JP2004518420A - オリゴリボヌクレオチドのmaldi−tof−ms分析および/または配列決定方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、オリゴリボヌクレオチドのMALDI−TOF−MS分析および/または配列決定方法に関する。本発明は、MALDI−TOF−MSを用いるDNAヌクレオチド配列の決定方法、およびMALDI−TOF−MSを用いる多型性の決定方法にも関する。本発明は、MALDI−TOF−MSによるDNA鋳型またはRNA転写産物を分析および/または決定するためのキット、および/または多型性を決定するためのキットを提供する。
Description
【0001】
[技術分野]
本発明は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF−MS:Matrix−assisted laser desorption ionization time−of−flight mass spectrometry)の使用によるオリゴリボヌクレオチドの分析および/または配列決定法の改善法に関する。特に、本発明は、MALDI分析および/または配列決定時のシグナル強度の低下を減少または除去する修飾リボヌクレオチドに関する。
【0002】
[背景技術]
ヒトゲノムプロジェクトは、ヒトゲノム配列決定の最終段階にある。ポストヒトゲノムプロジェクトの一つは、それぞれ異なるヒトまたは種を比較するために、また一塩基多型(SNP)を決定するために、特異的部位を再配列決定することであろう。このような再配列決定システムは、極めて迅速で、費用効果が高くなくてはならない。
【0003】
MALDI−TOF−MS(Smith,L.M.,Science,1993,262,530;およびHillenkamp et al.,Biological Mass Spectrometry,Burlingame and McCloskey Editors、Elsevier Science Publishers,アムステルダム,1990,pp.49−60)は、分子量の大きい合成の重要なポリマーおよび生物学的に重要なポリマーの迅速、正確、かつ鋭敏な質量分析法に発展しつつある。MALDI−TOF−MSは、SNPの決定と共に、オリゴリボヌクレオチドの分析および配列決定に有利な方法である。
【0004】
MALDI−TOF−MSは、極めて迅速なDNA配列決定を可能にし、ゲルまたは蛍光色素が不要であるという利点を有する。
【0005】
サンガー法に基づく短いDNAの再配列決定システムは、MALDI−TOF−MSにより実施されてきた(Moniforte,J.A.,and Becker,C.H.,Nature Med.,1997,3,360−362; Kirpekar,F.et al.,Nucleic Acids Res.,1998,26,2554−2559)。MALDI−TOF−MSを用いて配列決定できるDNAの長さが長くなるほど、DNA配列決定分野における新たな代替技術としてのMALDI−TOF−MSの利点はより大きくなる。
【0006】
しかし、MALDI−TOF−MSによるDNA分析方法に重大な限界が出現した。これらの限界の一つは、MALDI過程においてDNA分子の多くが断片となる点である。DNAは、無傷の親イオンシグナルのみでなく、DNA断片化によって生じたその他のシグナルも、塩基の喪失と骨格の切断として示す。MALDIの間のDNA断片化開始段階が、核酸塩基部分のプロトン付加である断片化機序モデル(Zhu,L.;et al.,J.Am.Chem.Soc.1995,117,6048−6056)が作成された。核酸塩基部分のプロトン付加により、N−グリコシド結合が弱まり、塩基の喪失と、デオキシリボース部分の1’位におけるカルボカチオン形成を同時に引き起こす。その後の再配列により、3’炭素−酸素結合における骨格切断が生じる。
【0007】
MALDI分析時のDNAの安定化が、DNA配列決定またはその他の核酸分析に有用と考えられてきた。
【0008】
米国特許第5,691,141号に、サンガー法に基づくDNA配列決定方法が説明されている。この方法には、オリゴヌクレオチドプライマー、鎖終結ヌクレオシド三リン酸および/または鎖伸長ヌクレオシド三リン酸への質量修飾の導入および/または特異的標識配列とハイブリダイゼーション可能な質量識別標識プローブの利用が含まれる。ヌクレオチド修飾として、米国特許第5,691,141号に、末端ヌクレオシドの糖部分の5’位でグリシン残基により修飾されたプライマー;ピリミジンヌクレオシドの複素環塩基のC−5でグリシン残基により、β−アラニン残基により、エチレングリコールモノメチルエーテルにより、ジエチレングリコールモノメチルエーテルにより修飾されたプライマー;デオキシアデノシンの複素環塩基のC−8で、グリシンまたはグリシルグリシンにより質量修飾されたプライマー;2’−アミノ−2’−デオキシチミジンの糖部分のC−2’で、エチレングリコールモノメチルエーテル残基により質量修飾されたプライマー;ホスホロチオエート基のアルキル化によりヌクレオチド間結合において質量修飾されたDNAプライマー(Slim G.and Gait M.J.,Nucleic Acids Research,1991,vol.19,No.6,1183−1188による);グリシンまたはβ−アラニン残基により2’−アミノまたは3’−アミノ基で質量修飾された2’−アミノ−2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸および3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシチミジン−5’−三リン酸;グリシン、グリシル−グリシンおよびβ−アラニン残基により複素環塩基のC−5で質量修飾されたデオキシウリジン−5’−三リン酸;8−グリシル−2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸および8−グリシル−グリシル−2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸;および鎖伸長2’−ジデオキシチミジン−5’−(アルファ−S)−三リン酸およびその後の2−ヨードエタノールおよび3−ヨードプロパノールによるアルキル化が説明されている。
【0009】
しかし、米国特許第5,691,141号に説明されている修飾オリゴヌクレオチドを用いる質量分析によるDNA配列決定には、シグナル強度の低下と塩基喪失の問題がある。この欠点により、配列決定、特により長いDNA配列決定の配列決定を効率的に実施することは不可能である(Taranenko,et al.,Nucleic Acids Res.,1998,26,2488−2490)。
【0010】
Shuette J.M.et al.,(J.Pharm.Biomed.Anal.1995,13,1195−1203)は、以前に、天然ホスホジエステルDNA配列の配列決定に使用されたMALDI−TOF−MSを、アルファホスホロチオエートデオキシリボヌクレオチド(S−dNTP)を含むDNAの配列決定に使用することを提唱している。しかし、この文献に提示されているデータ(例えば、Schuette et al.の図2)は、S−dNTPの利用が、MALDIを使用することによる配列決定分析に有効でないことを示している。
【0011】
DNAにホスホロチオエートヌクレオチドを取り込むことは、MALDI配列決定分析に不適切であることは、本発明者等によっても確認された。本明細書において、図1Cおよび1D(ホスホジエステルについて言及)と比較した(図1Aおよび1B(S−dNTPを含むオリゴDNAについて言及、この物質を今後S−DNAと呼ぶ)は、20merと30merのスペクトルに焦点を合わせた時、DNA配列決定におけるホスホジエステルのホスホロチオエートへの置換は、断片化を増加させることを示している。そのとき、オリゴS−DNAにより示された質量範囲の増大に伴うシグナル強度の低下は、DNAによって示されたよりも遙かにめざましいものであった。
【0012】
上記データから、本研究分野において、シグナル強度の低下を軽減でき、より長いオリゴヌクレオチド配列の配列決定を可能にするMALDI−TOF−MS分析方法の新しいアプローチの開発が必要であることは確かである。
【0013】
[発明の概要]
本発明者等は、驚くことに、今後S−2’−e−NTPと呼ばれる2’位に電気的に陰性の置換基を有するアルファホスホロチオエート(好ましくはS−2’−フルオロ−リボヌクレオチド(S−2’−F−NTP)、またはS−2’−OH−リボヌクレオチド(S−NTP))、およびアラビノ−リボヌクレオチド(ara−NTP)が、シグナル強度の低下に抵抗性を示し、MALDI−TOF−MS分析に有利に使用できることを発見した。
【0014】
従って、本発明は、S−2’−e−ATP、S−2’−e−CTP、S−2’−e−GTP、S−2’−e−UTPおよびそれらの誘導体(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)からなる群から選択される少なくとも一つのリボヌクレオチドを利用するRNA配列、断片または転写物(一般にオリゴリボヌクレオチド類)のMALDI−TOF−MS分析方法に関する。
【0015】
本発明はまた、ara−ATP、ara−CTP、ara−GTP、ara−UTPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一つのリボヌクレオチドを利用するRNA配列、断片または転写物(一般にオリゴリボヌクレオチド類)のMALDI−TOF−MS分析方法にも関する。
【0016】
更に、本発明は、a)上記に定義されたara−NTPまたはS−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)から選択されるリボヌクレオシド三リン酸またはアルファ−チオ−置換(鎖伸長リボヌクレオチド)を提供するステップと、b)RNAポリメラーゼと該RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA鋳型の存在下で、前記鎖伸長リボヌクレオチドと、一種類以上の3’−dNTP誘導体(鎖終結リボヌクレオチド)とを反応させ、オリゴヌクレオチド転写産物を得るステップと、c)MALDI−TOF−MSにより前記オリゴリボヌクレオチド転写産物を分析し、転写産物の配列とDNA鋳型の配列を決定するステップとを含むMALDI−TOF−MSを用いるDNAヌクレオチド配列の決定方法に関する。
【0017】
本発明は、MALDI−TOF−MSと、S−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)またはara−NTPを利用するSNPの決定方法にも関する。
【0018】
本発明は更に、i)RNA転写産物を合成するための本発明に従って修飾された鎖伸長リボヌクレオチド(上記工程aで提示)のセットと、ii)RNA転写産物の合成を終結させ、塩基特異的な終結相補的リボヌクレオチド転写物断片を生成するための一種類以上の鎖終結リボヌクレオチドと、iii)RNAポリメラーゼとを含む、MALDI−TOF−MSによるDNA鋳型またはRNA転写産物の配列決定キットに関する。
【0019】
開示されている上記キットは、任意で(iv)MALDI−TOF−MS分析用の一種類以上のマトリックスも更に含むことができる。
【0020】
本発明は、(i)〜(iii)および上記に開示されている成分任意の(iv)を含むMALDI−TOF−MSを用いるSNPの決定キットにも関する。
【0021】
[発明の詳細な説明]
本発明は、S−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)およびara−NTPから選択される少なくとも一つのリボヌクレオチドを利用する、RNA配列、RNA断片またはRNA転写物(一般にオリゴリボヌクレオチド)のMALDI−TOF−MS分析および/または配列決定方法を開示する。本発明によるオリゴリボヌクレオチドラダーの分析方法の実施例は、図4、5、6、8に報告されている。
【0022】
本発明のMALDI−TOF−MS法に有用な修飾リボヌクレオチドは、S−2’−e−NTPおよびara−NTPとして示され、一方NTPを含むオリゴは、それぞれオリゴS−2’−e−RNAおよびオリゴara−RNAとして示される。
【0023】
S−2’−e−NTPを含むオリゴの化学式は図3(H)に記載されている。「S」という用語はアルファホスホロチオエート骨格を意味し、「e」はリボース部分の2’位における強力な電気的に陰性の置換基を意味する。電気的に陰性の置換基は、好ましくはF、Cl、NH2、N3およびOHからなる群から選択される(Guschlbauer W.and Jankowski K.,Nucleic Acid Research,1980,volume 8,number 6,1421−1433の表III参照)。しかし、これらの好ましい置換基には限定されない。その他の強力な電気的に陰性の置換基も使用できる。「e」が−OHの場合、リボヌクレオチドはS−NTPとして表示される(この場合、オリゴはオリゴS−RNAとして表示される。)。
【0024】
リボヌクレオチドS−2’−e−NTPは、種々の含窒素塩基、すなわちアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、および/またはそれらの誘導体を含む。従って、化合物、S−2’−e−NTPは、一般にS−2’−e−ATP、S−2’−e−GTP、S−2’−e−CTP、S−2’−e−UTPとしても表示できる。
【0025】
Kawasaki A.M.,et al.,(J.Med.Chem.,1993,36,831−841)は、S−2’−F−NTPを開示し、RNA標的に対する結合力を保持できるオリゴを調製した。しかし、このリボヌクレオチドまたはオリゴをMALDI−TOF−MS分析または配列決定に利用することに関しては開示も提唱もされていない。本発明のS−2’−F−NTPおよびS−2’−F−RNAに関して、これらはTriLink Bio Technologies社(サンディエゴ、カリフォルニア州)により調製された。
【0026】
オリゴS−RNAは、シュモクザメのリボザイムの切断機序の研究において、Slim G.and Gait M.J.,(Nucleic Acids Research,1991,vol.19,No.6,1183−1188)により開示され、合成された。しかし、MALDI系におけるこのオリゴの利用は開示も提唱もされていない。
【0027】
本発明のS−NTPは、種々の含窒素塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、および/またはそれらの誘導体を含み、S−ATP、S−CTP、S−GTP、S−UTP、およびそれらの誘導体として表される。
【0028】
本発明者等は、少なくとも一種類のS−NTP(図3の化学式F)を含むオリゴは、MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定のシグナル強度低下に対し抵抗することを発見した(図4)。
