JP2004527244A - 受容体型キナーゼ阻害剤の活性のインビボ測定方法 - Google Patents
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Abstract
キナーゼ受容体活性の化合物阻害を測定するインビボ方法を開示する。KDRキナーゼのインビボ阻害と阻害剤の循環血液及び血漿濃度の直接相関を実証する実施例を記載する。これらのデータを使用してマウス内皮細胞IC50値等の定量不能なインビトロ測定値を予測検認する。本発明のアッセイにより測定した化合物のインビボ効力は、各阻害剤の安全性、効力及び有効性プロフィルの設定を目的とした後期臨床前動物モデル試験及びヒト臨床試験の投与量と頻度を選択するために利用することができる。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物がキナーゼ受容体活性(例えばFLKファミリーの受容体型チロシンキナーゼのメンバーである、哺乳動物KDR受容体等の受容体型チロシンキナーゼ)を阻害する能力を測定するインビボ方法に関する。これらのインビボアッセイはキナーゼ阻害剤活性と阻害剤の循環血漿又は血液濃度の相関を求める。更に、この方法を利用して特定化合物のインビボIC50を計算し、第1の種と第2の種について分かっているキナーゼ受容体酵素活性と、第1の種については分かっているが、第2の種については分かっていないインビトロIC50測定値の算術相関を検認すると、この第2の種のIC50を正確に導出することができる。本明細書に記載するインビボアッセイにより得られたこのようなデータは、これらに限定するものではないが、潜在的キナーゼ阻害剤の安全性、有効性、投与及び処方プロフィル等のパラメーターを試験することをいずれも目的とした後期臨床前動物試験及び臨床ヒト試験のプロトコールの作成に有用である。
【背景技術】
【0002】
チロシンキナーゼはアデノシン三リン酸の末端リン酸がタンパク質基質のチロシン残基に転移するのを触媒する類の酵素である。チロシンキナーゼは基質リン酸化により多数の細胞機能のシグナル伝達に重要な役割を果たすと考えられ、細胞増殖、発癌及び細胞分化における重要な因子であることが示されている。チロシンキナーゼは受容体型と非受容体型に分類することができる。受容体型チロシンキナーゼは、一般に細胞外部分と膜貫通部分と細胞内部分を有する。一方、非受容体型チロシンキナーゼは、リガンドに結合するとそれ自体はキナーゼ活性をもたない受容体の細胞内部分に細胞内キナーゼを結合させる膜受容体の例もあるが、一般には完全に細胞内である。受容体型チロシンキナーゼは種々の生体活性をもつ多数の膜貫通受容体から構成される。実際に、受容体型チロシンキナーゼには約20種のサブファミリーが同定されている。チロシンキナーゼサブファミリーの1つであるHERサブファミリーはEFGR、HER2、HER3及びHER4から構成される。この受容体サブファミリーのリガンドとしては上皮増殖因子、TGF−α、アンフィレグリン、HB−EGF、ベータセルリン及びヘレグリンが挙げられる。これらの受容体型チロシンキナーゼの別のサブファミリーはインスリンサブファミリーであり、INS−R、IGF−IR及びIR−Rを含む。次に、キナーゼインサートドメイン受容体(KDR)とfms様チロシンキナーゼ−1(Flt−1)とfms様チロシンキナーゼ−4(Flt−4)から構成されるFLKファミリーがある。FLK受容体ファミリーは両者の類似性により一般にPDGF受容体ファミリーと同類とみなされている。受容体型チロシンキナーゼの詳細な説明については、参考資料として本明細書に組込むPlowmanら,1994,DN&P7(6):334−339を参照されたい。
【0003】
非受容体型のチロシンキナーゼもSrc、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack及びLIMX等の多数のサブファミリーから構成される。これらのサブファミリーは各々更に種々の受容体に細分される。例えば、Srcサブファミリーは最大サブファミリーのひとつであり、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、Fgr及びYrkを含む。Srcサブファミリーの酵素は発癌に結びつけられている。非受容体チロシンキナーゼの更に詳細な説明については、参考資料として本明細書に組込むBolen,1993,Oncogene,8:2025−2031を参照されたい。受容体型及び非受容体型のいずれのチロシンキナーゼも癌、乾癬及び超免疫反応をはじめとする多数の疾病状態に至る細胞シグナル伝達経路に関与している。
【0004】
血管増殖即ち血管形成は正常な胚及び胎児発生プロセスである。これは血管内皮細胞の走化性及び有糸分裂を促進する分泌タンパク質である血管内皮増殖因子(VEGF)により主に誘導されると思われ、血管増殖に至るイベントのカスケードを誘導することができる。血管内皮細胞は血管系全体に管腔非血栓性単層を形成する。マイトジェンはこれらの細胞に媒介される胚血管発生、増殖、修復及び血管形成を促進する。血管形成は内皮細胞が位置する基底膜がタンパク分解した後にこれらの細胞が走化性移動と有糸分裂を生じ、新生毛細血管の持続的増殖を維持する現象である。血管内皮細胞に選択的なマイトジェンの1類は、血管内皮増殖因子(VEGF又はVEGF−Aと言う)とその相同体である胎盤増殖因子(PlGF)、VEGF−B及びVEGF−Cを含む。VEGF遺伝子ノックアウトマウスはホモ接合マウスのほうが程度は高いが、驚くべきことにヘテロ接合も胚性致死となり、血管新生が低下する。VEGFヘテロ接合遺伝子ノックアウトの異常な致死表現型は正常胚発生におけるVEGF濃度の重要性を示すものであると考えられる。他方、健康な成体では脈管構造は安定しており、組織治癒と発情周期に関連する血管形成以外に細胞交替は殆どない。
【0005】
異常血管形成は血管新生眼疾患、炎症及び広範な癌を含む数種の疾病に関連している。どの癌遺伝子の突然変異が形質転換を生じるかに関係なく、固体腫瘍は血管系が栄養と代謝副生物の拡散により制限される小結節を越えて膨張することを必要とする。腫瘍細胞はまず既存宿主毛細血管に定着するが、その増殖に伴ってこれらの既存正常血管を破壊する結果、低酸素症を生じる。更に腫瘍が増殖するには、新たな宿主血管の内植による血管新生(腫瘍血管形成と言う)が必要である。腫瘍は血管内皮細胞の増殖因子を分泌することによりその血管新生を誘導する。腫瘍血管形成を支援すると思われるこのような因子の主要なものはVEGFである。
【0006】
VEGFは血管内皮細胞により発現される2種の膜貫通チロシンキナーゼ関連受容体Flt−1(VEGFR−1)及びKDR(Flk−1/VEGFR−2)に高親和性で結合する。更に、Flt−1はマクロファージを含む種々の他の型にも見出され、これらの細胞で走化性反応を誘導するが、有糸分裂誘発反応は誘導しない。トランスフェクション実験によると、Flt−1は血管内皮細胞で実質的走化性も有糸分裂誘発も媒介しない。他方、胚致死性ホモ接合flt−1遺伝子ノックアウトマウスは血管組織破壊を示す。極初期胚発生中の血管芽細胞内皮前駆細胞分化への作用が強化されて血管パターン形成が変化し、この組織破壊に至ると思われる。Flt−1はVEGFによる抗原提示樹状細胞分化の阻害にも関与している。完全に分化した血管内皮細胞でFlt−1が有糸分裂誘発機能をもたないことは強力な血管内皮細胞マイトジェンでも血管形成因子でもないと思われる他の相同Flt−1特異的VEGFファミリーメンバー(PlGF、VEGF−B)との結合に一致している。VEGF−BはFlt−1を介して作用し、血管内皮細胞でウロキナーゼとプラスミノーゲンアクチベーター阻害剤の発現を増すと共に平滑筋細胞でメタロプロテイナーゼの発現を増すことが報告されている。他方、トランスフェクション実験によると、血管内皮細胞とその前駆細胞により選択的に発現されるKDRは内皮細胞有糸分裂誘発及び走化性反応を媒介する。更に、胚致死性ホモ接合KDR遺伝子ノックアウトマウスは本質的に血管内皮細胞と血管を欠失している。
【0007】
HIV−1 tatとorfウイルス由来VEGFホモログVEGF−Eの2種のウイルスタンパク質はKDRに結合してこれを活性化し、血管内皮細胞の有糸分裂を誘発し、血管形成を促進する。tatはFlt−1にも結合できるが、VEGF−Eはできない。他の2種のVEGFファミリーメンバーであるVEGF−CとVEGF−Dはリンパ内皮細胞上で主に発現される受容体ホモログであるFlt−4(VEGFR−3)に選択的に結合してこれを活性化し、リンパ系の増殖(リンパ血管形成と言う)を誘導することができる。しかし、インビボで存在することが認められている長いN及びC末端伸長部をタンパク分解除去すると、VEGF−C及びDもKDRに対する高親和性を獲得し、血管形成血管内皮細胞マイトジェンとなる。従って、受容体トランスフェクション及び遺伝子ノックアウト実験に加え、リガンド結合と血管内皮細胞有糸分裂誘発と血管形成の間の相関によると、KDR受容体の活性化はVEGFにより誘導される血管形成カスケードを開始するのに必要且つ十分であるとも思われる。
【0008】
二量体VEGFがKDRの細胞外領域に結合すると受容体二量化を促進して細胞内チロシンキナーゼドメインを相互に結合し、数個の受容体チロシン残基のリン酸化を促進するが、これらの残基の少なくとも一部は有糸分裂誘発シグナル伝達に不可欠である。自己リン酸化と言うことが多いが、チロシン残基の一部又は全部は一方のチロシン残基がその二量体パートナーに作用することによりリン酸転移すると思われる。触媒部位の近傍の「活性化ループ」上の2個のチロシン残基(1054と1059)がリン酸化すると、ATPとペプチド基質に対するKM値が低下し、kcatにより表されるような固有触媒効率に及ぼす影響はあったとしてもごく僅かなので有効触媒活性が増す。KDR酵素活性化のメカニズムは、そのチロシン残基のリン酸化前に活性化ループが基質結合領域を部分的に塞いでいる他のキナーゼで予想されるメカニズムに似ていると思われる。活性化ループ内のチロシン残基が自己リン酸化すると、そのコンホメーションが変化し、基質結合部位に接近し易くなる。シグナル伝達タンパク質はKDR上で相互に結合して機能的活性化複合体を形成するが、(細胞内傍膜領域、大きい「インサート」ループ及びC末端領域に存在するものを含む)数個の他のチロシン残基がリン酸化するとシグナル伝達タンパク質の結合部位を生成することができる。KDRは活性化されるとシグナル伝達カスケードを開始し、内部移行して最終的に分解される。VEGF/KDR系の阻害は数種の動物モデルでVEGF依存性腫瘍血管形成及び増殖を阻害することが示されている。有糸分裂誘発及び血管形成能のあるVEGF受容体として、KDRはVEGF依存性腫瘍血管形成及び増殖を阻害する特に有望なターゲットである。
【0009】
網膜の血管増殖は視覚変性を生じ、失明に至る。VEGFは糖尿病性網膜症で網膜内又は網膜近傍で生じる血管形成活性の大半を占める。眼内VEGF mRNA及びタンパク質は霊長類の網膜静脈閉塞やマウスのpO2値低下等の状態により増加し、血管新生に至る。抗VEGFモノクローナル抗体又はVEGF受容体免疫融合体を眼内注入すると、齧歯類及び霊長類モデルで眼血管新生が阻害される。ヒト糖尿病性網膜症におけるVEGFの誘導原因に関係なく、眼内VEGFの阻害は疾病を治療するのに有用である。
