JP2004518426A - 酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量のための酵素学的方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は酸化剤とグルタチオン還元酵素を用いるグルタチオンの酵素学的定量法に、試料をGSHトラッピング剤で処理する工程を導入することによる酸化型及び還元型グルタチオン(GSSG・GSH)の同時定量方法に関する。
酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法は、(i)組織試料を採取し、その代謝作用を停止させた組織のホモジネートを調製する工程;(ii)等容量のGSHトラッピング剤を添加したホモジネート画分及び添加しないホモジネート画分を調製し、リン酸緩衝液、蒸留水及びNADPH溶液を該各画分に添加する工程;(iii)グルタチオン還元酵素及び酸化剤を該各画分に添加し反応を開始する工程;及び(iv)GSHトラッピング剤を添加した画分を含む反応混合物の吸光度を測定して酸化型グルタチオン(GSSG)を定量し、GSHトラッピング剤を添加しない画分を含む反応混合物の吸光度を測定して総グルタチオンを定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)を定量する工程を含む。本発明によれば、酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンの量を同時に正確に測定することができるため、それは細胞内の酸化/還元状態の異常によってもたらされる疾患の診断及び治療に実際に応用することが可能である。
酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法は、(i)組織試料を採取し、その代謝作用を停止させた組織のホモジネートを調製する工程;(ii)等容量のGSHトラッピング剤を添加したホモジネート画分及び添加しないホモジネート画分を調製し、リン酸緩衝液、蒸留水及びNADPH溶液を該各画分に添加する工程;(iii)グルタチオン還元酵素及び酸化剤を該各画分に添加し反応を開始する工程;及び(iv)GSHトラッピング剤を添加した画分を含む反応混合物の吸光度を測定して酸化型グルタチオン(GSSG)を定量し、GSHトラッピング剤を添加しない画分を含む反応混合物の吸光度を測定して総グルタチオンを定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)を定量する工程を含む。本発明によれば、酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンの量を同時に正確に測定することができるため、それは細胞内の酸化/還元状態の異常によってもたらされる疾患の診断及び治療に実際に応用することが可能である。
Description
【0001】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は酸化型及び還元型グルタチオン(γ−グルタミルシステニルグリシンの迅速定量方法に関し、さらに詳しくは酸化剤とグルタチオン還元酵素を用いる従来の酵素学定量法に、GSHトラッピング剤(trapping agent)で試料を処理する工程を導入することによる酸化型及び還元型グルタチオン(GSSG・GSH)の同時定量方法に関する。
【0002】
(背景技術)
グルタチオンは、低分子量のチオール化合物であって、細胞内で主には遊離状態で存在するが、一部はシステインや補酵素Aと混合−ジスルフィド(mixed−disulfide)結合を形成する場合もある。該グルタチオンは、細胞の酸化/還元状態により還元型グルタチオン(reduced glutathione、GSH)と酸化型グルタチオン(oxidized glutathioneまたはglutathione disulfide、GSSG)の形態で存在する。細胞内の遊離グルタチオンの大部分は通常は還元型(GSH)として存在し、一方、酸化型のレベルは極めて低い。例えば、真核細胞におけるGSHは細胞質内の低分子量チオール化合物全量の80%以上、ミトコンドリア内の低分子量チオール化合物全量の10%ないし15%を占めることが知られている。
【0003】
通常の生理的条件下で産生される活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)によってグルタチオンの酸化が続くにも関わらず、一定の還元型グルタチオンの生体内(in vivo)グルタチオン分布が細胞内グルタチオン還元酵素とNADPHを用いる細胞の抗酸化防御系によって維持されている。健康な好気性生物の場合、ROSの効果は細胞の抗酸化防御系によって制御されている、即ち、細胞がROSによって酸化状態になると、ROSはGSHをGSSGに酸化し、それによって細胞内のGSH量が下がるが、続いて通常の細胞であればGSH/GSSG比を一定に保つように細胞外へGSSGを分泌する。しかし、放射線、疾患、又は薬物などの種々要因によって引き起こされるROSの過剰発生は、酸化的ストレス、ROSと抗酸化防御系の深刻なアンバランスをもたらし、続いて炎症及び免疫損傷、局所貧血(ischemia)、薬物−及び毒性−誘導反応(drug and toxin−induced reaction)、及び老化など多くの病的状態をもたらす。従って、細胞内の抗酸化防御系は細胞内の恒常性を維持する重要な制御機構の一つである。
【0004】
細胞のグルタチオンの状態は細胞の酸化/還元状態を反映するので、酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンの定量は、細胞の酸化/還元状態の指標を提供する。細胞内の酸化/還元状態の指標としてグルタチオンを使用するためには、グルタチオンの全量のみならずGSH/GSSG比、すなわちグルタチオンの酸化程度も重要であり、よって、GSHとGSSGを正確に定量することが必須である。
【0005】
グルタチオンの定量方法は、クロマトグラフィー法、酵素学的及び化学的方法、即ち、HPLC(high performance liquid chromatography)を用いる方法、酵素活性を定量するのに分光分析機を用いる方法、及びグルタチオンと特異的に反応することが知られているO−フタルアルデヒド(OPT)を用いる方法に分類される(Sies, H., Assay of glutathione, glutathione disulfide, and glutathione mixed disulfides in biological samples, Methods Enzymol.,77:373−383,1981; Tietze, Enzymatic method for quantitative determination of nanogram amounts of total and oxidized glutathione: applications to mammalian blood and other tissues, Anal.Biochem.,27:502−522, 1969; Mokrasch, l.C.and Teschike, E.J., Glutathione content of cultured cells and rodent brain regions: A specific fluorometric assay, Anal.Biochem., 140:506−509,1984を参照)。
【0006】
HPLCを用いるクロマトグラフィー法は、グルタチオン−含有試料を吸光材料又は蛍光材料で処理し、続いてHPLCによって分離した材料の吸光度または蛍光を測定することによる定量方法であって、10−9mol程度のわずかな量のグルタチオンも検出できるが、1回のHPLC分析に30分以上かかり、一つの試料中のGSHとGSSHを別々に測定するためには2回のHPLC分析にかけなければならず、従って、大量の試料の分析には非常に時間がかかって不適切である。
