JP2004534222A - 結晶点群32の圧電共振素子 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、担持担体(詳しくは分散媒)と接触して厚みすべり振動子として作動し得る結晶点群32の圧電共振素子、ならびに、1つの電気接点と場合により少なくとも1つの感受層とを有した結晶点群32の圧電共振素子の少なくとも片側と接触する担持担体中の化学的、生化学的または物理的パラメータの少なくとも1つを測定する際に厚みすべり振動子として作動する前記共振素子の少なくとも1つの共振特性、好ましくは共振周波数が測定さるべき化学的、生化学的または物理的パラメータの評価値を表す測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の共振素子はたとえば、圧電共振子 − ほとんどの場合、厚みすべり振動子 − の共振特性が共振子表面での質量負荷、境界を接する媒体の粘度あるいはまた導電率の変化によって変化するという効果を利用した微量天秤に使用される。この種の微量天秤は質量負荷を介しての層厚さのインサイチュウ測定に多用される。こうした使用に際し微量天秤は真空中で作動される。ただし近年に至ってこの技法は液体ないし気体中の特定の成分の濃度測定にも応用され、その際、少なくとも共振子の表面はほとんどの場合に選択性結合層を備え、この層は実質的に、測定さるべき物質のみを共振子の表面に結合し、こうして振動質量を増大させる。
【0003】
圧電共振子の共振特性は振動質量以外に共振子と直列または並列に作用する容量にも依存していることから、電気的特性たとえば液体ないし気体の導電率または誘電率ないしそれらの変化を測定することも可能である。
【0004】
ただし、これらすべての応用に際する短所は、共振子の直接の温度変化ならびに測定さるべき媒質の温度変化のいずれもが共振子の共振特性、特に共振周波数に一部大きな影響をおよぼすことから、温度変動の影響を考慮し得るようにコスト高を招来する高価な温度調節装置を設けざるを得ないか、もしくはセンサの検出感度の低下を甘受せざるを得ないかという点である。その意味で、たとえばF. Eichelbaum[エフ・アイヒェルバウム]、R. Borngraeber[エル・ボルングレーバー]、R. Lucklum[エル・ルックルム]、P. Hauptmann[ペー・ハウプトマン]およびS. Roesler[エス・レースラー]の論文“Oszillatoren fuer Quartz-Crystal-Microbalance-Sensoren in Fluessigkeiten[液体中の水晶微量天秤センサ用発振子]”、Technisches Messen65号(1998年)から、繁用の水晶ATカット共振子の共振周波数ないし発振周波数の温度依存性 − これは空気中、特に室温時には非常に小さい − は片側が水と接触すると10MHzの基本周波数にて約35Hz/℃の激しい温度上昇特性を示すことが知られている。基本周波数とは独立したデータによればこれは3.5ppm/℃である。
【0005】
米国特許第5,487,981号公報では、たとえば、液体中の温度変化が水晶AT厚みすべり振動子の共振周波数におよぼす影響が抵抗温度計を用いて測定され、プログラマブルコントローラを援用してそのオフセット周波数が計算されて、電子的に補償されるように構成されている。ただしこの種の処理法は相対的にコスト高である。
【0006】
圧電共振子の共振周波数の温度特性はたとえば以下の式に基づいて表すことができる。
【0007】
【数1】
【0008】
式中記号の意味は以下の通りである:
f(T)・・・・ 温度T時の共振周波数
f(T0)・・・ 基準温度T0時の共振周波数
a,b,c・・・ 一次(線形)、二次および三次温度係数
この場合、基準温度T0は任意に選択することができる。本明細書においては共振周波数f(T)の温度特性の記述に線形温度係数aのみが使用される。これは前以て定められた温度範囲たとえば10℃〜40℃の温度範囲においてたとえば“線形近似[Linear-Fit]”によって求めることができる。二次および三次温度係数は無視される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、担持担体(詳しくは分散媒)中の化学的、生化学的または物理的パラメータを測定するための測定システム用の共振子であって、前記の短所を回避した共振子を提案することである。