公開公報WO97/19172、国際公開公報WO98/02458、国際公開公報WO98/51799、日本公開特許公報平11−299493に示されている。
【0019】
しかしながら、これまでノッチリガンド蛋白質の作用はごく限られた細胞でのみ明らかにされており、全能性幹細胞に対するノッチリガンド蛋白質の作用は全く知られていなかった。
本発明者らは、全能性幹細胞の未分化状態を維持して増殖させるフィーダーに関して、多方面から種々の検討を行った結果、固定化されたノッチリガンド蛋白質が、予想外にも優れた全能性幹細胞の増殖作用を有していることを初めて見出し、これらの知見に基づいて本研究を完成させた。
【0020】
すなわち、本発明は、次のとおりの全能性幹細胞培養用フィーダー及びそれを用いる全能性幹細胞を未分化状態で維持する全能性幹細胞の培養方法に関する。
(1) ノッチリガンド蛋白質が、固定化された状態で全能性幹細胞と接触するようにしたことを特徴とした全能性幹細胞培養用フィーダー。
(2) ノッチリガンド蛋白質が、デルタ1、デルタ2、デルタ3.ジャグド1、ジャグド2のいずれかである前記(1)記載の全能性幹細胞培養用フィーダー。
(3) ノッチリガンド蛋白質が、任意の細胞の細胞膜に遺伝子工学的に発現させることにより固定化されている前記(1)または(2)記載の全能性幹細胞培養用フィーダー。
(4) 任意の細胞が霊長類由来である前記(3)に記載の全能性幹細胞培養用フィーダー。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載の全能性幹細胞培養用フィーダーを用いて全能性幹細胞を培養し、その未分化状態を維持することよりなる全能性幹細胞の培養方法。
【0021】
本発明は、全能性幹細胞を未分化な状態で増殖させ得る全能性幹細胞培養用フィーダー、および、それを用いた培養方法を提供する。本発明において霊長類とは分類学上サル目(Primates)に含まれるすべての生物が含まれ、具体的にはヒト、カニクイザル、アフリカミドリザルなどが含まれる。従って本発明によって提供される培養用フィーダーおよびそれを用いた培養方法は、細胞移植用途で用いる細胞ソースとしての全能性幹細胞を産生するために適用され得る。霊長類由来の全能性幹細胞を利用することにより得られる多くの恩恵に加え、本発明によって提供されるフィーダーおよびそれを用いた培養方法は、1つ、もしくは多数の遺伝的な改変を有する全能性幹細胞を産生するために適用され得る。このような適用の例は、疾患について細胞ベースでのモデルの開発、ならびに遺伝病を処置するために移植について特異化された組織の開発を含むが、これに限定されない。
【0022】
以下の用語は他で述べない限り、ここで提供されるように定義される。本明細書で使用される他の全ての用語は、他に述べない限り、その用語に関する特定の分野でのその語法に関して定義される。
【0023】
幹細胞:幹細胞とは、特異化された機能を有する他の細胞型、即ち、最終的に分化した細胞、もしくは、より狭い範囲の細胞型に分化可能な他の幹細胞型に分化し得る細胞を指す。
【0024】
全能性幹細胞:全能性幹細胞とは、多能性の細胞および完全に分化した細胞(すなわち、種々の細胞へと、もはや分化し得ない細胞)を含む任意の細胞型へと分化し得る細胞のことを言う。
【0025】
多能性幹細胞:多能性幹細胞とは、必ずしも全ての型にならないけれども、異なる多数の細胞型のうちの1つへと分化し得る細胞をいう。多能性細胞の1つの例は、骨髄幹細胞であり、この細胞はリンパ球および赤血球のような種々の血液細胞型へと分化し得る。
【0026】
胚性幹細胞:胚性幹細胞とは、幹細胞の中でも特に前着床段階の胚の、桑実胚または胚盤胞段階から得られた全能性の細胞をいい、ES細胞とも呼ばれる。 また、胚性幹細胞には、精子あるいは卵子になると決まっている、胚または胎児(胎仔)の始原生殖細胞に由来する多能性の幹細胞のことをいう場合もある。ただし、この細胞は胚性生殖(Embryonic Germ、EG)細胞と呼ばれて胚性幹細胞と区別される場合もある。本明細書中で用いる胚性幹細胞は、いかなる動物種のものであってよく、例えばヒトを含む霊長類、霊長類以外の哺乳類、鳥類などの胚性幹細胞が挙げられる。
【0027】
全能性:全能性とは、多能性の細胞および完全に分化した細胞(すなわち、種々の細胞へと、もはや分化し得ない細胞)を含む任意の細胞型へと分化し得る状態を言う。
【0028】
多能性:多能性とは、必ずしも全ての型にはならないけれども、異なる多数の細胞型のうちの1つへと分化し得る状態をいう。
【0029】
未分化:未分化とは、ある細胞集団が、1つまたは複数の、さらに分化が進んだ状態の細胞に分化し得る能力を有する細胞を含んでいる状態であることをいう。
【0030】
フィーダー:本発明を記載する目的のために用いられるフィーダーとは、 全能性幹細胞がその上にプレートされ、プレートされた全能性幹細胞の増殖の助けとなる環境を提供するものをいう。
