JP2004521899A - 有機溶媒を用いた軟骨抽出物の調製 - Google Patents

有機溶媒を用いた軟骨抽出物の調製 Download PDF

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Abstract

本発明は、軟骨抽出物およびその分画を調製するために、純水の代わりに有機溶媒含有溶液を使用する方法に関する。生理活性成分を含む抽出物の調製用に、様々な有機溶媒を試験した。試験した溶媒のうち、特にHUVECに対する抗増殖性活性成分を回収する場合にはトリメチルアミン40%(水中)が、純水の良い代替溶媒として選択された。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、軟骨組織から生理活性成分を抽出する方法に関する。具体的には、この方法では、水と混合したまたは混合していない有機溶媒を使用する。有機溶媒は、他のものを犠牲にして一部の活性成分を選択的に抽出するのに使用することができる。したがって、一部のタンパク質あるいは抗メタロプロテアーゼ(すなわち抗MMP-2)活性、抗エラスターゼ(すなわち抗PPE)活性、またはHUVECに対する抗増殖性活性のいずれかの、一部の活性が富化された抽出物が得られる。
【背景技術】
【0002】
サメの軟骨抽出物の調製方法および抽出物自体は、国際公開公報WO 95/32722号、WO 96/23512号、およびWO 97/16197号に開示されている。サメ軟骨の液体抽出物は、抗血管新生性活性、抗コラーゲン分解性活性、直接的な抗腫瘍増殖性活性、抗炎症性活性などを試験する様々なアッセイで試験されている。
【0003】
国際公開公報WO 95/32722号は、抗血管新生活性、in vitroの直接的な抗腫瘍増殖活性、およびin vivoの抗腫瘍活性を有するサメ軟骨抽出物を得る方法を開示している。
【0004】
この方法は、サメ軟骨組織を混合して、それを水中で約500μmの大きさの粒子に小さくするステップと、活性成分を水中に抽出するステップと、約500kDaより小さい分子量を有する分子(0-500分画)を回収するためにこのようにして得た抽出物を分画するステップとを含む。公称多孔性約1kDaを有する膜上で液体軟骨抽出物を濃縮して、約500kDaより小さい分子量を有する分子からなる濃縮液体抽出物を形成する。この抽出物は、約1から500kDaの分子量を有する分子が富化されていた。0から500分画をさらに分画化して、約1から120kDaに及ぶ分子量を有する抗腫瘍増殖性分子を含む複数の抽出物を形成した。国際公開公報WO 95/32722号は、約1kDaより小さい分子量を有する成分の明確な回収は開示していない。この公報はまた、有機溶媒含有溶液中で軟骨抽出物またはその分画を得る方法も開示していない。
【0005】
国際公開公報WO 96/23512号は、水中で任意の軟骨源から生理活性成分を抽出する方法を開示している。
【0006】
さらに、この公報は、液体サメ軟骨に関連する他の生理活性、すなわち抗コラーゲン分解性活性および抗炎症性活性を開示している。国際公開公報WO 96/23512号は、約1kDaより小さい分子量を有する成分の回収も、有機溶媒含有溶液を使用する方法も開示していない。
【0007】
国際公開公報WO 97/16197号は、約0.1から500kDaの分子量を有する分子が富化された水性抽出物を回収する方法を開示している。この方法では約1kDaより小さい分子量を有する成分を回収できるかもしれないが、特定の低分子量成分を少しでも回収することは提供していない。単離したまたは精製した形のどの成分も開示されていない。
【0008】
マトリックスメタロプロテアーゼが新血管形成のプロセス、原発腫瘍の成長促進、転移体の形成に関与していることは、当分野で一般的に受け入れられている。したがって、抗血管新生性活性および/または抗マトリックスメタロプロテアーゼ活性を示す化合物または薬剤は、新血管形成の阻害、腫瘍の成長阻害、細胞の転移浸潤の阻害、転移体形成の阻害、および血管新生に関連する疾患の治療の少なくとも1つに有用だと考えられている。
【0009】
サメ軟骨から得た成分に関心が持たれていることを考えると、それを調製する改良された方法、ならびに以前は生理活性を有すると知られていなかった他の成分を単離および精製する改良された方法の必要性が存在する。
【特許文献1】国際公開公報WO 95/32722号
【特許文献2】国際公開公報WO 96/23512号
【特許文献3】国際公開公報WO 97/16197号
【非特許文献1】Brodt P、Cancer Res.、46:2442、1986
【非特許文献2】「A Guide to the Properties and Uses of Detergents in Biology and Biochemistry」、Judith Neugebauer著、Calbiochem-Novabiochem Corporation、1988
【非特許文献3】Tolnay,E.他、J.Cancer Res Clin.Oncol.、123:652-658、1997
【非特許文献4】Skobe,M.他、Nature Medicine、3:1222-1227、1997
【非特許文献5】BrownおよびDonahue、1988、Applied Spectroscopy、42(2):347
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、軟骨から得た抽出物を調製する、改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、本発明は、生理活性成分を含む軟骨抽出物およびその分画を調製するために様々な条件を使用する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、抗MMPa活性、抗PPE活性、HUVECに対する抗増殖性活性を有する成分を有するサメ軟骨抽出物を調製する方法を提供する。この方法では有機溶媒を使用する。このような溶媒は純水の代替物である。これらはまた、純水を用いて抽出した場合には他の成分すべてが得られるのに対して、一部の溶解性生理活性成分を選択的に富化するのを可能にする。
【0012】
別の態様では、本発明は、軟骨液体抽出物由来の生理活性成分の0から500までの分子量分画を、約1kDaより小さい分子量(0-1分画)を有する成分を含む第1分画と、約1から500kDaの分子量(1-500分画)を有する成分を含む第2分画の、2つの個別の分画に分離する方法を提供する。
【0013】
成分の凝集体の形成を最小限にするため、溶解性を改善させるため、および安定な可溶形を保つために、ショ糖あるいはデキストラン、Ficoll(商標)、果糖、ゼラチン、ブドウ糖、グリシン、イノシトール、乳糖、マンニトール、ソルビトールなど1つまたは複数の他の適切な安定剤を、十分な安定性を与える量、0-500分画、0-1分画、1-500分画の任意の分画に加えることができ、あるいは、製造方法の任意のステップで使用することができる。本明細書中で分画、溶液、または抽出物に関して使用する語句「1%w/vのショ糖を含む」とは、約1%w/vのショ糖を含むそれぞれの分画、溶液、抽出物を言う。0-500分画、0-1分画、1-500分画中の生理活性成分は、抗MMP活性、抗エラスターゼ活性、および抗血管新生性活性を有する。溶媒、およびその水中での濃度は、抽出物の性質に影響を与える。
【0014】
別の態様では、本発明は、抗MMP活性および抗腫瘍活性の少なくとも1つを有する、本明細書中ではAE-986と称する約244amu(原子質量単位)の分子量を有するサメ軟骨由来の成分を提供する。AE-986を精製するのに使用される方法および材料は、様々な溶媒相およびクロマトグラフィーシステムでこの成分を分配する責を担っている、使用する材料の一部の物理化学的特徴を明らかにする。本発明はまた、AE-986成分または任意の軟骨源から得た等価成分を単離かつ精製する方法も提供する。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、約244amuの分子量を有する化合物に対応し、サメ軟骨から単離され、抗MMP活性を有する、任意の軟骨源由来の精製した生理活性成分を提供する。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、MMP酵素で切断可能な基質を、有効量の1つまたは複数の軟骨抽出物またはそれ由来の分画と接触させるステップを含む、MMP酵素を阻害する方法を提供する。
【0017】
本発明のさらに他の態様では、標的組織を、有効量の軟骨由来の抽出物、溶液、ホモジネート、懸濁液、0-500分画、0-1分画、1-500分画など分画、または1%w/vのショ糖を含む同じ分画と接触させるステップを含む、新血管形成および転移体形成を阻害する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付の図は、本発明の明細書の一部であり、本発明の特定の態様をさらに実証するために含める。これらの図の1つまたは複数を、本明細書中で提示する具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによって、本発明をより良く理解できるであろう。
【0019】
生物アッセイ
サメ軟骨抽出物、それに由来する分画、および成分AE-986の生物特性を、以下のアッセイの少なくとも1つを使用して測定した。
ゼラチナーゼ阻害アッセイ(GIA):抗MMP活性を評価するアッセイ
胚性血管新生試験(EVT):抗血管新生性活性を評価するアッセイ
ルイス肺癌転移性マウスモデル(LLC):抗腫瘍活性を評価するアッセイ
【0020】
GIA
市販のキット(Boehringer Mannheim)を使用してGIAを実施した。
【0021】
軟骨由来の抽出物またはその分画の成分、あるいはAE-986成分の、ゼラチナーゼA酵素(MMP-2)を阻害する能力を測定するためにGIAを使用する。
【0022】
