JP2004528569A - 走査プローブ顕微鏡のための作動および検知装置 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
発明の分野
本発明は走査プローブ顕微鏡の分野に関する。より具体的には、本発明は独立クレームに開示された走査プローブ顕微鏡のための作動および検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
微細加工され、探針先端部が取付けられたカンチレバーは、たとえば原子間力顕微鏡(AFM)といった走査プローブ顕微鏡(SPM)の主な構成部品の1つである。SPMの測定モードはいわゆる「動的」モードである。このモードでは、先端部を試料表面に接近させ、カンチレバーをその共振周波数に近い周波数で振動させる。他の測定モード、たとえばいわゆる「タッピング」または間欠コンタクトモードでは、先端部を、カンチレバーが振動しているときに、表面に接触させる。試料を走査する間に、先端部と試料表面の特徴との間の距離が変動する。この変動が、先端部と表面との間の、たとえばファンデルワールス力といった相互作用力の勾配の変化を引き起こす。結果として生じる、カンチレバーの機械的特性、たとえば共振周波数、位相、振動振幅およびQ値の変化を、たとえば偏光検出システムといった外部システムを用いて検出する。通常、カンチレバーと試料表面との間の距離をフィードバックシステムによって制御して固有の特性を一定値に保つ。
【0003】
典型的には、カンチレバーを、カンチレバーチップに取付けられた圧電スラブを用いて振動させる。タッピングモードで使用される、従来のカンチレバーのばね定数kは通常、振動周波数5−300kHzの場合、k=1−100N/mである。ばね定数の低いカンチレバーが好ましい。その理由は、ばね定数が低ければ、先端部の動作中の損傷または磨耗が少ないからである。高スループットまたは高速SPM測定においては、共振周波数の高いカンチレバーが好ましい。一例として、もし十分な振動振幅、たとえば1μmまでの振動振幅が与えられていないならば、たとえばばね定数が0.1N/m未満の値の場合、非常に軟らかいカンチレバーを、空気中での動的モードの測定に使用することは難しい。試料表面の水は、たとえば先端部を表面に拘束し、2度と解放しない。カンチレバーに取付けられた圧電スラブは、もしカンチレバーをそのカンチレバーの第1の共振周波数と異なる周波数で振動させていれば、先端部を効果的に十分に励起させることができない。このようなシステムの、すなわち圧電スラブおよびカンチレバーチップの周波数は、このシステムの第1の共振周波数より高い周波数では効果的でない。
【0004】
SPMの他の実現化例においては、微細加工されたカンチレバーの代わりに、水晶音叉が使用される。音叉は、主として電子回路のために開発された電気的構成部品である。音叉は、大きさが数mmの小さな機械的共振器であり、Q値が非常に高い、すなわち、加えられた力に対する感度が非常に高い。音叉は、たとえば電気コンダクタンスの測定により共振特性を比較的容易に利用できるため、SPM応用例には魅力ある候補である。音叉を用いるSPM応用例では、SPM先端部を、音叉のピンの一方に取付ける。この先端部は、たとえば文献米国特許6,094,971号および欧州特許第0864846号に開示されているように、ピンに対して横向きにまたはピンの上端に取付けられる。このようなカンチレバーシステムの欠点は、先端部が音叉のピンの一方に直接固定されていることが原因である。音叉の対称性が崩れるのである。このために、機械的Q値が減少し、加えられた力に対する感度が低くなる。さらに、先端部の振動振幅は常に音叉自身の振動振幅と同一である。加えて、こういったプローブは、従来の微細加工されたカンチレバーと比較して非常に硬い、すなわち、先端部は動作中簡単に損傷してしまう。音叉共振器のピンの典型的なばね定数は、共振周波数が約30kHzの場合、1.8kN/mである。
【0005】
本発明の目的は、既存の走査プローブ顕微鏡の、特に音叉共振器を用いる走査プローブ顕微鏡の欠点を克服する、走査プローブ顕微鏡のための作動および検知装置を提供することである。
【0006】
特に、本発明の目的は、音叉および微細加工されたカンチレバーを含む、作動および検知装置を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、従来技術の音叉共振器のQ値および/または共振周波数を向上させる、対称型作動および検知装置を提供することである。
【0008】
