JP2004524817A - 薬剤耐性マーカーを含有しない遺伝子組み換え細胞とその作製方法 - Google Patents

薬剤耐性マーカーを含有しない遺伝子組み換え細胞とその作製方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004524817A
JP2004524817A JP2002532580A JP2002532580A JP2004524817A JP 2004524817 A JP2004524817 A JP 2004524817A JP 2002532580 A JP2002532580 A JP 2002532580A JP 2002532580 A JP2002532580 A JP 2002532580A JP 2004524817 A JP2004524817 A JP 2004524817A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
yeast
host
gene
plasmid
recombinant plasmid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002532580A
Other languages
English (en)
Inventor
ヴィラ,マニュエル,ジェイ.
ヘンリー,スーザン,エイ.
Original Assignee
カーネギー メロン ユニヴァーシティ
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by カーネギー メロン ユニヴァーシティ filed Critical カーネギー メロン ユニヴァーシティ
Publication of JP2004524817A publication Critical patent/JP2004524817A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P9/00Preparation of organic compounds containing a metal or atom other than H, N, C, O, S or halogen
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/80Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for fungi
    • C12N15/81Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for fungi for yeasts
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/87Introduction of foreign genetic material using processes not otherwise provided for, e.g. co-transformation
    • C12N15/90Stable introduction of foreign DNA into chromosome
    • C12N15/902Stable introduction of foreign DNA into chromosome using homologous recombination
    • C12N15/905Stable introduction of foreign DNA into chromosome using homologous recombination in yeast

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

一切の薬剤耐性遺伝子の添加がなく、酵母のような微生物のゲノムの特定の部位にどのような遺伝子でも安定的に導入できる方法および材料を提供する。 ここでは、具体的に、宿主ゲノムへの相異的な遺伝子と同様、相同的な遺伝子の安全で、安定し、そして制御された導入を可能とする新規な一連の酵母組み換えプラスミドを用いて得られた、新規な遺伝子的に作製されたイノシトール過剰生産サッカロマイシーズ・セレバイシエ株を提供する。特に、サッカロマイシーズ・セレバイシエ酵母ゲノムの特定の部位は、宿主が一切の薬剤耐性遺伝子の添加なしに使用可能なように、発現されるように求められる特定遺伝子の単一または多コピーあるいはある一連の特定遺伝子で形質転換することができる。この新規な方法の理念は、より高度な真核細胞と同様、他のリコンビナント酵母および細菌の株にも用いることができる。