【0007】
また他の定量方法である酵素学的方法には、DTNB(5、5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)などの酸化剤とグルタチオン還元酵素を使用する方法、GSHとメチルグリオキサール間のグリオキサラーゼI−触媒反応(glyoxalase I−catalyzed reaction)によって産生されるラクトイルグルタチオン(lactoylglutathione)を定量するグリオキサラーゼ法、クロロジニトロベンゼン(chlorodinitrobenzene)とGSH混合物を産生するGSHトランスフェラーゼを用いる方法などが含まれる。このような酵素学的方法は、試料分析の迅速性(2,3分内)という利便性を有している。しかしながら、それらは試料の取り扱いが非常にむずかしく、場合よっては幾つかの反応工程のために多くの試薬を調製することに労を要したり、試料を分析する毎に各種の試薬を定量に用いる直前に混合しなければならなかったり、温度や他の環境条件に影響を受けやすい酵素及び試薬は一定の間隔で新たに調製しなければならかったりするという意味で、満足のいくものではないことがわかってきた。
【0008】
もう一つ、比較的簡単なグルタチオン分析法として蛍光定量法があるが、この方法は他の硫黄化合物の不存在下でGSH又はGSSHと蛍光複合体を形成するOPTの性質を用いる方法である。OPTを用いる蛍光定量法は大量の試料を分析するために簡単かつ有効な方法であるが、他の細胞内硫黄化合物とアミノ酸によるGSH又はGSSGとのOPT反応の阻害によって引き起こされる低特異性が現われ、またOPTを用いるNEM(N−エチルマレイミド)−処理試料中のGSSGの測定は高pH条件下で行われるので組織試料には不適切である。前記方法をマルチウェルプレートに用いる最近の方法もまた適切ではない。
【0009】
かかる状況下、試料中のGSH及びGSSGを簡単かつ正確のやり方で同時に定量するための方法を探索し開発するための強い動機がある。
【0010】
(発明の開示)
本発明者らは細胞内のGSH及びGSSGを定量するための簡単かつ正確な方法を開発するために鋭意研究を行ったところ、試料をGSHトラッピング剤で処理する工程を酸化剤及びグルタチオン還元酵素を用いる従来のグルタチオンの酵素学的定量法に導入することによって、GSHとGSSGを簡単かつ正確なやり方で同時に定量できることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
従って、本発明の主たる目的は、酸化剤、グルタチオン還元酵素及びGSHトラッピング剤を用いた酸化型及び還元型グルタチオンの同時定量方法を提供することにある。
【0012】
本発明の上記及び他の目的及び特徴は添付する図面と併せて与えられる以下の説明からより明確になる。
【0013】
(発明の実施形態)
本発明の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法は、以下の工程:組織試料を採取し、その代謝作用を停止させた該組織のホモジネートを調製する工程;等容量のGSHトラッピング剤を添加したホモジネート画分及び添加しないホモジネート画分を調製し、リン酸緩衝液、蒸留水及びNADPH溶液を該各画分に添加する工程;グルタチオン還元酵素及び酸化剤を該各画分に添加し反応を開始する工程;及びGSHトラッピング剤を添加した画分を含む反応混合物の吸光度を測定して酸化型グルタチオン(GSSG)を定量し、GSHトラッピング剤を添加しない画分を含む反応混合物の吸光度を測定して総グルタチオンを定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)を定量する工程を含む。
【0014】
細胞内グルタチオンの定量方法をさらに以下の工程によって説明する。
工程1:試料の調製
組織試料を調製し、その代謝作用を停止させた該組織のホモジネートを与える:該組織試料は動物又は植物源から採取し、−70℃の温度で凍結乾燥し、5%PCA(過塩素酸)溶液下で処理してその代謝作用を停止させた組織のホモジネートを与える。
【0015】
工程2:GSHの不活性化
等容量のGSHトラッピング剤を添加したホモジネート画分及び添加しないホモジネート画分を調製し、リン酸緩衝液、蒸留水及びNADPH溶液を該各画分に添加する:N−エチルマレイミド(NEM)がGSHトラッピング剤として使用することが好ましく、それは該画分に最終濃度が20ないし100mMとなるように添加することが好ましく、2ないし3倍容量のリン酸緩衝液を最終濃度が50から150mMになるように該画分に添加することが好ましく、6ないし7倍容量の蒸留水を該画分に添加することが好ましく、20から30%(v/v)のNADPH溶液を最終濃度が0.1から0.3mMの濃度になるように該画分に添加することが好ましい。
【0016】
工程3:反応
反応は各画分にグルタチオン還元酵素及び酸化酵素を添加することによって開始する:10ないし15%(v/v)のグルタチオン還元酵素を最終濃度が0.05ないし0.2U/mlになるよう該画分に添加することが好ましく、酸化剤として5、5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を使用することが好ましく、10ないし15%(v/v)の酸化剤を最終濃度が0.02ないし0.1mMになるように該画分に添加することが好ましい。
【0017】
工程4:吸光度測定
酸化型グルタチオン(GSSG)及び総グルタチオンを、GSHトラッピング剤を添加した画分及び添加しない画分を含む反応混合物の吸光度を測定することによってそれぞれ定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)の量を測定する:この際吸光度は405nmで測定することが好ましい。
【0018】
組織や細胞中のグルタチオンはグルタチオンの抽出過程において細胞内のグルタチオン代謝−関連酵素の影響を受けやすいので、本発明の方法を用いて酸化型および還元型グルタチオンの定量を行うに際し、その分析結果が組織試料自体の状態を反映しない可能性があることに気をつけなければならない。本発明の方法にあるもうひとつの問題は試料中に存在する酸素及び金属イオンが還元型グルタチオン(GSH)のスルフィドリル基と反応し、グルタチオン定量のために試料を処理する工程中に酸化型グルタチオン(GSSG)が産生されることである。そのような場合、総グルタチオンの量は同じままであるが、組織中に存在する量よりも低いGSH値及び高いGSSH値になることが予想される。かかる問題は細胞内のGSH及びGSSHを正確に測定するために克服しなければならない。このために、本発明者らは組織試料中のGSH及びGSSGの量を正確に測定するために動物から採取した組織試料のグルタチオンプールにおける変化を阻止するための戦略を用いた。すなわち、組織試料中のグルタチオンの酸化/還元比は組織試料を動物から採取した後グルタチオン還元酵素及びNADPHのような代謝関連酵素によって変化するので、本発明では、代謝によるグルタチオンの酸化/還元比のそのような変化を採取した組織試料を直ちに凍結−固定化することによって阻止した。組織試料を固定化し、液体窒素を用いて凍結させ、使用するまで−70℃で保存した。本発明によれば、採取した組織試料の代謝を阻止するためのもう一つの戦略は代謝−関連酵素をタンパク質変性剤である、5%(v/v)PCA溶液の存在下で凍結した組織試料をホモジナイズすることによって変性することである。
【0019】
