JP2004523290A - ピン保持インレーブリッジ及びその製造及び装着方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、一般的に、一つまたは複数の歯牙を代替するため用いられる歯科補綴物に係り、そして、より詳しくは、欠損歯牙を金属またはセラミックのポンティックで代替するときに、ピンを用いて支台歯に保持されるよう設計されたピン保持インレーブリッジに係るものであって、このようなブリッジを製造および装着する方法を簡略化して歯科治療の施術費用を低廉にすることに加え、支台歯に形成される切削部を最小化して、それにより支台歯の必要以上の切削を防止し、また、患者にブリッジを装着した後の十分に長い期間にわたって、虫歯等の有害な影響から支台歯を保護するものである。本発明はまた、このようなピン保持インレーブリッジを製造し、そしてブリッジを患者に装着する方法も含んでいる。
【背景技術】
【0002】
人の正常な成長につれて、乳歯は永久歯に交替され、人は永久歯で食物を切ったり噛んだりし、正確に発音し、そして歯の美しい外見を提供している。しかしながら、虫歯や歯茎疾患等の各種歯科疾患によって一つ以上の永久歯が損傷した場合、患者は、食べたり、あるいは正確に発音したりするのが非常に難しい。このような損傷した歯牙は外見も悪く、ときに、そのことが患者の対人関係を妨害する。
【0003】
したがって、患者が容易に食べ、正確に発音し、また歯の美しい外見を回復することができ、それによって、患者の対人関係における自信を回復しうるためには、どうにかして、このような損傷した歯牙を治療することまたは義歯で代替することが必要である。近年、歯科治療は、歯牙の健康を維持し、損傷された歯牙によって引き起こされる不安感を患者が克服できるようにするために実施されている。義歯は、患者の歯牙の様々な状態に正確に合致する必要がある。義歯の目的とは、歯牙の本来の機能と美しさを、全体的または部分的に回復することである。
【0004】
歯科医学と補綴歯科学の当業者には既知であるように、義歯とは、歯牙及び周辺組織が損傷または欠損したときに、一つまたは複数の歯牙を代替するために用いられる歯科補綴物のことである。このような義歯は、「人工歯」または「入れ歯」と呼ばれる。広い意味では、義歯とは、ポンティックを用いる歯科補綴物から成ることを意味し、また、局部義歯、総義歯および歯科用ブリッジを含んでいる。狭義では、義歯とは、歯科用キャップ、クラウン、ブリッジ、ベニヤ、インレー、オンレー、周縁キャップおよびクラウン、ならびに、一つ以上の欠損歯牙の代替をするときに欠損歯牙の残根に配置されたポンティックを用いて支台歯に保持されるインレーブリッジを含む。
【0005】
前述したように、義歯は、典型的には次の三つのタイプに分類される:ブリッジ、局部義歯および総義歯。ブリッジは、一つ以上の欠損歯牙をポンティックで代替するために用いられるものであって、歯牙が欠損した周囲で支台歯に装着され、かつ歯冠に連結されるクラウンによって、保持されるものである。通常のブリッジは、固定タイプと取り外し可能タイプに分類される。固定式ブリッジは、歯牙の窩洞に半永久的に保持されるものであり、また、その大きさや製造方法、使用法により、様々に分類される。
【0006】
これらのブリッジとは異なり、局部義歯は、一つ以上の歯牙及び周辺組織が損傷したときに、自然歯と周辺組織によって保持されて、損傷した歯牙の機能を回復する人工歯である。部分義歯は、損傷した歯牙に代わって、歯の美しい外見を回復する。
【0007】
総義歯とは、いろいろの材料を用いて製作されて、自然歯が一つもない患者に装着される人工歯である。そのため、総義歯は、歯科患者のための最終的な治療かつ最終的な義歯と呼ばれる。このような総義歯を用いることにより、患者は食物を切ったり噛んだりし、正確に発音し、そして美しくかつ自然な歯の外見を有することができる。総義歯は、患者の軟組織に無害であるように設計、製造されて、患者に装着される。
【0008】