Description

謝辞
この発明は、一部、国立健康栄養研究所研究費番号GM−19629により国の援助を得てなされたものであり、よって政府はこの発明についてしかるべき権利を有する。
発明の分野
この発明は、概して、酵母・細菌等の微生物工学用材料及び方法に関し、単一または複数のコピーの内在または外来遺伝子は、薬剤耐性遺伝子マーカーを伴うことなく、一連の新規酵母共適応プラスミドを用いることにより、微生物に導入するものである。特に、この発明の材料と方法は、イノシトールを過剰生産するが、薬剤耐性遺伝子マーカーを欠く新種酵母の創生に使用することができる。得られた微生物は、薬剤耐性遺伝子マーカーを含まず、酵母の場合、このことにより、サッカロマイシーズ・セレバイシエ自身か他の”一般に安全とみなされた(generally recognized as safe :GRAS)”生物由来の遺伝子のみが導入されるのであれば、そのイデシン組み換え生物としては、“一般的に安全とみなされた”と考えることができる。
背景
遺伝的変異微生物の食品、家畜餌または肥料としての安全性は、新しい生物工学の発展と応用において考えるべき重要な問題である。アメリカ合衆国、ヨーロッパ、日本は、とりわけ生物工学材料から得られた食品および添加物の生物災害の可能性に神経を尖らせている。現行の遺伝子組み換えの殆どは、プラスミドと呼ばれる環状DNAを、ホモジニアスまたはヘテロジニアスな遺伝情報を細菌・酵母のような微生物、植物、そして動物細胞などへ導入するためにクローニングベクターとして用いている。プラスミドは、原核細胞や下等真核細胞内に一個または複数個で存在するという利点を有する。このことは、プラスミド上のある遺伝子が細胞内にマルチコピー存在することを意味し、それによりそれらの遺伝子にコードされたたんぱく質を過剰発現させることができる。この場合、プラスミドは、新しい遺伝的性質を作製し、そして宿主に伝達するためのベクターとして働く。このような伝達が成功したかを検定し、さらに伝達遺伝子を形質転換細胞内で維持するために、プラスミドはいわゆる選択遺伝子マーカーを含んでいなければならない。選択遺伝子マーカーは、典型的に、抗生物質や該プラスミドを含まない細胞の増殖を阻止・阻害する物質に対する耐性を細胞に付与するものである。選択遺伝子マーカーは、コロニーの色、新しい酵素活性またはその他などの選択可能な他の表現型特性を付すこともある。プラスミドベクターは、プラスミド自身が宿主のDNA合成機能により認識される自己複製領域を含んでいるか、あるいは宿主のゲノムに組み込まれれば、宿主内で複製することができる。これらのプラスミドの内、前者は、エピゾーム型プラスミドとしても知られており、1つの宿主細胞内で多数に増幅でき、その複製は、細胞サイクルにおいて宿主染色体から独立している。他方のタイプは、は組み込み型プラスミドとして知られており、宿主ゲノムに組み込まれれば、複製及び維持することができる。真核細胞の形質転換に用いられる多くのプラスミドベクターは、エピゾーム型シャトルベクターとして知られている。また、原核−エピゾーム/有核−組み込みの組み合わせによるシャトルベクターも存在する。すなわち、それらは、どちらのタイプの宿主細胞においても増幅できるよう、原核細胞及び真核細胞のDNA配列を含む。
真核細胞を形質転換するために必要となる、総てのエピゾーム型プラスミドベクターのDNA増幅段階は、好ましくは、その増殖速度が速いことと、プラスミドDNAの精製が容易であることから、細胞宿主内で行われる。分子生物学で用いられるほとんどのプラスミド(pBRやpUC誘導体プラスミドなど)は、選択マーカーとしてampやblaといった薬剤耐性マーカーを含んでいる(SutcliffeJ.G.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A75巻,3737頁(1978年)参照、本文献の開示は参照によりここに組み込まれる。)。bla遺伝子は、TEM−1という酵素をコードしている。これは、汎用されているプラスミドβ−ラクタマーゼであり、セファロスポリン類、セファマンドール、セフォペラゾンおよびテオシリンを除く総ての抗グラム陰性菌型ペニシリン類に対する狭いスペクトルをもつ。
最も一般的な組み換えDNAプラスミドベクターを微生物の形質転換に使用する場合、残念なことに、これらの薬剤耐性遺伝子マーカーは、目的遺伝子と共に、宿主に導入される。従って、細菌の薬剤耐性遺伝子が食品添加物として使用される遺伝子組み換え生物(”GMO”)より、餌を与えられている動物の正常な腸管内細菌フローラである野生または病原性の菌に転移し、動物の正常な微生物フローラを、抗生物質耐性の危険な種に変えてしまう可能性もある。例えば、TEM−1酵素は、1965年に大腸菌より分離が初めて報告されたが、いまや腸内細菌に存在する最も一般的なβ‐ラクタマ‐ゼである。臨床で分離されたAmpE.coliの50%以上の耐性は、TEM−1によるものである。
世界は今、人畜共にその疾病対策として抗生物質の無差別的な過剰使用による同様の問題に直面している。この過剰使用/使用は、既存の抗生物質にもはや感受性を示さない薬剤耐性菌種を生み出してきた。Levy,S.B.,Scientific American,March1998,pp.46−53を参考。FDAは、世界保健機構(WHO)およびユアラピアン・レギュラトリー・エイジェンシーと同様、生物工学がもたらす製品につき、環境に制御されない薬剤耐性遺伝子の流布を招き、健康問題を引き起こすと懸念する(http://biosafety.ihe.be/と、http://europa.eu.int/comm/food/index_en.htmlを再度参照。)。よって、遺伝子操作による生物、例えば細菌性薬剤耐性遺伝子マーカーを持つ組み換え酵母は、生物災害を引き起こす可能性があると考えられ、その使用による健康上および環境上の包括的な危険評価がなければ、食品または食物添加物として使用すべきではない。
人および動物の食品の発酵に使用される細菌性薬剤耐性選択遺伝子マーカーを持つプラスミドの他の欠点は、抗生物質のコストがかかること及び抗生物質を宿主細胞の培養液へ添加しなければならないことである。この問題に対応して、“食品‐規準”のベクターが開発された。例えば、米国特許第5,627,072号を参照、本文献の開示は参照によりここに組み込まれる。
酵母、とりわけサッカロマイシーズ属で特異的なケースでは、薬剤耐性遺伝子マーカーを含む組み換え分子は、食品医薬品局によって”一般的な安全を確認された”(”GRAS”)とみなされず(http://vm.cfsan.fda.gov/ ̄dms/opa−micr.htmlを参照。)、組み換え酵母に対して危険性評価が実施されない限り生物災害の可能性がある、とみなされ得る。GRAS分類は、イノシトールのような物質を工業的に生産するために微生物を選択する時、発酵の副産物が酵母培養物自身またはその抽出物であるため、重要視である。したがって、酵母培養物が生物災害を起こさなければ、サッカロマイシーズ属の例である価値ある食品または食品添加物として利益の為に販売することができる。逆に、キャンディダ属のキャンディダ・ボイディニのような非−GRASの培養物は、生物災害を引き起こす廃棄物とみなされ、生産コストに付加される費用がかかり、環境に影響を与えかねない方法で処理されなければならない。現在のところ生物学的有害物質は焼却するか、NIHの生物学危険廃棄物の処理に関するガイドラインに従って処分しなければならない。よって“GRAS”基準を満たすことは、工業的生物工学手法を成功させるために考慮すべき重要な側面である。
発酵技術は、現行の化学技術に比べ低生産コストにて多くの化合物を生産することができ、環境的に安全という利点も伴う。この一例として、イノシトール及びイノシトールを含む代謝産物の生産を挙げることができる。イノシトールの工業的生産法は、コーンミール工場の浸漬水を用い、フィチン酸(イノシトール6燐酸エステル)のmyo−イノシトール及び燐酸への化学的転化を基礎としてきた。Bartow,E.ら,Ind. Eng. Chem. 30 300 (1938年)を参照、本文献の開示は参照によりここに組み込まれる。アジアではいまだに用いられているが、最初の実際の工業的手法は、フィチン酸を高温・高圧の強酸性条件下で壊す方法も含んでいた。米国特許第.1,112,553号を参照、本文献の開示は参照によりここに組み込まれる。そのような方法は、環境に影響を与える廃棄物を排出するため、そのような副産物の処理に必要な経費が生産コストに加わっていた。
イノシトール、とりわけ最も普遍的アイソマーであるmyo−イノシトールは、現在、ミルクを使わない乳児用調合乳や人の調合ビタミン剤に使われ、また、動物の飼料添加物や魚介類の養殖にも利用されている。しかし、近年、イノシトールの新しい利用法として、2型糖尿病、葉酸耐性神経管欠陥(NTDs)、躁鬱病、強迫障害(“OCD’s”)等の疾病の治療に用いることが示唆されている。
イノシトール及びイノシトール誘導体は、組み換え酵母の培養により生産可能である。その開示は参照によりここに組み込まれる、White,M.J.ら,J.Biol.Chem. 266:863 (1991年)(以後、” White,M.J.ら(1991年).”という)、米国特許第5,529,912号および第5,599,701号、には、燐脂質生合成の負の制御因子であるOPI1遺伝子の発現を抑制し、イノシトールを過剰生産させ分泌させる、機能的に安定した組み換えDNA配列を持つ、サッカロマイシーズ属の遺伝子組み換え酵母が記述されている。本文献では、OPI1遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を完全に欠くとINO1は構成的に抑制され、イノシトールの過剰生産と分泌及びイノシトールを含む代謝産物もしくは燐脂質の過剰生産を引き起こすことが記載されている。燐脂質の生合成に含まれる、同時に制御される他の酵素も高発現する。これらの方法を用いて、細胞内に2コピーのOPI1遺伝子を持つOpi二倍体を構築し(米国特許第5,599,701号を参照)、YS2株という表記で10801 University Boulevard, Manassas, Virginia,に所在するアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに74033の登録番号により寄託されている。米国特許第5,529,912号は、INO1遺伝子を多コピー(3−6)保持する、YS3と表記されたサッカロマイシーズ・セレバイシエOpi二倍体(ATTC登録番号74034)についてさらに記述している。その開示は参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,296,364号は、YS2、YS3と称するサッカロマイシーズ・セレバイシエを用いたイノシトールを培養液中へ高生産させる方法について記述している。
その開示は参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,618,708号には、培地中にイノシトールを分泌するキャンディダ属酵母の変異体が記載されている。しかし、前述の通り、キャンディダ属のいくつかの種は、GRASとみなされていない。
野生のサッカロマイシーズ・セレバイシエがGRAS微生物とみなされるにもかかわらず、White,M.J.ら,(1991年)、米国特許第5,529,912号および第5,599,701号に記述されたYS3のような新しい遺伝子組み換え種は、INO1遺伝子を持つ組み換えプラスミドをゲノムに挿入した際に導入された抗生物質耐性遺伝子マーカーを含んでいるため、GRASとはされていない。
上記のような現行の遺伝子工学技術の限界を打破するため、遺伝子組み換え過程において異種の薬剤耐性遺伝子を取り込まず、代謝に関する遺伝子組み換え酵母の作製を可能とする新しい組み換えDNA技術と材料を開発した。この方法により、従来可能であったコピー数より多いコピー数のINO1遺伝子などであっても、酵母に安定して挿入することができる。また、ゲノム上様々な部位に挿入できることから、創生菌株の遺伝的安定性が上昇する。これらの新規組み換え体は、GRASとみなされ、栄養価が向上したものであり得る。
発明の要旨
本発明の第一の目的は、人の食物や動物飼料材料用の酵母を遺伝子操作するためのプラスミドにおける薬剤耐性遺伝子マーカーの使用を除くことである。
本発明の他の目的は、選択マーカーとしての薬剤耐性遺伝子や他の望ましくない遺伝子を加えることなく、目的遺伝子のみを宿主微生物に加えた組み換え微生物を構築することである。
本発明のその他の目的は、LEU2のようなサッカロマイシーズ・セレバイシエのGRASとみなされた遺伝子を、細菌宿主でのプラスミド増幅用選択遺伝子マーカーとして使用することである。
本発明の他の目的は、1または複数のコピー数の特定の酵母遺伝子をゲノム上の1または複数の異なった位置に含むが、薬剤耐性マーカー遺伝子を含まないサッカロマイシーズ属の酵母を作製することである。
本発明のさらなる他の目的は、薬剤耐性遺伝子マーカーを付加することなく、宿主酵母が持っていない代謝経路の一部または全体を構成する酵素をコードする遺伝子群を含む酵母を作製することである。
また、本発明の他の目的は、薬剤耐性または他の望ましくない外来性遺伝子を持たず、酵母ゲノムに安定して挿入できる酵母組み換え用の一連のプラスミドを提供することである。
また、本発明の他の目的は、酵母の栄養性遺伝子のような非致死遺伝子を、細菌や酵母でのDNA増幅における選択マーカーとして用い、かつ酵母遺伝子などの非致死遺伝子を、栄養要求性酵母株への組み込みにおける挿入マーカーとして用いる一連のベクターを提供することである。
また、本発明の他の目的は、他のいかなる酵母株よりましてイノシトール及びイノシトール代謝産物を過剰生産し、薬剤耐性を含まない、サッカロマイシー属の組み換え酵母細胞を提供することである。
また、さらなる本発明の他の目的は、イノシトール、イノシトールを含む代謝物、燐酸化および/またはメチル化されたイノシトール、またはそれらの立体異性体、あるいはフォスファチジルイノシトールに富み、薬剤耐性遺伝子を一切含まない酵母を提供することである。
また、本発明の他の目的は、薬剤耐性遺伝子を含まず、アミノ酸等の栄養要求物質または抗生物質を添加していない最小培地で生育可能な独立栄養型の組み換え微生物を提供することである。
本発明のこれらの及び他の目的は、次の1またはそれ以上の具体的方法により達成される。
1の態様において、本発明は、薬剤耐性遺伝子を一切加えることなく、少なくとも1つの目的遺伝子を宿主半数体酵母ゲノム上の特異的な部位に安定的に挿入することにより、遺伝子組み換えによる二倍体を作製する方法であり、以下の構成からなる:
非致死的で選択可能な遺伝子変異、標的遺伝子変異を半数体の接合対の少なくとも一方に含む、対立する交配型の宿主半数体酵母の構築、
少なくとも1または1連の酵母組み込みプラスミドであって、各プラスミドがプラスミド増幅用宿主内においてプラスミドの複製ができ、かつ宿主から形質転換コロニーを選択できる選択遺伝子マーカー、宿主酵母ゲノム上の標的遺伝子変異、特異的変異を加えられた相同性領域へのプラスミドの挿入を確認するための標的遺伝子マーカー、宿主酵母内において発現させようとする目的遺伝子、及びプラスミド増幅用宿主内において機能するDNA複製のオリジンを含有し、薬剤耐性遺伝子を一切含まない酵母組み換えプラスミドの構築、
プラスミド増幅用宿主内における各酵母組み換えプラスミドの増幅、該増幅において、該プラスミド増幅用宿主は、プラスミド増幅宿主への形質転換により酵母組み換えプラスミドの選択遺伝子マーカーが発現することによる選択的表現型を示す、
増幅した酵母組み換えプラスミドの精製、
酵母組み換えプラスミドの標的遺伝子マーカーが宿主上相同的な標的遺伝子変異に該組み換えプラスミドが組み込まれるような、宿主酵母半数体の対立する交配型を酵母組み換えプラスミドによる形質転換、
