JP2004521062A - 一酸化窒素に関連する障害の処置のための単糖類および二糖類 - Google Patents
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Abstract
モノホスホリルリピッドAに構造的に関連する糖脂質を用いて、但し、前炎症性および発熱性活性の著しい減少を伴って、一酸化窒素によって調節または回復される疾患または状態(特に虚血および再灌流傷害)の処置のための方法が提供される。本発明はまた、組織選択的または特定の様式において、一酸化窒素シグナル伝達を誘導または活性化する組成物を提供する。本発明は、さらに、マクロファージ/単球レベルでの前炎症性サイトカインまたはNOの誘導を伴わず、かつ発熱作用を伴わずに、標的組織において一酸化窒素(NO)をアップレギュレートさせる化合物を提供する。
Description
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2000年5月17日出願の米国仮特許出願60/190,444に対する優先権を主張する。本出願は、1999年10月28日出願の出願番号09/429,238号(これは、1998年8月21日出願の継続出願番号09/138,305号(現在、米国特許第6,013,640号)である);1991年12月31日出願の出願番号07/815,250号(現在、米国特許第5,286,718号)および1999年11月12日出願の出願番号09/439,839号(これは、1997年5月8日出願の一部継続出願番号08/853,826号である)に関連する。上記開示の各々は、全ての目的のためにその全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(政府により支援された研究および開発の下で行われた発明の権利に関する陳述)
適用なし。
【0003】
(発明の背景)
虚血/再灌流の間に組織に引き起こされた損傷は広範囲にわたり得る。酸素の枯渇した組織は可逆性および不可逆性の損傷の両方を被る。傷害された組織はまた、自動性において障害を示し得る。たとえば、虚血/再灌流の間に損傷された心筋組織は、不可逆的な損傷または心筋梗塞を呈し得る。可逆性の損傷または昏倒が、心拍出量の減少、および最適以下の酸素の灌流による総体的症状を導く、ポンプの有効性を減少させるのは明らかである。虚血性心筋組織の再灌流はまた、自動性において致命的な不整脈を含む障害を引き起こす電気生理学的な変化を起こし得る。
【0004】
組織が虚血/再灌流の間に損傷される正確な機序は未知である。しかし、複雑な連続した事象が、虚血および次いで起こる再灌流の間に損傷された組織で起こるという仮説がある。虚血の間、組織は、無酸素性代謝および結果としての細胞内アシドーシスを導く、酸素を与える血液(oxygen−giving blood)の枯渇が起こる。循環の欠如は、梗塞あるいは壊死組織、組織の死を引き起こす。虚血組織はフリーラジカルの除去に必要とされる酵素の生産が少ない。ヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical)を含むフリーラジカルが産生される場合、組織は再灌流および酸素への再露出により、損傷を受ける。酸化的損傷はまた、周辺組織において、カルシウムバランスを混乱させ、昏倒を引き起こす。酸化的バースト(burst)に起因する損傷は、傷害された細胞が虚血部位に対して炎症性好中球を引き寄せる因子を放出する場合、さらにいっそう大きくなる。炎症性細胞は、より毒性のフリー・ラジカルを産生し、および筋細胞を殺す場所である間隙空間に浸潤する酵素を産生する。
【0005】
虚血/再灌流性傷害に起因する損傷に対して保護する方法は、無酸素性代謝および初期の酸化的バーストを減少させること、および、次いで起こる炎症に関連する損傷(inflammation−associated damage)を防いでいるカルシウムオーバーロード(overload)を確実にすることに焦点を合わせている。例えば、酸素由来フリー・ラジカルの産生を減らす(アロプリノールおよびデフェロキサミンを含む)、またはこれらの物質の異化を増すのどちらかの薬剤(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオン、および銅錯体)は、炎症の大きさを制限するようであり、そしてまた心性昏倒から左心室の機能回復を促し得る。筋鞘のナトリウム/水素の交換を阻止するアミロライドなどの薬剤は、ナトリウムの排出を伴う細胞内へのカルシウムの強制的流入を阻止し、そして、それによるカルシウムオーバーロードを減らす。
【0006】
組織はまた虚血性の前提条件づけによっても、虚血/再灌流の傷害から保護され得る。虚血性前提条件は、虚血耐性の急速な発生を生じる、短期の先行性虚血とそれに続く再灌流より引き起こされる。この、30分から2時間持続し、かつ心筋組織においての、虚血耐性の急性前提条件は、昏倒の減少レベルではなく、梗塞の大きさの縮少、および心室不整脈の発生率の減少により特徴づけられる(Elliott,J.Mol.Cell Cardiol.,30(1):3−17(1998))。起こる急性前提条件の消失の後に、たとえさらなる前提条件の虚血の期間がなくても、虚血耐性の遅発性前提条件は12から24時間後に現れ、そして72時間まで持続する。心筋梗塞に対する前提条件保護の相の遅延の間に、昏倒および不整脈は多様な種において報告されている。
【0007】
虚血/再灌流に直面する前提条件づけされた心筋層の特徴は、いくつかのモデルにおけるアデノシン三リン酸(ATP)の蓄積、細胞内アシドーシスの減弱、および筋細胞内カルシウム負荷の減少が挙げられる。虚血の間に心筋層によって放出されることが公知である特定の化学薬剤は、急性および遅発性虚血耐性を誘導し、そして心臓保護を提供することが示された。例えば、急性前提条件を誘導し、かつATP依存性カリウム(KATP)チャネルシグナル伝達経路を経由する虚血性傷害から保護すると思われる、アデノシン、ブラジキニン(bradykinin)およびアヘン剤受容体アゴニストである。ビマカリン(bimakalim)という薬剤(KATP依存性カリウムチャネルを開口することが公知)はまた、梗塞の大きさを制限することが示された(Mizumuraら,Circulation,92:1236−1245(1995))。モノホスホリルリピッドA(monophosphoryl lipid A(MLA))は虚血組織への非可逆的および可逆的損傷を防ぐ(Elliot 米国特許第5,286,718号)。モノホスホリルリピッドAは、リポ多糖体(LPS)の活性基本構造要素であるリピッドAを解毒した誘導体である。LPSまたはエンドトキシンは、グラム陰性細菌の多くの株によって産生される強力な免疫調整剤(immunomodulator)である。虚血に先立ちLPSを用いる前処置は、心筋機能を強める心筋カタラーゼ活性を増すことが示された(Brownら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86(7):2516−2520(1989)、Bensardら,J.Surg.Res.,49(2):126−131(1990))。エンドトキシンはまた、低酸素症の間の肺傷害に対しても保護する(Bergら,J.Appl.Physiol.,68(2):549−553(1990)、Bergら,Soc.Exper.Biol.Med.,167−170(1990))。エンドトキシンの高用量の心臓保護作用は、前処置の際に心筋の酸化的ストレスを誘導し、それにより、虚血に関連する第二の酸化的ストレスから保護するための、この「毒素」の能力に関連するようである(Maulikら,Am.J.Physiol.,269:C907−C916(1995))。しかしながら、LPSは非常に有毒である。MLAはLPSの毒性を陰性にするように構造的に改変されている。MLAは、一酸化窒素シンターゼ(これは心臓保護的なATP依存性カリウムチャネル(KATP)の開口状態(open−state)の確率を増すことを導く)の産生誘導によって、虚血/再灌流に起因する傷害から保護する。MLAにより引き起こされた一酸化窒素のバーストはまた、さらなる傷害から患者を保護するために虚血後領域に入る炎症性好中球数の減少を導き得る。エンドトキシンとは対照的に、MLAは心臓保護的用量において、心筋の酸化的ストレスを誘導しないようである。
【0008】
しかしながら、虚血/再灌流傷害のための現在の処置は、欠点を伴う。活性であることが公知の薬剤の多くは、広範囲の臨床的適用性を持たず、有効性が制限されており、および/または投薬が制限される用量を持ち、そして、それにより、心臓における虚血/再灌流傷害を回復するための、これらの用途が制限されている。エンドトキシンは心臓保護的用量で、そのシステムに対して強い毒性を持つ。一方、非毒性(non−toxic)MLAは、多くの生物的産物を用いる場合と同様にS.Minnesota発酵によって製造され、そして脂肪酸鎖の長さの変化に伴って脂肪酸置換パターンが変化する、多くの同属種分子の複合物または混合物として存在する。
【0009】
エンドトキシンとの比較において、MLAは心臓保護的用量では非毒性であるが、たとえ投薬量限度(dose−limiting)でなくても、MLAは標的用量範囲内で軽度の一過性の発熱およびインフルエンザのような症状を引き起こしうる。それ故、虚血/再灌流の有害効果の防止、および回復において、安全、有効性であり、かつ広い臨床適用性をもつ新組成物が要求されていることは、上述から明らかである。非毒性、非発熱性であり、化学合成によって産生され、そして組成物の一つの定義された分子構造の組成物は、この用途に対する利便性を証明する。より具体的には、組織選択的または特定の様式において、一酸化窒素シグナル伝達を誘導または活性化する組成物が要求されており、そこではこの化合物が、マクロファージ/単球レベルでの前炎症性サイトカインまたはNOの誘導を伴わず、かつ発熱作用を伴わずに、標的組織において一酸化窒素(NO)をアップレギュレートさせる。驚くべきことに、本発明はこのような化合物を提供する。
【0010】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は一酸化窒素によって媒介される疾患または状態(特に虚血および再灌流傷害)を処置するための方法を提供する。この方法は、このような処置を必要とする被験体に、以下の式:
【0011】
【化13】
を有する化合物およびこの薬学的に受容可能な塩の有効量を投与する工程を包含し、ここでXは−O−または−NH−であり;R1およびR2はそれぞれ独立して(C2−C24)アシル基、(飽和、不飽和および分枝型アシル基を含む)であり;R3は−Hまたは−PO3R11R12であり、ここでR11およびR12は、それぞれ独立して−Hまたは(C1−C4)アルキルであり;R4は−H、−CH3、または−PO3R13R14であり、ここでR13およびR14は、それぞれ独立して−Hまたは(C1−C4)アルキルから選択され;そしてYは以下の化学式
【0012】
【化14】
から選択されるラジカルである。
ここで下付き文字n、m、pおよびqはそれぞれ独立して0〜6の整数であり;
R5は(C2−C24)アシル基(上記と同様に、飽和、不飽和および分枝型アシル基を含む)であり;R6およびR7は、HおよびCH3から独立してに選択され;R8およびR9は、H、OH、(C1−C4)アルコキシ、−PO3H2、−OPO3H2、−SO3H、−OSO3H、−NR15R16、−SR15、−CN、−NO2、−CHO、−CO2R15、および−CONR15R16から独立して選択され、ここでR15およびR16は、Hおよび(C1−C4)アルキルからそれぞれ独立して選択され;R10は、H、CH3、−PO3H2、ω−ホスホノオキシ(phosphonooxy)(C2−C24)アルキル、およびω−カルボキシ(C1−C24)アルキルから選択され;そして、Zは−O−または−S−であり;但し、R3が−PO3R11R12の場合、R4は−PO3R13R14以外である。
【0013】
本発明はまた、本発明の方法において使用され得る化合物、および上の一般式の化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0014】
(発明の詳細な説明および好ましい実施形態)
(定義)
用語「アルキル」は、これ自身または他の置換基の一部として、そうでないと示されなければ、直鎖または分枝鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはその組み合わせを意味し、これは完全飽和、モノ飽和またはポリ飽和であり得、かつ指定された炭素原子数を持つ(すなわち、C1−C10は1から10の炭素を意味する)二価および多価のラジカルを含み得る。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどのホモログおよびアイソマーなどの基が挙げられる。不飽和アルキル群は、1つ以上の二重結合または三重結合を有する基である。不飽和アルキル群の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジニエル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−プロピニルおよび3−プロピニル、3−ブチニル、および、より高次のホモログおよびアイソマーが挙げられる。典型的には、アルキル基は、1〜24の炭素原子を有する。「低級アルキル」は、一般的に8以下の炭素原子を有する鎖のより短いアルキル基である。
【0015】
用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキオチオ」(またはチオアルコキシ)は、これらの従来の意味において使用され、そして、それぞれに、酸素原子、アミノ基、硫黄原子を介して分子残部と結合する、このようなアルキル基をいう。
【0016】
用語「アシル」はヒドロキシ基の除去によって有機酸から誘導される基をいう。アシル基の例としては、アセチル、プロピオニル、ドデカノイル、テトラデカノイル、イソブチリルなどが挙げられる。従って、用語「アシル」は、別に−C(O)−アルキルとして定義された基を含むことを意味する。
【0017】
それぞれの上記用語(例えば、「アルキル」、「アシル」)は、示されたラジカルの置換型形態および非置換型形態の両方を含むことを意味する。ラジカルの各タイプについての好ましい置換基は、以下に示す。
【0018】
アルキルおよびアシルラジカルについての置換基は以下:−OR’、=O,=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)2R’、−NH−C(NH2)=NH、−NR’C(NH2)=NH、−NHC(NH2)=NR’、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R’’、−CN、および−NO2、(0から(2m’+1)の範囲の数において)から選択される多様な基であり得、m’はこのようなラジカルにおいて炭素原子の総数である。それぞれ独立してR’、R’’、およびR’’’は、水素および非置換型(C1〜C8)アルキルをいう。R’およびR’’が同じ窒素原子に結合する場合、これらは、窒素原子と結合して、5−、6−、または7−員環を形成する。例えば、−NR’R’’は1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味している。上述の置換基の議論から、当業者は、用語「アルキル」がハロアルキル(例えば、−CF3および−CF2CF3)などのような基を含むことを意味することを理解する。