本発明は、このような固定式ブリッジに係るものであり、これは、一つ以上の欠損歯牙を、欠損歯牙の周囲の支台歯に装着されたクラウンによって保持されたポンティックで代替するために使われる。固定式ブリッジは、食物を切ったり噛んだりする機能を回復し、また、発音を矯正するとともに、歯の自然な美しさを提供するものである。以下では、このようなブリッジの通常の事例をいくつか簡略に記述する。
【0009】
このような通常のブリッジの一例がクラウンブリッジである。クラウンブリッジは、二つのキャップと一体になった歯冠から成っており、このキャップは、自然歯と同じ形状を有している。クラウンブリッジのキャップは欠損歯牙の周囲の支台歯の上にかぶせて装着され、そうして自然歯の機能を回復する。
【0010】
このようなクラウンブリッジを患者に装着するために、図6に示すように、欠損歯牙の周囲の二つの自然歯200を、上面を2〜3mm、側面を1〜3mm、それぞれ切削し、結果として、二つの支台歯200の元の大きさの約1/3を切削する。そして、歯牙および周辺組織の印象が採得される。印象を採得した後、クラウンブリッジは、印象に基づいて、歯科用セラミックまたは歯科用アクリル樹脂で、鋳造工程を通して作られる。クラウンブリッジは、二つのクラウン状のキャップ付きのポンティックを有しており、そして、二つのキャップは支台歯200の上にかぶせて装着され、ポンティックが欠損歯牙を代替する。このような場合において、歯科用セラミックまたは歯科用アクリル樹脂は、自然歯とほとんど同じ形状と色調を提供するものである。
【0011】
このような通常のクラウンブリッジの有利な点は、製造および患者への装着が簡便で、治療費が安いことである。しかし、このクラウンブリッジが問題になるのは、ブリッジのクラウン状のキャップをかぶせて装着する支台歯を提供するために、欠損歯牙の周囲の自然歯を切削することが必要だという点である。このようなクラウンブリッジを用いる歯科治療は、したがって非常に難しく、また歯の神経を傷つけ、その結果、支台歯を切削する際に患者に苦痛を与えるかもしれない。加えて、切削が原因で、支台歯が通常の期間にわたって効果的に利用されないことがあるかもしれない。クラウンブリッジは、ブリッジの周囲の歯間に食物等の異物が容易に挟まりやすい。このような異物を除去することは非常に難しい。このようなクラウンブリッジのもう一つの問題は、咬合面に穴があくかもしれないということ、および/または、クラウン状のキャップの間に隙間が形成されるかもしれないということに存する。このような場合、クラウンブリッジの周囲の支台歯およびもう一本の歯牙は虫歯になる。したがって、クラウンブリッジは、自然歯を著しく損傷するかもしれない。
【0012】
通常のクラウンブリッジにおいて経験されるこのような問題点を克服するためには、インプラントを用いて欠損歯牙を人工的に代替する方法がある。インプラントとは歯科用のネジのことであり、患者の上顎骨または下顎骨の歯槽骨に埋め込まれて、欠損歯牙のスペースに人工歯を保持するためのプラットフォームを提供する。代表的な歯科用インプラントは歯根の形状をしており、歯槽骨のあらかじめ定められた位置に埋め込まれるものである。
【0013】
インプラントが歯槽骨に埋め込まれるときには、インプラント埋め込み具を連結するための手段として使い捨て取り付け部が使用される。ネジ式のインプラントの場合、使い捨て取り付け部は、インプラントの除去可能な延長部である。このような除去可能な延長部は、六角ナットの形状の頭部を有しており、該頭部は、インプラントをあらかじめ定められた部位に埋め込むために使用されるソケットとかみ合うものである。インプラントが歯槽骨に完全に埋め込まれた後、使い捨て取り付け部は除去されて廃棄される。カバーボルトがインプラントの上面に付着される。カバーボルトとともにインプラントが歯槽骨に埋め込まれた後、インプラントを取り囲んでいる歯槽骨の組織は、数ヶ月間の間にインプラントの周囲で成長し、よってインプラントが組織に固定される。
【0014】
歯槽骨の周辺組織がインプラントに十分に固着すると、カバーボルトがインプラントから除去され、印象コピーがインプラントに付着される。インプラント、スペースの周囲の歯牙および周辺組織の印象が取られ、そして、この印象に基づいて義歯が作られる。義歯は、支台歯によって、保持手段を用いて保持される。このような場合、支台歯は、義歯をインプラントに固定させるためのプラットフォームの役割を果たす。