【0029】
MALDI−TOF−MSによる分析および配列決定におけるS−RNAの利用が有利であることは、予測できなかった。なぜならば、DNAへのアルファ−ホスホロチオ基の導入(図3Eおよび図1A、1B参照)およびRNAのアルファ−リン酸基へのアルキル−チオ−の導入(図7参照)により、MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定におけるシグナル強度低下への抵抗性を示さなかったためである。
【0030】
オリゴS−2’−e−RNAに関して、好ましい例は、S−2’−F−ATP、S−2’−F−CTP、S−2’−F−GTP、S−2’−F−UTPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種類のS−2’−F−NTPを含むオリゴS−2’−F−RNAである。
【0031】
リボースの2’位におけるフルオロ置換基に関して、Tang Wei et al.(Anal.Chem.,1997,69,302−312)は、2’炭素において置換されたフルオロ部分を有するデオキシリボヌクレオチド(dNTP)は、DNA配列を断片化に対して安定化させ、従って、入手可能な質量範囲を拡大することを提唱した。しかし、最近の研究(Scalf,M.学位論文、ウィスコンシン大学、マディソン、ウィスコンシン州、2900)により、2’−フルオロ−電気陰性置換基がシグナル強度の低下を軽減しないことを証明した。この事は、MALDI分析においてDNA配列の配列決定を不利にする可能性がある。
【0032】
本発明者等は、2’−フルオロリボヌクレオチド(2’−F−NTP)のオリゴRNA(2−F’−RNA)への導入効果を更に研究し、オリゴ2−F’−RNAを使用するMALDI配列決定法の結果(本明細書の図2Aおよび2B)が、RNA配列の場合(図2Cおよび2D)と変わらず、長いRNA配列のシグナル強度の低下を軽減しないことを見いだした。
【0033】
本明細書の実験章に使用された2−F’−RNAは、TriLink Bio Technologies社(サンディエゴ、カリフォルニア州)により調製され、2’−フルオロ−(C)nTの形態で合成された。dTTP(2’−フルオロ修飾されていない)を出発ヌクレオチドとして使用し、CPG支持体に結合させた。その上に、例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」Vol,I,Section V,Unit 2.11,Johon Wiley & Sons,Inc.に記載されている、本技術において一般的であり、十分に既知の技術に従って、2’−フルオロ−CTPを加えた。2’−フルオロ−(C)10T、−(C)20T、−(C)30Tのオリゴマーが合成された。これらのオリゴマーは、たとえこれらのオリゴマーの実際の大きさが、3’末端のTの存在により11、21、31merであったとしても、それぞれRNA10mer、20mer、30merと呼ばれる。実際には、dTTpは修飾されず、本発明は、2’−電気的に陰性な置換基、およびara−置換基に関するものである。
【0034】
S−2’−F(C)nTおよびara(C)nTも、2’−F−(C)n−Tに関する説明と同様に合成された。この場合も、オリゴマーは、たとえ実際の大きさが、3’末端のTの存在により11、21、31merであったとしても、10mer、20mer、30merと呼ばれる。
【0035】
同様に、図6のオリゴマーは、たとえ実際の大きさが、3’末端のTの存在により1〜11mer、1〜21mer、1〜31merであったとしても、1〜10mer、1〜20mer、1〜30merと呼ばれる。
【0036】
S−2’−F−NTPを含むオリゴの分析に関する本発明の方法に関して、図5および図6は明らかに、リボースの2’位におけるフルオロ置換基と組み合わせたアルファ−ホスホロチオ基の導入は、MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定において特に有用かつ有効であり、シグナル強度の低下に抵抗性を示すことを示している。これは、リボヌクレオチドへのアルキル−S基の導入(図7Cおよび7D参照)と、リボヌクレオチドの2’位におけるフルオロ基の導入(図2Aおよび2B)が、シグナル強度低下の存続を証明したことから、驚くべき効果である。
【0037】
本発明者等は、2’−エピマーリボヌクレオチド(アラビノ−NTPおよびara−NTPとしても知られる、化学式図3のD)を含むオリゴが、MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定においてシグナル強度の低下に対する抵抗性を示すことも見いだした。これらのリボヌクレオチドは、化合物S−2’−e−RNAに関して報告された種々の含窒素塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルおよび/またはそれらの誘導体を含む。
【0038】
ara−RNAは、例えば、Beardsley,G.P.,et al.,Nucleic Acids Res.,1988,16,9165−9176; Tang,W.,et al.,Anal.Chem.,1997,69,302−312に従って、調製できる。ara−RNAは、Tang,W.,et al.,において開示されたが、アラビノ−ヌクレオシドは、Tang,W.,et al.,の図3B、4、6Bおよび8にあるように、塩基喪失ピークを示すことが観察された。これによって、この修飾による安定化は完璧とは言えないことが示された(Tang,W.,et al.,の文献の311ページ、左の列、16−20行参照)。従って、ara−RNAは、MALDI−TOF−MS分析または配列決定に有用でないと見なされた。これに反して、本発明者等は、ara−リボヌクレオチドを含むara−RNAラダーは、好ましくはMALDIマトリックスとして3−HPAの存在下に、MALDI−TOF−MS分析または配列決定を用いるシグナル強度の低下に対する抵抗性を示すことを証明した。
【0039】
上記に説明されているリボヌクレオチドは、オリゴリボヌクレオチド配列産物を調製するために使用され、このオリゴリボヌクレオチド配列産物は、S−2’−e−RNA(好ましくはS−2’−F−RNAまたはS−RNA)およびara−RNAとして定義することができる。本発明のオリゴリボヌクレオチド配列産物(ORN)は、本発明のアルファ−チオおよび/またはアラビノ修飾リボヌクレオチドを含むあらゆるORNが可能であり、例えば、オリゴリボヌクレオチドラダー、遺伝子のオリゴリボヌクレオチド断片または完全な配列、発現配列標識(EST)または全長RNA配列のRNA転写産物、t−RNA、r−RNA、m−RNAまたはプライマーのRNA転写物の断片が挙げられる。
【0040】
ラダーのようなRNA断片は、例えば、本技術分野において既知の標準的な技術に従って(例えば、修飾リボヌクレオチドの化学的取り込みにより、または下記に説明されている転写配列決定(TS)法によりORNを形成するために、少なくとも一種類の本発明のアルファ−チオおよび/またはアラビノ修飾リボヌクレオチドを供給することにより調製できる。従って、本発明は、上記に説明されている本発明のアルファ−チオおよび/またはアラビノ修飾リボヌクレオチドを含むRNA配列または断片または転写産物(オリゴリボヌクレオチド)にも関する。
【0041】
オリゴリボヌクレオチドラダー分析の実施例は、図4、5、6、8に報告されており、ピークの分解能が高く、分析されるラダーの純度が高いことを示している。分析は、ラダーの質量の決定にも利用できる。
【0042】
「対照」の図1、2、7のデータと比較した図4、5、6、8のデータは、アルファ−チオリン酸リボヌクレオチドのRNAラダーへの導入により、シグナル強度の低下が有意に軽減されることを証明している(図4)。これは、アルファホスホロチオエート化dNTPのDNAへの導入(S−DNA)によっても、アルキル−チオリン酸NTPのRNAへの導入(CH3S−RNA)によっても、シグナル強度が大きく低下したという事実から、予想外の結果であった(図1A、図1Bおよび図7A、図7Bをそれぞれ参照)。
【0043】
リボヌクレオチドに導入されたアルファ−チオリン酸基と2’位の強力な電気的に陰性の置換基(好ましくはフルオロ基)との両者の組み合わせにより、前記リボヌクレオチドを含むオリゴリボヌクレオチド(RNA)配列は、MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定にとって特に有用となる。従って、図5は、オリゴ30merが、3−HPAにおいてシグナル低下の効果(drop−off effect)を示す図4と比較して、明らかなシグナル強度の低下に対する抵抗性を有することを示している。S−2’−F−RNAは、塩基喪失に対し特に安定で、抵抗性を有し、S−RNAよりもバックグラウンドノイズが低い。
【0044】
図5と図2A、Bの比較により、2’−F−RNAの20merと30merに関して、シグナル強度の低下に対する抵抗性の明らかな改善が認められる。
【0045】
図6は、1〜10merの断片(パネルA)、1〜20merの断片(パネルB)、1〜30merの断片(パネルC)のUV−MALDI−TOF−MS質量スペクトルである。図6のパネルは、ピークの分解能が良好であることを示しており、この方法により供給された断片を効率的に配列決定できることが証明された。
【0046】
図8は、好ましくはマトリックス3−HPAの存在下で、ara−RNA10mer、20mer、30merラダーが、シグナル強度の低下に対する抵抗性を有し、従って、ara−NTPがMALDI−TOF−MS分析および/または配列決定に有効に利用できることを示している。
【0047】
本発明のMALDI−TOF−MS法に使用されるマトリックスは、MALDI法に通常使用されるマトリックス、例えば、3−HPA、THAP、2,5−DHBA(Zhu,Y.F.et al.,Rapid Commun.Mass Spectrometry,1996,10,383−388; Tnag,W.,et al.,Anal.Chem.,1997,69,302−312)から選択できる。特定の実験条件に特異的なマトリックスを選択することは、シグナルの良好な分解能とシグナル強度の低下に対する抵抗性を得るために重要と思われる。例えば、MALDI分析アラビノ−10mer、20mer、30mer(図8A)において、マトリックス3−HPAの選択は好ましく、有利であると考えられる。
【0048】
RNA配列または断片の配列決定に関して、配列決定方法は、本技術分野において、例えば、Faulstich,K.,et al.,Anal.Chem.,1997,69,4349−4353; およびWouner,K.,et al.,Nucleosides & Nucleotides,1997,16,573−577により報告されている。しかし、これらの方法は、RNAゲノム断片の配列決定に関するもので、オリゴリボヌクレオチドに修飾リボヌクレオチドの導入を必要とする本発明の方法の目的に使用することはできない。
【0049】
従って、本発明の別の側面によれば、「転写配列決定」(TS)およびMALDI−TOF−MSと呼ばれる方法を用いるDNAヌクレオチド配列の決定方法に関する。
【0050】
TS法は、Sasaki,N.et al.,(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95,3455−3460)に説明されており、また米国特許6,074,824号,およびPCT出願WO99/02729にも説明されている。TSは、I)ATP、GTP、CTP、UTPおよびその誘導体からなる群から選択されるリボヌクレオシド−5’−三リン酸(鎖伸長リボヌクレオチドとしても知られる)を提供するステップと、II)RNAポリメラーゼと該RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA鋳型断片または配列の存在下で、前記リボヌクレオチドを、一種類以上の3’−dNTP誘導体(鎖終結リボヌクレオチド)と反応させるステップと、III)精製されたRNA転写産物を分離し、RNA転写物(およびDNA鋳型)のリボヌクレオチド配列を決定するステップとを含むDNA鋳型のDNAヌクレオチド配列の決定方法を含む。
【0051】
本発明の更なる側面によれば、本発明は、a)S−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTP、S−2’−Cl−NTP、S−2’−NH2−NTP、S−2’− N3−NTP、S−NTP)またはara−NTPといったリボヌクレオチドを提供するステップと、b)ステップa)のリボヌクレオチドを一種類以上の3’−dNTP誘導体と、RNAポリメラーゼとRNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA鋳型断片または配列の存在下で反応させ、オリゴリボヌクレオチド転写産物を得るステップと、c)前記オリゴリボヌクレオチド転写産物をMALDI−TOF−MSにより分析し、転写産物配列とDNA鋳型配列を決定するステップとを含む方法に関する。
【0052】
オリゴリボヌクレオチド転写産物は、好ましくはMALDIステップを適用する前に精製される(Wu,Q.et al.,Rapid Commun.Mass Spectrum.,1996,10,835−838)。
【0053】
任意で、米国特許第6,074,824号に開示されているように、DNA鋳型は、TSを実施する前に増幅工程にかけることができる。
【0054】
上記方法の工程aにおいて、S−2’−e−NTPは、S−2’−e−ATP、S−2’−e−GTP、S−2’−e−CTP、S−2’−e−UTP、およびそれらの誘導体からなる群から選択され(この場合、「e」は、好ましくはF、Cl、NH2、N3またはOHである。);ara−NTPは、ara−ATP、ara−GTP、ara−CTP、ara−UTPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0055】
「それらの誘導体」という句は、例えば、Patentin Version 2.1の表13−3、User Manual、米国特許庁、または世界知的所有権機関基準ST.25(1998)、付録2、表2に一覧されている修飾塩基を有する本技術分野において既知のあらゆる修飾を含むNTPまたはdNTPを包含することを意図している。
【0056】
3’−dNTP誘導体(鎖終結リボヌクレオチドとしても知られる)は、上記に開示されているS−2’−e−、S−およびアラビノの様な修飾を含む3’−dATP、3’−dGTP、3’−dCTP、3’−dUTPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。簡単に述べると、これらは、3’位にデオキシを持つ本発明の修飾リボヌクレオチドと対応しているため、これらはリボヌクレオチド転写合成を終結させる。これらは、S−2’−e−3’−dNTP、S−3’−dNTP、ara−3’−dNTPまたはそれらの誘導体としても表示できる。