【0019】
用語「薬学的に受容可能な塩」は本明細書中に記載の化合物上に見出される特定置換基に依存して、比較的非毒性の酸または塩基で調製される活性化合物塩を含むことを意味している。本発明の化合物が比較的に酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩は、このような化合物の中性形態と、希釈していない(neat)かまたは適切な不活性溶媒中のいずれかの十分な量の所望された塩基とを接触させることによって得られ得る。薬学的に受容可能な塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニア、有機アミノ、またはマグネシウムの塩、あるいは類似の塩が挙げられる。本発明の化合物が、比較的に塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、このような化合物の中性形態と、希釈していないかまたは適切な不活性溶媒中のいずれかの十分な量の所望された酸とを接触させることによって得られ得る。薬学的に受容可能な酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸酸、炭酸酸、炭酸水素酸、リン酸、一リン酸水素酸、二リン酸水素酸、硫酸、亜硫酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などのような無機酸から誘導されたもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソブチル酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、琥珀酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような、比較的非毒性の有機酸から誘導された塩が挙げられる。また、アルギン酸のようなアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などのような有機酸の塩も含む(例えば、Berge,S.M.ら、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science,1977,66,1−19を参照)。本発明の特定化合物は、塩基性官能基または酸性官能基の両方を含んでおり、この官能基は、化合物が塩基付加塩または酸性付加塩の、どちらかに変換される。
【0020】
中性形態の化合物は、従来の様式において、その塩を塩基または酸と接触させること、および親化合物を単離することによって再生され得る。親形態の化合物は、特定の物質的性質(例えば、極性溶媒における可溶性)が種々の塩形態とは異なるが、そうでなければ、この塩は、本発明の目的のための親形態の化合物と等価である。
【0021】
塩形態に加えて、本発明はプロドラッグ型の化合物を提供する。本明細書中に記載された化合物のプロドラッグとは、本発明の化合物を提供するために、生理学的条件下で容易に化学変化を受ける化合物である。さらに、プロドラッグは、エキソビボの環境において、化学的または生化学的方法によって、本発明の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、適切な酵素または化学試薬とともに経皮パッチリザーバ(patch reservoir)中に置かれると、本発明の化合物にゆっくりと変換され得る。
【0022】
本発明の特定化合物は、非溶媒和形態(unsolvated form)、および水和形態を含む溶媒和形態において存在し得る。一般的に、溶媒和形態は非溶媒和形態と等価であり、そして本発明の範囲内に含まれることを意図している。本発明の特定化合物は、複数の結晶形態または非晶質形態で存在し得る。一般的に、全ての物理的形態は本発明によって意図された用途と同等であり、かつ本発明の範囲内であることが意図される。
【0023】
本発明の特定化合物は、非対称性炭素原子(光学的中心)または二重結合を保有する:ラセミ化合物、ジアステレオマー、幾何異性体、および個々のアイソマーは、全て本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0024】
本発明の化合物はまた、このような化合物を構成する1つ以上の原子において、天然でない割合の原子アイソトープを含み得る。例えば、この化合物は、放射活性アイソトープ(例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素−125(125I)、または炭素−14(14C))によって放射性標識され得る。全ての本発明の化合物のアイソトープバリエーションは、放射活性であっても、また放射活性でなくても、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0025】
(概説)
一般に、iNOSの遺伝子転写およびタンパク質合成の誘導物質は、動物およびヒトにおいて、前炎症性であり、そして、それにより幾分か「毒性」である、またはあまり寛容性ではない。エンドトキシン(LPS)ならびにIL−1、TNF、およびIFN−γなどの前炎症性サイトカインが、公知のiNOS誘導物質である。これら全ては動物に投与した場合、本質的に毒性であり、かつ全身性炎症性応答、成体呼吸窮迫症候群、多臓器不全、および心臓血管虚脱を誘導し得る。
【0026】
モノホスホリルリピッドAは、リピッドA(LPS)の構造誘導体であり、リピッドAに対して改良された治療用指標を持つ。この化合物は、体温上昇、インフルエンザ様症状、心拍数の増加および血圧の軽度の低下が、いくらかの患者において1kgあたり10μg以上の用量レベルで生じ得るが、少なくとも20μg/kgまでの用量の場合、ヒトに対して安全に投与され得る。細胞培養および動物評価により、モノホスホリルリピッドA(MPL(登録商標)免疫刺激物質(immunostimulant)として市販されている)が、より高い用量レベルではあるが、発熱性、ならびにTNFおよびIL−8などの前炎症性サイトカインを誘導する能力を保持するという点で、親LPSのいくらかの免疫刺激活性をなお保持することが確認される。
【0027】
MPL(登録商標)の心臓保護的活性の調査は、一酸化窒素シンターゼの誘導(induction of nitric oxide synthases)(iNOS)が、この化合物の遅延性心臓保護作用に重要であることを証明した。さらに、一酸化窒素(NO)シグナル伝達は、おそらくNOSの構成的プールを通して、この化合物の急性心臓保護作用に重要である。MPL(登録商標)の残存性エンドトキシン様活性を考慮すると、この化合物が一酸化窒素シグナル伝達をし得ることは驚くべきことではない。またさらに、一酸化窒素シグナル伝達は、虚血の前提条件づけが、心臓保護を誘発する潜在的経路として、示唆されている。この観察は、一酸化窒素ドナーが心臓保護的であるという事実と合わせて、MPL(登録商標)心臓保護の系路として、NOS/NO経路のさらなる支持を提供する。
【0028】
対照的に、別の糖脂質、RC−552は、感知されるほどのエンドトキシン活性を伴わずに心臓保護活性を示す。例えば、RC−552は、MPL(登録商標)が1kgあたり約10−15μgで発熱を引き起こす同じ処方で、ウサギにおいて1kgあたり1000μgまでの用量で発熱を誘発しない。さらに、MPL(登録商標)およびLPSの両方とは対照的に、RC−552は、1mlあたり10,000μgまでの濃度で、ヒト骨髄単球細胞株THP−1からTNFも、IL−1も、IL−8も誘発しない。マウスマクロファージ細胞株J774から亜硝酸生成(iNOS誘導の尺度)を誘発させるために、単球をMPL(登録商標)およびRC−552に4時間曝露し、その後約20時間薬物フリーでインキュベーションした後のMPL(登録商標)およびRC−552の評価は、MPL(登録商標)が約40−80ng/mLのED50で活性であり、一方RC−552は約720−1200ng/mLの名目上のED50で本質的に不活性であることを示す。
【0029】
それ故、RC−552は単球細胞株において、重大な免疫刺激活性(残存エンドトキシン)活性を伴わず、かつiNOSを誘導しない。従って、RC−552は、J774のような単球/マクロファージ細胞株において免疫刺激活性およびiNOS誘導能力を欠いているが、一酸化窒素依存性経路により心臓保護的であるという点で、MPL(登録商標)、ならびに多様な他の合成単糖類および二糖類との比較において特有なプロフィールを有する。
【0030】
他の調査はまたRC−552で達成された前提条件の効果が、誘導形態の一酸化窒素シンターゼ(inducible form of nitric oxide synthases(iNOS))の誘導を通して産生される一酸化窒素レベルの増加に起因する。Xiら,Am.J.Physiol.277(6Pt2):H2418−H2424(1999)を参照。
【0031】
これらの観察は、MPLまたはLPSでは明らかでないRC−552に対する組織選択性または特異性を示唆する。
【0032】
本発明は、同様の特性(低発熱性および低サイトカイン誘導活性)を有し、そしてこの特性は虚血および再灌流傷害、あるいは一酸化窒素によって変化される他の疾患または状態の処置において有用である他の糖脂質化合物、および組成物を提供する。この一酸化窒素によって変化される他の疾患または状態の処置としては、血管緊張(例えば、血管痙攣、肺高血圧、全身性高血圧、インポテンス、脱毛、およびうっ血性心不全)、血栓(抗血小板)事象(例えば、一過性虚血発作、間欠性跛行、急性血栓症に関連する心筋梗塞または発作)から生じる状態の調節が挙げられる。さらに、一酸化窒素誘導物質は、血栓崩壊性作用を改良し、そして、前提条件付けの作用に起因する再閉塞、PTCAまたはステント挿入(stenting)後の再狭窄の事象における急性再閉鎖(reclosure)の減少および組織の保護のため、ならびにMIまたは発作を誘導する血栓症を防ぐための血栓崩壊の補助剤として有用であり得る。本明細書中に記載の化合物で処置され得る他の状態は、産科の分野(例えば、子癇前症または子癇を防止または逆転させること、および早期分娩を止めること):冠状および末梢動脈疾患(例えば、動脈硬化および血管痙攣(上述)を減少すること)、肺疾患(例えば、成人呼吸促進症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支痙攣(ぜん息))、敗血症性ショックおよび多臓器不全の抑制、ならびに胸の手術に関連する低酸素血にある。最終的に、本明細書中に記載の特定化合物は、細胞保護における使用が見出される(例えば、アポトーシスの阻害、移植、心筋梗塞、手術、発作、および血栓症と関連した任意の臓器における虚血/再灌流傷害の減少、ならびにアルツハイマーおよび虚血性痴呆)。
【0033】
一方、本発明の特定化合物は、アジュバントおよび免疫エフェクター(WO98/50399参照)として記載されるが、この活性と化合物の能力(単球/マクロファージ以外の細胞または組織で一酸化窒素の産生を誘導する)との間の相関は以前に記載されていない。
【0034】
(化合物および組成物)
1つの局面において、本発明は以下の化学式を有する化合物:
【0035】
【化15】
およびこの薬学的に受容可能な塩を提供する。ここでXは−O−または−NH−であり;R1およびR2はそれぞれ独立して(C2−C24)アシル基、(飽和、不飽和および分枝型アシル基を含む)であり;R3は−Hまたは−PO3R11R12であり、ここでR11およびR12は、それぞれ独立して−Hまたは(C1−C4)アルキルであり;R4は−H、−CH3、または−PO3R13R14であり、ここでR13およびR14は、それぞれ独立して−Hまたは(C1−C4)アルキルから選択され;そしてYは以下の化学式
【0036】
【化16】
から選択されるラジカルである。
ここで下付き文字n、m、pおよびqはそれぞれ独立して0〜6の整数であり;R5は(C2−C24)アシル基(上記と同様に、飽和、不飽和および分枝型アシル基を含む)であり;R6およびR7は、HおよびCH3から独立してに選択され;R8およびR9は、H、OH、(C1−C4)アルコキシ、−PO3H2、−OPO3H2、−SO3H、−OSO3H、−NR15R16、−SR15、−CN、−NO2、−CHO、−CO2R15、および−CONR15R16から独立して選択され、ここでR15およびR16は、Hおよび(C1−C4)アルキルからそれぞれ独立して選択され;R10は、H、CH3、−PO3H2、ω−ホスホノオキシ(phosphonooxy)(C2−C24)アルキル、およびω−カルボキシ(C1−C24)アルキルから選択され;そして、Zは−O−または−S−であり;但し、R3が−PO3R11R12の場合、R4は−PO3R13R14以外である。
【0037】
さらに、R3が−PO3H2の場合、R4はHであり、R10はHであり、R1はn−テトラデカノイルであり、R2はn−オクタデカノイルであり、そしてR5はn−ヘキサデカノイルであり、そのときXは−O−以外である。
【0038】
上記の一般式において、直鎖状脂肪酸アシル残基が結合する3’立体中心の立体配置は、RまたはSであるが、好ましくはRである。R6およびR7が結合する炭素原子の立体化学はRまたはSであり得る。全ての立体異性体、光学異性体、ジアステレオマー、およびこれらの混合物は、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0039】
好ましい実施形態の1群において、Yは以下の化学式である:
【0040】
【化17】
この群の実施形態では、アシル基R1、R2、およびR5は、これらの基のうち少なくとも2つが(C2−C6)アシルであるように選択される。さらに好ましくは、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数が約6〜約22であり、より好ましくは約12〜約18の実施形態である。他の好ましい実施形態において、XはOであり、ZはOである。下付き字のn、m、pおよびqは、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2である。残りの置換基のうちR6およびR7は、好ましくはHである。本発明は、好ましい置換基が1つの分子と結合される、これらの実施形態をさらに意図する。
【0041】
実施形態の他の群において、R1、R2、およびR5は(C12−C20)アシルから選択され、但し、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数は約44〜約60である。より好ましくは、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数は約46〜約52である。XおよびZが両方とも−O−である、これらの実施形態がさらに好ましい。
【0042】
より好ましい実施形態の他の群において、Yは以下の式である:
【0043】
【化18】
