JP2004530256A - 小型クローズド・ドリフト・スラスタ用の磁場 - Google Patents
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Abstract
コンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースの1つの実施の形態において、イオン化可能なガスが環状の放電領域へ導入される。アノードはこの領域の一端にあり、電子放出カソードは反対側の開放端付近にある。磁気回路は内側磁極から外側磁極へ延びて、両磁極は開放端付近にある。放電領域内の電子電流はそこにある磁場と相互作用して、イオンを生成して開放端から外へ加速する。磁性容器が放電領域のアノード端を取り囲む。磁性容器の隣接要素、内側磁極、および任意の中間の磁性要素は次々と接近した位置にある。磁化手段は外側磁極と磁性容器との間にのみ位置する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にイオンおよびプラズマ技術に関するものであって、更に詳細にはそれは閉じた電子ドリフトを有するプラズマおよびイオンソースに関連する。
【0002】
本発明はスパッタ・エッチング、スパッタ・デポジション、および特性強化などの工業的応用で利用できる。更に、電気式宇宙用推進に応用を見出すこともできる。
【背景技術】
【0003】
イオンを加速して、それらのイオンのエネルギーを有するビームを形成することは静電的および電磁的の両方法によって既に確立されている。本発明は電磁的加速を利用するソースに関連する。そのようなソースは一般的に電磁式あるいはグリッドレス・イオンソースと呼ばれている。イオンビームは一般に、正に帯電したイオンの破壊的な相互反発を回避するために電子の存在を必要とするのに十分高濃度であるのが普通であるため、イオンビームは中性化されたプラズマであるとも考えられ、そのためそのようなイオンソースはプラズマソースとも呼ばれる。イオンソースが宇宙用推進として使用されるときは、それらはスラスタと呼ばれる。
【0004】
電磁加速によるイオンソース(あるいはスラスタ)では、電子放出カソードとアノードとの間で放電が起こる。イオンを加速する電場は、この放電中の電子電流と、アノードとカソードとの間の放電領域に生成される磁場との相互作用によって確立される。この相互作用は一般に、磁場の方向と、確立される電場の方向の両方に直交するホール電流(Hall current)を含んでいる。このホール電流は主として電子で構成される。
【0005】
本発明はホール電流式のイオンソース、すなわちホール電流を利用するものに関連し、そこでは放電領域は一般に内側と外側の両境界を有する環状の形状を有し、イオンはこの領域の環状断面においてのみ加速される。このタイプのホール電流式イオンソースは、ドリフトする電子のホール電流が環状放電領域周辺の閉じた経路を流れるため、クローズド・ドリフト型イオンソースとも呼ばれる。このタイプのホール電流式イオンソースは通常は、アルキポフ(Arkhipov)等による米国特許第5,359,258号、カウフマン(Kaufman)による米国特許第5,763,989号、およびPlasma Source Science & Technologyの第8巻のR1ページ以降に記述されているように、放電領域中に一般に放射状の磁場形状を有している。
【0006】
ホール電流式イオンソースはまた、外側の境界のみを有する円形の放電領域を有して、この領域の円形の断面にわたって連続的にイオンが加速されるような場合もあることを注意しておく。このタイプのイオンソースは、エンド・ホール式イオンソースと呼ばれ、カウフマン(Kaufman)等による米国特許第4,862,032号、およびJournal of Vacuum Science and Technology A、第5巻、第4号のページ2081以降に記載されたカウフマン(Kaufman)等による論文に記述されたように、一般に軸方向の磁場形状を有している。このタイプのイオンソースは、ここで興味のあるクローズ・ドリフト型イオンソースから区別するために言及した。
【0007】
更に注意しておくが、ここで興味のあるクローズド・ドリフト型イオンソースは、一般に磁性層あるいはSPT(静止プラズマ型スラスタ)タイプのものである。このタイプのクローズド・ドリフト型イオンソースと、他方の主要なクローズド・ドリフト型であるアノード層タイプとの違いについては、上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文にズーリン(Zhurin)等が述べている。形状では、磁性層あるいはSPTタイプのものは幅よりも長さのほうが長い放電領域を有し、他方、アノード層タイプのものは幅よりも短い長さを有する放電領域を有している。両方の場合に、放電領域の幅というのは放電領域の内側と外側の境界間の径方向の距離である。磁性層タイプのものに好適な磁場形状は磁場が一般に放射状であり、出口面付近に集中しており、放電領域の上流端にあるアノード付近で強度がずっと低下しているものである。
【0008】
1995年にモスクワで開催された24th International Electric Propulsion Conference(第24回国際電気式推進会議)のProceedings(会議録)のページ259以降にギュエリニ(Guerrini)等が、1997年にオハイオ州クリーブランドで開催された25th International Electric Propulsion Conference(第25回国際電気式推進会議)のProceedings(会議録)のページ326以降にギュエリニ(Guerrini)等が、また1997年にオハイオ州クリーブランドで開催された25th International Electric Propulsion Conference(第25回国際電気式推進会議)のProceedings(会議録)のページ483以降にカイムス(Khayms)等がそれぞれ指摘しているように、小型のイオンソースに興味が持たれている。これらの出版物は電気式宇宙用推進を主として目指しているが、そのほかにももともとコモンウエルス・サイエンティフィック社(Commonwealth Scientific Corporation)によって製造され、現在はヴィーコ・インスツルメンツ社(Veeco Instruments Inc.)によって製造されている商用のMark−I(R)エンド・ホール式イオンソースに示されるような工業用の小型イオンソースにも興味が持たれている。
【0009】
人は、小型のクローズド・ドリフト型イオンソースは、同じタイプの大型のイオンソースから形状の縮小によって、すなわちすべての部品を同じ比率で縮小することによって作製できると期待するかもしれない。もしこの方法を実行すれば、磁気回路の磁性部分の磁束密度は増大し、寸法の縮小が大きくなると磁気回路の内部で飽和値に達する箇所が現れてくる。放電領域の内側直径の内部領域では空間が最も限られるため、飽和値に達するのは通常は磁気回路の内側経路であり、典型的には磁気回路のこの要素の上流端である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のことに照らして、本発明の全体的な一般的目的は、広い動作範囲で効率的に動作する、一般には磁性層あるいはSPTタイプのものであり、それはまた小型のイオンソースあるいはスラスタを必要とする多様な工業的応用および宇宙推進応用に利用することができる小型のクローズド・ドリフト型イオンソースに適した磁場構成を提供することである。
【0011】
本発明の別の全体的な一般的目的は、磁気回路要素中に効率的に利用できるため、磁性層あるいはSPTタイプのより大型のクローズド・ドリフト型イオンソースに適しており、またその生成されたイオンビームのエネルギーおよび電流に対して磁性材料中にコンパクト、効率的、および経済的に使用される磁場構成を提供することである。
【0012】
本発明の特定の目的は、磁気回路の内側経路の許容断面積を減らし、クローズド・ドリフト型イオンソースの最も熱い領域の1つへ抵抗性加熱を追加するであろう内側磁石を使用せずに、磁場形状を最適化することである。
【0013】
本発明の別の特定の目的は、イオン化および加速プロセスに直接寄与することのない、磁気回路の内側経路を貫通する磁束を最小化することであり、それによって磁気回路のその要素中の磁束密度を削減することである。
【0014】
本発明のより一般的な目的は、小さい平均直径を有する放電領域を有するクローズド・ドリフト型イオンソースを作製することによって、動作のために必要なガス流量を最小化することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの好適な実施の形態に従えば、コンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースは、環状の放電領域へガスを導入し、イオン化してプラズマを生成する手段を含む形を取る。この領域の一端にアノードが位置し、電子放出カソードは対向する開放端近くに位置する。複数の磁性要素および少なくとも1つの磁化手段を含む磁気回路は、内側の磁極から外側の磁極まで延びており、両磁極は開放端近くに位置している。放電領域のカソードからアノードへ流れる電子電流はその中にある磁場と相互作用してガスをイオン化してイオンを生成し、それらのイオンを開放端から外へ加速する。磁気回路の複数の磁性要素は放電領域のアノード端を取り囲む磁性容器を形成する。磁性容器の隣接要素、内側磁極、および任意の中間的な磁性要素は次々と互いに近接している。磁化手段は外側磁極と磁性容器との間にのみ位置している。
【0016】
特許を与えられると信ずる本発明の特徴は添付の特許請求の範囲に詳細に提示してある。本発明の構成および動作の振る舞いについては、本発明のそれ以外の目的および特徴と一緒に、添付図面に関連して取り込まれる本発明の特定の実施例についての以下の説明を参照することで理解できよう。いくつかの図面では同様な参照符号は同様な要素を指している。
【0017】
これらの模式図は断面における表面を表しているが、乱雑にならないように全体として一般に円柱状のアセンブリの表面およびバックグラウンドの端部も示していることを注意しておく。
【0018】
図1を参照すると、従来技術のほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソース、より詳細には磁性層(magnetic−layer)タイプのものが示されている。イオンソース20は磁気回路22を含んでおり、それは磁性内側磁極24、磁性外側磁極26、磁性内側経路28、1または複数の磁性外側経路30、磁性バックプレート32、内側経路28を取り囲む内側の励磁コイル34、外側経路30を取り囲む1または複数の外側の励磁コイル36を含んでおり、これらはすべて、コイル34および36が適当な電源によって励起されたときに、内側磁極と外側磁極との間に磁場を発生するように働く。電子放出カソード38は放電用電源(図示されていない)の負端子へつながれ、他方、アノード40は同じ電源の正端子へつながれる。単一のガスフロー通路42、通常は横方向にオフセットされた電子放出カソード38、および典型的にはいくつかの個別的磁性外側経路30および外側の励磁コイル36を除けば、図1に示す装置は中心軸の周りに対称である。励磁コイルは図1に示され、事実、最も普通に用いられる磁化手段である。永久磁石もまた使用されているので、それも従来技術の中に含まれるものとする。
【0019】
頻繁に使用される寸法もいくつか図1に示したが、それらには、放電領域の内側直径DIN;放電領域の外側直径DOUT;放電領域の平均直径DM(DM=(DIN+DOUT)/2);放電領域の幅W;アノードから出口面までの放電領域の長さL;およびクローズド・ドリフト型ソース全体の直径DSOURCEが含まれる。このソースの外側輪郭は不規則である場合があり、その場合には、ソースを横切る最大の差し渡し寸法がDSOURCEである。
【0020】
動作時には、イオン化可能なガスがフロー通路42を通ってアノード40に入ってくる。イオン化可能なガスは分配器手段44(この場合、2つの外周通路とそれらの間に1つのバッフル)によってアノード44内の雰囲気中へ均一に分配され、周囲に分散したアパーチャ46を通って出て行く。カソード38から放出された電子のいくつかは、放電領域48を通ってアノード40の方向へ戻るように流れ、環状の放電領域の周りをそこにある磁場の影響を受けて旋回するようにドリフトする。放電領域48を取り囲む放電チャネル50は高温のセラミック状の材料でできているので、このチャネルへ流れこむ正味の電流はゼロである。旋回するドリフト運動のせいで、これらの電子は、アノード40からアパーチャ46を通って出て行くイオン化可能なガス分子を効率的にイオン化し、それによって放電領域48中にプラズマ(電子とイオンのガス状混合物)を発生させる。それらの電子がまた、領域48中の磁場と相互作用して、軸方向の電場(図示されていない)を領域48内部に確立する。このように、磁場の存在がイオン化可能なガス分子のイオン化を促進する役目を果たし、それとともに、後に軸方向電場を通して、形成されたイオンを加速する役目も果たす。放電チャネル50の壁52およびアノード40の表面で電子と再結合しないイオンは、軸方向の電場によって外側(図1の右方向)へ加速されてエネルギーを持ったイオンビームを形成する。カソード38を離れる電子のいくつかは、電荷中和し、必要であればこのイオンビームを電流中和する。
【0021】
ここで図2を参照すると、図1に示されたクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図が示されている。図2において、磁気回路に関係しない部品は、磁場Bの形状を見やすくするために省略されている。放電領域48の境界は、一端をアノード40によって、また横方向は放電チャネル壁52によって定義されるが、破線54で示されている。
【0022】
図1に示すタイプのイオンソースの初期動作の通常手順は、内側の励磁コイル34と、1または複数の外側励磁コイル36との間の電流比率を最適化することである。この最適化は、破線54で囲まれた放電領域48中にほぼ放射状の場の方向を確立するために必要であり、それは典型的には、収束されたイオンビーム、すなわち分散が最小のビームを得ることによって検証される。動作条件が異なればそれに対応して場の強度を調節する必要があるが、この最適化によって決められた電流比率は動作条件の広い範囲にわたって一定に保たれるのが普通である。注意すべきことは、場の方向を“ほぼ”放射状と述べたが、この理由はアノードから出口面までの磁場強度の望ましい軸方向変化によって、ラプラスの方程式から示すことができるように、曲がった磁力線が生ずるあるためである。この曲りのせいで、与えられた1つの軸上で1つの半径において1つの特別な場の方向しか許可されないことになり、同じ軸上の他の半径ではその方向は放射状からわずかに外れることになる。