【0057】
RNAポリメラーゼは、S−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)、またはara−NTPまたはそれらの誘導体、およびS−2’−e−3’−dNTP(好ましくはS−3’−F−dNTpまたはS−3’−dNTP)、ara−3’−dNTPまたはそれらの誘導体を組み込むことができるあらゆるRNAポリメラーゼが可能である(Padilla,R.,; Sousa R.Nucleic Acids Res.1999,27,1561−1563;およびGriffiths,A.D.,et al.,Nucleic Acids Res.1987,15,4145−4162)。適切なRNAポリメラーゼの例は、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、K11 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、BA14 RNAポリメラーゼである(Hyone−Myong Eun,”Enzymology Primer for Recombinant DNA Technology” Academic Press,Inc.,1996,Chapter”RNA Polymerase”)。TS法に特に有利なのは、NTPおよび/または3’−NTPの組み込み能が増強されたWO/02729に説明されている突然変異を持つRNAポリメラーゼである。これらの突然変異RNAポリメラーゼは、例えば、突然変異F644Y、L665P、F667Y、L665P/F667Y、F664Y/L665P/F667Yの少なくとも一つを有するT7 RNAポリメラーゼ;突然変異F645Y、L666P、F668Y、F645Y/L666P、F645Y/F668Y、L6656/F668Y、F645Y/L666P/F668Yの少なくとも一つを持つT3 RNAポリメラーゼ;突然変異L668P、F690Y、L688P/F690Yの少なくとも一つを持つK11 RNAポリメラーゼである。好ましくは、RNAポリメラーゼは、突然変異F644Yおよび/またはF667Yを持つT7 RNAである。適切な突然変異RNAポリメラーゼのより完璧な説明と、使用される専門用語の説明は、WO99/02729に記載されている。更なる有用なRNAポリメラーゼは、Padilla,R.and Sousa,R.,Nucleic Acids Res.,1999,27,1561−1563に説明されているT7 RNAポリメラーゼY639Fである。
【0058】
一旦、本技術分野において既知のTS法(上記引用文献参照)に従い、本発明の修飾リボヌクレオチドを含むRNA転写物断片が調製されれば、前記RNA転写物断片は、MALDI−TOF−MS法を用いて配列決定することができる。
【0059】
T7 RNAポリメラーゼにより産生された転写物S−2’−e−RNA(好ましくは、S−2’−F−RNAまたはS−RNA)は、Rp−チオホスホジエステル結合のみを有する。Rp−S−結合を維持するために、転写物は、RNA切断、ヌクレアーゼS1、ヌクレアーゼP1、リボヌクレアーゼT1、リボヌクレアーゼAに対する抵抗能を示す(Padilla,R.; Sousa R.Nucleic Acids Res.1999,27,1561−1563; Dahm,S.C.,et al.,Biochemistry 1993,32,13040−13045; Loverix,S.,et al.,J.Chemistry & Biology 2000,7,651−658)。
【0060】
本発明は、MALDI−TOF−MSとS−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)またはara−NTPを用いるSNPの決定方法にも関する。SNP決定方法は、上記に説明されている様に、TS法を用いて、MALDI−TOF−MSを適用して実現できる。
【0061】
特に、多型性を決定するためには、同じ遺伝子または遺伝子断片の少なくとも2つの対立遺伝子(または一つの対立遺伝子と野生型)が配列決定されなくてはならない。あるいは、一つ以上の対立遺伝子が配列決定され、既知の配列決定された対立遺伝子(または野生型)と比較される。
【0062】
MALDI−TOF−MSを用いるSNP決定の一般方法と異なるアプローチは、米国特許第5,965,363号に説明されている。
【0063】
好ましくは、多型性に関して分析される配列または断片転写物(オリゴヌクレオチド)は、望ましくない核酸産物をスペクトルから除去するために、厳密な精製が行われる。更に、分析されるオリゴリボヌクレオチドの大きさは、必要な質量分解能と精度を保証できる質量分析の範囲内でなくてはならない(米国特許第5,965,363号参照)。
【0064】
特定の実施例において、鋳型DNAは、本技術分野において既知の技術により、特異的プライマーを用いて増幅できる。その時、標的配列(すなわち、多型性を含むと推定される分析および配列決定の対象となる配列)が識別される。従って、標的配列(例えば、エキソンまたはそれより短い配列に対応)が、好ましくは適切なプライマーを用いて増幅ステップに、あるいはDNA鋳型レベルで一つ以上のフランキング領域部分を切り取ることにより、取り出される。次に、転写産物が調製され、短縮された(増幅されたか、あるいは増幅されない)標的オリゴリボヌクレオチドのそれぞれの質量がMALDI−TOF−MSを用いて決定される。この方法は、野生型標的核酸または前記標的核酸のその他の対立遺伝子と比較した質量の変動性を検出することにより一つの標的核酸における多型性を検出するために利用できる。
【0065】
本方法は、一組の種々の標的核酸における多型性を検出するためにも利用でき、方法は、(任意で前記標的核酸のそれぞれの増幅も含み)、標的オリゴヌクレオチドの長さを減じ、および/または分離し、MALDI−TOF−MSにより、本発明の組み込まれたリボヌクレオチドを含む転写産物の質量を、TS法を用いて、決定することを含む。
【0066】
本発明は更に、i)RNA転写産物を合成するための1組の鎖伸長リボヌクレオシド三リン酸またはアルファ−ホスホチオエート化物であって、鎖伸長リボヌクレオシドは、S−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)およびara−NTPからなる群から選択される1組の鎖伸長リボヌクレオシド三リン酸またはアルファ−ホスホチオエート化物と、ii)RNA転写産物の合成を終結させ、塩基特異的な終結相補的リボヌクレオチド転写物断片のセットを生成するための一種類以上の鎖終結リボヌクレオチドと、iii)RNAポリメラーゼと、iv)鋳型または標的での増幅に適切な1組のプライマーと、v)MALDI−TOF−MS分析用の一種類以上のマトリックスとを含む、MALDI−TOF−MSによるDNA鋳型またはRNA転写産物の配列決定キットにも関する。マトリックスは、例えば、Zhu,U.F.,et al.,Rapid Commun.Mass Spectrometry,1996,10,383−388; Tang,W.,et al.,Anal.Chem.,1997,69,302−312に説明されているものから選択できる。
【0067】
本発明は、DNA鋳型またはRNA転写産物の配列決定キットに開示されている同じ成分(i)〜(iii)と任意の成分である(iv)〜(v)と、更に任意で、増幅される標的オリゴヌクレオチドの長さを減じることができる少なくとも一種類の制限エンドヌクレアーゼとを含むMALDI−TOF−MSを用いるSNPの決定キットにも関する(米国特許第5,96,363号)。
【0068】
MALDI−TOF−MS法を用いる本発明の産物と方法は、本発明が質量範囲の増加に伴うシグナル強度の低下という重大な現象を軽減することから、例えば、DNA再配列決定および/またはSNP検査に特に有利である。
【0069】
本発明は、以下の実施例を引用して、更に詳細に説明される。
【0070】
[実施例]
<質量分析のマトリックスおよび設定>
使用したマトリックスは、アルドリッチケミカル社(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から購入した。マトリックスである3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)の調製は、50%アセトニトリルに溶解された0.5Mの3−HPAを180μlと、ミリQ水に溶解された0.5Mのクエン酸第二アンモニウム20μlとを混合するプロトコールに従い、実験に使用した。マトリックスである2,5−ジヒドロキシ安息香酸(2,5−DHBA)は、10%のアセトニトリルの0.5M溶液として調製された。2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン(2,4,6−THAP)/2,3,4−トリヒドリキシアセトフェノン(2,3,4−THAPマトリックスの調製は、以前に既述されたプロトコールに従い(Zhu,Y.F.,et al.,Rapid Commun.Mass Spectrometry.1996,10,383−388)、2,4,6−THAP;2,3,4−THAP:クエン酸第二アンモニウムのモル比2:1:1を全てのTHAP調製に使用した。マトリックスである2,5−DHBAまたはTHAPを、MALDI過程におけるオリゴヌクレオチド断片化の証明と検討のために使用した。1μlあたり50pmolの各10mer、20mer、30merのオリゴヌクレオチドを、等モル混合物調製品として混合した。直径2mmのステンレススチール製プローブチップにおいて、オリゴヌクレオチド試料にマトリックス溶液を加えた。この溶液を、プローブチップにおいてピペッティングにより十分混合し、MALDI−TOF−MSによる分析の前に室温で結晶させた。
【0071】
2nsのパルス幅を生じる窒素レーザーを装備し、遅延抽出(delayed extraction)電圧20.8kV(IS/2)で28.5kV(IS/1)において直線正イオン検出モードで運転されるBruker Reflex III飛行時間型質量分析計により質量スペクトルを得た。試料に使用されたレーザー出力設定は、フルレーザー出力の20−30%であった。全ての実験において最良のスペクトルを得るために、マトリックス表面と結晶化された試料混合物のスイートスポットが探索され、放射された。透明な結晶が、白濁色の結晶よりも有利であった。各スペクトルは合計50ショットで構成された。MALDI−TOF−MSは、文献に従って、実施した。
【0072】
<リボヌクレオチドおよびDNA、S−DNA、RNA、2’−F−RNA、S−RNAラダーの調製>
DNA、S−DNA、RNA、S−RNA(それぞれ図3A、3E、3B、3F)ラダーをGENSET OLIGO(京都、日本およびパリ、フランス)により合成し、HPLC精製した。DNAの配列は10mer:d(GATCTCAGCT)(配列番号1);20mer:d(GATCTCAGCTCTAATGCGGT)(配列番号2);30mer:d(GATCTCAGCTCTAATGCGGTTCGATAAATC)(配列番号3)であった。
【0073】
RNAの配列は、RNAではTがUである以外はDNAと同じあり、10mer:(GAUCUCAGCU)(配列番号4);20mer:(GAUCUCAGCUCUAAUGCGGU)(配列番号5);30mer:(GAUCUCAGCUCUAAUGCGGUUCGAUAAAUC)(配列番号6)と定義される。
【0074】
S−DNAとS−RNAは、ホスホロチオエート置換物として合成され、DNAとRNAは、それぞれ陽電荷標識を付加するために3’末端にアミンを持つ。
【0075】
2’−フルオロ−(C)n(2’−F−RNA)(n=10、20、30)は、TriLink BioTechnologies社(サンディゴ、カリフォルニア州)により合成され、ポリアクリルアミドゲルから精製された(配列番号7〜9)。以下の配列番号7〜9において、合成時CPGビーズ(CPG,Inc.,リンカーンパーク、ニュージャージー州)での出発物の目的だけのために、3’位にTが付加された。
【0076】
dTTPは2’修飾されず、本発明の目的と見なされなかった。2’−F−CTPのみ、オリゴマーのナンバリングに数えられた。従って、合成されたオリゴマーが11、21、31merであっても、それらは10、20、30merと呼ばれた。
【表1】
【0077】
原液として全てのオリゴヌクレオチドがTE緩衝液(トリス塩酸pH8.0、1mMのEDTA、pH8.0)に溶解した。ミリQ水をその他の希釈工程で使用した。
【0078】
<DNA、RNA、2’−F−RNAラダーの分析>
図1C、Dおよび図2C、Dおよび図2A、Bは、3種類の2’基のそれぞれの10mer、20mer、30merの等モル混合物が、MALDIにおいて2種類のマトリックスを用いて、調製、分析されたことを示している。各図において、質量範囲の増大に伴いシグナル強度の低下が増加傾向を示した。オリゴヌクレオチドラダーの反応は、3−HPAとTHAPで同じ傾向を示した。図1D、2D、2Bにおいて、THAPを使用したDNA、RNA、2’−F−RNAラダーの30merのスペクトルは、塩基喪失に対する安定性の傾向は、2’−F−RNA>RNA>DNAの順番であったことを示している。以前の研究では、MALDI分析において、より電気陰性度の高い2’基がオリゴヌクレオチドの安定性をより高めるという同じ傾向が報告された(Scalf,M.学位論文、ウィスコンシン大学、マディソン、ウィスコンシン州、2000)。しかし、本実施例において、2’位における電気陰性度は、シグナル強度の低下に対する抵抗性に全く影響を及ぼさなかった。
【0079】
<S−DNAラダーの分析>
図1Cおよび1Dと比較した図1Aおよび図1Bは、20merと30merのスペクトルに焦点を合わせると、DNAにおけるホスホロチオエートの置換により過剰な断片化が促進されたことを示している。S−DNAラダーにおいて示される様に、質量範囲の増加に伴うシグナル強度の低下は、そのDNAにおいて遙かに劇的であった。以前の研究も、オリゴS−DNAが、MALDI分析における配列決定産物に適切でないことを示唆していた(Schuette,J.M.,et al.,J.Pharm.Biomed.Anal.1995,13,1195−1203)。
【0080】
<S−RNAラダーの分析>
S−RNAラダーを、マトリックスである3−HPAおよびTHAPにおいて分析した。図2Cおよび2Dと比較した図4Aおよび4Bは、RNAにおけるホスホロチオエートの置換により、両マトリックスを使用し、質量範囲の増加に伴うシグナル強度の低下に対する抵抗性が得られたことを示している。THAPにおける各ピークのシグナル強度はほぼ同じであった。
【0081】
<S−2’−F−RNAラダーの合成と分析>