上述されたより好ましい実施形態の群と同じように、この群においてアシル基R1、R2、およびR5はまた、これらの基のうちの少なくとも2つが(C2−C6)アシルであるように選択される。R1、R2、およびR5における炭素原子の総数が約6〜約22である、これらの実施形態がさらに好ましく、より好ましくは約12〜約18である。他の好ましい実施形態において、XはOである。残りの置換基のうち、R3は、好ましくはホスホノ(phosphono)(−PO3H2)であり、そしてR4は好ましくはHである。本発明は、好ましい置換基の多様な組合せが1つの分子で結合される、これらの実施形態をさらに意図する。
【0044】
実施形態の別の群において、R1、R2、およびR5は(C12−C24)アシル(但し、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数は約44〜約60である)から選択される。より好ましくは、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数は約46〜約52である。特に好ましいR1、R2、およびR5の脂肪酸基は、直鎖状C14、C16、およびC18脂肪酸基である。Xが−O−の実施形態がさらに好ましい。上述のより短いアシル鎖の実施形態と類似して、R3は、好ましくはホスホノ(−PO3H2)であり、そしてR4は好ましくはHである。
【0045】
本発明の最も好ましい実施形態において、Yは化学式(Ib)のラジカルであり、XはOであり、R3はホスホノであり、R4はHであり、そしてR1、R2、およびR5は(C12−C24)アシルから選択される(但し、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数は約46〜約52である)。R2が(C16−C18)アシルのこれら化合物がさらに好ましい。
【0046】
(化合物の調製)
本発明において有用な特定化合物は、同時系属の出願番号08/853,826号、09/439,839号(1999年11月12日出願)およびPCT/US98/09385において記載されている。他の化合物は、米国特許第6,013,640号におけるRC−552(L34)について記載される様式と類似の様式で調製され得る。また他の化合物は、Johnsonら、J.Med.Chem.42:4640−4649(1999)、Johnsonら、Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2273−2278(1999)、およびPCT/US98/50399において概説される方法を用いて調製され得る。一般的に、上述の参照文献において記載された合成方法は、異なるアシル基および置換基を有する化合物の調製に広く適用し得る。当業者は、本明細書中に記載の相似した方法が、別のアシル化薬剤を用いるために改変され得るか、または適当なアシル基が結合した市販の入手可能な物質で開始され得ることを理解する。
【0047】
(化合物の評価)
本明細書に提供される化合物は、適度なファルマコフォリック(pharmacophoric)プロフィールを持つ化合物を選択するために種々のアッセイフォーマットにおいて評価され得る。例えば、米国特許第6,013,640号は、本明細書に記載の化合物の心臓保護的作用を評価するために適切な動物モデルを記載する。下記の実施例もまた、本発明の化合物の発熱性を評価するアッセイ、および化合物の前炎症性作用を評価するさらなるアッセイを提供する。
【0048】
本発明は、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアの混合物において、本明細書に提供される化合物を含む薬学的組成物をさらに提供する。適切なキャリアは、投与経路とともに処置されている状況に依存する。従って、キャリアの議論は、使用方法とともに下記に提供される。
【0049】
(使用方法)
本発明のホスホグリコリピッドは、例えば、虚血/再灌流傷害に起因する心臓組織(しかし制限されない)ような代謝性の活性組織に対する損傷を回復させることにおいて有用である。酸素が枯渇した場合、組織は最初に虚血の間に損傷される。虚血の間の酸素の枯渇は、細胞壊死を引き起こす。酸素の枯渇はまた、再灌流でのフリーラジカル産生、補体経路の活性化、血管接着分子のアップレギュレーション、および炎症性サイトカインの産生の増加を導く。本明細書中に提供された化合物は、虚血の間の酸素の枯渇から組織を保護する。本発明の化合物がまた、全ての型の低酸素症または貧血、続いて再酸素負荷を経験する組織を保護し得ることは、当業者に明らかである。
【0050】
付加的な損傷および細胞死は、再灌流による組織への酸素の再導入の際に起こることが示唆されている。再灌流の間に生じたフリーラジカルは細胞死を促進する。細胞に対するフリーラジカル損傷は、カルシウムオーバーロードおよび多様な酵素システム(おそらく、一酸化窒素の産生の減少を引き起こし、好中球の接着の増加を導く一酸化窒素シンターゼを含む)の活性の減少を生じる。本発明の化合物の心臓保護的作用は、アミノグアニジン、誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)またはL−NAMEの選択的インヒビター、構造性および誘導性NOS異性体の非選択的インヒビターによって阻止され得る。この薬物の投与は、イヌにおいてRC−552の遅発性心臓保護的作用を阻止し、このことは、本発明の化合物の作用の、一酸化窒素に関連する機序を示唆する。iNOSノックアウトマウスおよび類似の野生型マウスにおいて実施された実験は、RC−552の遅発性心臓保護的作用における、iNOSの誘導およびNOシグナル伝達の役割が確認された。
【0051】
好中球は、虚血後組織に生じる損傷性炎症反応において有益である。好中球は虚血部位にC5aおよび5b(補体フラグメント)、サイトカインおよびケモカイン(細胞に対して化学走性である)によって呼びよせられる。活性好中球は上皮細胞に接着し、そしてこれらは単球を殺す場所である上皮性バリアを横切って遊走する。上皮性バリアを横切る炎症性好中球の接着および血管外遊出は、上皮表面および好中球の両方の接着分子のアップレギュレートに依存する。虚血組織によって産生されたIL−6などのサイトカインは、接着分子のアップレギュレートに重要なことが示されている。本発明の好ましい化合物は、これらが保護的レベルにおいて、前炎症性サイトカイン(NOSおよびNO合成のよく認識された誘導物質)を誘導しないか、または発熱がNO依存性機序を介する虚血/再灌流に起因する損傷の回復になお有効である点で特徴的である。
【0052】
臨床状況において、予想されるまたは予期されない虚血性事象が起こる。虚血性事象を引き起こす計画的手術は、冠状動脈バイパス手術、心臓弁交換、心臓血管形成、心室中隔修復、主要血管クロス−クランピング(cross−clamping)を伴う手術、形成手術、皮弁トランスロケーション(translocation)、筋形成、器官または組織の移植、大動脈の動脈瘤修復、あるいは腸の切除を含む。組織は、心筋梗塞、発作、溺死、腸梗塞、ならびに外傷性切断および再付着のような非計画的な事象の間に、酸素の枯渇を起こし得る。予期しないことに、本発明のホスホグリコリピッド化合物は、虚血組織に対して急性保護および遅発性保護の両方を提供する。さらに、急性保護作用の期間は、ボーラス用量後の薬物の注入によって延長され得る。
【0053】
本明細書中に提供される化合物は、患者にこの化合物を投与して数分以内に、虚血組織に対する保護作用を示す。例えば、心性虚血の10分前に試験動物に、本発明の化合物を投与することは、試験される動物における梗塞の大きさ、不整脈および昏倒の減少によって示される保護を誘導し得る。この即効または急性の保護作用は、やがて分散または衰弱する。しかしながら、遅発性保護作用はこの薬剤の投与後、おおよそ24時間のようである。遅発性保護は、例えば、動物がRC−552を用いて心性虚血の約24時間前に試験された場合に、梗塞の大きさおよび昏倒の減少によって例証されるように、犬およびうさぎで明らかであった。この化合物によって提供される虚血組織に対する保護は、2つの異なった保護期間(急性保護期間および遅発性保護期間)を提供する二相性である。RC−552(L34)の急性保護作用は、ボーラス投与直後のこの薬物の注入によって、少なくとも3時間延長され得、臨床医が急性および遅発性の保護期間の間の差を埋めることを可能にする。本明細書中に提供される化合物はまた、酸素の枯渇する事象の発生に対して十分な投薬が不可能な、緊急および外傷性の状態において、うまく使用され得るという点で、有利である。さらに、この化合物によって提供される遅発性保護作用は、虚血性事象が単一用量投与して一日後においてでさえ起こり得る状況において、この薬剤を有益にする。
【0054】
虚血性損傷に対する保護の方法において、本明細書中に提供される化合物は、注射、吸入または鼻腔内、直腸、膣もしくは点眼、あるいは摂取のための薬学的に受容可能なキャリアとともに処方され得る。本明細書中で使用されるように、「薬学的に受容可能なキャリア」は、活性成分の生物学的活性を妨げず、かつこれが投与された患者に対して非毒性である媒体を意味する。薬学的に受容可能なキャリアは水中油型または油中水型乳濁液、静脈内(IV)使用に適する有機的共溶媒を伴うまたは伴わない水性の組成物、リポソームまたは界面活性剤を含む小胞、マイクロビーズおよびマイクロソーム、粉剤、錠剤、カプセル剤、坐薬、あるいは水性の懸濁液およびエアロゾルを含む。
【0055】
非経口(すなわち、腹腔内、皮下、筋内または静脈内)に投与され得る本化合物の処方物は、以下の好ましいキャリアを含む。静脈内使用のための、好ましいキャリアの1つの例としては、10%USPエタノール、40%USPプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール600および平衡USP注射用水(the balance USP Water for Injection)(WFI)の混合物が挙げられる。他の受容可能なキャリアとしては、10%USPエタノールおよびUSP WFI;USP WFI中に0.01〜0.1%トリエタノールアミン;またはUSP WFI中に、0.01〜0.2%ジパルミトイルジホスファチジルコリン;および1〜10%スクアレンまたは非経口の水中植物油型乳濁液が挙げられる。薬学的に受容可能な非経口溶媒は、活性成分の除去を伴わうことなく0.22ミクロンフィルターを通して濾過され得る溶液または分散物を提供するものである。
【0056】
皮下または筋内での使用のための、好ましいキャリアの例としては、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、WFI中に5%デキストロースおよび5%デキストロース中に0.01〜0.1%トリエタノールアミンまたはUSP WFI中に0.9%塩化ナトリウム、あるいは10%USPエタノールの1:2または1:4の混合物、40%プロピレングリコールおよび5%デキストロースまたは0.9%塩化ナトリウムのような受容可能な等張性溶液;あるいはUSP WFI中に0.01〜0.2%ジパルミトイルジホスファチジルコリンおよび1〜10%スクアレンまたは非経口の水中植物油型乳濁液が挙げられる。
【0057】
粘膜表面を介した投与のキャリアの例としては、特定の経路に依存する。経口的投与の場合、例としては、薬剤グレードのマンニトール、スターチ、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、サッカライドナトリウム(sodium saccharide)、セルロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられ、好ましくはマンニトールである。鼻腔内投与の場合、ポリエチレングリコール、ホスホリピッド、グリコールおよびグリコリピッド、スクロース、および/またはメチルセルロース、ラクトースのような充填剤を伴うもしくは伴わない粉剤懸濁物および塩化ベンザアルコニウム、EDTAのような防腐剤が使用され得る。特に好ましい実施形態において、ポスポリピッド1,2ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)は、0.1〜3.0mg/ml濃度の本発明の化合物の鼻腔内投与のために、0.01〜0.2%で適切な等張性水性キャリアである。吸入によって投与される場合、適切なキャリアは、ポリエチレングリコールまたはグリコール、DPPC、メチルセルロース、粉末の分散剤、および防腐剤であり、ポリエチレングリコールおよびDPPCが好ましい。
【0058】
本発明の化合物は虚血/再灌流傷害から回復または保護するための「有効量」において個々に投与され得る。本明細書中に使用されるように、「有効量」は、ビヒクルまたはネガティブコントロールを超える応答を示す量である。本発明の化合物が患者に投与される正確な投薬量は、投与の経路、薬学的組成物、および患者に依存する。例えば、ブタに左前室間動脈閉塞(left anterior descending artery occlusion)後の梗塞の大きさを縮小するために、静脈内投与した場合、化合物の使用量は1kgあたり約1〜約1000マイクログラムであり、好ましくは1kgあたり約10〜約300マイクログラムであり、かつ最も好ましくは体重1kgあたり約35〜約100マイクログラムである。同様に、少なくとも一部分が一酸化窒素レベルによって媒介される、他の状態の処置のために適切な有効量は、標準プロトコルに従い臨床医によって決定され得る。
【0059】
(実施例)
以下の実施例において、心筋梗塞、前炎症性サイトカイン生産、発熱性およびiNOS誘導(骨髄単球細胞において)に対するRC−552の作用が証明される。本明細書中に提供される他の化合物は類似の特徴(例示的データを以下に提供した)を示す。
【0060】
(実施例1)
この実施例は本明細書中に記載の化合物を用いて達成され得る作用を説明する。この実施例は、ブタの梗塞の研究においてRC−552を使用する。
【0061】
一酸化窒素の役割を、RC−552投与(エタノール/プロピレングリコール処方物中)の前に、Nω−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME、一酸化窒素シンターゼの非特異的インヒビター)の投与によって評価した。最初の実験は、L−NAMEの最適用量、具体的には、血流力学を変化させず梗塞の発生を干渉または悪化もさせないが、RC−552の心臓保護的作用を潜在的に阻害する特定の用量の投与を含む。RC−552または小胞の投薬30分前、(LAD閉塞40分前)に投与された0.5mg/kgの用量のL−NAMEは最適なことが見出された。
【0062】
ブタを以下の5群の1つに無作為化された盲検様式(randomized blinded fashion)で割り当てた:1)LAD閉塞40分前に、1kgあたり0.5mgのL−NAMEを投与した;2)1kgあたり29μgのボーラス(RC−552の静脈内用量)の30分前に、1kgあたり0.5mgのL−NAMEを投与した;3)体重に見合うように調整された溶量のボーラス用量の小胞38.8μL/kgの30分前に、1kgあたり0.5mgのL−NAMEを投与した;4)LAD閉塞10分前に、1kgあたり29μgのボーラス用量のRC−552を投与した;および5)LAD閉塞10分前に、ボーラス用量の小胞(38.8μL/kg)を投与した。総計35匹のブタをこの研究に登録した:群1に8匹;群2に10匹;群3に7匹;群4に7匹;群5に3匹。データを分析した場合、2つのL−NAMEコントロール群(1および3)による梗塞の大きさの結果を、合わせた。さらに、閉塞10分前にRC−552または小胞を用いて処置した前述の研究のブタによる梗塞の大きさの結果は、群4および5にそれぞれ加えられた。