【0010】
VEGFの発現は壊死領域に隣接する動物及びヒト腫瘍の低酸素領域でも有意に増加している。モノクローナル及びポリクローナル抗VEGF抗体はヌードマウスでヒト腫瘍の増殖を阻害する。これらの同一腫瘍細胞は培養液中でもVEGFを発現し続けるが、抗体を加えても血管内皮細胞自体以外の細胞に由来する腫瘍細胞の全部ではないとしても殆どの分裂速度は低下しない。即ち、腫瘍由来VEGFは大半の腫瘍に対して自己分泌マイトジェン因子として機能しない。従って、VEGFはその傍分泌血管内皮細胞走化性及び有糸分裂誘発活性を介して血管形成を促進することによりインビボ腫瘍増殖に寄与する。また、これらのモノクローナル抗体は一般には十分に血管新生していないヒト直腸癌の増殖を無胸腺マウスで阻害し、接種細胞に起因する腫瘍数を減らす。膜アンカーを保持しながら細胞質チロシンキナーゼドメインを除去するように切断したマウスKDR受容体ホモログであるFlt−1のVEGF結合構築物をウイルスで発現させると、移植可能なグリオブラストーマはマウスで殆ど増殖しなくなるが、これは膜に広がる内皮細胞VEGF受容体とのヘテロ二量体形成の優性ネガティブメカニズムによるものと思われる。胚幹細胞は通常はヌードマウスで固体腫瘍として増殖するが、VEGF対立遺伝子を両方とも除去すると検出可能な腫瘍を産生しない。これらのデータをまとめると、VEGFは固体腫瘍の増殖に関与していると思われる。従って、血管形成能のあるVEGF受容体KDRは病的新血管形成に関与しており、この受容体の阻害剤は新血管形成が病状全体の一部である疾病、例えば糖尿病性網膜血管新生、各種癌及び各種炎症(例えば関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎及び超過敏反応)の治療に有用である。
【0011】
Mukhopadhyayら,1998,Cancer Res.58:1278−1284はVEGFの腹腔内注射による腸間膜KDRリン酸化の刺激を示している。
【0012】
Kasaharaら,2000,J.Clin.Invest.106:1311−1319はVEGFにより誘導したリン酸化がSugen KDRキナーゼ阻害剤SU5416により阻害されることを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
化合物が受容体活性を阻害する能力、例えば化合物がVEGFにより誘導したKDRの活性を阻害する能力を正確に測定するインビボアッセイが得られるならば有利であろう。本発明は阻害剤の循環血漿濃度の関数としてKDRキナーゼ阻害を測定できるアッセイを開示することによりこの必要に対処し、これを満たすものである。本明細書に開示するアッセイはKDRキナーゼ活性の阻害を循環血漿中の阻害剤濃度、抗血管形成活性及び腫瘍異種移植片増殖の阻害と直接相関させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこれらに限定するものではないが、化合物が受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ及び/又はセリン/トレオニン受容体キナーゼ等のキナーゼ受容体活性を阻害する能力を測定するインビボ方法に関する。本明細書に開示する方法は1種以上の試験化合物が受容体型チロシンキナーゼの活性を阻害する能力を測定するのに特に有用である。これらのアッセイは試験化合物が特定受容体又は受容体型と相互作用する能力と、受容体と試験化合物の結合が測定可能な生体又は生理イベントに及ぼす効果を直接インビボ相関させることができる。
【0015】
例えば、本発明の一側面は阻害剤の循環血漿濃度の関数としてKDRキナーゼ阻害を測定するインビボアッセイに関する。血管内皮増殖因子(VEGF)受容体KDRはこの増殖因子の内皮細胞有糸分裂誘発及び血管形成活性を媒介する。VEGFとKDRの結合は受容体二量化を誘導する。その結果、細胞内チロシンキナーゼドメインはチロシンリン酸化により活性化され、基質との結合と下流シグナル伝達タンパク質との複合化を増す。従って、本発明のこの側面はVEGFにより誘導したKDRチロシンリン酸化のKDRキナーゼ阻害剤によるインビボ阻害をモニターするアッセイに関する。このアッセイは血漿中の化合物濃度の関数としてKDRチロシン自己リン酸化の阻害を測定することによりインビボIC50値を測定することができる。
【0016】
本発明のアッセイにより測定した化合物のインビボ効力は各阻害剤の安全性、効力及び有効性プロフィルの設定を目的とした後期臨床前動物モデル試験及び/又はヒト臨床試験の投与量と頻度を選択するために利用することができる。例えば、本発明の1特定側面は各種KDR阻害剤のIC50値の測定に関する。このマウスKDR阻害アッセイにより測定した化合物のインビボ効力は抗血管形成及び腫瘍異種移植片増殖阻害効力試験の投与量と頻度を選択するために利用することができる。
【0017】
本明細書に開示するアッセイの1つの利点は阻害剤の循環血漿濃度の関数として受容体キナーゼ阻害(非限定的な例として例えばKDRキナーゼ阻害)を測定する点にある。これは受容体活性の阻害と循環血漿阻害剤濃度を直接相関できるだけでなく、標的疾病又は疾患に関連する各動物モデルで投与量及び頻度の各種課題を検討するのにも有用である。
【0018】
従って、本発明はKDRキナーゼ阻害剤等のキナーゼ受容体阻害剤化合物のインビボ効力を測定するアッセイに関する。血漿及び血液濃度等の局所阻害剤濃度に阻害を直接関係付けることができる。用量レベル、頻度、投与経路及び投与後時間の関数として阻害をモニターすることができる。本明細書ではVEGF/KDR型アッセイについてアッセイを例証するが、更に他のアッセイにも応用される。活性化すると化学修飾される任意受容体(例えば受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ及び/又はセリン/トレオニン受容体等の他のキナーゼ)を含むKDR以外のタンパク質の阻害剤をモニターするように例証アッセイを改変してもよい。本明細書に開示するマウス肺組織だけでなく種々の細胞型の組織上又は組織内に十分な量の受容体を含む任意組織を含め、動物モデルの複数組織に適合するようにアッセイを改変してもよい。本発明のアッセイは他の哺乳動物種(非限定的な例としてラット、イヌ、ウサギ、非ヒト霊長類及びヒト)にも適用することができる。
【0019】
本発明は第1の種と第2の種について分かっているキナーゼ受容体酵素活性と、第1の種については分かっているが、第2の種については分かっていないインビトロ細胞効力IC50測定値の算術相関を利用することにより、第2の種における特定化合物のインビボIC50を計算する方法にも関し、第2の種のIC50を予測できるインビトロアッセイが存在しないとしてもこの第2の種のインビボIC50を正確に導出することができる。換言するならば、本明細書に開示する方法が開発される以前には、当業者は考えられる4変数のうちの3個のインビトロデータからこのような計算を利用するのは容易でなかった。本開示は特定化合物のインビボIC50の実測値(即ち実施例1に記載するように直接測定した値)と4変数のうちの3個を使用して求めた未知変数(即ち第2の種、例えばマウスの細胞IC50)の計算値の優れた相関を示す。本開示から当業者に明らかなように、必要に応じて(例えばマウスEC細胞を容易に利用できない場合に)所定のインビトロアッセイを実施せずに同一種のインビボIC50(例えばマウスEC細胞をインビトロアッセイに容易に利用できないマウスモデルのIC50)を確実に予測できる。
【0020】
従って、本明細書に例証するように、本発明はキナーゼ受容体(例えばKDR)のインビボ阻害を定量的に測定するアッセイとして、内皮細胞における阻害剤のインビトロ阻害効力にKDR種間の格差を考慮した比率を掛けた値とこのデータを相関させることが可能アッセイに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明はこれらに限定するものではないが、受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ及び/又はセリン/トレオニンキナーゼ等の特定キナーゼ受容体のリガンドにより誘導される活性(例えばキナーゼリン酸化)のインビボ阻害レベルをモニターする方法に関する。本明細書に開示する方法は1種以上の試験化合物が受容体型チロシンキナーゼの活性を阻害する能力を測定するのに特に有用である。本明細書では試験KDRキナーゼ阻害剤がVEGFにより誘導したマウス肺KDRのチロシンリン酸化を阻害するのをモニターするアッセイとして本発明を例証する。本アッセイを利用し、試験阻害剤の血漿濃度の関数としてKDRチロシンリン酸化の阻害を測定することによりインビボIC50値が得られる。即ち、本発明は試験化合物/阻害剤のインビボ効力を測定するアッセイに関する。このデータは安全性評価試験における特定試験化合物の投与量と投与頻度の初期選択や、各キナーゼ受容体を阻害できる特定試験化合物についてヒト臨床試験の投与量及び頻度レベルを決定するのに特に有用である。例えば、本明細書に示すように、特定KDRキナーゼ阻害剤のインビボ効力(即ちIC50値)の計算を使用すると、血管形成及び腫瘍異種移植片増殖阻害試験に用いる阻害化合物の投与量と頻度を決定することができ、更にマウスで腫瘍内皮細胞KDRリン酸化に及ぼす阻害剤の効果とレベルをモニターすることもできる。従って、本発明は当業者がKDRキナーゼ阻害剤によるインビボKDR阻害をモニターするために有用な方法を利用できなかったという薬剤開発プロトコールの特定欠陥を補うものである。本明細書に示し、マウス肺KDR型アッセイを使用して例証するように、KDR阻害剤の循環血漿濃度の関数としてKDR阻害剤によるKDRのインビボ阻害を測定することが可能になった。これらのデータを使用し、更にKDRキナーゼ活性の阻害を血漿阻害剤濃度、抗血管形成活性及び腫瘍異種移植片増殖の阻害と直接相関させることができる。
【0022】
前項に記載したように、本発明は必ずしもこれらに限定されないが、受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ及び/又はセリン/トレオニン受容体キナーゼ等の種々のキナーゼ受容体に適用できると考えられる。選択した特定キナーゼ受容体を屠殺又は試験動物からの生検による回収に適した組織での試験に適応させることは当業者が容易になし得る範囲のことである。当業者は被験キナーゼ受容体に応じて回収又は生検後の分析に適合するように数種の組織から選択することができる。本明細書に記載するように回収した組織を更に分析し、当該特定試験動物における血漿濃度との相関として阻害剤結合量を測定してもよい。即ち、複数動物で受容体阻害を各種阻害剤濃度に比較すると、特定試験阻害剤化合物のインビボ効力を直接決定することができる。
【0023】