ホスホロチオエート置換2’−フルオロ−(C)nT(配列番号7〜9)としてのS−2’−フルオロ−(C)nT(S−2’−F−RNA)(図3G)も、TriLink Bio Technologies社により調製された。オリゴマーの長さのナンバリングは10mer、20mer、30merで、3’末端におけるTの存在は、ナンバリングの理由から考慮に入れられなかった。同様に、図6に示す粗オリゴマーは、3’末端位のTをナンバリングの理由から考慮に入れられなかったため、1〜10mer、1〜20mer、1〜30merと表示される。
【0082】
粗S−2’−F−(C)nT(S−2’−F−RNA)を合成し、余分な塩を除去するためにエタノール沈殿により処理し、ナトリウム塩の形態に交換した(TriLink Bio Technologies、サンディエゴ、カリフォルニア州から購入時)。粗10mer、20mer、30mer S−2’−F−RNAは精製されなかった。従って、粗10mer、20mer、30merS−2’−F−RNAは、1〜10mer、1〜20mer、1〜30mer S−2’−F−RNAをそれぞれ含んでいた。これらの粗オリゴヌクレオチドを、図6に報告されている実験に使用した。
【0083】
次に、同じ種類の粗オリゴヌクレオチドをポリアクリルアミドゲルにより精製し、10mer、20mer、30merの精製オリゴリボヌクレオチド(S−2’−F−RNA)を得た。これらの精製オリゴリボヌクレオチドを、図5に報告されている実験に使用した。
【0084】
図5Aおよび5Bにおいて、S−2’−F−RNAの10mer、20mer、30merラダーは、極めて鋭いシグナルピークを示し、塩基喪失は認められず、3−HPAおよびTHAPマトリックスを使用して同等のシグナル強度ピークを示した。
【0085】
図6Aおよび6Bは、粗S−2’−F−RNAの10merと20merが3−HPAにおいて分析されたことを示す。ラダースペクトルが、質量範囲の増加に伴い、シグナル強度の低下に対し、どの位抵抗性を示すかを判定するために、対照としての2’−F−RNAのスペクトルとの比較を実施した。図2Aに示す2’−F−RNAラダーのスペクトルにおいて、10merのシグナル強度を100とした時、20merのシグナル強度は20であった。質量が約2倍に増加すると、強度は5倍低下した。しかし、図6Bに示す20mer S−2’−F−RNAのスペクトルにおいて、9merの強度を100とすると、18merの強度は62であった。質量が約2倍増加したとき、強度の低下は2倍よりも少なかった。S−2’−F−RNAのシグナルピークの番号が、シグナル強度の低下に及ぼす影響は少なかった。この結果から、S−2’−F−RNAが、質量範囲の増加に伴いシグナル強度の低下に対し抵抗性の傾向を確実に有することが証明される。図6Cは、粗S−2’−F−RNAが3−HPAにおいて分析されたことを示している。質量範囲に伴うシグナル強度の低下が同様に証明された。しかし、シグナル強度の低下に対する抵抗性は、産物の長さがより長く、モル数がより小さい条件で出現した。等モルのS−2’−F−RNAラダーは、ほぼ同じシグナル強度をMALDI分析において示すことが可能であると予測される。
【0086】
このデータから、S−2’−F−RNAはS−RNAと共に、シグナル強度の低下に対する抵抗能を有することが証明された。
【0087】
<CH3S−RNAの合成と分析>
RNAのリン酸基のアルファ位へのアルキル−チオ基の導入効果を確認するために、CH3S−RNAの分析を実施した。Gut et al.は、10merホスホロチオエート化DNAを用いて、質量分析による選択的DNAアルキル化および検出の手順を提示した(Gut,I.G.et al.,Rapid Commun.Mass Spectrometry 1997,11,43−50)。同じ手順が、陽電荷標識した10、20、30merのCH3S−RNAの生産に使用された。従って、陽電荷3’標識RNA(CH3S−オリゴリボヌクレオチド−N+(CH3)3が合成された。全てメチル化されたホスホロチオエート、
【表2】
が、CH3I反応を用いて、Gut et al.に従って、合成された。分析の再現性が、マトリックスとしてアルファ−シアノ−ヒドロキシ桂皮酸メチルエステル(CNME)を用いる本MALDI法において証明された。
【0088】
CH3S−オリゴリボヌクレオチド−N+(CH3)3の分析において、陽電荷標識付加後10mer、20mer、30merのCH3S−RNA等容量を、等モル混合物の調製品として混合した。
【0089】
図7A、Bは、これらのオリゴCH3−RNAのスペクトルを示す。図7A、Bに示すCH3S−RNAの分析において、予想される無傷の親イオンピークの代わりに多くの短いスペクトルが観察された。
【0090】
これらのスペクトルの対照スペクトルをS−RNAのスペクトルとして図4A、Bに示す。
【0091】
このデータは、リボヌクレオチドのアルファ−リン酸基へのアルキル−チオ基の導入(図7)がシグナル強度の低下を回避しないのに対し、チオ基のみの導入(図4)がシグナル強度の低下に対する抵抗性を示すことを示している。これは、S−NTPのシグナル強度の低下に対する抵抗性の効果が予測できなかったことの更なる確証である。
【0092】
<ara−RNAラダーの分析>
配列番号7〜9の配列をそれぞれ持つアラビノ−(C)nTラダー(n=10mer、20mer、30mer)は、TriLink Bio Technologies(サンディエゴ、カリフォルニア州)により合成され、ポリアクリルアミドゲルから精製された。2’−F−RNAとS−2’−F−RNAの合成と同様に、この場合も、3’末端位のTはナンバリングの理由から考慮に入れられなかったため、オリゴマーの長さは、10mer、20mer、30merと表示された。事実、dTTPは、ara−NTPが持っている2’−エピマー位の−OHを持っていない。
【0093】
アラビノ核酸は、リボ核酸誘導体よりも、蛇毒ホスホジエステラーゼ(SVDPE)加水分解に対してより安定であると報告されていた;すなわちara−RNA>RNA>2’−F−RNA(Noronha,A.M.,et al.,J.Biochemistry 2000,39,7050−7062)。本発明者等は、オリゴヌクレオチドの糖−リン酸の傾向に焦点を合わせていたので、SVDPE加水分解に対する安定性の順序を検討して、MALDI分析における断片化に対する安定性に適合させる様にした。MALDI分析におけるara−RNAラダーの反応は、マトリックスである3−HPAおよびTHAPにおいて更に確認された。図8Aは、極めて鋭いシグナルピークと質量範囲の増大に伴うシグナル強度の低下に対する抵抗性が、3−HPAを使用して観察されたことを示している。各ピークのシグナル強度は、ほぼ同等であった。マトリックスであるTHAPにおけるara−RNAラダーも、図8Bに示すように、20merと30merの間で抵抗性を示した。ara−RNAラダーは、図8Aおよび8Bに示すように、質量範囲の増大に伴いシグナル強度の低下に対する抵抗性を示した。RNAのホスホロチオエート置換は、骨格切断を困難にすると理解されている。この効果が研究され、糖−リン酸における骨格切断が、MALDI分析において、質量範囲の増大に伴うシグナル強度の低下に対し重要な役割の一つを果たしている可能性が証明された。
【0094】
図8、むしろ図8Aは、本技術における開示と対照的に、ara−NTPが、MALDI−TOF−MSを用いてシグナル強度の低下に対し抵抗できることを示している。
【0095】
<配列決定法>
特異的な鋳型DNA断片または配列のRNA転写物断片は、上記に示す引用文献に開示されているTS法により生産できる。RNA転写物断片は、一定量の脱塩酸性溶液により処理でき、不純物を殆ど含まず回収できる。次に転写物をマトリックスと混合し、結晶化させる。RNA配列を、本技術分野において既知の方法により、MALDI−TOF−MSにより決定する。次に、鋳型DNA塩基の配列を、転写物RNA塩基に従って、決定する。
【0096】
本明細書において引用された全ての特許文献、出版物およびその他の資料は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0097】
説明されている本発明は、多くの方法で変更できることは明らかである。このような変更は、本発明の精神と範囲を逸脱しないものと見なされ、本技術に精通する者にとって明らかなこのような変更は全て、請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
マトリックスとして3−HPA(パネルA)およびTHAP(パネルB)をそれぞれ使用して得られたS−DNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップ(A)および(B)の試料/マトリックスの容量(μl)は0.5/1.0であった。マトリックスとして3−HPA(パネルC)およびTHAP(パネルD)をそれぞれ使用して得られたDNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップ(C)および(D)の試料/マトリックスの容量(μl)は0.5/1.0であった。
【図2】
マトリックスとして3−HPA(パネルA)およびTHAP(パネルB)をそれぞれ使用して得られた2’F−RNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップ(A)および(B)の試料/マトリックスの容量(μl)は0.8/0.8であった。マトリックスとして3−HPA(パネルC)およびTHAP(パネルD)をそれぞれ使用して得られたRNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップ(C)および(D)の試料/マトリックスの容量(μl)は0.8/0.8であった。
【図3】
(A)デオキシ−;(B)リボ−;(C)2’−フルオロ−;(D)アラビノ−;(E)ホスホロチオエート化デオキシ−;(F)ホスホロチオエート化リボ−;(G)ホスホロチオエート化2’−フルオロ−;(H)ホスホロチオエート化2’−電気陰性(2’−e)置換基オリゴヌクレオチドの構造。
【図4】
マトリックスとして3−HPA(パネルA)およびTHAP(パネルB)をそれぞれ使用して得られたS−RNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップの試料/マトリックスの容量(μl)は(A):0.5/1.0、(B):0.8/0.8であった。[20mer+2H]2+および[30mer+2H]2+ピークとして表示されたピークは、二価の陽電荷効果を意味する。
【図5】
マトリックスとして3−HPA(パネルA)およびTHAP(パネルB)をそれぞれ使用して得られたS−2’−F−RNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップの試料/マトリックスの容量(μl)は(A):0.5/1.0、(B):0.8/0.8であった。
【図6】
マトリックスとして3−HPAを使用して得られた粗(精製されていない)S−2’−F−RNA10mer(パネルA)、20mer(パネルB)、30mer(パネルC)のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。濃度(A):250μM、(B):250μM、(C)250μMは、それぞれ、精製最終産物(A):10mer S−2’−F−RNA、(B):20mer S−2’−F−RNA、(C):30mer S−2’−F−RNAの濃度として計算された。プローブチップ(C)の試料/マトリックスの容量(μl)は(A):0.5/1.0、(B):0.8/0.8であった。
【図7】
マトリックスとしてクエン酸第二アンモニウムを含まない3−HPA(パネルA)および2,5−DHBA(パネルB)を使用して得られたCH3S−RNA−N+マトリックスの等モル混合物の(A)および(B)のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップの試料/マトリックスの容量(μl)は(A):1.0/1.0、(B):0.5/1.0であった。
【図8】
マトリックスとして3−HPA(パネルA)およびTHAP(パネルB)をそれぞれ使用して得られたara−RNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップの試料/マトリックスの容量(μl)は(A):0.5/2.0、(B):0.5/1.5であった。
[技術分野]
本発明は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF−MS:Matrix−assisted laser desorption ionization time−of−flight mass spectrometry)の使用によるオリゴリボヌクレオチドの分析および/または配列決定法の改善法に関する。特に、本発明は、MALDI分析および/または配列決定時のシグナル強度の低下を減少または除去する修飾リボヌクレオチドに関する。
【0002】
[背景技術]
ヒトゲノムプロジェクトは、ヒトゲノム配列決定の最終段階にある。ポストヒトゲノムプロジェクトの一つは、それぞれ異なるヒトまたは種を比較するために、また一塩基多型(SNP)を決定するために、特異的部位を再配列決定することであろう。このような再配列決定システムは、極めて迅速で、費用効果が高くなくてはならない。
【0003】
MALDI−TOF−MS(Smith,L.M.,Science,1993,262,530;およびHillenkamp et al.,Biological Mass Spectrometry,Burlingame and McCloskey Editors、Elsevier Science Publishers,アムステルダム,1990,pp.49−60)は、分子量の大きい合成の重要なポリマーおよび生物学的に重要なポリマーの迅速、正確、かつ鋭敏な質量分析法に発展しつつある。MALDI−TOF−MSは、SNPの決定と共に、オリゴリボヌクレオチドの分析および配列決定に有利な方法である。
【0004】
MALDI−TOF−MSは、極めて迅速なDNA配列決定を可能にし、ゲルまたは蛍光色素が不要であるという利点を有する。
【0005】
サンガー法に基づく短いDNAの再配列決定システムは、MALDI−TOF−MSにより実施されてきた(Moniforte,J.A.,and Becker,C.H.,Nature Med.,1997,3,360−362; Kirpekar,F.et al.,Nucleic Acids Res.,1998,26,2554−2559)。MALDI−TOF−MSを用いて配列決定できるDNAの長さが長くなるほど、DNA配列決定分野における新たな代替技術としてのMALDI−TOF−MSの利点はより大きくなる。
【0006】
