JP2004532386A - 多発性硬化症を診断および治療するためのタンパク質、遺伝子、およびこれらの使用 - Google Patents

多発性硬化症を診断および治療するためのタンパク質、遺伝子、およびこれらの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、多発性硬化症の診断および予後をスクリーニングするため、多発性硬化症の治療の有効性を調べるため、特定の治療処置に応答する可能性が最も高い患者を識別するため、および薬剤開発のための方法および組成物を提供する。体液、たとえば脳脊髄液の2次元電気泳動によって検出可能な多発性硬化症関連の特徴点(MSF)を記載する。さらに本発明は、体液たとえば脳脊髄液中で検出可能な多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)、単離MSPIを含む調製物、MSPIに関して免疫特異的な抗体、および前述のものを含むキットを提供する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、多発性硬化症並びにその発症および進行と関係がある、ポリペプチド、タンパク質およびタンパク質アイソフォーム、これらをコードしている遺伝子の同定と、たとえば臨床スクリーニング、診断、予後、療法および予防法のため、ならびに薬剤スクリーニン並びに薬剤開発のためのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS)は、軸索が保たれている炎症性の脱髄傷害であり、若い成人の神経障害の最も一般的な原因であるとみなされている。MSの発症の平均年齢は30才であるが、2つの主要な年齢群が存在する。大部分の患者は発症が21才と25才の間であり、わずかなパーセンテージの患者では41〜45才の年齢である。西側の世界では、100,000当たり80を超える個体数が影響を受けている(Kurtzke,J.F.(1980)Neurology(N.Y.)、7:261〜279)。カナダおよび英国でのいくつかの双子に関する研究によって、共に罹患する率は、二卵性双生児および同胞では2%であるのに比べて、一卵性双生児では約30%であることが明らかになっており(Ebers,G.C.他(1986)New Engl J Med、315:1638〜42;Mumford,C.J.他 The British Isles survey of multiple sclerosis in twins.(1994)Neurology、1004:44、11〜15)、現在の証拠は、多数の遺伝子が相互作用して、MSに対する罹患性を高めている可能性があることを示唆している(Noseworthy(1999)Nature 399:suppl.A40〜A47)。
【0003】
遺伝学および遺伝子型の決定は、MSに関する遺伝性のリスクを定義するためには有用であるが、MSの診断、予後および治療におけるその有用性はかなり低下する。MSが単一疾患であるかどうか、およびそれが視神経脊髄炎、横断脊髄炎、バロー同心円性硬化症、急性MSのマーブルグ変種、および急性播種性脳脊髄炎を含めた、あまり一般的ではない炎症性の脱髄中枢神経系(CNS)症候群とどのように関連があるのかは、依然として知られていない(Noseworthy、Progress in determining the causes and treatment of multiple sclerosis.(1999)Nature 399:suppl.A40〜A47)。さらに、正常な状況下では、生きている患者のいかなる遺伝子発現分析に必要なCNS組織も得ることはできない。プロテオミクス手法は、CNS中のこのような疾患の表現型の分子分析に最も適しているようである。ヒト由来の一次物質のmRNA発現に基づく有意義な分析のために、全CNSを得ることはおおむね難しい。なぜなら、一次ヒト脳組織の死後の遅延は、タンパク質よりも敏速にmRNAに影響を与えるからである(Edgar他、Molecular Psychiatry1999、4、173〜17)。脳脊髄液(CSF)が脳を浸していると考えると、そのタンパク質組成の変化によって、原因としてあるいは診断上疾患と関連がある、CNSのタンパク質の発現パターンの変化が明らかになる可能性がある。適当な量の疾患特異的タンパク質(DSP)が、疾患の発症時および/または疾患の進行中に、生きている患者の疾患組織から体液中に分泌または放出される。多くの場合、DSPのこれらの変化は、個体の遺伝的構成とは無関係であり、むしろ病原性表現型に寄与する1組の分子性および細胞性変化と、直接関係があると思われる(Carpenter J Psychiatr Res1998 32、191〜5)。
【0004】
MS患者の検死解剖によって、脱髄、軸策が比較的保たれていること、ならびにグリオーシスおよび異なる程度の炎症によって特徴付けられる、CNS中の多数の病巣(プラーク)の存在が明らかになった。視神経、脊髄、および周室部を含めた、いくつかの好発部位が存在するが、脳または脊髄の任意の部分が影響を受ける可能性がある(Lumsden,C.E.(1970)In Vinken P.J.Bruyn、GW、eds.、Handbook of Clinical Neurology.Vol.9 Amsterdam、Noth Holland、P.P.217〜309)。MSのような大部分の炎症性神経障害では、細胞および/または分子レベルでの変化と、神経系の構造および機能の間の関連についてはほとんど知られていない。
【0005】
診断は、依然として臨床的なものである。診断には、病巣が時間的および空間的に播種性であることを実証すること、および同じ臨床的病像を生み出す可能性がある他の条件を排除することが必要である。Poser規準として知られるMSの臨床的分類項目には、誘発反応および磁気共鳴映像法(MRI)の異常性とCSF中の免疫学的な異常性がある(Poser,C.M.他(1983)Ann Neurol 13:227〜231)。現れるMSの症状は研究する個体群の間で変わるが、感覚的な症状の患者24%、眼の神経炎の患者31%、肢部が弱った患者17%、脳幹および小脳に症状がある患者25%を含む(Thompson,A.J.他(1986)Q.J.Med.225:69〜80)。したがってMSには、広範囲の臨床所見および過程があり、任意の所与の患者の臨床過程は予測不能である。大部分のMS患者では、MSは再発および寛解過程で始まり、神経機能不全の症状の発現は数週間続く。疾患の過程を通じて、寛解が不完全となる傾向を示し、患者は進行期(2次進行)に入る。疾患のこの時期の間に、患者に重度の不可逆的障害が進行する。約3分の1の患者は、二次的な進行が進まない良性のMSを有している。約10%の患者では、再発および寛解を伴わずに、発症から進行性の傷害が進行する(1次進行性MS)。MSにおける生化学的変化はほとんど同定されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、原因となる細胞性および/または分子性欠陥を同定し、特徴付けること、および神経病理学が、神経障害のより良い治療のために必要である。悪化または再発の可能性があるために、迅速な診断が、特に以下のように患者を分類するために、非常に有益であると思われる。
【0007】
1.良性MSと進行性MS
2.一次進行性MSと2次進行性MS
3.一次進行性MSおよび2次進行性MSの特異的病理生理学的サブタイプ
治療戦略には3つの目的がある:1、疾患の過程を変えること、2、再発の重度および期間に影響を与えること、3、対症療法および神経のリハビリテーション。
【0008】
現在MSには、生きている患者の診断および予後に有用である、客観的な生化学的マーカーがない。MS患者のCSF中のDSPを同定することによって、疾患病理への重要な洞察とより良い診断および治療戦略のための機会をもたらすことができる。MS患者からのCSFの等電点電気泳動によって、MSである患者の95%で、オリゴクローナル・バンドの存在が明らかになった(McLean他、(1990)Brain、113:1269〜89)。しかしながら、MRIと同様に、この発見がMS患者に特異的であるわけではなく、ギラン−バレー症候群、サルコイドーシスおよび慢性髄膜炎を含めた、他の神経障害においても検出することができる。したがって、個々の神経障害ならびに急性および慢性CNS疾患を区別する、特異性および感受性には、個々のタンパク質ではなくDSPのレパートリーを選択することが必要であると思われる。
【0009】
既存の非常に不充分な試験の時間浪費性およびその出費のために、CSFまたは他の体液(たとえば尿、血液、血清)の試料中の1つまたは複数の物質を測定することが非常に望ましく、このことがMSの明確な診断をもたらすか、あるいは鑑別診断からMSを排除するのに役立つと思われる。
【0010】
したがって、生きている被験体のMSを診断するための、感受性があり特異的であるバイオマーカーとして、MS関連タンパク質を同定する必要性が存在する。さらに、迅速に、強力に、特異的に働き副作用がほとんど無い、MS用の新しい治療剤が明らかに必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、MSの臨床スクリーニング、診断および治療のため、多発性硬化症の治療の有効性を調べるため、臨床試験の参加者を選択するため、特定の治療処置に応答する可能性が最も高い患者を識別するため、およびMSの治療用の薬剤をスクリーニングおよび開発するための方法および組成物を提供する。
【0012】
本発明の第1の態様は、2次元電気泳動によってCSFの試料を分析して、少なくとも1つの多発性硬化症関連の特徴(MSF)、たとえば本明細書で開示する1つまたは複数のMSFまたはこれらの任意の組合せの存在またはレベルを検出することを含む、MSを診断するための方法を提供する。これらの方法は、臨床スクリーニング、予後、療法の結果の調査、特定の治療処置に応答する可能性が最も高い患者の識別、薬剤のスクリーニングおよび開発、並びに薬剤治療の新しい標的の同定にも適している。
【0013】
本発明の第2の態様は、CSFの試料中の、少なくとも1つの多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)、たとえば本明細書で開示する1つまたは複数のMSPIまたはこれらの任意の組合せの存在またはレベルを検出することを含む、MSを診断するための方法を提供する。これらの方法は、臨床スクリーニング、予後、療法の結果の調査、特定の治療処置に応答する可能性が最も高い患者の識別、薬剤のスクリーニングおよび開発、並びに薬剤治療の新しい標的の同定にも適している。
【0014】
本発明の第3の態様は、抗体、たとえばMSPI、たとえば本明細書で開示するMSPIに免疫特異的に結合することができる、モノクローナルおよびポリクローナル、キメラおよびヒト化抗体を提供する。
【0015】
本発明の第4の態様は、単離MSPI、すなわちMSPIと著しく異なる等電点または著しく異なる見かけの分子量を有する、ポリペプチド、タンパク質またはタンパク質アイソフォームを含んでいないMSPIを含む、調製物を提供する。
【0016】
本発明の第5の態様は、前に列挙した方法で使用することができ、1つまたは複数の調製物、または抗体、および他の試薬、標識、基質、および必要な場合は使用説明書を含んでよいキットを提供する。このキットは疾患の診断用に使用することができ、あるいは新しい診断および/または治療剤を同定するためのアッセイ品であってよい。
【0017】
本発明の第6の態様は、MSを治療する方法であって、MSを有する被験体においてMSPIの発現または活性(たとえば酵素活性または結合活性)、あるいはこの両方を調節(たとえば上方制御または下方制御)する、治療上有効量の作用剤を被験体に投与して、MSの発症または進行を妨げるかあるいは遅らせる、MSの進行を妨げるかあるいは遅らせる、あるいはMSの症状を改善することを含む方法を提供する。
【0018】
本発明の第7の態様は、たとえばMSF、MSPI、MSPI類似体、またはMSPI関連ポリペプチドの発現またはその酵素活性もしくは結合活性の特性を調節(たとえば上方制御または下方制御)する作用剤を、スクリーニングする方法を提供する。
【0019】
〔発明の詳述〕
1. 以下に詳細に記載する本発明は、哺乳動物被験体の多発性硬化症を臨床スクリーニングおよび診断するため、特定の治療処置に応答する可能性が最も高い患者を識別するため、多発性硬化症の治療の結果を調べるため、薬剤をスクリーニングし薬剤を開発するための、方法および組成物を提供する。本発明は、治療用組成物を哺乳動物被験体に投与して、多発性硬化症を治療または予防することも含む。哺乳動物被験体はヒト以外の哺乳動物であってよいが、ヒトであることが好ましく、ヒト成人、すなわち少なくとも21才のヒト被験体であることがより好ましい。制限するためではなく、本開示を明らかにするために、本発明をCSF試料の分析に関して記載する。しかしながら、当業者に理解されるように、以下に記載するアッセイおよび技法は、体液(たとえば血液、血清、血漿、唾液または尿があるがこれらだけには限られない)、MSを有しているかMSが進行している危険がある被験体からの組織試料(たとえば脳生検などの生検)またはそのホモジェネートを含めた、他のタイプの試料に適用することができる。本発明の方法および組成物は、生きている被験体のスクリーニングおよび診断に有用であるが、たとえば同じ疾患が進行するリスクがある被験体の家族のメンバーを識別するために、被験体の死後の診断に使用することもできる。
【0020】
本開示の概説に助力するために、以下の定義を与える。
【0021】
1.1 定義
「特徴点」とは、2Dゲル中で同定されるスポットのことであり、「多発性硬化症関連特徴点」(MSF)という語は、MSを有していない被験体からの第2の試料または試料セットと比べて、MSを有する被験体からの第1の試料または試料セット中に差別的に存在する特徴点のことである。2Dゲル中で同定される特徴点すなわちスポットは、2Dゲル電気泳動によって、特に本明細書に記載する好ましい技術を使用することによって決定される、等電点(pI)およびみかけの分子量(MW)によって特徴付けられる。本明細書で使用するように、前記特徴点を検出するための方法(たとえば2D電気泳動)が第1および第2の試料または試料セットに施され、異なるシグナルを与えるとき、第2の試料または試料セットに対して、第1の試料または試料セット中に特徴点が「差別的に存在する」。検出法によって、MSFまたはMSPIが第2の試料または試料セット中よりも第1の試料または試料セット中に豊富に存在することが示される場合、あるいはMSFまたはMSPIが第1の試料または試料セット中で検出可能であり、第2の試料または試料セット中では実質的に検出不能である場合、第2の試料または試料セットに対して、第1の試料または試料セット中で、MSF(またはタンパク質アイソフォーム、すなわち以下で定義するようなMSPI)が「増大」している。逆に、検出法によって、MSFまたはMSPIが第2の試料または試料セット中に第1の試料または試料セット中よりも豊富に存在することが示される場合、あるいはMSFまたはMSPIが第1の試料または試料セット中で検出不能であり、第2の試料または試料セット中では検出可能である場合、第2の試料または試料セットに対して、第1の試料または試料セット中で、MSFまたはMSPIが「減少」している。
【0022】
特に、2つの試料または試料セット中の特徴点の相対的な存在量は、その標準シグナルを参照して2ステップで決定される。最初に、第1の試料または試料セット中の特徴点の検出において得られたシグナルを、適切な背景パラメータ、たとえば(a)分析する試料中の総タンパク質(たとえばゲルに載せる総タンパク質)、(b)発現の基準の特徴点(ERF)、すなわち、好ましい技術の変数の制限内で、調べる被験体の個体群、たとえば表IIIに開示したERF中で、その存在量が実質的に不変である特徴点、または(c)より好ましくは試料中のすべてのタンパク質それぞれの合計として検出される総シグナルを参照することによって標準化する。
【0023】
第2に、第1の試料または試料セット中の特徴点に関する標準シグナルを、第2の試料または試料セット中の同じ特徴点に関する標準シグナルと比較して、第2の試料または試料セットに対して、第1の試料または試料セット中に「差別的に存在する」特徴点を識別する。
【0024】
「折りたたみの変化」は、「折りたたみの増大」および「折りたたみの減少」を含み、これは第2の試料または試料セットと比べた、第1の試料または試料セット中でのMSFの存在量の相対的な増大または減少、あるいはポリペプチド(たとえば以下で定義するようなMSPI)の発現または活性の相対的な増大または減少のことである。MSFまたはポリペプチドの折りたたみの変化は、当業者に知られている任意の技法によって測定することができる。ただし、観察される増大または減少は、使用する技法に応じて変化するであろう。好ましくは、折りたたみの変化は、以下の実施例に記載するように本明細書では決定される。
【0025】
「多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)」とは、MSを有していない被験体からの第2の試料または試料セットと比べて、MSを有する被験体からの第1の試料または試料セット中に差別的に存在するポリペプチドのことである。本明細書で使用するように、前記特徴点を検出するための方法(たとえば2D電気泳動またはイムノアッセイ)が第1および第2の試料または試料セットに施され(MSFに関して前に記載したように)、異なるシグナルを与えるとき、第2の試料または試料セットに対して、第1の試料または試料セット中にMSPIが「差別的に存在する」。MSPIは、それが含んでいる1つまたは複数のペプチド配列によって、さらに好ましくは2D電気泳動によって、特に本明細書に記載する好ましい技術を使用して決定されるpIおよびMWによって特徴付けられる。典型的にはMSPIは、MSFのアミノ酸配列決定によって同定または特徴付けされる(図2)。
【0026】
MSPIは、そのpIおよびMWと結び付く特定のペプチド配列として、あるいはこれによって特徴付けられる。本明細書に示すように、MSFは、好ましい技術を使用しても区別不能なpIおよびMWを有するが異なるペプチド配列を有する、1つまたは複数のMSPIを含み得る。MSPIのペプチド配列を利用して、このようなペプチド配列を含む以前に同定されたタンパク質に関する、データベースを検索することができる。いくつかの場合、以前に同定されたタンパク質および/またはその変異体を認識することができる市販の抗体が、存在するかどうかを確かめることができる。MSPIは、以前に同定されたタンパク質に対応するか、以前に同定されたタンパク質の変異体であることが好ましい。
【0027】
本明細書で使用する「変異体」とは、1つの遺伝子によってコードされているポリペプチドファミリーのメンバーであるか、あるいは関連遺伝子のファミリー内の遺伝子配列からの、pIまたはMWまたはこの両方が異なる、ポリペプチドのことである。このような変異体は、そのアミノ酸組成が異なっている可能性があり(たとえば選択的mRNAまたはプレmRNAプロセッシング、たとえば選択的スプライシングまたは制限的なタンパク質分解の結果として)、さらに、あるいは選択的プロセッシングでは、該変異体は差別的な翻訳後の改変(たとえばグリコシル化、アシル化、リン酸化)により生じる可能性がある。
【0028】
MSF、MSPI、またはMSPI関連ポリペプチドの発現または活性に関する「調節」とは、任意の変化、たとえばMSF、MSPI、またはMSPI関連ポリペプチドの発現または活性の上方制御または下方制御、増大または減少のことである。当業者は、本発明の開示に基づいて、当業者に知られるアッセイによって、このような調節を決定できることを理解するであろう。
【0029】
「MSPI類似体」とは、MSPIと類似または同一の機能を有するが、MSPIのアミノ酸配列と類似または同一であるアミノ酸配列は必ずしも含む必要がない、あるいはMSPIの構造と類似または同一である構造を有する、ポリペプチドのことである。本明細書で使用するように、ポリペプチドのアミノ酸配列は、それが以下の規準の少なくとも1つを満たす場合、MSPIのアミノ酸配列と「類似」である:(a)ポリペプチドが、MSPIのアミノ酸配列と少なくとも30%(より好ましくは、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を有する;(b)ポリペプチドが、厳しい条件下で、MSPIの少なくとも5個のアミノ酸残基(より好ましくは、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも60個のアミノ酸残基、少なくとも70個のアミノ酸残基、少なくとも80個のアミノ酸残基、少なくとも90個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基、少なくとも125個のアミノ酸残基、または少なくとも150個のアミノ酸残基)をコードしているヌクレオチド配列にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列によってコードされている;または(c)ポリペプチドが、MSPIをコードしているヌクレオチド配列と少なくとも30%(より好ましくは、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%)同一であるヌクレオチド配列によってコードされている。本明細書で使用するように、MSPIの構造と「類似の構造」を有するポリペプチドとは、MSPIの構造と類似の二次、三次または四次構造を有するポリペプチドのことである。ポリペプチドの構造は、X線結晶解析、核磁気共鳴法、および結晶電子顕微鏡だけには限られないがこれらを含めた、当業者に知られる方法によって決定することができる。
【0030】
「MSPI融合タンパク質」とは、(i)MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI関連ポリペプチド断片のアミノ酸配列と、(ii)異種のポリペプチド(すなわち非MSPI、非MSPI断片、または非MSPI関連ポリペプチド)のアミノ酸配列とを含むポリペプチドのことである。
【0031】
「MSPI相同体」とは、MSPIのアミノ酸配列と類似のアミノ酸配列を含むが、MSPIと類似または同一の機能は必ずしも有していない、ポリペプチドのことである。
【0032】
「MSPIオルソログ」とは、(i)MSPIのアミノ酸配列と類似のアミノ酸配列を含み、かつ(ii)MSPIの機能と類似または同一の機能を有する、ヒト以外のポリペプチドのことである。
【0033】
「MSPI関連ポリペプチド」とは、MSPI相同体、MSPI類似体、MSPIの変異体、MSPIオルソログ、またはこれらの任意の組合せのことである。
【0034】
「キメラ抗体」とは、異なる部分が異なる動物種に由来する分子、ヒト免疫グロブリンの定常領域およびネズミmAb由来の可変領域を有する分子などのことである(たとえば参照によってその全容を本明細書に取り込んである、Cabilly他の米国特許第4,816,567号、およびBoss他の米国特許第4,816,397号を参照のこと)。たとえば、抗体の一部分を免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメイン、またはその一部分(CH1、CH2、CH3、またはこれらの任意の組合せまたはその一部分)と融合させることができ、その結果キメラ抗体が生じる。
【0035】
「ヒト化抗体」とは、ヒト以外の種からの1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)、およびヒト免疫グロブリン分子からの骨格領域を有する、ヒト以外の種からの分子のことである。
【0036】
「誘導体」とは、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、欠失および付加の導入によって変化した、第2のポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドのことである。誘導体ポリペプチドは、第2のポリペプチドと類似または同一の機能を有する。
【0037】
「断片」とは、第2のポリペプチドのアミノ酸配列の、少なくとも5個のアミノ酸残基(好ましくは、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも60個のアミノ酸残基、少なくとも70個のアミノ酸残基、少なくとも80個のアミノ酸残基、少なくとも90個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基、少なくとも125個のアミノ酸残基、少なくとも150個のアミノ酸残基、少なくとも175個のアミノ酸残基、少なくとも200個のアミノ酸残基、または少なくとも250個のアミノ酸残基)のアミノ酸配列を含む、ペプチドまたはポリペプチドのことである。MSPIの断片は、MSPIの機能的活性を有していることが好ましい。
【0038】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の「同一性パーセント」は、最適な比較目的のために配列を整列させ(たとえば、比較する配列との最良のアラインメントのために、いずれかの配列にギャップを導入することができる)、アミノ酸残基またはヌクレオチドを対応する位置で比較することによって決定することができる、すなわち一般には決定される。「最良のアラインメント」とは、最高の同一性パーセントをもたらす2つの配列のアラインメントである。同一性パーセントは、比較する配列中の同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドの数によって決定される(すなわち、同一性%=同一である位置の数/位置の総数×100)。
【0039】
2つの配列間の同一性パーセントの決定は、当業者に知られている数学的アルゴリズムを使用して行うことができる。2つの配列を比較するための数学的アルゴリズムの一例は、KarlinおよびAltschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264〜2268(それを修飾したKarlinおよびAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873〜5877と同様に変更された)のアルゴリズムである。Altschul他(1990)J.Mol.Biol.215:403〜410のNBLASTおよびXBLASTプログラムは、このようなアルゴリズムを取り込んでいる。BLASTによるヌクレオチド検索は、NBLASTプログラムをスコア=100、語長=12で行うことにより、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTによるタンパク質検索は、XBLASTプログラムをスコア=50、語長=3で行うことにより、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的用のギャップを入れたアラインメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschul他(1997)Nucleic Acids Res.25:3389〜3402に記載されているように利用することができる。あるいは、PSI−Blastを使用して、反復検索を行うことができ、これによって分子間の距離関係が検出される(同上文献)。BLAST、Gapped BLAST、PSI−Blastプログラムを使用するときは、それぞれのプログラム(たとえばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルト・パラメータを使用することができる。
【0040】
配列を比較するために使用される数学的アルゴリズムの他の例は、MyersおよびMiller、CABIOS(1989)のアルゴリズムである。GCG配列整列用ソフトウェアのパッケージの一部である、ALIGNプログラム(版2.0)は、このようなアルゴリズムを取り込んでいる。当分野で知られている配列分析用の他のアルゴリズムには、TorellisおよびRobotti(1994)Comput.Appl.Biosci.、10:3〜5中に記載されるようなADVANCEおよびADAM、PearsonおよびLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444〜8中に記載されるFASTAがある。FASTA中では、ktup値は、検索の感度および速度を設定する制御オプションである。
【0041】
「診断」とは、診断、予後、調査、特徴付け、臨床試験の参加者を含めた患者の選択、および特定の障害の危険性があるかもしくは特定の障害を有している患者、または特定の治療処置に応答する可能性が最も高い患者を識別すること、あるいは特定の治療処置に対する患者の応答を評価または調査することである。
【0042】
「治療」とは、療法、予防および予防法のことであり、特に予防法(予防)のため、あるいは患者が苦しんでいる場合は疾患または慢性病を治すために、患者に対して薬品を投与すること、または医学的処置を行うことである。
【0043】
「作用剤」とは、医薬組成物および診断用組成物を調製するために使用することができる、あるいは化合物、アゴニスト、アンタゴニスト、核酸、ポリペプチド、断片、アイソフォーム、変異体、またはこのような目的用に独立に使用することができる他の物質であってよいすべて物質のことであり、これらはすべて本発明に従うものである。
【0044】
「非常に厳しい条件」とは、65℃における0.5MのNaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mMのEDTA中でのフィルターに結合したDNAへのハイブリダイゼーション、および68℃における0.1×SSC/0.1%SDS中での洗浄のことである(Ausubel F.M.他、eds.、1989、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.I、Green Publishing Associates,Inc.、and John Wiley & Sons,Inc.、New York、p.2.10.3、参照によってその全容は本明細書に取り込まれる)。
【0045】
いくつかの適用例に関しては、二重らせんの形成のために、あまり厳しくない条件が必要とされる。本明細書で使用するように、「適度に厳しい条件」とは、42℃における0.2×SSC/0.1%SDS中での洗浄のことである(Ausubel他、1989、上記)。
【0046】
「脳脊髄液(CSF)」とは、Physiological Basis of Medical Practice(J.B.West、ed.、Williams and Wilkins、Baltimore、MD1985)に記載されたように、CNSの塊を囲んでいる体液のことである。CSFには、心室CSFおよび腰部CSFがある。
【0047】
「血清」とは、血液試料の凝固および遠心沈殿によって生成される、上澄み液のことである。
【0048】
「血漿」とは、血液試料の凝固の阻害(たとえばクエン酸塩またはEDTAによる)および遠心沈殿によって生成される、上澄み液のことである。
【0049】
本明細書で使用する「血液」は、血清および血漿を含む。
【0050】
「2次元電気泳動」(2D電気泳動)は、等電点電気泳動、次に変性電気泳動を含む技法を意味し、2次元電気泳動によって、複数の分離タンパク質を含む2次元ゲル(2Dゲル)が生成される。
【0051】
1.2 好ましい技術
変性電気泳動のステップは、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下で、ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)を使用することが好ましい。特に好ましいのは、それぞれ参照によって、特にWO98/23950の23〜35ページのプロトコルを参照してその全容を本明細書に取り込んである、WO98/23950中および米国特許第6,064,654号および第6,278,794号中に記載された、非常に正確な自動式の方法および装置(「好ましい技術」)である。簡潔には、好ましい技術によって、生物試料中の生体分子(たとえば糖タンパク質を含めたタンパク質)を同定、選択および特徴付けするための、効率の良いコンピュータ支援の方法および装置が与えられる。分子の電気泳動における移動性および等電点に従い、2次元ゲル上で生体分子を分離させることによって、2次元アレイが作製される。2次元アレイ中で検出された複数の生体分子の同一性、みかけの分子量、等電点、および相対的な存在量を表す、アレイのコンピュータ合成したデジタル・プロファイルを作製し、これによって多数の生物試料からのプロファイルのコンピュータ仲介の比較、ならびに当該の分離タンパク質のコンピュータ支援の切り出しが可能である。
【0052】
蛍光標識されたタンパク質を検出するための好ましいスキャナは、それぞれ参照によってその中身を本明細書に取り込んである、WO96/36882中、および「Development of a High−throughput Fluorescence Scanner Employing Internal Reflection Optics and Phase−sensitive Detection(Total Internal Reflection,Electrophoresis)」という表題の、David A.BasijiのPh.D論文、University of Washington(1997)、Volume58/12−B of Dissertation Abstracts International、6686ページ中に記載されている。これらの文書には、高速での自動化された統合的な操作のために特異的に設計された、イメージ・スキャナが記載されている。このスキャナ、および保存蛍光スクリーンは、蛍光染料または銀染色で染色されたゲルを映し出すことができる。Basijiの論文は、レーザーの散乱によるベースライン・ノイズ、または均質な蛍光から、変調された蛍光を識別するための位相−感光検出システムを与えているが、スキャナは非位相−感光方式で操作することもできる。この位相−感光の能力は、従来の蛍光画像システムと比べて、ほぼ同程度あるいはそれ以上に、機器の感度を増大させると思われる。感度が増大することによって、上流の機器に対しての試料調製物の負荷量が減少すると思われ、一方、画質の向上は、プロセスの下流の画像分析を簡単にする。
【0053】
さらに一層好ましいスキャナは、前に記載したスキャナの改変版である。この好ましいスキャナでは、正確なリード・スクリュー式のドライブ・システム上のスキャナを通して、ゲルが運ばれる。このことは、Basijiの論文中に記載されているベルト駆動型システム上に、ガラス・プレートを載せるためには好ましい。なぜならこのことによって、画像レンズを通過するゲルを正確に運ぶ、再現性のある手段が与えられるからである。
【0054】
好ましいスキャナでは、知られている位置にガラス・プレートをしっかりと保持する3つのアラインメント・ストップに対して、ゲルが固定される。これを行うことによって、前述の正確な運搬システムに関して、ゲルの絶対的な位置を予測し記録することができる。これによって、ゲル上のそれぞれの特徴点の座標をより正確に決定することができ、望むならば、特徴点を切り出すための切断ロボットに伝えることができることが確実になる。好ましいスキャナでは、ゲルを保持する担体は、画像の形状を正すために使用する4つの完全な蛍光マーカーを有している。これらのマーカーは、スキャニングが正しく行われたことを確認する、品質コントロール特徴点である。
【0055】
Basijiの論文中に記載されているスキャナと比べて、好ましいスキャナの光学部品は逆さにされている。好ましいスキャナでは、レーザー、ミラー、導波管および他の光学部品が、スキャニングされるガラス・プレートの上にある。Basijiの論文中に記載されているスキャナは、下側にこれらの部品を有している。好ましいスキャナでは、ガラス・プレートはスキャナ上にゲル側を下にして装着されており、したがって光の進路はガラス・プレートを通過することには変わりない。これを行うことによって、ガラス・プレートから剥離する可能性があるゲルのいかなる小片も、機械の構成部分中ではなく機器の底部に落ちるであろう。このことがシステムの機能に影響を与えることはないが、その信頼性を増大させる。
【0056】
さらに一層好ましいのは、シグナルの出力が、いかなるピーク飽和もなく、あるいはシグナルを暗号化する平方根もなく、完全な16ビットのデータにデジタル化される、好ましいスキャナの改変版である。走査ビームの進路に沿った検出感度のあらゆる変化を補正するために、補正アルゴリズムも適用されている。この変化は、機械構成部分の異常および導波管のいたる所で異なる収集効率によるものである。蛍光の通過が均一であるパースペックス・プレートを使用して、検量を行う。このプレートのスキャンから得るデータを使用して、それぞれの画素レベルから標的レベルにシグナルを増大させるのに必要な増倍率を決定する。次いでこれらの増倍率を、後のゲルのスキャンで使用して、あらゆる内部の光学的変化を取り除く。
【0057】
1.3 多発性硬化症関連の特徴点(MSF)
本発明の一態様では、2次元電気泳動を使用し、被験体、好ましくは生きている被験体からのCSFを分析して、MSをスクリーニング、予防または診断するために、1つまたは複数の多発性硬化症関連の特徴点(MSF)の発現を検出または定量化し、MSを有する被験体の予後を決定し、特定の治療処置に応答する可能性が最も高い患者を識別するため、あるいは薬剤開発のためにMSの進行を調査し、MS療法の有効性を調査する。
【0058】
たとえば、制限的にではなく、好ましい技術を使用して、MSを有する被験体からのいくつかの試料と、MSを有していない被験体からの試料を2次元電気泳動によって分離させ、得られたゲルの蛍光デジタル画像を、選択した代表的な主マスターゲル画像と整合させる。このプロセスによって、そのpIおよびMWによって特徴付けられる任意のゲルの特徴点を同定し、研究対象の任意のゲルを調べることができる。特に、所与の特徴点中に存在するタンパク質の量を、それぞれのゲルにおいて測定することができる。この特徴点の存在量は、類似の試料からのゲル(たとえばMSを有する被験体からの試料によるゲル)の間で平均化することができる。最後に、このようにして作成した試料セットに統計学的な分析を行って、2つまたはそれ以上の試料のセットを互いに比較することができる。
【0059】
本明細書で開示するMSFは、MSを有する被験体からのCSF試料を、MSを有していない被験体からのCSF試料に対して比較することによって同定されている。MSを有していない被験体は、知られている疾患または病状が無い被験体(正常な被験体)、およびMS以外の疾患を有する被験体を含む。
【0060】
MSFの2つのグループが、好ましい技術の方法および装置によって同定されている。第1のグループは、MSを有していない被験体のCSFと比べてMSを有する被験体のCSF中で減少している、差別的な存在が顕著なMSFからなる。これらのMSFは、表Iに与えるようにみかけの分子量(MW)および等電点(pI)によって記載することができる。
【0061】
【表1】
Figure 2004532386
【0062】
【表2】
Figure 2004532386
【0063】
【表3】
Figure 2004532386
【0064】
【表4】
Figure 2004532386
【0065】
【表5】
Figure 2004532386
【0066】
第2のグループは、MSを有していない被験体のCSFと比べてMSを有する被験体のCSF中で増大している、差別的な存在が顕著なMSFからなる。これらのMSFは、表IIに与えるようにMWおよびpIによって記載することができる。
【0067】
【表6】
Figure 2004532386
【0068】
【表7】
Figure 2004532386
【0069】
