JP2004530117A - 生物プロセスを調節するペプチドを同定する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、生物、細胞又は組織において生物プロセスを調節するペプチドをスクリーニング及び同定するための方法及び組成物を提供するものである。さらに本発明は、同定されたペプチド又はその類似体を用いて、対象における正常でない生物プロセスに関連する疾患又は状態を治療する方法も提供する。
Description
【関連出願】
【0001】
本出願は、引用をもってその内容全体をここに援用することとする2001年2月22日出願の米国仮特許出願第60/270,968号の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
ペプチド・ライブラリを作成する方法の近年の進歩により、生物活性に関するスクリーニングの対象となる膨大な数のペプチドがもたらされた。このような方法には、生物学的方法及び化学合成法の両方がある。例えば、ペプチドをバクテリオファージに発現させ、生物学的スクリーニングに向けてファージ表面上に提示させることができる。このようなライブラリには、106の桁乃至1012の桁の異なるメンバーが含まれていることもあり、またランダムな配列が含まれていたり、あるいは、例えば特定の残基が固定されていたり、又は特定の位置が一部の可能な残基のうちの一つのみで占められていたりするなど、偏った配列が含まれていることもある。このようなライブラリは、生物活性化合物を同定するための強力な方法になる。
【0003】
潜在的な薬物活性を有するペプチド又は低分子ライブラリ内の化合物を同定するプロセスの一つは、化合物ライブラリをスクリーニングして、標的生体分子、通常はタンパク質、に結合するライブラリ・メンバを同定するステップを含む。一般的に、該標的生体分子は既知であるか、又は、ある疾患プロセスに関与していると考えられているものである。こうして、標的生体分子に結合する化合物を、この化合物が標的の機能に及ぼす影響を評価する機能的スクリーニングで評価することができる。このようなスクリーニングは、化合物による酵素活性又はリガンド結合などの分子事象調節能を測定する無細胞検定である場合も、又は、化合物による細胞活性調節能を測定する細胞ベースのスクリーニングである場合もある。この方法の律速因子は、特定の疾患プロセスで役割を果たす標的生体分子の同定である。ヒトゲノムを配列決定しようとする試みで得られた膨大な情報群は、コードされたタンパク質を治療用ターゲットとしてバリデートする必要を減じることのない情報に結び付けられねばならない。ある疾患状態に関連する生物プロセスの分子学的詳細のうちの少なくとも一部でも知る必要性があることは、新薬開発において大きな障害である。
【0004】
複雑な生物学的システムを調べるアプローチの一つは、コンビナトリアル化学を用いて多様な化合物ライブラリを合成し、この化合物ライブラリをスクリーニングして、細胞での表現型上の影響を探すアプローチである。数十年前、変異が表現型に及ぼす影響をスクリーニングすることが、下等生物(即ち真菌及び細菌)の基本的な代謝経路及び調節経路を特徴付けする最初のステップとして役立ったのとちょうど同様に、このアプローチは、哺乳動物細胞での高度に複雑な調節ネットワーク及び経路を調べる強力な手段となるであろうと考えられている。このようなアプローチには、(i)数百万の化合物の表現型解析ができるスクリーニング検定法の確立、及び(ii)効果的な化合物の分子上の同定を可能にするフォーマットでの多様性の高い化合物ライブラリの開発(逆重畳積分)という、二つの重要な要素がある。
【0005】
これらの要件の両方ともが、現在の技術では充分に満たされていない。合理的なスクリーニングフォーマットで現在存在する最も大きな逆重畳積分可能なコンビナトリアル化学ライブラリは1乃至2百万の化合物を成す(Tan et al.(1998) PNAS 95(8):4247-52)。さらに、ファージ・ディスプレイ・ライブラリは、コンビナトリアル法の多様性(即ち7個のランダムな天然アミノ酸から成る109個の異なる分子をライブラリ中に得られる)を得る大きな手段とはなるが、これらのライブラリのスクリーニング法は、既知かつ特定の標的分子への結合の評価に限られている。結合のみを調べるスクリーニングは、リガンド結合が標的の機能に影響を及ぼすかどうかを直接考慮するものではない。さらに、特定の経路及びその構成要素を予め知っていることが、このような結合スクリーニングのデザインには必要であるため、このアプローチが応用できるのは、比較的に良く解明された経路内の標的だけである。
【0006】
従って、疾患状態に関連する生物プロセスを調節できる化合物の同定を簡便化する優れた方法が依然、求められている。
【0007】
発明の概要
本発明は、生物において、例えばある所定の生物プロセスなど、生物プロセスを調節するペプチドをスクリーニング及び同定するための効率的な高スループットの方法及び組成物を提供するものである。本発明は現存するアプローチに比較していくつかの長所を提供する。例えば、分子レベルでの作用機序を知る必要なく、細胞又は生物体レベルなどの生物レベルで、あるプロセスの阻害能についてペプチド・ライブラリをスクリーニングすることができる。これは、例えば癌など、複雑かつ高度に多様な疾患の研究にとって特に有利である。さらに、生物学的、細胞学的又は生物体学的に活性なペプチドから遡って調べることにより、当該ペプチドが標的とする生体分子を同定し、ひいては、目的のプロセスの治療上のターゲットとして、この生体分子をバリデートすることができる。
【0008】
従って、本発明は、アポトーシス、ネクローシス、タンパク質輸送、細胞接着、膜輸送、細胞遊走、細胞分化、感染、病原性生物の複製などの生物プロセスや、又は、疾患状態の進行、を調節するペプチドを同定する方法を提供するものである。本方法は、(a)複数のペプチドを含んで成るペプチド・ライブラリに生物(例えば病原性生物)、細胞又は組織を接触させるステップであって、前記複数のペプチドは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のフラグメントである、ステップと、(b)前記複数のペプチドの、前記生物、細胞又は組織における生物プロセスを調節する能力を評価するステップと、(c)ステップ(b)で前記生物プロセスを調節することが示された少なくとも一つのペプチドのアミノ酸配列を決定することで、前記生物プロセスのモジュレータとして該ペプチドを同定するステップと、を含む。複数の細胞又は組織をペプチド・ライブラリに接触させる場合、本方法には、選択的に、例えば細菌、ウィルス、真菌又は原虫などの病原性生物に前記細胞又は組織を接触させるステップをさらに含めることができる。この実施態様では、評価の対象である生物プロセスは、前記病原性生物の感染性又は複製である。
【0009】
ある実施態様では、前記ペプチド・ライブラリは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のうちの複数のフラグメントが入れ子状態になったものを含んで成る。例えば、前記入れ子状態になった重複分は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸残基であってもよい。前記ペプチドはそれぞれ、約50、45、40、35、30、25、20、15、10、5 又はそれより少ないアミノ酸残基を含んで成るものでもよい。
【0010】
別の実施態様では、前記ペプチド・ライブラリは、ある生物の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの遺伝子産物の複数のフラグメントを含んで成る。さらに別の実施態様では、前記ペプチド・ライブラリは、ある生物の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの染色体又はゲノム全体の遺伝子産物の複数のフラグメントを含んで成るものでもよい。
【0011】
ある実施態様では、ヒト細胞などの哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は植物細胞などの前記細胞は、前記ペプチド・ライブラリと同じ生物由来である。別の実施態様では、哺乳動物組織などの前記組織は、前記ペプチド・ライブラリと同じ生物由来である。更なる実施態様では、前記生物は、前記ペプチド・ライブラリの由来となった生物と同じ生物である。
【0012】
別の実施態様では、前記生物、細胞、又は組織の生物プロセスを調節する前記ペプチドの能力を、免疫組織化学法を使用したり、前記生物、細胞、又は組織の形態変化を観察したり、前記生物、細胞、又は組織における一つ以上の遺伝子の発現変化を測定したり、あるいは、例えば、Gタンパク質共役受容体が主に媒介するシグナル伝達など、シグナル伝達のレベル変化を測定することによって、評価する。
【0013】
本発明の一実施態様では、例えば核局在シグナル配列、膜局在シグナル配列、ファルネシル化シグナル配列、転写活性化ドメイン、又は転写抑制ドメインなど、別の付加的なアミノ酸配列に前記ペプチドを融合してもよい。
【0014】
さらに本発明の方法には、ステップ(c)で同定されたアミノ酸配列に基づいてデザインされた複数のペプチド又は非ペプチド化合物を含んで成る第二ライブラリを形成するステップと、当該生物プロセスを調節する少なくとも一つのペプチド又は非ペプチド化合物を前記第二ライブラリから選抜するステップと、を含めてもよい。ある実施態様では、前記第二ライブラリ中のペプチドは、天然L型アミノ酸から成っていてもよい。別の実施態様では、前記第二ライブラリ中の少なくともいくつかのペプチドは、例えばD型アミノ酸、β型もしくはγ型アミノ酸、又は、20種類の天然型アミノ酸の側鎖のいずれかと異なる側鎖を有するアミノ酸など、非天然型アミノ酸を一つ以上、含んで成っていてもよい。
【0015】
別の局面では、本発明は、本発明の方法により、ある生物プロセスを調節すると同定されたペプチド、これらのペプチドを含有するライブラリや、これらのペプチド及び薬学的に許容可能な担体を含んで成る医薬組成物を特徴とするものである。
【0016】
更なる局面では、本発明は、本発明の方法によりある生物プロセスを調節すると同定されたペプチドを、当該ペプチドと類似の結合上の特徴又は調節上の特徴を有する化合物を分子モデリングするために用いることを提案するものである。
【0017】
さらに別の局面では、本発明は、本発明の方法に従って同定されたペプチドを治療上有効量、対象に投与することにより、例えばHIV感染又は癌など、正常でない生物プロセスに関連する疾患又は状態に罹患した対象を治療する方法を特徴とする。
【0018】
さらに別の局面では、本発明は、ある生物プロセスを調節するペプチドを同定するキットを提供し、本キットは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のフラグメントである複数のペプチドを含んで成るペプチド・ライブラリと、使用に関する指示とを含むものである。
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は以下の詳細な説明及び請求の範囲から明白となるであろう。
【0020】
発明の詳細な説明
幅広い生理プロセスが、タンパク質間の相互作用か、又は、2種以上のこのような相互作用の連鎖を介して進行する。これらのプロセスの中に、病原性生物の生存及び/又は感染や、多種の疾患状態の発生及び/又は維持に必要なものがある。例えばある疾患のプロセスに必須なタンパク質間相互作用を阻害できる化合物は、例えば感染、癌、炎症、神経変性又は疼痛などの疾患状態の治療のための治療薬として有用な可能性がある。
【0021】
本発明は、例えばアポトーシス、ネクローシス、タンパク質輸送、細胞接着、膜輸送、細胞遊走、細胞分化、感染、病原性生物の複製、又は疾患の進行など、生物プロセスを調節するペプチドを同定する方法を提供するものである。本方法は、(a)複数のペプチドを含んで成るペプチド・ライブラリに生物(例えば病原性生物)、細胞又は組織を接触させるステップであって、前記複数のペプチドは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のフラグメントである、ステップと、(b)前記複数のペプチドの、前記生物、細胞又は組織における生物プロセスを調節する能力を評価するステップと、(c)ステップ(b)で前記生物プロセスを調節すると示された少なくとも一つのペプチドのアミノ酸配列を決定して、該ペプチドを、前記生物プロセスのモジュレータとして同定するステップと、を含む。
【0022】
ここで用いる用語「生物プロセス」には、例えば分子的プロセス、細胞プロセス又は生物体プロセスなどのあらゆる生物プロセスが包含される。本生物プロセスは、例えば酵素プロセス、タンパク質間相互作用、タンパク質/核酸間相互作用、核酸間相互作用、ペプチド/タンパク質相互作用、又はタンパク質対ホルモン相互作用などの分子プロセスであってよい。また本生物プロセスは、例えば細胞生存率、特定のタンパク質の発現を含むタンパク質発現、細胞増殖、一種以上の生体分子の細胞発現、シグナル伝達、細胞接着、細胞分化、細胞形質転換、感染性又はアポトーシスなど、細胞プロセスであってもよい。本生物プロセスはまた、例えばある疾患状態の発生又は進行、あるいは、良性又は病原性生物の感染など、生物体プロセスであってもよい。前記疾患状態は、天然で発生した状態又は状況でも、あるいは、天然で発生した疾患状態を模倣する又は似るよう誘導された状態又は状況であってもよい。例えば、本生物プロセスを、ある疾患又は他の望ましくない医学的状況の動物モデルに示させることができる。
【0023】
ここで用いる用語「生物」には、ヒト、マウス、ラット、サル、又はウサギなどの動物;シロイヌナズナ、コメ、小麦、トウモロコシ、トマト、アルファルファ、脂肪種子のナタネ、大豆、綿、ひまわり又はキャノーラなどの植物;エシェリヒア−コリ(Escherichia coli)、カンピロバクター(Campylobacter)属、リステリア(Listeria)属、レジオネラ(Legionella)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、サルモネラ(Salmonella)属、ボルダテラ(Bordatella)属、肺炎球菌(Pneumococcus)属、根粒球菌(Rhizobium)属、クラミジア(Chlamydia)属、リケッチア(Rickettsia)属、放線菌(Streptomyces)属、マイコプラズマ(Mycoplasma)属、ヘリコバクター−ピロリ(Helicobacter pylori)、クラミジア−ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、Q熱リケッチア(Coxiella burnetii)、炭疽菌(Bacillus Anthracis)及びナイセリア(Neisseria)属などの細菌;クモノスカビ(Rhizopus)属、アカパンカビ(neurospora)、酵母、銹菌類などの真菌;コウジカビ(Aspergillus)属、ブラストミセス(Blastomyces)属、カンジダ(Candida)属、コクシジオイデス(Coccidioides)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、表皮菌(Epidermophyton)属、ヘンダーソヌラ(Hendersonula)属、ヒストプラズマ(Histoplasma)属、小胞子菌(Microsporum)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、パラコクシジオイデス(Paracoccidioides)属、 ニューモシスティス(Pneumocystis)属、白癬菌(Trichophyton)属、及びトリコスポリウム(Trichosporium)属;熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、ランゲルトリパノゾーマ(Trypanosoma rangeli)、トリパノゾーマ−クルージ(Trypanosoma cruzi)、クリプトスポリジウム−パルブム(Cryptosporidum parvum)、ローデシアトリパノゾーマ(Trypanosoma rhodesiensei)、トリパノゾーマ-ブルーセイ(Trypanosoma brucei)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、日本住血吸虫(Schistosoma japanicum)、バベシア−ボビス(Babesia bovis)、エルメリア−テネラ(Elmeria tenella)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、タイレリア−パルバ(Theileria parva)、胞状条虫(Taenia hydatigena)、テニア−オビス(Taenia ovis)、無鉤条虫(Taenia saginata)、単包包虫(Echinococcus granulosus)及びメソセストイド−コルチ(Mesocestoides corti)などの原虫類;条虫類、例えば単包包虫(Echinococcus granulosus)、多包条虫(E. multilocularis)、エキノコッカス−ボゲリ(E. vogeli)及びエキノコッカス−オリガースラス(E. Origarthrus)などの寄生生物;トリパノゾーマ−ブルーセイ(Trypanosoma brucei)などの原虫を含め、あらゆる生物を包含する。生物という用語にはさらに、ウィルス、例えばヒト免疫不全ウィルス、ライノウィルス、ロタウィルス、インフルエンザウィルス、エボラウィルス、シミアン免疫不全ウィルス、ネコ白血病ウィルス、呼吸系発疹ウィルス、疱疹ウィルス、ポックスウィルス、ポリオウィルス、パルボウィルス、カポジ肉腫随伴疱疹ウィルス (KSHV)、アデノ随伴ウィルス(AAV)、シンドビスウィルス、ラッサウィルス、西ナイルウィルス、エンテロウィルス、例えば23種のコックサッキーAウィルス、6種のコックサッキーBウィルス、及び28種のエコーウィルス、エプスタイン−バーウィルス、カリチウィルス、アストロウィルス(原語:astroviruses)及びノーウォークウィルス;オルビウィルス(orbiviruses)、オルトレオウィルス(orthoreoviruses)、フィロウィルス(filoviruses)、狂犬病ウィルス、コロナウィルス、ブンヤウィルス(bunyaviruses)、アレナウィルス(arenaviruses)、流行性耳下腺炎ウィルス、麻疹ウィルス、パラインフルエンザウィルス(parainfluenza virus)、風疹ウィルス、フラビウィルス(flaviviruses)、アルファウィルス(alfaviruses)、サイトメガロウィルス、HHV-6、HHV-7、アデノウィルス、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、A型肝炎ウィルス、パピローマウィルス、JCウィルス(jc virus)、エンテロウィルス(enteroviruses)及びフィールズ・ビロロジーに解説された他のもの、も含まれる。
