JP2004536557A - 哺乳動物の腸に対する共生ミクロフローラの効果を調べるための方法およびそれに基づく胃腸関連疾患の治療 - Google Patents
哺乳動物の腸に対する共生ミクロフローラの効果を調べるための方法およびそれに基づく胃腸関連疾患の治療 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004536557A JP2004536557A JP2002544461A JP2002544461A JP2004536557A JP 2004536557 A JP2004536557 A JP 2004536557A JP 2002544461 A JP2002544461 A JP 2002544461A JP 2002544461 A JP2002544461 A JP 2002544461A JP 2004536557 A JP2004536557 A JP 2004536557A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- protein
- gene
- expression
- genes
- angiogenin
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/475—Growth factors; Growth regulators
- C07K14/515—Angiogenesic factors; Angiogenin
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P1/00—Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P1/00—Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system
- A61P1/04—Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system for ulcers, gastritis or reflux esophagitis, e.g. antacids, inhibitors of acid secretion, mucosal protectants
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P3/00—Drugs for disorders of the metabolism
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P31/00—Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P31/00—Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
- A61P31/04—Antibacterial agents
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P9/00—Drugs for disorders of the cardiovascular system
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
- C12Q1/6876—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
- C12Q1/6883—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q2600/00—Oligonucleotides characterized by their use
- C12Q2600/158—Expression markers
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Public Health (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Pharmacology & Pharmacy (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Zoology (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Analytical Chemistry (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Communicable Diseases (AREA)
- Oncology (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Vascular Medicine (AREA)
- Gastroenterology & Hepatology (AREA)
- Toxicology (AREA)
- Obesity (AREA)
- Hematology (AREA)
- Diabetes (AREA)
- Pathology (AREA)
- Heart & Thoracic Surgery (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Immunology (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Cardiology (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
Abstract
Description
【技術分野】
本発明は、哺乳動物の腸内共生ミクロフローラのコロニー形成に起因する変化を調べるための方法、および得られた情報を消化管の改変および胃腸関連疾患の治療に有用な薬剤の製造および療法に使用することに関する。
【0002】
【背景技術】
哺乳動物一般、特にヒトには、非常に複雑な多量の微生物集団が棲息している。このミクロフローラ構成成分との接触は、生まれた時に始まる。ヒトの腸には、他のどんな粘膜表面よりも微生物が密集している。したがって、この器官は、ミクロフローラが宿主の生理に顕著な影響を及ぼす可能性が高い部位である。
【0003】
病原性または他の潜在的に有害な侵入微生物の効果は調べられているが(例えば、L.Eckmann等、J.Biol.Chem.2000、275:14084〜14094、D.A.Relman、Science、1999年5月21日:284(5418) 1308〜10、D.A.Relman、Curr.Opin.Immunol.2000年4月:12(2):215〜8を参照)、共生細菌が通常どのように発生し、どのような生理を示すかについては驚くほどわずかしか知られていない。これは、部分的には、非病原性の微生物が宿主の生態をどのように調節しているかを調査するための明確な実験的に扱い易いin vivoモデル系が不足しているためだけでなく、これら微生物が、消化プロセスなどに有意な影響を与えないという見解が一般的であるためでもある。
【0004】
これまで、Bacteroides thetaiotaomicronでコロニーを形成させた成体無菌動物を用いたモデルを使用して、この共生微生物が無菌マウスに導入された後に回腸上皮フコシル化グリカンの産生を制御することが示され、また、この微生物がそれ自身の栄養摂取のためにこれらグリカンの産生を制御する方法が詳細に叙述されてきた(L.Bry等、Science 273、1380、1996;L.V.Hooper等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96、9833(1999))。これ以外、常在菌が腸の遺伝子発現をどのように調節するのか、また、それが宿主の状態にどのように影響するかについては実質的に何もわかっていない。
【0005】
本出願人らは、共生ミクロフローラが消化管の生理および成熟を規定するのに大いに寄与することを見出し、これを分子レベルで試験する手段を開発した。
【0006】
【発明の概要】
本発明の第1の態様によれば、哺乳動物の腸内共生ミクロフローラのコロニー形成に起因する変化を調べるための方法であって、
a)共生細菌がコロニーを形成した腸内および無菌の腸内で少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現を測定すること、および
b)少なくとも1つの共生細菌がコロニーを形成した腸と無菌の腸とで発現レベルが少なくとも2倍異なるa)の遺伝子を同定することを含む方法が提供される。
【0007】
適切には、複数の遺伝子の発現は、後述のDNAマイクロアレイ分析および/または定量RT−PCRによって測定するが、他の従来法を使用することもできる。このような方法の例は、定量ノーザン・ブロット法ならびに2個の試料間で異なる遺伝子を検出するPCRを基礎としたアッセイであるリプリゼンテイショナル・ディファレンス分析(Representational Differentiation分析)(RDA)(例えば、Odeberg J 等、Biomol.Eng.17、1〜9、2000)である。特に、高密度オリゴヌクレオチド・アレイの使用が、ミクロフローラの構成成分によって形成される範囲の腸機能を包括的に分析するために好ましい。
【0008】
マイクロアレイ分析は、腸で見られるような複数のタイプの細胞からなる複合組織内の宿主の応答を測定するために使用することができる。所与の微生物に対する宿主細胞の応答を詳細に示すin vivoモデルの価値は、細胞培養に基づくモデルとは異なり、その応答形成に対する系統因子および環境因子の寄与が維持され、無菌実験系で研究できることにある。
【0009】
好ましい実施形態では、応答細胞集団はその発現されたmRNA集団を撹乱することなく回収され、そのため微生物に対するその反応の特性を定量的に明らかにすることができる。これは、2つの技術、すなわちレーザ・マイクロダイセクション(laser−capture microdissection)(LCM)と、その後のレーザ捕捉試料の定量分析、例えば定量PCRおよび/またはマイクロアレイ分析とを、組み合わせることにより適切に実施される。
【0010】
本発明の方法を用いると、in vivoの宿主応答を複合組織中の特定の細胞集団に帰属させ、この細胞応答を定量的に記述することが実際に可能になる。腸の生態および宿主の生理の重要ではあるがこれまで価値を認められていなかったレギュレーターとして機能する宿主の遺伝子を同定することができる。原型の消化管内共生生物によるコロニー形成に対する応答に基づいて同定される遺伝子は、治療処置の全く新しい標的となる可能性がある。腸内微生物は、数百万年にわたる膨大な淘汰の外圧を受けて、微生物と宿主の両者がその相互関係から恩恵を得るようにその宿主を操作する微妙ではあるが有効な方法を見出してきた。微生物宿主の遺伝子標的に影響を及ぼす細菌遺伝子産物を同定し試験することにより、化学構造および作用機序がこれまで評価されなかった、または評価できなかった新しい薬剤を得ることができる。
【0011】
本発明の方法に使用される無菌の腸および共生細菌がコロニーを形成する腸は、どんな動物モデルのものでもよいが、特に単純な腸−微生物相互作用マウス・モデルが使用される。
【0012】
この方法によって、個々の共生細菌の、ならびに必要ならばこれらの組み合せの効果を調べることが可能になる。
【0013】
本出願人らは、免疫−炎症プロセスに関与または関連する遺伝子が、本発明の方法を用いて同定されそうにないことを見出した。このことは、宿主が、B.Thetaiotaomicronなどの消化管内定住微生物をその寿命全体にわたって棲息させる必要があることと矛盾しない。しかし、本発明の方法を使用して、この知見を他の共生細菌で確認することができる。
【0014】
次に、このようにして同定した遺伝子とその機能を、例えば消化プロセスに対するその効果を決定するためにさらに調べることができる。このさらに進んだ研究は、例えば任意の従来法を用いて実施することができる。
【0015】
好ましい実施形態では、本方法は、(c)b)で同定された遺伝子の機能をさらに調べるステップをさらに含む。これを実施できる適切な方法には、in vivo細胞培養アッセイにおける研究または下等真核生物モデルにおける研究ならびにトランスジェニック動物モデルなどの動物モデルにおける研究が含まれる。
【0016】
遺伝子、その関連遺伝子および遺伝子産物が操作および分析に利用可能である限りは、in vitro細胞培養アッセイ法によって、動物個体よりも簡単な系での研究が可能になるはずである。
【0017】
酵母(例えば、Saccharomyces cerevisae)、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、線虫(Caenorhbditis elegans)などの下等真核生物モデルは、ゲノムおよび多くの場合細胞機能が極めて明確な真核生物である。哺乳動物において研究対象となっている基本的特徴的機能のいくつかは、より単純な真核生命体においても維持されており、そのためそれらが分子的事象の明確なモデルとして極めて魅力的なものになっている。これらの生物は哺乳動物よりも取り扱いが容易である。
【0018】
これらの系においては、この機能は、
i)トランスジェニック・ノックアウト、
ii)ドミナント・ネガティブ実験、
iii)導入遺伝子の過剰発現、
iv)抗体結合アッセイ、