手短に述べると、GIAを以下のように実施した。ビオチン標識のゼラチン基質をゼラチナーゼAと共に、液体軟骨抽出物またはその誘導体を存在させずにまたは存在させて、インキュベートした。次いで、反応混合物をストレプトアビジンでコーティングしたマイクロタイタープレートに載せた。ビオチン標識のゼラチンは、その遊離ビオチン残基を介してストレプトアビジンでコーティングしたマイクロタイターに結合した。基質であるゼラチンがゼラチナーゼによってスプライス(splice)されていなければ、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(POD)複合体はゼラチナーゼ-ビオチン複合体に結合する。その後、加えたABTS基質をPODが緑色最終生成物に変換し、これを405nmで測定した。しかし、ビオチン標識のゼラチンがゼラチナーゼでスプライスされていた場合は、小さなゼラチン断片のみが形成された。これらの断片は、マイクロタイタープレートに付着した後、ストレプトアビジン-POD複合体を結合する能力を有しておらず、呈色反応は起こらなかった。
【0023】
したがって、ゼラチナーゼ活性が高いと低いシグナルが得られ、代わりに(たとえば阻害剤を加えることによって)ゼラチナーゼ活性が低いと高いシグナルがもたらされる。軟骨由来抽出物またはそれに由来する分画中の成分に見られる活性は、ゼラチナーゼに対する阻害活性、またはゼラチナーゼとそのゼラチン基質との相互作用と競合する(たとえば拮抗剤成分がゼラチンを結合する)拮抗作用である可能性がある。
【0024】
EVT
サメ軟骨液体抽出物またはそれに由来する分画中の成分の、新しい血管の形成を阻害する(抗血管新生性活性)能力を測定するために、胚性血管新生試験(EVT)を実施した。
【0025】
ヒヨコ胚の正常発生には、卵黄膜内に位置する、卵黄から発達中の胚に栄養を輸送する外部血管系の形成を要する。抗血管新生物質を卵黄膜上に置いた場合、これは卵黄膜で起こる血管の形成を阻害することができる。
【0026】
サメ軟骨由来の液体抽出物またはそれに由来する分画中の成分、あるいは適切な対照を様々な量含むメチルセルロースディスク(不活性な固体で透明なマトリックス)を、血管新生プロセスが起こる卵黄膜の血管周辺部の外縁上に置いた。
【0027】
陽性対照は、1.5mg/mlの2-メトキシエルトラジオールを含むメチルセルロースディスクからなっていた。対照ディスクおよび試料を含むディスクを、3日齢の胚の卵黄膜上に置いた。この時点では、主要血管の発端のみが卵黄に浸潤している。陰性対照、すなわち一定量のサメ軟骨由来の液体抽出物またはそれに由来する分画の成分を含むメチルセルロースディスクを、常に同じ胚の卵黄膜上に同時に置いた。前記成分と陰性対照の有効性を比較する際の個体間のばらつきを最小限にするため、両ディスクを、頭尾軸に対して対称になるように並べた。ディスクを配置してから24時間後に血管新生を評価し、結果は、血管の形成に影響を受けた胚のパーセントとして表した。血管の形成は、陰性対照と比べてその成長経路が反らされたまたは減らされた、あるいはディスクより先に成長が観察されなかった場合に、影響を受けたと見なした。
【0028】
LLCモデル
サメ軟骨液体抽出物またはそれに由来する分画の成分、あるいはAE-986の、肺内で転移体の形成を阻害する能力を測定するために、ルイス肺癌マウスモデル(LLC)を使用した。
【0029】
細胞培養物:肺への転移の可能性が高いルイス肺癌クローンM27は、P.Brodt博士によって確立された(Brodt P、Cancer Res.、46:2442、1986)。
【0030】
このモデルはよく確立されており、in vitroおよびin vivoでの活性相関が予測的であることで知られている。5%のCO2の下、10%のウシ胎児血清および1%のペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI-1640培地中で細胞を維持し、週に2度継代した。細胞のストックを作成し、初期継代として保管した。同一継代を用いてすべての実験を実施した。
【0031】
腫瘍の誘導には、完全培地中で70%コンフルエントな状態でM27細胞を増殖させ、その後、トリプシン-EDTA溶液(Ca++またはMg++なしのHBSS中、0.05%トリプシン、0.53mM EDTA-4Na)を使用して集菌した。その後細胞を遠心分離し、洗浄し、再懸濁させた(Ca++およびMg++を含まないPBS 200μlあたり1×106個のLLC細胞)。トリプタンブルー染色によって生存度を検査し、生存度が95%より高いフラスコのみを接種に使用した。
【0032】
腫瘍の誘導:C57BL/10雌マウス(15〜20g)(Charles River Inc.)を使用してルイス肺癌腫瘍を誘導させた。1週間のインキュベーション後、第0日にLLC細胞を右脇の腋窩部に皮下的に移植した(100μlあたり5×105個の生存細胞)。すべての動物で同じ位置に接種した。カリパーを用いて毎日腫瘍の成長をモニターした。式:長さ(cm)×[幅(cm)]2/2を使用して相対的な体積を計算し、式中、長さは最長軸に対応し、幅は垂直の最短軸に対応する。原発腫瘍が0.5から1.0cm3の大きさに達した後(接種後10日)、ほぼ同じ大きさの原発腫瘍を有するマウスを、それぞれ15匹の動物からなる具体的な実験グループに無作為に割り当て、耳パンチを使用して数字で標識した。
【0033】
無菌条件下で手術を実施した。小さな皮膚切開(0.5〜1cm)に続いて、回りの健康な組織から腫瘍を丁寧に分離した。LLC細胞は(増殖の初期段階では)非常に局在的な腫瘍を形成し、正常組織に顕著な損傷を与えずに容易に分離することができる。実体顕微鏡による検査により、腫瘍接種の部位に巨視的な残留腫瘍は見られず、本発明者らの条件下では、腫瘍の再増殖は観察されなかった。
【0034】
除去に続き、腫瘍を秤量し、外科用スチールクリップを用いて傷を閉じ、ポビドンヨードで消毒した。
【0035】
有効性を調査するための実験の設計:様々な試験試料(サメ軟骨液体抽出物、それに由来する分画、またはAE-986の成分)を用いた治療を、腫瘍を除去した翌日(接種後11日)に始めた。2週間毎日、経口栄養法(gavage)によって生理食塩水または軟骨由来の生成物を与えた。
【0036】
経口栄養法(0.5ml)は、22G彎針を使用して実施した。これまでの実験により、肺の表面に平均30から50個の小塊を得るには原発腫瘍の除去後約2週間の期間が十分であることが示されているので、2週間後にマウスをCO2室で屠殺した。解剖に続いて両方の肺を取り出し、秤量して10%のブアン固定液中で固定した。双眼実体顕微鏡(4×)を使用して肺表面の転移体を数えた。
【0037】
体重の測定:体重は、屠殺まで2日または3日毎にモニターした。
【0038】
軟骨抽出物を調製する方法
有機溶媒含有溶液を用いた、サメ軟骨からの活性成分の抽出
本発明は、軟骨抽出物を調製する方法、およびその中にある、少なくとも一部がタンパク質性質でない生理活性成分を軟骨抽出物から得る、単離する、または精製する方法を提供する。しかし、本発明の方法で、タンパク質を含む成分を抽出するのに有用なカオトロピック剤を使用することができる。
【0039】
本明細書中で使用する用語「有機溶媒含有溶液」とは、有機溶媒を少なくとも一部含む溶液または混合物を言う。有機溶媒含有溶液は、1種または複数の有機溶媒を含むことができ、水を含むこともできる。本明細書中で使用する有機溶媒または有機溶媒の組合せは、好ましくは極性である。一実施形態では、メタノールまたはエタノールのうち少なくとも1つを、サメ軟骨液体抽出物の調製に使用することができる。アセトニトリル、プロパノール、イソプロパノール、およびアセトンなど他の有機溶媒は、使用することができる適切な極性溶媒である。この有機溶媒は、ハロゲン化、エーテル、プロトン性、非プロトン性、極性、無極性、塩基性、酸性、親水性、疎水性の溶媒の1種または複数を含むことができる。
【0040】
適切なハロゲン化溶媒には、クロロホルム、ジブロモメタン、塩化ブチル、ジクロロメタンが含まれる。
【0041】
適切なエーテル溶媒には、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、t-ブチルエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテルが含まれる。
【0042】
適切なプロトン性溶媒には、例として示しそれだけには限定されないが、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、2-ニトロエタノール、2-フルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、エチレングリコール、1-プロパノール、2-プロパノール(ISO)、2-メトキシエタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコール、1-、2-、または3-ペンタノール、ネオペンチルアルコール、t-ペンチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノール、アニソール、ベンジルアルコール、フェノール、グリセロールが含まれる。
【0043】
適切な非プロトン性溶媒には、例として示しそれだけには限定されないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピオニトリル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセトン、エチルメチルケトン、酢酸エチル、スルホラン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、テトラメチル尿素、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ヘキサメチルホスホルアミドが含まれる。
【0044】
適切な塩基性溶媒または溶液には、2-、3-、または4-ピコリン、ピロール、ピロリジン、水酸化アンモニウム(NH40H)、トリメチルアミン(TMA)、モルホリン、ピリジン、ピペリジンが含まれる。
【0045】
適切な酸性溶媒または溶液には、トリフルオロ酢酸(TFA)、酢酸、プロピオン酸、ギ酸が含まれる。
【0046】