任意の所与のMSFについて、MSを有していない被験体からのCSFを分析することによって得られるシグナルに対して、MSを有する被験体からのCSFを分析することによって得られるシグナルは、使用する個々の分析プロトコルおよび検出技法に依存するであろう。したがって本発明は、それぞれの研究室が、本発明の記載に基づいて、診断の分野では慣習的であるように、使用されている分析プロトコルおよび検出技法に従い、MSを有していない被験体のそれぞれのMSFに関する基準範囲を確立することを企図する。MSを有することが判っている被験体からの少なくとも1つの対照陽性CSF試料、またはMSを有していないことが判っている被験体からの少なくとも1つの対照陰性CSF試料(より好ましくは陽性および陰性対照試料の両方)が、分析する試験試料のそれぞれのバッチ中に含まれることが好ましい。一実施形態では、特徴点の発現のレベルを背景値に対して決定し、これは(a)領域中で問題の特定の特徴点に相当し、かつ(b)識別可能なタンパク質の特徴点を含まない、画像の隣接領域から得られるシグナルのレベルとして定義される。
【0070】
好ましい実施形態では、被験体(たとえばMSを有している疑いがあるか有していることが判っている被験体)のCSF中のMSFと関連があるシグナルを、同じ2Dゲル中で検出される1つまたは複数のERFを参照しながら正常化する。当業者には明らかであるように、このようなERFは、好ましい技術を使用して異なる試料を比較することによって、容易に決定することができる。適切なERFには、表IIIに記載したERFがある(ただしこれらだけには限られない)。
【0071】
【表8】
Figure 2004532386
【0072】
当業者が容易に理解するように、所与の特徴点またはタンパク質アイソフォームのみかけのMWおよびpIは、2D電気泳動のそれぞれのステップ用、境界標識の整合用(以下のセクション2.1.8に記載するように)に使用する厳密なプロトコルに応じて、ある程度変わるであろう。本明細書で使用するように、「MW」および「pI」という語は、以下のセクション6で識別される参照プロトコルに正確に従って測定される、特徴点またはタンパク質アイソフォームのみかけの分子量およびみかけの等電点を意味するとして、それぞれ定義する。この参照プロトコルに従うとき、および試料の泳動が2回繰り返される、または何回も再現されるとき、MSFまたはMSPIの測定される平均pIの変化は典型的には3%未満であり、MSFまたはMSPIの測定される平均MWの変化は典型的には5%未満である。当業者が参照プロトコルから逸脱することを望む場合は、検量実験を行って、(a)参照プロトコルによって、かつ(b)逸脱プロトコルによって検出される、それぞれのMSFまたはタンパク質アイソフォームのMWおよびpIを比較しなければならない。
【0073】
MSFは、MSを検出、診断もしくは調査するため、特定の治療処置に応答する可能性が最も高い患者を識別するため、または薬剤開発のために使用することができる。本発明の一実施形態では、被験体(たとえばMSを有している疑いがある被験体)からの体液の第1の試料を、表Iで定義した1つまたは複数のMSFを定量的に検出するために、2D電気泳動によって分析する。MSを有していない1つまたは複数の被験体からの第2の試料(たとえば対照試料または前に決定された基準範囲)に対しての、被験体からの第1の試料中の前記1つまたは複数のこれらのMSFの存在量の減少は、MSの存在を示す。
【0074】
本発明の他の実施形態では、被験体からの体液の第1の試料を、表IIで定義した1つまたは複数のMSFを定量的に検出するために、2D電気泳動によって分析する。MSを有していない1つまたは複数の被験体からの第2の試料(たとえば対照試料、または前に決定された基準範囲)に対しての、被験体からの第1の試料中の前記1つまたは複数のMSFの存在量の増大は、MSの存在を示す。
【0075】
他の実施形態では、被験体からの体液の第1の試料を、(a)その存在量の減少がMS、すなわち表Iで定義したMSFの存在を示す、1つまたは複数のMSFまたは任意のこれらの組合せ、および(b)その存在量の増大がMS、すなわち表IIで定義したMSFの存在を示す、1つまたは複数のMSFまたは任意のこれらの組合せを定量的に検出するために、2D電気泳動によって分析する。
【0076】
本発明の他の実施形態では、被験体からの体液の第1の試料を、表Iまたは表IIで定義した1つまたは複数のMSFを定量的に検出するために、2D電気泳動によって分析し、1つまたは複数のMSFと発現の基準の特徴点(ERF)の比が、MSが存在するかどうかを示す。特定の実施形態では、第2の試料または基準範囲中のMSFとERFの比に対しての、第1の試料中の1つまたは複数のMSFとERFの比の減少は、MSの存在を示す。すなわち、表Iで定義したMSFは、この目的に適したMSFである。他の特定の実施形態では、第2の試料または基準範囲中のMSFとERFの比に対しての、第1の試料中の1つまたは複数のMSFとERFの比の増大は、MSの存在を示す。表IIで定義したMSFは、この目的に適したMSFである。
【0077】
本発明の他の実施形態では、被験体からの体液の第1の試料を、(a)その第2の試料中のMSFとERFの比に対しての第1の試料中のMSFとERFの比の減少がMS、すなわち表Iで定義したMSFの存在を示す、1つまたは複数のMSFまたは任意のこれらの組合せ、および(b)その第2の試料中のMSFとERFの比に対しての第1の試料中のMSFとERFの比の増大がMS、すなわち表IIで定義したMSFの存在を示す、1つまたは複数のMSFまたは任意のこれらの組合せを定量的に検出するために、2D電気泳動によって分析する。
【0078】
好ましい実施形態では、被験体からのCSFを、複数のMSFを定量的に検出するために分析する。
【0079】
1.4 多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)
本発明の他の態様では、被験体、好ましくは生きている被験体からの体液の試料を、1つまたは複数の多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)を定量的に検出するため、MSをスクリーニングまたは診断してMS療法の有効性を調査するため、特定の治療処置に応答する可能性が最も高い患者を識別するため、あるいは薬剤開発のために分析する。当分野でよく知られているように、所与のタンパク質は変異体として発現することができ、これは(たとえば選択的mRNAまたはプレmRNAプロセッシング、たとえば選択的スプライシングまたは制限的なタンパク質分解の結果として)、または差別的な翻訳後の改変(たとえばグリコシル化、リン酸化、アシル化)の結果として、あるいはこの両方のためにそのアミノ酸組成が異なっており、したがって同一のアミノ酸配列のタンパク質が、そのpIまたはMW、またはこの両方において異なる可能性がある。要するにタンパク質アイソフォームの差別的な存在には、問題のタンパク質をコードしている遺伝子の差別的な発現は必要ではないということになる。本明細書で使用するように、「多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム」という語は、MSを有していない被験体からの第2の試料と比べて、MSを有している被験体からの体液の第1の試料中に差別的に存在するポリペプチドのことである。
【0080】
MSPIの2つのグループが、MSFのアミノ酸配列決定によって同定されている。MSPIを単離し、タンパク質分解させ、好ましい技術の方法および装置を使用して質量分析法によって分析した。当業者は、さまざまなスペクトル分析法およびデータベース検索ツールを使用し、質量分析法および/またはタンデム質量分析法によって分析したタンパク質から、配列情報を識別することができる。いくつかのこれらの方法およびツールの例は、Swiss Institute of Bioinformaticsのウェブ・サイトhttp://www.expasy.com/、およびEuropean Molecular Biology Laboratoryのウェブ・サイトhttp://www.narrador.embl−heidelberg.de/GroupPages/PageLink/peptidesearchpage.htmlで発見することができる。MSPIの同定は、SEQUEST検索プログラム(Eng他、1994、J.Am.Soc.Mass Spectrom.5:976−989)およびPCT/GB01/04034中に記載された方法を主に使用して行われた。第1のグループは、MSを有していない被験体のCSFと比べてMSを有する被験体のCSF中で減少している、差別的な存在が顕著なMSPIからなる。以下の実施例に記載したようなタンデム質量分析法およびデータベース検索によって同定した、これらのMSPIのトリプシン消化ペプチドのアミノ酸配列、さらにこれらのMSPIのpIおよびMWを、表IVに列挙する。
【0081】
【表9】
Figure 2004532386
【0082】
【表10】
Figure 2004532386
【0083】
【表11】
Figure 2004532386
【0084】
【表12】
Figure 2004532386
【0085】
【表13】
Figure 2004532386
【0086】
【表14】
Figure 2004532386
【0087】
【表15】
Figure 2004532386
【0088】
【表16】
Figure 2004532386
【0089】
【表17】
Figure 2004532386
【0090】
【表18】
Figure 2004532386
【0091】
【表19】
Figure 2004532386
【0092】
【表20】
Figure 2004532386
【0093】
【表21】
Figure 2004532386
【0094】
【表22】
Figure 2004532386
【0095】
【表23】
Figure 2004532386
【0096】
【表24】
Figure 2004532386
【0097】
第2のグループは、MSを有していない被験体のCSFと比べてMSを有する被験体のCSF中で増大している、差別的な存在が顕著なMSPIを含む。タンデム質量分析法およびデータベース検索によって同定した、これらのMSPIのトリプシン消化ペプチドのアミノ酸配列、さらにこれらのMSPIのpIおよびMWを、表Vに列挙する。
【0098】
【表25】
Figure 2004532386
【0099】
【表26】
Figure 2004532386
【0100】
【表27】
Figure 2004532386
【0101】
【表28】
Figure 2004532386
【0102】
当業者には明らかであるように、本発明の記載に基づいて、表IVまたはV中のそのMSPIに関して与えられたデータに従って、所与のMSPIを記載することができる。MSPIは、そのMSPIに関して記載されたペプチド配列を含むポリペプチドであり(好ましくは、そのMSPIに関して記載された複数のペプチド配列を含み、より好ましくは全ての該ペプチド配列を含む)、そのMSPIに関して述べられた値とほぼ同じpIを有し(述べられた値の、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内、さらに好ましくは1%以内)、そのMSPIに関して述べられた値とほぼ同じMWを有する(述べられた値の、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内、さらに好ましくは1%以内)。
【0103】
一実施形態では、被験体からの体液の第1の試料を、1つまたは複数の表IVで定義したMSPI、または任意のこれらの組合せを定量的に検出するために分析し、MSを有していない1つまたは複数の被験体からの第2の試料(たとえば対照試料、または前に決定された基準範囲)に対しての、被験体からの第1の試料中の1つまたは複数のMSPI(または任意のこれらの組合せ)の存在量の減少は、MSの存在を示す。
【0104】
本発明の他の実施形態では、被験体からの体液の第1の試料を、1つまたは複数の表Vで定義したMSPI、または任意のこれらの組合せを定量的に検出するために分析し、MSを有していない1つまたは複数の被験体からの第2の試料(たとえば対照試料、または前に決定された基準範囲)に対しての、被験体からの第1の試料中の1つまたは複数のMSPI(または任意のこれらの組合せ)の存在量の増大は、MSの存在を示す。
【0105】
他の実施形態では、被験体からの体液の第1の試料を、(a)その存在量の減少がMS、すなわち表IVで定義したMSPIの存在を示す、1つまたは複数のMSPIまたは任意のこれらの組合せ、および(b)その存在量の増大がMS、すなわち表Vで定義したMSPIの存在を示す、1つまたは複数のMSPIまたは任意のこれらの組合せを定量的に検出するために分析する。
【0106】
他の実施形態では、被験体からの体液の第1の試料を、1つまたは複数のMSPI、および1つまたは複数の以前に知られているMSのバイオマーカー(たとえば、過敏性血小板グルタミン酸受容体などの候補マーカー(Berk他、Int Clin Psychopharmacol 1999 14、199〜122))を定量的に検出するために分析する。この実施形態に従うと、対照または基準範囲に対しての、それぞれのMSPIおよび知られているバイオマーカーの存在量によって、被験体がMSを有しているかどうかが示される。
【0107】
MSPIの存在量は、発現の基準のタンパク質アイソフォーム(ERPI)に対して正常化されることが好ましい。好ましい技術の方法および装置を使用して、前に記載したERFの部分的なアミノ酸配列決定によって、ERPIを同定することができる。ERPI、およびそれと相同であると知られているタンパク質の部分的なアミノ酸配列を、表VIに示す。
【0108】
【表29】
Figure 2004532386
【0109】
本明細書に記載するMSPIは、既知のタンパク質のアイソフォームを含み、このアイソフォームがMSと関連があることは以前は知られていなかった。それぞれのMSPIに関して、本発明は更に(a)前記MSPI、前記断片、または前記MSPIと前記断片の両方に結合する抗体を与える。MSPIは単離された形であることが好ましく、本明細書で使用するようにMSPIが実質的に夾雑タンパク質を含まない調製物、すなわち夾雑タンパク質が、存在する全タンパク質の10%未満(好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満)である調製物中に存在するときに、MSPIは「単離されている」。夾雑タンパク質は、2D電気泳動によって決定される、単離したMSPIのpIまたはMWと著しく異なるpIまたはMWを有する、タンパク質またはタンパク質アイソフォームである。本明細書で使用するように、「著しく異なる」pIまたはMWとは、参照プロトコルに従って行われる2D電気泳動上の、MSPIから除かれる夾雑タンパク質を容認するpIまたはMWである。
【0110】
一実施形態では、単離したポリペプチドを提供し、前記ポリペプチドは表IVまたはVでMSPIに関して同定されたアミノ酸配列を有するペプチドを含み、前記ポリペプチドは表IVまたはVでMSPIに関して同定された値の10%以内(好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内)のpIおよびMWを有する。
【0111】
本発明のMSPIは、本明細書に記載する好ましい技術、キナーゼ・アッセイ、酵素アッセイ、結合アッセイおよび他の機能アッセイ、イムノアッセイ、およびウエスタン・ブロット法だけには限らないがこれらを含めた、当業者に知られている任意の方法によって、定性的あるいは定量的に検出することができる。一実施形態では、MSPIのMWおよびpIの効力によって2Dゲル上でMSPIを分離させ、ゲルを染色することによって視覚化する。一実施形態では、MSPIを蛍光染料で染色し、蛍光スキャナによって画像化する。Sypro Red(Molecular Probes,Inc.、Eugene、Oregon)は、この目的に適した染料である。好ましい蛍光染料は、ピリジニウム、4−[2−[4−(ジペンチルアミノ)−2−トリフルオロメチルフェニル]エテニル]−1−(スルホブチル)−、分子内塩である。参照によってその全容を本明細書に取り込んである、1999年10月5日に出願された米国出願No.09/412,168を参照のこと。
【0112】
あるいは、イムノアッセイにおいてMSPIを検出することができる。一実施形態では、イムノアッセイを、MSPIが存在する場合は免疫特異的結合が起こることが可能な条件下で、試験する被験体からの第1の試料を捕獲試薬(たとえば抗体)と接触させること、および捕獲試薬による任意の免疫特異的結合の量を検出または測定することによって行う。抗MSPI抗体は、本明細書に教示する方法および技法によって生成することができ、当分野で知られているこのような抗体の例を表VIIに述べる。表VIIに示すこれらの抗体は、MSPIそのものがファミリー・メンバーであるタンパク質に結合することが既に知られている。抗MSPI抗体は、同じタンパク質の他のアイソフォームよりも、MSPIに優先的に結合することが好ましい。好ましい実施形態では、抗MSPI抗体は、前記同じタンパク質の他のアイソフォームよりも、少なくとも2倍大きな親和性、より好ましくは少なくとも5倍大きな親和性、さらに好ましくは少なくとも10倍大きな親和性でMSPIに結合する。
【0113】
MSPIはゲルから適切な膜(たとえばPVDF膜)に移すことができ、ウエスタン・ブロット法、および本明細書に記載するような抗MSPI抗体、たとえば当該のMSPIに対して提示される抗体を使用する「サンドイッチ」イムノアッセイなどの技法を使用する競合および非競合アッセイ・システムを非制限的に含む適切なアッセイで、その後調べることができる。イムノブロット法を使用して、同じ遺伝子によってコードされている他のアイソフォームとMSPIを免疫特異的に区別するために必要とされる選択性を示す、抗MSPI抗体を同定することができる。
【0114】
【表30】
Figure 2004532386
【0115】
【表31】
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【0116】
【表32】
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【0117】
【表33】
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【0118】
【表34】
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【0119】
【表35】
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【0120】
【表36】
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【0121】
【表37】
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【0122】
【表38】
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【0123】
【表39】
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【0124】
【表40】
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【0125】
【表41】
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【0126】
【表42】
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【0127】
【表43】
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【0128】
【表44】
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【0129】
【表45】
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【0130】
【表46】
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【0131】
本明細書で使用するように、「異常レベル」は、MSを有していない被験体からの第2の試料のレベルまたは参照レベルと比べて、第1の試料が増大または減少しているレベルを意味する。一実施形態では、組織切片中での抗体の結合を使用して、異常なMSPI局在化または1つまたは複数のMSPIの異常レベルを検出することができる。特定の実施形態では、MSPIに対する抗体を使用して、被験体からの第1の組織試料(たとえば脳の生検)をMSPIのレベルに関してアッセイすることができ、ここでMSPIの異常レベルはMSを示す。
【0132】
ウエスタン・ブロット法(ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光イムノアッセイおよびプロテインAイムノアッセイなどの技法を使用する競合および非競合アッセイ・システムを非制限的に含めた、任意の適切なイムノアッセイを使用ことができる。
【0133】
たとえば、2ステップのサンドイッチ・アッセイによって、体液試料(たとえばCSF、血液、尿または組織ホモジェネート)中でMSPIを検出することができる。第1のステップでは、捕獲試薬(たとえば抗MSPI抗体)を使用して、MSPIを捕獲する。当分野で知られているこのような抗体の例は、表VIIに示されている。捕獲試薬は、固相上に場合によっては固定することができる。第2のステップでは、直接的または間接的に標識された検出試薬を使用して、捕獲したMSPIを検出する。一実施形態では、検出試薬はレクチンである。この目的のために、MSPIと同じコア・タンパク質を有する他のアイソフォームよりも、または抗体によって認識される抗原決定基を共有している他のポリペプチドよりも優先的にMSPIに結合する、任意のレクチンを使用することができる。好ましい実施形態では、選択したレクチンが、前記MSPIと同じコア・タンパク質を有する他のアイソフォーム、または前記抗体によって認識される抗原決定基を共有している他のポリペプチドよりも、少なくとも2倍大きな親和性、より好ましくは少なくとも5倍大きな親和性、さらに好ましくは少なくとも10倍大きな親和性でMSPIに結合する。本発明の記載に基づいて、当分野でよく知られている方法、たとえばSumar他、Lectin as Indicators of Disease−Associated Glycoforms、In:Gabius H−J & Gabius S(eds.)、1993、Lectins and Glycobiology、158〜174ページ(参照によってその全容を本明細書に取り込んである)の158〜159ページの表Iに列挙された、1つまたは複数のレクチンを試験することによって、所与のMSPIを検出するのに適したレクチンを容易に同定することができる。所望のオリゴ糖特異性を有するレクチンは、たとえば2Dゲル中、ニトロセルロース膜などの適切な固体支持体への転写を受けての2Dゲルの複製中でMSPIを検出するそれらの能力によって、あるいは捕獲試薬による捕獲後の2ステップアッセイにおいて同定することができる。代替実施形態では、検出試薬は抗体、たとえばリン酸化されたアミノ酸に免疫特異的に結合する抗体のような翻訳後の改変を免疫特異的に検出する抗体である。このような抗体の例には、ホスホチロシンに結合する抗体(BD Transduction Laboratories、2002、カタログ番号P11120;P39020)、ホスホセリンに結合する抗体(Zymed Laboratories Inc.2002、South San Francisco、CA、カタログ番号61−8100)、およびホスホスレオニンに結合する抗体(Zymed Laboratories Inc.2002、South San Francisco、CA、カタログ番号71−8200、13−9200)がある。
【0134】
望むならば、MSPIをコードする遺伝子、関連遺伝子、または相補配列を含めた関連核酸配列またはサブ配列を、ハイブリダイゼーション・アッセイで使用することもできる。MSPIをコードするヌクレオチド、または少なくとも8個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも12個のヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも15個のヌクレオチドを含むそのサブ配列を、ハイブリダイゼーション・プローブとして使用することができる。ハイブリダイゼーション・アッセイは、MSPIをコードする遺伝子の異常な発現と関連がある状態、障害、または疾患状態の検出、予後、診断、または調査のため、あるいはMSを示唆する徴候または症状がある被験体を差別的に診断するために使用することができる。特に、このようなハイブリダイゼーション・アッセイは、核酸を含む被験体の試料とMSPIをコードするDNAまたはRNAにハイブリダイズすることができる核酸プローブを、このようなハイブリダイゼーションが起こることが可能な条件下で接触させること、および任意の生じたハイブリダイゼーションを検出または測定することを含む方法によって行うことができる。以下に記載するように、ヌクレオチドはMSを有する被験体の治療用に使用することができる。
【0135】
本発明は、抗MSPI抗体を含む診断キットも提供する。さらに、このようなキットは、1つまたは複数の以下のものを場合によっては含んでよい。(1)診断、予後、治療的調査またはこれらの用途の任意の組合せ用に、抗MSPI抗体を使用するための教示書、(2)抗体に対する標識された結合パートナー、(3)その上に抗MSPI抗体が固定される固相(試薬ストリップなど)、および(4)診断、予後、または治療的使用または任意のこれらの組合せに関して、規制上の承認が示されている標識または挿入体。抗体に対する標識された結合パートナーが与えられない場合は、検出可能なマーカー、たとえば化学発光、酵素、蛍光、または放射性成分で、抗MSPI抗体自体を標識することができる。
【0136】
本発明は、MSPIをコードするRNAにハイブリダイズすることができる核酸プローブを含む、キットも提供する。特定の実施形態では、キットは1つまたは複数の容器中に、適切な反応条件下において、ポリメラーゼ連鎖反応(たとえばInnis他、1990、PCR Protocols、Academic Press,Inc.、San Diego、CAを参照のこと)、リガーゼ連鎖反応(EP320,308を参照のこと)、Qレプリカーゼを使用すること、環状プローブの反応、または当分野で知られている他の方法などによって、MSPIをコードする核酸の少なくとも一部分をプライマー増幅させることができる、一対のプライマー(たとえば、それぞれ大きさの範囲がヌクレオチド6〜30個、より好ましくはヌクレオチド10〜30個、さらに好ましくはヌクレオチド10〜20個である)を含む。
【0137】
複数のMSPIまたはそれぞれがMSPIをコードする複数の核酸の検出を可能にする、キットも提供する。キットは、所定量の単離MSPIタンパク質またはMSPIをコードする核酸を、たとえば標準または対照として使用するために、場合によってはさらに含むことができる。
【0138】
1.5 MSFおよびMSF群を同定するための統計的技法
折りたたみの変化、ウィルコクソンの順位和検定およびt−検定などの一変量の示差分析ツールは、MSと診断上関連がある個々のMSFまたはMSPIの同定、あるいは疾患プロセスを制御する個々のMSPIの同定において有用である。しかしながら多くの場合、疾患プロセスは、単離された個々のMSFおよびMSPIよりも、MSFまたはMSPIの組合せと関連がある(かつMSPIの組合せによって制御されている)ことを当業者は理解している。このようなMSFおよびMSPIの組合せを発見するための方法は、個々のMSFおよびMSPIを発見するための方法とは異なる。このような場合、それぞれ個々のMSFおよびMSPIは1つの変数としてみなすことができ、疾患はこれらの変数の相互作用によって引き起こされる多変量の連合効果とみなすことができる。
【0139】
以下のステップを使用して、好ましい技術によって生じたデータからマーカーを同定することができる。
【0140】
第1のステップは、MSにおいて著しい異常な発現をそれぞれ示す、MSFまたはMSPIの収集物を同定することである。同定されたMSFまたはMSPIとMSの間の関連が、個々のMSFまたはMSPIが診断用のものとして使用されるときに望まれるほど、非常に有意である必要はない。前に論じた任意の検定(折りたたみの変化の検定、ウィルコクソンの順位和検定など)を、この段階で使用することができる。ひとたびMSFまたはMSPIの適切な収集物を同定した後に、群を同定することができる精巧な多変量の分析を次いで使用して、MSとの有意な多変量の関連を評価することができる。
【0141】
線形判別分析(LDA)は、1つのこのような手順であり、これを使用して、変数(すなわちMSFまたはMSPI)の群とMSの間の有意な関連を検出することができる。LDAを行う際には、1組の重みをそれぞれの変数(すなわちMSFまたはMSPI)と関連付け、したがって重みと変数の測定値の線形の組合せにより、MSを有している被験体とMSを有していない被験体を区別することによって、疾患状態を同定することができる。LDAを改良することによって、変数を段階的に包含(または除去)して、モデルの判別能力を最適化することができる。したがってLDAの結果は、診断、予後、療法または薬剤開発用に非制限的に使用することができる、MSFまたはMSPIの群である。変動性判別分析などのLDAの他の改良版は、疾患状態と正常の状態を区別するために、変数の非線形の組合せを使用することができる。判別分析の結果は、多重比較検定によって、あるいは分類樹などの代替的な技法を使用する分析を繰り返すことによっても確認することができる。
【0142】
他のカテゴリーのMSFまたはMSPIは、第1の試料または試料セット(たとえば病状の被験体からの試料)中のMSFまたはMSPIの特徴点の存在パーセンテージと、第2の試料または試料セット(たとえば対照の被験体からの試料)中のMSFまたはMSPIの特徴点の存在パーセンテージを比較することによる定性測定によって同定することができる。MSFまたはMSPIの「特徴点の存在パーセンテージ」は、選択した検出法によって試料セット中のMSFまたはMSPIが検出可能である該セット中における試料のパーセンテージである。たとえば、病状の被験体からの95パーセントの試料中でMSFが検出可能である場合、その試料セット中のそのMSFの特徴点の存在パーセンテージは95パーセントである。無病の被験体からのわずか5パーセントの試料が検出可能であるレベルの同じMSFを有している場合、被験体の試料中のMSFを検出することによって、その被験体がMSに罹患している可能性があることが示唆されると思われる。
【0143】
1.6 臨床研究における使用
本発明の診断法および組成物は、たとえばMSの治療用の薬剤を評価するための、臨床研究をモニターするのに役立つ可能性がある。一実施形態では、候補分子を、MSを有する被験体のMSFまたはMSPIレベルを、MSを有していない被験体、または治療を受けた被験体(たとえばインターフェロンβ−1b(Betaseron(商標)、Betaferon(商標))、インターフェロンβ−1a(Avonex(商標)、Rebif(商標))、酢酸グラチラマー(Copaxone(商標))、静脈内注射用免疫グロブリンを含めたこれらによる再発−寛解MSの治療、急性再発の発生の治療、コルチコステロイドを用いた治療(Noseworthy(1999)Nature 399:suppl.A40−A47)後に)で見られるレベルまで回復させ、MSFまたはMSPIレベルを非MS値に、またはその付近に保つ、それらの能力に関して試験する。1つまたは複数のMSFまたはMSPIのレベルを、アッセイすることができる。
【0144】
他の実施形態では、本発明の方法および組成物を使用して、臨床研究の候補をスクリーニングし、MSを有する個体を識別する。次いでこのような個体を研究から除外するか、または研究に含めることができ、あるいは治療または分析用に別のコホート中に置くことができる。望むならば、候補を同時にスクリーニングして、MSを有する個体を識別することができる。これらのスクリーニングに関する手順は、当分野ではよく知られている。
【0145】
1.7 MSPIの精製
特定の態様では、本発明は、単離された哺乳動物のMSPI、好ましくはヒトのMSPI、および抗原決定基(すなわち抗体によって認識することができる)を含み、またはそれ以外の場合は機能的に活性であるMSPIの断片、および前述のものをコードする核酸配列を提供する。本明細書で使用する「機能的に活性である」とは、完全長(野生型)MSPIと関連がある1つまたは複数の機能的活性、たとえばMSPI基質またはMSPI結合パートナーへの結合、抗原性(抗MSPI抗体への結合)、免疫原性、酵素活性などを示す物質のことである。
【0146】
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、または少なくとも75個のアミノ酸を含む、MSPIの断片を提供する。MSPIの領域の一部または全てが欠けている断片、このような断片を含むポリペプチド(たとえば融合タンパク質)も提供する。前述のものをコードする核酸を提供する。
【0147】
ひとたびMSPI、MSPI断片、またはMSPIの前駆体をコードする組換え核酸を同定した後に、遺伝子産物を分析することができる。このことは、ゲル電気泳動、イムノアッセイなどによる分析後に生成物を放射性標識することを含めた、生成物の物理的または機能的性質に基づくアッセイによって行われる。
【0148】
本明細書で同定したMSPIは、クロマトグラフィー(たとえばイオン交換、親和性、およびサイジング・カラム・クロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の差を含めた標準的な方法によって、またはタンパク質を精製するための任意の他の標準的な技法によって、単離および精製することができる。
【0149】
あるいは、MSPIをコードする組換え核酸をひとたび同定した後に、MSPIの完全なアミノ酸配列を、組換え核酸中に含まれる領域をコードする遺伝子のヌクレオチド配列から推定することができる。結果として、当分野で知られている標準的な化学法によって、タンパク質を合成することができる(たとえばHunkapiller他、1984、Nature 310:105〜111を参照のこと)。
【0150】
他の代替実施形態では、前に記載した方法などの標準的な方法(たとえば免疫親和性による精製)によって、本来のMSPIを天然源から精製することができる。
【0151】
好ましい実施形態では、上に記載した好ましい技術によって、MSPIを単離する。調製規模の単離実施のためにWestermeier、1993、Electrophoresis in Practice(VCH、Weinheim、Germany)、197〜209ページ(参照によってその全容を本明細書に取り込んである)中に記載された方法に従って、2pH単位以下のpH範囲を有する狭い範囲の「ズーム・ゲル」が、等電点段階には好ましい。この改変によって、より多量の標的タンパク質をゲル上に載せることができ、これによってゲルから回収することができる単離MSPIの量が増大する。このようにして調製規模の実施に使用するとき、好ましい技術によって、1回の実施で典型的には単離MSPIが100ngまで得られ、1000ngまで得ることができる。当業者であれば、ゲル等電点電気泳動を使用する任意の分離方法において、ズーム・ゲルが使用できることを認識するであろう。
【0152】
したがって本発明は、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質を提供し、前述のいずれのものも、組換えDNA技法によって、または化学合成法によって生成することができる。
【0153】
1.8 MSPIをコードするDNAの単離
MSPIをコードする遺伝子をクローン化するための特定の実施形態を、例によって以下に示すが、これらは制限的なものではない。
【0154】
DNAおよびRNAを含み、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質をコードする配列を含む、本発明のヌクレオチド配列は、当分野で知られている方法を使用して、従来の化学的手法またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅を使用するなどして、合成することができる。本発明のヌクレオチド配列によって、たとえばcDNAライブラリー、ゲノム・ライブラリーまたは発現ライブラリーのスクリーニングを用いることを含めて、MSPI相同体またはMSPIオルソログをコードする遺伝子を同定およびクローン化することもできる。
【0155】
たとえば、PCR技法によってMSPIをコードする遺伝子をクローン化するために、アンカー型縮重オリゴヌクレオチド(または1組の最も可能性のあるオリゴヌクレオチド)を、同じタンパク質の一部分として同定されたMSPIペプチド断片すべてに関して設計することができる。さまざまな条件下でのPCR反応を、1種または複数種からの関連cDNAおよびゲノムDNA(たとえばCSFから、または免疫系の細胞からのもの)に関して行うことができる。ベクトレット反応も、前述のオリゴヌクレオチド(入れ子状態(nested)であることが好ましい)を使用して、任意の入手可能なcDNAおよびゲノムDNAに行うことができる。ベクトレットPCRは、ただ1つのプライマーの配列が知られている状況において、特定のDNA断片を増幅させることができる方法である。したがって、これによって、配列情報が一端のみ入手可能であるようなDNAを伸張させるための、PCRの用途が広がる(Arnold C、1991、PCR Methods Appl.1(1):39〜42;Dyer KD、Biotechniques、1995、19(4):550〜2)。ベクトレットPCRは、ゲノム・ライブラリーまたはcDNAライブラリー・プールを鋳型として使用し、たとえばMSPIペプチド断片をコードするアンカー型縮重オリゴヌクレオチド(または最も可能性のあるオリゴヌクレオチド)であるプローブを用いて、行うことができる。
【0156】
アンカー型縮重オリゴヌクレオチド(および最も可能性のあるオリゴヌクレオチド)は、MSPIペプチド断片すべてに関して設計することができる。これらのオリゴヌクレオチドを標識し、cDNAおよびゲノムDNAライブラリーを含むフィルターにハイブリダイズさせることができる。同じタンパク質からの異なるペプチド用のオリゴヌクレオチドによって、ライブラリーの同じメンバーが同定されることが多いと思われる。cDNAおよびゲノムDNAライブラリーは、任意の適切すなわち所望の哺乳動物種から、たとえばヒトから得ることができる。
【0157】
本発明のMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列は、他のタンパク質をコードする遺伝子の相補的な伸張体と選択的にハイブリダイズする、その能力に関して有用である。用途に応じて、さまざまなハイブリダイゼーション条件を使用して、MSPIをコードするヌクレオチドの配列と、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%同一、または100%同一なヌクレオチド配列を得ることができる。
【0158】
高度の選択性のために、低塩または高温条件などの比較的厳しい条件を使用して、二重らせんを形成する。ハイブリダイゼーション条件は、多量のホルムアミドを加えてハイブリッド二重らせんを不安定化させることによって、さらに厳しくすることもできる。したがって、個々のハイブリダイゼーション条件は容易に操作することができ、一般には所望の結果に応じて選択されると思われる。一般に、50%ホルムアミドの存在下での好都合なハイブリダイゼーション温度は、MSPIをコードする遺伝子の断片と95〜100%同一であるプローブに関しては42℃であり、90〜95%同一であるプローブに関しては37℃であり、70〜90%同一であるプローブに関しては32℃である。
【0159】