v)性質の明確な化学薬剤を用いた薬理学的介入(Pharmacological intervention)による、などの方法を用いて調べることができる。
【0019】
トランスジェニック・ノックアウト法は、例えば、遺伝子産物が正常に機能しないように遺伝子を欠失または変異させる、または遺伝子を無効にするアンチセンス・オリゴヌクレオチドを導入する組換えDNA技術を用いて、生物内遺伝子を不活性化することに基づいている。後者の場合、遺伝子のメッセンジャーRNA分子(mRNA)に相補的なアンチセンス・オリゴヌクレオチドを生物内に導入する。遺伝子の転写の所産であるメッセンジャーRNA分子(mRNA)は一本鎖であり、それが二本鎖の場合はタンパク質配列に翻訳することができない。二本鎖RNAはこの相補的断片によって形成され、得られる二本鎖RNA断片がさらにプロセシングされることはない。したがって、この遺伝子からはタンパク質は産生されない。これは通常、一過性の実験として実施される。すなわち、アンチセンス断片を細胞、モデル生物、または哺乳動物モデルに加えると、有効なアンチセンスがある限り遺伝子発現は起こらない。それが消費されると、正常な機能を取り戻し、正常/制御状態が回復されることになる。
【0020】
古典的なトランスジェニック・ノックアウト法は、変異を受けた、したがって正常に機能しない遺伝子を胚性細胞株に導入することを基礎としている。次いで、この細胞株を、正常な胚盤胞中に導入し、それによって正常なバックグラウンド由来の、および胚性幹(ES)細胞株由来の生殖細胞からなるキメラ胎児が生成される。数回の交配を経ると、このES細胞由来の変異型対立遺伝子が、生殖細胞中に見られるようになり、したがって子孫に伝達可能になる。
【0021】
今回、新しい技術によって、このような突然変異のサイレントで不活性型の遺伝が可能となり、その結果、発育が完了した時に、成体においてそれらを活性化させることが可能になる。このことは、そのような沈黙突然変異の成獣、特にマウスを、その変異遺伝子の発現を活性化する化学薬剤(ホルモン、抗生物質)に曝すことによって実施される。
【0022】
遺伝子の機能を破壊する別の方法は、ドミナント・ネガティブ実験を実施することである。この場合、標的細胞系譜において極めて高度な発現を可能にするプロモーターの転写調節の下で、欠陥のある遺伝子をモデル生物のゲノム中に導入する。この遺伝子産物を産生し、細胞内の所期の作用部位に輸送すると、この遺伝子産物は正常な遺伝子産物とこれらの部位をめぐって競争することになる。この導入遺伝子はより多量にあり、所期の機能を果たすことができないので、最終的にこの機能が撹乱されることになる。
【0023】
特定の系またはモデルにおける遺伝子の過剰発現の効果も調べることができる。この場合、複数の遺伝子コピーを試験生物に導入することも、遺伝子を高度に発現する特定のプロモーターを使用することもできる。
【0024】
導入遺伝子の過剰発現が関与する古典的トランスジェニック実験には、そのモデルには通常は存在しない遺伝子(例えば、ヒト特異的遺伝子をマウスに)を導入して、細胞の機能および/または生理に対するこの遺伝子の効果を評価することが含まれる。必要に応じ、この導入遺伝子を、最適な細胞集団を対象として発現するように、組織特異的プロモーター配列の制御の下に置くことができる。プロモーターは、体全体の全身的発現用のものと、限定された器官部位にある特異的な少数の細胞集団の極めてわずかな分布用のものの両者が存在する。
【0025】
遺伝子の効果を調べる他の手段は、遺伝子産物によるタンパク質レベルでの介入である。例えば、抗体結合アッセイを使用して、タンパク質が細胞、モデル生物、または哺乳動物内に存在するかどうかを決定し、かつ/または遺伝子産物に特異的に結合してその機能を抑制して、その所期分子パートナーとの相互作用能力を妨害することができる。
【0026】
性質の明確な化学薬剤を用いた薬理学的介入は、遺伝子が、特定のクラスの分子、例えば、Gタンパク質共役受容体、プロテアーゼ、または核内受容体に属することが確認できれば、このタイプの分子の作用薬または拮抗薬として作用することが知られている薬品を用いてその機能を評価することができ、特に有用であろう。
【0027】
本発明の方法にはどんな共生細菌でも使用することができる。特にその例としては、Bacteroides thetaiotaomicron、大腸菌、Bifidobacterium infantis、またはこれらの混合物、または従来法によって飼育された種から得られる完全な回腸および/または盲腸のミクロフローラがある。本方法での使用に特に適した細菌は、B.Thetaiotaomicronである。本出願人らは、共生フローラの様々なメンバーが異なる結果をもたらし、種間で高度な特異性を示すことを見出した。
【0028】
本発明の方法は、この共生生物が消化管遺伝子の発現に対して予期せぬ範囲の影響を与えることをすでに示した。適切に特許請求された広範な遺伝子の発現は、本発明の方法のステップ(a)で測定される。このような遺伝子の例は、栄養素の摂取と代謝、ホルモン/成熟応答、粘膜防御機能、解毒/薬剤耐性、異物代謝、運動性、腸管神経系/筋層の発生または活動、血管形成、細胞骨格/細胞外マトリックスの機能または発生、シグナル伝達、および他の基本的な細胞機能に関連する遺伝子である。
【0029】
研究対象とすることができる栄養摂取および代謝の遺伝子には、Na+/グルコースコトランスポーター(SGLT1)やラクターゼ・フロリジン−ヒドロラーゼ遺伝子などの炭水化物の摂取と代謝に関連する遺伝子、すいリパーゼ関連タンパク質2(pancreatic lipase−related protein 2)、コリパーゼ、肝脂肪酸結合タンパク質、絶食誘導脂肪因子(fasting induced adipose Factor)(FIAF)、アポリポタンパク質A−IV、ホスホリパーゼB、CYP27遺伝子などの脂質の摂取と代謝に関連した遺伝子、高親和性銅トランスポーター、メタロチオネインI、メタロチオネインII、フェリチン重鎖遺伝子などの金属の摂取または隔離の遺伝子、またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ・サブユニット、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、トランスケトラーゼ、リンゴ酸オキシドレダクターゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子などの細胞エネルギー生成が含まれる。
【0030】
ホルモン/成熟応答に関連する遺伝子の例は、アデノシン・デアミナーゼ、オミシン(omithine)・デカルボキシラーゼ抗酵素、15−ヒドロキシプロスタグランジン・デヒドロゲナーゼ、GARG−16、FKBP51、アンドロゲン制御輸精管タンパク質、短鎖デヒドロゲナーゼ、および耐熱性抗原遺伝子である。
【0031】
粘膜防御機能に関連する遺伝子の例は、減衰促進因子(decay−accelerating Factor)、重合体Ig受容体、小型プロリン・リッチ・タンパク質2a(small proline−rich protein 2a)、血清アミロイド・タンパク質A、CRP−ダクチン(ductin)α(MUCLIN)、ゼータ・プロテアソーム鎖(zeta proteasome chain)、および抗DNA IgG L鎖遺伝子である。
【0032】
解毒/薬剤耐性に関与する適切な遺伝子には、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、P−糖タンパク質(mdr1a)およびCYP2D2遺伝子が含まれる。 腸管神経系/筋層の発生または活動に関連する遺伝子の例は、L−グルタミン酸トランスポーター、L−グルタミン酸デカルボキシラーゼ、小胞関連タンパク質−33(vesicle−associated protein−33)、システイン・リッチ・タンパク質2(cysteine−richタンパク質2)、平滑筋(腸)γアクチン、およびSM−20遺伝子である。
【0033】
RNアーゼ・スーパーファミリー・メンバーには、いくつかのアンギオゲニンが含まれる。これには、本出願人らがその配列を決定し、腸に特異的で上皮に存在しその発現が微生物叢の構成成分によって制御されているように見える点で特に興味深いことが判明したアンギオゲニン−4も含まれる。ネズミのアンギオゲニン−4の配列が、最近報告された(D.E.Holloway等、protein Expression and Purification、(2001)、22:307)。
【0034】
本出願人らは、驚くべきことに、このような一遺伝子、特にアンギオゲニン−4遺伝子が腸管上皮中で発現され、発現レベルが共生細菌の影響を特に受けることを見出した。
【0035】
細胞骨格/細胞外マトリックスの機能に関連する遺伝子の例は、ゲルゾリン、デストリン、心筋αアクチン、エンドBサイトケラチン、フィブロネクチン、プロテイナーゼ阻害剤6およびα1タイプ1コラーゲン遺伝子である。
【0036】
シグナル伝達遺伝子には、Pten、gp106(TB2/DP1)、rac2、Semcap2、血清およびグルココルチコイド制御キナーゼ、STE20様タンパク質キナーゼ、およびB細胞ミエロイド・キナーゼ(myeloid kinase)が含まれる。(rac2遺伝子が関連するシグナル経路は、粘膜防御機能に影響することが知られている。)
【0037】
最後に、基本的な細胞機能に関連するその他の遺伝子の例は、グルタチオン・レダクターゼ、カルモジュリン、elF3サブユニット、hsc70、オリゴサッカリル・トランスフェラーゼ・サブユニット(oligosaccharyl transferase subunit)、フィブリラリン、H+−輸送ATPアーゼ、およびMsec23遺伝子である。
【0038】
本発明の方法では、適切には、少なくとも10種類のこのような遺伝子がステップ(a)で測定される。上記列挙したすべての遺伝子の発現を測定することが好ましい。
【0039】
本発明によれば、発現が少なくとも2倍の遺伝子が同定され、選択されてさらに調べられる。適切には、発現が少なくとも4倍、より適切には少なくとも5倍、さらに適切には7倍、好ましくは9倍の遺伝子がステップ(b)で同定され、選択されてさらに調べられる。
【0040】
B.Thetaiotaomicronのコロニー形成後に本発明の方法を用いてすでに同定されているいくつかの特定の遺伝子は特に興味深い。この遺伝子には、コリパーゼ、減衰促進因子(DAF)、重合体IgA受容体、小型プロリン・リッチ・タンパク質2a(Sprr2a)、{アンギオゲニン−3}Pten、CYP2D2、Sprr2a、rac2、およびMdr−1が含まれる。この遺伝子には、アンギオゲニン−3に関係し、新たに発見されたタンパク質であるアンギオゲニン−4も含まれる。
【0041】
これらの遺伝子は治療上有用な機能を有するかもしれず、したがって、これら1つまたは複数の遺伝子の発現を、研究中の特定の共生細菌がその発現に与える影響を検出するために、本発明の方法で測定することが好ましい。
【0042】
具体的には、本発明の方法により、コリパーゼ、および配列番号12および25(アンギオゲニン−4)などのプライマー(下記表3参照)を用いてその遺伝子を増幅可能であるアンギオゲニンなどのアンギオゲニン類、ならびにSprr2aおよびrac2の発現を、さらに研究すべきであることが判明した。
【0043】
したがって、本発明は、配列番号12および25(アンギオゲニン−4)などのプライマー(下記表3参照)を用いてその遺伝子を増幅可能であるアンギオゲニンが腸内で関与する生化学的経路の評価をさらに含む。
【0044】
別の実施形態では、本発明はコリパーゼが腸内で関与する生化学的経路の評価をさらに含む。
別の実施形態では、本発明はSprr2aが腸内で関与する生化学的経路の評価をさらに含む。
別の実施形態では、本発明はrac2が腸内で関与する生化学的経路の評価をさらに含む。
評価は、上述の方法も含めてどんな適切な方法を用いても実施することができる。
【0045】
本発明の方法を用いた遺伝子の同定、ならびにこれらに関連する生化学的経路のさらに進んだ研究は、胃腸管の疾患または障害の予防的なまたは治療的な処置をもたらし得るものである。具体的には、共生細菌の存在または非存在によりどの遺伝子が最も影響を受けるか、また、病状、疾患、または障害に関連する生化学的経路にどの遺伝子が関与しているかを明らかにすることで、この病状、疾患、または障害を治すために特定の遺伝子の発現を変化させることを目的とした治療法を開発することが可能になるはずである。あるいは、遺伝子産物によって維持される生化学的経路に薬理学的に介入することが可能になるはずである。
【0046】
このことは、適切な共生細菌を投与することによって実施することができる。所望のミクロフローラの集団を増加させることは、例えば、錠剤、医薬品または栄養補給組成物、さらには生きているヨーグルト培養物などの食品の形で、この細菌を経口投与することによって実施することができる。
具体的には、本発明は、上皮で発現される血管形成因子を、それに変調をもたらす共生細菌のコロニー形成によって調節する方法を提供する。
【0047】
このような方法の別の具体例は、代謝、特に食事性脂質の代謝を調節する方法であり、この方法は、この代謝に効果があることが上述の方法を用いて確認された共生細菌を使用するものである。
さらに別の具体例は、上述の方法を用いて確認された共生細菌を使用して上皮防御機能を調節する方法である。
【0048】
別の例は、血管形成またはシグナル伝達を調節することが本発明の方法を用いて確認された、腸内に存在する共生細菌の集団を調節することによって、腸の腫瘍を予防または治療する方法である。
【0049】