【0023】
図1に示すイオンソースに関して、放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化が図3に示されている。場の強度は磁極24および26の近傍で最も強いが、これはまたほとんどのイオン加速が行われる場所でもある。場の強度はアノード近傍で小さい値に低下するが、これは磁性層タイプのクローズド・ドリフト型イオンソースに対して広い動作範囲で高効率と安定性を与えるため望ましい。
【0024】
図面中の磁場Bについての解は、静磁ポテンシャルと呼ばれるスカラー関数ψのグラディエント∇を取ることによって得られる。
【0025】
数1
B=−∇ψ (1)
【0026】
静磁ポテンシャルの値は対象とする領域の境界、すなわち磁気回路の各種要素の表面で設定できる。静磁ポテンシャルψの境界値を用いて1つの領域にわたる磁場Bの解を求めることは、電気的ポテンシャルVの境界値を用いて1つの領域において電場Eを解くことと数学的に等価である。実際に、対象領域の磁場(あるいは電場)についてのラプラスの方程式の数値解は、緩和法を用いて計算機で求めることができる。
【0027】
図2に戻ると、磁場分野の当業者には明らかなように、放電領域48の径方向で内側と径方向で外側とに位置する内側および外側磁極24と26との間には静磁ポテンシャルの差が存在し、このポテンシャル差は励磁コイル34と36とによって発生する静磁ポテンシャル差の和にほぼ等しい。磁性要素中には静磁ポテンシャルのほんの小さい差しか存在しないが、それはそれらの部品の相対透磁率が高いものの、有限であるためである。磁気回路要素の境界における静磁ポテンシャル間の関係と、生成される場の形状についての理解から、図3において、出口面からアノードへの磁場強度の急激な減少は、図2に示された磁気回路の形状と整合すること、特に、磁極24と26とは、内側経路28と外側経路30とよりも互いにずっと接近していることが明らかである。
【0028】
人は、コンパクトで小型のクローズド・ドリフト型イオンソースは、図1に示されたすべての要素の寸法を同じ比率で縮小することによって得られると期待するかもしれない。上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文にズーリン(Zhurin)等が述べているように、幾何学的に相似の(すべての部品が同じ比率でスケーリングされた)イオンソース中では、磁場強度Bは次の比例関係で記述できる。
【0029】
数2
B ∝ 1/W (2)
【0030】
ここでWは環状の放電領域の幅である。2つの磁極間の全磁束ΦMは次のように与えられる。
【0031】
数3
ΦM ∝ (磁場強度)×(長さ)×(全周) (3)
∝ L DM /W
【0032】
ここでLは放電領域の長さ、DMは放電領域の平均直径であり、従って全周に比例する。
【0033】
幾何学的スケーリングにおいて、比L/DMおよびW/DMは一定に保たれるため上の式は次のようにも書ける。
【0034】
数4
ΦM ∝ DM (4)
【0035】
この磁束が貫通する磁気回路の内側経路の断面積、AINは次のように表される。
【0036】
数5
AIN ∝ DM 2 (5)
【0037】
比例式(4)の磁束を比例式(5)の内側経路面積で除すると、内側経路の磁束密度は次のようになることが分かる。
【0038】
数6
ΦM/AIN ∝ 1/DM (6)
【0039】
言い換えれば、磁気回路の内側経路の磁束密度は放電領域の平均直径に反比例する、あるいはスケーリングが幾何学的であるため、任意の固有寸法の大きさに反比例する。
【0040】
内側経路はこの磁束密度の計算に合わせて選ばれた。すなわち、小型のクローズド・ドリフト型イオンソースでは磁気回路のこの部分、通常は内側経路がバックプレートと出会う箇所で磁気飽和に達する可能性が最も高いためである。そのような小型のイオンソースで内側経路が飽和に達すると、この飽和を緩和するために磁性材料を追加することは、対象となる領域に隣接する磁気回路の輪郭を変更することなしには不可能であることに注意しなければならない。このことは直接的に磁場の形状に影響を与え、従ってイオンソースの特性にも影響する。
【0041】
これと対照的に、磁気回路の外側経路が飽和に近づくようであれば、イオンソースの外側に磁性材料を追加することによって、ソースの外形寸法をわずかに増やすが、対象領域に隣接する磁気回路の輪郭には影響を与えないようにすることができる。
【0042】
磁気回路の磁性要素が磁気的に飽和する可能性を考慮することに加えて、イオンソースとして望ましい特性レベルについて考慮する必要がある。上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文にズーリン(Zhurin)等が述べているように、ここではFと呼ぶ、必要とされるガス流量は、幾何学的にスケーリングされたクローズド・ドリフト型イオンソースの動作を同じように維持するためには、放電領域の直径に比例して変化する。
【0043】
数7
F ∝ DM (7)
【0044】
従って、小電流のイオンビームにおいてガスを効率的に利用するためには、放電領域の直径は小さい必要がある。
【0045】
図4を参照すると、従来技術の軸対称のクローズド・ドリフト型イオンソースの別のものが示されている。図4のイオンソース60は、図1のそれと類似の機能を有する、図1のそれと類似の要素を有している。磁気回路22Aは一般に図1の磁気回路22と似ているが、形状的には異なるプロポーションを有する。図4に示される構造を提示した目的は、よりコンパクトなイオンソースを得るために図1に示されたイオンソースの放電領域およびイオンソース直径を縮小することの効果を示すことであり、この場合、内側および外側の励磁コイルを同じ寸法に保つとともに、内側および外側の経路についても断面を同じに保っている。
【0046】
ここで図5を参照すると、図4に示したクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図が示されている。図5では、磁気回路に関係しない部品は省略されて、磁場Bの形状を見易くしている。図4に関して議論した相対的直径の変更を除けば、図5は図2と一般に同じように見える。図5から明らかになることは、磁気回路の内側および外側経路間の径方向距離が減少すれば、磁極24および26の上流(左方向)にある放電領域48の部分の磁場強度が増大するということである。定量的には、図2および5の磁気回路で静磁ポテンシャルの分布がほぼ同じであれば、アノードにおける磁場は、磁気回路の内側経路と外側経路との間の径方向距離とともにほぼ反比例的に変化すると期待される。
【0047】
磁場強度の変化は、図6と図3を比較すればもっとはっきりする。図4、5、および6のイオンソース60のアノード付近の磁場強度が高くなれば、図1、2、および3に示したイオンソース20に関する性能パラメータと比べて、このイオンソースに関する動作範囲は縮小するし、また効率も低下するであろう。要約すると、イオンソース20のそれに類似した構造の外側径方向寸法を単に縮小することによって、より小型でよりコンパクトなイオンソースを得ようとすることは、コンパクトで小型のイオンソースを得るための効果的なやり方ではない。
【0048】
図7を参照すると、従来技術の更に別のほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソースが示されている。図7のイオンソース70は一般に図4、5、および6に示されたイオンソース60と似ている。磁気回路22Bにおける重要な違いは、イオンソース70に対する内側および外側の磁気シールド72および74の追加である。これらの磁気シールドの目的は、アノード近傍の磁場強度を、出口面付近の内側および外側磁極24および26間の磁場強度に比べて低くすることである。
【0049】
ここで図8を参照すると、図7に示したクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図が示されている。ここでも磁場Bの形状を見易くするために、磁気回路に関係しない部品は図8では省略されている。磁気シールドの効果は図8に定性的に示されている。図5ではアノード近傍の磁場強度に加わるはずの磁場部分は、図8では磁性磁場シールドによってアノード周りで押し退けられている。この効果は図9に更に定量的に示されている。図7、8、および9に示したイオンソースのコンパクトな形状にも拘わらず、アノード近傍の磁場強度は、磁極間および出口面付近の磁場強度に比べて非常に低い。
【0050】
静磁場的観点から、内側磁極24と内側磁気シールド72との間のポテンシャル差は、関連する磁性要素における有限の透磁率効果(permeability effect)を除いて、内側経路28を取り囲む内側励磁コイルによって生成される。外側磁極26と外側磁気シールドとの間のポテンシャル差は、関連する磁性要素における有限の透磁率効果を除いて、外側経路30を取り囲む外側励磁コイル36によって生成される。内側および外側の磁気シールド72および74は、それらの間に径方向に位置するバックプレート32の部分と一緒に、アノード40の上流側(図7および8の左側)、および径方向で内側および外側に、ほぼ均一な静磁ポテンシャルを有する磁性容器を形成する。内側および外側磁極の中間の静磁ポテンシャルにあるこの容器の存在によって、アノード近傍の磁場強度が低くなっている。
【0051】
図7に示す磁気経路22Bの説明を要約すると、内側および外側の磁気シールド72および74は、それらの間に径方向に位置するバックプレート32の部分と一緒に、磁性容器を形成するが、シールドとバックプレートとがつながって構成されているため、それはほぼ均一な静磁ポテンシャルにある。磁化手段である内側励磁コイル34は、この容器と内側磁極との間に静磁ポテンシャルの差を導入する。別の磁化手段である外側励磁コイル36は、この容器と外側磁極との間に別の静磁ポテンシャルの差を導入する。
【0052】
イオンソース70の形状は、アルキポフ(Arkhipov)等による米国特許第5,359,258号のそれと似ている。注意すべき点は、イオンソース20のそれと比べて、イオンソース70ではイオン化および加速領域が下流へシフトしていることである。この変化に関連するのは、磁場最大値の下流へ(アノードから遠ざかる方向へ)のシフトであり、平均の領域の直径DMにおいて出口面を超えることもできる。
【0053】
ここで本発明にとって重要なものは、磁気回路の内側経路28と内側磁気シールド72との間の磁場Binと、磁気回路の外側経路30と外側磁気シールド74との間の磁場Boutである。磁場のこれら部分は磁極間の磁場強度に加わることなく、磁気回路の内側および外側経路の磁束密度に加えられ、これは、ガスをイオン化し、得られたイオンを加速するための最も効率的な磁場部分となっている。特に、磁気回路の内側経路と内側磁気シールドとの間の磁場Binは、磁気回路の重要な内側経路の磁束密度に加えられる。
【0054】
上の議論で述べたように、磁気シールドを使用することによって、アノード近傍の磁場強度を低く保ったままで、放電領域の与えられた平均直径のもとで、コンパクトな外側直径を実現する。ここまでのところ、磁気シールドを使用することによってコンパクトなイオンソースの作製が可能となった。しかし、内側シールドと磁気回路の内側経路との間の磁束は、重要な内側経路中の磁束密度を増加させるため、平均の放電領域直径を減らすために幾何学的縮小を利用することにおける困難さが増す。
【0055】
別の従来技術として、24th International Electric Propulsion Conference(第24回国際電気式推進会議)(1995年、モスクワで開催)のProceedings(会議録)のページ259以降に発表されたギュエリニ(Guerrini)等のものを引用することができる。ギュエリニ(Guerrini)等は、円筒形の内側経路と、バックプレートに近い1つの励磁コイルを採用した磁気回路構造を使用した。内側磁極は内側経路と同じ直径であり、内側励磁コイルはないため、放電領域の内側直径は内側経路の直径よりもわずかに大きいだけであった。アノード近傍で要求される磁場強度の低下は、非常に大きい外側経路直径を採用することによって得られた。20mmの放電領域外側直径に対して、ソース長は140mm、直径は約150mm(ギュエリニ(Guerrini)等の図1および2を参照)であった。ギュエリニ(Guerrini)等は、彼等のソースが小型であると述べたが、小型なのは放電領域だけであり、ソースの残りはそうでなかった。大型のソース直径に加えて、磁気回路の内側経路は拡張された長さを有し、従ってこの拡張された長さにわたる累積磁束は、イオン化および加速のためにちょうど必要とされる磁束よりも大幅に大きなものとなった。
【実施例1】
【0056】
(発明を実行する最適モード)
図10を参照すると、本発明の1つの実施の形態に従って構築されたほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソースが示されている。イオンソース80は修正された磁気回路22Cを含み、それは磁性内側磁極24A、磁性外側磁極26、磁性内側経路28、1または複数の磁性外側経路30A、磁性バックプレート32、磁性磁気シールド74A、および励磁コイル36Aを含み、これらはすべてコイル36Aが適当な電源で励起されたときに、内側磁極と外側磁極との間に磁場を生成するように働く。電子放出カソード38は典型的な放電電源(図示されていない)の負端子へつながれ、またアノード40は同じ電源の正端子へつながれる。単一のガスフロー通路42、使用される可能性のある複数の外側経路30A、および通常は横方向にオフセットされた電子放出カソード38を除いて、図10に示された装置は中心軸周りに対称である。頻繁に使用される寸法DIN、DOUT、DM、W、およびDSOURCEもまた図10に示されており、それらは従来技術を説明するために用いられた同じ寸法と整合するように定義されている。長さLの定義に若干の違いがある。すなわち、内側磁極24Aは外側磁極26の下流にまで延びており、この長さは外側磁極の下流端で終端するとして独断で定義した。
【0057】
