JP2004521191A - 歪みを抑えるための合金シート冷却方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、実質的に永久熱歪みを有しない溶体化処理されたアルミニウム合金のシート製品若しくは他の細長い製品を製造する方法に関する。本発明は、熱処理可能なアルミニウム合金からなる製品を溶体化温度で溶体化処理し、上記合金中に存在する可溶性析出物を溶解する工程と、
上記製品を、上記溶体化温度から、上限温度、即ち該温度以下では第二次相粒子が析出されうる温度まで冷却する冷却工程と、
さらに、上記製品を、下限温度、即ち該温度以下ではもはや上記第二次相粒子が析出されない温度まで冷却する後続冷却工程であって、上記上限温度と上記下限温度との間で、上記合金からの大量の析出を回避するのに十分速い冷却速度で行う後続冷却工程と、
任意であるが、上記製品を、上記下限温度以下の温度まで冷却する付加的冷却工程とを備える。製品の後続冷却工程は、冷却が進むにしたがって冷却速度が増加するように行う。
上記製品を、上記溶体化温度から、上限温度、即ち該温度以下では第二次相粒子が析出されうる温度まで冷却する冷却工程と、
さらに、上記製品を、下限温度、即ち該温度以下ではもはや上記第二次相粒子が析出されない温度まで冷却する後続冷却工程であって、上記上限温度と上記下限温度との間で、上記合金からの大量の析出を回避するのに十分速い冷却速度で行う後続冷却工程と、
任意であるが、上記製品を、上記下限温度以下の温度まで冷却する付加的冷却工程とを備える。製品の後続冷却工程は、冷却が進むにしたがって冷却速度が増加するように行う。
Description
【0001】
(技術分野)
本発明は、熱処理可能なアルミニウム合金シートを溶体化(solutionizing)温度から冷却して、T4若しくはT4P焼戻し硬度の合金シートを製造する方法に関する。このT4若しくはT4P焼戻し硬度とは、通常、上記シート材料を自動車製造業に供給する場合の特性である。特に、本発明は、シート製品の歪みを最小に抑えることを意図した方法に関する。この歪みは、焼入れの間に発生した熱応力により引き起こされる。
【0002】
(背景技術)
アルミニウム合金シート製品の製造者は、薄い厚みのシート材料であって、与えられた焼戻し工程においては良好な成形性を、パーツを成形して塗料焼付けを行った後においては強い強度を有するような材料を提供する場合に難題に直面する。特に、自動車産業においては、自動車の経済性及び燃料の効率を改善するため、絶え間なく探求されており、軽量化された車体パネルや構造部材を製造するための未加工材料として使用されるような製品が要求されている。
【0003】
シート製品を製造するために、熱処理可能なAA(アルミニウム協会)6000系、若しくはAA2000系のアルミニウム合金を使用することは一般的となってきている。熱処理可能な合金とは、一般的に、室温での溶解度限界を超えるような量の可溶性合金成分を含んでいる合金である。このような合金は、加工処理及び/又は加熱処理に付され、次いで焼入れ処理に付される場合に、向上した特性を発揮することができる。これらの合金は、時効処理の間に硬化作用を受けるよう、硬化元素(hardening elements)(例えば、マグネシウム、シリコン及び/又は銅)を、また、成形性及び粒径サイズを制御するため、Fe、Mn及び可能であればCrのような上記以外の元素を含有する。これらの合金は、一般的に、直接チル鋳造(DC)、若しくは連続鋳造を行い、溶解度(solvus)温度以上で均質化し、これにより、鋳造されたままのインゴット若しくは連続ストリップに存在する可溶性粒子を溶解したり、次に行われる熱メカニカルプロセス工程のために熱延性を改善したりする。この溶解度温度は、全ての可溶性粒子(例えば、Mg2Si、AlwCuxMgySiz(ここではQと呼ぶ))、及び合金組成に応じて存在する他の粒子が不安定となり、アルミニウムマトリクスに溶解するようになる温度と定義される。中間アニール工程を用いてもよいし、用いなくても良いが、均質化されたインゴットを熱間圧延若しくは冷間圧延して、最終厚みを得ることができる。その後、最終厚みのシート材料を、溶解度温度(通常、480℃〜580℃の温度範囲にある)以上で溶体化して、熱間圧延及び冷間圧延の間に形成された可溶性粒子を溶解する。その後冷却して所望のT4若しくはT4P焼戻し硬度を得る。
【0004】
冷却工程は、条件に合ったシート材料を、与えられた焼戻し硬度で製造する場合において、最も重要な工程の一つである。材料が、粗い粒界を含有する場合には、非常に望ましくないと考えられる。なぜなら、このような粒子は、シートの機械特性(成形性等)に影響を与え、さらに、塗料焼付けの間、ある程度、硬化応答(hardening response)に影響を与えるためである。それゆえ、シート材料を溶体化温度から急速に冷却して、粒界上に、また時にはマトリクス内に、有害な第二次相の粒子を析出させることを回避し、与えられた焼戻し硬度における成形性と、塗料焼付け間の硬化応答との最善の組み合わせを得ることが必要である。
【0005】
残念なことに、溶体化温度から急速に冷却することにより、シート製品は、永久歪みを生じることとなる。薄い膜厚の製品においては、特にそうである。そのような歪みが起こるとき、このシートは、延伸及び/又は屈曲させて、通常よりも機械的に平坦化することにより、歪みを取り除かなければならない。これにより、延伸操作の間に行った冷間加工に起因して材料の成形性が低下する。それゆえ、冷却処理の間に生じるそのような歪みを回避することが有利であり、この目的は従来から常に考慮されてきた。しかし、歪みを回避するため、若しくは最小に抑えるために取られる工程は、冷却オペレーションの本来意図した有利な効果に対して悪影響を与えたり、冷却プロセスに対して、高コストで不便な工程を導入することになる。
【0006】
米国特許第4,784,921号(1988年11月15日に、M.E.Hyland等により開示)には、自動車パネルに適したアルミニウムシート材料を製造する方法が開示されている。この方法は、溶体化処理した後、液体による冷却により、溶体化温度から、少なくとも10°F/秒(好ましくは、少なくとも300°F/秒)の冷却速度で急速に冷却する工程を含む。シートの温度が350°F以下の温度に到達した後、室温まで空気により冷却する。
【0007】
同様に、米国特許第5,061,327号(1991年10月29日に、D.K.Denzer等により開示)は、溶体化温度から、直ちに、冷水により冷却する工程を備える方法を教示している。好ましい方法によれば、シート合金を、水によりおよそ93℃まで56℃/秒以上の冷却速度で冷却し、次いで空気により室温まで冷却している。
【0008】
1998年10月1日に、Aluminum Company of Americaにより出願されたPCT国際特許出願WO98/42885号は、歪みを発生させることなく、金属合金シートを製造するためのプロセスを開示している。ここで、制御可能な可変液体冷却手段を使用して、限界温度(いわゆるライデンフロスト温度−即ち、この温度以上では、蒸気の層が、シート表面と液体冷却膜間に存在する温度)以上の温度に合金ストリップが維持される時間を制御している。液体による冷却は、限界温度を通るように一定の冷却速度で冷却する。この一定の冷却速度とは、それぞれの合金組成比により制御しながら変化させることができ、さらに、その冷却速度では、物理的な歪みなく、合金のポテンシャル強度(strength potential)を増加させるか、少なくとも維持することができる冷却速度である。しかし、この参照文献では、冷却工程を、冷却される材料と関連性がない変数と結びつけている。この特許文献では、ライデンフロスト温度を、機能的及び効果的に特定のスプレイオリフィスと関連付けることが記載されている。このオリフィスは、冷却液、流量、液体の物理的及び化学的特性、液体を噴霧するために用いられる圧力のために使用される。それゆえ、特定の合金について、複雑な調整を行うことなく、最良の結果を得ることは困難である。また、材料は、冷却液と高温の材料とを分離するガス層を有する場合があり、このガス層は、冷却液の蒸発により形成される。冷却液を蒸発させるためには、材料から気化熱を奪い取ることが必要である。従って、液体から気体への状態変化を伴わない場合よりも非常に高い冷却速度となってしまう。
【0009】
したがって、本発明の発明者は、溶体化温度から液体により冷却する工程を有する方法は、与えられた焼戻し硬度において良好な成形性を、さらに、パーツが形成され塗料焼付けがなされた後では高い強度を保持しながら、熱による歪みを最小にするように制御することは困難であることを見出した。
【0010】
(発明の開示)
本発明は、第二次相粒子が、金属から過度に析出することを回避しながら、製品の歪みを最小に抑え若しくは回避するように、溶体化処理されたアルミニウム合金のシート製品を冷却する方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の別の目的は、実用的でかつ比較的安価な方法により実行可能な方法を提供することである。
【0012】
さらに、本発明は、熱処理可能な合金からなる、T4若しくはT4P焼戻し硬度の製品を、過度の歪み及び粒子の析出を回避するような溶解工程及び冷却工程を行いながら、鋳造、均質化、圧延、熱処理することを特徴とする製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の一つの実施の形態では、実質的に永久熱歪みを有さないアルミニウム合金であって、溶体化処理されたアルミニウム合金からなる製品を製造する方法であって、