【0024】
ここで用いる用語「細胞」には、あらゆる原核もしくは真核細胞が含まれる。本発明の方法で使用してもよい細胞の例には、真菌細胞(即ち酵母細胞);昆虫細胞(例えばシュナイダー及びsF9細胞);哺乳動物の体細胞又は生殖系細胞;哺乳動物細胞株、例えばHeLa細胞(ヒト)、NIH3T3(マウス)、RK13(ウサギ)細胞、胚性幹細胞(例えばD3及びJ1);並びに、造血系幹細胞、筋原細胞、肝細胞、リンパ球、及び上皮細胞などの哺乳動物細胞種がある。
【0025】
ここで用いる用語「組織」は、類似の細胞及びそれらの細胞間物質が互いに接着されて特定の機能を果たすようになった一群を包含するものである。組織という用語には、例えば上皮組織、結合組織、筋組織、神経組織、血管組織、又は骨組織など、ある生物のあらゆる組織が含まれる。
【0026】
ここで用いる用語「ペプチド・ライブラリ」は、ゲノムにコードされた少なくとも一種のタンパク質のフラグメントである一群のペプチドを包含する。本ペプチド・ライブラリには、同じゲノムにコードされた2、3、4、5、6、7、8、9、10種又はそれ以上のタンパク質のフラグメントが含まれていてよい。本ペプチド・ライブラリには、さらに、同じゲノムにコードされた2乃至1000、2乃至900、2乃至800、2乃至700、2乃至600、2乃至500、2乃至400、2乃至300、2乃至200、2乃至100又は2乃至50種のタンパク質のフラグメントを含めることもできる。好ましくは、前記フラグメントに、全体として、コードされた配列のアミノ酸残基がすべて、含まれているとよい。つまり、例えば当該ゲノムにコードされた配列が200個のアミノ酸残基から成る場合、これらの残基のそれぞれが、例えば当該ライブラリ中の少なくとも一つのペプチドに、コードされたままの配列中ですぐ隣にある残基の少なくとも一方に結合した状態で見られるとよい。このようなライブラリは、ゲノムにコードされたある特定のタンパク質に関して「完全な」ライブラリであると言われている。本ペプチド・ライブラリには、ゲノムにコードされたある特定のアミノ酸配列の複数フラグメントを、連続した、入れ子状態になった、もしくはこれらの組合せにして含めることができる。フラグメント同士が正しい順序で端と端がつながれて整列しており、ゲノムにコードされたままのアミノ酸配列を再現していれば、即ち、フラグメントの配列同士の間に重複がなければ、連続していることになる。
【0027】
「入れ子状態になったペプチド・ライブラリ」という用語は、ここで用いる場合、ゲノムにコードされた一つ以上のペプチドの数フラグメントを含有するペプチドの一まとまりを言い、但しこの場合、少なくともいくつかのペプチドのN末端は、一つ以上のアミノ酸残基分、少なくとも一つの他のペプチドのC末端と重複しており、そして少なくともいくつかのペプチドのC末端は、一つ以上のアミノ酸残基分、少なくとも一つの他のペプチドのN末端と重複している。C末端及びN末端のそれぞれで重複する残基の数は、重複又は入れ子状態になった重複の程度と呼ばれ、典型的には1乃至n−1(但しこの場合、nは当該ペプチド中のアミノ酸残基の数を表す)であろう。連続した配列を有するペプチドから成るライブラリの有する重複の程度は0である。本ライブラリ中のフラグメントは、ゲノムにコードされたままの配列全体にわたって、それぞれ様々な程度の重複を有していてもよい。つまり、インタクト配列の一箇所以上の特定の領域のフラグメントが、そのインタクト配列のうちの別の特定の領域のフラグメントとは異なる重複の程度を有していてもよい。
【0028】
本発明の多様な局面を、以下の小項でさらに解説することとする。
【0029】
I.発明の方法
本発明は、アポトーシス、タンパク質輸送、細胞接着、膜輸送、細胞遊走、細胞分化、などの生物プロセス、又は、疾患状態の進行、を調節するペプチドを同定する方法を提供するものである。本方法は、(a)複数のペプチドを含んで成るペプチド・ライブラリに生物(例えば病原性生物)、細胞又は組織を接触させるステップであって、前記複数のペプチドは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のフラグメントである、ステップと、(b)前記複数のペプチドの、前記生物、細胞又は組織における生物プロセスを調節する能力を評価するステップと、(c)ステップ(b)で前記生物プロセスを調節すると示された少なくとも一つのペプチドのアミノ酸配列を決定することで、前記生物プロセスのモジュレータとして該ペプチドを同定するステップと、を含む。
【0030】
ある非限定的な例では、本ライブラリは、ゲノムにコードされた1種以上のタンパク質のフラグメントである20量体を含んで成る。この実施態様では、当該ペプチドは連続又は入れ子状態になっており、重複の程度は典型的に、0から約10までの範囲内である。好ましくは、前記配列は、一定の重複の程度で入れ子状態になっているとよい。一般的に、本ライブラリの大きさ又は複雑さは重複の程度が増すにつれ、大きくなる。また、入れ子状態になった数フラグメントは、異なる組のペプチド群が多くの場合、インタクト配列のアミノ末端又はカルボキシ配列を開始点として生じるのと同様に、これらの開始点から作製を始めることができる。本ライブラリには、アミノ末端及びカルボキシ末端の両方で開始して生成される入れ子状態になった数フラグメントを含めることができる。100個のアミノ酸残基から成る一本の鎖を含んで成る、ゲノムにコードされたタンパク質の場合、一組の連続した20量体は、合計5種の異なる配列について、以下の配列:1-20;21-40;41-60;61-80;及び81-100を有するであろう。重複の程度が2である場合、N末端で始まる一組の配列は、1-20;18-37;35-54;52-71;69-88;及び81-100であろう。C末端で始まる場合、前記配列は81-100;63-82;45-64;27-46;9-28 及び1-20であろう。このように、合計10種の異なる配列が、重複の程度が2である入れ子状態から生ずる。重複の程度が5である場合、N末端で始まる配列は、1-20;16-35;31-50;46-65;61-80;76-95 及び 80-100であろう。C末端で始まる場合、前記配列は80-100;65-84;50-69;35-54;20-39;5-24 及び1-20であろう。このように、合計12種の異なる配列が重複の程度を5にした場合に生ずる。重複の程度を10にした場合、N末端から始めると、作製されるフラグメントは、1-20;11-30;21-40;31-50;41-60;51-70;61-80;71-90;及び81-100となり、合計9種の異なる配列ができる。重複の程度が19(n-1)である場合、可能なペプチドは、N末端から始めると、1-20;2-21;3-22、4-23;5-24、等、最高81-100を含み、合計81種のペプチドができる。
【0031】
対象となる生物プロセスは、例えば分子プロセス、細胞プロセス又は生物体プロセスなど、いかなる生物プロセスであってもよい。例えば、本生物プロセスは、例えば酵素プロセス、タンパク質間相互作用、タンパク質/核酸間相互作用、核酸間相互作用、ペプチド/タンパク質間相互作用、又はタンパク質/ホルモン間相互作用などの分子プロセスであってよい。選択的には、本ペプチド・ライブラリに対し、タンパク質などの分子標的に結合するメンバーを探すスクリーニングを最初に行う。こうして標的に結合するメンバーを、分子プロセス、細胞プロセス又は生物体プロセスなどの生物プロセスに標的が結合したときの機能的結果を調べる機能的スクリーニングで評価することができる。また本生物プロセスは、例えば細胞生存率、特定のタンパク質の発現を含むタンパク質発現、細胞増殖、一種以上の生体分子の細胞発現、シグナル伝達、細胞接着、細胞分化、細胞形質転換、感染性又はアポトーシスなど、細胞プロセスであってもよい。別の実施態様では、本生物プロセスは、例えばある疾患状態の発生又は進行、あるいは、良性又は病原性生物の感染など、生物体プロセスであってもよい。前記疾患状態は、天然で発生した状態又は状況でも、あるいは、天然で発生した疾患状態を模倣する又は似るよう誘導された状態又は状況であってもよい。例えば、本生物プロセスを、ある疾患又は他の望ましくない医学的状況の動物モデルに示させることができる。
【0032】
ある実施態様では、一つ又は複数のペプチドの目的の生物活性を調節する能力を適したin vitroもしくはin vivo検定又はモデルで評価する。前記in vitro検定は無細胞検定でも、又は細胞ベースの検定でもよい。
【0033】
ある実施態様では、前記生物プロセスはタンパク質対リガンド相互作用である。この実施態様では、ライブラリの全体又は画分を、目的の生物プロセスに関与していることが知られている又は考えられている、タンパク質などの第一生体分子に接触させることにより、本ライブラリをスクリーニングすることができる。第一生体分子に結合するライブラリのメンバーは、選択に応じて、例えば前記第一生体分子の結合相手であるような第二生体分子などの特定の溶離剤で溶離させることができる。こうして、第一生体分子に結合することが見出されたライブラリの一つ又は複数のメンバーを、例えば細胞ベースの検定又はin vivoモデルなどの機能的スクリーニングで評価することができる。
【0034】
ある第一の好適な実施態様では、本ペプチド・ライブラリを細胞ベースの検定で検定する。例えば、ライブラリ・メンバーのすべてを含んで成るペプチド混合物、それぞれがライブラリ・メンバーの下位集団を含有する一つ以上のサブ・ライブラリ、又は一種類のペプチド、の形である本ペプチド・ライブラリに、培養細胞を接触させることができる。当該検定法は、目的の生物プロセスの調節の程度の定量的もしくは定性的な指標となる読み取り値を有することが好ましいであろう。好ましくは、本ライブラリを一組のサブ・ライブラリとして評価するとよい。こうして当該検定法において活性を示すサブ・ライブラリをさらに小分割して、各サブ−サブ−ライブラリの活性を当該検定で判定することができる。検定で活性を個々に示す一種以上のペプチドが同定されるまで、ライブラリの小分割を続行することもできる。
【0035】
本方法の利用は、目的の生物プロセスが細胞ベースもしくは生物体プロセスである場合に有利であり、また、当該プロセスが一種以上のタンパク質間相互作用を通じて進行する場合に特に効果的である。しかしながら、本方法の特に重要な利点は、当該プロセスの機序上の詳細の知見を何ら必要としない点である。本方法は、一生物においてタンパク質/タンパク質が媒介するプロセスを阻害する少なくとも一種のペプチドは、一般に、例えばゲノムにコードされたタンパク質の一フラグメントなど、その生物のゲノムにコードされているという認識に関するものである。ある一例では、タンパク質Aとタンパク質Bとの相互作用を阻害するペプチドは、タンパク質Aのうちで、タンパク質Aがタンパク質Bと結合するドメインとなっている一フラグメントである場合がある。反対に、タンパク質Aのタンパク質Bとの結合を阻害するペプチドが、例えばタンパク質Bのうちで、タンパク質Bがタンパク質Aと相互作用するドメインである一フラグメントである場合もある。多くの場合、同定されるペプチドは、タンパク質パートナーの一方の一部分を含有するものであろうと予測される。しかしながら、場合によっては、当該タンパク質パートナーのいずれにも無関係の他のペプチド配列も、本方法で同定されよう。
【0036】
さらに本発明の方法は、ある任意の疾患状態に関して、潜在的な生体分子標的の同定及びバリデーションを可能とするものである。例えば、ある実施態様では、ステップ(c)で特定の生物プロセスのモジュレータとして同定されたペプチドのアミノ酸配列を、本ライブラリの由来となったゲノム又は関連するゲノムに関して公開されたアミノ酸及び遺伝子配列データと比較することで、前記ゲノムにコードされた一種以上の親タンパク質を同定することができ、この親タンパク質をフラグメント化すると、同定されたペプチドを得ることができる。こうして前記親タンパク質を、当該疾患プロセスの関与物質として同定し、従来の薬物スクリーニング検定法のターゲットとしてクローンしたり、使用することができる。本方法で同定されたペプチドはまた、その標的タンパク質を同定するためにも使用できる。例えば、プルダウン技術又は他のアフィニティ選抜技術を用いて、細胞を構成するタンパク質からその標的タンパク質を分離するための当該ペプチドを使用できる。このように、標的タンパク質を、目的の生物プロセスの関与物質として同定し、高スループット検定法など、従来の薬物スクリーニング検定法の分子標的として用いることもできる。
【0037】
ある実施態様では、本ライブラリ内のペプチドの少なくともいくつかを、細胞膜を横切った輸送を促すペプチド配列に融合する。多種のこのような膜透過配列が公知であり、その中には、例えばカポジFGFのシグナル配列などの疎水性が優勢の配列や、HIV TATタンパク質、アンテナペディア・ホメオドメイン、ゲルソリン等を由来とする配列など、塩基性残基を含有する他のものがある。本ライブラリ中のゲノム由来ペプチドは、膜透過配列にN末端でも、又はC末端でも融合することができる。適した膜透過配列は、引用をもってその各内容の全文をここに援用することとする米国特許第5,807,746号、第6,043,339号、第5,783,662号、第5,888,762号、第6,080,724号、第5,670,617号、第5,747,641号、第5,804,604号、WO 00/29427 及び WO 99/29721に解説されている。
【0038】
ゲノムにコードされたペプチド・ライブラリは、当業で公知の多種の方法で調製することができる。例えば、インタクトタンパク質を一種類のプロテアーゼ又は二種類以上のプロテアーゼ(例えばトリプシン、キモトリプシン又はパパイン)の組合せを用いてフラグメントにすることができる。こうすると、用いるプロテアーゼに応じて、タンパク質を無作為に切断したり、又は特定の配列位置でタンパク質を切断したりすることができる。ペプチドはまた、目的のゲノム由来の発現ライブラリを用いても、調製することができる。このような発現ライブラリは、当該ゲノムのコードするタンパク質の一フラグメントであるペプチドをコードする核酸配列を含有するベクタのライブラリを含んで成ることとなる。このような発現ライブラリは、例えば当該生物のゲノムを由来とし、かつ所望の入れ子状態を有すると共に当該ゲノム全体又は当該ゲノムの所望の部分を表すペプチドが出来るようにデザインされた配列など、断片化されたゲノムDNA又は合成核酸配列を用いて調製することができる。さらに、細胞内RNA転写産物を用いて調製し、例えばフリーラジカル法(フェントンの試薬)又は二種以上のヌクレアーゼの集団を用いて無作為に断片化したり、又は、特定の位置で一種以上のヌクレアーゼを用いて断片化したようなcDNAなど、断片化されたcDNAを用いても、前記発現ライブラリを調製できる。細菌細胞などのホスト細胞の一集団に前記発現ライブラリをトランスフェクトし、これらの細胞が発現したペプチドを、標準的な手法により単離することができる。
【0039】
また本ペプチド・ライブラリは、液相及び固相(ビーズ又は膜をベースにした固相)化学合成法、又はこれらのアプローチの組合せを含め、ペプチド合成(段階的又は輻合的)に適した何らかの方法でも調製してよい。ペプチドを化学合成する方法は当業で公知である(例えばBodansky, M. Principles of Peptide Synthesis, Springer Verlag, Berlin (1993) and Grant, G.A (ed.). Synthetic Peptides: A User's Guide, W.H. Freeman and Company, New York (1992)を参照されたい。自動ペプチド合成装置が市販されている。ペプチド・ライブラリの化学合成法の例には、ピン法(例えばGeysen, H.M. et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002を参照されたい);ティーバッグ法(例えばHoughten, R.A. et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:5131-5135を参照されたい);アミノ酸混合物の結合法(例えばTjoeng, F.S. et al. (1990) Int. J. Pept. Protein Res. 35:141-146; Rutter氏らの米国特許第5,010,175号を参照されたい);及び化合物の空間アレイ合成法(例えばFodor, S.P.A. et al. (1991) Science 251:767を参照されたい)、がある。ある実施態様では、本ペプチド・ライブラリを、その内容全文を引用をもってここに援用することとする米国特許第6,040,423号に解説された方法に従って合成する。本ペプチドのアミノ酸配列は、例えば、ゲノム中のオープンリーディングフレームにコードされた仮想翻訳アミノ酸配列を用いるなど、公知の又は利用可能なゲノム情報に基づいてデザインすることができる。
【0040】
ある実施態様では、本ペプチド・ライブラリは、多細胞生物のゲノムにコードされた少なくとも一種のタンパク質のフラグメントを含んで成る。前記多細胞生物は、好ましくは、哺乳動物や、又は、例えばニワトリ又は七面鳥などの家畜化された非哺乳動物であるとよい。好ましくは、前記多細胞動物はマウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ又はヤギであるとよく、そしてより好ましくは、前記多細胞生物は、サル、類人猿又はヒトなどの霊長類であるとよい。本ライブラリには、上述したようにゲノムにコードされた一種以上のタンパク質のフラグメントを含めることができ、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10本又はそれ以上の染色体上にある遺伝子にコードされたタンパク質を含めることもできる。
【0041】