【0015】
しかし、このようなインプラントを用いて欠損歯牙を人工的に代替することは、歯科治療を終えるまでに少なくとも3ヶ月から最長約1年の長い期間が必要で、歯科治療費用が増大するという問題点がある。また、歯の神経および血管を避けつつインプラントを歯槽骨に埋め込む必要があり、そのため、インプラントは、高度の技術を持った歯科医によって行われなければならない。このようなインプラントによって固定された人工歯は、側面からの衝撃に対する耐性が弱い。人工歯が側面からの衝撃を受けたとき、インプラントは患者の上顎骨または下顎骨に致命的な損傷をもたらす可能性がある。通常のインプラントにおいて経験されるこのような問題点を克服するための歯科的技術は、PCT/US1997/12673(大韓民国特許出願第1999−7000350号)に開示されている。
【0016】
一方、通常のクラウンブリッジにおいて経験される問題点を解決するための歯科補綴物が大韓民国特許出願第2000−67885号に開示されている。本発明の添付図面の図7に示すように、歯科補綴物は人工歯20からなっており、該人工歯は、歯牙20の全体の2/3の高さまで伸びた挿入溝21を備えている。歯科補綴物はインレー22も有しており、該インレーは、保持部25と挿入部27からなる。保持部25は複数の突起24を有しており、また、突起24によって支台歯に固定されている。突起24は、あらかじめ定められた角度で下方に傾いている。挿入部27は、人工歯20の挿入溝21の内部に挿入されている。
【0017】
大韓民国特許出願第2000−67885号で開示された前記のような歯科補綴物は、通常のクラウンブリッジ及び通常のインプラントにおいて経験される問題点を克服しているという点で有利である。すなわち、歯科補綴物は、歯科治療を簡略化することに加え、欠損歯牙の周囲の歯牙を損傷せず、施術期間及び歯科治療の際の費用を減少させる。しかし、支台歯に人工歯を固定するインレーを別に製作する必要がある。印象採得及び補綴物製造過程で発生する誤差のため、精巧な補綴物を製造することは難しい。前記の歯科補綴物は、自然歯の外見または機能を提供することが難しい。
【0018】
人工歯を用いて欠損歯牙を代替する場合、自然歯の下端側と人工歯との間に隙間を形成して、歯間から異物が容易に除去できるようにする必要がある。しかし、前述の歯科補綴物のインレーは、自然歯(支台歯)と密接に当接されており、そのため、自然歯と人工歯との間に隙間が形成されない。この歯科補綴物は、歯の間に挟まった食物などの異物によって、自然歯を虫歯にする。これは、最終的には、支台歯および歯茎に深刻な損傷をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明は、従来技術において発生する前記のような問題点を念頭に置いてなされたものであって、また、本発明の目的は、支台歯に簡単かつ単純に固定されて、欠損した永久歯を人工歯で代替し、それにより、自然歯の機能を効果的に回復して、患者が食物を切ったり噛んだりすること、正確に発音すること、及び、歯の美しい外見を有することを可能にし、そしてまた、患者に痛みをもたらすことなく支台歯に固定されるようなピン保持インレーブリッジを提供することである。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、支台歯の切削部を最小にし、それにより支台歯の深刻な損傷を防止しながら支台歯に固定されるようなピン保持インレーブリッジを提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、二つまたは三つのピンを用いて、支台歯によってしっかりと保持され、またしたがって、患者がガム、小麦グルテンまたは飴のような粘着性の強い食物を噛んだときでも支台歯から離脱しない、ピン保持インレーブリッジを提供することである。
【0022】
