JP2004536139A - 臍帯血細胞を用いた筋ジストロフィーの治療方法 - Google Patents

臍帯血細胞を用いた筋ジストロフィーの治療方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、臍帯血細胞を静脈内注入等により投与することによる、筋ジストロフィー患者の治療方法を特徴とする。

Description

【背景技術】
【0001】
発明の背景
筋ジストロフィーは遺伝性筋肉疾患の一ファミリーである。型によっては小児を侵し(例えば、デュシェーヌジストロフィー)、20〜30年以内に死亡する。その他の型は成人に発現して、さらにゆっくりと進行する。デュシェーヌジストロフィー(ジストロフィン遺伝子の突然変異に惹起される)、ならびにティーンエイジャーおよび成人性三好型ジストロフィーまたはその変異型である肢帯型筋ジストロフィー2B、即ちLGMD-2B(ジスフェリン遺伝子の突然変異に惹起される)を含めて、複数のジストロフィーの遺伝子が同定されている。これらは、筋肉中の関連タンパク質の発現を阻止することによって筋の機能不全を惹起する「機能喪失」突然変異である。これらの突然変異に関するマウスモデルがあり、自然発生性に出現したか、または関連遺伝子の不活化もしくは欠失により作出された。これらのモデルは、筋肉中の欠損タンパク質を補充して正常な筋機能を回復させる治療法の検討に有用である。
【0002】
分化した筋は、優れた再生能を持つ多核細胞または筋線維から構成される。この再生能は、筋が原始的な筋前駆細胞(筋幹細胞、および「衛星細胞」として知られるやや成熟した細胞)を持っているために存在する。これらの細胞は筋肉内で休眠状態にあり、活性化されて新しい単核性の筋細胞(筋芽細胞)を形成し、この筋芽細胞は互いに接着および融合して新しい多核性の筋管やより成熟した筋細胞(同じく多核細胞である)を形成することができる。筋線維は個々の筋芽細胞の融合によって形成されるため、2個の細胞が融合して同一の筋管となれば、ある筋細胞によって形成されるタンパク質はこのタンパク質を欠く周辺の筋細胞と容易に共有されやすくなる。
【0003】
筋疾患の細胞療法の可能性は、筋芽細胞の融合と筋再生に関するこの概念に固有のものである。筋ジストロフィータンパク質の形成能を持つ筋芽細胞がこのタンパク質を欠く筋細胞と融合すると、融合によって形成される筋管ではこの欠損が改善されるはずである。つまり、細胞療法を介して、正常筋芽細胞の正常な核がジストロフィー筋細胞に欠けている遺伝子を補い、それによって遺伝子およびタンパク質の補充が達成される。
【0004】
Partridgeらは10年以上前に、正常なジストロフィンタンパク質形成能を持つ筋前駆細胞の混合細胞群がジストロフィンを欠くmdxマウスの筋と融合することによって欠損タンパク質をある程度補充し得ることを実証した(Partridgeら、Nature 337:176-179, 1989)。Partridgeのこの画期的実験では、筋前駆細胞のどの集団がこの効果の達成能を持つかということは明確ではなかった。デュシェーヌ型ジストロフィーおよびベッカー型ジストロフィー患者を対象として、少なくとも6件の筋芽細胞療法に関するヒト試験が実施され、筋芽細胞が筋肉内に直接注入された;いずれの試験でも効果が認められなかったことは、筋芽細胞が筋細胞療法において効果を示すほど未分化ではなかったことを示すと解釈することができる。この所見は筋幹細胞の研究に刺激となった。
【0005】
ここ2年間に、複数の筋生物学者が筋幹細胞と推定される細胞の単離において励みとなる最初の成功を収めている。さらに、これらの試験では、原始的な筋前駆細胞が損傷した筋に融合して新たな筋を形成することができるばかりでなく、このような幹細胞または幹様細胞は血流に載り、未確認の筋肉同化因子に反応して血液から離れて局所の筋損傷部位に侵入する優れた能力を持つことも実証されている。特にここ3年間に、筋幹細胞の特徴を備えた細胞がこれまで本来は血液原性と考えられていた骨髄などの組織に存在し得ることが明らかとなってきた。1999年、Kunkel研究所のGussoniらは、多剤耐性トランスポーターの存在によって骨髄または筋自身の細胞の「サイドポピュレーション(side population)」(SP)分画として同定される原始的細胞集団が尾静脈注入によってジストロフィーのmdx筋組織に送達され得ることを報告した(Gussoniら、Nature 401:390-394, 1999)。これらの細胞が原始的幹細胞を含むことは、同じ注入によって筋線維の10%まででジストロフィンの発現を回復させるだけの十分な正常筋細胞を筋組織に定着させることができ、同時に予め放射線を照射したレシピエントマウスの骨髄にも定着させることができるという所見によって強く示唆された。その後、Huard(Leeら、J. Cell Biol. 150:1085-1099, 2000)およびBresolin(Torrenteら、J. Cell Biol. 152:335-348, 2001)の研究室からも同様の所見が報告された。
