JP2004515329A - 解剖学的構造の把持装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、中空の解剖学的構造(例えば、主に、血管であるが、気管系、腸なども含む)の手術用把持装置に関する。この装置は、可とう性ガイド(20)と;各々、縦方向管(32)が内部を貫通するとともに遠位端および近位端を備える細長い部材から形成される2つのあご(30)であって、それらの近位端が上記ガイド末端の各々に向いた状態で、該ガイドにはまるように設計されている、上記2つのあごと;ガイド(20)の両端に通すように設計され、かつ、2つのあご(30)の軸を互いに接近させることができるマンドレル(34)と;締め付け装置を含んでなる。本発明の装置は、特に、大動脈を把持するのに有用である。

Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、中空の管状構造(例えば、主に、血管であるが、気管、腸なども含む)の把持装置に関する。
【0002】
(背景技術)
心臓手術は、一般に、心臓を停止させて、静止かつ瀉血手術部位を確保する必要があり、これによって、正確かつ繊細な外科手術が可能になる。これには下記のことが必要となる:1)脳が停止している間、体外循環(ECC)を利用して、酸素添加血液で全身器官(脳、肝臓、腎臓など)を還流する。
【0003】
2)大動脈の把持。これは、外部鉗子を用いて、体外循環を可能にする動脈カニューレと、冠動脈の開口との間を挟み、血管を遮断するものである。この操作は、ECCにより供給される血流から、冠動脈循環を遮断することにより、心臓を停止させることができる。
【0004】
3)心停止法:冠動脈網に溶液を注射することにより、心停止の間、心臓自体を保護する。
【0005】
体外循環(ECC)の実施、把持および心停止法は、通常、胸骨の切断および離間(胸骨切開)を必要とする。胸骨切開は、患者に術後の危険性をもたらすことが多い破壊的手術手法である。
【0006】
さらに、大動脈の把持は、特に、その組織が極めて脆弱なことが知られる肺動脈の近傍であるために、手際を要し、高い危険性を伴なうことが考えられる。
【0007】
その上、従来の鉗子で動脈を挟むことは、ほとんどの場合、血管の内壁に詰まるアテローム物質の塞栓の原因となる。
【0008】
長年にわたり、患者に対する攻撃性の軽減を目的として、別の技法が開発されてきた。胸骨切開の回避は、これら手法の1つである。この場合、小切開により、内視鏡器具を導入して、手術を行なう。
【0009】
この種の手術では、心臓を停止させたいとき、膨脹可能なバルーンを大動脈に導入し、これによって、超音波またはX線透視誘導の下で、心臓の大動脈を血管の内側から塞ぐようにする。
【0010】
このシステムは、多くの欠点があり、中でも、特に、高価であるために、その使用が多数の二義的症例に限られることである。さらに、この技法は、血流と一緒に運ばれる粒子を排除してしまう。
【0011】
現時点では、胸部の切開以外に、動脈における血液循環を中断することができる方法はない。
【0012】
従って、多数の患者が、完全に安全に、最小限の侵襲性心臓手術を受けることを可能にする別の解決方法が求められている。
【0013】
(発明の開示)
本発明の目的は、
可とう性ガイドと;
各々、縦方向管が内部を貫通するとともに遠位端および近位端を備える細長い部材から形成される2つのあごであって、それらの近位端が上記ガイド両端の各々に向いた状態で、該ガイドに通すことができる、上記2つのあごと:
ガイドの両端およびあごに通すことができ、かつ、2つのあごの軸を互いに接近させることができるマンドレルと;
挟みを実施する装置
を含んでなる手術用鉗子である。
【0014】
あごは、マンドレル上流に位置するガイドの両端に通した制御ロッドにより閉じるのが好ましい。
【0015】
ガイドを用いて、中間シースを取り付ければ有利である。この可とう性シースは、ガイドが取り囲む血管構造に面する胸部内に配置することができる。
【0016】
あご要素は、好ましくは、その近位端に可鍛部分を有する。
【0017】
有利な一実施形態によれば、マンドレルは、単一の縦方向管を含み、そのキャビティの遠位端は、両あごの軸が、相対移動によって互いに接近するような形状となっている。
【0018】