本発明のさらにもう一つの目的は、このようなピン保持インレーブリッジの製造および患者への装着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の前記及びその他の目的、特徴ならびにその他の利点は、添付図面を参照する以後の詳細な説明からより明らかに理解できるであろう:
図1は、本発明によるピン保持インレーブリッジの製造及び、ブリッジの患者への装着方法を示すブロック図である;
図2a及び図2bは、本発明によるピン保持インレーブリッジの斜視図であって、ブリッジが口腔に装着される前の、歯牙が欠損している歯列弓をそれぞれ示しており、ここにおいて、図2aは本発明の第一実施態様によるインレーブリッジを示しており、そして、図2bは本発明の第二実施態様に従ってそれぞれが側方に延長された二つのインレーを有するインレーブリッジを示している;
図3aから図3dは、本発明のインレーブリッジを患者に装着する方法を示す図であり、ここにおいて:、
図3aは、患者の二つの支台歯にインレー窩洞及びピンホールを形成する段階を示している;
図3bは、印象をもとにインレーブリッジを形成した後、図2aのインレーブリッジを支台歯に固定する段階を示している;
図3cは、支台歯に固定された図2aのインレーブリッジの断面図である;そして
図3dは、図2bのインレーブリッジを支台歯に固定する段階を示している;
図4aから図4cは、図3aから図3dの臼歯に代わって、切歯に本発明のインレーブリッジが装着されていることを示す図である;
図4aは、二つの支台歯にインレー窩洞及びピンホールを形成する段階を示している;
図4bは、インレー窩洞及びピンホールを有する図4aの支台歯の断面図である;そして
図4cは、支台歯にインレーブリッジを固定する段階を示している;
図5aから図5cは、本発明に従って、支台歯のインレー窩洞に、位置設定バー、案内バー、最終形成バーを用いてピンホールを形成する段階を示す図である;
図6は、患者の二つの支台歯に固定された、通常のクラウンブリッジを示す断面図である;
図7は、従来技術のもう一つの実施例による通常の義歯の分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して説明するが、全図面において同一参照番号は同一または同様の要素を示すのに用いる。
【0025】
図1は、本発明によるピン保持インレーブリッジを製造して、ブリッジを患者に装着する方法を示すブロック図である。図2a及び図2bはそれぞれ、本発明によるピン保持インレーブリッジと、ブリッジが口腔に装着される前の、歯牙が欠損した歯列弓とを示す斜視図である。図3aから図3dは、本発明によるインレーブリッジを患者に装着する方法を示す図である。図4aから図4cは、図3aから図3dの臼歯の代わりに、切歯に本発明のインレーブリッジを装着する方法を示す図である。図5aから図5cは、本発明にしたがって、位置設定バー、案内バーおよび最終形成バーを続けて用いて、支台歯のインレー窩洞にピンホールを形成する方法を示す図である。
【0026】
図面に示すように、本発明は、欠損歯牙の代替をするためのピン保持インレーブリッジ及び、そのようなブリッジを製造して、患者に装着する方法を提供する。本発明のピン保持インレーブリッジを製造及び装着する方法について、以下で詳細に説明する。この方法において、インレーブリッジは、一例として、後部歯牙(臼歯)から欠損した歯牙を代替するために使用されている。
【0027】
第一段階(S1):支台歯形成
この第一段階は、欠損歯牙(上顎または下顎)の周囲の二つの自然歯を切削して、本発明のインレーブリッジを保持するための二つの支台歯を形成することを含む。
【0028】
図2a、2b、3a、3b、3cおよび3dに示すように、歯科医は、欠損歯牙の周囲の二つの自然歯200のそれぞれの咬合面および近接面にインレー窩洞210を形成し、そうして二つの支台歯を形成する。歯牙200のインレー窩洞210は、本発明のインレーブリッジ100のインレー120を定着させる。
【0029】