【0031】
フィーダー細胞:本発明を記載する目的のために用いられるフィーダー細胞とは、 全能性幹細胞がその上にプレートされる非全能性幹細胞をいい、非全能性幹細胞は、プレートされた全能性幹細胞の増殖の助けとなる環境を提供する。
【0032】
固定化:本明細書を記載するために用いられる固定化とは、ポリペプチドが、流動的、或いは非流動的に、任意の高分子物質、多孔質体、脂質2重相または細胞などに付着して、または埋め込まれた状態で存在している状態をいう。また、遺伝子工学的に細胞内、或いは細胞膜上にポリペプチドを発現させた状態も含まれる。
【0033】
高分子物質:高分子物質とは、1種以上の繰り返し構成単位の単量体が1次元、2次元、3次元的に連なった分子量数百以上の物質のことをいう。
【0034】
細胞由来成分:細胞から分泌される成分、内容物、および細胞膜成分など、細胞に由来する全ての成分をいう。
【0035】
細胞培地:細胞培地とは、培養において全能性幹細胞の増殖を支持するために有効な、塩および栄養素の溶液をいう。
【0036】
本発明は、全能性幹細胞を未分化の状態で、増殖および維持させ得るフィーダーおよびそれを用いた培養方法を提供する。本発明で提供するフィーダーならびにそれを用いた培養方法は、従来より簡便に、安全に、未分化の全能性幹細胞を増殖し、そして維持する。本明細書で提供されるフィーダー、およびそれを用いた培養方法を使用して、未分化な全能性幹細胞を増殖させる能力は、重要な治療適用を有する単一もしくは複数の遺伝的改変を有する全能性幹細胞系を産生する能力を含む重要な利益を提供する。
【0037】
本発明のフィーダーは、ノッチリガンド蛋白質を活性成分として含有するものであれば如何なるものであってもよい。例えば、ノッチリガンド蛋白質を保持した高分子物質、または、ノッチリガンド蛋白質を遺伝子工学的にその表面に発現させた細胞などが挙げられるがこれらに限定されない。本発明のフィーダーの活性成分として含有されるノッチリガンド蛋白質は、デルタ1、デルタ2、デルタ3、ジャグド1、ジャグド2の5種類のなかの何れであっても良い。
【0038】
ヒトノッチリガンド遺伝子の入手方法、発現ベクターの作製、発現細胞の作製、リコンビナント蛋白質の製造に関しては国際公開公報WO97/19172、国際公開公報WO98/51799、日本公開特許公報平11−299493、国際公開公報WO98/02458に開示されており、これらの方法によって作製が可能である。また、これらを簡単にまとめたものを参考例として下記に示した。また他の生物種のノッチリガンド蛋白質に関しても同様な方法で作製が可能である。
【0039】
本発明のフィーダーは、動物細胞培養用基礎培地である任意の哺乳類細胞培養基本培地とともに使用することができる。動物細胞基本培地の例としては、ダルベッコ改変イーグル培地:DMEM、ノックアウトDMEM、グラスゴーMEM:GMEM、RPMI1640、IMDM(以上 GIBCO社製、米国)などが挙げられるがこれらに限定されない。1つの実施態様において、細胞培地はダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)である。さらにこれらの基礎培地に血清または血清代替物としての各種増殖因子を添加して用いることもできる。
【0040】
血清は、幹細胞ならびに全能性幹細胞の増殖および生存性の維持に効果的である栄養素を供給する任意の血清、または、血清ベースの溶液であり得る。このような血清の例には、ウシ胎仔血清(FCS)、ウシ血清(CS)、馬血清(HS)などがあり、また、血清代替物としては当業者に周知のもの、蛋白質、アミノ酸、脂質、ビタミンなどを単独で、或いは組み合わせて用いることが出来る。蛋白質としてはインスリン、トランスフェリン、アルブミン、ペプトン、FGF(Fibroblast Growth Factor)、EGF(Epitherial Growth Factor)などが、アミノ酸としてはアルギニン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンなどが、脂質としてはコレステロール、トリグリセリド、リポ蛋白質、リン脂質などが、ビタミンとしては、パントテン酸、コリン、葉酸、イノシトール、ニコチン酸アミド、リボフラビン、チアミン、ピリドキシンなどが例示されるがこれらに限定されない。1つの実施態様において、血清はウシ胎仔血清である。より特定の実施態様において、ウシ胎仔血清は約25%と約1%との間の濃度で提供される。さらにより特定の実施態様において、細胞培地でのウシ胎仔血清濃度は15%である。また、他の実施態様において、血清代替物はノックアウト血清リプレースメント:KSR(GIBCOBRL社製、米国)である。
【0041】