GSSGの定量方法は、試料中のGSHの前−除去が必要である。また、細胞内の酸化型グルタチオンを正確に定量するために、試料を動物から採取した後、GSHからGSSGへの人工的酸化を避けなければならず、GSHの酸化防止はGSHのスルフィドリル基のマスキングによって達成することができる。この目的のために、本発明者らは、スルフィドリル基間のジスルフィド結合の形成をグルタチオンのスルフィドリル基との共有結合によって阻害するNEMのようなGSHトラッピング剤を用いることによって試料中のGSHをマスキングするという戦略を用いた。中性pHにおけるNEMの反応速度は1分に満たないほど速く、その使用を非常は効率的である。NEMはまたグルタチオン還元酵素の活性を阻害するので、残存NEMをGSHの完全なマスキングの後除去しなければならず、よって本発明ではNEMを含む反応混合物を等容量のエーテルで抽出して残存NEMを除去してからGSSG定量に使用する。
【0020】
GSHの量をGSH及びDTNB間の反応に起因するDTNBからTNBへの連続還元率によって測定し、そして試料中に含まれるか又はGSHとDTNB間の反応によって生成されるGSSGはグルタチオン還元酵素及びNADPHの反応によってGDHに還元される。よって、総グルタチオン、即ちGSHとGSSGの量の合計はTNBへの還元率の合計によって表される。TNBへの還元率は正確に総グルタチオンの量に比例しており、405nmにおける吸光度を測定することによって定量する。
【0021】
NEM−未処理試料からグルタチオンの全量が直線的増加の範囲間の吸光度プロットの傾きを測定することによって定量されるが、それは試料中のGSH及びGSSGに変換されたGSH量を表し、そしてNEM−処理試料から酸化型グルタチオン(GSSG)を吸光度を測定することによって定量する。
【0022】
一方、酸化型及び還元型グルタチオンに対する標準曲線を一定量の酸化型及び還元型グルタチオンの吸光度をそれぞれ測定することによって作成した後、総グルタチオン及びGSSGの吸光度を標準曲線の吸光度と比較することによってGSSGの量を定量し、試料中のタンパク含量を分析後、nmolグルタチオン/mgタンパク質に換算する。
【0023】
さらに、酸化型及び還元型グルタチオンに対して大量の試料を分析するためにマルチウェルプレートを用いることもできる。すなわち、大量のサンプルの酸化型及び還元型グルタチオンの定量を以下の工程によって同時に行うことができる:リン酸緩衝液、蒸留水、及びDADPH溶液をマルチウェルプレートの各ウェルに分注する工程;各ウェルに等容量のNEM−処理または未処理試料を添加し、続いてグルタチオン還元酵素及びDTNBを各ウェルに添加して反応を開始させる工程;及び該NEM処理試料を含む反応混合物の吸光度を測定して酸化型グルタチオン(GSSG)を定量し、該NEM−未処理試料を含む反応混合物の吸光度を測定して総グルタチオンを定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)を量を測定する工程:ここで、各工程の条件は上記のグルタチオンの定量方法のそれと同一である。
【0024】
本発明をさらに以下の実施例において説明するが、これらは本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。
【0025】
実施例1:グルタチオン定量のための組織試料の採取及びNEM処理
マウス(C3H、C57B/L)またはSDラットから採取した組織の代謝作用を停止させるため、該組織を凍結−固定化させ、−70℃にて保存した。凍結−固定化した組織の約20mgをガラスホモジナイザー(glass homogenizer)によって5%(v/v)PCA(過酢酸)溶液500μlにてホモジナイズした。
【0026】
GSSGの正確な測定のために、本発明ではNEMをGSHトラッピング剤として用いた。NEM溶液は室温で非常に不安定であるため使用直前に調製し、氷上で保つが、一方、低いpH条件下で比較的安定であるため、5%(v/v)PCAに250mM濃度になるよう調製した。上記で調製した組織のPCAホモジネートを60μlと400μlに分け、250mM NEM100μlをPCAホモジネートのアリコート400μlの方にNEMの最終濃度が250mMになるよう添加し、それを2M KHCO3溶液210μlの添加によって直ちに中和化し、室温で30分間インキュベートした。NEM反応の完了がGSHとGSSGの首尾よい定量のために重要であるので、NEMで処理した試料及びNEMで処理していない試料をNH2カラムを用いるHPLCによってGSH及びGSSGそれぞれに対して分析した(図1a及び図1b)。図1aは、NEMで処理していない試料から得たGSSG及びGSHのクロマトグラムであり、図1bは、NEMで処理した試料から得たGSSG及びGSHのクロマトグラムである。図1a及び図1bに示されるように、GSHはNEM−処理画分では全く検出されず、このことは反応が完了したことを示す。
【0027】
上記で調製したNEM−処理及びNEM−未処理画分をそれぞれ遠心分離し、上澄み液を得た後、NEM−未処理試料の上澄み液を1mM EDTAを含む100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で5ないし10倍に希釈し、総グルタチオンの定量のための試料を調製し、そしてNEM−処理試料の上澄み液を未反応の残存NEMを除去するための前処理、すなわち等容量のエーテルによる10回の抽出とそれに続く真空ポンプを用いて乾燥させることによるエーテルの除去操作に供し、GSSGの定量のための試料を調製した。また、組織のNEM−未処理ホモジネートの遠心分離によって得られたタンパク質沈殿物を1N NaOH100μlに溶解し、10倍に希釈し、その後ブラッドフォード(Bradford)法によるタンパク質の測定に供した。タンパク質標準曲線を表1に示す濃度のウシ血清アルブミン(BSA)を用いてブラッドフォード法によって作成した(図3a参照)。図3aは、ブラッドフォード法によって作成したタンパク質の標準曲線である。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例2:マルチウェルプレートを用いたグルタチオンの定量
本発明に従い、組織のグルタチオン量を大量の試料を定量するためのマルチウェルプレートを用いることによって以下のように測定した: まず、5×リン酸緩衝液(5mM EDTAを含む500mM リン酸緩衝液、pH7.0)50μl、蒸留水 125μl、及び10mM NADPH5μlの混合物を各ウェルに分注した。次いで、NEM−処理試料及びNEM−未処理試料をそれぞれ20μlずつ別々のウェルに添加し、グルタチオンの標準曲線作成のために、1mM GSH(還元型)及び1mM GSSG(酸化型)を適当に希釈し、そして各々の希釈液20μlを別々のウェルに添加した。その後、反応をグルタチオン還元酵素(1.2U/ml)25μlとDTNB(0.6mM)25μlの混合物を添加することによって開始させるが、ここでグルタチオン還元酵素は6units/mlの濃度になるようにリン酸緩衝液に溶解し、反応混合物に添加する直前に同じリン酸緩衝液で再び5倍に希釈し、そしてGSHの酸化剤として用いるDTNB(50×)は0.5%(w/v)NaHCO3溶液に3mM濃度になるよう溶解し、使用直前に蒸留水で5倍に希釈した。続いて、反応速度論的定量ソフトウェアを具備したマイクロプレートリーダーを用いて吸光度を5分にわたって405nmで測定し、吸光度プロットの傾きを直線の範囲で決定した。次いで、グルタチオンの標準曲線を吸光度プロットの傾きの変化から作成した。組織試料の吸光度プロットの傾きの測定値を総グルタチオン又はGSSG(nmol/ml試料)の量に換算し、それを実施例1のタンパク質濃度の測定に基づいて再びnmolグルタチオン/mgタンパク質に換算した(図3参照)。図3は、DTNB及びグルタチオン還元酵素で処理した試料中に生成したTNBの吸光度の一定時間における測定値を示すグラフである。図2に示されるように、吸光度は2ないし3分にわたって直線的に増加し、これは反応条件が適切に最適化されたことを示している。