このようなインレー窩洞210を支台歯200に形成する段階は、インレーブリッジ100を支台歯200に固定する前に行われる。このようなインレー窩洞210を、後部歯牙のそれぞれの支台歯200の咬合面にだけ形成する場合、歯牙の酷い咀嚼活動によって、望みもしないのに、支台歯200からインレーブリッジ100が離脱するかもしれない。したがって、支台歯200が臼歯の周囲に形成される場合、図3aから3dに示すように、それぞれの支台歯200の咬合面および近接面を切削してインレー窩洞210を形成することが望ましい。このような場合、支台歯200は、インレー保持力が向上する。すなわち、インレー窩洞210は、インレーブリッジ100のインレー120をよりしっかりと保持するような、より広い領域を有する。インレー窩洞210のそれぞれの深さは、インレー120の厚さと同一であり、そのため、インレー120と支台歯200の残った面は、インレー120を窩洞210に完全に固定した後に行われる磨きの工程により、それぞれが容易に同じ高さにされる。前述のようにインレー120が支台歯200の表面と同じ高さにされたとき、患者は自然歯で感じていたのと同じように快適に感じる。
【0030】
このようなインレー窩洞210を支台歯200に形成することは、通常の方法で行うことができる。さらに、インレーブリッジ100の歯冠110の両端から一体に延長され、かつ、インレー窩洞210と同一の形状を有するインレー120が、窩洞210内に定着して保持されるように、インレー窩洞210は、支台歯200を微細に切削することによって形成されるのが望ましい。インレー窩洞210を形成した後、インレー窩洞210のそれぞれに、直径1〜1.5mm、深さ1〜1.5mmの傾斜ピンホール220を複数個形成し、そうして二つの支台歯200の形成を完了する。このような場合、それぞれのピンホール220は、歯根方向におよそ45°の角度で傾けられつつ、歯冠110に隣接した位置で、支台歯200の咬合面に形成される。
【0031】
本発明においては、ピンホール220の数は、インレーブリッジ100の支台歯200と歯冠110との結合面、支台歯200の健康状態及び患者の咀嚼活動特性などを考慮して、一つ、二つ、あるいは三つに定められる。支台歯200が臼歯に形成される場合、インレー窩洞210は、前述のように、支台歯200の隣接面に形成される。このような場合、インレー120は、図2bに示すように、インレー窩洞210の形状に合うように延長されて、一つ以上の追加のピンによって窩洞210に固定され、そうして、歯牙200によりしっかりと固定される。このような場合、少なくとも一つのピンホール220が、支台歯200の近接面の窩洞領域に、傾斜して形成される。
【0032】
歯牙の断面の簡単な説明には歯髄層が含まれるが、該歯髄層は歯の神経を内包しており、歯牙の中央に位置している。歯髄層は、カルシウム組織の象牙質層に囲まれている。そして、エナメル質層が歯髄層を取り囲む。エナメル質層とは、歯牙のクラウンの炭酸カルシウムの被覆である。ピンホール220はそれぞれ、エナメル質層を通過して、象牙質層のあらかじめ定められた深さまでに達するように形成されており、それにより、後述するように、ピン「p」は、インレーブリッジ100を支台歯200に堅く保持することができる。
【0033】
このようなピンホール220を支台歯200に形成するために、歯科医学で「バー」と呼ばれる、回転切削具が用いられる。すなわち、ピンホール220は、それぞれ次のように形成される:まず、図5aに示すように、位置決定バー「a」を用いて、インレー窩洞210に、ピン「p」のための所望の位置が印付けされる。この位置決定バー「a」は、直径0.7〜1.1mmの、丸みのある端部を有している。ピンホール220の位置を印付けした後、直径1.2mm、長さ1.5mmの案内バー「b」が、図5bに示したような穴を作り出し始める。このような場合、案内バー「b」は、ピン「p」の長さを考慮しつつ、印付けされた位置の直径を拡大し、そうしてピンホール220を一次形成する。
【0034】
ピンホール220の一次形成の後、図5cに示すように、テーパー状の形状をした最終形成バー「c」を用いて、ピンホール220を完全に形成する。このような場合、最終的に形成されたピンホール220は、上広下狭のテーパー状であり、ピン「p」のテーパー状の形状と一致する。
【0035】