細胞培地は、抗酸化剤(還元剤)(例えば、β‐ルカプトエタノール)も含む。ある好適な実施態様において、β‐メルカプトエタノールは、約0.1mMの濃度を有する。他の抗酸化剤 (例えば、モノチオグリセロール、もしくは、ジチオスレイトール (「DTT」)の単独もしくは組み合わせ)が同様の効果のために使用され得る。さらに他の等価な物質は、細胞培養の分野の当業者に周知である。
【0042】
本発明のフィーダーは、活性成分であるノッチリガンド蛋白質を任意の高分子物質に含有させて使用する。高分子物質とは、1種以上の繰り返し構成単位の単量体が1次元、2次元、3次元的に連なった分子量数百以上の物質のことをいう。高分子物質は、大きく天然高分子物質、半合成高分子物質、合成高分子物質の3つに分類することができ、本発明においていずれの高分子物質も使用することができる。例えば、天然高分子物質としては、マイカ(雲母)、アスベスト(石綿)、グラファイト(石墨)、ダイアモンド、でんぷん、セルロース、アルギン酸等に代表される糖類及びゼラチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン等に代表されるタンパク質等が挙げられる。半合成高分子物質としては、ガラス、硝酸セルロース、酢酸セルロース、塩酸ゴム、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。合成高分子物質としては、ポリホスホニトリルクロライド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体に代表されるような2種類以上の合成単量体からなる共重合体等が挙げられる。コーティング処理のし易さを考慮すると、有機高分子物質が好ましく、タンパク質や糖、並びに有機合成高分子物質がさらに好ましい。
【0043】
本発明は全能性幹細胞を増殖するためのフィーダーおよび、それを用いた培養方法、さらに本発明のフィーダーを用いて増殖させた全能性幹細胞の培養物を提供する。
【0044】
本発明のフィーダーを用いて培養される細胞には、以下に示す、公知の方法および材料を使用して入手し得る全ての全能性幹細胞が含まれる。
マウス全能性幹細胞:Evansら、Nature, 292, p154, 1981年、ウシES細胞:Schellanderら、Theriogenology,31,p15−17,1989年、豚ES細胞:Strojekら、Theriogenology,33:p901, 1990年、羊ES細胞:Handyside、Roux’s Arch.Dev.Biol.,196:p185,1987年、ハムスターES細胞:Doetschmanら,Dev.Biol.,127、p224,1988年、 サルES細胞:Thomsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, p7844, 1995年、ヒトES細胞:Thomsonら、Science, 282, p1145, 1998年、Reubinoffら、Nature Biotech, 18, p399, 2000年。
【0045】
本発明のフィーダーを使用して全能性幹細胞の単離が可能であり、また、一旦単離された全能性幹細胞を、本発明のフィーダー細胞を用いて未分化な状態で培養し得る。
本発明のフィーダーを用いて培養した全能性幹細胞の未分化程度は細胞膜状に存在するアルカリホスファターゼ(ALP)活性を測定することにより確認することができる。未分化な全能性幹細胞ではALPの活性が維持され、分化すると減少することが知られている(Williamsら、Nature、336、pp684、1988年、Thomsonら、Science, 282, p1145, 1998年)。不溶性基質を用いた染色法、あるいは水溶性基質を用いた分光学的測定法などによりアルカリホスファターゼ(ALP)活性を検出する方法が挙げられる。
【0046】
一つの実施態様において、分光学的測定法によりALP活性を定量することができる。培養ディッシュ上の細胞にパラニトロフェニルホスフェイト(pNPP)のアルカリ性溶液を添加する。細胞膜状に存在するALPによってpNPPが加水分解され、パラニトロフェノールが生じる。生成した溶液の405nmの吸光度を測定することによって、アルカリホスファターゼ活性を定量することができる。実施例5に記載の方法により、本発明のフィーダー上に培養した全能性幹細胞のALP活性を測定すると、フィーダーを用いずに培養したコントロールの全能性幹細胞にくらべ有意に高いALP活性を有していることが示される。即ち本発明のフィーダーが、全能性幹細胞の未分化状態を維持して増殖させ得ることが確認される。
【0047】
他の実施態様において、ALP染色法によりALP活性を検出することもできる。培養ディッシュ上の細胞に、基質としてリン酸エステルとジアゾニウム塩を含む反応溶液を添加する。細胞膜状に存在するアルカリホスファターゼによりリン酸エステルが加水分解され、次いでジアゾニウム塩とカップリング反応することによりアゾ色素が生じ、ALP活性部位に色素が沈殿する。染色されたコロニー数を計測することにより細胞のALP活性を定量化することが可能となり、即ち細胞の未分化度合いを定量することができる。