しかし、MALDI−TOF−MSによるDNA分析方法に重大な限界が出現した。これらの限界の一つは、MALDI過程においてDNA分子の多くが断片となる点である。DNAは、無傷の親イオンシグナルのみでなく、DNA断片化によって生じたその他のシグナルも、塩基の喪失と骨格の切断として示す。MALDIの間のDNA断片化開始段階が、核酸塩基部分のプロトン付加である断片化機序モデル(Zhu,L.;et al.,J.Am.Chem.Soc.1995,117,6048−6056)が作成された。核酸塩基部分のプロトン付加により、N−グリコシド結合が弱まり、塩基の喪失と、デオキシリボース部分の1’位におけるカルボカチオン形成を同時に引き起こす。その後の再配列により、3’炭素−酸素結合における骨格切断が生じる。
【0007】
MALDI分析時のDNAの安定化が、DNA配列決定またはその他の核酸分析に有用と考えられてきた。
【0008】
米国特許第5,691,141号に、サンガー法に基づくDNA配列決定方法が説明されている。この方法には、オリゴヌクレオチドプライマー、鎖終結ヌクレオシド三リン酸および/または鎖伸長ヌクレオシド三リン酸への質量修飾の導入および/または特異的標識配列とハイブリダイゼーション可能な質量識別標識プローブの利用が含まれる。ヌクレオチド修飾として、米国特許第5,691,141号に、末端ヌクレオシドの糖部分の5’位でグリシン残基により修飾されたプライマー;ピリミジンヌクレオシドの複素環塩基のC−5でグリシン残基により、β−アラニン残基により、エチレングリコールモノメチルエーテルにより、ジエチレングリコールモノメチルエーテルにより修飾されたプライマー;デオキシアデノシンの複素環塩基のC−8で、グリシンまたはグリシルグリシンにより質量修飾されたプライマー;2’−アミノ−2’−デオキシチミジンの糖部分のC−2’で、エチレングリコールモノメチルエーテル残基により質量修飾されたプライマー;ホスホロチオエート基のアルキル化によりヌクレオチド間結合において質量修飾されたDNAプライマー(Slim G.and Gait M.J.,Nucleic Acids Research,1991,vol.19,No.6,1183−1188による);グリシンまたはβ−アラニン残基により2’−アミノまたは3’−アミノ基で質量修飾された2’−アミノ−2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸および3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシチミジン−5’−三リン酸;グリシン、グリシル−グリシンおよびβ−アラニン残基により複素環塩基のC−5で質量修飾されたデオキシウリジン−5’−三リン酸;8−グリシル−2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸および8−グリシル−グリシル−2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸;および鎖伸長2’−ジデオキシチミジン−5’−(アルファ−S)−三リン酸およびその後の2−ヨードエタノールおよび3−ヨードプロパノールによるアルキル化が説明されている。
【0009】
しかし、米国特許第5,691,141号に説明されている修飾オリゴヌクレオチドを用いる質量分析によるDNA配列決定には、シグナル強度の低下と塩基喪失の問題がある。この欠点により、配列決定、特により長いDNA配列決定の配列決定を効率的に実施することは不可能である(Taranenko,et al.,Nucleic Acids Res.,1998,26,2488−2490)。
【0010】
Shuette J.M.et al.,(J.Pharm.Biomed.Anal.1995,13,1195−1203)は、以前に、天然ホスホジエステルDNA配列の配列決定に使用されたMALDI−TOF−MSを、アルファホスホロチオエートデオキシリボヌクレオチド(S−dNTP)を含むDNAの配列決定に使用することを提唱している。しかし、この文献に提示されているデータ(例えば、Schuette et al.の図2)は、S−dNTPの利用が、MALDIを使用することによる配列決定分析に有効でないことを示している。
【0011】
DNAにホスホロチオエートヌクレオチドを取り込むことは、MALDI配列決定分析に不適切であることは、本発明者等によっても確認された。本明細書において、図1Cおよび1D(ホスホジエステルについて言及)と比較した(図1Aおよび1B(S−dNTPを含むオリゴDNAについて言及、この物質を今後S−DNAと呼ぶ)は、20merと30merのスペクトルに焦点を合わせた時、DNA配列決定におけるホスホジエステルのホスホロチオエートへの置換は、断片化を増加させることを示している。そのとき、オリゴS−DNAにより示された質量範囲の増大に伴うシグナル強度の低下は、DNAによって示されたよりも遙かにめざましいものであった。
【0012】
上記データから、本研究分野において、シグナル強度の低下を軽減でき、より長いオリゴヌクレオチド配列の配列決定を可能にするMALDI−TOF−MS分析方法の新しいアプローチの開発が必要であることは確かである。
【0013】
[発明の概要]
本発明者等は、驚くことに、今後S−2’−e−NTPと呼ばれる2’位に電気的に陰性の置換基を有するアルファホスホロチオエート(好ましくはS−2’−フルオロ−リボヌクレオチド(S−2’−F−NTP)、またはS−2’−OH−リボヌクレオチド(S−NTP))、およびアラビノ−リボヌクレオチド(ara−NTP)が、シグナル強度の低下に抵抗性を示し、MALDI−TOF−MS分析に有利に使用できることを発見した。
【0014】
従って、本発明は、S−2’−e−ATP、S−2’−e−CTP、S−2’−e−GTP、S−2’−e−UTPおよびそれらの誘導体(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)からなる群から選択される少なくとも一つのリボヌクレオチドを利用するRNA配列、断片または転写物(一般にオリゴリボヌクレオチド類)のMALDI−TOF−MS分析方法に関する。
【0015】
本発明はまた、ara−ATP、ara−CTP、ara−GTP、ara−UTPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一つのリボヌクレオチドを利用するRNA配列、断片または転写物(一般にオリゴリボヌクレオチド類)のMALDI−TOF−MS分析方法にも関する。
【0016】
更に、本発明は、a)上記に定義されたara−NTPまたはS−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)から選択されるリボヌクレオシド三リン酸またはアルファ−チオ−置換(鎖伸長リボヌクレオチド)を提供するステップと、b)RNAポリメラーゼと該RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA鋳型の存在下で、前記鎖伸長リボヌクレオチドと、一種類以上の3’−dNTP誘導体(鎖終結リボヌクレオチド)とを反応させ、オリゴヌクレオチド転写産物を得るステップと、c)MALDI−TOF−MSにより前記オリゴリボヌクレオチド転写産物を分析し、転写産物の配列とDNA鋳型の配列を決定するステップとを含むMALDI−TOF−MSを用いるDNAヌクレオチド配列の決定方法に関する。
【0017】
本発明は、MALDI−TOF−MSと、S−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)またはara−NTPを利用するSNPの決定方法にも関する。
【0018】
本発明は更に、i)RNA転写産物を合成するための本発明に従って修飾された鎖伸長リボヌクレオチド(上記工程aで提示)のセットと、ii)RNA転写産物の合成を終結させ、塩基特異的な終結相補的リボヌクレオチド転写物断片を生成するための一種類以上の鎖終結リボヌクレオチドと、iii)RNAポリメラーゼとを含む、MALDI−TOF−MSによるDNA鋳型またはRNA転写産物の配列決定キットに関する。
【0019】
開示されている上記キットは、任意で(iv)MALDI−TOF−MS分析用の一種類以上のマトリックスも更に含むことができる。
【0020】
本発明は、(i)〜(iii)および上記に開示されている成分任意の(iv)を含むMALDI−TOF−MSを用いるSNPの決定キットにも関する。
【0021】
[発明の詳細な説明]
本発明は、S−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)およびara−NTPから選択される少なくとも一つのリボヌクレオチドを利用する、RNA配列、RNA断片またはRNA転写物(一般にオリゴリボヌクレオチド)のMALDI−TOF−MS分析および/または配列決定方法を開示する。本発明によるオリゴリボヌクレオチドラダーの分析方法の実施例は、図4、5、6、8に報告されている。
【0022】
本発明のMALDI−TOF−MS法に有用な修飾リボヌクレオチドは、S−2’−e−NTPおよびara−NTPとして示され、一方NTPを含むオリゴは、それぞれオリゴS−2’−e−RNAおよびオリゴara−RNAとして示される。
【0023】
S−2’−e−NTPを含むオリゴの化学式は図3(H)に記載されている。「S」という用語はアルファホスホロチオエート骨格を意味し、「e」はリボース部分の2’位における強力な電気的に陰性の置換基を意味する。電気的に陰性の置換基は、好ましくはF、Cl、NH2、N3およびOHからなる群から選択される(Guschlbauer W.and Jankowski K.,Nucleic Acid Research,1980,volume 8,number 6,1421−1433の表III参照)。しかし、これらの好ましい置換基には限定されない。その他の強力な電気的に陰性の置換基も使用できる。「e」が−OHの場合、リボヌクレオチドはS−NTPとして表示される(この場合、オリゴはオリゴS−RNAとして表示される。)。
【0024】
リボヌクレオチドS−2’−e−NTPは、種々の含窒素塩基、すなわちアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、および/またはそれらの誘導体を含む。従って、化合物、S−2’−e−NTPは、一般にS−2’−e−ATP、S−2’−e−GTP、S−2’−e−CTP、S−2’−e−UTPとしても表示できる。
【0025】
Kawasaki A.M.,et al.,(J.Med.Chem.,1993,36,831−841)は、S−2’−F−NTPを開示し、RNA標的に対する結合力を保持できるオリゴを調製した。しかし、このリボヌクレオチドまたはオリゴをMALDI−TOF−MS分析または配列決定に利用することに関しては開示も提唱もされていない。本発明のS−2’−F−NTPおよびS−2’−F−RNAに関して、これらはTriLink Bio Technologies社(サンディエゴ、カリフォルニア州)により調製された。
【0026】
オリゴS−RNAは、シュモクザメのリボザイムの切断機序の研究において、Slim G.and Gait M.J.,(Nucleic Acids Research,1991,vol.19,No.6,1183−1188)により開示され、合成された。しかし、MALDI系におけるこのオリゴの利用は開示も提唱もされていない。
【0027】
本発明のS−NTPは、種々の含窒素塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、および/またはそれらの誘導体を含み、S−ATP、S−CTP、S−GTP、S−UTP、およびそれらの誘導体として表される。
【0028】
本発明者等は、少なくとも一種類のS−NTP(図3の化学式F)を含むオリゴは、MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定のシグナル強度低下に対し抵抗することを発見した(図4)。
【0029】
MALDI−TOF−MSによる分析および配列決定におけるS−RNAの利用が有利であることは、予測できなかった。なぜならば、DNAへのアルファ−ホスホロチオ基の導入(図3Eおよび図1A、1B参照)およびRNAのアルファ−リン酸基へのアルキル−チオ−の導入(図7参照)により、MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定におけるシグナル強度低下への抵抗性を示さなかったためである。
【0030】
オリゴS−2’−e−RNAに関して、好ましい例は、S−2’−F−ATP、S−2’−F−CTP、S−2’−F−GTP、S−2’−F−UTPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種類のS−2’−F−NTPを含むオリゴS−2’−F−RNAである。
【0031】
リボースの2’位におけるフルオロ置換基に関して、Tang Wei et al.(Anal.Chem.,1997,69,302−312)は、2’炭素において置換されたフルオロ部分を有するデオキシリボヌクレオチド(dNTP)は、DNA配列を断片化に対して安定化させ、従って、入手可能な質量範囲を拡大することを提唱した。しかし、最近の研究(Scalf,M.学位論文、ウィスコンシン大学、マディソン、ウィスコンシン州、2900)により、2’−フルオロ−電気陰性置換基がシグナル強度の低下を軽減しないことを証明した。この事は、MALDI分析においてDNA配列の配列決定を不利にする可能性がある。
【0032】
本発明者等は、2’−フルオロリボヌクレオチド(2’−F−NTP)のオリゴRNA(2−F’−RNA)への導入効果を更に研究し、オリゴ2−F’−RNAを使用するMALDI配列決定法の結果(本明細書の図2Aおよび2B)が、RNA配列の場合(図2Cおよび2D)と変わらず、長いRNA配列のシグナル強度の低下を軽減しないことを見いだした。
【0033】
本明細書の実験章に使用された2−F’−RNAは、TriLink Bio Technologies社(サンディエゴ、カリフォルニア州)により調製され、2’−フルオロ−(C)nTの形態で合成された。dTTP(2’−フルオロ修飾されていない)を出発ヌクレオチドとして使用し、CPG支持体に結合させた。その上に、例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」Vol,I,Section V,Unit 2.11,Johon Wiley & Sons,Inc.に記載されている、本技術において一般的であり、十分に既知の技術に従って、2’−フルオロ−CTPを加えた。2’−フルオロ−(C)10T、−(C)20T、−(C)30Tのオリゴマーが合成された。これらのオリゴマーは、たとえこれらのオリゴマーの実際の大きさが、3’末端のTの存在により11、21、31merであったとしても、それぞれRNA10mer、20mer、30merと呼ばれる。実際には、dTTpは修飾されず、本発明は、2’−電気的に陰性な置換基、およびara−置換基に関するものである。
【0034】
S−2’−F(C)nTおよびara(C)nTも、2’−F−(C)n−Tに関する説明と同様に合成された。この場合も、オリゴマーは、たとえ実際の大きさが、3’末端のTの存在により11、21、31merであったとしても、10mer、20mer、30merと呼ばれる。
