JP2004523518A - より効能が大きく副作用の少ない癌治療方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、癌に苦しむ患者を治療する方法に関するものであり、不快で望ましくない中毒性の副作用がより少なくて小さい配合抗菌薬治療への応用を有している。
【背景技術】
【0002】
配合化学療法は、多くのタイプの癌に対する世間一般に認められた治療法である。多くの場合、2つ以上の薬剤を配合することによる相乗効果が、患者への治療が成功するか失敗するかの違いとなりうる。
【0003】
多くの配合治療法が、腫瘍学の分野において周知である。一例として、MOPP(メクロレタミン(mechlorethamine)、ビンクリスチン(vincristine)、プロカーバジン(procarbazine)、プレドニソン(prednisone) の頭文字語)は、ホジキン病のための効果的な治療法である。幾つかの異なる配合方法(それらの全てが、シスプラチン(cisplatin)、ビンブラスチン(vinblastine)及びブレオマイシン(bleomycin)を含んでいる)が、精巣癌の治療において認められており、この精巣癌は診断患者の98パーセントまで治癒可能である。全部で、300以上の異なる配合方法が使用されてきている。
【0004】
配合化学療法の主な欠点は、相乗作用によって苦しみが増大したり、時には望ましくない中毒作用も加わることさえよくある、ということである。更に、様々な配合方法における各薬剤の投薬スケジュールが、結果として、より大きな毒性を産み出すということが認められている。特に、提案された配合方法がパクリタクセル(paclitaxel)とシスプラチン(cisplatin)の両方の投薬を含んでいる場合、これら2つの薬剤の組み合わせの効果が、投与量制限の腎毒、神経毒、骨髄抑制を引き起こす傾向にある。
【0005】
配合化学療法において重要なもうひとつの検討すべきことは、抗腫瘍剤を投与する順序である。例えば、シスプラチン(cisplatin)又はカルボプラチン(carboplatin)(或いはいずれかのプラチナ複合体の抗腫瘍剤)、及びパクリタクセル(paclitaxel)を、配合治療法の一部として投薬する場合、その毒性を考慮して、パクリタクセルを最初に投与し、その後に、シスプラチンを投与しなければならない、ということが明らかになっている。もし投薬の順序が逆になると、その配合は患者にとって毒性の高いものとなる。そのようなスケジュール依存のひどい毒性が明らかにされると、シスプラチンの後にパクリタクセルを投与するといった配合が排除される。それは、重大な毒性、罹病率、及び死亡の危険性さえあるからである。現在、配合方法において、シスプラチンの後にパクリタクセルを投薬することを安全かつ効果的に行うための方法は存在しない。
【0006】
スルホン酸二ナトリウム2,2'-ジチオビスエタン(文献では、Dimesna や BNP7787 とも言われる)は、人間の患者に対してシスプラチンやパクリタクセルを単一薬剤として投与することに関連する望ましくない毒作用を減少することが明らかにされている。Dimesna は、一般に、その使用等が極めて安全かつ効果的であるとみなされており、これと共に投与される抗腫瘍剤の細胞毒作用を妨げないことが明らかにされている。
【0007】
米国特許 5,919,816 等には、Dimesna、Mesna、及びその他の関連する化合物を使用することが、様々な抗感染性剤や抗糖尿病剤等と同様、多くの抗腫瘍剤の毒性をも減少させることが開示されている。その使用を開示している他の特許が、上記出願と共に提出された情報開示声明の中に見いだされる。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、配合化学療法を投薬することによる、癌患者の治療方法に関するものであり、この方法では、効果的な投薬量及び投薬スケジュールにより、2以上の抗腫瘍剤を、毒性を減少させる量の、以下の式Iで示される保護薬(protective agent)と共に、前記患者に投与する。
R1−S−X1−R2 (I)
ここで、R1 は、水素,C1−C6 アルキル基、又は−S−X2−R3 であり、R2 及びR3 は、それぞれスルホン酸エステル基又はホスホン酸エステル基である。