ある実施態様では、本ペプチド・ライブラリは、ウィルスゲノムにコードされた少なくとも一種のタンパク質のフラグメントを含んで成る。好ましくは、本ライブラリが、ウィルスゲノムにコードされた2種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成るとよく、そしてより好ましくは、前記コードされたタンパク質のそれぞれについて完全であるとよい。本ライブラリ中に表示されたタンパク質には、構造タンパク質及び非構造タンパク質を含めることができる。ある実施態様では、本ライブラリは、ウィルスゲノムにコードされたタンパク質のそれぞれのフラグメントを含んで成り、より好ましくは、前記コードされたタンパク質のそれぞれについて完全であるとよい。ある実施態様では、本ペプチド・ライブラリは、ウィルスゲノムにコードされた各タンパク質のフラグメントを含んで成り、好ましくは、コードされたタンパク質のそれぞれについて完全であるとよい。前記ウィルスは、好ましくは、例えばヒトなどの哺乳動物において病原性のウィルスである。適したウィルスには、ヒト免疫不全ウィルス、ライノウィルス、ロタウィルス、インフルエンザウィルス、エボラウィルス、シミアン免疫不全ウィルス、ネコ白血病ウィルス、呼吸系発疹ウィルス、疱疹ウィルス、ポックスウィルス、ポリオウィルス、パルボウィルス、カポジ肉腫随伴疱疹ウィルス(KSHV)、アデノ随伴ウィルス(AAV)、シンドビスウィルス、ラッサウィルス、西ナイルウィルス、エンテロウィルス、例えば23種のコックサッキーAウィルス、6種のコックサッキーBウィルス、及び28種のエコーウィルス、エプスタイン−バーウィルス、カリチウィルス、アストロウィルス、及びノーウォークウィルス、がある。ウィルスは、例えば、感染細胞上清又は感染生物から採集してもよく、次にそのビリオンを精製し、本ペプチド・ライブラリを作製するためにこれらタンパク質をタンパク質分解により消化してもよい。
【0042】
この実施態様では、ウィルスによるホスト細胞感染能、ウィルスタンパク質産生のためのホスト細胞利用能、及び/又は、ホスト細胞内での複製能、に関連するプロセスを調節、好ましくは阻害する能力について、本ペプチド・ライブラリを評価する。このように、本検定法に、ウィルスの存在下で本ペプチド・ライブラリ又はサブ−ライブラリに潜在的ホスト細胞を接触させるステップと、本ライブラリの、ウィルス進入、ウィルスタンパク質産生又はウィルス複製の阻害能を評価するステップとを含めることができる。このような検定法は当業で公知である。
【0043】
別の実施態様では、本ペプチドは、細菌ゲノムにコードされた一種以上のタンパク質のフラグメントである。好ましくは、前記ライブラリが、細菌ゲノムにコードされた2種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成るとよく、そしてより好ましくは、前記コードされたタンパク質のそれぞれについて完全であるとよい。ある実施態様では、本ライブラリは、細菌ゲノムにコードされたタンパク質のそれぞれのフラグメントを含んで成り、好ましくは、前記コードされたタンパク質のそれぞれについて完全であるとよい。前記細菌は、好ましくは、例えばヒトなどの哺乳動物において病原性の細菌であるとよいが、特定の状況では、病原性の株に対して有意なゲノム上の類似性を有する非病原性株も用いることができる。このような細菌は当業で公知であり、その中には、E.コリ、カンピロバクター、リステリア、レジオネラ、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、サルモネラ、ボルダテラ、肺炎球菌、根粒菌、クラミジア、リケッチア、放線菌、マイコプラズマ、ヘリコバクター−ピロリ、クラミジア−ニューモニエ、Q熱リケッチア、及びナイセリアの病原性株がある。
【0044】
多種の生物のゲノム配列が当業で公知である。多種の代表的な生物のゲノム配列を見ることのできるサイトを以下の表に挙げる。
【0045】
【表1】
【表2】
【表3】
【0046】
別の実施態様では、本発明は、上述したような本発明のペプチド・ライブラリをコードする発現ライブラリの使用に関するものである。このような発現ライブラリは、発現ライブラリ中にインサートとして含まれた核酸断片のライブラリを含んで成る。このように、発現ライブラリは、それぞれが哺乳動物、細菌又はウィルスなどの生物のゲノムにコードされた一タンパク質の一フラグメントであるペプチドをコードする複数のベクタのライブラリを包含するものである。前記核酸断片は、当業で公知の合成法で調製することもできるが、あるいは好ましくは、ゲノムDNA又はcDNAを断片化することでも、調製できる。ゲノムDNA及びcDNAは、当業で公知の通り、多種のヌクレアーゼの一種以上を用いたり、例えばフェントンの試薬を用いるなど、無作為な切断を起こさせることでも、断片化することができる。好ましくは、前記発現ベクタが、ゲノムにコードされた1種以上のタンパク質のフラグメントが入れ子状態になったライブラリをコードしているとよい。
【0047】
本発明の発現ライブラリは、ある生物プロセスを調節するペプチドを同定する方法に使用できる。本方法は、(1)ある生物のゲノムにコードされた一タンパク質の一フラグメントであるペプチドをそれぞれがコードする複数の発現ベクタを含んで成る発現ライブラリを提供するステップと、(2)前記発現ライブラリを細胞にトランスフェクトするステップと、(3)細胞プロセスが調節された一つ以上のトランスフェクト細胞を判別するステップと、(4)細胞プロセスが調節された一つ又は複数のトランスフェクト細胞において一つ又は複数の発現ベクタを同定するステップと、(5)ステップ(4)で同定された一つ又は複数の発現ベクタにコードされた一つ又は複数のペプチドのアミノ酸配列を決定することで、前記細胞プロセスを調節するペプチドを同定するステップと、を含む。
【0048】
本発明のペプチド・ライブラリを発現させるのに用いてもよいベクタには、当業で公知の発現ベクタ、例えば、ウィルス・ベクタ(例えば複製欠陥レトロウィルス、アデノウィルス及びアデノ随伴ウィルス)が含まれる。前記発現ベクタには、典型的に、発現に用いるホスト細胞に基づき選択された、発現させようとする核酸配列に作動的に連結させた一種以上の調節配列が含められる。組換え発現ベクタ内において「作動的に連結させた」とは、目的のヌクレオチド配列の発現が(例えばin vitro転写/翻訳系内で、又は、ベクタをホスト細胞に導入した場合にはホスト細胞内で)可能な態様で前記ヌクレオチド配列が調節配列に連結されていることを意味するものと、意図されている。用語「調節配列」には、プロモータ、エンハンサ及び他の発現制御配列(例えばポリアデニレーション・シグナル)が含まれるものと、意図されている。このような調節配列は、例えばGoeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に解説されている。調節配列には、多種のホスト細胞でヌクレオチド配列の構成的発現を命令するものや、特定のホスト細胞でのみヌクレオチド配列の発現を命令するもの(例えば組織特異的調節配列)がある。
【0049】
組換え発現ベクタは、原核細胞又は真核細胞でのペプチド・ライブラリの発現用にデザインすることができる。例えば、本ペプチド・ライブラリを、E.coliなどの細菌細胞、(バキュロウィルス発現ベクタを用いて)昆虫細胞、酵母細胞、植物細胞、鳥類細胞、真菌細胞又は哺乳動物細胞で発現させることができる。適したホスト細胞はさらにGoeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に解説されている。代替的には、本組換え発現ベクタを、例えばT7プロモータ調節配列及びT7ポリメラーゼを用いるなどして、in vitroで転写及び翻訳させることができる。
【0050】
酵母S.セレビジエ(S. cerevisiae)での発現用のベクタの例には、pYepSec1 (Baldari, et al., (1987) Embo J. 6:229-234)、pMFa (Kurjan and Herskowitz, (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88 (Schultz et al., (1987) Gene 54:113-123)、pYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, CA)、及びpicZ (InVitrogen Corp, San Diego, CA)、がある。昆虫細胞での発現用のベクタには、バキュロウィルス発現ベクタ、例えばpAcシリーズ(Smith et al. (1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)及びpVLシリーズ(Lucklow and Summers (1989) Virology 170:31-39)がある。哺乳動物発現ベクタの例には、pCDM8 (Seed, B. (1987) Nature 329:840)及びpMT2PC (Kaufman et al. (1987) EMBO J. 6:187-195)がある。哺乳動物細胞で用いる場合、発現ベクタの制御機能は、ウィルス調節配列に提供させることがしばしばある。例えば、通常用いられているプロモータはポリオーマ、アデノウィルス2、サイトメガロウィルス及びシミアンウィルス40を由来とする。原核細胞及び真核細胞の両方に適した他の発現系については、Sambrook, J., Fritsh, E. F., and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989の第16章及び第17章を参照されたい。
【0051】
本発明のペプチド・ライブラリを持つベクタDNAは、原核もしくは真核細胞に、従来の形質転換又はトランスフェクション技術、例えばリン酸カルシウム共沈殿法及び塩化カルシウム共沈殿法、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション法、リポフェクション、又は電気穿孔法など、で導入することができる。ホスト細胞を形質転換又はトランスフェクトするために適した方法は、Sambrook, et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)や、引用をもってその内容をここに援用することとする米国特許第5,955,275号に見ることができる。
【0052】
II. 本発明の方法で用いる検定法
一つ又は複数のペプチドの、目的の生物活性に対する調節能を、適したin vitro又はin vivo検定又はモデルで評価する。前記in vitro検定は無細胞検定でも、又は細胞ベースの検定でもよい。
【0053】
細胞、組織又は生物体全体(例えばここで解説する動物モデル)に、ペプチド・ライブラリを接触させるか、又は、ペプチド・ライブラリをコードする一つ又は複数のベクタをトランスフェクトしてもよく、前記ペプチド・ライブラリのメンバーがアポトーシス、タンパク質輸送、細胞接着、膜輸送、細胞遊走、細胞分化などの生物プロセスや、又は、疾患状態の進行に及ぼす影響を、ここで解説するように検出することができる。
【0054】
例えば、細胞又は組織をペプチドライブラリに接触させる前後の両方で、アポトーシス細胞をAPOPTESTTM、TUNEL染色法又は他の当業で公知の方法を用いて判別してもよい。APOPTESTTM法は、アネキシンV抗体を利用して、アポトーシスの起きている細胞の特徴である細胞膜再構成を検出するものである。次に、この方法で染色したアポトーシス細胞を、蛍光発色セルソーティング(FACS)で分別するか、又は、固定アネキシンV抗体を用いた接着及びパンニングで分別することができる。
【0055】
プログラムされた細胞死が誘導されるようにT細胞受容体に架橋してあるT細胞ハイブリドーマ(3DO)(Ashwell J. D. et al. (1990) J. Immunol. 144:3326に解説されている)にも、本発明のペプチド・ライブラリを接触させるか、又は、本発明のペプチド・ライブラリをコードする一つ又は複数のベクタをトランスフェクトしてもよい。こうして、前記ペプチド・ライブラリのメンバーが、プログラムされた細胞死に及ぼす作用を、例えば核内クロマチンの変化を観察するなどにより、検出することができる。
【0056】
ペプチド・ライブラリのメンバーに応答した細胞遊走は、例えば細胞の先頭端部のアクチン・フィラメントの集合の変化、フィラメントの架橋の変化、アクチン網の逆行流の変化、フィラメントの分離の変化、アクチン単量体の分離の変化、単量体の再循環及び順向性拡散の変化、及び順向性オルガネラ流及び遅滞端の収縮の変化などを観察することで検出してもよい。
【0057】
さらに生物体全体(又はそれを由来とする細胞もしくは組織)に、本発明のペプチド・ライブラリを接触させたり、あるいは本発明のペプチド・ライブラリをコードする一つ又は複数のベクタをトランスフェクトすることもできる。適した生物には、疾患状態の動物モデルが含まれる。
【0058】
本発明の方法で用いられるであろう心血管疾患の動物モデルには、apoB もしくはapoR 欠損ブタ(Rapacz, et al., 1986, Science 234:1573-1577);ワタナベ遺伝性高脂血症 (WHHL)ウサギ(Kita et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci USA 84: 5928-5931);動物にLDLの食餌補助を行って化学的創傷を負わせるか、又は、バルーン・カテーテルによる血管形成術で機械的創傷を負わせてある、アテローム硬化症のブタ、ウサギ、もしくはラットモデルなどの非組換え、非遺伝性動物モデル;ラット心筋梗塞モデル(例えば Schwarz, ER et al. (2000) J. Am. Coll. Cardiol. 35:1323-1330に解説がある);及びウサギの慢性心臓虚血のモデル(例えばOperschall, C et al. (2000) J. Appl. Physiol. 88:1438-1445に解説がある)、がある。
【0059】
本発明の方法で用いられるであろう腫瘍形成の動物モデルは当業で周知であり(レビューは Animal Models of Cancer Predisposition Syndromes, Hiai, H and Hino, O (eds.) 1999, Progress in Experimental Tumor Research, Vol. 35; Clarke AR Carcinogenesis (2000) 21:435-41にある)その中には、例えば、発癌物質で誘導した腫瘍を持つ動物(Rithidech, K et al. Mutat Res (1999) 428:33-39; Miller, ML et al. Environ Mol Mutagen (2000) 35:319-327);腫瘍細胞を注射及び/又は移植した動物;及び、腫瘍遺伝子(例えばras)(Arbeit, JM et al. Am J Pathol (1993) 142:1187-1197; Sinn, E et al. Cell (1987) 49:465-475; Thorgeirsson, SS et al. Toxicol Lett (2000) 112-113:553-555) 及び腫瘍抑制遺伝子(例えばp53)(Vooijs, M et al. Oncogene (1999) 18:5293-5303; Clark AR Cancer Metast Rev (1995) 14:125-148; Kumar, TR et al. J Intern Med (1995) 238:233-238; Donehower, LA et al. (1992) Nature 356215-221)などの成長調節遺伝子に変異を持つ動物がある。さらに、例えば卵巣癌 (Hamilton, TC et al. Semin Oncol (1984) 11:285-298; Rahman, NA et al. Mol Cell Endocrinol (1998) 145:167-174; Beamer, WG et al. Toxicol Pathol (1998) 26:704-710)、胃癌(Thompson, J et al. Int J Cancer (2000) 86:863-869; Fodde, R et al. Cytogenet Cell Genet (1999) 86:105-111)、乳癌 (Li, M et al. Oncogene (2000) 19:1010-1019; Green, JE et al. Oncogene (2000) 19:1020-1027)、黒色腫 (Satyamoorthy, K et al. Cancer Metast Rev (1999) 18:401-405)、及び前立腺癌 (Shirai, T et al. Mutat Res (2000) 462:219-226; Bostwick, DG et al. Prostate (2000) 43:286-294)などの研究用には実験モデル系が利用できる。
【0060】
in vivoで血管形成を研究するためのモデルには、腫瘍細胞で誘導された血管形成及び腫瘍転移 (Hoffman, R.M. (1998-99) Cancer Metastasis Rev. 17:271-277; Holash, J. et al. (1999) Oncogene 18:5356-5362; Li, C.Y. et al. (2000) J. Natl Cancer Inst. 92:143-147)、マトリックスで誘導された血管形成(米国特許第5,382,514号)、ディスク(原語:disc)血管形成系(Kowalski, J. et al. (1992) Exp. Mol. Pathol. 56:1-19)、げっ歯類腸管膜窓血管形成検定(Norrby, K (1992) EXS 61:282-286)、ラットでの実験的絨毛膜様血管新生 (Shen, WY et al. (1998) Br. J. Ophthalmol. 82:1063-1071)、及びヒヨコ胚発生 (Brooks, PC et al. Methods Mol. Biol. (1999) 129:257-269) 及びヒヨコ胚漿尿膜(CAM)モデル(McNatt LG et al. (1999) J. Ocul. Pharmacol. Ther. 15:413-423; Ribatti, D et al. (1996) Int. J. Dev. Biol. 40:1189-1197)があり、Ribatti, D and Vacca, A (1999) Int. J. Biol. Markers 14:207-213でレビューされている。
【0061】