本発明はキナーゼ受容体阻害剤の効果を試験するのに適するとみなされる任意数の動物モデル系で実施することができる。このような動物モデルは、キナーゼ阻害剤がリガンド/受容体相互作用のみならずリガンド−受容体相互作用の妨害に関連する生体反応に及ぼす効果を測定するアッセイに適したものとする。有用な動物モデルの例としてはマウスやラット等の齧歯類、イヌ、ウサギ、モルモット及び非ヒト霊長類(非限定的な例としてアカゲザル、チンパンジー及びヒヒ)が挙げられるが、これらに限定されない。ヒト対象で特定化合物のIC50を測定するために本発明のインビボアッセイを適用することも本発明の範囲に含まれる。無論これに限定するものではないが、1例として本発明のアッセイはヒト対象に適用することができ、その場合には例えば白血病患者からの骨髄生検や他の型の腫瘍生検等のヒト組織を抽出するか、又は場合により末梢血単核球(PMBC)試料を利用する。更に、特定キナーゼ受容体(例えばKDR)の阻害をエクスビボ測定することや、量が多く、化合物阻害の直接比較が可能な相同キナーゼ受容体(例えばターゲットKDR受容体やPDGFR−α及びPDGFR−β受容体に比較してFlt−1、Flt−4、c−kit、c−fms又はFlt−3)を測定することも可能になる。後者ストラテジーはこれらの量の多い他の受容体の1種に対するその効力に基づいて例えばKDRに対する効力を推定することができる。上述のように、骨髄細胞やPMBC等のキナーゼターゲットの場合には、患者に各阻害剤を投与した後、この組織を患者から抽出してアッセイをエクスビボで完了し、ヒト患者にリガンドを直接投与しないようにする。
【0024】
本アッセイで使用する阻害剤化合物は特に各阻害剤のヒト投与を最終目的として潜在的に哺乳動物で治療活性をもつ任意化合物とすることができる。阻害剤化合物の種類としては非タンパク性有機又は無機分子、ペプチド、タンパク質、DNAやRNA等の核酸分子(特にキナーゼ受容体結合及び/又は活性化を阻害し得る1本鎖アンチセンス分子)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。このような核酸又は対応する発現タンパク質もしくはその部分はFlt−1又はKDRの可溶形を含み、例えば参考資料として本明細書に組込む米国特許第5,712,380号及び5,861,484号に開示されている形態が挙げられるが、これらに限定されない。FLKファミリーからの受容体型キナーゼの好適可溶形としては米国特許第5,712,380号及び5,861,484号の配列番号6に開示されているsFLT−1タンパク質が挙げられる。本明細書に例証するアッセイはKDRキナーゼ阻害剤として既に立証されている種々の小有機分子を利用している。
【0025】
血管内皮増殖因子(VEGF)受容体KDRはこの増殖因子の内皮細胞有糸分裂誘発及び血管形成活性を媒介する。VEGFがKDRに結合すると受容体二量化を誘導する。その結果、細胞内チロシンキナーゼドメインはリン酸化チロシンにより活性化され、基質との結合と下流シグナル伝達タンパク質との複合化を増す。本アッセイはVEGFにより誘導したマウス肺KDRのチロシンリン酸化のKDRキナーゼ阻害剤による阻害をモニターする。本発明の特定態様は投与した試験阻害剤化合物の循環血漿濃度の関数として該化合物によるインビボKDRキナーゼ阻害を測定する方法に関する。本方法を使用し、血漿中の化合物濃度の関数としてKDRチロシン自己リン酸化の阻害を測定することによりインビボIC50値が得られる。本アッセイにより測定した化合物のインビボ効力は血管形成及び腫瘍異種移植片増殖阻害効力試験の投与量と頻度を選択するために使用される。腫瘍内皮細胞KDRリン酸化に及ぼす阻害剤の効果とレベルをマウスでモニターするようにも改変した。
【0026】
本明細書では、マウス試験モデルで種々の公知KDR阻害剤のIC50を計算することにより本発明を例証する。この場合も、本発明のこの特定実施例を他の任意選択受容体で試験してもよいし、有用な他の任意動物モデルで試験してもよい。KDRキナーゼ阻害剤のIC50値を測定するインビボアッセイに関して、特に有用な動物モデルはマウス、ラット及びイヌである。実施例1に示すような化合物1〜6等の任意特定KDR阻害剤を公知腸管内又は腸管外経路でマウスに投与することができ、例えば経口投与(例えば経口強制飼養、舌下投与又は直腸投与)、血流への直接注射(例えば静脈内又は動脈内投与)、又は種々の腸管外経路(例えば腹腔内経路や筋肉内等の皮下経路)、エアゾールによる呼吸器投与、経皮投与(即ちtransdermal、transcutaneous又はpercutaneous)及び目的処方化合物の局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。一般にNu/Nu雌マウスに化合物を数種の用量レベルで投与する。KDRキナーゼ受容体活性のマウス試験における1好適投与形態は経口強制飼養又は腹腔内投与である。投与から各種時間後、一般には1〜24時間後で屠殺5分前にVEGF(ヒトVEGF165等の種々の形態のヒトVEGFや、例えば非限定的な例としてラットVEGF164等の他の形態の哺乳動物VEGF)の尾静脈注射によりKDR受容体のチロシン自己リン酸化を刺激する。血液試料を採取し、LCMSMSにより血漿中の化合物濃度を測定する。肺は静脈系に注射した薬剤が遭遇する最初の主要毛細血管床を含んでおり、ウェスタンブロットによりKDR値の高い組織の1つであると当初に判定されたので肺を摘出し、処理時まで液体窒素で迅速に凍結保存する。凍結組織を計量後に液体窒素中で粉砕し、溶解用緩衝液を組織に加えた後、インキュベーションと遠心分離を行う。清澄化した上清を抗KDR抗体により免疫沈降させる。免疫沈降したKDR−抗体複合体を捕獲し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分画する。分画した免疫複合体を適当な膜にブロットし、抗ホスホチロシン抗体で探索する。抗ホスホチロシン抗体を検出し、公知方法により定量する。その後、ブロットを剥離し、抗KDR抗体で再探索し、KDRバンドを再び検出及び定量する。リン酸化KDR/合計KDRシグナルの比を計算し、VEGFで刺激してビヒクル対照を投与したマウスの百分率として表す。血漿化合物濃度の関数として相対KDRチロシンリン酸化の曲線近似によりIC50を計算する。本明細書に示すように、マウス肺KDRチロシンリン酸化IC50値を測定した数種のKDR阻害剤では、このインビボ効力測定値と培養ヒト内皮細胞有糸分裂誘発アッセイのIC50値にマウス/ヒトKDRキナーゼのインビトロ酵素IC50値の比を掛けた値の間に良好な相関がある。比を掛けたこの値は純培養液として又は培養液でアッセイする安定な細胞系として現在容易に入手できないマウス内皮細胞のIC50の推定値である。マウス内皮細胞IC50計算値は(平均ヒト内皮細胞IC50)×(平均マウスKDR IC50/平均ヒトKDR IC50)として計算する。実施例1に示すように多数のKDR阻害剤化合物でマウス肺IC50KDRキナーゼリン酸化値の計算値と実測値の間の相関が認められる。従って、このようなアッセイは受容体リガンド(哺乳動物VEGF)の添加後に特定キナーゼ受容体(KDR)に対するキナーゼ阻害剤(例えば本明細書に開示する化合物1〜6の1種以上)のインビボ効力を測定するために使用される。阻害は(1)血漿及び血液濃度等の局所阻害剤濃度に直接関連させることができ、(2)投与量レベル、頻度、投与経路及び投与後時間の関数としてモニターすることができる。従って、活性化すると化学修飾される他のタンパク質(例えば本明細書に記載する他のキナーゼ)の阻害剤をアッセイするように、本明細書に例証するようなアッセイの一般例を改変してもよい。肺以外の組織やヒトを含む他の種に適用するように改変してもよい。
【0027】
従って、本発明のアッセイは化合物の用量反応を介してキナーゼ受容体リン酸化(この場合も限定的ではないが、KDRキナーゼリン酸化が挙げられる)をインビボ阻害する阻害剤効力を測定することができる。このデータは各種(例えばマウス、ラット及びイヌ)からのインビボIC50実測値と、インビトロヒト内皮細胞IC50に各種IC50/ヒトKDR酵素IC50の比を掛けた値を相関させるのに特に有用である。換言するならば、アッセイは確認検証を行うので、本発明は更にこのようなインビトロ細胞集団を容易に入手できない種(例えばマウス系)の予測内皮細胞IC50の計算に関する。この算術式に挿入する内皮細胞IC50の測定はKDRキナーゼ活性(とその阻害)を有効に測定する方法として当分野で知られている任意方法により行うことができる。このようなアッセイは(実施例2に示すような)周知内皮細胞マイトジェンアッセイ又はKDRキナーゼリン酸化を直接測定する他の関連アッセイ(例えば非限定的な例として内皮細胞におけるKDRのインビトロ自己リン酸化の測定)を利用できる。このような方法では、阻害剤の存在下に一次ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を培養した後、VEGFを加えてKDRを活性化する。細胞溶解液を回収し、阻害剤結合量を測定分析する。別例では種特異的KDR遺伝子又はそのキナーゼ関連部分をトランスフェクトした細胞系(好ましくはHEK293細胞のように通常KDRを発現しない細胞系)でKDRキナーゼ阻害をインビトロ測定する。このようなアッセイは最終的に試験化合物のKDRリン酸化阻害効果の定量分析によって異なる。換言するならば、内皮細胞有糸分裂誘発又はKDRキナーゼ活性に対するインビトロIC50を測定する種々のアッセイは相互に代替可能であり、同様のIC50濃度を定量できると予想される。これは二量体VEGFリガンドがKDR上の細胞外認識部位に結合して受容体が二量化し、細胞内キナーゼドメインが相互に接近してチロシンリン酸化するからである。KDRの活性化ループ上のチロシン残基がリン酸化すると、ATP及びペプチド基質に対する酵素親和性が増加(即ちKmが低下)し、亜飽和基質濃度で酵素の触媒活性が有効に増加する(Kendallら,1999,J.Biol.Chem.274:6453−6460)。活性化したKDRは更に下流シグナル伝達タンパク質のドッキング部位として機能する他のKDRチロシン残基をリン酸化し、有糸分裂に至るイベントカスケードを開始する。DNA合成によりモニターすると、VEGFにより誘導した血管内皮細胞の有糸分裂誘発はVEGFにより誘導したKDRのチロシンリン酸化の直接結果であり、細胞におけるKDRチロシンリン酸化の阻害もDNA合成のその誘導の阻害に直接関連する。従って、VEGFで刺激した血管内皮細胞では、KDRチロシンリン酸化の初期イベントの阻害又はその結果としてのDNA合成の用量反応アッセイにより同等のKDRキナーゼ阻害剤効力(IC50)を測定することができる。内皮細胞当たりのKDR受容体数は少なく、日常的高スループット用量反応アッセイに使用される96ウェルプレートの各ウェルの小さい表面積では細胞数が限られ、KDRキナーゼチロシンリン酸化の阻害に観察されるよりも信号対雑音比が高いので、内皮細胞DNA合成の阻害を測定することが好ましい。
【0028】
従って、本発明は非ヒト対象における試験化合物の循環濃度の関数として特定キナーゼ受容体活性の阻害を測定するインビボ方法として、(a)試験化合物を非ヒト哺乳動物である試験対象に投与し、(b)試験対象の体内でキナーゼ受容体活性を刺激し、(c)試験対象から血液又は血漿試料を採取し、(d)段階cの試料から試験化合物の濃度を測定し、(e)測定可能な量のキナーゼ受容体を含有する試験対象から組織又は血球試料を採取し、(f)試験化合物を加えなかった段階e)の試料に比較して試料内でリン酸化した受容体の相対比を求め、(g)段階c)で測定した試験化合物の血液又は血漿濃度の関数として試験化合物のキナーゼ受容体リン酸化阻害効果を相関させる方法に関する。