さらに別の態様では、本発明の方法は、消化管内の不適切なレベルの遺伝子発現によって引き起こされた疾患や病状の診断に有用となり得る。ある患者から採取された共生ミクロフローラの分析から、上述のミクロフローラの個体数の自然変動が大きいことがわかる。しかし、本発明の方法を用いて同定される共生ミクロフローラの量の著しい増加または減少を検出することによって、特定の遺伝子が異常な量で発現し、そのため疾病状態または病状を招いていることを示せるかもしれない。このような病状の治療は、適宜、上述したように共生細菌の量を変化させるか、細菌もしくはヒトの遺伝子産物もしくは誘導体を直接投与するか、この遺伝子産物の化学的もしくは生物学的阻害薬もしくは拮抗薬を用いるなど遺伝子産物をタンパク質レベルで阻止する手段のいずれかによって実施することができる。
【0050】
本発明の方法を一般に使用して、ヒト、および微生物が多数存在するこの世界に棲息する他の無数の種に問われる問題に取り組むことができる。すなわち、細菌は、その宿主の生理と成熟にどのように寄与し、それをどのように調節しているのだろうか。ヒトの場合、我々の祖先とその微生物パートナーの共進化を含む長い淘汰のプロセスの間に発達した複雑な調節メカニズムの組み合せが、ミクロフローラの構築と維持に関与していることは間違いない。以下に示す結果は、重要な生理機能に関わる遺伝子の発現に対する常在菌種の影響を実証しており、我々の生態を我々の複雑な定住菌群の生態と関連させて考えることの重要性を強調している。
【0051】
この結果は、明確なin vivoモデルを使用して、周囲の細胞および環境の影響を維持しながら、微生物に対する複合組織内の指定細胞集団の応答を推定することの実用性も実証している。
【0052】
これらのモデルおよび手法は、ヒトの健康に対する微生物の広範な寄与を評価することを可能にし、治療上有用な微生物産物の同定を可能にする。さらに、これらのモデルおよび手法は、これら宿主−微生物の正常な関係が様々な疾患プロセスにどのように影響しているかを明らかにし、何が病原性関係を構成しているかについて新たな展望と定義を提供するはずである。
【0053】
しかしまた、本方法は、多数の遺伝子または遺伝子産物が腸組織中で重要な効果を持ち、このような遺伝子または遺伝子産物を患者に有益な方法で標的とするような医薬品を開発できる可能性を高めているように見えることをすでに明らかにしている。このことは、遺伝子産物の活性を調節する化合物をスクリーニングすることによって実施することができる。
【0054】
本発明の別の態様は、腸の生態のレギュレーターとして機能する遺伝子を同定するための方法を含み、この方法は、上述の方法を適用すること、およびこのような機能にこれまでは関連づけられていない発現遺伝子を検出することを含む。
【0055】
したがって、本発明のさらに別の態様は、胃腸疾患の薬剤として応用できる化合物をスクリーニングする方法を含み、この方法は、上述の方法を用いて同定される遺伝子の産物の活性を調節する能力でこの化合物を評価することを含む。
【0056】
本発明のさらに別の態様は、請求項1に記載の方法を用いて同定される遺伝子の産物の活性を調節する化合物の治療有効量を投与することを含む、胃腸疾患を治療または予防する方法である。
【0057】
具体的には、以下に報告する結果に基づいて、本発明は、さらに、小型プロリン・リッチ・タンパク質2a(sprr2a)またはrac2の活性または量を調節する能力によってその化合物を評価することを含む、腸の防御機能の欠陥を特徴とする病状の治療または予防に潜在的に有用な化合物をスクリーニングする方法を提供する。
適切なスクリーニング法は、当業者には明らかなはずである。この化合物は、同定されると腸の防御機能を含む病状の治療または予防に有用である。
【0058】
したがって、本発明のさらに別の態様は、腸の防御機能の欠陥を特徴とする病状の治療または予防用の薬物を調製する際に、小型プロリン・リッチ・タンパク質2a(sprr2a)またはrac2の活性または量を調節できる化合物を使用することを含む。
適切には、この化合物は、医薬品組成物として処方される。このタイプの新規組成物およびその調製は本発明のさらに別の態様を形成する。
【0059】
【発明の詳述】
共生細菌によって調整された腸内の変化を分子レベルで調べるために、正常なマウスおよびヒトの腸ミクロフローラの主要な構成成分であるBacteroides thetaiotaomicronを含めた共生細菌を用いて、無菌マウスにコロニーを形成させた。
コロニー形成に対する腸の包括的な転写応答を高密度オリゴヌクレオチド・アレイを用いて詳細に記述し、特異的応答の細胞起源をレーザ・マイクロダイセクションおよびリアル・タイム定量RT−PCRで確立した。
【0060】
以下に示す結果から、共生細菌が多数の遺伝子の発現を調節し、そのいくつかの発現は有意なレベルで調節されることがわかる。これに関係する遺伝子は、栄養素吸収、粘膜防御、および異物代謝を含めた消化管の多様な基本的生理機能に関与する。コロニー形成に関連した遺伝子発現のいくつかの変化が種によって異なることは、常在ミクロフローラ組成の変化によってヒトの生理がどのように影響されるかを強く示唆するものである。
【0061】
また、いくつかの共生生物は生後の発育の移行に、ある役割を演じているように見える。哺乳−離乳の移行に付随する変化は、成体のマウスではB.Thetaiotaomicronによって誘発されたことから、常在菌が生後の消化管の発育に指導的な役割を演じていることが示唆される。
【0062】
明確なin vivoモデルをゲノムに基づく包括的分析と組み合わせると、このように、宿主の生態に対する定住微生物の重要な寄与を確認するための強力な手法となる。
【0063】
Bacteroides thetaiotaomicronは、遺伝子操作可能な嫌気性菌であり、成体マウスとヒト双方の消化管ミクロフローラの主要なメンバーであるので、腸の生態に対する定住細菌の影響を明確にする初期研究用に選択された。また、B.Thetaiotaomicronは、通常、哺乳−離乳移行、すなわち消化管の機能が急速かつ顕著に成熟する時期に、小腸の末端(回腸)にコロニーを形成する(W.E.C.Moore、L.V.Holdeman、Appl.Microbiol.27、961(1974)、T.Ushijima、M.Takahashi、K.Tatewaki、Y.Ozaki、Microbiol.Immunol.27、985(1983))。
【0064】
コロニー形成は、宿主の脂質吸収機構の4つの構成成分の発現亢進を含めた協奏的な応答を誘発した。すいリパーゼ関連タンパク質−2(PLRP−2)およびコリパーゼをコードするmRNAは、それぞれ平均4倍および9倍増加した(表1および2)。PLRP−2は、トリおよびジアシルグリセロール、リン脂質、およびガラクトリピドを加水分解する。コリパーゼは、PLRP−2活性を増大させる(M.E.Lowe、M.H.Kaplan、L.Jackson−Grusby、D.D’Agostino、M.J.Grusby、J.Biol.Chem.273、31215(1998))。また、腸細胞内の脂肪酸輸送に関わる豊富なサイトゾル・タンパク質をコードするL−FABP mRNAが4〜6倍に増加し、腸細胞の基底外側表面から分泌されるトリグリセリド・リッチ・リポタンパク質(キロミクロン、VLDL)の主要な成分であるアポリポタンパク質AIVが誘導された(表1)。
【0065】
コロニー形成は、腸のNa+/グルコースコトランスポーター(SGLT−1)mRNA量を増加させた。すいリパーゼ関連タンパク質−2(PLRP−2)、コリパーゼ、肝脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)、およびアポリポタンパク質A−IVを含めて、宿主の脂質吸収/搬出機構のいくつかの構成成分の発現も協奏的に増加した(下記表1参照)。脂肪摂食によって抑圧されることが知られている新規なPPARα標的(S.Kersten等、J.Biol.Chem.275、28488(2000))である絶食誘導脂肪因子の発現が顕著に減少したことで、コロニー形成されたマウスの脂質摂取が増大したことのさらなる証拠が提供された。
【0066】
特にこれら6種類の遺伝子の発現が変化したことは、B.Thetaiotaomicronが宿主の栄養素吸収/処理能力の増加を誘発することを示し、なぜ無菌のげっ歯動物がその体重を維持するために、通常のミクロフローラを有するげっ歯動物よりも高カロリーの摂取が必要であるかを部分的に説明していると考えられる(B.S.Wostmann、C.Larkin、A.Moriarty、E.Bruckner Kardoss、Lab.Anim.Sci.33、46(1983))。
【0067】
また、本出願人らは、コロニー形成が食事性金属(dietary metal)の吸収に関与する4種類の遺伝子の発現に変化をもたらすことを見出した。上皮の高親和性銅トランスポーター(CRT1)mRNAが増加し、一方メタロチオネイン−I、メタロチオネイン−II、フェリチンH鎖mRNAが減少した(表1)。これらの変化は、コロニー形成が(例えば、CRT1経由の)重金属吸収能の増加を引き起こし、同時に、重金属を細胞内に隔離する能力(MT−I/II、フェリチン)の減少を引き起こすことを示唆している。このことは、宿主自身の代謝経路での利用の増加、または微生物との競合のいずれかのために、これらの化合物に対する宿主の要求が増大することを意味する。SGLT−1、コリパーゼ、L−FABP、およびMT1(と以下に考察する他の8種類のmRNA)の変化は、qRT−PCRで個別に確認された(C.A.Heid、J.Stevens、K.J.Livak、P.M.WILLIAMS、Genome Res.6、986(1996)(下記表2参照))。
【0068】
コリパーゼは、すい臓トリグリセリド・リパーゼおよびPLRP−2の両者の活性を刺激することにより、食事性脂質の代謝に重要な役割を果たす。また、プロコリパーゼ(procolipase)のタンパク質分解切断によって、脂肪摂取の満腹シグナルとして機能するペンタペプチド(エンテロスタチン)を生成する(S.Okada、D.A.York、G.A.Bray、Physiol.Behav.49、1185(1991))。以下に示すB.Thetoaiotaomicronのコロニー形成後に見られる発現が有意に増加することは、これまで価値を認められていない、腸管上皮が消化管内定住細菌と共に食事性脂質代謝に寄与する機序を暗示している。
【0069】
無傷の粘膜防御は、腸の莫大な数の定住微生物を棲息させるために極めて重要である。その破壊は、宿主に、また管腔のミクロフローラの安定性に有害な免疫応答を起こすことがあり、炎症性腸疾患などの病的状態をもたらす(P.G.Falk等、Microbiol.Mol.Biol.Rev.62、1157(1998))。
【0070】
B.Thetaiotaomicronによるコロニー形成は、組織検査から判断して検出可能な炎症反応を起こさないことが判明した(L.Bry、P.G.Falk、T.Midtvedt、J.I.Gordon、Science 273、1380(1996))。また、応答に関与する多数の遺伝子の、マイクロアレイ上に表出する認識可能な誘発(または抑圧)もない。B.thetaiotaomicronを導入してから10日後に、IgAを産生するB細胞の流入が回腸粘膜内で起こる。一方、共生生物によって誘導される同様のIgA応答は、T細胞には無関係であり、防御をより完全なものにすることがわかった(A.J.Macpherson等、Science 288、2222(2000))。
【0071】
防御機能に関与する遺伝子は、B.Thetaiotaomicronコロニー形成で観察される遺伝子発現変化の10%(7/71)を占める。マイクロアレイおよびqRT−PCR分析から、IgAを産生するB細胞の流入は、上皮にわたってIgAを輸送する重合体免疫グロブリン受容体(pIgR)の発現の増加を伴うことが明らかになった(表1、2)。上皮の上にある保護粘液層の1成分(MUCLIN;R.C.DeLisle等、Am.J.Physiol.275、G219(1998))と腸粘膜の防御/治癒に関与する三つ葉型ペプチドに対する想定上の受容体(L.Thim、E.Mortz、Regul.Pept.90、61(2000))の両者をコードするCRP−ダクチン遺伝子の発現も増大した。また、補体によって媒介される細胞崩壊を抑制する(M.E.Medof等、J.Exp.Med.165、848(1987))、上皮尖端の表面タンパク質である減衰促進因子(DAF)の発現も増加する。pIgR、MUCLIN、およびDAFの発現が同時に亢進されると、細菌の上皮防御膜の通過を妨げるのに役立つはずであり、さらに腸分泌液中に存在する補体成分の微生物による活性化に続いて起こる恐れがある粘膜損傷も防止するはずである。
【0072】
B.Thetaiotaomicronを用いたコロニー形成によって減衰促進因子(DAF)の発現が5倍になることがわかった。DAFは、腸の上皮細胞の尖端表面上に存在し、補体によって媒介される細胞崩壊を抑制することが知られている(M.E.Medof、E.I.Walter、J.L.Rutgers、D.M.Knowles、V.Nussenzeig、J.Exp.Med.165、848(1987))。DAF、pIgR、MUCLINの発現が同時に亢進されると、細菌の上皮防御膜の通過を妨げるのに役立つはずであり、さらに腸分泌液中に存在する補体成分の微生物による活性化に続いて起こる恐れがある粘膜損傷を防止するはずである。
【0073】