適切な炭化水素溶媒には、ベンゼン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、オクタン、インダン、ノナン、ナフタレンが含まれる。
【0047】
有機溶媒含有溶液は、有機溶媒の組合せおよび/または有機溶媒と水の組合せを含むことができる。適切なプロトン性溶媒の水との組合せには、例として示しそれだけには限定されないが、水-メタノール、水-プロパノール、水-イソプロパノール、水-ブタノールが含まれる。水を用いた、または水を用いない適切な非プロトン性溶媒の組合せには、例として示しそれだけには限定されないが、水-アセトニトリル、水-ジメチルスルホキシド、メタノール-アセトニトリル、メタノール-ジメチルスルホキシド、エタノール-アセトニトリル、エタノール-ジメチルスルホキシドが含まれる。
【0048】
本発明中に存在する有機溶媒の量は、軟骨から抽出する成分の性質や物理特性に応じて変えることができる。一般的に、有機溶媒含有溶液は、溶液の総容量に対して約0.1、1から100容量%(v/v)、約40から80容量%(v/v)、少なくとも1容量%(v/v)、少なくとも10容量%(v/v)、少なくとも25容量%(v/v)、少なくとも50容量%(v/v)、少なくとも90容量%(v/v)、または少なくとも99容量%(v/v)の有機溶媒を含む。塩基性または酸性溶媒の量は、溶媒のpKaに応じて、約0.1から約50%までに変えることができる。pKa値が高ければ高いほど、生理活性成分の破壊や変性を回避するために、塩基性または酸性溶媒の濃度を低くする。
【0049】
したがって、本発明は、以下のステップを含むサメ軟骨の抽出物を調製する方法を提供する。
a)一定量の有機溶媒含有溶液でサメ軟骨材料を処理し、サメ軟骨の溶解性成分を含む第1混合物を形成するステップ
b)前記第1混合物を分離して、前記溶解性成分を含む第1液体抽出物および第1固形塊を形成するステップ
c)前記第1液体抽出物から有機溶媒を除去するステップ
【0050】
この方法は、以下のステップをさらに含むことができる。
d)前記第1液体抽出物から十分な量の液体を除去して、実質的に乾燥した第2固形塊を形成するステップ
e)前記第2固形塊に水を加えて第2混合物を形成するステップ
f)前記第2混合物を分離して、第1最終液体抽出物および第3固形塊を形成するステップ
【0051】
有機溶媒含有溶液または有機溶媒含有溶液の代わりに水を用いて、上記のステップa)からc)に従って、サメ材料を含む第1固形塊をさらに1回または複数回抽出して、サメ軟骨由来の溶解性成分を少なくとも残留量含む第2および第3の、またはさらに最終液体抽出物を形成することができる。
【0052】
ステップb)の固形物と液体の分離は、例として示しそれだけには限定されないが、遠心分離、濾過、透析濾過、減外濾過、精密濾過、固形物の沈殿、上清の除去を含めた当分野の技術者に周知のいくつかの方法のうち任意のものに従って実施することができる。
【0053】
ステップc)に示した有機溶媒の除去は、例として示しそれだけには限定されないが、蒸発、凍結乾燥、蒸留、デシケーション、有機溶媒吸収剤の添加、液/液抽出、ロータリーエバポレーターを使用することを含めた当分野の技術者に周知のいくつかの方法のうち任意のものに従って実施することができる。
【0054】
本明細書中で使用するサメの材料は固形であり、たとえば粉末、顆粒、棒状、または粒子であり得る。ステップa)の前またはその間に、サメの材料をホモジナイズすることができる。本明細書中で使用する用語「ホモジナイズ」、「ホモジナイズする」、「ホモジネーション」とは、a)軟骨残量の全体または比表面積を増加させること、またはb)軟骨材料からの所望の成分の放出を容易にさせることによって、軟骨材料から所望の成分を抽出する有効性を高める方法を言う。ホモジネーションは、1つまたは複数の化学的手法、物理的手法、およびこれらの組合せによって実施することができる。
【0055】
軟骨材料をホモジナイズする化学的手法には、軟骨材料を膨らます、軟骨材料中の細胞または細胞外基質を破壊または溶解する、および/または軟骨材料の多孔性を増加させる、1つまたは複数の化学薬品が含まれる。
【0056】
このような化学薬品の例示的で非限定的な例には、洗浄剤、界面活性剤、イオン性剤、非イオン性剤、還元剤、キレート剤、グリコシル化剤、カオトロピック剤、尿素、グアニジン、リン脂質、糖脂質、ジチオスレイトール、β-メルカプトエタノール、ラウリル硫酸ナトリウム、トリトン溶液、および当業者に周知の、またはその開示が本明細書に参照として組み込まれている「A Guide to the Properties and Uses of Detergents in Biology and Biochemistry」、Judith Neugebauer著、Calbiochem-Novabiochem Corporation、1988に開示されている、他のこのような薬剤が含まれる。
【0057】
軟骨材料をホモジナイズする物理的手法は、一般的に、サメ材料の平均粒子の大きさを小さくし、それにより比表面積を増加させる。粒子の大きさの減少は、例として示す粉末化、微粉化、ミリング、粉砕(grinding)、細断(chopping)、高速での混合、および粒子の大きさを小さくさせる分野の当業者に周知の他の方法を含む方法の1つまたは複数によって、行うことができる。
【0058】
抽出溶液に、軟骨からの成分の抽出を促進する抽出促進剤を含めることができる。これらの抽出促進剤は、無機または有機酸、無機または有機塩基、ポリマー、緩衝液、塩および当分野の技術者に周知の他の同様な薬剤を含むことができる。
【0059】
一実施形態によれば、以下によって、軟骨から低分子量物質の抽出を行った。
a)ホモジナイズしたサメ軟骨材料(1kg)をメタノール(1kg)で処理して、サメ軟骨の溶解性成分を含む第1混合物を形成する
b)第1混合物を遠心分離して、前記溶解性成分を含む第1液体抽出物および第1固形塊を形成する
c)前記第1液体抽出物からメタノールを蒸発させる
d)前記第1液体抽出物から十分な量の液体を蒸発させて、実質的に乾燥した第2固形塊を形成する
e)前記第2固形塊に水(1kg)を加えて、第2混合物を形成する
f)前記第2混合物を遠心分離して、第1最終液体抽出物および第3固形塊を形成する
【0060】
任意選択で上記ステップc)およびd)を同時に行って、第1液体抽出物から第2固形塊に直接進むこともできる。
【0061】
上記ステップからの抽出および反復抽出から生じたサメ軟骨の液体抽出物のすべてで、溶解性成分の回収率の指標として、その乾重量含有率およびタンパク質濃度(標準ブラッドフォードタンパク質アッセイで測定)を分析した。抗MMP活性も評価した。40μlの20×濃縮試料でGIAを実施した。結果を表1に要約した。
【0062】
【表1】
Figure 2004521899
【0063】
表1で使用した「CTRL」(対照)は、抽出溶媒として精製水を使用した場合に得られた最終液体抽出物を示す。用語「SU-MET」は、有機溶媒含有溶液としてエタノールを使用した場合に得られた最終液体抽出物を示す。用語「SU-ETH」は、有機溶媒含有溶液としてエタノールを使用した場合に得られた最終液体抽出物を示す。表示「S1」、「S2」および「S3」は、示した溶媒を有機溶媒含有溶液として使用した場合、または水を使用した場合の、それぞれの第1最終液体抽出物、第2最終液体抽出物、および第3最終液体抽出物を示す。
【0064】
結果は、少なくとも抗MMP活性を示している生理活性成分をサメ軟骨から回収するのには、水性および非水性の有機溶媒含有溶液のどちらもを使用することができることを実証している。さらに、サメ軟骨の固形粒子の連続的な再抽出によって、残留活性活性を抽出することができる。
【0065】
乾重量分析およびタンパク質の回収から判断した抗MMP活性と単離した物質の量に明白な直接的な相関はない。
【0066】
液体抽出物の生産における、軟骨と精製水の比の影響
本発明の方法の第1の実施形態によれば、粗液体抽出物は、軟骨(C)に対する精製水(E)の比がそれぞれ約1kgに対して1Lとなるように水を用いて調製する。成分を回収する方法は、以下のステップを含んでいた。
a)軟骨が約500ミクロンより小さい平均粒子の大きさを有する固形粒子になるまでサメ軟骨を水性溶液中でホモジナイズして小さくし、ホモジネートを形成するステップ
b)前記ホモジネートを平衡化して、生理活性成分を前記水性溶液中に抽出し、第1固形塊を含む第1混合物および前記生理活性成分を含む第1液体抽出物(LE)を形成するステップ
c)前記第1液体抽出物を前記第1固形塊から分離するステップ
d)第1液体抽出物を分離手順にかけて、約500kDaより小さい分子量を有する軟骨分子(LE-0-500)を含む第2液体抽出物を形成するステップ
e)0.22ミクロンの公称多孔性を有する精密濾過膜で前記第2液体抽出物を濾過して、最終液体抽出物(実質的に0-500分画に等価であるP-C1-E1)を形成するステップ
【0067】
本発明の方法はまた、以下の様々な軟骨と水の比を用いて実施した。
【0068】
【表2】
Figure 2004521899
【0069】
上記手順に従って調製したすべての第1液体抽出物の乾重量含量、タンパク質濃度、および抗MMP活性を分析した。この結果を表2に要約した。
【0070】
【表3】
Figure 2004521899
【0071】
これらの結果は、サメ軟骨開始材料1キログラムあたり約20gの溶解性成分が回収できることを示す。指定した条件下での溶解性成分の最高回収率は、サメ軟骨1kgあたり溶解性成分19.8(9.9×2)gおよび18.9(6.3×3)gであった(それぞれP-C1-E2およびP-C1-E3)。
【0072】
これらの結果はまた、乾重量含量、タンパク質含量だけでなく、抗MMP活性を有する成分も、様々な軟骨と精製水の比を用いて効率的に回収することができることを示した。
【0073】
P-C1-E1抽出物から回収した第1固形塊を、さらに2回、同じ軟骨と精製水の比を用いて再抽出し、これに含まれる成分の残留量を回収した。第1固形塊の反復抽出の方法は以下のステップを含む。