熱処理可能なアルミニウム合金からなる製品を溶体化温度において溶体化処理を行い、合金中に存在する可溶性析出物を溶解する工程と、
製品を、溶体化温度から、上限温度まで、即ちこの温度以下では第二次相粒子の析出が起こる温度まで冷却する冷却工程と、
さらに、製品を、下限温度まで、即ちこの温度以下では第二次相粒子の析出がもはや起こらない温度まで冷却する後続冷却工程であって、上限温度と下限温度との間で、合金からの大量の析出が起こることを回避できるほど十分速い冷却速度で行う後続冷却工程と、
任意的であるが、製品を下限温度以下に付加的に冷却する冷却工程とを備え、
製品の後続冷却工程が、冷却が進むにしたがって冷却速度が増加するように行われることを特徴とする方法を提供することを目的とする。
【0014】
製品の後続冷却工程は、少なくとも2つのステージにおいて、異なる冷却速度で行うことが好ましい。この冷却速度は、冷却が進むにしたがって、ステージ毎に増加する。異なる冷却速度を有する少なくとも3つのステージを備えることがより好ましい。シート製品の温度を、製品に沿った距離に対してプロットする場合、製品の後続冷却工程により、理想的には、放物線状若しくは略放物線状の温度分布を示す。
【0015】
製品の後続冷却工程は、製品を複数の噴霧ノズルに対して通過させることにより行う。この噴霧ノズルは、液体若しくは液体/気体のスプレイを製品の方向に向けるためのものである。このスプレイは、少なくとも2つのステージにおいて、異なる冷却速度で冷却する。製品を、最初、緩やかな冷却を行う少なくとも一つのノズルを通過させ(空気若しくは空気/液体の混合物を使用することが好ましい。)、その後さらに急激な冷却を行う少なくとも一つのノズルを通過させ(例えば、製品の近接する表面に対し直角でない角度で、液体を噴霧する。)、その後もっと急激な冷却を行う少なくとも一つのノズルを通過させることが好ましい(例えば、製品の表面に対して垂直に液体を噴霧する。)。付加的若しくは代替的に、異なる冷却速度を得ることができる。これは、製品が進行するに従って異なる強度の噴霧を受けるように、噴霧ノズルの流量を調節することによって行う。
【0016】
上限温度まで製品を冷却する冷却工程は、気体中において、ある特定の冷却速度により行うことが好ましい。この特定の冷却速度とは、この冷却速度において、製品の降伏強さが、永久歪みを抑制することができるほど十分高く保持されるような冷却速度である。ここで、この永久歪みは、冷却により製品内に発生する熱応力により引き起こされる。
【0017】
本発明は、溶体化処理された合金製品若しくはシートであって、上記方法若しくはプロセスにより製造された合金製品若しくはシートに関する。
【0018】
本発明は、特に、AA6000系のアルミニウム合金の処理に応用することができる。この場合、上限温度は、約450℃であり、下限温度は、約325℃であり、シート製品を気体により溶体化温度から上限温度まで冷却する工程は、10〜200℃/秒の範囲の冷却速度で行うことが好ましく、さらに、およそ20℃/秒の冷却速度で冷却を行うことが一層好ましい。また、後続冷却工程は、上限温度から下限温度まで、200〜2000℃/秒、より好ましくは200〜450℃/秒の平均冷却速度で行うことが好ましい。
【0019】
本発明は、溶体化温度からシート合金を冷却する間に、熱歪みを最小にする効果的で生産的な方法を提供する。この方法は、過度に困難性を有さず、かつ高価な改良を必要とせず、従来からの冷却装置(例えば、連続した熱処理ライン)においても行うことができるという点で経済的に有利な効果を有する。
【0020】
本発明は、熱処理可能な合金であって、プロセスの間、溶体化処理及び冷却処理に付される合金のすべてに適用可能である。かかる合金としては、例えばAA6000系、AA2000系、AA7000系、及びAl−Liタイプのアルミニウム合金である。限界温度範囲(上限温度及び下限温度)並びに所望の冷却速度は、様々な合金に対して異なっても良く、各合金の適切な範囲及び冷却速度を、簡単な実験で決定してもよい。
【0021】
この明細書で使用している”シート”という単語は、略平坦(略平面状)であって、たいていの場合(必ずというわけではない)長さが限定されない製品をいうことは、当然明らかである。こうした製品のシート膜厚は特に関係するものではないが、一般的に、溶体化及び冷却処理に付される自動車用シート製品(例えば、AA6111)は、2.3mm以下、典型的には、0.8〜2.0mmの膜厚を有する。しかし、”シート”という単語は、”プレート”とよく称される製品をも含むことを意図している。”プレート”は、一般的に、0.250インチ(6.35mm)以下の膜厚を有し、断面が矩形であって、剪断された端部を有する圧延製品を意味する。本発明は、主として、金属シートのような平面状製品に関する。さらに、本発明の製造方法は、歪みが一つのファクターであるような成形製品(例えば、押出成形された製品)に適用することができる。
【0022】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、我々の先の出願であるPCT出願番号PCT/CA00/01522(2000年12月15日出願)に開示された発明と共に使用することができる。これは、PCT国際出願WO01/44532として、2001年6月21日に出願公開されている。また、本発明は、その発明の改良発明とみなすことができる。しかし、本発明は、影響を及ぼさないような所望の他の冷却方法及び装置と共に使用してもよい。本発明をよく理解することができるように、WO01/44532の発明の記載のうちいくつかを、以下に記載し、WO01/44532の開示の全てを本明細書で引用する。
【0023】
WO01/44532の発明は、溶体化の所望の効果を最大限保持しながら、合金シート若しくは他の熱処理可能材料の永久歪みを減少させるための方法に関する。この永久歪みは、熱応力により発生し、この熱応力は、溶体化処理してその後に冷却処理することに関連する。本発明も同じ目的を有する。
【0024】
自動車産業及び他のユーザーの厳しい条件を満たすために、最終製品において、高い強度、耐久性、良好な耐食性を備え、さらに、(ユーザーに)与えられた状態での焼戻し硬度(temper)において成形性を最大にするように、熱処理可能な合金を急激に冷却することが必要である。WO01/44532で挙げられた発明者は、そのような急激な冷却は、第二次相の析出が起こる温度範囲内だけ必要であることを見出した。この範囲以上の温度では、金属の冶金学上の構造に悪影響を与えずにより低い冷却速度とすることができ、さらに、金属の降伏強さが冷却処理によって発生する熱応力に耐えることができる程度に十分高くなるような冷却温度を選択することもできる。従って、シート製品の永久歪みを抑制若しく除去することができる。
【0025】
WO01/44532の発明では、溶体化温度からの冷却操作を、2以上の別個のステップに分けている。この第一のステップには、溶体化温度から、上限温度(この温度以下では、析出が起こるような温度)までの緩やかな冷却速度(加熱ガス内で、ガス冷却することによりなされる)が含まれる。さらに、第二のステップには、上限温度と下限温度(下限温度は、この下限温度以下では、析出が起こらないか、これ以上析出が起こらない温度である)との間の析出範囲を通るような急速な冷却(液体冷却、若しくは液体と気体を混合したものによる冷却)が含まれる。析出範囲の下限温度以下で実行される付加的冷却の性質は、(たとえ、あるとしても)それほど重要ではない。この付加的冷却は、液体冷却若しくはガス冷却のいずれかを使用して(空気を用いたガス冷却が好ましい)、所望の冷却速度で実行してよい。これらの低温度域では、合金の降伏強さは、粒界上に有害な粒子を析出させることなく熱歪みに抗することができるほど十分高い。
【0026】
このようにして得られた合金は、一般的に、冷却後に、時効化処理され、所望のT4若しくはT4P焼戻し硬度が得られる。
【0027】
図1は、一般的なAA6000系合金(特にAA6111)の降伏強さ(YS)が、合金の温度が上昇するにしたがって、どのように下降するかを示している。垂直軸(縦軸)は、特定温度における降伏強さ(これは、室温時の降伏強さ(R.Temp YS)に対するパーセンテイジとして表示されている。)を示している。降伏強さは、温度が約450〜600℃まで増加するにしたがって、急激に零まで下降することがわかる。通常、溶体化は、約600℃までの温度で行われる。金属は、これらの温度では、歪みを非常に受け易い。他方、約450℃の温度では、室温時の降伏強さのおよそ50%が得られる。AA6000系の合金においては、一般的に、これは、析出範囲の上限温度に相当する。この温度以下では、材料はより大きな耐歪み性を有するけれども、図1が示すように、約100℃以上の温度では最大降伏強さが完全には現われず、そのため、上限温度と下限温度との間の温度では、いくらかの歪みがありえることを示している。WO01/44532の発明は、上限温度以上の温度で歪みを減少させることに、特に焦点を絞っている。本発明は、上限温度以下、即ち、析出範囲の温度に特に焦点を絞っている。
【0028】
WO01/44532の発明は、アルミニウム協会AA6000系アルミニウム合金やAA2000系、AA7000系、及びAl−Li合金のアルミニウム合金シートを製造する方法に関して特に記載されている。しかし、WO01/44532と本発明の両方の方法は、他の種類のアルミニウム合金を含む様々な熱処理可能な合金の加工処理において有益な熱機械プロセス手順を提供する。