B.thetaiotaomicronに対する最も顕著な応答は、小型プロリン・リッチ・タンパク質2(sprr2a)mRNAの増加であった(表1)。qRT−PCR分析により、コロニー形成によりこのmRNAが205±64倍に増加することが確認された(表2)。Sprr2aは、扁平上皮細胞の最終分化に関連するタンパク質ファミリーの1メンバーである。Sprr類は、角質細胞外被成分として、かつ主要なデスモソーム構成要素の1つであるデスモソームのデスモプラキンに結合する架橋タンパク質として、扁平上皮の防御機能に寄与する(P.M.Steinert、L.N.Marekov、mol.Biol.Cell 10、4247(1999))。コロニー形成は、デスモソーム(デスモプラキン、プラコグロビン、プラコフィリン(plakophilin)、プレクチン)またはタイト・ジャンクション(ZO−1、オクルディン)に結合する他のタンパク質をコードする遺伝子の発現に顕著な変化(すなわち2倍以上)を生じなかった。
【0074】
腸内でのSprr2aの発現およびその微生物による制御は新規な知見である。扁平上皮防御へのsprr2aの重要な寄与およびB.thetaiotaomicronに対するsprr2a発現の劇的な応答はともに、このタンパク質が腸の防御機能に重要な役割を演じていることを示唆している。したがって、これは、特にSprr2aが腸内で関与する生化学経路を評価することによって、本発明によるさらに進んだ研究に特に適した標的となる。
【0075】
離乳過渡期の顕著な指標は、主要な乳糖のラクトースを加水分解する腸細胞刷子縁酵素であるラクターゼ−フロリジン・ヒドロラーゼ(LPH)の減少である。LPH mRNA量は、従来法で飼育された動物の小腸全体で哺乳期間中に増加し、その後離乳中に回腸で減少する(S.D.Krasinski等、Am.J.Physiol.267、G584(1994))。これら遺伝子の発現に対する共生細菌の効果は、この細菌が有意な影響を及ぼすかどうかを決定するうえで特に興味深い。
【0076】
本発明の方法を用いると、コロニー形成が、血管形成活性が実証されている分泌タンパク質であるアンギオゲニン−3類似のアンギオゲニン−4の発現を亢進する結果となることが見出されている(X.Fu等、Mol.Cell Biol.17、1503(1997)、X.Fu等、Growth Factors 17、125(1999))。B.Thetaiotaomicronがコロニーを形成すると、配列番号12および配列番号25(アンギオゲニン−4)のプライマー(表1、2)で増幅することによって認識可能な血管形成因子の発現が11倍になることは、血管形成因子の新規な制御方式であることを意味し、したがって、本発明によるさらに進んだ研究の対象とすることができる。
【0077】
下記のレーザ・マイクロダイセクション(LCM)実験は、この応答の細胞起源を詳細に叙述している。それによれば、細菌の存在が腸の血管新生に影響することが示唆される。
【0078】
消化管は、摂取された多数の毒素および生体異物が最初に接する部位である。これらの化合物の解毒および代謝に対する管腔の細菌および上皮の相対的な寄与度を、従来法で飼育された動物で正確に叙述することは困難であった。無菌マウスにB.Thetaiotaomicronでコロニーを形成させると、これらのプロセスに関与するいくつかの遺伝子の発現が減少することが見出された(下記表1)。多様な求電子物質を解毒するグルタチオンS−トランスフェラーゼをコードするmRNAが減少し、それに応じてグルタチオンと抱合された化合物を上皮から搬出する多剤耐性タンパク質−1(Mdr−1)が減少する(R.W.Johnstone、A.A.Ruefli、M.J.Smyth、Trends Biochem.Sci.25、1(2000))。ヒトの薬物酸化的代謝に関与するCYP2D2(デブリソキン・ヒドロキシラーゼ)(M.Ingelman−Sundberg等、Trends Pharmacol.Sci.20、342(1999))の発現も、コロニー形成により減少する。これらの遺伝子の発現が減少することは、B.Thetaiotaomicron自体が宿主に有害な化合物の解毒に寄与することを示唆している。
【0079】
このチトクロムP−450を欠乏させる遺伝的多型はヒトでは一般的であり、薬物酸化的代謝の変化と関連している(M.Ingelman−Sundberg、M.Oscarson、R.A.McLellan、Trends Pharmacol.Sci.20、342(1999))。これら3つの宿主遺伝子の発現が減少することは、B.thetaiotaomicronなどの共生細菌が宿主に有害となり得る化合物の解毒に寄与していることを示唆している。このことは、正常なミクロフローラの構成成分が薬物代謝に関与する宿主遺伝子を調節でき、個体間のこのような代謝変動がどのようにしてこれら個体の消化管内定住フローラの差異から生じるかを明示できることを示している。したがって、これら遺伝子の発現に対する共生細菌の効果を本発明の方法を用いて評価することは有用と考えられる。
【0080】
Ptenは、両特異性タンパク質ホスファターゼ・ファミリーの1メンバーである。ヒトのPTENハプロ不全は、腫瘍形成に対する感受性の増加と関連している(D.J.Marsh等、Hum.Mol.Genet.7、507(1998))。また、Pten+/−<−>Pten+/+キメラ・マウスは、結腸のポリープおよび腺癌を発生する(A.DiCristofano、B.Pesce、C.Cordon−Cardo、P.P.Pandolfi、Nat.Genet.19、348(1998))。Gp106のヒト相同体であるTB2/DP1は、突然変異すると複数の腸腺腫を発生する遺伝子座の1構成部分である(R.W.Burt、Adv.Exp.Med.Biol.470、99(1999))。ミクロフローラの1成分が、配列番号12および25(アンギオゲニン−4)などのプライマー(下記表3参照)を用いてその遺伝子が増幅可能である血管形成因子、PtenおよびGp106などの遺伝子の発現に影響するという発見は、腸細菌が、消化管の内部で、または外部でさえも腫瘍形成を開始または進行させる一因となりうる機序を考慮することの重要性を強調するものである。
【0081】
腸の運動性は、その腸管神経系(ENS)によって制御されている。運動活性の調節不全を伴う過敏性大腸症候群が主要な健康問題であるにもかかわらず、内因子および外因子のENS活性に対する相対的寄与度は十分に理解されていない。B.thetaiotaomicronなど共生細菌の消化管生理への影響は、腸管神経系(ENS)および筋層で発現される遺伝子に及ぶ。L−グルタミネートトランスポーターおよびグルタミン酸をGABAに転化するL−グルタミネートデカルボキシラーゼをコードするmRNAがいずれも増加したことから、ENSのグルタミン酸作動性神経に対するコロニー形成に伴う効果が示唆される(M.T.Liu、J.D.Rothstein、M.D.Gershon、A.L.Kirchgessner、J.Neurosci.17、4764(1997))。神経伝達物質放出に関与するシナプトブレビン結合タンパク質である小胞関連タンパク質−33(P.A.Skehel等、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97、1101(2000))の発現の亢進も見られる。腸管γ−アクチンとシステイン・リッチ・タンパク質2の2種類の筋特異的mRNAも同時に増加する。無菌動物および従来法で飼育された動物のこれまでの電気生理学的研究により、ミクロフローラが消化管の運動性にある役割を果たしていることが示唆された(E.Husebye、P.M.Hellstrom、T.Midtvedt、Dig.Dis.Sci.39、946(1994))。本発明の方法は、B.thetaiotaomicronなどの消化管内定住微生物がどのように作用して運動性を調節しているかについて分子的詳細を提供することができる。
【0082】
B.Thetaiotaomicronは、通常、離乳中にマウスやヒトの腸にコロニーを形成する(W.E.C.Moore、L.V.Holdeman、Appl.Microbiol.27、961(1974)、T.Ushijima、M.Takahashi、K.Tatewaki、Y.Ozaki、Microbiol.Immunol.27、985(1983))。この時期は、ミクロフローラの組成の劇的な変化、および腸管上皮内の一連の重要な発育変化を特徴とする。これらの変化のうちいくつが腸細胞メカニズムによって制御されているか、また、いくつが間充織からまたは(食事性の、微生物の)管腔因子から発せられる外因性シグナルによって制御されているかは不明である。
【0083】
発現を分析すると、驚くべきことに、成体無菌マウスのB.thetaiotaomicronによるコロニー形成が、従来法で飼育された動物の成熟した腸に通常発生する変化によく似た別の応答を誘発することが明らかとなった。主要な乳糖(ラクトース)を加水分解するラクターゼの発現は、通常離乳期中に減少する(S.D.Krasinski等、Am.J.Physiol.267、G584(1994))。成体無菌マウスのB.Thetaiotaomicronによるコロニー形成は、回腸のラクターゼmRNAの減少をもたらす(下記表1、2)。これらの知見は、生後に出現しつつある正常フローラのメンバーが腸の成熟にどのように寄与しうるかを示している。
【0084】
アデノシン・デアミナーゼ(ADA)およびポリアミン(スペルミン、スペルミジン)は、出生後の腸の成熟に重要な役割を果たす(G.D.Luk、L.J.Marton、S.B.Baylin、Science 210、195(1980)、J.M.Chinsky等、Differentiation 42、172(1990))。B.Thetaiotaomicronのコロニー形成は、ADAおよびオルニチン・デカルボキシラーゼ(ODC)抗酵素をコードするmRNAの5倍未満の増加をもたらすことが判明した。ポリアミン量によってその発現が影響される抗酵素は、ODCの代謝回転の重要なレギュレーターである(J.Nilsson、S.Koskiniemi、K.Persson、B.Grahn、I.Holm、Eur.J.Biochem.250、223(1997))。したがって、抗酵素mRNA量の増加は、コロニー形成が回腸のポリアミン合成に影響することを示唆している。これらのデータは、消化管成熟の2クラスのレギュレーターであるアデノシンとポリアミンの合成を制御する遺伝子それ自体が、ミクロフローラのある成分によって調節されることを示しており、消化管の成熟に影響するカスケードの上流エフェクターとして細菌が働くというアイデアに通じるものである。その他下記コロニー形成実験は、他の消化管共生生物がこのような変化の操作能力を持つことを示している。
【0085】
哺乳−離乳移行に付随する消化管成熟の変化は、グルココルチコイドの増加によっても制御されていると考えられている(Physiology of the Gastrointestinal Tract、L.R.Johnson編(Raven Press、New York、1994)の中のS.J.Henning、D.C.Rubin、R.J.Shulman、pp.584〜586)。以下に記述するB.thetaiotaomicronのコロニー形成は、グルココルチコイドによってその転写が抑制されることが知られている2つの遺伝子、すなわち15−ヒドロキシプロスタグランジン・デヒドロゲナーゼ(M.D.Mitchell、V.Goodwin、S.Mesnage、J.A.Keelan、Prostaglandins Leukot.Essent.Fatty Acids 62、1(2000))とグルココルチコイド減弱応答遺伝子−16(glucocorticoid−attenuated response Gene−16)(J.B.Smith、H.R.Herschman、J.Biol.Chem 270、16756(1995))の発現の減少を伴った。また、核内ホルモン受容体ファミリー・メンバーとその生成物が相互作用する別の遺伝子であるイムノフィリンFKBP51の発現も減少した(S.C.Nair等、Mol.Cell.Biol.17、594(1997))。しかし、個々のどの場合でも1/5未満には減少しなかった。したがって、本発明の方法を用いて他の共生細菌を調べて、それらがより重要な効果をもたらすかどうかを見ることができる。
【0086】
上述のとおり、本発明者らは、その遺伝子が上記配列番号12および25のプライマーを用いて増幅可能でありマウスの腸で発現される、アンギオゲニン・ファミリーのある特定のメンバーが、新規であることを発見した。したがって、このタンパク質とそれをコードする遺伝子は、本発明の別の態様を形成する。
【0087】
本発明のさらに別の態様は、以下の図4に示す配列番号29のタンパク質、その対立遺伝子変異体、または配列番号29と同一のアミノ酸配列を少なくとも85%持つタンパク質を提供する。
具体的には、本発明は配列番号29のタンパク質を提供する。
さらに別の態様では、本発明は上述のタンパク質をコードする核酸を提供する。
これらのタンパク質は、本発明のスクリーニング・プロセス用標的として有用である。
以下の実施例は本発明を例示するものである。
【0088】
実施例1
7〜15週齢無菌NMRI/KIマウスの同年齢のグループを、プラスチック製ノトバイオート隔離装置に12時間の照明サイクルで飼育し、加圧滅菌された固形飼料の食餌(B & K Universal)を自由に採餌させた。オスに野生型B.thetaiotaomicron(VPI−5482菌株)(L.Hooper等(1999)、前掲)を接種した。マウスを10日後、照明を点けて2時間後に屠殺した。末端の1cmの小腸を使用して、押し出した管腔内容物のml当たりのコロニー形成単位数を規定した。