上記の目的は、請求の範囲で規定された作動および検知装置によって達成される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明の作動および検知装置は、たとえば音叉といった、2つのピンを有するフォーク状の装置と、探針先端部を備えた接続手段とを含み、先端部は、この接続手段を介してフォーク状の装置の上記2つのピン双方に接続される。このフォーク状の装置は、振動する機械的共振器として使用される。ピンの運動は、上記接続手段を介して、探針先端部の運動に変換され、この先端部の運動面は、ピンの運動面と異ならせることができる。作動および検知装置は、好ましくは、たとえば原子間力顕微鏡といった走査プローブ顕微鏡(SPM)において用いられる。
【0010】
先端部が音叉の2つのピンに接続されていることの1つの利点は、音叉の対称性が維持できることである。このようにして、音叉のQ値を、従来技術の音叉SPMのQ値より大幅に高くすることができ、たとえば、音叉は加えられた力に対する感度が遥かに高い。
【0011】
先端部は、たとえば板ばねまたはリーフばね、シート材料、フォイルまたはワイヤなどの反発弾性部品といったばね手段のような、可撓性および弾性を有する接続手段を用いて、音叉のピンに接続できる。接続手段の小さな質量が音叉に加わることにより、音叉の共振周波数が低下する傾向がある。このことは、従来技術の音叉SPMにおいても生じる。しかしながら、本発明では、接続手段は、音叉にさらなる剛性をもたらし、音叉の共振周波数を高める。この効果は、加わる質量の効果よりもはるかに顕著である。したがって、音叉の共振周波数は、当初の値より高くなり、このことは、たとえば高速SPMには好ましい。システムの特性は、接続手段が取付けられた音叉を用いることによって著しく向上させることができる。
【0012】
本発明では、音叉のピンの運動が、接続手段の運動を生じさせる。音叉がある周波数で振動する間、接続手段は同じ周波数で振動する。接続手段、たとえばばね手段の大きな振動振幅は、接続手段がその第1の共振周波数より高い周波数で振動しているときにも得られる。例として、音叉の第1の共振周波数が50kHzであり、ばね手段、たとえば板ばねの第1の共振周波数が8kHzの場合、板ばねは、その自由端での振動振幅をたとえば500nmとして、50kHzで振動することができる。この接続手段の共振周波数は、音叉の共振周波数と同一である必要はなく、ユーザの要求に応じて選択できる。これは、従来技術のSPMでは不可能である。ここでは、カンチレバーまたは音叉は、その共振周波数に近い周波数で振動する。カンチレバーまたはピンの相当に大きな振動振幅は、カンチレバーまたは音叉それぞれの第1の共振周波数周辺でしか得られない。
【0013】
本発明において、好ましくは、接続手段は、本質的に接続手段の対称軸または面である
少なくとも1つの軸または面を備えた形状である。好ましくは、接続手段は1つまたはそれ以上の対称軸を有し、先端部はこうした対称軸のうち少なくとも1つの上にある。接続手段の対象軸が音叉の対称軸または面にあるかまたは平行であることが特に好ましい。接続手段、先端部および音叉が対称的に配置されていることにより、カンチレバーの完全な対称性が保たれる。このことは、音叉のQ値を高めるだけでなく、先端部の運動を単純にする、すなわち、3つのうち1つの自由度が制限されるため先端部は面において運動する。
【0014】
本発明の一実施例において、先端部は、少なくとも3点で、すなわち音叉の2つのピン上のまたは2つのピンでの第1の接続点およびさらなる接続点で、音叉に接続される。このさらなる接続点は、好ましくは音叉のベースに、たとえば音叉の対称軸または面に、位置する。先端部と音叉とのさらなる接続を、たとえば、先端部を外部ソースまたはユニットに結合する手段として用いることができる。結合手段は、たとえば、さもなければ電気的に分離された先端部により、好ましくは音叉の駆動信号とは無関係である電圧が先端部に与えられるコンタクトポイントといった、光学的または電子的結合場所とすることができ。これはまた、例として、たとえば走査型近接場光学顕微鏡(SNOM)において用いることができるような、作動および検知装置への/からの光の光学的結合のために用いることができる。したがって、少なくともさらなる接続点を有する接続手段は、好ましくは音叉の対称性を保つように設計される。
【0015】