【0030】
実施例2 − 1: 標準曲線の作成
グルタチオン標準曲線を実施例2で調製したグルタチオンの標準溶液の吸光度を測定することによって作成した(参照:表2及び表3、図3b及び図3c参照)。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
上記表2及び表3はそれぞれGSH及びGSSHの濃度及び対応する標準曲線の傾きをそれぞれ示す。そして図3a及び図3bはそれぞれGSHの標準曲線及びGSSGの標準曲線を示す。図3aにおいて直線的増加の範囲間の吸光度プロットの傾きは3.1871と決定され、図3bにおいて吸光度プロットの傾きは5.1794と決定された。
【0034】
実施例3:組織試料中のグルタチオンの定量
C3Hマウスから採取した肝組織20mgを5%(v/v)PCA溶液500μlにてホモジナイズし、そのホモジネートを実施例1ないし実施例2に記載したように定量反応に供し、直線的増加の範囲間にある吸光度プロットの傾きを決定するために吸光度を測定し、組織試料中の総グルタチオンとGSSGを実施例2−1で作成した標準曲線から定量した。直線的増加の範囲間にある20倍希釈した組織試料中の総グルタチオンの吸光度変化は74.49と測定され、これは図3bの標準曲線を用いて467.45nmole総グルタチオン/ml試料と換算された。GSSGの吸光度変化は28.49と測定され、これは図3cの標準曲線を用いて9.63nmoleGSSG/ml試料と換算された。
【0035】
実施例4:グルタチオン濃度のグルタチオン量への換算
実施例3で測定した総グルタチオン濃度及びGSSG濃度(nmole/ml試料)をタンパク質1mg当たりのグルタチオン(nmol)の量に換算した。ペレット化したタンパク質をNEM−未処理ホモジネートの遠心分離後に測定した実施例2と同様の手法でタンパク質量をブラッドフォード法と標準曲線によって測定した。タンパク質濃度は13.88mg/mlと測定された、その結果、総グルタチオン濃度値(467.45nmol/ml)とGSSG濃度値(9.63nmol/ml)はそれぞれ33.63nmol/mg及び0.69nmol/mgに換算された。従って、組織試料中の特異的GSH量は32.99nmol/mgであることがわかった。
【0036】
実施例5:グルタチオン定量方法の検証
組織試料中のグルタチオン定量のための本発明方法の可能性を調べるために、試料の量を増加させながら総グルタチオンとGSSGを定量した。すなわち、0、10、20、30、40または50μlの試料を添加することを除けば、実施例2と同様な方法で総グルタチオン量とGSSG量を測定した(図4a及び図4b参照)。図4aは組織試料の量を増加させながら測定した総グルタチオン量を表す吸光度プロットの傾きの変化を示すグラフである。図4a及び図4bに示されるように、測定されたグルタチオン量は標準曲線の有効範囲内では試料の増加に伴って増加した。一方、測定されたGSSG量は30ないし40μlまでは試料の増加に伴って増加したが、その増加の程度は40μl以上では試料の増加とともに減少した。この結果は、エーテル抽出によって完全に除去されなかったNEM−処理試料に含まれる残存NEM増加量によるグルタチオン還元酵素の阻害によってもたらされると考えられ、よって、定量反応に用いる試料の適切な量は望ましくは20μlであることがわかった。上記の結果に基づき、試料20μl中の総グルタチオンとGSSGの量を測定し、タンパク質の単位重量あたりのグルタチオン量、nmol/mgタンパク質にも換算することができる。グルタチオン定量のための本発明方法の検出限界は0ないし0.4nM/試料であり、本発明方法がHPLC分析法と同じくらい感度がよいことを示す。
【0037】
以上に明確に説明及び証明したように、本発明は、試料をGSHトラッピング剤で処理する工程を酸化剤及びグルタチオン還元酵素を用いる従来のグルタチオンの酵素学的定量法に導入することによる、酸化型及び還元型グルタチオンの同時定量方法を提供する。酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量のための本発明の方法は、以下の工程:組織試料を採取し、その代謝作用を停止させた組織のホモジネートを調製する工程;等容量のGSHトラッピング剤を添加したホモジネート画分及び添加しないホモジネート画分を調製し、リン酸緩衝液、蒸留水及びNADPH溶液を該各画分に添加する工程;グルタチオン還元酵素及び酸化剤を該各画分に添加し反応を開始する工程;及びGSHトラッピング剤を添加した画分を含む反応混合物の吸光度を測定して酸化型グルタチオン(GSSG)を定量し、GSHトラッピング剤を添加しない画分を含む反応混合物の吸光度を測定して総グルタチオンを定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)の量を測定する工程を含む。本発明によれば、酸化型及び還元型グルタチオンの量を簡単かつ正確なやり方で同時に測定でき、それは細胞内の酸化/還元状態の異常によってもたらされる疾患の診断及び治療に実際に応用することが可能である。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1aはNEMで処理していない試料から得た酸化型グルタチオン(GSSG)と還元型グルタチオン(GSH)のHPLCクロマトグラムである。
【図2】図1bはNEMで処理した試料から得たGSSGとGSHのHPLCクロマトグラムである。
【図3】図2はDTNB及びグルタチオン還元酵素で処理した試料中で産生されたTNBの一定時間の吸光度測定値を示すグラフである。
【図4】図3aはブラッドフォード法によって作成したタンパク質の標準曲線である。
【図5】図3bは吸光度プロットの傾きの変化を示すGSH標準曲線である。
【図6】図3cは吸光度プロットの傾きの変化を示すGSSG標準曲線である。
【図7】図4aは組織試料の量を増加させながら測定した総グルタチオンの量を表す吸光度プロットの傾きの変化を示すグラフである。
【図8】図4bは組織試料の量を増加させながら測定したGSSGの量を表す吸光度プロットの傾きの変化を示すグラフである。
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は酸化型及び還元型グルタチオン(γ−グルタミルシステニルグリシンの迅速定量方法に関し、さらに詳しくは酸化剤とグルタチオン還元酵素を用いる従来の酵素学定量法に、GSHトラッピング剤(trapping agent)で試料を処理する工程を導入することによる酸化型及び還元型グルタチオン(GSSG・GSH)の同時定量方法に関する。
【0002】
(背景技術)
グルタチオンは、低分子量のチオール化合物であって、細胞内で主には遊離状態で存在するが、一部はシステインや補酵素Aと混合−ジスルフィド(mixed−disulfide)結合を形成する場合もある。該グルタチオンは、細胞の酸化/還元状態により還元型グルタチオン(reduced glutathione、GSH)と酸化型グルタチオン(oxidized glutathioneまたはglutathione disulfide、GSSG)の形態で存在する。細胞内の遊離グルタチオンの大部分は通常は還元型(GSH)として存在し、一方、酸化型のレベルは極めて低い。例えば、真核細胞におけるGSHは細胞質内の低分子量チオール化合物全量の80%以上、ミトコンドリア内の低分子量チオール化合物全量の10%ないし15%を占めることが知られている。
【0003】