f)ステップc)から回収した前記第1固形塊を精製水で処理して第2混合物を形成し、これを分離して、ステップd)とe)に従って処理することができる第2液体抽出物(P-C1-E1-2)、および第2固形塊を形成するステップ
g)任意選択で、ステップf)を前記第2固形塊で繰り返して、ステップd)とe)に従って処理することができる第3液体抽出物(P-C1-E1-3)、および第3固形塊を形成するステップ
【0074】
上記ステップa)からg)で使用した水およびサメ軟骨の量を表3に要約する。
【0075】
【表4】
Figure 2004521899
【0076】
上記手順から生じるすべての液体抽出物の乾重量含量、タンパク質濃度、および抗MMP活性を分析した。結果を表4に要約した。
【0077】
【表5】
Figure 2004521899
【0078】
これらの結果は、上記ステップa)からc)に従ったサメ軟骨の1つまたは複数の抽出により、サメ軟骨の溶解性成分の回収が増加する可能性があることを示す。さらに、同じ固形粒子の第2や第3の抽出後にも、依然として抗MMP活性を有する残留量成分を抽出することができる。
【0079】
たとえば温度、抽出回数、抽出溶媒など抽出パラメータの改変して、回収される固形物、タンパク質、生理活性成分の量を最適化できることは、当業者には明らかであろう。
【0080】
軟骨由来の成分の様々な分子量分画を調製する方法
0-500分画:0-500分画は、約500kDaより小さい分子量を有する成分を含むサメ軟骨抽出物である。0-500分画の調製方法は、国際公開公報WO 95/32722号、WO 96/23512号、およびWO 97/16197号に開示されており、関連した開示は本明細書中に参照として組み込まれている。これらの従来技術の方法は、以下のステップを含む。
a)軟骨中に存在する生理活性成分の完全性を保存するのに適合した条件下で、軟骨が約500μmより小さい大きさの固形粒子になるまでサメ軟骨を水性溶液中でホモジナイズして小さくするステップ
b)前記生理活性成分を水性溶液中に抽出し、固形粒子と前記生理活性物質を有する粗液体抽出物(LE)との混合物を生じるステップ
c)前記液体抽出物を前記固形粒子から分離するステップ
d)約500kDaより小さい分子量を有する分子(LE-0-500)を含む最終液体抽出物が得られるように、粗液体抽出物をさらに分離するステップ
e)LE-0-500を精密濾過膜(0.22ミクロン)で濾過し、凍結させて最終液体抽出物(0-500分画)を得るステップ
【0081】
0-1分画および1-500分画:0-1分画は、約1kDaより小さい分子量を有する成分を含む、サメ軟骨液体抽出物である。1-500分画は、約1から500kDaの分子量を有する成分を含むサメ軟骨液体抽出物である。サメ軟骨抽出物の0-1分画および1-500分画は、約1kDaの公称分子量カットオフを有する膜を使用した減外濾過を用いて調製した。このシステムを使用して、1サイクルの精製後に2つの軟骨分画を得た(1サイクルの精製とは、透過物の50%が回収された時に精製ステップを停止することによって定義される)。1-500分画は、精製水を用いて再構成させた場合に、最終体積が精製に使用した軟骨抽出物の最初の体積と等価になるように、約1から500kDaの分子量を有する成分を精製に使用した最初の抽出物に対して1×濃度で含み、かつ約1kDaより小さい分子量を有する成分を0.5×濃度で含む、濃縮水(R)を含む。0-1分画は、1×濃度の約1kDaより小さい分子量を有する成分のみからなる透過水(P)を含んでいた。減外濾過システムを使用して、示したように追加の精製サイクルによって、1-500分画をさらに精製した。
【0082】
【表6】
Figure 2004521899
【0083】
上記手順に従って、複数バッチの0-1分画および1-500分画を調製した。凝集体の形成を最小限にするため、溶解性を改善させるため、および安定な可溶形を保つために、1%w/vのショ糖水溶液を抽出の安定剤として使用した。
【0084】
まず上に記載した従来技術の方法に従ってLE-0-500分画を調製し、次いで以下の新規のステップを加えることによって、0-1分画および1-500分画を得た。
e)任意選択で、最終濃度約1%(w/v)のショ糖を含む溶液を用いてLE-0-500抽出物を調製し、1%ショ糖のLE-0-500分画を形成するステップ
f)約1kDaの公称分子量カットオフを有する膜を用いてLE-0-500または1%ショ糖のLE-0-500を濾過し、約1kDaより小さい分子量を有する軟骨分子を含む液体抽出物(それぞれPn-0-1および1%ショ糖のPn-0-1分画、「n」は表5の精製サイクルを表す)を形成し、また約1kDaより大きい分子量を有する軟骨分子を含む濃縮水液体抽出物(それぞれRn-0-1および1%ショ糖のRn-0-1分画、「n」は表5の精製サイクルを表す)を形成するステップ
g)約0.22ミクロンの多孔性を有する精密濾過膜で濃縮水および透過水の液体抽出物を精密濾過するステップ
【0085】
上記の手順は、ショ糖を含まない抽出物を調製するためにステップe)を含めずに実施することができる。濃縮液体抽出物を、1回以上、好ましくは4回以上の精製サイクルで減外濾過し、約1kDaより小さい分子量を有する軟骨成分を含む追加の濾液液体抽出物(P1-0-1からP6-0-1)を形成し、また1から約500kDaの分子量を有する軟骨成分を含む濃縮水抽出物(R6-1-500および1%ショ糖のR6-1500)を形成することができる。保管のために、液体抽出物を任意選択で凍結させることができる。
【0086】
したがって、今説明した手順を使用して、以下の液体抽出物を調製した。
1)LE 0-500から調製した0-500分画
2)1%ショ糖のLE-0-500から調製した1%ショ糖の0-500分画
3)P1-0-1から調製した0-1分画
4)1%ショ糖のP1-0-1から調製した1%ショ糖の0-1分画
5)R6-1-500から調製した1-500分画
6)1%ショ糖のR6-1-500から調製した1%ショ糖の1-500分画
【0087】
水を用いて第1固形塊を処理する間に形成された第2混合物を分離して得た第2固形塊を、水を用いて反復抽出して、追加の量のサメ軟骨の溶解性分画を回収することができる。
【0088】
上記手順に従って調製したすべての液体抽出物の乾重量およびタンパク質含量を分析した。くわえて、各分画の抗MMP活性のみならず抗血管新生性活性および抗腫瘍活性も測定した。
【0089】
結果を表6に要約した。
【0090】
【表7】
Figure 2004521899
【0091】
分析結果は、0-1分画および1%ショ糖の0-1分画のどちらもが、回収した乾重量含量を90%より多く含むが、非常に低い量、ほとんど検出不可能な量のタンパク質しか含まないことを実証している。
【0092】
しかし、0-1分画および1-500分画のいずれもで抗MMP活性が観測され、これは、1)少なくとも1つのタンパク質でない成分がこの活性を担っていること、2)2つ以上の成分が抗MMP活性を有する可能性があることを示唆する。この活性成分は、タンパク質またはペプチド性質のものであるか、またはそうでない可能性がある。
【0093】
さらに、EVTに従って測定した抗血管新生性活性は、唯一0-1分画で観測された。本発明者らは、ショ糖の存在が、1%ショ糖の1-500分画の僅かな抗血管新生性活性の回復を担っていることを指摘する。
【0094】
M27腫瘍細胞(LLC)を接種した動物の処置により、肺表面で巨視的に見られる転移性の小塊の数が有意に減少した。0-1分画と0-500分画のいずれもが、転移性小塊の数の有意な減少を誘導した(約30%)。しかし、1-500分画は0-1分画または0-500分画のいずれかよりも僅かに活性が低く、これは、0-1分画中の活性成分が抗腫瘍活性の少なくとも一部を担っていることを示唆する。これらの結果はまた、1-500分画中に別の抗腫瘍成分が存在することを示唆する。1%w/vショ糖を含む同分子量分画を用いて、いくつかの追加の動物群を処置した。これらの群間で有意な差は観察されなかったが、より大きな分子量分画はショ糖の存在下で活性がより高い傾向がある(上記表)。動物体重の減少は観察されず、これは、LLCモデル内の軟骨抽出物に毒性がないことを示唆する。
【0095】
抗MMP成分の単離および特徴づけ
クロマトグラフィーによる単離および精製
0-500分画、より詳細には0-1分画中に有用な生理活性を有する複数の成分が存在することが見出されたので、次のステップは、それから活性成分を単離することであった。
【0096】
0-500分画から抗MMP活性を含む成分を単離および精製する4つの異なる手順が開発された。
【0097】
手順1:
ステップ1:
上記の詳細な手順によって得た0-500分画を凍結乾燥させて、精製水に(最初の体積に対して20倍の濃度に)溶解した。生理活性成分の溶解性を最適にするために、再構成させた物質を15分間超音波処理した。4℃、2200gで10分間遠心分離するなど分離手順のあと、さらなる精製のために上清を保管した。
【0098】
ステップ2:
固相抽出カラム(SPE-C18中性)を用いた吸着クロマトグラフィーを実施した。
【0099】
500mgのC18吸着剤(Supelco第5-7012号、寸法3cc)を充填したSPEカラムを、2mlのメタノール(100%)で2回、2mlの精製水で3回コンディショニングした。1mlの20×溶解軟骨抽出物をカラムに載せた。吸着ビーズを1.5mlの精製水で洗浄し、抗MMP活性を有する成分を2つの2.5mlポーション(portion)の精製水で溶出させ、これらを合わせて第1溶出液とした。
【0100】
最初の抗MMP活性の約50%が第1溶出液で回収された。残りの50%は、カラムに載せるステップおよび洗浄ステップで失われた。したがって、中性条件では、抗MMP活性を有する成分の保持が弱いと考えられる。このクロマトグラフィー媒体を用いた場合に成分の保持が弱いことは、極性またはイオン性成分の指標である。
【0101】
ステップ3:
上記の方法を複数回、様々な20×再構成軟骨抽出物を用いて繰り返した後、それぞれの第1溶出液を貯留し、Speed Vac遠心分離で蒸発させた。それから得た固形物を、精製水中、使用した0-500分画の最初の体積に対して200倍の濃度で溶解した。超音波処理および遠心分離の後、次の精製ステップのために上清を保管した。