【0063】
図1に示すように、梗塞の大きさは、小胞で前処置したブタにおいて平均28.9±5.0%から、虚血10分前にRC−552を処置したブタにおいて14.2±3.0%へと、50%縮小した。RC−552の30分前のL−NAMEの投与は、L−NAME単独およびL−NAME+小胞の組合わせた群に対して、平均の梗塞の大きさ40.2±4.4%対36.9±3.7%という結果を生じた。小胞単独、L−NAME+RC−552およびL−NAME+小胞で処置した群の間に有意差はなかった。この結果は、RC−552によって誘導される急性心臓保護作用における一酸化窒素合成酵素の役割を示す。
【0064】
(実施例2)
この実施例はヒト骨髄単球細胞株THP−1から前炎症性サイトカイン生産に対する多様な糖脂質の作用を説明する。
【0065】
(方法)
ヒト骨髄単球細胞株THP−1(ATCC)を前炎症性サイトカインを誘導するための糖脂質の能力を評価するために使用した。糖脂質はTHP−1の細胞懸濁液に、注射用水中に10%エタノールを含む水溶液として加えた。4時間の誘導に先立って、THP−1細胞を10−7MビタミンD3とともに一晩プレインキュベートし、3度洗浄し、そしてMPL(登録商標)、LPS、または合成化合物の存在下で再プレートした。糖脂質と細胞とを共に4時間インキュベートした後、薬物を含む培地を取り除き、細胞を新鮮な培地中に再懸濁し、そして20時間静置した。
【0066】
(結果)
RC−552は、ポジティブコントロールLPS(1ng/mLでTHP−1細胞からのTNF分泌に効果的な刺激物質)とは対照的に、10,000μg/mLの濃度の組織培養でさえ、発熱/前炎症性サイトカインTNFの分泌を誘導できなかった。MPL(登録商標)は100〜10,000ng/mLの範囲の濃度においてTNF誘導に効果的であった。
【0067】
IL−8生産の評価は、IL−8生産の強力な誘導剤であるLPS(1〜10ng/mL)およびサイトカイン放出を促すMPL(登録商標)(100〜10,000ng/mL)において観察されるのと同様の傾向が示された。RC−552は10,000ng/mLの濃度でさえ、バックグラウンドを超えるIL−8の分泌を刺激できなかった。
【0068】
IL−1Bの分泌はLPS(1〜10ng/mL)によって誘導されたが、RC−552(10,000ng/mLまで)によって誘導されなかった。
【0069】
(実施例3)
この実施例は、ウサギ、イヌおよびラットの体温に対するRC−552の作用を説明する。
【0070】
モノホスホリルリピッドAを用いた臨床試験において、発熱は一般に最初の副作用として観察された。モノホスホリルピッドAの多様な処方物の静脈内投与の臨床的研究において、軽度の発熱、インフルエンザ様症状および血圧の変化は、最大耐性用量を確立する副作用と思われる。体重に見合うように調整された発熱性モノホスホリルリピッドAの最小用量は、USPのウサギにおける発熱試験で決定されるように、ヒトにおいて観察される結果に十分一致する。3匹のウサギに対するUSPウサギ発熱試験において実施されたRC−552(USP WFI中に10%エタノール)のある処方物の発熱性評価は、この製品が少なくとも1,000μg/kgまでの静脈内用量で、非発熱性(0.35℃未満の平均温度の上昇)であることを示す。対照的に、モノホスホリルリピッドAは約15μg/kgの静脈内用量で発熱性(約0.5℃の温度上昇)である。ラットおよびイヌにおいてRC−552を用いた同様の研究は、3000μg/kgまでの静脈内用量で、温度の上昇は認められないことを示した。
【0071】
(実施例4)
この実施例は、J774マウスマクロファージにおけるiNOS誘導に対する多様な糖脂質の作用を説明する。
【0072】
(方法)
マウスマクロファージ細胞株J774は、インビトロでIFN−γによって感作され得、そしてその後の標準的なGreiss試薬ELISAアッセイ手順によって測定されるiNOSアップレギュレーションのLPS刺激に、非常に応答性である。このアッセイは、30mL/フラスコで、100ユニット/mLのIFN−γを16〜24時間添加して1x106/mLで播種した、J774細胞を利用する。ついで、細胞を回収および洗浄し、そして96ウェルプレートに1ウェルあたり2x105個で再懸濁し、そして接着させた。糖脂質化合物は、試験群のためにウェル中で段階希釈し、そして、得られる培養は、培養の上清が亜硝酸放出のGreiss試薬分析から採集される前に、別に36〜40時間インキュベートする。亜硝酸含有量はiNOSの機能と密接に対応する。
【0073】
(結果)
RC−552およびMPL(登録商標)を最初に評価した。効力を、培養物において、亜硝酸の1/2最大誘導を導く能力(ED50)である糖脂質の濃度(ng/mL)として決定した。ED50数値が低ければ低いほど、iNOS誘導の効力は高い。
【0074】
MPL(登録商標)は、高レベルの亜硝酸生成を生じる約62ng/mLのED50を有することが見出された。一方、RC−552は約977ng/mLの名目上のED50を示し、観察された最大iNOS活性は非常に低く、このことは、RC−552が、iNOS誘導のためのこの系において、本質的に不活性であることを示唆した。この結果はさらに、心臓保護モデルに対して、J774マクロファージ細胞株において、NOS活性化の結果が相違することを考慮すると、RC−552がNO生合成を促す能力において、細胞特異的または組織特異的であり得ることを示唆する。
【0075】
(実施例5)
この実施例は、RC−552のプロフィールと同様のプロフィールを示す本明細書中に提供される化合物の活性を説明する。下の表において、活性は以下のように表される:iNOS(ED50)++<80;+,80〜200;−>200;発熱性(2.5μg用量),++>2℃;+,1〜2℃;−<1℃;サイトカイン誘導(TNF−α、IL−1β)++,1μg/mLで観察可能;+,1μg/mLで検出されないが、10μg/mLで観察可能;−,10μg/mLで観察不可能。
【0076】
化合物の構造は表の下に提供される。立体化学はR1O−、R2O−、およびR5O−がそれぞれ結合する中心に提供される。
【0077】
【表1】
【0078】
【化19】
【0079】
【化20】
【0080】
【化21】
本発明の好ましい実施形態は、低い発熱性および低い前炎症性サイトカイン誘導能力(単球細胞株でのiNOSの活性にかかわらず)を示しているこれらの化合物である。
【0081】
本発明の他の化合物は、上に記載されるアッセイのうちの1つまたは2つのアッセイにおいて、適切なレベルの活性を提示する。
【0082】
【表2】
【0083】
【化22】
【0084】
【表3】
この明細書で引用された全ての刊行物および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が具体的かつ個々に参考として援用されることが示されたかのように、本明細書中に参考として援用される。前述の発明は、明瞭な理解を目的説明および例示によって幾分詳細に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から離れることなしに、特定の変更および改変が本発明に対して行われ得ることは、本発明の教示に鑑みて当業者に容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、ブタモデル系において、RC−552を用いて達成される梗塞の大きさの縮小を示すグラフである。
(関連出願の引用)
本出願は、2000年5月17日出願の米国仮特許出願60/190,444に対する優先権を主張する。本出願は、1999年10月28日出願の出願番号09/429,238号(これは、1998年8月21日出願の継続出願番号09/138,305号(現在、米国特許第6,013,640号)である);1991年12月31日出願の出願番号07/815,250号(現在、米国特許第5,286,718号)および1999年11月12日出願の出願番号09/439,839号(これは、1997年5月8日出願の一部継続出願番号08/853,826号である)に関連する。上記開示の各々は、全ての目的のためにその全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(政府により支援された研究および開発の下で行われた発明の権利に関する陳述)
適用なし。
【0003】
(発明の背景)
虚血/再灌流の間に組織に引き起こされた損傷は広範囲にわたり得る。酸素の枯渇した組織は可逆性および不可逆性の損傷の両方を被る。傷害された組織はまた、自動性において障害を示し得る。たとえば、虚血/再灌流の間に損傷された心筋組織は、不可逆的な損傷または心筋梗塞を呈し得る。可逆性の損傷または昏倒が、心拍出量の減少、および最適以下の酸素の灌流による総体的症状を導く、ポンプの有効性を減少させるのは明らかである。虚血性心筋組織の再灌流はまた、自動性において致命的な不整脈を含む障害を引き起こす電気生理学的な変化を起こし得る。
【0004】
組織が虚血/再灌流の間に損傷される正確な機序は未知である。しかし、複雑な連続した事象が、虚血および次いで起こる再灌流の間に損傷された組織で起こるという仮説がある。虚血の間、組織は、無酸素性代謝および結果としての細胞内アシドーシスを導く、酸素を与える血液(oxygen−giving blood)の枯渇が起こる。循環の欠如は、梗塞あるいは壊死組織、組織の死を引き起こす。虚血組織はフリーラジカルの除去に必要とされる酵素の生産が少ない。ヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical)を含むフリーラジカルが産生される場合、組織は再灌流および酸素への再露出により、損傷を受ける。酸化的損傷はまた、周辺組織において、カルシウムバランスを混乱させ、昏倒を引き起こす。酸化的バースト(burst)に起因する損傷は、傷害された細胞が虚血部位に対して炎症性好中球を引き寄せる因子を放出する場合、さらにいっそう大きくなる。炎症性細胞は、より毒性のフリー・ラジカルを産生し、および筋細胞を殺す場所である間隙空間に浸潤する酵素を産生する。
【0005】
虚血/再灌流性傷害に起因する損傷に対して保護する方法は、無酸素性代謝および初期の酸化的バーストを減少させること、および、次いで起こる炎症に関連する損傷(inflammation−associated damage)を防いでいるカルシウムオーバーロード(overload)を確実にすることに焦点を合わせている。例えば、酸素由来フリー・ラジカルの産生を減らす(アロプリノールおよびデフェロキサミンを含む)、またはこれらの物質の異化を増すのどちらかの薬剤(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオン、および銅錯体)は、炎症の大きさを制限するようであり、そしてまた心性昏倒から左心室の機能回復を促し得る。筋鞘のナトリウム/水素の交換を阻止するアミロライドなどの薬剤は、ナトリウムの排出を伴う細胞内へのカルシウムの強制的流入を阻止し、そして、それによるカルシウムオーバーロードを減らす。
【0006】
組織はまた虚血性の前提条件づけによっても、虚血/再灌流の傷害から保護され得る。虚血性前提条件は、虚血耐性の急速な発生を生じる、短期の先行性虚血とそれに続く再灌流より引き起こされる。この、30分から2時間持続し、かつ心筋組織においての、虚血耐性の急性前提条件は、昏倒の減少レベルではなく、梗塞の大きさの縮少、および心室不整脈の発生率の減少により特徴づけられる(Elliott,J.Mol.Cell Cardiol.,30(1):3−17(1998))。起こる急性前提条件の消失の後に、たとえさらなる前提条件の虚血の期間がなくても、虚血耐性の遅発性前提条件は12から24時間後に現れ、そして72時間まで持続する。心筋梗塞に対する前提条件保護の相の遅延の間に、昏倒および不整脈は多様な種において報告されている。
【0007】
虚血/再灌流に直面する前提条件づけされた心筋層の特徴は、いくつかのモデルにおけるアデノシン三リン酸(ATP)の蓄積、細胞内アシドーシスの減弱、および筋細胞内カルシウム負荷の減少が挙げられる。虚血の間に心筋層によって放出されることが公知である特定の化学薬剤は、急性および遅発性虚血耐性を誘導し、そして心臓保護を提供することが示された。例えば、急性前提条件を誘導し、かつATP依存性カリウム(KATP)チャネルシグナル伝達経路を経由する虚血性傷害から保護すると思われる、アデノシン、ブラジキニン(bradykinin)およびアヘン剤受容体アゴニストである。ビマカリン(bimakalim)という薬剤(KATP依存性カリウムチャネルを開口することが公知)はまた、梗塞の大きさを制限することが示された(Mizumuraら,Circulation,92:1236−1245(1995))。モノホスホリルリピッドA(monophosphoryl lipid A(MLA))は虚血組織への非可逆的および可逆的損傷を防ぐ(Elliot 米国特許第5,286,718号)。モノホスホリルリピッドAは、リポ多糖体(LPS)の活性基本構造要素であるリピッドAを解毒した誘導体である。LPSまたはエンドトキシンは、グラム陰性細菌の多くの株によって産生される強力な免疫調整剤(immunomodulator)である。虚血に先立ちLPSを用いる前処置は、心筋機能を強める心筋カタラーゼ活性を増すことが示された(Brownら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86(7):2516−2520(1989)、Bensardら,J.Surg.Res.,49(2):126−131(1990))。エンドトキシンはまた、低酸素症の間の肺傷害に対しても保護する(Bergら,J.Appl.Physiol.,68(2):549−553(1990)、Bergら,Soc.Exper.Biol.Med.,167−170(1990))。エンドトキシンの高用量の心臓保護作用は、前処置の際に心筋の酸化的ストレスを誘導し、それにより、虚血に関連する第二の酸化的ストレスから保護するための、この「毒素」の能力に関連するようである(Maulikら,Am.J.Physiol.,269:C907−C916(1995))。しかしながら、LPSは非常に有毒である。MLAはLPSの毒性を陰性にするように構造的に改変されている。MLAは、一酸化窒素シンターゼ(これは心臓保護的なATP依存性カリウムチャネル(KATP)の開口状態(open−state)の確率を増すことを導く)の産生誘導によって、虚血/再灌流に起因する傷害から保護する。MLAにより引き起こされた一酸化窒素のバーストはまた、さらなる傷害から患者を保護するために虚血後領域に入る炎症性好中球数の減少を導き得る。エンドトキシンとは対照的に、MLAは心臓保護的用量において、心筋の酸化的ストレスを誘導しないようである。
【0008】