及び二倍体細胞を作製するための、対立する交配型を持つ形質転換半数体酵母細胞の交配。
別の態様において、本発明は、酵母組み換えプラスミドであり、以下の構成からなる:
選択遺伝子マーカー
標的遺伝子マーカー
目的遺伝子、
およびDNA複製オリジン、
であり、薬剤耐性遺伝子を一切含まない。
別の態様において、本発明は、opi表現型を持ち、宿主の標的遺伝子と相同し、対応する宿主の栄養要求性を補う、対応する機能を有する遺伝子を持つ1またはそれ以上の酵母組み換えプラスミドにより相補される、栄養要求性の表現型を示す、ade2、his3、leu2、lys1、met15およびtrp1およびura3を含む1またはそれ以上の遺伝子変異を持つように遺伝子的に操作されたサッカロマイシーズ属の酵母細胞に関する。
好適には、酵母組み換えプラスミドはINO1遺伝子を有する。
本発明の他の構成及び利点は、次の、より具体的な説明とクレームから明らかであろう。
定義
“酵母組み換えプラスミド”および“組み換えプラスミド”とは、選択遺伝子マーカー、標的遺伝子マーカー、目的遺伝子と、細菌のORI、酵母の2μ、ARS、またはCENのように、微生物の自律的DNA複製の開始点として機能するDNA配列(以後、DNA複製のオリジンという)をもち、酵母に組み込まれるようなプラスミドをいう。増幅後、酵母の形質転換に用いられた酵母組み換えプラスミドは、酵母の自律的DNA複製を可能にするような2μ、ARSおよび/またはCENのような配列をもっていてはならない。DNAの相同性組み換えなどにより酵母ゲノムの特定域に線状の断片として組み込むDNA組み換え過程により、酵母ゲノムに組み込まれた場合、組み込まれたプラスミドは、酵母内においてのみ複製される。しかしながら、組み換えプラスミドは、他の宿主でも自律的複製ができるように、宿主細胞のDNA複製機構に認識される複製のオリジンを担わせることもできる。これらの他の宿主は、植物、動物、人細胞など高等生物でもよい。
“選択遺伝子マーカー”および“選択マーカー”とは、酵母組み換えプラスミド上にある遺伝子であり、形質転換宿主に欠損する要素を補い、複製やプラスミドの分離を可能にするものである。選択遺伝子マーカーは、特定の栄養素を欠く培地で生き残ることができるなど、判別し易い表現型でなければならない。選択遺伝子マーカーは、酵母由来の遺伝子、特にLEU2のような栄養要求性に係わる遺伝子が望ましい。LEU2はE.coli JA221のようなロイシン要求性のプラスミド増幅宿主において、プラスミドによる形質転換体の選択を可能にする。
“標的遺伝子マーカー”および“標的遺伝子”とは、酵母組み換えプラスミド上の機能的遺伝子のことであり、いわゆる“標的遺伝子変異”とよばれる宿主酵母特異的相同組み換え領域に、酵母組み換えプラスミドの相同性組み換え換えにより、組み込まれる。宿主酵母の該標的遺伝子変異は、宿主に特に非致死的で選択性を有し、好ましくは、栄養要求性の表現型を持たせる。標的遺伝子マーカーは、好ましくは、酵母宿主の栄養要求性を補う。
“宿主酵母株”、“宿主株”、“親酵母株”、“宿主変異”およびこれらと同様のものとは、1またはそれ以上の酵母組み換えプラスミドを導入するための半数体酵母細胞をいう。
“遺伝子”とは、転写翻訳を可能とし、単独または他の遺伝子との組み合わせにより生物に同定可能な特性を賦与する転写領域と調節的配列より成るDNA断片のことである。
“表現型”とは、特性の顕著な現れ方(生物の物理的または機能的な特徴)のことであり、特定の遺伝子の存在、非存在または変異に対応するものである。
“目的遺伝子”とは、組み換えプラスミド上にある、宿主酵母株において発現させたい遺伝子のことである。目的遺伝子は、宿主ゲノムと相同でも異質でも良い。イノシトール及びイノシトールの代謝産物の過剰生産が望まれる場合、一連の組み換えプラスミド上にある目的遺伝子は、INO1である。宿主酵母が代謝経路の一部または全体を構成する遺伝子群を持っていない場合、目的遺伝子は、代謝経路の一部または全部を補う酵素をコードする遺伝子群のメンバーであってもよい。宿主酵母の生物学的安全性が明らかな場合、目的遺伝子がサッカロマイシーズ属または他のGRAS遺伝子であることが好ましいが、それに限らず、目的遺伝子は非−GRASまたは細菌、植物、人を含む動物由来のいかなる遺伝子でもよい。
“相同的組み換え”とは、同一またはほぼ同一のDNA配列間での遺伝的交換のことである。酵母の配列を含む酵母組み換えプラスミドのようなDNAプラスミドは、自律的複製領域を欠いた状態で、形質転換により染色体の相同性領域に組み込まれる。プラスミドの組み換えは、宿主の染色体特定領域に1またはそれ以上の1コピーの安定した目的遺伝子を挿入するために用いる。相同的組み換えは、プラスミド配列と宿主のDNA配列の間で相同的組み換えが起きるように、DNA配列のマッチング、切断、接着などに関わる組み換え酵素群により触媒される。
“遺伝子完全欠損”、“完全欠損”および“遺伝子完全除去”とは、遺伝子のオープンリーディングフレーム(“ORF“)を完全に除去することである。
“DNA複製のオリジン”とは、酵母組み換えプラスミド上にある、微生物の自律的DNA複製開始点として働く、例えば、DNA複製を開始するなどのDNA配列のことである。細菌宿主においては、プラスミドの複製は、細菌染色体の複製を司る一連の酵素によって行なわれる。細菌プラスミド増幅宿主内で増幅をおこなう組み換えプラスミドは、細菌のDNA複製オリジンを有していなければならない。酵母プラスミド増幅宿主内で増幅をおこなう組み換えプラスミドは、酵母のDNA複製オリジンを有していなければならず、これは、増幅後宿主酵母に組み込まれる前に取り除かれなければならない。
“栄養要求株”および“栄養要求性”とは、野生型と異なり、その生育に最小培地上に増殖因子または必須栄養素を添加する必要がある変異微生物のことである。逆に、“独立栄養株”および“独立栄養性”とは、野生型のように、限られた栄養素または最小培地で生育できる微生物のことである。“栄養要求”は微生物を特定の栄養素を欠く培地中では生育できず、その栄養素が添加されれば生育できるようにする遺伝子変異により引き起こされる。
“薬剤耐性遺伝子”または“耐性遺伝子”とは、微生物ampまたはblaのような、細菌を抗生物質の影響から保護する蛋白質を生み出す遺伝子のことである。
方法と結果
本発明によれば、酵母のような微生物ゲノム上の特定位置に、薬剤耐性遺伝子を付加することなく、いかなる遺伝子も安定的に導入する方法及び材料を提供する。特に、宿主ゲノムに同質または異質の遺伝子を安全で安定、かつ統制のとれた方法で導入できる新しい一連のプラスミドを用いることにより得られた、新規遺伝子組み換えイノシトール高生産サッカロマイシーズ・セレバイシエ株を提供する。特に、サッカロマイシーズ・セレバイシエのベイカーズ酵母ゲノムの特定領域は、発現させたい遺伝子か、薬剤耐性遺伝子を付加することなく宿主が利用することができる所定の一組の遺伝子の1または多コピー数遺伝子についてターゲットとなり得る。本新規方法の原理は、他の組み換え酵母や細菌の構築にも利用可能である。例えば、GRAS生物の場合、サッカロマイシーズ属の他の株(例えば、S.fragilis,Kluyveromyces lactis,(以前、S. lactisといった)、キャンディダ属のいくつかの株、例えば、Candida lipolytica, Candida guilliermondii, Candida pseudotropicalis,および Candida utilisなどを挙げることができ、また、生産物の生物学的安全性が問題とされない場合、GRASとみなされない他の酵母株についても同様である。食品や乳製品の発酵に用いられる他の微生物の例としては、pediococcus属,Leuconostoc属,Lactobacillus属,Lactococcus属,Streptococcus属,thermophilos属および Bacillus属などが挙げられる。この発明の組み換えプラスミドは、人、動物、植物細胞など高等生物の形質転換にも利用できる。
特に、ここに提示する方法は、好ましくは、代謝経路に1または数個の変異があり、また、好ましくは栄養素が補充されていない最小培地では生育できない栄養要求性の宿主変異体の創生に関する。このような宿主変異体の栄養要求性は、相同する機能を有する遺伝子(以後、標的遺伝子マーカーという)を持つ酵母組み換えプラスミドを宿主変異体に形質転換することにより補われる。形質転換用に十分なコピー数のプラスミドを得るため、酵母組み換えプラスミドは、好ましくは、細菌などのプラスミド宿主微生物内で増幅され、次に、該プラスミドは、当業者周知の方法により精製される。標的遺伝子マーカー及び下記の他の要素を持つ酵母組み換えプラスミドは、線状化の後、続いて宿主ゲノムの相同性組み換えのターゲットとなる1またはそれ以上の特定の変異領域に安定的に挿入される。酵母組み換えプラスミド全体が安定して宿主ゲノムに挿入されるため、宿主ゲノムへ付加させようとする、該酵母組み換えプラスミド上にある目的遺伝子は、安定して宿主酵母株のゲノムに組み込まれる。
本発明は、全ての遺伝子マーカーと目的遺伝子が、好ましくは内在性酵母遺伝子である、一連の新規組み換えプラスミドを提供する。標的遺伝子マーカーは、酵母組み換えプラスミドを宿主酵母ゲノムの特定の変異相同性部位に組み込む。これを、標的遺伝子変異ともいう。一連の内各々の組み換えプラスミドは、各組み換えプラスミドが異なる、かつ特定の変異領域に組み込まれるように、異なる標的遺伝子マーカーを有する。選択遺伝子マーカーは、それを含む酵母組み換えプラスミドをプラスミド増幅用宿主微生物内で増幅させ、プラスミドで形質転換された宿主コロニーを選択する。同様に、酵母組み換えプラスミド上にある目的遺伝子は、宿主ゲノムと相同でも異質でもよく、発現させたいいかなる遺伝子でも良い。目的遺伝子は、INO1のような一連の酵母組み換えプラスミドの全てにおいて同じであってもよく、または、目的遺伝子は、代謝経路またはその一段階を構成する酵素をコードする異なる遺伝子群の1つであってもよい。標的領域への酵母組み換えプラスミドの相同的組み換えを促進するため、好ましくは、これらのプラスミドは形質転換前に、制限酵素により標的遺伝子マーカー内を切断して線状化する。次いで、一連の内各組み換えプラスミドは、標的遺伝子変異領域(標的遺伝子変異)に組み込まれる。
上記の通り、本発明の酵母組み換えプラスミドは、最も一般的な市販のプラスミドを含む微生物宿主の選択に使用されている伝統的な遺伝子マーカーである細菌のampのような薬剤耐性マーカーを含まない。その代わりとして、酵母組み換えプラスミドは、細菌や酵母などのプラスミド増幅宿主微生物における酵母組み換えプラスミドの増幅と分離に用いる選択遺伝子マーカーを有する。選択遺伝子マーカーは、好ましくは、選択的栄養要求性、より好ましくは、増幅用宿主微生物における栄養要求性を補うものである。参考例として、ロイシン生合成経路に含まれる遺伝子、特に、LEU2遺伝子は、ampの代わりに使用することができる。
宿主酵母株が、一つの栄養要求性のみまたはコロニーの色の違いなどの他の選択可能な変異をもつように構築された場合、宿主は、1つの酵母組み換えプラスミドのみで形質転換される。この場合、栄養要求性の形質転換宿主は、栄養素の添加なしに最小培地中で生育し、維持することができる。しかしながら、宿主酵母が1以上の栄養要求性または他の選択可能な変異を持つように構築された場合には、変異による栄養要求性は、一連のプラスミドの各々が、宿主の標的遺伝子変異に対応した、異なる標的遺伝子を有するように構築された一連の酵母組み換えプラスミドにより補われる。酵母組み換えプラスミドの組か換え後、それまでの宿主の栄養要求性は補われる。よって、このように形質転換された宿主は、ゲノム上の特定の変異部位に安定して組み込まれた複数コピーの同一の目的遺伝子、または各目的遺伝子のセットを持つことができる。それにより、いずれかの半数体交配型において全ての栄養要求性が補われる限り、独立栄養型二倍体を得ることができる。宿主半数体における栄養要求性または他の選択可能な変異の全てが補われる必要はない。対立する交配型のそれぞれの半数体に残っている栄養要求性が、二倍体を形成するため交配された場合、互いに相補的であれば、結果として得られる二倍体は、独立栄養型となる。よって、独立栄養型の二倍体というのは、栄養要求性を生じる各変異が半数体交配型の少なくとも一方において補われている限り、両方の交配型が両方の特定の変異部位において酵母組み換えプラスミド上の標的遺伝子マーカーで組み換えられている必要はない。
最終的に、遺伝子的に変異を加える微生物がINO1である目的遺伝子を過剰なコピー数持つ酵母、好ましくは、サッカロマイシーズ・セレバイシエ属のOpi変異体の場合、このような酵母を発酵した後、イノシトールのような生産物は遺伝的変異細胞により増殖培地へ分泌され、例えば、イノシトールを含む代謝産物、燐脂質、フォスファチジルイノシトール、その他の生産物は細胞内に生産される。イノシトールの生産に必要な本発明の型の発酵プロセスは、米国特許第5,286,364号、米国特許第5,626,847号に記載されている(本文献の開示は、参照によりここに組み込まれる。)。イノシトールを過剰生産し、Opi1遺伝子変異を含むOpi株として知られているサッカロマイシーズ・セレバイシエ株は、本発明の方法により、二倍体において少なくとも8、大体16くらいまでまたはそれ以上のコピー数のINO1遺伝子を含むよう、遺伝子的に操作されている。いかなる目的遺伝子でも達成することができる挿入遺伝子の数の限界は知られていない。
宿主株
宿主半数体酵母株は、最初、宿主に非致死的で当業者に周知の方法により選択できる1またはそれ以上の遺伝子変異を含むよう構築される。好ましくは、該遺伝子変異は、his3,leu2,lys1,met15およびtrp1のような、栄養要求的表現型を引き起こす宿主のアミノ酸合成経路の1またはそれ以上の遺伝子、あるいは、例えば、ade2及びura3のような、栄養要求的表現型を引き起こす、宿主の核酸合成経路の1またはそれ以上の遺伝子におけるものである。このような栄養要求的表現型を引き起こす宿主酵母における遺伝子変異は、ポイントミューテイション、部分若しくは全部の遺伝子欠損、または核酸の付加若しくは置換であっても良い。これらの型の変異は、その株を野生の独立栄養型とは対照的な1又はそれ以上の栄養素の添加がなければ最適に増殖することができない栄養要求性変異株に変える。宿主株中の変異遺伝子は、後に、酵母組み換えプラスミドの導入の標的となり得る栄養要求性遺伝子マーカーとして働く。酵母組み換えプラスミド上の標的遺伝子は、プラスミドを宿主細胞ゲノム上の相同性部位に正確に組み込ませ、標的遺伝子変異ともいわれる。このような組み込みは、宿主半数体細胞の標的遺伝子変異により引き起こされた栄養要求性を補う。
変異宿主酵母株の構築は、遺伝的かけ合わせ、その結果得られた二倍体の胞子形成、所望の栄養要求性マーカーを有する半数体胞子の四分子分割、適切な選択培地中におけるこのような半数体宿主酵母のコロニー精製により達成される。これらの方法はすべて、一般的な酵母の遺伝子操作方法として当業者に周知である。例えばSherman,F.ら,Methods Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory,NY(1978年)(以後” Shermanら(1978年)”という。)およびGuthrie,C.ら(Eds.)、Guid To Yeast Genetics and Molecular Biology vol.194,Academic Press, San Diego(1991年)(以後”Guthrieら(1991年)”という。)を参照することができる(本文献の開示は参照によりここに組み込まれる。)。