in vivoで血管緊張を研究するためのモデルには、ウサギ大腿動脈モデル(Luo et al. (2000) J. Clin. Invest. 106:493-499)、eNOSノックアウトマウス(Hannan et al. (2000) J. Surg. Res. 93:127-132)、脳虚血のラットモデル(Cipolla et al. (2000) Stroke 31:940-945)、レニン−アンギオテンシンマウス系 (Cvetkovik et al. (2000) Kidney Int. 57:863-874)、ラット肺移植モデル(Suda et al. (2000) J. Thorac. Cardiovasc. Surg. 119:297-304)、頭蓋内圧亢進のニュージーランド・ホワイト系ラビットモデル(Richards et al. (1999) Acta Neurochir. 141:1221-1227)、慢性高血圧の自然発生高血圧(SH) ラット神経モデル (Stekiel et al. (1999) Anesthesiology 91:207-214)、プラハ高血圧ラット(PHR) (Vogel et al. (1999) Clin. Sci. 97:91-98)、長期アンギオテンシンII (Ang II)-輸注ラット(Pasquie et al. (1999) Hypertension 33:830-834)、ダール−塩−感受性ラット(Boulanger (1999) J. Mol. Cell. Cardiol. 31:39-49)、動脈リモデリングのマウスモデル(Bryant et al. (1999) Circ. Res. 84:323-328)、及び肥満ズッカー(fa/fa)ラット(Golub et al. (1998) Hypertens. Res. 21:283-288)、がある。
【0062】
別の実施態様では、本ペプチド・ライブラリを、細胞内セカンド・メッセンジャ(例えば細胞内Ca2 +、ジアシルグリセロール、IP3)の誘導能、(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼなどの検出可能なマーカをコードする核酸に作動的に連結させた標的応答性調節配列を含んで成る)レポータ遺伝子の誘導能、又は、細胞内基質に対するリン酸化能について、評価する。あるペプチド・ライブラリメンバーの、細胞内基質に対するリン酸化能は、例えばin vitroキナーゼ検定で調べることができる。簡単に説明すると、目的の細胞を、当該ペプチド・ライブラリ(又はサブ−ライブラリ)と一緒にインキュベートするか、あるいは、10mMのMgCl2及び5mMのMnCl2など、MgCl2及びMnCl2を含有する緩衝液に入れた、本ペプチド・ライブラリ(又はサブ−ライブラリ)及び[γ-32P]ATPなどの放射性ATPをコードする一つ又は複数のベクタをトランスフェクトすることができる。インキュベーション後、細胞成分をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で還元条件下で分離し、PVDFメンブレンなどの膜に転写し、オートラジオグラフにかけることができる。オートラジオグラフで現れた検出可能なバンドは、細胞内基質がリン酸化されたことの指標である。基質上のどの残基がリン酸化されたかを調べるには、リン酸化された基質のホスホアミノ酸解析を行うこともできる。簡単に説明すると、放射性リン酸化タンパク質のバンドをSDSゲルから切り出し、部分的な酸水解を行うことができる。次に、生成物を一次元電気泳動法で分離し、ホスホイメージャなどで解析してニンヒドリンで染色したホスホアミノ酸標準に比較することができる。
【0063】
別の実施態様では、ウィルスのホスト細胞への感染能、ウィルスタンパク質産生のためのホスト細胞利用能、及び/又は、ホスト細胞内での複製能、に関連するプロセスを調節する、好ましくは阻害する、能力について、本ペプチド・ライブラリを評価する。したがって、当該検定法には、潜在的なホスト細胞を本ペプチド・ライブラリ又はサブ−ライブラリに接触させるステップか、又は、本ペプチド・ライブラリをコードする一つ又は複数のベクタを潜在的なホスト細胞にウィルスの存在下でトランスフェクトするステップと、ウィルス進入、ウィルスタンパク質産生又はウィルス複製の当該ライブラリによる阻害能を評価するステップと、を含めることができる。このような検定法は当業で公知であり、例えば、"General Viral Experiments" Ed. by Fellow Membership of The National Institute of Health, Maruzen Co., Ltd. (1973);それぞれの内容を引用をもってここに援用することとする米国特許第6,140,063号;第6,140,063号;第6,087,094号;第6,071,744号;第5,843,736号;及び第5,565,425号に解説されている。
【0064】
さらに別の実施態様では、細菌のホスト細胞への感染能に関連するプロセスを調節する、好ましくは阻害する能力について、本ペプチド・ライブラリを評価する。この目的で用いてもよい検定法には、限定はしないが、それぞれの内容を引用をもってここに援用することとする米国特許第5,654,141号及び第6,165,736号に解説されたものがある。
【0065】
BRCA1遺伝子、又は、p53及びp21経路にある遺伝子の発現を測定する検定法や、細胞接触阻害を測定する検定法を含め、本発明の方法で用いられるであろういくつかの検定法は、例えば、その内容全体を引用をもってここに援用することとする米国特許第 5,998,136号に解説されている。
【0066】
III. 薬物開発
本発明の他の実施態様には、ある生物プロセスのモジュレータであると本発明の方法で同定されたペプチドの、薬物開発のためのリード分子としての使用がある。例えば、当業で公知の分子モデリング技術(例えばエキソーガ社から入手可能なSTR3DI MOLECULAR MODELER)を用いると、本発明の方法で同定されたペプチドを用いて、前記ペプチドの望ましい機能を有するが、血漿半減期が向上している、可溶性が向上している、及び効力が向上しているなど、他の望ましい形質も有するような他の分子をデザイン及び合成することができる。
【0067】
さらに本発明を、以下の例によって解説するが、以下の例を限定的なものとして捉えられてはならない。本出願全体を通じて引用された全参考文献、特許及び公開済み特許出願の内容や、図面及び配列表を、引用をもってここに援用することとする。
【0068】
実施例
実施例1:ヒトゲノムDNA発現ベクタの調製
ヒトゲノムDNAを制限酵素(AciI、Hinp1I、HpaII、HpyCH4IV、BfaI、MseI、NlaIII、RsaI、Sau3AI)の組合せで消化した。Klenow酵素及びデオキシヌクレオチドと一緒にインキュベートして、これらDNA断片の両端を平滑末端にした。予め改変してXhoI 及びNot I 制限酵素認識部位を既存のHindIII 及びClaI 制限酵素認識部位間に含有させた pCLNCX レトロウィルス・ベクタに、さらに以下のオリゴヌクレオチドをこのXhoI/NotI部位間に挿入して改変した:
【0069】
XhoI kozak PmlI NotI
TCGAGCCACCATGCACGTGGTAGCTAGCTAGC (配列番号 NO:1) CGGTGGTACGTGCACCATCGATCGATCGCCGG (配列番号 NO:2)TCGAGCCACCATGGCACGTGGTAGCTAGCTAGC (配列番号NO:3) CGGTGGTACCGTGCACCATCGATCGATCGCCGG (配列番号NO:4)TCGAGCCACCATGGGCACGTGGTAGCTAGCTAGC (配列番号NO:5) CGGTGGTACCCGTGCACCATCGATCGATCGCCGG (配列番号 NO:6)
【0070】
これらのオリゴヌクレオチドを挿入したことにより、平滑末端になったゲノムDNA断片をクローニングするためのkozak 配列、ATG開始コドン、及びPmlI 制限部位が三つの読み取り枠すべてで得られた。
【0071】
当該ゲノムDNA断片ライブラリを含有するpCLNCXベクタを、モロニー白血病ウィルスgag及びpolタンパク質をコードするベクタと、水疱性口内炎ウィルスエンベロープ糖タンパク質をコードするベクタとを用いたコトランスフェクションによりCOS細胞内にパッケージした。
【0072】
実施例2:TNFアルファシグナル伝達経路に干渉するウィルス・ペプチドの同定
トランスフェクション後72時間たった実施例1のCOS上清から採集したウィルスを、MCF-7N乳癌細胞の感染に使用する。感染から24時間後にMCF-7N細胞をTNFαで処理してアポトーシスを誘導する。生存しているコロニーを7日後に採集し、展開させる。この生存クローンから採集したRNAをPCRテンプレートとして用いて、TNFαシグナル伝達経路に干渉することで細胞生存を促進するゲノムDNA断片を増幅する。次に、GenBankTMを検索してこのゲノムDNA断片を配列決定及び同定する。
【0073】
実施例3: アンドロゲンシグナル伝達経路に干渉するウィルス・ペプチドの同定
トランスフェクション後72時間たった実施例1のCOS上清から採集したウィルスを、EGFPを前立腺特異的抗原プロモータの制御下に安定にトランスフェクトしたMDAPCA2b前立腺癌細胞の感染に使用する。これらの細胞はジヒドロテストステロンを培地に含めた場合にのみ、EGFPを発現する。感染後4日目にEGFPの発現の低下した細胞をセル・ソーティングで選抜する。生存クローンから採取したRNAを PCRテンプレートとして用いて、アンドロゲンシグナル伝達経路への干渉を担うゲノムDNA断片を増幅する。GenBankTMで検索して、このゲノムDNA断片を配列決定及び同定する。
【0074】
実施例4:インフルエンザウィルス病理を調節するウィルスペプチドの同定
10個のアミノ酸分の重複を持つインフルエンザのオープンリーディングフレームすべての20個のアミノ酸長にわたるペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを合成し、PCRで増幅し、選択可能な薬物マーカ・ネオマイシン耐性を含有するレトロウィルス・ベクタに挿入する。次に、MDCK細胞に、重複のあるペプチドのライブラリをコードするレトロウィルスを感染させてから、96ウェル組織培養プレートに1ウェル当たり一個の細胞になるようにプレートする。この細胞をネオマイシンの存在下で成長させる。細胞が60乃至80%コンフルエントになった時点で、ネオマイシンを含有しない培地に培地を取り替え、細胞に、ルシフェラーゼをコードする組換えインフルエンザウィルスか、又は、野生型インフルエンザウィルスのいずれかをm.o.iを1で感染させる。1番目のケースでは、感染後24時間目の時点でルシフェラーゼの発現レベルについてウェルを分析し、無関係のペプチド・コーディング領域を含有するレトロウィルスに感染させた等しい数の細胞を感染させた結果のルシフェラーゼ・レベルと比較する。2番目のケースでは、感染後2乃至3日目の時点のウィルス細胞変性効果の程度について、ウェルを分析する。次に、示したルシフェラーゼ活性又はCPEの低いウェルからDNAを抽出し、PCRを用いて、前記レトロウィルスのペプチド・コーディング領域を増幅する。このPCR断片を配列決定して、新しいレトロウィルス・ベクタに挿入された、in vitroでインフルエンザ病理を阻害したウィルス・ペプチド を同定し、同じ検定で再度検定する。繰り返した検定の結果、やはり、このウィルス・ペプチドの発現がインフルエンザ病理を阻害することが、低下したルシフェラーゼ活性又はCPEで評価したときに示されれば、再度このDNAを単離し、PCR増幅し、配列決定してこの配列が1番目の検定で得られたDNAと同じものであることを確認する。これら二つのDNA配列が同じであれば、この阻害性配列に対応するペプチドを、膜透過配列を付けて又は付けずに合成する。次にこれらのペプチドを、擬似コントロールを含め、MDCK細胞に多様な濃度で加えた後、ルシフェラーゼをコードする組換えインフルエンザウィルス又は野生型インフルエンザにこれらの細胞を感染させる。24時間後にウェルを検定して、ルシフェラーゼ活性について検定するか、又は、2乃至3日後に細胞をCPEについて評価する。擬似コントロールに比較してルシフェラーゼ活性又はCPEの阻害を示すペプチドを、さらに分析し、インフルエンザウィルス感染の潜在的治療薬として最適化する。
【0075】
この同じプロトコルは、ウィルス感染細胞から単離されたcDNA、せん断した又は制限酵素で切断したウィルスゲノムDNAを含有するレトロウィルス・ベクタを用いたり、又は、ウィルスゲノム中に含まれたオープンリーディングフレームの一部又は全部を網羅した合成ペプチドを直接用いることでも、実施することができる。
【0076】
同等物
当業者であれば、日常的な実験によって、ここに解説した本発明の具体的な実施態様の同等物を数多く、認識し、又は確認できることであろう。このような同等物は以下の請求の範囲の包含するところと、意図されている。
【0001】
本出願は、引用をもってその内容全体をここに援用することとする2001年2月22日出願の米国仮特許出願第60/270,968号の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
ペプチド・ライブラリを作成する方法の近年の進歩により、生物活性に関するスクリーニングの対象となる膨大な数のペプチドがもたらされた。このような方法には、生物学的方法及び化学合成法の両方がある。例えば、ペプチドをバクテリオファージに発現させ、生物学的スクリーニングに向けてファージ表面上に提示させることができる。このようなライブラリには、106の桁乃至1012の桁の異なるメンバーが含まれていることもあり、またランダムな配列が含まれていたり、あるいは、例えば特定の残基が固定されていたり、又は特定の位置が一部の可能な残基のうちの一つのみで占められていたりするなど、偏った配列が含まれていることもある。このようなライブラリは、生物活性化合物を同定するための強力な方法になる。
【0003】
潜在的な薬物活性を有するペプチド又は低分子ライブラリ内の化合物を同定するプロセスの一つは、化合物ライブラリをスクリーニングして、標的生体分子、通常はタンパク質、に結合するライブラリ・メンバを同定するステップを含む。一般的に、該標的生体分子は既知であるか、又は、ある疾患プロセスに関与していると考えられているものである。こうして、標的生体分子に結合する化合物を、この化合物が標的の機能に及ぼす影響を評価する機能的スクリーニングで評価することができる。このようなスクリーニングは、化合物による酵素活性又はリガンド結合などの分子事象調節能を測定する無細胞検定である場合も、又は、化合物による細胞活性調節能を測定する細胞ベースのスクリーニングである場合もある。この方法の律速因子は、特定の疾患プロセスで役割を果たす標的生体分子の同定である。ヒトゲノムを配列決定しようとする試みで得られた膨大な情報群は、コードされたタンパク質を治療用ターゲットとしてバリデートする必要を減じることのない情報に結び付けられねばならない。ある疾患状態に関連する生物プロセスの分子学的詳細のうちの少なくとも一部でも知る必要性があることは、新薬開発において大きな障害である。
【0004】
複雑な生物学的システムを調べるアプローチの一つは、コンビナトリアル化学を用いて多様な化合物ライブラリを合成し、この化合物ライブラリをスクリーニングして、細胞での表現型上の影響を探すアプローチである。数十年前、変異が表現型に及ぼす影響をスクリーニングすることが、下等生物(即ち真菌及び細菌)の基本的な代謝経路及び調節経路を特徴付けする最初のステップとして役立ったのとちょうど同様に、このアプローチは、哺乳動物細胞での高度に複雑な調節ネットワーク及び経路を調べる強力な手段となるであろうと考えられている。このようなアプローチには、(i)数百万の化合物の表現型解析ができるスクリーニング検定法の確立、及び(ii)効果的な化合物の分子上の同定を可能にするフォーマットでの多様性の高い化合物ライブラリの開発(逆重畳積分)という、二つの重要な要素がある。
【0005】
これらの要件の両方ともが、現在の技術では充分に満たされていない。合理的なスクリーニングフォーマットで現在存在する最も大きな逆重畳積分可能なコンビナトリアル化学ライブラリは1乃至2百万の化合物を成す(Tan et al.(1998) PNAS 95(8):4247-52)。さらに、ファージ・ディスプレイ・ライブラリは、コンビナトリアル法の多様性(即ち7個のランダムな天然アミノ酸から成る109個の異なる分子をライブラリ中に得られる)を得る大きな手段とはなるが、これらのライブラリのスクリーニング法は、既知かつ特定の標的分子への結合の評価に限られている。結合のみを調べるスクリーニングは、リガンド結合が標的の機能に影響を及ぼすかどうかを直接考慮するものではない。さらに、特定の経路及びその構成要素を予め知っていることが、このような結合スクリーニングのデザインには必要であるため、このアプローチが応用できるのは、比較的に良く解明された経路内の標的だけである。
【0006】
従って、疾患状態に関連する生物プロセスを調節できる化合物の同定を簡便化する優れた方法が依然、求められている。
【0007】
発明の概要
本発明は、生物において、例えばある所定の生物プロセスなど、生物プロセスを調節するペプチドをスクリーニング及び同定するための効率的な高スループットの方法及び組成物を提供するものである。本発明は現存するアプローチに比較していくつかの長所を提供する。例えば、分子レベルでの作用機序を知る必要なく、細胞又は生物体レベルなどの生物レベルで、あるプロセスの阻害能についてペプチド・ライブラリをスクリーニングすることができる。これは、例えば癌など、複雑かつ高度に多様な疾患の研究にとって特に有利である。さらに、生物学的、細胞学的又は生物体学的に活性なペプチドから遡って調べることにより、当該ペプチドが標的とする生体分子を同定し、ひいては、目的のプロセスの治療上のターゲットとして、この生体分子をバリデートすることができる。
【0008】
従って、本発明は、アポトーシス、ネクローシス、タンパク質輸送、細胞接着、膜輸送、細胞遊走、細胞分化、感染、病原性生物の複製などの生物プロセスや、又は、疾患状態の進行、を調節するペプチドを同定する方法を提供するものである。本方法は、(a)複数のペプチドを含んで成るペプチド・ライブラリに生物(例えば病原性生物)、細胞又は組織を接触させるステップであって、前記複数のペプチドは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のフラグメントである、ステップと、(b)前記複数のペプチドの、前記生物、細胞又は組織における生物プロセスを調節する能力を評価するステップと、(c)ステップ(b)で前記生物プロセスを調節することが示された少なくとも一つのペプチドのアミノ酸配列を決定することで、前記生物プロセスのモジュレータとして該ペプチドを同定するステップと、を含む。複数の細胞又は組織をペプチド・ライブラリに接触させる場合、本方法には、選択的に、例えば細菌、ウィルス、真菌又は原虫などの病原性生物に前記細胞又は組織を接触させるステップをさらに含めることができる。この実施態様では、評価の対象である生物プロセスは、前記病原性生物の感染性又は複製である。