最終形成バー「c」は、好ましくは、テーパー状端部における1.3〜1.7mmの直径と、1.5〜2.0mmの長さを有する。最終形成バー「c」の外周面の周囲は、通常の歯科用バーと同様に、スクリューを備えており、そのため、ピンホール220の最終形成段階の際、屑は、そのねじ山に導かれて口の外へと送られる。
【0036】
第二段階(S2):採得された印象に基づくモデルからインレーブリッジを形成
第一段階S1で支台歯200にインレー窩洞210及びピンホール220が両方とも形成されると、患者の歯牙及び周辺組織の印象が採得される。このような印象は、口の中にプラスチック物質のような半固体の物質を入れて歯牙と周辺組織を覆い、そして半固体物質をあらかじめ定められた時間で硬化させることにより採得される。本発明においては、このような印象採得段階は通常の方法で行われる。
【0037】
印象を採得した後、人工義歯を作るために、石膏模型が形成される。石膏模型に、ピンホール220に対応する位置に複数のプラスチック管(図示せず)を挿入し、そして、ワックスを用いて補綴物モデルを作る。このような場合、プラスチック管の内径はピン「p」の直径と同一である。プラスチック管付きの石膏模型は、複数の結合孔121を有するインレーブリッジ100を鋳造するために使われる。
【0038】
鋳造により得られるインレーブリッジ100は、欠損歯牙を修復させるための臨床要件を満たしており、かつ、所望の機械的耐久性、耐衝撃性、耐磨耗性および歯の美しい外見を有している。二つのインレー120は、インレーブリッジ100の歯冠110の両端から一体に延びており、また、支台歯200に定着し、その残った面と同じ高さにされるよう、支台歯200のインレー窩洞120と同じ形状を有している。
【0039】
従って、インレーブリッジ100のインレー120には、第一段階S1に際して支台歯200に形成された傾斜ピンホール220に対応する位置に、複数の結合孔121が形成される。そのため、複数のピン「p」は、次の段階で詳しく説明するように、結合孔121を通じて、支台歯200のピンホール220に埋め込まれることができる。
【0040】
第三段階(S3):インレーブリッジを支台歯に固定
この第三段階S3は、ブリッジ100の歯冠110が欠損歯牙のスペース内に位置するよう、第二段階S2で製造されたインレーブリッジ100を二つの支台歯200に固定するために行われる。インレーブリッジ100を支台歯200に固定するために、ブリッジ100のインレー120に形成された結合孔121が支台歯200のピンホール220と一致するようにして、ブリッジ100が患者の歯牙に置かれる。前述のようにブリッジ100を患者の歯牙に定着させた後、ピンホール220の内径に対応する直径と3〜4mmの長さとを有する複数のピン「p」は、インレー120の結合孔121を通った後に、支台歯200のピンホール220に埋め込まれる。
【0041】
ピン「p」をピンホール220に埋め込んでブリッジ100を支台歯200に保持するのに先立ち、通常の接着手段、例えば、レジンセメントなどを用いて、支台歯200のインレー窩洞210に、ブリッジ100のインレー120をしっかりと付着させることが望ましい。
【0042】
このような場合、ピン「p」は、好ましくは、上広下狭のテーパー状であり、そのため、ピン「p」が、結合孔121を通してピンホール220に埋め込まれるとき、摩擦を伴って押しつけられて、摩擦力によってピンホール220内にはめ込まれる。テーパー状のピン「p」は、したがって、ピンホール220内で楔の役割を果たす。
【0043】
ピン「p」は、ピン埋め込み具(図示せず)を用いて、ピンホール220に斜めに埋め込まれる。ブリッジ100のインレー120は支台歯200のインレー窩洞210に接着剤を用いて付着されており、また、ピン「p」は結合孔121を通してピンホール220に斜めに埋め込まれているため、歯牙の激しい咀嚼活動の際にブリッジ100に加えられる垂直方向および/または側面方向の衝撃に関わらず、望みもしないのに支台歯200からインレーブリッジ100が離脱してしまうことをほとんど完全に防ぐことが可能である。
【0044】