ゲノム・ライブラリーの作製では、DNA断片が生成され、そのうちのいくつかがMSPIの一部または全部をコードしていると思われる。DNA断片を作製するための任意の適切な方法を、本発明では使用することができる。たとえば、さまざまな制限酵素を使用して、特定の部位でDNAを開裂させることができる。あるいは、マンガンの存在下でDNアーゼを使用して、DNAを断片化することができ、あるいはたとえば超音波処理によって、DNAを物理的にせん断することができる。次いでDNA断片は、アガロースおよびポリアクリルアミド・ゲル電気泳動、カラム・クロマトグラフィーおよびショ糖密度勾配遠心法だけには限られないがこれらを含めた標準的な技法によって、大きさに従って分離することができる。次いでDNA断片は、プラスミド、コスミド、バクテリオファージ・ラムダまたはT4、および酵母人工染色体(YAC)だけには限られないがこれらを含めた、適切なベクターに挿入することができる(たとえばSambrook他、1989、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、2d Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York;Glover,D.M.(ed.)、1985、DNA Cloning:A Practical Approach、MRL Press,Ltd.、Oxford、U.K.Vol.I、II;Ausubel F.M.他、eds.、1989、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.I、Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley & sons,Inc.、New Yorkを参照のこと)。標識されたプローブへの核酸のハイブリダイゼーションによって、ゲノム・ライブラリーをスクリーニングすることができる(Benton and Davis、1977、Science 196:180;Grunstein and Hogness、1975、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.72:3961)。
【0160】
本発明の記載に基づいて、当分野でよく知られている最適な手法を使用して、MSPIの任意のペプチドのアミノ酸配列に対応する標識された縮重オリゴヌクレオチド・プローブを用いて、ゲノム・ライブラリーをスクリーニングすることができる。使用する任意のプローブは少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも20個のヌクレオチド、少なくとも25個のヌクレオチド、少なくとも30個のヌクレオチド、少なくとも40個のヌクレオチド、少なくとも50個のヌクレオチド、少なくとも60個のヌクレオチド、少なくとも70個のヌクレオチド、少なくとも80個のヌクレオチド、または少なくとも100個のヌクレオチドである。
【0161】
前の表IVおよびVにおいて、本明細書で開示したいくつかのMSPIが、その配列が公に知られている遺伝子によってコードされている以前に同定されたタンパク質のアイソフォームに対応することが見出された(MSPIの配列分析およびタンパク質の同定は、セクション6.1.14に記載した方法を使用して行った)。このような遺伝子をスクリーニングするために、遺伝子またはその相補体と相補的な、任意のプローブを使用することができ、プローブは10ヌクレオチド以上の長さであることが好ましく、15ヌクレオチド以上の長さであることがより好ましい。SWISS−PROTおよびtrEMBLデータベース(Swiss Institute of Bioinformatics(SIB)およびEuropean Bioimformatics Institute(EBI)によって保持されており、http://www.expasy.com/において利用可能である)、およびGenBankデータベース(National Institute of Health(NIH)によって保持されており、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/GenBank/において利用可能である)によって、表IVおよびVに列挙したMSPIのタンパク質配列が以下の受託番号で与えられ、それぞれの配列は参照によって本明細書に取り込んである。
【0162】
【表47】
Figure 2004532386
【0163】
【表48】
Figure 2004532386
【0164】
【表49】
Figure 2004532386
【0165】
【表50】
Figure 2004532386
【0166】
【表51】
Figure 2004532386
【0167】
【表52】
Figure 2004532386
【0168】
【表53】
Figure 2004532386
【0169】
任意のMSPIに関して、縮重プローブ、または受託番号によって前に記載した配列から採取したプローブを、スクリーニング用に使用することができる。縮重プローブの場合、これらは、MSPIのトリプシン消化ペプチドのタンデム質量スペクトルから得られた、部分的なアミノ配列情報から構築することができる。このような遺伝子をスクリーニングするために、遺伝子またはその相補体と相補的な、任意のプローブを使用することができ、プローブは10ヌクレオチド以上の長さであり、15ヌクレオチド以上の長さであることが好ましい。ライブラリーをスクリーニングするときは、MSPIまたはその断片をコードする挿入DNAを有するクローンは、縮重オリゴヌクレオチド・プローブ(またはその相補体)の対応する組の、1つまたは複数のメンバーにハイブリダイズすると思われる。このようなオリゴヌクレオチド・プローブのゲノム・ライブラリーへのハイブリダイゼーションは、当分野で知られている方法を使用して行われる。たとえば、前述のオリゴヌクレオチド・プローブ、またはその相補体の縮重組の1つとの(またはこのような組の任意のメンバー、またはその相補体との)ハイブリダイゼーションは、上で定義した非常に厳しい条件下または適度に厳しい条件下で行うことができ、あるいは50℃において2×SSC、1.0%SDS中で行い、非常に厳しいハイブリダイゼーションまたは適度に厳しいハイブリダイゼーションに関して上に記載した洗浄条件を使用して洗浄することができる。
【0170】
本発明の他の態様では、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質、前述の任意のものをコードするヌクレオチド配列を含むクローンを、発現ライブラリーをスクリーニングすることによって得ることもできる。たとえば、関連のある源からのDNAを単離し、ランダムな断片を作製し、ベクターに挿入される配列が、ベクターが次いで導入される宿主細胞によって発現されることができるように、発現ベクター(たとえばバクテリオファージ、プラスミド、ファージミドまたはコスミド)に連結させる。次に、さまざまなスクリーニング・アッセイを使用して、発現するMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質を選択することができる。一実施形態では、当分野で知られている方法を使用し、本発明のさまざまな抗MSPI抗体を使用して、所望のクローンを同定することができる。たとえばHarlow and Lane、1988、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、Appendix IVを参照のこと。ライブラリーからのコロニーまたはプラークを抗体と接触させて、抗体に結合するクローンを同定する。
【0171】
一実施形態では、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質をコードするDNAを含むコロニーまたはプラークを、参照によって本明細書に取り込んであるOlsvick他、29th ICAAC、Houston、Tex.1989に従いDYNA Beadsを使用して、検出することができる。抗MSPI抗体をトシル化DYNA Beads M280に架橋させ、次いでこれらの抗体を含むビーズを、組換えポリペプチドを発現するコロニーまたはプラークと接触させる。MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質を発現するコロニーまたはプラークは、ビーズに結合する任意のコロニーまたはプラークとして同定する。
【0172】
あるいは、抗MSPI抗体を、シリカまたはCelite7樹脂などの適切な担体に、非特異的に固定させることができる。次いで、この物質を使用して、本明細書に記載するMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質を発現する細菌コロニーに吸着させる。
【0173】
他の態様では、PCR増幅法を使用して、完全なMSPIまたはその一部をコードする実質的に純粋なDNA(すなわち、夾雑核酸を実質的に含まないDNA)を、ゲノムDNAから単離することができる。このようなDNAは少なくとも95%純粋であることが好ましく、少なくとも99%純粋であることがより好ましい。本明細書で開示するMSPIのペプチド配列に対応する、オリゴヌクレオチド配列、縮重あるいはそれ以外を、プライマーとして使用することができる。
【0174】
たとえばPerkin−Elmer Cetusサーマル・サイクラーおよびTaqポリメラーゼ(Gene Amp(商標)またはAmpliTaq(商標)DNAポリメラーゼ)を使用することによって、PCRを行うことができる。PCR反応において使用するためのいくつかの異なる縮重プライマーを合成するために、選択を行うことができる。PCR反応を引き起こす際に使用するハイブリダイゼーション条件の厳密度を変えて、縮重プライマーとDNA中の対応する配列の間の高度または低度のヌクレオチド配列の類似性を与えることもできる。MSPIをコードする配列のセグメントを首尾よく増幅させた後、そのセグメントを分子的にクローン化および配列決定し、プローブとして利用して完全なゲノム・クローンを単離することができる。したがってこれによって、以下に記載するように、遺伝子の完全なヌクレオチド配列の決定、その発現の分析、および機能分析用のそのタンパク質産物の生成が可能であると思われる。
【0175】
MSPIをコードする遺伝子を、核酸のハイブリダイゼーション、次にin vitroでの翻訳によってmRNAを選択することにより、同定することもできる。この手順では、ハイブリダイゼーションによって、断片を使用して相補的mRNAを単離する。このようなDNA断片は、他種(たとえばマウス、ヒト)のMSPIをコードする入手可能な精製されたDNAであってよい。単離mRNAの単離した生成物のin vitro翻訳産物の、免疫沈降分析または機能的アッセイ(たとえばin vitroでの凝集能力、受容体への結合)によって、mRNA、したがって所望の配列を含む相補的DNA断片が同定される。さらに、細胞から単離したポリソームを、MSPIを特異的に認識する固定された抗体に吸着させることによって、特異的なmRNAを選択することができる。選択したmRNA(吸着したポリソームからの)を鋳型として使用し、MSPIをコードする放射性標識されたcDNAを合成することができる。次いで、放射性標識されたmRNAまたはcDNAをプローブとして使用して、MSPIをコードするDNA断片と他のゲノムDNA断片を識別することができる。
【0176】
MSPIをコードするゲノムDNAを単離する代替法には、知られている配列から遺伝子配列自体を化学的に合成すること、またはMSPIをコードするmRNAに対するcDNAを作製することがあるが、これらだけには限られない。たとえば、MSPIをコードする遺伝子のcDNAクローン化用のRNAは、MSPIを発現する細胞から単離することができる。当業者は本発明の記載から、他の方法を使用することができ、それらが本発明の範囲内にあることを理解するであろう。
【0177】
任意の適切な真核細胞が、MSPIをコードする遺伝子の分子的クローン化用の、核酸源として働くことができる。MSPIをコードする核酸配列は、脊椎動物、哺乳動物、霊長類、ヒト、ブタ、ウシ、ネコ、鳥類、ウマ、イヌまたはネズミの源から単離することができる。DNAは、クローン化されたDNA(たとえば「DNA」ライブラリー)から当分野で知られている標準的な手順によって、化学合成によって、cDNAのクローン化によって、あるいは所望の細胞から精製されたゲノムDNA、またはその断片のクローン化によって得ることができる(たとえばSambrook他、1989、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、2d Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York;Glover,D.M.(ed.)、1985、DNA Cloning:A Practical Approach、MRL Press,Ltd.、Oxford、U.K.Vol.I、IIを参照のこと)。ゲノムDNAに由来するクローンは、制御およびイントロンDNA領域、さらにコード領域を含む可能性があり、cDNAに由来するクローンは、エクソン配列のみを含むと思われる。
【0178】
次いで、同定および単離した遺伝子またはcDNAを、任意の適切なクローニング・ベクターに挿入することができる。当分野で知られている多数のベクター宿主系を、使用することができる。当業者が理解するように、唯一の制約は、選択するベクター系が使用する宿主細胞と適合性がなければならないことである。このようなベクターには、ラムダ誘導体などのバクテリオファージ、PBR322またはpUCプラスミド誘導体などのプラスミド、またはBluescript(商標)ベクター(Stratagene)またはアデノウイルス、アデノ関連ウイルスまたはレトロウイルスなどの改変ウイルスがあるが、これらだけには限られない。クローニング・ベクターへの挿入は、たとえばDNA断片を相補的な粘着末端を有するクローニング・ベクターに連結させることによって行うことができる。しかしながら、DNAを断片化するために使用する相補的な制限部位がクローニング・ベクター中に存在しない場合は、DNA分子の末端を酵素によって改変することができる。あるいは、ヌクレオチド配列(リンカー)をDNA末端に連結させることによって、任意の所望の部位を生成することができる。これらの連結したリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードする、特定の化学合成されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。代替法では、開裂したベクターおよびMSPIをコードする遺伝子を、ホモポリマーのテーリングによって改変することができる。組換え分子を、形質転換、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーションなどによって宿主細胞に導入することができ、その結果、遺伝子配列の多くのコピーが生成される。
【0179】
特定の実施形態では、MSPIをコードする単離遺伝子を取り込んでいる組換えDNA分子、cDNA、または合成DNA配列を用いた、宿主細胞の形質転換によって、遺伝子の多数のコピーを生成することができる。したがって、形質転換体を増殖させること、形質転換体から組換えDNA分子を単離すること、および必要なときは、単離した組換えDNAから挿入した遺伝子を検索することによって、遺伝子を多量に得ることができる。
【0180】
本発明のヌクレオチド配列には、本来のMSPIと実質的に同じアミノ酸配列を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、機能的に均等であるアミノ酸を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列がある。
【0181】
特定の実施形態では、MSPI関連ポリペプチドをコードする単離核酸分子は、1つまたは複数のヌクレオチドの置換体、付加体、または欠失体を、1つまたは複数のアミノ酸の置換体、付加体、または欠失体がコードされているタンパク質中に導入されるように、MSPIのヌクレオチド配列に導入することによって作製することができる。たとえば位置指定突然変異導入法およびPCR仲介の突然変異誘発を含めた、当業者に知られている標準的な技法を使用して、変異を導入することができる。1つまたは複数の予想される非必須アミノ酸残基で、保存アミノ酸の置換体が作製されることが好ましい。「保存アミノ酸の置換体」とは、アミノ酸残基が類似の電荷の側鎖を有するアミノ酸残基で置換された置換体である。類似の電荷の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(たとえばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(たとえばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖を有するアミノ酸(たとえばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(たとえばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(たとえばトレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(たとえばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)がある。あるいは、飽和突然変異誘発などによって、突然変異体をコード配列の全体または一部にランダムに導入することができ、生成した突然変異体を生物学的活性に関してスクリーニングして、活性を保持している突然変異体を同定することができる。突然変異誘発に続いて、コードされたタンパク質を発現させることができ、タンパク質の活性を決定することができる。
【0182】
1.9 MSPIをコードするDNAの発現
MSPI、MSPI断片、またはMSPI関連ポリペプチド、または任意の前述のものの他の誘導体をコードするヌクレオチド配列を、適切な発現ベクター、すなわち挿入するタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要な要素を含むベクターに、挿入することができる。必要な転写および翻訳シグナルを、MSPIまたはそのフランキング領域をコードする元の遺伝子、またはMSPI関連ポリペプチドまたはそのフランキング領域をコードする元の遺伝子によって供給することもできる。本発明では、さまざまな宿主ベクター系を利用して、タンパク質コード配列を発現させることができる。これらの宿主ベクター系には、ウイルス(たとえばワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系、ウイルス(たとえばバキュロ・ウイルス)に感染した昆虫細胞系、酵母菌ベクターを含む酵母菌などの微生物、またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAを用いて形質転換した細菌があるが、これらだけには限られない。ベクターの発現要素は、その強度および特異性が異なる。利用する宿主ベクター系に応じて、いくつかの適切な転写および翻訳要素のいずれか1つを利用することができる。特定の実施形態では、ヒト遺伝子をコードするヌクレオチド配列(またはヒトMSPIの機能的に活性がある部分をコードするヌクレオチド配列)を発現させる。他の実施形態では、MSPIのドメインを含むMSPIの断片を発現させる。
【0183】
DNA断片をベクターに挿入するための、前に記載した任意の方法を使用して、適切な転写および翻訳調節シグナルおよびタンパク質コード配列からなるキメラ遺伝子を含む、発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、in vitroでのDNAの組換えおよび合成技法、およびin vivoでの組換え(遺伝的組換え)を含んでよい。MSPIまたはその断片をコードする核酸配列の発現は、MSPIまたは断片が組換えDNA分子を用いて形質転換した宿主中で発現するように、第2の核酸配列によって制御することができる。たとえばMSPIの発現は、当分野で知られている任意のプロモーターまたはエンハンサー要素によって調節することができる。MSPIまたはMSPI関連ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を調節するために、使用することができるプロモーターには、SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon、1981、Nature 290:304〜310)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端の繰り返し中に含まれるプロモーター(Yamamoto他、1980、Cell22:787〜797)、ヘルペス・チミジンキナーゼ・プロモーター(Wagner他、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1441〜1445)、メタロチオネイン遺伝子の制御配列(Brinster他、1982、Nature 296:39〜42)、テトラサイクリン(Tet)プロモーター(Gossen他、1995、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 89:5547〜5551)、b−ラクタマーゼ・プロモーターなどの原核生物の発現ベクター(Villa−Kamaroff他、1978、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727〜3731)、またはtacプロモーター(DeBoer他、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21〜25;Scientific American、1980、242:74〜94の「Useful proteins from recombinant bacteria」も参照のこと);ノパリン合成酵素プロモーター領域を含む植物の発現ベクター(Herrera−Estrella他、Nature 303:209〜213)またはカリフラワー・モザイク・ウイルス35S RNAプロモーター(Gardner他、1981、Nucl.Acids Res.9:2871)、および光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera−Estrella他、1984、Nature 310:115〜120);Gal4プロモーター、ADC(アルコール脱水素酵素)プロモーター、PGK(グリセロールリン酸キナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼ・プロモーターなどの酵母菌または他の真菌からのプロモーター要素、および組織特異性を示しトランスジェニック動物に利用されている、以下の動物の転写調節領域:膵臓の胞状細胞中で活性があるエラスターゼIの遺伝子調節領域(Swift他、1984、Cell38:639〜646;Ornitz他、1986、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399〜409;MacDonald、1987、Hepatology7:425〜515);膵臓のβ細胞中で活性があるインシュリンの遺伝子調節領域(Hanahan、1985、Nature 315:115〜122)、リンパ球細胞中で活性がある免疫グロブリンの遺伝子調節領域(Grosschedl他、1984、Cell38:647〜658;Adames他、1985、Nature 318:533〜538;Alexander他、1987、Mol.Cell.Biol.7:1436〜1444)、精巣、胸部、リンパ球および肥満細胞中で活性があるマウス乳癌ウイルスの調節領域(Leder他、1986、Cell45:485〜495)、肝臓中で活性があるアルブミンの遺伝子調節領域(Pinkert他、1987、Genes and Devel.1:268〜276)、肝臓中で活性があるα−フェトプロテインの遺伝子調節領域(Krumlauf他、1985、Mol.Cell.Biol.5:1639〜1648;Hammer他、1987、Science 235:53〜58;肝臓中で活性があるα1−抗トリプシンの遺伝子調節領域(Kelsey他、1987、Genes and Devel.1:161〜171)、骨髄細胞中で活性があるβ−グロブリンの遺伝子調節領域(Mogram他、1985、Nature 315:338〜340;Kollias他、1986、Cell46:89〜94;脳の希突起膠細胞中で活性があるミエリン塩基性タンパク質の遺伝子調節領域(Readhead他、1987、Cell48:703〜712);骨格筋中で活性があるミオシン軽鎖−2の遺伝子調節領域(Sani、1985、Nature 314:283〜286);ニューロン細胞中で活性があるニューロン特異的エノラーゼ(NSE)(Morelli他、1999、Gen.Virol.80:571〜83);ニューロン細胞中で活性がある脳由来神経栄養因子(BDNF)の遺伝子調節領域(Tabuchi他、1998、Biochem.Biophysic.Res.Com.253:818〜823)、星状細胞中で活性があるグリア線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター(Gomes他、1999、Braz J Med Biol Res32(5):619〜631;Morelli他、1999、Gen.Virol.80:571〜83)および視床下部中で活性がある性腺刺激ホルモン放出ホルモンの遺伝子調節領域(Mason他、1986、Science 234:1372〜1378)があるが、これらだけには限られない。
【0184】
特定の実施形態では、MSPIをコードする核酸に動作可能に連結するプロモーター、1つまたは複数の複製起点、場合によっては1つまたは複数の選択マーカー(たとえば抗生物質耐性遺伝子)を含む、ベクターを使用する。
【0185】
特定の実施形態では、MSPI、MSPI断片、またはMSPI関連ポリペプチド・コード配列を、3つのpGEXベクター(グルタチオンS−トランスフェラーゼ発現ベクター;Smith and Johnson、1988、Gene 7:31〜40)のそれぞれのEcoRI制限部位にサブクローン化することによって、発現構築体を作製する。これによって、MSPI産物またはMSPI関連ポリペプチドが、サブクローンから正しい読み枠で発現することができる。
【0186】
哺乳動物の宿主細胞では、いくつかのウイルス系の発現系を使用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、MSPIコード配列またはMSPI関連ポリペプチド・コード配列を、アデノウイルスの転写/翻訳調節複合体、たとえば後期プロモーターおよびトリプレット・リーダー配列に連結させることができる。次いでこのキメラ遺伝子を、in vitroおよびin vivoでの組換えによって、アデノウイルス・ゲノムに挿入することができる。ウイルス・ゲノムの非必須領域(たとえば領域E1またはE3)中への挿入によって、生命力があり感染した宿主中で抗体分子を発現することができる組換えウイルスが生成すると思われる(たとえばLogan and Shenk、1984、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:355〜359を参照のこと)。挿入された抗体のコード配列を効率よく翻訳するために、特異的な開始シグナルが必要とされる可能性もある。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接する配列を含む。さらに開始コドンは、挿入体全体の翻訳を確実にするために、所望のコード配列の読み枠と同調しなければならない。これらの外因性の翻訳調節シグナルおよび開始コドンは、さまざまな起源のもの、天然および合成のものであってよい。発現の効率は、適切な転写のエンハンサー要素、転写終結信号などを封入することによって高めることができる(Bittner他、1987、Methods in Enzymol.153:51〜544を参照のこと)。
【0187】
MSPI、MSPI断片、またはMSPI関連ポリペプチドをコードする遺伝子の挿入体を含む発現ベクターは、3つの一般的な手法:(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の有無、(c)挿入配列の発現によって同定することができる。第1の手法では、発現ベクター中に挿入されたMSPIをコードする遺伝子の存在は、MSPIをコードする挿入遺伝子と相同である配列を含むプローブを使用して、核酸ハイブリダイゼーションによって検出することができる。第2の手法では、組換えベクター/宿主系を、MSPIをコードする遺伝子をベクターに挿入することによって引き起こされる、ある「マーカー」遺伝子機能(たとえばチミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、表現型の転換、バキュロ・ウイルス中での閉塞体の形成など)の有無に基づいて、同定および選択することができる。たとえば、MSPIをコードする遺伝子をベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入する場合、MSPI挿入体をコードする遺伝子を含む組換え体を、マーカー遺伝子機能の不在によって同定することができる。第3の手法では、組換え発現ベクターを、組換え体によって発現された遺伝子産物(すなわちMSPI)をアッセイすることによって同定することができる。このようなアッセイは、たとえばin vitroアッセイ系でのMSPIの物理的または機能的性質、たとえば抗MSPI抗体との結合に基づくものであってよい。
【0188】
さらに、所望の特異的な方式で挿入配列の発現を調節する、あるいは遺伝子産物を改変およびプロセッシングする、宿主細胞株を選択することができる。あるプロモーターからの発現は、ある誘導物質の存在下で高めることができる。したがって、遺伝子工学的に処理したMSPIまたはMSPI関連ポリペプチドの発現を調節することができる。さらに、異なる宿主細胞は、翻訳並びに翻訳後のプロセッシングおよび改変(たとえばタンパク質のグリコシル化、リン酸化)に関する、特徴的で特異的な機構を有している。適切な細胞株または宿主系を選択して、発現される外来性タンパク質の所望の改変およびプロセッシングを確実にすることができる。たとえば、細菌系での発現によって非グリコシル化産物が生成され、酵母菌中での発現によってグリコシル化産物が生成されるであろう。一次転写物の正確なプロセッシング、遺伝子産物のグリコシル化、リン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用することができる。このような哺乳動物宿主細胞には、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、HEK293、3T3、WI38、および特にニューロン細胞株、たとえばSK−N−AS、SK−N−FI、SK−N−DZヒト神経芽細胞種(Sugimoto他、1984、J.Natl.Cancer Inst.73:51〜57)、SK−N−SHヒト神経芽細胞種(Biochim.Biophys.Acta、1982、704:450〜460)など、Daoyヒト小脳髄芽細胞種(He他、1992、Cancer Res.52:1144〜1148)、DBTRG−05MG膠芽細胞種(Kruse他、1992、In Vitro Cell.Dev.Biol.28A:609〜614)、IMR−32ヒト神経芽細胞種(Cancer Res.、1970、30:2110〜2118)、1321N1ヒト星状細胞種(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1977、74:4816)、MOG−G−CCMヒト星状細胞種(Br.J.Cancer、1984、49:269)、U87MGヒト膠芽細胞種−星状細胞種(Acta Pathol Microbiol.Scand.、1968、74:465〜486)、A172ヒト膠芽細胞種(Olopade他、1992、Cancer Res.52:2523〜2529)、C6ラット神経膠腫細胞(Benda他、1968、Science 161:370〜371)、Neuro−2aマウス神経芽細胞種(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1970、65:129〜136)、NB41A3マウス神経芽細胞種(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1962、48:1184〜1190)、SCPヒツジ脈絡叢(Bolin他、1994、J.Virol.Methods48:211〜221)、G355−5、PG−4ネコの正常な星状細胞(Haapala他、1985、J.Virol.53:827〜833)、Mpfフェレット脳(Trowbridge他、1982、In Vitro18:952〜960)、および正常な細胞株、たとえばCTX TNA2ラットの正常な大脳(Radany他、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:6467〜6471)など、たとえばCRL7030およびHs578Bstなどがあるが、これらだけには限られない。さらに、異なるベクター/宿主発現系が、異なる程度でプロセッシング反応を行う可能性がある。
【0189】
組換えタンパク質を長期にわたって高収率で生成するためには、安定した発現が好ましい。たとえば、MSPIを安定的に発現する細胞系を操作(engineered)することができる。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用するのではなく、適切な発現調節要素(たとえばプロモーター、エンハンサー、配列、転写終結信号、ポリアデニル化部位など)によって調節されるDNA、および選択マーカーを用いて、宿主細胞を形質転換することができる。外来性DNAの導入の次に、操作した細胞は富化培地で1〜2日増殖させることができ、次いで選択培地に移す。組換えプラスミド中の選択マーカーによって選択に対する耐性が与えられ、細胞はプラスミドをそれらの染色体に安定的に組み込むことができ、増殖して小増殖巣を形成し、次いでクローン化させ、細胞株へと広げることができる。この方法を有利に使用して、MSPIを発現する細胞株を操作することができる。このような操作した細胞株は、MSPIの外来性の活性に影響を与える作用剤をスクリーニングおよび評価する際に、非常に有用である。
【0190】
単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ(Wigler他、1977、Cell11:223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska and Szybalski、1962、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、48:2026)だけには限られないがこれらを含めた、いくつかの選択系を使用することができ、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy他、1980、Cell22:817)遺伝子は、tk−、hgprt−またはaprt−細胞中でそれぞれ使用することができる。代謝拮抗物質耐性を、メトトレキセートに対する耐性を与えるdhfr(Wigler他、1980、Natl.Acad.Sci.USA、77:3567;O’Hare他、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:1527)、マイコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(Mulligan and Berg、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:2072)、アミノグリコシドG−418に対する耐性を与えるneo(Colberre−Garapin他、1981、J.Mol.Biol.150:1)、およびヒグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerre他、1984、Gene 30:147)遺伝子に関する選択の基準として使用することができる。
【0191】
他の特異的な実施形態では、MSPI、断片、類似体、または誘導体を、融合またはキメラ・タンパク質産物(ペプチド結合を介して異種タンパク質配列に結合した、タンパク質、断片、類似体または誘導体を含む)として、発現させることができる。たとえば、本発明のポリペプチドは、免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメイン、またはその一部分(CH1、CH2、CH3、またはこれらおよびその一部分の任意の組合せ)と融合させることができ、これによってキメラ・ポリペプチドが生成する。このような融合タンパク質によって、精製が助長され、in vivoでの半減期が増大し、上皮性関門から免疫系への抗原の送達が向上する可能性がある。in vivoでの半減期が増大し、精製が助長されることが、ヒトCD4−ポリペプチドの第1の2つのドメイン、および哺乳動物免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域のさまざまなドメインからなるキメラ・タンパク質に関して、示されている。たとえば、EP394,827;Traunecker他、Nature、331:84〜86(1988)を参照のこと。上皮性関門から免疫系への抗原の送達の向上は、IgGまたはFc断片などのFcRn結合パートナーに結合した、抗原(たとえばインシュリン)に関して実証されている(たとえば、WO96/22024およびWO99/04813を参照のこと)。
【0192】
MSPI、MSPIの断片、またはMSPI関連ポリペプチド、またはMSPI関連ポリペプチドの断片をコードする核酸を、エピトープ・タグ(たとえば赤血球凝集素(「HA」)タグまたはフラッグ・タグ)に融合させて、発現したポリペプチドの検出および精製を手助けすることができる。たとえば、Janknecht他によって記載されたシステムによって、ヒト細胞株中で発現された非変性融合タンパク質を容易に精製することができる(Janknecht他、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:8972〜897)。
【0193】
融合タンパク質は、当分野で知られている方法によって正確なコード枠で、所望のアミノ酸配列をコードする適切な核酸配列を互いに連結させ、当分野で一般的に知られている方法によってキメラ産物を発現させることによって、作製することができる。あるいは、融合タンパク質は、タンパク質合成技法によって、たとえばペプチド合成装置を使用することによって作製することができる。
【0194】
cDNAおよびゲノム配列の両方を、クローン化および発現させることができる。
【0195】
1.10 MSPIのドメイン構造
いくつかのMSPIのドメインが当分野で知られており、科学文献中に記載されている。さらに、当業者に知られている技法を使用して、MSPIのドメインを同定することができる。たとえば、1つまたは複数のMSPIのドメインを、1つまたは複数の以下のプログラム:ProDom、TMpred、およびSAPSを使用して同定することができる。ProDomは、ポリペプチドのアミノ酸配列を、1つにまとめたドメインのデータベースと比較する(たとえばhttp://www.toulouse.inra.fr/prodom.html;Corpet F.Gouzy J.and Kahn D.、1999、Nucleic Acids Res.、27:263〜267を参照のこと)。TMpredは、ポリペプチドの膜貫通領域およびその方向を予想する。このプログラムは、TMbase、天然に存在する膜貫通タンパク質のデータベースの統計的分析に基づくアルゴリズムを使用する(たとえばhttp://www.ch.embnet.org/software/TMPRED_form.html;Hofmann and Stoffel.(1993)「TMbase−A database of membrane spanning proteins segments」Biol.Chem.Hoppe−Seyler347、166を参照のこと)。SAPSプログラムは、電荷−群、繰り返し、疎水性領域、組成ドメインのような、統計学的に有意な特徴に関してポリペプチドを分析する(たとえばBrendel他、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:2002〜2006を参照のこと)。したがって、本発明の記載に基づいて、当業者は、酵素または結合活性を有するMSPIのドメインを同定することができ、このようなドメインをコードするヌクレオチド配列をさらに同定することができる。次いで、これらのヌクレオチド配列を、MSPIの酵素または結合活性を保持しているMSPI断片の、組換え発現のために使用することができる。