しかしながら、虚血/再灌流傷害のための現在の処置は、欠点を伴う。活性であることが公知の薬剤の多くは、広範囲の臨床的適用性を持たず、有効性が制限されており、および/または投薬が制限される用量を持ち、そして、それにより、心臓における虚血/再灌流傷害を回復するための、これらの用途が制限されている。エンドトキシンは心臓保護的用量で、そのシステムに対して強い毒性を持つ。一方、非毒性(non−toxic)MLAは、多くの生物的産物を用いる場合と同様にS.Minnesota発酵によって製造され、そして脂肪酸鎖の長さの変化に伴って脂肪酸置換パターンが変化する、多くの同属種分子の複合物または混合物として存在する。
【0009】
エンドトキシンとの比較において、MLAは心臓保護的用量では非毒性であるが、たとえ投薬量限度(dose−limiting)でなくても、MLAは標的用量範囲内で軽度の一過性の発熱およびインフルエンザのような症状を引き起こしうる。それ故、虚血/再灌流の有害効果の防止、および回復において、安全、有効性であり、かつ広い臨床適用性をもつ新組成物が要求されていることは、上述から明らかである。非毒性、非発熱性であり、化学合成によって産生され、そして組成物の一つの定義された分子構造の組成物は、この用途に対する利便性を証明する。より具体的には、組織選択的または特定の様式において、一酸化窒素シグナル伝達を誘導または活性化する組成物が要求されており、そこではこの化合物が、マクロファージ/単球レベルでの前炎症性サイトカインまたはNOの誘導を伴わず、かつ発熱作用を伴わずに、標的組織において一酸化窒素(NO)をアップレギュレートさせる。驚くべきことに、本発明はこのような化合物を提供する。
【0010】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は一酸化窒素によって媒介される疾患または状態(特に虚血および再灌流傷害)を処置するための方法を提供する。この方法は、このような処置を必要とする被験体に、以下の式:
【0011】
【化13】
を有する化合物およびこの薬学的に受容可能な塩の有効量を投与する工程を包含し、ここでXは−O−または−NH−であり;R1およびR2はそれぞれ独立して(C2−C24)アシル基、(飽和、不飽和および分枝型アシル基を含む)であり;R3は−Hまたは−PO3R11R12であり、ここでR11およびR12は、それぞれ独立して−Hまたは(C1−C4)アルキルであり;R4は−H、−CH3、または−PO3R13R14であり、ここでR13およびR14は、それぞれ独立して−Hまたは(C1−C4)アルキルから選択され;そしてYは以下の化学式
【0012】
【化14】
から選択されるラジカルである。
ここで下付き文字n、m、pおよびqはそれぞれ独立して0〜6の整数であり;
R5は(C2−C24)アシル基(上記と同様に、飽和、不飽和および分枝型アシル基を含む)であり;R6およびR7は、HおよびCH3から独立してに選択され;R8およびR9は、H、OH、(C1−C4)アルコキシ、−PO3H2、−OPO3H2、−SO3H、−OSO3H、−NR15R16、−SR15、−CN、−NO2、−CHO、−CO2R15、および−CONR15R16から独立して選択され、ここでR15およびR16は、Hおよび(C1−C4)アルキルからそれぞれ独立して選択され;R10は、H、CH3、−PO3H2、ω−ホスホノオキシ(phosphonooxy)(C2−C24)アルキル、およびω−カルボキシ(C1−C24)アルキルから選択され;そして、Zは−O−または−S−であり;但し、R3が−PO3R11R12の場合、R4は−PO3R13R14以外である。
【0013】
本発明はまた、本発明の方法において使用され得る化合物、および上の一般式の化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0014】
(発明の詳細な説明および好ましい実施形態)
(定義)
用語「アルキル」は、これ自身または他の置換基の一部として、そうでないと示されなければ、直鎖または分枝鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはその組み合わせを意味し、これは完全飽和、モノ飽和またはポリ飽和であり得、かつ指定された炭素原子数を持つ(すなわち、C1−C10は1から10の炭素を意味する)二価および多価のラジカルを含み得る。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどのホモログおよびアイソマーなどの基が挙げられる。不飽和アルキル群は、1つ以上の二重結合または三重結合を有する基である。不飽和アルキル群の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジニエル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−プロピニルおよび3−プロピニル、3−ブチニル、および、より高次のホモログおよびアイソマーが挙げられる。典型的には、アルキル基は、1〜24の炭素原子を有する。「低級アルキル」は、一般的に8以下の炭素原子を有する鎖のより短いアルキル基である。
【0015】
用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキオチオ」(またはチオアルコキシ)は、これらの従来の意味において使用され、そして、それぞれに、酸素原子、アミノ基、硫黄原子を介して分子残部と結合する、このようなアルキル基をいう。
【0016】
用語「アシル」はヒドロキシ基の除去によって有機酸から誘導される基をいう。アシル基の例としては、アセチル、プロピオニル、ドデカノイル、テトラデカノイル、イソブチリルなどが挙げられる。従って、用語「アシル」は、別に−C(O)−アルキルとして定義された基を含むことを意味する。
【0017】
それぞれの上記用語(例えば、「アルキル」、「アシル」)は、示されたラジカルの置換型形態および非置換型形態の両方を含むことを意味する。ラジカルの各タイプについての好ましい置換基は、以下に示す。
【0018】
アルキルおよびアシルラジカルについての置換基は以下:−OR’、=O,=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)2R’、−NH−C(NH2)=NH、−NR’C(NH2)=NH、−NHC(NH2)=NR’、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R’’、−CN、および−NO2、(0から(2m’+1)の範囲の数において)から選択される多様な基であり得、m’はこのようなラジカルにおいて炭素原子の総数である。それぞれ独立してR’、R’’、およびR’’’は、水素および非置換型(C1〜C8)アルキルをいう。R’およびR’’が同じ窒素原子に結合する場合、これらは、窒素原子と結合して、5−、6−、または7−員環を形成する。例えば、−NR’R’’は1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味している。上述の置換基の議論から、当業者は、用語「アルキル」がハロアルキル(例えば、−CF3および−CF2CF3)などのような基を含むことを意味することを理解する。
【0019】
用語「薬学的に受容可能な塩」は本明細書中に記載の化合物上に見出される特定置換基に依存して、比較的非毒性の酸または塩基で調製される活性化合物塩を含むことを意味している。本発明の化合物が比較的に酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩は、このような化合物の中性形態と、希釈していない(neat)かまたは適切な不活性溶媒中のいずれかの十分な量の所望された塩基とを接触させることによって得られ得る。薬学的に受容可能な塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニア、有機アミノ、またはマグネシウムの塩、あるいは類似の塩が挙げられる。本発明の化合物が、比較的に塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、このような化合物の中性形態と、希釈していないかまたは適切な不活性溶媒中のいずれかの十分な量の所望された酸とを接触させることによって得られ得る。薬学的に受容可能な酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸酸、炭酸酸、炭酸水素酸、リン酸、一リン酸水素酸、二リン酸水素酸、硫酸、亜硫酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などのような無機酸から誘導されたもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソブチル酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、琥珀酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような、比較的非毒性の有機酸から誘導された塩が挙げられる。また、アルギン酸のようなアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などのような有機酸の塩も含む(例えば、Berge,S.M.ら、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science,1977,66,1−19を参照)。本発明の特定化合物は、塩基性官能基または酸性官能基の両方を含んでおり、この官能基は、化合物が塩基付加塩または酸性付加塩の、どちらかに変換される。
【0020】
中性形態の化合物は、従来の様式において、その塩を塩基または酸と接触させること、および親化合物を単離することによって再生され得る。親形態の化合物は、特定の物質的性質(例えば、極性溶媒における可溶性)が種々の塩形態とは異なるが、そうでなければ、この塩は、本発明の目的のための親形態の化合物と等価である。
【0021】
塩形態に加えて、本発明はプロドラッグ型の化合物を提供する。本明細書中に記載された化合物のプロドラッグとは、本発明の化合物を提供するために、生理学的条件下で容易に化学変化を受ける化合物である。さらに、プロドラッグは、エキソビボの環境において、化学的または生化学的方法によって、本発明の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、適切な酵素または化学試薬とともに経皮パッチリザーバ(patch reservoir)中に置かれると、本発明の化合物にゆっくりと変換され得る。
【0022】
本発明の特定化合物は、非溶媒和形態(unsolvated form)、および水和形態を含む溶媒和形態において存在し得る。一般的に、溶媒和形態は非溶媒和形態と等価であり、そして本発明の範囲内に含まれることを意図している。本発明の特定化合物は、複数の結晶形態または非晶質形態で存在し得る。一般的に、全ての物理的形態は本発明によって意図された用途と同等であり、かつ本発明の範囲内であることが意図される。
【0023】
本発明の特定化合物は、非対称性炭素原子(光学的中心)または二重結合を保有する:ラセミ化合物、ジアステレオマー、幾何異性体、および個々のアイソマーは、全て本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0024】
本発明の化合物はまた、このような化合物を構成する1つ以上の原子において、天然でない割合の原子アイソトープを含み得る。例えば、この化合物は、放射活性アイソトープ(例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素−125(125I)、または炭素−14(14C))によって放射性標識され得る。全ての本発明の化合物のアイソトープバリエーションは、放射活性であっても、また放射活性でなくても、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0025】
(概説)
一般に、iNOSの遺伝子転写およびタンパク質合成の誘導物質は、動物およびヒトにおいて、前炎症性であり、そして、それにより幾分か「毒性」である、またはあまり寛容性ではない。エンドトキシン(LPS)ならびにIL−1、TNF、およびIFN−γなどの前炎症性サイトカインが、公知のiNOS誘導物質である。これら全ては動物に投与した場合、本質的に毒性であり、かつ全身性炎症性応答、成体呼吸窮迫症候群、多臓器不全、および心臓血管虚脱を誘導し得る。
【0026】
モノホスホリルリピッドAは、リピッドA(LPS)の構造誘導体であり、リピッドAに対して改良された治療用指標を持つ。この化合物は、体温上昇、インフルエンザ様症状、心拍数の増加および血圧の軽度の低下が、いくらかの患者において1kgあたり10μg以上の用量レベルで生じ得るが、少なくとも20μg/kgまでの用量の場合、ヒトに対して安全に投与され得る。細胞培養および動物評価により、モノホスホリルリピッドA(MPL(登録商標)免疫刺激物質(immunostimulant)として市販されている)が、より高い用量レベルではあるが、発熱性、ならびにTNFおよびIL−8などの前炎症性サイトカインを誘導する能力を保持するという点で、親LPSのいくらかの免疫刺激活性をなお保持することが確認される。
【0027】
MPL(登録商標)の心臓保護的活性の調査は、一酸化窒素シンターゼの誘導(induction of nitric oxide synthases)(iNOS)が、この化合物の遅延性心臓保護作用に重要であることを証明した。さらに、一酸化窒素(NO)シグナル伝達は、おそらくNOSの構成的プールを通して、この化合物の急性心臓保護作用に重要である。MPL(登録商標)の残存性エンドトキシン様活性を考慮すると、この化合物が一酸化窒素シグナル伝達をし得ることは驚くべきことではない。またさらに、一酸化窒素シグナル伝達は、虚血の前提条件づけが、心臓保護を誘発する潜在的経路として、示唆されている。この観察は、一酸化窒素ドナーが心臓保護的であるという事実と合わせて、MPL(登録商標)心臓保護の系路として、NOS/NO経路のさらなる支持を提供する。
【0028】
対照的に、別の糖脂質、RC−552は、感知されるほどのエンドトキシン活性を伴わずに心臓保護活性を示す。例えば、RC−552は、MPL(登録商標)が1kgあたり約10−15μgで発熱を引き起こす同じ処方で、ウサギにおいて1kgあたり1000μgまでの用量で発熱を誘発しない。さらに、MPL(登録商標)およびLPSの両方とは対照的に、RC−552は、1mlあたり10,000μgまでの濃度で、ヒト骨髄単球細胞株THP−1からTNFも、IL−1も、IL−8も誘発しない。マウスマクロファージ細胞株J774から亜硝酸生成(iNOS誘導の尺度)を誘発させるために、単球をMPL(登録商標)およびRC−552に4時間曝露し、その後約20時間薬物フリーでインキュベーションした後のMPL(登録商標)およびRC−552の評価は、MPL(登録商標)が約40−80ng/mLのED50で活性であり、一方RC−552は約720−1200ng/mLの名目上のED50で本質的に不活性であることを示す。
【0029】
それ故、RC−552は単球細胞株において、重大な免疫刺激活性(残存エンドトキシン)活性を伴わず、かつiNOSを誘導しない。従って、RC−552は、J774のような単球/マクロファージ細胞株において免疫刺激活性およびiNOS誘導能力を欠いているが、一酸化窒素依存性経路により心臓保護的であるという点で、MPL(登録商標)、ならびに多様な他の合成単糖類および二糖類との比較において特有なプロフィールを有する。