前述のように、支台歯200にインレーブリッジ100を完全に固定した後、ブリッジ100のインレー120と支台歯200の残った表面とを、磨きの工程によって互いに同じ高さにする。したがって、本発明のインレーブリッジ100によって、患者は自然歯のように快適に感じることができる。
【0045】
前述の説明においては、本発明の好ましい実施形態によるインレーブリッジ100は、一例として、欠損した臼歯を代替するために使われている。しかし、本発明のインレーブリッジ100は、好ましくは、欠損した切歯を代替するためにも、本発明の機能に影響を与えることなく、前述したのと同じように使われるということが理解されなければならない。欠損した切歯を本発明のインレーブリッジ100で代替するためには、図4aに示すように、インレー窩洞210は、欠損歯牙のスペースの周囲にあるそれぞれの支台歯200の近接表面に一次形成される。その後、臼歯の支台歯について前述したのと同様に、二つの支台歯200のインレー窩洞210に、複数のバーを用いて複数のピンホール220が形成される。その後、臨床情報を考慮して、患者の歯牙及び周辺組織の印象が採得される。印象を採得した後、インレーブリッジ100は石膏模型を用いた成形工程を通して形成される。インレーブリッジ100を形成する段階の際に、複数のプラスチック管が石膏模型にはめ込まれ、ピンホール220に対応した位置で、ブリッジ100のインレー120に複数の結合孔121が形成される。インレーブリッジ100を形成した後、ブリッジは支台歯200に固定されるが、それは、第一には、ブリッジのインレー120を、レジンセメントのような接着手段を用いて支台歯のインレー窩洞210に付着させることによるものであり、そして第二には、ピン埋め込み具を用いて、複数のテーパー状のピン「p」を、結合孔121を通してピンホール220に埋め込むことによるものである。このような場合、ピンホール220に埋め込まれたテーパー状のピン「p」は楔の役割を果たし、そうして、インレーブリッジ100を切歯の支台歯200に堅く固定する。前述の説明から、欠損した切歯のためのインレーブリッジを製造及び装着する方法は、欠損した臼歯のためのインレーブリッジについて説明したのと同じであるということが注目される。
[発明の効果]
【0046】
前述のように、本発明は、ピン保持インレーブリッジと、そのようなブリッジを製造し、患者に装着する方法を提供している。本発明のピン保持インレーブリッジは、支台歯の切削を最小限にしつつ、簡単かつ単純に、支台歯に固定される。このインレーブリッジは、したがって、支台歯を効果的に保護し、また、ブリッジと支台歯の間に挟まるかもしれない食物によって支台歯が虫歯になるのを防ぐものである。
【0047】
本発明のインレーブリッジは、複数のピンを用いて支台歯にしっかりと固定され、そのため、患者がガム、小麦グルテンまたは飴等、粘着性のある食物を噛んだときでも、支台歯からインレーブリッジが離脱することが防止される。したがって、このインレーブリッジによって、患者は、ブリッジが支台歯から離脱する心配をせずに咀嚼活動を行うことが可能になる。
【0048】
本発明によるピン保持インレーブリッジ、ならびに、ブリッジの製造及び装着方法は、支台歯に形成される切削部の大きさを最小化し、かつ、支台歯の過剰な切削を防止し、また、ブリッジの製造及び装着方法を簡略化し、そして、歯科治療の施術費用を削減するものである。
【0049】
本発明の好ましい実施様態を例示のために開示したが、当業者であれば、添付の特許請求範囲に開示した本発明の範囲及び精神から逸脱することなしに、多様な修正、付加及び代用が可能であるとわかるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明によるピン保持インレーブリッジの製造及び、ブリッジの患者への装着方法を示すブロック図である。
【図2a】本発明の第一実施態様によるインレーブリッジを示している。
【図2b】本発明の第二実施態様に従ってそれぞれが側方に延長された二つのインレーを有するインレーブリッジを示している。
【図3a】患者の二つの支台歯にインレー窩洞及びピンホールを形成する段階を示している。