【0035】
同様に、図6のオリゴマーは、たとえ実際の大きさが、3’末端のTの存在により1〜11mer、1〜21mer、1〜31merであったとしても、1〜10mer、1〜20mer、1〜30merと呼ばれる。
【0036】
S−2’−F−NTPを含むオリゴの分析に関する本発明の方法に関して、図5および図6は明らかに、リボースの2’位におけるフルオロ置換基と組み合わせたアルファ−ホスホロチオ基の導入は、MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定において特に有用かつ有効であり、シグナル強度の低下に抵抗性を示すことを示している。これは、リボヌクレオチドへのアルキル−S基の導入(図7Cおよび7D参照)と、リボヌクレオチドの2’位におけるフルオロ基の導入(図2Aおよび2B)が、シグナル強度低下の存続を証明したことから、驚くべき効果である。
【0037】
本発明者等は、2’−エピマーリボヌクレオチド(アラビノ−NTPおよびara−NTPとしても知られる、化学式図3のD)を含むオリゴが、MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定においてシグナル強度の低下に対する抵抗性を示すことも見いだした。これらのリボヌクレオチドは、化合物S−2’−e−RNAに関して報告された種々の含窒素塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルおよび/またはそれらの誘導体を含む。
【0038】
ara−RNAは、例えば、Beardsley,G.P.,et al.,Nucleic Acids Res.,1988,16,9165−9176; Tang,W.,et al.,Anal.Chem.,1997,69,302−312に従って、調製できる。ara−RNAは、Tang,W.,et al.,において開示されたが、アラビノ−ヌクレオシドは、Tang,W.,et al.,の図3B、4、6Bおよび8にあるように、塩基喪失ピークを示すことが観察された。これによって、この修飾による安定化は完璧とは言えないことが示された(Tang,W.,et al.,の文献の311ページ、左の列、16−20行参照)。従って、ara−RNAは、MALDI−TOF−MS分析または配列決定に有用でないと見なされた。これに反して、本発明者等は、ara−リボヌクレオチドを含むara−RNAラダーは、好ましくはMALDIマトリックスとして3−HPAの存在下に、MALDI−TOF−MS分析または配列決定を用いるシグナル強度の低下に対する抵抗性を示すことを証明した。
【0039】
上記に説明されているリボヌクレオチドは、オリゴリボヌクレオチド配列産物を調製するために使用され、このオリゴリボヌクレオチド配列産物は、S−2’−e−RNA(好ましくはS−2’−F−RNAまたはS−RNA)およびara−RNAとして定義することができる。本発明のオリゴリボヌクレオチド配列産物(ORN)は、本発明のアルファ−チオおよび/またはアラビノ修飾リボヌクレオチドを含むあらゆるORNが可能であり、例えば、オリゴリボヌクレオチドラダー、遺伝子のオリゴリボヌクレオチド断片または完全な配列、発現配列標識(EST)または全長RNA配列のRNA転写産物、t−RNA、r−RNA、m−RNAまたはプライマーのRNA転写物の断片が挙げられる。
【0040】
ラダーのようなRNA断片は、例えば、本技術分野において既知の標準的な技術に従って(例えば、修飾リボヌクレオチドの化学的取り込みにより、または下記に説明されている転写配列決定(TS)法によりORNを形成するために、少なくとも一種類の本発明のアルファ−チオおよび/またはアラビノ修飾リボヌクレオチドを供給することにより調製できる。従って、本発明は、上記に説明されている本発明のアルファ−チオおよび/またはアラビノ修飾リボヌクレオチドを含むRNA配列または断片または転写産物(オリゴリボヌクレオチド)にも関する。
【0041】
オリゴリボヌクレオチドラダー分析の実施例は、図4、5、6、8に報告されており、ピークの分解能が高く、分析されるラダーの純度が高いことを示している。分析は、ラダーの質量の決定にも利用できる。
【0042】
「対照」の図1、2、7のデータと比較した図4、5、6、8のデータは、アルファ−チオリン酸リボヌクレオチドのRNAラダーへの導入により、シグナル強度の低下が有意に軽減されることを証明している(図4)。これは、アルファホスホロチオエート化dNTPのDNAへの導入(S−DNA)によっても、アルキル−チオリン酸NTPのRNAへの導入(CH3S−RNA)によっても、シグナル強度が大きく低下したという事実から、予想外の結果であった(図1A、図1Bおよび図7A、図7Bをそれぞれ参照)。
【0043】
リボヌクレオチドに導入されたアルファ−チオリン酸基と2’位の強力な電気的に陰性の置換基(好ましくはフルオロ基)との両者の組み合わせにより、前記リボヌクレオチドを含むオリゴリボヌクレオチド(RNA)配列は、MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定にとって特に有用となる。従って、図5は、オリゴ30merが、3−HPAにおいてシグナル低下の効果(drop−off effect)を示す図4と比較して、明らかなシグナル強度の低下に対する抵抗性を有することを示している。S−2’−F−RNAは、塩基喪失に対し特に安定で、抵抗性を有し、S−RNAよりもバックグラウンドノイズが低い。
【0044】
図5と図2A、Bの比較により、2’−F−RNAの20merと30merに関して、シグナル強度の低下に対する抵抗性の明らかな改善が認められる。
【0045】
図6は、1〜10merの断片(パネルA)、1〜20merの断片(パネルB)、1〜30merの断片(パネルC)のUV−MALDI−TOF−MS質量スペクトルである。図6のパネルは、ピークの分解能が良好であることを示しており、この方法により供給された断片を効率的に配列決定できることが証明された。
【0046】
図8は、好ましくはマトリックス3−HPAの存在下で、ara−RNA10mer、20mer、30merラダーが、シグナル強度の低下に対する抵抗性を有し、従って、ara−NTPがMALDI−TOF−MS分析および/または配列決定に有効に利用できることを示している。
【0047】
本発明のMALDI−TOF−MS法に使用されるマトリックスは、MALDI法に通常使用されるマトリックス、例えば、3−HPA、THAP、2,5−DHBA(Zhu,Y.F.et al.,Rapid Commun.Mass Spectrometry,1996,10,383−388; Tnag,W.,et al.,Anal.Chem.,1997,69,302−312)から選択できる。特定の実験条件に特異的なマトリックスを選択することは、シグナルの良好な分解能とシグナル強度の低下に対する抵抗性を得るために重要と思われる。例えば、MALDI分析アラビノ−10mer、20mer、30mer(図8A)において、マトリックス3−HPAの選択は好ましく、有利であると考えられる。
【0048】
RNA配列または断片の配列決定に関して、配列決定方法は、本技術分野において、例えば、Faulstich,K.,et al.,Anal.Chem.,1997,69,4349−4353; およびWouner,K.,et al.,Nucleosides & Nucleotides,1997,16,573−577により報告されている。しかし、これらの方法は、RNAゲノム断片の配列決定に関するもので、オリゴリボヌクレオチドに修飾リボヌクレオチドの導入を必要とする本発明の方法の目的に使用することはできない。
【0049】
従って、本発明の別の側面によれば、「転写配列決定」(TS)およびMALDI−TOF−MSと呼ばれる方法を用いるDNAヌクレオチド配列の決定方法に関する。
【0050】
TS法は、Sasaki,N.et al.,(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95,3455−3460)に説明されており、また米国特許6,074,824号,およびPCT出願WO99/02729にも説明されている。TSは、I)ATP、GTP、CTP、UTPおよびその誘導体からなる群から選択されるリボヌクレオシド−5’−三リン酸(鎖伸長リボヌクレオチドとしても知られる)を提供するステップと、II)RNAポリメラーゼと該RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA鋳型断片または配列の存在下で、前記リボヌクレオチドを、一種類以上の3’−dNTP誘導体(鎖終結リボヌクレオチド)と反応させるステップと、III)精製されたRNA転写産物を分離し、RNA転写物(およびDNA鋳型)のリボヌクレオチド配列を決定するステップとを含むDNA鋳型のDNAヌクレオチド配列の決定方法を含む。
【0051】
本発明の更なる側面によれば、本発明は、a)S−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTP、S−2’−Cl−NTP、S−2’−NH2−NTP、S−2’− N3−NTP、S−NTP)またはara−NTPといったリボヌクレオチドを提供するステップと、b)ステップa)のリボヌクレオチドを一種類以上の3’−dNTP誘導体と、RNAポリメラーゼとRNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA鋳型断片または配列の存在下で反応させ、オリゴリボヌクレオチド転写産物を得るステップと、c)前記オリゴリボヌクレオチド転写産物をMALDI−TOF−MSにより分析し、転写産物配列とDNA鋳型配列を決定するステップとを含む方法に関する。
【0052】
オリゴリボヌクレオチド転写産物は、好ましくはMALDIステップを適用する前に精製される(Wu,Q.et al.,Rapid Commun.Mass Spectrum.,1996,10,835−838)。
【0053】
任意で、米国特許第6,074,824号に開示されているように、DNA鋳型は、TSを実施する前に増幅工程にかけることができる。
【0054】
上記方法の工程aにおいて、S−2’−e−NTPは、S−2’−e−ATP、S−2’−e−GTP、S−2’−e−CTP、S−2’−e−UTP、およびそれらの誘導体からなる群から選択され(この場合、「e」は、好ましくはF、Cl、NH2、N3またはOHである。);ara−NTPは、ara−ATP、ara−GTP、ara−CTP、ara−UTPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0055】
「それらの誘導体」という句は、例えば、Patentin Version 2.1の表13−3、User Manual、米国特許庁、または世界知的所有権機関基準ST.25(1998)、付録2、表2に一覧されている修飾塩基を有する本技術分野において既知のあらゆる修飾を含むNTPまたはdNTPを包含することを意図している。
【0056】
3’−dNTP誘導体(鎖終結リボヌクレオチドとしても知られる)は、上記に開示されているS−2’−e−、S−およびアラビノの様な修飾を含む3’−dATP、3’−dGTP、3’−dCTP、3’−dUTPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。簡単に述べると、これらは、3’位にデオキシを持つ本発明の修飾リボヌクレオチドと対応しているため、これらはリボヌクレオチド転写合成を終結させる。これらは、S−2’−e−3’−dNTP、S−3’−dNTP、ara−3’−dNTPまたはそれらの誘導体としても表示できる。
【0057】
RNAポリメラーゼは、S−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)、またはara−NTPまたはそれらの誘導体、およびS−2’−e−3’−dNTP(好ましくはS−3’−F−dNTpまたはS−3’−dNTP)、ara−3’−dNTPまたはそれらの誘導体を組み込むことができるあらゆるRNAポリメラーゼが可能である(Padilla,R.,; Sousa R.Nucleic Acids Res.1999,27,1561−1563;およびGriffiths,A.D.,et al.,Nucleic Acids Res.1987,15,4145−4162)。適切なRNAポリメラーゼの例は、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、K11 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、BA14 RNAポリメラーゼである(Hyone−Myong Eun,”Enzymology Primer for Recombinant DNA Technology” Academic Press,Inc.,1996,Chapter”RNA Polymerase”)。TS法に特に有利なのは、NTPおよび/または3’−NTPの組み込み能が増強されたWO/02729に説明されている突然変異を持つRNAポリメラーゼである。これらの突然変異RNAポリメラーゼは、例えば、突然変異F644Y、L665P、F667Y、L665P/F667Y、F664Y/L665P/F667Yの少なくとも一つを有するT7 RNAポリメラーゼ;突然変異F645Y、L666P、F668Y、F645Y/L666P、F645Y/F668Y、L6656/F668Y、F645Y/L666P/F668Yの少なくとも一つを持つT3 RNAポリメラーゼ;突然変異L668P、F690Y、L688P/F690Yの少なくとも一つを持つK11 RNAポリメラーゼである。好ましくは、RNAポリメラーゼは、突然変異F644Yおよび/またはF667Yを持つT7 RNAである。適切な突然変異RNAポリメラーゼのより完璧な説明と、使用される専門用語の説明は、WO99/02729に記載されている。更なる有用なRNAポリメラーゼは、Padilla,R.and Sousa,R.,Nucleic Acids Res.,1999,27,1561−1563に説明されているT7 RNAポリメラーゼY639Fである。
【0058】
一旦、本技術分野において既知のTS法(上記引用文献参照)に従い、本発明の修飾リボヌクレオチドを含むRNA転写物断片が調製されれば、前記RNA転写物断片は、MALDI−TOF−MS法を用いて配列決定することができる。
【0059】
T7 RNAポリメラーゼにより産生された転写物S−2’−e−RNA(好ましくは、S−2’−F−RNAまたはS−RNA)は、Rp−チオホスホジエステル結合のみを有する。Rp−S−結合を維持するために、転写物は、RNA切断、ヌクレアーゼS1、ヌクレアーゼP1、リボヌクレアーゼT1、リボヌクレアーゼAに対する抵抗能を示す(Padilla,R.; Sousa R.Nucleic Acids Res.1999,27,1561−1563; Dahm,S.C.,et al.,Biochemistry 1993,32,13040−13045; Loverix,S.,et al.,J.Chemistry & Biology 2000,7,651−658)。