【0006】
現在のところ、細胞を筋幹細胞と定義するための一つの基準は、分化して筋芽細胞を形成し、それによって筋の再生または修復のいくつかの局面を増強する能力である。一般に、(ジストロフィンのような)それまで欠失していたタンパク質が筋幹細胞の注入後に発現することは、筋幹細胞が存在することを示す一応の証拠を提供する。現在に至るまで、筋幹細胞を一義的に定義する単一の分子セットは特定されていない。しかし、表1に示す通り、筋細胞系譜における異なる分化段階を特徴付ける進化している表面タンパク質ファミリーが同定されつつある。
【0007】
(表1)筋細胞系譜の細胞上に差異を有して発現する選択された表面マーカー
Figure 2004536139
MSC=筋幹細胞;SP=サイドポピュレーション(side population)細胞;MPC=筋前駆細胞
【0008】
例えば、候補となる幹細胞セットは、表面抗原のCD34およびおそらくAC133などのその他の原始的細胞表面マーカーを発現するが、c-kitまたは造血マーカーであるCD34などの細胞系譜マーカーを発現しないと思われる。
【0009】
臍帯血細胞(「UCB」細胞)は、幹細胞の特性を備えた亜集団を含む。ヒトUCB細胞の注入によって、骨髄細胞の補充を達成することができる。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明は、ヒトUCB細胞の投与によって筋ジストロフィー患者を治療する方法を特徴とする。細胞は、例えば患者の筋または血流への直接注入など、任意の適切な方法で投与することができる。全身注入後、UCB細胞の一部は患者の筋に移動して既存の筋細胞と一体化し、そこで欠損しているタンパク質を提供して、その結果、疾患を治療する。
【0011】
発明の一態様において、投与前にUCB細胞を処理して数を増加させ、比較的未分化な細胞に関して細胞を濃縮する。
【0012】
本発明は、治療患者の免疫系による投与細胞の拒絶を抑制する、筋ジストロフィー患者の治療のための細胞移植法も特徴とする。この方法は、臍帯血細胞の調製物を提供する工程、調製物の細胞を用いた患者の免疫系を再構築する工程、および患者の筋ジストロフィーを治療するため調製物の細胞を投与する工程を含む。細胞移植法の一態様において、この方法はさらに、インビトロにおける調製物の細胞を増幅する工程、および患者の筋ジストロフィーを治療するための患者への調製物の増幅させた細胞を反復投与する工程を含む。
【0013】
本発明にはいくつかの利点がある。例えば、筋ジストロフィーと診断された患者または筋ジストロフィーに罹患した患者にUCB細胞を投与することによって患者を治療するための方法を提供する。本発明は、生体の2つまたはそれ以上の細胞型の前駆細胞である多能性幹細胞の豊富な供給源を含む臍帯血の使用に依存する。従来、異常を呈した骨髄の回復には幹細胞源としてドナーの骨髄が使用されてきたが、研究者らは臍帯血が多くの異なる組織の細胞の回復に用いることのできる多能性細胞の優れた代替供給源であることを実証している。また本発明は、筋ジストロフィーと診断された患者または筋ジストロフィーに罹患した患者にUCB細胞を投与するが、細胞の拒絶を克服するために、(患者またはドナーより提供され得る)UCB細胞を用いて併せて患者の免疫系の再構築を行う治療法を特徴とする。
【0014】
加えて、骨髄中に見出される幹細胞がドナーからレシピエントへの血液型の完全な一致を必要とするのとは対照的に、臍帯血幹細胞は血液型がほぼ一致するだけの移植例において成功することが確認されているという点で特有である。また、骨髄移植では、臍帯血幹細胞移植の場合よりも移植片対宿主病が多発する。
【0015】
定義
「臍帯血細胞(umbilical cord blood cells)、臍帯血細胞(cord blood cells)、または胎盤血液細胞(placental blood cells)」とは、出産後に臍帯および胎盤に残存する血液を意味する。骨髄と同じく、臍帯血は幹細胞の豊富な供給源であることが明らかとなっている。