動作中は、イオン化可能なガスがフロー通路42を通ってアノード40へ入る。イオン化可能なガスは分配器手段44によってアノード44内の雰囲気中へ均一に分配され、周囲に分散したアパーチャ46を通って出て行く。カソード38から放出された電子のいくつかは、放電領域48を通りアノード40へ向かって戻るように流れる。これらの電子は、アノード40からアパーチャ46を通って出て行くイオン化可能なガス分子をイオン化し、それによって放電領域48中にプラズマ、すなわち電子とイオンのガス状混合物を発生させる。それらの電子はまた、領域48中の磁場と相互作用して、軸方向の電場(図示されていない)を領域48内部に確立する。放電チャネル50の壁52およびアノード40の表面で電子と再結合しないイオンは、軸方向の電場によって外側(図10の右方向)へ加速されてエネルギーを持ったイオンビームを形成する。カソード38を離れる電子のいくつかは、電荷中和し、必要であればこのイオンビームを電流中和する。
【0058】
ここで図11を参照すると、図10に示したクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図が示されている。磁気回路に関係しない部品は、磁場Bを見易くするために図11では省略されている。放電領域48の境界は、一端をアノード40によって定義され、横方向は放電チャネル壁52で定義されるが、破線54で示されている。
【0059】
図10のイオンソースに関する放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化が図12に示されている。磁場強度は、出口面付近の、放電領域48の径方向で内側と外側とに位置する磁極24Aおよび26の近傍で最大値を取る。磁場が最も強いこの領域は、ほとんどのイオン加速が行なわれる場所である。磁場強度はアノード近傍で小さい値に低下するが、これは、上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文にズーリン(Zhurin)等が述べているように、磁性層タイプのクローズド・ドリフト型イオンソースに対して、広い動作範囲にわたって高い効率と安定性を保証するため望ましい。
【0060】
図10で気付くように、内側磁極24Aは、図1、4、および7の従来技術の磁極とは、磁気回路の内側経路と同じ直径を有する点で異なっている;磁気回路の1または複数の外側経路は、従来技術の図面に示された外側経路とは励磁コイルによって取り囲まれていない点が異なる;励磁コイル36Aは、外側経路を取り囲む多重ソレノイドのコイルではなく単一の環状コイルである点が、また内側励磁コイルと一緒に使用されていない点が異なる;更に修正された磁気シールド74Aは、従来技術のようにバックプレート32から軸方向に延びる代わりに、1または複数の外側経路から内側へ向けて放射状に延びるように示されており、それに加えて内側磁気シールドと一緒に使用されていない。典型的な従来技術からのこれらの詳細な変更のいくつかは本発明の実施の形態にとって必要ないものであるが、図10の説明を完全なものとするためにここに記述した。
【0061】
内側磁気的経路28と同じ直径の内側磁極24Aを使用することは尋常ではないが、上で引用した24th International Electric Propulsion Conference(第24回国際電気式推進会議)(1995年、モスクワで開催)のProceedings(会議録)のページ259以降でギュエリニ(Guerrini)等によって過去に使用されている。そのような内側磁極を、放電領域の内側壁と磁気回路の内側経路との間に内側励磁コイルを使用しないこととを結びつけることによって、内側壁の直径は内側経路と同じ程度に縮小することができて、放電領域の直径を縮小することが可能になる。しかし、ギュエリニ(Guerrini)による上述の論文の従来技術では、アノードにおいて十分小さい磁場強度を得るためには、放電領域の直径に比べて大きいソース直径が必要であった。
【0062】
単一の磁気コイル、あるいは磁場供給源、あるいは並列的に機能するため等価的に単一の磁場供給源のように振舞うそのような複数の供給源を使用することもまた尋常ではないが、カウフマン(Kaufman)による米国特許第5,763,989号とともに、ギュエリニ(Guerrini)による上述の論文で過去に使用されたことがある。
【0063】
静磁場的観点から、図10および11の磁気回路構成は従来技術とは明瞭に異なる。外側磁極26は1つの静磁ポテンシャルにあり、他方、内側磁極24A、内側経路28、バックプレート32、1または複数の外側経路30A、およびエッジPまでの磁気シールド74Aはそれらの磁性要素中の有限の磁場浸透効果を除いて、別の静磁ポテンシャルにある。後者の複数要素はほぼ均一な静磁ポテンシャルの磁性容器を形成し、それがアノードにおける低磁場強度の原因となっている。この容器は部分的には、図7および8に関して述べた内側および外側磁気シールド72および74とバックプレート32の一部からなる容器に似ている。しかし、この容器の静磁ポテンシャルは、容器と内側磁極との間に内側励磁コイルがない点で異なっており、そのため、この容器の静磁ポテンシャルは図10および11の内側磁極24Aのそれにほぼ等しい。静磁ポテンシャルのこの差は2つの重要な効果をもたらす。
【0064】
まず、図10および11の磁気構造では、内側磁気シールドからの付加的な磁束が回避される。図8では、放電領域48での有効な磁束は本質的に磁極24と26との間のそれである。この磁束は内側経路28を貫通しなければならない。励磁コイル34が存在するため、内側磁気シールド72と、内側経路28および内側磁極24の両方との間の磁束BINが内側経路28を貫通する磁束に加えられ、それによってバックプレート32付近で内側経路28を貫通する磁束は飽和に近づく。図10および11の構造には内側磁気シールドも内側励磁コイルも存在しないため、磁気回路の内側経路を貫通する磁束は減少して、イオン化可能なガスをイオン化および加速するために必要な磁束に近づく。
【0065】
第2に、磁極の上流でアノード近傍の磁束BANの方向は放射状よりもむしろ軸方向である。アノード近傍のこの磁場の方向は、図2、5、および8に示され、更には上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文でズーリン(Zhurin)等によって述べられたような、前に用いられた放電領域全体にわたってほぼ放射状であった方向から劇的に変わっている。
【0066】
上述のズーリン(Zhurin)等によるレビュー論文は、クローズド・ドリフト型イオンソースについての約40年間にわたる研究のレビューであり、そのようなイオンソースについての技術の総合的な情報源となっている。磁場のほとんどの部分が(図11の磁場BANを参照)従来使用されたほぼ放射状の方向から本質的に外れたクローズド・ドリフト型イオンソースによって効率的な動作を実現できたことは、明らかに予期せぬ結果である。
【0067】
この結果が得られたものの、可能な説明は「特定の実施例」の節で述べる優れた性能に対して与えることができる。上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文でズーリン(Zhurin)等によって述べられたように、磁性層タイプの典型的なクローズド・ドリフト型イオンソースでイオン加速を実現する軸方向電場は、磁極近傍の高磁場領域に集中して、磁場それ自身よりもずっと強く集中している(ズーリン(Zhurin)等の図10を参照)。ここでの図11中の磁極近傍の磁場BPPはほぼ放射状になっており、軸方向の電場が集中すると期待される領域において満足できる方向を有している。他方で、図11の磁極の上流のアノード近傍の磁場BANは好適なほぼ放射状の方向から本質的に外れているが、このずれは多分さほど重大ではない。その理由は、この領域では方向電場が小さいと予想されるためである。
【0068】
図10に示された磁気回路22Cの説明を要約すると、エッジPまでの磁気シールド74Aは、1または複数の外側磁気経路30A、バックプレート32、および内側磁気経路28の上流部分と一緒に、隣接要素が次々に接近しているためほぼ均一な静磁ポテンシャルにある1つの磁性容器を形成する。内側磁極24Aは、それがこの容器の磁性要素に接近しているため、この磁性容器の静磁ポテンシャルにほとんど等しくなっている。磁化手段である励磁コイル36Aは、外側磁極26とこの磁性容器との間に静磁ポテンシャル差を導入する。
【0069】
この磁性容器が均一な静磁ポテンシャルになっている必要はないことに注意して欲しい。必要なことは、このポテンシャル差が、内側と外側の磁極間の差と比べて小さく、従って容器内部の磁場がそれらの磁極間の磁場に比べて小さいことだけである。実際に、磁場の形状に対して小さい調整を施すことがしばしば有用である。それらの調整は、容器を含む要素の厚みを調節することによって、あるいは物理的に分離された要素の場合は、隣接する要素間に薄い非磁性層を導入することによって行なうことができる。本質的に必要なことは、磁性容器が、次々と互いに接近した1または複数の磁性要素によって構成され、それによってこの容器内部の磁場が磁極間のそれと比べて小さくなることである。
【0070】
図10および11のイオンソースは小型のクローズド・ドリフト型イオンソースとしての要求を満たしているように見える。放電チャネルの内側壁は磁気回路の内側経路の直径近くまで縮小でき、それにより、放電領域の与えられた寸法に対して磁気回路の内側経路に対する最大断面を利用することができる。更に、この結果は、磁気回路の外側部分をコンパクトにした構成によって実現できるため、特性を劣化させることなく全体のソース直径を小さくてできる。更に、内側磁気経路が飽和に達しないで可能な幾何学的縮小による最大の寸法縮小は、図7に示した内側磁気シールドへの磁束や、24th International Electric Propulsion Conference(第24回国際電気式推進会議)(1995年、モスクワで開催)のProceedings(会議録)のページ259以降に掲載されたギュエリニ(Guerrini)等による上述の論文に述べられたような長い内側経路長への磁束などのような任意の外来の磁束が磁気回路の内側経路に対して存在しないことによって保証されるべきである。
【0071】
図4および7に示されたものと同様に、図1に示されたタイプのイオンソースの初期動作時の手順は、内側励磁コイル34と、1または複数の外側励磁コイル36との間で電流比を最適化することである。図10および11のイオンソースでの等価な最適化は、磁気回路の内側経路の長さを変えて試験することによって実行される。収束した(広がりが最小の)イオンビームに対して、内側磁極は典型的には、図10に距離dで示されたように、外側磁極をわずかに越えて延びる。宇宙用推進では、収束したイオンビームが望ましい。しかし工業用としては、収束ビームも発散ビームもともに興味が持たれる。より発散の大きいイオンビームは、内側経路を延長し、距離dを増やすことによって得られる。より収束したイオンビームは距離dを減らすことによって、あるいはこの距離を負にすることによって(内側磁極を外側磁極の上流へ動かす)得られる。
【実施例2】
【0072】
図13を参照すると、本発明の別の実施の形態に従って構築されたほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソースが示されている。イオンソース90は修正された磁気回路22Dを含んでおり、それは磁性内側磁極24A、磁性外側磁極26、磁性内側経路28、1または複数の磁性外側経路30B、磁性バックプレート32、磁性磁気シールド74B、および励磁コイル36Bを含んでおり、これらはすべて、コイル36Bが適当な電源によって励起されたときに、内側磁極と外側磁極との間に磁場を発生するように働く。電子放出カソード38は、一般的な放電用電源(図示されていない)の負端子へつながれ、他方、アノード40は正端子へつながれる。イオンソース90の動作は図10のイオンソース80のそれと同様である。
【0073】
図13のイオンソース90と図10のイオンソース80との違いは、励磁コイル36Bが、外側磁極付近の領域に閉じ込められずにイオンソースの全長にわたって延びていることと、修正された磁気シールド74Bがここでも内側磁気シールドなしで使用されているが、今回はバックプレートから延びているように示されていることである。
【0074】
しかし、静磁ポテンシャルおよび放電領域に生成される磁場の形状の観点から調べるとき、イオンソース90は重要な特徴に関してはイオンソース80内に生成されるものと類似している。ほぼ均一な静磁ポテンシャルにある磁性容器が、ここでも磁気回路の磁性要素によって形成されており、この容器の静磁ポテンシャルも内側磁極のそれとほとんど同じである。この容器は、エッジPまでの磁気シールド74B、バックプレート32の一部、および内側磁気経路28の上流部分を含み、これらはそれらの要素がつながって構成されているため、ほぼ均一な静磁ポテンシャルにある。内側磁極24Aは、それがこの容器の磁性要素に接近しているため、すなわち、内側磁極は内側経路の末端であるため、この磁性容器の静磁ポテンシャルにほぼ等しい。磁化手段である励磁コイル36Bは、外側磁極26とこの磁性容器との間に静磁ポテンシャルの差を導入する。励磁コイルはイオンソース90のほぼ全長にわたって延びているが、磁気シールド74Bの存在によって、エッジPと外側磁極26との間の対象となる領域に対して静磁ポテンシャル差が導入されることに注目されたい。放電領域を取り囲む対象領域に対しても同様な境界条件が当てはまり、磁場はイオンソース80および90に対しても同様なものとなり、磁場が同様であることから、それらのソースの動作もまた類似の動作条件において同様なものとなろう。
【実施例3】
【0075】
図14を参照すると、本発明の更に別の実施の形態に従って構築されたほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソースが示されている。図13のイオンソース90の励磁コイル36Bおよび外側磁気経路30Bは、イオンソース100では1または複数の永久磁石102によって置換されている。図13の励磁コイル36Bと同じように、永久磁石102はイオンソースのほぼ全長にわたって延びているが、エッジPと外側磁極26との間の対象領域にはやはり静磁ポテンシャル差が導入される。
【0076】
更に、図13の誘電体放電チャネル50から図14の導体放電チャネル50Aへの変更もある。図14の放電チャネルが導電性であるため、絶縁体によってアノードを放電チャネルから電気的に絶縁しながら支える必要があり、絶縁体104はそれの一例である。更にまた、放電チャネルを、典型的にはグラウンド・ポテンシャル(工業的応用では取り囲む真空チェンバのポテンシャル、あるいは宇宙推進応用では宇宙船のポテンシャル)にある磁気回路から電気的に絶縁しながら支える必要がある。絶縁体106は後者に機能を果たす一例である。
【0077】
