JP2004513629A - オリゴヌクレオチドからユニバーサルリンカーを除去する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、オリゴヌクレオチド−リンカー複合体を、オリゴヌクレオチドからリンカーを切断する条件下で、気体状の求核性切断試薬に接触させることを含む、オリゴヌクレオチドからリンカーを切断する方法に関する。
Description
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、オリゴヌクレオチド−リンカー複合体をアンモニアなどの気体状求核試薬に接触させる段階を含む、オリゴヌクレオチドからリンカーを実質的に切断する工程に関する。
【0002】
関連する技術分野
様々な固相オリゴヌクレオチド合成技術が、当業者に知られている。このような技術には、ホスホロアミダイト法、ホスホトリエステル法、ホスホジエステル法、ホスファイト法、およびH−ホスホネート法等が含まれる。これらはいずれも、化学、生化学、および分子生物学の分野において一般的に知られている。例えば、β−シアノエチルホスホロアミダイト法が、カルサース(Caruthers)らに対して発行された米国特許第4,458,066号、発明の名称「ポリヌクレオチドを調整する方法(Process for Preparing Polynucleotides)」に述べられている。上記特許は参照として本明細書に組み入れられる。
【0003】
現在、DNAの化学合成に用いられる最も標準的な手法は、合成されるオリゴヌクレオチドの3’末に対応する塩基であらかじめ官能性が付与された細孔性ガラス(controlled pore glass (CPG))に依拠している。ここでは、合成されるオリゴの3’末端の所望の塩基次第で特異的なCPGが使用されるために、4つの異なるCPGを使用する必要がある(図1)。標準的なDNA合成機においては、この標準的なスキームが不都合であるということはほとんどないが、96ウェルプレートを利用して多くの異なるオリゴを同時に作成するハイスループットDNA合成機とともに使用する際には、問題が大きくなる。96ウェルのそれぞれに正しいCPGを載せることが難しいため、間違ったCPGを一つまたはそれ以上のウェルに不正確に載せてしまう危険性を伴う。加えて、それぞれの塩基に異なる支持体を用いることにより、保存し管理しなければならない未加工の材料の数を増やすことになる。このため、単一のCPGがオリゴ3’末のどの塩基にも適合するシステムの開発が、非常に望ましい。
【0004】
ユニバーサルリンカーと呼ばれる多くのリンカーが、3’末端の塩基を固相支持体、例えばCPG、に連結するために開発されており、3’末がいかなる塩基でも、オリゴヌクレオチドの合成に単一のCPGを使用できる(図2)。市販のリンカーの多くは、環状ビシナルジオールを含み、これに第一の塩基が連結する。切断・脱保護に際し、オリゴはリンカーから切断され、3’ホスフェートは環状ホスホジエステルを形成することにより除去される(図3)。通常、この切断・脱保護には、オリゴを長時間(〜18時間)濃アンモニア水とともに加熱するか、または、さらなる除去段階を必要とするLiCl等の塩添加物を濃NH4OHとともに使用する必要がある。加えて、切断・脱保護は水酸化アンモニウム/メチルアミン(ammonium hydroxide/methylamine (AMA))で達成することができるが、この試薬では、オリゴにメチルアミンが組み込まれることを避けるために、dCに関して特別な保護基を使用する必要がある。
【0005】
ユニバーサルリンカーの使用は、望ましくはあるが、その厳格な条件、および、ユニバーサルリンカーからオリゴを切断するために必要な時間が現時点で長いことから、実用的でないことは明らかである。オリゴヌクレオチド合成にユニバーサルリンカーを用いる際、少なくとも3つの反応が、切断・脱保護段階中に同時に起こる。第一に、ユニバーサルリンカーと固相支持体との間のエステル結合が切断される。第二に、オリゴヌクレオチド上の環外アミノ基が脱保護される。そして最後に、ユニバーサルリンカーと新たに合成されたオリゴヌクレオチドの3’末端塩基との間のホスホジエステル結合が切断される(図4)。これら反応の最初の2つは比較的速やかに起こる(〜1時間)が、オリゴヌクレオチドからユニバーサルリンカーを切断する工程は遅く、普通は、液状の切断・脱保護試薬とともに18時間インキュベーションする必要がある。さらに、通常、遊離ユニバーサルリンカー産物を除去する段階を加える必要がある。これらの問題のため、明らかに有利であるにも関わらず、ユニバーサルリンカーを用いるオリゴヌクレオチド製造業者はあまりいない。
