JP2004519728A - コレステリックカラーフィルタ - Google Patents

Abstract

反射による色を再現する反射型フィルタ構造（３０）は、ゼロの入射角において可視の赤色を反射する第１の領域（３１）と、ゼロの入射角において非可視の赤外色を反射する第２の領域（３２）とを有する。更に、第２の領域はゼロより大きい所定の入射角において可視の赤色を反射する。本発明は、反射型フィルタ構造に基づく表示装置にも関する。

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射型カラーフィルタ、特に表示装置に関連する使用のためのコレステリックフィルタに関する。本発明は、このようなフィルタを利用する表示装置にも関する。
【０００２】
【従来の技術】
キラルネマティック材料としても知られているコレステリック材料は、反射カラーフィルタとして使用することができる。このようなフィルタの１つの利点は、従来の吸収型カラーフィルタと対比すると、光を吸収しないということである。従って、従来の吸収型カラーフィルタの代わりにコレステリックフィルタを使用すると、より高いフィルタ効果を達成することができる。更に、コレステリックカラーフィルタの製造は、必要な処理工程が一般により少ないという点で、吸収型カラーフィルタの製造よりも複雑ではない。しかしながら、コレステリックカラーフィルタから反射する色は、視野角（即ち、フィルタへの入射角）に強く依存する。コレステリック液晶に基づく反射型表示装置の角度の受け入れ幅は、一般的には多くても±２０°である。
【０００３】
プレーナ状態（フィルタ層の表面に対して垂直な主軸）に配向したコレステリック材料の層は、コレステリック構造のピッチに対応する波長の光を反射する干渉フィルムとして作用する。干渉条件を満たさない光は材料を通過する。従って、１つの特定の波長を反射するためには、コレステリック材料は、その特定の波長に対応したピッチを有していなければならない。
【０００４】
入射角がゼロより大きいとき、即ち、斜めの入射角において、コレステリック材料の有効ピッチは変化する。結果として、上記のように、反射する色は入射角に応じて変わる。最大反射が生じる波長λｍａｘは以下の式によって与えられる。
λｍａｘ＝ｎａｖｇｐｃｏｓ（α）
ここで、ｎａｖｇは材料の平均屈折率、ｐはコレステリック構造のピッチ、及びαが層の法線に対する入射角である。上記の式では、コレステリック材料とその周囲との間の層表面における屈折が無視されている点に注意すべきである。
【０００５】
明らかに、入射角が増加すると、反射される光の波長が減少する。言い換えると、その角度を増加させてコレステリックフィルタを見ると、反射光の波長は減少する。表示装置にとって、この角度依存は非常に困惑させるものである。マルチカラーディスプレイの赤の成分にとって、このことは、色が黄色又は緑に変わるので、特に悩ませている。ここで、人間の目は緑の光に対して最も感度がよいことに注意する必要がある。従って、赤から緑に向かう変化は、コレステリックフィルタをベースとしたカラーディスプレイを斜めの角度で見るときに、より明らかになる。また、色空間の損失に至るので、赤色の再現が劣化する。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題を解決する以前に提案された１つの解決策は、望まれていない色を吸収する吸収型フィルタを採用することである。しかしながら、その問題に対するこのような手法は、いくつかの限界がある。第１に、この手法が吸収型カラーフィルタを再び採用していることである。上記のように、反射型フィルタ（コレステリックフィルタ等）を使用する１つの利点は、高価で複雑な吸収型フィルタを避けることができることである。第２に、吸収型フィルタは他の色にも影響し、これによって色再現がゆがめられる。望まれていない色を吸収する吸収染料を有するコレステリックフィルタ層は、国際出願公開公報ＷＯ ００／３３１２９に開示されている。
【０００７】
反射型のコレステリックカラーフィルタの分野では、斜めの視野度における色再現に関する改良が必要である。
【０００８】
本発明の一般目的は、斜めの角度から見たときのコレステリックフィルタのカラーシフトに関する上記の問題の解決策を提供することである。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
この目的は、添付された請求項に示される種類の装置及び方法によって達成される。
【００１０】
それ故に、本発明は、反射によって色を再現する反射型フィルタ構造であって、上記反射型フィルタ構造が垂直の入射角において赤色を有する光を反射する第１の領域を有し、上記反射型フィルタ構造が、垂直の入射角において赤外色を有する光を反射する第２の領域を更に有し、この第２の領域は、ゼロより大きい所定の入射角において赤色を有する光を更に反射する。