【0029】
本発明は非ヒト対象における特定キナーゼ受容体に対する試験化合物のIC50を測定するインビボ方法として、(a)濃度の異なる複数用量の試験化合物をヒト以外の同一哺乳動物種の複数試験対象に各々1用量ずつ投与し、(b)各試験対象の体内でキナーゼ受容体活性を刺激し、(c)各試験対象から血液又は血漿試料を採取し、(d)段階c)の試料から試験化合物の濃度を測定し、(e)測定可能な量のキナーゼ受容体を含有しており、各試験対象で類似起源に由来する組織試料を試験対象から採取し、(f)段階e)のプラセボ対照に比較して各試料内のリン酸化キナーゼ受容体と非リン酸化キナーゼ受容体の相対比を求め、(g)段階c)で測定した試験化合物の血液又は血漿濃度の関数として各対象の段階e)のキナーゼ受容体リン酸化を相関させ、試験化合物のインビボIC50実測値を得る方法にも関する。
【0030】
インビボKDRリン酸化に基づいて阻害剤活性値を得られるので、本発明は更に第2の種における特定キナーゼ受容体タンパク質に対する試験化合物のインビボIC50の予測方法として、(a)第1の種と第2の種について特定キナーゼ受容体タンパク質のインビトロ酵素IC50を測定し、(b)第1の種のインビトロ細胞反応IC50又はキナーゼ受容体IC50を測定し、(c)段階a)で測定した第1の種のインビトロ酵素IC50と第2の種のインビトロ酵素IC50の比に段階b)で測定したインビトロ細胞反応IC50又はキナーゼ受容体IC50を掛け、第2の種について特定キナーゼ受容体タンパク質に対する試験化合物の予測インビボ細胞反応又はキナーゼ受容体IC50を計算する方法にも関する。
【0031】
上記方法はマウス、ラット及びイヌ属から構成される群から選択される試験対象に特に有用であり、キナーゼ受容体はFLK受容体ファミリーのメンバーであり、更にPDGFR−αやPDGFR−β等の他のキナーゼでもよい。FLK受容体の1好適例はKDRであり、好適組織種はマウス属の試験対象に由来する肺組織である。
【0032】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、これらの実施例により本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0033】
マウスKDR自己リン酸化
材料と方法−本発明の本実施例で試験した化合物の構造は以下の通りである。
【0034】
【化1】
【0035】
一般にNu/Nu雌ヌードマウスに化合物を数種の用量レベルで腹腔内注射又は経口強制飼養により投与する。投与から各種時間後、一般には1〜24時間後で屠殺5分前にヒトVEGF165の尾静脈注射によりKDR受容体のチロシンリン酸化を刺激する。血液試料を採取し、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LCMSMS)により血漿化合物濃度を測定する。肺は静脈系に注射した薬剤が遭遇する最初の主要毛細血管床を含んでおり、ウェスタンブロットによりKDR値の高い組織の1つであると当初に判定されたので肺を摘出し、処理時まで液体窒素で迅速に凍結保存する。凍結組織を計量後に液体窒素中で粉砕する。溶解用緩衝液(20mM HEPES,pH7.5,150mM NaCl,1%Triton X−100,300mM過バナジン酸塩,50mM NaF,1mMミクロシスチン−LRにプロテイナーゼインヒビターカクテルを添加)を組織に4℃で2時間加える。次に溶解液を14,000rpmで10分間4℃で遠心分離し、予め清澄化した上清を抗KDR抗体[SC−504,Santa Cruz Biotechnology]により免疫沈降させる。免疫沈降したKDR−抗体複合体をプロテインA−セファロースCL4Bビーズで捕獲し、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分画する。分画した免疫複合体をPVDF膜にブロットし、抗ホスホチロシン抗体[#05−321,Upstate Biotechnology]で探索し、酵素化学発光[RPN2109,Amersham Pharmacia Biotech.]により検出し、Molecular Dynamicsデンシトメーターで定量する。その後、免疫ブロットを剥離し、抗KDR抗体[SC−6251,Santa Cruz Biotechnology]で再探索し、KDRバンドを上記と同様に検出及び定量する。リン酸化KDR/合計KDRシグナルの比を計算し、VEGFで刺激してビヒクル対照を投与したマウスの百分率として表す。血漿化合物濃度の関数として相対KDRチロシンリン酸化の曲線近似によりIC50を計算する。
【0036】
結果−化合物1は図1に示すようにVEGFで刺激したマウス肺KDR自己リン酸化を用量依存的に阻害し、IC50値は130nMである。IC50値を測定した数種のKDRキナーゼ阻害剤では、このインビボ効力測定値と培養ヒト内皮細胞有糸分裂誘発アッセイ(ECMA)のIC50値にマウス/ヒトKDRキナーゼのインビトロ酵素IC50値の比を掛けた値の間に良好な相関がある。ECMAに比を掛けたこの値は純培養液として又は培養液でアッセイする安定な細胞系として入手できないマウス内皮細胞のIC50の推定値である。化合物1では、マウス内皮細胞IC50計算値=(平均ECMA)×(平均マウスKDR IC50/平均ヒトKDR IC50)=18.0nM×(24nM/3.3nM)=130nMである。図2に示すように、図2で試験した数種の異なるコア構造を示すこの化合物群ではIC50の計算値と実測値の間に良好な相関がある。この相関を得るには、ECMA細胞型アッセイに固有のもの以外にタンパク結合を補正する必要がない。この値はヒト内皮細胞有糸分裂誘発IC50にマウス/ヒトKDRキナーゼ酵素阻害IC50値の比を掛けることにより計算した130nM IC50に良好に一致している。本実施例でアッセイした化合物群ではIC50の実測値と計算値が良好に一致したので、対応するKDRキナーゼ酵素活性のIC50値を使用して同様のスケーリングアルゴリズムにより他の種のインビボKDRリン酸化IC50値も計算できると考えられる。従って、化合物1をヒトの循環血漿に直接暴露した場合の内皮細胞IC50値はインビトロヒト内皮細胞有糸分裂誘発アッセイ及び/又は培養ヒト血管内皮細胞もしくはKDRを発現するように安定的にトランスフェクトした培養ヒト胚性腎(HEK293)細胞系でKDRリン酸化を直接測定するアッセイにより得られる範囲に対応すると考えられる。
【実施例2】
【0037】
インビトロヒト内皮細胞有糸分裂誘発アッセイ(ECMA)
方法−初期世代ヒト血管内皮細胞(HUVEC)をアッセイ培地(DMEM+10%ウシ胎仔血清)0.1ml中、細胞密度3.5×103個/ウェルで96ウェル組織培養プレートに播種する。5%CO2を含む加湿雰囲気中、37℃で細胞増殖を停止する。24時間後にビヒクル又は試験化合物を加えた新鮮なアッセイ培地0.1mlに培地を交換する。試験化合物と対照化合物とビヒクル対照の各希釈液を3組ずつアッセイする。試験化合物は100%DMSOに溶かし、全希釈系列で可溶性に維持するように連続希釈する。次に各濃度の阻害剤をアッセイ培地(最終DMSO濃度0.25%)に400倍に希釈し、このアッセイ培地0.1mlで各ウェルの消費済み培地を交換する。連続週アッセイで使用する強力化合物標準を内部陽性対照として平行用量反応アッセイを実施する。化合物と共に2時間プレインキュベーション後に50ng/ml VEGFで細胞を完全に刺激する。非刺激対照群にはアッセイ培地のみを加える。24時間後に[3H]チミジンを最終濃度0.8μCi/ウェルで加える。更に72時間インキュベーション後にアッセイ培地を除去し、細胞を洗浄し、トリプシン処理し、96ウェル濾過プレートで採取する。シンチレーションカクテルを各ウェルに加え、細胞関連放射能をMicro Beta液体シンチレーションカウンターで測定する。3個ずつのウェル各組の平均cpm値を求め、VEGFも阻害剤も加えずに0.25%DMSOビヒクル対照培地で処理したHUVECを含むウェルからの平均バックグラウンドカウントを差し引くことにより補正する。完全に刺激した場合の応答と刺激しない場合の応答の差の百分率としてVEGF誘導DNA合成の化合物阻害を表す。
【0038】
結果−VEGFで刺激した場合と刺激しない場合のHUVECにおける化合物1の用量反応アッセイを図3に示す。図3は化合物1の濃度の関数として[3H]チミジン取込みとしてプロットした応答を示す。化合物1をECMAで用量の関数として5回アッセイし、18.0nMの平均IC50値を得た。
【0039】
本発明は本明細書に記載する特定態様により範囲を限定しない。実際に、本明細書に記載する以外に本発明の種々の変形が上記記載から当業者に自明である。このような変形は本明細書に記載するようなインビトロIC50値の計算方法に関するものでもよい。これらの可能な変形も特許請求の範囲に含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】阻害剤を投与した各動物で化合物1の対応する血漿濃度の関数としてプロットし、決定した化合物1のインビボIC50を示す。この場合、ビヒクル対照を投与した動物のKDRリン酸化を100%とし、阻害剤を投与した動物のKDRチロシンリン酸化を百分率で表す。
【図2】(実施例1に記載した)インビボアッセイでアッセイした化合物1〜6のKDRチロシンリン酸化IC50値の計算値と実測値の相関を示す。
【図3】VEGFで刺激した場合と刺激しない場合の阻害剤用量反応アッセイの代表的インビトロ内皮細胞マイトジェンアッセイプロットを化合物1について示す。
【0001】
本発明は化合物がキナーゼ受容体活性(例えばFLKファミリーの受容体型チロシンキナーゼのメンバーである、哺乳動物KDR受容体等の受容体型チロシンキナーゼ)を阻害する能力を測定するインビボ方法に関する。これらのインビボアッセイはキナーゼ阻害剤活性と阻害剤の循環血漿又は血液濃度の相関を求める。更に、この方法を利用して特定化合物のインビボIC50を計算し、第1の種と第2の種について分かっているキナーゼ受容体酵素活性と、第1の種については分かっているが、第2の種については分かっていないインビトロIC50測定値の算術相関を検認すると、この第2の種のIC50を正確に導出することができる。本明細書に記載するインビボアッセイにより得られたこのようなデータは、これらに限定するものではないが、潜在的キナーゼ阻害剤の安全性、有効性、投与及び処方プロフィル等のパラメーターを試験することをいずれも目的とした後期臨床前動物試験及び臨床ヒト試験のプロトコールの作成に有用である。
【背景技術】
【0002】