本発明の好適な態様として、宿主酵母細胞、好ましくはサッカロマイシーズ・セレバイシエは、宿主のアミノ酸生合成経路の少なくとも1つの遺伝子における変異により引き起こされた少なくとも1つの栄養素要求性を持つように構築されている。宿主株は、例えば、his3,leu2,lys1,met15、trp1などの宿主のアミノ酸生合成経路の酵素をコードし、宿主の増殖及び生存に必要な変異遺伝子並びに例えば、ade2及びura3などの宿主の核酸生合成経路の酵素をコードし、宿主の増殖と生存に必要な変異遺伝子により引き起こされた栄養要求的表現型を示すことができる。しかしながら、本発明は、これらの特定のの遺伝子変異に限られず、既知の選択方法により同定可能なものである限り、非致死的、かつ工業的発酵に悪影響を及ぼさない他の変異も包含する。変異体又は栄養要求性宿主酵母株は、“a”および“α”の半数体交配型の両方を容易しなければならず、両方の交配型は、1又はそれ以上の酵母組み換えプラスミドにより形質転換される。対立する接合型の形質転換組み換え半数体は、最終的に、独立栄養型の二倍体細胞を形成するように接合される。
プラスミドを組み込んだ半数体宿主細胞は完全な独立栄養型となり、少なくとも一つの栄養要求性を持つ対立する接合型である他の半数体と交配することができ、この結果、完全な独立栄養型の二倍体が生じる。さらに、2つの半数体は、本発明のプラスミドの組み込みを有し、相補的栄養要求性を持つことがあり、これらを接合させることにより、完全に独立栄養型の二倍体を得ることができる。最終的に独立栄養型の二倍体を得ることは、補充物を加えていない最小培地で該二倍体を増殖させることができ、よって、イノシトールの工業生産のための培地のコストを引き下げる利点がある。とりわけ、工業的に二倍体を用いることは、発酵中に野生型との接合がおこり、遺伝子組み換え酵母の表現型が変化するという危険性を下げる。
本発明の態様の一例として、宿主酵母細胞、好ましくはサッカロマイシーズ・セレバイシエは、その遺伝子の発現を阻止するOPI1遺伝子であって、隣脂質の生合成の負の調節遺伝子のオープンリーディングフレームが完全に欠損するよう遺伝子的な改変が加えられている。opi株の構造の詳細は、Whiteら(1991年)および米国特許第5,529,912号および第5,599,701号を参照。次に、該opi宿主酵母は、宿主酵母細胞の変異と相同的な機能的遺伝子を含む酵母組み換えプラスミドで形質転換されることにより補われる1又はそれ以上の栄養要求性を示すように改変される。例えば、ヒスチジン栄養要求性を引き起こす変異his3遺伝子を有する宿主酵母細胞は、機能的his3遺伝子である。標的遺伝子マーカーを含む酵母組み換えプラスミドにより補われる。例えば、ade2,leu2,lys1,met15,trp1,ura3およびその他のような追加の変異遺伝子を有する宿主酵母細胞は、これらの遺伝子の機能的に相同的な型である標的遺伝子マーカーを含む酵母組み換えプラスミドにより補われる。栄養要求性を示す。このような場合において、一連の内の各酵母組み換えプラスミドは、さらに、過剰のコピー数のINO1遺伝子や他の所望の遺伝子などの目的遺伝子を有する。
ゲノム上の1部位に付加的なコピー数のINO1遺伝子を持つイノシトール過剰生産株YS3とは異なり、本発明の酵母組み換えプラスミドは、宿主ゲノム上の1つ以上の部位に組み込むことができる。従って、本発明は、酵母組み換えプラスミド上の目的遺伝子(INO1)のコピーが宿主ゲノム上の異なる変異遺伝子領域に組み込まれ、独立栄養型二倍体を与えるという点で、YS3の改良法を提供する。これは、総ての過剰INO1遺伝子がura3領域に組み込まれ、加えて、遺伝子組み換えに使用されたプラスミドにより宿主に組み込まれたampを持ち、YS3株と対照的である。YS3二倍体は、his3変異を持ち、そのためヒスチジン要求性である。
本発明のように付加的なコピー数の目的遺伝子を宿主酵母ゲノム上の何箇所かに分散して挿入できることは、分子間の組み換えによる組み換えプラスミドの排除を妨げることにより、安定性を高める利点がある。本発明の形質転換宿主株は薬剤耐性遺伝子フリーであり、その例として野生株やどの製品として売られまたは発表された酵母株よりも高レベルでイノシトール及びイノシトール代謝物を過剰生産する。この形質転換株は、独立栄養性であり、遺伝的に安定で、抗生物質を含まない最小培地で生育できる。従って、環境的に有害な廃棄物を減少させ、発酵用培地のコストを削減できる。
酵母組み換えプラスミド
本発明の酵母組み換えプラスミドは、操作可能なように結合した次のDNA配列を有する:
選択遺伝子マーカー、標的遺伝子マーカー、目的遺伝子および以後DNA複製のオリジンという微生物の自発的DNA複製開始領域。酵母組み換えプラスミドの遺伝子マーカーと目的遺伝子は、遺伝子的に改変された宿主のGRAS環境を保存するような酵母由来の遺伝子が望ましい。図1〜9は、本発明の態様の例として使用される酵母組み換えプラスミドを図説したものである。
ここに示されるように、プラスミドは、通常環状構造を持つ自律複製型の染色体外DNAのことである。プラスミドのサイズは、組み換えプラスミドを構成する遺伝子により様々であって良い。微生物宿主内のプラスミドは、微生物自身の染色体上にある又は無い特性をコードする遺伝子を運ぶことができる。プラスミドは、微生物宿主内で自律複製できる単一または多数コピーのDNAユニットとして存在するか、宿主染色体に組み込まれる。
標的遺伝子マーカー、選択遺伝子マーカー、目的遺伝子、複製オリジンは機能的に結合して、ほとんど他のプラスミド配列を有することなく、酵母組み込みプラスミドを構成する。場合によっては、これらのDNA配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(”PCR”)処理によって遺伝子的に改変された生物の同定/フィンガプリンティングの目的に供される追加の同定配列のような追加のプラスミドDNA配列と結合され得る。例えば、周知のコードされていない同定配列は、本発明の改変酵母株のような遺伝子的に改変された生物を同定するために、例えばPCR処理によって増幅される酵母によって付加的に持ち込まれ得る。さらに、もし必要なら、組み換えプラスミドは、それによってマルチクローニングサイト(“MCS”)を構築している多数の制限酵素によって認識されるよう作製されるDNA配列を含むこともある。これらのDNA配列は、その機能を維持するよう、また他のプラスミドDNA配列と結合される場合には、標的遺伝子マーカー、選択遺伝子マーカー、目的遺伝子および複製のオリジンの配列も、他のDNA配列によって互いに分離可能な限り、どのような順番でも結合することができる。DNA配列は、参考文献のSambrook,Jr.ら,Molecular Cloning:A Laboratory Manua, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(1989年)(以後、”Sambrookら”という)にあるような標準的なリコンビナントDNA法を用いて結合できる。
選択遺伝子マーカーは、細菌あるいは酵母のような宿主プラスミド増幅微生物内での酵母組み換えプラスミドの複製を可能にし、そして、増幅される組み換えプラスミドを含む形質転換宿主コロニーの選択をも可能にする。選択遺伝子マーカーとして使用された遺伝子は、好ましくは、酵母遺伝子であり、さらに好ましくは、組み換えプラスミドの複製用に用いられたプラスミド増幅宿主微生物内の選択的栄養要求性を補う酵母遺伝子である。特定細菌の複製宿主およびここで議論されてきたあるケースでは変異leu2遺伝子をもつ宿主酵母の双方のロイシン要求性を補うことができるので、サッカロマイシーズ・セレバイシエのLEU2のような酵母遺伝子は、本発明の選択遺伝子として好ましい。本発明の酵母組み換えプラスミド上に持ち込まれたLEU2遺伝子のような選択遺伝子マーカーは、ampのような伝統的な細菌の薬剤耐性遺伝子に取って代わる。
酵母組み換えプラスミド上に持ち込まれた標的遺伝子マーカーは、好ましくは、天然あるいは人工的に作製された標的遺伝子変異体、例えば、ポイントミューテイション、部分的な遺伝子欠損、あるいは全遺伝子欠損を含む宿主株内のその特定の相同的部位に、その安定的な組み換えを誘導する。例えば、his3変異遺伝子を持つ宿主酵母株は、プラスミドの組み換えにおける宿主栄養要求性の放出となる酵母組み換えプラスミドによって提供された機能的なHIS3標的遺伝子マーカーによって補われる。細菌または酵母増幅宿主の栄養要求性を補うことができる遺伝子を供給した場合、標的遺伝子マーカーは、細菌または酵母プラスミド増幅宿主のDNAプラスミド増幅用の選択遺伝子マーカーとしても付加的に機能し得る。例えば、LEU2遺伝子を含むプラスミドpVG102−A(図4)は、ロイシン要求性であるE.coli JA221細菌宿主(ATCC登録番号33875)で増幅され得る。そのような場合、LEU2は、プラスミド増幅段階の選択遺伝子マーカーである。増幅と精製の後、pVG102−Aプラスミドがロイシン要求性の酵母宿主を形質転換するのに用いられる際には、LEU2は、標的遺伝子マーカーの付加的な目的を提供することになる。同様に、ロイシン、トリプトファンおよびウラシル要求性のE.coli MH1066細菌宿主(Hall,M.N.ら,Cell36:1057(1984年)を参照、以後“Hallら(1984年)”という、本文献の開示は参照によりここに組み込まれる。)を使用する際には、各組み換えプラスミド内のLEU2,TRP1およびURA3遺伝子もまた、これらの遺伝子のいずれかあるいは全てによる栄養要求性を持つ酵母宿主の形質転換における選択遺伝子マーカーおよび標的遺伝子マーカーの両方の目的を提供することができる。
宿主酵母内で発現されるように求められる本発明の酵母組み換えプラスミド内の目的遺伝子は、その宿主酵母に相同的でも相異的でも良い。イノシトールとその代謝物質の生産が要望される場合、目的遺伝子はINO1である。その目的遺伝子は、本発明の実施態様におけるINO1のような一連の酵母組み換えプラスミドの各構成遺伝子と同じ遺伝子でもよく、あるいはその目的遺伝子は酵母内で発現されることを求められる一連のプラスミドの各構成遺伝子と異なる遺伝子でもよい。本発明の特徴は、コードされたタンパク質の過剰生産を引き起こす、同一の目的遺伝子の多コピーのいずれかをもつ遺伝的に改変された酵母または他の宿主の作製を可能とし、あるいは選択された宿主における新規な代謝経路の遺伝子的な作製若しくは既存の代謝経路の改変を可能とする。例えば、宿主が自然には産生しないある代謝産物を生産する新規な代謝経路を、順に代謝産物を作製するそのような新規な代謝経路を創生するに適した遺伝子を挿入することによって製造することができる。目的遺伝子の各コピーが頭からおしりまで同じ定位であるようなタンデムリピート内の1つ以上の目的遺伝子を含む酵母組み換えプラスミドを作製することも可能であることを理解すべきである。本発明の実施態様は、遺伝子的に改変された酵母のGRAS状態を保つため、“目的遺伝子”としてその酵母自身の遺伝子のみを使用している。しかし、目的遺伝子は、他の種から宿主酵母ゲノム内に組み換えられても良い。
本発明の酵母組み換えプラスミドは、酵母組み換えプラスミドが、好ましくは、細菌あるいは酵母のようなプラスミド増幅宿主に導入された際に自動的に複製されることを可能とするDNA複製オリジンを持っていなければならない。本発明の酵母組み換えプラスミドは、さらに好ましくは、市販のプラスミドpUC18(Life Technologies, Inc. Rockville, MD)由来の細菌のDNA複製オリジンORIを含む(review of ORI sequences in Sambrookら (1989年) pp.1.3−1.4、およびHershfield, V.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. 71:3455(1971年),本文献の開示は参照によりここに組み込まれる。)。一般的には、各々の酵母組み換えプラスミドは1つの複製オリジンしか持たない。ORIが細菌により認識および誘導されるにもかかわらず、そのDNA配列は一切のタンパク質用のコードをせず、宿主酵母の転写機構によって発現あるいは認識され得ない。このように、ORIは、たとえ、細菌内のエピソーマルなプラスミドの複製および酵母ゲノムへの組み込みが可能であっても、宿主酵母DNA複製機構によって認識されない。その結果、本発明の組み換えプラスミドは、GRAS酵母の作製の使用上安全と考えることができる。PUC18由来のORIは本発明の実施上好ましいものであるが、他の細菌の複製オリジンを用いても良い。Sambrookら(1989年), pp.1.3−1.4.を参照。
酵母内の酵母組み換えプラスミドを複製させたい場合には、例えば2μ、ARSまたはCENのような酵母のDNA複製オリジンを、酵母組み換えプラスミドに持ち込むことができる。しかし、組み換えプラスミドが増幅された後には、それらがその後宿主酵母ゲノムに形質転換される際に自発的に複製しないように、周知の方法により酵母宿主への形質転換の前に、精製された組み換えプラスミドから除去されなければならない。酵母組み換えプラスミド用に、酵母あるいは細菌にて増幅され、ORIのような細菌の自発的DNA複製配列および2μ、CEN、ARSのような酵母の自発的DNA複製配列の両方を含むシャトルベクターを持ち込むことは、本発明の要旨の範囲内でもあるが、増幅後、酵母の複製オリジンは、精製されたプラスミドから除去されなければならない。
酵母組み換えプラスミドのエピソーマル複製用宿主への形質転換
酵母組み換えプラスミドは、その後の宿主酵母の形質転換の段階および組み換えの段階を行わせるのに十分なプラスミドDNAを持つために、細菌または酵母のような宿主微生物内でエピソーマルに増幅される。酵母内で精製したプラスミドに比べて精製しやすいため、本発明の酵母組み換えプラスミドは、好ましくは、細菌内で複製される。上述のように、そのような場合、酵母組み換えプラスミドは好ましくは、プラスミドpUC18由来のORIのような細菌の複製オリジンを含むが、他の細菌の複製オリジンを用いることができる。しかし、上述のように、酵母内で酵母組み換えプラスミドを複製したい場合には、増幅プラスミドから除去されるという条件下であれば、酵母プラスミド増幅宿主内でプラスミドの自発的な増幅を可能とする酵母用の複製オリジンを、酵母組み換えプラスミド上に持ち込むことができる。
本発明の酵母組み換えプラスミドのさらなる特徴は、プラスミドに含まれた選択遺伝子マーカーが、好ましくはDNA増幅目的に使用された宿主細菌または宿主酵母内での栄養要求性をもたらす変異遺伝子を補うということである。本発明では、好ましい宿主株は、E.coli JA221(ATCC登録番号33875)(Clarke,L.ら, J.Mol. Biol. 120:517(1978年)(“Clark,ら (1978年)”を再度参照、本文献の開示は参照によりここに組み込まれる。)である。この株は、変異leuB6遺伝子によるロイシン要求性である。この栄養要求性は、選択遺伝子マーカーとして酵母遺伝子LEU2を含むプラスミドでこの宿主を形質転換することによって補われ得る。細菌の増幅宿主JA221に形質転換される酵母選択遺伝子マーカーLEU2を運ぶ酵母組み換えプラスミドは、Clarkら(1978年)の報告にあるように、ロイシンを含まずに最終濃度50μg/mlのトリプトファンを含むM9(Sambrookら(1989年)のような最小培地で選択および増幅され得る。JA221に加えて、細菌の他の株を、E.coli 株MH1066のようなプラスミド増幅用宿主として用いることができる(Hallら(1984年)を参照。)株MH1066は、ロイシン、トリプトファン、ウラシル要求性である。これらの栄養要求性は、それぞれ、酵母遺伝子LEU2, TRP1およびURA3を各選択遺伝子マーカーとして持つ酵母組み換えプラスミドを持った形質転換株MH1066によって補われ得る。例えば、選択遺伝子マーカーとして使用されたTRP1遺伝子を含む酵母組み換えプラスミドによってMH1066株を形質転換する際には、形質転換されたMH1066株は、Hallら(1984年)により報告されるように、最終濃度50μg/mlのロイシンおよびウラシルを含む最小培地M9で培養される。上記の細菌宿主はのいずれも、Hanahan,D.ら,J. Mol. Biol. 116(4):557(1983年)(以後、“Hanahanら(1983年)“という)(本文献の開示は参照によりここに組み込まれる。)により報告されたカルシウムクロライドを使った細菌宿主細胞処理によって、DNAのとり込みをするコンピテント細胞化に付されなければならない。加えて、細菌宿主の形質転換は、エレクトロポレーションのような既知の他の方法によって実行することができる。Sambrookら(1989年)を参照。