静磁ポテンシャルおよび放電領域に生成される磁場形状の観点から調べるとき、イオンソース100は本質的にイオンソース80および90と同じである。ほぼ均一な静磁ポテンシャルを有する磁性容器はここでも、隣接要素が次々と接近しているため、磁気回路の磁性要素によって構成されており、またこの容器の静磁ポテンシャルはこれも内側磁極のそれとほとんど等しい。イオンソース100に関する特性は、放電チャネル材料の変更に伴う特性変化を除いて、イオンソース80および90のそれと類似している。
【0078】
更に別の実施の形態に対して、図14の永久磁石は、図1、4、および7の外側励磁コイル36および外側経路30と類似したソレノイド状励磁コイルによって取り囲まれた磁性外側経路によって置き換えることができよう。この置換も放電領域内の磁場に対してほとんど影響しないか、あるいは全く影響しない。
【実施例4】
【0079】
図15を参照すると、図10に示された実施の形態に一般に類似した、本発明の1つの実施の形態に従って構築されたほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソースが示されている。イオンソース110は修正された磁気回路22Fを含んでおり、それは磁性内側磁極24A、磁性外側磁極26、磁性内側経路28、8個の磁性外側経路30C、磁性バックプレート32、磁性磁気シールド74C、および励磁コイル36Aを含んでおり、これらはすべて、コイル36Aが適当な電源によって励起されたときに、内側磁極と外側磁極との間に磁場を発生するように働く。放電領域の長さLは、図10、13、および14に示された長さLと同じように、図15でもアノード40から外側磁極の下流端まで延びるように示されている。チャネル壁はクローズド・ドリフト型イオンソースの磁極の下流まで延びることが可能で、図15のLの定義はここではそのような延長を独断で無視している。
【0080】
イオンソース110の磁性部品はすべて熱処理された低炭素鋼でできている。コイル36Aは、非磁性のステンレススチールでできたフォーム112の上に巻かれる。電子放出カソード38はホロー(hollow)カソードであり、放電用電源(図示されていない)の負端子へつながれ、他方、アノード40は正端子へつながれる。分配器手段44Aへイオン化ガスを導くための単一のガスフロー通路42があり、それはこの構成においては、外周に分散したアパーチャ46Aの全面積と比べて大きい1つの外周通路になっている。そのため、ガスは円周方向へ均一に分配される。ガスフロー通路42を取り囲むチューブに加えて、3個のアノード・サポート114があり、アノードを周辺へ均等な場所で支えている。これらのサポートはアノードおよびガスフローチューブとともに、非磁性のステンレススチールでできている。放電チャネル50はボロシル(borosil)、すなわち粉末の窒化ホウ素とシリカを混ぜて、加工の前にプレス・焼結したもので構築されている。
【0081】
放電領域の外側直径DOUTは20mmで、他方、イオンソースの直径DSOURCEは53mmである。組み上げられたイオンソースは、各端部に8個ずつ、それらは8個の外側経路30C中にネジ込まれ、それと内側経路28にネジ込まれた1個の合計17個のネジで互いに固定される。ガスフロー通路を取り囲むチューブおよびアノード・サポートを、それらの部品を外側の部品から電気的に絶縁しながら、支え、位置決めするための付加的な非磁性構造(図示されていない)がある。そのような構造が必要な理由は当業者に明らかであろう。
【0082】
アノードは、図10のアノード位置と比べて、図15ではコイル36Aの上流側に接近して位置していることに気付くであろう。この接近した配置の結果、アノード近傍で無視できる磁場強度に達するように、図15の構成においては磁場強度が上流方向で更に急激に低下する必要がある。この要求は、外側経路30Cの直径を3mmに縮小することによって満たされた。この直径の縮小の結果、外側経路30Cの長さにわたる静磁ポテンシャル差が小さくなり、そのため、外側磁極26から磁気シールド74CのエッジPまでの静磁ポテンシャル差は、外側磁極26と内側磁極24Aとの間の静磁ポテンシャル差よりもわずかに大きくなった。磁気回路設計の当業者には明らかなように、磁場の形状に対する同様な効果は、外側経路30Cに使用された大きい直径と、バックプレート32の厚み削減あるいはバックプレート32と内側経路28との間への小さい非磁性ギャップ導入とによっても得ることができよう。いずれの場合も、ほぼ均一な静磁ポテンシャルを有する磁性容器を形成する磁性要素は接近した位置を保っている。形状をわずかに変化させたり、あるいは要素間に小さいギャップを挿入したりすることによって、磁場の微調整が可能である。本発明の目的のために、複数の個別的な磁性要素を更に、ロウ付けしたり、溶接したり、あるいは互いに固定したりすることによって一体化した機械的構造を形成することができ、そのような構造が“複数個の磁性要素”となると考えられることを理解されよう。
【0083】
図15のイオンソース110は、1.3×10−4Torr(17ミリパスカル)のバックグラウンド圧力で動作し、イオンソースを通して8.4標準立方センチメートル毎分(sccm)のアルゴンガス流量、および電子放出カソード38として使用されたホローカソードを通して3.3sccmのガス流量で動作した。コイル36Aを流れる電流は平均直径において150ガウス(0.015テスラ)の最大磁場強度を与えるのに十分であった。アノードとカソード間に200Vの放電電圧が印加されたときに、放電電流は0.39Aで、イオンビーム電流は0.21Aであった。この特性は、全体の直径がわずか53mmで、アルゴンで動作するクローズド・ドリフト型イオンソースとしては優れたものである。上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文でズーリン(Zhurin)等によって述べられたように、クローズド・ドリフト型イオンソースは、質量数の大きいガスではもっと高効率で動作する。これは、アルゴンのような軽いガスにおいて効率的に動作する小型のクローズド・ドリフト型イオンソースとしては傑出した特性である。
【0084】
図10、13、および15の励磁コイルおよび図14の永久磁石は放電領域の外に位置するように、またしばしば同上の下流端付近に位置するものとして示されていた。放電領域の大部分を取り囲むほぼ均一の静磁ポテンシャルの容器であるため、この領域の磁場は励磁手段が何であろうとそれからほぼ分離されている。従って、放電領域に対する磁化手段の配置には広範囲の自由度がある。
【0085】
磁性層タイプのクローズド・ドリフト型スラスタは、放電領域の幅よりも長い放電領域の長さを有する(L>W)のが普通であり、ここでもそのような構造が想定されている。磁性層タイプのクローズド・ドリフト型イオンソースはまた、誘電体壁を有するのが普通である。クローズド・ドリフト型イオンソースの最近の傾向については、上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文でズーリン(Zhurin)等が述べている。それらの傾向の中には、本質的に磁性層タイプであるクローズド・ドリフト型設計を、図14に示されたような導体でできた放電チャンバで使用するものが含まれる。アルキポフ(Arkhipov)等による米国特許第5,359,258号では、放電チャネル壁は誘電体材料および導体の両方で同時に構築される。当業者に利用可能な放電チャネル材料の多様性の観点から、本発明の実施の形態は誘電体材料でできた放電チャネルに限定すべきではない。
【0086】
ここでは本質的に軸対称な構造を想定してきた。必要とされるガス流量は一般に円周方向でのクローズド・ドリフト経路の全長に比例するので、本発明の利点は軸対称な構造において最も顕著である。しかし、よりコンパクトな設計という利点もまた、本発明を採用してクローズド・ドリフト放電領域が細長く、あるいは“競技場”形状になるように構築することによって得られる。図10、13、および14は、そのような構造を説明することができるが、この形状を1つの断面で、それに直交する別の断面よりも細長くでき、それによってこの構造を径方向で非対称とすることは含まれていない。細長い、あるいは“競技場”形状のクローズド・ドリフト放電領域の場合は、放電領域に対し径方向で内向きおよび径方向で外向きの場所は、放電領域の片側およびそれの反対側として位置づけて説明するのがより便利である。
【0087】
同じように、イオンビームは一般に軸方向に生成されるものと想定している。本発明を利用して、イオンビームが径方向、あるいは円錐方向を向いたよりコンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースを構築することも可能である。
【0088】
本発明の特定の実施の形態について示し、説明され、各種の変更を示唆してきたが、当業者には明らかなように、本発明から外れることなく、本発明の幅広い態様において変更および修正を行い得ることは明らかであろう。従って、特許請求の範囲の目的は、そのような変更や修正のすべてを、特許を付与し得る真の精神およびスコープに含まれるものとして包含することである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図2】図1の従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図で、磁束の形状を示している。
【図3】図1のクローズド・ドリフト型イオンソースで、放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化を示している。
【図4】別の従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図5】図4の従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図で、磁場の形状を示している。
【図6】図4のクローズド・ドリフト型イオンソースで、放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化を示している。
【図7】更に別の従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図8】従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図で、磁場の形状を示している。
【図9】図7のクローズド・ドリフト型イオンソースで、放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化を示している。
【図10】本発明の1つの特定の実施の形態に従って構築されたクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図11】図10のクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図で、磁場の形状を示している。
【図12】図10のクローズド・ドリフト型イオンソースで、放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化を示している。
【図13】本発明の別の1つの特定の実施の形態に従って構築された別のクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図14】本発明の更に別の1つの特定の実施の形態に従って構築された更に別のクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図15】本発明の1つの特定の実施の形態に従って構築され、小型のクローズド・ドリフト型イオンソースで優れた性能を実証するためにテストされた特定のクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図。
【0001】
本発明は一般にイオンおよびプラズマ技術に関するものであって、更に詳細にはそれは閉じた電子ドリフトを有するプラズマおよびイオンソースに関連する。
【0002】
本発明はスパッタ・エッチング、スパッタ・デポジション、および特性強化などの工業的応用で利用できる。更に、電気式宇宙用推進に応用を見出すこともできる。
【背景技術】
【0003】
イオンを加速して、それらのイオンのエネルギーを有するビームを形成することは静電的および電磁的の両方法によって既に確立されている。本発明は電磁的加速を利用するソースに関連する。そのようなソースは一般的に電磁式あるいはグリッドレス・イオンソースと呼ばれている。イオンビームは一般に、正に帯電したイオンの破壊的な相互反発を回避するために電子の存在を必要とするのに十分高濃度であるのが普通であるため、イオンビームは中性化されたプラズマであるとも考えられ、そのためそのようなイオンソースはプラズマソースとも呼ばれる。イオンソースが宇宙用推進として使用されるときは、それらはスラスタと呼ばれる。
【0004】
電磁加速によるイオンソース(あるいはスラスタ)では、電子放出カソードとアノードとの間で放電が起こる。イオンを加速する電場は、この放電中の電子電流と、アノードとカソードとの間の放電領域に生成される磁場との相互作用によって確立される。この相互作用は一般に、磁場の方向と、確立される電場の方向の両方に直交するホール電流(Hall current)を含んでいる。このホール電流は主として電子で構成される。
【0005】
本発明はホール電流式のイオンソース、すなわちホール電流を利用するものに関連し、そこでは放電領域は一般に内側と外側の両境界を有する環状の形状を有し、イオンはこの領域の環状断面においてのみ加速される。このタイプのホール電流式イオンソースは、ドリフトする電子のホール電流が環状放電領域周辺の閉じた経路を流れるため、クローズド・ドリフト型イオンソースとも呼ばれる。このタイプのホール電流式イオンソースは通常は、アルキポフ(Arkhipov)等による米国特許第5,359,258号、カウフマン(Kaufman)による米国特許第5,763,989号、およびPlasma Source Science & Technologyの第8巻のR1ページ以降に記述されているように、放電領域中に一般に放射状の磁場形状を有している。
【0006】
ホール電流式イオンソースはまた、外側の境界のみを有する円形の放電領域を有して、この領域の円形の断面にわたって連続的にイオンが加速されるような場合もあることを注意しておく。このタイプのイオンソースは、エンド・ホール式イオンソースと呼ばれ、カウフマン(Kaufman)等による米国特許第4,862,032号、およびJournal of Vacuum Science and Technology A、第5巻、第4号のページ2081以降に記載されたカウフマン(Kaufman)等による論文に記述されたように、一般に軸方向の磁場形状を有している。このタイプのイオンソースは、ここで興味のあるクローズ・ドリフト型イオンソースから区別するために言及した。
【0007】