音叉、接続手段および先端部は、走査プローブ装置の、単一の部品または別々の部品とすることができる。本発明の一実施例に従うと、先端部および接続手段は、マイクロ工学では周知のように、たとえば1ブロックの材料から1回のまたは数回の処理ステップで製造された、一部品である。しかしながら、先端部を、接続手段の一部とし、接続手段そのものが探針先端部として機能するようにすることもできる。その場合、接続手段に、たとえば尖鋭な端部または角を設ける。これはたとえば接続手段を三角形の形状にすることによって可能である。しかしながら、探針先端部を、何らかの適切な固定技術によって、接続手段に接着するまたは取付けることもできる。水晶または圧電音叉のように従来から利用できる音叉は、通常、電気コンタクトとして機能する金属層、たとえば金の層によって覆われている。したがって、接続手段は、他の固定技術たとえば溶接または接合によって、音叉に取付けることもできる。好ましくは、時計の応用例で用いられるような、たとえば水晶音叉のような圧電音叉が使用される。作動および検知装置の製造に使用される材料によっては、音叉は圧電性でない。これは、たとえば、音叉、接続手段および先端部が、同一材料からなる、たとえば1ブロックの材料たとえばシリコンから製造される場合に起こり得る。このような場合、音叉の少なくとも一部を、たとえば圧電層で覆うことができる。半導体または導電性材料を含む音叉の場合、ピンに静電力を加えることによってピンの運動を生じさせることが可能である。これは、たとえば、ピンの近くに対電極を設けてキャパシタを形成し、ピンと電極との間に電位を与えることによって可能である。
【0016】
SPM測定では音叉を共振させる。先端部と試料面との間の相互作用力のために、音叉の機械的特性、たとえば共振周波数、位相、振動振幅およびQ値の変化、または接続手段の変化たとえば機械的または位置的変化が生じ、検出される。圧電音叉共振器の電力源として、電流または電圧信号が音叉に与えられ、ピンの運動が生じる。種類の異なる音叉については、たとえば電磁的に共振する音叉または従来の金属音叉については、適切な電力源を選択しなければならない。音叉の機械的特性の変化または接続手段の変化の検出には、直接および間接的な方法が可能である。直接的な方法では、音叉からの内部信号を測定する、たとえば、音叉の電気コンダクタンスの変化を検知する。間接的な方法では、たとえば偏光検出システムのような、たとえば先端部と試料面との間の相互作用によって起こる接続手段の位置の変化を検出する、外部検出システムを用いる。
【0017】
本発明に従う接続手段は、好ましくは、たとえば板ばね、固体材料の弾性のストライプのような、ばね手段として設計される。これらばね手段のばね定数の値は、0.1N/mより低い。実験的構成でのばね定数の典型的な値は、0.03−80N/mの範囲にあり、好ましくは0.04−30N/mの範囲にあり、たとえば0.07N/mである。これは、従来技術の音叉共振器の2kN/m近辺の値より遥かに低い。これはまた、従来のシリコンカンチレバーの典型的なばね定数の値1−100N/mよりも低い。本発明のカンチレバーシステムはしたがって、従来技術のカンチレバーよりも遥かに軟らかい、すなわち、先端部は、たとえば動作中の損傷の頻度が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下において、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【0019】
好ましい実施例の説明
図1は、SPM応用例において使用される、従来技術の音叉1の2つの例を示す。先端部2は、音叉1のピンの一方に、図面左側に示すように音叉に垂直に、または図面右側に示すように音叉に平行に固定される。先端部2は、音叉に直に結合され、常にピンと同方向に運動する。後者の場合、先端部の運動は試料表面8にほぼ平行である。
【0020】
図2に示される、本発明の第1の好ましい実施例は、ばね手段として、U字型またはV字型の板ばね23、たとえば微細加工された金属、単結晶シリコン、酸化シリコン、窒化シリコンまたはポリマーを含む。板ばね23の2本の脚25はそれぞれ、圧電音叉共振器21の別々のピンに固定、たとえば接着または接合される。好ましくは、先端部22は板ばね23の一部である、すなわち、板ばね23と同一のプロセスで製造される。先端部22を、板ばね23に固定、たとえば接着し、音叉および板ばねが置かれている面すなわちxy面に垂直な方向すなわちz方向を向くようにすることができる。先端部22は、音叉−板ばねシステムの対称面すなわちxz面にある。音叉21は、圧電性であり電極27に接続されているため、主としてxy面で振動する。先端部22は主としてz軸、またはむしろxz面に沿って運動させられる。先端部22は、音叉を用いる従来のSPMと異なり、ピンと同一方向に運動しない。板ばねの脚25の厚みtは、先端部22が−zおよび+z方向に柔軟に運動しやすいように、幅wより小さい。先端部とたとえば試料との間に、相互作用が発生する、すなわち試料面の走査により相互作用が発生すると、音叉共振器21の共振特性たとえば共振周波数、位相、振動振幅およびQ値が変化する。これらの特性は、好ましくは、同じ電極27を用いて、たとえば音叉共振器の電気コンダクタンスまたは導電性の変化を測定することにより、検出される。