【0029】
図2は、AA6111合金シート製品についての温度と時間との相関関係を示した曲線を示したグラフである。図面には、領域A、B及びCが含まれる。これらの領域は、本発明において重要な温度範囲を示している。領域Aは、溶体化温度(Tsol)と、析出が始まる上限温度(Tupper)との間の温度範囲である。領域Bは、時間及び温度条件が適切である場合に、第二次相の析出が起こる析出領域(限界範囲)を示している。領域Cは、Tlowerより低い温度範囲である。このTlowerは、この温度以下では、いかなる冷却速度でも、これ以上第二次相の析出が起こらない温度である。これらの温度範囲は、絶対的なものではなく、目的の合金の物理的特性に応じて、与えられるあらゆる冷却方法に対して変化することに注意すべきである。この温度範囲は、与えられた熱処理可能な合金及び冷却方法の全てに対して実験的に決定しても良い。
【0030】
3つの冷却処理が、図2に示されている(即ち、冷却1、冷却2及び冷却3)。これらの処理は、時間”ts”の前だけが異なる。時間”ts”とは、合金温度が初めてTupperに到達する時間であって、溶体化処理の終端からの時間である。この時間”ts”の後、3つの冷却処理は、同じ曲線を辿る。
【0031】
冷却1は、先行技術の冷却方法における典型的な温度勾配を示しており、冷却2及び冷却3は、WO01/44532に記載した方法における温度勾配を示している。本発明は、領域Bで行われる冷却方法に特に関連する(図5及び6参照)。
【0032】
先行技術における共通のプラクティスによれば、冷却プロセスは、一般的に、単一のステップのプロセスであり、この単一ステップのプロセスにより、限界析出温度範囲を通過するよう、熱溶体化温度(Tsol)から直接急速な冷却を行う。図2に示すように、冷却1の温度勾配は、領域A及びBに亘って略一定である。対照的に、冷却2及び3は、領域Aを通過する少なくとも一つの予備工程(緩やかな冷却)を有する。この緩やかな冷却は、領域Bを通過する急激な冷却ステップが開始される前に行われる。図1の領域A内のシート合金の第一冷却は、シート合金のほとんど若しくは全てにおいて、熱応力がシートの降伏強さを超えないように加熱空気を噴霧することによって行う。加熱空気を用いるこの緩やかな冷却により、シート合金の温度は、緩やかな冷却速度で限界温度Tupperに到達する。この冷却速度は、急速冷却の開始時において発生する高い熱応力を抑制するに十分な強度及び安定性といった特性を発現させながら、高い熱応力を回避できるように十分緩やかである。
【0033】
この冷却速度と、その冷却速度を発生させるために必要な加熱空気の温度は経験的に決めることができる。別の実施の形態では、温度、圧力、速度、製品の厚さ及び熱伝達係数を使用する数学モデルを適用して冷却速度を決定し、溶体化処理に付された金属の温度を基準に、加熱空気の最適温度を算出しても良い。同様な数学モデルを使用して冷却ガスの温度を決定し、対象である金属の温度ピークに応じて変化させても良い。領域AにおいてAA6111合金を冷却するのに適したガス温度の典型的な範囲は、300〜350℃である。
【0034】
連続する熱処理装置の一以上の連続したゾーンで加熱空気を噴霧して、徐々に、そのシート合金を冷却しても良い。Tupperに到達すると、水若しくは高熱容量の標準的な液体(若しくは気体と液体の混合物)を使用した急速冷却を、後続冷却ゾーンで開始し、合金シートをある温度範囲を通るように急激に冷却する。ある温度範囲とは、この温度範囲において、冷却速度が十分に遅い場合には、合金が容易に析出するような温度範囲である。このステージの冷却で、合金シートの降伏強さは、溶体化温度での降伏強さから実質的に増加する。このステップで使用される冷却液の温度は、従来の冷却ステップで使用される液体の温度と同じであっても良い。この温度は、一般的に、18℃(室温)と30℃(温暖な場合)との間にある。
【0035】
一度、領域Cにおいて、析出範囲(Tlower)以下の温度まで冷却されると、シートは強靭になり、有害な析出が起こらない。このため、そこから開始される後続冷却の詳細は、本発明にとってそれほど重要でない。このステップで使用される冷却媒体の温度は、熱交換器を使用して、加熱若しくは冷却することにより制御しても良い。一般的に、温度は20℃から約100℃まで様々である。
【0036】
冷却1に示されたような従来のプロセスでは、溶体化温度から急速な冷却が開始される。この処理で得られるシート合金は、温度勾配の結果生じた永久歪みの効果を受けるが、これは急速な冷却により引き起こされ、最初の冷却温度近辺でのシート合金の降伏強さを超えてしまう。その後、結果として得られるシート合金は、延伸及び/又は屈曲させて歪みを取り除くことにより、機械的に平坦にしなければならない。大きな労力を要するそのような冷間加工により、プロセスのコストを増加させ、材料の成形性を減少させる。
【0037】
図2に示されているように、時間tsにおいて温度がTupper以下になって初めて、急速冷却を開始しなければならない。この時間tsからTlower未満に冷却するために必要な時間は、直接、発生する析出の量を決定する。この図面は、斜線領域Eを囲む限界時間曲線Sを示している。Tupperに近い温度では、第二次相粒子の析出の駆動力は、非常に小さく、核形成および成長速度が低く、そのため、析出プロセスの開始は遅くなる。一方、Tlowerの近くの温度では、駆動力は非常に大きいが、拡散速度が遅すぎるため、析出プロセスの開始が阻害される。このことにより、大きな駆動力及び高い拡散速度が存在する限界時間曲線CのノーズNでだけ、急激な析出が起こる。図2に示すように、限界時間曲線Sは、時間と温度の関数として、第二次相粒子の析出の開始位置を示している。これにより、冷却曲線が、斜線領域Eを横切る場合、第二次相の析出が、望ましくない程度起こる。曲線の数、形、位置を含め、そのような限界時間曲線の特性は、合金の組成及び合金の処理経過に依存している。
【0038】
したがって、領域Bにおいて、シート合金を熱機械的に処理する目的は、冷却曲線が、急速な冷却を介して、限界曲線CのノーズNを回避して、そのことによって、第二次相析出により引き起こされる悪影響の可能性を排除することである。曲線のノーズの前の時間は、結晶核が発生するまでの期間(インキュベーションピリオド)と称され、その期間は、AA6111では、一分未満である。冷却若しくは時効処理の間の温度における時間が、インキュベーションピリオドより小さいか、若しくは限界曲線の左にある場合は、析出プロセスは起こらない。
【0039】
WO01/44532において開示されているように、図2の冷却2は、溶体化温度からTupperまで、一定の緩やかな冷却速度を用いる。曲線の傾斜は、合金の降伏強さを超え、そのことにより永久歪みを引き起こすほど強い熱応力の発生を抑制するのに十分なほど緩やかである。
【0040】
WO01/44532の別の実施の形態が、図2の領域Aにおいて、冷却3として示されている。この実施の形態では、Tupperまで緩やかに冷却する第一ステップに複数の加熱空気相を適用し、温度減少に伴う降伏強さの増加に比例するように、徐々に冷却速度を増加させる。これは、合金シートに2以上の加熱空気相を噴霧して、徐々に低くなるような空気温度で処理することによりなされる。この方法によれば、最初合金の降伏強さが低いときにシート合金に加えられる冷却応力は非常に低くなる。
【0041】
図3は、WO01/44532の発明の好ましい実施形態を実行するのに適した熱処理装置の、一部を簡略化した断面図である。装置10は、トンネル11の形態をとる。ストリップ12は、このトンネル11を通過しつつ、連続した基板上において牽引される。装置は、内部で複数のゾーンに分けられている。第一ゾーン11Aは、溶体化処理の最後のステップをなす。高温ガスは、ノズル14からゾーンに導入される。ノズル14は、トンネル11の頂部と底部に位置する。このゾーンを通過するストリップ製品は、溶体化温度まで加熱される。
【0042】
第二ゾーン11Bは、シート製品の温度を溶体化温度からTupperまで冷却する領域をなす。加熱ガスを、ノズル15を介してこのゾーンに導入する。ストリップ製品がこのゾーンを通過する間、例えば、図2の冷却2若しくは冷却3により、ストリップ製品を冷却しても良い。このゾーン内の様々なノズルを通って出てくるガスの温度を変化させることによって、このゾーンにおいて、様々な温度分布を得ることができる。
【0043】
その後、ストリップ製品は、製品がTupperからTlowerまで冷却される第三ゾーン11Cを通る。このゾーンの第一部分16において、いわゆる”コアンダ”ノズル18が設けられ、冷却液体を供給する。ノズルは、シートの進行方向を向いたストリップ製品12の表面に対し所定の角度で配され、冷却液(水)と空気とを混合し、水滴の大きさを小さくする。水滴の大きさをより小さくし、ノズルを傾けて配することにより、冷却効率を改善することができる。ゾーン11Cのこの部分において、ストリップ製品の温度は、ライデンフロスト温度以上であり、液体の冷却剤(水)とシート表面との間に、蒸気バリアーが存在する。この配置により、ストリップ製品上に直接冷却液を噴霧するだけの場合よりも、より高い冷却効率を得ることができる。ストリップ製品の温度が、一旦、ライデンフロスト点を通過すると、蒸気バリアーが消滅する。よって、従来の噴霧ノズルを用いても良い。続いて、第三ゾーン11Cの第二部分17において、ストリップ製品の表面に対して垂直に向いている従来型のノズル20を使用して、Tlowerまで冷却する。