更に注意しておくが、ここで興味のあるクローズド・ドリフト型イオンソースは、一般に磁性層あるいはSPT(静止プラズマ型スラスタ)タイプのものである。このタイプのクローズド・ドリフト型イオンソースと、他方の主要なクローズド・ドリフト型であるアノード層タイプとの違いについては、上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文にズーリン(Zhurin)等が述べている。形状では、磁性層あるいはSPTタイプのものは幅よりも長さのほうが長い放電領域を有し、他方、アノード層タイプのものは幅よりも短い長さを有する放電領域を有している。両方の場合に、放電領域の幅というのは放電領域の内側と外側の境界間の径方向の距離である。磁性層タイプのものに好適な磁場形状は磁場が一般に放射状であり、出口面付近に集中しており、放電領域の上流端にあるアノード付近で強度がずっと低下しているものである。
【0008】
1995年にモスクワで開催された24th International Electric Propulsion Conference(第24回国際電気式推進会議)のProceedings(会議録)のページ259以降にギュエリニ(Guerrini)等が、1997年にオハイオ州クリーブランドで開催された25th International Electric Propulsion Conference(第25回国際電気式推進会議)のProceedings(会議録)のページ326以降にギュエリニ(Guerrini)等が、また1997年にオハイオ州クリーブランドで開催された25th International Electric Propulsion Conference(第25回国際電気式推進会議)のProceedings(会議録)のページ483以降にカイムス(Khayms)等がそれぞれ指摘しているように、小型のイオンソースに興味が持たれている。これらの出版物は電気式宇宙用推進を主として目指しているが、そのほかにももともとコモンウエルス・サイエンティフィック社(Commonwealth Scientific Corporation)によって製造され、現在はヴィーコ・インスツルメンツ社(Veeco Instruments Inc.)によって製造されている商用のMark−I(R)エンド・ホール式イオンソースに示されるような工業用の小型イオンソースにも興味が持たれている。
【0009】
人は、小型のクローズド・ドリフト型イオンソースは、同じタイプの大型のイオンソースから形状の縮小によって、すなわちすべての部品を同じ比率で縮小することによって作製できると期待するかもしれない。もしこの方法を実行すれば、磁気回路の磁性部分の磁束密度は増大し、寸法の縮小が大きくなると磁気回路の内部で飽和値に達する箇所が現れてくる。放電領域の内側直径の内部領域では空間が最も限られるため、飽和値に達するのは通常は磁気回路の内側経路であり、典型的には磁気回路のこの要素の上流端である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のことに照らして、本発明の全体的な一般的目的は、広い動作範囲で効率的に動作する、一般には磁性層あるいはSPTタイプのものであり、それはまた小型のイオンソースあるいはスラスタを必要とする多様な工業的応用および宇宙推進応用に利用することができる小型のクローズド・ドリフト型イオンソースに適した磁場構成を提供することである。
【0011】
本発明の別の全体的な一般的目的は、磁気回路要素中に効率的に利用できるため、磁性層あるいはSPTタイプのより大型のクローズド・ドリフト型イオンソースに適しており、またその生成されたイオンビームのエネルギーおよび電流に対して磁性材料中にコンパクト、効率的、および経済的に使用される磁場構成を提供することである。
【0012】
本発明の特定の目的は、磁気回路の内側経路の許容断面積を減らし、クローズド・ドリフト型イオンソースの最も熱い領域の1つへ抵抗性加熱を追加するであろう内側磁石を使用せずに、磁場形状を最適化することである。
【0013】
本発明の別の特定の目的は、イオン化および加速プロセスに直接寄与することのない、磁気回路の内側経路を貫通する磁束を最小化することであり、それによって磁気回路のその要素中の磁束密度を削減することである。
【0014】
本発明のより一般的な目的は、小さい平均直径を有する放電領域を有するクローズド・ドリフト型イオンソースを作製することによって、動作のために必要なガス流量を最小化することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの好適な実施の形態に従えば、コンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースは、環状の放電領域へガスを導入し、イオン化してプラズマを生成する手段を含む形を取る。この領域の一端にアノードが位置し、電子放出カソードは対向する開放端近くに位置する。複数の磁性要素および少なくとも1つの磁化手段を含む磁気回路は、内側の磁極から外側の磁極まで延びており、両磁極は開放端近くに位置している。放電領域のカソードからアノードへ流れる電子電流はその中にある磁場と相互作用してガスをイオン化してイオンを生成し、それらのイオンを開放端から外へ加速する。磁気回路の複数の磁性要素は放電領域のアノード端を取り囲む磁性容器を形成する。磁性容器の隣接要素、内側磁極、および任意の中間的な磁性要素は次々と互いに近接している。磁化手段は外側磁極と磁性容器との間にのみ位置している。
【0016】
特許を与えられると信ずる本発明の特徴は添付の特許請求の範囲に詳細に提示してある。本発明の構成および動作の振る舞いについては、本発明のそれ以外の目的および特徴と一緒に、添付図面に関連して取り込まれる本発明の特定の実施例についての以下の説明を参照することで理解できよう。いくつかの図面では同様な参照符号は同様な要素を指している。
【0017】
これらの模式図は断面における表面を表しているが、乱雑にならないように全体として一般に円柱状のアセンブリの表面およびバックグラウンドの端部も示していることを注意しておく。
【0018】
図1を参照すると、従来技術のほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソース、より詳細には磁性層(magnetic−layer)タイプのものが示されている。イオンソース20は磁気回路22を含んでおり、それは磁性内側磁極24、磁性外側磁極26、磁性内側経路28、1または複数の磁性外側経路30、磁性バックプレート32、内側経路28を取り囲む内側の励磁コイル34、外側経路30を取り囲む1または複数の外側の励磁コイル36を含んでおり、これらはすべて、コイル34および36が適当な電源によって励起されたときに、内側磁極と外側磁極との間に磁場を発生するように働く。電子放出カソード38は放電用電源(図示されていない)の負端子へつながれ、他方、アノード40は同じ電源の正端子へつながれる。単一のガスフロー通路42、通常は横方向にオフセットされた電子放出カソード38、および典型的にはいくつかの個別的磁性外側経路30および外側の励磁コイル36を除けば、図1に示す装置は中心軸の周りに対称である。励磁コイルは図1に示され、事実、最も普通に用いられる磁化手段である。永久磁石もまた使用されているので、それも従来技術の中に含まれるものとする。
【0019】
頻繁に使用される寸法もいくつか図1に示したが、それらには、放電領域の内側直径DIN;放電領域の外側直径DOUT;放電領域の平均直径DM(DM=(DIN+DOUT)/2);放電領域の幅W;アノードから出口面までの放電領域の長さL;およびクローズド・ドリフト型ソース全体の直径DSOURCEが含まれる。このソースの外側輪郭は不規則である場合があり、その場合には、ソースを横切る最大の差し渡し寸法がDSOURCEである。
【0020】
動作時には、イオン化可能なガスがフロー通路42を通ってアノード40に入ってくる。イオン化可能なガスは分配器手段44(この場合、2つの外周通路とそれらの間に1つのバッフル)によってアノード44内の雰囲気中へ均一に分配され、周囲に分散したアパーチャ46を通って出て行く。カソード38から放出された電子のいくつかは、放電領域48を通ってアノード40の方向へ戻るように流れ、環状の放電領域の周りをそこにある磁場の影響を受けて旋回するようにドリフトする。放電領域48を取り囲む放電チャネル50は高温のセラミック状の材料でできているので、このチャネルへ流れこむ正味の電流はゼロである。旋回するドリフト運動のせいで、これらの電子は、アノード40からアパーチャ46を通って出て行くイオン化可能なガス分子を効率的にイオン化し、それによって放電領域48中にプラズマ(電子とイオンのガス状混合物)を発生させる。それらの電子がまた、領域48中の磁場と相互作用して、軸方向の電場(図示されていない)を領域48内部に確立する。このように、磁場の存在がイオン化可能なガス分子のイオン化を促進する役目を果たし、それとともに、後に軸方向電場を通して、形成されたイオンを加速する役目も果たす。放電チャネル50の壁52およびアノード40の表面で電子と再結合しないイオンは、軸方向の電場によって外側(図1の右方向)へ加速されてエネルギーを持ったイオンビームを形成する。カソード38を離れる電子のいくつかは、電荷中和し、必要であればこのイオンビームを電流中和する。
【0021】
ここで図2を参照すると、図1に示されたクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図が示されている。図2において、磁気回路に関係しない部品は、磁場Bの形状を見やすくするために省略されている。放電領域48の境界は、一端をアノード40によって、また横方向は放電チャネル壁52によって定義されるが、破線54で示されている。
【0022】
図1に示すタイプのイオンソースの初期動作の通常手順は、内側の励磁コイル34と、1または複数の外側励磁コイル36との間の電流比率を最適化することである。この最適化は、破線54で囲まれた放電領域48中にほぼ放射状の場の方向を確立するために必要であり、それは典型的には、収束されたイオンビーム、すなわち分散が最小のビームを得ることによって検証される。動作条件が異なればそれに対応して場の強度を調節する必要があるが、この最適化によって決められた電流比率は動作条件の広い範囲にわたって一定に保たれるのが普通である。注意すべきことは、場の方向を“ほぼ”放射状と述べたが、この理由はアノードから出口面までの磁場強度の望ましい軸方向変化によって、ラプラスの方程式から示すことができるように、曲がった磁力線が生ずるあるためである。この曲りのせいで、与えられた1つの軸上で1つの半径において1つの特別な場の方向しか許可されないことになり、同じ軸上の他の半径ではその方向は放射状からわずかに外れることになる。
【0023】
図1に示すイオンソースに関して、放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化が図3に示されている。場の強度は磁極24および26の近傍で最も強いが、これはまたほとんどのイオン加速が行われる場所でもある。場の強度はアノード近傍で小さい値に低下するが、これは磁性層タイプのクローズド・ドリフト型イオンソースに対して広い動作範囲で高効率と安定性を与えるため望ましい。
【0024】
図面中の磁場Bについての解は、静磁ポテンシャルと呼ばれるスカラー関数ψのグラディエント∇を取ることによって得られる。
【0025】
数1
B=−∇ψ (1)
【0026】
静磁ポテンシャルの値は対象とする領域の境界、すなわち磁気回路の各種要素の表面で設定できる。静磁ポテンシャルψの境界値を用いて1つの領域にわたる磁場Bの解を求めることは、電気的ポテンシャルVの境界値を用いて1つの領域において電場Eを解くことと数学的に等価である。実際に、対象領域の磁場(あるいは電場)についてのラプラスの方程式の数値解は、緩和法を用いて計算機で求めることができる。
【0027】
図2に戻ると、磁場分野の当業者には明らかなように、放電領域48の径方向で内側と径方向で外側とに位置する内側および外側磁極24と26との間には静磁ポテンシャルの差が存在し、このポテンシャル差は励磁コイル34と36とによって発生する静磁ポテンシャル差の和にほぼ等しい。磁性要素中には静磁ポテンシャルのほんの小さい差しか存在しないが、それはそれらの部品の相対透磁率が高いものの、有限であるためである。磁気回路要素の境界における静磁ポテンシャル間の関係と、生成される場の形状についての理解から、図3において、出口面からアノードへの磁場強度の急激な減少は、図2に示された磁気回路の形状と整合すること、特に、磁極24と26とは、内側経路28と外側経路30とよりも互いにずっと接近していることが明らかである。
【0028】
人は、コンパクトで小型のクローズド・ドリフト型イオンソースは、図1に示されたすべての要素の寸法を同じ比率で縮小することによって得られると期待するかもしれない。上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文にズーリン(Zhurin)等が述べているように、幾何学的に相似の(すべての部品が同じ比率でスケーリングされた)イオンソース中では、磁場強度Bは次の比例関係で記述できる。
【0029】
数2
B ∝ 1/W (2)
【0030】
ここでWは環状の放電領域の幅である。2つの磁極間の全磁束ΦMは次のように与えられる。
【0031】
数3
ΦM ∝ (磁場強度)×(長さ)×(全周) (3)
∝ L DM /W
【0032】
ここでLは放電領域の長さ、DMは放電領域の平均直径であり、従って全周に比例する。
【0033】
幾何学的スケーリングにおいて、比L/DMおよびW/DMは一定に保たれるため上の式は次のようにも書ける。
【0034】
数4
ΦM ∝ DM (4)
【0035】
この磁束が貫通する磁気回路の内側経路の断面積、AINは次のように表される。
【0036】
数5
AIN ∝ DM 2 (5)
【0037】
比例式(4)の磁束を比例式(5)の内側経路面積で除すると、内側経路の磁束密度は次のようになることが分かる。
【0038】
数6
ΦM/AIN ∝ 1/DM (6)
【0039】
言い換えれば、磁気回路の内側経路の磁束密度は放電領域の平均直径に反比例する、あるいはスケーリングが幾何学的であるため、任意の固有寸法の大きさに反比例する。
【0040】
内側経路はこの磁束密度の計算に合わせて選ばれた。すなわち、小型のクローズド・ドリフト型イオンソースでは磁気回路のこの部分、通常は内側経路がバックプレートと出会う箇所で磁気飽和に達する可能性が最も高いためである。そのような小型のイオンソースで内側経路が飽和に達すると、この飽和を緩和するために磁性材料を追加することは、対象となる領域に隣接する磁気回路の輪郭を変更することなしには不可能であることに注意しなければならない。このことは直接的に磁場の形状に影響を与え、従ってイオンソースの特性にも影響する。