【0030】
他の調査はまたRC−552で達成された前提条件の効果が、誘導形態の一酸化窒素シンターゼ(inducible form of nitric oxide synthases(iNOS))の誘導を通して産生される一酸化窒素レベルの増加に起因する。Xiら,Am.J.Physiol.277(6Pt2):H2418−H2424(1999)を参照。
【0031】
これらの観察は、MPLまたはLPSでは明らかでないRC−552に対する組織選択性または特異性を示唆する。
【0032】
本発明は、同様の特性(低発熱性および低サイトカイン誘導活性)を有し、そしてこの特性は虚血および再灌流傷害、あるいは一酸化窒素によって変化される他の疾患または状態の処置において有用である他の糖脂質化合物、および組成物を提供する。この一酸化窒素によって変化される他の疾患または状態の処置としては、血管緊張(例えば、血管痙攣、肺高血圧、全身性高血圧、インポテンス、脱毛、およびうっ血性心不全)、血栓(抗血小板)事象(例えば、一過性虚血発作、間欠性跛行、急性血栓症に関連する心筋梗塞または発作)から生じる状態の調節が挙げられる。さらに、一酸化窒素誘導物質は、血栓崩壊性作用を改良し、そして、前提条件付けの作用に起因する再閉塞、PTCAまたはステント挿入(stenting)後の再狭窄の事象における急性再閉鎖(reclosure)の減少および組織の保護のため、ならびにMIまたは発作を誘導する血栓症を防ぐための血栓崩壊の補助剤として有用であり得る。本明細書中に記載の化合物で処置され得る他の状態は、産科の分野(例えば、子癇前症または子癇を防止または逆転させること、および早期分娩を止めること):冠状および末梢動脈疾患(例えば、動脈硬化および血管痙攣(上述)を減少すること)、肺疾患(例えば、成人呼吸促進症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支痙攣(ぜん息))、敗血症性ショックおよび多臓器不全の抑制、ならびに胸の手術に関連する低酸素血にある。最終的に、本明細書中に記載の特定化合物は、細胞保護における使用が見出される(例えば、アポトーシスの阻害、移植、心筋梗塞、手術、発作、および血栓症と関連した任意の臓器における虚血/再灌流傷害の減少、ならびにアルツハイマーおよび虚血性痴呆)。
【0033】
一方、本発明の特定化合物は、アジュバントおよび免疫エフェクター(WO98/50399参照)として記載されるが、この活性と化合物の能力(単球/マクロファージ以外の細胞または組織で一酸化窒素の産生を誘導する)との間の相関は以前に記載されていない。
【0034】
(化合物および組成物)
1つの局面において、本発明は以下の化学式を有する化合物:
【0035】
【化15】
およびこの薬学的に受容可能な塩を提供する。ここでXは−O−または−NH−であり;R1およびR2はそれぞれ独立して(C2−C24)アシル基、(飽和、不飽和および分枝型アシル基を含む)であり;R3は−Hまたは−PO3R11R12であり、ここでR11およびR12は、それぞれ独立して−Hまたは(C1−C4)アルキルであり;R4は−H、−CH3、または−PO3R13R14であり、ここでR13およびR14は、それぞれ独立して−Hまたは(C1−C4)アルキルから選択され;そしてYは以下の化学式
【0036】
【化16】
から選択されるラジカルである。
ここで下付き文字n、m、pおよびqはそれぞれ独立して0〜6の整数であり;R5は(C2−C24)アシル基(上記と同様に、飽和、不飽和および分枝型アシル基を含む)であり;R6およびR7は、HおよびCH3から独立してに選択され;R8およびR9は、H、OH、(C1−C4)アルコキシ、−PO3H2、−OPO3H2、−SO3H、−OSO3H、−NR15R16、−SR15、−CN、−NO2、−CHO、−CO2R15、および−CONR15R16から独立して選択され、ここでR15およびR16は、Hおよび(C1−C4)アルキルからそれぞれ独立して選択され;R10は、H、CH3、−PO3H2、ω−ホスホノオキシ(phosphonooxy)(C2−C24)アルキル、およびω−カルボキシ(C1−C24)アルキルから選択され;そして、Zは−O−または−S−であり;但し、R3が−PO3R11R12の場合、R4は−PO3R13R14以外である。
【0037】
さらに、R3が−PO3H2の場合、R4はHであり、R10はHであり、R1はn−テトラデカノイルであり、R2はn−オクタデカノイルであり、そしてR5はn−ヘキサデカノイルであり、そのときXは−O−以外である。
【0038】
上記の一般式において、直鎖状脂肪酸アシル残基が結合する3’立体中心の立体配置は、RまたはSであるが、好ましくはRである。R6およびR7が結合する炭素原子の立体化学はRまたはSであり得る。全ての立体異性体、光学異性体、ジアステレオマー、およびこれらの混合物は、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0039】
好ましい実施形態の1群において、Yは以下の化学式である:
【0040】
【化17】
この群の実施形態では、アシル基R1、R2、およびR5は、これらの基のうち少なくとも2つが(C2−C6)アシルであるように選択される。さらに好ましくは、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数が約6〜約22であり、より好ましくは約12〜約18の実施形態である。他の好ましい実施形態において、XはOであり、ZはOである。下付き字のn、m、pおよびqは、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2である。残りの置換基のうちR6およびR7は、好ましくはHである。本発明は、好ましい置換基が1つの分子と結合される、これらの実施形態をさらに意図する。
【0041】
実施形態の他の群において、R1、R2、およびR5は(C12−C20)アシルから選択され、但し、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数は約44〜約60である。より好ましくは、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数は約46〜約52である。XおよびZが両方とも−O−である、これらの実施形態がさらに好ましい。
【0042】
より好ましい実施形態の他の群において、Yは以下の式である:
【0043】
【化18】
上述されたより好ましい実施形態の群と同じように、この群においてアシル基R1、R2、およびR5はまた、これらの基のうちの少なくとも2つが(C2−C6)アシルであるように選択される。R1、R2、およびR5における炭素原子の総数が約6〜約22である、これらの実施形態がさらに好ましく、より好ましくは約12〜約18である。他の好ましい実施形態において、XはOである。残りの置換基のうち、R3は、好ましくはホスホノ(phosphono)(−PO3H2)であり、そしてR4は好ましくはHである。本発明は、好ましい置換基の多様な組合せが1つの分子で結合される、これらの実施形態をさらに意図する。
【0044】
実施形態の別の群において、R1、R2、およびR5は(C12−C24)アシル(但し、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数は約44〜約60である)から選択される。より好ましくは、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数は約46〜約52である。特に好ましいR1、R2、およびR5の脂肪酸基は、直鎖状C14、C16、およびC18脂肪酸基である。Xが−O−の実施形態がさらに好ましい。上述のより短いアシル鎖の実施形態と類似して、R3は、好ましくはホスホノ(−PO3H2)であり、そしてR4は好ましくはHである。
【0045】
本発明の最も好ましい実施形態において、Yは化学式(Ib)のラジカルであり、XはOであり、R3はホスホノであり、R4はHであり、そしてR1、R2、およびR5は(C12−C24)アシルから選択される(但し、R1、R2、およびR5における炭素原子の総数は約46〜約52である)。R2が(C16−C18)アシルのこれら化合物がさらに好ましい。
【0046】
(化合物の調製)
本発明において有用な特定化合物は、同時系属の出願番号08/853,826号、09/439,839号(1999年11月12日出願)およびPCT/US98/09385において記載されている。他の化合物は、米国特許第6,013,640号におけるRC−552(L34)について記載される様式と類似の様式で調製され得る。また他の化合物は、Johnsonら、J.Med.Chem.42:4640−4649(1999)、Johnsonら、Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2273−2278(1999)、およびPCT/US98/50399において概説される方法を用いて調製され得る。一般的に、上述の参照文献において記載された合成方法は、異なるアシル基および置換基を有する化合物の調製に広く適用し得る。当業者は、本明細書中に記載の相似した方法が、別のアシル化薬剤を用いるために改変され得るか、または適当なアシル基が結合した市販の入手可能な物質で開始され得ることを理解する。
【0047】
(化合物の評価)
本明細書に提供される化合物は、適度なファルマコフォリック(pharmacophoric)プロフィールを持つ化合物を選択するために種々のアッセイフォーマットにおいて評価され得る。例えば、米国特許第6,013,640号は、本明細書に記載の化合物の心臓保護的作用を評価するために適切な動物モデルを記載する。下記の実施例もまた、本発明の化合物の発熱性を評価するアッセイ、および化合物の前炎症性作用を評価するさらなるアッセイを提供する。
【0048】
本発明は、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアの混合物において、本明細書に提供される化合物を含む薬学的組成物をさらに提供する。適切なキャリアは、投与経路とともに処置されている状況に依存する。従って、キャリアの議論は、使用方法とともに下記に提供される。
【0049】
(使用方法)
本発明のホスホグリコリピッドは、例えば、虚血/再灌流傷害に起因する心臓組織(しかし制限されない)ような代謝性の活性組織に対する損傷を回復させることにおいて有用である。酸素が枯渇した場合、組織は最初に虚血の間に損傷される。虚血の間の酸素の枯渇は、細胞壊死を引き起こす。酸素の枯渇はまた、再灌流でのフリーラジカル産生、補体経路の活性化、血管接着分子のアップレギュレーション、および炎症性サイトカインの産生の増加を導く。本明細書中に提供された化合物は、虚血の間の酸素の枯渇から組織を保護する。本発明の化合物がまた、全ての型の低酸素症または貧血、続いて再酸素負荷を経験する組織を保護し得ることは、当業者に明らかである。
【0050】
付加的な損傷および細胞死は、再灌流による組織への酸素の再導入の際に起こることが示唆されている。再灌流の間に生じたフリーラジカルは細胞死を促進する。細胞に対するフリーラジカル損傷は、カルシウムオーバーロードおよび多様な酵素システム(おそらく、一酸化窒素の産生の減少を引き起こし、好中球の接着の増加を導く一酸化窒素シンターゼを含む)の活性の減少を生じる。本発明の化合物の心臓保護的作用は、アミノグアニジン、誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)またはL−NAMEの選択的インヒビター、構造性および誘導性NOS異性体の非選択的インヒビターによって阻止され得る。この薬物の投与は、イヌにおいてRC−552の遅発性心臓保護的作用を阻止し、このことは、本発明の化合物の作用の、一酸化窒素に関連する機序を示唆する。iNOSノックアウトマウスおよび類似の野生型マウスにおいて実施された実験は、RC−552の遅発性心臓保護的作用における、iNOSの誘導およびNOシグナル伝達の役割が確認された。
【0051】
好中球は、虚血後組織に生じる損傷性炎症反応において有益である。好中球は虚血部位にC5aおよび5b(補体フラグメント)、サイトカインおよびケモカイン(細胞に対して化学走性である)によって呼びよせられる。活性好中球は上皮細胞に接着し、そしてこれらは単球を殺す場所である上皮性バリアを横切って遊走する。上皮性バリアを横切る炎症性好中球の接着および血管外遊出は、上皮表面および好中球の両方の接着分子のアップレギュレートに依存する。虚血組織によって産生されたIL−6などのサイトカインは、接着分子のアップレギュレートに重要なことが示されている。本発明の好ましい化合物は、これらが保護的レベルにおいて、前炎症性サイトカイン(NOSおよびNO合成のよく認識された誘導物質)を誘導しないか、または発熱がNO依存性機序を介する虚血/再灌流に起因する損傷の回復になお有効である点で特徴的である。
【0052】
臨床状況において、予想されるまたは予期されない虚血性事象が起こる。虚血性事象を引き起こす計画的手術は、冠状動脈バイパス手術、心臓弁交換、心臓血管形成、心室中隔修復、主要血管クロス−クランピング(cross−clamping)を伴う手術、形成手術、皮弁トランスロケーション(translocation)、筋形成、器官または組織の移植、大動脈の動脈瘤修復、あるいは腸の切除を含む。組織は、心筋梗塞、発作、溺死、腸梗塞、ならびに外傷性切断および再付着のような非計画的な事象の間に、酸素の枯渇を起こし得る。予期しないことに、本発明のホスホグリコリピッド化合物は、虚血組織に対して急性保護および遅発性保護の両方を提供する。さらに、急性保護作用の期間は、ボーラス用量後の薬物の注入によって延長され得る。
【0053】
本明細書中に提供される化合物は、患者にこの化合物を投与して数分以内に、虚血組織に対する保護作用を示す。例えば、心性虚血の10分前に試験動物に、本発明の化合物を投与することは、試験される動物における梗塞の大きさ、不整脈および昏倒の減少によって示される保護を誘導し得る。この即効または急性の保護作用は、やがて分散または衰弱する。しかしながら、遅発性保護作用はこの薬剤の投与後、おおよそ24時間のようである。遅発性保護は、例えば、動物がRC−552を用いて心性虚血の約24時間前に試験された場合に、梗塞の大きさおよび昏倒の減少によって例証されるように、犬およびうさぎで明らかであった。この化合物によって提供される虚血組織に対する保護は、2つの異なった保護期間(急性保護期間および遅発性保護期間)を提供する二相性である。RC−552(L34)の急性保護作用は、ボーラス投与直後のこの薬物の注入によって、少なくとも3時間延長され得、臨床医が急性および遅発性の保護期間の間の差を埋めることを可能にする。本明細書中に提供される化合物はまた、酸素の枯渇する事象の発生に対して十分な投薬が不可能な、緊急および外傷性の状態において、うまく使用され得るという点で、有利である。さらに、この化合物によって提供される遅発性保護作用は、虚血性事象が単一用量投与して一日後においてでさえ起こり得る状況において、この薬剤を有益にする。
【0054】