【0102】
ステップ4:
中性条件で、上清中に存在する生理活性成分の低分離度のセミ分取HPLC分離を実施した。Novapack C18HR(7.6×300mm;Waters)のカラムを使用した。使用した移動相はリン酸ナトリウム(0.01M pH7)/メタノール(92:8)であった。流速および温度は、それぞれ2ml/分および30℃に維持した。上記の200×再構成分画(100μl)をカラム上に注入し、定組成溶出条件およびUV検出(205nm)を使用して2mlの分画を採取した。実行時間は30分であった。抗MMP活性を有する成分は、11から13分の保持時間を有する分画に対応する溶出分画中に見つかった。
【0103】
ステップ5:
様々な200×再構成分画、およびそれに対応する所望の溶出分画を貯留し、蒸発し、使用した0-500分画の最初の体積に対して500×濃度に精製水に溶解し、超音波処理し、遠心分離したものの100μlアリコートで、ステップ4を繰り返した。次の精製ステップのために上清を保管した。
【0104】
ステップ6:
より高い分離度のセミ分取HPLC分離を、中性条件でステップ5から得た上清で実施した。このより高い分離度のセミ分取HPLCで使用した手順は、移動相としてリン酸緩衝液(0.01M、pH7)/メタノール(97:3)を使用する以外は上記ステップ4と類似している。抗MMP活性を有する成分は、23から27分の保持時間を有する分画に対応する溶出分画中に見つかった。
【0105】
ステップ7:
ステップ6を繰り返し、活性成分を含む対応する溶出分画を貯留し、溶媒を蒸発させて実質的に固形の残留物を形成した後、使用した0-500分画の最初の体積に対して500から2000×濃度に残留物を水に溶解し、超音波処理および遠心分離し、さらなる分子量分析およびその抗MMP活性の測定のために保管した。
【0106】
生理活性物質は、「AE-986」と命名した。
【0107】
手順2:
一般的に、C18相クロマトグラフィー媒体では、pH3でAE-986の保持がより良いことが決定された。したがって、SPE手順(上記ステップ2)だけでなくセミ分取クロマトグラフィーシステム(上記ステップ4および6)も改良した。以下の条件により、SPE手順中でより強力な洗浄溶液の使用が可能になり、より清浄な最終抽出物がもたらされ、セミ分取精製ステップの1つ(手順1のステップ4)を省くことができる。たとえば、手順1のステップ1から3を繰り返した。ステップ4を以下に置き換えた。
【0108】
ステップ4:
上記ステップ2と同じSPE C-18カラムを使用したが、クロマトグラフィー媒体を、2mlのギ酸アンモニウム(0.01M、pH3)で3回コンディショニングした。ステップ3から得た1mlの200×再構成抽出物(試料を載せる前にpHを3に調整した)をカラムに載せた。吸着剤層(bed)を2mlのギ酸アンモニウム/メタノール(90:10、pH3)で3回洗浄した。AE-986の溶出は、1mlのメタノール(100%)を用いて実施した。カラムのメタノール溶出から得た分画が水を含むことは、当業者には明らかである。したがって、このステップの溶出溶媒は別の有機溶媒、好ましくは極性かつ/または水混和性有機溶媒にすることができ、溶出溶媒に水を含めることもできる。
【0109】
ステップ5:
手順1のステップ5を繰り返したが、再溶解した抗MMP分画の濃度を4000×にした。
【0110】
ステップ6:
このステップは、手順1のステップ6と同一であるが、移動相はギ酸アンモニウム/メタノール(75:25 pH3)である。
【0111】
ステップ7:
ステップ7は、手順1のステップ7と同一であるが、前記ステップ6に記載のと同じ4000×の濃度を保った。
【0112】
手順3:
この手順は、実質的に手順2と同じであるが、ステップ6で、ギ酸緩衝液のpHを酸性(pH3)から中性条件(約pH7)に変えた。
【0113】
手順4:
この精製手順では、最初から酸性移動相を使用した。
【0114】
ステップ1:
最初の0-500分画の(1×濃度での)pHを、ギ酸アンモニウムを用いてpH3に調整し、その後、2200gで10分間遠心分離した。上清をステップ2で使用した。
【0115】
ステップ2:
上清を、酸性条件下でコンディショニングしたSPE C-18カートリッジ(Supelco #5.-7136:寸法60cc、10gの固相支持体を充填)に載せた。カラムを、120mlのメタノール(100%)および120mlのギ酸(0.01M、pH3)でコンディショニングした。500mlの1×酸性化軟骨抽出物をカラムに載せ、6体積の100mlのギ酸(0.01M(pH3)/メタノール90:10)で抽出させた。溶出分画3、4、および5で生理活性成分が得られた。
【0116】
ステップ3:
ステップ2の溶出分画3、4および5を貯留し、ほぼ乾燥するまで溶媒を蒸発させた。その後、最初の4000×の濃度に分画を希釈し、AE-986を含む溶液を形成した。
【0117】
ステップ4:
AE-986は、ギ酸緩衝液pH3中、分取HPLCカラム上で精製した。
【0118】
カラム(Prodigy OSD-prep、10u、250×50mm、Phenomenex)をコンディショニングし、室温で流した。移動相の組成は、ギ酸(0.01M、pH3)/メタノール(70:30)であり、流速は45ml/分であった。4mlの4000×濃度のSPE C-18分画をカラム上に注入し、定組成モードでUV検出(205nm)用いてカラムから溶出させた。1分間隔で60分間、分画を採取した。AE-986の抗MMP活性は、33から36分に溶出された。
【0119】
ステップ5:
抗MMP活性を示している分画を貯留し、蒸発させて10000×濃度の分画を得た。
【0120】
ステップ6:
このステップは手順2のステップ6と同一であるが、移動相はギ酸(0.01M、pH3)/メタノール(75:25)であった。10000×濃縮分画の500μlアリコートをカラムに載せた。抗MMP活性を含む成分は、21から23分に溶出された。
【0121】
ステップ7:
ステップ7は、手順1のステップ7と同一であった。前記ステップ6と同じ濃度4000×を保った。
【0122】
手順1に従って調製したセミ精製分画:本発明者らは、今回初めて、HPLCで精製した分画(上記手順1で生じた分画)が、抗MMP活性を有する成分を有することを示した。このようにして精製した成分はまた、上記のin vivoモデルLLCで実証したように抗腫瘍活性も示す。抗腫瘍活性は、動物を3つの異なる濃度のHPLCで精製した分画を用いて処理することによって測定した。2.5×濃度の用量(濃度は精製ステップ中での100%回収率に基づき、軟骨抽出物の最初の体積に対する)で、最大の有効性が約50%(p<0.005)のベル型の用量反応曲線が観測された。
【0123】
血管新生およびマトリックスメタロプロテアーゼ活性は、腫瘍増殖および転移進行に密接な関係があるので、抗MMP成分を表しているHPLCで精製した分画は、抗腫瘍活性を担っている可能性がある。したがって、これらの活性を有する成分は、癌の治療における潜在的な治療薬である(Tolnay,E.他、J.Cancer Res Clin.Oncol.、123:652-658、1997;Skobe,M.他、Nature Medicine、3:1222-1227、1997)。
【0124】
手順4に従って調製したセミ精製分画:このセクションの分画は、ステップ2および3を以下のように行ったこと以外は、上記手順4に従って調製した。
【0125】
ステップ2:
酸性条件下でコンディショニングしたSPE C-18カートリッジ(Supelco #5.-7012:寸法3cc、500mgの固相支持体で充填)に上清を載せた。カラムを、4mlのメタノール(100%)および6mlのギ酸(0.01M、pH3)を用いてコンディショニングした。10mlの1×酸性化軟骨抽出物を、1.0mL体積のギ酸(0.01M(pH3)/メタノール90:10)で3回洗浄したカラムに載せ、1.0mLのメタノールを用いてそこから生理活性成分を溶出させた。
【0126】
ステップ3:
生理活性成分を含むステップ2の溶出分画を乾燥するまで蒸発させた。その後、最初の40×または20×の濃度まで分画を希釈して、AE-986を含む溶液を形成した。
【0127】
この手順で生じるすべての液体抽出物の抗MMP活性を分析した。結果を表7に要約する。
【0128】
【表8】
Figure 2004521899
【0129】
したがって、本発明の方法は、抗MMP活性を有する特定のサメ軟骨分画を調製する方法を提供する。さらに、少なくとも1つの抗MMP活性を有する軟骨抽出物を調製するのに、水性溶液および有機溶媒を含む溶液のいずれもを使用することができる。0-500分画および1-500分画のどちらもが抗MMP活性を有するが、本発明の方法によって精製した抗MMP成分は、主に0-1kDa部分に含まれている。同様の結果が、1%w/vのショ糖を含む同等の分画中で観測された。最後に、抗MMP活性は、様々な軟骨と精製水比を使用して効率よく回収することができる。
【0130】
様々な溶媒中の活性の回収:
有機溶媒、すなわちエタノールおよびメタノールを含む溶液を用いて得られた結果により、本発明者らは、多くの他の溶媒を試験し、これら様々な溶媒から回収した抽出物の酵素的アッセイ、増殖アッセイ、および血管新生アッセイにおける阻害活性を検証するよう奨励された。
【0131】
以下のアッセイで軟骨抽出物の活性を試験した。
ゼラチナーゼ阻害アッセイ(MMP-2):メタロプロテアーゼ活性を阻害する液体軟骨抽出物の能力を特徴づけるために、市販のキット(Boehringer Mannheim)を使用してゼラチナーゼ阻害アッセイ(GIA)を実施した。手短に述べると、ビオチン標識のゼラチン基質をゼラチナーゼA(MMP-2)と共に、液体軟骨抽出物またはその誘導体を存在させずにまたは存在させてインキュベートした。次いで、ストレプトアビジンでコーティングしたマイクロタイタープレートに反応混合物を載せた。ビオチン標識のゼラチンは、そのビオチン標識ゼラチンの遊離ビオチン残基を介してストレプトアビジンでコーティングしたマイクロタイターに結合する。基質のゼラチンがゼラチナーゼによってスプライスされていなければ、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(POD)複合体は、ゼラチナーゼ-ビオチン複合体(complex)の残った遊離ビオチン残基に結合する。その後、PODが付加されたABTS基質を、405mnで測定することができる緑色末端産物に変換する。しかし、ビオチン標識のゼラチンが前にゼラチナーゼによってスプライスされていれば、それぞれ1つのビオチン残基を有する小さな断片しか生じない。マイクロタイタープレートへの結合後、これら断片はストレプトアビジン-POD複合体を結合する能力を有しておらず、無色の反応が起こる。