【0016】
「幹細胞」または「多能性幹細胞」は互換的に用いることができ、生体の2つまたはそれ以上の細胞型を形成する能力を有する細胞を意味する。
【0017】
詳細な説明
マウスを用いた実験
ヒトUCB細胞は、新生児から切除した直後の臍帯から得られる。細胞(マウス1匹当たり10,000個〜1,000,000個)は標準的な薬学的緩衝液または無菌生理食塩液に懸濁して、シリンジに収容する。
【0018】
使用する最初のマウスモデルは機能性ジスフェリンを欠く変異マウス(sjlマウス)である;これらのマウスは自然発生性の三好型筋ジストロフィー/LGMD2Bモデルである。これらのマウスについては(Leeら、J. Cell Biol. 150:1085-1099, 2000)に述べられており、Massachusetts General Hospital, Boston, MassachusettsのRobert H. Brown, Jr.の研究室において入手可能である。
【0019】
UCB細胞は球後注射または尾静脈注射によりマウスの血流中に注入する。80〜100日後に、UCB注入によって筋の再生およびジスフェリンの発現が促進されているかどうかを調べるためにマウスを屠殺する。以下を含むいくつかのエンドポイントを用いて、これらの転帰をモニターする:(a)筋組織におけるUCB定着率を示すヒト由来核マーカーの免疫染色;(b)細胞が筋に分化したことを確認するマーカーのUCB細胞における検出;および(c)宿主であるsjlマウスが持っていないジスフェリンの検出。注入したUCB細胞の運命を追跡するもう一つの方法は、注入前に細胞を一種類または数種類のDNA結合蛍光色素で標識する方法である;注入後80〜100日に筋細胞の核にこれらの色素が存在することは、その細胞がUCB細胞に由来することを強く示唆する。また、ドナーの細胞を5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(BrDU)またはある種のヘキスト染料などの核色素で予め標識することも可能である。動物における運動機能を定量するために、機能試験も実施する。
【0020】
注入されるUCB細胞を宿主マウスに受け入れさせるために、1つまたは複数の免疫抑制法が用いられる。これは、例えばシクロスポリンAまたはその他の免疫抑制剤を用いて薬学的に達成することができる。代替的な方法として、致死量に近い放射線照射を行う方法がある。さらに、免疫系によって構築される移植バリアを克服するための三番目の方法は、免疫学的に欠陥のあるマウス(例えば、nu/nuまたはRag-nullマウスなど)を使用する方法である。
【0021】
これらの最初の実験ではUCB細胞の集団全体が使用される。後続の実験では、幹細胞または筋前駆細胞の各区分を濃縮したUCB細胞のサブセットが使用される。濃縮法の内、米国特許5,925,567号および第5,674,750号のKrausの方法を参照として本明細書に組み入れる。
【0022】
ヒトの治療
全身注入
本発明の方法は、小児または成人を問わず、いずれかのタイプの筋ジストロフィーに罹患した患者の治療に利用することができる。
【0023】
UCB細胞は上記の通り調製して、細胞数は比例的に増加させる。好ましくは、標準的な6種類の移植マーカーを用いて細胞を類別する;好ましくは、6種類中少なくとも4種類が一致するものとし、6種類6種類の一致がもっとも好ましい。但し、一致が6種類中4種類未満である場合でも、比較的未分化のUCB細胞はナイーブであるために拒絶が軽度で許容可能であり、処置が依然実行可能であることがある。拒絶を起こす場合は、例えばシクロスポリンAの投与などの上記の標準的な方法を用いて制御する。
【0024】
UCB細胞が上記のように増幅および選択されない場合は、保存された状態の細胞を使用することができる。一検体の保存試料中の細胞数が不十分である場合は、必要な数の細胞を用意するために複数のこのような試料を混合することができる。さらに、マウス実験に関連して上記に示した通り、UCB細胞集団全体を用いるのではなく、筋幹細胞またはその他の前駆細胞を濃縮させた亜集団を用いることができる。
【0025】
ヒトの治療では、UCB細胞全体の調製物または濃縮および増幅させた異なる細胞亜集団を反復注入する必要があることが予想される。細胞の反復注入は、例えば、1日目に1回目、5日目に2回目、10日目に3回目といったように経時的に投与することができる。1回目の10日間期間後には、例えば2週間の細胞投与を行わない期間を設けて、その後、10日間投与プロトコールを反復実施することが可能である。