虚血性損傷に対する保護の方法において、本明細書中に提供される化合物は、注射、吸入または鼻腔内、直腸、膣もしくは点眼、あるいは摂取のための薬学的に受容可能なキャリアとともに処方され得る。本明細書中で使用されるように、「薬学的に受容可能なキャリア」は、活性成分の生物学的活性を妨げず、かつこれが投与された患者に対して非毒性である媒体を意味する。薬学的に受容可能なキャリアは水中油型または油中水型乳濁液、静脈内(IV)使用に適する有機的共溶媒を伴うまたは伴わない水性の組成物、リポソームまたは界面活性剤を含む小胞、マイクロビーズおよびマイクロソーム、粉剤、錠剤、カプセル剤、坐薬、あるいは水性の懸濁液およびエアロゾルを含む。
【0055】
非経口(すなわち、腹腔内、皮下、筋内または静脈内)に投与され得る本化合物の処方物は、以下の好ましいキャリアを含む。静脈内使用のための、好ましいキャリアの1つの例としては、10%USPエタノール、40%USPプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール600および平衡USP注射用水(the balance USP Water for Injection)(WFI)の混合物が挙げられる。他の受容可能なキャリアとしては、10%USPエタノールおよびUSP WFI;USP WFI中に0.01〜0.1%トリエタノールアミン;またはUSP WFI中に、0.01〜0.2%ジパルミトイルジホスファチジルコリン;および1〜10%スクアレンまたは非経口の水中植物油型乳濁液が挙げられる。薬学的に受容可能な非経口溶媒は、活性成分の除去を伴わうことなく0.22ミクロンフィルターを通して濾過され得る溶液または分散物を提供するものである。
【0056】
皮下または筋内での使用のための、好ましいキャリアの例としては、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、WFI中に5%デキストロースおよび5%デキストロース中に0.01〜0.1%トリエタノールアミンまたはUSP WFI中に0.9%塩化ナトリウム、あるいは10%USPエタノールの1:2または1:4の混合物、40%プロピレングリコールおよび5%デキストロースまたは0.9%塩化ナトリウムのような受容可能な等張性溶液;あるいはUSP WFI中に0.01〜0.2%ジパルミトイルジホスファチジルコリンおよび1〜10%スクアレンまたは非経口の水中植物油型乳濁液が挙げられる。
【0057】
粘膜表面を介した投与のキャリアの例としては、特定の経路に依存する。経口的投与の場合、例としては、薬剤グレードのマンニトール、スターチ、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、サッカライドナトリウム(sodium saccharide)、セルロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられ、好ましくはマンニトールである。鼻腔内投与の場合、ポリエチレングリコール、ホスホリピッド、グリコールおよびグリコリピッド、スクロース、および/またはメチルセルロース、ラクトースのような充填剤を伴うもしくは伴わない粉剤懸濁物および塩化ベンザアルコニウム、EDTAのような防腐剤が使用され得る。特に好ましい実施形態において、ポスポリピッド1,2ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)は、0.1〜3.0mg/ml濃度の本発明の化合物の鼻腔内投与のために、0.01〜0.2%で適切な等張性水性キャリアである。吸入によって投与される場合、適切なキャリアは、ポリエチレングリコールまたはグリコール、DPPC、メチルセルロース、粉末の分散剤、および防腐剤であり、ポリエチレングリコールおよびDPPCが好ましい。
【0058】
本発明の化合物は虚血/再灌流傷害から回復または保護するための「有効量」において個々に投与され得る。本明細書中に使用されるように、「有効量」は、ビヒクルまたはネガティブコントロールを超える応答を示す量である。本発明の化合物が患者に投与される正確な投薬量は、投与の経路、薬学的組成物、および患者に依存する。例えば、ブタに左前室間動脈閉塞(left anterior descending artery occlusion)後の梗塞の大きさを縮小するために、静脈内投与した場合、化合物の使用量は1kgあたり約1〜約1000マイクログラムであり、好ましくは1kgあたり約10〜約300マイクログラムであり、かつ最も好ましくは体重1kgあたり約35〜約100マイクログラムである。同様に、少なくとも一部分が一酸化窒素レベルによって媒介される、他の状態の処置のために適切な有効量は、標準プロトコルに従い臨床医によって決定され得る。
【0059】
(実施例)
以下の実施例において、心筋梗塞、前炎症性サイトカイン生産、発熱性およびiNOS誘導(骨髄単球細胞において)に対するRC−552の作用が証明される。本明細書中に提供される他の化合物は類似の特徴(例示的データを以下に提供した)を示す。
【0060】
(実施例1)
この実施例は本明細書中に記載の化合物を用いて達成され得る作用を説明する。この実施例は、ブタの梗塞の研究においてRC−552を使用する。
【0061】
一酸化窒素の役割を、RC−552投与(エタノール/プロピレングリコール処方物中)の前に、Nω−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME、一酸化窒素シンターゼの非特異的インヒビター)の投与によって評価した。最初の実験は、L−NAMEの最適用量、具体的には、血流力学を変化させず梗塞の発生を干渉または悪化もさせないが、RC−552の心臓保護的作用を潜在的に阻害する特定の用量の投与を含む。RC−552または小胞の投薬30分前、(LAD閉塞40分前)に投与された0.5mg/kgの用量のL−NAMEは最適なことが見出された。
【0062】
ブタを以下の5群の1つに無作為化された盲検様式(randomized blinded fashion)で割り当てた:1)LAD閉塞40分前に、1kgあたり0.5mgのL−NAMEを投与した;2)1kgあたり29μgのボーラス(RC−552の静脈内用量)の30分前に、1kgあたり0.5mgのL−NAMEを投与した;3)体重に見合うように調整された溶量のボーラス用量の小胞38.8μL/kgの30分前に、1kgあたり0.5mgのL−NAMEを投与した;4)LAD閉塞10分前に、1kgあたり29μgのボーラス用量のRC−552を投与した;および5)LAD閉塞10分前に、ボーラス用量の小胞(38.8μL/kg)を投与した。総計35匹のブタをこの研究に登録した:群1に8匹;群2に10匹;群3に7匹;群4に7匹;群5に3匹。データを分析した場合、2つのL−NAMEコントロール群(1および3)による梗塞の大きさの結果を、合わせた。さらに、閉塞10分前にRC−552または小胞を用いて処置した前述の研究のブタによる梗塞の大きさの結果は、群4および5にそれぞれ加えられた。
【0063】
図1に示すように、梗塞の大きさは、小胞で前処置したブタにおいて平均28.9±5.0%から、虚血10分前にRC−552を処置したブタにおいて14.2±3.0%へと、50%縮小した。RC−552の30分前のL−NAMEの投与は、L−NAME単独およびL−NAME+小胞の組合わせた群に対して、平均の梗塞の大きさ40.2±4.4%対36.9±3.7%という結果を生じた。小胞単独、L−NAME+RC−552およびL−NAME+小胞で処置した群の間に有意差はなかった。この結果は、RC−552によって誘導される急性心臓保護作用における一酸化窒素合成酵素の役割を示す。
【0064】
(実施例2)
この実施例はヒト骨髄単球細胞株THP−1から前炎症性サイトカイン生産に対する多様な糖脂質の作用を説明する。
【0065】
(方法)
ヒト骨髄単球細胞株THP−1(ATCC)を前炎症性サイトカインを誘導するための糖脂質の能力を評価するために使用した。糖脂質はTHP−1の細胞懸濁液に、注射用水中に10%エタノールを含む水溶液として加えた。4時間の誘導に先立って、THP−1細胞を10−7MビタミンD3とともに一晩プレインキュベートし、3度洗浄し、そしてMPL(登録商標)、LPS、または合成化合物の存在下で再プレートした。糖脂質と細胞とを共に4時間インキュベートした後、薬物を含む培地を取り除き、細胞を新鮮な培地中に再懸濁し、そして20時間静置した。
【0066】
(結果)
RC−552は、ポジティブコントロールLPS(1ng/mLでTHP−1細胞からのTNF分泌に効果的な刺激物質)とは対照的に、10,000μg/mLの濃度の組織培養でさえ、発熱/前炎症性サイトカインTNFの分泌を誘導できなかった。MPL(登録商標)は100〜10,000ng/mLの範囲の濃度においてTNF誘導に効果的であった。
【0067】
IL−8生産の評価は、IL−8生産の強力な誘導剤であるLPS(1〜10ng/mL)およびサイトカイン放出を促すMPL(登録商標)(100〜10,000ng/mL)において観察されるのと同様の傾向が示された。RC−552は10,000ng/mLの濃度でさえ、バックグラウンドを超えるIL−8の分泌を刺激できなかった。
【0068】
IL−1Bの分泌はLPS(1〜10ng/mL)によって誘導されたが、RC−552(10,000ng/mLまで)によって誘導されなかった。
【0069】
(実施例3)
この実施例は、ウサギ、イヌおよびラットの体温に対するRC−552の作用を説明する。
【0070】
モノホスホリルリピッドAを用いた臨床試験において、発熱は一般に最初の副作用として観察された。モノホスホリルピッドAの多様な処方物の静脈内投与の臨床的研究において、軽度の発熱、インフルエンザ様症状および血圧の変化は、最大耐性用量を確立する副作用と思われる。体重に見合うように調整された発熱性モノホスホリルリピッドAの最小用量は、USPのウサギにおける発熱試験で決定されるように、ヒトにおいて観察される結果に十分一致する。3匹のウサギに対するUSPウサギ発熱試験において実施されたRC−552(USP WFI中に10%エタノール)のある処方物の発熱性評価は、この製品が少なくとも1,000μg/kgまでの静脈内用量で、非発熱性(0.35℃未満の平均温度の上昇)であることを示す。対照的に、モノホスホリルリピッドAは約15μg/kgの静脈内用量で発熱性(約0.5℃の温度上昇)である。ラットおよびイヌにおいてRC−552を用いた同様の研究は、3000μg/kgまでの静脈内用量で、温度の上昇は認められないことを示した。
【0071】
(実施例4)
この実施例は、J774マウスマクロファージにおけるiNOS誘導に対する多様な糖脂質の作用を説明する。
【0072】
(方法)
マウスマクロファージ細胞株J774は、インビトロでIFN−γによって感作され得、そしてその後の標準的なGreiss試薬ELISAアッセイ手順によって測定されるiNOSアップレギュレーションのLPS刺激に、非常に応答性である。このアッセイは、30mL/フラスコで、100ユニット/mLのIFN−γを16〜24時間添加して1x106/mLで播種した、J774細胞を利用する。ついで、細胞を回収および洗浄し、そして96ウェルプレートに1ウェルあたり2x105個で再懸濁し、そして接着させた。糖脂質化合物は、試験群のためにウェル中で段階希釈し、そして、得られる培養は、培養の上清が亜硝酸放出のGreiss試薬分析から採集される前に、別に36〜40時間インキュベートする。亜硝酸含有量はiNOSの機能と密接に対応する。
【0073】
(結果)
RC−552およびMPL(登録商標)を最初に評価した。効力を、培養物において、亜硝酸の1/2最大誘導を導く能力(ED50)である糖脂質の濃度(ng/mL)として決定した。ED50数値が低ければ低いほど、iNOS誘導の効力は高い。
【0074】
MPL(登録商標)は、高レベルの亜硝酸生成を生じる約62ng/mLのED50を有することが見出された。一方、RC−552は約977ng/mLの名目上のED50を示し、観察された最大iNOS活性は非常に低く、このことは、RC−552が、iNOS誘導のためのこの系において、本質的に不活性であることを示唆した。この結果はさらに、心臓保護モデルに対して、J774マクロファージ細胞株において、NOS活性化の結果が相違することを考慮すると、RC−552がNO生合成を促す能力において、細胞特異的または組織特異的であり得ることを示唆する。
【0075】
(実施例5)
この実施例は、RC−552のプロフィールと同様のプロフィールを示す本明細書中に提供される化合物の活性を説明する。下の表において、活性は以下のように表される:iNOS(ED50)++<80;+,80〜200;−>200;発熱性(2.5μg用量),++>2℃;+,1〜2℃;−<1℃;サイトカイン誘導(TNF−α、IL−1β)++,1μg/mLで観察可能;+,1μg/mLで検出されないが、10μg/mLで観察可能;−,10μg/mLで観察不可能。
【0076】
化合物の構造は表の下に提供される。立体化学はR1O−、R2O−、およびR5O−がそれぞれ結合する中心に提供される。
【0077】
【表1】
【0078】
【化19】
【0079】
【化20】
【0080】
【化21】
本発明の好ましい実施形態は、低い発熱性および低い前炎症性サイトカイン誘導能力(単球細胞株でのiNOSの活性にかかわらず)を示しているこれらの化合物である。
【0081】
本発明の他の化合物は、上に記載されるアッセイのうちの1つまたは2つのアッセイにおいて、適切なレベルの活性を提示する。
【0082】
【表2】
【0083】
【化22】
【0084】
【表3】
この明細書で引用された全ての刊行物および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が具体的かつ個々に参考として援用されることが示されたかのように、本明細書中に参考として援用される。前述の発明は、明瞭な理解を目的説明および例示によって幾分詳細に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から離れることなしに、特定の変更および改変が本発明に対して行われ得ることは、本発明の教示に鑑みて当業者に容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、ブタモデル系において、RC−552を用いて達成される梗塞の大きさの縮小を示すグラフである。
Claims (30)
- 被験体において、一酸化窒素産生によって回復される疾患または障害を処置する方法であって、該方法は、被験体と、以下の式の化合物:
ここでXは−O−および−NH−からなる群から選択されるメンバーであり;
R1およびR2は、各メンバーが(C2−C24)アシルからなる群から独立して選択され;
R3は、−Hおよび−PO3R11R12からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR11およびR12は、各メンバーが−Hおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立して選択され;
R4は、−H、−CH3および−PO3R13R14からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR13およびR14は、各メンバーが−Hおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立して選択され;そして