【0009】
ある実施態様では、前記ペプチド・ライブラリは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のうちの複数のフラグメントが入れ子状態になったものを含んで成る。例えば、前記入れ子状態になった重複分は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸残基であってもよい。前記ペプチドはそれぞれ、約50、45、40、35、30、25、20、15、10、5 又はそれより少ないアミノ酸残基を含んで成るものでもよい。
【0010】
別の実施態様では、前記ペプチド・ライブラリは、ある生物の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの遺伝子産物の複数のフラグメントを含んで成る。さらに別の実施態様では、前記ペプチド・ライブラリは、ある生物の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの染色体又はゲノム全体の遺伝子産物の複数のフラグメントを含んで成るものでもよい。
【0011】
ある実施態様では、ヒト細胞などの哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は植物細胞などの前記細胞は、前記ペプチド・ライブラリと同じ生物由来である。別の実施態様では、哺乳動物組織などの前記組織は、前記ペプチド・ライブラリと同じ生物由来である。更なる実施態様では、前記生物は、前記ペプチド・ライブラリの由来となった生物と同じ生物である。
【0012】
別の実施態様では、前記生物、細胞、又は組織の生物プロセスを調節する前記ペプチドの能力を、免疫組織化学法を使用したり、前記生物、細胞、又は組織の形態変化を観察したり、前記生物、細胞、又は組織における一つ以上の遺伝子の発現変化を測定したり、あるいは、例えば、Gタンパク質共役受容体が主に媒介するシグナル伝達など、シグナル伝達のレベル変化を測定することによって、評価する。
【0013】
本発明の一実施態様では、例えば核局在シグナル配列、膜局在シグナル配列、ファルネシル化シグナル配列、転写活性化ドメイン、又は転写抑制ドメインなど、別の付加的なアミノ酸配列に前記ペプチドを融合してもよい。
【0014】
さらに本発明の方法には、ステップ(c)で同定されたアミノ酸配列に基づいてデザインされた複数のペプチド又は非ペプチド化合物を含んで成る第二ライブラリを形成するステップと、当該生物プロセスを調節する少なくとも一つのペプチド又は非ペプチド化合物を前記第二ライブラリから選抜するステップと、を含めてもよい。ある実施態様では、前記第二ライブラリ中のペプチドは、天然L型アミノ酸から成っていてもよい。別の実施態様では、前記第二ライブラリ中の少なくともいくつかのペプチドは、例えばD型アミノ酸、β型もしくはγ型アミノ酸、又は、20種類の天然型アミノ酸の側鎖のいずれかと異なる側鎖を有するアミノ酸など、非天然型アミノ酸を一つ以上、含んで成っていてもよい。
【0015】
別の局面では、本発明は、本発明の方法により、ある生物プロセスを調節すると同定されたペプチド、これらのペプチドを含有するライブラリや、これらのペプチド及び薬学的に許容可能な担体を含んで成る医薬組成物を特徴とするものである。
【0016】
更なる局面では、本発明は、本発明の方法によりある生物プロセスを調節すると同定されたペプチドを、当該ペプチドと類似の結合上の特徴又は調節上の特徴を有する化合物を分子モデリングするために用いることを提案するものである。
【0017】
さらに別の局面では、本発明は、本発明の方法に従って同定されたペプチドを治療上有効量、対象に投与することにより、例えばHIV感染又は癌など、正常でない生物プロセスに関連する疾患又は状態に罹患した対象を治療する方法を特徴とする。
【0018】
さらに別の局面では、本発明は、ある生物プロセスを調節するペプチドを同定するキットを提供し、本キットは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のフラグメントである複数のペプチドを含んで成るペプチド・ライブラリと、使用に関する指示とを含むものである。
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は以下の詳細な説明及び請求の範囲から明白となるであろう。
【0020】
発明の詳細な説明
幅広い生理プロセスが、タンパク質間の相互作用か、又は、2種以上のこのような相互作用の連鎖を介して進行する。これらのプロセスの中に、病原性生物の生存及び/又は感染や、多種の疾患状態の発生及び/又は維持に必要なものがある。例えばある疾患のプロセスに必須なタンパク質間相互作用を阻害できる化合物は、例えば感染、癌、炎症、神経変性又は疼痛などの疾患状態の治療のための治療薬として有用な可能性がある。
【0021】
本発明は、例えばアポトーシス、ネクローシス、タンパク質輸送、細胞接着、膜輸送、細胞遊走、細胞分化、感染、病原性生物の複製、又は疾患の進行など、生物プロセスを調節するペプチドを同定する方法を提供するものである。本方法は、(a)複数のペプチドを含んで成るペプチド・ライブラリに生物(例えば病原性生物)、細胞又は組織を接触させるステップであって、前記複数のペプチドは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のフラグメントである、ステップと、(b)前記複数のペプチドの、前記生物、細胞又は組織における生物プロセスを調節する能力を評価するステップと、(c)ステップ(b)で前記生物プロセスを調節すると示された少なくとも一つのペプチドのアミノ酸配列を決定して、該ペプチドを、前記生物プロセスのモジュレータとして同定するステップと、を含む。
【0022】
ここで用いる用語「生物プロセス」には、例えば分子的プロセス、細胞プロセス又は生物体プロセスなどのあらゆる生物プロセスが包含される。本生物プロセスは、例えば酵素プロセス、タンパク質間相互作用、タンパク質/核酸間相互作用、核酸間相互作用、ペプチド/タンパク質相互作用、又はタンパク質対ホルモン相互作用などの分子プロセスであってよい。また本生物プロセスは、例えば細胞生存率、特定のタンパク質の発現を含むタンパク質発現、細胞増殖、一種以上の生体分子の細胞発現、シグナル伝達、細胞接着、細胞分化、細胞形質転換、感染性又はアポトーシスなど、細胞プロセスであってもよい。本生物プロセスはまた、例えばある疾患状態の発生又は進行、あるいは、良性又は病原性生物の感染など、生物体プロセスであってもよい。前記疾患状態は、天然で発生した状態又は状況でも、あるいは、天然で発生した疾患状態を模倣する又は似るよう誘導された状態又は状況であってもよい。例えば、本生物プロセスを、ある疾患又は他の望ましくない医学的状況の動物モデルに示させることができる。
【0023】
ここで用いる用語「生物」には、ヒト、マウス、ラット、サル、又はウサギなどの動物;シロイヌナズナ、コメ、小麦、トウモロコシ、トマト、アルファルファ、脂肪種子のナタネ、大豆、綿、ひまわり又はキャノーラなどの植物;エシェリヒア−コリ(Escherichia coli)、カンピロバクター(Campylobacter)属、リステリア(Listeria)属、レジオネラ(Legionella)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、サルモネラ(Salmonella)属、ボルダテラ(Bordatella)属、肺炎球菌(Pneumococcus)属、根粒球菌(Rhizobium)属、クラミジア(Chlamydia)属、リケッチア(Rickettsia)属、放線菌(Streptomyces)属、マイコプラズマ(Mycoplasma)属、ヘリコバクター−ピロリ(Helicobacter pylori)、クラミジア−ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、Q熱リケッチア(Coxiella burnetii)、炭疽菌(Bacillus Anthracis)及びナイセリア(Neisseria)属などの細菌;クモノスカビ(Rhizopus)属、アカパンカビ(neurospora)、酵母、銹菌類などの真菌;コウジカビ(Aspergillus)属、ブラストミセス(Blastomyces)属、カンジダ(Candida)属、コクシジオイデス(Coccidioides)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、表皮菌(Epidermophyton)属、ヘンダーソヌラ(Hendersonula)属、ヒストプラズマ(Histoplasma)属、小胞子菌(Microsporum)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、パラコクシジオイデス(Paracoccidioides)属、 ニューモシスティス(Pneumocystis)属、白癬菌(Trichophyton)属、及びトリコスポリウム(Trichosporium)属;熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、ランゲルトリパノゾーマ(Trypanosoma rangeli)、トリパノゾーマ−クルージ(Trypanosoma cruzi)、クリプトスポリジウム−パルブム(Cryptosporidum parvum)、ローデシアトリパノゾーマ(Trypanosoma rhodesiensei)、トリパノゾーマ-ブルーセイ(Trypanosoma brucei)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、日本住血吸虫(Schistosoma japanicum)、バベシア−ボビス(Babesia bovis)、エルメリア−テネラ(Elmeria tenella)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、タイレリア−パルバ(Theileria parva)、胞状条虫(Taenia hydatigena)、テニア−オビス(Taenia ovis)、無鉤条虫(Taenia saginata)、単包包虫(Echinococcus granulosus)及びメソセストイド−コルチ(Mesocestoides corti)などの原虫類;条虫類、例えば単包包虫(Echinococcus granulosus)、多包条虫(E. multilocularis)、エキノコッカス−ボゲリ(E. vogeli)及びエキノコッカス−オリガースラス(E. Origarthrus)などの寄生生物;トリパノゾーマ−ブルーセイ(Trypanosoma brucei)などの原虫を含め、あらゆる生物を包含する。生物という用語にはさらに、ウィルス、例えばヒト免疫不全ウィルス、ライノウィルス、ロタウィルス、インフルエンザウィルス、エボラウィルス、シミアン免疫不全ウィルス、ネコ白血病ウィルス、呼吸系発疹ウィルス、疱疹ウィルス、ポックスウィルス、ポリオウィルス、パルボウィルス、カポジ肉腫随伴疱疹ウィルス (KSHV)、アデノ随伴ウィルス(AAV)、シンドビスウィルス、ラッサウィルス、西ナイルウィルス、エンテロウィルス、例えば23種のコックサッキーAウィルス、6種のコックサッキーBウィルス、及び28種のエコーウィルス、エプスタイン−バーウィルス、カリチウィルス、アストロウィルス(原語:astroviruses)及びノーウォークウィルス;オルビウィルス(orbiviruses)、オルトレオウィルス(orthoreoviruses)、フィロウィルス(filoviruses)、狂犬病ウィルス、コロナウィルス、ブンヤウィルス(bunyaviruses)、アレナウィルス(arenaviruses)、流行性耳下腺炎ウィルス、麻疹ウィルス、パラインフルエンザウィルス(parainfluenza virus)、風疹ウィルス、フラビウィルス(flaviviruses)、アルファウィルス(alfaviruses)、サイトメガロウィルス、HHV-6、HHV-7、アデノウィルス、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、A型肝炎ウィルス、パピローマウィルス、JCウィルス(jc virus)、エンテロウィルス(enteroviruses)及びフィールズ・ビロロジーに解説された他のもの、も含まれる。
【0024】
ここで用いる用語「細胞」には、あらゆる原核もしくは真核細胞が含まれる。本発明の方法で使用してもよい細胞の例には、真菌細胞(即ち酵母細胞);昆虫細胞(例えばシュナイダー及びsF9細胞);哺乳動物の体細胞又は生殖系細胞;哺乳動物細胞株、例えばHeLa細胞(ヒト)、NIH3T3(マウス)、RK13(ウサギ)細胞、胚性幹細胞(例えばD3及びJ1);並びに、造血系幹細胞、筋原細胞、肝細胞、リンパ球、及び上皮細胞などの哺乳動物細胞種がある。
【0025】
ここで用いる用語「組織」は、類似の細胞及びそれらの細胞間物質が互いに接着されて特定の機能を果たすようになった一群を包含するものである。組織という用語には、例えば上皮組織、結合組織、筋組織、神経組織、血管組織、又は骨組織など、ある生物のあらゆる組織が含まれる。
【0026】
ここで用いる用語「ペプチド・ライブラリ」は、ゲノムにコードされた少なくとも一種のタンパク質のフラグメントである一群のペプチドを包含する。本ペプチド・ライブラリには、同じゲノムにコードされた2、3、4、5、6、7、8、9、10種又はそれ以上のタンパク質のフラグメントが含まれていてよい。本ペプチド・ライブラリには、さらに、同じゲノムにコードされた2乃至1000、2乃至900、2乃至800、2乃至700、2乃至600、2乃至500、2乃至400、2乃至300、2乃至200、2乃至100又は2乃至50種のタンパク質のフラグメントを含めることもできる。好ましくは、前記フラグメントに、全体として、コードされた配列のアミノ酸残基がすべて、含まれているとよい。つまり、例えば当該ゲノムにコードされた配列が200個のアミノ酸残基から成る場合、これらの残基のそれぞれが、例えば当該ライブラリ中の少なくとも一つのペプチドに、コードされたままの配列中ですぐ隣にある残基の少なくとも一方に結合した状態で見られるとよい。このようなライブラリは、ゲノムにコードされたある特定のタンパク質に関して「完全な」ライブラリであると言われている。本ペプチド・ライブラリには、ゲノムにコードされたある特定のアミノ酸配列の複数フラグメントを、連続した、入れ子状態になった、もしくはこれらの組合せにして含めることができる。フラグメント同士が正しい順序で端と端がつながれて整列しており、ゲノムにコードされたままのアミノ酸配列を再現していれば、即ち、フラグメントの配列同士の間に重複がなければ、連続していることになる。
【0027】
「入れ子状態になったペプチド・ライブラリ」という用語は、ここで用いる場合、ゲノムにコードされた一つ以上のペプチドの数フラグメントを含有するペプチドの一まとまりを言い、但しこの場合、少なくともいくつかのペプチドのN末端は、一つ以上のアミノ酸残基分、少なくとも一つの他のペプチドのC末端と重複しており、そして少なくともいくつかのペプチドのC末端は、一つ以上のアミノ酸残基分、少なくとも一つの他のペプチドのN末端と重複している。C末端及びN末端のそれぞれで重複する残基の数は、重複又は入れ子状態になった重複の程度と呼ばれ、典型的には1乃至n−1(但しこの場合、nは当該ペプチド中のアミノ酸残基の数を表す)であろう。連続した配列を有するペプチドから成るライブラリの有する重複の程度は0である。本ライブラリ中のフラグメントは、ゲノムにコードされたままの配列全体にわたって、それぞれ様々な程度の重複を有していてもよい。つまり、インタクト配列の一箇所以上の特定の領域のフラグメントが、そのインタクト配列のうちの別の特定の領域のフラグメントとは異なる重複の程度を有していてもよい。
【0028】
本発明の多様な局面を、以下の小項でさらに解説することとする。
【0029】
I.発明の方法
本発明は、アポトーシス、タンパク質輸送、細胞接着、膜輸送、細胞遊走、細胞分化、などの生物プロセス、又は、疾患状態の進行、を調節するペプチドを同定する方法を提供するものである。本方法は、(a)複数のペプチドを含んで成るペプチド・ライブラリに生物(例えば病原性生物)、細胞又は組織を接触させるステップであって、前記複数のペプチドは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のフラグメントである、ステップと、(b)前記複数のペプチドの、前記生物、細胞又は組織における生物プロセスを調節する能力を評価するステップと、(c)ステップ(b)で前記生物プロセスを調節すると示された少なくとも一つのペプチドのアミノ酸配列を決定することで、前記生物プロセスのモジュレータとして該ペプチドを同定するステップと、を含む。
【0030】
ある非限定的な例では、本ライブラリは、ゲノムにコードされた1種以上のタンパク質のフラグメントである20量体を含んで成る。この実施態様では、当該ペプチドは連続又は入れ子状態になっており、重複の程度は典型的に、0から約10までの範囲内である。好ましくは、前記配列は、一定の重複の程度で入れ子状態になっているとよい。一般的に、本ライブラリの大きさ又は複雑さは重複の程度が増すにつれ、大きくなる。また、入れ子状態になった数フラグメントは、異なる組のペプチド群が多くの場合、インタクト配列のアミノ末端又はカルボキシ配列を開始点として生じるのと同様に、これらの開始点から作製を始めることができる。本ライブラリには、アミノ末端及びカルボキシ末端の両方で開始して生成される入れ子状態になった数フラグメントを含めることができる。100個のアミノ酸残基から成る一本の鎖を含んで成る、ゲノムにコードされたタンパク質の場合、一組の連続した20量体は、合計5種の異なる配列について、以下の配列:1-20;21-40;41-60;61-80;及び81-100を有するであろう。重複の程度が2である場合、N末端で始まる一組の配列は、1-20;18-37;35-54;52-71;69-88;及び81-100であろう。C末端で始まる場合、前記配列は81-100;63-82;45-64;27-46;9-28 及び1-20であろう。このように、合計10種の異なる配列が、重複の程度が2である入れ子状態から生ずる。重複の程度が5である場合、N末端で始まる配列は、1-20;16-35;31-50;46-65;61-80;76-95 及び 80-100であろう。C末端で始まる場合、前記配列は80-100;65-84;50-69;35-54;20-39;5-24 及び1-20であろう。このように、合計12種の異なる配列が重複の程度を5にした場合に生ずる。重複の程度を10にした場合、N末端から始めると、作製されるフラグメントは、1-20;11-30;21-40;31-50;41-60;51-70;61-80;71-90;及び81-100となり、合計9種の異なる配列ができる。重複の程度が19(n-1)である場合、可能なペプチドは、N末端から始めると、1-20;2-21;3-22、4-23;5-24、等、最高81-100を含み、合計81種のペプチドができる。