チロシンキナーゼはアデノシン三リン酸の末端リン酸がタンパク質基質のチロシン残基に転移するのを触媒する類の酵素である。チロシンキナーゼは基質リン酸化により多数の細胞機能のシグナル伝達に重要な役割を果たすと考えられ、細胞増殖、発癌及び細胞分化における重要な因子であることが示されている。チロシンキナーゼは受容体型と非受容体型に分類することができる。受容体型チロシンキナーゼは、一般に細胞外部分と膜貫通部分と細胞内部分を有する。一方、非受容体型チロシンキナーゼは、リガンドに結合するとそれ自体はキナーゼ活性をもたない受容体の細胞内部分に細胞内キナーゼを結合させる膜受容体の例もあるが、一般には完全に細胞内である。受容体型チロシンキナーゼは種々の生体活性をもつ多数の膜貫通受容体から構成される。実際に、受容体型チロシンキナーゼには約20種のサブファミリーが同定されている。チロシンキナーゼサブファミリーの1つであるHERサブファミリーはEFGR、HER2、HER3及びHER4から構成される。この受容体サブファミリーのリガンドとしては上皮増殖因子、TGF−α、アンフィレグリン、HB−EGF、ベータセルリン及びヘレグリンが挙げられる。これらの受容体型チロシンキナーゼの別のサブファミリーはインスリンサブファミリーであり、INS−R、IGF−IR及びIR−Rを含む。次に、キナーゼインサートドメイン受容体(KDR)とfms様チロシンキナーゼ−1(Flt−1)とfms様チロシンキナーゼ−4(Flt−4)から構成されるFLKファミリーがある。FLK受容体ファミリーは両者の類似性により一般にPDGF受容体ファミリーと同類とみなされている。受容体型チロシンキナーゼの詳細な説明については、参考資料として本明細書に組込むPlowmanら,1994,DN&P7(6):334−339を参照されたい。
【0003】
非受容体型のチロシンキナーゼもSrc、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack及びLIMX等の多数のサブファミリーから構成される。これらのサブファミリーは各々更に種々の受容体に細分される。例えば、Srcサブファミリーは最大サブファミリーのひとつであり、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、Fgr及びYrkを含む。Srcサブファミリーの酵素は発癌に結びつけられている。非受容体チロシンキナーゼの更に詳細な説明については、参考資料として本明細書に組込むBolen,1993,Oncogene,8:2025−2031を参照されたい。受容体型及び非受容体型のいずれのチロシンキナーゼも癌、乾癬及び超免疫反応をはじめとする多数の疾病状態に至る細胞シグナル伝達経路に関与している。
【0004】
血管増殖即ち血管形成は正常な胚及び胎児発生プロセスである。これは血管内皮細胞の走化性及び有糸分裂を促進する分泌タンパク質である血管内皮増殖因子(VEGF)により主に誘導されると思われ、血管増殖に至るイベントのカスケードを誘導することができる。血管内皮細胞は血管系全体に管腔非血栓性単層を形成する。マイトジェンはこれらの細胞に媒介される胚血管発生、増殖、修復及び血管形成を促進する。血管形成は内皮細胞が位置する基底膜がタンパク分解した後にこれらの細胞が走化性移動と有糸分裂を生じ、新生毛細血管の持続的増殖を維持する現象である。血管内皮細胞に選択的なマイトジェンの1類は、血管内皮増殖因子(VEGF又はVEGF−Aと言う)とその相同体である胎盤増殖因子(PlGF)、VEGF−B及びVEGF−Cを含む。VEGF遺伝子ノックアウトマウスはホモ接合マウスのほうが程度は高いが、驚くべきことにヘテロ接合も胚性致死となり、血管新生が低下する。VEGFヘテロ接合遺伝子ノックアウトの異常な致死表現型は正常胚発生におけるVEGF濃度の重要性を示すものであると考えられる。他方、健康な成体では脈管構造は安定しており、組織治癒と発情周期に関連する血管形成以外に細胞交替は殆どない。
【0005】
異常血管形成は血管新生眼疾患、炎症及び広範な癌を含む数種の疾病に関連している。どの癌遺伝子の突然変異が形質転換を生じるかに関係なく、固体腫瘍は血管系が栄養と代謝副生物の拡散により制限される小結節を越えて膨張することを必要とする。腫瘍細胞はまず既存宿主毛細血管に定着するが、その増殖に伴ってこれらの既存正常血管を破壊する結果、低酸素症を生じる。更に腫瘍が増殖するには、新たな宿主血管の内植による血管新生(腫瘍血管形成と言う)が必要である。腫瘍は血管内皮細胞の増殖因子を分泌することによりその血管新生を誘導する。腫瘍血管形成を支援すると思われるこのような因子の主要なものはVEGFである。
【0006】
VEGFは血管内皮細胞により発現される2種の膜貫通チロシンキナーゼ関連受容体Flt−1(VEGFR−1)及びKDR(Flk−1/VEGFR−2)に高親和性で結合する。更に、Flt−1はマクロファージを含む種々の他の型にも見出され、これらの細胞で走化性反応を誘導するが、有糸分裂誘発反応は誘導しない。トランスフェクション実験によると、Flt−1は血管内皮細胞で実質的走化性も有糸分裂誘発も媒介しない。他方、胚致死性ホモ接合flt−1遺伝子ノックアウトマウスは血管組織破壊を示す。極初期胚発生中の血管芽細胞内皮前駆細胞分化への作用が強化されて血管パターン形成が変化し、この組織破壊に至ると思われる。Flt−1はVEGFによる抗原提示樹状細胞分化の阻害にも関与している。完全に分化した血管内皮細胞でFlt−1が有糸分裂誘発機能をもたないことは強力な血管内皮細胞マイトジェンでも血管形成因子でもないと思われる他の相同Flt−1特異的VEGFファミリーメンバー(PlGF、VEGF−B)との結合に一致している。VEGF−BはFlt−1を介して作用し、血管内皮細胞でウロキナーゼとプラスミノーゲンアクチベーター阻害剤の発現を増すと共に平滑筋細胞でメタロプロテイナーゼの発現を増すことが報告されている。他方、トランスフェクション実験によると、血管内皮細胞とその前駆細胞により選択的に発現されるKDRは内皮細胞有糸分裂誘発及び走化性反応を媒介する。更に、胚致死性ホモ接合KDR遺伝子ノックアウトマウスは本質的に血管内皮細胞と血管を欠失している。
【0007】
HIV−1 tatとorfウイルス由来VEGFホモログVEGF−Eの2種のウイルスタンパク質はKDRに結合してこれを活性化し、血管内皮細胞の有糸分裂を誘発し、血管形成を促進する。tatはFlt−1にも結合できるが、VEGF−Eはできない。他の2種のVEGFファミリーメンバーであるVEGF−CとVEGF−Dはリンパ内皮細胞上で主に発現される受容体ホモログであるFlt−4(VEGFR−3)に選択的に結合してこれを活性化し、リンパ系の増殖(リンパ血管形成と言う)を誘導することができる。しかし、インビボで存在することが認められている長いN及びC末端伸長部をタンパク分解除去すると、VEGF−C及びDもKDRに対する高親和性を獲得し、血管形成血管内皮細胞マイトジェンとなる。従って、受容体トランスフェクション及び遺伝子ノックアウト実験に加え、リガンド結合と血管内皮細胞有糸分裂誘発と血管形成の間の相関によると、KDR受容体の活性化はVEGFにより誘導される血管形成カスケードを開始するのに必要且つ十分であるとも思われる。
【0008】
二量体VEGFがKDRの細胞外領域に結合すると受容体二量化を促進して細胞内チロシンキナーゼドメインを相互に結合し、数個の受容体チロシン残基のリン酸化を促進するが、これらの残基の少なくとも一部は有糸分裂誘発シグナル伝達に不可欠である。自己リン酸化と言うことが多いが、チロシン残基の一部又は全部は一方のチロシン残基がその二量体パートナーに作用することによりリン酸転移すると思われる。触媒部位の近傍の「活性化ループ」上の2個のチロシン残基(1054と1059)がリン酸化すると、ATPとペプチド基質に対するKM値が低下し、kcatにより表されるような固有触媒効率に及ぼす影響はあったとしてもごく僅かなので有効触媒活性が増す。KDR酵素活性化のメカニズムは、そのチロシン残基のリン酸化前に活性化ループが基質結合領域を部分的に塞いでいる他のキナーゼで予想されるメカニズムに似ていると思われる。活性化ループ内のチロシン残基が自己リン酸化すると、そのコンホメーションが変化し、基質結合部位に接近し易くなる。シグナル伝達タンパク質はKDR上で相互に結合して機能的活性化複合体を形成するが、(細胞内傍膜領域、大きい「インサート」ループ及びC末端領域に存在するものを含む)数個の他のチロシン残基がリン酸化するとシグナル伝達タンパク質の結合部位を生成することができる。KDRは活性化されるとシグナル伝達カスケードを開始し、内部移行して最終的に分解される。VEGF/KDR系の阻害は数種の動物モデルでVEGF依存性腫瘍血管形成及び増殖を阻害することが示されている。有糸分裂誘発及び血管形成能のあるVEGF受容体として、KDRはVEGF依存性腫瘍血管形成及び増殖を阻害する特に有望なターゲットである。
【0009】
網膜の血管増殖は視覚変性を生じ、失明に至る。VEGFは糖尿病性網膜症で網膜内又は網膜近傍で生じる血管形成活性の大半を占める。眼内VEGF mRNA及びタンパク質は霊長類の網膜静脈閉塞やマウスのpO2値低下等の状態により増加し、血管新生に至る。抗VEGFモノクローナル抗体又はVEGF受容体免疫融合体を眼内注入すると、齧歯類及び霊長類モデルで眼血管新生が阻害される。ヒト糖尿病性網膜症におけるVEGFの誘導原因に関係なく、眼内VEGFの阻害は疾病を治療するのに有用である。
【0010】
VEGFの発現は壊死領域に隣接する動物及びヒト腫瘍の低酸素領域でも有意に増加している。モノクローナル及びポリクローナル抗VEGF抗体はヌードマウスでヒト腫瘍の増殖を阻害する。これらの同一腫瘍細胞は培養液中でもVEGFを発現し続けるが、抗体を加えても血管内皮細胞自体以外の細胞に由来する腫瘍細胞の全部ではないとしても殆どの分裂速度は低下しない。即ち、腫瘍由来VEGFは大半の腫瘍に対して自己分泌マイトジェン因子として機能しない。従って、VEGFはその傍分泌血管内皮細胞走化性及び有糸分裂誘発活性を介して血管形成を促進することによりインビボ腫瘍増殖に寄与する。また、これらのモノクローナル抗体は一般には十分に血管新生していないヒト直腸癌の増殖を無胸腺マウスで阻害し、接種細胞に起因する腫瘍数を減らす。膜アンカーを保持しながら細胞質チロシンキナーゼドメインを除去するように切断したマウスKDR受容体ホモログであるFlt−1のVEGF結合構築物をウイルスで発現させると、移植可能なグリオブラストーマはマウスで殆ど増殖しなくなるが、これは膜に広がる内皮細胞VEGF受容体とのヘテロ二量体形成の優性ネガティブメカニズムによるものと思われる。胚幹細胞は通常はヌードマウスで固体腫瘍として増殖するが、VEGF対立遺伝子を両方とも除去すると検出可能な腫瘍を産生しない。これらのデータをまとめると、VEGFは固体腫瘍の増殖に関与していると思われる。従って、血管形成能のあるVEGF受容体KDRは病的新血管形成に関与しており、この受容体の阻害剤は新血管形成が病状全体の一部である疾病、例えば糖尿病性網膜血管新生、各種癌及び各種炎症(例えば関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎及び超過敏反応)の治療に有用である。
【0011】
Mukhopadhyayら,1998,Cancer Res.58:1278−1284はVEGFの腹腔内注射による腸間膜KDRリン酸化の刺激を示している。
【0012】