Yは
下付き文字n、m、p、およびqはそれぞれ独立して0〜6の整数であり;
R5は、(C2−C24)アシルであり;
R6およびR7は、HおよびCH3からなる群から独立して選択されるメンバーであり;
R8およびR9は、H、OH、(C1−C4)アルコキシ、−PO3H2、−OPO3H2、−SO3H、−OSO3H、−NR15R16、−SR15、−CN、−NO2、−CHO、−CO2R15、および−CONR15R16からなる群から独立して選択されるメンバーであり、ここでR15およびR16は、各メンバーがHおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立的して選択され;
R10は、H、CH3、−PO3H2、ω−ホスホノオキシ(C2−C24)アルキル、およびω−カルボキシ(C1−C24)アルキルからなる群から選択されるメンバーであり;そして
Zは−O−または−S−であり;
但し、R3が−PO3R11R12の場合、R4は−PO3R13R14以外であり、そしてさらに、但し、R3が−PO3H2の場合、R4はHであり、R10はHであり、R1はn−テトラデカノイルであり、R2はn−オクタデカノイルであり、およびR5はn−ヘキサデカノイルであり、そのときXは−O−以外である、方法。 - 前記R1、R2およびR5のうちの少なくとも2つが(C2−C6)アシルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 前記R1、R2およびR5のうちの2つが(C2−C6)アシルからなる群から選択され、そしてR1、R2およびR5の炭素原子の総数が、約6〜約22である、請求項1に記載の方法。
- 前記R1、R2およびR5のうちの2つが(C2−C6)アシルからなる群から選択され、そしてR1、R2およびR5の炭素原子の総数が、約12〜約18である、請求項1に記載の方法。
- 前記XおよびYがともに−O−である、請求項1に記載の方法。
- 前記R1、R2およびR5が(C12−C24)アシルからなる群からそれぞれ独立して選択され、但し、R1、R2およびR5の炭素原子の総数が、約44〜約60である、請求項1に記載の方法。
- 前記炭素原子の総数が、約46〜約52である、請求項6に記載の方法。
- XおよびZがともに−O−である、請求項6に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記化合物が前記動物に、虚血発症の約48時間前から虚血発生までの期間に投与される、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記化合物が前記動物に、虚血発症の直前から虚血の間に投与される、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記化合物が前記動物に、虚血発症直前から再灌流の間に投与される、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記化合物が前記動物に、非経口的または経口的に投与される、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記化合物が前記動物に静脈投与される、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記化合物が前記動物にボーラスとして投与される、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記化合物が前記動物に注入によって投与される、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、前記化合物が前記動物にボーラスとして静脈内に、続いて注入により投与される、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、主要血管クロス−クランピングを伴う手術、心臓外科的手順、器官の移植、組織の移植、形成外科手術、筋形成、皮弁トランスロケーション、および腸の切除からなる群、から選択された医療手順の間に起こる虚血に続く再灌流の処置のために、前記化合物が前記動物に投与される、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、心筋梗塞、発作、溺死、腸梗塞、ならびに外傷性肢切断および再接着からなる群から選択される事象の間に起こる虚血に続く再灌流の処置のために、前記化合物が前記動物に投与される、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、血管緊張の調整を含む状態、
その状態は以下、
血栓(抗血小板)事象から生じる状態、妊娠、冠状および末梢動脈疾患、肺疾患、気管支痙攣、胸部手術に関連した低酸素血症、前提条件付け作用、PTCAまたはステント挿入後の再狭窄、敗血症性ショックおよび多臓器不全に起因する再閉鎖の事象において血栓溶解作用の改善し、そして急性の再閉鎖を減少し、そして組織を保護するため、ならびにMIまたは発作を導く血栓症を防ぐための状態、
の処置のために、前記化合物が前記動物に投与される、方法。 - 以下の式を有する化合物:
ここでXは−O−および−NH−からなる群から選択されるメンバーであり;
R1およびR2は、各メンバーが(C2−C24)アシルからなる群から独立して選択され;
R3は、−Hおよび−PO3R11R12からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR11およびR12は、各メンバーが−Hおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立して選択され;
R4は、−H、−CH3および−PO3R13R14からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR13およびR14は、各メンバーが−Hおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立して選択され;そして
Yは
下付き文字n、m、p、およびqはそれぞれ独立して0〜6の整数であり;
R5は、(C2−C24)アシルであり;
R6およびR7は、HおよびCH3からなる群から独立して選択されるメンバーであり;
R8およびR9は、H、OH、(C1−C4)アルコキシ、−PO3H2、−OPO3H2、−SO3H、−OSO3H、−NR15R16、−SR15、−CN、−NO2、−CHO、−CO2R15、および−CONR15R16からなる群から独立して選択されるメンバーであり、ここでR15およびR16は、各メンバーがHおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立的して選択され;
R10は、H、CH3、−PO3H2、ω−ホスホノオキシ(C2−C24)アルキル、およびω−カルボキシ(C1−C24)アルキルからなる群から選択されるメンバーであり;そして
Zは−O−または−S−であり;
但し、R3が−PO3R11R12の場合、R4は−PO3R13R14以外であり、そしてさらに、但し、R3が−PO3H2の場合、R4はHであり、R10はHであり、R1はn−テトラデカノイルであり、R2はn−オクタデカノイルであり、およびR5はn−ヘキサデカノイルであり、そのときXは−O−以外である、化合物。 - 前記XがOであり;R1、R2およびR5がそれぞれアセチルであり、R3が−PO3H2であり、そしてR4がHである、請求項22に記載の化合物。
- 前記XがOであり;R1、R2およびR5がそれぞれブチリルであり、R3が−PO3H2であり、そしてR4がHである、請求項22に記載の化合物。
- 前記XがOであり;R1、R2およびR5がそれぞれヘキサノイルであり、R3が−PO3H2であり、そしてR4がHである、請求項22に記載の化合物。
- 前記XがOであり;R1、R2およびR5がそれぞれ(C14−C18)アシルであり、R3が−PO3H2であり、そしてR4がHである、請求項22に記載の化合物。
- 薬学的組成物であって、該組成物は、薬学的に受容可能なキャリアおよび以下の式を有する化合物;
ここでXは−O−および−NH−からなる群から選択されるメンバーであり;
R1およびR2は、各メンバーが(C2−C24)アシルからなる群から独立して選択され;
R3は、−Hおよび−PO3R11R12からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR11およびR12は、各メンバーが−Hおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立して選択され;
R4は、−H、−CH3および−PO3R13R14からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR13およびR14は、各メンバーが−Hおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立して選択され;そして
Yは
下付き文字n、m、p、およびqはそれぞれ独立して0〜6の整数であり;
R5は、(C2−C24)アシルであり;
R6およびR7は、HおよびCH3からなる群から独立して選択されるメンバーであり;
R8およびR9は、H、OH、(C1−C4)アルコキシ、−PO3H2、−OPO3H2、−SO3H、−OSO3H、−NR15R16、−SR15、−CN、−NO2、−CHO、−CO2R15、および−CONR15R16からなる群から独立して選択されるメンバーであり、ここでR15およびR16は、各メンバーがHおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立的して選択され;
R10は、H、CH3、−PO3H2、ω−ホスホノオキシ(C2−C24)アルキル、およびω−カルボキシ(C1−C24)アルキルからなる群から選択されるメンバーであり;そして
Zは−O−または−S−であり;
但し、R3が−PO3R11R12の場合、R4は−PO3R13R14以外であり、そしてさらに、但し、R3が−PO3H2の場合、R4はHであり、R10はHであり、R1はn−テトラデカノイルであり、R2はn−オクタデカノイルであり、およびR5はn−ヘキサデカノイルであり、そのときXは−O−以外である、薬学的組成物。 - 請求項27に記載の組成物であって、前記薬学的に受容可能なキャリアが、注射用水(ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびエタノール、水中油型乳濁液、リポソーム、脂質小胞および界面活性剤を含む小胞)からなる群から選択される、組成物。
- 組織選択的または特異的な様式で、誘導性一酸化窒素シンターゼまたは構成性一酸化窒素シンターゼの活性化を誘導する方法であって、該方法は、以下の式を有する化合物の有効量の一酸化窒素シンターゼを、産生および活性化することを可能にするため動物に投薬する工程を包含する:
ここでXは−O−および−NH−からなる群から選択されるメンバーであり;
R1およびR2は、各メンバーが(C2−C24)アシルからなる群から独立して選択され;
R3は、−Hおよび−PO3R11R12からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR11およびR12は、各メンバーが−Hおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立して選択され;
R4は、−H、−CH3および−PO3R13R14からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR13およびR14は、各メンバーが−Hおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立して選択され;そして
Yは
下付き文字n、m、p、およびqはそれぞれ独立して0〜6の整数であり;
R5は、(C2−C24)アシルであり;
R6およびR7は、HおよびCH3からなる群から独立して選択されるメンバーであり;
R8およびR9は、H、OH、(C1−C4)アルコキシ、−PO3H2、−OPO3H2、−SO3H、−OSO3H、−NR15R16、−SR15、−CN、−NO2、−CHO、−CO2R15、および−CONR15R16からなる群から独立して選択されるメンバーであり、ここでR15およびR16は、各メンバーがHおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立的して選択され;
R10は、H、CH3、−PO3H2、ω−ホスホノオキシ(C2−C24)アルキル、およびω−カルボキシ(C1−C24)アルキルからなる群から選択されるメンバーであり;そして
Zは−O−または−S−であり;
但し、R3が−PO3R11R12の場合、R4は−PO3R13R14以外であり、そしてさらに、但し、R3が−PO3H2の場合、R4はHであり、R10はHであり、R1はn−テトラデカノイルであり、R2はn−オクタデカノイルであり、およびR5はn−ヘキサデカノイルであり、そのときXは−O−以外である、方法。 - 発熱の可能性が低いまたは前炎症性サイトカインを誘導する能力の低い、組織において選択的または特異的な様式で、一酸化窒素誘導を導く工程、および持続的な一酸化窒素合成酵素の活性化を導く工程である、方法であって、動物が、処方を持つ化合物の効果的量の一酸化窒素合成酵素を、産生および活性化することを可能にするために投薬する工程を包含する:
ここでXは−O−および−NH−からなる群から選択されるメンバーであり;
R1およびR2は、各メンバーが(C2−C24)アシルからなる群から独立して選択され;
R3は、−Hおよび−PO3R11R12からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR11およびR12は、各メンバーが−Hおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立して選択され;
R4は、−H、−CH3および−PO3R13R14からなる群から選択されるメンバーであり、ここでR13およびR14は、各メンバーが−Hおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立して選択され;そして
Yは
下付き文字n、m、p、およびqはそれぞれ独立して0〜6の整数であり;
R5は、(C2−C24)アシルであり;
R6およびR7は、HおよびCH3からなる群から独立して選択されるメンバーであり;
R8およびR9は、H、OH、(C1−C4)アルコキシ、−PO3H2、−OPO3H2、−SO3H、−OSO3H、−NR15R16、−SR15、−CN、−NO2、−CHO、−CO2R15、および−CONR15R16からなる群から独立して選択されるメンバーであり、ここでR15およびR16は、各メンバーがHおよび(C1−C4)アルキルからなる群から独立的して選択され;
R10は、H、CH3、−PO3H2、ω−ホスホノオキシ(C2−C24)アルキル、およびω−カルボキシ(C1−C24)アルキルからなる群から選択されるメンバーであり;そして
Zは−O−または−S−であり;
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