【0196】
本発明の記載に基づいて、当業者は、酵素または結合活性を有するMSPIのドメインを同定することができ、このようなドメインをコードするヌクレオチド配列をさらに同定することができる。次いでこれらのヌクレオチド配列は、MSPIの酵素または結合活性を保持しているMSPI断片の、組換え発現のために使用することができる。
【0197】
一実施形態では、MSPIは、知られているポリペプチドの同定されたドメインと十分に類似した、アミノ酸配列を有する。本明細書で使用するように、「十分に類似した」という語は、第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列と同一または等価な(たとえば類似の側鎖を有する)、多数のアミノ酸残基またはヌクレオチドを含む第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列のことであり、したがって第1および第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列は、共通の構造ドメインまたは共通の機能活性あるいはこの両方を、有しているかあるいはコードしている。
【0198】
MSPIドメインを、当業者によく知られている技法を使用して、その機能に関して評価することができる。たとえば、当業者に知られている技法を使用して、そのキナーゼ活性に関して、あるいはDNAに結合するその能力に関して、ドメインを評価することができる。たとえば、基質をリン酸化するポリペプチドの能力を測定することによって、キナーゼ活性を評価することができる。DNA結合活性は、たとえば電気泳動移動度シフト・アッセイにおいて、DNA結合要素に結合するポリペプチドの能力を測定することによって、評価することができる。好ましい実施形態では、MSPIのドメインの機能を、以下の表IXに示した1つまたは複数の参照文献中に記載されたアッセイを使用して決定する。
【0199】
1.11 MSPIに対する抗体の生成
本発明に従って、MSPI、MSPI断片、またはMSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質、または任意の前述のものの誘導体を免疫原として使用して、このような免疫原に免疫特異的に結合する抗体を生成させることができる。このような免疫原は、前に記載した方法を含めた、任意の好都合な手段によって単離することができる。本発明の抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、二重特異性、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片およびF(ab’)断片、Fab発現ライブラリーによって生成される断片、抗イディオタイプ(抗−Id)抗体、および任意の前述のもののエピトープ結合断片などがあるが、これらだけには限られない。本明細書で使用する「抗体」という語は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性がある部分、すなわち抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子のことである。本発明の免疫グロブリン分子は、任意のクラスのもの(たとえばIgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)、または免疫グロブリン分子のサブクラスであってよい。
【0200】
一実施形態では、MSPIをコードする遺伝子の遺伝子産物を認識する抗体が、公に入手可能である。たとえば、これらのMSPI、MSPI断片、またはMSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質を認識する抗体には MSPI-1, MSPI-2, MSPI-3, MSPI-4, MSPI-5.1, MSPI-6, MSPI-7, MSPI-8.1, MSPI-8.2, MSPI-9, MSPI-10, MSPI-11, MSPI-12.1, MSPI-12.2, MSPI-13, MSPI-14, MSPI-15, MSPI-16, MSPI-18, MSPI-22, MSPI-24, MSPI-27, MSPI-28, MSPI-29, MSPI-30, MSPI-31, MSPI-32, MSPI-33.1, MSPI-36, MSPI-37, MSPI-39.1, MSPI-40, MSPI-42.2, MSPI-47, MSPI-48.1, MSPI-51.1, MSPI-52.1, MSPI-52.2, MSPI-54, MSPI-55, MSPI-56, MSPI-58, MSPI-60, MSPI-65, MSPI-67.1, MSPI-67.2, MSPI-70, MSPI-72, MSPI-75, MSPI-76, MSPI-78.1, MSPI-78.2, MSPI-79, MSPI-80.1, MSPI-81, MSPI-84.1, MSPI-89.1, MSPI-90, MSPI-91.1, MSPI-92, MSPI-93.1, MSPI-93.2, MSPI-95, MSPI-96, MSPI-98, MSPI-102.1, MSPI-102.2, MSPI-102.3, MSPI-104, MSPI-105.1, MSPI-105.2, MSPI-106, MSPI-107, MSPI-108, MSPI-110, MSPI-111, MSPI-113, MSPI-114, MSPI-119, MSPI-120, MSPI-122, MSPI-123.1, MSPI-127.1, MSPI-128, MSPI-130, MSPI-132, MSPI-133, MSPI-134, MSPI-137, MSPI-140, MSPI-141.2, MSPI-142, MSPI-145.2, MSPI-147.2, MSPI-149, MSPI-150, MSPI-151, MSPI-152, MSPI-154.1, MSPI-155.2, MSPI-155.3, MSPI-156.2, MSPI-158.2, MSPI-159, MSPI-160, MSPI-161, MSPI-165.2, MSPI-167, MSPI-169.2, MSPI-170, MSPI-171, MSPI-172, MSPI-173.2, MSPI-175, MSPI-176.1, MSPI-176.2, MSPI-177, MSPI-178, MSPI-179.1, MSPI-179.2, MSPI-181.2, MSPI-182, MSPI-183, MSPI-184, MSPI-186, MSPI-187.1, MSPI-187.2, MSPI-189, MSPI-191, MSPI-192.1, MSPI-193, MSPI-194.1, MSPI-195.1, MSPI-196, MSPI-197, MSPI-198, MSPI-199.1, MSPI-199.2, MSPI-200, MSPI-201, MSPI-202.1, MSPI-205, MSPI-206, MSPI-209, MSPI-210, MSPI-212.2, MSPI-213, MSPI-215, MSPI-216, MSPI-217.3, MSPI-218, MSPI-219, MSPI-220, MSPI-221.1, MSPI-222.2, MSPI-223.1, MSPI-224.1, MSPI-228.1, MSPI-228.2, MSPI-229.2, MSPI-230, MSPI-231, MSPI-232, MSPI-233.1, MSPI-233.2, MSPI-234, MSPI-235, MSPI-236.1, MSPI-236.2, MSPI-237, MSPI-238, MSPI-239.1, MSPI-239.2, MSPI-240.1, MSPI-240.2, MSPI-241.2, MSPI-242.2, MSPI-243, MSPI-244, MSPI-245, MSPI-246.1, MSPI-246.2, MSPI-248, MSPI-251, MSPI-257.2, MSPI-257.3, MSPI-260.2, MSPI-265, MSPI-266, MSPI-268.1, MSPI-270, MSPI-273, MSPI-274, MSPI-277, MSPI-279, MSPI-280.2, MSPI-283.2, MSPI-284.1, MSPI-289, MSPI-290, MSPI-291.2, MSPI-292, MSPI-295, MSPI-298.2, MSPI-299, MSPI-301, MSPI-302, MSPI-303.2, MSPI-305, MSPI-306, MSPI-307, MSPI-311.1, MSPI-311.2, MSPI-311.3, MSPI-313, MSPI-316, MSPI-318, MSPI-319, MSPI-320, MSPI-322, MSPI-323.1, MSPI-323.2, MSPI-324, MSPI-325.1 を認識する抗体があり、これらの抗体は、前述の表VIIに示したコマーシャルソースから購入することができる。他の実施形態では、当業者に知られている方法を使用して、MSPI、MSPI断片、またはMSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質、または任意の前述のものの誘導体を認識する抗体を生成する。
【0201】
本発明の一実施形態では、MSPIの特異的ドメインに対する抗体を生成する。特定の実施形態では、MSPIの親水性断片を、抗体生成用の免疫原として使用する。
【0202】
抗体の生成では、当分野で知られている技法、たとえばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)によって、所望の抗体のスクリーニングを行うことができる。たとえば、MSPIの特異的ドメインを認識する抗体を選択するために、このようなドメインを含むMSPI断片に結合する生成物の、生成したハイブリドーマをアッセイすることができる。第1のMSPI相同体に特異的に結合するが、第2のMSPI相同体には特異的に結合しない(または、それほど強烈には結合しない)抗体を選択するために、第1のMSPI相同体へのポジティブな結合、および第2のMSPI相同体への結合がない(またはわずかに結合する)ことに基づいて選択を行うことができる。同様に、MSPIに特異的に結合するが、同じタンパク質の異なるアイソフォーム(MSPIと同じコア・ペプチドを有する異なるグリコフォームなど)には特異的に結合しない(または、それほど強烈には結合しない)抗体を選択するために、MSPIへのポジティブな結合、および異なるアイソフォーム(たとえば異なるグリコフォーム)への結合がない(またはわずかに結合する)ことに基づいて選択を行うことができる。したがって本発明は、MSPIの異なる1つまたは複数のアイソフォーム(たとえばグリコフォーム)よりも大きな親和性(好ましくは少なくとも2倍大きな親和性、より好ましくは少なくとも5倍大きな親和性、さらに好ましくは少なくとも10倍大きな親和性)でMSPIに結合する、抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を提供する。
【0203】
本発明の方法で使用することができるポリクローナル抗体は、免疫処置した動物の血清に由来する異種の群の抗体分子である。非分画免疫血清を使用することもできる。当分野で知られているさまざまな手順を、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質に対するポリクローナル抗体を生成させるために使用することができる。特定の実施形態では、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質のエピトープに対する、ウサギ・ポリクローナル抗体を得ることができる。たとえば、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を生成するために、ウサギ、マウス、ラットなどだけには限られないがこれらを含めた、さまざまな宿主動物を、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質の原型または合成型(たとえば組換え体)を注射することによって、免疫処置することができる。本明細書に記載する好ましい技術によって、このような免疫処置に適した単離MSPIが与えられる。MSPIをゲル電気泳動によって精製する場合、自前のポリアクリルアミド・ゲルから抽出処理の有無に関らず免疫処置にMSPIを使用することができる。完全または不完全なフロイントのアジュバント、水酸化アルミニウムなどの無機化合物のゲル、リゾレシチン、プルロニック・ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールなどの界面活性物質、およびBCG(カルメットゲラン桿菌)またはコリネバクテリウム・パルブムなどのアジュバントだけには限られないがこれらを含めた、さまざまなアジュバントを使用して、宿主種に応じて免疫応答を高めることができる。他のアジュバントも当分野ではよく知られている。
【0204】
MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質を対象とするモノクローナル抗体(mAb)を調製するために、培養中の一連の細胞系による抗体分子の生産をもたらす、任意の技法を使用することができる。たとえば、KohlerおよびMilstein(1975、Nature 256:495〜497)によって本来開発されたハイブリドーマ技法、およびtrioma技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor他、1983、Immunology Today4:72)、およびヒト・モノクローナル抗体を生産するためのEBV−ハイブリドーマ技法(Cole他、1985、in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、pp.77〜96)。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含めた任意の免疫グロブリン・クラス、および任意のこれらのサブクラスであってよい。本発明のmAbを生産するハイブリドーマは、in vitroまたはin vivoで培養することができる。本発明の追加的な実施形態では、知られている技術(PCT/US90/02545)を利用して無菌の動物中で、mAbを生産することができる。
【0205】
mAbには、ヒトmAbおよびキメラmAb(たとえばヒト−マウス・キメラ)があるが、これらだけには限られない。キメラ抗体は、その中の異なる部分が異なる動物種に由来する分子、ヒト免疫グロブリンの定常領域およびネズミmAbに由来する可変領域を有する分子(たとえば米国特許第4,816,567号および米国特許第4,816,397号を参照のこと)などである。ヒト化抗体は、ヒト以外の種からの1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子からの骨格領域を有する、ヒト以外の種からの抗体分子である(たとえば、参照によってその全容を本明細書に取り込んである、米国特許第5,585,089号を参照のこと)。
【0206】
キメラおよびヒト化mAbは、当分野で知られている組換えDNA技法、たとえばWO/87/02671;EP184,187A;EP171,496A;EP173,494A;WO/86/01533;米国特許第4,816,567号;EP125,023A;Better他、1988、Science 240:1041〜1043;Liu他、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:3439〜3443;Liu他、1987、J.Immunol.139:3521〜3526;Sun他、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:214〜218;Nishimura他、1987、Canc.Res.47:999〜1005;Wood他、1985、Nature 314:446〜449;およびShaw他、1988、J.Natl.Cancer Inst.80:1553〜1559;Morrison、1985、Science 229:1202〜1207;Oi他、1986、Bio/Techniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jones他、1986、Nature 321:552〜525;Verhoeyan他、(1988)Science 239:1534;およびBeidler他、1988、J.Immunol.141:4053〜4060中に記載された方法を使用して、生産することができる。
【0207】
完全なヒト抗体は、ヒトの被験体の療法治療に非常に望ましい。このような抗体は、外来性の免疫グロブリン重鎖および軽鎖の遺伝子を発現することはできないが、ヒト重鎖および軽鎖の遺伝子を発現することができるトランスジェニック・マウスを使用して、生産することができる。トランスジェニック・マウスは、選択した抗原、たとえば本発明のMSPIの全体または一部分を用いて、通常の方式で免疫処置する。抗原を対象とするモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して、得ることができる。トランスジェニック・マウスに保持されているヒト免疫グロブリンの導入遺伝子は、B細胞の分化中に転位し、その後クラスの変更および体細胞突然変異を受ける。したがって、このような技法を使用して、治療上有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を生産することが可能である。ヒト抗体を生産することに関するこの技術の概要に関しては、LonbergおよびHuszar(1995、Int.Rev.Immunol.13:65〜93)を参照のこと。ヒト抗体およびヒト・モノクローナル抗体の生産に関するこの技術の詳細な論述、およびこのような抗体の生産に関するプロトコルに関しては、たとえば米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,661,016号、および米国特許第5,545,806号を参照のこと。さらに、Abgenix,Inc.(Freemont、CA)およびGenpharm(San Jose、CA)などの企業が提携して、前に記載した技術と類似の技術を使用して、選択した抗原を対象とするヒト抗体を提供することができる。
【0208】
選択したエピトープを認識する完全なヒト抗体は、「誘導選択」と呼ばれる技法を使用して、生産することができる。この手法では、選択した非ヒト・モノクローナル抗体、たとえばマウス抗体を使用して、同じエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択を誘導する(Jespers他、(1994)Bio/technology12:899〜903)。
【0209】
本発明の抗体は、当分野で知られているさまざまなファージ・ディスプレイ法を使用して、生成させることもできる。ファージ・ディスプレイ法では、機能的な抗体ドメインを、それらをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面に示す。特に、このようなファージを利用して、レパートリーまたは組合せ抗体ライブラリー(たとえばヒトまたはネズミ)から発現される抗原結合ドメインを示すことができる。当該の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、たとえば標識した抗原、または固体表面またはビーズに結合または捕獲させた抗原を使用して、選択または同定することができる。典型的には、これらの方法において使用されるファージは、ファージから発現されるfdおよびM13結合ドメイン、およびファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えによって融合した、Fab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを含む、線状ファージである。本発明の抗体を作製するために使用することができるファージ・ディスプレイ法には、いずれも参照によってその全容を本明細書に取り込んである、Brinkman他、J.Immunol.Methods182:41〜50(1995)、Ames他、J.Immunol.Methods184:177〜186(1995)、Kettleborought他、Eur.J.Immunol.24:952〜958(1994)、Persic他、Gene 187 9〜18(1997)、Burton他、Advances in Immunology57:191〜280(1994)、PCT/GB91/01134、WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401、および米国特許第5,698,426号、第5,223,409号、第5,403,484号、第5,580,717号、第5,427,908号、第5,750,753号、第5,821,047号、第5,571,698号、第5,427,908号、第5,516,637号、第5,780,225号、第5,658,727号、第5,733,743号および第5,969,108号中に開示された方法がある。
【0210】
前述の参照文献中に記載されたように、ファージを選択した後、たとえば以下に詳細に記載するように、ファージからの領域をコードする抗体、ヒト抗体を含めた完全な抗体、または任意の他の所望の抗原結合断片を生成するために単離し使用することができ、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌、および細菌を含めた任意の所望の宿主中で、これらを発現させることができる。たとえば、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片を組換えによって生成させるための技法を、当分野で知られている方法、WO92/22324;Mullinax他、Bio Techniques 12(6)864〜869(1992);およびSawai他、AJRI34:26〜34(1995);およびBetter他、Science 240:1041〜1043(1988)中に開示された方法などを使用して行うこともできる。
【0211】
単鎖Fvsおよび抗体を生成させるために使用することができる技法の例には、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号;Huston他、Methods in Enzymology203:46〜88(1991);Shu他、PNAS90:7995〜7999(1993);およびSkerra他、Science 240:1038〜1040(1988)中に記載された技法がある。
【0212】
本発明はさらに、当分野で知られている方法によって作製することができる、二重特異性抗体の使用を提供する。完全長の二重特異性抗体の伝統的な生産は、2本の鎖が異なる特異性を有する場合、2つの免疫グロブリン重鎖および軽鎖対を同時発現させることに基づく(Milstein他、1983、Nature 305:537〜539)。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな取り合わせのために、これらのハイブリドーマ(クワドローマ)によって、10種の異なる抗体分子の考えうる混合物が生産され、その中ではただ1つが正確な二重特異性構造を有する。通常は親和性クロマトグラフィーのステップによって行われる、正確な分子の精製は、どちらかというと煩わしいものであり、その産物の収率は低い。類似の手順が、WO93/08829、およびTraunecker他、1991、EMBOJ.10:3655〜3659中に開示されている。
【0213】
異なる好ましい手法に従って、所望の結合特異性を有する抗体の可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合させる。この融合は、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部分を含む、免疫グロブリン重鎖の定常ドメインとの融合であることが好ましい。少なくとも1つの融合体中に存在する、軽鎖との結合に必要な部位を含む第1の重鎖の定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖の融合体、および望むならば免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に共トランスフェクトする。これによって、構築中に使用される3本のポリペプチド鎖の不均一な比率が、最適な収率を与える実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互の比率を調節する際に高度な柔軟性が与えられる。しかしながら、均一な比率である少なくとも2本のポリペプチド鎖の発現が高い収率をもたらすとき、あるいはこの比率が特に重要ではないときは、2本または3本すべてのポリペプチド鎖のコード配列を、1つの発現ベクターに挿入することができる。
【0214】
この手法の好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、1つのアームに第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、およびもう1つのアームに免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を与える)で構成されている。この非対称な構造によって、望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せからの、所望の二重特異性化合物の分離が助長されることが見出された。なぜなら、二重特異性分子のわずか半分中の免疫グロブリン軽鎖の存在によって、分離法が容易になるからである。この手法は、WO94/04690中に開示されている。二重特異性抗体を生成させるための他の詳細に関しては、たとえばSuresh他、Methods in Enzymology、1986、121:210を参照のこと。
【0215】
本発明は、抗MSPI免疫グロブリン分子の機能的に活性がある断片、誘導体または類似体を提供する。機能的に活性があるとは、断片、誘導体または類似体が、断片、誘導体または類似体が由来する抗体によって認識される同じ抗原を認識する抗−抗イディオタイプ抗体(すなわち三次抗体)を誘導することができることを意味する。具体的には、好ましい実施形態では、イディオタイプの免疫グロブリン分子の抗原性を、抗原を特異的に認識するCDR配列のC末端の、骨格およびCDR配列を欠失させることによって高めることができる。どのCDR配列が抗原に結合するかを決定するために、当分野で知られている任意の結合アッセイ法によって、CDR配列を含む合成ペプチドを、抗原との結合アッセイにおいて使用することができる。
【0216】
本発明は、F(ab’)2断片およびFab断片だけには限られないが、これらなどの抗体断片を提供する。特異的なエピトープを認識する抗体断片は、知られている技法によって生成させることができる。F(ab’)2断片は、可変領域、軽鎖の定常領域および重鎖のCH1ドメインからなり、抗体分子をペプシンで消化することによって生成する。Fab断片は、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成する。本発明は、本発明の抗体の重鎖と軽鎖の二量体、またはFvsまたは単鎖抗体(SCA)などの、その任意の最小断片(たとえば米国特許第4,946,778号;Bird、1988、Science 242:423〜42;Huston他、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879〜5883;およびWard他、1989、Nature 334:544〜54中に記載されたものと同様の)、または本発明の抗体と同じ特異性を有する任意の他の分子も提供する。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖断片と軽鎖断片をアミノ酸架橋を介して連結させることによって形成され、その結果、単鎖ポリペプチドが生じる。大腸菌の機能的Fv断片の組み立てに関する技法を、使用することができる(Skerra他、1988、Science 242:1038〜1041)。
【0217】
他の実施形態では、本発明は、本発明の免疫グロブリンの融合タンパク質(またはその機能的に活性がある断片)を提供し、たとえばその中では、免疫グロブリンが共有結合(たとえばペプチド結合)を介して、N末端またはC末端のいずれかで、免疫グロブリンではない他のタンパク質のアミノ酸配列(またはその一部分、好ましくはタンパク質の少なくとも10、20または50個のアミノ酸部分)に融合している。免疫グロブリン、またはその断片は、定常ドメインのN末端で、他のタンパク質に共有結合することが好ましい。前述のように、このような融合タンパク質によって、精製が助長され、in vivoでの半減期が増大し、上皮性関門から免疫系への抗原の送達が向上する可能性がある。
【0218】
本発明の免疫グロブリンは、すなわち任意のタイプの分子の共有結合が、免疫特異的な結合を害さない限りこのような共有結合によって、いずれかが改変されている類似体および誘導体を含む。たとえば、ただし、制限するためではなく、免疫グロブリンの誘導体および類似体には、たとえばグリコシル化、アセチル化、ペジル化、リン酸化、アミド化、知られている保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質の開裂、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって、さらに改変されたものがある。特異的な化学開裂、アセチル化、ホルミル化などだけには限られないが、これらを含めた知られている技法によって、任意の無数の化学改変を行うことができる。さらに、類似体または誘導体は、1つまたは複数の非古典的なアミノ酸を含んでよい。
【0219】
前述の抗体は、たとえばこれらのポリペプチドを画像化するため、適切な生理学的試料中、診断方法中でのそのレベルを測定するためなどの、本発明のMSPIの局在化および活性に関する当分野で知られている方法において、使用することができる。
【0220】
1.12 抗体の発現
本発明の抗体は、抗体の合成に関する当分野で知られている任意の方法によって、特に化学合成または組換え発現によって、生産させることができ、組換え発現技法によって生産されることが好ましい。
【0221】
抗体、またはその断片、誘導体もしくは類似体の組換え発現には、抗体をコードする核酸の構築が必要である。抗体のヌクレオチド配列が知られている場合、抗体をコードする核酸を、化学的に合成したオリゴヌクレオチドから組み立てることができ(たとえば、Kutmeier他、1994、Bio Techniques 17:242中に記載されたのと同様に)、これは簡潔には、抗体をコードする配列の一部分を含む重複オリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、次いでPCRによる連結したオリゴヌクレオチドの増幅を含む。
【0222】
あるいは、抗体をコードする核酸は、抗体をクローン化することによって得ることができる。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンは入手可能ではないが、抗体分子の配列が知られている場合、その抗体をコードする核酸を、配列の3’および5’端にハイブリッド形成可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、あるいは特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチド・プローブを使用するクローン化によって、適切な源(たとえば抗体cDNAライブラリー、またはその抗体を発現する任意の組織または細胞から作製したcDNAライブラリー)から得ることができる。
【0223】
特定の抗原を特異的に認識する抗体分子(または、このような抗体をコードする核酸をクローン化するためのcDNAライブラリーの源)が入手可能ではない場合、特定の抗原に特異的な抗体を、当分野で知られている任意の方法、たとえばウサギなどの動物を免疫処置してポリクローナル抗体を生成させること、あるいはより好ましくはmAbを生成させることによって生成することができる。あるいは、少なくとも抗体のFab部分をコードするクローンは、特異的な抗原に結合するFab断片のクローンに関して、Fab発現ライブラリーをスクリーニングすることによって(たとえばHuse他、1989、Science 246:1275〜1281中に記載されたのと同様に)、あるいは抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって(たとえばClackson他、1991、Nature 352:624;Hane他、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:4937を参照のこと)、得ることができる。
【0224】
抗体分子の可変ドメインを少なくともコードする核酸をひとたび得た後に、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むベクターに、その核酸を導入することができる(たとえばWO86/05807、WO89/01036、および米国特許第5,122,464号を参照のこと)。核酸と同時発現させて完全な抗体分子の発現を可能にするために、完全な軽鎖または重鎖を含むベクターも利用可能である。次いで、抗体をコードする核酸を使用して、メルカプト基を含んでいないアミノ酸残基との鎖間ジスルフィド結合と関連がある、1つまたは複数の可変領域システイン残基を、置換(または欠失)するのに必要なヌクレオチド置換体または欠失体を導入することができる。このような改変は、特異的な突然変異体または欠失体をヌクレオチド配列中に導入するための、当分野で知られている任意の方法、たとえば化学的突然変異導入法、in vitroでの位置指定突然変異導入法(Hutchinson他、1978、J.Biol.Chem.253:6551)、PCR系の方法などだけには限られないが、これらを含めた方法によって行うことができる。
【0225】
さらに、抗原特異性が適切であるマウス抗体分子からの遺伝子、および生物学的活性が適切であるヒト分子からの遺伝子をスプライシングすることによって、「キメラ抗体」を生産するために開発された技法(Morrison他、1984、Proc.Natl.Acad.Sci.81:851〜855、Neuberger他、1984、Nature 312:604〜608、Takeda他、1985、Nature 314:452〜454)を使用することができる。上に記載したように、キメラ抗体は、その中の異なる部分が異なる動物種に由来する分子、ネズミmAbに由来する可変領域、およびヒト抗体の定常領域を有する抗体、たとえばヒト化抗体などである。
【0226】
本発明の抗体分子をコードする核酸をひとたび得た後に、抗体分子を生産するためのベクターを、当分野でよく知られている技法を使用する組換えDNA技術によって生産することができる。したがって、抗体分子の配列を含む核酸を発現させることによって、本発明のタンパク質を調製するための方法を本明細書に記載する。当業者によく知られている方法を使用して、配列をコードする抗体分子、適切な転写および翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、たとえばin vitroでの組換えDNA技法、合成技法、およびin vivoでの遺伝的組換えがある。たとえば、Sambrook他、(1990、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)、およびAusubel他(eds.、1989、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NY)中に記載された、技法を参照のこと。
【0227】
発現ベクターを、従来的な技法によって宿主細胞に運び、次いでトランスフェクトされた細胞を従来的な技法によって培養して、本発明の抗体を生産する。
【0228】
本発明の組換え抗体を発現させるために使用する宿主細胞は、特に組換え抗体分子全体を発現させるためには、大腸菌などの細菌細胞、または好ましくは真核細胞のいずれかであってよい。特に、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、ヒトのサイトメガロ・ウイルスからの主要中間体初期遺伝子プロモーター要素などのベクターと併せて、抗体用の有効な発現系である(Foecking他、198、Gene 45:101;Cockett他、1990、Bio/Technology8:2)。
【0229】
さまざまな宿主発現ベクター系を利用して、本発明の抗体分子を発現させることができる。このような宿主発現系には、それによって当該のコード配列を生産し後に精製することができる運搬体だけでなく、適切なヌクレオチドのコード配列を用いて形質転換またはトランスフェクトすると、本発明の抗体分子をin situで発現することができる細胞もある。これらの宿主発現系には、抗体コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換された細菌(たとえばE.Coli、B.subtilis)などの微生物、抗体コード配列を含む組換え酵母菌発現ベクターを用いて形質転換された酵母菌(たとえばSaccharomyces,Pichia)、抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(たとえばバキュロ・ウイルス)を用いて感染させた昆虫細胞系、抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(たとえばカリフラワー・モザイク・ウイルス、CaMV;タバコ・モザイク・ウイルス、TMV)を用いて感染させ、あるいは抗体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(たとえばTiプラスミド)を用いて形質転換された植物細胞系、または哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(たとえばメタロチオネイン・プロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(たとえばアデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築体を保持している、哺乳動物細胞系(たとえばCOS、CHO、BHK、HEK293、3T3細胞)があるが、これらだけには限られない。
【0230】