【図3b】印象をもとにインレーブリッジを形成した後、図2aのインレーブリッジを支台歯に固定する段階を示している。
【図3c】支台歯に固定された図2aのインレーブリッジの断面図である。
【図3d】図2bのインレーブリッジを支台歯に固定する段階を示している。
【図4a】二つの支台歯にインレー窩洞及びピンホールを形成する段階を示している。
【図4b】インレー窩洞及びピンホールを有する図4aの支台歯の断面図である。
【図4c】支台歯にインレーブリッジを固定する段階を示している。
【図5a】本発明に従って、支台歯のインレー窩洞に、位置設定バー、案内バー、最終形成バーを用いてピンホールを形成する段階を示す図である。
【図5b】本発明に従って、支台歯のインレー窩洞に、位置設定バー、案内バー、最終形成バーを用いてピンホールを形成する段階を示す図である。
【図5c】本発明に従って、支台歯のインレー窩洞に、位置設定バー、案内バー、最終形成バーを用いてピンホールを形成する段階を示す図である。
【図6】患者の二つの支台歯に固定された、通常のクラウンブリッジを示す断面図である。
【図7】従来技術のもう一つの実施例による通常の義歯の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
100 インレーブリッジ
120 インレー
200 支台歯
210 インレー窩洞
Claims (7)
- ピン保持インレーブリッジの製造及び装着方法において、
欠損歯牙の周囲の二つの自然歯のそれぞれの咬合面及び/又は近接面にインレー窩洞を形成し、そして、インレー窩洞のそれぞれに深さ1〜1.5mmの複数の傾斜ピンホールを形成して二つの支台歯を形成する段階と;
支台歯形成段階で得た臨床情報から印象を採得し、そして、二つの支台歯のインレー窩洞にそれぞれ装着される二つのインレーを有し、二つの支台歯の前記ピンホールに対応する位置に複数の結合孔が形成されたインレーブリッジを形成する段階と;そして
インレーブリッジの結合孔がインレー窩洞のピンホールと一致するように、インレーブリッジのインレーを接着剤を用いてインレー窩洞に取り付け、そして、関連する結合孔を通じてピンホールのそれぞれにピンを挿入して、インレーブリッジを支台歯に固定させる段階とを含んでなることを特徴とする、ピン保持インレーブリッジの製造及び装着方法。 - ピン保持インレーブリッジにおいて、
欠損歯牙の代替をするための歯冠と;
前記歯冠のそれぞれの端部に一体に形成され、かつ、欠損歯牙の周囲の二つの支台歯のそれぞれに形成されたインレー窩洞に装着されたインレーと、
前記インレーに関連したインレー窩洞に形成された傾斜ピンホールに対応する位置のインレーに形成された結合孔と;そして
インレーブリッジを支台歯に固定させるため、前記ピンホールに一致するようにされた結合孔を通じて傾斜ピンホール内に挿入されたピンとを含んでなることを特徴とする、ピン保持インレーブリッジ。 - 前記ピンが上広下狭のテーパー状を有することを特徴とする、請求項2に記載のピン保持インレーブリッジ。
- 前記ピンホールが、前記ピンのテーパー形状に対応するように、上広下狭のテーパー形状を有することを特徴とする、請求項3に記載のピン保持インレーブリッジ。
- 前記ピンホールが、インレー窩洞にピンホールの適正位置を印付けするための位置設定バーと、印付けされた位置の直径を拡張させてピンホールを一次形成するための案内バーと、そして、ピンホールを上広下狭のテーパー形状に最終成形するために用いられる、外周面の周囲にスクリューが設けられたテーパー状の最終形成バーとを使用して形成されることを特徴とする、請求項2に記載のピン保持インレーブリッジ。
- ピンホールが、二つの支台歯それぞれのインレー窩洞に一つ以上形成されることを特徴とする、請求項2に記載のピン保持インレーブリッジ。
- インレーブリッジを形成する過程でインレーに結合孔を形成するために、プラスチック管が使用されることを特徴とする、請求項2に記載のピン保持インレーブリッジ。
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