【0009】
また、X1 及びX2 は、それぞれC1−C6 アルキル基であり、状況に応じて、1以上のヒドロキシ基、スルフヒドリル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
本発明の方法は、莫大な数の配合化学療法のいずれにも有用であると考えられるが、好ましい抗腫瘍剤は、プラチナをベースとした化学療法薬(シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)等)、及びタキサン(taxanes)(パクリタクセル(paclitaxel)やドセタクセル(docetaxel)を含むが、これに限定されない)、及び/又はエポチロン(epothilones)、及び/又はビンカアルカロイド(vinca alkaloids)、及び/又はオキサザホスホリン(oxazaphosphorines)、或いは癌の化学療法に使用される他の薬剤を含んでいる。
【0010】
本発明の方法を実行する時は、投薬量、投薬順序、投薬経路、投薬スケジュール、及びその他の要因を考慮する。幾つかの好ましいスケジュールを、以下の記載において述べる。
【0011】
従って、本発明の目的は、腫瘍の縮小、ライフクオリティ、患者の生存、及び人間の癌の治癒率を向上させるための、癌患者の治療方法の改良を提供することにある。
本発明のもう1つの目的は、毒性防止薬剤を伴う配合化学療法による、癌患者の新規な治療方法を提供することにある。
【0012】
本発明の更にもう1つの目的は、新規で、より安全で、より効果的な、癌患者の治療方法を提供することにある。
他の目的は、以下の記載を読むことで明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ここに述べる好ましい実施例によって網羅されているわけではなく、また、この実施例の構成に限定されるものでもない。この好ましい実施例は、本発明の一般的な原理とその応用及び実際の利用を説明するために選択かつ記述したものであり、それにより、当業者は本発明の教示することを利用し、かつその後に続くことが可能となる。
【0014】
本発明は、癌患者を治療するための新規な配合化学療法を含んでいる。定義上、配合化学療法は、患者への投薬スケジュールを使用して2以上の異なる抗腫瘍剤を投与することを含んでおり、毒性減少剤の投与の結果、毒性が減少し、抗癌効果が向上するものである。本発明の方法は、特に、抗腫瘍剤に加えて、毒性を減少させる量の、式Iで示される保護薬(protective agent)の投与を含んでいる。
R1−S−X1−R2 (I)
ここで、R1 は、水素,C1−C6 アルキル基、又は−S−X2−R3 であり、R2 及びR3 は、それぞれスルホン酸エステル基又はホスホン酸エステル基である。
【0015】
また、X1 及びX2 は、それぞれC1−C6 アルキル基であり、状況に応じて、1以上のヒドロキシ基、スルフヒドリル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
式Iの好ましい保護薬は、各種のチオール(thiols)、二硫化物(disulfides)、チオエーテル(thioethers)を含んでいる。式Iの好ましい化合物の幾つかは、メスナ(mesna)、ジメスナ(dimesna)、5-メチルメスナ(5-methyl mesna)、及びそれぞれの各種の類似体や誘導体を含んでいるが、これらに限定されるものではない。上記の類似体や誘導体では、アルキレンブリッジ(alkylene bridge(s))は1〜4の -CH2- 部分を含んでおり、ヒドロキシ基やアルコキシ基で置換されていてもよく、又はで置換されていなくてもよい。式Iの好ましい化合物のほとんどは、メスナ及びジメスナを含んでいる。
【0016】
抗腫瘍剤の好ましい配合は、タキサン(taxanes)及びプラチナ複合剤の配合;求電子アルキル化薬剤(electrophilic alkylating agents)及びビンカアルカロイド(vinca alkaloids)、オキサザホスホリン(oxazaphosphorines)、プラチナ及びビンカアルカロイド又はブレオマイシン(bleomycin)と、これにステロイド抗腫瘍化合物を伴った、又は伴わない配合;プラチナ複合体及びビンカアルカロイドと、これに抗腫瘍抗生物質を伴った、又は伴わない配合;等を含んでおり、これらの幾つかは以下の表に示されている。