通常の生理的条件下で産生される活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)によってグルタチオンの酸化が続くにも関わらず、一定の還元型グルタチオンの生体内(in vivo)グルタチオン分布が細胞内グルタチオン還元酵素とNADPHを用いる細胞の抗酸化防御系によって維持されている。健康な好気性生物の場合、ROSの効果は細胞の抗酸化防御系によって制御されている、即ち、細胞がROSによって酸化状態になると、ROSはGSHをGSSGに酸化し、それによって細胞内のGSH量が下がるが、続いて通常の細胞であればGSH/GSSG比を一定に保つように細胞外へGSSGを分泌する。しかし、放射線、疾患、又は薬物などの種々要因によって引き起こされるROSの過剰発生は、酸化的ストレス、ROSと抗酸化防御系の深刻なアンバランスをもたらし、続いて炎症及び免疫損傷、局所貧血(ischemia)、薬物−及び毒性−誘導反応(drug and toxin−induced reaction)、及び老化など多くの病的状態をもたらす。従って、細胞内の抗酸化防御系は細胞内の恒常性を維持する重要な制御機構の一つである。
【0004】
細胞のグルタチオンの状態は細胞の酸化/還元状態を反映するので、酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンの定量は、細胞の酸化/還元状態の指標を提供する。細胞内の酸化/還元状態の指標としてグルタチオンを使用するためには、グルタチオンの全量のみならずGSH/GSSG比、すなわちグルタチオンの酸化程度も重要であり、よって、GSHとGSSGを正確に定量することが必須である。
【0005】
グルタチオンの定量方法は、クロマトグラフィー法、酵素学的及び化学的方法、即ち、HPLC(high performance liquid chromatography)を用いる方法、酵素活性を定量するのに分光分析機を用いる方法、及びグルタチオンと特異的に反応することが知られているO−フタルアルデヒド(OPT)を用いる方法に分類される(Sies, H., Assay of glutathione, glutathione disulfide, and glutathione mixed disulfides in biological samples, Methods Enzymol.,77:373−383,1981; Tietze, Enzymatic method for quantitative determination of nanogram amounts of total and oxidized glutathione: applications to mammalian blood and other tissues, Anal.Biochem.,27:502−522, 1969; Mokrasch, l.C.and Teschike, E.J., Glutathione content of cultured cells and rodent brain regions: A specific fluorometric assay, Anal.Biochem., 140:506−509,1984を参照)。
【0006】
HPLCを用いるクロマトグラフィー法は、グルタチオン−含有試料を吸光材料又は蛍光材料で処理し、続いてHPLCによって分離した材料の吸光度または蛍光を測定することによる定量方法であって、10−9mol程度のわずかな量のグルタチオンも検出できるが、1回のHPLC分析に30分以上かかり、一つの試料中のGSHとGSSHを別々に測定するためには2回のHPLC分析にかけなければならず、従って、大量の試料の分析には非常に時間がかかって不適切である。
【0007】
また他の定量方法である酵素学的方法には、DTNB(5、5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)などの酸化剤とグルタチオン還元酵素を使用する方法、GSHとメチルグリオキサール間のグリオキサラーゼI−触媒反応(glyoxalase I−catalyzed reaction)によって産生されるラクトイルグルタチオン(lactoylglutathione)を定量するグリオキサラーゼ法、クロロジニトロベンゼン(chlorodinitrobenzene)とGSH混合物を産生するGSHトランスフェラーゼを用いる方法などが含まれる。このような酵素学的方法は、試料分析の迅速性(2,3分内)という利便性を有している。しかしながら、それらは試料の取り扱いが非常にむずかしく、場合よっては幾つかの反応工程のために多くの試薬を調製することに労を要したり、試料を分析する毎に各種の試薬を定量に用いる直前に混合しなければならなかったり、温度や他の環境条件に影響を受けやすい酵素及び試薬は一定の間隔で新たに調製しなければならかったりするという意味で、満足のいくものではないことがわかってきた。
【0008】
もう一つ、比較的簡単なグルタチオン分析法として蛍光定量法があるが、この方法は他の硫黄化合物の不存在下でGSH又はGSSHと蛍光複合体を形成するOPTの性質を用いる方法である。OPTを用いる蛍光定量法は大量の試料を分析するために簡単かつ有効な方法であるが、他の細胞内硫黄化合物とアミノ酸によるGSH又はGSSGとのOPT反応の阻害によって引き起こされる低特異性が現われ、またOPTを用いるNEM(N−エチルマレイミド)−処理試料中のGSSGの測定は高pH条件下で行われるので組織試料には不適切である。前記方法をマルチウェルプレートに用いる最近の方法もまた適切ではない。
【0009】
かかる状況下、試料中のGSH及びGSSGを簡単かつ正確のやり方で同時に定量するための方法を探索し開発するための強い動機がある。
【0010】
(発明の開示)
本発明者らは細胞内のGSH及びGSSGを定量するための簡単かつ正確な方法を開発するために鋭意研究を行ったところ、試料をGSHトラッピング剤で処理する工程を酸化剤及びグルタチオン還元酵素を用いる従来のグルタチオンの酵素学的定量法に導入することによって、GSHとGSSGを簡単かつ正確なやり方で同時に定量できることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
従って、本発明の主たる目的は、酸化剤、グルタチオン還元酵素及びGSHトラッピング剤を用いた酸化型及び還元型グルタチオンの同時定量方法を提供することにある。
【0012】
本発明の上記及び他の目的及び特徴は添付する図面と併せて与えられる以下の説明からより明確になる。
【0013】
(発明の実施形態)
本発明の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法は、以下の工程:組織試料を採取し、その代謝作用を停止させた該組織のホモジネートを調製する工程;等容量のGSHトラッピング剤を添加したホモジネート画分及び添加しないホモジネート画分を調製し、リン酸緩衝液、蒸留水及びNADPH溶液を該各画分に添加する工程;グルタチオン還元酵素及び酸化剤を該各画分に添加し反応を開始する工程;及びGSHトラッピング剤を添加した画分を含む反応混合物の吸光度を測定して酸化型グルタチオン(GSSG)を定量し、GSHトラッピング剤を添加しない画分を含む反応混合物の吸光度を測定して総グルタチオンを定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)を定量する工程を含む。
【0014】
細胞内グルタチオンの定量方法をさらに以下の工程によって説明する。
工程1:試料の調製
組織試料を調製し、その代謝作用を停止させた該組織のホモジネートを与える:該組織試料は動物又は植物源から採取し、−70℃の温度で凍結乾燥し、5%PCA(過塩素酸)溶液下で処理してその代謝作用を停止させた組織のホモジネートを与える。
【0015】
工程2:GSHの不活性化