【0089】
管腔内容物のML当たり107以上のコロニー形成単位(CFU)のバクテリアを有するマウスから回腸RNAを単離した[以前の研究から、回腸の活発なコロニーを形成するには10日で十分であり、回腸上皮中のフコシル化グリカンの産生を完全に誘発するには107CFU/mLが必要であることがわかっている(L Hooper等(1999)、前掲。L.Bry、P.G.Falk、T.Midtvedt、J.I.Gordon、Science 273、1380(1996))]。
【0090】
3個の独立したコロニー形成集団(colonizations)由来の4匹のマウスの小腸末端1cmに隣接する3cmの小腸から、および同年齢同性無菌マウス(n=8)から、RNA(QIAGEN Rneasy Kit)を用いて調製した回腸RNAの全サンプルを、ビオチン化cRNA標的の生成用にそれぞれ等量プールした。C.K.Lee等、Science 285、1390(1999)に概説された方法を用いて、30μgの各細胞RNAプール全体から2つの標的を個別に調製した。
【0091】
SYBR greenベースのリアル・タイム定量RT−PCR研究(N.Steuerwald等、Mol.Hum.Reprod.5、1034(1999))を、下記表3に列記した遺伝子特異的プライマーおよびDNアーゼで処理したRNAを用いて実施した。
【0092】
各アンプリコン用シグナルは、プライマー・ダイマーやゲノムDNAからではなくcDNAに由来することをコントロール実験により確認した。シグナルは、内部参照mRNA(グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ)に対して規格化したものである。この規格化したデータを用いて、無菌およびコロニー形成した回腸中の所与のmRNAを定量した(ΔΔCT分析;Bulletin #2、ABI Prism 7700 SEQUENCE Detection System)。
【0093】
【表1】
【0094】
各cRNAを、Unigene Build 4およびTIGRクラスター・データベースからの約25,000個のマウス・ユニーク遺伝子を有するAffymetrix Mu11KおよびMu19Kチップ・セットと、Affymetrixプロトコルに従い交雑させた。各チップから収集したデータを、各チップにわたる全体の蛍光強度が同等(目標強度=150)になるようにスケーリングした。「無菌」と「コロニー形成」の発現レベルを対ごとに比較した。
【0095】
3つの基準、すなわち、GeneChipソフトウェアが「増加」または「減少」の差異のある判定を返した、無菌cRNAまたはコロニー形成cRNAのいずれでもmRNAがGeneChipソフトウェアにより「プレゼント(present)」と呼ばれた、あるいは二重マイクロアレイ・ハイブリダイゼーション(duplicate microarray hybridizations)で差異が観測された、を満たす場合に、2倍以上の差異が記録された。
【0096】
118個のプローブ・セットで表されるmRNAが、コロニー形成により、二重マイクロアレイ・ハイブリダイゼーションで規定して少なくとも2倍になった。
【0097】
95個のプローブ・セットで表される転写産物が増加し、一方、23個のプローブ・セットで表される転写産物が減少したことが判明した。これらプローブ・セットの84個で表される遺伝子(71ユニーク遺伝子)を機能グループに割り当て、以下の表1に列記する。この表では、結果は、コロニー形成回腸と無菌回腸とのmRNA量の倍数差として表され、二重マイクロアレイ・ハイブリダイゼーションの平均値である。2個以上の別々のプローブ・セットで表される遺伝子の平均変化倍率を分けて列記する。
【0098】
1これらのプローブ・セットは、ファミリー・メンバー同士を区別しない。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
【表5】
【0103】
これらの基準を用いて同定された多数の遺伝子が、基本的な腸の機能の調節に関与していることは重要である。すなわち、71種類の遺伝子のうち20種類(28%)は、栄養素の摂取と代謝に分類された。また、すいリパーゼ関連タンパク質2(PLRP−2)、コリパーゼ、肝脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)、およびアポリポタンパク質A−IVを含めて、宿主の脂質吸収/搬出機構のいくつかの構成成分の発現が協奏的に増加した(表1)。脂肪摂食によって抑圧されることが知られている(S.Kersten等、J.Biol.Chem.275、28488(2000))新規なPPARg標的である絶食誘導脂肪因子の発現が顕著に減少したことで、コロニー形成されたマウスの脂質摂取が増大したことのさらなる証拠が提供された。これら6種類の遺伝子の発現が変化したことは、B.Thetaiotaomicronが宿主の栄養素吸収/処理能力の増加を誘発することを示し、なぜ無菌のげっ歯動物がその体重を維持するために、ミクロフローラを有するげっ歯動物よりも高カロリー摂取が必要であるかを説明するのに役立つ。
【0104】
また、食事性金属の吸収に関与する4種類の遺伝子の発現が変化した。上皮の高親和性銅トランスポーター(CRT1)のmRNAが増加し、一方、メタロチオネイン−I、メタロチオネイン−II、およびフェリチンH鎖mRNAが減少した(表1)。これらの変化は、コロニー形成が(例えば、CRT1経由の)重金属吸収能の増加を引き起こし、同時に、重金属を細胞内に隔離する能力(MT−I/II、フェリチン)の減少を引き起こすことを示唆している。このことは、宿主自身の代謝経路での利用が増加するので、あるいは微生物と競合するので、これらの化合物に対する宿主の要求が増大することを意味する。SGLT−1、コリパーゼ、L−FABP、およびMT1(と以下に考察する他の8種類のmRNA)の変化は、qRT−PCRで個別に確認された(C.A.Heid、J.Stevens、K.J.Livak、P.M.WILLIAMS、Genome Res.6、986(1996))(表2)。
【0105】
これらのうち、B.Thetaiotaomicronのコロニー形成により発現が5倍以上異なることが判明した遺伝子は、コリパーゼ、肝脂肪酸結合タンパク質、絶食誘導脂肪因子、メタロチオネインIおよびメタロチオネインII、リンゴ酸オキシドレダクターゼ、Sprr2a、アンギオゲニン−3、アンギオゲニン関連タンパク質、アンギオゲニン・ファミリー、ゲルゾリン、gp106(TB2/DP1)、およびrac2であった。これらのうち、コリパーゼ、絶食誘導脂肪因子、アンギオゲニン3、およびSprr2a遺伝子は、9倍以上異なる発現レベルを示した。
【0106】
B.Thetaiotaomicronに対する宿主応答の注目すべき特徴は、マイクロアレイ上に表出する、免疫−炎症プロセスに関与する多数の遺伝子の、検出可能なまたは変化した発現がないことであった。これには、侵入病原体に対する宿主応答の重要なレギュレーターであるNF−KB制御プロセスに関与する遺伝子が含まれる(D.Elewaut等、J.Immunol.163、1457(1999))。これらの応答がないことは、消化管の侵入病原体であるSalmonellaに対するヒト腸上皮細胞系の応答に関する最近のcDNAマイクロアレイ分析で得られた結果と対照的である(L.Eckmann、J.R.Smith、M.P.Housley、M.B.Dwinell、M.F.Kagnoff、J.Biol.Chem.275、14084(2000))。In vivo免疫−炎症応答が誘発された形跡がないことは、宿主がB.thetaiotaomicronなどの消化管内定住微生物をその全寿命の間収容する必要があることと矛盾しない。
【0107】
コロニー形成は、消化管腫瘍症の発達に関係する2種類の遺伝子PtenとGp106の発現を増加させる(表1)。
【0108】
実施例2
さらに進んだ分析では、2つの技術を組み合わせた。第1に、レーザ・マイクロダイセクション(LCM)を使用して、無菌マウスおよびコロニー形成マウスの屠殺直後に採取した回腸の凍結切片から3個の細胞集団を回収した。この3個の集団は、(i)陰か内に存在する上皮(未分化細胞ならびにパネート細胞系譜の分化メンバーを含む腸の増殖区画)、(ii)上皮を覆うじゅう毛(有糸分裂後の腸の他の3つの系譜の分化メンバーを含む)、および(iii)間充織を覆う陰か−じゅう毛単位である(図1)。
【0109】
マイクロアレイ分析用RNAを生成するために使用されるマウス群とは別のマウス群についてLCMを実施した。凍結回腸から7μm厚みの切片を切り出し、Arcturus製PixCell IIシステム(レーザ・スポット直径7.5μM)を用いてLCMを実施した。RNA Micro−Isolation Kit(Strategene)および標準の組織化学的プロトコルを用いて、解剖した細胞集団からRNAを調製した。MR Emmert−Buck等、Science.,274、998〜1001、1996およびR.F.Bonner等、Science 278:1203〜4、1997に記載の従来法によりレーザ・マイクロダイセクション(LCM)を実施した。
結果を図1に示す。
【0110】
第2に、リアル・タイムRT−PCRを使用してレーザ捕捉細胞集団中の特異的RNAを定量した。マイクロアレイ分析用に使用されるマウスとは別の3通りの実験の無菌マウスおよびコロニー形成マウスを用いて、LCM/qRT−PCR分析を実施した。
各試料を4回の独立実験で3回繰り返して分析した。個々の測定の平均値±1S.D.を表2に示す。
【0111】
【表6】
【0112】
コリパーゼは、すい臓の外分泌(胞状)細胞によって産生される。腸内での発現は、これまで報告されていない。そこで、LCMおよびリアル・タイムRT−PCR分析を使用して、B.Thetaiotaomicronに対するその応答の細胞起源を詳細に叙述する。
【0113】
この結果から、sprr2a mRNAは上皮に限られ、そこではその濃度はじゅう毛上の方が陰かよりも7倍高いことがわかる(図1B)。B.Thetaiotaomicronは、じゅう毛上皮内で280倍の増加を誘発する。この値は、回腸RNA全体で記録された増加とよく一致する(表2)。sprr2a応答の細胞起源は、それが細菌のコロニー形成に応答して腸上皮防御の強化に関与するという仮説を支持するものである。
【0114】
コリパーゼは、すい臓の外分泌胞状細胞によって産生される。LCM/qRT−PCRから、コリパーゼmRNAも回腸陰か上皮に存在し、そこではB.Thetaiotaomicronのコロニーが形成されるとコリパーゼが10倍になることが明らかになった(図1B)。このことは、回腸RNA全体のマイクロアレイおよびqRT−PCR分析によって検出される増加を説明するものである(表1、2)。コリパーゼは、すい臓トリグリセリド・リパーゼおよびPLRP−2の両者の活性を刺激して食事性脂質の代謝に重要な役割を演じている(M.E.Lowe等、J.Biol.Chem.273、31215(1998)。また、プロコリパーゼのタンパク質分解切断により、脂肪摂取の満腹シグナルとして機能するペンタペプチド(エンテロスタチン)が生成する(S.Okada等、Physiol.Behav.49、1185(1991))。コリパーゼ遺伝子制御の分析から、食事性脂質代謝に対する腸上皮(と消化管内定住共生生物)のこれまで価値が認められていなかった寄与が明らかになる。
【0115】
アンギオゲニン−3は、最初にNIH 3T3線維芽細胞中で同定されたが(X.Fu等、Mol.Cell Biol.17、1503(1997))、その細胞起源または制御についてはほとんど知られていない。LCMおよびqRT−PCRから、陰か上皮は、アンギオゲニン−3 mRNAだけでなく新しいタンパク質であるアンギオゲニン−4mRNAにも特異的な配列番号12および25などのプライマー(上記表3参照)を用いて増幅可能である遺伝子が優勢な部位であり、また、コロニー形成によってこの区画内のその量が7倍に増加する結果となることが明らかになった。この増加は、回腸RNA全体のマイクロアレイおよびqRT−PCR分析で明確になる発現変化を説明するものである(表1、2)。分泌/RNアーゼ/血管形成因子の上皮部位は、微生物コロニー形成に対する多数の宿主応答のエフェクターとして機能する戦略的な部位になっている(例えば、栄養素の吸収/分布の促進/防御機能の増強。
【0116】
sprr2a、コリパーゼ、およびアンギオゲニン−4のLCM/qRT−PCR研究により、in vivo宿主応答を複合組織中の特定の細胞集合に帰属すること、および細胞応答を定量的に記述することの実現可能性が確立される。本出願人らの結果は、応答細胞集団を回収し微生物に対するその反応を定量的に表現するうえで、宿主細胞遺伝子発現に対する微生物の影響を調べるために、どのようにするとin vitroモデルを越えてin vivo系を使用できるかを示すものである。
【0117】
無菌マウスのB.Thetaiotaomicronによるコロニー形成は、回腸のLPH mRNA量を(1/5以下にはならないが)減少させる(表1、2)。レーザ捕捉された上皮および間充織細胞集団から単離されたRNAの分析から、コロニー形成によって誘発されるLPH mRNA量の減少が、じゅう毛上皮内で主に起こることを確認した(図2)。
無菌マウスとB.Thetaiotaomicronを伴うマウスとの転写産物量の比較から、アンギオゲニン−4の発現がコロニー形成に伴って増加することが明らかとなった。
【0118】