細菌系では、いくつかの発現ベクターを、抗体分子を発現させることを目的とする使用に応じて、有利に選択することができる。たとえば、多量のこのようなタンパク質を生産させるとき、抗体分子を含む薬剤組成物を生成させるためには、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指示するベクターが望ましいと思われる。このようなベクターには、抗体コード配列がlacZコード領域と共にインフレームになるようにベクター中に独立に連結することができ、その結果融合タンパク質が生産される大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther他、1983、EMBO J.2:1791)、pINベクター(Inouye and Inouye、1985、Nucleic Acid Res.13:3103〜3109;Van Heeke and Schuster、1989、J.Biol.Chem.24:5503〜5509)などがあるが、これらだけには限られない。pGEXベクターを使用して、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、外来性ポリペプチドを発現させることもできる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックス・グルタチオン−アガロース・ビーズへの吸着および結合、次に遊離グルタチオンの存在下での溶出によって、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビンまたは因子Xaプロテアーゼ開裂部位を含むように設計されており、したがってクローン化した標的遺伝子産物を、GST部分から切り離すことができる。
【0231】
昆虫系では、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)を、外来性遺伝子を発現させるためのベクターとして使用する。このウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞中で増殖する。抗体コード配列を、ウイルスの非必須領域(たとえばポリヘドリン遺伝子)に独立にクローン化して、AcNPVプロモーター(たとえばポリヘドリン・プロモーター)の調節下に置くことができる。哺乳動物宿主細胞では、いくつかのウイルス系の発現系(たとえばアデノウイルス発現系)を利用することができる。
【0232】
前に論じたように、所望の特定の方式で、挿入配列の発現を調節する、あるいは遺伝子産物を改変および加工する、宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のこのような改変(たとえばグリコシル化)およびプロセッシング(たとえば開裂)は、タンパク質の機能にとって重要である可能性がある。
【0233】
組換え抗体の長期の高収率の生産のためには、安定した発現が好ましい。たとえば、当該の抗体を安定的に発現する細胞株は、抗体のヌクレオチド配列および選択マーカー(たとえばネオマイシンまたはヒグロマイシン)のヌクレオチド配列を含む発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクトし、選択マーカーの発現を選択することによって生産することができる。このような操作した細胞株は、抗体分子と直接的あるいは間接的に相互作用する作用剤をスクリーニングおよび評価する際に、非常に有用である可能性がある。
【0234】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増大させることができる(概要に関しては、Bebbington and Hentschel、The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning、第3巻(Academic Press New York、1987)を参照のこと)。抗体を発現させるベクター系中のマーカーが増幅可能であるとき、宿主細胞の培養物中に存在する阻害物質のレベルの増大によって、マーカー遺伝子のコピー数が増大すると思われる。増幅領域は抗体の遺伝子と関連があるので、抗体の生産も増大すると思われる(Crouse他、1983、Mol.Cell.Biol.3:257)。
【0235】
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター、ポリペプチドに由来する重鎖をコードする第1のベクター、およびポリペプチドに由来する軽鎖をコードする第2のベクターを用いてコトランスフェクトすることができる。この2つのベクターは、重鎖および軽鎖ポリペプチドを等しく発現させることができる、同一の選択マーカーを含んでよい。あるいは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方をコードする、1つのベクターを使用することができる。こうした状況では、軽鎖を重鎖より先に配置して、過剰な無毒性重鎖を回避しなければならない(Proudfoot、1986、Nature 322:52;Kohler、1980、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2197)。重鎖および軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含んでよい。
【0236】
ひとたび本発明の抗体分子を組換えによって発現させた後に、抗体分子を精製するための当分野で知られている任意の方法、たとえばクロマトグラフィー(たとえばイオン交換クロマトグラフィー、プロテインAまたは特異的抗原などに関する親和性クロマトグラフィー、およびサイジング・カラム・クロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の違いによって、あるいはタンパク質を精製するための任意の他の標準的な技法によって、抗体分子を精製することができる。
【0237】
あるいは、発現される融合タンパク質に特異的な抗体を利用することによって、任意の融合タンパク質を容易に精製することができる。たとえば、Janknecht他によって記載された系は、ヒト細胞株中で発現される非変性状態の融合タンパク質の、容易な精製を可能にする(Janknecht他、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8972〜897)。この系では、遺伝子のオープン・リーディング・フレームが、6つのヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに翻訳によって融合するように、当該の遺伝子をワクシニア組換えプラスミドにサブクローン化する。このタグは、融合タンパク質のマトリックス結合ドメインとして働く。組換えワクシニアウイルスを用いて感染させた細胞からの抽出物を、Ni2+ニトリロ酢酸−アガロース・カラムに載せ、イミダゾールを含む緩衝液を用いて、ヒスチジン−タグ・タンパク質を選択的に溶出させる。
【0238】
1.13 結合した抗体
好ましい実施形態では、抗MSPI抗体またはその断片を、診断用または治療用成分に結合させる。診断のために、または所与の治療方式の効果を判定するために、抗体を使用することができる。抗体を検出可能な物質に結合させることによって、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例には、さまざまな酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、(陽電子放出断層撮影法において使用するための)陽電子放出金属、および非放射性の常磁性金属イオンがある。本発明の診断用物質として使用するための抗体に結合することができる金属イオンに関する、米国特許第4,741,900号を概略的に参照のこと。適切な酵素にはホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼがあり、適切な補欠分子族にはストレプトアビジン、アビジンおよびビオチンがあり、適切な蛍光物質にはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルおよびフィコエリトリンがあり、適切な発光物質にはルミノールがあり、適切な生物発光物質にはルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンがあり、および適切な放射性核種には125I、131I、111Inおよび99Tcがある。
【0239】
抗MSPI抗体またはその断片を、治療剤または薬剤成分に結合させて、所与の生物学的応答を改変することができる。治療剤または薬剤成分は、古典的な化学治療剤、たとえば小分子に限られるものとして解釈すべきではない。たとえば薬剤成分は、所望の生物学的活性を有する、タンパク質またはポリペプチドであってよい。このようなタンパク質には、たとえばアブリン、リシンA、シュードモナス属の外毒素、またはジフテリア毒素などの毒素、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来の成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子、血栓剤または抗血管新生剤、たとえばアンギオスタチンまたはエンドスタチンなどのタンパク質、またはリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒状マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒状コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)または他の成長因子などの生物学的応答調節物質がある。
【0240】
このような治療成分を抗体に結合させるための技法は、よく知られている。たとえば、Arnon他、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeld他、(eds.)、pp.243〜56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom他、「Antibodies For Drug Delivery」、in Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinson他、(eds.)、pp.623〜53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、in Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications、Pinchera他、(eds.)、pp.475〜506(1985);「Analysis、Results、And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwin他、(eds.)、pp.303〜16(Academic Press1985)、およびThorpe他、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.、62:119〜58(1982)を参照のこと。
【0241】
あるいは、米国特許第4,676,980号に記載されたように、抗体を第2の抗体に結合させて、抗体ヘテロ結合を形成することができる。
【0242】
治療成分が結合しているかあるいは結合していない抗体を、単独またはサイトカインと組み合わせて投与される治療用物質として、使用することができる。
【0243】
1.14 MSの診断
本発明に従って、MSを有している疑いがあるかあるいはMSを有することが判っている被験体から得たCSF、血清、血漿または尿の第1の試料を、診断または調査用に使用することができる。一実施形態では、(MSを有していない1または複数の被験体からの)第2の試料または試料セット、または自前に決定した基準範囲に対しての、第1の試料または試料セット中の1つまたは複数のMSFまたはMSPI(または任意のこれらの組合せ)の存在量の減少は、MSの存在を示す。この目的に適したMSFおよびMSPIは、前に詳細に記載したように、それぞれ表Iおよび表IVにおいて識別される。本発明の他の実施形態では、第2の試料または試料セット、または自前に決定した基準範囲と比べた、第1の試料または試料セット中の1つまたは複数のMSFまたはMSPI(または任意のこれらの組合せ)の存在量の増大は、MSの存在を示す。この目的に適したMSFおよびMSPIは、前に詳細に記載したように、それぞれ表IIおよび表Vにおいて識別される。他の実施形態では、第2の試料または試料セット、または自前に決定した基準範囲と比べた、第1の試料または試料セット中の1つまたは複数のMSFまたはMSPI(または任意のこれらの組合せ)の相対的な存在量が、MSのサブタイプ(たとえば良性または進行性MS)を示す。他の実施形態では、第2の試料または試料セット、または自前に決定した基準範囲と比べた、第1の試料または試料セット中の1つまたは複数のMSFまたはMSPI(または任意のこれらの組合せ)の相対的な存在量が、MSの程度または重度を示す。任意の前述の方法において、本明細書に記載した1つまたは複数のMSPIの検出は、等電点電気泳動によって明らかになるCSF中のオリゴクローナル免疫グロブリン・バンドだけには限られないがこれを含めた、MSに関する1つまたは複数の追加的なバイオマーカーの検出と、場合によっては組み合わせることもできる(Reiber H他(1998)Mult Scler3:111〜7)。MSPIを検出および/または視覚化するための本明細書に記載した好ましい技術、キナーゼ・アッセイ、イムノアッセイ(たとえばウエスタン・ブロット法、免疫沈降、次にドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動、免疫細胞化学法など)だけには限られないがこれを含めた、当分野の任意の適切な方法を使用して、MSFおよびMSPIのレベルを測定することができる。MSPIが知られている機能を有している場合、その機能に関するアッセイを使用して、MSPI発現を測定することができる。他の実施形態では、第2の試料または試料セット、または自前に決定した基準範囲に対しての、第1の試料または試料セット中の表IVで識別した1つまたは複数のMSPI(または任意のこれらの組合せ)を含む、mRNAの存在量の減少は、MSの存在を示す。他の実施形態では、第2の試料または試料セット、または自前に決定した基準範囲に対しての、第1の試料または試料セット中の表Vで識別した1つまたは複数のMSPI(または任意のこれらの組合せ)をコードする、mRNAの存在量の増大は、MSの存在を示す。任意の適切なハイブリダイゼーション・アッセイを使用して、MSPIをコードするmRNAを検出および/または視覚化することによって(たとえばノーザン・アッセイ、ドット・ブロット、in situハイブリダイゼーションなど)、MSPI発現を検出することができる。
【0244】
本発明の他の実施形態では、MSPIに特異的に結合する標識抗体、その誘導体または類似体を診断目的で使用して、MSを検出、診断、または調査することができる。MSは動物中で検出されることが好ましく、より好ましくは哺乳動物中、最も好ましくはヒト中で検出されることが好ましい。
【0245】
1.15 スクリーニング・アッセイ
本発明は、MSPIに結合するか、あるいはMSPIの発現または活性に対して刺激または阻害効果がある、作用剤(たとえば候補物質)を同定するための方法を提供する。本発明は、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質に結合するか、あるいはMSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質の発現または活性に対して刺激または阻害効果がある、作用剤または候補物質を同定する方法も提供する。作用剤または候補物質の例には、核酸(たとえばDNAおよびRNA)、炭水化物、脂質、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、小分子および他の薬剤があるが、これらだけには限られない。作用剤は、生物学的ライブラリー、空間的指定可能パラレル固相または溶液相ライブラリー、デコンボルーションを必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、および親和性クロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を含めた、当分野で知られているコンビナトリアル・ライブラリー法の任意の非常に多数の手法を使用して得ることができる。生物学的ライブラリー手法は、ペプチド・ライブラリーに限られるが、他の4つの手法は、化合物のペプチド、非ペプチド・オリゴマーまたは小分子ライブラリーに適用可能である(Lam、1997、Anticancer Drug Des.12:145;米国特許第5,738,996号および米国特許第5,807,683号)。
【0246】
分子ライブラリーを合成するための方法の例は、当分野ではたとえば、DeWitt他、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909;Erb他、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermann他、1994、J.Med.Chem 37:2678;Cho他、1993、Science 261:1303、Carrell他、1994、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059、Carell他、1994、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallop他、1994、J.Med.Chem 37:1233中に見出すことができる。
【0247】
化合物のライブラリーは、たとえば溶液中(たとえばHoughten、1992、Bio/Techniques 13:412〜421)、またはビーズ上(Lam、1991、Nature 354:82〜84)、チップ(Fodor、1993、Nature 364:555〜556)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号、第5,403,484号、第5,223,409号)、プラスミド(Cull他、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865〜1869)またはファージ(Scott and Smith、1990、Science 249:386〜390;Devlin、1990、Science 249:404〜406;Cwirla他、1990、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6378〜6382;およびFelici、1991、J.Mol.Biol.222:301〜310)に存在してよく、これらはそれぞれ参照によってその中身を本明細書に取り込んである。
【0248】
一実施形態では、MSPI、MSPI断片(たとえば機能的に活性がある断片)、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質と相互作用する(すなわち結合する)作用剤を、細胞系アッセイ・システムにおいて同定する。この実施形態に従って、MSPI、MSPIの断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質を発現する細胞を、候補物質または対照物質と接触させ、候補物質がMSPIと相互作用する能力を決定する。望むならば、このアッセイを使用して、複数の候補物質(たとえばライブラリー)をスクリーニングすることができる。たとえば細胞は、原核生物起源(たとえば大腸菌)または真核生物起源(たとえば酵母菌または哺乳動物)であってよい。さらに、細胞はMSPI、MSPIの断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質を内生的に発現することができ、あるいは細胞を遺伝子工学的に操作して、MSPI、MSPIの断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質を発現させることができる。いくつかの場合、MSPI、MSPIの断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質または候補物質を、たとえば放射性標識(32P、35Sまたは125Iなど)または蛍光標識(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドまたはフルオレサミンなど)で標識して、MSPIと候補物質の間の相互作用を検出することができる。MSPI、MSPIの断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質と、候補物質が直接的または間接的に相互作用する能力は、当業者に知られている方法によって決定することができる。たとえば、候補物質とMSPI、MSPIの断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質の間の相互作用は、フロー・サイトメトリー、シンチレーション・アッセイ、免疫沈降法またはウエスタン・ブロット分析によって決定することができる。
【0249】
他の実施形態では、MSPI、MSPI断片(たとえば機能的に活性がある断片)、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質と相互作用する(すなわち結合する)作用剤を、無細胞アッセイ・システムにおいて同定する。この実施形態に従って、原形または組換えMSPIあるいはその断片、または原形または組換えMSPI関連ポリペプチドあるいはその断片、またはMSPI融合タンパク質あるいはその断片を、候補物質または対照物質と接触させ、候補物質がMSPIまたはMSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質と相互作用する能力を決定する。望むならば、このアッセイを使用して、複数の(たとえばライブラリー)候補物質をスクリーニングすることができる。好ましくは、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質は、たとえばMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質を、それを特異的に認識し結合させる固定された抗体と接触させること、あるいはMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質の精製された調製物を、タンパク質に結合するように設計された表面と接触させることによって最初に固定する。MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質は、部分的または完全に精製されているか(たとえば部分的または完全に他のポリペプチドを含まない)、あるいは細胞溶解産物の一部であってよい。さらに、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片は、MSPIもしくは生物学的に活性があるその一部分、またはMSPI関連ポリペプチドおよびグルタチオニン−S−トランスフェラーゼなどのドメインを含む融合タンパク質であってよい。あるいは、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質を、当業者によく知られている技法(たとえばビオチン化キット、Pierce Chemicals;Rockford、IL)を使用してビオチン化することができる。候補物質がMSPI、MSPIの断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質と相互作用する能力は、当業者に知られている方法によって決定することができる。
【0250】
他の実施形態では、細胞系アッセイ・システムを使用して、酵素などのMSPIの生産または分解を担い、あるいはMSPIの翻訳後の改変を担うタンパク質、または生物学的に活性があるその一部分に結合するかまたはその活性を調節する作用剤を同定する。一次スクリーニングでは、MSPI、MSPI相同体、MSPI関連ポリペプチド、MSPI融合タンパク質、または断片の生産、分解または翻訳後の改変を調節する作用剤を同定するために、複数の(たとえばライブラリー)候補物質を、(i)MSPI、MSPI相同体、MSPI関連ポリペプチド、MSPI融合タンパク質、または前述の任意のものの生物学的に活性がある断片、および(ii)MSPI、MSPI相同体、MSPI関連ポリペプチド、MSPI融合タンパク質、または断片のプロセッシングを担うタンパク質を、本来あるいは組換えによって発現する細胞と接触させる。望むならば、一次スクリーニングで同定した候補物質を、当該の特異的なMSPIを本来あるいは組換えによって発現する細胞に対する二次スクリーニングにおいて、次いでアッセイすることができる。候補物質がMSPI、MSPI相同体、MSPI関連ポリペプチドまたはMSPI融合タンパク質の生産、分解または翻訳後の改変を調節する能力は、フロー・サイトメトリー、シンチレーション・アッセイ、免疫沈降法およびウエスタン・ブロット分析を非制限的に含めた、当業者に知られている方法によって決定することができる。
【0251】
他の実施形態では、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質と競合的に相互作用する(すなわち結合する)作用剤を、競合結合アッセイにおいて同定する。この実施形態に従って、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質を発現する細胞を候補物質、およびMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質と相互作用することが知られている作用剤と接触させる。候補物質がMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質と競合的に相互作用する能力を、次いで決定する。あるいは、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI関連ポリペプチドの断片と競合的に相互作用する(すなわち結合する)作用剤を、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質を、候補物質、およびMSPI、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質と相互作用することが知られている作用剤と接触させることによって、無細胞アッセイ・システムにおいて同定する。前述のように、候補物質がMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、MSPI関連ポリペプチドの断片、またはMSPI融合タンパク質と相互作用する能力は、当業者に知られている方法によって決定することができる。これらのアッセイ、細胞系または無細胞アッセイを使用して、複数の(たとえばライブラリー)候補物質をスクリーニングすることができる。
【0252】
他の実施形態では、MSPI、またはMSPI関連ポリペプチドの発現を調節する(すなわち上方制御または下方制御する)作用剤を、MSPI、またはMSPI関連ポリペプチドを発現する細胞(たとえば原核生物起源または真核生物起源の細胞)を候補物質または対照物質(たとえばリン酸緩衝生理食塩水(PBS))と接触させ、MSPI、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質、MSPIをコードするmRNA、またはMSPI関連ポリペプチドをコードするmRNAの発現を決定することによって同定する。候補物質の存在下での、選択したMSPI、MSPI関連ポリペプチド、MSPIをコードするmRNA、またはMSPI関連ポリペプチドをコードするmRNAの発現のレベルを、候補物質の不在下(たとえば対照物質の存在下)での、MSPI、MSPI関連ポリペプチド、MSPIをコードするmRNA、またはMSPI関連ポリペプチドをコードするmRNAの発現のレベルと比較する。次いでこの比較に基き、候補物質を、MSPI、またはMSPI関連ポリペプチドの発現の調節物質として同定することができる。たとえば、MSPIまたはmRNAの発現が、候補物質の不在下よりも候補物質の存在下で著しく高いとき、その候補物質はMSPIまたはmRNAの発現の刺激物質として同定される。あるいは、MSPIまたはmRNAの発現が、候補物質の不在下よりも候補物質の存在下で著しく低いときは、その候補物質はMSPIまたはmRNAの発現の阻害物質として同定される。それをコードするMSPIまたはmRNAの発現のレベルは、当業者に知られている方法によって決定することができる。たとえば、mRNAの発現はノーザン・ブロット分析またはRT−PCRによって評価することができ、タンパク質のレベルはウエスタン・ブロット分析によって評価することができる。
【0253】
候補物質は、MSPI、MSPI関連ポリペプチド、もしくはMSPI融合タンパク質の、またはMSPI、MSPI関連ポリペプチド、もしくはMSPI融合タンパク質の上流エフェクターの、アゴニストまたはアンタゴニストであってよい。
【0254】
他の実施形態では、MSPI、またはMSPI関連ポリペプチドの活性を調節する作用剤を、MSPIもしくはMSPI関連ポリペプチド、またはMSPIもしくはMSPI関連ポリペプチドを発現する細胞(たとえば原核細胞または真核細胞)を含む調製物を候補物質または対照物質と接触させ、候補物質がMSPIまたはMSPI関連ポリペプチドの活性を調節する(たとえば刺激あるいは阻害する)能力を決定することによって同定する。MSPIまたはMSPI関連ポリペプチドの活性は、MSPIまたはMSPI関連ポリペプチドの細胞シグナル変換経路(たとえば細胞内でのCa2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘導など、これだけには限られないが、下流エフェクターの変化を検出すること、適切な基質を標的とする触媒活性または酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(たとえばMSPIまたはMSPI関連ポリペプチドに対して応答性があり、検出可能なマーカー、たとえばルシフェラーゼをコードする核酸に動作可能に連結する制御要素)の誘導を検出すること、あるいは細胞応答、たとえば細胞分化、または細胞増殖を検出することによって評価することができる。本発明の記載に基づいて、当業者に知られている技法を、これらの活性を測定するために使用することができる(たとえば、参照によって本明細書に取り込んである米国特許第5,401,639号を参照のこと)。したがって候補物質は、候補物質の対照物質に対する影響を比較することによって、MSPIまたはMSPI関連ポリペプチドの活性の調節物質として同定することができる。適切な対照物質には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)および正常な生理食塩水(NS)がある。
【0255】
他の実施形態では、MSPI、もしくはMSPI関連ポリペプチドの発現、活性、または発現と活性の両方を調節する(すなわち上方制御または下方制御する)作用剤を、動物モデルにおいて同定する。適切な動物の例には、マウス、ラット、ウサギ、サル、モルモット、イヌおよびネコがあるが、これらだけには限られない。使用する動物は、MSのモデルであることが好ましい(たとえば、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)Steinman(1999)Neuron、24:511〜514)。この実施形態に従って、候補物質または対照物質を適切な動物に投与し(たとえば、経口的に、直腸に、または腹膜内もしくは静脈内などに非経口的に)、MSPI、もしくはMSPI関連ポリペプチドの発現、活性、または発現と活性の両方に対する影響を決定する。MSPIまたはMSPI関連ポリペプチドの発現の変化は、前に概略した方法によって評価することができる。
【0256】
他の実施形態では、MSPIまたはMSPI関連ポリペプチドを、ツー・ハイブリッド・アッセイまたはスリー・ハイブリッド・アッセイにおいて「ベイトタンパク質」として使用して、MSPIまたはMSPI関連ポリペプチドと結合または相互作用する他のタンパク質を同定する(たとえば、米国特許第5,283,317号;Zervos他(1993)Cell72:223〜232;Madura他(1993)J.Biol.Chem.268:12046〜12054;Bartel他(1993)Bio/Techniques 14:920〜924;Iwabuchi他(1993)OncoGene 8:1693〜1696;およびWO/94/10300を参照のこと)。当業者によって理解されるように、このような結合タンパク質は、本発明のMSPIによるシグナルの伝達に、たとえば本発明のMSPIに関するシグナル経路の上流または下流要素として関与している可能性がある。
【0257】
表IXには、MSPI、MSPI類似体、MSPI関連ポリペプチド、または前述の任意のものの断片の酵素活性または結合活性を検出または定量化するための、適切なアッセイを記載している科学文献を列挙する。それぞれのこのような参照文献は、その全容をここに取り込んである。好ましい実施形態では、表IXに参照したアッセイを、本明細書に記載したスクリーニングおよびアッセイにおいて使用して、たとえばMSPI、MSPI類似体、またはMSPI関連ポリペプチド、前述の任意のものの断片の活性または発現を調節する候補物質をスクリーニングまたは同定する。
【0258】
【表54】
Figure 2004532386
【0259】
【表55】
Figure 2004532386
【0260】
さらに本発明は、本明細書に記載するように、前に記載したスクリーニング・アッセイによって同定される新規な作用剤、および治療用のその使用を提供する。
【0261】
1.16 MSPIの治療上の使用
本発明は、治療剤を投与することによる、さまざまな疾患および障害の治療または予防を提供する。このような治療剤には、MSPI、MSPI類似体、またはMSPI関連ポリペプチドおよびその誘導体(断片含む)、前述のものに対する抗体、MSPI、MSPI類似体、またはMSPI関連ポリペプチドおよびその断片をコードする核酸、MSPIまたはMSPI関連ポリペプチドをコードする遺伝子に対するアンチセンス核酸、およびMSPIまたはMSPI関連ポリペプチドをコードする遺伝子の調節物質(たとえばアゴニストおよびアンタゴニスト)があるが、これらだけには限られない。本発明の重要な特徴は、MSと関連があるMSPIをコードする遺伝子の同定である。MSを有するMS被験体のCSF中で減少している1つまたは複数のMSPIの機能または発現を促進する治療剤を投与することによって、あるいはMSを有する被験体のCSF中で増大している1つまたは複数のMSPIの機能または発現を低下させる治療剤を投与することによって、MSを治療する(たとえば症状を改善するため、または発症もしくは進行を遅らせるために)、あるいは予防することができる。
【0262】
一実施形態では、それぞれMSPIに特異的に結合する1つまたは複数の抗体を、単独で、あるいは1つまたは複数の追加的な治療剤または処置と組み合わせて投与する。このような治療剤または処置の例には、インターフェロンβ−1b(Betaseron(商標)、Betaferon(商標))、インターフェロンβ−1a(Avonex(商標)、Rebif(商標))、酢酸グラチラマー(Copaxone(商標))、静脈内注射用免疫グロブリン、および急性再発の発生に対する、コルチコステロイドを用いた治療(Noseworthy(1999)Nature 399:suppl.A40〜A47)があるが、これらだけには限られない。
【0263】
抗体などの生物学的産物は、それが投与される被験体と同種であることが好ましい。好ましい実施形態では、ヒトMSPIまたはヒトMSPI関連ポリペプチド、ヒトMSPIもしくはヒトMSPI関連ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、またはヒトMSPIもしくはヒトMSPI関連ポリペプチドに対する抗体を、治療(たとえば症状を改善するため、あるいは発症または進行を遅らせるために)または予防用に、ヒト被験体に投与する。
【0264】
1.16.1 MSの治療および予防
MSは、MSを有している疑いがあるか、あるいはMSを有することが判っているか、あるいはMSが進行している危険がある被験体に、MSを有していない被験体のCSFと比べてMSを有する被験体のCSF中に差別的に存在する、1つまたは複数のMSPIのレベルまたは活性(すなわち機能)、または1つまたは複数のMSFのレベルを調節する(すなわち増大または低下させる)作用剤を投与することによって、治療または予防する。一実施形態では、MSを有している疑いがあるか、あるいはMSを有することが判っているか、あるいはMSが進行している危険がある被験体に、MSを有する被験体のCSF中で低下している、1つまたは複数のMSPIのレベルまたは活性(すなわち機能)、または1つまたは複数のMSFのレベルを上方制御する(すなわち増大させる)作用剤を投与することによって、MSを治療または予防する。他の実施形態では、MSを有する被験体のCSF中で増大している、1つまたは複数のMSPIのレベルまたは活性(すなわち機能)、または1つまたは複数のMSFのレベルを上方制御する、作用剤を投与する。このような作用剤の例には、MSPI、MSPI断片およびMSPI関連ポリペプチド;MSPI、MSPI断片およびMSPI関連ポリペプチドをコードする核酸(たとえば遺伝子治療において使用するためのもの);および酵素活性があるMSPIまたはMSPI関連ポリペプチドに対し、酵素活性を調節することが知られている作用剤または分子があるが、これらだけには限られない。使用することができる他の作用剤、たとえばMSPIアゴニストは、in vitroアッセイを使用して同定することができる。
【0265】
MSを有している疑いがあるか、あるいはMSを有することが判っているか、あるいはMSが進行している危険がある被験体に、MSを有する被験体のCSF中で増大している、1つまたは複数のMSPIのレベルまたは活性、または1つまたは複数のMSFのレベルを下方制御する作用剤を投与することによっても、MSは治療または予防される。他の実施形態では、MSを有する被験体のCSF中で低下している、1つまたは複数のMSPIのレベルまたは活性、または1つまたは複数のMSFのレベルを下方制御する、作用剤を投与する。このような作用剤の例には、MSPIアンチセンス・オリゴヌクレオチド、リボザイム、MSPIを対象とする抗体、MSPIの酵素活性を阻害する作用剤があるが、これらだけには限られない。他の有用な作用剤、たとえばMSPIアンタゴニストおよび小分子MSPIアンタゴニストは、in vitroアッセイを使用して同定することができる。
【0266】
好ましい実施形態では、治療または予防法を、個々の被験体の必要性に合わせる。したがって、特定の実施形態では、1つまたは複数のMSPIのレベルまたは機能、または1つまたは複数のMSFのレベルを助長する作用剤を、前記1つまたは複数のMSPIのレベルまたは機能、または前記1つまたは複数のMSFのレベルが、対照または正常の基準範囲に対して存在しないかあるいは低下している、MSを有している疑いがあるかあるいはMSを有することが判っている被験体に、治療的または予防的に投与する。他の実施形態では、1つまたは複数のMSPIのレベルまたは機能、または1つまたは複数のMSFのレベルを助長する作用剤を、前記1つまたは複数のMSPIのレベルまたは機能、または前記1つまたは複数のMSFのレベルが、対照または正常の基準範囲に対して増大している、MSを有している疑いがあるかあるいはMSを有することが判っている被験体に、治療的または予防的に投与する。他の実施形態では、1つまたは複数のMSPIのレベルまたは機能、または1つまたは複数のMSFのレベルを低下させる作用剤を、前記1つまたは複数のMSPIのレベルまたは機能、または前記1つまたは複数のMSFのレベルが、対照または正常の基準範囲に対して増大している、MSを有している疑いがあるかあるいはMSを有することが判っている被験体に、治療的または予防的に投与する。他の実施形態では、1つまたは複数のMSPIのレベルまたは機能、または1つまたは複数のMSFのレベルを低下させる作用剤を、前記1つまたは複数のMSPIのレベルまたは機能、または前記1つまたは複数のMSFのレベルが、対照または正常の基準範囲に対して低下している、MSを有している疑いがあるかあるいはMSを有することが判っている被験体に、治療的または予防的に投与する。このような作用剤を投与することによる、MSPIの機能またはレベル、MSFのレベルの変化は、たとえば試料(たとえばCSF、血液もしくは尿の試料、または生検組織などの組織試料)を得て、前記MSFのレベルまたは前記MSPIのレベルまたは活性、または前記MSPIをコードするmRNAのレベル、または前述のものの任意の組合せをin vitroでアッセイすることによって、容易に検出することができる。このようなアッセイは、本明細書に記載したように、作用剤の投与の前後に行うことができる。