【0132】
エラスターゼ阻害アッセイ(PPE):メタロプロテアーゼ活性を阻害する液体軟骨抽出物の能力を特徴づけるために、僅かに改変した市販のキット(Molecular Probes)を使用してエラスターゼ阻害アッセイを実施した。手短に述べると、蛍光色素と結合させた(ウシ首靭帯由来の)溶解性エラスチン基質(6.25μg/ml)を、サメ軟骨抽出物またはその誘導体を存在させずにまたは存在させて、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE、0.0125U/ml)と共にインキュベートした。エラスターゼによる消化の際に、蛍光が示され、蛍光マイクロプレートリーダーを用いて発光度を測定した(505から515nm)。液体軟骨抽出物中に存在する任意のものなど、エラスターゼの阻害剤の存在下では、エラスチンの消化が妨げられ、蛍光発光が阻害される。
【0133】
In vitro内皮細胞増殖アッセイ(HUVEC):in vitroで内皮細胞の増殖を阻害する液体軟骨抽出物の能力を特徴づけるために、細胞増殖の定量に基づいたアッセイを実施した。使用した、凍結保存したヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を市販源から入手し、マイコプラズマおよび一部のウイルス汚染を試験した。
【0134】
製造者の指示に従ってHUVECを解凍および培養した。アッセイに備えて、HUVECを96ウェルの滅菌培養皿に、各ウェル4,000個の細胞で播種した。6から8時間、内部で細胞を付着させた後、様々な濃度のサメ軟骨抽出物、その誘導体、陰性対照および陽性対照を含む新しい培地を細胞培養物に加えた。その後、細胞を3日間37℃で、上記の適切な試験物品の存在下でインキュベートした。この3日間の後、Hoescht-33257を蛍光色素として使用したDNA染色によって細胞数を評価した。細胞数の減少は、HUVEC増殖に対する阻害効果の指標であった。
【0135】
様々な溶媒から得た抽出物の組成の差:
(HPSEC):高圧サイズ排除クロマトグラフィー
ベクトル角度および長さの比:
各抽出物によって作成された複素スペクトルを比較するために、本発明者らは、ベクトル角度を使用した。この手法は、対になったデータ値からなるデータセットに普遍的に適用できる(BrownおよびDonahue、1988、Applied Spectroscopy、42(2):347)。
【0136】
クロマトグラムの場合、検出シグナル(この場合UV、205nm)を注入後定期的な間隔で測定し、このようなクロマトグラムから得たデータは比較用のデータベースを形成する。与えられた2つのベクトル間の角度は、全体的なスペクトル強度に関わらず、2つのクロマトグラムパターンの差の尺度である。スペクトルが完全に一致していれば角度0が与えられる。ベクトル角度比較を用いて2つの異なるクロマトグラムが同じピーク「パターン」を有するかどうかを判定することができるが、強度が異なるかどうかは判定することができない。強度の差を評価するために、ベクトルの長さを比較する追加の統計ツールが開発されている。このツールは、スペクトルの長さの比を利用する。異なるスペクトル間の長さ比が完全に一致していれば、値1.0が与えられる。
【0137】
ブラッドフォードアッセイを用いたタンパク質濃度の測定:
タンパク質含量を決定するための試験物品の分析は、マイクロタイタープレートの標準アッセイを用いて実施する。手短に述べると、試料のタンパク質および200μg/mlから800μg/mlの濃度範囲のIgGB標準(bovine gamma globulin)溶液中のタンパク質を、最終濃度0.03NのNaOHに溶解させる。各試料および標準の20μlを、マイクロタイタープレートの三つ組ウェルに加え、200μlの色素試薬(クマシーブリリアントブルーG-250 1/5希釈)を各ウェルに加える。5分間のインキュベーション後、プレートリーダーを用いて595nmでの吸光を測定する。
【0138】
回収プロフィル調査の結果および様々な分類の溶媒を用いて得られた抽出物中で回復された活性を、表8から11に示す。様々な溶媒中の生理化合物の回収の様子を図1から3に示す。様々な溶媒中の比較組成を図4および5に示す。
【0139】
【表9】
Figure 2004521899
【0140】
【表10】
Figure 2004521899
【0141】
【表11】
Figure 2004521899
【0142】
【表12】
Figure 2004521899
【0143】
結論:
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)は、細胞外マトリックス中の成分のすべてでなくてもほとんどを集団的に切断する、エンドペプチダーゼのファミリーである。これらは、新しい血管の形成プロセスである血管新生の制御において有意な役割を果たす。これらはまた、癌細胞のストローマへの浸潤をもたらす基底膜の局部タンパク質分解を助けること、次いで毛細血管細胞壁に浸潤して血液循環に入ることによって、癌転移においても重要な役割を果たしている。血液循環中に入った後、これら癌細胞は離れた標的臓器に転移し、それらに浸潤する。ここで、本発明者らは2つの異なるタンパク質分解酵素、MMP-2およびPPEに対する様々な抽出物の阻害活性を評価する。MMP-2は、ゼラチン分解活性を有するマトリックスメタロプロテイナーゼ-2である。PPEはブタ膵臓エラスターゼである。これはエラスチン分解活性を有するタンパク質分解酵素であるので、PPEに対する抽出物のすべての効果が、MMP-9を含むエラスチン分解活性を有する酵素MMPに対する効果の指標であるはずである。
【0144】
さまざまな有機溶媒から得たすべての軟骨抽出物が、有意な阻害活性を示した。PPE活性の50%を阻害することができる(IC50)抽出物の濃度は、図1に示すように0.02から0.5μg/ml(μg乾重量/mL)の範囲である。水を用いて作成した軟骨抽出物は、0.02μg/mLのIC50を示す。同様の活性が、10%メタノール、0.1%ギ酸、または0.1%アンモニウムのいずれかを用いて得た抽出物でモニターされた。これら抽出物中に見つかった抗PPE活性は、抽出に使用した有機溶媒の濃度が増加するにつれて弱くなった。これらの結果は、これら抽出物中にモニターされるタンパク質濃度の減少を反映することができる。
【0145】
しかし、ギ酸およびアンモニウムの場合は、これらを調製するそれぞれの条件はほとんど同一であるので、観測された抗PPE活性の効力の減少はタンパク質濃度の差に関連していなかった。純水を用いて作成した抽出物で得られる効力と大体同じ値であるIC500.03μg/mLを示す、高濃度のギ酸やアンモニウムの存在によってMMP-2の活性が撹乱されないことも言及しておきたい。これは、抗PPEがpHの変動に感受性であることを示す。さらに、これらの結果は、より低い抗PPEを有する、有意な抗MMP-2を有する軟骨抽出物の新しい調製方法を示す。
【0146】
図2に図示するように、すべての軟骨抽出物が抗MMP-2活性を示し、それらのIC50は0.01から0.15μg/mLの範囲である。純水を用いて得た対照抽出物では、0.02μg/mLのIC50が観察された。これら抽出物の効力は、PPE阻害で観察されたように、タンパク質濃度に依存しているように見える。
【0147】
血管新生は、MMPだけでなく、内皮細胞増殖および分化も関与した複雑なプロセスである。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖に対する様々な軟骨抽出物の効果を、その対応する抗血管新生性活性を評価するために確立した。図3に図示するように、これら抽出物の抗増殖性活性(IC50)は、0.02から0.5μg/mLまで変動する。水を用いて作成した対照軟骨抽出物から得た活性は0.48μg/mLであり、抽出ステップ中に有機溶媒を存在させるとより多くの活性抽出物が生じた。最も強力な抽出物は、トリメチルアミンを用いて作成された(10%および40%のTMAを用いて作成した抽出物でそれぞれ0.09および0.02μg/mLのIC50が観測された)。予想しなかったこれらの結果は、この溶媒を水に優先して使用することによって、HUVEC抗増殖性活性のみならず抗血管新生性活性も有する生理活性成分が優先的に濃縮されるという利点を示す。これら抽出物の抗増殖性活性はタンパク質濃度に依存しておらず、したがって、タンパク質性でない成分または複数の成分がこの抗HUVEC活性を担っていることを示唆することも言及しておきたい。
【0148】
これらの実施例は、これら抽出物のそれぞれが異なっていることを示唆していた。これらは様々な濃度のタンパク質を有しており(約0から1203mg/mL)、様々なパターンのMMP-2、PPE、HUVEC活性を示す。これは、水を用いて作成した抽出物を対照として使用した、これら抽出物の高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)分析によって支持されている。この方法は、ベクトル角度が約0から約60度まで変動し、長さ比が1から4まで変動することを示す。予測どおり、タンパク質濃度が変化するのに伴って差が増大する(図4および5)。
【0149】
さらに、純水を溶媒として用いた、対照抽出物の特性と同様の特性を有する抽出物は、有意な差を示した。たとえば、10%のメタノールを用いて作成した抽出物は純水とほぼ同じ生理活性を示すが、クロマトグラフィープロフィルで非常に重要な差を示す(角度=6.01、長さ比1.04)。反対に、アンモニアを用いた抽出物はメタノールとほとんど同じクロマトグラフィープロフィルを示すが(角度=7.40、長さ-1.08)、抗PPE活性が相当減少した、非常に異なった活性を示す。