細菌内での酵母組み換えプラスミドの増幅後、プラスミドは、SamBrookら (1989年)により報告された方法あるいはGenomed Corp., Raleigh、NCのJETSTAR精製キットで提供される指示に従って精製される。
接合型双方の栄養要求性宿主半数体株が形成され、酵母組み換えプラスミドもまた形成、増幅および精製されると、その次の段階は、宿主の栄養要求性または多栄養要求性を補うことができる適切な組み換えプラスミドによって、各接合型半数体を連続的に形質転換することである。宿主細胞に目的遺伝子を導入および維持する最も安定的な方法の一つは、相同的リコンビナントによる遺伝子の組み換えによるものである。本発明における相同的リコンビナントは、宿主ゲノムの特定の変異標的部位にあり、宿主内で栄養要求性を引き起こす変異遺伝子である標的遺伝子マーカーによって方向づけられた酵母組み換えプラスミド全体の挿入からなる。宿主細胞の標的部位における標的遺伝子変異および酵母組み換えプラスミドにおける標的遺伝子マーカーは、相同的であるといわれている。例えば、宿主細胞ゲノムの標的部位にあるhis3変異遺伝子は、組み換えプラスミド上に持ち込まれた機能的なHIS3標的遺伝子マーカーと相同的である。一旦、リコンビナントが起きると、目的遺伝子を含み、組み換えプラスミドによって持ち込まれた標的遺伝子マーカーおよび他の全ての遺伝子は、安定して宿主ゲノムに組み込まれる。その結果、半数体宿主細胞では、目的遺伝子の単一コピーは、その宿主ゲノムの特定標的部位に組み込まれ得る。その宿主酵母を形質転換するためには、組み換えプラスミドは、まず、標的遺伝子マーカー内の好ましくはある制限サイトにおいて、制限酵素でそのプラスミドを開くことによって、線状化される。その線状化されたプラスミドは、次に、宿主細胞に形質転換され、最後にうまく標的部位にて相同的に再結合される。
酵母株は、Ito, H.ら、J. Bacteriol. 153:163(1986年)により報告され、Hirsh, J.P.ら、Mol. Cell. Biol. 6:3320(1986年)(本文献の開示は参照によりここに組み込まれる。)により改良された酢酸リチウム法を用いて、分離されたプラスミドプラスミドDNAによって形質転換された。酵母株も、また、Guthrieら(1991年), pp. 182−186に報告された方法で形質転換されても良い。示された場所では、方向付けられた形質転換および線状化されたプラスミドの形質転換は、特定のエンドヌクレアーゼ制限サイトでプラスミドを切断することによって実行される。
二倍体の作製
親株の半数体が、選択的培地にて、適切な組み換えプラスミドによって形質転換され、コロニー精製された後、相対接合可能なタイプの形質転換された宿主半数体は、目的遺伝子の多数のコピーを親の宿主細胞遺伝子の正確な部位に持ちながら一切の薬剤耐性遺伝子マーカーを持たない独立栄養型二倍体を作製するために掛け合わされる。二倍体宿主株は、相同的な代謝経路を補完したりあるいは新しい非相同的な代謝経路を構築する、単一の目的遺伝子あるいは1セットの異なる目的遺伝子の各接合タイプの半数体から少なくとも1つのコピーを持ち込む。さらに、単一の変異遺伝子を持った半数栄養要求性株が、組み換えプラスミドからその相同的な遺伝子の機能的コピーを得るなら、その株は、追加の栄養の摂取なしに、独立栄養型になって、合成最小培地で増殖する。加えて、それぞれ異なる栄養要求性を持っているものの互いに相補的な、相対接合タイプの半数株が掛け合わされると、その結果物たる二倍体は、独立栄養型となり、最小増殖培地で増殖することができる。それは、接合型半数株の機能的遺伝子コピーが、その相対接合型の遺伝子変異体を補う、ということである。産業上の応用のためには、完全に独立栄養型の二倍体株を持つことが望ましい。
本発明の宿主細胞遺伝子のいくつかの異なる標的部位は、本発明の組み換えプラスミドによって形質転換される宿主細胞の遺伝子安定性を増加させるために使用される可能性がある。目的遺伝子を運ぶ酵母組み換えプラスミドの異なる標的部位への挿入は、全てのプラスミドが宿主遺伝子の単一標的部位に挿入される時に生じうる突然の再環化および組み換えプラスミドの切除を防ぐ。これは、Whiteら(1991年)および米国特許第5,529,912号(ATCCデポジット番号74034)に記述され、総数3コピー(二倍体細胞として6つのコピー)のための内在性のコピーに加えて、半数体に宿主酵母のura3の位置に組み換えられたプラスミドYip351+INO1由来の目的遺伝子の最大2個の追加コピーおよびINO1を含むOpiYS3二倍体株(opi1Δ::LEU2/opi1Δ::LEU2 leu2−3,−112/leu2−3,−112 his3−11,−15/his3−11,−15 ura3−1 (YIp351+INO1)/ura3−1(YIp351+INO1)MATa/MATα)と異なる。YS3株は、ヒスチジンに対する栄養要求性を維持している。組み換えプラスミドYIp351は、また、宿主酵母のura3−1変異体を補完するURA3酵母遺伝子を持っている。さらに、プラスミドYIp351+INO1は、細菌のアンピシリン耐性遺伝子ampを運ぶ。そのため、YS3株は非GRASのままである。
しかし、本発明の例示的な実施形態は、宿主細胞の内在性コピーに加えて、半数体毎の異なる部位へのINO1遺伝子の少なくとも3つのコピーの挿入を許容する。例示的な二倍体宿主には、半数体毎に4つの異なる部位に、INO1遺伝子の総数8個のコピーがある。これは、本発明の目的遺伝子の挿入数の上限ではないことを理解すべきである。その結果、新しい株の遺伝子的な安定性は、大いに増加した。そのため、本発明の方法によって、INO1のような単一の目的遺伝子の多数のコピーが、宿主遺伝子の異なる部位に組み換えられ、1セットの異なる目的遺伝子を組み換えることができ、全ての組み換え体が宿主遺伝子の異なる部位に存在する。そのような遺伝子の組み換えは、宿主の従来の独立栄養型の解放あるいは他の既知の選択方法によって確認され得る。
本発明は、その結果、一切の薬剤耐性遺伝子を加えていなくても、本発明の株に、より大きな遺伝子的安定性を付与する宿主酵母遺伝子中の異なる部位に挿入され、かつ自律栄養性の株を保有することができる目的遺伝子(INO1)の多くのコピーの中で、YS3株に比して改善された株を提供する。
イノシトールの工業生産
イノシトールの工業生産の成功の鍵は、発酵用培地へのOpi酵母株により分泌されたイノシトールタイターを可能な限り最大のタイター(タイター=発酵液1L当たりの産物のグラム数)まで増やすこと、およびそのことによって、イノシトールの発酵過程および精製のコストを削減することである。この到達目的は、Opi株を作り出すために野生型のベイカーズ酵母の遺伝子的な改良によって本発明の例示的な実施の形態にて得られ、さらに、その例示的な実施形態では、薬剤耐性マーカーの使用なしに、半数体毎に最低3つの特異的部位(標的遺伝子変異体)において機能的な内在性のINO1遺伝子の少なくとも6つのコピーの安定的な組み換えが、その結果物たる二倍体株に、INO1の少なくとも総数8つのコピー(6つの挿入コピーと2つの内在性コピー)をもたらしている。その結果物たる株は、独立栄養型の二倍体である。特別の部位における多数のプラスミド組み換えは、安定性に劣るが、INO1遺伝子のさらなる挿入コピーをもたらすことができる。もちろん、本発明は、あまり制限されず、宿主半数体サッカロマイシーズ・セレバイシエ株は、各半数体接合タイプに少なくとも7つの標的部位を含むように、追加の標的部位で作り出されうる。しかし、一般的に、接合ペアの少なくとも1つの宿主半数体は、少なくとも1つの酵母組み換えプラスミドで形質転換され得る。相対する接合型の半数体は、各接合型の半数体中の目的遺伝子の少なくとも1つの余剰コピーをもって二倍体を形成するように接合されうる。明らかに、宿主中において、少なくとも1つから有効標的部位の最大数まで、組み換えプラスミドを形質転換することができる。
上述のように、本発明の優位な点は、望まれた酵母株が、工業的な発酵装置の中で野生型の酵母半数体との接合を減らす独立栄養型二倍体であるということである。その結果、INO1遺伝子の多数コピーのロス、あるいはOpi表現型のロスもまた、防ぐことができる。さらに言えば、組み換えられたプラスミドと相同的に再結合された全ての標的部位を持つ、MVY410のような本発明の二倍体株は、容易に胞子を形成することはできず、野生型酵母との接合による遺伝的ドリフトの可能性を減らす。
MVY410のような本発明の改良Opi酵母株とその製法は、これらの株を使用する発酵プロセスを、工業生産を経済的に見合うレベルまで、増殖培地中でイノシトールタイターを増加させるという結果を生む。加えて、INO1遺伝子を運ぶ全ての酵母組み換えプラスミドが一切の薬剤耐性遺伝子マーカーを持っていないので、改善された遺伝的安定性を持ち、現在のFDA規制に従うGRASとみなされ得るようなイノシトール過剰生産リコンビナント酵母が作り出される。これによって、リコンビナントバイオマス、その抽出物あるいは副産物は価値ある食品添加物として利用される。したがって、本発明によって遺伝的に改良される酵母の発酵によるイノシトールの製造コストが低減される。
以下に示した例示的実施形態は、醸造酵母も用いることができるが、好ましくはサッカロマイシーズ・セレバイシエを用いたイノシトール、イノシトール含有代謝産物および燐脂質の連続製造方法に関する。宿主酵母は、その中に燐脂質の生合成の負の制御因子のコードを許容しない安定したリコンビナントDNA配列を含む。そのリコンビナントDNA配列は、より好ましくは、イノシトールあるいはイノシトール含有代謝産物の負の制御因子のコードを許容しない。好ましくは、そのリコンビナントDNA配列は、酵母LEU2遺伝子との置換によって作り出されるOPI1遺伝子欠損である。OPI1の配列およびOPI1遺伝子欠損の製法は、Whiteら(1991年)および米国特許第5,599,701号および第5,529,912号に記述されている。
OPI1遺伝子欠損は、細胞内のイノシトールの過剰生産につながるOpi表現型の誘因となる。過剰の細胞内イノシトールは、次々と増殖培地の中に分泌される。この表現型は、イノシトール−1−燐酸合成酵素をコードするINO1遺伝子の構成的発現によって引き起こされる。この酵素は、グルコース−6−燐酸を、イノシトールの生合成における律速段階となるイノシトール−1−燐酸に変換する。opi1変異体は、ここで参考に紹介される開示文献であるGreenberg,M.L.らのGenetics100(1):19(1982年)に記述されたものであり、そのOpi表現型は、その文献中に記述されたバイオアッセイ「Opiテスト」により選択される。例示的な実施形態では、変異体酵母中に安定的に挿入される目的遺伝子はINO1であるが、本発明は、この遺伝子に限定されない。欠損したOPI1遺伝子を持つ宿主酵母へのINO1遺伝子の多数コピーの相同的なリコンビナントによる挿入は、イノシトール、イノシトール含有代謝産物あるいは燐酸脂質の細胞内プールのさらなる形成を引き起こし、その過剰な細胞内イノシトールは、増殖培地中に分泌される。このOpi表現型は、下記の「Opiテスト」というバイオアッセイによって検出することができる。
しかし、Opi1遺伝子欠損は、ここで参考に紹介される開示文献であるBrachmannらのYeast 14:115(1998年)(以後、”Brachmannら(1998年)”)に記述されたより新しい手法によっても達成できる。この方法を使うと、欠損すべき宿主の部位の配列と相同な、URA3遺伝子および一対のフランキングDNA配列を含む組み換えプラスミドが、形成される。そのプラスミドは、次に、ura3変異体をもちそれ故にウラシル要求性を持つ宿主に形質転換される。その形質転換された株は、次に、ウラシルのない選択培地でコロニー精製され増殖する。Brachmannら(1998年)参照。その形質転換された宿主は、URA3遺伝子を含み、ura3遺伝子変異体を選択する、5−FOA(5−フルオロオロト酸)(ラボ・サイエンティフィック・インク、ニュージャージー州リビングストン)を含む培地におかれたレプリカである。この方法によって、一切の栄養要求性遺伝子マーカーの添加なしに、選択された標的部位の完全欠損に形質転換する内部プラスミド削除を選択できる。標的leu2遺伝子マーカーのような宿主部位の多くが、本発明のpVG102−Aのようなプラスミドを組み込むことによって、INO1遺伝子に代表される”目的遺伝子”の多くのコピーを配置するのに使われるので、この方法は、優位性を持っている。この例では、pVG102−AのLEU2は、選択遺伝子マーカーと標的遺伝子マーカーの両機能を提供する。加えて、Brachmannら(1998年)によって記述された方法は、代謝経路中の選択された酵素の発現を抑制する転写因子をコードする遺伝子のような、宿主にある他の標的注目サイトの欠損をゼロにするために使用することができる。
本発明は、さらに、下の参考例に記述されるが、本発明の精神と要旨を維持する限り、多くの変形および改良がされ得ることを理解すべきである。
参照例
INO1構造遺伝子の少なくとも2つの内在性コピーと、組み換えプラスミドの相同的リコンビナントよってINO1遺伝子を多数挿入したサッカロマイシーズ・セレバイシエ株MVY410とを含み、opi1遺伝子欠損、JAG1と相同的なサッカロマイシーズ・セレバイシエ二倍体を形成するための好ましい材料と方法を、次に示す。本発明によれば、薬剤耐性マーカーを含まない、多くの他のOpi、サッカロマイシーズ・セレバイシエの他の株および他の酵母が作製され得るということが理解できる。
OPI1遺伝子の完全欠損を運ぶ他、選択的発現の誘因となる非致死的遺伝子の変異体を含む、両接合タイプのサッカロマイシーズ・セレバイシエJAG1半数体酵母株(サッカロマイシーズ・セレバイシエJAG1二倍体は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション,10801 University Blvd., Manassas,VA 20110−2209に、1999年12月16日付けで登録した。特許登録番号は、PTA−1065である。)が、最初に作製された。宿主アミノ酸および核酸の生合成経路のHIS3、TRP1およびURA3遺伝子の中の選択的変異体は、二倍体を作り出すために、his3、trp1およびura3変異遺伝子を運ぶ株と遺伝子的交配によって、Opi変異遺伝子に導入された。これらの二倍体株は、次々と分泌され、それらの4分子または子嚢は分割され、目的の栄養要求性半数体胞子は、選択的栄養要求性用の選択的培地の中で同定およびコロニー精製された。その選択された栄養要求性半数体胞子から、さらに、OPI1遺伝子欠損と目的の栄養要求性の分離を確認するため、下記のOpiテストバイオアッセイによって、それらのOpi表現型が選択された。遺伝子的交配の一般的な方法、酵母分泌、4分割および栄養要求性胞子選択は、Guthrieら(1991年)に記述されている。
細菌の形質転換とプラスミドの維持のため、Escherichia coli JA221[F− hsdR lacyleuB6 trpE5 recA1 lambda‐](ATCC登録番号33875およびここで参考として紹介される開示文献であるClarke, L.ら, J. Mol. Biol. 120:517(1978)に開示)が用いられた。