【0006】
バイオサーチ テクノロジーズ社(Biosearch Technologies, Inc.)は、最近、脱保護・切断中、固相支持体に結合したままとなる、ビシナルジオールを含む新世代ユニバーサルリンカーを紹介した(Lyttleら、Nucleosides and Nucleotides 18: 1809−1824 (1999);図5)。これは、最終オリゴヌクレオチド溶液から、混入しているリンカーを除去することに関する問題に対処したものだが、この新世代ユニバーサルリンカーでも、完全に切断・脱保護するためにはやはり熱水酸化アンモニウムで長時間処理する必要がある。
【0007】
米国特許第5,514,789号には、新しく合成されたオリゴヌクレオチドを、気体アンモニア、水酸化アンモニウムの蒸気、またはメチルアミンなどの気体状の切断/脱保護試薬を用いて標準的な固相支持体から切断・脱保護する方法が記述されている。
【0008】
気体状の求核性アミノ化合物を使用することによって、新しく合成されたオリゴヌクレオチドを、それらを固相基質に連結させているリンカーから、迅速かつ効果的に切断できることが現時点で見出されている。この新しい方法によって、切断/脱保護に要する時間が約18時間から2時間未満にまで減少し、ハイスループットオリゴヌクレオチド合成において、より効率的にユニバーサルリンカーが使用される。
【0009】
発明の概要
本発明は、オリゴヌクレオチドを固相に連結させるリンカーをオリゴヌクレオチドから実質的に切断して、遊離オリゴヌクレオチドを提供する方法に関し、オリゴヌクレオチド−リンカー−固相複合体を、リンカーが除去される条件下で有効量の気体状求核性アミノ化合物に接触させ、遊離オリゴヌクレオチドを製造する段階を含む方法に関する。
【0010】
具体的には、本発明は、リンカーをオリゴヌクレオチドから切断する方法に関し、オリゴヌクレオチド;ビシナルジオールを含むリンカー(これは3’末端のヌクレオチドではない);および固相支持体、を含む複合体を、オリゴヌクレオチドの第一の構成要素(通常、3’末端ヌクレオチドの3’−OH)と、リンカーのホスフェートとの間のエステル結合が切断される条件下で、気体状の求核性組成物に接触させ、リンカーからオリゴヌクレオチドを切断する段階を含む方法に関する。オリゴヌクレオチドからリンカーを除去する際、リンカーはリン(phosphorous)を含む複素環、最も好ましくは環状ホスホジエステルを形成する。より具体的には、本発明は、(同一または異なる構造を有する)一つ以上の気体状求核性アミノ化合物を用いて、(同一または異なる構造を有する)一つ以上のユニバーサルリンカーから遊離される、(同一または異なる配列の)一つ以上のオリゴヌクレオチドの切断に関する。固相支持体からオリゴヌクレオチドを切断する方法と比較すると、本発明の方法は、リンカー、特にユニバーサルリンカー、からオリゴヌクレオチドを切断することに関しており、一方で、固相支持体から切断する方法は、固相支持体に直接結合したオリゴヌクレオチドを切断することに関連している(図1Aおよび図1B)。
【0011】
好ましい態様において、オリゴヌクレオチド、リンカー、固相支持体複合体を、室温程度から約150℃の間の温度で、約1分から約240分間、切断試薬で反応させる。
【0012】
ある最も好ましい態様においては、オリゴヌクレオチド、リンカー、固相支持体複合体を、約95℃で約120分間、水和アンモニアの蒸気で反応させうる。そして、切断されたオリゴヌクレオチドは、固相を水または緩衝液で洗浄することにより単離される。
【0013】
オリゴヌクレオチド、リンカー、固相支持体複合体は、以下の一般構造を有しうる:
【化2】
式中、Xはオリゴヌクレオチド(通常3’ヌクレオチド)の末端であり、Sは固相支持体であり、Rは選択的に置換されたテトラヒドロフラン環、フェニル環、またはシクロペンタン環であり、およびR’は保護基であり、ならびにZはO、S、またはSeである。リンカーの例は図2に示す。R基における置換がもしあれば、ヒドロキシル、アミノ、チオール、エステル、アミド、窒素塩基、およびその他の官能基を含みうる。
【0014】
本発明の詳細な説明
定義
次の記述においては、化学、生化学、および分子生物学の分野において用いられる多くの用語が広く用いられている。本明細書および特許請求の範囲を、より明確に矛盾なく理解するために、そのような用語に与えられた範囲を含め、以下に定義する。