等容量のGSHトラッピング剤を添加したホモジネート画分及び添加しないホモジネート画分を調製し、リン酸緩衝液、蒸留水及びNADPH溶液を該各画分に添加する:N−エチルマレイミド(NEM)がGSHトラッピング剤として使用することが好ましく、それは該画分に最終濃度が20ないし100mMとなるように添加することが好ましく、2ないし3倍容量のリン酸緩衝液を最終濃度が50から150mMになるように該画分に添加することが好ましく、6ないし7倍容量の蒸留水を該画分に添加することが好ましく、20から30%(v/v)のNADPH溶液を最終濃度が0.1から0.3mMの濃度になるように該画分に添加することが好ましい。
【0016】
工程3:反応
反応は各画分にグルタチオン還元酵素及び酸化酵素を添加することによって開始する:10ないし15%(v/v)のグルタチオン還元酵素を最終濃度が0.05ないし0.2U/mlになるよう該画分に添加することが好ましく、酸化剤として5、5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を使用することが好ましく、10ないし15%(v/v)の酸化剤を最終濃度が0.02ないし0.1mMになるように該画分に添加することが好ましい。
【0017】
工程4:吸光度測定
酸化型グルタチオン(GSSG)及び総グルタチオンを、GSHトラッピング剤を添加した画分及び添加しない画分を含む反応混合物の吸光度を測定することによってそれぞれ定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)の量を測定する:この際吸光度は405nmで測定することが好ましい。
【0018】
組織や細胞中のグルタチオンはグルタチオンの抽出過程において細胞内のグルタチオン代謝−関連酵素の影響を受けやすいので、本発明の方法を用いて酸化型および還元型グルタチオンの定量を行うに際し、その分析結果が組織試料自体の状態を反映しない可能性があることに気をつけなければならない。本発明の方法にあるもうひとつの問題は試料中に存在する酸素及び金属イオンが還元型グルタチオン(GSH)のスルフィドリル基と反応し、グルタチオン定量のために試料を処理する工程中に酸化型グルタチオン(GSSG)が産生されることである。そのような場合、総グルタチオンの量は同じままであるが、組織中に存在する量よりも低いGSH値及び高いGSSH値になることが予想される。かかる問題は細胞内のGSH及びGSSHを正確に測定するために克服しなければならない。このために、本発明者らは組織試料中のGSH及びGSSGの量を正確に測定するために動物から採取した組織試料のグルタチオンプールにおける変化を阻止するための戦略を用いた。すなわち、組織試料中のグルタチオンの酸化/還元比は組織試料を動物から採取した後グルタチオン還元酵素及びNADPHのような代謝関連酵素によって変化するので、本発明では、代謝によるグルタチオンの酸化/還元比のそのような変化を採取した組織試料を直ちに凍結−固定化することによって阻止した。組織試料を固定化し、液体窒素を用いて凍結させ、使用するまで−70℃で保存した。本発明によれば、採取した組織試料の代謝を阻止するためのもう一つの戦略は代謝−関連酵素をタンパク質変性剤である、5%(v/v)PCA溶液の存在下で凍結した組織試料をホモジナイズすることによって変性することである。
【0019】
GSSGの定量方法は、試料中のGSHの前−除去が必要である。また、細胞内の酸化型グルタチオンを正確に定量するために、試料を動物から採取した後、GSHからGSSGへの人工的酸化を避けなければならず、GSHの酸化防止はGSHのスルフィドリル基のマスキングによって達成することができる。この目的のために、本発明者らは、スルフィドリル基間のジスルフィド結合の形成をグルタチオンのスルフィドリル基との共有結合によって阻害するNEMのようなGSHトラッピング剤を用いることによって試料中のGSHをマスキングするという戦略を用いた。中性pHにおけるNEMの反応速度は1分に満たないほど速く、その使用を非常は効率的である。NEMはまたグルタチオン還元酵素の活性を阻害するので、残存NEMをGSHの完全なマスキングの後除去しなければならず、よって本発明ではNEMを含む反応混合物を等容量のエーテルで抽出して残存NEMを除去してからGSSG定量に使用する。
【0020】
GSHの量をGSH及びDTNB間の反応に起因するDTNBからTNBへの連続還元率によって測定し、そして試料中に含まれるか又はGSHとDTNB間の反応によって生成されるGSSGはグルタチオン還元酵素及びNADPHの反応によってGDHに還元される。よって、総グルタチオン、即ちGSHとGSSGの量の合計はTNBへの還元率の合計によって表される。TNBへの還元率は正確に総グルタチオンの量に比例しており、405nmにおける吸光度を測定することによって定量する。
【0021】
NEM−未処理試料からグルタチオンの全量が直線的増加の範囲間の吸光度プロットの傾きを測定することによって定量されるが、それは試料中のGSH及びGSSGに変換されたGSH量を表し、そしてNEM−処理試料から酸化型グルタチオン(GSSG)を吸光度を測定することによって定量する。
【0022】
一方、酸化型及び還元型グルタチオンに対する標準曲線を一定量の酸化型及び還元型グルタチオンの吸光度をそれぞれ測定することによって作成した後、総グルタチオン及びGSSGの吸光度を標準曲線の吸光度と比較することによってGSSGの量を定量し、試料中のタンパク含量を分析後、nmolグルタチオン/mgタンパク質に換算する。
【0023】
さらに、酸化型及び還元型グルタチオンに対して大量の試料を分析するためにマルチウェルプレートを用いることもできる。すなわち、大量のサンプルの酸化型及び還元型グルタチオンの定量を以下の工程によって同時に行うことができる:リン酸緩衝液、蒸留水、及びDADPH溶液をマルチウェルプレートの各ウェルに分注する工程;各ウェルに等容量のNEM−処理または未処理試料を添加し、続いてグルタチオン還元酵素及びDTNBを各ウェルに添加して反応を開始させる工程;及び該NEM処理試料を含む反応混合物の吸光度を測定して酸化型グルタチオン(GSSG)を定量し、該NEM−未処理試料を含む反応混合物の吸光度を測定して総グルタチオンを定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)を量を測定する工程:ここで、各工程の条件は上記のグルタチオンの定量方法のそれと同一である。
【0024】
本発明をさらに以下の実施例において説明するが、これらは本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。
【0025】
実施例1:グルタチオン定量のための組織試料の採取及びNEM処理
マウス(C3H、C57B/L)またはSDラットから採取した組織の代謝作用を停止させるため、該組織を凍結−固定化させ、−70℃にて保存した。凍結−固定化した組織の約20mgをガラスホモジナイザー(glass homogenizer)によって5%(v/v)PCA(過酢酸)溶液500μlにてホモジナイズした。
【0026】
GSSGの正確な測定のために、本発明ではNEMをGSHトラッピング剤として用いた。NEM溶液は室温で非常に不安定であるため使用直前に調製し、氷上で保つが、一方、低いpH条件下で比較的安定であるため、5%(v/v)PCAに250mM濃度になるよう調製した。上記で調製した組織のPCAホモジネートを60μlと400μlに分け、250mM NEM100μlをPCAホモジネートのアリコート400μlの方にNEMの最終濃度が250mMになるよう添加し、それを2M KHCO3溶液210μlの添加によって直ちに中和化し、室温で30分間インキュベートした。NEM反応の完了がGSHとGSSGの首尾よい定量のために重要であるので、NEMで処理した試料及びNEMで処理していない試料をNH2カラムを用いるHPLCによってGSH及びGSSGそれぞれに対して分析した(図1a及び図1b)。図1aは、NEMで処理していない試料から得たGSSG及びGSHのクロマトグラムであり、図1bは、NEMで処理した試料から得たGSSG及びGSHのクロマトグラムである。図1a及び図1bに示されるように、GSHはNEM−処理画分では全く検出されず、このことは反応が完了したことを示す。