【0017】
多くの場合、抗腫瘍剤の投与量、薬剤注入期間、投与経路、及び投与順序が、治療の結果を決定し、かつ、毒性、薬物関連罹患率、及び薬物治療による患者死亡に大きな影響を与えることがわかってきている。また、投薬と各薬剤の注入期間との間のタイミングが、安全性や治療の効き具合に影響を及ぼす。一例として、パクリタクセル/シスプラチン配合療法における現在の手順は、治療の各サイクル毎に、パクリタクセルを3時間から96時間投与した後にシスプラチンを投与することを必要とする。各サイクルは、約3週間周期で繰り返される。
【0018】
シスプラチンの後にパクリタクセルを投与すると、結果的に、説明できない程の割合で患者に毒性が発生し、その使用ができなくなるということがわかっている。本発明者等は、式Iで示される毒性減少剤を正しい順序で使用することで、そのような毒性を減少させ、又は防止することさえも可能であり、それにより、他の毒性を有する方法よりも一層大きな抗癌作用を可能にするということを見いだした。
【0019】
抗腫瘍剤の配合を投与すると共に、式Iの化合物を、毒性を減少させる量だけ、新規な投薬スケジュールで投与することで、当然ながら、抗癌効果と、患者への所定クールの治療を通しての安全性とが改善される。多くの場合、本発明の方法を固守することで、医者は、より多くの量の抗腫瘍剤を安全に投与することが可能になり、従って、或る特定のクールの治療の成功率を改善することが可能になるかもしれない。
【0020】
本発明の方法に基づく治療の好ましいクールでは、式Iの化合物と共に、効果的な量のタキサン/プラチナの配合を投与する。プラチナの後にタキサンを投与するための好ましいクールは、1〜21日毎に、以下の投与を行うことを含んでいる。
a)10mg/m2-300mg/m2 のプラチナ製剤を15分から96時間に渡って投与した後、
b)10mg/m2-400mg/m2 のタキサンを15分から96時間に渡って投与し、また、
c)2g/m2-50g/m2 の 式Iの化合物を、上記のプラチナの投与に先立って15分から96時間に渡って投与し、かつ、上記の式Iの化合物を、上記のタキサンの投与の前に、又は投与中に、或いは投与後に、15分から96時間に渡って一度に又は分割して、一時的に投与する。
治療の好ましいクールは、まず式Iの化合物を静脈注入した後に、上記プラチナ製剤を静脈注入し、その後に、上記タキサンを投与することを含む。これは、毒性減少剤と共同して行う、プラチナ及びタキサンの全く新規な投薬スケジュールである。
【0021】
更に、吐き気や嘔吐のための従来の前投薬を、一般に認められた医療業務に従って投与してもよい。
シスプラチンは、一般には1〜12時間、最も好ましくは1〜4時間の長期間に渡って、静脈注入により投与するのが好ましい。
【0022】
ジメスナは、静注(IV push)や注入によって投与してもよく、又は口から投与してもよい。そして、ジメスナは、シスプラチンの静脈注入の開始のすぐ前に、又はその開始前の90分までの間に投与するのが好ましい。ジメスナの注入期間は、15分から、毒性予防に必要な限り連続して注入することが可能である。
【0023】
以下に典型的な例を示すが、これは、本発明の方法に従った最も好ましい治療方法を開示するためである。これらの例は、あくまでも例証として示されるものであって、本発明がこれによって網羅されるものでも、また、この具体的な開示内容に限定されるものでもない。
例1
癌に苦しむ患者に、以下の治療を行う。
【0024】
a)4g/m2-80g/m2 のジメスナを、15〜90分に渡って静脈注入するか、或いは、口からの投薬経路によって、投与する。
b)上記a)の完了から1時間以内に、15mg/m2-250mg/m2 のプラチナ複合剤を、0.5mg/min-2mg/min の割合で静脈注入することにより、投与する。
【0025】
c)上記b)の完了から2時間以内に、20mg/m2-250mg/m2 のタキサン製剤を、15分から96時間に渡る静脈注入か、又は口からの投薬経路によって、投与する。
例2
癌に苦しむ患者に、以下の治療を行う。
【0026】
a)4g/m2-80g/m2 のジメスナを、15〜90分に渡って静脈注入するか、或いは、口からの投薬経路によって、投与する。