【0150】
結論:
試験したすべての溶媒を用いた抽出で、活性のある抽出物が作成された。しかし、PPEおよびMMP-2の阻害は、水を用いて作成した抽出物に比べて減少している。反対に、抽出に有機溶媒を使用した場合はHUVEC活性がより高い。TMAによる抽出によって全体的に最も高い活性抽出物が作成された。したがって、軟骨から生理活性成分を抽出するために広い多様性の溶媒を使用することができることが結論付けられる。具体的に試験したもののうち、水100%およびTMA40%が最も効率が良かった。さらに、酸性または塩基性溶媒を使用することで、減少された抗PPE活性を有する抽出物が作成された。いずれにせよ、一部の成分の様々な濃縮度合が、異なる溶媒中で得られた。本発明の抽出物は、腫瘍発生に関与している生理的プロセスに影響を与えることができる。MMPおよび内皮細胞増殖が血管新生の主な事象であるので、本発明の抽出物は、新血管形成に対する、特に腫瘍の血管形成および転移に対する活性を有するはずである。
【0151】
本発明の方法は、任意の軟骨源(トリ類、有袋類、両生類、は虫類、哺乳類、および魚類由来)に適用されるが、サメ軟骨が好ましい。
【0152】
LC/MSによる抗MMP成分の分子量決定
液体クロマトグラフィー/質量分析(LS/MS)によるサメ軟骨分画の分子量の決定を容易にする5つの多次元クロマトグラフィーシステムを開発した。5つのシステムのそれぞれを、下記表12から16に提示する。
【0153】
これらの実験は、スプリット(7:1)クロマトグラフカラム溶出のMSスキャンのみならず、実行後の抗MMP活性測定に使用するLCからの分画を採取することを要する。MSと抗MMP生理活性のこの関連は、使用したクロマトグラフィーシステムそれぞれで、溶出分画のみならず、目的の化合物の保持時間を具体的に同定する。
【0154】
MS陰イオン検出では、MSイオン源に導入する前に、水酸化アンモニウムの溶液(0.75%v/v、0.15ml/分)をカラム溶出液に加えた。混合物で生じたpHは8から10であり、これは、MS陰イオンの形成および検出を改善させる。
【0155】
【表13】
Figure 2004521899
【0156】
採取した分画の抗MMP活性を評価した。
【0157】
【表14】
Figure 2004521899
【0158】
採取した分画の抗MMP活性を評価した。
【0159】
【表15】
Figure 2004521899
【0160】
採取した分画の抗MMP活性を評価した。
【0161】
【表16】
Figure 2004521899
【0162】
採取した分画の抗MMP活性を評価した。
【0163】
【表17】
Figure 2004521899
【0164】
採取した分画の抗MMP活性を評価した。
【0165】
複数次元のクロマトグラフィー実験を、500から1000×の精製したリン酸最終分画(精製手順1のステップ7から得たもの)100μlを注入することによって行った。この濃度では、MSスキャンモード(全イオン)で、強い明確なAE-986のシグナルは検出されなかった。目的のピークは、目的領域(活性分画)内の個々のイオンシグナルすべて(100-1000amu)を実行後モニタリングすることによって検出された。
【0166】
2000×までの濃度を用いた、精製した分画の注入は、全イオンクロマトグラムで小さなピークのみならずAE-986に対応している基準ピーククロマトグラムも示した。
【0167】
陽イオン検出モード(表17)では、イオン245M+1および227のみが、目的領域(AE-986)内で明確に検出された。LCQ MSの設計および操作どおり、水1分子の損失に対応するイオンの観測だけでなく分子イオン(M+1)は、アルコール官能基を含む分析物では普通であり頻繁に起こる。イオン245M+1および227の共溶出プロフィルのみならず、水(H2O)1分子の損失に相当する18amuの差も、分子量244を有する単一目的成分の存在を強く示唆し、陽イオンモードでは245はM+1分析種と等価である。
【0168】
これらのクロマトグラムの実行後分析により、抗MMP活性を有する成分を含む様々なクロマトグラフィーシステムから採取したそれぞれの分画中にイオン245(M+1)が存在することを示した。
【0169】
HPLC C18システム(ギ酸アンモニウム中性pH7定組成)では、m/e245M+1ピークの溶出の保持時間14.14分に対応する、13.5から15.0分に採取した分画中でAE-986が検出された。
【0170】
HPLC C18システム(ギ酸アンモニウム酸性pH3勾配)では、m/e245M+1ピークの溶出の保持時間16.62分に対応する、16.5から17.0分に採取した分画中でAE-986が検出された。
【0171】
HPLC C18システム(ギ酸アンモニウム中性pH3定組成)では、m/e245M+1ピークの溶出の保持時間16.79分に対応する、16から18分に採取した分画中でAE-986が検出された。
【0172】
HPLC NH2システム(ギ酸アンモニウム酸性pH3勾配)では、m/e245ピークの溶出の保持時間14.28分に対応する、14から16分に採取した分画中でAE-986が検出された。
【0173】
陰イオンモード(表18)のみで、評価したすべてのクロマトグラフィーシステムでイオン243および289が目的領域(AE-986)内で検出された。ここでもまた、これら2つのイオンの完全な共溶出は、イオン243のギ酸付加物の形成を示唆する。
【0174】
この現象は、移動相の緩衝液としてギ酸アンモニウムを使用した場合に陰イオンで頻繁に観察される。これは、ギ酸アンモニウム緩衝液を同じpHの酢酸アンモニウム緩衝液に変えることによって証明された。酢酸アンモニウム移動相は、カラムを通した後、MS検出の前に水酸化アンモニウムを用いてアルカリ化した。どちらのシステムも、明確なイオン243のシグナルを示したが、イオン289はギ酸のシステムでのみ検出され、酢酸付加物に対応する新しいイオン(303)が、第2のクロマトグラフィーシステムで検出された。したがって、AE-986成分は約244amuの分子量を有すると考えられる(243は陰イオンモードのM-1分析種と等価である)
【0175】
【表18】
Figure 2004521899
【0176】
【表19】
Figure 2004521899
【0177】
AE-986の実験式および部分構造解明
LC-MS実験式決定:AE-986の構造に関する情報を得るために、質量分析を使用した。表19に、AE-986のLC-MS分析で使用した条件を要約する。
【0178】
【表20】
Figure 2004521899
【0179】
247、246、245の等方向比の決定は、これらイオンの弱いシグナルの読取の精密さを増強するために、ズームスキャンモードで行った。イオン246/245(A+1タイプ)および247/245(A+2タイプ)で得られた等方向比を、以下に表形式で提示する。
【0180】
m/e247/245ピーク高さ(A+2等方向比)の比5.9%は、分子中に1個の硫黄分子およびいくつかの酸素分子が存在することを強く示唆する。
【0181】
A+1要素(m/e246/245ピーク高さ)の比11.8%は、分子中の10個までの炭素原子または炭素、窒素、および硫黄(1)の混合物を反映している。
【0182】
分子量が244amuのため、偶数数の窒素(0、2、4)しかこの分子中に存在できない。
【0183】
LC/MSn構造解明:AE-986の構造の部分解明は、タンデム質量分析実験を行うことによって実施した。
【0184】
【表21】
Figure 2004521899
【0185】
分子イオン245m/e(M+1)の陽イオンで行ったタンデム質量分析(MS/MS)実験では、18amu(m/e227.1)および36amu(m/e209)(少量)の損失が示された。これらの損失は、1分子および2分子の水(それぞれ-H20および-2H20)の損失に対応し、これは、AE-986中にアルコールおよび/またはジオール部分(moiety)が存在することを示す。実際のMS/MSスペクトルを図5に提示する。
【0186】
m/e227イオンで行ったMS/MS実験は、AE-986化学構造の多くの特徴的な断片の複雑なスペクトルを生じた。このスペクトルに現れる断片は、m/e227イオンの1つまたは両方の断片化のいずれか、あるいはこのスペクトル中に現れる他の強イオンの断片化(すなわち、m/e166は209イオンの断片化由来)から生じたかもしれない。したがって、選択したm/e227イオンの断片で、さらなるMS/MS実験を行った。得られたMS/MSスペクトルを、図6に示す。
【0187】
209m/eイオン(M+1-2H20)のMS/MS実験は60amuの損失から生じ、カルボン酸部分(-CH3COOH)の損失の特徴であるm/e149を与える。
【0188】
その後、イオン149m/e(M+1-2H20-CH3COOH)をMS/MSで分析し、m/e105、115、116、134の断片が得られた。149から134の、15の損失は、恐らくCH3の損失に対応する。33および34の損失は、SHおよびH2Sの損失に特徴的であり、したがって、AE-986に硫黄を含む基(チオールまたはチオエーテル)が存在することを強く示唆する。m/e149から105の44の損失は、幾つかの異なる基の損失による可能性がある。
【0189】
化学誘導体化構造解明:AE-986を、下に記載のカルボン酸のエステル化に通常使用される条件にした。
【0190】
メチル化(HCl/メタノール)
精製した分画をメチル化するために、本発明者らは、AE-986の精製した分画(4000×)の15μlを蒸発させ、100μlの混合物HCl(12N):MeOH/(1:99)を閉じたバイアル中で加えた。この混合物を45℃で60から90分間インキュベートし、その後乾燥するまで蒸発させ、100μlの水に溶解させた。この溶液を、LC/MS構造解明に使用したクロマトグラフィー条件に従って注入した。
【0191】