【0267】
本発明の作用剤には、たとえばMS、MSPIまたはMSFのプロファイルを正常方向に回復させる、小さな有機分子、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸などがあるが、これらだけには限られない。ただし、このような作用剤は、インターフェロンβ−1b(Betaseron(商標)、Betaferon(商標))、インターフェロンβ−1a(Avonex(商標)、Rebif(商標))、酢酸グラチラマー(Copaxone(商標))、静脈内注射用免疫グロブリン、および急性再発の発生に対するコルチコステロイドを用いた治療(Noseworthy(1999)Nature 399:suppl.A40〜A47)は含まないものとする。
【0268】
1.16.2 遺伝子治療
特定の実施形態では、遺伝子治療の目的で、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI関連ポリペプチドの断片をコードする配列を含む核酸を投与して、MSPI機能を助長する。遺伝子治療とは、発現しているかあるいは発現可能な核酸を被験体に投与することである。この実施形態では、核酸はそれがコードしているポリペプチドを生産し、これがMSPI機能を助長することによって治療効果を仲介する。
【0269】
当分野で利用可能な遺伝子治療に関する任意の方法を、本発明に従って使用することができる。代表的な方法を以下に記載する。
【0270】
遺伝子治療の方法のおおまかな概要に関しては、Goldspiel他、1993、Clinical Pharmacy12:488〜505;Wu and Wu、1991、Biotherapy 3:78〜95;Tolstoshev、1993、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573〜596;Mulligan、1993、Science 260:926〜932;およびMorgan and Anderson、1993、Ann.Rev.Biochem.62:191〜217;May、1993、TIBTECH 11(5):155〜215を参照のこと。使用することができる組換えDNA技法の、当分野で一般的に知られている方法は、Ausubel他(eds)、1993、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NY;およびKriegler、1990、Gene Transfer and Expression、A Laboratory Manual、Stockton Press、NY中に記載されている。
【0271】
好ましい態様では、作用剤は、MSPIまたは断片またはそのキメラ・タンパク質をコードする核酸を含み、前記核酸は、MSPIまたは断片またはそのキメラ・タンパク質を適切な宿主中で発現する発現ベクターの一部である。特に、このような核酸は、MSPIコード領域に動作可能に連結しているプロモーターを有しており、前記プロモーターは誘導性または構成性(および場合によっては組織特異的)である。他の特定の実施形態では、その中でMSPIコード配列および任意の他の所望の配列が、ゲノム中の所望の部位で相同的組換えを助長する領域にはさまれて位置している、核酸分子を使用し、したがってMSPI核酸の染色体内発現がもたらされる(Koller and Smithies、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932〜8935;Zijlstra他、1989、Nature 342:435〜438)。
【0272】
被験体中への核酸の送達は直接的なものであってよく、その場合被験体は、核酸または核酸運搬ベクターに直接さらされる。この手法は、in vivo遺伝子治療として知られている。あるいは、被験体中への核酸の送達は間接的なものであってよく、その場合細胞は、核酸を用いてin vitroで最初に形質転換され、次いで被験体に移植される。この手法は、ex vivo遺伝子治療として知られている。
【0273】
特定の実施形態では、核酸をin vivoに直接投与し、この場合、核酸が発現してコードしている産物を生成する。このことは、当分野で知られている任意の無数の方法、たとえば適切な核酸発現ベクターの一部として核酸を構築し、細胞内性のものになるように核酸を投与することによって、たとえば欠陥または弱毒化レトロウイルスまたは他のウイルス・ベクターを使用した感染(米国特許第4,980,286号を参照のこと)によって、裸のDNAを直接注射することによって、マイクロ粒子のボンバードメントを使用すること(たとえば遺伝子ガン、Biolistic(商標)、Dupont)によって、脂質、細胞表面受容体またはトランスフェクト剤でコーティングすることによって、リポソーム、マイクロ粒子またはマイクロ・カプセル中に被包することによって、核に入ることが知られているペプチドとのリンケージ中に核酸を投与することによって、あるいは受容体仲介エンドサイトーシス用のリガンド物質との結合中に核酸を投与すること(たとえばWu and Wu、1987、J.Biol.Chem.262:4429〜4432を参照のこと)によって行うことができ、これを使用して受容体を特異的に発現する細胞タイプを標的化することができる。他の実施形態では、リガンドがエンドソームを破壊するために紡錘状のウイルス・ペプチドを含む、核酸−リガンド複合体を形成することができ、これによって核酸のリソソーム分解が避けられる。他の実施形態では、特異的な受容体を標的化することによって、細胞の特異的な取り込みおよび発現に関して、核酸をin vivoで標的化することができる(たとえばWO92/06180、WO92/22635、WO92/20316、WO93/14188、WO93/20221を参照のこと)。あるいは、核酸を細胞内に導入し、相同的組換えによって、発現用の宿主細胞DNA中に取り込ませることができる(Koller and Smithies、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932〜8935;Zijlstra他、1989、Nature 342:435〜438)。
【0274】
特定の実施形態では、MSPIをコードする核酸を含むウイルス・ベクターを使用する。たとえば、レトロウイルス・ベクターを使用することができる(Miller他、1993、Meth.Enzymol.217:581〜599を参照のこと)。これらのレトロウイルス・ベクターは改変されて、ウイルス・ゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNA中への組み込みに必要ではないレトロウイルスの配列が欠失している。遺伝子治療で使用する、MSPIをコードする核酸をベクターにクローン化し、これによって被験体への遺伝子の送達が容易になる。レトロウイルス・ベクターに関するさらなる詳細は、レトロウイルス・ベクターを使用してmdr1遺伝子を造血幹細胞に送達して、幹細胞を化学療法に対してより耐性があるものにすることを記載している、Boesen他、1994、Biotherapy 6:291〜302中に見出すことができる。遺伝子治療におけるレトロウイルス・ベクターの使用を示す他の参照文献は、Clowes他、1994、J.Clin.Invest.93:644〜651;Kiem他、1994、Blood 83:1467〜1473;Salmons and Gunzberg、1993、Human Gene Therapy 4:129〜141;およびGrossman and Wilson、1993、Curr.Opin.in Genetics and Devel.3:110〜114である。
【0275】
アデノウイルスは、遺伝子治療において使用することができる他のウイルス・ベクターである。アデノウイルスは、遺伝子を気道上皮細胞に送達するための非常に魅力的な媒体である。アデノウイルスは気道上皮細胞に自然に感染し、軽度の疾患を引き起こす。アデノウイルス系の送達系の他の標的は肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスには、非分裂性細胞に感染することができる利点がある。Kozarsky and Wilson、1993、Current Opinion in Genetics and Development 3:499〜503は、アデノウイルス系遺伝子治療の概要を示す。Bout他、1994、Human Gene Therapy 5:3〜10は、アデノウイルス・ベクターを使用して、アカゲザルの気道上皮細胞に遺伝子を送達することを実証した。遺伝子治療においてアデノウイルスを使用する他の例は、Rosenfeld他、1991、Science 252:431〜434;Rosenfeld他、1992、Cell68:143〜155;Mastrangeli他、1993、J.Clin.Invest.91:225〜234;WO94/12649;およびWang他、1995、Gene Therapy 2:775〜783中に見出すことができる。
【0276】
アデノ関連ウイルス(AAV)も、遺伝子治療において使用するために提案されている(Walsh他、1993、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204:289〜300;米国特許第5,436,146号)。
【0277】
遺伝子治療のための他の手法は、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム仲介のトランスフェクション、またはウイルス感染などの方法によって、組織培養中の細胞に遺伝子を導入することに関するものである。通常、導入法は、選択マーカーを細胞に導入することを含む。次いで細胞を選択条件下に置いて、導入した遺伝子を取り込んで発現している細胞を単離する。次いでこれらの細胞を、被験体に送達する。
【0278】
この実施形態では、生成した組換え細胞をin vivoに投与する前に、核酸を細胞に導入する。このような導入は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージ・ベクターを用いた感染、細胞融合、染色体仲介の遺伝子導入、マイクロセル仲介の遺伝子導入、スフェロプラスト融合などだけには限られないが、これらを含めた、当分野で知られている任意の方法によって行うことができる。外来性遺伝子を細胞に導入するための、多数の技法が当分野で知られており(たとえばLoeffler and Behr、1993、Meth.Enzymol.217:599〜618;Cohen他、1993、Meth.Enzymol.217:618〜644;Cline、1985、Pharmac.Ther.29:69〜92を参照のこと)、本発明に従ってこれらを使用することができる。ただし、レシピエント細胞の必要な発生および生理学的機能は害されないものとする。技法によって、核酸の細胞への安定した導入がもたらされなければならず、その結果核酸は細胞によって発現可能であり、その細胞の子孫によって遺伝可能かつ発現可能であることが好ましい。
【0279】
生成した組換え細胞は、当分野で知られているさまざまな方法によって、被験体に送達することができる。好ましい実施形態では、上皮細胞をたとえば皮下に注射する。他の実施形態では、組換え皮膚細胞を、皮膚移植片として被験体に施すことができる。組換え血液細胞(たとえば造血幹細胞または始原細胞)を、静脈内に投与することが好ましい。使用に関して想定される細胞の量は、被験体の所望の効果、状態などに依存し、これは当業者によって決定することができる。
【0280】
遺伝子治療の目的で核酸を導入することができる細胞は、任意の所望の入手可能な細胞タイプを含み、これにはニューロン細胞、グリア細胞(たとえば希突起膠細胞または星状膠細胞)、上皮細胞、内皮細胞、ケラチン生成細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒などの血液細胞、たとえば骨髄、へその緒の血液、末梢血液、または胎児肝臓から得られる、さまざまな幹細胞または始原細胞、特に造血幹細胞または始原細胞があるが、これらだけには限られない。
【0281】
好ましい実施形態では、遺伝子治療用に使用する細胞は、治療する被験体に自己由来するものである。
【0282】
遺伝子治療において組換え細胞を使用する実施形態では、MSPIをコードする核酸を、それが細胞またはその子孫によって発現可能であるように、細胞に導入し、次いで組換え細胞を治療効果のためにin vivoに投与する。特定の実施形態では、幹細胞または始原細胞を使用する。単離しin vitroで保つことができる任意の幹細胞または始原細胞を、本発明のこの実施形態に従って使用することができる(たとえばWO94/08598;Stemple and Anderson、1992、Cell71:973〜985;Rheinwald、1980、Meth.Cell Bio.21A:229;およびPittelkow and Scott、1986、Mayo Clinic Proc.61:771を参照のこと)。
【0283】
特定の実施形態では、遺伝子治療の目的で導入される核酸は、コード領域に動作可能に連結した誘導性プロモーターを含み、したがってこの核酸の発現は、転写の適切な誘導物質の有無を制御することによって制御可能である。
【0284】
MSPIをコードするDNAの直接的な注入は、たとえば米国特許第5,589,466号に記載された技法に従って行うこともできる。これらの技法は、「裸のDNA」、すなわちリポソーム、細胞、または任意の他の物質、および適切な担体がない、単離したDNA分子を注入することを含む。タンパク質をコードし適切なプロモーターに動作可能に連結したDNAを注入することによって、注入部位の近くの細胞中でタンパク質が生成され、注入されたDNAによってコードされているタンパク質に対する免疫応答が被験体中で誘導される結果となる。好ましい実施形態では、(a)MSPIをコードするDNAおよび(b)プロモーター、を含む裸のDNAを被験体に注入して、MSPIに対する免疫応答を誘導する。
【0285】
1.16.3 MSを治療するためのMSPIの阻害
本発明の一実施形態では、MSを有していない被験体の体液試料と比べてMSを有する被験体の体液試料中で高まっている、1つまたは複数のMSPIのレベルおよび/または機能を相殺する(阻害する)作用剤を投与することによって、MSを治療または予防する。この目的に有用な作用剤には、抗MSPI抗体(およびその結合領域を含む断片および誘導体)、MSPIアンチセンスまたはリボザイム核酸、および相同的組換えによって内生MSPI機能を「ノックアウトする」ために使用する、機能不全MSPIをコードする核酸(たとえばCapecchi、1989、Science 244:1288〜1292を参照のこと)があるが、これらだけには限られない。MSPI機能を阻害する他の作用剤は、知られているin vitroアッセイ、たとえば試験物質がMSPIの他のタンパク質または結合パートナーへの結合を阻害する能力、または知られているMSPI機能を阻害する能力に関するアッセイを使用することによって、同定することができる。このような阻害はin vitroまたは細胞培養においてアッセイされることが好ましいが、遺伝的アッセイを使用することもできる。好ましい技術を使用して、作用剤の投与の前後の、MSPIのレベルを検出することもできる。以下に詳細に記載したように、適切なin vitroまたはin vivoアッセイを使用して、特異的な作用剤の効果、およびその投与によって冒された組織の治療が示されるかどうかを決定することが好ましい。
【0286】
特定の実施形態では、MSPI機能を阻害する作用剤を、MSを有していない被験体のCSFまたは所定の基準範囲と比べて、増大したCSFレベルまたはMSPIの機能的活性が検出される(たとえば正常レベルまたは所望レベルより高い)被験体に、治療的または予防的に投与する。前に概略したように、当分野の方法基準を使用して、MSPIレベルまたは機能の増大を測定することができる。好ましいMSPI阻害組成物には小分子、すなわち1000ダルトン未満の分子がある。このような小分子は、本明細書に記載したスクリーニング法によって同定することができる。
【0287】
他の実施形態では、MSPIがCSF中で低下しているのを見ることができ、この場合この低下は、他の区画中でのMSPIレベルの増大、たとえば非制限的にではあるが、CSFへの分泌ではなく、細胞、亜細胞区画、体液または組織中のMSPIの封鎖を表す。このような条件下では、MSPI機能を阻害する作用剤を、MSを有していない被験体のCSFまたは所定の基準範囲と比べて、低下したCSFレベルまたはMSPIの機能的活性が検出される(たとえば正常レベルまたは所望レベルより高い)被験体に、治療的または予防的に投与する。
【0288】
1.16.4 MSPIのアンチセンス制御
特定の実施形態では、MSPI発現が、MSPIアンチセンス核酸を使用することによって阻害される。本発明は、MSPIまたはその一部分をコードする遺伝子またはcDNAに対してアンチセンスである少なくとも6個のヌクレオチドを含む核酸の、治療的または予防的使用を提供する。本明細書で使用するように、MSPI「アンチセンス」核酸とは、いくらかの配列相補性によって、MSPIをコードするRNA(好ましくはmRNA)の一部分とハイブリダイズすることができる核酸のことである。アンチセンス核酸は、MSPIをコードするmRNAのコードおよび/または非コード領域と相補的であってよい。このようなアンチセンス核酸は、MSPI発現を阻害する作用剤として有用性があり、MSの治療または予防において使用することができる。
【0289】
本発明のアンチセンス核酸は、二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチド、RNAまたはDNAあるいはこれらの改変体または誘導体であり、これらは細胞に直接投与することができ、外生の導入された配列の転写によって細胞内で生成することができる。
【0290】
さらに本発明は、以下に記載する薬剤として許容される担体中に有効量の本発明のMSPIアンチセンス核酸を含む、薬剤組成物を提供する。
【0291】
他の実施形態では本発明は、原核または真核細胞中でMSPI核酸配列の発現を阻害するための方法であって、本発明のMSPIアンチセンス核酸を含む組成物を細胞に有効量与えることを含む方法を提供する。
【0292】
MSPIアンチセンス核酸およびその使用は、以下に詳細に記載する。
【0293】
1.16.5 MSPIアンチセンス核酸
MSPIアンチセンス核酸は、少なくとも6個のヌクレオチドであり、6〜約50オリゴヌクレオチド範囲のオリゴヌクレオチドであることが好ましい。特定の態様では、オリゴヌクレオチドは少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも100個のヌクレオチド、あるいは少なくとも200個のヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドはDNAまたはRNA、あるいはこれらのキメラ混合物または誘導体または改変型であってよく、一本鎖または二本鎖であってよい。オリゴヌクレオチドは、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格において改変することができる。オリゴヌクレオチドは、ペプチド、細胞膜(たとえばLetsinger他、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553〜6556;Lemaitre他、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.84:648〜652;WO88/09810を参照のこと)または血液脳関門(たとえばWO89/10134を参照のこと)を通した運搬を助長する作用剤、ハイブリダイゼーション誘発開裂剤(たとえばKrol他、1988、Bio Techniques 6:958〜976を参照のこと)などの他の付属群または挿入剤(たとえばZon、1988、Pharm.Res.5:539〜549を参照のこと)などの他の付属群を含むことができる。
【0294】
本発明の好ましい態様では、好ましくは一本鎖DNAのMSPIアンチセンス・オリゴヌクレオチドを提供する。オリゴヌクレオチドは、当分野で一般的に知られている置換基を用いて、その構造上の任意の位置で修飾することができる。
【0295】
MSPIアンチセンス・オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの以下の修飾塩基部分:5−フルオロウラシル、5−ブロモロウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、偽ウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、2,6−ジアミノプリン、および他の塩基類似体を含むことができる。
【0296】
他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾糖部分、たとえば以下の糖部分、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、ヘキソースの1つを含む。
【0297】
他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの以下の修飾リン酸骨格、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミドチオエート、ホスホラミデート、ホスホラジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、ホルムアセタール、またはホルムアセタールの類似体を含む。
【0298】
他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、α−アノマー・オリゴヌクレオチドである。α−アノマー・オリゴヌクレオチドは、相補的RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成し、その内部では、通常のα単位とは反対に、鎖は互いに平行している(Gautier他、1987、Nucl.Acids Res.15:6625〜6641)。
【0299】
オリゴヌクレオチドは、他の分子、たとえばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、またはハイブリダイゼーション誘発開裂剤に結合することができる。
【0300】
本発明のオリゴヌクレオチドは、当分野で知られている標準的な方法、たとえば自動DNA合成装置(Biosearch、Applied Biosystemsなどから市販されているものなど)を使用することによって、合成することができる。例として、ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチドは、Stein他の方法(1988、Nucl.Acids Res.16:3209)によって合成することができ、メチルホスホネート・オリゴヌクレオチドは、微細孔性ガラス・ポリマー支持体を使用することによって作製することができる(Sarin他、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7448〜7451)。
【0301】
特定の実施形態では、本発明のMSPIアンチセンス核酸を、外来性配列からの転写によって、細胞内で生成させる。たとえば、ベクターが細胞によって取り込まれるように、ベクターをin vivoに導入することができ、その細胞内では、ベクターまたはその一部分が転写され、本発明のアンチセンス核酸(RNA)が生成される。このようなベクターは、MSPIアンチセンス核酸をコードする配列を含むと思われる。このようなベクターは、それが転写されて所望のアンチセンスRNAを生成することができる限りは、エピソームであり続けるか、あるいは染色体に組み込まれることができる。このようなベクターは、当分野の標準的な組換えDNA技術によって構築することができる。ベクターは、哺乳動物細胞中で複製および発現用に使用される、プラスミド、ウイルス、または当分野で知られている他のものであってよい。MSPIアンチセンスRNAをコードする配列の発現を、当分野で知られている任意のプロモーターにより行って、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞中で作用させることができる。このようなプロモーターは、誘導性または構築性であってよい。このようなプロモーターの例は、前で概説している。
【0302】
本発明のアンチセンス核酸は、MSPIをコードする遺伝子、好ましくはMSPIをコードするヒト遺伝子の、RNA転写物の少なくとも一部分と相補的な配列を含む。しかしながら絶対的な相補性は、好ましいが必要とはされない。本明細書で名付ける「RNAの少なくとも一部分と相補的な」配列とは、厳しい条件(たとえば上で定義した、非常に厳しい条件または適度に厳しい条件)下でRNAとハイブリダイズして、安定した二重らせんを形成することができる充分な相補性を有する配列を意味し、二本鎖MSPIアンチセンス核酸の場合、したがって二重らせんDNAの一本鎖を試験してもよく、あるいは三重らせん形成をアッセイしてもよい。ハイブリダイズするための能力は、アンチセンス核酸の相補性の度合いおよび長さの両方に依存するであろう。一般に、ハイブリダイズする核酸が長くなるほど、MSPIをコードするRNAとの塩基のミスマッチをより多く含む可能性があり、それでもなお安定した二重らせん(あるいは三重らせんの場合もある)を形成することができる。当業者は許容されるミスマッチの度合いを、標準的な手順を使用することによって確認して、ハイブリダイズした複合体の融点を決定することができる。
【0303】
1.16.6 MSPIアンチセンス核酸の治療的使用
MSを有しているかMSに罹患している疑いがある被験体のCSF中で、標的MSPIが過剰発現しているとき、MSPIアンチセンス核酸を使用して、MSを治療または予防することができる。好ましい実施形態では、一本鎖DNAアンチセンスMSPIオリゴヌクレオチドを使用する。
【0304】
MSPIをコードするRNAを発現または過剰発現する細胞タイプは、当分野で知られているさまざまな方法によって同定することができる。このような細胞タイプには、白血球(たとえば好中球、マクロファージ、単球)、および常駐細胞(たとえば星状膠細胞、グリル細胞、ニューロン細胞、および上皮細胞)があるが、これらだけには限られない。このような方法には、MSPI特異的な核酸とのハイブリダイゼーション(たとえばノーザン・ハイブリダイゼーション、ドットブロット・ハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーションによる)、細胞タイプからのRNAがin vitroでMSPIに翻訳される能力を観察すること、イムノアッセイなどがあるが、これらだけには限られない。好ましい態様では、被験体からの1次組織を、たとえば免疫細胞化学法またはin situハイブリダイゼーションによって、治療前にMSPI発現に関してアッセイすることができる。
【0305】
薬剤として許容される担体中に有効量のMSPIアンチセンス核酸を含む、本発明の薬剤組成物を、MSを有する被験体に投与することができる。
【0306】
MSの治療において有効であろうMSPIアンチセンス核酸の量は、標準的な臨床技法によって決定することができる。
【0307】
特定の実施形態では、1つまたは複数のMSPIアンチセンス核酸を含む薬剤組成物を、リポソーム、マイクロ粒子、またはマイクロ・カプセルを介して投与する。本発明のさまざまな実施形態では、このような組成物を使用して、MSPIアンチセンス核酸を徐放することができる。
【0308】
1.16.7 阻害リボザイムおよび三重らせん手法
他の実施形態では、MSPIをコードする遺伝子配列およびよく知られている遺伝子「ノックアウト」を使用すること、あるいはMSPIの遺伝子発現を低下させるためのリボザイムまたは三重らせん法によって、MSPIのレベルまたはMSPIの活性を低下させることにより、MSの症状を改善することができる。この手法では、リボザイムまたは三重らせん分子を使用して、MSPIをコードする遺伝子の活性、発現または合成を調節し、したがってMSの症状を改善する。突然変異または非突然変異遺伝子の発現を低下させるかあるいは阻害するために、このような分子を設計することができる。このような分子を生成および使用するための技法は、当業者によく知られている。
【0309】
MSPIをコードする遺伝子mRNA転写物を触媒的に開裂させるように設計されているリボザイム分子を使用して、標的遺伝子mRNAの翻訳および、その結果の遺伝子産物の発現を防ぐことができる(たとえばWO90/11364;Sarver他、1990、Science247:1222〜1225を参照のこと)。
【0310】
リボザイムは、RNAの特異的開裂を触媒することができる、酵素RNA分子である。(概要に関しては、Rossi、1994、Current Biology 4、469〜471を参照のこと)。リボザイム作用の機構は、リボザイム分子の相補的な標的RNAへの配列特異的なハイブリダイゼーション、次に内ヌクレオチド鎖分解性の開裂事象を含む。リボザイム分子の組成物は標的遺伝子のmRNAと相補的な1つまたは複数の配列を含まなければならず、mRNAの開裂を担うよく知られている触媒配列を含まなければならない。この配列に関しては、たとえば参照によってその全容を本明細書に取り込んである、米国特許第5,093,246号を参照のこと。
【0311】
部位特異的な認識配列においてmRNAを開裂させるリボザイムを使用して、MSPIをコードするmRNAを破壊することができるが、ハンマーヘッド・リボザイムを使用することが好ましい。ハンマーヘッド・リボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成するフランキング領域によって示される位置でmRNAを開裂させる。唯一の要件は、標的mRNAが2塩基の以下の配列:5’−UG−3’を有することである。ハンマーヘッド・リボザイムの構築および生成は当分野でよく知られており、Myers、1995、Molecular Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers、New York、(特に833ページ図4を参照のこと)、およびHaseloff and Gerlach、1988、Nature、334、585〜591中により詳細に記載されており、これらはそれぞれ参照によってその全容を本明細書に取り込んである。
【0312】
開裂認識部位がMSPIをコードするmRNAの5’端の近くに位置し、すなわち効率を高め、非機能性mRNA転写物の細胞内蓄積を最小限にするように、リボザイムを操作することが好ましい。
【0313】
本発明のリボザイムは、RNAエンドリボヌクレアーゼ(本明細書では以後は「Cechタイプのリボザイム」)、例えばTetrahymena thermophila中に天然に存在し(IVS、またはL−19IVS RNAとして知られている)、Thomas Cechおよび共同研究者によって広く記載されている(Zaug他、1984、Science、224、574〜578;Zaug and Cech、1986、Science、231、470〜475、Zaug他、1986、Nature、324、429〜433;University Patents Incによる公開国際特許出願No.WO88/04300;Been and Cech、1986、Cell、47、207〜216)、RNAエンドリボヌクレアーゼなども含む。Cechタイプのリボザイムは8つの塩基対活性部位を有しており、これが標的RNA配列にハイブリダイズし、その後標的RNAの開裂が起こる。本発明は、MSPIをコードする遺伝子中に存在する8つの塩基対活性部位配列を標的とする、Cechタイプのリボザイムを含む。
【0314】
アンチセンス手法と同様に、リボザイムは改変型オリゴヌクレオチド(たとえば安定性、標的化などが改善されている)から構成されていてよく、in vivoでMSPIを発現する細胞にこれを送達しなければならない。好ましい送達法は、強力な構成的polIIIまたはpolIIプロモーターの制御下で、リボザイムを「コードする」DNA構築体を使用することを含み、その結果トランスフェクトされた細胞は、MSPIをコードする内生mRNAを破壊するのに充分な量のリボザイムを生成し、翻訳を阻害するであろう。リボザイムはアンチセンス分子と異なり触媒的であるので、有効性に関してはより低い細胞内濃度が必要とされる。
【0315】
内生MSPI発現は、標的化した相同的組換えを使用して、MSPIをコードする遺伝子、またはこのような遺伝子のプロモーターを不活性化または「ノックアウトする」ことによって、低下させることもできる(たとえば、それぞれ参照によってその全容を本明細書に取り込んである、Smithies他、1985、Nature、317:230〜234;Thomas and Capecchi、1987、Cell、51:503〜512;Thompson他、1989、Cell、5:313〜321;およびZijlstra他、1989、Nature、342:435〜438を参照のこと)。たとえば、内因性遺伝子(MSPIをコードする遺伝子のコード領域または制御領域)と相同なDNAにはさまれた、非機能性MSPI(または完全に無関係なDNA配列)をコードする突然変異遺伝子を、選択マーカーおよび/または負の選択マーカーと共に、あるいはこれら無しで使用して、in vivoで標的遺伝子を発現する細胞をトランスフェクトすることができる。標的化した相同的組換えによってDNA構築体を挿入することにより、標的遺伝子の不活性化がもたらされる。このような手法は農業分野に非常に適しており、この場合ES(胚幹)細胞に対する改変を使用して、不活性な標的遺伝子を有する動物の子孫を発生させることができる(たとえば、上記のThomas and Capecchi、1987、およびThompson、1989を参照のこと)。しかしながら、この手法は、組換えDNA構築体は、適切なウイルス・ベクターを使用して、in vivoの必要な部位に直接投与されるか、そこを標的とするものという条件で、ヒトにおける使用に適合させることができる。
【0316】
あるいは、MSPIをコードする遺伝子の内生発現を、遺伝子の調節領域(すなわち遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー)と相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的化して、身体中の標的細胞内のMSPIをコードする遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成することによって、低下させることができる。(Helene、1991、Anticancer Drug Des.、6(6)、569〜584;Helene他、1992、Ann.N.Y.Acad.Sci.、660、27〜36;およびMaher、1992、Bioassays14(12)、807〜815を概略的に参照のこと)。
【0317】
転写を阻害するための三重らせん構造の形成において使用される核酸分子は、一本鎖でなければならず、デオキシヌクレオチドから構成されていなければならない。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、Hoogsteenの塩基対の法則による三重らせん構造の形成を助長するように設計されていなければならず、この法則は一般に、二重らせんの1本の鎖上に存在するプリンまたはピリミジンの相当な大きさの範囲を必要とする。ヌクレオチド配列はピリミジン系のものであってよく、これによって生成する三重らせんの3本の関連鎖にわたって、TATおよびCGC+トリプレットが生成するであろう。ピリミジンが豊富な分子によって、その鎖を平行な方向にある二重らせんの一本鎖のプリンが豊富な領域と相補的な塩基が与えられる。さらに、プリンが豊富である、たとえばG残基の範囲を含む、核酸分子を選択することができる。これらの分子はGC対が豊富なDNA二重らせんと三重らせんを形成し、その大部分のプリン残基は標的の二重らせんの1本の鎖上に位置し、三重らせんの3本の鎖にわたってGGCトリプレットが生成する。
【0318】
あるいは、三重らせん形成用に標的化される可能性がある配列は、いわゆる「スイッチバック」核酸分子を作製することによって増大させることができる。スイッチバック分子は、別の5’−3’、3’−5’方式で、これらが二重らせんの第1の鎖、次いでもう1本の鎖と塩基対を形成し、二重らせんの1本の鎖上に存在するプリンまたはピリミジンの相当な大きさの範囲の必要性をなくすように合成される。
【0319】
本明細書に記載するアンチセンス、リボザイム、または三重らせん分子を利用して、突然変異遺伝子の発現を阻害する場合、MSPIの正常な対立遺伝子によって生成されるmRNAの転写(三重らせん)または翻訳(アンチセンス、リボザイム)を技法が効率的に低下または阻害し、存在するMSPIの濃度が正常な表現型に必要とされる濃度よりも低くなる状況が生じる可能性があることが考えられる。このような場合、MSPIをコードする遺伝子の活性の実質的に正常なレベルが保たれることを確実にするために、遺伝子治療を使用して、MSPIをコードしておりそれを発現させ、正常な遺伝子活性を示し、どのようなアンチセンス、リボザイム、または三重らせん処理を利用しても影響を受ける配列は含まない核酸分子を、細胞に導入することができる。あるいは、遺伝子が細胞外タンパク質をコードしている場合は、正常なMSPIを同時投与して、MSPI活性の必要なレベルを保つことができる。
【0320】
本発明のアンチセンスRNAおよびDNA、リボザイム、または三重らせん分子は、前に論じたようなDNAおよびRNA分子を合成するための、当分野で知られている任意の方法によって作製することができる。これらの方法には、当分野でよく知られているオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドを化学的に合成するための技法、たとえば固相ホスホラミダイト化学合成などがある。あるいはRNA分子を、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列の、in vitroおよびin vivoでの転写によって生成させることができる。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼ・プロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼ・プロモーターを取り込んでいる、非常にさまざまなベクターに取り込ませることができる。あるいは、使用するプロモーターに応じて、アンチセンスRNAを構成的あるいは誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築体を、細胞株中に安定的に導入することができる。
【0321】
1.17 治療剤または予防剤に関するアッセイ
本発明は、薬剤の発見において使用して、MSを治療または予防するための作用剤の有効性を同定または確認するためのアッセイも提供する。候補物質を、MSを有する被験体のMSFまたはMSPIのレベルをMSを有していない被験体で見られるレベルに回復させる能力、またはMSの実験動物モデルと類似の変化を生じさせる能力に関してアッセイすることができる。MSを有する被験体のMSFまたはMSPIのレベルをMSを有していない被験体で見られるレベルに回復させることができるか、あるいはMSの実験動物モデルと類似の変化を生じさせることができる作用剤は、他の薬剤を発見するためのリード物質として使用することができ、あるいは治療的に使用することができる。MSFおよびMSPIの発現は、好ましい技術、イムノアッセイ、ゲル電気泳動、次に視覚化、MSPI活性の検出、または本明細書で教示しているか当業者に知られている任意の他の方法によってアッセイすることができる。このようなアッセイを使用して、臨床的調査または薬剤開発において、候補薬剤をスクリーニングすることができ、この場合豊富なMSFまたはMSPIが、臨床疾患に関する代理マーカーとして働くことができる。