Kasaharaら,2000,J.Clin.Invest.106:1311−1319はVEGFにより誘導したリン酸化がSugen KDRキナーゼ阻害剤SU5416により阻害されることを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
化合物が受容体活性を阻害する能力、例えば化合物がVEGFにより誘導したKDRの活性を阻害する能力を正確に測定するインビボアッセイが得られるならば有利であろう。本発明は阻害剤の循環血漿濃度の関数としてKDRキナーゼ阻害を測定できるアッセイを開示することによりこの必要に対処し、これを満たすものである。本明細書に開示するアッセイはKDRキナーゼ活性の阻害を循環血漿中の阻害剤濃度、抗血管形成活性及び腫瘍異種移植片増殖の阻害と直接相関させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこれらに限定するものではないが、化合物が受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ及び/又はセリン/トレオニン受容体キナーゼ等のキナーゼ受容体活性を阻害する能力を測定するインビボ方法に関する。本明細書に開示する方法は1種以上の試験化合物が受容体型チロシンキナーゼの活性を阻害する能力を測定するのに特に有用である。これらのアッセイは試験化合物が特定受容体又は受容体型と相互作用する能力と、受容体と試験化合物の結合が測定可能な生体又は生理イベントに及ぼす効果を直接インビボ相関させることができる。
【0015】
例えば、本発明の一側面は阻害剤の循環血漿濃度の関数としてKDRキナーゼ阻害を測定するインビボアッセイに関する。血管内皮増殖因子(VEGF)受容体KDRはこの増殖因子の内皮細胞有糸分裂誘発及び血管形成活性を媒介する。VEGFとKDRの結合は受容体二量化を誘導する。その結果、細胞内チロシンキナーゼドメインはチロシンリン酸化により活性化され、基質との結合と下流シグナル伝達タンパク質との複合化を増す。従って、本発明のこの側面はVEGFにより誘導したKDRチロシンリン酸化のKDRキナーゼ阻害剤によるインビボ阻害をモニターするアッセイに関する。このアッセイは血漿中の化合物濃度の関数としてKDRチロシン自己リン酸化の阻害を測定することによりインビボIC50値を測定することができる。
【0016】
本発明のアッセイにより測定した化合物のインビボ効力は各阻害剤の安全性、効力及び有効性プロフィルの設定を目的とした後期臨床前動物モデル試験及び/又はヒト臨床試験の投与量と頻度を選択するために利用することができる。例えば、本発明の1特定側面は各種KDR阻害剤のIC50値の測定に関する。このマウスKDR阻害アッセイにより測定した化合物のインビボ効力は抗血管形成及び腫瘍異種移植片増殖阻害効力試験の投与量と頻度を選択するために利用することができる。
【0017】
本明細書に開示するアッセイの1つの利点は阻害剤の循環血漿濃度の関数として受容体キナーゼ阻害(非限定的な例として例えばKDRキナーゼ阻害)を測定する点にある。これは受容体活性の阻害と循環血漿阻害剤濃度を直接相関できるだけでなく、標的疾病又は疾患に関連する各動物モデルで投与量及び頻度の各種課題を検討するのにも有用である。
【0018】
従って、本発明はKDRキナーゼ阻害剤等のキナーゼ受容体阻害剤化合物のインビボ効力を測定するアッセイに関する。血漿及び血液濃度等の局所阻害剤濃度に阻害を直接関係付けることができる。用量レベル、頻度、投与経路及び投与後時間の関数として阻害をモニターすることができる。本明細書ではVEGF/KDR型アッセイについてアッセイを例証するが、更に他のアッセイにも応用される。活性化すると化学修飾される任意受容体(例えば受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ及び/又はセリン/トレオニン受容体等の他のキナーゼ)を含むKDR以外のタンパク質の阻害剤をモニターするように例証アッセイを改変してもよい。本明細書に開示するマウス肺組織だけでなく種々の細胞型の組織上又は組織内に十分な量の受容体を含む任意組織を含め、動物モデルの複数組織に適合するようにアッセイを改変してもよい。本発明のアッセイは他の哺乳動物種(非限定的な例としてラット、イヌ、ウサギ、非ヒト霊長類及びヒト)にも適用することができる。
【0019】
本発明は第1の種と第2の種について分かっているキナーゼ受容体酵素活性と、第1の種については分かっているが、第2の種については分かっていないインビトロ細胞効力IC50測定値の算術相関を利用することにより、第2の種における特定化合物のインビボIC50を計算する方法にも関し、第2の種のIC50を予測できるインビトロアッセイが存在しないとしてもこの第2の種のインビボIC50を正確に導出することができる。換言するならば、本明細書に開示する方法が開発される以前には、当業者は考えられる4変数のうちの3個のインビトロデータからこのような計算を利用するのは容易でなかった。本開示は特定化合物のインビボIC50の実測値(即ち実施例1に記載するように直接測定した値)と4変数のうちの3個を使用して求めた未知変数(即ち第2の種、例えばマウスの細胞IC50)の計算値の優れた相関を示す。本開示から当業者に明らかなように、必要に応じて(例えばマウスEC細胞を容易に利用できない場合に)所定のインビトロアッセイを実施せずに同一種のインビボIC50(例えばマウスEC細胞をインビトロアッセイに容易に利用できないマウスモデルのIC50)を確実に予測できる。
【0020】
従って、本明細書に例証するように、本発明はキナーゼ受容体(例えばKDR)のインビボ阻害を定量的に測定するアッセイとして、内皮細胞における阻害剤のインビトロ阻害効力にKDR種間の格差を考慮した比率を掛けた値とこのデータを相関させることが可能アッセイに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明はこれらに限定するものではないが、受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ及び/又はセリン/トレオニンキナーゼ等の特定キナーゼ受容体のリガンドにより誘導される活性(例えばキナーゼリン酸化)のインビボ阻害レベルをモニターする方法に関する。本明細書に開示する方法は1種以上の試験化合物が受容体型チロシンキナーゼの活性を阻害する能力を測定するのに特に有用である。本明細書では試験KDRキナーゼ阻害剤がVEGFにより誘導したマウス肺KDRのチロシンリン酸化を阻害するのをモニターするアッセイとして本発明を例証する。本アッセイを利用し、試験阻害剤の血漿濃度の関数としてKDRチロシンリン酸化の阻害を測定することによりインビボIC50値が得られる。即ち、本発明は試験化合物/阻害剤のインビボ効力を測定するアッセイに関する。このデータは安全性評価試験における特定試験化合物の投与量と投与頻度の初期選択や、各キナーゼ受容体を阻害できる特定試験化合物についてヒト臨床試験の投与量及び頻度レベルを決定するのに特に有用である。例えば、本明細書に示すように、特定KDRキナーゼ阻害剤のインビボ効力(即ちIC50値)の計算を使用すると、血管形成及び腫瘍異種移植片増殖阻害試験に用いる阻害化合物の投与量と頻度を決定することができ、更にマウスで腫瘍内皮細胞KDRリン酸化に及ぼす阻害剤の効果とレベルをモニターすることもできる。従って、本発明は当業者がKDRキナーゼ阻害剤によるインビボKDR阻害をモニターするために有用な方法を利用できなかったという薬剤開発プロトコールの特定欠陥を補うものである。本明細書に示し、マウス肺KDR型アッセイを使用して例証するように、KDR阻害剤の循環血漿濃度の関数としてKDR阻害剤によるKDRのインビボ阻害を測定することが可能になった。これらのデータを使用し、更にKDRキナーゼ活性の阻害を血漿阻害剤濃度、抗血管形成活性及び腫瘍異種移植片増殖の阻害と直接相関させることができる。
【0022】
前項に記載したように、本発明は必ずしもこれらに限定されないが、受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ及び/又はセリン/トレオニン受容体キナーゼ等の種々のキナーゼ受容体に適用できると考えられる。選択した特定キナーゼ受容体を屠殺又は試験動物からの生検による回収に適した組織での試験に適応させることは当業者が容易になし得る範囲のことである。当業者は被験キナーゼ受容体に応じて回収又は生検後の分析に適合するように数種の組織から選択することができる。本明細書に記載するように回収した組織を更に分析し、当該特定試験動物における血漿濃度との相関として阻害剤結合量を測定してもよい。即ち、複数動物で受容体阻害を各種阻害剤濃度に比較すると、特定試験阻害剤化合物のインビボ効力を直接決定することができる。
【0023】
本発明はキナーゼ受容体阻害剤の効果を試験するのに適するとみなされる任意数の動物モデル系で実施することができる。このような動物モデルは、キナーゼ阻害剤がリガンド/受容体相互作用のみならずリガンド−受容体相互作用の妨害に関連する生体反応に及ぼす効果を測定するアッセイに適したものとする。有用な動物モデルの例としてはマウスやラット等の齧歯類、イヌ、ウサギ、モルモット及び非ヒト霊長類(非限定的な例としてアカゲザル、チンパンジー及びヒヒ)が挙げられるが、これらに限定されない。ヒト対象で特定化合物のIC50を測定するために本発明のインビボアッセイを適用することも本発明の範囲に含まれる。無論これに限定するものではないが、1例として本発明のアッセイはヒト対象に適用することができ、その場合には例えば白血病患者からの骨髄生検や他の型の腫瘍生検等のヒト組織を抽出するか、又は場合により末梢血単核球(PMBC)試料を利用する。更に、特定キナーゼ受容体(例えばKDR)の阻害をエクスビボ測定することや、量が多く、化合物阻害の直接比較が可能な相同キナーゼ受容体(例えばターゲットKDR受容体やPDGFR−α及びPDGFR−β受容体に比較してFlt−1、Flt−4、c−kit、c−fms又はFlt−3)を測定することも可能になる。後者ストラテジーはこれらの量の多い他の受容体の1種に対するその効力に基づいて例えばKDRに対する効力を推定することができる。上述のように、骨髄細胞やPMBC等のキナーゼターゲットの場合には、患者に各阻害剤を投与した後、この組織を患者から抽出してアッセイをエクスビボで完了し、ヒト患者にリガンドを直接投与しないようにする。
【0024】
本アッセイで使用する阻害剤化合物は特に各阻害剤のヒト投与を最終目的として潜在的に哺乳動物で治療活性をもつ任意化合物とすることができる。阻害剤化合物の種類としては非タンパク性有機又は無機分子、ペプチド、タンパク質、DNAやRNA等の核酸分子(特にキナーゼ受容体結合及び/又は活性化を阻害し得る1本鎖アンチセンス分子)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。このような核酸又は対応する発現タンパク質もしくはその部分はFlt−1又はKDRの可溶形を含み、例えば参考資料として本明細書に組込む米国特許第5,712,380号及び5,861,484号に開示されている形態が挙げられるが、これらに限定されない。FLKファミリーからの受容体型キナーゼの好適可溶形としては米国特許第5,712,380号及び5,861,484号の配列番号6に開示されているsFLT−1タンパク質が挙げられる。本明細書に例証するアッセイはKDRキナーゼ阻害剤として既に立証されている種々の小有機分子を利用している。