【0041】
これと対照的に、磁気回路の外側経路が飽和に近づくようであれば、イオンソースの外側に磁性材料を追加することによって、ソースの外形寸法をわずかに増やすが、対象領域に隣接する磁気回路の輪郭には影響を与えないようにすることができる。
【0042】
磁気回路の磁性要素が磁気的に飽和する可能性を考慮することに加えて、イオンソースとして望ましい特性レベルについて考慮する必要がある。上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文にズーリン(Zhurin)等が述べているように、ここではFと呼ぶ、必要とされるガス流量は、幾何学的にスケーリングされたクローズド・ドリフト型イオンソースの動作を同じように維持するためには、放電領域の直径に比例して変化する。
【0043】
数7
F ∝ DM (7)
【0044】
従って、小電流のイオンビームにおいてガスを効率的に利用するためには、放電領域の直径は小さい必要がある。
【0045】
図4を参照すると、従来技術の軸対称のクローズド・ドリフト型イオンソースの別のものが示されている。図4のイオンソース60は、図1のそれと類似の機能を有する、図1のそれと類似の要素を有している。磁気回路22Aは一般に図1の磁気回路22と似ているが、形状的には異なるプロポーションを有する。図4に示される構造を提示した目的は、よりコンパクトなイオンソースを得るために図1に示されたイオンソースの放電領域およびイオンソース直径を縮小することの効果を示すことであり、この場合、内側および外側の励磁コイルを同じ寸法に保つとともに、内側および外側の経路についても断面を同じに保っている。
【0046】
ここで図5を参照すると、図4に示したクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図が示されている。図5では、磁気回路に関係しない部品は省略されて、磁場Bの形状を見易くしている。図4に関して議論した相対的直径の変更を除けば、図5は図2と一般に同じように見える。図5から明らかになることは、磁気回路の内側および外側経路間の径方向距離が減少すれば、磁極24および26の上流(左方向)にある放電領域48の部分の磁場強度が増大するということである。定量的には、図2および5の磁気回路で静磁ポテンシャルの分布がほぼ同じであれば、アノードにおける磁場は、磁気回路の内側経路と外側経路との間の径方向距離とともにほぼ反比例的に変化すると期待される。
【0047】
磁場強度の変化は、図6と図3を比較すればもっとはっきりする。図4、5、および6のイオンソース60のアノード付近の磁場強度が高くなれば、図1、2、および3に示したイオンソース20に関する性能パラメータと比べて、このイオンソースに関する動作範囲は縮小するし、また効率も低下するであろう。要約すると、イオンソース20のそれに類似した構造の外側径方向寸法を単に縮小することによって、より小型でよりコンパクトなイオンソースを得ようとすることは、コンパクトで小型のイオンソースを得るための効果的なやり方ではない。
【0048】
図7を参照すると、従来技術の更に別のほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソースが示されている。図7のイオンソース70は一般に図4、5、および6に示されたイオンソース60と似ている。磁気回路22Bにおける重要な違いは、イオンソース70に対する内側および外側の磁気シールド72および74の追加である。これらの磁気シールドの目的は、アノード近傍の磁場強度を、出口面付近の内側および外側磁極24および26間の磁場強度に比べて低くすることである。
【0049】
ここで図8を参照すると、図7に示したクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図が示されている。ここでも磁場Bの形状を見易くするために、磁気回路に関係しない部品は図8では省略されている。磁気シールドの効果は図8に定性的に示されている。図5ではアノード近傍の磁場強度に加わるはずの磁場部分は、図8では磁性磁場シールドによってアノード周りで押し退けられている。この効果は図9に更に定量的に示されている。図7、8、および9に示したイオンソースのコンパクトな形状にも拘わらず、アノード近傍の磁場強度は、磁極間および出口面付近の磁場強度に比べて非常に低い。
【0050】
静磁場的観点から、内側磁極24と内側磁気シールド72との間のポテンシャル差は、関連する磁性要素における有限の透磁率効果(permeability effect)を除いて、内側経路28を取り囲む内側励磁コイルによって生成される。外側磁極26と外側磁気シールドとの間のポテンシャル差は、関連する磁性要素における有限の透磁率効果を除いて、外側経路30を取り囲む外側励磁コイル36によって生成される。内側および外側の磁気シールド72および74は、それらの間に径方向に位置するバックプレート32の部分と一緒に、アノード40の上流側(図7および8の左側)、および径方向で内側および外側に、ほぼ均一な静磁ポテンシャルを有する磁性容器を形成する。内側および外側磁極の中間の静磁ポテンシャルにあるこの容器の存在によって、アノード近傍の磁場強度が低くなっている。
【0051】
図7に示す磁気経路22Bの説明を要約すると、内側および外側の磁気シールド72および74は、それらの間に径方向に位置するバックプレート32の部分と一緒に、磁性容器を形成するが、シールドとバックプレートとがつながって構成されているため、それはほぼ均一な静磁ポテンシャルにある。磁化手段である内側励磁コイル34は、この容器と内側磁極との間に静磁ポテンシャルの差を導入する。別の磁化手段である外側励磁コイル36は、この容器と外側磁極との間に別の静磁ポテンシャルの差を導入する。
【0052】
イオンソース70の形状は、アルキポフ(Arkhipov)等による米国特許第5,359,258号のそれと似ている。注意すべき点は、イオンソース20のそれと比べて、イオンソース70ではイオン化および加速領域が下流へシフトしていることである。この変化に関連するのは、磁場最大値の下流へ(アノードから遠ざかる方向へ)のシフトであり、平均の領域の直径DMにおいて出口面を超えることもできる。
【0053】
ここで本発明にとって重要なものは、磁気回路の内側経路28と内側磁気シールド72との間の磁場Binと、磁気回路の外側経路30と外側磁気シールド74との間の磁場Boutである。磁場のこれら部分は磁極間の磁場強度に加わることなく、磁気回路の内側および外側経路の磁束密度に加えられ、これは、ガスをイオン化し、得られたイオンを加速するための最も効率的な磁場部分となっている。特に、磁気回路の内側経路と内側磁気シールドとの間の磁場Binは、磁気回路の重要な内側経路の磁束密度に加えられる。
【0054】
上の議論で述べたように、磁気シールドを使用することによって、アノード近傍の磁場強度を低く保ったままで、放電領域の与えられた平均直径のもとで、コンパクトな外側直径を実現する。ここまでのところ、磁気シールドを使用することによってコンパクトなイオンソースの作製が可能となった。しかし、内側シールドと磁気回路の内側経路との間の磁束は、重要な内側経路中の磁束密度を増加させるため、平均の放電領域直径を減らすために幾何学的縮小を利用することにおける困難さが増す。
【0055】
別の従来技術として、24th International Electric Propulsion Conference(第24回国際電気式推進会議)(1995年、モスクワで開催)のProceedings(会議録)のページ259以降に発表されたギュエリニ(Guerrini)等のものを引用することができる。ギュエリニ(Guerrini)等は、円筒形の内側経路と、バックプレートに近い1つの励磁コイルを採用した磁気回路構造を使用した。内側磁極は内側経路と同じ直径であり、内側励磁コイルはないため、放電領域の内側直径は内側経路の直径よりもわずかに大きいだけであった。アノード近傍で要求される磁場強度の低下は、非常に大きい外側経路直径を採用することによって得られた。20mmの放電領域外側直径に対して、ソース長は140mm、直径は約150mm(ギュエリニ(Guerrini)等の図1および2を参照)であった。ギュエリニ(Guerrini)等は、彼等のソースが小型であると述べたが、小型なのは放電領域だけであり、ソースの残りはそうでなかった。大型のソース直径に加えて、磁気回路の内側経路は拡張された長さを有し、従ってこの拡張された長さにわたる累積磁束は、イオン化および加速のためにちょうど必要とされる磁束よりも大幅に大きなものとなった。
【実施例1】
【0056】
(発明を実行する最適モード)
図10を参照すると、本発明の1つの実施の形態に従って構築されたほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソースが示されている。イオンソース80は修正された磁気回路22Cを含み、それは磁性内側磁極24A、磁性外側磁極26、磁性内側経路28、1または複数の磁性外側経路30A、磁性バックプレート32、磁性磁気シールド74A、および励磁コイル36Aを含み、これらはすべてコイル36Aが適当な電源で励起されたときに、内側磁極と外側磁極との間に磁場を生成するように働く。電子放出カソード38は典型的な放電電源(図示されていない)の負端子へつながれ、またアノード40は同じ電源の正端子へつながれる。単一のガスフロー通路42、使用される可能性のある複数の外側経路30A、および通常は横方向にオフセットされた電子放出カソード38を除いて、図10に示された装置は中心軸周りに対称である。頻繁に使用される寸法DIN、DOUT、DM、W、およびDSOURCEもまた図10に示されており、それらは従来技術を説明するために用いられた同じ寸法と整合するように定義されている。長さLの定義に若干の違いがある。すなわち、内側磁極24Aは外側磁極26の下流にまで延びており、この長さは外側磁極の下流端で終端するとして独断で定義した。
【0057】
動作中は、イオン化可能なガスがフロー通路42を通ってアノード40へ入る。イオン化可能なガスは分配器手段44によってアノード44内の雰囲気中へ均一に分配され、周囲に分散したアパーチャ46を通って出て行く。カソード38から放出された電子のいくつかは、放電領域48を通りアノード40へ向かって戻るように流れる。これらの電子は、アノード40からアパーチャ46を通って出て行くイオン化可能なガス分子をイオン化し、それによって放電領域48中にプラズマ、すなわち電子とイオンのガス状混合物を発生させる。それらの電子はまた、領域48中の磁場と相互作用して、軸方向の電場(図示されていない)を領域48内部に確立する。放電チャネル50の壁52およびアノード40の表面で電子と再結合しないイオンは、軸方向の電場によって外側(図10の右方向)へ加速されてエネルギーを持ったイオンビームを形成する。カソード38を離れる電子のいくつかは、電荷中和し、必要であればこのイオンビームを電流中和する。
【0058】
ここで図11を参照すると、図10に示したクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図が示されている。磁気回路に関係しない部品は、磁場Bを見易くするために図11では省略されている。放電領域48の境界は、一端をアノード40によって定義され、横方向は放電チャネル壁52で定義されるが、破線54で示されている。
【0059】
図10のイオンソースに関する放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化が図12に示されている。磁場強度は、出口面付近の、放電領域48の径方向で内側と外側とに位置する磁極24Aおよび26の近傍で最大値を取る。磁場が最も強いこの領域は、ほとんどのイオン加速が行なわれる場所である。磁場強度はアノード近傍で小さい値に低下するが、これは、上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文にズーリン(Zhurin)等が述べているように、磁性層タイプのクローズド・ドリフト型イオンソースに対して、広い動作範囲にわたって高い効率と安定性を保証するため望ましい。
【0060】
図10で気付くように、内側磁極24Aは、図1、4、および7の従来技術の磁極とは、磁気回路の内側経路と同じ直径を有する点で異なっている;磁気回路の1または複数の外側経路は、従来技術の図面に示された外側経路とは励磁コイルによって取り囲まれていない点が異なる;励磁コイル36Aは、外側経路を取り囲む多重ソレノイドのコイルではなく単一の環状コイルである点が、また内側励磁コイルと一緒に使用されていない点が異なる;更に修正された磁気シールド74Aは、従来技術のようにバックプレート32から軸方向に延びる代わりに、1または複数の外側経路から内側へ向けて放射状に延びるように示されており、それに加えて内側磁気シールドと一緒に使用されていない。典型的な従来技術からのこれらの詳細な変更のいくつかは本発明の実施の形態にとって必要ないものであるが、図10の説明を完全なものとするためにここに記述した。
【0061】
内側磁気的経路28と同じ直径の内側磁極24Aを使用することは尋常ではないが、上で引用した24th International Electric Propulsion Conference(第24回国際電気式推進会議)(1995年、モスクワで開催)のProceedings(会議録)のページ259以降でギュエリニ(Guerrini)等によって過去に使用されている。そのような内側磁極を、放電領域の内側壁と磁気回路の内側経路との間に内側励磁コイルを使用しないこととを結びつけることによって、内側壁の直径は内側経路と同じ程度に縮小することができて、放電領域の直径を縮小することが可能になる。しかし、ギュエリニ(Guerrini)による上述の論文の従来技術では、アノードにおいて十分小さい磁場強度を得るためには、放電領域の直径に比べて大きいソース直径が必要であった。
【0062】
単一の磁気コイル、あるいは磁場供給源、あるいは並列的に機能するため等価的に単一の磁場供給源のように振舞うそのような複数の供給源を使用することもまた尋常ではないが、カウフマン(Kaufman)による米国特許第5,763,989号とともに、ギュエリニ(Guerrini)による上述の論文で過去に使用されたことがある。
【0063】