実施例1で見られたそのmRNAが11倍誘発されることは、回腸RNA全体のリアル・タイムRT−PCRによって別個に確認された(表2)。アンギオゲニン−3は、最初にNIH 3T3 線維芽細胞中で同定された(X.Fu、M.P.Kamps、Mol.Cell Biol.17、1503(1997))。しかし、LCMおよびリアル・タイムRT−PCR分析により、コロニー形成された回腸では、アンギオゲニン−3用に設計されたプライマーを用いて増幅可能であるmRNAの量が陰か上皮中で最大であることが明らかとなった(回腸じゅう毛および間充織内の値は、それぞれ1/14および1/15である。図2)。しかし、下記実施例4で概説するように、このmRNAは実際にはアンギオゲニン−4mRNAである。
【0119】
コロニー形成後に陰か上皮で観測されるこれらアンギオゲニン−4mRNA量が7倍の増加になることで、回腸RNA全体のマイクロアレイおよびリアル・タイムRT−PCR分析で明確になった変化が説明される。
上皮で発現されるアンギオゲニン−4の細菌による調節は、血管形成因子を制御するための新規な様式である。
【0120】
実施例3
コロニー形成によりじゅう毛上皮内のラクターゼmRNA量が減少することをLCM/qRT−PCRで確認した(図1B)。発育にしたがって制御されるラクターゼなどの遺伝子の発現変化を規制するのに微生物が役立つかもしれないという考えは、ミクロフローラの数個または多数の構成成分がこれらの変化を誘発できるかどうかという問いを提起する。
【0121】
このことを検討するために、7〜15週齢の無菌NMRI/KIマウスの同年齢グループ(n=4〜8匹/グループ)をプラスチック製ノトバイオート隔離装置に12時間の照明サイクルで飼育し、加圧滅菌した固形飼料の食餌(B & K Universal)を自由に取れるようにした。オスに、以下の群、
(i)無処置(無菌コントロール)、
(ii)B.Thetaiotaomicron菌株VPI−5482(L.V.Hooper等、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96、9833(1999))、
(iii)正常なヒトの糞便フローラから元来採取されたE.coli K12、
(iv)離乳前のヒトおよびマウスの回腸フローラの主要成分であり通常用いられるプロバイオティックであるBifidobacterium infantis(ATCC 15697)、
(v)従来法で飼育されたマウスから採取された「完全な」回腸/盲腸ミクロフローラ(L.Bry等、Science 273、1380(1996))
のうちの1つを接種した。
別のコントロール・グループは、出生以降従来法で飼育されたマウスからなる。
【0122】
マウスを10日後、照明を点けて2時間後に屠殺した。末端の1cmの小腸を使用してCFU/ml回腸内容物を規定した。この区画に直近の3cmの小腸を用いて、回腸RNA全体を単離した(QIAGEN Rneasy Kit)。
【0123】
qRT−PCRを使用して各グループの回腸ラクターゼmRNA量を比較した(すべての動物が107CFU/ml回腸内容物を有していた)。結果を図3に示す。
【0124】
3種類のグラム陰性嫌気性菌のいずれかによるコロニー形成は、無菌コントロールに対してラクターゼの発現を同じように減少させた(図3)。この減少は、完全な回腸/盲腸フローラの接種後にも観察された。同じRNAのqRT−PCRから、コリパーゼおよびアンギオゲニン−4の回腸での発現が、3種類すべての生物がコロニーを形成したのちに、回腸/盲腸フローラによって誘発されることが明らかになった(図3)。
【0125】
これら元無菌マウス(ex−germ−free mice)の回腸で得られるコリパーゼおよびアンギオゲニン−4のmRNA量は、出生後従来法で飼育された同年齢マウスのそれと同等であった(図3)。
【0126】
これらの知見とは対照的に、コロニー形成に対するsprr2aの応答は、コロニー形成種に依存した。B.thetaiotaomicronは、回腸/盲腸フローラによる10日間のコロニー形成に対する応答を繰り返してsprr2a mRNAの顕著な増加をもたらしたが、B.InfantisおよびE.coliによるコロニー形成は、mRNA量をほんの無視できるほどしか増加させなかった(図3)。
【0127】
生体異物および求電子物質の代謝に協調して作用するMdr1aおよびグルタチオン−S−トランスフェラーゼも、種特異的(かつ協奏的)応答を示した。発現を抑制するB.Thetaiotaomicronとは異なり、E.ColiおよびB.infantsの両者はこれらmRNAの増加を誘発する。これに対し、多成分回腸/盲腸フローラは、無菌コントロールと比較して、いずれのmRNA量にも有意な(すなわち2倍の)変化をもたらさなかった。
【0128】
Mdr1a/GST応答は、正常なミクロフローラの構成成分が、薬物代謝に関与する宿主遺伝子を調節できることの直接の証拠を提供し、薬物代謝の個体間の相違が個体の消化管内定住フローラの違いから一部は生じることを示唆している。
【0129】
実施例4
10日間のコロニー形成が、アンギオゲニン−3の公表された配列から設計されたAffymetrix製プローブ・セットで検出されるmRNAの回腸での11倍の発現増加を伴うことを観測したあとで、本出願人らはマウス・アンギオゲニン−3の3′および5′末端に特異的なプライマーを設計した。
それらは、
ORF[フォワード・プライマー:
5′−CCTTGGATCCATGGTGATGAGCCCAGGT TCTTTG (配列番号27)
これは5′末端にBamHI部位を組み込んである;
リバース・プライマー:
5′−CCTTTCTAGACTACGGACTGATAAAAGACTCATCGAAG (配列番号28)
これは5′末端にXbaI部位を組み込んである。
【0130】
これらのプライマーを、RT−PCRと共に使用して、元無菌NMRIマウスの回腸から調製したRNA由来の438bpの配列を増幅させた。これらのマウスに、従来法で飼育された同じ近交系に属する動物から採取された完全回腸/盲腸フローラで10日間コロニーを形成させた。本出願人らは、PCR産物をBamHI/XbaIにより消化されたpGEX−KGにサブクローニングして、ベクター特異的プライマーを用いてその配列を決定した。
【0131】
驚くべきことに、そのORFのヌクレオチド配列は、マウス・アンギオゲニン−3のそれと90%しか同一ではなかった。PCR反応に用いた(アンギオゲニン−3に特異的な)プライマー配列をその産物に組み込んだので、本出願人らは、5′−および3′−RACEを用いて、(a)この新しいアンギオゲニンのORFの5′および3′末端の正確な配列を得、(b)そのmRNAの5′および3′非翻訳領域を特定した。その結果、アンギオゲニン−3 mRNAと同一であるヌクレオチド配列はわずか88.3%であることが明らかになった。
【0132】
このアンギオゲニン−4タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、アンギオゲニン−3配列と並べて、それぞれ配列番号29および30として以下の図4に示す。
【0133】
アンギオゲニン−4は、マウス・アンギオゲニン・ファミリーの他の3種類のメンバーと74〜81%のアミノ酸配列が同一である(図5)。アンギオゲニン−4の5′および3′非翻訳領域が、アンギオゲニン−3 mRNAの対応する領域に密接に関係していることが見出された(図4)。
【0134】
続いて、様々なマウス・アンギオゲニンmRNAの組織分布の比較分析を実施した。従来法で飼育した成体(12〜14週齢)のオスおよびメスNMRIマウスから採取した組織(25組織/マウス)から単離したRNAからcDNAを合成した。各遺伝子発現の相対レベルを定量するために、本出願人らは、4種類のマウス・アンギオゲニン・ファミリー・メンバーのそれぞれに特異的なプライマー・セットを設計し(図6、表4)、それらをSYBR−Greenベースのリアル・タイム定量RT−PCR(qRT−PCR)分析に用いた。
【0135】
意外なことに、アンギオゲニン−4mRNAは、それが十二指腸から直腸で発現される場合は小腸に制限されていた(図7)。これに対し、アンギオゲニン−1の発現は、肝臓、肺、およびすい臓で最大であり(図8)、一方、アンギオゲニン−3は主に肝臓、肺、すい臓、および前立腺で発現される(図9)。アンギオゲニン関連タンパク質mRNAは、40サイクルのPCR後でさえも調査した全組織で検出されなかった(図10)。
【0136】
したがって、アンギオゲニン−4は、その極めて限定的で腸特異的な発現パターンのため、マウス・アンギオゲニン・ファミリー・メンバーのなかでユニークなものとなっている。
【0137】
これらの知見から、腸内ではアンギオゲニン−3よりもアンギオゲニン−4の発現が微生物によって制御されることが示唆された。この仮説を直接試験するため、アンギオゲニン−4に特異的なプライマーとqRT−PCRを用いて、無菌NMRIマウスおよび従来法で飼育されたNMRI動物から採取された回腸/盲腸フローラで10日間コロニー形成させた無菌マウスの小腸の長さ方向に沿ったアンギオゲニン−4mRNA量を比較した。対ごとの比較から、アンギオゲニン−4の発現がコロニー形成されたマウスの空腸で最大であり、従来法に従うとこの領域でのアンギオゲニン−4の発現が最大17倍にまで誘発されることが明らかになった(図11)。無菌NMRIマウスをB.thetaiotaomicronだけと10日間共生させると(Mono−Association)、アンギオゲニン−4の発現が同程度に誘発された(データ示さず)。
【0138】
【表7】
【0139】
アンギオゲニン−4の生後発育中の発現制御は、その微生物による制御と一致する。
次いで、生後5日(P5)〜P30の無菌および従来法で飼育されたNMRIマウス(n=3マウス/日/グループ)の発育に伴うアンギオゲニン−4の発現パターンを評価した(図9)。アンギオゲニン−4の転写産物相対量は、P20までいずれのマウス・グループでも比較的低いままであった。この時点以降、無菌動物でわずかに(2〜3倍)発現が増加した。これに対し、従来法で飼育された動物では、P15からP30の間でアンギオゲニン−4の発現が20倍以上になった。これらの結果から、哺乳/離乳移行中にアンギオゲニン−4が誘導されることが示唆され、これは消化管内微生物の主な変化と一致する。生後の無菌マウスでアンギオゲニン−4が誘導されないことも、微生物叢の構成成分がアンギオゲニン−4の発現の制御に重要な役割を演じているという結論と一貫している。
【0140】
アンギオゲニン−4の細胞局在化
これまでのアンギオゲニン・タンパク質発現の細胞起源のレーザ・マイクロダイセクション(LCM)/qRT−PCRによる研究(実施例2)では、アンギオゲニン−3およびアンギオゲニン−4の両者を認識するプライマー、および捕捉された陰か上皮、じゅう毛上皮、またはじゅう毛核(villus core)由来の間充織集団から単離したRNAを使用した。qRT−PCR分析から、微生物制御された「アンギオゲニン」が、リーベルキューンかの底部に位置する上皮細胞で産生されることが示された(Hooper等、2001)。
【0141】
アンギオゲニン−4の発現がパネート細胞中で起こるという仮説を試験するために、本出願人らは、LCMを使用して、(a)弱毒ジフテリア毒素Aフラグメント(tox176)によってパネート細胞系譜を切断した無菌成体(12週齢)トランスジェニック・マウス(CR2−tox176マウス)(Garabedian等、1997)、および(b)それらの同年齢同性無菌正常同腹子から、空腸陰かの底部に位置する細胞を単離した。アンギオゲニン4特異的プライマーを用いたqRT−PCRにより、正常マウスの陰か底部の上皮細胞から精製されたRNAでアンギオゲニン−4mRNAレベルがCR2−tox176同腹子に比べて10倍になることが明らかになった(図10)。
【0142】
従来法で飼育されたNMRIマウスを用いて追跡調査を実施した。3個の細胞プールをLCMで採取した。すなわち、パネート細胞単体、上部陰かおよびじゅう毛の上皮細胞(パネート細胞を除いた画分)、およびじゅう毛核および陰か周辺領域から回収した間充織である。アンギオゲニン−4mRNAの分布は、Mom−1遺伝子座の産物であり周知のパネート細胞特異的遺伝子の産物であるホスホリパーゼA2の分布に極めて類似していた(データ示さず)。
【図面の簡単な説明】
【図1】
レーザ捕捉顕微解剖された回腸細胞集団、コロニー形成されたマウス回腸のLCMにおける遺伝子発現のコロニー形成に関連する変化のリアル・タイム定量RT−PCR研究の結果を示す図である。ヌクレア・ファースト・レッドで切片を染色した。棒目盛=25μm。
【図2】
レーザ捕捉された細胞集団から単離されたmRNAの量のリアル・タイム定量RT−PCR分析結果を示すグラフである。値は、下記ΔΔCT分析を用いた無菌間充織内の量に対するものである。各試料の遺伝子産物を3〜4回の独立実験で各3回繰り返して分析した。無菌マウスとコロニー形成マウスのペアから得られた代表的な結果(平均値±1S.D.)をプロットしてある。
【図3】
ミクロフローラの様々なメンバーによるコロニー形成に対する宿主応答の特異性を示す実験結果を示すグラフである。示した菌のうちの1つを、または従来法で飼育されたマウス由来の完全な回腸/盲腸フローラ(従来法ミクロフローラ)を無菌マウスに接種した(4)。接種から10日後に107CFU/ml回腸量でコロニー形成させた動物から調製された回腸RNAをプールし、図示した各mRNA量をリアル・タイム定量RT−PCR(qRT−PCR)で分析した。3回の測定の平均値(±1S.D.)をプロットしてある。
【図4】
マウスのアンギオゲニン−4およびアンギオゲニン−3のヌクレオチド配列(それぞれ、配列番号29および30)を並べて示す図である。