【0026】
単回注入療法または反復注入療法のいずれで投与するにしても、レシピエントは免疫抑制を必要とすると思われる。これに関して準拠するプロトコールは、シクロスポリンAおよびFK506のような薬剤を用いた骨髄補充のためのヒトでの移植(即ち、細胞移植)において現在用いられている先例に従う。
【0027】
筋肉内注入
UCB細胞または増幅させたUCB細胞の亜集団に関するもう一つの可能な投与経路は、筋肉内への直接注入である。一定の条件下では、筋前駆細胞の直接的な筋肉内注入によってドナー細胞の宿主への取り込みが起こり、欠失タンパク質(例えば、mdxマウスにおけるジストロフィンなど)がある程度補充が可能であることは十分に証明されている。筋ジストロフィー患者への筋芽細胞の直接注入も安全であることは十分に確認されているが、このような筋芽細胞の宿主筋組織への取り込みは十分ではない。従って、宿主の筋は、筋芽細胞よりもさらに原始的なUCB細胞の亜集団が融合してそれによってタンパク質の補充および筋の再生が可能となると考えられる。この方法は、注入した細胞の広範囲な分布という点では静脈内注入よりも本質的に効果が低く、従って、まず間違いなく多くの筋に繰り返し注入しなければならないであろう。
【0028】
UCB細胞による免疫の再構築および連続注入
上記に概述する通り、宿主の筋内部においてドナーUCB細胞を維持するためには一種類または数種類の免疫抑制法を長期的に使用する必要があると思われる。これは、臓器移植または細胞移植を受ける患者における免疫抑制剤またはその他の療法の長期使用に類似する。
【0029】
本明細書で提案するUCB細胞を用いる方法により、免疫抑制剤の長期使用を回避することができる。この概念には2つの要素がある。第一には、レシピエントがUCB注入に先立って骨髄の除去を受ける場合、UCB細胞でレシピエントの骨髄を補充することが可能であろう。レシピエント自身のUCB細胞の提供が可能な場合もある。これによって、免疫抑制の必要性が克服できる可能性がある。レシピエント自身のUCB細胞が使用できない場合は、ドナーのUCB細胞を使用することができる。除去された骨髄を再構築するドナーUCB細胞は効果的に宿主に寛容化して、それによって、継続的な免疫抑制を行うことなく数週間または数カ月間にわたって生存する。実際、このようなレシピエントはキメラであり、専らドナー由来の再構築された免疫系が宿主組織と併存している。この再構築の概念における二番目の重要な要素は、UCB細胞のサブセットが優れた増殖能を持つことである。本発明者らは、ジストロフィー患者の筋における欠損タンパク質を供給するために使用されるUCB細胞が同時にインビトロにおける大量の筋前駆細胞の生成に用いることができるか否かを調べる。実際、ドナーのUCB細胞が宿主に寛容化して宿主をキメラとするならば、同一UCB細胞から派生した筋前駆細胞の追加注入は、反復連続注入により投与される場合であっても、免疫学的に宿主に受け入れられるはずである。つまり、UCB細胞による免疫再構築は同一UCBドナーを起源として派生する筋前駆細胞のその後の連続注入を可能とする。本プロトコールでは、一旦、キメラとなるとその後の筋細胞注入は宿主の免疫抑制を必要としないはずである。
【0030】
臍帯血細胞の採取および増幅
UCB細胞は当技術分野において既知の方法(例えば、Koikeら、Acta Paediatrica Japonica 25:275-282, 1983を参照されたい)により採取して、例えば米国特許第5,674,750号、第5,925,567号、および第6,338,942号に示される方法によって増幅することができる。一般に、臍帯血から得られる前駆細胞は本発明に従って使用することができる。幹細胞は、細胞増殖条件下、即ち、細胞の増殖(「有糸分裂活性」)を促進する条件下において増幅することができる。
【0031】
遺伝子治療
遺伝子治療を用いてUCB細胞に変更を加えて、筋ジストロフィーの原因である一種類または数種類の欠損タンパク質を供給することもできる。幹細胞の亜集団を含んで骨髄細胞の補充に使用することのできるUCB細胞は、修正遺伝子産物を用いて変更し、上記の一種類または数種類の方法を用いて患者に投与することができると予想される。その後、変更を加えられたUCB細胞が送達されることによって、患者の筋ジストロフィーが治療される。
【0032】