【0048】
また、全能性幹細胞の未分化程度はOct−3/4遺伝子の発現量を測定することによって確認することができる。Oct−3/4遺伝子はPOUファミリーに属する転写因子で、全能性幹細胞、胚性癌細胞(EC細胞)で、未分化状態特異的に発現し(Okamotoら、Cell,60,p461,1990年)、胚発生においても未分化細胞系譜においてのみ発現し(Scholer、Trend Genet,7,p323,1991年)、さらに、Oct−3/4遺伝子破壊マウスのホモ個体は胚盤胞期で発生を停止することから未分化状態維持に重要な機能を有していることが明らかにされている(Nicholsら、Cell,95,p379,1998年)。
【0049】
また、一方、Oct−3/4遺伝子の過剰発現は全能性幹細胞の分化を促進することが最近明らかにされ(Niwaら、Nat.Genet.24、p372、2000年)、Oct−3/4の発現量をある一定の範囲に保つことが未分化状態の維持に重要である。Oct−3/4遺伝子の発現量を測定する一つの実施態様としては定量的PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いることができる。一つの実施態様においてはリアルタイムPCR法が用いられ、幅広いダイナミックレンジをもち、簡便で信頼性のある定量測定が可能である。リアルタイムPCR技術には、ABI PRISM7700TM(Applied Biosystems)を使用したTaqManプローブを用いる方法や、LightCyclerTM(ロシュ・ダイアグノスティック)を用いた方法がある。特に後者の場合はPCRの温度サイクルが数十分で終了する高速反応サイクルのもとで、サイクルごとに合成されるDNAの増幅量変化をリアルタイムに検出できる。リアルタイムPCR法のDNA検出法としては、DNA結合色素(インターカレーター)、ハイブリダイゼーション・プローブ(キッシングプローブ)、TaqManプローブおよびSunriseユニプライマー(モレキュラー・ビーコン)を利用する4種類の方法がある。
【0050】
また、DNA結合色素、例えばSYBR GreenIを利用してOct−3/4遺伝子の発現量を解析することができる。SYBR GreenIはDNAの二本鎖特異的に結合色素であり、二本鎖に結合することで本来の蛍光強度が増強される。PCR反応時にSYBR GreenIを加え、伸張反応の各サイクルの終わりに蛍光強度を測定すれば、PCR産物の増加が検出できる。Oct−3/4遺伝子を検出するには通常のPCRと同様にOct−3/4遺伝子の配列をもとに、市販の遺伝子解析ソフトウェアなどを用いてプライマーを設計する。SYBR GreenIは非特異的産物も検出してしまうため最適なプライマーの設定が必要となる。設計基準としては、オリゴマーの長さ、配列の塩基組成、GC含量、およびTm値などに留意が必要である。
【0051】
多くの場合、定量PCRにおいて明らかにすることを目的とするのは、サンプル一定量当たりの目的DNA量である。このためには最初に反応系に加えたサンプル量の評価が必要である。この場合サンプル量を反映するような内部標準となる別のDNAを目的DNAとは別に測定し、最初に反応系に加えたサンプル量を補正することができる。サンプル量を補正する目的で用いる内部標準には、通常、組織によって発現量に差がないと考えられているハウスキーピング遺伝子を用いることができる。例えば、解糖系の主要酵素であるグリセロアルデヒドリン酸脱水素酵素(GAPDH)、細胞骨格の構成成分であるβアクチンまたはγアクチン、リボゾームの構成蛋白質である、などの遺伝子が挙げられる。
【0052】
Oct−3/4遺伝子の発現レベルは、本発明の全能性幹細胞培養用フィーダーを用いて培養された細胞について決定することができる。フィーダーを用いずに培養した、即ち、全能性幹細胞から分化誘導されたコントロール細胞のOct−3/4遺伝子発現量にくらべ、有意にOct−3/4遺伝子の発現量を維持させることができる活性を有するフィーダーが、全能性幹細胞の未分化を維持する全能性幹細胞培養用フィーダーであるとみなされる。
【0053】
最適化された全能性幹細胞の未分化維持培養用フィーダーをスクリーニングするさらに他の方法として、ステージ特異的胚抗原(Stage Specific Embryonic Antigen)(以後SSEAと記載)−1、SSEA−3、SSEA−4などの未分化な細胞に特異的に発現する抗原の検出方法が挙げられる(Smithら、Nature、336,p688,1988年、Solterら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,75,p5565,1978年、Kannagiら、EMBO J.2,p2355,1983年)。