【図5】
マウスのアンギオゲニン・ファミリー・メンバーのアミノ酸配列の配列アラインメント(配列番号31〜34)を示す図である。
【図6】
マウスのアンギオゲニン・ファミリー・メンバーに特異的なプライマーの位置を示す図である。
【図7】
アンギオゲニン−4mRNAの組織分布を示すグラフと、アガロース・ゲル分析の結果を示す図である。
【図8】
アンギオゲニン−1mRNAの組織分布を示すグラフである。
【図9】
定量リアル・タイムRT−PCR分析後のアンギオゲニン−3mRNAの組織分布を示すグラフである。
【図10】
アンギオゲニン関連タンパク質発現の欠如を示すRT−PCR分析の結果を示す図である。
【図11】
小腸内のアンギオゲニン−4の発現の微生物による制御に関する実験結果を示すグラフである。
【図12】
生後発育期間におけるアンギオゲニン−4の発現の制御を示すグラフである。
【図13】
陰か底部(crypt base)から単離した細胞のqRT−PCR分析による小腸内のアンギオゲニン−4発現の細胞局在化を示す棒グラフである。
Claims (25)
- a)共生細菌がコロニーを形成した腸内および無菌の腸内で少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現を測定すること、および
b)共生細菌がコロニーを形成した腸と無菌の腸とで発現レベルが少なくとも2倍異なるa)の遺伝子を同定すること
を含む哺乳動物の腸内共生ミクロフローラのコロニー形成に起因する化学変化を調べる方法。 - ステップa)の複数の遺伝子発現をDNAマイクロアレイ分析および/または定量RTPCRで測定する、請求項1に記載の方法。
- in vitro細胞培養物、下等真核生物モデル、または動物モデルからなる群から選択される系内で、b)で同定された遺伝子の機能を調べるステップc)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
- i)トランスジェニック・ノックアウト、
ii)ドミナント・ネガティブ実験、
iii)導入遺伝子の過剰発現、
iv)抗体結合アッセイ、
v)性質の明確な化学薬剤を用いた薬理学的介入による、
からなる群から選択される方法を用いて機能を調べる、請求項3に記載の方法。 - 共生細菌がB.Thetaiotaomicronである、請求項1に記載の方法。
- 少なくとも10種類の遺伝子の発現を測定し、栄養素の摂取と代謝、ホルモン/成熟応答、粘膜防御機能、解毒/薬剤耐性、腸管神経系/筋層の発生または活動、血管形成、細胞骨格/細胞外マトリックスの機能または発生、シグナル伝達、または他の細胞機能に関連する遺伝子から選択される前記遺伝子をステップ(a)で測定する、請求項1に記載の方法。
- Na+/グルコースコトランスポーター(SGLT1)、ラクターゼ・フロリジン−ヒドロラーゼ、膵リパーゼ関連タンパク質2、コリパーゼ、肝脂肪酸結合タンパク質、絶食誘導脂肪因子(FIAF)、アポリポタンパク質A−IV、ホスホリパーゼB、CYP27高親和性銅トランスポーター、メタロチオネインI、メタロチオネインII、フェリチン重鎖、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ・サブユニット、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、トランスケトラーゼ、リンゴ酸オキシドレダクターゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アデノシン・デアミナーゼ、オミシン・デカルボキシラーゼ抗酵素、15−ヒドロキシプロスタグランジン・デヒドロゲナーゼ、GARG−16、FKBP51、アンドロゲン制御輸精管タンパク質、短鎖デヒドロゲナーゼ、耐熱性抗原、減衰促進因子、重合Ig受容体、小型プロリン・リッチ・タンパク質2a、血清アミロイド・タンパク質A、CRP−ダクチンα(MUCLIN)、ゼータ・プロテアソーム鎖、抗DNA IgG L鎖、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、P−糖タンパク質(mdr1a)、CYP2D2、L−グルタミン酸トランスポーター、L−グルタミン酸デカルボキシラーゼ、小胞関連タンパク質−33、システイン・リッチ・タンパク質2、平滑筋(腸)γアクチン、SM−20、アンギオゲニン−4、ゲルゾリン、デストリン、心筋αアクチン、エンドBサイトケラチン、フィブロネクチン、プロテイナーゼ阻害剤6、α1タイプ1コラーゲン、Pten、gp106(TB2/DP1)、rac2、Semcap2、血清およびグルココルチコイド制御キナーゼ、STE20様タンパク質キナーゼおよびB細胞ミエロイド・キナーゼ、グルタチオン・レダクターゼ、カルモジュリン、elF3サブユニット、hsc70、オリゴサッカリル・トランスフェラーゼ・サブユニット、フィブリラリン、H+−輸送ATPアーゼ、およびMsec23をコードする遺伝子からなる群から選択される少なくとも10種類の遺伝子の発現である、請求項6に記載の方法。
- 10種類の遺伝子が、コリパーゼ、減衰促進因子(DAF)、重合IgA受容体、小型プロリン・リッチ・タンパク質2a(Sprr2a)、アンギオゲニン−3、アンギオゲニン−4、Pten、CYP2D2、Sprr2a、rac2、およびMdr−1をコードする遺伝子を含む、請求項6に記載の方法。
- 実質上すべての前記遺伝子の発現を測定する、請求項7に記載の方法。
- 発現が少なくとも7倍異なる遺伝子をステップ(b)で同定する、請求項1に記載の方法。
- 腸内でアンギオゲニン−4またはコリパーゼが関与する生物化学的経路を評価することを含む、請求項3に記載の方法。
- 哺乳動物の消化管内で特定の遺伝子の発現レベルを、治療または予防の目的で変化させる方法であって、請求項1に記載の方法を用いて同定される共生細菌の胃腸管内密度を、前記発現レベルの所望の変化をもたらすように変更することを含む方法。
- 請求項1の方法を用いて同定される有効な共生細菌を用いて、上皮で発現される血管形成因子を調節することを含む、請求項12に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法を用いて同定される有効な共生細菌を用いて、代謝を調節することを含む、請求項12に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法を用いて同定される有効な共生細菌を用いて、上皮の防御機能を調節することを含む、請求項12に記載の方法。
- 胃腸疾患に薬剤として応用される化合物のスクリーニング方法であって、請求項1に記載の方法を用いて同定される遺伝子産物の活性を調節する能力について前記化合物を評価することを含む方法。
- 請求項1に記載の方法を用いて同定される遺伝子産物の活性を調節する化合物の治療有効量を投与することを含む、胃腸疾患を治療しまたは予防する方法。
- 小型プロリン・リッチ・タンパク質2a(sprr2a)またはrac2の活性または量を調節する能力について化合物をアッセイすることを含む、腸の防御機能の欠陥を特徴とする病状の治療または予防に潜在的に有用な化合物をスクリーニングする方法。
- 腸の防御機能の欠陥を特徴とする病状の治療または予防用薬物の調製における、小型プロリン・リッチ・タンパク質2a(sprr2a)またはrac2の活性または量を調節できる化合物の使用。
- 小型プロリン・リッチ・タンパク質2a(sprr2a)またはrac2の活性または量を調節できる化合物の治療有効量を投与することを含む、腸の防御機能の欠陥を特徴とする病状を治療または予防する方法。
- 腸の生態のレギュレーターとして機能する遺伝子を同定するための方法であって、請求項1に記載の方法を応用すること、およびこのような機能にこれまで関連づけられていない発現遺伝子を検出することを含む方法。
- マウスの腸で発現され、配列番号12および25のプライマーを用いて少なくとも部分的に増幅可能である遺伝子によってコードされるアンギオゲニン・タンパク質。
- タンパク質が、図4に示す配列番号29のタンパク質、その対立遺伝子変異体、または配列番号29と同一のアミノ酸配列を少なくとも85%有するタンパク質である、請求項22に記載のタンパク質。
- 配列番号29のタンパク質である請求項23に記載のタンパク質。
- 請求項22に記載のタンパク質をコードする核酸。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US25290100P | 2000-11-27 | 2000-11-27 | |
PCT/US2001/044332 WO2002042328A2 (en) | 2000-11-27 | 2001-11-27 | Method for studying the effects of commensal microflora on mammalian intestine and treatments of gastrointestinal-associated disease based thereon |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004536557A true JP2004536557A (ja) | 2004-12-09 |
JP2004536557A5 JP2004536557A5 (ja) | 2005-12-22 |
Family
ID=22958021
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002544461A Pending JP2004536557A (ja) | 2000-11-27 | 2001-11-27 | 哺乳動物の腸に対する共生ミクロフローラの効果を調べるための方法およびそれに基づく胃腸関連疾患の治療 |
Country Status (4)
Country | Link |
---|---|
EP (1) | EP1414853A2 (ja) |
JP (1) | JP2004536557A (ja) |
AU (1) | AU2002226984A1 (ja) |
WO (1) | WO2002042328A2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6271093B1 (ja) * | 2014-12-23 | 2018-01-31 | フォーディー ファーマ リサーチ リミテッド4D Pharma Research Limited | 免疫調節 |
Families Citing this family (23)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20050037955A1 (en) * | 2001-11-27 | 2005-02-17 | Hooper Laura Virginia | Therapeutic protein and treatments |
US20050239706A1 (en) * | 2003-10-31 | 2005-10-27 | Washington University In St. Louis | Modulation of fiaf and the gastrointestinal microbiota as a means to control energy storage in a subject |
DE102005026710A1 (de) * | 2005-06-09 | 2006-12-14 | Basf Ag | Verfahren zum Testen von Substanzen oder Substanzgemischen, dessen Verwendung und entsprechende Analysekits |
GB201117313D0 (en) | 2011-10-07 | 2011-11-16 | Gt Biolog Ltd | Bacterium for use in medicine |
GB201306536D0 (en) | 2013-04-10 | 2013-05-22 | Gt Biolog Ltd | Polypeptide and immune modulation |
EP3400953A1 (en) | 2014-12-23 | 2018-11-14 | 4D Pharma Research Limited | Pirin polypeptide and immune modulation |
MA41060B1 (fr) | 2015-06-15 | 2019-11-29 | 4D Pharma Res Ltd | Compositions comprenant des souches bactériennes |
DK3206700T3 (da) | 2015-06-15 | 2019-08-05 | 4D Pharma Res Ltd | Sammensætninger omfattende bakteriestammer |
MA41010B1 (fr) | 2015-06-15 | 2020-01-31 | 4D Pharma Res Ltd | Compositions comprenant des souches bactériennes |
PT3307288T (pt) | 2015-06-15 | 2019-10-17 | 4D Pharma Res Ltd | Composições compreendendo estirpes bacterianas |