【0060】
本発明は、MALDI−TOF−MSとS−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)またはara−NTPを用いるSNPの決定方法にも関する。SNP決定方法は、上記に説明されている様に、TS法を用いて、MALDI−TOF−MSを適用して実現できる。
【0061】
特に、多型性を決定するためには、同じ遺伝子または遺伝子断片の少なくとも2つの対立遺伝子(または一つの対立遺伝子と野生型)が配列決定されなくてはならない。あるいは、一つ以上の対立遺伝子が配列決定され、既知の配列決定された対立遺伝子(または野生型)と比較される。
【0062】
MALDI−TOF−MSを用いるSNP決定の一般方法と異なるアプローチは、米国特許第5,965,363号に説明されている。
【0063】
好ましくは、多型性に関して分析される配列または断片転写物(オリゴヌクレオチド)は、望ましくない核酸産物をスペクトルから除去するために、厳密な精製が行われる。更に、分析されるオリゴリボヌクレオチドの大きさは、必要な質量分解能と精度を保証できる質量分析の範囲内でなくてはならない(米国特許第5,965,363号参照)。
【0064】
特定の実施例において、鋳型DNAは、本技術分野において既知の技術により、特異的プライマーを用いて増幅できる。その時、標的配列(すなわち、多型性を含むと推定される分析および配列決定の対象となる配列)が識別される。従って、標的配列(例えば、エキソンまたはそれより短い配列に対応)が、好ましくは適切なプライマーを用いて増幅ステップに、あるいはDNA鋳型レベルで一つ以上のフランキング領域部分を切り取ることにより、取り出される。次に、転写産物が調製され、短縮された(増幅されたか、あるいは増幅されない)標的オリゴリボヌクレオチドのそれぞれの質量がMALDI−TOF−MSを用いて決定される。この方法は、野生型標的核酸または前記標的核酸のその他の対立遺伝子と比較した質量の変動性を検出することにより一つの標的核酸における多型性を検出するために利用できる。
【0065】
本方法は、一組の種々の標的核酸における多型性を検出するためにも利用でき、方法は、(任意で前記標的核酸のそれぞれの増幅も含み)、標的オリゴヌクレオチドの長さを減じ、および/または分離し、MALDI−TOF−MSにより、本発明の組み込まれたリボヌクレオチドを含む転写産物の質量を、TS法を用いて、決定することを含む。
【0066】
本発明は更に、i)RNA転写産物を合成するための1組の鎖伸長リボヌクレオシド三リン酸またはアルファ−ホスホチオエート化物であって、鎖伸長リボヌクレオシドは、S−2’−e−NTP(好ましくはS−2’−F−NTPまたはS−NTP)およびara−NTPからなる群から選択される1組の鎖伸長リボヌクレオシド三リン酸またはアルファ−ホスホチオエート化物と、ii)RNA転写産物の合成を終結させ、塩基特異的な終結相補的リボヌクレオチド転写物断片のセットを生成するための一種類以上の鎖終結リボヌクレオチドと、iii)RNAポリメラーゼと、iv)鋳型または標的での増幅に適切な1組のプライマーと、v)MALDI−TOF−MS分析用の一種類以上のマトリックスとを含む、MALDI−TOF−MSによるDNA鋳型またはRNA転写産物の配列決定キットにも関する。マトリックスは、例えば、Zhu,U.F.,et al.,Rapid Commun.Mass Spectrometry,1996,10,383−388; Tang,W.,et al.,Anal.Chem.,1997,69,302−312に説明されているものから選択できる。
【0067】
本発明は、DNA鋳型またはRNA転写産物の配列決定キットに開示されている同じ成分(i)〜(iii)と任意の成分である(iv)〜(v)と、更に任意で、増幅される標的オリゴヌクレオチドの長さを減じることができる少なくとも一種類の制限エンドヌクレアーゼとを含むMALDI−TOF−MSを用いるSNPの決定キットにも関する(米国特許第5,96,363号)。
【0068】
MALDI−TOF−MS法を用いる本発明の産物と方法は、本発明が質量範囲の増加に伴うシグナル強度の低下という重大な現象を軽減することから、例えば、DNA再配列決定および/またはSNP検査に特に有利である。
【0069】
本発明は、以下の実施例を引用して、更に詳細に説明される。
【0070】
[実施例]
<質量分析のマトリックスおよび設定>
使用したマトリックスは、アルドリッチケミカル社(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から購入した。マトリックスである3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)の調製は、50%アセトニトリルに溶解された0.5Mの3−HPAを180μlと、ミリQ水に溶解された0.5Mのクエン酸第二アンモニウム20μlとを混合するプロトコールに従い、実験に使用した。マトリックスである2,5−ジヒドロキシ安息香酸(2,5−DHBA)は、10%のアセトニトリルの0.5M溶液として調製された。2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン(2,4,6−THAP)/2,3,4−トリヒドリキシアセトフェノン(2,3,4−THAPマトリックスの調製は、以前に既述されたプロトコールに従い(Zhu,Y.F.,et al.,Rapid Commun.Mass Spectrometry.1996,10,383−388)、2,4,6−THAP;2,3,4−THAP:クエン酸第二アンモニウムのモル比2:1:1を全てのTHAP調製に使用した。マトリックスである2,5−DHBAまたはTHAPを、MALDI過程におけるオリゴヌクレオチド断片化の証明と検討のために使用した。1μlあたり50pmolの各10mer、20mer、30merのオリゴヌクレオチドを、等モル混合物調製品として混合した。直径2mmのステンレススチール製プローブチップにおいて、オリゴヌクレオチド試料にマトリックス溶液を加えた。この溶液を、プローブチップにおいてピペッティングにより十分混合し、MALDI−TOF−MSによる分析の前に室温で結晶させた。
【0071】
2nsのパルス幅を生じる窒素レーザーを装備し、遅延抽出(delayed extraction)電圧20.8kV(IS/2)で28.5kV(IS/1)において直線正イオン検出モードで運転されるBruker Reflex III飛行時間型質量分析計により質量スペクトルを得た。試料に使用されたレーザー出力設定は、フルレーザー出力の20−30%であった。全ての実験において最良のスペクトルを得るために、マトリックス表面と結晶化された試料混合物のスイートスポットが探索され、放射された。透明な結晶が、白濁色の結晶よりも有利であった。各スペクトルは合計50ショットで構成された。MALDI−TOF−MSは、文献に従って、実施した。
【0072】
<リボヌクレオチドおよびDNA、S−DNA、RNA、2’−F−RNA、S−RNAラダーの調製>
DNA、S−DNA、RNA、S−RNA(それぞれ図3A、3E、3B、3F)ラダーをGENSET OLIGO(京都、日本およびパリ、フランス)により合成し、HPLC精製した。DNAの配列は10mer:d(GATCTCAGCT)(配列番号1);20mer:d(GATCTCAGCTCTAATGCGGT)(配列番号2);30mer:d(GATCTCAGCTCTAATGCGGTTCGATAAATC)(配列番号3)であった。
【0073】
RNAの配列は、RNAではTがUである以外はDNAと同じあり、10mer:(GAUCUCAGCU)(配列番号4);20mer:(GAUCUCAGCUCUAAUGCGGU)(配列番号5);30mer:(GAUCUCAGCUCUAAUGCGGUUCGAUAAAUC)(配列番号6)と定義される。
【0074】
S−DNAとS−RNAは、ホスホロチオエート置換物として合成され、DNAとRNAは、それぞれ陽電荷標識を付加するために3’末端にアミンを持つ。
【0075】
2’−フルオロ−(C)n(2’−F−RNA)(n=10、20、30)は、TriLink BioTechnologies社(サンディゴ、カリフォルニア州)により合成され、ポリアクリルアミドゲルから精製された(配列番号7〜9)。以下の配列番号7〜9において、合成時CPGビーズ(CPG,Inc.,リンカーンパーク、ニュージャージー州)での出発物の目的だけのために、3’位にTが付加された。
【0076】
dTTPは2’修飾されず、本発明の目的と見なされなかった。2’−F−CTPのみ、オリゴマーのナンバリングに数えられた。従って、合成されたオリゴマーが11、21、31merであっても、それらは10、20、30merと呼ばれた。
【表1】
【0077】
原液として全てのオリゴヌクレオチドがTE緩衝液(トリス塩酸pH8.0、1mMのEDTA、pH8.0)に溶解した。ミリQ水をその他の希釈工程で使用した。
【0078】
<DNA、RNA、2’−F−RNAラダーの分析>
図1C、Dおよび図2C、Dおよび図2A、Bは、3種類の2’基のそれぞれの10mer、20mer、30merの等モル混合物が、MALDIにおいて2種類のマトリックスを用いて、調製、分析されたことを示している。各図において、質量範囲の増大に伴いシグナル強度の低下が増加傾向を示した。オリゴヌクレオチドラダーの反応は、3−HPAとTHAPで同じ傾向を示した。図1D、2D、2Bにおいて、THAPを使用したDNA、RNA、2’−F−RNAラダーの30merのスペクトルは、塩基喪失に対する安定性の傾向は、2’−F−RNA>RNA>DNAの順番であったことを示している。以前の研究では、MALDI分析において、より電気陰性度の高い2’基がオリゴヌクレオチドの安定性をより高めるという同じ傾向が報告された(Scalf,M.学位論文、ウィスコンシン大学、マディソン、ウィスコンシン州、2000)。しかし、本実施例において、2’位における電気陰性度は、シグナル強度の低下に対する抵抗性に全く影響を及ぼさなかった。
【0079】
<S−DNAラダーの分析>
図1Cおよび1Dと比較した図1Aおよび図1Bは、20merと30merのスペクトルに焦点を合わせると、DNAにおけるホスホロチオエートの置換により過剰な断片化が促進されたことを示している。S−DNAラダーにおいて示される様に、質量範囲の増加に伴うシグナル強度の低下は、そのDNAにおいて遙かに劇的であった。以前の研究も、オリゴS−DNAが、MALDI分析における配列決定産物に適切でないことを示唆していた(Schuette,J.M.,et al.,J.Pharm.Biomed.Anal.1995,13,1195−1203)。
【0080】
<S−RNAラダーの分析>
S−RNAラダーを、マトリックスである3−HPAおよびTHAPにおいて分析した。図2Cおよび2Dと比較した図4Aおよび4Bは、RNAにおけるホスホロチオエートの置換により、両マトリックスを使用し、質量範囲の増加に伴うシグナル強度の低下に対する抵抗性が得られたことを示している。THAPにおける各ピークのシグナル強度はほぼ同じであった。
【0081】
<S−2’−F−RNAラダーの合成と分析>
ホスホロチオエート置換2’−フルオロ−(C)nT(配列番号7〜9)としてのS−2’−フルオロ−(C)nT(S−2’−F−RNA)(図3G)も、TriLink Bio Technologies社により調製された。オリゴマーの長さのナンバリングは10mer、20mer、30merで、3’末端におけるTの存在は、ナンバリングの理由から考慮に入れられなかった。同様に、図6に示す粗オリゴマーは、3’末端位のTをナンバリングの理由から考慮に入れられなかったため、1〜10mer、1〜20mer、1〜30merと表示される。
【0082】
粗S−2’−F−(C)nT(S−2’−F−RNA)を合成し、余分な塩を除去するためにエタノール沈殿により処理し、ナトリウム塩の形態に交換した(TriLink Bio Technologies、サンディエゴ、カリフォルニア州から購入時)。粗10mer、20mer、30mer S−2’−F−RNAは精製されなかった。従って、粗10mer、20mer、30merS−2’−F−RNAは、1〜10mer、1〜20mer、1〜30mer S−2’−F−RNAをそれぞれ含んでいた。これらの粗オリゴヌクレオチドを、図6に報告されている実験に使用した。
【0083】
次に、同じ種類の粗オリゴヌクレオチドをポリアクリルアミドゲルにより精製し、10mer、20mer、30merの精製オリゴリボヌクレオチド(S−2’−F−RNA)を得た。これらの精製オリゴリボヌクレオチドを、図5に報告されている実験に使用した。
【0084】
図5Aおよび5Bにおいて、S−2’−F−RNAの10mer、20mer、30merラダーは、極めて鋭いシグナルピークを示し、塩基喪失は認められず、3−HPAおよびTHAPマトリックスを使用して同等のシグナル強度ピークを示した。
【0085】
図6Aおよび6Bは、粗S−2’−F−RNAの10merと20merが3−HPAにおいて分析されたことを示す。ラダースペクトルが、質量範囲の増加に伴い、シグナル強度の低下に対し、どの位抵抗性を示すかを判定するために、対照としての2’−F−RNAのスペクトルとの比較を実施した。図2Aに示す2’−F−RNAラダーのスペクトルにおいて、10merのシグナル強度を100とした時、20merのシグナル強度は20であった。質量が約2倍に増加すると、強度は5倍低下した。しかし、図6Bに示す20mer S−2’−F−RNAのスペクトルにおいて、9merの強度を100とすると、18merの強度は62であった。質量が約2倍増加したとき、強度の低下は2倍よりも少なかった。S−2’−F−RNAのシグナルピークの番号が、シグナル強度の低下に及ぼす影響は少なかった。この結果から、S−2’−F−RNAが、質量範囲の増加に伴いシグナル強度の低下に対し抵抗性の傾向を確実に有することが証明される。図6Cは、粗S−2’−F−RNAが3−HPAにおいて分析されたことを示している。質量範囲に伴うシグナル強度の低下が同様に証明された。しかし、シグナル強度の低下に対する抵抗性は、産物の長さがより長く、モル数がより小さい条件で出現した。等モルのS−2’−F−RNAラダーは、ほぼ同じシグナル強度をMALDI分析において示すことが可能であると予測される。
【0086】
このデータから、S−2’−F−RNAはS−RNAと共に、シグナル強度の低下に対する抵抗能を有することが証明された。
【0087】
<CH3S−RNAの合成と分析>