【0031】
対象となる生物プロセスは、例えば分子プロセス、細胞プロセス又は生物体プロセスなど、いかなる生物プロセスであってもよい。例えば、本生物プロセスは、例えば酵素プロセス、タンパク質間相互作用、タンパク質/核酸間相互作用、核酸間相互作用、ペプチド/タンパク質間相互作用、又はタンパク質/ホルモン間相互作用などの分子プロセスであってよい。選択的には、本ペプチド・ライブラリに対し、タンパク質などの分子標的に結合するメンバーを探すスクリーニングを最初に行う。こうして標的に結合するメンバーを、分子プロセス、細胞プロセス又は生物体プロセスなどの生物プロセスに標的が結合したときの機能的結果を調べる機能的スクリーニングで評価することができる。また本生物プロセスは、例えば細胞生存率、特定のタンパク質の発現を含むタンパク質発現、細胞増殖、一種以上の生体分子の細胞発現、シグナル伝達、細胞接着、細胞分化、細胞形質転換、感染性又はアポトーシスなど、細胞プロセスであってもよい。別の実施態様では、本生物プロセスは、例えばある疾患状態の発生又は進行、あるいは、良性又は病原性生物の感染など、生物体プロセスであってもよい。前記疾患状態は、天然で発生した状態又は状況でも、あるいは、天然で発生した疾患状態を模倣する又は似るよう誘導された状態又は状況であってもよい。例えば、本生物プロセスを、ある疾患又は他の望ましくない医学的状況の動物モデルに示させることができる。
【0032】
ある実施態様では、一つ又は複数のペプチドの目的の生物活性を調節する能力を適したin vitroもしくはin vivo検定又はモデルで評価する。前記in vitro検定は無細胞検定でも、又は細胞ベースの検定でもよい。
【0033】
ある実施態様では、前記生物プロセスはタンパク質対リガンド相互作用である。この実施態様では、ライブラリの全体又は画分を、目的の生物プロセスに関与していることが知られている又は考えられている、タンパク質などの第一生体分子に接触させることにより、本ライブラリをスクリーニングすることができる。第一生体分子に結合するライブラリのメンバーは、選択に応じて、例えば前記第一生体分子の結合相手であるような第二生体分子などの特定の溶離剤で溶離させることができる。こうして、第一生体分子に結合することが見出されたライブラリの一つ又は複数のメンバーを、例えば細胞ベースの検定又はin vivoモデルなどの機能的スクリーニングで評価することができる。
【0034】
ある第一の好適な実施態様では、本ペプチド・ライブラリを細胞ベースの検定で検定する。例えば、ライブラリ・メンバーのすべてを含んで成るペプチド混合物、それぞれがライブラリ・メンバーの下位集団を含有する一つ以上のサブ・ライブラリ、又は一種類のペプチド、の形である本ペプチド・ライブラリに、培養細胞を接触させることができる。当該検定法は、目的の生物プロセスの調節の程度の定量的もしくは定性的な指標となる読み取り値を有することが好ましいであろう。好ましくは、本ライブラリを一組のサブ・ライブラリとして評価するとよい。こうして当該検定法において活性を示すサブ・ライブラリをさらに小分割して、各サブ−サブ−ライブラリの活性を当該検定で判定することができる。検定で活性を個々に示す一種以上のペプチドが同定されるまで、ライブラリの小分割を続行することもできる。
【0035】
本方法の利用は、目的の生物プロセスが細胞ベースもしくは生物体プロセスである場合に有利であり、また、当該プロセスが一種以上のタンパク質間相互作用を通じて進行する場合に特に効果的である。しかしながら、本方法の特に重要な利点は、当該プロセスの機序上の詳細の知見を何ら必要としない点である。本方法は、一生物においてタンパク質/タンパク質が媒介するプロセスを阻害する少なくとも一種のペプチドは、一般に、例えばゲノムにコードされたタンパク質の一フラグメントなど、その生物のゲノムにコードされているという認識に関するものである。ある一例では、タンパク質Aとタンパク質Bとの相互作用を阻害するペプチドは、タンパク質Aのうちで、タンパク質Aがタンパク質Bと結合するドメインとなっている一フラグメントである場合がある。反対に、タンパク質Aのタンパク質Bとの結合を阻害するペプチドが、例えばタンパク質Bのうちで、タンパク質Bがタンパク質Aと相互作用するドメインである一フラグメントである場合もある。多くの場合、同定されるペプチドは、タンパク質パートナーの一方の一部分を含有するものであろうと予測される。しかしながら、場合によっては、当該タンパク質パートナーのいずれにも無関係の他のペプチド配列も、本方法で同定されよう。
【0036】
さらに本発明の方法は、ある任意の疾患状態に関して、潜在的な生体分子標的の同定及びバリデーションを可能とするものである。例えば、ある実施態様では、ステップ(c)で特定の生物プロセスのモジュレータとして同定されたペプチドのアミノ酸配列を、本ライブラリの由来となったゲノム又は関連するゲノムに関して公開されたアミノ酸及び遺伝子配列データと比較することで、前記ゲノムにコードされた一種以上の親タンパク質を同定することができ、この親タンパク質をフラグメント化すると、同定されたペプチドを得ることができる。こうして前記親タンパク質を、当該疾患プロセスの関与物質として同定し、従来の薬物スクリーニング検定法のターゲットとしてクローンしたり、使用することができる。本方法で同定されたペプチドはまた、その標的タンパク質を同定するためにも使用できる。例えば、プルダウン技術又は他のアフィニティ選抜技術を用いて、細胞を構成するタンパク質からその標的タンパク質を分離するための当該ペプチドを使用できる。このように、標的タンパク質を、目的の生物プロセスの関与物質として同定し、高スループット検定法など、従来の薬物スクリーニング検定法の分子標的として用いることもできる。
【0037】
ある実施態様では、本ライブラリ内のペプチドの少なくともいくつかを、細胞膜を横切った輸送を促すペプチド配列に融合する。多種のこのような膜透過配列が公知であり、その中には、例えばカポジFGFのシグナル配列などの疎水性が優勢の配列や、HIV TATタンパク質、アンテナペディア・ホメオドメイン、ゲルソリン等を由来とする配列など、塩基性残基を含有する他のものがある。本ライブラリ中のゲノム由来ペプチドは、膜透過配列にN末端でも、又はC末端でも融合することができる。適した膜透過配列は、引用をもってその各内容の全文をここに援用することとする米国特許第5,807,746号、第6,043,339号、第5,783,662号、第5,888,762号、第6,080,724号、第5,670,617号、第5,747,641号、第5,804,604号、WO 00/29427 及び WO 99/29721に解説されている。
【0038】
ゲノムにコードされたペプチド・ライブラリは、当業で公知の多種の方法で調製することができる。例えば、インタクトタンパク質を一種類のプロテアーゼ又は二種類以上のプロテアーゼ(例えばトリプシン、キモトリプシン又はパパイン)の組合せを用いてフラグメントにすることができる。こうすると、用いるプロテアーゼに応じて、タンパク質を無作為に切断したり、又は特定の配列位置でタンパク質を切断したりすることができる。ペプチドはまた、目的のゲノム由来の発現ライブラリを用いても、調製することができる。このような発現ライブラリは、当該ゲノムのコードするタンパク質の一フラグメントであるペプチドをコードする核酸配列を含有するベクタのライブラリを含んで成ることとなる。このような発現ライブラリは、例えば当該生物のゲノムを由来とし、かつ所望の入れ子状態を有すると共に当該ゲノム全体又は当該ゲノムの所望の部分を表すペプチドが出来るようにデザインされた配列など、断片化されたゲノムDNA又は合成核酸配列を用いて調製することができる。さらに、細胞内RNA転写産物を用いて調製し、例えばフリーラジカル法(フェントンの試薬)又は二種以上のヌクレアーゼの集団を用いて無作為に断片化したり、又は、特定の位置で一種以上のヌクレアーゼを用いて断片化したようなcDNAなど、断片化されたcDNAを用いても、前記発現ライブラリを調製できる。細菌細胞などのホスト細胞の一集団に前記発現ライブラリをトランスフェクトし、これらの細胞が発現したペプチドを、標準的な手法により単離することができる。
【0039】
また本ペプチド・ライブラリは、液相及び固相(ビーズ又は膜をベースにした固相)化学合成法、又はこれらのアプローチの組合せを含め、ペプチド合成(段階的又は輻合的)に適した何らかの方法でも調製してよい。ペプチドを化学合成する方法は当業で公知である(例えばBodansky, M. Principles of Peptide Synthesis, Springer Verlag, Berlin (1993) and Grant, G.A (ed.). Synthetic Peptides: A User's Guide, W.H. Freeman and Company, New York (1992)を参照されたい。自動ペプチド合成装置が市販されている。ペプチド・ライブラリの化学合成法の例には、ピン法(例えばGeysen, H.M. et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002を参照されたい);ティーバッグ法(例えばHoughten, R.A. et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:5131-5135を参照されたい);アミノ酸混合物の結合法(例えばTjoeng, F.S. et al. (1990) Int. J. Pept. Protein Res. 35:141-146; Rutter氏らの米国特許第5,010,175号を参照されたい);及び化合物の空間アレイ合成法(例えばFodor, S.P.A. et al. (1991) Science 251:767を参照されたい)、がある。ある実施態様では、本ペプチド・ライブラリを、その内容全文を引用をもってここに援用することとする米国特許第6,040,423号に解説された方法に従って合成する。本ペプチドのアミノ酸配列は、例えば、ゲノム中のオープンリーディングフレームにコードされた仮想翻訳アミノ酸配列を用いるなど、公知の又は利用可能なゲノム情報に基づいてデザインすることができる。
【0040】
ある実施態様では、本ペプチド・ライブラリは、多細胞生物のゲノムにコードされた少なくとも一種のタンパク質のフラグメントを含んで成る。前記多細胞生物は、好ましくは、哺乳動物や、又は、例えばニワトリ又は七面鳥などの家畜化された非哺乳動物であるとよい。好ましくは、前記多細胞動物はマウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ又はヤギであるとよく、そしてより好ましくは、前記多細胞生物は、サル、類人猿又はヒトなどの霊長類であるとよい。本ライブラリには、上述したようにゲノムにコードされた一種以上のタンパク質のフラグメントを含めることができ、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10本又はそれ以上の染色体上にある遺伝子にコードされたタンパク質を含めることもできる。
【0041】
ある実施態様では、本ペプチド・ライブラリは、ウィルスゲノムにコードされた少なくとも一種のタンパク質のフラグメントを含んで成る。好ましくは、本ライブラリが、ウィルスゲノムにコードされた2種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成るとよく、そしてより好ましくは、前記コードされたタンパク質のそれぞれについて完全であるとよい。本ライブラリ中に表示されたタンパク質には、構造タンパク質及び非構造タンパク質を含めることができる。ある実施態様では、本ライブラリは、ウィルスゲノムにコードされたタンパク質のそれぞれのフラグメントを含んで成り、より好ましくは、前記コードされたタンパク質のそれぞれについて完全であるとよい。ある実施態様では、本ペプチド・ライブラリは、ウィルスゲノムにコードされた各タンパク質のフラグメントを含んで成り、好ましくは、コードされたタンパク質のそれぞれについて完全であるとよい。前記ウィルスは、好ましくは、例えばヒトなどの哺乳動物において病原性のウィルスである。適したウィルスには、ヒト免疫不全ウィルス、ライノウィルス、ロタウィルス、インフルエンザウィルス、エボラウィルス、シミアン免疫不全ウィルス、ネコ白血病ウィルス、呼吸系発疹ウィルス、疱疹ウィルス、ポックスウィルス、ポリオウィルス、パルボウィルス、カポジ肉腫随伴疱疹ウィルス(KSHV)、アデノ随伴ウィルス(AAV)、シンドビスウィルス、ラッサウィルス、西ナイルウィルス、エンテロウィルス、例えば23種のコックサッキーAウィルス、6種のコックサッキーBウィルス、及び28種のエコーウィルス、エプスタイン−バーウィルス、カリチウィルス、アストロウィルス、及びノーウォークウィルス、がある。ウィルスは、例えば、感染細胞上清又は感染生物から採集してもよく、次にそのビリオンを精製し、本ペプチド・ライブラリを作製するためにこれらタンパク質をタンパク質分解により消化してもよい。
【0042】
この実施態様では、ウィルスによるホスト細胞感染能、ウィルスタンパク質産生のためのホスト細胞利用能、及び/又は、ホスト細胞内での複製能、に関連するプロセスを調節、好ましくは阻害する能力について、本ペプチド・ライブラリを評価する。このように、本検定法に、ウィルスの存在下で本ペプチド・ライブラリ又はサブ−ライブラリに潜在的ホスト細胞を接触させるステップと、本ライブラリの、ウィルス進入、ウィルスタンパク質産生又はウィルス複製の阻害能を評価するステップとを含めることができる。このような検定法は当業で公知である。
【0043】
別の実施態様では、本ペプチドは、細菌ゲノムにコードされた一種以上のタンパク質のフラグメントである。好ましくは、前記ライブラリが、細菌ゲノムにコードされた2種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成るとよく、そしてより好ましくは、前記コードされたタンパク質のそれぞれについて完全であるとよい。ある実施態様では、本ライブラリは、細菌ゲノムにコードされたタンパク質のそれぞれのフラグメントを含んで成り、好ましくは、前記コードされたタンパク質のそれぞれについて完全であるとよい。前記細菌は、好ましくは、例えばヒトなどの哺乳動物において病原性の細菌であるとよいが、特定の状況では、病原性の株に対して有意なゲノム上の類似性を有する非病原性株も用いることができる。このような細菌は当業で公知であり、その中には、E.コリ、カンピロバクター、リステリア、レジオネラ、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、サルモネラ、ボルダテラ、肺炎球菌、根粒菌、クラミジア、リケッチア、放線菌、マイコプラズマ、ヘリコバクター−ピロリ、クラミジア−ニューモニエ、Q熱リケッチア、及びナイセリアの病原性株がある。
【0044】
多種の生物のゲノム配列が当業で公知である。多種の代表的な生物のゲノム配列を見ることのできるサイトを以下の表に挙げる。
【0045】
【表1】
【表2】
【表3】
【0046】
別の実施態様では、本発明は、上述したような本発明のペプチド・ライブラリをコードする発現ライブラリの使用に関するものである。このような発現ライブラリは、発現ライブラリ中にインサートとして含まれた核酸断片のライブラリを含んで成る。このように、発現ライブラリは、それぞれが哺乳動物、細菌又はウィルスなどの生物のゲノムにコードされた一タンパク質の一フラグメントであるペプチドをコードする複数のベクタのライブラリを包含するものである。前記核酸断片は、当業で公知の合成法で調製することもできるが、あるいは好ましくは、ゲノムDNA又はcDNAを断片化することでも、調製できる。ゲノムDNA及びcDNAは、当業で公知の通り、多種のヌクレアーゼの一種以上を用いたり、例えばフェントンの試薬を用いるなど、無作為な切断を起こさせることでも、断片化することができる。好ましくは、前記発現ベクタが、ゲノムにコードされた1種以上のタンパク質のフラグメントが入れ子状態になったライブラリをコードしているとよい。
【0047】
本発明の発現ライブラリは、ある生物プロセスを調節するペプチドを同定する方法に使用できる。本方法は、(1)ある生物のゲノムにコードされた一タンパク質の一フラグメントであるペプチドをそれぞれがコードする複数の発現ベクタを含んで成る発現ライブラリを提供するステップと、(2)前記発現ライブラリを細胞にトランスフェクトするステップと、(3)細胞プロセスが調節された一つ以上のトランスフェクト細胞を判別するステップと、(4)細胞プロセスが調節された一つ又は複数のトランスフェクト細胞において一つ又は複数の発現ベクタを同定するステップと、(5)ステップ(4)で同定された一つ又は複数の発現ベクタにコードされた一つ又は複数のペプチドのアミノ酸配列を決定することで、前記細胞プロセスを調節するペプチドを同定するステップと、を含む。
【0048】
本発明のペプチド・ライブラリを発現させるのに用いてもよいベクタには、当業で公知の発現ベクタ、例えば、ウィルス・ベクタ(例えば複製欠陥レトロウィルス、アデノウィルス及びアデノ随伴ウィルス)が含まれる。前記発現ベクタには、典型的に、発現に用いるホスト細胞に基づき選択された、発現させようとする核酸配列に作動的に連結させた一種以上の調節配列が含められる。組換え発現ベクタ内において「作動的に連結させた」とは、目的のヌクレオチド配列の発現が(例えばin vitro転写/翻訳系内で、又は、ベクタをホスト細胞に導入した場合にはホスト細胞内で)可能な態様で前記ヌクレオチド配列が調節配列に連結されていることを意味するものと、意図されている。用語「調節配列」には、プロモータ、エンハンサ及び他の発現制御配列(例えばポリアデニレーション・シグナル)が含まれるものと、意図されている。このような調節配列は、例えばGoeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に解説されている。調節配列には、多種のホスト細胞でヌクレオチド配列の構成的発現を命令するものや、特定のホスト細胞でのみヌクレオチド配列の発現を命令するもの(例えば組織特異的調節配列)がある。