【0021】
ピン、板ばねまたは先端部の長さ、幅、厚みはすべて、サブマイクロメートルまたはマイクロメートルの範囲にあり、典型的には0.5μmから数千マイクロメートルの範囲にある。ピンの典型的な長さは、500−4500μmであり、好ましい値は1500−3500μmである。ピンの厚みtpおよび幅wpは、典型的には50−350μmの間にあり、好ましい値は、wpは150−280μmであり、tpは80−200μmである。板ばねの長さは、典型的には150μm−1000μmの間にあり、好ましい値は250−650μmである。板ばねのwおよびtすなわち幅および厚みは、典型的には約0.1−150μmの範囲にあり、wは好ましくは30μmと100μmの間、たとえば65μmであり、tの好ましい値は0.1μm−20μm、たとえば1μmである。ここで述べておかねばならないのは、すべてのサイズはユーザの要求または技術的問題に合うようにされる、すなわちこれらサイズは所与の例示の範囲より小さくても大きくてもよいという点である。
【0022】
図3は、図2で説明した作動および検知プローブの動作原理を示す。音叉31が振動すると、ピンが、作動装置の上面図である図3の下部分からわかるように、主としてxy面
で運動する。このピンの運動により、板ばね33の脚35各々に作用する角運動量MおよびM′が生じる。したがって、脚35の2つの側部L1およびL2は、量の異なる機械的応力を受ける。この応力分布に合わせて、板ばねは、ばねのヘッド34したがって先端部32が、xy面から出るように変形する。そのため、先端部の運動は、作動装置の側面図である図3の上部分からわかるように、主としてxz面で行なわれる。もし、たとえばAC電気信号が圧電音叉共振器31に与えられたとすると、2つのピンは逆位相で共振し、取付けられている板ばね33を変形させる。この場合、先端部32は、音叉の振動方向と同一方向には運動しない。好ましくは、板ばね33の振動周波数は、音叉共振器31の共振周波数と同一である。しかしながら、これはユーザの要求に応じて選択可能である。
【0023】
図4において、U字型またはV字型の板ばね43は、音叉41のピンに垂直に取付けられている、すなわち、板ばねはyz面にあり、音叉41はxy面にある。先端部42は、板ばね43のヘッドに組み込まれまたは固定され、音叉41の対称軸すなわちx軸と平行に置かれている。音叉41が共振すると、板ばね43上の先端部42は主としてx軸上でまたはxz面でそれぞれ運動する。音叉41のピン46の捩り運動を図5に示す。図3の場合と同様に、ピン46の運動が、板ばねの脚に角運動量MおよびM′を生じさせる。これら角運動量のため、各脚の2つの側部L1およびL2は、量の異なる機械的応力を受け、したがって、曲がる。脚が曲がることによって、先端部はxz面で運動する。図2に示した作動装置と比較すると、音叉、板ばねおよび先端部の幾何学的配置が異なるため、作動および検知装置の、走査面に対する位置は変化する。
【0024】
図6および8は、本発明のさらなる実施例を示す。接続手段は、固体材料の弾性のストライプ、たとえば金属、単結晶シリコン、窒化シリコン、酸化シリコンまたはポリマーのストライプである。このストライプは、ブリッジ63、83を形成し、音叉61、81の別々のピンに取付けられる、たとえば接着される。いずれの実施例でも、先端部62、82の向く方向により定められる先端部軸は、ブリッジを形成するストライプ63、83の対称面にあるまたは平行である。これらの実施例において、先端部は軸上で運動する。図6では、ブリッジの規定軸はz軸であり、対称面はyz面である。ブリッジ63は、音叉61の対称面に垂直に配置される。この対称面は音叉がその面に沿って延在する面でもある。図8では、ブリッジ83の規定方向はx軸であり対称面はxy面である。ブリッジは、音叉81の対称面にあるまたはこの対称面に平行に配置される。図7からわかるように、音叉61、81が振動している間、先端部62、82は、ピン76に近づく、またはピン76からさらに遠ざかる。この運動により、先端部は試料表面に近づくことが可能であり、かつ/または表面の走査が可能である。音叉のピン76およびブリッジの脚75間の角度Θの変化は、図面の左側に示すようにブリッジの側方向の伸張、または図面の右側からわかるように前方向の伸張を示している。ストライプ63が最適可撓性を有するようにするために、その幅wおよび厚みt(図6)が選択される、すなわち、tはwより小さいかまたはwに等しい。好ましくは、wおよびtの値は、約0.1−150μmの範囲にあり、wは典型的には30μm−100μmの間、たとえば65μmである。tの値は典型的には0.1μm−20μm、たとえば1μmである。ストライプ63の2本の脚の端部間の距離は、ピンの間の距離に調整され、好ましくは数百マイクロメートルの値である。典型的な値は150−650μmの範囲にあり、たとえば440μmである。