【0054】
一つの実施態様において、SSEA−1などの表面抗原は、同抗原を認識する特異的抗体(一次抗体)とインキュベートし、さらに蛍光標識のようなレポーターと結合した第二の抗体(二次抗体)とインキュベートすることにより、標識することができる。この操作により目的の抗原を発現する細胞が、蛍光性になる。次いで、標識された細胞を標準的な方法、例えばフローサイトメーターを用いて、計数、さらには分取され得る。次いで、標識および非標識細胞の数は、目的とする培養用フィーダーの効果を決定するために比較され得る。
【0055】
あるいは、非標識細胞表面マーカー抗体に曝露された後、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)形式において、その細胞は、抗細胞表面抗原抗体(例えば抗SSEA−1抗体)に対して特異的な第二の抗体に曝露され得、そこから、所望の表面抗原を発現する細胞の数が、比色定量的に、または蛍光を測定することにより定量され得る。表面抗原を発現する細胞を定量するさらに他の方法も、細胞培養の当業者に周知である。
【0056】
本発明によって提供される、全能性幹細胞の増殖に対する改善されたフィーダーおよび培養方法は、全能性幹細胞が有用であるすべての技術に対して適用することができる。
【0057】
本発明のフィーダーおよびそれを用いた培養方法により産生される細胞は、分化させ、細胞移植に用いたり、人工支持組織の利用と供せ人工的な組織構築に使用され、生体内へ移植したり人工臓器として利用されうる。全能性幹細胞の細胞移植治療や組織工学への利用は、ドナーにおける移植片摘出後の組織欠損やドナー不足など、従来の自家移植を含む移植治療が抱える問題点を解決できる。
【0058】
本発明のフィーダーおよびそれを用いた培養方法により得られた、非改変および改変された全能性細胞の培養物は、全能性幹細胞のモニタリングまたは幹細胞収集を改良する物質についてスクーリングするために使用される。例えば、推定の全能性細胞分化誘導物質は、上記の方法を用いて増殖させた細胞培養物へ添加され得る。推定の全能性細胞分化誘導物質を欠損した対照細胞培養物と比較して、三胚葉系列への分化を誘導し得る物質は、全能性幹細胞分化誘導因子として同定される。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下の参考例、実施例は、本発明の特定の局面を例示し、そして本発明を実施する当業者を補助するために提供される。これらの実施例は、いかなる様式においても、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【0060】
【参考例】
各種ヒトノッチリガンド蛋白質発現細胞の作製
ヒトノッチリガンド蛋白質のcDNA並びに全長発現ベクターの作製、安定発現細胞株の作製に関し、ヒトデルタ1は国際公開公報WO97/19172に記述の方法に従い、ヒトデルタ2はWO98/51799に記述の方法に従い、ヒトデルタ3は日本公開特許公報平11−299493に従い、ヒトジャグド1は国際公開公報WO97/19172に記述の方法に従い、ヒトジャグド2は国際公開公報WO98/02458に従い、各々行った。
各ノッチリガンド蛋白質のcDNAの入手はこれらを参考にして、cDNAライブラリーより分離することも可能であるが、各々の公報に示してある国際寄託された菌より得ることができる。
【0061】
上記の公報に記載されている方法に従い、ネオマイシン耐性遺伝子を共発現する発現ベクターにつなぎ込み、各種ノッチリガンド蛋白質全長発現ベクターを作製した。尚、これらベクター作製時には、上記公報に示されたように全長ノッチリガンド蛋白質のカルボキシ末端FLAG配列を挿入してあり、目的のノッチリガンド蛋白質の発現を抗FLAG抗体によるウェスタンブロットにて確認することができる。これら発現ベクターをマウスBalb3T3細胞にエレクトロポレーション法にて遺伝子導入し、ネオマイシン(G418、インビトロジェン社)を200μg/mlとなるように添加し、限外希釈法にてクローンを選別した。
これら各々のクローンの破砕液を抗FALG抗体でウェスタンブロットし、目的の各種ノッチリガンド蛋白質発現細胞を樹立した。
【0062】
【実施例1】
ES細胞培地の作製
ES細胞を増殖させる目的で、Dulbecco’sModified Eagle Medium(以下DMEM)(GIBCO BRL社製 Cat.No.11995)に、以下に示す最終濃度で因子を添加してES細胞培地を調製した:15% ウシ胎仔血清(GIBCO BRL社製) 、0.1mM β−メルカプトエタノール(SIGMA社製)、1×非必須アミノ酸ストック(GIBCO BRL社製 Cat.No.11140−050)、2mM L−G1utamine(GIBCO BRL社製Cat.No.25030−081)、10units/ml ESGRO(CHEMICON International Inc.社製)。ただし、ESGROはマウスLIFを有効成分として含有する。ES細胞分化抑制アッセイ用の培地として、上記のES細胞培地からESGROを除いたアッセイ培地を作製した。