【0015】
ユニバーサルリンカー
この用語は、本明細書に用いられるように、固相支持体にヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを連結させるよう機能する分子を意味し、このとき、そのリンカー分子は、合成されるオリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオチドではない。ユニバーサル支持体の目立った特徴としては、これに限定されないが、所望の3’末端ヌクレオチドを直接ユニバーサルリンカーに連結させてから固相に連結させうる能力が挙げられる。通常この結合は、3’末端ヌクレオチドの3’ヒドロキシルに対するホスホジエステル結合を含む。オリゴヌクレオチド合成および求核試薬によるユニバーサルリンカーの除去が完了した際には、末端ヌクレオチドの3’ヒドロキシルは再生し、ホスフェートはユニバーサルリンカーに結合して環状ホスホジエステルを形成する。
【0016】
リンカーの切断または除去
この語句は、本明細書に用いられるように、オリゴヌクレオチドの末端構成成分、好ましくは末端ヌクレオチドの3’ヒドロキシルと、ホスフェート部分との間のエステル結合を実質的に切断し、完全な3’ヒドロキシル基を含む遊離オリゴヌクレオチド、および、リン(phosphorous)を含む複素環、最も好ましくは環状ホスホジエステル、を含むリンカーを形成することを意味する。切断試薬と接触させた後に、例えばHPLCで測定して、単離されたオリゴヌクレオチドの少なくとも80%、好ましくは90%以上が連結したリンカーを含まない場合、切断は実質的と考えられる。これには固相支持体からリンカーが切断される必要はなく、固相支持体からの切断は、同時に起こる別の反応である。
【0017】
好ましい態様の説明
本発明は、オリゴヌクレオチドを固相支持体に連結させるリンカーを、オリゴヌクレオチドから実質的に切断する方法に関し、リンカー−オリゴヌクレオチド−固相複合体を、有効量の、気体状求核性アミノ化合物などの気体状切断試薬に接触させることを含む方法に関する。
【0018】
具体的には、本発明は、リンカーをオリゴヌクレオチドから切断する方法に関し、この方法は、オリゴヌクレオチド;ビシナルなヘテロ原子(例えば、ビシナルジオール、ビシナルアミノアルコール、またはビシナルチオールアルコール)を含むリンカー、これは3’末端のヌクレオチドではない;および固相支持体、を含む複合体を、オリゴヌクレオチドの3’−OHと、リンカーのホスフェートとの間のエステル結合が切断される条件下で、気体状の求核性組成物に接触させ、リンカーからオリゴヌクレオチドを切断することを含む。オリゴヌクレオチドからリンカーを除去する際、リン(phosphorous)を含む複素環、最も好ましくは環状ホスホジエステルが製造される。本発明の、ある最も好ましい局面において、リンカーはユニバーサルリンカーである。
【0019】
本態様の好ましい局面において、ビシナルジオールの、オリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオチドのホスフェートに結合していない酸素上に、保護基が結合される。このような許容可能な保護基には、DMTr基、アシル基、アリール基、シリル基、トリフルオロアセチル基、ベンジル基、または、置換されたベンジル基もしくはアリール基が含まれる。
【0020】
好ましい態様において、オリゴヌクレオチド、リンカー、固相支持体複合体を、室温程度から約150℃の間の温度で、約1分から約5時間、切断試薬で反応させる。
【0021】
ある最も好ましい態様においては、オリゴヌクレオチド、リンカー、固相支持体複合体を、約95℃で約120分、アンモニアの蒸気で反応させる。遊離オリゴヌクレオチドは、固相を水または緩衝液で洗浄することにより単離される。
【0022】
本発明は、オリゴヌクレオチドから、リンカー、特にユニバーサルリンカーを除去する既存の方法をこえる、重要な改良法を提供する。具体的には、実質的に完全に切断するためには少なくとも18時間を必要とする既存の方法に対して、本発明により、0〜5時間、最も好ましくは1〜2時間で、オリゴヌクレオチドからユニバーサルリンカーを除去することができる。さらに、リンカーを除去する時間が減少したことにより、ハイスループットオリゴヌクレオチド合成において、ユニバーサルリンカーを、より効率的に使用できるようになった。
【0023】