【0044】
第四ゾーン即ち最終ゾーン11Dにおいて、Tlower以下への冷却は、ノズル21を介して導入されるガスにより行われる。
【0045】
本発明によれば、上限温度以下まで冷却される冷却工程を少なくとも2つのステージ(好ましくは3つ以上のステージ)で実行するならば、シート製品の熱歪みをさらに減少させ、最小に抑えることができることがわかる。WO01/44532のように、後続の冷却ステップにより、略一定の冷却速度で冷却するのではなく、第一のステージにおいては、比較的低い冷却速度で冷却を開始し、その後、短時間経過後、次のステージにおいては、より速い冷却速度で、若しくは徐々に速くなるような冷却速度で進行するのが良い。一層強い(速い)第三の冷却ステージを設けても良い。各ステージは、実質的により遅い冷却速度のステージを挟むことなく互いに連続して行われる。ストリップが、連続熱処理炉内で冷却されるとき、示された異なるステージは、熱処理炉内の異なるゾーン若しくは領域に対応する。
【0046】
本発明は、シート製品の幅に亘って均一に冷却されたシート製品の場合(好ましい配置である)、シート製品中の熱応力は、シート製品の長手方向に沿った位置における温度の二次微分に比例するという理解に基いている。温度の二次微分とは、シートに沿った距離に対して二回微分されたシート製品温度である。それは、シート製品の長さに沿った温度勾配(グラジエント)の勾配(グラジエント)である(数学的には、∂2T/∂x2と表される。ここで、Tは温度であり、xはストリップに沿った長さである)。温度の二次微分を最小にする温度分布は、最初のグラジエントが零である放物線である。このような形状若しくはこれに近い形状は、溶体化温度からの冷却工程、特に、水(若しくは水及び空気)による限界温度以下での冷却工程において得ることができ、そのことによって、全冷却プロセスが、放物線状、若しくはそれに限りなく近い形状の温度分布を有するようになる。
【0047】
これは、図4に部分的に示すタイプの熱処理装置を通過させ、ストリップ製品を冷却することにより行うことができる。この図は、大略図3の装置の右側に対応する部分を示している(”Tlowerまでの冷却1”と名称を付けられた部分)が、以下に説明する改良を加えている。図4の装置は、トンネル11’を有し、連続基板上において、ストリップ製品12’が、このトンネル11’を通過して、支持ローラー30及び32上を矢印Aの方向に進むという点で、最初の装置と同じである。装置の示された部分において、ストリップ製品は、まず、コアンダノズル18(水と空気と複合作用により冷却する)の作用により冷却され、その後、水噴霧ノズルにより冷却することにより、TupperからTlowerまで冷却される。一対の第一噴霧ノズル20’(噴霧ノズル20’は、例えば、コアンダノズル18’から約800mmのところに位置しても良い)は、ストリップ製品の進行方向に向いたストリップ製品12’に対して特定の角度(25〜75°の範囲にある)で配されている。一方、次の対になったノズル群20”(これらは、それぞれ、約300mm間隔をあけていることが好ましい)は、ストリップ製品の表面に対して垂直に配されている。冷却は、コアンダノズル18’により開始する(このコアンダノズル18’は、装置のこの領域の第一ゾーンにおいて、第一冷却ステージをなす)。コアンダノズルは、エアーナイフとして作用し、水が、前のゾーン(図示せず)まで戻ることを妨げる。角度を付けられた水噴霧ノズル20’は、装置の第二ゾーンにおいて、第二冷却ステージをなす。このステージにおいては、コアンダノズル18’の冷却速度より速い冷却速度であって、より低い噴霧強度を用いることによってノズル20”よりも遅い冷却速度で冷却する。これは、”緩やかな水冷却”と称される。この冷却後、垂直なノズル20”による”強度の強い水冷却”が続く。このようにして、全体的な冷却オペレーションは、”上限温度まで空気冷却、その後、水及び空気冷却、水による緩やかな冷却及び強度の強い水による冷却”と言うことができる。上限温度以下での冷却処置のうち空気/水冷却部分の間、1mm膜厚に対する冷却熱伝達係数は、150〜300W/m2Kの範囲内にあることが好ましい。次の冷却ステージの間、冷却速度は、300〜2000W/m2Kの範囲にあることが好ましい。本発明に係る方法によれば、約470℃〜250℃の間において総合的には高い冷却速度を達成し、このことにより、冶金学的な必要条件(実質的に析出を起こさない)を満たすと同時に、熱歪みを最小に抑えることができる。
【0048】
第一ステージにおいて、150W/m2K以上の熱伝達係数を達成するため、頂部及び底部の両方にある空気コアンダノズル18’(図示)を使用することが通常必要である。熱伝達係数を達成し、かつ、空気温度の過度の上昇を防止するために必要な流量の目安としては、(頂部及び底部における)合計の流量を1メートルの幅に対して約3.0m3/秒とすることが好ましい。空気の速度は、約40m/秒であることが必要となり、これには、約35mmのノズル幅で頂部及び底部での空気流の幅1mに対して1.5m3/秒とすれば良い。
【0049】
水噴霧液を効率的に包含するため、空気排気システムの大きさを調整し、冷却チャンバーの空気静圧が上流又は下流にある炉部分よりも低くなるようにすることが重要である。
【0050】
もし、必要であれば、垂直方向のノズル20”のスプレイ強度を調整して、ストリップ製品が冷却領域のゾーンを通過するにしたがって冷却速度が増加するようにしても良い。
【0051】
図5は、本発明に対するモデル化された結果を示しており、ここでは250℃に至る平均冷却速度(140℃/秒)は図3の装置と同じであるが、冷却開始時におけるシート製品の長さに対する温度の二次微分は1/3に減少している。ストリップ製品が進むにしたがって、二次微分の値はより高くなるが、これらの位置ではストリップ製品の温度はより低くなり、降伏強さがより高くなる。
【0052】
図6は、250℃までの平均冷却速度が200℃/秒となるように、さらにストリップが熱いときの温度の二次微分を制限するように噴霧強度を設定した場合のモデル化された結果を示している。これは、ストリップ製品の長さに沿って噴霧強度の大きさを徐々に大きくできることが重要であることを示している。
【0053】
図5及び6の温度分布は、図2の直線ラインよりも放物線に近く、このことにより、冷却オペレーションの間、歪みの効果を最小に抑えることがわかるだろう。これらの分布は、炉に沿った長さと温度との関係として示される。これは、炉を通過するストリップ製品のあるポイントの冷却時間と温度との関係と同等である。
【0054】
もちろん、全ての場合に、冷却ゾーン(領域B)で得られる温度曲線若しくは温度分布は、析出ゾーン(図2の陰をつけられた領域S)を回避し、析出物の形成を防止するべきである。しかし、図2からわかるように、たいていの合金に対して、領域Bの上部においては、高温において冷却速度を少し遅くできる余地がある。
【0055】
本発明の方法によれば、有害な合金の析出が避けられる。それゆえ、本発明は、加工性、強度及び耐久性等の好ましい特性を有する優れた品質のシート合金を提供する。さらに、本発明は、熱歪みを最小に抑えるか、たいていの場合、取り除くことができるような方法を提供する。それゆえ、本発明に係る段階を追った冷却を実行した後であれば、付加的な加工を行うことは不要となる。即ち、本件発明は、全体的な効率を改善しながら歪みを最小にする方法を提供する。また、この方法により製造されたシート合金は、従来のシート合金より、良好な強度及び成形性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、合金(この場合、AA6111合金)の降伏強さ(YS)が、合金の温度が上昇するにしたがって、どのように傾くかを示したグラフである。特に、降伏強さが、上側の温度範囲(例えば、450℃以上)で、どのように急激に傾くかを示したグラフである。
【図2】図2は、WO01/44532で開示されたAA6111アルミニウム合金の様々な冷却方法を例解したグラフである。
【図3】図3は、図2の冷却方法を実行するのに適当な熱処理装置の一部の断面を簡単に示した概略図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施の形態に係る液体冷却のために使用する熱処理装置の一部を示した図面であって、図3に記載したものと同様の図面である。
【図5】図5は、本発明の好ましい実施の形態に係る冷却されたストリップ製品の、モデル化された温度分布の予想を示したグラフである。
【図6】図6は、本発明の好ましい実施の形態に係る冷却されたストリップ製品の、モデル化された温度分布の予想を示したグラフである。
(技術分野)
本発明は、熱処理可能なアルミニウム合金シートを溶体化(solutionizing)温度から冷却して、T4若しくはT4P焼戻し硬度の合金シートを製造する方法に関する。このT4若しくはT4P焼戻し硬度とは、通常、上記シート材料を自動車製造業に供給する場合の特性である。特に、本発明は、シート製品の歪みを最小に抑えることを意図した方法に関する。この歪みは、焼入れの間に発生した熱応力により引き起こされる。
【0002】
(背景技術)