【００１１】
特に、本発明の目的は、コレステリック配向を有する材料を有する反射型フィルタをベースとしたカラー表示装置の受入れ可能な視野角を増加することである。
【００１２】
それ故に、本発明の目的は、コレステリック配向の液晶をベースとした反射型カラーフィルタを提供することであり、このフィルタは、吸収素子を組み込むことを必要とせずに、斜めの視野角における向上した色再現を示す。しかしながら、特に所望の効果を達成する目的で、本発明の特徴と吸収素子又は色素を併せ持つことが有利である。
【００１３】
本発明は、マトリックスディスプレイの通常のＲＧＢパターンへの赤外領域の追加が、こディスプレイを斜めの角度で見たときの赤色の再現に対して使用することができるという認識に基づいている。垂直の入射角の下で見ると、赤外領域はカラースペクトルの赤外範囲内の光を反射する。従って、垂直（即ち、直角）の視野角においては、赤外領域は人間の目には見えない。しかしながら、斜めの角度の下で見ると、赤外領域から反射する光の波長は短い波長に向かってシフトする。この結果、赤外領域を斜めの角度から見たとき、赤外領域からの色再現はカラースペクトルの赤の範囲内に入る。斜めの角度から見たときに可視となる赤外領域によって、不良の黄色又は緑色が補償される。
【００１４】
本発明はコレステリック液晶を使用している例によって記載されているが、本発明の範囲内で他の反射型カラーフィルタも可能であることを理解すべきである。
【００１５】
本発明による反射型フィルタ構造の１つの利点は、追加の赤外領域が既存の技術によって製造できることである。コレステリックフィルムによって反射される色はそのフィルムのピッチによって決定される。それ故に、赤外領域は、例えば、赤、緑及び青の領域とは異なるピッチを有するコレステリック材料の領域を備えることによって、マトリクスディスプレイに容易に組み込むことができる。本発明は、新たな且つ複雑な処理工程を導入せずに、反射型カラーフィルタを顕著に向上させる。
【００１６】
赤外領域が全ての領域に共通の層に形成される、即ち、領域が単一層に並んで形成されることが有利である。あるいは、赤外領域は、赤、緑、及び青の領域を有する層の上部の第２の層に形成される。後者の場合、赤外領域は、緑及び青の領域が覆われないままにしておくため、赤の領域の上にのみ形成される。同様に、赤外領域は第２の層において赤の領域の下に形成されることもできる。
【００１７】
用語“赤外”、“赤”、“緑”、及び“青”の領域は、垂直（即ち、直角）の視野角において反射する色に言及していることに注意すべきである。しかしながら、反射した色が視野角の増加に従って低波長側にシフトすることは当然のことである。
【００１８】
１つの態様では、本発明は、コレステリック材料の反射フィルタ構造を提供し、このフィルタ構造では、赤色の再現が斜めの視野角に対して向上する。この目的のため、反射型フィルタ構造は赤の領域と赤外の領域との両方を有する。ゼロの入射角において（即ち、垂直の視野角の下で）、赤の領域は赤色の光を反射し、赤外領域は赤外色の光を反射する。斜めの入射角において、赤外領域は赤色の光を反射し、一方、赤の領域は黄色ががった緑色の光を反射する。単なる例として、フィルタを４５°の角度で見ると、赤外領域はカラースペクトルの赤の範囲内の光を反射する。それ故に、赤外領域の存在によって、斜めの視野角において赤色の再現が向上する。
【００１９】
他の態様では、本発明は、フルカラーの再現のため、青の領域、緑の領域、赤の領域、及び赤外領域を有する画素構造を提供する。好ましくは、最良の色空間を再現する目的で、各領域の面積は注意深く選択される。領域のサイズ及び領域の配置が異なる選択については、以下の本発明の幾つかの好適実施例の詳細な記載で更に説明される。
【００２０】
コレステリック材料のパターン層の製造は既知の技術である。例えば、国際公開出願ＷＯ００／３４８０８号に、コレステリック配向を有するポリマー材料のパターン層を製造する方法が開示されており、その材料は、コレステリックに配向した材料の分子らせんの軸が層を横切って延在するように配向されている。
【００２１】
本発明の他の特徴及び目的は、以下の幾つかの好適実施例の詳細な記載を読んで理解することによって、理解される。詳細な記載では、添付図面が参照される。
【００２２】
【発明の実施の形態】
導入として、本発明によって達成される反射型カラーフィルタの改良点が、図解の例によって記載される。図１に、キラルネマティック液晶の層１０（即ち、コレステリック材料）が概略的に示されている。
【００２３】