以上に論じたとおり、固相支持体からの切断、脱保護、およびユニバーサルリンカーの除去は、普通、液体水酸化アンモニウムなどの液状切断/脱保護試薬により、同一反応中で達成される。この方法の主要な問題は、オリゴヌクレオチドからリンカーを除去するために必要な時間の長さである(〜18時間)。このことにより、ユニバーサルリンカーを用いれば単一の固相支持体を用いるだけですむという利点にも関わらず、ユニバーサルリンカーは、ハイスループットオリゴヌクレオチド合成において、広く用いられずにいる。気相切断試薬を用いることで、オリゴヌクレオチドからリンカーを切断するために必要な時間が、0〜5時間、最も好ましくは1〜2時間に減少することが発見された。
【0024】
求核性アミノ化合物は、アンモニアの蒸気(例えば、ある量の水酸化アンモニウムを下部に含む密閉可能なチャンバーを加熱することにより得られる)、または、C1−6アルキルアミノ化合物でありうる。アルキル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。そのようなアルキルアミノ化合物の例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec−ブチルアミン、ペンチルアミン、および、ヘキシルアミンが含まれる。または、求核性アミノ化合物は、気相において反応することができる求核性部分を含む多くの化合物のいずれでもよい(例えば、ナトリウムメトキシド、硫化水素、ある一定の水酸化物、またはアルコキシド)。オリゴヌクレオチドは、求核性アミノ化合物に可溶性でないため、求核性アミノ化合物は濾過により除去されうる。DNAは、濾過中は固相支持体に結合したままで、その後、緩衝液で溶出可能である。
【0025】
オリゴヌクレオチドは、周知の方法、例えば、ホスホロアミダイト法、ホスホトリエステル法、ホスホジエステル法、ホスファイト法、およびH−ホスホネート法、により調製しうる。これらはいずれも、化学、生化学、および分子生物学の分野において一般的に知られている。例えば、β−シアノエチルホスホロアミダイト法が、カルサース(Caruthers)らに対して発行された米国特許第4,458,066号、発明の名称「ポリヌクレオチドを調整する方法(Process for Preparing Polynucleotides)」に述べられている。上記特許は参照として本明細書に組み入れられる。E.エクスタイン(E. Eckstein)(編)、「オリゴヌクレオチドおよび類似体、実践的研究法(Oligonucleotides and Analogs, A Practical Approach)」、IRLプレス(IRL Press)、オックスフォード(Oxford)(1991);GB 2,125,789;ならびに、米国特許第4,415,732号、米国特許第4,739,044号、および米国特許第4,757,141号も参照のこと。このようなオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、DNAとRNAとの混合物、DNAおよびRNAの誘導体、ならびにそれらの混合物でもよい。
【0026】
本発明の最も好ましい態様において、オリゴヌクレオチドは、3’末端ヌクレオチドの3’ヒドロキシルに対するホスホジエステル結合によって、ユニバーサルリンカーに連結される。リンカーは、典型的にはエステル結合によって、固相支持体に連結していてもよい。固相支持体にリンカーが連結している一方で、オリゴヌクレオチドからリンカーが除去される場合、固相支持体とリンカーとの間のエステル結合も、気体状の切断剤により切断されうる。リンカーを除去することにより、オリゴヌクレオチドは遊離し、そして、水または緩衝剤で固相を洗浄することにより回収されうる。
【0027】
ユニバーサルリンカーは、多くの刊行物に記載されている(Nelsonら、Biotechniques. 22: 753−756 (1997);Goughら、Tetrahedron Let. 24: 5321−5324 (1983);およびLyttleら、Nucleosides Nucleotides. 18: 1809−1824 (1999))。オリゴヌクレオチド合成の慣例的な方法をこえる、ユニバーサルリンカーの有利な点は、それぞれ所望の3’末端塩基に対応する4つの異なる支持体を用いることに対して、対応するホスホロアミダイトを直接リンカーに自動的に結びつけて、オリゴヌクレオチドの所望の3’末端ヌクレオチドを付け加える能力である。オリゴヌクレオチドの合成が完了した際、3’ヒドロキシルは再生され、3’ホスフェートは環状ホスホジエステルの形で、ユニバーサルリンカーに連結されたままとなる。多くのユニバーサルリンカーが市販されているが、合成が完了した後、それらをオリゴヌクレオチドから除去するために長いインキュベーション時間が必要となるため、ユニバーサルリンカーの使用は限られている。これらリンカーの多くは、固相基盤に前もって連結されて売られており、いくつかの例としては、これらに限定されないが、グレン(Glen)、クロンテック(Clontech)、SPS/バイオサーチ(SPS/Biosearch)、およびベックマン(Beckman)の製品が含まれる(図2)。