別の有利な実施形態によれば、マンドレルは、2つの縦方向管を含み、両あごの各々を両管の一方に通す。
【0019】
上記あごは、その遠位端付近に、可とう性あご要素を備えるのが好ましい。
【0020】
有利な実施形態によれば、単一の連結または多連結を有する固定装置を用いて、互いに把持される。
【0021】
上記あごは、マンドレル上流に位置するガイドの両端に通した制御装置により閉じるのが好ましい。
【0022】
上記あごの近位部分に、マンドレルにより支持される機構と協働するリブを設ければ有利である。
【0023】
マンドレルにより支持される機構は、好ましくは、少なくとも1つのつめを含んでなり、このつめは、先端部と、該先端部を上記あごのリブと接触させる弾性部分とを備える。
【0024】
本発明の別の目的は、下記の操作を含んでなる、血管の把持方法である:
温血生物に出入口となる孔を設け、
この孔に可とう性ガイドを導入し、
このガイドの遠位端が上記孔から再び出てくるようにし、
可とう性ガイド両端に、縦方向管を備えるとともに遠位部分および近位部分を有する細長い部材を通し、
上記2つの細長い部材の遠位端を、把持しようとする血管の両側に到らしめ、
上記各細長い部材の近位端に中空マンドレルを通し、
上記各細長い部材の遠位端に向けて、中空マンドレルを戻すことにより、細長い部材を互いに接近させて、血管を挟むようにする。
【0025】
この把持方法では、血管は冠動脈でよく、上記方法はさらに下記の操作を含む:
胸部に出入口の孔を設け、
心膜に切開を実施し、
可とう性ガイドをタイレ横静脈洞に導入する。
【0026】
本発明の鉗子の利点は、長さが約1センチメールという最小限の切開だけで、効果的かつ強力な把持が達成されることである。
【0027】
天然のガイドとしてタイレ横静脈洞の構造空間を用いることにより、本発明の装置を大動脈の把持に、特に有利に応用できる。
【0028】
別の利点は、隣接する器官を損傷する危険性が最小限に抑えられることである。特に、心臓の手術の場合、2つの血管間の仮想平面に切開を実施する必要がなくなるため、肺動脈に裂傷を形成する危険性が実際には無視できる程度になる。
【0029】
本発明のクランプは、胸部内および胸部外血管、ならびに、特に腸などのその他の解剖学的構造に関して、同様に容易に使用することができる。また、骨を操作するための鉗子としても使用可能である。
【0030】
上記以外の本発明の具体的実施形態および利点は、添付の図面を参照しながら、本発明のいくつかの具体的実施形態について以下に行なう説明から明らかになるであろう。
【0031】
(発明を実施するための最良の形態)
図1は、従来の心臓手術の準備として、瀉血および静止手術領域を得るための様々な操作を示す。
【0032】
カニューレ2により、静脈血液(低酸素)の流れをそらすと、血液は右心房6を通って心臓に入り、人工心肺(図示していない)に向かい、この人工心肺が血液に酸素を再添加すると同時に、そのCOを除去する。人工的に酸素添加された血液は、大動脈10に位置する第2カニューレによって、患者の動脈回路に戻る。このようにして、心臓4および肺循環を短絡させることにより、心臓内または心臓外手術の実施を可能にする。
【0033】
従って、心臓4を停止することにより、瀉血および静止手術領域を確保することができる。
【0034】
通常、2つの結合操作、すなわち、大動脈の把持と、冠動脈循環への心停止液の注射とにより、心臓を停止させる。
【0035】
大動脈10の把持は、体外循環の動脈カニューレ8と、冠動脈14の開口との間に外側鉗子12を使用することによって、血管を遮断することからなる。この操作によって、ECCにより形成された血流からの冠動脈循環を遮断する。
【0036】
次に、注射器16により心停止液を冠動脈循環に注射して、心臓4を麻痺させることによって、可動の解剖学的構造に対し、外科医がより正確に手術できるようにする。
【0037】
図2は、長さ約1cmの1以上の切開により、内視鏡を導入できるようにして、心臓手術を実施する別の公知の手法を示す。
【0038】
この場合に発生する問題は、大動脈を介した血液循環を確実に中断することと、また同時に、バルーンの導入に特有の欠点を解決することである。
【0039】
既述したように、あごの大きさおよびそれらの動程が、実施した肋間切開の大きさと全く釣合いが取れない従来の鉗子を利用することは不可能である。