静磁場的観点から、図10および11の磁気回路構成は従来技術とは明瞭に異なる。外側磁極26は1つの静磁ポテンシャルにあり、他方、内側磁極24A、内側経路28、バックプレート32、1または複数の外側経路30A、およびエッジPまでの磁気シールド74Aはそれらの磁性要素中の有限の磁場浸透効果を除いて、別の静磁ポテンシャルにある。後者の複数要素はほぼ均一な静磁ポテンシャルの磁性容器を形成し、それがアノードにおける低磁場強度の原因となっている。この容器は部分的には、図7および8に関して述べた内側および外側磁気シールド72および74とバックプレート32の一部からなる容器に似ている。しかし、この容器の静磁ポテンシャルは、容器と内側磁極との間に内側励磁コイルがない点で異なっており、そのため、この容器の静磁ポテンシャルは図10および11の内側磁極24Aのそれにほぼ等しい。静磁ポテンシャルのこの差は2つの重要な効果をもたらす。
【0064】
まず、図10および11の磁気構造では、内側磁気シールドからの付加的な磁束が回避される。図8では、放電領域48での有効な磁束は本質的に磁極24と26との間のそれである。この磁束は内側経路28を貫通しなければならない。励磁コイル34が存在するため、内側磁気シールド72と、内側経路28および内側磁極24の両方との間の磁束BINが内側経路28を貫通する磁束に加えられ、それによってバックプレート32付近で内側経路28を貫通する磁束は飽和に近づく。図10および11の構造には内側磁気シールドも内側励磁コイルも存在しないため、磁気回路の内側経路を貫通する磁束は減少して、イオン化可能なガスをイオン化および加速するために必要な磁束に近づく。
【0065】
第2に、磁極の上流でアノード近傍の磁束BANの方向は放射状よりもむしろ軸方向である。アノード近傍のこの磁場の方向は、図2、5、および8に示され、更には上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文でズーリン(Zhurin)等によって述べられたような、前に用いられた放電領域全体にわたってほぼ放射状であった方向から劇的に変わっている。
【0066】
上述のズーリン(Zhurin)等によるレビュー論文は、クローズド・ドリフト型イオンソースについての約40年間にわたる研究のレビューであり、そのようなイオンソースについての技術の総合的な情報源となっている。磁場のほとんどの部分が(図11の磁場BANを参照)従来使用されたほぼ放射状の方向から本質的に外れたクローズド・ドリフト型イオンソースによって効率的な動作を実現できたことは、明らかに予期せぬ結果である。
【0067】
この結果が得られたものの、可能な説明は「特定の実施例」の節で述べる優れた性能に対して与えることができる。上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文でズーリン(Zhurin)等によって述べられたように、磁性層タイプの典型的なクローズド・ドリフト型イオンソースでイオン加速を実現する軸方向電場は、磁極近傍の高磁場領域に集中して、磁場それ自身よりもずっと強く集中している(ズーリン(Zhurin)等の図10を参照)。ここでの図11中の磁極近傍の磁場BPPはほぼ放射状になっており、軸方向の電場が集中すると期待される領域において満足できる方向を有している。他方で、図11の磁極の上流のアノード近傍の磁場BANは好適なほぼ放射状の方向から本質的に外れているが、このずれは多分さほど重大ではない。その理由は、この領域では方向電場が小さいと予想されるためである。
【0068】
図10に示された磁気回路22Cの説明を要約すると、エッジPまでの磁気シールド74Aは、1または複数の外側磁気経路30A、バックプレート32、および内側磁気経路28の上流部分と一緒に、隣接要素が次々に接近しているためほぼ均一な静磁ポテンシャルにある1つの磁性容器を形成する。内側磁極24Aは、それがこの容器の磁性要素に接近しているため、この磁性容器の静磁ポテンシャルにほとんど等しくなっている。磁化手段である励磁コイル36Aは、外側磁極26とこの磁性容器との間に静磁ポテンシャル差を導入する。
【0069】
この磁性容器が均一な静磁ポテンシャルになっている必要はないことに注意して欲しい。必要なことは、このポテンシャル差が、内側と外側の磁極間の差と比べて小さく、従って容器内部の磁場がそれらの磁極間の磁場に比べて小さいことだけである。実際に、磁場の形状に対して小さい調整を施すことがしばしば有用である。それらの調整は、容器を含む要素の厚みを調節することによって、あるいは物理的に分離された要素の場合は、隣接する要素間に薄い非磁性層を導入することによって行なうことができる。本質的に必要なことは、磁性容器が、次々と互いに接近した1または複数の磁性要素によって構成され、それによってこの容器内部の磁場が磁極間のそれと比べて小さくなることである。
【0070】
図10および11のイオンソースは小型のクローズド・ドリフト型イオンソースとしての要求を満たしているように見える。放電チャネルの内側壁は磁気回路の内側経路の直径近くまで縮小でき、それにより、放電領域の与えられた寸法に対して磁気回路の内側経路に対する最大断面を利用することができる。更に、この結果は、磁気回路の外側部分をコンパクトにした構成によって実現できるため、特性を劣化させることなく全体のソース直径を小さくてできる。更に、内側磁気経路が飽和に達しないで可能な幾何学的縮小による最大の寸法縮小は、図7に示した内側磁気シールドへの磁束や、24th International Electric Propulsion Conference(第24回国際電気式推進会議)(1995年、モスクワで開催)のProceedings(会議録)のページ259以降に掲載されたギュエリニ(Guerrini)等による上述の論文に述べられたような長い内側経路長への磁束などのような任意の外来の磁束が磁気回路の内側経路に対して存在しないことによって保証されるべきである。
【0071】
図4および7に示されたものと同様に、図1に示されたタイプのイオンソースの初期動作時の手順は、内側励磁コイル34と、1または複数の外側励磁コイル36との間で電流比を最適化することである。図10および11のイオンソースでの等価な最適化は、磁気回路の内側経路の長さを変えて試験することによって実行される。収束した(広がりが最小の)イオンビームに対して、内側磁極は典型的には、図10に距離dで示されたように、外側磁極をわずかに越えて延びる。宇宙用推進では、収束したイオンビームが望ましい。しかし工業用としては、収束ビームも発散ビームもともに興味が持たれる。より発散の大きいイオンビームは、内側経路を延長し、距離dを増やすことによって得られる。より収束したイオンビームは距離dを減らすことによって、あるいはこの距離を負にすることによって(内側磁極を外側磁極の上流へ動かす)得られる。
【実施例2】
【0072】
図13を参照すると、本発明の別の実施の形態に従って構築されたほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソースが示されている。イオンソース90は修正された磁気回路22Dを含んでおり、それは磁性内側磁極24A、磁性外側磁極26、磁性内側経路28、1または複数の磁性外側経路30B、磁性バックプレート32、磁性磁気シールド74B、および励磁コイル36Bを含んでおり、これらはすべて、コイル36Bが適当な電源によって励起されたときに、内側磁極と外側磁極との間に磁場を発生するように働く。電子放出カソード38は、一般的な放電用電源(図示されていない)の負端子へつながれ、他方、アノード40は正端子へつながれる。イオンソース90の動作は図10のイオンソース80のそれと同様である。
【0073】
図13のイオンソース90と図10のイオンソース80との違いは、励磁コイル36Bが、外側磁極付近の領域に閉じ込められずにイオンソースの全長にわたって延びていることと、修正された磁気シールド74Bがここでも内側磁気シールドなしで使用されているが、今回はバックプレートから延びているように示されていることである。
【0074】
しかし、静磁ポテンシャルおよび放電領域に生成される磁場の形状の観点から調べるとき、イオンソース90は重要な特徴に関してはイオンソース80内に生成されるものと類似している。ほぼ均一な静磁ポテンシャルにある磁性容器が、ここでも磁気回路の磁性要素によって形成されており、この容器の静磁ポテンシャルも内側磁極のそれとほとんど同じである。この容器は、エッジPまでの磁気シールド74B、バックプレート32の一部、および内側磁気経路28の上流部分を含み、これらはそれらの要素がつながって構成されているため、ほぼ均一な静磁ポテンシャルにある。内側磁極24Aは、それがこの容器の磁性要素に接近しているため、すなわち、内側磁極は内側経路の末端であるため、この磁性容器の静磁ポテンシャルにほぼ等しい。磁化手段である励磁コイル36Bは、外側磁極26とこの磁性容器との間に静磁ポテンシャルの差を導入する。励磁コイルはイオンソース90のほぼ全長にわたって延びているが、磁気シールド74Bの存在によって、エッジPと外側磁極26との間の対象となる領域に対して静磁ポテンシャル差が導入されることに注目されたい。放電領域を取り囲む対象領域に対しても同様な境界条件が当てはまり、磁場はイオンソース80および90に対しても同様なものとなり、磁場が同様であることから、それらのソースの動作もまた類似の動作条件において同様なものとなろう。
【実施例3】
【0075】
図14を参照すると、本発明の更に別の実施の形態に従って構築されたほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソースが示されている。図13のイオンソース90の励磁コイル36Bおよび外側磁気経路30Bは、イオンソース100では1または複数の永久磁石102によって置換されている。図13の励磁コイル36Bと同じように、永久磁石102はイオンソースのほぼ全長にわたって延びているが、エッジPと外側磁極26との間の対象領域にはやはり静磁ポテンシャル差が導入される。
【0076】
更に、図13の誘電体放電チャネル50から図14の導体放電チャネル50Aへの変更もある。図14の放電チャネルが導電性であるため、絶縁体によってアノードを放電チャネルから電気的に絶縁しながら支える必要があり、絶縁体104はそれの一例である。更にまた、放電チャネルを、典型的にはグラウンド・ポテンシャル(工業的応用では取り囲む真空チェンバのポテンシャル、あるいは宇宙推進応用では宇宙船のポテンシャル)にある磁気回路から電気的に絶縁しながら支える必要がある。絶縁体106は後者に機能を果たす一例である。
【0077】
静磁ポテンシャルおよび放電領域に生成される磁場形状の観点から調べるとき、イオンソース100は本質的にイオンソース80および90と同じである。ほぼ均一な静磁ポテンシャルを有する磁性容器はここでも、隣接要素が次々と接近しているため、磁気回路の磁性要素によって構成されており、またこの容器の静磁ポテンシャルはこれも内側磁極のそれとほとんど等しい。イオンソース100に関する特性は、放電チャネル材料の変更に伴う特性変化を除いて、イオンソース80および90のそれと類似している。
【0078】
更に別の実施の形態に対して、図14の永久磁石は、図1、4、および7の外側励磁コイル36および外側経路30と類似したソレノイド状励磁コイルによって取り囲まれた磁性外側経路によって置き換えることができよう。この置換も放電領域内の磁場に対してほとんど影響しないか、あるいは全く影響しない。
【実施例4】
【0079】
図15を参照すると、図10に示された実施の形態に一般に類似した、本発明の1つの実施の形態に従って構築されたほぼ軸対称なクローズド・ドリフト型イオンソースが示されている。イオンソース110は修正された磁気回路22Fを含んでおり、それは磁性内側磁極24A、磁性外側磁極26、磁性内側経路28、8個の磁性外側経路30C、磁性バックプレート32、磁性磁気シールド74C、および励磁コイル36Aを含んでおり、これらはすべて、コイル36Aが適当な電源によって励起されたときに、内側磁極と外側磁極との間に磁場を発生するように働く。放電領域の長さLは、図10、13、および14に示された長さLと同じように、図15でもアノード40から外側磁極の下流端まで延びるように示されている。チャネル壁はクローズド・ドリフト型イオンソースの磁極の下流まで延びることが可能で、図15のLの定義はここではそのような延長を独断で無視している。
【0080】
イオンソース110の磁性部品はすべて熱処理された低炭素鋼でできている。コイル36Aは、非磁性のステンレススチールでできたフォーム112の上に巻かれる。電子放出カソード38はホロー(hollow)カソードであり、放電用電源(図示されていない)の負端子へつながれ、他方、アノード40は正端子へつながれる。分配器手段44Aへイオン化ガスを導くための単一のガスフロー通路42があり、それはこの構成においては、外周に分散したアパーチャ46Aの全面積と比べて大きい1つの外周通路になっている。そのため、ガスは円周方向へ均一に分配される。ガスフロー通路42を取り囲むチューブに加えて、3個のアノード・サポート114があり、アノードを周辺へ均等な場所で支えている。これらのサポートはアノードおよびガスフローチューブとともに、非磁性のステンレススチールでできている。放電チャネル50はボロシル(borosil)、すなわち粉末の窒化ホウ素とシリカを混ぜて、加工の前にプレス・焼結したもので構築されている。
【0081】
放電領域の外側直径DOUTは20mmで、他方、イオンソースの直径DSOURCEは53mmである。組み上げられたイオンソースは、各端部に8個ずつ、それらは8個の外側経路30C中にネジ込まれ、それと内側経路28にネジ込まれた1個の合計17個のネジで互いに固定される。ガスフロー通路を取り囲むチューブおよびアノード・サポートを、それらの部品を外側の部品から電気的に絶縁しながら、支え、位置決めするための付加的な非磁性構造(図示されていない)がある。そのような構造が必要な理由は当業者に明らかであろう。
【0082】
アノードは、図10のアノード位置と比べて、図15ではコイル36Aの上流側に接近して位置していることに気付くであろう。この接近した配置の結果、アノード近傍で無視できる磁場強度に達するように、図15の構成においては磁場強度が上流方向で更に急激に低下する必要がある。この要求は、外側経路30Cの直径を3mmに縮小することによって満たされた。この直径の縮小の結果、外側経路30Cの長さにわたる静磁ポテンシャル差が小さくなり、そのため、外側磁極26から磁気シールド74CのエッジPまでの静磁ポテンシャル差は、外側磁極26と内側磁極24Aとの間の静磁ポテンシャル差よりもわずかに大きくなった。磁気回路設計の当業者には明らかなように、磁場の形状に対する同様な効果は、外側経路30Cに使用された大きい直径と、バックプレート32の厚み削減あるいはバックプレート32と内側経路28との間への小さい非磁性ギャップ導入とによっても得ることができよう。いずれの場合も、ほぼ均一な静磁ポテンシャルを有する磁性容器を形成する磁性要素は接近した位置を保っている。形状をわずかに変化させたり、あるいは要素間に小さいギャップを挿入したりすることによって、磁場の微調整が可能である。本発明の目的のために、複数の個別的な磁性要素を更に、ロウ付けしたり、溶接したり、あるいは互いに固定したりすることによって一体化した機械的構造を形成することができ、そのような構造が“複数個の磁性要素”となると考えられることを理解されよう。