アルミニウム合金シート製品の製造者は、薄い厚みのシート材料であって、与えられた焼戻し工程においては良好な成形性を、パーツを成形して塗料焼付けを行った後においては強い強度を有するような材料を提供する場合に難題に直面する。特に、自動車産業においては、自動車の経済性及び燃料の効率を改善するため、絶え間なく探求されており、軽量化された車体パネルや構造部材を製造するための未加工材料として使用されるような製品が要求されている。
【0003】
シート製品を製造するために、熱処理可能なAA(アルミニウム協会)6000系、若しくはAA2000系のアルミニウム合金を使用することは一般的となってきている。熱処理可能な合金とは、一般的に、室温での溶解度限界を超えるような量の可溶性合金成分を含んでいる合金である。このような合金は、加工処理及び/又は加熱処理に付され、次いで焼入れ処理に付される場合に、向上した特性を発揮することができる。これらの合金は、時効処理の間に硬化作用を受けるよう、硬化元素(hardening elements)(例えば、マグネシウム、シリコン及び/又は銅)を、また、成形性及び粒径サイズを制御するため、Fe、Mn及び可能であればCrのような上記以外の元素を含有する。これらの合金は、一般的に、直接チル鋳造(DC)、若しくは連続鋳造を行い、溶解度(solvus)温度以上で均質化し、これにより、鋳造されたままのインゴット若しくは連続ストリップに存在する可溶性粒子を溶解したり、次に行われる熱メカニカルプロセス工程のために熱延性を改善したりする。この溶解度温度は、全ての可溶性粒子(例えば、Mg2Si、AlwCuxMgySiz(ここではQと呼ぶ))、及び合金組成に応じて存在する他の粒子が不安定となり、アルミニウムマトリクスに溶解するようになる温度と定義される。中間アニール工程を用いてもよいし、用いなくても良いが、均質化されたインゴットを熱間圧延若しくは冷間圧延して、最終厚みを得ることができる。その後、最終厚みのシート材料を、溶解度温度(通常、480℃〜580℃の温度範囲にある)以上で溶体化して、熱間圧延及び冷間圧延の間に形成された可溶性粒子を溶解する。その後冷却して所望のT4若しくはT4P焼戻し硬度を得る。
【0004】
冷却工程は、条件に合ったシート材料を、与えられた焼戻し硬度で製造する場合において、最も重要な工程の一つである。材料が、粗い粒界を含有する場合には、非常に望ましくないと考えられる。なぜなら、このような粒子は、シートの機械特性(成形性等)に影響を与え、さらに、塗料焼付けの間、ある程度、硬化応答(hardening response)に影響を与えるためである。それゆえ、シート材料を溶体化温度から急速に冷却して、粒界上に、また時にはマトリクス内に、有害な第二次相の粒子を析出させることを回避し、与えられた焼戻し硬度における成形性と、塗料焼付け間の硬化応答との最善の組み合わせを得ることが必要である。
【0005】
残念なことに、溶体化温度から急速に冷却することにより、シート製品は、永久歪みを生じることとなる。薄い膜厚の製品においては、特にそうである。そのような歪みが起こるとき、このシートは、延伸及び/又は屈曲させて、通常よりも機械的に平坦化することにより、歪みを取り除かなければならない。これにより、延伸操作の間に行った冷間加工に起因して材料の成形性が低下する。それゆえ、冷却処理の間に生じるそのような歪みを回避することが有利であり、この目的は従来から常に考慮されてきた。しかし、歪みを回避するため、若しくは最小に抑えるために取られる工程は、冷却オペレーションの本来意図した有利な効果に対して悪影響を与えたり、冷却プロセスに対して、高コストで不便な工程を導入することになる。
【0006】
米国特許第4,784,921号(1988年11月15日に、M.E.Hyland等により開示)には、自動車パネルに適したアルミニウムシート材料を製造する方法が開示されている。この方法は、溶体化処理した後、液体による冷却により、溶体化温度から、少なくとも10°F/秒(好ましくは、少なくとも300°F/秒)の冷却速度で急速に冷却する工程を含む。シートの温度が350°F以下の温度に到達した後、室温まで空気により冷却する。
【0007】
同様に、米国特許第5,061,327号(1991年10月29日に、D.K.Denzer等により開示)は、溶体化温度から、直ちに、冷水により冷却する工程を備える方法を教示している。好ましい方法によれば、シート合金を、水によりおよそ93℃まで56℃/秒以上の冷却速度で冷却し、次いで空気により室温まで冷却している。
【0008】
1998年10月1日に、Aluminum Company of Americaにより出願されたPCT国際特許出願WO98/42885号は、歪みを発生させることなく、金属合金シートを製造するためのプロセスを開示している。ここで、制御可能な可変液体冷却手段を使用して、限界温度(いわゆるライデンフロスト温度−即ち、この温度以上では、蒸気の層が、シート表面と液体冷却膜間に存在する温度)以上の温度に合金ストリップが維持される時間を制御している。液体による冷却は、限界温度を通るように一定の冷却速度で冷却する。この一定の冷却速度とは、それぞれの合金組成比により制御しながら変化させることができ、さらに、その冷却速度では、物理的な歪みなく、合金のポテンシャル強度(strength potential)を増加させるか、少なくとも維持することができる冷却速度である。しかし、この参照文献では、冷却工程を、冷却される材料と関連性がない変数と結びつけている。この特許文献では、ライデンフロスト温度を、機能的及び効果的に特定のスプレイオリフィスと関連付けることが記載されている。このオリフィスは、冷却液、流量、液体の物理的及び化学的特性、液体を噴霧するために用いられる圧力のために使用される。それゆえ、特定の合金について、複雑な調整を行うことなく、最良の結果を得ることは困難である。また、材料は、冷却液と高温の材料とを分離するガス層を有する場合があり、このガス層は、冷却液の蒸発により形成される。冷却液を蒸発させるためには、材料から気化熱を奪い取ることが必要である。従って、液体から気体への状態変化を伴わない場合よりも非常に高い冷却速度となってしまう。
【0009】
したがって、本発明の発明者は、溶体化温度から液体により冷却する工程を有する方法は、与えられた焼戻し硬度において良好な成形性を、さらに、パーツが形成され塗料焼付けがなされた後では高い強度を保持しながら、熱による歪みを最小にするように制御することは困難であることを見出した。
【0010】
(発明の開示)
本発明は、第二次相粒子が、金属から過度に析出することを回避しながら、製品の歪みを最小に抑え若しくは回避するように、溶体化処理されたアルミニウム合金のシート製品を冷却する方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の別の目的は、実用的でかつ比較的安価な方法により実行可能な方法を提供することである。
【0012】
さらに、本発明は、熱処理可能な合金からなる、T4若しくはT4P焼戻し硬度の製品を、過度の歪み及び粒子の析出を回避するような溶解工程及び冷却工程を行いながら、鋳造、均質化、圧延、熱処理することを特徴とする製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の一つの実施の形態では、実質的に永久熱歪みを有さないアルミニウム合金であって、溶体化処理されたアルミニウム合金からなる製品を製造する方法であって、
熱処理可能なアルミニウム合金からなる製品を溶体化温度において溶体化処理を行い、合金中に存在する可溶性析出物を溶解する工程と、
製品を、溶体化温度から、上限温度まで、即ちこの温度以下では第二次相粒子の析出が起こる温度まで冷却する冷却工程と、
さらに、製品を、下限温度まで、即ちこの温度以下では第二次相粒子の析出がもはや起こらない温度まで冷却する後続冷却工程であって、上限温度と下限温度との間で、合金からの大量の析出が起こることを回避できるほど十分速い冷却速度で行う後続冷却工程と、
任意的であるが、製品を下限温度以下に付加的に冷却する冷却工程とを備え、
製品の後続冷却工程が、冷却が進むにしたがって冷却速度が増加するように行われることを特徴とする方法を提供することを目的とする。
【0014】
製品の後続冷却工程は、少なくとも2つのステージにおいて、異なる冷却速度で行うことが好ましい。この冷却速度は、冷却が進むにしたがって、ステージ毎に増加する。異なる冷却速度を有する少なくとも3つのステージを備えることがより好ましい。シート製品の温度を、製品に沿った距離に対してプロットする場合、製品の後続冷却工程により、理想的には、放物線状若しくは略放物線状の温度分布を示す。
【0015】
製品の後続冷却工程は、製品を複数の噴霧ノズルに対して通過させることにより行う。この噴霧ノズルは、液体若しくは液体/気体のスプレイを製品の方向に向けるためのものである。このスプレイは、少なくとも2つのステージにおいて、異なる冷却速度で冷却する。製品を、最初、緩やかな冷却を行う少なくとも一つのノズルを通過させ(空気若しくは空気/液体の混合物を使用することが好ましい。)、その後さらに急激な冷却を行う少なくとも一つのノズルを通過させ(例えば、製品の近接する表面に対し直角でない角度で、液体を噴霧する。)、その後もっと急激な冷却を行う少なくとも一つのノズルを通過させることが好ましい(例えば、製品の表面に対して垂直に液体を噴霧する。)。付加的若しくは代替的に、異なる冷却速度を得ることができる。これは、製品が進行するに従って異なる強度の噴霧を受けるように、噴霧ノズルの流量を調節することによって行う。
【0016】