例示的な治療的遺伝子療法には、患者またはドナーからのUCB細胞源の採取、インビトロにおけるUCB細胞の濃縮、当技術分野において既知の方法によるUCB細胞の増幅、目的とする遺伝子を含むベクターを用いたUCB細胞の形質導入、および患者への再導入の工程が含まれてもよい。遺伝子治療の手法によるUCB細胞の形質転換は、増幅中または増幅後に行うことができる。
【0033】
当技術分野では、遺伝子治療で使用するための細胞の変更に関して複数の方法が知られている。これらの方法には、細胞の形質導入(例えば、Buetler, Biol. Blood Marrow Transplant 5:273-276, 1999;Dao, Leukemia 13:1473-1480,1999を参照されたい;また、一般的にはMorganら、Ann. Rev. Biochem. 62:191-217, 1993;Culverら、Trends Genet. 10:174-178, 1994;および米国特許第5,399,346号(Frenchら)を参照されたい);ウイルスベクターの使用;ならびにリポゾームを介して送達される裸のDNA、レセプター介在性送達、リン酸カルシウム法による形質移入、リポフェクション、電気穿孔法、微粒子銃(遺伝子銃)、微量注入、細胞融合、染色体介在性遺伝子伝達、マイクロセル介在性遺伝子伝達、スフェロプラスト融合および圧介在性遺伝子送達などの非ウイルス性ベクターの使用が含まれる。手法は、遺伝子は細胞によって発現可能であり、好ましくはその細胞子孫によって遺伝可能で、かつ発現可能であるように、遺伝子を細胞に安定的に伝達しなければならない。
【0034】
遺伝子治療の方法に関する総評については、Goldspielら、Clinical Pharmacy 12:488-505, 1993;WuおよびWu、Biotherapy 3:87-95, 1991;Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596, 1993;Mulligan、Science 260:926-932, 1993;ならびにMorganおよびAnderson、Ann. Rev. Biochem. 62:191-217,1993を参照されたい。組換えDNA技術に関する技術分野において広く知られている使用可能な方法については、Ausubelら(編)、1993、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, NY;およびKriegler, 1990、Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NYに記載されている。
【0035】
その他の態様
本明細書で述べられたすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照として組み入れられることが具体的かつ個別に記載されるのと同様に、参照として本明細書に組み入れられる。
【0036】
本発明はその具体的態様と関連づけて説明されているが、さらなる変更が可能であることは自明であり、本出願は、全体として本発明の原理に基づいて、本開示からの逸脱で本発明が関連する技術分野における既知の方法または慣例的方法の範囲内であり前記に説明する基本的特徴に該当するものを含めて、本発明のあらゆる変更、用途、または適応を網羅することを意図する。

Claims (6)

  1. 筋ジストロフィー患者を治療するための方法であって、該患者に臍帯血(UCB)細胞を投与する工程を含む方法。
  2. UCB細胞を患者の血流中に注入する、請求項1記載の方法。
  3. UCB細胞を患者の筋に注入する、請求項1記載の方法。
  4. 投与前にUCB細胞数を増加させて比較的未分化な細胞に関して細胞を濃縮するためにUCB細胞を処理する、請求項1記載の方法。
  5. 以下の工程を含む、細胞の拒絶を抑制しつつ筋ジストロフィー患者を治療するための細胞移植法:
    a)UCB細胞の調製物を提供する工程;
    b)該調製物の細胞を用いた患者の免疫系を再構築する工程;および
    c)患者の筋ジストロフィーを治療するため該調製物を細胞へ投与する工程。
  6. インビトロにおける調製物の細胞を増幅する工程、および患者の筋ジストロフィーを治療するために該患者への該調製物の増幅細胞を反復投与する工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
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