【0040】
本発明に従うシステムの大きな利点は、胸部を切開することなく、しかも、肺動脈に対する損傷および塞栓症の危険性を軽減しながら、把持を実施できることである。
【0041】
本発明の把持装置およびその様々な構成要素について、図3〜図7の一連の図を参照にしながら説明する。
【0042】
場合によっては、操縦可能な末端22を備えた可とう性ガイド20を、出入口の孔を介して左または右から胸部に導入した後、心膜中の切開24を通じて、タイレ横静脈洞、すなわち、心膜の漿膜で覆われた天然の仮想構造空間26中に導入する。ここで必要なのは、可とう性ガイド20を押して、それが再び現れたとき、把持しようとする血管を取り囲んでいることだけである。この具体例では、把持しようとするのは、心臓の基底にある大きな血管、すなわち、大動脈10と肺動脈18である。このガイドにより、その他の器官(例えば、この場合、上大静脈27など)を回避することができる。必要であれば、副切開により、このガイド20の末端22を再捕捉し、同じ孔から出す(図3)。
【0043】
ガイドの機械的特性、ならびに、把持しようとする血管の性質に応じて、中間シース28(図4)を可とう性ガイド20に通す。別の技法では、この中間ガイド28を、ガイドの両端の一方に取り付け、適所へと引っ張る。
【0044】
次に(図4)、術者は、ガイド20の両端の各々に、縦方向管32(図8に見える)を設けた細長い部材からなるあご30を通す。これらのあご30を動かして、これらの遠位端自体が、把持しようとする血管(この例では、大動脈10)の両端に、それぞれ位置するようにする。図5および6に描いたあご30は、各々がその近位端に可鍛部分33を含む点で、図4のあご30とは異なる。
【0045】
あご30が適所に位置するとき、術者は、可とう性ガイド20の両端に、中空のマンドレル34(図6)を通し、あご30の近位端に向けてこのマンドレル34を戻す(図7)。こうして、あご30は、マンドレル34の軸と整列し、互いに接近することにより、大動脈10の細心かつ漸進的挟みを可能にする。
【0046】
挟みを実現するこの装置は、様々な方法で構成することができる:
その最も単純な設計では、あごの近位部分は、マンドレル34の縦方向管37の口と協働して、あごを整列させる円錐状表面を有する。この管37は、単一または二重管のいずれでもよい。上記あごはまた、マンドレル34の内側表面に形成されたねじ山と協働するリブを備えてもよい。
【0047】
別の構成(図7)では、マンドレル34に相対して動くことができる部分35をあご30の2つの近位端に取り付ける。マンドレル34とこの部分35の相対運動により、特にねじ切り部分により、あご30を把持または緩めることができる。
【0048】
図8は、あご30の遠位部分を横断面で示す。この実施形態では、これらに可とう性あご要素36を備え、把持されている器官に圧力を及ぼすようにする。この断面図で、ガイド20を通過させる縦方向管32を理解することができる。
【0049】
図9は、本発明の鉗子の一実施形態を分解して示す。あご30を形成する各部材は、プラスチック製のトング40を備える。向かい合うこれらのトングは、小さいギザギザが刻まれ、あご要素36を形成している。各トング40の背面は、可とう性ガイド20を合わせるための縦方向溝42を有する。
【0050】
トング40の遠位部分は、U字型の金属部品44に支持されており、この金属部品は、縦方向管32を閉じ、あご30が挟み作用を及ぼすのに必要な剛性を該あごに賦与する。第2のU字型部品46が、各トング40の他端付近の縦方向管の部分を閉じる。トングの近位部分の背面にはリブ47が施されている。
【0051】
トング40の各々には、その中心部で、スタッド48およびキャビティ50が設けられ、これらは、他方のトング40の対応する部分50、48と噛み合うように設計され、これにより、いったんこれら末端がマンドレル34に挿入されると、あごの相対運動を一切阻止することができる。
【0052】
この実施形態の態様では、マンドレル34自体が、主に、屈曲した金属部品52から形成されている。遠位端で、この金属部品は、あご30をその中に挿入し、内側で案内できるように、C字型の形状をしている。
【0053】