上限温度まで製品を冷却する冷却工程は、気体中において、ある特定の冷却速度により行うことが好ましい。この特定の冷却速度とは、この冷却速度において、製品の降伏強さが、永久歪みを抑制することができるほど十分高く保持されるような冷却速度である。ここで、この永久歪みは、冷却により製品内に発生する熱応力により引き起こされる。
【0017】
本発明は、溶体化処理された合金製品若しくはシートであって、上記方法若しくはプロセスにより製造された合金製品若しくはシートに関する。
【0018】
本発明は、特に、AA6000系のアルミニウム合金の処理に応用することができる。この場合、上限温度は、約450℃であり、下限温度は、約325℃であり、シート製品を気体により溶体化温度から上限温度まで冷却する工程は、10〜200℃/秒の範囲の冷却速度で行うことが好ましく、さらに、およそ20℃/秒の冷却速度で冷却を行うことが一層好ましい。また、後続冷却工程は、上限温度から下限温度まで、200〜2000℃/秒、より好ましくは200〜450℃/秒の平均冷却速度で行うことが好ましい。
【0019】
本発明は、溶体化温度からシート合金を冷却する間に、熱歪みを最小にする効果的で生産的な方法を提供する。この方法は、過度に困難性を有さず、かつ高価な改良を必要とせず、従来からの冷却装置(例えば、連続した熱処理ライン)においても行うことができるという点で経済的に有利な効果を有する。
【0020】
本発明は、熱処理可能な合金であって、プロセスの間、溶体化処理及び冷却処理に付される合金のすべてに適用可能である。かかる合金としては、例えばAA6000系、AA2000系、AA7000系、及びAl−Liタイプのアルミニウム合金である。限界温度範囲(上限温度及び下限温度)並びに所望の冷却速度は、様々な合金に対して異なっても良く、各合金の適切な範囲及び冷却速度を、簡単な実験で決定してもよい。
【0021】
この明細書で使用している”シート”という単語は、略平坦(略平面状)であって、たいていの場合(必ずというわけではない)長さが限定されない製品をいうことは、当然明らかである。こうした製品のシート膜厚は特に関係するものではないが、一般的に、溶体化及び冷却処理に付される自動車用シート製品(例えば、AA6111)は、2.3mm以下、典型的には、0.8〜2.0mmの膜厚を有する。しかし、”シート”という単語は、”プレート”とよく称される製品をも含むことを意図している。”プレート”は、一般的に、0.250インチ(6.35mm)以下の膜厚を有し、断面が矩形であって、剪断された端部を有する圧延製品を意味する。本発明は、主として、金属シートのような平面状製品に関する。さらに、本発明の製造方法は、歪みが一つのファクターであるような成形製品(例えば、押出成形された製品)に適用することができる。
【0022】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、我々の先の出願であるPCT出願番号PCT/CA00/01522(2000年12月15日出願)に開示された発明と共に使用することができる。これは、PCT国際出願WO01/44532として、2001年6月21日に出願公開されている。また、本発明は、その発明の改良発明とみなすことができる。しかし、本発明は、影響を及ぼさないような所望の他の冷却方法及び装置と共に使用してもよい。本発明をよく理解することができるように、WO01/44532の発明の記載のうちいくつかを、以下に記載し、WO01/44532の開示の全てを本明細書で引用する。
【0023】
WO01/44532の発明は、溶体化の所望の効果を最大限保持しながら、合金シート若しくは他の熱処理可能材料の永久歪みを減少させるための方法に関する。この永久歪みは、熱応力により発生し、この熱応力は、溶体化処理してその後に冷却処理することに関連する。本発明も同じ目的を有する。
【0024】
自動車産業及び他のユーザーの厳しい条件を満たすために、最終製品において、高い強度、耐久性、良好な耐食性を備え、さらに、(ユーザーに)与えられた状態での焼戻し硬度(temper)において成形性を最大にするように、熱処理可能な合金を急激に冷却することが必要である。WO01/44532で挙げられた発明者は、そのような急激な冷却は、第二次相の析出が起こる温度範囲内だけ必要であることを見出した。この範囲以上の温度では、金属の冶金学上の構造に悪影響を与えずにより低い冷却速度とすることができ、さらに、金属の降伏強さが冷却処理によって発生する熱応力に耐えることができる程度に十分高くなるような冷却温度を選択することもできる。従って、シート製品の永久歪みを抑制若しく除去することができる。
【0025】
WO01/44532の発明では、溶体化温度からの冷却操作を、2以上の別個のステップに分けている。この第一のステップには、溶体化温度から、上限温度(この温度以下では、析出が起こるような温度)までの緩やかな冷却速度(加熱ガス内で、ガス冷却することによりなされる)が含まれる。さらに、第二のステップには、上限温度と下限温度(下限温度は、この下限温度以下では、析出が起こらないか、これ以上析出が起こらない温度である)との間の析出範囲を通るような急速な冷却(液体冷却、若しくは液体と気体を混合したものによる冷却)が含まれる。析出範囲の下限温度以下で実行される付加的冷却の性質は、(たとえ、あるとしても)それほど重要ではない。この付加的冷却は、液体冷却若しくはガス冷却のいずれかを使用して(空気を用いたガス冷却が好ましい)、所望の冷却速度で実行してよい。これらの低温度域では、合金の降伏強さは、粒界上に有害な粒子を析出させることなく熱歪みに抗することができるほど十分高い。
【0026】
このようにして得られた合金は、一般的に、冷却後に、時効化処理され、所望のT4若しくはT4P焼戻し硬度が得られる。
【0027】
図1は、一般的なAA6000系合金(特にAA6111)の降伏強さ(YS)が、合金の温度が上昇するにしたがって、どのように下降するかを示している。垂直軸(縦軸)は、特定温度における降伏強さ(これは、室温時の降伏強さ(R.Temp YS)に対するパーセンテイジとして表示されている。)を示している。降伏強さは、温度が約450〜600℃まで増加するにしたがって、急激に零まで下降することがわかる。通常、溶体化は、約600℃までの温度で行われる。金属は、これらの温度では、歪みを非常に受け易い。他方、約450℃の温度では、室温時の降伏強さのおよそ50%が得られる。AA6000系の合金においては、一般的に、これは、析出範囲の上限温度に相当する。この温度以下では、材料はより大きな耐歪み性を有するけれども、図1が示すように、約100℃以上の温度では最大降伏強さが完全には現われず、そのため、上限温度と下限温度との間の温度では、いくらかの歪みがありえることを示している。WO01/44532の発明は、上限温度以上の温度で歪みを減少させることに、特に焦点を絞っている。本発明は、上限温度以下、即ち、析出範囲の温度に特に焦点を絞っている。
【0028】
WO01/44532の発明は、アルミニウム協会AA6000系アルミニウム合金やAA2000系、AA7000系、及びAl−Li合金のアルミニウム合金シートを製造する方法に関して特に記載されている。しかし、WO01/44532と本発明の両方の方法は、他の種類のアルミニウム合金を含む様々な熱処理可能な合金の加工処理において有益な熱機械プロセス手順を提供する。
【0029】
図2は、AA6111合金シート製品についての温度と時間との相関関係を示した曲線を示したグラフである。図面には、領域A、B及びCが含まれる。これらの領域は、本発明において重要な温度範囲を示している。領域Aは、溶体化温度(Tsol)と、析出が始まる上限温度(Tupper)との間の温度範囲である。領域Bは、時間及び温度条件が適切である場合に、第二次相の析出が起こる析出領域(限界範囲)を示している。領域Cは、Tlowerより低い温度範囲である。このTlowerは、この温度以下では、いかなる冷却速度でも、これ以上第二次相の析出が起こらない温度である。これらの温度範囲は、絶対的なものではなく、目的の合金の物理的特性に応じて、与えられるあらゆる冷却方法に対して変化することに注意すべきである。この温度範囲は、与えられた熱処理可能な合金及び冷却方法の全てに対して実験的に決定しても良い。
【0030】
3つの冷却処理が、図2に示されている(即ち、冷却1、冷却2及び冷却3)。これらの処理は、時間”ts”の前だけが異なる。時間”ts”とは、合金温度が初めてTupperに到達する時間であって、溶体化処理の終端からの時間である。この時間”ts”の後、3つの冷却処理は、同じ曲線を辿る。
【0031】
冷却1は、先行技術の冷却方法における典型的な温度勾配を示しており、冷却2及び冷却3は、WO01/44532に記載した方法における温度勾配を示している。本発明は、領域Bで行われる冷却方法に特に関連する(図5及び6参照)。
【0032】
先行技術における共通のプラクティスによれば、冷却プロセスは、一般的に、単一のステップのプロセスであり、この単一ステップのプロセスにより、限界析出温度範囲を通過するよう、熱溶体化温度(Tsol)から直接急速な冷却を行う。図2に示すように、冷却1の温度勾配は、領域A及びBに亘って略一定である。対照的に、冷却2及び3は、領域Aを通過する少なくとも一つの予備工程(緩やかな冷却)を有する。この緩やかな冷却は、領域Bを通過する急激な冷却ステップが開始される前に行われる。図1の領域A内のシート合金の第一冷却は、シート合金のほとんど若しくは全てにおいて、熱応力がシートの降伏強さを超えないように加熱空気を噴霧することによって行う。加熱空気を用いるこの緩やかな冷却により、シート合金の温度は、緩やかな冷却速度で限界温度Tupperに到達する。この冷却速度は、急速冷却の開始時において発生する高い熱応力を抑制するに十分な強度及び安定性といった特性を発現させながら、高い熱応力を回避できるように十分緩やかである。