この場合 − コスト高な補正対策を要さずに − 共振子ないし測定さるべき媒質に温度変動が生じても測定時の検出感度を保持ないし向上させることが意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により前記課題は、共振素子を空気中または真空中で温度補償される結晶カットとは異なる、結晶X軸を中心に実質的に角度Φだけ回転された単回転Yカットとし、このYカットは担持担体(詳しくは分散媒)と接触しない場合には所定の温度範囲、好ましくは10℃〜40℃の温度範囲において共振周波数f(T)の負の温度特性を有し、担持担体と接触する場合には測定範囲における共振周波数の線形温度係数aの値は1ppm/℃以下、好ましくは0.5ppm/℃以下であることによって解決される。
【0011】
驚くべきことに、空気中で20℃〜35℃の温度範囲において共振周波数f(T)の負の線形(一次)温度係数aを有する圧電共振子 − その値は0.5ppm/℃〜3.5ppm/℃である − は、片側が蒸留水と接触すると前記の温度範囲においてほぼ温度とは無関係の周波数応答を有することが判明した。
共振子の振動表面とそれに隣接する媒質との間の相互作用は励起振動形態に決定的に依存している。圧電共振子にあっては実質的に縦モードと横モードとが励起され得る。
【0012】
縦モードの場合には結晶表面の偏向方向は共振子表面に対して実質的に垂直方向に向いている。この場合、共振子は特に液体と接触していれば共振振動の激しい減衰を示し、これにより測定範囲ないしこの種のセンサの解析能も大幅に制限されることとなる。
【0013】
ただし、実質的に横の振動モードが励起される共振子は特に液体と接触している場合に遥かに好適な振動特性を有している。そのうち最もよく知られているのはいわゆる厚みすべり振動子たとえば水晶ATないしBTカットである。
【0014】
圧電共振子の共振周波数の温度特性は結晶軸を基準にした共振子板のカット方向によって定まっている。
結晶軸を中心とした回転方向に関するカット角Φの符号表示は“IEEE Standard on Piezoeclectricity[圧電に関する米国電気電子学会規格]”、ANSI/IEEE Std.176−1987に準拠して行われる。
ただしクォーツ工業分野では依然として1949年版の規格が使用され、カット角について逆の符号表示が行われている。
以下の表により相違を具体的に示すこととする。
【0015】
【表1】
【0016】
圧電共振子の応用分野および使用材料に応じ、本発明により、低粘度(25℃にて動粘度γ<15mm2s−1)で少なくとも片側で共振子と接触している好ましくは水性担持担体(分散媒)の場合に、以下のカット角Φが選択される:
水晶の場合には下記の範囲:
−36.5°±1.1°、好ましくは−35.9°±0.5°
+52.5°±3.0°、好ましくは+51.4°±1.3°
ランガサイト(Langasit)の場合には下記の範囲:
+6.3°±3.0°、好ましくは+5.3°±2.0°および
オルト燐酸ガリウムの場合には下記の範囲:
−21.2°±4.5°、好ましくは−18.5°±1.7°。
【0017】
共振子が粘性担持担体(分散媒)(25℃にて動粘度γ>15mm2s−1)たとえば油と少なくとも片側で接触している1実施例において以下のカット角Φが定められている:
水晶の場合には下記の範囲:
−45.0°±7.0°、好ましくは−41.5°±3.5°
+60.0°±8.0°、好ましくは+60.0°±6.0°
ランガサイト(Langasit)の場合には下記の範囲:
+30.0°±19.0°、好ましくは+22.0°±11.0°および
オルト燐酸ガリウムの場合には下記の範囲:
−35.0°±10.0°、好ましくは−40.0°±5.0°。
共振子の製造にあたりX軸を中心とした回転に先立つz軸を中心とした回転が小さく保たれ、その際、−10°〜+10°、好ましくは−5°〜+5°の値が許容されていれば、本発明による共振子について以上に挙示した利点は広範に維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
図1はたとえば、本発明による2つの水晶共振素子 − 両者は単回転されたYカットS1とS2である − のカット角Φを空気中または真空中で温度補償されたATないしBTカットと対比して示したものであり、この場合、カットS1とS2とは粘性分散媒たとえば油に対して最適化されている。
【0019】