b)上記a)の完了から1時間以内に、15mg/m2-250mg/m2 のプラチナ複合剤を、0.5mg/min-2mg/min の割合で静脈注入することにより、投与する。
【0027】
c)上記b)の完了から1時間以内に、4g/m2-80g/m2 のジメスナを、15〜90分に渡って静脈注入するか、或いは、口からの投薬経路によって、再投与する。
d)上記c)の完了から2時間以内に、20mg/m2-250mg/m2 のタキサン製剤を、15分から96時間に渡る静脈注入か、又は口からの投薬経路によって、投与する。
例3
癌に苦しむ患者に、以下の治療を行う。
【0028】
a)4g/m2-80g/m2 のジメスナを、15〜90分に渡って静脈注入するか、或いは、口からの投薬経路によって、投与する。
b)上記a)の完了から1時間以内に、15mg/m2-250mg/m2 のプラチナ複合剤を、0.5mg/min-2mg/min の割合で静脈注入することにより、投与する。
【0029】
c)上記b)の完了から24時間以内に、4g/m2-80g/m2 のジメスナを、15〜90分に渡って静脈注入するか、或いは、口からの投薬経路によって、再投与する。
d)上記c)の完了から2時間以内に、20mg/m2-250mg/m2 のタキサン製剤を、15分から96時間に渡る静脈注入か、又は口からの投薬経路によって、投与する。
【0030】
e)上記d)の完了から2時間以内に、4g/m2-80g/m2 のジメスナを、15〜90分に渡って静脈注入するか、或いは、口からの投薬経路によって、再投与する。
プラチナ/タキサン配合療法の効果を決定するために、また、薬剤の投薬順序が細胞毒に影響を与えるかどうかを決定するために、生体外の実験を行った。使用した薬剤は、シスプラチン(CDDP)及びパクリタクセル(
【0031】
:登録商標)であり、使用したセルライン(cell line)は、MCF7/WT(乳癌)であった。実験結果を、以下の表1及び表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
この実験結果は、プラチナの後にタキサンを投与することによる、少なくとも細胞毒の増加が、明らかに認められる。式Iの化合物を毒性を減少させる量(4g/m2-80g/m2)だけ前述の方法で投与することで、この配合薬の望ましくない毒性が減少し、この配合薬の哺乳動物への投与、特に人体への投与が、比較的安全かつ効果的に行われるようになる。
Claims (10)
- 癌患者の治療方法であって、前記患者に以下の薬剤の配合を投与することを有する方法。
a)4g/m2-80g/m2 の式Iの化合物を投与し;
R1−S−X1−R2 (I)
ここで、R1 は、水素,C1−C6 アルキル基、又は−S−X2−R3 であり、
R2 及びR3 は、それぞれスルホン酸エステル基又はホスホン酸エステル基であり、そして、
X1 及びX2 は、それぞれC1−C6 アルキル基であり、状況に応じて、1以上のヒドロキシ基、スルフヒドリル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい;
b)10mg/m2-300mg/m2 のプラチナ複合体を投与し;次に、
c)20mg/m2-300mg/m2 のタキサン抗腫瘍剤を投与する。 - 前記タキサンがパクリタクセルであり、前記プラチナ複合体がシスプラチンであり、前記式Iの化合物がジメスナである請求項1記載の方法。
- 前記タキサンがパクリタクセルであり、前記プラチナ複合体がカルボプラチンであり、前記式Iの化合物がジメスナである請求項1記載の方法。
- 前記薬剤の配合を1週間に1度の割合で前記患者に投与する請求項2記載の方法。
- 前記薬剤の配合を前記患者に毎日投与する請求項2記載の方法。
- 前記薬剤の配合を2週間に1度の割合で前記患者に投与する請求項2記載の方法。
- 前記薬剤の配合を21日毎に1度の割合で前記患者に投与する請求項2記載の方法。
- 前記薬剤の配合を静脈注入により前記患者に投与する請求項2記載の方法。
- ステップa)をステップb)の後に繰り返す請求項1記載の方法。
- ステップa)をステップc)の後に繰り返す請求項8記載の方法。
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