【0049】
組換え発現ベクタは、原核細胞又は真核細胞でのペプチド・ライブラリの発現用にデザインすることができる。例えば、本ペプチド・ライブラリを、E.coliなどの細菌細胞、(バキュロウィルス発現ベクタを用いて)昆虫細胞、酵母細胞、植物細胞、鳥類細胞、真菌細胞又は哺乳動物細胞で発現させることができる。適したホスト細胞はさらにGoeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に解説されている。代替的には、本組換え発現ベクタを、例えばT7プロモータ調節配列及びT7ポリメラーゼを用いるなどして、in vitroで転写及び翻訳させることができる。
【0050】
酵母S.セレビジエ(S. cerevisiae)での発現用のベクタの例には、pYepSec1 (Baldari, et al., (1987) Embo J. 6:229-234)、pMFa (Kurjan and Herskowitz, (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88 (Schultz et al., (1987) Gene 54:113-123)、pYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, CA)、及びpicZ (InVitrogen Corp, San Diego, CA)、がある。昆虫細胞での発現用のベクタには、バキュロウィルス発現ベクタ、例えばpAcシリーズ(Smith et al. (1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)及びpVLシリーズ(Lucklow and Summers (1989) Virology 170:31-39)がある。哺乳動物発現ベクタの例には、pCDM8 (Seed, B. (1987) Nature 329:840)及びpMT2PC (Kaufman et al. (1987) EMBO J. 6:187-195)がある。哺乳動物細胞で用いる場合、発現ベクタの制御機能は、ウィルス調節配列に提供させることがしばしばある。例えば、通常用いられているプロモータはポリオーマ、アデノウィルス2、サイトメガロウィルス及びシミアンウィルス40を由来とする。原核細胞及び真核細胞の両方に適した他の発現系については、Sambrook, J., Fritsh, E. F., and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989の第16章及び第17章を参照されたい。
【0051】
本発明のペプチド・ライブラリを持つベクタDNAは、原核もしくは真核細胞に、従来の形質転換又はトランスフェクション技術、例えばリン酸カルシウム共沈殿法及び塩化カルシウム共沈殿法、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション法、リポフェクション、又は電気穿孔法など、で導入することができる。ホスト細胞を形質転換又はトランスフェクトするために適した方法は、Sambrook, et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)や、引用をもってその内容をここに援用することとする米国特許第5,955,275号に見ることができる。
【0052】
II. 本発明の方法で用いる検定法
一つ又は複数のペプチドの、目的の生物活性に対する調節能を、適したin vitro又はin vivo検定又はモデルで評価する。前記in vitro検定は無細胞検定でも、又は細胞ベースの検定でもよい。
【0053】
細胞、組織又は生物体全体(例えばここで解説する動物モデル)に、ペプチド・ライブラリを接触させるか、又は、ペプチド・ライブラリをコードする一つ又は複数のベクタをトランスフェクトしてもよく、前記ペプチド・ライブラリのメンバーがアポトーシス、タンパク質輸送、細胞接着、膜輸送、細胞遊走、細胞分化などの生物プロセスや、又は、疾患状態の進行に及ぼす影響を、ここで解説するように検出することができる。
【0054】
例えば、細胞又は組織をペプチドライブラリに接触させる前後の両方で、アポトーシス細胞をAPOPTESTTM、TUNEL染色法又は他の当業で公知の方法を用いて判別してもよい。APOPTESTTM法は、アネキシンV抗体を利用して、アポトーシスの起きている細胞の特徴である細胞膜再構成を検出するものである。次に、この方法で染色したアポトーシス細胞を、蛍光発色セルソーティング(FACS)で分別するか、又は、固定アネキシンV抗体を用いた接着及びパンニングで分別することができる。
【0055】
プログラムされた細胞死が誘導されるようにT細胞受容体に架橋してあるT細胞ハイブリドーマ(3DO)(Ashwell J. D. et al. (1990) J. Immunol. 144:3326に解説されている)にも、本発明のペプチド・ライブラリを接触させるか、又は、本発明のペプチド・ライブラリをコードする一つ又は複数のベクタをトランスフェクトしてもよい。こうして、前記ペプチド・ライブラリのメンバーが、プログラムされた細胞死に及ぼす作用を、例えば核内クロマチンの変化を観察するなどにより、検出することができる。
【0056】
ペプチド・ライブラリのメンバーに応答した細胞遊走は、例えば細胞の先頭端部のアクチン・フィラメントの集合の変化、フィラメントの架橋の変化、アクチン網の逆行流の変化、フィラメントの分離の変化、アクチン単量体の分離の変化、単量体の再循環及び順向性拡散の変化、及び順向性オルガネラ流及び遅滞端の収縮の変化などを観察することで検出してもよい。
【0057】
さらに生物体全体(又はそれを由来とする細胞もしくは組織)に、本発明のペプチド・ライブラリを接触させたり、あるいは本発明のペプチド・ライブラリをコードする一つ又は複数のベクタをトランスフェクトすることもできる。適した生物には、疾患状態の動物モデルが含まれる。
【0058】
本発明の方法で用いられるであろう心血管疾患の動物モデルには、apoB もしくはapoR 欠損ブタ(Rapacz, et al., 1986, Science 234:1573-1577);ワタナベ遺伝性高脂血症 (WHHL)ウサギ(Kita et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci USA 84: 5928-5931);動物にLDLの食餌補助を行って化学的創傷を負わせるか、又は、バルーン・カテーテルによる血管形成術で機械的創傷を負わせてある、アテローム硬化症のブタ、ウサギ、もしくはラットモデルなどの非組換え、非遺伝性動物モデル;ラット心筋梗塞モデル(例えば Schwarz, ER et al. (2000) J. Am. Coll. Cardiol. 35:1323-1330に解説がある);及びウサギの慢性心臓虚血のモデル(例えばOperschall, C et al. (2000) J. Appl. Physiol. 88:1438-1445に解説がある)、がある。
【0059】
本発明の方法で用いられるであろう腫瘍形成の動物モデルは当業で周知であり(レビューは Animal Models of Cancer Predisposition Syndromes, Hiai, H and Hino, O (eds.) 1999, Progress in Experimental Tumor Research, Vol. 35; Clarke AR Carcinogenesis (2000) 21:435-41にある)その中には、例えば、発癌物質で誘導した腫瘍を持つ動物(Rithidech, K et al. Mutat Res (1999) 428:33-39; Miller, ML et al. Environ Mol Mutagen (2000) 35:319-327);腫瘍細胞を注射及び/又は移植した動物;及び、腫瘍遺伝子(例えばras)(Arbeit, JM et al. Am J Pathol (1993) 142:1187-1197; Sinn, E et al. Cell (1987) 49:465-475; Thorgeirsson, SS et al. Toxicol Lett (2000) 112-113:553-555) 及び腫瘍抑制遺伝子(例えばp53)(Vooijs, M et al. Oncogene (1999) 18:5293-5303; Clark AR Cancer Metast Rev (1995) 14:125-148; Kumar, TR et al. J Intern Med (1995) 238:233-238; Donehower, LA et al. (1992) Nature 356215-221)などの成長調節遺伝子に変異を持つ動物がある。さらに、例えば卵巣癌 (Hamilton, TC et al. Semin Oncol (1984) 11:285-298; Rahman, NA et al. Mol Cell Endocrinol (1998) 145:167-174; Beamer, WG et al. Toxicol Pathol (1998) 26:704-710)、胃癌(Thompson, J et al. Int J Cancer (2000) 86:863-869; Fodde, R et al. Cytogenet Cell Genet (1999) 86:105-111)、乳癌 (Li, M et al. Oncogene (2000) 19:1010-1019; Green, JE et al. Oncogene (2000) 19:1020-1027)、黒色腫 (Satyamoorthy, K et al. Cancer Metast Rev (1999) 18:401-405)、及び前立腺癌 (Shirai, T et al. Mutat Res (2000) 462:219-226; Bostwick, DG et al. Prostate (2000) 43:286-294)などの研究用には実験モデル系が利用できる。
【0060】
in vivoで血管形成を研究するためのモデルには、腫瘍細胞で誘導された血管形成及び腫瘍転移 (Hoffman, R.M. (1998-99) Cancer Metastasis Rev. 17:271-277; Holash, J. et al. (1999) Oncogene 18:5356-5362; Li, C.Y. et al. (2000) J. Natl Cancer Inst. 92:143-147)、マトリックスで誘導された血管形成(米国特許第5,382,514号)、ディスク(原語:disc)血管形成系(Kowalski, J. et al. (1992) Exp. Mol. Pathol. 56:1-19)、げっ歯類腸管膜窓血管形成検定(Norrby, K (1992) EXS 61:282-286)、ラットでの実験的絨毛膜様血管新生 (Shen, WY et al. (1998) Br. J. Ophthalmol. 82:1063-1071)、及びヒヨコ胚発生 (Brooks, PC et al. Methods Mol. Biol. (1999) 129:257-269) 及びヒヨコ胚漿尿膜(CAM)モデル(McNatt LG et al. (1999) J. Ocul. Pharmacol. Ther. 15:413-423; Ribatti, D et al. (1996) Int. J. Dev. Biol. 40:1189-1197)があり、Ribatti, D and Vacca, A (1999) Int. J. Biol. Markers 14:207-213でレビューされている。
【0061】
in vivoで血管緊張を研究するためのモデルには、ウサギ大腿動脈モデル(Luo et al. (2000) J. Clin. Invest. 106:493-499)、eNOSノックアウトマウス(Hannan et al. (2000) J. Surg. Res. 93:127-132)、脳虚血のラットモデル(Cipolla et al. (2000) Stroke 31:940-945)、レニン−アンギオテンシンマウス系 (Cvetkovik et al. (2000) Kidney Int. 57:863-874)、ラット肺移植モデル(Suda et al. (2000) J. Thorac. Cardiovasc. Surg. 119:297-304)、頭蓋内圧亢進のニュージーランド・ホワイト系ラビットモデル(Richards et al. (1999) Acta Neurochir. 141:1221-1227)、慢性高血圧の自然発生高血圧(SH) ラット神経モデル (Stekiel et al. (1999) Anesthesiology 91:207-214)、プラハ高血圧ラット(PHR) (Vogel et al. (1999) Clin. Sci. 97:91-98)、長期アンギオテンシンII (Ang II)-輸注ラット(Pasquie et al. (1999) Hypertension 33:830-834)、ダール−塩−感受性ラット(Boulanger (1999) J. Mol. Cell. Cardiol. 31:39-49)、動脈リモデリングのマウスモデル(Bryant et al. (1999) Circ. Res. 84:323-328)、及び肥満ズッカー(fa/fa)ラット(Golub et al. (1998) Hypertens. Res. 21:283-288)、がある。
【0062】
別の実施態様では、本ペプチド・ライブラリを、細胞内セカンド・メッセンジャ(例えば細胞内Ca2 +、ジアシルグリセロール、IP3)の誘導能、(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼなどの検出可能なマーカをコードする核酸に作動的に連結させた標的応答性調節配列を含んで成る)レポータ遺伝子の誘導能、又は、細胞内基質に対するリン酸化能について、評価する。あるペプチド・ライブラリメンバーの、細胞内基質に対するリン酸化能は、例えばin vitroキナーゼ検定で調べることができる。簡単に説明すると、目的の細胞を、当該ペプチド・ライブラリ(又はサブ−ライブラリ)と一緒にインキュベートするか、あるいは、10mMのMgCl2及び5mMのMnCl2など、MgCl2及びMnCl2を含有する緩衝液に入れた、本ペプチド・ライブラリ(又はサブ−ライブラリ)及び[γ-32P]ATPなどの放射性ATPをコードする一つ又は複数のベクタをトランスフェクトすることができる。インキュベーション後、細胞成分をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で還元条件下で分離し、PVDFメンブレンなどの膜に転写し、オートラジオグラフにかけることができる。オートラジオグラフで現れた検出可能なバンドは、細胞内基質がリン酸化されたことの指標である。基質上のどの残基がリン酸化されたかを調べるには、リン酸化された基質のホスホアミノ酸解析を行うこともできる。簡単に説明すると、放射性リン酸化タンパク質のバンドをSDSゲルから切り出し、部分的な酸水解を行うことができる。次に、生成物を一次元電気泳動法で分離し、ホスホイメージャなどで解析してニンヒドリンで染色したホスホアミノ酸標準に比較することができる。
【0063】
別の実施態様では、ウィルスのホスト細胞への感染能、ウィルスタンパク質産生のためのホスト細胞利用能、及び/又は、ホスト細胞内での複製能、に関連するプロセスを調節する、好ましくは阻害する、能力について、本ペプチド・ライブラリを評価する。したがって、当該検定法には、潜在的なホスト細胞を本ペプチド・ライブラリ又はサブ−ライブラリに接触させるステップか、又は、本ペプチド・ライブラリをコードする一つ又は複数のベクタを潜在的なホスト細胞にウィルスの存在下でトランスフェクトするステップと、ウィルス進入、ウィルスタンパク質産生又はウィルス複製の当該ライブラリによる阻害能を評価するステップと、を含めることができる。このような検定法は当業で公知であり、例えば、"General Viral Experiments" Ed. by Fellow Membership of The National Institute of Health, Maruzen Co., Ltd. (1973);それぞれの内容を引用をもってここに援用することとする米国特許第6,140,063号;第6,140,063号;第6,087,094号;第6,071,744号;第5,843,736号;及び第5,565,425号に解説されている。
【0064】
さらに別の実施態様では、細菌のホスト細胞への感染能に関連するプロセスを調節する、好ましくは阻害する能力について、本ペプチド・ライブラリを評価する。この目的で用いてもよい検定法には、限定はしないが、それぞれの内容を引用をもってここに援用することとする米国特許第5,654,141号及び第6,165,736号に解説されたものがある。
【0065】
BRCA1遺伝子、又は、p53及びp21経路にある遺伝子の発現を測定する検定法や、細胞接触阻害を測定する検定法を含め、本発明の方法で用いられるであろういくつかの検定法は、例えば、その内容全体を引用をもってここに援用することとする米国特許第 5,998,136号に解説されている。
【0066】
III. 薬物開発
本発明の他の実施態様には、ある生物プロセスのモジュレータであると本発明の方法で同定されたペプチドの、薬物開発のためのリード分子としての使用がある。例えば、当業で公知の分子モデリング技術(例えばエキソーガ社から入手可能なSTR3DI MOLECULAR MODELER)を用いると、本発明の方法で同定されたペプチドを用いて、前記ペプチドの望ましい機能を有するが、血漿半減期が向上している、可溶性が向上している、及び効力が向上しているなど、他の望ましい形質も有するような他の分子をデザイン及び合成することができる。
【0067】
さらに本発明を、以下の例によって解説するが、以下の例を限定的なものとして捉えられてはならない。本出願全体を通じて引用された全参考文献、特許及び公開済み特許出願の内容や、図面及び配列表を、引用をもってここに援用することとする。
【0068】
実施例
実施例1:ヒトゲノムDNA発現ベクタの調製