用いられたサッカロマイシーズ・セレバイシエ株の遺伝子型とソースは、下記の表1に示される。
【表1】
Figure 2004524817
* Dr. Susan A. Henryから要望により使用可能。
** ATCC登録No.PTA−1065。
表2は、各々の構築プラスミドに含まれた遺伝子を示す。
【表2】
Figure 2004524817
プラスミドpNO101は、Dr. Susan A. Henryのプラスミド・コレクションから入手されたものであり、要望によって入手可能である。
Jones, J.S.ら、Yeast 6:36(1990年)、ここでは、参考として収録されるものの開示である。
図1から9は、pVGファミリープラスミドの詳細な地図を示す。
* E.coliNM522を宿主としたプラスミドpVG101は、特許登録称号PTA−1064の下、1999年12月16日に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、10801 University Blvd., Manassas, VA 20110−2209に寄託された。
プラスミドpVG102−Hは、Hind3制限サイトを欠く他は、プラスミドpVG102と同じものである。
総てのDNAの取り扱いは、Sambrook,U.ら (1989年)の記述通りに実行された。特記しない限り、制限酵素には、New England BiolabsおよびBeverly, MAのものを用い、この製造の条件は、プラスミドの酵素作用を発揮する条件に従った。特記しない限り、分子生物学上の試薬、アミノ酸およびアガロースは、Fisher Scientific(Pittsburgh, PA)より購入した。培地成分および添加試薬は、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)から購入した。他の全ての通常目的の試薬は、Sigma Chemical Co. (St. Louis, MO)から購入した。
また、次の増殖用培地および遺伝子的方法も用いられた。amp遺伝子を含むプラスミドDNA(図1−3、5および7)を保持するために用いられたE. Coli JA221細胞(ATCC登録番号33875)は、最終濃度50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地(Sambrook, U.ら (1989年)参照。)で増殖された。ampを持たず、酵母LEU2選択遺伝子マーカーを持つプラスミドDNA(図4、6、8および9)を保持するために増殖されたJA221細胞は、最小培地M9+Trp(1L当りのM9培地には、NaHPO 6g;KHPO 3g;NaCl0.5g;NHCl 1g;1M MgSO4, 2ml ;20%グルコース10ml;1M CaCl 0.1mlを含み最終濃度50μg/mlのトリプトファンを添加後pH=7.4に調整された。)にて増殖された。細菌株は、全て、37℃にて回転数220rpmの継続的振とうにより培養された。
酵母の増殖と胞子形成に用いられた培地は、Shermanら (1978年)に記述されている。ルーチンとしての培養には、YEPD培地(1%抽出酵母 、2%ペプトン、 2%グルコース)が用いられた。合成完全培地1L当りには、グルコース20g、ビタミンフリーの酵母窒素ベース(Difco)6.7g、バイオチン2μg、カルシウム・パントセネート400μg、葉酸2 μg、ニコチン酸400μg、p−アミノベンゾイック酸200 μg、ピリドキシン・ハイドライドクロライド400μg、ミョ−イノシトール2mg、リシン20mg、スレオニン300mg、トリプトファン20mg、ロイシン60mg、ヒスチジン10mg、アデニン20mg、ウラシル40mgおよび寒天培養地(プレートのみ)20gが含まれた。栄養要求性の遺伝子マーカーleu2, his3, trp1およびura3は、完全培地の中から1成分(それぞれ、ロイシン、ヒスチジン、トリプトファンおよびウラシル)を抜いた選択培地上で確認された。そのような培地は、“ドロップアウト培地”と命名され、例えば、ヒス−ドロップアウト培地は、ヒスチジンのない完全培地である。イノシトールフリー培地(I)は、ミオ−イノシトールを欠くという例外を持つ合成完全培地と同一である。サッカロマイシーズ・セレバイシエを含む全ての実験において、培養は、30℃で保温され、液体培養の場合には、その培養は回転数220rpmで連続的に振とうされた。
細菌株E.coli JA221は、Hanahanら(1983年)に記述されたカルシウムクロライド処理に続いて、プラスミドDNAにより形質転換された。
INO1遺伝子を含む酵母組み込み型プラスミドの作製は、次のように行われた(図10−13を再度参照。)。TRP1およびINO1遺伝子を含むプラスミドpNO101由来のSal1/Sac1断片は、まず、Sal1によってpNO101プラスミドをカットして、次に、付着末端を平滑末端に変えるために、T4DNAポリメラ−ゼにより処理することによって、用意された。そのDNA断片は、次に、Sac1による温浸によって、プラスミドの残りから切除された。次に、得られた断片は、アガロースゲル電気泳動によりゲル精製され、プラスミドpVG101(図1)を作製するために、pJJ250プラスミドのマルチクローニングサイトのSac1−Sma1の間に挿入された。TRP1遺伝子を含むBamH I/BamH I DNA断片は、pVG101酵母組み換えプラスミドから切除され、残りのプラスミドは、誘導プラスミドpVG102(図2)を作製するため、環状化された。図12に模式的に示すように、Hind3サイトを欠いたさらなる誘導pVG102は、pVG102−Hプラスミド(図3)を作製するため、Hind3酵素によってプラスミドpVG102を温浸し、T4 DNAポリメラ−ゼを用いた処理によりそのサイトを平滑化し、それを環状化することにより用意された。図11に示すように、URA3遺伝子を含むプラスミドpJJ244由来のHind3/Hind3 DNA断片は、pVG103(図5)を作製するため、プラスミドpVG102のHind3サイトに挿入された。図12に示すように、pVG101由来のTRP1遺伝子を含むBamH I/BamH I DNA断片は、プラスミドpVG104(図7)を作製するため、プラスミドpVG102−HのBamH Iサイトに挿入された。amp遺伝子を含むDraI/FspI DNA断片は、それぞれ、名付けて、pVG102−A(図4)、pVG103−A(図6)およびpVG104−A(図8)という薬剤耐性遺伝子を含まない誘導プラスミドを作製するために、プラスミドpVG102(図2)、pVG103(図5)およびpVG104(図7)から切除された。図13に示すように、最終的に、プラスミドpJJ217由来のHIS3遺伝子を含むBamH I/BamH I DNA断片は、プラスミドpVG105−A(図9)を作製するため、プラスミドpVG102−AのBamH Iサイトに挿入された。酵母では、ここに記述された組み換えプラスミドpVG102−A(図4)、103−A(図6)、104−A(図8)、および105−A(図9)は、amp遺伝子の欠如を確認するため、制限酵素によってマップされ、付加的に、PCR増幅が行われた。
相同性リコンビナントによる酵母組み換えプラスミドを用いた酵母の形質転換は、まず、酵母組み換えプラスミドを切断して線状化するところから行われた。プラスミドpVG103−A(図6)は、プラスミドの標的遺伝子マーカーのURA3 ORF内でカットする制限酵素Sca1で切断された。プラスミドpVG104−A(図8)は、プラスミドの標的遺伝子マーカーのTRP1 ORF内でカットするHind3で切断された。プラスミドpVG105−A(図9)は、標的遺伝子マーカーのHIS3 ORF内で切断するNde1で切断された。同様に、もし、酵母のleu2標的遺伝子変異体がプラスミドpVG102−Aとのリコンビナントの標的にされるなら、このプラスミドは、プラスミドの標的遺伝子マーカーのLEU2 ORF内で切断するAf12のような制限酵素で切断することによって、線状化される。同様に、ADE2、LYS1およびMET15のような他の標的遺伝子マーカーは、これらの遺伝子のORF内で切断する制限酵素で切断され、線状化され得る。
Opi[イノシトールの過剰生産]表現型を調べるため、“Opiテスト”または“Opiバイオアッセイ”と呼ばれる次の方法が用いられた。:
1.サッカロマイシーズ・セレバイシエの株は、ここで参考として紹介される開示文献である、Greenberg, M.らのMol.Gen.Genet.186:157(1982年)およびGreenberg, M.L.らのGenetics 100:19(1982年)に最初に記述された方法の改良によって、Opi表現型のテストに供された。
2.テストに供される株は、Iプレート上でパッチされ、24時間の培養期間経過後、そのプレートは、滅菌水中のテスト株(AID)の懸濁液でスプレイされた。使用されたそのテスト株AIDは、赤色表現型を与えるade1遺伝子マーカーと相同であり、また、イノシトール栄養要求性(表1)を与えるINO1遺伝子マーカーと相同な二倍体である。イノシトールを欠く培地の被検株によるイノシトールの過剰生産および排出は、図14A−14Dに示す被検細胞のパッチ周囲の赤色ハローに見られるように、スプレーの24時間後に、被検株の増殖という結果につながる。図14Aは、野生型に制御されたW303二倍体株を、:図14Bは、INO1遺伝子の2つの内在性コピーを含む、JAG1二倍体株(Opi表現型)を、:図14Cは、INO1遺伝子の最高6コピーと、細菌ampマーカー遺伝子の2から4個のコピーを含むYS3二倍体株を、:そして、図14Dは、INO1遺伝子の合計8個のコピーを含むMVY410二倍体株(Opi表現型)を示す。
JAG1変異体株(表1を参考。)(図14D)を作製するために、接合型が“a”であるOP−Δ2のような酵母株(米国特許第5,529,912号および第5,599,701号の表1に記述される)が、W303接合型“α”半数体(Yeast Genetic Stock CENter, Dept. of Molecular Biology and Cell Biology, University of California, Berkeley)(接合型”α”以外は米国特許第5,529,912号および第5,599,701号の表1に記述されたW303−1Aと同じ遺伝子型)と掛け合わされた。その結果物である二倍体は、ロイシン、トリプトファンおよびウラシルを欠く以外は上述の完全合成培地に似た培地で増殖および選択された。その結果物である二倍体は、変異his3遺伝子と相同なので、ヒスチジンが培地に存在していなければならない。
上記掛け合わせの処理の結果物である二倍体は、次に、胞子形成され、四分子分割され、そして、変異遺伝子his3、trp1、およびura3を含む両接合型の所望の半数体胞子または子嚢胞子は、ヒスチジン、トリプトファンあるいはウラシルをを一切含まない選択培地にて、コロニー精製された。半数体胞子の胞子形成、四分子分割およびコロニー精製の一般的手法は、例えば、Shermanら(1978年) およびGuthrieら(1991年)に記述されている。選択された胞子は、上述のOpiテストによって検査された。所望の胞子は、JAG1半数体のMATaおよびMATαであった。これらは、用いられた親宿主の半数体株である。
栄養要求性マーカーhis3、trp1、およびura3を持つ相対接合型のJAG1親半数体の用意を始めることが要求されるなら、まずJAG1二倍体(表1)(ATCC登録番号PTA−1065)の胞子を形成させ、その子嚢または四分子を分割して、例えばShermanら(1978年) およびGuthrieら(1991年)によって記述された標準的な方法によって、相対接合型の胞子半数体を分離およびコロニー精製することができる。
各JAG1半数体株、MATaおよびMATαは、次に、ここで参考として紹介される開示文献である、Ito,H.らのJ.Bacteriol. 153:163(1983年)に記述され、さらにHirsch,J.P.らのMol. Cell. Biol. 6:3320(1986年)によって改良された酢酸リチウム法を用いて、上述の線状化組み換えプラスミドpVG103−A、pVG104−AおよびpVG105−Aによって連続的に形質転換された。
それぞれのプラスミドの組み換え操作の後、酵母組み換えプラスミドを取り込み、安定的に組み込んだ半数体は、そのような酵母組み換えによって形質転換する前に栄養要求性半数体株によって必要とされた栄養素を欠く選択培地で、コロニー精製および増殖された。このコロニー精製処理は、次のプラスミド形質転換が行なわれる前に、実施された。全ての形質転換の最後に、全ての栄養要求性の栄養素を欠いた最小培地で増殖することによって、それぞれの接合型半数体の自律栄養性表現型を確認するために、最後の選択ステップが用いられた。
その最後のステップは、既知の技術的な方法(Guthrieら (1991年)を再度参照)によって上述の結果物である相対接合型の栄養自律型半数体を掛け合わせること、完全培地での二倍体の増殖、およびOpiテストによるイノシトールの過剰生産の確認であった。INO1遺伝子の合計8個のコピー(2個の内在性コピーと6個の組み込みコピー)を含む、この最後の独立栄養型二倍体は、図14Cに示されたYS3株よりも多くのイノシトールを分泌するものとして図14Dに示される、名付けてMVY410である。
MVY410二倍体株は、米国特許第5,296,364号および第5,626,847号に記述されるような発酵処理を用いてイノシトールを製造するのに用いることができる。
本発明は、図面に基づいて詳細に記述されてきたが、かかる詳細は、その目的に準ずるものであり、変形は、クレームにより制限され得るとして除外する本発明の精神および要旨から逸脱することがない範囲で、いわゆる当業者によってなされ得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
酵母組み換えプラスミドpVG101の概略図を示す。
【図2】
酵母組み換えプラスミドpVG102の概略図を示す。
【図3】
酵母組み換えプラスミドpVG102−Hの概略図を示す。
【図4】
酵母組み換えプラスミドpVG102−Aの概略図を示す。
【図5】
酵母組み換えプラスミドpVG103の概略図を示す。
【図6】
酵母組み換えプラスミドpVG103−Aの概略図を示す。
【図7】
酵母組み換えプラスミドpVG104の概略図を示す。
【図8】
酵母組み換えプラスミドpVG104−Aの概略図を示す。
【図9】
酵母組み換えプラスミドpVG105−Aの概略図を示す。
【図10】
本発明において用いられる図1〜9の酵母組み換えプラスミドの構築方法の概略図を示す。
【図11】
図10と同様、本発明において用いられる図1〜9の酵母組み換えプラスミドの構築方法の概略図を示す。
【図12】
図10と同様、本発明において用いられる図1〜9の酵母組み換えプラスミドの構築方法の概略図を示す。
【図13】
図10と同様、本発明において用いられる図1〜9の酵母組み換えプラスミドの構築方法の概略図を示す。
【図14】
平板Opiアッセイの写真であり、W303野生2倍体(対照)(図14A)、2つの内在性コピーのINO1遺伝子をもつJAG1株二倍体(Opi表現型)(図14B)、最大6コピーのINO1遺伝子と、2−4コピーの細菌性ampマーカー遺伝子をもつYS3株2倍体(図14C)、全部で8コピーのINO1遺伝子をもつMVY410株二倍体(Opi表現型)(図14D)について示す。これらの株を用いたイノシトールの過剰生産と分泌は、イノシトール欠損培地上で、生育パッチテストのハローにより確認されたAID指標株の増殖を招く。