垂直の入射角において赤色の光を反射するコレステリック材料の第１の領域を有する反射型カラーフィルタを考える。赤色として知覚される光の波長は６００ｎｍから７００ｎｍの範囲にあり、典型的には約６５０ｎｍである。平均屈折率ｎａｖｇの材料への垂直入射（α＝０）に対して中心波長λの光を反射するために要求されるコレステリック材料のピッチｐは、ｐ＝λ／ｎａｖｇによって与えられる。ゼロ以外の入射角に対しては、反射光の波長は、より短い波長に向かってシフトする（即ち、ピーク反射率の波長が、より短い波長に向かってシフトする）。コレステリック層とその周囲（ここでは、１の屈折率を有する空気と仮定する）との間の境界面における屈折が説明される場合、入射角αにおいて反射する中心波長は以下の式で与えられる。
λ（α）＝λ_０ｃｏｓ［ｓｉｎ^−１（ｎａｖｇ^−１ｓｉｎ（α））］
ここで、λ_０はゼロの入射角において反射する波長、ｎａｖｇはコレステリック材料の平均屈折率である。
【００２４】
コレステリック材料の第１の領域が垂直の入射角において６５０ｎｍの波長を有する光を反射する場合、斜めの角度αにおいて最大反射が生じるための波長は上記の式によって与えられる。例えば、４５°の視野角及び平均屈折率ｎａｖｇ＝１．５において、反射光は、約５７３ｎｍ（黄色）を中心とする。
【００２５】
垂直の入射角においてスペクトルの赤外領域の光を反射するコレステリック材料の第２の領域と第１の領域とを同一層に並べることによって、斜めの角度における赤色の再現が大きく向上する。第２の領域が垂直の入射角において約７４０ｎｍの波長を有する光を反射する場合、４５°の入射角における反射光は約６５０ｎｍを中心とする。従って、６５０ｎｍにおける第１の領域からの反射損失が６５０ｎｍにおける第２の領域からの反射によって補償される。それ故に、知覚された色は、純粋な黄色というよりは、赤色と黄色との混色である。望ましくは、第１及び第２の領域の分離と同様に、それらの領域の間のサイズは、２つの領域が肉眼では分解できないくらい十分に小さい。
【００２６】
あるいは、赤外領域を、追加の層で、赤の領域の上部に形成することができる。この場合、赤外領域は、緑と青の領域が覆われないままにしておくため、赤の領域の上部のみに備えられる。同じように、赤外領域は、単純明快な方法では赤の領域の下に配することもできる。
【００２７】
本発明は、ＲＧＢマトリックスディスプレイのようなカラーディスプレイでの使用に、その主分野を有することが考えられる。ＲＧＢディスプレイの従来構造は、図２に示されている。ディスプレイの中のどの画素２０も、３つのサブ画素、即ち、赤のサブ画素２１、緑のサブ画素２２、及び青のサブ画素２３を有する。各サブ画素２１、２２、２３は、それぞれ、垂直の入射角において所定の波長の光、即ち赤、緑、及び青の光を反射するコレステリック材料の領域からなる。更新可能な画素を備える目的で、コレステリック材料の反射率は、電気的に、オン及びオフを切り替える又は調整することができる。
【００２８】
しかしながら、上記のように、適切なカラー再現のための受け入れ角は、約±２０°のみである。
【００２９】
本発明によれば、視野角の増大は、垂直の入射角において赤外色を有する光を反射する追加のサブ画素も画素に導入することによって達成される。その結果、斜めの視野角において、この追加のサブ画素からの反射は、可視の赤へとシフトする。
【００３０】
図３には、本発明の第１の好適実施例の平面図が示されている。この場合、通常の赤の領域は、１つの赤の領域３１と１つの赤外領域３４とに分割される。示された実施例は、多分、プロセスの変更が最小限であり、製造が最も明快だろう。しかし、赤色（の輝度又は反射係数）の再現性は、赤３１及び赤外３４の領域の表面積がそれぞれ緑３２及び青３３の領域の表面積よりも小さいので、緑及び青の再現性よりも低い。或る場合には、これは受け入れることができ、又は望ましくさえあるかもしれない。しかし、他の場合には、以下に示される例のように、色の輝度の差を避けるために、対策をとる必要があるかもしれない。
【００３１】
図４では、本発明の第２の好適実施例の平面図が示されている。ここでは、赤、青、及び緑の光の強度は、ほぼ等しい表面積を有する赤外４４、赤４１、緑４２、及び青４３の領域の各々によってバランスが取られている。視野角が増加し、赤の領域４１からの赤の光の反射が減少するので、それに応じて、赤外の領域４４からの可視の赤の反射が増加する。各領域４１、４２、４３、４４の面積は、所望の色の輝度が達成されるように設計できることを理解すべきである。
【００３２】
図５は、本発明の第３の好適実施例の平面図を概略的に示す。この実施例では、赤Ｒ及び赤外ＩＲの領域は、市松模様の構造で散在する。この市松模様の構造は、赤の領域から反射する光と赤外の領域から反射する光との混合光を強調する。
【００３３】