【0025】
図9に、本発明において使用できる2つの検出原理を示す。音叉91を、図面の左側に示すように直接的検出方法を用いる作動および検知手段として使用することができる。この音叉は、図面の右側からわかるように間接的検出方法を用いる作動手段のみとして使用することもできる。前者の場合、音叉91の共振特性は、電極97を介し、たとえば音叉の、その共振周波数近傍の、電気コンダクタンス、振動振幅または機械的Q値の変化を測定することによって検出される。後者の場合、音叉は主として、取付けられたばね手段、すなわち、先端部を含む板ばね93を振動させるために用いられる。外部光学検出システ
ム101を用いて、光信号がたとえばフォトダイオード100を用いて検出される。この信号は、基準位置に対する板ばねの位置の変化のために偏向する。この偏向測定は、好ましくは、たとえば板ばね93の後ろ側から反射するレーザビーム99といった光信号によって行なわれ、板ばねの位置の変化によって、光ビームが異なる方向に偏向する。
【0026】
試料表面98のトポグラフ像を得るために、試料または音叉を、試料表面に平行な面すなわちたとえば図2に示すxy面において、たとえばスキャナによって動かす。その間先端部は試料面98と係合している。
【0027】
先端部と試料の分離、すなわちz方向(図2参照)の運動は、スキャナまたは音叉によって行なうことができる。SPMが一定力モードで動作しているとき、音叉を用いて先端部と試料の分離を制御することができる。音叉の共振周波数は実質的に従来の圧電スキャナの共振周波数より高いため、走査速度を高めることが可能である。SPMが動的または間欠コンタクトモードで動作しているときは、重畳されたAC−DC信号を音叉に与えることができ、後者は典型的には接続手段を振動させるのに用いられ、かつ先端部と試料の間隔を制御するのに用いられる(zフィードバック作動)。
【0028】
図10aおよび図10bは、作動および検知装置の実験的構成および板ばね部分の拡大図を示す。2つのピン106がベース108に取付けられて音叉を形成する。板ばねとして形成されたばね手段103の2つの脚がそれぞれ音叉のピン106に取付られている。電極の役割を果たす電気コンタクト107が、たとえば金で覆われたピン106および制御装置に接続される。音叉、たとえば水晶音叉は制御され、測定信号が、ベース108においてチップと一体化させることができる制御および検出装置によって検出される。
【0029】
図10aおよび図10bに示した実験的構成のサイズおよび値の例を挙げると、ピンは長さ2400μm、厚み130μm、幅214μmであり、接続手段は長さ437μm、厚み1μm、脚の幅65μmであり、先端部の高さは10μmであり、窒化シリコン板ばね103のz軸方向すなわち面外方向のばね定数kは0.066N/mである。
【0030】
図11は、作動および検知装置の上面および側面図を示し、先端部202は接続手段203を介し3点で音叉201に接続される。接続手段は、その前部分がU字型またはV字型の板ばね203として形成され、音叉201の別々のピン206に、たとえば接着または結合されて取付けられ、さらに音叉201のベース207に取付けられる。先端部202を有する板ばね203の前部分は、図2の第1の実施例で説明したのと同じ態様で設計され運動させることができる。板ばね203の脚205は各々、拡大領域208a、bとして形成された第1の接続点を含み、これによって脚は各々1つのピンに取付けられる。さらなる接続点によって、脚は音叉のベース207に取付けられる。このさらなる接続点は、脚205を接続する拡大領域209として形成されるが、ピン206の運動を妨げることはない。板ばね203は音叉から電気的に分離され、先端部が板ばね203の後ろ部分に電気的に接続される。これは、好ましくは導電性の板ばねにより実現される。電気コンタクト、たとえばワイヤ210は、さらなる接続点に取付けられる。この電気コンタクトを通して、たとえば電位を、音叉のための駆動信号(図示せず)からの干渉を受けずに、先端部に与えることができる。
【0031】