【0083】
図15のイオンソース110は、1.3×10−4Torr(17ミリパスカル)のバックグラウンド圧力で動作し、イオンソースを通して8.4標準立方センチメートル毎分(sccm)のアルゴンガス流量、および電子放出カソード38として使用されたホローカソードを通して3.3sccmのガス流量で動作した。コイル36Aを流れる電流は平均直径において150ガウス(0.015テスラ)の最大磁場強度を与えるのに十分であった。アノードとカソード間に200Vの放電電圧が印加されたときに、放電電流は0.39Aで、イオンビーム電流は0.21Aであった。この特性は、全体の直径がわずか53mmで、アルゴンで動作するクローズド・ドリフト型イオンソースとしては優れたものである。上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文でズーリン(Zhurin)等によって述べられたように、クローズド・ドリフト型イオンソースは、質量数の大きいガスではもっと高効率で動作する。これは、アルゴンのような軽いガスにおいて効率的に動作する小型のクローズド・ドリフト型イオンソースとしては傑出した特性である。
【0084】
図10、13、および15の励磁コイルおよび図14の永久磁石は放電領域の外に位置するように、またしばしば同上の下流端付近に位置するものとして示されていた。放電領域の大部分を取り囲むほぼ均一の静磁ポテンシャルの容器であるため、この領域の磁場は励磁手段が何であろうとそれからほぼ分離されている。従って、放電領域に対する磁化手段の配置には広範囲の自由度がある。
【0085】
磁性層タイプのクローズド・ドリフト型スラスタは、放電領域の幅よりも長い放電領域の長さを有する(L>W)のが普通であり、ここでもそのような構造が想定されている。磁性層タイプのクローズド・ドリフト型イオンソースはまた、誘電体壁を有するのが普通である。クローズド・ドリフト型イオンソースの最近の傾向については、上で挙げたPlasma Source Science & Technologyの第8巻のページR1以降に掲載されたレビュー論文でズーリン(Zhurin)等が述べている。それらの傾向の中には、本質的に磁性層タイプであるクローズド・ドリフト型設計を、図14に示されたような導体でできた放電チャンバで使用するものが含まれる。アルキポフ(Arkhipov)等による米国特許第5,359,258号では、放電チャネル壁は誘電体材料および導体の両方で同時に構築される。当業者に利用可能な放電チャネル材料の多様性の観点から、本発明の実施の形態は誘電体材料でできた放電チャネルに限定すべきではない。
【0086】
ここでは本質的に軸対称な構造を想定してきた。必要とされるガス流量は一般に円周方向でのクローズド・ドリフト経路の全長に比例するので、本発明の利点は軸対称な構造において最も顕著である。しかし、よりコンパクトな設計という利点もまた、本発明を採用してクローズド・ドリフト放電領域が細長く、あるいは“競技場”形状になるように構築することによって得られる。図10、13、および14は、そのような構造を説明することができるが、この形状を1つの断面で、それに直交する別の断面よりも細長くでき、それによってこの構造を径方向で非対称とすることは含まれていない。細長い、あるいは“競技場”形状のクローズド・ドリフト放電領域の場合は、放電領域に対し径方向で内向きおよび径方向で外向きの場所は、放電領域の片側およびそれの反対側として位置づけて説明するのがより便利である。
【0087】
同じように、イオンビームは一般に軸方向に生成されるものと想定している。本発明を利用して、イオンビームが径方向、あるいは円錐方向を向いたよりコンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースを構築することも可能である。
【0088】
本発明の特定の実施の形態について示し、説明され、各種の変更を示唆してきたが、当業者には明らかなように、本発明から外れることなく、本発明の幅広い態様において変更および修正を行い得ることは明らかであろう。従って、特許請求の範囲の目的は、そのような変更や修正のすべてを、特許を付与し得る真の精神およびスコープに含まれるものとして包含することである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図2】図1の従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図で、磁束の形状を示している。
【図3】図1のクローズド・ドリフト型イオンソースで、放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化を示している。
【図4】別の従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図5】図4の従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図で、磁場の形状を示している。
【図6】図4のクローズド・ドリフト型イオンソースで、放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化を示している。
【図7】更に別の従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図8】従来技術のクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図で、磁場の形状を示している。
【図9】図7のクローズド・ドリフト型イオンソースで、放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化を示している。
【図10】本発明の1つの特定の実施の形態に従って構築されたクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図11】図10のクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図で、磁場の形状を示している。
【図12】図10のクローズド・ドリフト型イオンソースで、放電領域の平均直径における磁場強度の軸方向変化を示している。
【図13】本発明の別の1つの特定の実施の形態に従って構築された別のクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図14】本発明の更に別の1つの特定の実施の形態に従って構築された更に別のクローズド・ドリフト型イオンソースの断面図。
【図15】本発明の1つの特定の実施の形態に従って構築され、小型のクローズド・ドリフト型イオンソースで優れた性能を実証するためにテストされた特定のクローズド・ドリフト型イオンソースの模式的断面図。
Claims (8)
- コンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースであって:
クローズド・ドリフト放電領域を定義する手段であって、前記領域の長さがそれの幅よりも長く、またその中にイオン化可能なガスが導入される手段;
前記領域の一端に位置するアノード;
前記領域の他端付近に位置する電子放出カソード;
前記放電領域の片側で、前記領域の前記他端付近に位置する第1磁極;
前記放電領域の反対側で、前記領域の前記他端付近に位置する第2磁極;
複数の磁性要素および少なくとも1つの磁化手段を含む磁気回路であって、前記磁気回路は前記第1磁極から前記第2磁極へ延びており、また前記領域の前記一端に一般に取り付けられて、前記アノードが前記磁性要素と前記領域との間に位置している磁気回路;
前記イオン化可能なガスからイオンを生成し、前記イオンを前記他端へ向かって加速するための放電手段;
前記加速されたイオンが前記領域の前記他端から離れていくことを許可する手段;
前記磁性要素の少なくとも1つが前記領域の前記一端に1つの磁性容器を提供することを特徴とし;
前記容器を形成する1または複数の前記磁性要素、前記第1磁極、および前記磁気回路の任意の中間の前記磁性要素が、隣接する要素と次々に接近しており;および
前記磁化手段が前記第2磁極と前記磁性容器との間にのみ位置している;
を含むコンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソース。 - コンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースであって:
ほぼ環状のクローズド・ドリフト放電領域を定義する手段であって、前記領域の長さがそれの幅よりも長く、またその中にイオン化可能なガスが導入される手段;
前記領域の長手方向の一端に位置するアノード;
前記領域の長手方向の他端付近に位置する電子放出カソード;
前記放電領域の径方向内側で、前記領域の前記長手方向で他端付近に位置する第1磁極;
前記放電領域の径方向外側で、前記領域の前記長手方向で他端付近に位置する第2磁極;
複数の磁性要素および少なくとも1つの磁化手段を含む磁気回路であって、前記磁気回路は前記第1磁極から前記第2磁極へ延びており、また前記領域の前記一端に一般に取り付けられて、前記アノードが前記磁性要素と前記領域との間に位置している磁気回路;
前記イオン化可能なガスからイオンを生成し、前記イオンを前記長手方向で他端へ向かって加速するための放電手段;
前記加速されたイオンが前記領域の前記長手方向で他端から離れていくことを許可する手段;
前記磁性要素の少なくとも1つが前記領域の前記一端に1つの磁性容器を提供することを特徴とし;
前記容器を形成する1または複数の前記磁性要素、前記第1磁極、および前記磁気回路の任意の中間的な前記磁性要素が、隣接する要素と次々に接近しており;および
前記磁化手段が前記第2磁極と前記磁性容器との間にのみ位置している;
を含むコンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソース。 - 請求項1または2に記載のクローズド・ドリフト型イオンソースであって、更に、放電チャンバ壁を含む前記放電領域の側面境界が誘電体材料でできていることを特徴とするクローズド・ドリフト型イオンソース。
- 請求項1または2に記載のクローズド・ドリフト型イオンソースであって、更に、放電チャンバ壁を含む前記放電領域の側面境界が導体材料でできていることを特徴とするクローズド・ドリフト型イオンソース。
- 請求項1または2に記載のクローズド・ドリフト型イオンソースであって、更に、前記磁化手段が1または複数の永久磁石を含むことを特徴とするクローズド・ドリフト型イオンソース。
- 請求項1または2に記載のクローズド・ドリフト型イオンソースであって、更に、前記磁化手段が1または複数の励磁コイルを含むことを特徴とするクローズド・ドリフト型イオンソース。
- コンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースを構築する方法であって:
その中にイオン化可能なガスが導入され、クローズド・ドリフト放電領域を定義する手段であって、前記領域の長さがそれの幅よりも長く、またその中にイオン化可能なガスが導入される手段;
前記領域の一端に位置するアノード;
前記領域の他端付近に位置する電子放出カソード;
前記領域の片側で、前記領域の前記他端付近に位置する第1磁極;
前記領域の反対側で、前記領域の前記他端付近に位置する第2磁極;
複数の磁性要素および1つの磁化手段を含む磁気回路であって、前記磁気回路は前記第1磁極から前記第2磁極へ延びており、また前記領域の前記一端に一般に取り付けられて、前記アノードが前記磁気回路の要素と前記領域との間に位置している磁気回路;
前記イオン化可能なガスからイオンを生成し、前記イオンを前記他端へ向かって加速するための放電手段;
前記加速されたイオンが前記領域の前記他端から離れていくことを許可する手段;
を含むタイプのコンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースを構築する方法であって:
a.前記磁気回路の前記磁性要素の少なくとも1つを配置して、前記領域の前記一端に磁性容器を形成する工程;
b.前記容器を形成する前記1または複数の磁性要素、前記第1磁極、および前記磁気回路の任意の中間の磁性要素を配置し、それによって隣接する要素が次々と接近するように配置する工程;および
c.前記磁化手段を配置して、それが前記第2磁極と前記磁性容器との間にのみ位置するように配置する工程;
を含む方法。 - コンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースを構築する方法であって:
その中にイオン化可能なガスが導入され、ほぼ環状のクローズド・ドリフト放電領域を定義する手段であって、前記領域の長さがそれの幅よりも長く、またその中にイオン化可能なガスが導入される手段;
前記領域の長手方向の一端に位置するアノード;
前記領域の長手方向の他端付近に位置する電子放出カソード;
前記領域の径方向内側で、前記領域の長手方向で前記他端付近に位置する第1磁極;
前記領域の径方向外側で、前記領域の長手方向で前記他端付近に位置する第2磁極;
複数の磁性要素および1つの磁化手段を含む磁気回路であって、前記磁気回路は前記第1磁極から前記第2磁極へ延びており、また前記領域の前記一端に一般に取り付けられて、前記アノードが前記磁気回路の要素と前記領域との間に位置している磁気回路;
前記イオン化可能なガスからイオンを生成し、前記イオンを長手方向で前記他端へ向かって加速するための放電手段;
前記加速されたイオンが前記領域の長手方向で前記他端から離れていくことを許可する手段;
を含むタイプのコンパクトなクローズド・ドリフト型イオンソースを構築する方法であって:
a.前記磁気回路の前記磁性要素の少なくとも1つを配置して、前記領域の前記一端に磁性容器を形成する工程;
b.前記容器を形成する前記1または複数の磁性要素、前記第1磁極、および前記磁気回路の任意の中間の磁性要素を配置し、それによって隣接する要素が次と接近するように配置する工程;および
c.前記磁化手段を配置して、それが前記第2磁極と前記磁性容器との間にのみ位置するように配置する工程;
を含む方法。
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