図６では、本発明の第４の実施例の平面図が示されている。この実施例は図５の実施例に類似している。しかし、赤色の再現を更に向上させる目的で、赤Ｒ及び赤外ＩＲの反射領域の市松模様の構造は、前の実施例よりも広い。各領域（赤外、赤、緑の及び青）の表面積を適切に選択することによって、赤色の再現と、緑色及び青色の再現とのバランスをとることができる。
【００３４】
図７は本発明の実施例の側面図を概略的に示しており、赤外ＩＲ領域は、赤Ｒ、緑Ｇ及び青Ｂの領域を有する層の上の第２の層に配されている。赤外ＩＲ領域は、緑及び青の領域が完全に覆わないままにしておくために、赤Ｒ領域の上にのみ備えられている。実用的な理由により、緑及び青の領域も、本質的に非反射性の不活性ＮＡ領域で覆われてもよい。緑Ｇ及び青Ｂの領域の色再現に対する赤外ＩＲ領域の影響は、最大限できる限り避けるべきであることを理解すべきである。
【００３５】
図７では、赤外領域が赤の領域の上に備えられて示されているが、赤外領域を赤の領域の下に備えることも可能である。
【００３６】
本発明によって達成される大きい視野角での向上した色再現が図８に示される。図は、カラートライアングルプロットにおいて、赤のフィルタの単一領域（正方形）並びに赤及び赤外のフィルタの二重領域（三角形）の色再現を示す。カラートライアングルにおいて、右の部分は赤色に対応し、上の部分は緑色に対応し、下／左の部分は青色に対応する。赤の領域は６５０ｎｍを中心に１００ｎｍ幅の反射帯を有し、赤外の領域は７５０ｎｍを中心に１００ｎｍ幅の反射帯を有した。二重領域フィルタでは、赤の領域の表面積を、赤外の領域の表面積と等しくした。反射光の色が、ゼロの入射角から６０°の入射角の範囲について、空気（カラーフィルタの外側）における視野角に対して５°刻みでプロットされている。図面は、本発明による二重領域のフィルタを利用すると赤色の再現が大きく向上することを明確に示している。
【００３７】
それ故に、キラルネマティック（コレステリック）液晶をベースとした反射型カラーフィルタに、本発明による赤外の領域、即ち、ゼロの入射角から見てスペクトルの赤外範囲内の光を反射し且つ斜めの入射角から見て可視の赤を反射するする反射型フィルタ層領域を含むことによって、斜めの角度における色再現がかなり向上する。
【図面の簡単な説明】
【図１】コレステリックに配向した材料の従来のフィルタ層を概略的に示す。
【図２】従来による反射型フィルタ構造を概略的に示す。
【図３】本発明の第１実施例を概略的に示す。
【図４】本発明の第２実施例を概略的に示す。
【図５】本発明の第３実施例を概略的に示す。
【図６】本発明の第４実施例を概略的に示す。
【図７】本発明の第５実施例を概略的に示す。
【図８】従来と本発明との両方の反射型フィルタの色再現のプロットを示す。

Claims (10)

1. 反射によって色を再現する反射型フィルタ構造であって、前記反射型フィルタ構造が垂直の入射角において赤色を有する光を反射する第１の領域を有し、前記反射型フィルタ構造が、垂直の入射角において赤外色を有する光を反射し、ゼロより大きい所定の入射角において赤色を有する光を反射する第２の領域を更に有する反射型フィルタ構造。
2. 垂直の入射角において緑色を有する光を反射する第３の領域を更に有する請求項１に記載の反射型フィルタ構造。
3. 垂直の入射角において青色を有する光を反射する第４の領域を更に有する請求項１又は２に記載の反射型フィルタ構造。
4. 反射領域のうちの少なくとも１つがコレステリック液晶を有する請求項１乃至３のうちのいずれか１項に記載の反射型フィルタ構造。
5. 前記第１の領域に前記第２の領域が市松模様で散在する請求項１に記載の反射型フィルタ構造。
6. 前記第１の領域の反射表面積が、前記第２の領域の反射表面積に実質的に等しい請求項１に記載の反射型フィルタ構造。
7. 前記各領域の反射表面積が本質的に等しい請求項３に記載の反射型フィルタ構造。
8. 前記各領域が単一層で形成される請求項１乃至７のうちのいずれか１項に記載の反射型フィルタ構造。
9. 前記第２の領域は、前記第１の領域を有する層のいずれか一方の側に備えられる第２の層に形成される請求項１乃至７のうちのいずれか１項に記載の反射型フィルタ構造。
10. 反射型の液晶カラー表示装置であって、
    各画素が
    垂直の入射角において赤色の光を反射するコレステリック材料の領域と、
    垂直の入射角において緑色の光を反射するコレステリック材料の領域と、
    垂直の入射角において青色の光を反射するコレステリック材料の領域とを有し、
    前記液晶カラー表示装置が、垂直の入射角において赤外色の光を反射し、ゼロより大きい所定の入射角において赤色を有する光を反射するコレステリック材料の追加領域を更に有する液晶カラー表示装置。