【0025】
血管内皮増殖因子(VEGF)受容体KDRはこの増殖因子の内皮細胞有糸分裂誘発及び血管形成活性を媒介する。VEGFがKDRに結合すると受容体二量化を誘導する。その結果、細胞内チロシンキナーゼドメインはリン酸化チロシンにより活性化され、基質との結合と下流シグナル伝達タンパク質との複合化を増す。本アッセイはVEGFにより誘導したマウス肺KDRのチロシンリン酸化のKDRキナーゼ阻害剤による阻害をモニターする。本発明の特定態様は投与した試験阻害剤化合物の循環血漿濃度の関数として該化合物によるインビボKDRキナーゼ阻害を測定する方法に関する。本方法を使用し、血漿中の化合物濃度の関数としてKDRチロシン自己リン酸化の阻害を測定することによりインビボIC50値が得られる。本アッセイにより測定した化合物のインビボ効力は血管形成及び腫瘍異種移植片増殖阻害効力試験の投与量と頻度を選択するために使用される。腫瘍内皮細胞KDRリン酸化に及ぼす阻害剤の効果とレベルをマウスでモニターするようにも改変した。
【0026】
本明細書では、マウス試験モデルで種々の公知KDR阻害剤のIC50を計算することにより本発明を例証する。この場合も、本発明のこの特定実施例を他の任意選択受容体で試験してもよいし、有用な他の任意動物モデルで試験してもよい。KDRキナーゼ阻害剤のIC50値を測定するインビボアッセイに関して、特に有用な動物モデルはマウス、ラット及びイヌである。実施例1に示すような化合物1〜6等の任意特定KDR阻害剤を公知腸管内又は腸管外経路でマウスに投与することができ、例えば経口投与(例えば経口強制飼養、舌下投与又は直腸投与)、血流への直接注射(例えば静脈内又は動脈内投与)、又は種々の腸管外経路(例えば腹腔内経路や筋肉内等の皮下経路)、エアゾールによる呼吸器投与、経皮投与(即ちtransdermal、transcutaneous又はpercutaneous)及び目的処方化合物の局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。一般にNu/Nu雌マウスに化合物を数種の用量レベルで投与する。KDRキナーゼ受容体活性のマウス試験における1好適投与形態は経口強制飼養又は腹腔内投与である。投与から各種時間後、一般には1〜24時間後で屠殺5分前にVEGF(ヒトVEGF165等の種々の形態のヒトVEGFや、例えば非限定的な例としてラットVEGF164等の他の形態の哺乳動物VEGF)の尾静脈注射によりKDR受容体のチロシン自己リン酸化を刺激する。血液試料を採取し、LCMSMSにより血漿中の化合物濃度を測定する。肺は静脈系に注射した薬剤が遭遇する最初の主要毛細血管床を含んでおり、ウェスタンブロットによりKDR値の高い組織の1つであると当初に判定されたので肺を摘出し、処理時まで液体窒素で迅速に凍結保存する。凍結組織を計量後に液体窒素中で粉砕し、溶解用緩衝液を組織に加えた後、インキュベーションと遠心分離を行う。清澄化した上清を抗KDR抗体により免疫沈降させる。免疫沈降したKDR−抗体複合体を捕獲し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分画する。分画した免疫複合体を適当な膜にブロットし、抗ホスホチロシン抗体で探索する。抗ホスホチロシン抗体を検出し、公知方法により定量する。その後、ブロットを剥離し、抗KDR抗体で再探索し、KDRバンドを再び検出及び定量する。リン酸化KDR/合計KDRシグナルの比を計算し、VEGFで刺激してビヒクル対照を投与したマウスの百分率として表す。血漿化合物濃度の関数として相対KDRチロシンリン酸化の曲線近似によりIC50を計算する。本明細書に示すように、マウス肺KDRチロシンリン酸化IC50値を測定した数種のKDR阻害剤では、このインビボ効力測定値と培養ヒト内皮細胞有糸分裂誘発アッセイのIC50値にマウス/ヒトKDRキナーゼのインビトロ酵素IC50値の比を掛けた値の間に良好な相関がある。比を掛けたこの値は純培養液として又は培養液でアッセイする安定な細胞系として現在容易に入手できないマウス内皮細胞のIC50の推定値である。マウス内皮細胞IC50計算値は(平均ヒト内皮細胞IC50)×(平均マウスKDR IC50/平均ヒトKDR IC50)として計算する。実施例1に示すように多数のKDR阻害剤化合物でマウス肺IC50KDRキナーゼリン酸化値の計算値と実測値の間の相関が認められる。従って、このようなアッセイは受容体リガンド(哺乳動物VEGF)の添加後に特定キナーゼ受容体(KDR)に対するキナーゼ阻害剤(例えば本明細書に開示する化合物1〜6の1種以上)のインビボ効力を測定するために使用される。阻害は(1)血漿及び血液濃度等の局所阻害剤濃度に直接関連させることができ、(2)投与量レベル、頻度、投与経路及び投与後時間の関数としてモニターすることができる。従って、活性化すると化学修飾される他のタンパク質(例えば本明細書に記載する他のキナーゼ)の阻害剤をアッセイするように、本明細書に例証するようなアッセイの一般例を改変してもよい。肺以外の組織やヒトを含む他の種に適用するように改変してもよい。
【0027】
従って、本発明のアッセイは化合物の用量反応を介してキナーゼ受容体リン酸化(この場合も限定的ではないが、KDRキナーゼリン酸化が挙げられる)をインビボ阻害する阻害剤効力を測定することができる。このデータは各種(例えばマウス、ラット及びイヌ)からのインビボIC50実測値と、インビトロヒト内皮細胞IC50に各種IC50/ヒトKDR酵素IC50の比を掛けた値を相関させるのに特に有用である。換言するならば、アッセイは確認検証を行うので、本発明は更にこのようなインビトロ細胞集団を容易に入手できない種(例えばマウス系)の予測内皮細胞IC50の計算に関する。この算術式に挿入する内皮細胞IC50の測定はKDRキナーゼ活性(とその阻害)を有効に測定する方法として当分野で知られている任意方法により行うことができる。このようなアッセイは(実施例2に示すような)周知内皮細胞マイトジェンアッセイ又はKDRキナーゼリン酸化を直接測定する他の関連アッセイ(例えば非限定的な例として内皮細胞におけるKDRのインビトロ自己リン酸化の測定)を利用できる。このような方法では、阻害剤の存在下に一次ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を培養した後、VEGFを加えてKDRを活性化する。細胞溶解液を回収し、阻害剤結合量を測定分析する。別例では種特異的KDR遺伝子又はそのキナーゼ関連部分をトランスフェクトした細胞系(好ましくはHEK293細胞のように通常KDRを発現しない細胞系)でKDRキナーゼ阻害をインビトロ測定する。このようなアッセイは最終的に試験化合物のKDRリン酸化阻害効果の定量分析によって異なる。換言するならば、内皮細胞有糸分裂誘発又はKDRキナーゼ活性に対するインビトロIC50を測定する種々のアッセイは相互に代替可能であり、同様のIC50濃度を定量できると予想される。これは二量体VEGFリガンドがKDR上の細胞外認識部位に結合して受容体が二量化し、細胞内キナーゼドメインが相互に接近してチロシンリン酸化するからである。KDRの活性化ループ上のチロシン残基がリン酸化すると、ATP及びペプチド基質に対する酵素親和性が増加(即ちKmが低下)し、亜飽和基質濃度で酵素の触媒活性が有効に増加する(Kendallら,1999,J.Biol.Chem.274:6453−6460)。活性化したKDRは更に下流シグナル伝達タンパク質のドッキング部位として機能する他のKDRチロシン残基をリン酸化し、有糸分裂に至るイベントカスケードを開始する。DNA合成によりモニターすると、VEGFにより誘導した血管内皮細胞の有糸分裂誘発はVEGFにより誘導したKDRのチロシンリン酸化の直接結果であり、細胞におけるKDRチロシンリン酸化の阻害もDNA合成のその誘導の阻害に直接関連する。従って、VEGFで刺激した血管内皮細胞では、KDRチロシンリン酸化の初期イベントの阻害又はその結果としてのDNA合成の用量反応アッセイにより同等のKDRキナーゼ阻害剤効力(IC50)を測定することができる。内皮細胞当たりのKDR受容体数は少なく、日常的高スループット用量反応アッセイに使用される96ウェルプレートの各ウェルの小さい表面積では細胞数が限られ、KDRキナーゼチロシンリン酸化の阻害に観察されるよりも信号対雑音比が高いので、内皮細胞DNA合成の阻害を測定することが好ましい。
【0028】
従って、本発明は非ヒト対象における試験化合物の循環濃度の関数として特定キナーゼ受容体活性の阻害を測定するインビボ方法として、(a)試験化合物を非ヒト哺乳動物である試験対象に投与し、(b)試験対象の体内でキナーゼ受容体活性を刺激し、(c)試験対象から血液又は血漿試料を採取し、(d)段階cの試料から試験化合物の濃度を測定し、(e)測定可能な量のキナーゼ受容体を含有する試験対象から組織又は血球試料を採取し、(f)試験化合物を加えなかった段階e)の試料に比較して試料内でリン酸化した受容体の相対比を求め、(g)段階c)で測定した試験化合物の血液又は血漿濃度の関数として試験化合物のキナーゼ受容体リン酸化阻害効果を相関させる方法に関する。
【0029】
本発明は非ヒト対象における特定キナーゼ受容体に対する試験化合物のIC50を測定するインビボ方法として、(a)濃度の異なる複数用量の試験化合物をヒト以外の同一哺乳動物種の複数試験対象に各々1用量ずつ投与し、(b)各試験対象の体内でキナーゼ受容体活性を刺激し、(c)各試験対象から血液又は血漿試料を採取し、(d)段階c)の試料から試験化合物の濃度を測定し、(e)測定可能な量のキナーゼ受容体を含有しており、各試験対象で類似起源に由来する組織試料を試験対象から採取し、(f)段階e)のプラセボ対照に比較して各試料内のリン酸化キナーゼ受容体と非リン酸化キナーゼ受容体の相対比を求め、(g)段階c)で測定した試験化合物の血液又は血漿濃度の関数として各対象の段階e)のキナーゼ受容体リン酸化を相関させ、試験化合物のインビボIC50実測値を得る方法にも関する。
【0030】
インビボKDRリン酸化に基づいて阻害剤活性値を得られるので、本発明は更に第2の種における特定キナーゼ受容体タンパク質に対する試験化合物のインビボIC50の予測方法として、(a)第1の種と第2の種について特定キナーゼ受容体タンパク質のインビトロ酵素IC50を測定し、(b)第1の種のインビトロ細胞反応IC50又はキナーゼ受容体IC50を測定し、(c)段階a)で測定した第1の種のインビトロ酵素IC50と第2の種のインビトロ酵素IC50の比に段階b)で測定したインビトロ細胞反応IC50又はキナーゼ受容体IC50を掛け、第2の種について特定キナーゼ受容体タンパク質に対する試験化合物の予測インビボ細胞反応又はキナーゼ受容体IC50を計算する方法にも関する。
【0031】
上記方法はマウス、ラット及びイヌ属から構成される群から選択される試験対象に特に有用であり、キナーゼ受容体はFLK受容体ファミリーのメンバーであり、更にPDGFR−αやPDGFR−β等の他のキナーゼでもよい。FLK受容体の1好適例はKDRであり、好適組織種はマウス属の試験対象に由来する肺組織である。