図2は分割式の液体測定セル3を示したものであり、各分割体は2つの箇所4でねじを用いて互いに結合されている。これら双方の分割体の間に、カバー面に取り付けられた電極を有した圧電共振素子1が配置され、弾性シールリング7を用いて上側ケーシングに対して封止される。この場合、検査さるべき担持担体(分散媒)ないし液体2は圧電振動励起される共振子表面と直接接触している。共振素子1は腐食性担持担体(分散媒)からの保護のため化学的に不活性の少なくとも1つの保護層を有していてよい。
【0020】
図3は本発明による測定システムを示したものである。この場合、液体測定セル3内に配された圧電共振素子1は測定電子系5、評価電子系6と電気的に結合されている。共振子表面は少なくとも1つの試料パラメータに対するセンサ層8を有していてよい。
【0021】
図4は、両側に金電極を有し、20℃〜35℃の温度範囲にて空気中ならびに片側が蒸留水と接触させられた水晶厚みすべり振動子(Φ=−35.6°)の共振周波数の温度特性を示したものである。空気中で振動する共振子の共振周波数の温度変化は約2.8ppm/℃の負の線形温度係数aを有しているが、他方、片側が液体と接触した共振子の共振周波数の線形温度係数はおよそ1/20であり、約0.14ppm/℃である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による圧電共振素子を説明する模式図
【図2】本発明による圧電共振素子を備えた測定システムの断面図
【図3】測定システムの概略を示した概略図
【図4】図1に示した共振素子の空気中および水中における共振周波数の温度状態を示したグラフ
Claims (5)
- 担持担体と接触して厚みすべり振動子として作動する結晶点群32の圧電共振素子において、
前記共振素子(1)は空気中または真空中で温度補償される結晶カットとは異なる、結晶X軸を中心に実質的に角度Φだけ回転された単回転Yカット(S1,S2)であり、前記Yカットは担持担体と接触しない場合には好ましくは10℃〜40℃の所定温度範囲において共振周波数f(T)の負の温度特性を有し、担持担体と接触する場合には測定範囲における共振周波数の線形温度係数aの値は1ppm/℃以下、好ましくは0.5ppm/℃以下であることを特徴とする共振素子。 - 低粘度の、好ましくは水性担持担体と少なくとも片側で接触して作動する請求項1に記載の共振素子において、
水晶の場合カット角Φは下記の範囲:
−36.5°±1.1°、好ましくは−35.9°±0.5°
+52.5°±3.0°、好ましくは+51.4°±1.3°
ランガサイトの場合カット角Φは下記の範囲:
+6.3°±3.0°、好ましくは+5.3°±2.0°および
オルト燐酸ガリウムの場合カット角Φは下記の範囲:
−21.2°±4.5°、好ましくは−18.5°±1.7°
であることを特徴とする共振素子。 - 粘性の担持担体、たとえば油と少なくとも片側で接触して作動する請求項1に記載の共振素子において、
水晶の場合カット角Φは下記の範囲:
−45.0°±7.0°、好ましくは−41.5°±3.5°
+60.0°±8.0°、好ましくは+60.0°±6.0°
ランガサイトの場合カット角Φは下記の範囲:
+30.0°±19.0°、好ましくは+22.0°±11.0°および
オルト燐酸ガリウムの場合カット角Φは下記の範囲:
−35.0°±10.0°、好ましくは−40.0°±5.0°
にあることを特徴とする共振素子。 - X軸を中心とした回転に先立ってZ軸を中心とした−10°〜+10°、好ましくは−5°〜+5°の回転が許容されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の共振素子。
- 1つの電気接点と場合により少なくとも1つの感受層とを有した結晶点群32の圧電共振素子(1)の少なくとも片側と接触する担持担体(2)中の化学的、生化学的または物理的パラメータの少なくとも1つを測定するための測定システムであって、厚みすべり振動子として作動する前記共振素子(1)の少なくとも1つの共振特性、好ましくは共振周波数が測定さるべき化学的、生化学的または物理的パラメータの評価値を表すものにおいて、
前記共振素子(1)は空気中または真空中で温度補償される結晶カットとは異なる、結晶x軸を中心に実質的に角度Φだけ回転された単回転Yカット(S1,S2)であり、前記Yカットは担持担体と接触しない場合には好ましくは10℃〜40℃の所定温度範囲において共振周波数f(T)の負の温度特性を有し、担持担体と接触する場合には測定範囲における共振周波数の線形温度係数aの値は1ppm/℃以下、好ましくは0.5ppm/℃以下であることを特徴とする測定システム。
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