ヒトゲノムDNAを制限酵素(AciI、Hinp1I、HpaII、HpyCH4IV、BfaI、MseI、NlaIII、RsaI、Sau3AI)の組合せで消化した。Klenow酵素及びデオキシヌクレオチドと一緒にインキュベートして、これらDNA断片の両端を平滑末端にした。予め改変してXhoI 及びNot I 制限酵素認識部位を既存のHindIII 及びClaI 制限酵素認識部位間に含有させた pCLNCX レトロウィルス・ベクタに、さらに以下のオリゴヌクレオチドをこのXhoI/NotI部位間に挿入して改変した:
【0069】
XhoI kozak PmlI NotI
TCGAGCCACCATGCACGTGGTAGCTAGCTAGC (配列番号 NO:1) CGGTGGTACGTGCACCATCGATCGATCGCCGG (配列番号 NO:2)TCGAGCCACCATGGCACGTGGTAGCTAGCTAGC (配列番号NO:3) CGGTGGTACCGTGCACCATCGATCGATCGCCGG (配列番号NO:4)TCGAGCCACCATGGGCACGTGGTAGCTAGCTAGC (配列番号NO:5) CGGTGGTACCCGTGCACCATCGATCGATCGCCGG (配列番号 NO:6)
【0070】
これらのオリゴヌクレオチドを挿入したことにより、平滑末端になったゲノムDNA断片をクローニングするためのkozak 配列、ATG開始コドン、及びPmlI 制限部位が三つの読み取り枠すべてで得られた。
【0071】
当該ゲノムDNA断片ライブラリを含有するpCLNCXベクタを、モロニー白血病ウィルスgag及びpolタンパク質をコードするベクタと、水疱性口内炎ウィルスエンベロープ糖タンパク質をコードするベクタとを用いたコトランスフェクションによりCOS細胞内にパッケージした。
【0072】
実施例2:TNFアルファシグナル伝達経路に干渉するウィルス・ペプチドの同定
トランスフェクション後72時間たった実施例1のCOS上清から採集したウィルスを、MCF-7N乳癌細胞の感染に使用する。感染から24時間後にMCF-7N細胞をTNFαで処理してアポトーシスを誘導する。生存しているコロニーを7日後に採集し、展開させる。この生存クローンから採集したRNAをPCRテンプレートとして用いて、TNFαシグナル伝達経路に干渉することで細胞生存を促進するゲノムDNA断片を増幅する。次に、GenBankTMを検索してこのゲノムDNA断片を配列決定及び同定する。
【0073】
実施例3: アンドロゲンシグナル伝達経路に干渉するウィルス・ペプチドの同定
トランスフェクション後72時間たった実施例1のCOS上清から採集したウィルスを、EGFPを前立腺特異的抗原プロモータの制御下に安定にトランスフェクトしたMDAPCA2b前立腺癌細胞の感染に使用する。これらの細胞はジヒドロテストステロンを培地に含めた場合にのみ、EGFPを発現する。感染後4日目にEGFPの発現の低下した細胞をセル・ソーティングで選抜する。生存クローンから採取したRNAを PCRテンプレートとして用いて、アンドロゲンシグナル伝達経路への干渉を担うゲノムDNA断片を増幅する。GenBankTMで検索して、このゲノムDNA断片を配列決定及び同定する。
【0074】
実施例4:インフルエンザウィルス病理を調節するウィルスペプチドの同定
10個のアミノ酸分の重複を持つインフルエンザのオープンリーディングフレームすべての20個のアミノ酸長にわたるペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを合成し、PCRで増幅し、選択可能な薬物マーカ・ネオマイシン耐性を含有するレトロウィルス・ベクタに挿入する。次に、MDCK細胞に、重複のあるペプチドのライブラリをコードするレトロウィルスを感染させてから、96ウェル組織培養プレートに1ウェル当たり一個の細胞になるようにプレートする。この細胞をネオマイシンの存在下で成長させる。細胞が60乃至80%コンフルエントになった時点で、ネオマイシンを含有しない培地に培地を取り替え、細胞に、ルシフェラーゼをコードする組換えインフルエンザウィルスか、又は、野生型インフルエンザウィルスのいずれかをm.o.iを1で感染させる。1番目のケースでは、感染後24時間目の時点でルシフェラーゼの発現レベルについてウェルを分析し、無関係のペプチド・コーディング領域を含有するレトロウィルスに感染させた等しい数の細胞を感染させた結果のルシフェラーゼ・レベルと比較する。2番目のケースでは、感染後2乃至3日目の時点のウィルス細胞変性効果の程度について、ウェルを分析する。次に、示したルシフェラーゼ活性又はCPEの低いウェルからDNAを抽出し、PCRを用いて、前記レトロウィルスのペプチド・コーディング領域を増幅する。このPCR断片を配列決定して、新しいレトロウィルス・ベクタに挿入された、in vitroでインフルエンザ病理を阻害したウィルス・ペプチド を同定し、同じ検定で再度検定する。繰り返した検定の結果、やはり、このウィルス・ペプチドの発現がインフルエンザ病理を阻害することが、低下したルシフェラーゼ活性又はCPEで評価したときに示されれば、再度このDNAを単離し、PCR増幅し、配列決定してこの配列が1番目の検定で得られたDNAと同じものであることを確認する。これら二つのDNA配列が同じであれば、この阻害性配列に対応するペプチドを、膜透過配列を付けて又は付けずに合成する。次にこれらのペプチドを、擬似コントロールを含め、MDCK細胞に多様な濃度で加えた後、ルシフェラーゼをコードする組換えインフルエンザウィルス又は野生型インフルエンザにこれらの細胞を感染させる。24時間後にウェルを検定して、ルシフェラーゼ活性について検定するか、又は、2乃至3日後に細胞をCPEについて評価する。擬似コントロールに比較してルシフェラーゼ活性又はCPEの阻害を示すペプチドを、さらに分析し、インフルエンザウィルス感染の潜在的治療薬として最適化する。
【0075】
この同じプロトコルは、ウィルス感染細胞から単離されたcDNA、せん断した又は制限酵素で切断したウィルスゲノムDNAを含有するレトロウィルス・ベクタを用いたり、又は、ウィルスゲノム中に含まれたオープンリーディングフレームの一部又は全部を網羅した合成ペプチドを直接用いることでも、実施することができる。
【0076】
同等物
当業者であれば、日常的な実験によって、ここに解説した本発明の具体的な実施態様の同等物を数多く、認識し、又は確認できることであろう。このような同等物は以下の請求の範囲の包含するところと、意図されている。
Claims (63)
- (a)複数のペプチドを含んで成るペプチド・ライブラリに生物、細胞又は組織を接触させるステップであって、前記複数のペプチドは、ある生物の少なくとも一つの遺伝子産物のフラグメントである、ステップと、
(b)前記複数のペプチドの、前記生物、前記細胞又は前記組織における生物プロセスを調節する能力を評価するステップと、
(c)ステップ(b)で前記生物プロセスを調節すると示された少なくとも一つのペプチドのアミノ酸配列を決定することで、前記生物プロセスのモジュレータとして該ペプチドを同定するステップと、を含む、
生物プロセスを調節するペプチドを同定する方法。 - 前記生物プロセスがアポトーシスである、請求項1に記載の方法。
- 前記生物プロセスがタンパク質輸送である、請求項1に記載の方法。
- 前記生物プロセスが細胞接着である、請求項1に記載の方法。
- 前記生物プロセスが膜輸送である、請求項1に記載の方法。
- 前記生物プロセスが細胞遊走である、請求項1に記載の方法。
- 前記生物プロセスが細胞分化である、請求項1に記載の方法。
- 前記生物プロセスが疾患状態の進行である、請求項1に記載の方法。
- 前記生物が病原性生物である、請求項1に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、前記生物の少なくとも1つの遺伝子産物の入れ子状態になった複数のフラグメントを含んで成る、請求項1に記載の方法。
- 前記複数のペプチドがそれぞれ10個以上のアミノ酸残基を含んで成り、そして前記入れ子状態の重複が1以上のアミノ酸残基である、請求項10に記載の方法。
- 前記入れ子状態の重複が1乃至5個のアミノ酸残基である、請求項11に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、前記生物の少なくとも2つの遺伝子産物の複数のフラグメントを含んで成る、請求項1に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、前記生物の少なくとも1つの染色体由来の遺伝子産物の複数のフラグメントを含んで成る、請求項1に記載の方法。
- 前記複数のペプチドがそれぞれ約50個以下のアミノ酸残基を含んで成る、請求項1に記載の方法。
- 前記複数のペプチドがそれぞれ約30個以下のアミノ酸残基を含んで成る、請求項1に記載の方法。
- 前記複数のペプチドがそれぞれ約20個以下のアミノ酸残基を含んで成る、請求項1に記載の方法。
- 前記複数のペプチドがそれぞれ約5個以下のアミノ酸残基を含んで成る、請求項1に記載の方法。
- 前記細胞又は前記組織が前記生物由来である、請求項1に記載の方法。
- 前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項20に記載の方法。
- 前記細胞が酵母細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記細胞が昆虫細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記細胞が植物細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記複数のペプチドの、前記生物、前記細胞又は前記組織における生物プロセス調節能を免疫組織化学法を用いて評価する、請求項1に記載の方法。
- 前記複数のペプチドの、前記生物、前記細胞又は前記組織における生物プロセス調節能を、前記生物、前記細胞又は前記組織での形態変化を観察することで評価する、請求項1に記載の方法。
- 前記複数のペプチドの、前記生物、前記細胞又は前記組織における生物プロセス調節能を、前記生物、前記細胞又は前記組織におけるシグナル伝達レベルの変化を測定することで評価する、請求項1に記載の方法。
- 前記シグナル伝達レベルの変化が、主にGタンパク質共役受容体が媒介するものである、請求項27に記載の方法。
- 前記複数のペプチドが、核内局在シグナル配列、膜局在シグナル配列、ファルネシル化シグナル配列、転写活性化ドメイン、及び転写抑制ドメインからなる群より選択される付加的なアミノ酸配列に融合されている、請求項1に記載の方法。
- ステップ(c)で同定されたアミノ酸配列に基づいてデザインされた複数のペプチド又は非ペプチド化合物を含んで成る第二ライブラリを形成するステップと、前記生物プロセスを調節する少なくとも一つのペプチド又は非ペプチド化合物を前記第二ライブラリから選抜するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
- (a)ある一つのペプチド・ライブラリの一メンバーをコードする核酸配列をそれぞれが含んで成る複数の発現ベクタのライブラリを提供するステップであって、前記ペプチド・ライブラリが、一生物のゲノムにコードされた一種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、ステップと、
(b)複数の細胞を、前記発現ベクタのライブラリに、前記細胞に前記発現ベクタをトランスフェクトさせると共に前記コードされたペプチド・ライブラリを前記細胞内で発現させるのに適した条件下で接触させるステップと、
(c)生物プロセスが調節された細胞を選抜するステップと、
(d)ステップ(c)の細胞内のステップ(a)の核酸配列を決定するステップであって、前記核酸配列にコードされたペプチドが、前記生物プロセスを調節するペプチドとして同定される、ステップと
を含む、生物プロセスを調節するペプチドを同定する方法。 - 前記発現ベクタのライブラリがウィルス・ベクタを含んで成る、請求項31に記載の方法。
- それぞれのベクタが、一ペプチド・ライブラリの一メンバーをコードする核酸配列に作動的に連結された調節配列をさらに含有する、請求項31に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、一生物のゲノムにコードされた2種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項31に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、一生物のゲノムにコードされた5種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項34に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、一生物のゲノムにコードされた10種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項35に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、一生物のゲノムにコードされた15種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項36に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、一生物のゲノムにコードされた20種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項37に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、一生物のゲノムにコードされた25種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項38に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、一生物のゲノムにコードされた各タンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項34に記載の方法。
- 前記細胞が前記生物由来である、請求項31に記載の方法。
- 前記生物が哺乳動物、鳥類動物、細菌、真菌又は原虫である、請求項41に記載の方法。
- 前記生物がげっ歯類又は霊長類である、請求項42に記載の方法。
- 前記生物がヒトである、請求項42に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、第一の生物のゲノムにコードされた一タンパク質のフラグメントを含んで成り、前記細胞が第二の生物由来である、請求項31に記載の方法。
- 病原性生物の感染性を調節するペプチドを同定する方法であって、
(a)ある一つのペプチド・ライブラリの一メンバーをコードする一核酸配列をそれぞれが含んで成る複数の発現ベクタのライブラリを提供するステップであって、前記ペプチド・ライブラリが、前記病原性生物のゲノムにコードされた一種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、ステップと、
(b)複数の細胞を、前記発現ベクタのライブラリに、前記細胞に前記発現ベクタをトランスフェクトさせると共に前記コードされたペプチド・ライブラリを前記細胞内で発現させるのに適した条件下で接触させるステップと、
(c)前記複数の細胞を前記病原性生物に接触させるステップと、
(d)前記病原性生物の感染性が調節された細胞を選抜するステップと、
(e)ステップ(c)の細胞内のステップ(a)の核酸配列を決定するステップであって、前記核酸配列にコードされたペプチドが、前記病原性生物の感染性を調節するペプチドとして同定される、ステップと
を含む、方法。 - 前記複数の細胞が哺乳動物又は鳥類動物由来である、請求項46に記載の方法。
- 前記複数の細胞が霊長類又はげっ歯類由来である、請求項46に記載の方法。
- 前記細胞がヒト由来である、請求項46に記載の方法。
- 前記発現ベクタのライブラリがウィルス・ベクタを含んで成る、請求項46に記載の方法。
- それぞれのベクタが、ある一つのペプチド・ライブラリの一メンバーをコードする核酸配列に作動的に連結された調節配列をさらに含有する、請求項46に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、前記病原性生物のゲノムにコードされた2種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項46に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、前記病原性生物のゲノムにコードされた5種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項52に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、前記病原性生物のゲノムにコードされた10種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項53に記載の方法。
- 前記ペプチド・ライブラリが、前記病原性生物のゲノムにコードされた15種以上のタンパク質のフラグメントを含んで成る、請求項54に記載の方法。
- 前記病原性生物が細菌、真菌、原虫又はウィルスである、請求項46に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法に基づいて同定された、生物プロセスを調節するペプチド。
- 請求項1に記載の方法に基づいて同定された、生物プロセスを調節するペプチドと類似の結合上の特徴を有する化合物の分子モデリングのための前記ペプチドの使用。
- 請求項1に記載の方法に基づいて同定された、生物プロセスを調節するペプチドと、薬学的に許容可能な担体とを含んで成る医薬組成物。
- 対象において正常でない生物プロセスに関連する疾患又は状態を治療するための方法であって、請求項1に記載の方法に基づいて同定された、生物プロセスを調節するペプチドを治療上有効量、前記対象に投与するステップを含む、方法。
- 前記疾患又は状態がHIV感染である、請求項60に記載の方法。
- 前記疾患又は状態が癌である、請求項60に記載の方法。
- 一生物の少なくとも一つの遺伝子産物のフラグメントである複数のペプチドを含んで成るペプチド・ライブラリと、使用に関する指示とを含んで成る、生物プロセスを調節するペプチドを同定するためのキット。
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