【0027】
上記で調製したNEM−処理及びNEM−未処理画分をそれぞれ遠心分離し、上澄み液を得た後、NEM−未処理試料の上澄み液を1mM EDTAを含む100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で5ないし10倍に希釈し、総グルタチオンの定量のための試料を調製し、そしてNEM−処理試料の上澄み液を未反応の残存NEMを除去するための前処理、すなわち等容量のエーテルによる10回の抽出とそれに続く真空ポンプを用いて乾燥させることによるエーテルの除去操作に供し、GSSGの定量のための試料を調製した。また、組織のNEM−未処理ホモジネートの遠心分離によって得られたタンパク質沈殿物を1N NaOH100μlに溶解し、10倍に希釈し、その後ブラッドフォード(Bradford)法によるタンパク質の測定に供した。タンパク質標準曲線を表1に示す濃度のウシ血清アルブミン(BSA)を用いてブラッドフォード法によって作成した(図3a参照)。図3aは、ブラッドフォード法によって作成したタンパク質の標準曲線である。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例2:マルチウェルプレートを用いたグルタチオンの定量
本発明に従い、組織のグルタチオン量を大量の試料を定量するためのマルチウェルプレートを用いることによって以下のように測定した: まず、5×リン酸緩衝液(5mM EDTAを含む500mM リン酸緩衝液、pH7.0)50μl、蒸留水 125μl、及び10mM NADPH5μlの混合物を各ウェルに分注した。次いで、NEM−処理試料及びNEM−未処理試料をそれぞれ20μlずつ別々のウェルに添加し、グルタチオンの標準曲線作成のために、1mM GSH(還元型)及び1mM GSSG(酸化型)を適当に希釈し、そして各々の希釈液20μlを別々のウェルに添加した。その後、反応をグルタチオン還元酵素(1.2U/ml)25μlとDTNB(0.6mM)25μlの混合物を添加することによって開始させるが、ここでグルタチオン還元酵素は6units/mlの濃度になるようにリン酸緩衝液に溶解し、反応混合物に添加する直前に同じリン酸緩衝液で再び5倍に希釈し、そしてGSHの酸化剤として用いるDTNB(50×)は0.5%(w/v)NaHCO3溶液に3mM濃度になるよう溶解し、使用直前に蒸留水で5倍に希釈した。続いて、反応速度論的定量ソフトウェアを具備したマイクロプレートリーダーを用いて吸光度を5分にわたって405nmで測定し、吸光度プロットの傾きを直線の範囲で決定した。次いで、グルタチオンの標準曲線を吸光度プロットの傾きの変化から作成した。組織試料の吸光度プロットの傾きの測定値を総グルタチオン又はGSSG(nmol/ml試料)の量に換算し、それを実施例1のタンパク質濃度の測定に基づいて再びnmolグルタチオン/mgタンパク質に換算した(図3参照)。図3は、DTNB及びグルタチオン還元酵素で処理した試料中に生成したTNBの吸光度の一定時間における測定値を示すグラフである。図2に示されるように、吸光度は2ないし3分にわたって直線的に増加し、これは反応条件が適切に最適化されたことを示している。
【0030】
実施例2 − 1: 標準曲線の作成
グルタチオン標準曲線を実施例2で調製したグルタチオンの標準溶液の吸光度を測定することによって作成した(参照:表2及び表3、図3b及び図3c参照)。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
上記表2及び表3はそれぞれGSH及びGSSHの濃度及び対応する標準曲線の傾きをそれぞれ示す。そして図3a及び図3bはそれぞれGSHの標準曲線及びGSSGの標準曲線を示す。図3aにおいて直線的増加の範囲間の吸光度プロットの傾きは3.1871と決定され、図3bにおいて吸光度プロットの傾きは5.1794と決定された。
【0034】
実施例3:組織試料中のグルタチオンの定量
C3Hマウスから採取した肝組織20mgを5%(v/v)PCA溶液500μlにてホモジナイズし、そのホモジネートを実施例1ないし実施例2に記載したように定量反応に供し、直線的増加の範囲間にある吸光度プロットの傾きを決定するために吸光度を測定し、組織試料中の総グルタチオンとGSSGを実施例2−1で作成した標準曲線から定量した。直線的増加の範囲間にある20倍希釈した組織試料中の総グルタチオンの吸光度変化は74.49と測定され、これは図3bの標準曲線を用いて467.45nmole総グルタチオン/ml試料と換算された。GSSGの吸光度変化は28.49と測定され、これは図3cの標準曲線を用いて9.63nmoleGSSG/ml試料と換算された。
【0035】
実施例4:グルタチオン濃度のグルタチオン量への換算
実施例3で測定した総グルタチオン濃度及びGSSG濃度(nmole/ml試料)をタンパク質1mg当たりのグルタチオン(nmol)の量に換算した。ペレット化したタンパク質をNEM−未処理ホモジネートの遠心分離後に測定した実施例2と同様の手法でタンパク質量をブラッドフォード法と標準曲線によって測定した。タンパク質濃度は13.88mg/mlと測定された、その結果、総グルタチオン濃度値(467.45nmol/ml)とGSSG濃度値(9.63nmol/ml)はそれぞれ33.63nmol/mg及び0.69nmol/mgに換算された。従って、組織試料中の特異的GSH量は32.99nmol/mgであることがわかった。
【0036】
実施例5:グルタチオン定量方法の検証
組織試料中のグルタチオン定量のための本発明方法の可能性を調べるために、試料の量を増加させながら総グルタチオンとGSSGを定量した。すなわち、0、10、20、30、40または50μlの試料を添加することを除けば、実施例2と同様な方法で総グルタチオン量とGSSG量を測定した(図4a及び図4b参照)。図4aは組織試料の量を増加させながら測定した総グルタチオン量を表す吸光度プロットの傾きの変化を示すグラフである。図4a及び図4bに示されるように、測定されたグルタチオン量は標準曲線の有効範囲内では試料の増加に伴って増加した。一方、測定されたGSSG量は30ないし40μlまでは試料の増加に伴って増加したが、その増加の程度は40μl以上では試料の増加とともに減少した。この結果は、エーテル抽出によって完全に除去されなかったNEM−処理試料に含まれる残存NEM増加量によるグルタチオン還元酵素の阻害によってもたらされると考えられ、よって、定量反応に用いる試料の適切な量は望ましくは20μlであることがわかった。上記の結果に基づき、試料20μl中の総グルタチオンとGSSGの量を測定し、タンパク質の単位重量あたりのグルタチオン量、nmol/mgタンパク質にも換算することができる。グルタチオン定量のための本発明方法の検出限界は0ないし0.4nM/試料であり、本発明方法がHPLC分析法と同じくらい感度がよいことを示す。
【0037】