PT3240554T (pt) | 2015-06-15 | 2019-11-04 | 4D Pharma Res Ltd | Blautia stercosis e wexlerae para uso no tratamento de doenças inflamatórias e autoimunes |
KR101914245B1 (ko) | 2015-11-20 | 2018-11-02 | 4디 파마 리서치 리미티드 | 박테리아성 균주를 함유한 조성물 |
GB201520497D0 (en) | 2015-11-20 | 2016-01-06 | 4D Pharma Res Ltd | Compositions comprising bacterial strains |
MA42560B1 (fr) | 2016-03-04 | 2019-07-31 | 4D Pharma Plc | Compositions comprenant des souches bactériennes de blautia pour le traitement de l'hypersensibilité viscérale |
GB201612191D0 (en) | 2016-07-13 | 2016-08-24 | 4D Pharma Plc | Compositions comprising bacterial strains |
TW201821093A (zh) | 2016-07-13 | 2018-06-16 | 英商4D製藥有限公司 | 包含細菌菌株之組合物 |
GB201621123D0 (en) | 2016-12-12 | 2017-01-25 | 4D Pharma Plc | Compositions comprising bacterial strains |
TW201907928A (zh) | 2017-05-22 | 2019-03-01 | 英商4D製藥研究有限公司 | 包含細菌品系之組成物 |
MA41708A (fr) | 2017-05-24 | 2020-04-08 | 4D Pharma Res Ltd | Compositions comprenant des souches bactériennes |
ES2841902T3 (es) | 2017-06-14 | 2021-07-12 | 4D Pharma Res Ltd | Composiciones que comprenden cepas bacterianas |
MA49425A (fr) | 2017-06-14 | 2020-04-22 | 4D Pharma Res Ltd | Compositions comprenant des souches bactériennes |
CN110777215A (zh) * | 2019-11-07 | 2020-02-11 | 北京市心肺血管疾病研究所 | 利用宏基因组技术辅助检测食品中是否含有c2z7型转基因玉米成分的方法 |
CN116143899B (zh) * | 2022-11-07 | 2024-02-20 | 四川农业大学 | 一种重组抗菌肽pANG4及其制备方法与应用 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0904784A1 (en) * | 1997-09-22 | 1999-03-31 | N.V. Nutricia | Probiotic nutritional preparation |
WO2000065095A2 (en) * | 1999-04-23 | 2000-11-02 | Clontech Laboratories, Inc. | Methods and compositions for performing array based hybridization assays |
-
2001
- 2001-11-27 WO PCT/US2001/044332 patent/WO2002042328A2/en active Search and Examination
- 2001-11-27 EP EP01995938A patent/EP1414853A2/en not_active Withdrawn
- 2001-11-27 AU AU2002226984A patent/AU2002226984A1/en not_active Abandoned
- 2001-11-27 JP JP2002544461A patent/JP2004536557A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6271093B1 (ja) * | 2014-12-23 | 2018-01-31 | フォーディー ファーマ リサーチ リミテッド4D Pharma Research Limited | 免疫調節 |
JP2018506959A (ja) * | 2014-12-23 | 2018-03-15 | フォーディー ファーマ リサーチ リミテッド4D Pharma Research Limited | 免疫調節 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2002042328A2 (en) | 2002-05-30 |
AU2002226984A1 (en) | 2002-06-03 |
EP1414853A2 (en) | 2004-05-06 |
WO2002042328A3 (en) | 2004-02-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2004536557A (ja) | 哺乳動物の腸に対する共生ミクロフローラの効果を調べるための方法およびそれに基づく胃腸関連疾患の治療 | |
US20050239706A1 (en) | Modulation of fiaf and the gastrointestinal microbiota as a means to control energy storage in a subject | |
Chassaing et al. | Intestinal epithelial cell toll-like receptor 5 regulates the intestinal microbiota to prevent low-grade inflammation and metabolic syndrome in mice | |
Bejar et al. | Transgenic calmodulin-dependent protein kinase II activation: dose-dependent effects on synaptic plasticity, learning, and memory | |
Tiihonen et al. | The effect of ageing with and without non-steroidal anti-inflammatory drugs on gastrointestinal microbiology and immunology | |
US7670785B2 (en) | Polynucleotides and polypeptides associated with the development of rheumatoid arthritis | |
US20060003959A1 (en) | Methods and agents for maintaining muscle mass and for preventing muscle atrophy and biomarkers for monitoring same | |
JP2005520479A (ja) | 乾癬の確認、評価、予防および治療のための組成物、キットおよび方法 | |
van Hemert et al. | Gene expression responses to a Salmonella infection in the chicken intestine differ between lines | |
Nerstedt et al. | Administration of Lactobacillus evokes coordinated changes in the intestinal expression profile of genes regulating energy homeostasis and immune phenotype in mice | |
van de Wetering et al. | Glutathione-S-transferase P promotes glycolysis in asthma in association with oxidation of pyruvate kinase M2 | |
US20210369795A1 (en) | Methods and compositions for identifying and treating subjects at risk for checkpoint blockade therapy associated colitis | |
CN109837340A (zh) | 用于肺癌无创诊断的外周血基因标记物 | |
Dusing et al. | Onecut-2 knockout mice fail to thrive during early postnatal period and have altered patterns of gene expression in small intestine | |
EP4125413A1 (en) | Improving milk production and compositional characteristics with novel ruminococcus bovis | |
Ettinger et al. | Lactobacillus rhamnosus GR-1 attenuates induction of hypertrophy in cardiomyocytes but not through secreted protein MSP-1 (p75) | |
JP4879756B2 (ja) | イヌの骨関節炎と関連する遺伝子並びに関連する方法及び組成物 | |
WO2013040650A1 (en) | Screening method | |
Dembowski et al. | Phenotype, intestinal morphology, and survival of homozygous and heterozygous endothelin B receptor–deficient (spotting lethal) rats | |
US20040091893A1 (en) | Method for studying the effects of commensal microflora on mammalian intestine and treatments of gastrointestinal-associated disease based thereon | |
Lee et al. | Role of Nox4 in Mitigating Inflammation and Fibrosis in Dextran Sulfate Sodium–Induced Colitis | |
Radcliffe et al. | Quantitative trait loci mapping for ethanol sensitivity and neurotensin receptor density in an F2 intercross derived from inbred high and low alcohol sensitivity selectively bred rat lines | |
Wang et al. | The Potential Effects of Isoleucine Restricted Diet on Cognitive Impairment in High‐Fat‐Induced Obese Mice via Gut Microbiota–Brain Axis | |
Garrett et al. | Intestinal epithelial Axin1 deficiency protects against colitis via altered gut microbiota | |
US7442509B2 (en) | Detecting mutations in the feline cardiac myosin binding protein C gene associated with hypertrophic cardiomyopathy in cats |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20041115 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041115 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20051025 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20051025 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070925 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080318 |