メチル化(BF3/メタノール)
精製した分画をメチル化するために、本発明者らは、AE-986の精製した分画(4000×)の15μlを蒸発させ、100μlのBF3/メタノール溶液を閉じたバイアル中で加えた。この混合物を45℃で60から90分間インキュベートし、その後乾燥するまで蒸発させ、100μlの水に溶解させた。この溶液を、LC/MS構造解明に使用したクロマトグラフィー条件に従って注入した。
【0192】
精製した分画(4000×)の希釈
誘導体化の回収を確認するために、本発明者らは、AE-986の精製した分画(4000×)の15μlを、85μlの水を用いて希釈した。希釈した溶液を、LC/MS解明に使用したクロマトグラフィー条件に従って分析した。
【0193】
結果
45℃で1時間BF3/メタノールまたはH+/メタノールを用いたAE-986成分の誘導体化は、そのクロマトグラフィーシグナルの95%を超える消失をもたらし、消失とは、AE-986に予測された保持時間でのシグナル強度によって決定される。
【0194】
これら2つの反応は、カルボン酸をその対応するメチルエステルに変換するのに周知である。メチル化は、AE-986の分子量を増加するだけでなく、クロマトグラフィーシステムでのその保持時間も増加する。本明細書中で精製されたAE-986誘導体の濃度では、誘導体化した産物は検出できなかった。
【0195】
物理化学特性:AE-986上にカルボン酸など弱酸性官能基が存在することは、ギ酸緩衝液のpHを7から3に下げたときに、HPLC C18カラムでのその保持時間が増加したことによって確認された。
【0196】
これは、約4以上のpKaを有する部分がAE-986内に存在することを強く示唆する。
【0197】
MS/MSデータから示唆されるようにAE-986中にチオールまたはチオエーテル官能基が存在する場合、これは、0-500分画および軟骨からのAE-986の回収に影響を与える。チオールは、溶液中に存在する、硫黄を含む他の分子(タンパク質、ペプチド、アミノ酸など)とジスルフィド(S=S)結合を形成する傾向があるので、本発明の方法によっては、AE-986の遊離チオール部分しか抽出することができないと思われる。
【0198】
ジスルフィド付加物の形成は、一般的に、チオール基を含む分子の物理化学特性を変化させ、抽出によるその回収に影響を与える。AE-986のジスルフィド付加物は、0-500分画(20×)の直接抽出では単離できない可能性がある。AE-986のジスルフィド付加物の形成は、抽出前に、それを含む溶液、特にpH3のもの(SPE C18、pH3)を、室温で、pH7のトリブチルホスホアミンを用いて15分間処理することによって最小限にすることができる。AE-986のジスルフィド付加物の形成を最小限にするために、ジチオスレイトールおよびβ-メルカプトエタノールなど他のジスルフィド結合切断試薬を使用することもできる。
【0199】
サメ軟骨から生理活性成分を回収および単離する上記の方法は、所望の生理活性を示している分画を抽出物するために任意の軟骨源に適合させることができる。
【0200】
以上、具体的な実施形態を参照として本発明を記載した。上記の教示から逸脱することなく改変を行うことは、十分当業者の能力内にある。これらの改変は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】PPE酵素的アッセイの50%阻害を引き起こす様々なサメ軟骨抽出物の濃度(μg/mL)を示す図である。IC50を、溶媒濃度の増加に対してプロットした。
【図2】MMP-2酵素的アッセイの50%阻害を引き起こす様々なサメ軟骨抽出物の濃度(μg/mL)を示す図である。IC50を、溶媒濃度の増加に対してプロットした。
【図3】HUVEC酵素的アッセイの50%阻害を引き起こす様々なサメ軟骨抽出物の濃度(μg/mL)を示す図である。IC50を、溶媒濃度の増加に対してプロットした。
【図4】様々な溶媒中で得た抽出物の軟骨含量に対するHPSEC長さ比の関係を示す図である。
【図5】様々な溶媒中で得た抽出物の軟骨含量に対するHPSECベクトル角度の関係を示す図である。

Claims (19)

  1. a)有機溶媒がエタノールまたはメタノールではないという条件で、溶液中の他の軟骨成分に対して溶解性成分を選択的に富化することを可能にする一定量の有機溶媒を含む溶液中で軟骨材料を処理し、軟骨の溶解性成分を含む第1混合物を形成するステップと、
    b)前記第1混合物を分離して、少なくとも抗マトリックスメタロプロテアーゼ活性または抗増殖性活性を有する前記溶解性成分および第1固形塊を含む第1液体抽出物を形成するステップと
    を含む、溶解性生理活性成分が富化された抽出物を軟骨から得る方法。
  2. a)前記第1液体抽出物から十分な量の液体を除去して実質的に乾燥した第2固形塊を形成するステップと、
    b)前記第2固形塊を水で処理して第2混合物を形成するステップと、
    c)前記第2混合物を分離して、前記溶解性成分を含む最終液体抽出物および第3固形塊を形成するステップと
    をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1抽出物から実質的にすべての前記有機溶媒を除去するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記有機溶媒含有溶液が、1つまたは複数の塩基性、酸性、ハロゲン化、エーテル、プロトン性、非プロトン性、極性、非極性、親水性、疎水性の溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記有機溶媒含有溶液が、トリメチルアミン(TMA)、水酸化アンモニウム、トリフルオロ酢酸(TFA)、ギ酸、クロロホルム、ジブロモメタン、塩化ブチル、ジクロロメタン、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、t-ブチルエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、2-ニトロエタノール、2-フルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、エチレングリコール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコール、1-、2-、3-ペンタノール、ネオペンチルアルコール、t-ペンチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノール、アニソール、ベンジルアルコール、フェノール、またはグリセロール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミドN-メチルアセトアミドおよびN-メチルホルムアミドからなる群から選択される1つまたは複数の有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
  6. 前記有機溶媒含有溶液が、アセトニトリル、プロパノール、イソプロパノール、トリメチルアミン、アセトン、ジメチルスルホキシドからなる群から選択される1つまたは複数の有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記親水性有機溶媒を含む溶液が、プロパノール、イソプロパノール、アセトニトリル、トリメチルアミン、トリフルオロ酢酸、ギ酸、ジメチルスルホキシドからなる群から選択される有機溶媒1種と水の組合せを含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記有機溶媒含有溶液が、溶液の総容量に対して約0.1から100容量%の量で存在する有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
  9. 前記有機溶媒が、溶液の総容量に対して約40から80容量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
  10. 前記有機溶媒が酸性または塩基性の溶媒であり、溶液の総容量に対して少なくとも約10容量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
  11. 前記有機溶媒が酸性または塩基性の溶媒であり、溶液の総容量に対して約0.1から1%v/vの量で存在する、請求項1に記載の方法。
  12. 前記有機溶媒が、溶液の総容量に対して、10から40容量%のトリメチレンアミン、0.1から1容量%のギ酸、0.1から1容量%のトリフルオロ酢酸、10から100容量%のイソプロパノール、10から100容量%のアセトニトリル、0.1から1容量%の水酸化アンモニウムのいずれかである、請求項1に記載の方法。
  13. 前記第1混合物を、遠心分離、濾過、透析、固形物の沈殿のうち1つまたは複数、次いで上清の除去によって分離する、請求項1に記載の方法。
  14. 前記液体の除去を、蒸発、凍結乾燥、蒸留共沸蒸留、デシケーション、液/液抽出、有機溶媒吸収剤の添加、ロータリーエバポレーションを使用することのうち1つまたは複数によって行う、請求項2に記載の方法。
  15. 前記軟骨材料がサメ軟骨である請求項1に記載の方法。
  16. 前記有機溶媒含有溶液を用いて前記軟骨材料を処理する前に、処理の間に、または処理後に前記軟骨材料をホモジナイズするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  17. 前記ホモジナイズを、1つまたは複数の物理的または化学的手法によって行う、請求項16に記載の方法。
  18. 軟骨材料を固形塊に置き換えてステップa)およびb)を繰り返して少なくとも1つのさらなる液体抽出物を得るステップと、前記少なくとも1つのさらなる液体抽出物を前記第1液体抽出物と合わせるステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  19. サメから、請求項12に記載の方法から得た軟骨抽出物。
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