マンドレル34の近位部分は、あご30と、マンドレル34の相対位置を調節可能にする機構を支持する。この機構は、1対のつめ56、56を含む。静止状態では、ばね50を形成する部分を介して、つめ56各々の先端部58が、トング40の近位リブ47と噛み合っている。つめ56のヒール62に圧力を及ぼすと、トング40が解放され、これにより、あご30が、マンドレル34と相対して自在に滑動することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
胸骨切開を伴なう手術の場合でのヒト心臓の把持を示す概略的斜視図である。
【図2】
肋間小切開を伴なう心臓手術の外皮切断図である。
【図3】
本発明の装置の把持の原理を示す概略図である。
【図4】
本発明の装置の把持の原理を示す概略図である。
【図5】
本発明の装置の把持の原理を示す概略図である。
【図6】
本発明の装置の把持の原理を示す概略図である。
【図7】
本発明の装置の把持の原理を示す概略図である。
【図8】
本発明の鉗子の一対のあご要素の断面図である。
【図9】
本発明の鉗子の一実施形態の分解図である。

Claims (12)

  1. 可とう性ガイドと(20);
    各々、縦方向管(32)が内部を貫通するとともに遠位端および近位端を有する細長い部材から形成される2つのあご(30)であって、それらの近位端が上記ガイド(20)両端の各々に向いた状態で、該ガイドに通すことができる、上記2つのあご(30)と:
    上記ガイド(20)の両端上を通すことができ、かつ、2つのあご(30)の軸を互いに接近させることができるマンドレル(34)と;
    を含んでなる手術用鉗子。
  2. 上記ガイド(20)を用いて、中間シース(28)を取り付ける、請求項1に記載の手術用鉗子。
  3. 上記あご(30)が、その近位端に可鍛部分(33)を有する、請求項1または2のいずれか一項に記載の手術用鉗子。
  4. 上記マンドレル(34)が、単一の縦方向管(37)を含み、その管の遠位端は、上記2つのあご(30)の軸が、相対移動によって互いに接近するような形状となっている、請求項1から3のいずれか一項に記載の手術用鉗子。
  5. 上記マンドレル(34)が、2つの縦方向管(37)を含み、上記2つのあご(30)の各々を2つの管(37)の一方に通す、請求項1から3のいずれか一項に記載の手術用鉗子。
  6. 上記あご(30)が、その遠位端付近に、可とう性あご要素(36)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の手術用鉗子。
  7. 単一連結または多連結の固定装置を用いて、上記あご(30)を締めつける、請求項1から6のいずれか一項に記載の手術用鉗子。
  8. マンドレル(34)上流に位置するガイド(20)の両端上を通した制御装置(35)により、上記あご(30)を閉じる、請求項1から6のいずれか一項に記載の手術用鉗子。
  9. 上記あご(30)の近位部分に、マンドレル(34)により支持される機構と協働するリブ(47)を設ける、請求項1から8のいずれか一項に記載の手術用鉗子。
  10. 上記マンドレル(34)により支持される機構が、少なくとも1つのつめ(56)を含んでなり、このつめは、先端部(58)と、該先端部(58)を上記あご(30)のリブ(47)と接触させる弾性部分(60)とを備える、請求項9に記載の手術用鉗子。
  11. 下記の操作を含んでなる、血管の把持方法:
    温血生物に出入口となる孔を設け、
    この孔に可とう性ガイドを導入し、
    このガイドの遠位端が上記孔から再び出てくるようにし、
    可とう性ガイド両端の各々に、縦方向管を備えるとともに遠位部分および近位部分を有する細長い部材を通し、
    上記2つの細長い部材の遠位端を、把持しようとする血管の両側に到らしめ、
    上記各細長い部材の近位端に中空マンドレルを通し、
    上記各細長い部材の遠位端に向けて、中空マンドレルを戻すことにより、細長い部材を互いに接近させて、血管を挟むようにする。
  12. 血管が、冠動脈であり、上記方法がさらに下記の操作を含む、請求項11に記載の血管の把持方法:
    胸部に出入口の孔を設け、
    心膜に切開を実施し、
    可とう性ガイドをタイレ横静脈洞に導入する。
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