【0063】
【実施例2】
全能性幹細胞の培養
直径6cmの細胞培養用ディッシュに、蒸留水に0.1%の濃度でGelatin(SIGMA社製TypeA : from porcin ESkin、G2500)を溶解し、滅菌した0.1%ゼラチン水溶液5mlを添加し、37℃で30分以上静置した。ゼラチン水溶液を除いて、マイトマイシンC(協和発酵社製)処理したマウス胚性初代培養細胞(ライフテックオリエンタル社製Cat. No. YE9284400)2×10個を播種し、10%ウシ胎児血清(GIBCO BRL社製)を含むDMEM5mlで、37℃、5%COインキュベーター(タバイエスペック社製)で5時間以上培養した。マウス全能性幹細胞株D3ES細胞(Rolf Kemler、Max Planck Institutfur Immunbiologie、Stuheweg51、D−79108Freiburg、Germany、より入手可能)を、直径6cm繊維芽細胞フィーダー層上に播種し、5mlのES培地で、37℃、5% COインキュベーターで2日間培養して増殖させた。
【0064】
【実施例3】
ノッチリガンド蛋白質発現Balb−3T3細胞の培養
参考例で作製した、ノッチリガンド蛋白質、即ち、ヒトデルタ1、ヒトデルタ2、ヒトジャグド1、ヒトジャグド2をそれぞれ発現するBalb−3T3細胞(ATCC Number CCL−163)を、10%ウシ胎仔血清(GIBCO BRL社製)、10ぺニシリン、50μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM10mlに懸濁して、直径10cmの細胞培養用ディッシュに播種し、37℃、5%COインキュベーターで培養した。
【0065】
【実施例4】
ES細胞分化抑制アッセイ
実施例3で培養した、ノッチリガンド蛋白質を発現するBalb−3T3細胞をPBS(Invitrogen社製)で洗浄した。0.1%トリプシン溶液(コスモバイオ)を加え、37℃で5分間インキュベートし、細胞をディッシュから遊離させた。5mlのDMEM(10%FCS含有)を添加し、小径ピペットを使用して細胞を分散させ、15mlの滅菌チューブに移し、卓上遠心機(トミー精工)で800rpm、約5分間遠心してペレット化した。上清を除き、細胞を5mlの新鮮なDMEMに再懸濁し、血球計算盤を用いて細胞数を計測した。24wellマルチウェルプレート(FALCON社製、カタログ番号3047)に、5×10cells/wellとなるように細胞を播種し、37℃、5%COインキュベーターで一晩培養した。
【0066】
実施例2で培養したD3ES細胞をPBSで2回洗浄した。0.25%トリプシン溶液(GIBCO BRL社製)を加え、37℃で5分間インキュベートし、未分化のD3ES細胞のコロニーをフィーダーから脱離させる。5mlのES細胞培地を添加し、小径ピペットを使用して細胞コロニーを分散させ、15mlの滅菌チューブに移し、卓上遠心機(トミー精工)で800rpm、約5分間遠心してペレット化した。上清を除き、細胞を5mlの新鮮なES細胞培地に再懸濁し、0.1%のゼラチン水溶液で予めコートした直径10cmの細胞培養用ディッシュに播種し、37℃で20分間インキュベートした。20分後、浮遊細胞を含む培地をピペットで回収し、15mlの滅菌チューブに移し、卓上遠心機で800rpm、約5分間遠心してペレット化した後、上清を除き、5mlのES細胞アッセイ培地に再懸濁する。血球計算盤をもちいて細胞数を測定後、2×10cells/mlとなるようにES細胞アッセイ培地で調製し、前日に、5×10cells/wellのノッチリガンド蛋白質発現Balb−3T3細胞を播種した24wellマルチウェルプレートに、1ウェルあたり500μlずつ分注し、37℃、5%COインキュベーターで4日〜7日間培養した。
【0067】
【実施例5】
アルカリホスファターゼ定量