【0322】
さまざまな特定の実施形態では、in vitroアッセイを、被験体の疾患と関連がある細胞タイプの代表的な細胞に関して行って、作用剤がそのような細胞タイプに対して望ましい影響があるかどうかを決定することができる。
【0323】
治療に使用する作用剤は、ヒトで試験する前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含むが、それらに限らない適切な動物モデル系で試験することができる。in vivoでの試験に関しては、ヒトに投与する前に、当分野で知られている任意の動物モデル系を使用することができる。MSの動物モデルの例には、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)(Steinman(1999)Neuron、24:511〜514)だけには限られないが、これがある。本発明の開示に基づいて、1つまたは複数のMSPIをコードする1つまたは複数の遺伝子の「ノックアウト」突然変異体を用いて、トランスジェニック動物を生成できることも当業者には明白である。遺伝子の「ノックアウト」突然変異体とは、突然変異した遺伝子を発現させない、あるいは異常な形または低レベルで発現させる突然変異体であり、したがって遺伝子産物に関する活性は、ほとんど存在しないかあるいは全く存在しない。トランスジェニック動物は哺乳動物であることが好ましく、トランスジェニック動物はマウスであることがより好ましい。
【0324】
一実施形態では、MSPIの発現を調節する候補物質を、ヒト以外の動物(たとえばマウス、ラット、サル、ウサギ、およびモルモット)において、好ましくはMSPIを発現するMS用のヒト以外の動物モデルにおいて同定する。この実施形態に従って、候補物質または対照物質を動物に投与し、1つまたは複数のMSPIの発現に対する候補物質の影響を決定する。1つのMSPI(または複数のMSPI)の発現を変化させる候補物質は、候補物質で処理した動物または動物群中の選択した1つまたは複数のMSPI(またはそれをコードするmRNA)のレベルを、対照物質で処理した動物または動物群中のMSPIまたはmRNAのレベルと比較することによって、同定することができる。当業者に知られている技法を使用して、たとえばin situハイブリダイゼーションにおいて、mRNAおよびタンパク質レベルを決定することができる。動物を殺傷して、あるいは殺傷せずに、候補物質の影響をアッセイすることができる。
【0325】
他の実施形態では、MSPIまたは生物学的に活性があるその一部分の活性を調節する候補物質を、ヒト以外の動物(たとえばマウス、ラット、サル、ウサギ、およびモルモット)において、好ましくはMSPIを発現するMS用のヒト以外の動物モデルにおいて同定する。この実施形態に従って、候補物質または対照物質を動物に投与し、MSPIの活性に対する候補物質の影響を決定する。1つのMSPI(または複数のMSPI)の活性を変化させる候補物質は、候補物質で処置した動物および候補物質で処置した動物をアッセイすることによって、同定することができる。MSPIの活性は、MSPIの細胞の第2のメッセンジャー(たとえば細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘導を検出すること、MSPIまたはその結合パートナーの触媒または酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(たとえば、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質などの検出可能なマーカーをコードする核酸に動作可能に連結している、本発明のMSPIに対応する制御要素)の誘導を検出すること、または細胞応答(たとえば、細胞分化または細胞増殖)を検出することによって、評価することができる。当業者に知られている技法を利用して、MSPIの活性の変化を検出することができる。(たとえば、米国特許第5,401,639号を参照のこと)。
【0326】
他の実施形態では、1つのMSPI(または複数のMSPI)のレベルまたは発現を調節する候補物質を、MSを有するヒト、好ましくは重度のMSを有するヒトにおいて同定する。この実施形態に従って、候補物質または対照物質をヒト被験体に投与し、MSPI発現に対する候補物質の影響を、生物試料(たとえばCSF、血清、血漿、または尿)中のMSPIまたはこれをコードするmRNAの発現を分析することによって決定する。MSPIの発現を変化させる候補物質は、対照物質で処置した被験体または被験体群中のMSPIまたはこれをコードするmRNAのレベルと、候補物質で処置した被験体または被験体群中のそれを比較することによって、同定することができる。あるいは、MSPIの発現の変化は、候補物質の投与の前後に、被験体または被験体群中のMSPIまたはこれをコードするmRNAのレベルを比較することによって、同定することができる。当業者に知られている技法を使用して、生物試料を得て、そのmRNAまたはタンパク質の発現を分析することができる。たとえば、本明細書に記載する好ましい技術を使用して、MSPIのレベルの変化を評価することができる。
【0327】
他の実施形態では、1つのMSPI(または複数のMSPI)の活性を調節する候補物質を、MSを有するヒト、好ましくは重度のMSを有するヒトにおいて同定する。この実施形態では、候補物質または対照物質をヒト被験体に投与し、MSPIの活性に対する候補物質の影響を決定する。MSPIの活性を変化させる試験用候補物質である化合物は、対照物質で処置した被験体からの生物試料と、候補物質で処置した被験体からの試料を比較することによって、同定することができる。あるいは、MSPIの活性の変化は、候補物質の投与の前後に、被験体または被験体群中のMSPIの活性を比較することによって、同定することができる。MSPIの活性は、生物試料(たとえばCSF、血清、血漿、または尿)中のMSPIの細胞シグナル変換経路誘導(たとえば細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)、MSPIまたはその結合パートナーの触媒または酵素活性、または細胞応答、たとえば細胞分化または細胞増殖を検出することによって、評価することができる。当業者に知られている技法を使用して、MSPIの下流エフェクターの誘導の変化、または細胞応答の変化を検出することができる。たとえば、RT−PCRを使用して、下流エフェクターの誘導の変化を検出することができる。
【0328】
好ましい実施形態では、対照被験体(たとえばMSを有していないヒト)中で検出されるレベルに対するMSPIのレベルまたは発現を調節する候補物質を、さらなる試験または治療用途用に選択する。他の好ましい実施形態では、対照被験体(たとえばMSを有していないヒト)中で見られる活性に対するMSPIの活性を変化させる候補物質を、さらなる試験または治療用途用に選択する。
【0329】
他の実施形態では、MSと関連がある1つまたは複数の症状の重度を低下させる候補物質を、MSを有するヒト被験体、好ましくは重度のMSを有する被験体において同定する。この実施形態に従って、候補物質または対照物質を被験体に投与し、MSの1つまたは複数の症状に対する候補物質の影響を決定する。1つまたは複数の症状を低下させる候補物質は、対照物質で処置した被験体と候補物質で処置した被験体を比較することによって、同定することができる。MSに精通している医師に知られている技法を使用して、候補物質がMSと関連がある1つまたは複数の症状を低下させるかどうかを決定することができる。たとえば、臨床的再発率、新しいMRI病巣の進行を低下させ、障害の進行を遅らせ、臨床的回復の速度を高め、MRIの血液−脳関門の状態を回復させ、あるいはMRI病巣の容積の増大を遅らせ、MSを有する被験体の希突起膠細胞、軸再有髄化を保護する候補物質は、MSを有する被験体の治療に有益であると思われる。
【0330】
好ましい実施形態では、MSを有するヒトにおいて、MSと関連がある1つまたは複数の症状の重度を低下させる候補物質を、さらなる試験または治療用途用に選択する。
【0331】
1.18 治療および予防組成物、およびそれらの使用
本発明は、治療(および予防)の方法であって、有効量の活性物質を被験体に投与することを含む方法を提供する。本明細書で使用する「活性物質」は、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、抗MSPI抗体、抗MSPI抗体の断片、およびMSPIの発現を調節する作用剤、たとえばMSPIのアゴニストおよびアンタゴニストを含む。好ましい態様では、作用剤は実質的に精製されている(たとえば、効果を制限するかあるいは望ましくない副作用を生み出す物質は実質的に含まない)。被験体は好ましくは動物であり、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0332】
作用剤が核酸を含むときに使用することができる処方物および投与法は、前に記載している。他の適切な処方物および投与経路は、以下に記載する。本明細書で使用する「薬剤組成物」は、活性物質、場合によっては薬剤として許容される担体を含む。
【0333】
たとえば、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロ・カプセルの被包、作用剤を発現することができる組換え細胞、受容体仲介エンドサイトーシス(たとえばWu and Wu、1987、J.Biol.Chem.262:4429〜4432を参照のこと)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築などの、さまざまな送達系が知られており、これらを使用して本発明の作用剤を投与することができる。導入法は、経腸的または非経口的であってよく、これには皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路があるが、これらだけには限られない。作用剤は任意の好都合な経路、たとえば注入または多量注射によって、上皮または粘膜皮膚の内層(たとえば口腔粘膜、直腸および腸管粘膜など)を介した吸収によって投与することができ、他の生物学的に活性がある作用剤と共に投与することができる。投与は全身性または局所性であってよい。さらに、心室内およびくも膜下注入を含めた任意の適切な経路によって、本発明の薬剤組成物を中枢神経系に導入することが望ましいと思われ、心室内注入は、たとえばオマヤ・レザバーなどのレザバーに結合させた心室内用カテーテルによって、容易にすることができる。たとえば吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル剤を含む処方物を使用することによって、肺への投与も行うことができる。
【0334】
特定の実施形態では、治療を必要とする領域に局所的に、本発明の薬剤組成物を投与することが望ましいと思われる。このことは、たとえば非制限的に、手術中の局所的注入によって、局所的施用、たとえば注入によって、カテーテルによって、あるいはインプラントによって行うことができ、前記インプラントは多孔性、非多孔性、またはシアラスティック(sialastic)膜のような膜、または繊維を含めたゲル状物質である。一実施形態では投与は、CSFへの、または神経が退化した部位(またはその前の部位)での、あるいはCNS組織への直接的な注入によるものであってよい。
【0335】
他の実施形態では、作用剤を小胞、特にリポソームに送達することができる(たとえばLanger、1990、Science 249:1527〜1533;Treat他、in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez−Berestein and Fidler(eds.)、Liss New York、pp.353〜365(1989);Lopez−Berestein、ibid.、pp.317〜327を参照のこと、同書全般を参照のこと)。
【0336】
他の実施形態では、放出制御系で作用剤を送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer上記、Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.End.14:201;Buchwald他、1980、Surgery 88:507;Saudek他、1989、N.Engl.J.Med.321:574を参照のこと)。他の実施形態では、ポリマー物質を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release、Langer and Wise(eds.)、CRC Pres.、Boca Raton、Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance、Smolen and Ball(eds.)、Wiley New York(1984);Ranger and Peppas、J.1983、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照のこと。Levy他、1985、Science 228:190;During他、1989、Ann.Neurol.25:351、Howard他、1989、J.Neurosurg71:105も参照のこと)。他の実施形態では、放出制御系を治療標的、たとえばCNSの近くに置くことができ、ごくわずかな全身用量が必要とされる(たとえばGoodson、in Medical Applications of Controlled Release、上記、vol.2、pp.115〜138(1984))。
【0337】
他の放出制御系は、Langer(1990、Science 249:1527〜1533)による概説中に論じられている。
【0338】
本発明の作用剤がタンパク質をコードする核酸である、特定の実施形態では、上記のように核酸をin vivoに投与することができる。
【0339】
本発明は、薬剤組成物も提供する。このような組成物は、治療上有効量の作用剤、および薬剤として許容される担体を含む。特定の実施形態では、「薬剤として許容される」という語は、連邦または州政府の制御機関によって認められているか、あるいは米国薬局方、または動物、特にヒトにおける使用に関する、他の一般に認められている薬局方中に列挙されていることを意味する。「担体」という語は、治療物質がそれと共に投与される、希釈剤、アジュバント、添加剤、またはビヒクルのことである。このような薬剤担体は、水、および石油、動物、野菜または合成源の油を含めた油など、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、胡麻油などの、滅菌された液体であってよい。薬剤組成物を静脈内に投与するときは、水が好ましい担体である。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液を、液状担体、特に注射溶液として使用することもできる。適切な医薬添加剤には澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦、米、小麦粉、チョーク、シリカ・ゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキム・ミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどがある。望むならば組成物は、微量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤も含んでよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、ピル、カプセル、粉末、徐放性処方物などの形をとることができる。組成物は、伝統的な結合剤および担体、例えばトリグリセリドなどと共に、坐薬として調合することができる。経口処方物は、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。適切な薬剤担体の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Ed.E.W.Martin、ISBN、0−912734−04−3、Mack Publishing Co.中に記載されている。このような組成物は、好ましくは精製された形である治療上有効量の作用剤、および適量の担体を含んでおり、したがって被験体に正確に投与するための形を与える。処方物は、投与の形式に適合させなければならない。
【0340】
特定の実施形態では、決まった手順に従って、ヒト被験体への静脈内投与に適合させた薬剤組成物として、組成物を調合する。典型的には、静脈投与用の組成物は、滅菌された等張の水性緩衝液に溶けた溶液である。必要な場合、組成物は可溶化剤、および注射部位の痛みを和らげるための、リドカインなどの局所麻酔薬を含んでもよい。一般に、成分は別々に、あるいはたとえば乾性の凍結乾燥した粉末または水を含まない濃縮物として、活性剤の量を示すアンプルまたは小プラ容器(sachet)などの密閉型容器中に単位剤形に1つに混合して、供給される。組成物を注入によって投与する場合、滅菌された製薬グレードの水または生理食塩水を含む注入容器に、組成物を分配することができる。組成物を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルを与えることができる。
【0341】
本発明の作用剤は、中性または塩形として調合することができる。薬剤として許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導される遊離アミノ基と共に形成される塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導される遊離カルボキシル基と共に形成される塩がある。
【0342】
MSの治療において有効であろう本発明の作用剤の量は、標準的な臨床技法によって決定することができる。さらに、in vitroアッセイを場合によっては行って、最適な用量範囲を同定するのを手助けすることができる。処方物において使用する正確な用量は、活性物質、活性物質の投与経路、および疾患または障害の重度にも依存すると思われ、実行者の判断およびそれぞれの被験体の状態に従って決定すべきである。しかしながら、静脈投与に適した用量範囲は、一般には身体重量1キログラム当たり、活性物質約20〜500μgである。鼻腔内投与に適した用量範囲は、一般には約0.01pg/身体重量1キログラム〜1mg/身体重量1キログラムである。in vitroまたは動物モデル試験系から誘導された用量応答曲線から、有効用量を推定することができる。
【0343】
本発明は、本発明の薬剤組成物の1つまたは複数の成分を充填した1つまたは複数の容器を含む、薬剤パックまたはキットも提供する。場合によってこのような容器に、薬剤または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって定められた形の通知書が付随してよく、この通知書は(a)ヒト投与に関する製造、使用または販売の、機関による承認、(b)使用説明書、またはこの両方を反映するものである。
【0344】
〔実施例〕
2.実施例1:MSのCSF中で差別的に発現するタンパク質の同定
以下の手順に従って、MSを有する7被験体および7対照被験体からのCSF試料中のタンパク質を、等電点電気泳動、次にSDS−PAGEによって分離させ、分析した。以下で述べるパート2.1.1〜2.1.14(これを含めた)の手順を、これにより「参照プロトコル」として示す。
【0345】
2.1 物質および方法
2.1.1 試料調製
タンパク質のアッセイ(Pierce BCA カタログ番号23225)を、得られたそれぞれのCSF試料に行った。タンパク質分離の前に、それぞれの試料を、いくつかのタンパク質を選択的に減少させるために処理して、タンパク質分離を向上させ簡略化し、当該のタンパク質の分析を害するかあるいは制限する可能性があるタンパク質を、除去することによって分析を容易にした。参照によってその全容を取り込んであるWO99/63351、特に3ページおよび6ページを参照のこと。
【0346】
CSFからのアルブミン、ハプトグロビン、トランスフェリンおよび免疫グロブリンG(IgG)の除去を(「CSF減少」)、親和性クロマトグラフィーの精製ステップによって行い、このステップでは試料を、固定化された抗体を含む一連のHi−Trap(商標)カラムに通してアルブミン、ハプトグロビン、およびトランスフェリンを選択的に除去し、そして固定化されたプロテインGを含む該カラムに通して免疫グロブリンGを選択的に除去した。Hi−Trap(商標)カラム(プロテインG−セファロースHi−Trapカラム(1ml)Pharmaciaカタログ番号17−0404−01)中に含まれるプロテインG−セファロースに抗体を結合させることによって、タンデムに組み立てた2つの親和性カラムを作製した。このことは、以下の溶液をカラム中で順次循環させることによって行った:(1)ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(Gibco BRLカタログ番号14190−094)、(2)濃縮抗体溶液、(3)200mMの炭酸ナトリウム緩衝液、pH8.35、(4)架橋溶液(200mMの炭酸ナトリウム緩衝液、pH8.35、20mMのジメチルピメルイミデート)、および(5)500mMのエタノールアミン、500mMのNaCl。次いで第3の(非誘導体化)プロテインG Hi−Trapカラムを、組み立てたタンデムカラムの下端に結合させた。
【0347】
Akta Fast Protein Liquid Chromatography(FPLC)Systemを使用して、クロマトグラフィー手順を自動化し、一連の7つまでのランを順次行うことができるようにした。試料を一連の3つのHi−Trapカラムに通し、その中では親和性クロマトグラフィー媒体が前述のタンパク質に選択的に結合し、このことによってそれらを試料から除去した。カラム充填および洗浄段階中にカラムから溶出した非結合物質(「素通り画分」)、Immunopure Gentle Ag/Ab Elution Buffer(Pierceカタログ番号21013)を用いた溶出ステップによって溶出させた、結合タンパク質(「結合/溶出画分」)の画分(典型的にはチューブ1本当たり3ml)を回収した。非結合物質を含む溶出物を画分に回収し、それを集め、遠心分離超濾過によって脱塩/濃縮し、2DPAGEによってさらなる分析を待つばかりの状態にして保存した。
【0348】
約100〜150μgの総タンパク質を含む欠乏CSFの容積を等分し、等しい容積の10%(w/v)SDS(Fluka71729)、2.3%(w/v)ジチオスレイトール(BDH443852A)を加えた。試料を95℃で5分間加熱し、次いで20℃に放冷した。次いで125μlの以下の緩衝液を試料に加えた:
8M尿素(BDH452043w)
4%CHAPS(SigmaC3023)
65mMジチオスレイトール(DTT)
2%(w/v)Resolytes(商標)3.5−10(BDH44338 2×)
この混合物を攪拌し、15℃において13000rpmで5分間遠心分離し、等電点電気泳動によって上清を分析した。
【0349】
2.1.2 等電点電気泳動
等電点電気泳動(IEF)を、製造者の教示書に記載された手順に従い、Immobiline(商標)DryStrip Kit(Pharmacia Bio Tech)を使用して行った。Instructions for Immobiline(商標)DryStrip Kit Pharmacia、#18−1038−63、Edition ABを参照のこと(参照によってその全容を本明細書に取り込んである)。Immobilized pH Gradient(IPG)ストリップ(18cm、pH3〜10非線形ストリップ、Pharmaciaカタログ番号17−1235−01)を、Immobiline DryStrip Kit Users Mannual中に記載されたように、8M尿素、2%(v/v)CHAPS、10mMのDTT、2%(w/v)Resolytes3.5−10の溶液中で、20℃において一晩、再水和させた。IEFに関しては、50mlの上清(前述のように調製したもの)をストリップ上に載せ、カップ充填機をストリップの基端に置いた。次いで載せたゲルを鉱油(Pharmacia17−3335−01)で覆い、Pharmacia EPS3500XLパワー・サプライ(Cat19−3500−01)を使用して、以下のプロファイルに従い、電圧をストリップに即座に加えた:
開始電圧=300Vで2時間
リニア・ランプ=300V〜3500Vで3時間以上
3500Vで19時間保つ
プロセスのすべての段階に関して、電流制限は12個のゲルに関して10mAに設定し、ワット制限は5Wまでにした。温度は操作全体を通して20℃に保った。
【0350】
2.1.3 ゲル平衡化およびSDS−PAGE
最後の19時間のステップの後、ストリップを即座に取り出し、以下の組成:6M尿素、2%(w/v)DTT、2%(w/v)SDS、30%(v/v)グリセロール(Fluka49767)、0.05M Tris/HCl、pH6.8(Sigma Cat T−1503)の第1の溶液中に、20℃において10分間浸した。ストリップを第1の溶液から取り出し、以下の組成:6M尿素、2%(w/v)ヨードアセトアミド(Sigma I−6125)、2%(w/v)SDS、30%(v/v)グリセロール、0.05M Tris/HCl、pH6.8の第2の溶液中に、20℃において10分間浸した。第2の溶液から取り出した後、Hochstrasser他、1988、Analytical Biochemistry 173:412〜423(参照によってその全容を本明細書に取り込んである)に従い、ストリップをSDS−PAGE用の担体ゲル上に載せ、以下に詳述したように改変させた。
【0351】
2.1.4 担体ゲルの作製
以下の寸法:23cm幅×24cm長(後プレート)、23cm幅×24cm長、中央の19cm中に2cmの深さのノッチ(前プレート)の2枚のガラス・プレートの間に、ゲルをキャスティングした。SDS−PAGEゲルの共有結合を助長するために、後プレートを、g−メタクリル−オキシプロピルトリメトキシシランをエタノールに溶かした0.4%溶液(BindSilaneJ Pharmaciaカタログ番号17−1330−01)で処理した。前プレートは、ジメチルジクロロシランをオクタメチルシクロ−オクタシラン(RepelSilaneJ Pharmaciaカタログ番号17−1332−01)に溶かした2%溶液で処理して、ゲルの接着性を低下させた。過剰な試薬を水で洗浄することによって除去し、プレートを乾燥させた。この段階で、ゲルを識別するためのものとして、プレートのコーティングされた表面を識別するためのマーカーとして、接着性バーコードを、それがゲル・マトリックスと接触しないと思われるような位置で、後プレートに結合させた。
【0352】
乾燥させたプレートを、ゲル・サンドイッチ13個分の容量のキャスティング・ボックスに組み込んだ。それぞれのサンドイッチの上部および底部プレートを、厚さ1mm、幅2.5cmのスペーサーによって間隔をあけた。サンドイッチにアセテートシートを挿入して、ゲル重合後のサンドイッチの分離を容易にした。次いで、Hochstrasser他の引用書に従って、キャスティングを行った。
【0353】
9〜16%の線状ポリアクリルアミド勾配ゲルをキャスティングし、Angelique勾配ゲル・キャスティング・システム(Large Scale Biology)を使用して、前プレートのノッチの2cm下のレベルの地点まで広げた。ストック溶液は以下の通りであった。アクリルアミド(水中に40%)は、Servaからのものであった(カタログ番号10677)。架橋剤は、合計出発モノマー含有率が濃度2.6%(w/w)であるPDA(BioRad161〜0202)であった。ゲル緩衝液は、0.375M Tris/HCl、pH8.8であった。重合触媒は、0.05%(v/v)TEMED(BioRad161〜0801)であり、開始剤は0.1%(w/v)APS(BioRad161〜0700)であった。SDSはゲル中に含まれておらず、濃縮ゲルは使用しなかった。キャスティングしたゲルを20℃で一晩重合させ、次いで6mlのゲル緩衝液を含む密閉ポリエチレン・バッグ中に4℃で保存し、4週間以内に使用した。
【0354】
2.1.5 SDS−PAGE
0.5%(w/v)アガロース(Fluka Cat05075)を、泳動用バッファー(0.025MのTris、0.198Mのグリシン(Fluka50050)、1%(w/v)SDS、微量のブロモフェノールブルーを補った)中に溶かした溶液を作製した。アガロース懸濁液を、アガロースが溶けるまで、攪拌しながら70℃に加熱した。担体2次元ゲルの上部をアガロース溶液で満たし、平衡化させたストリップをアガロース中に置き、そのゲルが2次元ゲルと密に接触するまで、パレット・ナイフを用いて穏やかに叩いた。Amess他、1995、Electrophoresis 16:1255〜1267(参照によってその全容を本明細書に取り込んである)によって記載されたように、ゲルを2次元操作用タンク中に置いた。バッファーのレベルが、ポリアクリルアミドを含む2次元ゲルの領域の上部よりもわずかに高くなり、その結果、活性ゲル領域の効率の良い冷却が得られるまで、タンクを泳動用バッファー(前述のもの)で満たした。泳道用バッファーをゲルによって形成された上部のバッファー区画に加え、次いでConsort E−833パワー・サプライを使用して、ゲルに電圧を即座に加えた。1時間かけて、ゲルを20mA/ゲルで泳動した。6個のゲルを含むタンクに関しては、ワット制限は150Wに設定し、電圧制限は600Vに設定した。1時間後、電圧制限およびワット制限を前と同じにして、ブロモフェノールブルーのラインがゲルの底部から0.5cmになるまで、次いでゲルを40mA/ゲルで泳動した。バッファーの温度は泳動全体を通して16℃に保った。ゲルは全く同様には泳動されなかった。
【0355】
2.1.6 染色
電気泳動の泳動終了時に、固定用にゲルをタンクから即座に取り外した。ゲル・カセットの上部プレートを注意深く外し、底部プレートに付着したゲルは残した。次いでゲルが付着している底部プレートを、12個のゲルを収容することができる染色装置中に置いた。40%(v/v)エタノール(BDH28719)、10%(v/v)酢酸(BDH100016X)、50%(v/v)水(MilliQ−Millipore)の固定溶液中にゲルを完全に浸し、この溶液をゲル上で連続的に循環させた。一晩のインキュベーションの後に、固定剤をタンクから排出し、7.5%(v/v)酢酸、0.05%(w/v)SDS、92.5%(v/v)水中に30分間浸すことによって、ゲルを下塗りした。次いで下塗り溶液を排出し、ピリジニウム、4−[2−[4−(ジペンチルアミノ)−2−トリフルオロメチルフェニル]エチル]−1−(スルホブチル)−、分子内塩の染色溶液中に4時間完全に浸すことによって、ゲルを染色した。この染色溶液は、この染料(DMSO中に2mg/ml)を7.5%(v/v)酢酸水溶液に溶かしたストック溶液を希釈して、最終濃度1.2mg/Lにすることによって調製した。染色溶液は、使用前に0.4μmのフィルター(Duropore)を介して真空濾過した。
【0356】
2.1.7 ゲルの画像化
コンピュータ可読の出力を、好ましいスキャナ(Oxford Glycosciences、Oxford UK、上記のセクション1.2に記載)を用いて、蛍光染色したゲルを画像化することによって作製した。このスキャナは、ゲル担体および4つの完全な蛍光マーカー(M1、M2、M3、M4と指定する)を有しており、これらのマーカーを使用して画像の形状を正し、これらはスキャニングが正しく行われたことを確認するための、品質を調節する特徴点である。
【0357】
スキャニングに関しては、ゲルを染色液から取り出し、水ですすぎ、簡単に空気乾燥させ、好ましいスキャナ上で画像化した。画像化した後、少量の染色溶液を含むポリエチレン・バッグ中にゲルを密閉し、次いで4℃で保存した。
【0358】
2.1.8 データのデジタル分析
WO98/23950、セクション5.4および5.5中に記載されたように(参照によって本明細書に取り込んである)、以下により詳細に述べるように、データを処理した。
【0359】
スキャナからの出力を、MELANIE 7 II 2D PAGE分析プログラム(Release 2.2、1997、BioRad Laboratories、Hercules、California、カタログ番号170−7566)を使用し最初に処理して、位置合わせポイントM1、M2、M3、およびM4を自動検出し、画像を自動的に切り取り(すなわち、ゲルの境界標識の外側に存在するスキャニングされた画像、たとえば基準フレームの領域由来のシグナルを排除する)、埃による人工産物を濾過除去し、特徴点を検出および定量化し、GIF形式で画像ファイルを作製した。以下のパラメータを使用して、特徴点を検出した:
滑らかさ=2
ラプラシアン閾値 50
部分閾値 1
飽和度=100
ピーク=0
最小周囲=10
【0360】
2.1.9 pIおよびMW値の割り当て
境界標識の識別を使用して、画像中に検出された特徴点のpIおよびMWを決定した。CSF1〜CSF12と指定した、12個の境界標識の特徴点を、集めた試料から得た標準的なCSF画像中で識別した。これらの境界標識の特徴点は図1で識別し、表Xで識別されるpIおよび/またはMW値を割り当てた。
【0361】
【表56】
Figure 2004532386
【0362】
可能な限り多くのこれらの境界標識を、データ・セットのそれぞれのゲル画像中で識別した。次いで研究ゲル中のそれぞれの特徴点に、2つの最近の境界標識に対する直線捕間法または外挿法(MELANIE7−IIソフトウェアを使用する)によってpI値を割り当て、2つの最近の境界標識に対する直線捕間法または外挿法(MELANIE7−IIソフトウェアを使用する)によってMW値を割り当てた。
【0363】
2.1.10 主要マスター画像との整合
画像を編集して、埃などの粗悪な人工産物を除去し、タンパク質の特徴点の汚れなどの粗悪な異常がある、あるいは充填または全体的な画像強度が最も強烈な特徴点を越える識別を可能にするには低すぎる、あるいは解像度が特徴点の正確な検出を可能にするには悪すぎる画像は棄却した。次いで画像を、試料セット全体からの1つの共通な画像と対にすることによって比較した。この共通画像、「主マスター画像(primary master image)」は、タンパク質充填量(最大充填量は最大の特徴点検出と呼応する)、充分解明されたミオグロビン領域(ミオグロビンは内部標準として使用した)、および一般的な画質に基づいて選択した。さらに、主要なマスター画像は、分析中に含まれているこれらすべての一般的な代表であるような画像であるように選択した(主マスター画像が研究ゲルの代表的なものであることを判断した、このプロセスは以下に記載する方法で再チェックし、主マスターゲルが代表的なものではない場合は、それを棄却し、代表的な主マスターゲルを発見するまでそのプロセスを繰り返した)。
【0364】
それぞれの残りの研究ゲルの画像を主マスター画像と個別に整合させて、その結果、主マスター画像とそれぞれ個々の研究ゲル画像の間の共通のタンパク質の特徴点を、以下に記載したように対にした。
【0365】
2.1.11 試料間の交差整合試験
差別的に発現される特徴点を識別する目的で多数の試料の統計分析を容易にするために、それぞれの研究ゲルの形状を、タンパク質特徴点のそのパターンと主マスターのそれとの間の整列を最高のものにするために、以下のように調節した。それぞれの研究ゲルの画像を、多重解像度解析手順を使用して、主マスター画像の形状に個別に変換した。この手順によって、1つの試料から他の試料への電気泳動分離プロセスの、物理的パラメータのわずかな変化によってもたらされる歪みに関して、画像の形状が補正される。観察される変化は、発見された歪みが単なる形状的歪みではなく、局部的および全体的規模で変化している滑らかな流れであるような変化である。
【0366】
多重解像度モデリングにおける基本原則は、滑らかなシグナルを「スケール・スペース」からの放射としてモデル化できることであり、連続的に細かい規模で、低い解像度近似値で細目を加えて、高い解像度シグナルを得ることである。このタイプのモデルを、フローフィールドのベクター(基準画像のそれぞれのピクセル位置で定義する)に適用し、任意の滑らかさの流れを比較的低い自由度でモデル化することができる。それぞれの画像は、最初の画像に由来するスタックまたはピラミッドに最初に還元するが、それぞれのレベルでそれぞれの方向に、平滑化し解像度を2分の1に低下させ(ガウス・ピラミッド)、対応する異なる画像もそれぞれのレベルで計算し、平滑化画像とその元の画像の間の違いを表す(ラプラシアン・ピラミッド)。したがってラプラシアン画像は、異なる規模の画像の詳細を表す。
【0367】
任意の2つの所与の画像間の歪みを評価するために、ピラミッドのレベル7(すなわち7回連続で解像度を低下させた後)で、計算を行った。ラプラシアン画像は16×16ピクセルのグリッドに分割し、それは両方向の隣接グリッド位置間で50%重複しており、基準および試験画像上の対応するグリッド・スクエア間の相互補正を計算した。次いで歪みの変位を、補正マトリックスの最大値の位置によって与えた。個々のレベルですべての変位を計算した後、これらをピラミッドの次のレベルに挿入し、試験画像に適用し、次いで変位に対するさらなる補正を、次の規模で計算した。
【0368】
解析法によって、主マスター画像、および他の試料に関する画像中の、共通の特徴点の間の良い整列がもたらされた。MELANIE7II 2D PAGE分析プログラムを使用して、主マスターとそれぞれの他の画像の間の、約500〜700の整合した特徴点の対を計算および記録した。このプログラムの精度は、前に記載した方式の画像の整列によって著しく高まった。精度をさらに改善するために、MelView相互作用編集プログラムにおいて、すべての対合を最後に目で調べ、残りの認識上不正確な対合は除去した。このような認識上不正確な対合の数が、好ましい技術の全体的な再現性を超える場合(同じ生物試料の繰り返しの分析によって測定される)、主マスター・ゲルであるように選択したゲルは、主マスター・ゲルとして働くための代表的な研究ゲルには不充分であると判断した。この場合、主マスター・ゲルとして選択したゲルは棄却し、異なるゲルを主マスター・ゲルとして選択し、プロセスを繰り返した。
【0369】
次いで、すべての画像を一緒に加えて複合マスター画像を作成し、すべての構成画像のゲル特徴点すべての位置および形状を、以下に記載するようにこの複合マスターの上に重ね合わせた。
【0370】
最初の対すべてを計算、補正および保存した後、第2の工程を行い、これによって元の(解析されていない)画像を主マスターの形状に変換した(2回目)。今回はフローフィールドを使用し、対になったゲル特徴点の中心軌跡によって定義した多数のタイ・ポイントを滑らかに挿入することによって計算した。したがって複合マスター画像は、その特徴的な記述子を用いて主マスター画像を初期化することによって作製した。それぞれの画像を主マスターの形状に変換したので、それをピクセル毎に複合マスター画像に合計し、前述の手順によって対にしなかった特徴点も、フロー制御フィールド補正を使用し、その軌跡をマスターの形状に調節した、複合マスター画像の記述子に同様に加えた。
【0371】
処理の最終段階を複合マスター画像、およびその特徴的な記述子に施した。研究中のすべての画像からのすべての特徴点が、共通の形状に変換されることがここで示される。特徴点は一緒に、それらの間の重複度に従って、関連セットまたは「群」に分類した。次いでそれぞれの群に、特有の識別指数、分子群指数(MCI)を与えた。
【0372】
MCIによって、異なる画像上の1組の整合させた特徴点が識別される。したがってMCIは、異なる試料の2次元分離において等しい位置で溶出する、1つまたは複数のタンパク質を表す。
【0373】
2.1.12 プロファイルの構築