接続手段を、先端部がたとえば図4または8に示す実施例のようにすなわち主としてx方向に運動できるように、形成することも可能である。これは、たとえば脚205をピンの内側に取付けて第1の接続点を形成することによって可能である。こうすれば、脚の延長部分は、音叉のベース207方向を向き、好ましくは、ベースに、さらなる接続点で結合されて固定される。接続手段の、特に音叉のベースに取付けられたさらなる接続点の対称的な設計のため、作動および検知装置のQ値が大幅に変わることはない。しかしながら、さらなる接続点の非対称の配置、したがって非対称接続手段も選択することができ、また、第1の接続点に結合されたさらなる接続点を選択することができる。
【0032】
図12では、先端部302が3点で音叉に接続された作動および検知装置の別の実施例の上面図および側面図を示す。この実施例は特に、走査型近接場光学顕微鏡、または音叉のベースから先端部302への直接および/または直線的接続が必要なまたは好ましい顕微鏡において使用するために設計されたものである。U字型またはV字型の板ばね303として形成された接続手段の前部分は、たとえば図2および11においてそれぞれ説明した第1または第5の実施例と同じ態様で、一般的には設計され、運動することができる。板ばね303の2つの脚305は、音叉の2つのピン306に、第1の接続点308a、bで取付けられる。板ばね303の先端領域から、第3の脚に似た接続部310が、音叉のベース307に至っている。この接続部310は、さらなる接続点309で音叉のベース307に固定され、ベース307の幅全体にわたって延びている。この音叉のベースの領域において、板ばね303上または中に配置された導波管311と外部装置312との光結合313が可能である。このような外部装置312は、たとえばレーザ、フォトダイオードまたは光ファイバのような、たとえば光源、検出器または光導波手段である。接続手段の導波管311は、たとえば、SiO2層のようなシリコン板ばね303の酸化部分とすることができる。図12では、先端部は板ばね303に一体化した部分として示されている。先端部および導波管311は各々、下にある、接続手段の接続部310に固定された、別の部分とすることもできる。導波管は、たとえば、図11のように、接続手段の脚の一部とする、またはこの脚に沿って配置することもできる。接続手段に取付けられたまたはその一部である先端部が向く方向は、接続手段の対称軸に平行または垂直、すなわちxまたはz方向でない(規定角は0°または90°と異なる)。先端部および接続手段の、音叉の対称軸に対する角度が、0°または90°でないようにすることも可能である。表面に平行に走査できるようにするために、これらの角度を、作動装置の別の部分で、たとえば音叉と接続手段との間に規定角を加えることにより、または、カンチレバーと垂直面間の規定角を垂直にすることにより、補償してもよい。
【0033】
本発明は図示した実施例に限定されない。本発明の知識を有する専門家には、その専門家の自由裁量による、このような作動および検知装置の設計のさらなる可能性がある。特に、示されている接続手段の形状および対称性または接続手段上の先端部の対称位置は、本発明の好ましい実施例に過ぎない。図面では、先端部、接続手段および音叉は全般的に、可能な組合せすべてにおいて垂直または平行である。好ましくは、音叉のベースから先端部への導波管または他の接続部は、接続手段の対称性または音叉全体の対称性が保たれるように導かれる。しかしながら、実施例はこれに限定されない。先端部の剛性をフォーク状の装置の2つのピンに与えることも可能である。音叉の共振特性のいくつかの利点が失われても、対称性プローブ構成の利点および外部検出システムを必要としないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】探針先端部を含む従来技術の音叉を概略的に示す。
【図2】本発明に従う作動および検知装置の一実施例の斜視図である。
【図3】図2の実施例の動作原理の側面図および上面図を示す。
【図4】本発明に従う第2の実施例を示す。
【図5】図4の実施例の動作原理を示す。
【図6】本発明に従う第3の実施例を示す。
【図7】図6の実施例の動作原理を示す。
【図8】本発明に従う第4の実施例を示す。
【図9】本発明において用いられる検出システムの方法を示す。
【図10a】図2の実施例に従う実験的構成を示す。
【図10b】図2の実施例に従う実験的構成の接続手段領域の拡大図を示す。
【図11】本発明の第5の実施例を示す。
【図12】本発明の第6の実施例を示す。
Claims (16)
- 走査プローブ顕微鏡のための作動および検知装置であって、2つのピン(46、76、106、206、306)を有する音叉(21、31、41、61、81、91、201)と、探針先端部(22、32、42、62、82、202、302)を有する接続手段(23、33、43、63、83、93、103)とを含み、