ES細胞のアルカリホスファターゼ活性を、p−NITROPHENYL PHOSPHATE SOLUTION(MOSS Inc.社製、PRODUCT NO.NPPD−1000、米国、またはSIGMA社製A−3469、米国)(以下、p−NPP)を用いて定量した。実施例4に記載の方法で7日間培養したES細胞の各ウェルから培地を吸引除去し、その細胞を500μlのPBSで1回洗浄後、p−NPP200μlを各ウェルに加え、室温で10分間静置した。各ウェルに25μlの8M水酸化ナトリウム溶液を添加し、反応を停止させた。各ウェルから100μlの反応液をとり、96wellマイクロテストIIIプレート(FALCON社製、カタログ番号3072)に移し、溶液の405nmの吸光度(O.D.405)と690nmの吸光度(O.D.690)を吸光度計(Molecular Devices社製、型式:SPECTRA MAX190)により測定し、O.D.405−O.D.690で算出される値をアルカリホスファターゼ活性とした。定量結果を図1に示した。ノッチリガンドを発現するBalb−3T3細胞をフィーダーとして培養したD3ES細胞のアルカリホスファターゼ活性は、コントロールのネオマイシン耐性遺伝子を発現するBal−3T3細胞をフィーダーとして培養したD3ES細胞に比べ、有意に高い活性を示した。即ち、本発明のノッチリガンド蛋白質発現フィーダーは、未分化なES細胞の培養を支持した。
【0068】
【実施例6】
ノッチリガンド蛋白質発現COS細胞の作製
アフリカミドリザル由来であるCOS7細胞(RIKEN Cell Bank: RBC0539)を、1×10cells/mlとなるようにDMEMに懸濁し、1wellあたり100μlとなるように96wellマイクロテストIIIプレートに播種して、37℃、5% COインキュベーターで12時間〜24時間培養した。次に、LipofectAMINE2000(Invitrogen社製、米国)を用いて、添付のプロトコールに従って、ノッチリガンド全長発現ベクターをCOS7細胞に導入した。
【0069】
即ち、参考例に従って作製したヒトジャグド1発現ベクター:pM KIT Jagged1FLAG並びにコントロールであるネオマイシン耐性遺伝子発現ベクター:pM KIT−neo、それぞれ1ウェルあたり200ngをCOS7細胞にトランスフェクションし、37℃、5% COインキュベーターで12時間〜24時間培養した。
【0070】
次に、D3ES細胞を上述のフィーダー上に重層した。即ち、実施例2で培養したD3ES細胞をPBSで2回洗浄した。0.25%トリプシン溶液(GIBCO BRL社製)を加え、37℃で5分間インキュベートし、未分化のD3ES細胞のコロニーをフィーダーから脱離させた。5mlのES細胞培地を添加し、小径ピペットを使用して細胞コロニーを分散させ、 15mlの滅菌チューブに移し、卓上遠心機(トミー精工)で800rpm、約5分間遠心してペレット化した。上清を除き、細胞を5mlの新鮮なES細胞アッセイ培地に再懸濁し、細胞数を計測した後、3.16×10個/mlとなるようにES細胞アッセイ培地で希釈した。ジャグド1遺伝子(Jagged1)、またはネオマイシン耐性遺伝子(neo)を導入したCOS細胞から、培地を除去し、次いで上記のES細胞懸濁液を1ウェル当たり100μl添加し、37℃、5% COインキュベーターで7日間培養した。
【0071】
実施例5に記載の方法に従ってアルカリホスファターゼ活性を測定した結果を図2に示した。ヒトJagged1遺伝子を導入したCOS7細胞上で培養したD3ES細胞は、コントロールであるネオマイシン耐性遺伝子を導入したCOS7細胞上で培養したD3ES細胞に比べ、有意に高いアルカリホスファターゼ活性を有していた。即ち、ノッチリガンド蛋白質を発現させたCOS7細胞は、ES細胞の培養を支持することが示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例5のES細胞のアルカリホスファターゼ活性を示す。
【図2】実施例6のヒトジャグト1発現COS7細胞上のES細胞のアルカリホスファターゼ活性を示す。

Claims (5)

  1. ノッチリガンド蛋白質が、固定化された状態で全能性幹細胞と接触するようにしたことを特徴とした全能性幹細胞培養用フィーダー。
  2. ノッチリガンド蛋白質が、デルタ1、デルタ2、デルタ3、ジャグド1、ジャグド2のいずれかである請求項1記載の全能性幹細胞培養用フィーダー。
  3. ノッチリガンド蛋白質が、任意の細胞の細胞膜に遺伝子工学的に発現させることにより固定化されている請求項1または2に記載の全能性幹細胞培養用フィーダー。
  4. 任意の細胞が霊長類由来細胞である請求項3に記載の全能性幹細胞培養用フィーダー。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の全能性幹細胞培養用フィーダーを用いて全能性幹細胞を培養し、その未分化状態を維持することを特徴とする全能性幹細胞の培養方法。
JP2003165315A 2003-06-10 2003-06-10 全能性幹細胞培養用フィーダー Withdrawn JP2005000034A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003165315A JP2005000034A (ja) 2003-06-10 2003-06-10 全能性幹細胞培養用フィーダー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003165315A JP2005000034A (ja) 2003-06-10 2003-06-10 全能性幹細胞培養用フィーダー