【0032】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、これらの実施例により本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0033】
マウスKDR自己リン酸化
材料と方法−本発明の本実施例で試験した化合物の構造は以下の通りである。
【0034】
【化1】
【0035】
一般にNu/Nu雌ヌードマウスに化合物を数種の用量レベルで腹腔内注射又は経口強制飼養により投与する。投与から各種時間後、一般には1〜24時間後で屠殺5分前にヒトVEGF165の尾静脈注射によりKDR受容体のチロシンリン酸化を刺激する。血液試料を採取し、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LCMSMS)により血漿化合物濃度を測定する。肺は静脈系に注射した薬剤が遭遇する最初の主要毛細血管床を含んでおり、ウェスタンブロットによりKDR値の高い組織の1つであると当初に判定されたので肺を摘出し、処理時まで液体窒素で迅速に凍結保存する。凍結組織を計量後に液体窒素中で粉砕する。溶解用緩衝液(20mM HEPES,pH7.5,150mM NaCl,1%Triton X−100,300mM過バナジン酸塩,50mM NaF,1mMミクロシスチン−LRにプロテイナーゼインヒビターカクテルを添加)を組織に4℃で2時間加える。次に溶解液を14,000rpmで10分間4℃で遠心分離し、予め清澄化した上清を抗KDR抗体[SC−504,Santa Cruz Biotechnology]により免疫沈降させる。免疫沈降したKDR−抗体複合体をプロテインA−セファロースCL4Bビーズで捕獲し、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分画する。分画した免疫複合体をPVDF膜にブロットし、抗ホスホチロシン抗体[#05−321,Upstate Biotechnology]で探索し、酵素化学発光[RPN2109,Amersham Pharmacia Biotech.]により検出し、Molecular Dynamicsデンシトメーターで定量する。その後、免疫ブロットを剥離し、抗KDR抗体[SC−6251,Santa Cruz Biotechnology]で再探索し、KDRバンドを上記と同様に検出及び定量する。リン酸化KDR/合計KDRシグナルの比を計算し、VEGFで刺激してビヒクル対照を投与したマウスの百分率として表す。血漿化合物濃度の関数として相対KDRチロシンリン酸化の曲線近似によりIC50を計算する。
【0036】
結果−化合物1は図1に示すようにVEGFで刺激したマウス肺KDR自己リン酸化を用量依存的に阻害し、IC50値は130nMである。IC50値を測定した数種のKDRキナーゼ阻害剤では、このインビボ効力測定値と培養ヒト内皮細胞有糸分裂誘発アッセイ(ECMA)のIC50値にマウス/ヒトKDRキナーゼのインビトロ酵素IC50値の比を掛けた値の間に良好な相関がある。ECMAに比を掛けたこの値は純培養液として又は培養液でアッセイする安定な細胞系として入手できないマウス内皮細胞のIC50の推定値である。化合物1では、マウス内皮細胞IC50計算値=(平均ECMA)×(平均マウスKDR IC50/平均ヒトKDR IC50)=18.0nM×(24nM/3.3nM)=130nMである。図2に示すように、図2で試験した数種の異なるコア構造を示すこの化合物群ではIC50の計算値と実測値の間に良好な相関がある。この相関を得るには、ECMA細胞型アッセイに固有のもの以外にタンパク結合を補正する必要がない。この値はヒト内皮細胞有糸分裂誘発IC50にマウス/ヒトKDRキナーゼ酵素阻害IC50値の比を掛けることにより計算した130nM IC50に良好に一致している。本実施例でアッセイした化合物群ではIC50の実測値と計算値が良好に一致したので、対応するKDRキナーゼ酵素活性のIC50値を使用して同様のスケーリングアルゴリズムにより他の種のインビボKDRリン酸化IC50値も計算できると考えられる。従って、化合物1をヒトの循環血漿に直接暴露した場合の内皮細胞IC50値はインビトロヒト内皮細胞有糸分裂誘発アッセイ及び/又は培養ヒト血管内皮細胞もしくはKDRを発現するように安定的にトランスフェクトした培養ヒト胚性腎(HEK293)細胞系でKDRリン酸化を直接測定するアッセイにより得られる範囲に対応すると考えられる。
【実施例2】
【0037】
インビトロヒト内皮細胞有糸分裂誘発アッセイ(ECMA)
方法−初期世代ヒト血管内皮細胞(HUVEC)をアッセイ培地(DMEM+10%ウシ胎仔血清)0.1ml中、細胞密度3.5×103個/ウェルで96ウェル組織培養プレートに播種する。5%CO2を含む加湿雰囲気中、37℃で細胞増殖を停止する。24時間後にビヒクル又は試験化合物を加えた新鮮なアッセイ培地0.1mlに培地を交換する。試験化合物と対照化合物とビヒクル対照の各希釈液を3組ずつアッセイする。試験化合物は100%DMSOに溶かし、全希釈系列で可溶性に維持するように連続希釈する。次に各濃度の阻害剤をアッセイ培地(最終DMSO濃度0.25%)に400倍に希釈し、このアッセイ培地0.1mlで各ウェルの消費済み培地を交換する。連続週アッセイで使用する強力化合物標準を内部陽性対照として平行用量反応アッセイを実施する。化合物と共に2時間プレインキュベーション後に50ng/ml VEGFで細胞を完全に刺激する。非刺激対照群にはアッセイ培地のみを加える。24時間後に[3H]チミジンを最終濃度0.8μCi/ウェルで加える。更に72時間インキュベーション後にアッセイ培地を除去し、細胞を洗浄し、トリプシン処理し、96ウェル濾過プレートで採取する。シンチレーションカクテルを各ウェルに加え、細胞関連放射能をMicro Beta液体シンチレーションカウンターで測定する。3個ずつのウェル各組の平均cpm値を求め、VEGFも阻害剤も加えずに0.25%DMSOビヒクル対照培地で処理したHUVECを含むウェルからの平均バックグラウンドカウントを差し引くことにより補正する。完全に刺激した場合の応答と刺激しない場合の応答の差の百分率としてVEGF誘導DNA合成の化合物阻害を表す。
【0038】
結果−VEGFで刺激した場合と刺激しない場合のHUVECにおける化合物1の用量反応アッセイを図3に示す。図3は化合物1の濃度の関数として[3H]チミジン取込みとしてプロットした応答を示す。化合物1をECMAで用量の関数として5回アッセイし、18.0nMの平均IC50値を得た。
【0039】
本発明は本明細書に記載する特定態様により範囲を限定しない。実際に、本明細書に記載する以外に本発明の種々の変形が上記記載から当業者に自明である。このような変形は本明細書に記載するようなインビトロIC50値の計算方法に関するものでもよい。これらの可能な変形も特許請求の範囲に含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】阻害剤を投与した各動物で化合物1の対応する血漿濃度の関数としてプロットし、決定した化合物1のインビボIC50を示す。この場合、ビヒクル対照を投与した動物のKDRリン酸化を100%とし、阻害剤を投与した動物のKDRチロシンリン酸化を百分率で表す。
【図2】(実施例1に記載した)インビボアッセイでアッセイした化合物1〜6のKDRチロシンリン酸化IC50値の計算値と実測値の相関を示す。
【図3】VEGFで刺激した場合と刺激しない場合の阻害剤用量反応アッセイの代表的インビトロ内皮細胞マイトジェンアッセイプロットを化合物1について示す。
Claims (17)
- a)試験化合物を非ヒト哺乳動物である試験対象に投与する段階、
b)試験対象の体内でキナーゼ受容体活性を刺激する段階、
c)試験対象から血液又は血漿試料を採取する段階、
d)段階c)の試料から試験化合物の濃度を測定する段階、
e)測定可能な量のキナーゼ受容体を含有する試験対象から組織又は血球試料を採取する段階、
f)試験化合物を加えなかった段階e)の試料に比較して試料内でリン酸化した受容体の相対比を求める段階、および
g)段階c)で測定した試験化合物の血液又は血漿濃度の関数として試験化合物のキナーゼ受容体リン酸化阻害効果を相関させる段階
を含む、試験化合物の循環濃度の関数として特定キナーゼ受容体活性の阻害を測定するインビボ方法。 - 試験対象がマウス、ラット及びイヌ属から構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
- キナーゼ受容体がFLK受容体ファミリーのメンバーである請求項1に記載の方法。
- FLK受容体がKDRである請求項3に記載の方法。
- 試験対象がマウス属から選択される請求項4に記載の方法。
- 組織試料が肺組織である請求項5に記載の方法。
- a)濃度の異なる複数用量の試験化合物をヒト以外の同一哺乳動物種の複数試験対象に各々1用量ずつ投与する段階、
b)各試験対象の体内でキナーゼ受容体活性を刺激する段階、
c)各試験対象から血液又は血漿試料を採取する段階、
d)段階c)の試料から試験化合物の濃度を測定する段階、
e)測定可能な量のキナーゼ受容体を含有しており、各試験対象で類似起源に由来する組織試料を試験対象から採取する段階、
f)段階e)のプラセボ対照に比較して各試料内のリン酸化キナーゼ受容体と非リン酸化キナーゼ受容体の相対比を求める段階、および
g)段階c)で測定した試験化合物の血液又は血漿濃度の関数として各対象の段階e)のキナーゼ受容体リン酸化を相関させ、試験化合物のインビボIC50実測値を得る段階
を含む、特定キナーゼ受容体に対する試験化合物のIC50を測定するインビボ方法。 - 試験対象がマウス、ラット及びイヌ属から構成される群から選択される請求項7に記載の方法。
- キナーゼ受容体がFLK受容体ファミリーのメンバーである請求項7に記載の方法。
- FLK受容体がKDRである請求項9に記載の方法。
- 試験対象がマウス属から選択される請求項10に記載の方法。
- 組織試料が肺組織である請求項11に記載の方法。
- a)第1の種と第2の種について特定キナーゼ受容体タンパク質のインビトロ酵素IC50を測定する段階、
b)第1の種のインビトロ細胞反応IC50又はキナーゼ受容体IC50を測定する段階、
c)段階a)で測定した第1の種のインビトロ酵素IC50と第2の種のインビトロ酵素IC50の比に段階b)で測定したインビトロ細胞反応IC50又はキナーゼ受容体IC50を掛け、第2の種について特定キナーゼ受容体タンパク質に対する試験化合物の予測インビボ細胞反応又はキナーゼ受容体IC50を計算する段階
を含む、第2の種における特定キナーゼ受容体タンパク質に対する試験化合物のインビボIC50の予測方法。 - キナーゼ受容体がFLK受容体ファミリーのメンバーである請求項13に記載の方法。
- FLK受容体がKDRである請求項14に記載の方法。
- 第1の種がヒトである請求項15に記載の方法。
- 第2の種がマウス属に由来する請求項16に記載の方法。
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