先端部(22、32、42、62、82、202、302)は、接続手段(23、33、43、63、83、93、103、203、303)を介して音叉(21、31、41、61、81、91、201)の前記2つのピン(46、76、106、206、306)双方に接続される、走査プローブ顕微鏡のための作動および検知装置。 - 接続手段(23、33、83、103)は、本質的に前記接続手段(23、33、83、103、203、303)の対称軸である規定軸を備えた形状を有し、前記対象軸は、音叉(21、31、81、201)の対称軸上に配置されるまたは平行である、請求項1に記載の作動および検知装置。
- 接続手段(43、63)は、本質的に前記接続手段(43、63)の対称軸である規定軸を備えた形状を有し、前記対称軸は音叉(41、61)の対称軸に垂直である、請求項1に記載の作動および検知装置。
- 先端部(62、82、202、302)が向く方向は、接続手段(63、83)の対称軸に平行である、請求項2または3に記載の作動および検知装置。
- 先端部(22、32、42、202、302)が向く方向は、接続手段(23、33、43、103)の対称軸に垂直である、請求項2または3に記載の作動および検知装置。
- 先端部の、音叉(21、31、41、61、81、91、201)の2つのピン(46、76、106、206、306)への前記接続に加え、さらなる接続点(209、309)を特徴とし、このさらなる接続点で、プローブ先端部(22、32、42、202、302)は接続手段(23、33、43、63、83、93、103、203、303)を介して音叉(21、31、41、61、81、91、201)に接続される、請求項1または2に記載の作動および検知装置。
- 先端部の、音叉(21、31、41、61、81、91、201)の2つのピン(46、76、106、206、306)への前記接続に加え、さらなる接続点(209、309)を特徴とし、このさらなる接続点で、プローブ先端部(22、32、42、202、302)は接続手段(23、33、43、63、83、93、103、203、303)を介して音叉(21、31、41、61、81、91、201)に接続される、請求項1または3に記載の作動および検知装置。
- 前記さらなる接続点(209、309)は、作動および検知装置へのまたは作動および検知装置からの外部信号の結合のための結合手段として使用され、前記外部信号は好ましくは音叉(21、31、41、61、81、91、201)の駆動信号から独立したものである、請求項6または7に記載の作動および検知装置。
- 音叉(21、31、41、61、81、91、201)の運動は、前記接続手段(23、33、43、63、83、93、103、203、303)を用いて先端部(22、32、42、62、82、202、302)の運動に変換される、請求項1から8のいずれかに記載の作動および検知装置。
- 音叉(21、31、41、61、81、91、201)のピン(46、76、106、206、306)の運動面は、先端部(22、32、42、62、82、202、302)の運動面と異なる、請求項9に記載の作動および検知装置。
- 前記接続手段(23、33、43、63、83、93、103、203、303)は、前記接続手段(23、33、43、63、83、93、103、203、303)の対称軸または対象面に関して対称である、請求項1から10のいずれかに記載の作動および検知装置。
- 前記接続手段(23、33、43、63、83、93、103)はU字型またはV字型である、請求項11に記載の作動および検知装置。
- 前記接続手段(23、33、43、63、83、93、103、203、303)および先端部(22、32、42、62、82、202、302)は同じ材料を含む、請求項1から12のいずれかに記載の作動および検知装置。
- 前記接続手段はばね手段(23、33、43、63、83、93、103、203、303)である、請求項1から13のいずれかに記載の作動および検知装置。
- ばね手段は、板またはリーフばね(23、43、103、203、303)、固体材料であって弾性を有するワイヤまたはストリップ(63、83)である、請求項14に記載の作動および検知装置。
- 板ばね(23、43、103)の全長は150−650μmであり、前記板ばねの2つの脚(25、35)の幅wは30−100μmであり、これらの脚(25、35)の各々は、音叉(21、31、41、91)のピン(46、106)に取付けられる、請求項15に記載の作動および検知装置。
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