研究中の成分ゲルすべてを最終的な複合マスター画像に整合させた後、それぞれの特徴点の強度を測定し保存した。この分析の最終結果は、それぞれの識別した特徴点に関する、1)複合マスター画像中の対応する特徴点に対する特有の識別コード(MCI)、2)ゲル中の特徴点のx、y座標、3)特徴点の等電点(pI)、4)特徴点のみかけの分子量(MW)、5)シグナル値、6)それぞれの前述の測定値に関する標準偏差、および7)それぞれの特徴点のMCIと、この特徴点を整合させたマスター・ゲルを関連付ける方法を含むデジタル・プロファイルを生成したことであった。Laboratory Information Management System(LIMS)によって、このMCIプロファイルが、MCIがそこから生成した実際保存したゲルに対して追跡可能であり、したがってゲル・プロファイルのデータベースのコンピュータ分析によって同定したタンパク質を、探索することができた。LIMSによって、元の試料または患者に対してプロファイルを追跡することもできた。
【0374】
2.1.13 プロファイルの統計分析
以下に示す相補的統計戦略を列挙した順に使用して、マスター群中のMCIからMSFを同定した。
【0375】
(a)ウィルコクソンの順位和検定。この検定を、それぞれのMCI単位に関して対照とMS試料の間で行った。0.05以下のp値を記録したMCIを、統計上有意なMSFとして95%の選択率で選択した。
【0376】
(b)第2の非重複性選択戦略は、性質の有無のみに基づくものである。この手順を使用して、このような性質基準、すなわち有無のみに基づいて潜在的なMSFであるそれぞれのMCIに関して、対照試料およびMS試料の特徴点の存在パーセンテージを計算した。MS試料で95%以上の特徴点の存在パーセンテージ、および対照試料で15%以下の特徴点の存在パーセンテージを記録したMCIを、性質の異なるMSFとして85%の選択率で選択した。選択率が85%である第2集団の性質の異なるMSFは、対照試料で95%以上の特徴点の存在パーセンテージ、およびMS試料で15%以下の特徴点の存在パーセンテージを記録したMCIによって形成された。
【0377】
(c)第3の非重複性選択戦略は、折りたたみの変化に基づくものである。MCI中のMSFの平均的な正常なタンパク質の存在量の割合を表す、折りたたみの変化を、それぞれの組の対照とMS試料の間でそれぞれのMCIに関して計算した。折りたたみの変化の平均値に関して、95%の信頼限界を計算した。折りたたみの変化が信頼限界の外側であるMCIを、有意な折りたたみの変化の閾値の基準を満たすMSFとして95%の選択率で選択した。MCIの折りたたみの変化は95%の信頼限界に基づくので、有意な折りたたみの変化の閾値そのものが95%ということになる。
【0378】
この3つの分析戦略を適用することによって、(a)ウィルコクソンの順位和検定によって測定した統計的有意性、(b)選択した選択率での性質の違い、または(c)選択した選択率での有意な折りたたみの変化の閾値に基づいてMSFを選択することができた。
【0379】
2.1.14 選択したタンパク質の回収および分析
MSF中のタンパク質をロボットによって切断しおよび処理して、トリプシン消化ペプチドを生成した。トリプシン・ペプチドを、PerSeptive Biosystems Voyager−DETM STR Matrix−Assisted Laser Desorption Ionization Time−of−Flight(MALDI−TOF)質量分析装置を使用した質量分析法によって分析し、選択したトリプシン・ペプチドを、nanoflow(商標)エレクトロ・スプレーZ−スプレー・ソースを備えるMicromass Quadrupole Time−of−Flight(Q−TOF)質量分析装置(Micromass Altrincham、UK)を使用したタンデム質量分析法(MS/MS)によって分析した。MSPIの部分的なアミノ酸配列決定および同定のために、トリプシン・ペプチドの解釈されていないタンデム質量スペクトルを、SEQUEST検索プログラム(Eng他、1994、J.Am.Soc.Mass Spectrom.5:976〜989)、version v.C.1を使用して検索した。データベースの同定に関する基準には、トリプシンの開裂特異性、データベースから回収したペプチド中の1組のa、bおよびyイオンの検出があった。検索したデータベースは、National Centre for Biotechnology Information(NCBI)によって保持されており、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/でアクセス可能な余分でないデータベース中の、タンパク質集合体で構築されたデータベースであった。SEQUESTプログラムを使用するスペクトル−スペクトル補正による以下のタンパク質の同定結果に従って、MALDI−TOF質量スペクトルで検出した質量を、同定したタンパク質中のトリプシン消化ペプチドに割り当てた。SEQUESTプログラムを使用した、トリプシン消化ペプチドの解釈されていないMS/MSスペクトルに関する検索によって、アミノ酸配列を同定することができなかった場合、ペプチドのタンデム質量スペクトルを、当分野で知られている方法を使用して手作業で解釈した(ペプチド・イオン低エネルギー断片質量スペクトルを解釈する場合、Gaskell他、1992、Rapid Commun.Mass Spectrom.6:658〜662を参照のこと)。参照によってその全容を本明細書に取り込んである、PCT出願No.PCT/GB01/04034中に記載された方法も、質量スペクトルを解釈するために使用した。
【0380】
3.実施例2:MSの診断および治療
以下の実施例は、MSをスクリーニングまたは診断するため、MS患者の予後を決定するため、MS治療の有効性を調べるための、本発明のMSPIの使用を例示するものである。以下の実施例は、MSを治療または予防するための、本発明のMSPIの調節物質(たとえばアゴニストまたはアンタゴニスト)の使用も例示する。カテプシンは、細胞内のタンパク質分解で主要な役割を果たすリソソームのシステイン・プロテイナーゼの、パパイン・スーパーファミリーの一部である(Kirschke,H.and Barrett,A.J.(1987)in Lysosomes:Their role in protein breakdown(Glaumann,H.and Barrard,F.J.eds)193〜238、Academic Press、London)。さらにカテプシンSは、主要な組織適合複合体(MHC)クラスII分子による抗原提示に不可欠なようである。カテプシンは、癌(Hughes他、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.95:12410〜12415)、および神経細胞死(Isahara他、Al(1999)NeuroScience 91:233〜249)を含めたいくつかの病状において、推定的な役割を有す可能性があり、例えば海馬の虚血性神経細胞死の後におけるカテプシンB(Yamashima他、(1998)Eur J Neurosci 5:1723〜33)がある。カテプシンLは、関節炎(Esser他、(1994)Arthritis Rheum.37:236〜247)および腫瘍転移(Sheahan他、(1989)Cancer Research 49:3809〜3814)を含めたさまざまな病理過程に関係している可能性がある。多くの他のプロテアーゼと同様に、カテプシンLは不活性前酵素として合成され、その後、成熟酵素のシグナル配列とN末端の間に位置するアミノ末端前領域の開裂によって、成熟形に加工され(Menar他、(1998)J Biol Chem 273:4478〜4484)、その結果アイソフォームが生じる。したがって前領域は、触媒活性を調節することができ、成熟酵素の強力な阻害剤であることが示されている(Carmona他、(1996)Biochemistry 35:8149〜8157)。
【0381】
分子量40,820DaおよびpI4.37を有するカテプシンLの発現は、本明細書では、MSを有していない被験体の脳脊髄液(CSF)と比べて、MSを有する被験体のCSF中で、著しく増大することが示されている(表II、MSPI−300を参照のこと)。したがって、CSF中でのカテプシンLの定量検出を使用して、MSを診断し、MSの予後を決定し、あるいはMSに関する治療の有効性を調べることができる。
【0382】
本発明の一実施形態では、カテプシンLの発現、活性、または発現と活性の両方を調節する(たとえば下方調節する)作用剤を、MSの治療または予防を必要とする被験体に投与する。カテプシンLの発現、活性、または発現と活性の両方を調節する抗体は、この目的に適している。さらに、カテプシンLの全体または一部分をコードする核酸、またはカテプシンLの全体または一部分と相補的な核酸を、投与することができる。カテプシンL、またはカテプシンLポリペプチドの断片も、投与することができる。本発明は、カテプシンLの発現またはカテプシンLの活性を調節する他の作用剤を同定するための、スクリーニング・アッセイも提供する。in vitroでのカテプシンLの発現を調節する作用剤は、候補物質で処理した細胞中のカテプシンLの発現と対照物質(たとえば生理食塩水)で処理した細胞中のカテプシンLの発現を比較することによって、同定することができる。カテプシンLの発現を検出するための方法は当分野で知られており、これにはカテプシンLのRNAのレベルを測定すること(たとえばノーザン・ブロット分析またはRT−PCRによって)、およびカテプシンLのタンパク質を測定すること(たとえばイムノアッセイまたはウエスタン・ブロット分析によって)がある。カテプシンLの活性を調節する作用剤は、神経栄養活性または神経保護活性などの、カテプシンLの機能を害するかあるいは機能と拮抗する候補物質の能力と、カテプシンLの同じ機能を阻害する対照物質(たとえば生理食塩水)の能力を比較することによって、同定することができる。カテプシンLの活性を調節することができる作用剤は、MSを治療するための有用な作用剤としてのさらなる開発に適した、作用剤として同定する。
【0383】
このようなアッセイを使用することによって、カテプシンLの活性と拮抗する能力に関して、候補物質を試験することができる。
【0384】
カテプシンLの発現または活性に影響を与えるin vitroで同定された作用剤を、in vivo、MSの動物モデル、またはMSを有する被験体で試験して、その治療有効性を決定することができる。
【0385】
特定の作用剤または作用剤の組合せを使用する、疾患または病状の治療または予防の方法を本明細書で参照すると、このような参照は、疾患または病状の治療または予防用の薬剤の調製において、作用剤または作用剤の組合せを使用することを含むことを意図するものであることが理解されるべきである。
【0386】
本発明は、本出願に記載した個々の実施形態に関して制限されるべきではなく、これらは本発明の個別の態様の単なる例示として考えられる。本発明の範囲内の機能的に均等である方法および装置、さらに本明細書で列挙した方法および装置は、前述の記載および添付の図面から当業者には明らかであろう。このような改良形態および変形形態は、添付の特許請求の範囲内にあると考えられる。本明細書で列挙したそれぞれの参照文献、特許および特許出願の内容は、参照によってその全容をここに取り込んである。
【図面の簡単な説明】
【0387】
【図1】CSFの2次元電気泳動から得た像を示す図である。CSF1〜CSF12で示した12個の境界標識の特徴点を識別するために、注釈を施した。
【図2】MSFの特徴付け、およびMSFとMSPIの関係を示す流れ図である。MSFは、MSFのpIおよびMWと関連がある特定のペプチド配列を有するMSPIとして、あるいはこれによって、さらに特徴付けることができる。本明細書で示すように、MSFは、好ましい技術を使用することによって区別不能なpIおよびMWを有するが異なるペプチド配列を有する、1つまたは複数のMSPIを含むことができる。MSPIのペプチド配列を使用して、このようなペプチド配列を含む以前に同定したタンパク質に関する、データベースを検索することができる。以前に同定したタンパク質および/またはそのタンパク質ファミリーのメンバーを認識することができる市販の抗体が、存在するかどうかを確かめることができる。

Claims (39)

  1. 被験体の多発性硬化症の段階または重度を決定するため、多発性硬化症を発症する危険がある被験体を識別するため、または多発性硬化症を有する被験体に施された治療の影響を調べるための、被験体の多発性硬化症をスクリーニングまたは診断する方法であって、
    (a)2次元電気泳動によって被験体からの体液の試験試料を分析して、特徴点の2次元アレイを生成させることであって、該アレイが1つまたは複数の以下の多発性硬化症関連の特徴点(MSF):MSF-1, MSF-2, MSF-3, MSF-4, MSF-5, MSF-6, MSF-7, MSF-8, MSF-9, MSF-10, MSF-11, MSF-12, MSF-13, MSF-14, MSF-15, MSF-16, MSF-17, MSF-18, MSF-20, MSF-21, MSF-22, MSF-23, MSF-24, MSF-25, MSF-26, MSF-27, MSF-28, MSF-29, MSF-30, MSF-31, MSF-32, MSF-33, MSF-34, MSF-35, MSF-36, MSF-37, MSF-38, MSF-39, MSF-40, MSF-41, MSF-42, MSF-43, MSF-44, MSF-45, MSF-46, MSF-47, MSF-48, MSF-49, MSF-50, MSF-51, MSF-52, MSF-52, MSF-53, MSF-54, MSF-55, MSF-56, MSF-57, MSF-58, MSF-59, MSF-60, MSF-61, MSF-62, MSF-63, MSF-64, MSF-65, MSF-66, MSF-67, MSF-69, MSF-70, MSF-71, MSF-72, MSF-73, MSF-75, MSF-76, MSF-77, MSF-78, MSF-79, MSF-80, MSF-81, MSF-82, MSF-83, MSF-84, MSF-85, MSF-86, MSF-87, MSF-88, MSF-89, MSF-90, MSF-91, MSF-92, MSF-93, MSF-94, MSF-95, MSF-96, MSF-97, MSF-98, MSF-99, MSF-100, MSF-101, MSF-102, MSF-104, MSF-105, MSF-106, MSF-107, MSF-108, MSF-109, MSF-110,
    MSF-111, MSF-112, MSF-113, MSF-114, MSF-115, MSF-116, MSF-117, MSF-119, MSF-120, MSF-121, MSF-122, MSF-123, MSF-125, MSF-126, MSF-127, MSF-128, MSF-130, MSF-131, MSF-132, MSF-133, MSF-134, MSF-135, MSF-136, MSF-137, MSF-139, MSF-140, MSF-141, MSF-142, MSF-143, MSF-144, MSF-145, MSF-147, MSF-148, MSF-149, MSF-150, MSF-151, MSF-152, MSF-153, MSF-154, MSF-155, MSF-156, MSF-157, MSF-158, MSF-159, MSF-160, MSF-161, MSF-163, MSF-165, MSF-167, MSF-168, MSF-169, MSF-170, MSF-171, MSF-172, MSF-173, MSF-174, MSF-175, MSF-176, MSF-177, MSF-178, MSF-179, MSF-180, MSF-181, MSF-182, MSF-183, MSF-184, MSF-185, MSF-186, MSF-187, MSF-188, MSF-189, MSF-190, MSF-191, MSF-192, MSF-193, MSF-194, MSF-195, MSF-196, MSF-197, MSF-198,
    MSF-199, MSF-200, MSF-201, MSF-202, MSF-203, MSF-204, MSF-205, MSF-206, MSF-207, MSF-208, MSF-209, MSF-210, MSF-211, MSF-212, MSF-213, MSF-215, MSF-216, MSF-217, MSF-218, MSF-219, MSF-220, MSF-221, MSF-222, MSF-223, MSF-224, MSF-225, MSF-226, MSF-227, MSF-228, MSF-229, MSF-230, MSF-231, MSF-232, MSF-233, MSF-234, MSF-235, MSF-236, MSF-237, MSF-238, MSF-239, MSF-240, MSF-241, MSF-242, MSF-243, MSF-244, MSF-245, MSF-246, MSF-247, MSF-248, MSF-250, MSF-251, MSF-252, MSF-253, MSF-254, MSF-257, MSF-259, MSF-260, MSF-261, MSF-262, MSF-263, MSF-264, MSF-265, MSF-266, MSF-267, MSF-268, MSF-269, MSF-270, MSF-271, MSF-273, MSF-274, MSF-276, MSF-277, MSF-278, MSF-279, MSF-280, MSF-281, MSF-282, MSF-283, MSF-284, MSF-285,
    MSF-287, MSF-289, MSF-290, MSF-291, MSF-292, MSF-294, MSF-295, MSF-296, MSF-298, MSF-299, MSF-300, MSF-301, MSF-302, MSF-303, MSF-305, MSF-306, MSF-307, MSF-308, MSF-310, MSF-311, MSF-312, MSF-313, MSF-314, MSF-316, MSF-318, MSF-319, MSF-320, MSF-321, MSF-322, MSF-323, MSF-324, MSF-325 を含むこと、および
    (b)試験試料中の1つまたは複数のMSFの存在量を、多発性硬化症を有していない1または複数の被験体からの体液試料中の1つまたは複数のMSFの存在量、または多発性硬化症を有していない被験体中の上記特徴点に関して所定の基準範囲、または試験試料中の少なくとも1つの発現基準特徴点(ERF)の存在量と比較すること
    を含む方法。
  2. 被験体の多発性硬化症の段階または重度を決定するため、多発性硬化症を発症する危険がある被験体を識別するため、または多発性硬化症を有する被験体に施された治療の影響を調べるための、被験体の多発性硬化症をスクリーニングまたは診断する方法であって、被験体からの体液の試験試料中の、1つまたは複数の以下の多発性硬化症関連タンパク質
    アイソフォーム(MSPI):MSPI-1, MSPI-2, MSPI-3, MSPI-4, MSPI-5.1, MSPI-6, MSPI-7, MSPI-8.1, MSPI-8.2, MSPI-9, MSPI-10, MSPI-11, MSPI-12.1, MSPI-12.2, MSPI-13, MSPI-14, MSPI-15, MSPI-16, MSPI-18, MSPI-20, MSPI-21, MSPI-22, MSPI-24, MSPI-25, MSPI-27, MSPI-28, MSPI-29, MSPI-30, MSPI-31, MSPI-32, MSPI-33.1, MSPI-33.2, MSPI-34, MSPI-36, MSPI-37, MSPI-39.1, MSPI-39.2, MSPI-40, MSPI-42.2, MSPI-43, MSPI-44, MSPI-47, MSPI-48.1, MSPI-48.2, MSPI-48.3, MSPI-49.1, MSPI-49.2, MSPI-51.1, MSPI-52.1, MSPI-52.2, MSPI-54, MSPI-55, MSPI-56, MSPI-58, MSPI-60, MSPI-62.2, MSPI-63, MSPI-64.1, MSPI-64.3, MSPI-65, MSPI-66, MSPI-67.1, MSPI-67.2, MSPI-69, MSPI-70, MSPI-72, MSPI-73, MSPI-75, MSPI-76, MSPI-77.2, MSPI-78.1, MSPI-78.2, MSPI-79, MSPI-80.1, MSPI-81, MSPI-82, MSPI-83, MSPI-84.1, MSPI-84.2, MSPI-86, MSPI-87, , MSPI-89.1, MSPI-90, MSPI-91.1, MSPI-92, MSPI-93.1, MSPI-93.2, MSPI-94, MSPI-95, MSPI-96, MSPI-97, MSPI-98, MSPI-99, MSPI-102.1, MSPI-102.2, MSPI-102.3, MSPI-104, MSPI-105.1, MSPI-105.2, MSPI-106, MSPI-107, MSPI-108, MSPI-110, MSPI-111, MSPI-112, MSPI-113, MSPI-114, MSPI-116, MSPI-117, MSPI-119, MSPI-120, MSPI-122, MSPI-123.1, MSPI-125.1, MSPI-125.2, MSPI-126.1, MSPI-126.2, MSPI-127.1, MSPI-128, MSPI-130, MSPI-131, MSPI-132, MSPI-133, MSPI-134, MSPI-135, MSPI-136, MSPI-137, MSPI-139, MSPI-140, MSPI-141.1, MSPI-141.2, MSPI-142, MSPI-143.1, MSPI-144, MSPI-145.2, MSPI-147.2, MSPI-148, MSPI-149, MSPI-150, MSPI-151, MSPI-152, MSPI-154.1, MSPI-154.2, MSPI-154.3, MSPI-155.1, MSPI-155.2, MSPI-155.3, MSPI-156.2, MSPI-158.2, MSPI-159, MSPI-160, MSPI-161, MSPI-163, MSPI-165.1, MSPI-165.2, MSPI-167, MSPI-168, MSPI-169.1, MSPI-169.2, MSPI-170, MSPI-171, MSPI-172, MSPI-173.2, MSPI-175, MSPI-176.1, MSPI-176.2, MSPI-177, MSPI-178, MSPI-179.1, MSPI-179.2, MSPI-180, MSPI-181.1, MSPI-181.2, MSPI-182, MSPI-183, MSPI-184, MSPI-185, MSPI-186, MSPI-187.1, MSPI-187.2, MSPI-188.2, MSPI-189, MSPI-191, MSPI-192.1, MSPI-192.2, MSPI-193, MSPI-194.1, MSPI-194.2, MSPI-195.1, MSPI-196, MSPI-197, MSPI-198, MSPI-199.1, MSPI-199.2, MSPI-200, MSPI-201, MSPI-202.1, MSPI-202.2, MSPI-203, MSPI-205, MSPI-206, MSPI-207, MSPI-208, MSPI-209, MSPI-210, MSPI-211, MSPI-212.2, MSPI-213, MSPI-215, MSPI-216, MSPI-217.3, MSPI-218, MSPI-219, MSPI-220, MSPI-221.1, MSPI-222.1, MSPI-222.2, MSPI-223.1, MSPI-223.2, MSPI-224.1, MSPI-225, MSPI-226, MSPI-228.1, MSPI-228.2, MSPI-229.1, MSPI-229.2, MSPI-230, MSPI-231, MSPI-232, MSPI-233.1, MSPI-233.2, MSPI-234, MSPI-235, MSPI-236.1, MSPI-236.2, MSPI-237, MSPI-238, MSPI-239.1, MSPI-239.2, MSPI-240.1, MSPI-240.2, MSPI-241.1, MSPI-241.2, MSPI-242.1, MSPI-242.2, MSPI-243, MSPI-244, MSPI-245, MSPI-246.1, MSPI-246.2, MSPI-248, MSPI-250.2, MSPI-251, MSPI-254.1, MSPI-257.1, MSPI-257.2, MSPI-257.3, MSPI-260.1, MSPI-260.2, MSPI-261, MSPI-262.2, MSPI-265, MSPI-266, MSPI-267, MSPI-268.1, MSPI-270, MSPI-271, MSPI-273, MSPI-274, MSPI-276, MSPI-277, MSPI-279, MSPI-280.1, MSPI-280.2, MSPI-283.1, MSPI-283.2, MSPI-284.1, MSPI-284.2, MSPI-285, MSPI-289, MSPI-290, MSPI-291.1, MSPI-291.2, MSPI-292, MSPI-295, MSPI-298.1, MSPI-298.2, MSPI-299, MSPI-300, MSPI-301, MSPI-302, MSPI-303.2, MSPI-305, MSPI-306, MSPI-307, MSPI-308, MSPI-311.1, MSPI-311.2, MSPI-311.3, MSPI-313, MSPI-314, MSPI-316, MSPI-318, MSPI-319, MSPI-320, MSPI-322, MSPI-323.1, MSPI-323.2, MSPI-324, MSPI-325.1, MSPI-325.2 を定量的に検出することを含む方法。
  3. 体液が脳脊髄液(CSF)である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 試験試料中の1つまたは複数のMSPIの存在量を、多発性硬化症を有していない1または複数の被験体からの試料中の1つまたは複数のMSPIの存在量、または多発性硬化症を有していない被験体中の前記特徴点に関して所定の基準範囲、または試験試料中の少なくとも1つの発現基準特徴点(ERF)の存在量と比較する、請求項2または3に記載の方法。
  5. 定量的に検出するステップが第1の試料の少なくとも1つのアリコートを試験することを含み、この試験するステップは、
    (a)MSPIに対して免疫特異的である抗体とそのアリコートを接触させること、
    (b)抗体とMSPIの結合を定量的に測定すること、および
    (c)ステップ(b)の結果と所定の基準範囲を比較すること
    を含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 定量的に検出するステップが、複数の予め選択したMSPIと同系の複数の抗体を用いて複数のアリコートを試験することを含む、請求項5に記載の方法。
  7. 請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)、またはMSPIをコードする核酸、および医薬として許容される担体を含む医薬組成物。
  8. 多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)が組換え形である、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)に、免疫特異的に結合することができる抗体。
  10. 抗体がモノクローナル抗体である、請求項5もしくは6に記載の方法または請求項9に記載の抗体。
  11. 抗体がキメラ抗体である、請求項5もしくは6に記載の方法または請求項9もしくは10に記載の抗体。
  12. 抗体が二重特異性抗体である、請求項5もしくは6に記載の方法または請求項9もしくは10に記載の抗体。
  13. 抗体がヒト化抗体である、請求項5もしくは6に記載の方法または請求項9もしくは10に記載の抗体。
  14. 抗体が他のアイソフォームのMSPIよりも高い親和性でMSPIに結合する、請求項5もしくは6に記載の方法または請求項9〜13のいずれか一項に記載の抗体。
  15. 請求項9〜14のいずれか一項に記載の1つまたは複数の抗体および/または請求項2で定義した1つまたは複数のMSPI、他の試薬および使用教示書を含むキット。
  16. 被験体の多発性硬化症の段階または重度を決定するため、多発性硬化症を発症する危険がある被験体を識別するため、または多発性硬化症を有する被験体に施された治療の影響を調べるために、被験体の多発性硬化症のスクリーニングまたは診断に使用するための、請求項15に記載のキット。
  17. 請求項9〜14のいずれか一項に記載の複数の抗体および/または請求項2で定義した複数のMSPIを含む、請求項15または16に記載のキット。
  18. 治療上有効量の請求項9〜14のいずれか一項に記載の抗体、または抗体の断片もしくは誘導体、および医薬として許容される担体を含む医薬組成物。
  19. 治療を必要とする被験体に、治療上有効量の請求項9〜14のいずれか一項に記載の抗体を投与することを含む、多発性硬化症を治療または予防する方法。
  20. 治療または予防を必要とする被験体に、治療上有効量の1つまたは複数の請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)および/または該MSPIをコードする核酸を投与することを含む、多発性硬化症を治療または予防する方法。
  21. 治療または予防を必要とする被験体に、1つまたは複数の請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)の機能を阻害する核酸を治療上有効量投与することを含む、多発性硬化症を治療または予防する方法。
  22. 核酸がMSPIアンチセンス核酸またはリボザイムである、請求項21に記載の方法。
  23. 1つまたは複数の請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)、MSPIの断片(MSPI断片)、MSPIと関連があるポリペプチド(MSPI関連ポリペプチド)、またはMSPI融合タンパク質と相互作用する作用剤をスクリーニングする方法であって、
    (a)MSPI、MSPIの断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質を候補物質と接触させること、および
    (b)候補物質がMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質と相互作用するかどうかを決定すること
    を含む方法。
  24. 候補物質とMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質の間の相互作用の決定が、候補物質とMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質の結合を定量的に検出することを含む、請求項23に記載の方法。
  25. 1つまたは複数の請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)、MSPIの断片(MSPI断片)、MSPIと関連があるポリペプチド(MSPI関連ポリペプチド)、またはMSPI融合タンパク質の発現または活性を調節する作用剤を、スクリーニングまたは同定する方法であって、
    (a)MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質を発現する第1集団の細胞と候補物質を接触させること、
    (b)上記MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質を発現する第2集団の細胞と対照物質を接触させること、および
    (c)第1および第2集団の細胞中の前記MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質、あるいは該MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質をコードするmRNAのレベルを比較すること、あるいは第1および第2集団の細胞中の下流エフェクターの誘導レベルを比較すること
    を含む方法。
  26. 1つまたは複数の請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)、MSPIの断片(MSPI断片)、MSPIと関連があるポリペプチド(MSPI関連ポリペプチド)、またはMSPI融合タンパク質の発現または活性を調節する作用剤を、スクリーニングまたは同定する方法であって、
    (a)候補物質を第1の哺乳動物または哺乳動物群に投与すること、
    (b)対照物質を第2の哺乳動物または哺乳動物群に投与すること、および
    (c)第1および第2集団中のMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質、あるいは該MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質をコードするmRNAの発現のレベルを比較すること、あるいは第1および第2集団中の下流エフェクターの誘導レベルを比較すること
    を含む方法。
  27. 哺乳動物が多発性硬化症に関する動物モデルである、請求項26に記載の方法。
  28. 候補物質の投与によって、第2集団の細胞または哺乳動物と比べて、第1集団の細胞または哺乳動物中で、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質、あるいは該MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質をコードするmRNA、あるいは下流エフェクターのレベルの増大がもたらされる、請求項25〜27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 候補物質の投与によって、第2集団の細胞または哺乳動物と比べて、第1集団の細胞または哺乳動物中で、MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質、あるいは該MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質をコードするmRNA、あるいは下流エフェクターのレベルの低下がもたらされる、請求項25〜27のいずれか一項に記載の方法。
  30. MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質、あるいは該MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質をコードするmRNA、あるいは下流エフェクターの第1および第2集団中のレベルを、正常な対照哺乳動物中の該MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質、あるいは該MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質をコードするmRNAのレベルとさらに比較する、請求項25または27に記載の方法。
  31. 哺乳動物が多発性硬化症を有するヒト被験体である、請求項30に記載の方法。
  32. 1つまたは複数の請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォーム(MSPI)、MSPIの断片(MSPI断片)、MSPIと関連があるポリペプチド(MSPI関連ポリペプチド)、またはMSPI融合タンパク質の活性を調節する作用剤を、スクリーニングまたは同定する方法であって、
    (a)第1のアリコート中で、候補物質とMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質を接触させること、および
    (b)候補物質を加えた後の第1のアリコート中のMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質の活性を決定し、対照のアリコート中のMSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質の活性、あるいは所定の基準範囲と比較すること
    を含む方法。
  33. MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質が組換えタンパク質である、請求項20または23〜32のいずれか一項に記載の方法。
  34. MSPI、MSPI断片、MSPI関連ポリペプチド、またはMSPI融合タンパク質を固相上に固定する、請求項23、24または32のいずれか一項に記載の方法。
  35. 被験体の多発性硬化症をスクリーニングまたは診断するため、あるいは抗多発性硬化症薬剤または被験体に施された治療の効果を調べるための方法であって、
    (a)請求項2で定義したMSPIをコードするヌクレオチド配列と相補的な10個以上の連続したヌクレオチドを含む、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド・プローブを、
    被験体からの生物試料から得たRNA、またはこのRNAからコピーしたcDNAと接触させることであって、存在する場合はプローブとヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを可能にする条件下で接触を行うこと、
    (b)存在する場合は、プローブとヌクレオチド配列の間のハイブリダイゼーションを検出すること、および
    (c)存在する場合は、ステップ(b)で検出したハイブリダイゼーションを、対照試料中で検出したハイブリダイゼーション、または所定の基準範囲と比較すること
    を含む方法。
  36. ステップ(a)がヌクレオチド配列とDNAアレイをハイブリダイズさせるステップを含み、かつアレイの1つまたは複数のメンバーが、異なるMSPIをコードする複数のヌクレオチド配列と相補的なプローブである、請求項35に記載の方法。
  37. 1つまたは複数の請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォームの活性を調節する方法であって、請求項23〜34のいずれか一項によって同定した作用剤を被験体に投与することを含む方法。
  38. 治療または予防を必要とする被験体に、1つまたは複数の請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォームの活性を調節する作用剤を治療上有効用量投与することを含み、それによって多発性硬化症の症状が改善される、多発性硬化症を治療または予防する方法。
  39. 多発性硬化症を治療により調節するための標的を同定するための方法であって、1つまたは複数の請求項2で定義した多発性硬化症関連タンパク質アイソフォームの活性を、候補標的が多発性硬化症を調節するのに有効であるかどうかを判定するための手段として使用する方法。
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