【0033】
この冷却速度と、その冷却速度を発生させるために必要な加熱空気の温度は経験的に決めることができる。別の実施の形態では、温度、圧力、速度、製品の厚さ及び熱伝達係数を使用する数学モデルを適用して冷却速度を決定し、溶体化処理に付された金属の温度を基準に、加熱空気の最適温度を算出しても良い。同様な数学モデルを使用して冷却ガスの温度を決定し、対象である金属の温度ピークに応じて変化させても良い。領域AにおいてAA6111合金を冷却するのに適したガス温度の典型的な範囲は、300〜350℃である。
【0034】
連続する熱処理装置の一以上の連続したゾーンで加熱空気を噴霧して、徐々に、そのシート合金を冷却しても良い。Tupperに到達すると、水若しくは高熱容量の標準的な液体(若しくは気体と液体の混合物)を使用した急速冷却を、後続冷却ゾーンで開始し、合金シートをある温度範囲を通るように急激に冷却する。ある温度範囲とは、この温度範囲において、冷却速度が十分に遅い場合には、合金が容易に析出するような温度範囲である。このステージの冷却で、合金シートの降伏強さは、溶体化温度での降伏強さから実質的に増加する。このステップで使用される冷却液の温度は、従来の冷却ステップで使用される液体の温度と同じであっても良い。この温度は、一般的に、18℃(室温)と30℃(温暖な場合)との間にある。
【0035】
一度、領域Cにおいて、析出範囲(Tlower)以下の温度まで冷却されると、シートは強靭になり、有害な析出が起こらない。このため、そこから開始される後続冷却の詳細は、本発明にとってそれほど重要でない。このステップで使用される冷却媒体の温度は、熱交換器を使用して、加熱若しくは冷却することにより制御しても良い。一般的に、温度は20℃から約100℃まで様々である。
【0036】
冷却1に示されたような従来のプロセスでは、溶体化温度から急速な冷却が開始される。この処理で得られるシート合金は、温度勾配の結果生じた永久歪みの効果を受けるが、これは急速な冷却により引き起こされ、最初の冷却温度近辺でのシート合金の降伏強さを超えてしまう。その後、結果として得られるシート合金は、延伸及び/又は屈曲させて歪みを取り除くことにより、機械的に平坦にしなければならない。大きな労力を要するそのような冷間加工により、プロセスのコストを増加させ、材料の成形性を減少させる。
【0037】
図2に示されているように、時間tsにおいて温度がTupper以下になって初めて、急速冷却を開始しなければならない。この時間tsからTlower未満に冷却するために必要な時間は、直接、発生する析出の量を決定する。この図面は、斜線領域Eを囲む限界時間曲線Sを示している。Tupperに近い温度では、第二次相粒子の析出の駆動力は、非常に小さく、核形成および成長速度が低く、そのため、析出プロセスの開始は遅くなる。一方、Tlowerの近くの温度では、駆動力は非常に大きいが、拡散速度が遅すぎるため、析出プロセスの開始が阻害される。このことにより、大きな駆動力及び高い拡散速度が存在する限界時間曲線CのノーズNでだけ、急激な析出が起こる。図2に示すように、限界時間曲線Sは、時間と温度の関数として、第二次相粒子の析出の開始位置を示している。これにより、冷却曲線が、斜線領域Eを横切る場合、第二次相の析出が、望ましくない程度起こる。曲線の数、形、位置を含め、そのような限界時間曲線の特性は、合金の組成及び合金の処理経過に依存している。
【0038】
したがって、領域Bにおいて、シート合金を熱機械的に処理する目的は、冷却曲線が、急速な冷却を介して、限界曲線CのノーズNを回避して、そのことによって、第二次相析出により引き起こされる悪影響の可能性を排除することである。曲線のノーズの前の時間は、結晶核が発生するまでの期間(インキュベーションピリオド)と称され、その期間は、AA6111では、一分未満である。冷却若しくは時効処理の間の温度における時間が、インキュベーションピリオドより小さいか、若しくは限界曲線の左にある場合は、析出プロセスは起こらない。
【0039】
WO01/44532において開示されているように、図2の冷却2は、溶体化温度からTupperまで、一定の緩やかな冷却速度を用いる。曲線の傾斜は、合金の降伏強さを超え、そのことにより永久歪みを引き起こすほど強い熱応力の発生を抑制するのに十分なほど緩やかである。
【0040】
WO01/44532の別の実施の形態が、図2の領域Aにおいて、冷却3として示されている。この実施の形態では、Tupperまで緩やかに冷却する第一ステップに複数の加熱空気相を適用し、温度減少に伴う降伏強さの増加に比例するように、徐々に冷却速度を増加させる。これは、合金シートに2以上の加熱空気相を噴霧して、徐々に低くなるような空気温度で処理することによりなされる。この方法によれば、最初合金の降伏強さが低いときにシート合金に加えられる冷却応力は非常に低くなる。
【0041】
図3は、WO01/44532の発明の好ましい実施形態を実行するのに適した熱処理装置の、一部を簡略化した断面図である。装置10は、トンネル11の形態をとる。ストリップ12は、このトンネル11を通過しつつ、連続した基板上において牽引される。装置は、内部で複数のゾーンに分けられている。第一ゾーン11Aは、溶体化処理の最後のステップをなす。高温ガスは、ノズル14からゾーンに導入される。ノズル14は、トンネル11の頂部と底部に位置する。このゾーンを通過するストリップ製品は、溶体化温度まで加熱される。
【0042】
第二ゾーン11Bは、シート製品の温度を溶体化温度からTupperまで冷却する領域をなす。加熱ガスを、ノズル15を介してこのゾーンに導入する。ストリップ製品がこのゾーンを通過する間、例えば、図2の冷却2若しくは冷却3により、ストリップ製品を冷却しても良い。このゾーン内の様々なノズルを通って出てくるガスの温度を変化させることによって、このゾーンにおいて、様々な温度分布を得ることができる。
【0043】
その後、ストリップ製品は、製品がTupperからTlowerまで冷却される第三ゾーン11Cを通る。このゾーンの第一部分16において、いわゆる”コアンダ”ノズル18が設けられ、冷却液体を供給する。ノズルは、シートの進行方向を向いたストリップ製品12の表面に対し所定の角度で配され、冷却液(水)と空気とを混合し、水滴の大きさを小さくする。水滴の大きさをより小さくし、ノズルを傾けて配することにより、冷却効率を改善することができる。ゾーン11Cのこの部分において、ストリップ製品の温度は、ライデンフロスト温度以上であり、液体の冷却剤(水)とシート表面との間に、蒸気バリアーが存在する。この配置により、ストリップ製品上に直接冷却液を噴霧するだけの場合よりも、より高い冷却効率を得ることができる。ストリップ製品の温度が、一旦、ライデンフロスト点を通過すると、蒸気バリアーが消滅する。よって、従来の噴霧ノズルを用いても良い。続いて、第三ゾーン11Cの第二部分17において、ストリップ製品の表面に対して垂直に向いている従来型のノズル20を使用して、Tlowerまで冷却する。
【0044】
第四ゾーン即ち最終ゾーン11Dにおいて、Tlower以下への冷却は、ノズル21を介して導入されるガスにより行われる。
【0045】
本発明によれば、上限温度以下まで冷却される冷却工程を少なくとも2つのステージ(好ましくは3つ以上のステージ)で実行するならば、シート製品の熱歪みをさらに減少させ、最小に抑えることができることがわかる。WO01/44532のように、後続の冷却ステップにより、略一定の冷却速度で冷却するのではなく、第一のステージにおいては、比較的低い冷却速度で冷却を開始し、その後、短時間経過後、次のステージにおいては、より速い冷却速度で、若しくは徐々に速くなるような冷却速度で進行するのが良い。一層強い(速い)第三の冷却ステージを設けても良い。各ステージは、実質的により遅い冷却速度のステージを挟むことなく互いに連続して行われる。ストリップが、連続熱処理炉内で冷却されるとき、示された異なるステージは、熱処理炉内の異なるゾーン若しくは領域に対応する。
【0046】
本発明は、シート製品の幅に亘って均一に冷却されたシート製品の場合(好ましい配置である)、シート製品中の熱応力は、シート製品の長手方向に沿った位置における温度の二次微分に比例するという理解に基いている。温度の二次微分とは、シートに沿った距離に対して二回微分されたシート製品温度である。それは、シート製品の長さに沿った温度勾配(グラジエント)の勾配(グラジエント)である(数学的には、∂2T/∂x2と表される。ここで、Tは温度であり、xはストリップに沿った長さである)。温度の二次微分を最小にする温度分布は、最初のグラジエントが零である放物線である。このような形状若しくはこれに近い形状は、溶体化温度からの冷却工程、特に、水(若しくは水及び空気)による限界温度以下での冷却工程において得ることができ、そのことによって、全冷却プロセスが、放物線状、若しくはそれに限りなく近い形状の温度分布を有するようになる。
【0047】