Claims (61)

  1. 宿主に薬剤耐性遺伝子を一切加えることなく、少なくとも1つの目的遺伝子を宿主半数体酵母細胞のゲノムの特異的な部位に安定的に挿入し、遺伝子組み換えによる二倍体を作製する方法であり、
    非致死的で選択可能な遺伝子変異、標的遺伝子変異を半数体の接合対の少なくとも一方に含む、対立する交配型の宿主半数体酵母を構築すること、
    少なくとも1または1連の酵母組み込みプラスミドであって、各プラスミドがプラスミド増幅用宿主内においてプラスミドの複製ができ、かつ宿主から形質転換コロニーを選択できる選択遺伝子マーカー、宿主酵母ゲノム上の標的遺伝子変異、特異的変異を加えられた相同性領域へのプラスミドの挿入を確認するための標的遺伝子マーカー、宿主酵母内において発現させようとする目的遺伝子、及びプラスミド増幅用宿主内において機能するDNA複製のオリジンを含有し、薬剤耐性遺伝子を一切含まない酵母組み換えプラスミドを構築すること、
    該プラスミド増幅用宿主が、プラスミド増幅宿主への形質転換により酵母組み換えプラスミドの選択遺伝子マーカーが発現することによる選択的表現型を示す、プラスミド増幅用宿主内における各酵母組み換えプラスミドを増幅すること、
    増幅した酵母組み換えプラスミドを精製すること、
    酵母組み換えプラスミドの標的遺伝子マーカーが宿主上相同的な標的遺伝子変異に該組み換えプラスミドが組み込まれるような、宿主酵母半数体の対立する交配型を酵母組み換えプラスミドにより形質転換すること、
    及び
    二倍体細胞を作製するための、対立する交配型を持つ形質転換半数体酵母細胞を交配すること、
    という各段階を有する作製方法。
  2. 前記組のプラスミドを構成する各組み換えプラスミドは、前記宿主酵母の特定標的遺伝子変異体が、各組み換えプラスミドによって持ち込まれた前記標的遺伝子マーカーによって救われる前記宿主中の選択的表現型を誘因となるような、前記宿主酵母の各標的遺伝子変異体と相同的な標的遺伝子マーカーを運ぶ、請求項1記載の作製方法。
  3. 前記宿主酵母中の前記標的遺伝子変異体は、前記宿主のアミノ酸生合成経路の1あるいはそれ以上の遺伝子における遺伝子変異体を含み、加えて、前記宿主に選択的で非致死な前記宿主の核酸生合成経路の1あるいはそれ以上の遺伝子における遺伝子変異体を含む、請求項2記載の作製方法。
  4. 前記宿主のアミノ酸生合成経路の前記変異体は、his3、leu2、lys1、met15およびtrp1を含む、請求項3記載の作製方法。
  5. 前記宿主の核酸生合成経路の前記変異体は、ade2およびura3を含む、請求項3記載の作製方法。
  6. 前記酵母組み換えプラスミド中の前記選択遺伝子マーカーは、プラスミド増幅宿主の選択的栄養要求性を補完する酵母遺伝子である、請求項1記載の作製方法。
  7. 前記プラスミド増幅宿主は細菌である、請求項6記載の作製方法。
  8. 前記細菌のプラスミド増幅宿主は、ロイシン要求性である、請求項7記載の作製方法。
  9. 前記細菌の宿主は、E.coli JA221である、請求項8記載の作製方法。
  10. 前記酵母組み換えプラスミドの前記選択遺伝子マーカーは、酵母LEU2遺伝子を有する、請求項8記載の作製方法。
  11. 前記酵母組み換えプラスミドの前記選択遺伝子マーカーは、酵母LEU2遺伝子を有する、請求項9記載の作製方法。
  12. 前記プラスミド増幅宿主は、ロイシン、トリプトファンおよびウラシル要求性の細菌である、請求項7記載の作製方法。
  13. 前記細菌の宿主は、E.coli MH1066である、請求項12記載の作製方法。
  14. 前記酵母組み換えプラスミドの前記選択遺伝子マーカーは、LEU2、TRP1およびURA3から構成されるグループから選択されたものである、請求項13記載の作製方法。
  15. 前記プラスミド増幅宿主は酵母である、請求項6記載の作製方法。
  16. 前記目的遺伝子は、前記組の酵母組み換えプラスミドの全構成遺伝子と同じ遺伝子である、請求項1記載の作製方法。
  17. 前記目的遺伝子は、前記組の各酵母組み換えプラスミドの各構成遺伝子と同じ遺伝子ではない、請求項1記載の作製方法。
  18. 前記目的遺伝子はINO1である、請求項1記載の作製方法。
  19. 前記宿主酵母はサッカロマイシーズ属の酵母である、請求項1記載の作製方法。
  20. 前記宿主酵母は、opi表現型を持つサッカロマイシーズ属の酵母であって、それぞれ、ヒスチジン、トリプトファンおよびウラシルの要求性を引き起こす標的遺伝子変異体としてhis3、trp1およびura3遺伝子を変異し、
    前記宿主の各半数体接合型は、一組の酵母組み換えプラスミドによって連続的に転換され、
    前記組の酵母組み換えプラスミドは、選択遺伝子マーカーLEU2、前記組を構成する1つのプラスミドである標的遺伝子マーカーHIS3、前記組を構成するもう1つのプラスミドである標的遺伝子マーカーTRP1、そして、前記組を構成するもう1つのプラスミドである標的遺伝子マーカーURA3、目的遺伝子INO1および細菌のORIであるDNA複製のオリジンを有する、請求項1記載の作製方法。
  21. 選択遺伝子マーカー、標的遺伝子マーカー、目的遺伝子、および、プラスミドが一切の薬剤耐性遺伝子を含まないDNA複製のオリジンを有する、酵母組み換えプラスミド。
  22. 前記選択遺伝子マーカーは、細菌あるいは酵母のようなプラスミド増幅宿主の前記プラスミドの複製を可能とし、また、前記組み換えプラスミドを含んでいる形質転換された宿主コロニーの選択をも可能とする、請求項21記載の酵母組み換えプラスミド。
  23. 前記選択遺伝子マーカーは、前記プラスミド増幅宿主の選択的表現型を補完する遺伝子である、請求項22記載の酵母組み換えプラスミド。
  24. 前記選択遺伝子マーカーは、細菌または酵母の宿主においてロイシン要求性を補完する、請求項23記載の酵母組み換えプラスミド。
  25. 前記選択遺伝子マーカーは、LEU2酵母遺伝子を有する、請求項24記載の酵母組み換えプラスミド。
  26. 前記標的遺伝子マーカーは、前記宿主における選択的発現を引き起こす、宿主酵母の特定標的遺伝子変異体への前記組み換えプラスミドの安定的な組み換えを促し、
    さらに、前記標的遺伝子変異体は、前記標的遺伝子マーカーと相同的である、請求項21記載の酵母組み換えプラスミド。
  27. 前記標的遺伝子マーカーは、前記宿主酵母のアミノ酸生合成経路の酵素をコードする遺伝子、あるいは、前記宿主酵母の栄養要求性を補完する核酸生合成経路の酵素をコードする遺伝子である、請求項26記載の酵母組み換えプラスミド。
  28. 前記標的遺伝子マーカーは、HIS3、LEU2、LYS1、MET15、TRP1、ADE2およびURA3酵母遺伝子のいずれかあるいは全てを含む、請求項26記載の酵母組み換えプラスミド。
  29. 前記目的遺伝子は、宿主酵母において発現されるものであり、前記組を構成する全てのプラスミドに共通する、請求項21記載の酵母組み換えプラスミド。
  30. 前記目的遺伝子は、宿主酵母において発現されるものであり、前記組を構成する各プラスミドに共通するものではない、請求項21記載の酵母組み換えプラスミド。
  31. 前記目的遺伝子は、宿主酵母と相同的である、請求項29記載の酵母組み換えプラスミド。
  32. 前記目的遺伝子は、宿主酵母と相同的である、請求項29記載の酵母組み換えプラスミド。
  33. 前記DNA複製のオリジンは、それぞれ、細菌のプラスミド増幅宿主または酵母プラスミド増幅宿主における前記組み換えプラスミドのエピソームの複製を可能とする、細菌のDNA複製のオリジンまたは酵母のDNA複製のオリジンである、請求項21記載の酵母組み換えプラスミド。
  34. 前記細菌のDNA複製のオリジンはpUC18由来のORIである、請求項33記載の酵母組み換えプラスミド。
  35. 前記酵母のDNA複製のオリジンは、2μ、ARSおよびCENから構成されるグループから選択されるものである、請求項33記載の酵母組み換えプラスミド。
  36. 前記DNA複製のオリジンは、細菌用の自律DNA複製配列と酵母用の自律DNA複製配列を含むシャトルベクターである、請求項21記載の酵母組み換えプラスミド。
  37. 前記標的遺伝子マーカーは、HIS3、TRP1およびURA3から構成されるグループから選択されたものであり、
    前記目的遺伝子は、イノシトール−1−リン酸合成酵素をコードし、
    前記DNA複製のオリジンは細菌ORIの配列である、請求項25記載の酵母組み換えプラスミド。
  38. 前記目的遺伝子はINO1である、請求項37記載の酵母組み換えプラスミド。
  39. 前記選択遺伝子マーカーおよび前記標的遺伝子マーカーはLEU2酵母遺伝子を有する、請求項21記載の酵母組み換えプラスミド。
  40. 前記選択遺伝子マーカー、前記標的遺伝子マーカーおよび前記目的遺伝子は、すべて酵母遺伝子である、請求項21記載の酵母組み換えプラスミド。
  41. 前記酵母遺伝子は、サッカロマイシーズ属のものである、請求項40記載の酵母組み換えプラスミド。
  42. opi表現型を誘因するOPI1遺伝子の相同的変異体を含み、半数体遺伝子につき、変異標的部位his3、trp1、ura3のいずれかあるいは全てに挿入された前記遺伝子の少なくとも1つのコピーを持った、INO1遺伝子の8つまでの機能的全コピーを含み、一切の薬剤耐性遺伝子を含まない、サッカロマイシーズ属の二倍体酵母細胞。
  43. 二倍体遺伝子につき、8つの異なる部位にINO1遺伝子の少なくとも8つの機能的コピーを含むサッカロマイシーズ属の独立栄養型二倍体酵母細胞。
  44. 二倍体遺伝子につき、少なくとも16の異なる部位にINO1遺伝子の少なくとも16の機能的コピーを含むサッカロマイシーズ属の独立栄養型二倍体酵母細胞。
  45. 二倍体遺伝子につき、少なくとも16の異なる部位に目的遺伝子の少なくとも16の機能的コピーを含むサッカロマイシーズ属の独立栄養型二倍体酵母細胞。
  46. 一切の薬剤耐性遺伝子を含んでいないイノシトールリッチの酵母。
  47. a)宿主に非致死であって、かつ選択的な、遺伝子中の1またはそれ以上の標的遺伝子変異体を含むopi表現型を含む各接合型サッカロマイシーズ属の半数体宿主酵母を作製し、
    b)前記宿主の対応する標的遺伝子変異体座に挿入され、各酵母組み換えプラスミドが選択遺伝子マーカー、標的遺伝子マーカー、目的遺伝子およびDNA複製のオリジンを有し、一切の薬剤耐性遺伝子を含まないような、1またはそれ以上の酵母組み換えプラスミドを作製し、
    c)プラスミド増幅宿主微生物中で、各酵母組み換えプラスミドをエピソマリーに増幅し、
    d)ステップc)由来の増幅酵母組み換えプラスミドを精製し、
    e)各半数体宿主細胞の各標的部位において、特定標的遺伝子変異体に促される各組み換えプラスミドを持った宿主酵母を連続的に形質転換し、
    f)二倍体を形成するための相対接合型の形質転換された宿主半数体を接合し、
    g)イノシトール、イノシトール含有代謝産物、燐脂質、フォスファチジルイノシトールおよび他の代謝産物を作製するために、結果物たる遺伝子改良酵母を発酵する、
    各ステップを有する、イノシトール、イノシトール含有代謝産物、燐脂質、フォスファチジルイノシトールの作製方法。
  48. 前記半数体宿主酵母中の前記標的遺伝子変異体は、ade2、his3、leu2、lys1、met15、trp1およびura3のいずれかまたは全てを有する、請求項47記載の作製方法。
  49. 前記半数体宿主酵母中の前記標的遺伝子変異体は、his3、trp1およびura3のいずれかまたは全てを有する、請求項47記載の作製方法。
  50. 前記半数体宿主酵母中の前記標的遺伝子変異体は、さらに加えて、leu2を有する、請求項49記載の作製方法。
  51. 前記酵母組み換えプラスミド中の前記標的遺伝子マーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS1、MET15、TRP1およびURA3のいずれかまたは全てを有する、請求項47記載の作製方法。
  52. 前記酵母組み換えプラスミド中の前記標的遺伝子マーカーは、HIS3、TRP1およびURA3のいずれかまたは全てを有する、請求項47記載の作製方法。
  53. 前記酵母組み換えプラスミド中の前記標的遺伝子マーカーは、さらに加えて、LEU2を含む、請求項52記載の作製方法。
  54. 前記プラスミド増幅宿主微生物は、E.coli JA221である、請求項47記載の作製方法。
  55. ステップf)の前記二倍体は独立栄養型である、請求項47記載の作製方法。
  56. 一切の薬剤耐性遺伝子を含まない二倍体中の異なる部位に、INO1遺伝子のコピーを少なくとも3つ以上で約16またはそれ以上までを含むように遺伝子的に製造されたopi1を持つサッカロマイシーズ属の酵母独立栄養型二倍体。
  57. 二倍体中の異なる部位に、INO1遺伝子のコピーを少なくとも7つ以上で約16またはそれ以上までを含むように遺伝子的に製造されたopi1を持つサッカロマイシーズ属の酵母独立栄養型二倍体。
  58. 一切の薬剤耐性遺伝子を含まない、請求項57記載の酵母独立栄養型二倍体。
  59. 宿主の標的遺伝子変異と相同的であり、宿主の相当な栄養要求性を補う相当の機能的遺伝子を有する標的遺伝子マーカーを運ぶ1またはそれ以上の酵母組み換えプラスミドの挿入によって補われる宿主の栄養要求性の表現型を引き起こす、ade2,his3,leu2,lys1,met15,trp1およびura3のいずれかあるいは全てを有する1またはそれ以上の遺伝子変異を含むように遺伝子的に作製されたopi表現型を持つサッカロマイシーズ属の酵母細胞。
  60. 前記酵母組み換えプラスミドに持ち込まれた前記INO1遺伝子が、酵母組み換えプラスミドが促された前記宿主の各標的遺伝子変異体に安定して組み込まれるように、前記酵母組み換えプラスミドは、さらに、INO遺伝子を持ち込む、請求項59記載の酵母細胞。
  61. 前記酵母組み換えプラスミドは、一切の薬剤耐性遺伝子を持ち込まない、請求項60記載の酵母細胞。
JP2002532580A 2000-10-03 2001-10-03 薬剤耐性マーカーを含有しない遺伝子組み換え細胞とその作製方法 Pending JP2004524817A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US09/678,339 US6645767B1 (en) 2000-10-03 2000-10-03 Cells engineered to contain genes of interest without expressed bacterial sequences and materials and methods therefor
PCT/US2001/030912 WO2002029009A1 (en) 2000-10-03 2001-10-03 Cells engineered to contain genes of interest without drug resistance gene markers and materials and methods therefor