RNAのリン酸基のアルファ位へのアルキル−チオ基の導入効果を確認するために、CH3S−RNAの分析を実施した。Gut et al.は、10merホスホロチオエート化DNAを用いて、質量分析による選択的DNAアルキル化および検出の手順を提示した(Gut,I.G.et al.,Rapid Commun.Mass Spectrometry 1997,11,43−50)。同じ手順が、陽電荷標識した10、20、30merのCH3S−RNAの生産に使用された。従って、陽電荷3’標識RNA(CH3S−オリゴリボヌクレオチド−N+(CH3)3が合成された。全てメチル化されたホスホロチオエート、
【表2】
が、CH3I反応を用いて、Gut et al.に従って、合成された。分析の再現性が、マトリックスとしてアルファ−シアノ−ヒドロキシ桂皮酸メチルエステル(CNME)を用いる本MALDI法において証明された。
【0088】
CH3S−オリゴリボヌクレオチド−N+(CH3)3の分析において、陽電荷標識付加後10mer、20mer、30merのCH3S−RNA等容量を、等モル混合物の調製品として混合した。
【0089】
図7A、Bは、これらのオリゴCH3−RNAのスペクトルを示す。図7A、Bに示すCH3S−RNAの分析において、予想される無傷の親イオンピークの代わりに多くの短いスペクトルが観察された。
【0090】
これらのスペクトルの対照スペクトルをS−RNAのスペクトルとして図4A、Bに示す。
【0091】
このデータは、リボヌクレオチドのアルファ−リン酸基へのアルキル−チオ基の導入(図7)がシグナル強度の低下を回避しないのに対し、チオ基のみの導入(図4)がシグナル強度の低下に対する抵抗性を示すことを示している。これは、S−NTPのシグナル強度の低下に対する抵抗性の効果が予測できなかったことの更なる確証である。
【0092】
<ara−RNAラダーの分析>
配列番号7〜9の配列をそれぞれ持つアラビノ−(C)nTラダー(n=10mer、20mer、30mer)は、TriLink Bio Technologies(サンディエゴ、カリフォルニア州)により合成され、ポリアクリルアミドゲルから精製された。2’−F−RNAとS−2’−F−RNAの合成と同様に、この場合も、3’末端位のTはナンバリングの理由から考慮に入れられなかったため、オリゴマーの長さは、10mer、20mer、30merと表示された。事実、dTTPは、ara−NTPが持っている2’−エピマー位の−OHを持っていない。
【0093】
アラビノ核酸は、リボ核酸誘導体よりも、蛇毒ホスホジエステラーゼ(SVDPE)加水分解に対してより安定であると報告されていた;すなわちara−RNA>RNA>2’−F−RNA(Noronha,A.M.,et al.,J.Biochemistry 2000,39,7050−7062)。本発明者等は、オリゴヌクレオチドの糖−リン酸の傾向に焦点を合わせていたので、SVDPE加水分解に対する安定性の順序を検討して、MALDI分析における断片化に対する安定性に適合させる様にした。MALDI分析におけるara−RNAラダーの反応は、マトリックスである3−HPAおよびTHAPにおいて更に確認された。図8Aは、極めて鋭いシグナルピークと質量範囲の増大に伴うシグナル強度の低下に対する抵抗性が、3−HPAを使用して観察されたことを示している。各ピークのシグナル強度は、ほぼ同等であった。マトリックスであるTHAPにおけるara−RNAラダーも、図8Bに示すように、20merと30merの間で抵抗性を示した。ara−RNAラダーは、図8Aおよび8Bに示すように、質量範囲の増大に伴いシグナル強度の低下に対する抵抗性を示した。RNAのホスホロチオエート置換は、骨格切断を困難にすると理解されている。この効果が研究され、糖−リン酸における骨格切断が、MALDI分析において、質量範囲の増大に伴うシグナル強度の低下に対し重要な役割の一つを果たしている可能性が証明された。
【0094】
図8、むしろ図8Aは、本技術における開示と対照的に、ara−NTPが、MALDI−TOF−MSを用いてシグナル強度の低下に対し抵抗できることを示している。
【0095】
<配列決定法>
特異的な鋳型DNA断片または配列のRNA転写物断片は、上記に示す引用文献に開示されているTS法により生産できる。RNA転写物断片は、一定量の脱塩酸性溶液により処理でき、不純物を殆ど含まず回収できる。次に転写物をマトリックスと混合し、結晶化させる。RNA配列を、本技術分野において既知の方法により、MALDI−TOF−MSにより決定する。次に、鋳型DNA塩基の配列を、転写物RNA塩基に従って、決定する。
【0096】
本明細書において引用された全ての特許文献、出版物およびその他の資料は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0097】
説明されている本発明は、多くの方法で変更できることは明らかである。このような変更は、本発明の精神と範囲を逸脱しないものと見なされ、本技術に精通する者にとって明らかなこのような変更は全て、請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
マトリックスとして3−HPA(パネルA)およびTHAP(パネルB)をそれぞれ使用して得られたS−DNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップ(A)および(B)の試料/マトリックスの容量(μl)は0.5/1.0であった。マトリックスとして3−HPA(パネルC)およびTHAP(パネルD)をそれぞれ使用して得られたDNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップ(C)および(D)の試料/マトリックスの容量(μl)は0.5/1.0であった。
【図2】
マトリックスとして3−HPA(パネルA)およびTHAP(パネルB)をそれぞれ使用して得られた2’F−RNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップ(A)および(B)の試料/マトリックスの容量(μl)は0.8/0.8であった。マトリックスとして3−HPA(パネルC)およびTHAP(パネルD)をそれぞれ使用して得られたRNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップ(C)および(D)の試料/マトリックスの容量(μl)は0.8/0.8であった。
【図3】
(A)デオキシ−;(B)リボ−;(C)2’−フルオロ−;(D)アラビノ−;(E)ホスホロチオエート化デオキシ−;(F)ホスホロチオエート化リボ−;(G)ホスホロチオエート化2’−フルオロ−;(H)ホスホロチオエート化2’−電気陰性(2’−e)置換基オリゴヌクレオチドの構造。
【図4】
マトリックスとして3−HPA(パネルA)およびTHAP(パネルB)をそれぞれ使用して得られたS−RNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップの試料/マトリックスの容量(μl)は(A):0.5/1.0、(B):0.8/0.8であった。[20mer+2H]2+および[30mer+2H]2+ピークとして表示されたピークは、二価の陽電荷効果を意味する。
【図5】
マトリックスとして3−HPA(パネルA)およびTHAP(パネルB)をそれぞれ使用して得られたS−2’−F−RNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップの試料/マトリックスの容量(μl)は(A):0.5/1.0、(B):0.8/0.8であった。
【図6】
マトリックスとして3−HPAを使用して得られた粗(精製されていない)S−2’−F−RNA10mer(パネルA)、20mer(パネルB)、30mer(パネルC)のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。濃度(A):250μM、(B):250μM、(C)250μMは、それぞれ、精製最終産物(A):10mer S−2’−F−RNA、(B):20mer S−2’−F−RNA、(C):30mer S−2’−F−RNAの濃度として計算された。プローブチップ(C)の試料/マトリックスの容量(μl)は(A):0.5/1.0、(B):0.8/0.8であった。
【図7】
マトリックスとしてクエン酸第二アンモニウムを含まない3−HPA(パネルA)および2,5−DHBA(パネルB)を使用して得られたCH3S−RNA−N+マトリックスの等モル混合物の(A)および(B)のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップの試料/マトリックスの容量(μl)は(A):1.0/1.0、(B):0.5/1.0であった。
【図8】
マトリックスとして3−HPA(パネルA)およびTHAP(パネルB)をそれぞれ使用して得られたara−RNAの等モル混合物のUV−MALDI質量スペクトルを示す図である。プローブチップの試料/マトリックスの容量(μl)は(A):0.5/2.0、(B):0.5/1.5であった。
Claims (21)
- アルファホスホロチオエート化されており、リボースの2’位に電気的に陰性の置換基を持つ少なくとも一種類の修飾リボヌクレオチドと、含窒素塩基としてのアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルおよび/またはそれらの誘導体とを用いるMALDI−TOF−MS分析および/または配列決定を実施するステップを含むオリゴヌクレオチドのMALDI−TOF−MS分析および/または配列決定方法。
- 前記電気的に陰性の置換基が、F、Cl、NH2、N3、OHからなる群から選択される請求項2記載の方法。
- 前記の少なくとも一種類のリボヌクレオチドが、アルファホスホロチオエート化−2’−フルオロ−ATP、アルファホスホロチオエート化−2’−フルオロ−CTP、アルファホスホロチオエート化−2’−フルオロ−GTP、アルファホスホロチオエート化−2’−フルオロ−UTPおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項1記載の方法。
- 前記MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定が、適切なMALDIマトリックスの存在下で実施される請求項1記載の方法。
- 前記マトリックスが3−HPA、THAP、2,5−DHBAまたはそれらの誘導体である請求項4記載の方法。
- アルファホスホロチオエート化されており、リボースの2’位にアラビノ基を持つ少なくとも一種類の修飾リボヌクレオチドと、含窒素塩基としてのアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルおよび/またはそれらの誘導体とを用いるMALDI−TOF−MS分析および/または配列決定を実施するステップを含むオリゴヌクレオチドのMALDI−TOF−MS分析および/または配列決定方法。
- 前記MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定が、適切なMALDIマトリックスの存在下で実施される請求項6記載の方法。
- 前記マトリックスが2,5−DHBA、3−HPA、THAP、CNMEおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項7記載の方法。
- a)アルファホスホロチオエート化−2’−電気陰性置換NTPまたはアラビノ−2’−NTPから選択される鎖伸長リボヌクレオチドを提供するステップと、
b)RNAポリメラーゼと該RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列を含むDNA鋳型の存在下で、前記鎖伸長リボヌクレオチドと、鎖終結リボヌクレオチドとしての一種類以上の3’−dNTP誘導体とを反応させ、オリゴヌクレオチド転写産物を得るステップと、
c)MALDI−TOF−MSにより前記オリゴリボヌクレオチド転写産物を分析し、該転写産物の配列と該DNA鋳型の配列とを決定するステップと
を含むMALDI−TOF−MSを用いるDNAヌクレオチド配列決定方法。 - 前記電気的に陰性の置換基が、F、Cl、NH2、N3、OHからなる群から選択される請求項9記載の方法。
- 前記RNAポリメラーゼが、リボヌクレオチドを取り込む能力が改善されている突然変異T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、K11 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、またはBA14 RNAポリメラーゼである請求項9記載の方法。
- 前記突然変異RNAポリメラーゼが、突然変異F644Yおよび/またはF667Yを有するT7 RNAポリメラーゼである請求項11記載の方法。
- 前記MALDI−TOF−MS分析および/または配列決定が、適切なMALDIマトリックスの存在下で実施される請求項9記載の方法。
- 前記マトリックスが2,5−DHBA、3−HPA、THAP、CNMEおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項13記載の方法。
- 請求項9に記載の工程a)〜c)を含み、
工程c)の前記オリゴリボヌクレオチド転写産物が、同じ遺伝子の少なくとも2つの対立遺伝子、または対立遺伝子と野生型遺伝子、または既知の野生型遺伝子と比較される少なくとも一つの対立遺伝子を含む、MALDI−TOF−MSを用いる多型性の決定方法。 - i)RNA転写産物を合成するためのアルファホスホロチオエート化−2’−電気的に陰性の置換基NTP、またはアラビノ−2’−NTPから選択される鎖伸長リボヌクレオチドのセットと、
ii)RNA転写産物の合成を終結させ、塩基特異的な終結相補的リボヌクレオチド転写物断片のセットを生成させるための鎖終結リボヌクレオチドとしての一種類以上の3’−dNTP誘導体と、
iii)RNAポリメラーゼと
を含むMALDI−TOF−MSによるDNA鋳型またはRNA転写産物の分析および/または配列決定、および/または多型性決定キット。 - 前記電気的に陰性の置換基が、F、Cl、NH2、N3、OHから選択される請求項16記載のキット。
- 前記RNAポリメラーゼが、リボヌクレオチドを取り込む能力が改善された突然変異T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、K11 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、またはBA14 RNAポリメラーゼである請求項16記載のキット。
- 前記突然変異RNAポリメラーゼが、突然変異F644Yおよび/またはF667Yを有するT7 RNAポリメラーゼである請求項18記載のキット。
- 前記MALDI−TOF−MS分析用の一種類以上のマトリックスを更に含む請求項16記載のキット。
- 前記マトリックスが2,5−DHBA、3−HPA、THAP、CNMEおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項20記載のキット。
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