これは、図4に部分的に示すタイプの熱処理装置を通過させ、ストリップ製品を冷却することにより行うことができる。この図は、大略図3の装置の右側に対応する部分を示している(”Tlowerまでの冷却1”と名称を付けられた部分)が、以下に説明する改良を加えている。図4の装置は、トンネル11’を有し、連続基板上において、ストリップ製品12’が、このトンネル11’を通過して、支持ローラー30及び32上を矢印Aの方向に進むという点で、最初の装置と同じである。装置の示された部分において、ストリップ製品は、まず、コアンダノズル18(水と空気と複合作用により冷却する)の作用により冷却され、その後、水噴霧ノズルにより冷却することにより、TupperからTlowerまで冷却される。一対の第一噴霧ノズル20’(噴霧ノズル20’は、例えば、コアンダノズル18’から約800mmのところに位置しても良い)は、ストリップ製品の進行方向に向いたストリップ製品12’に対して特定の角度(25〜75°の範囲にある)で配されている。一方、次の対になったノズル群20”(これらは、それぞれ、約300mm間隔をあけていることが好ましい)は、ストリップ製品の表面に対して垂直に配されている。冷却は、コアンダノズル18’により開始する(このコアンダノズル18’は、装置のこの領域の第一ゾーンにおいて、第一冷却ステージをなす)。コアンダノズルは、エアーナイフとして作用し、水が、前のゾーン(図示せず)まで戻ることを妨げる。角度を付けられた水噴霧ノズル20’は、装置の第二ゾーンにおいて、第二冷却ステージをなす。このステージにおいては、コアンダノズル18’の冷却速度より速い冷却速度であって、より低い噴霧強度を用いることによってノズル20”よりも遅い冷却速度で冷却する。これは、”緩やかな水冷却”と称される。この冷却後、垂直なノズル20”による”強度の強い水冷却”が続く。このようにして、全体的な冷却オペレーションは、”上限温度まで空気冷却、その後、水及び空気冷却、水による緩やかな冷却及び強度の強い水による冷却”と言うことができる。上限温度以下での冷却処置のうち空気/水冷却部分の間、1mm膜厚に対する冷却熱伝達係数は、150〜300W/m2Kの範囲内にあることが好ましい。次の冷却ステージの間、冷却速度は、300〜2000W/m2Kの範囲にあることが好ましい。本発明に係る方法によれば、約470℃〜250℃の間において総合的には高い冷却速度を達成し、このことにより、冶金学的な必要条件(実質的に析出を起こさない)を満たすと同時に、熱歪みを最小に抑えることができる。
【0048】
第一ステージにおいて、150W/m2K以上の熱伝達係数を達成するため、頂部及び底部の両方にある空気コアンダノズル18’(図示)を使用することが通常必要である。熱伝達係数を達成し、かつ、空気温度の過度の上昇を防止するために必要な流量の目安としては、(頂部及び底部における)合計の流量を1メートルの幅に対して約3.0m3/秒とすることが好ましい。空気の速度は、約40m/秒であることが必要となり、これには、約35mmのノズル幅で頂部及び底部での空気流の幅1mに対して1.5m3/秒とすれば良い。
【0049】
水噴霧液を効率的に包含するため、空気排気システムの大きさを調整し、冷却チャンバーの空気静圧が上流又は下流にある炉部分よりも低くなるようにすることが重要である。
【0050】
もし、必要であれば、垂直方向のノズル20”のスプレイ強度を調整して、ストリップ製品が冷却領域のゾーンを通過するにしたがって冷却速度が増加するようにしても良い。
【0051】
図5は、本発明に対するモデル化された結果を示しており、ここでは250℃に至る平均冷却速度(140℃/秒)は図3の装置と同じであるが、冷却開始時におけるシート製品の長さに対する温度の二次微分は1/3に減少している。ストリップ製品が進むにしたがって、二次微分の値はより高くなるが、これらの位置ではストリップ製品の温度はより低くなり、降伏強さがより高くなる。
【0052】
図6は、250℃までの平均冷却速度が200℃/秒となるように、さらにストリップが熱いときの温度の二次微分を制限するように噴霧強度を設定した場合のモデル化された結果を示している。これは、ストリップ製品の長さに沿って噴霧強度の大きさを徐々に大きくできることが重要であることを示している。
【0053】
図5及び6の温度分布は、図2の直線ラインよりも放物線に近く、このことにより、冷却オペレーションの間、歪みの効果を最小に抑えることがわかるだろう。これらの分布は、炉に沿った長さと温度との関係として示される。これは、炉を通過するストリップ製品のあるポイントの冷却時間と温度との関係と同等である。
【0054】
もちろん、全ての場合に、冷却ゾーン(領域B)で得られる温度曲線若しくは温度分布は、析出ゾーン(図2の陰をつけられた領域S)を回避し、析出物の形成を防止するべきである。しかし、図2からわかるように、たいていの合金に対して、領域Bの上部においては、高温において冷却速度を少し遅くできる余地がある。
【0055】
本発明の方法によれば、有害な合金の析出が避けられる。それゆえ、本発明は、加工性、強度及び耐久性等の好ましい特性を有する優れた品質のシート合金を提供する。さらに、本発明は、熱歪みを最小に抑えるか、たいていの場合、取り除くことができるような方法を提供する。それゆえ、本発明に係る段階を追った冷却を実行した後であれば、付加的な加工を行うことは不要となる。即ち、本件発明は、全体的な効率を改善しながら歪みを最小にする方法を提供する。また、この方法により製造されたシート合金は、従来のシート合金より、良好な強度及び成形性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、合金(この場合、AA6111合金)の降伏強さ(YS)が、合金の温度が上昇するにしたがって、どのように傾くかを示したグラフである。特に、降伏強さが、上側の温度範囲(例えば、450℃以上)で、どのように急激に傾くかを示したグラフである。
【図2】図2は、WO01/44532で開示されたAA6111アルミニウム合金の様々な冷却方法を例解したグラフである。
【図3】図3は、図2の冷却方法を実行するのに適当な熱処理装置の一部の断面を簡単に示した概略図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施の形態に係る液体冷却のために使用する熱処理装置の一部を示した図面であって、図3に記載したものと同様の図面である。
【図5】図5は、本発明の好ましい実施の形態に係る冷却されたストリップ製品の、モデル化された温度分布の予想を示したグラフである。
【図6】図6は、本発明の好ましい実施の形態に係る冷却されたストリップ製品の、モデル化された温度分布の予想を示したグラフである。
Claims (8)
- 実質的に永久熱歪みを有しない溶体化処理されたアルミニウム合金の製品を製造する方法であって、
熱処理可能なアルミニウム合金からなる製品を溶体化温度で溶体化処理して、上記合金中に存在する可溶性の析出物を溶解する工程と、
上記製品を、上記溶体化温度から上限温度即ち該温度以下では第二次相粒子が析出されうる温度まで冷却する冷却工程と、
上記製品を、下限温度即ち該温度以下ではもはや上記第二次相粒子が析出されない温度まで冷却する後続冷却工程であって、上記上限温度と上記下限温度との間で、上記合金からの大量の析出を回避できるほど速い冷却速度で行う後続冷却工程と、
任意であるが、上記製品を上記下限温度以下の温度まで冷却する付加的冷却工程とを備え、
上記製品の上記後続冷却工程が、冷却が進むにしたがって冷却速度が増加するように行われることを特徴とする製造方法。 - 上記製品の上記後続冷却工程が、少なくとも2つのステージにおいて、異なる冷却速度で行われ、
上記冷却速度が、上記冷却が進行するにしたがって、ステージ毎に増加することを特徴とする請求項1記載の製造方法。 - 上記異なる冷却速度を有する少なくとも3つのステージが存在することを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 上記製品の上記後続冷却工程が、シート製品温度を製品に沿った距離に対してプロットした場合に、放物線状若しくは略放物線状の温度分布を示すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 上記製品の上記後続冷却工程が、液体若しくは液体/気体の噴霧方向を上記製品に向けるための複数の噴霧ノズルを通過するように、上記製品を牽引し、上記噴霧により、上記少なくとも2つのステージにおいて、異なる冷却速度で冷却を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 上記製品は、最初に、少なくとも1つのコアンダノズルを通過し、その後、上記製品の近接表面に対して垂直でない角度で液体噴霧の方向を方向付けられた少なくとも1つのノズルを通過し、さらに、上記製品の表面に対して垂直な方向に液体の噴霧を方向付けられた少なくとも1つのノズルを通過するように牽引されることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
- 上記製品が、進行するにしたがって異なる強度の噴霧を受けるように、噴霧ノズルの流量を調節することを特徴とする請求項5又は6記載の製造方法。
- 上記製品を上限温度まで冷却する工程が、気体中において行われ、
製品の降伏強さが高く保持され、冷却により製品の中に発生する熱応力に起因する永久歪みを抑制することができるような冷却速度で行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
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