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004524817A true JP2004524817A (ja) 2004-08-19

Family

ID=24722380

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002532580A Pending JP2004524817A (ja) 2000-10-03 2001-10-03 薬剤耐性マーカーを含有しない遺伝子組み換え細胞とその作製方法

Country Status (5)

Country Link
US (2) US6645767B1 (ja)
EP (1) EP1328618A4 (ja)
JP (1) JP2004524817A (ja)
AU (1) AU2002211383A1 (ja)
WO (1) WO2002029009A1 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8153344B2 (en) * 2004-07-16 2012-04-10 Ppg Industries Ohio, Inc. Methods for producing photosensitive microparticles, aqueous compositions thereof and articles prepared therewith
US8563212B2 (en) * 2004-07-16 2013-10-22 Transitions Optical, Inc. Methods for producing photosensitive microparticles, non-aqueous dispersions thereof and articles prepared therewith
US8563213B2 (en) * 2004-07-16 2013-10-22 Transitions Optical, Inc. Methods for producing photosensitive microparticles
US7872115B2 (en) * 2004-09-15 2011-01-18 Schering Corporation Reporter assay screens for protein targets in Saccharomyces cerevisiae
EA016258B1 (ru) * 2005-03-18 2012-03-30 Микробиа, Инк. Рекомбинантные грибы, продуцирующие каротиноиды, и способы их применения
WO2008042338A2 (en) 2006-09-28 2008-04-10 Microbia, Inc. Production of carotenoids in oleaginous yeast and fungi
US20080299624A1 (en) * 2007-06-01 2008-12-04 Edward Heslop Continuous fermentation apparatus and method
WO2009029644A1 (en) * 2007-08-27 2009-03-05 Cornell Research Foundation, Inc. Methods to improve alcohol tolerance of microorganisms
FR2991340B1 (fr) * 2012-06-01 2016-02-19 Lesaffre & Cie Procede d'obtention de souches de levure ameliorees par modification genetique et croisement
WO2016026954A1 (en) * 2014-08-21 2016-02-25 Vib Vzw Ars induced gene amplification

Family Cites Families (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US2112553A (en) 1935-06-07 1938-03-29 Bartow Edward Manufacture of i-inositol
WO1988008027A1 (en) * 1987-04-09 1988-10-20 Delta Biotechnology Limited Yeast vector
AU4005289A (en) * 1988-08-25 1990-03-01 Smithkline Beecham Corporation Recombinant saccharomyces
US5545727A (en) * 1989-05-10 1996-08-13 Somatogen, Inc. DNA encoding fused di-alpha globins and production of pseudotetrameric hemoglobin
US5626847A (en) 1990-12-20 1997-05-06 Agrawal; Pramod Method of purifying cyclitols
US5599701A (en) 1991-01-14 1997-02-04 Carnegie Mellon University Inositol-excreting yeast
SG84484A1 (en) * 1991-02-25 2001-11-20 Ciba Geigy Ag Improved yeast vectors
CA2063195C (en) 1991-03-20 2000-06-27 Susan A. Henry Inositol-excreting yeast
US5296364A (en) 1992-07-21 1994-03-22 Cerechem Corporation Microbial method of producing inositol
EP0683225B1 (en) 1994-04-19 2000-07-05 Toray Industries, Inc. Process for production of inositol and microorganism used therefor
EP1185623A4 (en) * 1999-03-03 2005-03-23 Regents Board Of GENETIC AND EPIGENETIC HANDLING OF ABC TRANSPORTERS AND EXTRACELLULAR PHOSPHATASES FOR THE CONFERENCE / DELETION OF DRUG RESISTANCE IN BIOLOGICAL SYSTEMS, AND METHODS FOR DETECTION OF INHIBITORS OF EXTRACELLULAR PHOSPHATASES
DE10328917A1 (de) 2003-06-26 2005-01-20 Volkswagen Ag Fahrzeugnetzwerk

Also Published As

Publication number Publication date
EP1328618A1 (en) 2003-07-23
EP1328618A4 (en) 2004-10-20
US7129079B2 (en) 2006-10-31
US20040126873A1 (en) 2004-07-01
WO2002029009A1 (en) 2002-04-11
AU2002211383A1 (en) 2002-04-15
US6645767B1 (en) 2003-11-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Fu et al. Split marker transformation increases homologous integration frequency in Cryptococcus neoformans
JPS62104585A (ja) ピチア属酵母の部位選択的ゲノム修飾
JP7473137B2 (ja) シュードザイマ・アンタクティカの新規菌株
JPH05184352A (ja) ピヒア パストリス(Pichia pastoris)酵母中での異種遺伝子の発現方法、発現ベクターおよび形質転換微生物
JP2004524817A (ja) 薬剤耐性マーカーを含有しない遺伝子組み換え細胞とその作製方法
Liu et al. Expression of monellin in a food‐grade delivery system in Saccharomyces cerevisiae
EP2145006B1 (de) Expressionssystem zur antibiotikafreien produktion von polypeptiden
JP2001501475A (ja) カンジダ・ウチリスにおけるトランスフォーメーション系
RU2652877C9 (ru) Способ модификации дрожжей Schizosaccharomyces pombe с помощью Cre-lox системы бактериофага Р1, трансформант, полученный таким способом
US20190153475A1 (en) Gene cassette for homologous recombination knock-out in yeast cells
Madzak Yarrowia lipolytica engineering as a source of microbial cell factories
RU2737623C1 (ru) Рекомбинантный штамм дрожжей Pichia pastoris с увеличенной продукцией фитазы Escherichia coli
EP0492274B1 (en) An asporogenous strain of bacillus subtilis and its use as a host for the preparation of heterologous products
CN113122461A (zh) 单细胞蛋白生产菌及其应用
EP2057266B1 (en) Genetic remodeling in bifidobacterium
RU2439157C2 (ru) ГЕНЕТИЧЕСКАЯ КОНСТРУКЦИЯ ДЛЯ ПОЛУЧЕНИЯ СТАБИЛЬНЫХ ТРАНСФОРМАНТОВ ГРИБОВ РОДА Rhizopus
Titorenko et al. Peroxisome biogenesis in Hansenula polymorpha: different mutations in genes, essential for peroxisome biogenesis, cause different peroxisomal mutant phenotypes
Jeong et al. Improvement of fibrinolytic activity of Bacillus subtilis 168 by integration of a fibrinolytic gene into the chromosome
US12018245B2 (en) Yeast having improvement of lactic acid tolerance and use thereof
KR20190001426A (ko) 당근 Hsp17.7 유전자를 포함하는 에스케리키아 속 미생물을 이용하여 산물을 생산하는 방법
KR102613937B1 (ko) 갈락토스 이용에 관여하는 모든 유전자가 결손된 효모 균주 및 이를 이용한 재조합 단백질 생산방법
EP3530739B1 (en) Expression system for productin of a heterologous protein, plasmid expression vectors, method of construction of a recombinant strain of psychrotolerant yeast debaryomyces macquariensis and method of protein production by the recombinant yeast strain
Lyzak et al. Generation of mutations in ADE2 gene using a CRISPR-Cas9 system in the flavinogenic yeast Candida famata
EP0967287A2 (en) Overproduction of riboflavin in yeast
KR20170108635A (ko) 효모 캔디다 뷰티리 sh-14 유래의 신규 리파아제 및 그의 용도

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040804

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071204

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080520