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005000034A true JP2005000034A (ja) 2005-01-06

Family

ID=34091833

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003165315A Withdrawn JP2005000034A (ja) 2003-06-10 2003-06-10 全能性幹細胞培養用フィーダー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005000034A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1676740A2 (en) 2005-01-04 2006-07-05 Delta Tooling Co., Ltd. Seat height adjusting device

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1676740A2 (en) 2005-01-04 2006-07-05 Delta Tooling Co., Ltd. Seat height adjusting device

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4148897B2 (ja) 胚性幹細胞培養用基材および培養方法
JP5717311B2 (ja) 霊長類の胚幹細胞の無血清培養
JP3880795B2 (ja) フィーダー細胞を含まない培養物中で、霊長類由来始原幹細胞を増殖させるための方法
RU2375448C2 (ru) Способ выращивания плюрипотентных стволовых клеток
US8252586B2 (en) Neural cell populations from primate pluripotent stem cells
KR101346047B1 (ko) 다능성 줄기 세포로부터 심근 세포의 분화를 유도하는 방법
JP5227318B2 (ja) 細胞増殖培地
AU2005245965B2 (en) Feeder independent extended culture of embryonic stem cells
KR101861171B1 (ko) 투석된 혈청이 있는 심근세포 배지
KR20180042437A (ko) 임상 등급 망막 색소 상피 세포의 재현성 있는 분화 방법
AU2006326853A1 (en) Direct differentiation of cardiomyocytes from human embryonic stem cells
US20090155906A1 (en) Cell differentiation suppressing agent, method of culturing cells using the same, culture solution, and cultured cell line
EP3882341A1 (en) Heart tissue model
WO2009116893A1 (ru) Способ получения эндотелиальных клеток (варианты)
JP2010500878A (ja) ポリマー膜を用いた幹細胞とフィーダー細胞の共培養方法
JP2020534004A (ja) ヒト多能性幹細胞由来の胸腺オルガノイドのインビトロ生成
US20070128727A1 (en) Methods for differentiation of embryonic stem cells
JP2006204292A (ja) ヒト胚性幹細胞分化抑制剤
JP2005013152A (ja) 細胞分化抑制剤及びこれを用いた細胞培養方法、培養液、培養された細胞
US7413904B2 (en) Human embryonic stem cells having genetic modifications
JP2005000034A (ja) 全能性幹細胞培養用フィーダー
AU7235600A (en) Methods and materials for the growth of primate-derived primordial stem cells

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20060905