以上に明確に説明及び証明したように、本発明は、試料をGSHトラッピング剤で処理する工程を酸化剤及びグルタチオン還元酵素を用いる従来のグルタチオンの酵素学的定量法に導入することによる、酸化型及び還元型グルタチオンの同時定量方法を提供する。酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量のための本発明の方法は、以下の工程:組織試料を採取し、その代謝作用を停止させた組織のホモジネートを調製する工程;等容量のGSHトラッピング剤を添加したホモジネート画分及び添加しないホモジネート画分を調製し、リン酸緩衝液、蒸留水及びNADPH溶液を該各画分に添加する工程;グルタチオン還元酵素及び酸化剤を該各画分に添加し反応を開始する工程;及びGSHトラッピング剤を添加した画分を含む反応混合物の吸光度を測定して酸化型グルタチオン(GSSG)を定量し、GSHトラッピング剤を添加しない画分を含む反応混合物の吸光度を測定して総グルタチオンを定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)の量を測定する工程を含む。本発明によれば、酸化型及び還元型グルタチオンの量を簡単かつ正確なやり方で同時に測定でき、それは細胞内の酸化/還元状態の異常によってもたらされる疾患の診断及び治療に実際に応用することが可能である。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1aはNEMで処理していない試料から得た酸化型グルタチオン(GSSG)と還元型グルタチオン(GSH)のHPLCクロマトグラムである。
【図2】図1bはNEMで処理した試料から得たGSSGとGSHのHPLCクロマトグラムである。
【図3】図2はDTNB及びグルタチオン還元酵素で処理した試料中で産生されたTNBの一定時間の吸光度測定値を示すグラフである。
【図4】図3aはブラッドフォード法によって作成したタンパク質の標準曲線である。
【図5】図3bは吸光度プロットの傾きの変化を示すGSH標準曲線である。
【図6】図3cは吸光度プロットの傾きの変化を示すGSSG標準曲線である。
【図7】図4aは組織試料の量を増加させながら測定した総グルタチオンの量を表す吸光度プロットの傾きの変化を示すグラフである。
【図8】図4bは組織試料の量を増加させながら測定したGSSGの量を表す吸光度プロットの傾きの変化を示すグラフである。
Claims (20)
- 酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法であって、以下の工程:
(i)組織試料を採取し、その代謝作用を停止させた組織のホモジネートを調製する工程;
(ii)等容量のGSHトラッピング剤を添加したホモジネート画分及び添加しないホモジネート画分を調製し、リン酸緩衝液、蒸留水及びNADPH溶液を該各画分に添加する工程;
(iii)グルタチオン還元酵素及び酸化剤を該各画分に添加し反応を開始する工程;及び
(iv)GSHトラッピング剤を添加した画分を含む反応混合物の吸光度を測定して酸化型グルタチオン(GSSG)を定量し、GSHトラッピング剤を添加しない画分を含む反応混合物の吸光度を測定して総グルタチオンを定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)を定量する工程;
を含む上記方法。 - 前記組織試料が動物または植物起源から採取したものである、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 前記組織のホモジネートが、代謝作用を停止させるために組織試料を−70℃の温度で凍結乾燥し、5%PCA(過塩素酸)溶液で処理することによって得られたものである、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 前記GSHトラッピング剤がN−エチルマレイミド(NEM)である、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 前記GSHトラッピング剤が20ないし100mMの最終濃度になるように前記画分に添加される、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 2ないし3倍容量のリン酸緩衝液を最終濃度が50ないし150mMになるように前記画分に添加する、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 6ないし7倍容量の蒸留水を前記画分に添加する、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 20ないし30%(v/v)のNADPH溶液を最終濃度が0.1ないし0.3mMになるように前記画分に添加する、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 10ないし15%(v/v)のグルタチオン還元酵素を最終濃度が0.05ないし0.2U/mlになるように前記画分に添加する、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 前記酸化剤が5、5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)である、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 10ないし15%(v/v)の酸化剤を最終濃度が0.02ないし0.1mMになるように前記画分に添加する、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 前記吸光度が405nmで測定される、請求項1に記載の酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- マルチウェルプレートを用いる酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法であって、以下の工程:
(1)リン酸緩衝液、蒸留水、及びDADPH溶液をマルチウェルプレートの各ウェルに分注する工程;
(2)各ウェルに等容量のNEM−処理または未処理試料を添加し、続いてグルタチオン還元酵素及びDTNBを各ウェルに添加して反応を開始させる工程;及び
(3)該NEM−処理試料を含む反応混合物の吸光度を測定して酸化型グルタチオン(GSSG)を定量し、該NEM−未処理試料を含む反応混合物の吸光度を測定して総グルタチオンを定量した後、GSSGの量を総グルタチオンの量から差し引いて還元型グルタチオン(GSH)を定量する工程;
を含む上記方法。 - 2ないし3倍容量のリン酸緩衝液を最終濃度が50ないし150mMになるように前記試料に添加する、請求項13に記載のマルチウェルプレートを用いる酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 6ないし7倍容量の蒸留水を前記試料に添加する、請求項13に記載のマルチウェルプレートを用いる酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 20ないし30%(v/v)のNADPH溶液を最終濃度が0.1ないし0.3mMになるように前記試料に添加する、請求項13に記載のマルチウェルプレートを用いる酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- NEMを最終濃度が20ないし100mMになるように前記試料に添加する、請求項13に記載のマルチウェルプレートを用いる酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 10ないし15%(v/v)のグルタチオン還元酵素を最終濃度が0.05ないし0.2U/mlになるように前記試料に添加する、請求項13に記載のマルチウェルプレートを用いる酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 10ないし15%(v/v)のDTNBを最終濃度が0.02ないし0.1mMになるように前記試料に添加する、請求項13に記載のマルチウェルプレートを用いる酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
- 前記吸光度が405nmで測定される、請求項13に記載のマルチウェルプレートを用いる酸化型及び還元型グルタチオンの迅速定量方法。
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