【0028】
リンカーの除去は、好ましくは、加熱することのできる密閉可能なチャンバー(本発明に従って、開放式チャンバーも使用しうるが)中で実施される。このような密閉可能なチャンバーとしては、ねじ口バイアル、パー(Parr)ボトル等が含まれる。オリゴヌクレオチド合成および支持体からの切断は、市販のDNA合成機、例えば、ABI 380B DNA合成機、または、マルチウェルチャネル、例えば、96ウェルプレート(例えば、全体が参照として本明細書に組み入れられる、1999年2月5日提出の米国出願第245,023号を参照)でのハイスループット合成用に設定された、他の機器で実施してもよい。
【0029】
気体状の求核性切断試薬は、オリゴヌクレオチドからリンカーを切断するために効果的な量で存在させる。一般的には、気体状求核性切断試薬は、オリゴヌクレオチドに比べて過剰量存在させる。本発明に従って、多くの求核性アミノ化合物のいずれでも使用できる。アンモニアの場合、密閉可能なチャンバーは、約20 psiから約200 psi、最も好ましくは、約80 psiのアンモニアで満たされうる。一般に液体アルキルアミノ化合物から気体が生成されるが、液体アルキルアミノ化合物の最適量は、単なる定常の実験法で決定されうる。また、求核性アミノ化合物の気相は、直接使用可能である。
【0030】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の実例であるが、これらに限定されるものではない。分子生物学および化学、特にオリゴヌクレオチド合成において通常遭遇する多様な条件およびパラメーターの、本開示の観点から当業者に明らかな他の適した改変および改作は、本発明の意図および範囲内である。
【0031】
実施例
気体水酸化アンモニウムが、ユニバーサルリンカーからオリゴヌクレオチドを切断する速度を非常に速めることを発見した。図5Aおよび5Bは、95℃、80 psi、60分での20量体の気相切断・脱保護(図6A)と、95℃、75分での濃水酸化アンモニウム(図6B)とをHPLC比較で示す。これで、ユニバーサルリンカーをハイスループット環境で使用する可能性が、手中のものとなる。
【0032】
バイオサーチ テクノロジーズ社(Biosearch Technologies, Inc.)の2型ユニバーサル支持体(Universal Support Type 2)(ポリスチレン)を用いて、ハイスループット並行(parallel)DNA合成機で、以下の配列を合成した。
【0033】
合成後、オリゴを、ガス注入口、排出口、および安全放出弁を含む高圧反応器に入れた。容器を、95℃にて、前もって平衡化した。チャンバーを密閉した後、気相反応器を、圧力が80 PSIに達するまで水和アンモニアガスで満たした。この圧力を1.5時間維持した。そしてガスを通気口より放出し、オリゴをチャンバーから取り出した。水を用いてオリゴを支持体から溶出し、C18カラムを用いたイオン対合(ion pairing)HPLCにて解析した(65% Aから35% B、13分間。Aは20 mM NaH2PO4、5 mMテトラブチルアンモニウムホスフェート。溶媒Bはアセトニトリル)。1.9分におけるピークは、ベンズアミドからのものである。
【0034】
本明細書に記載の、すべての刊行物、特許、および特許出願は、本発明が属する技術分野における当業者の技術水準を示すものである。すべての刊行物、特許、および特許出願は、各刊行物または特許出願は、それぞれ、その全体が参照として組み入れられるよう、具体的に、かつ、個別に示されたように同程度までが参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aおよび図1Bは、標準的方法論およびユニバーサルリンカーの方法論を用いたオリゴヌクレオチド合成の一般的な方法を表すスキームを示す。
【図2】市販されているユニバーサルリンカーの構造の例を表す。
【図3】環状ホスホジエステルおよび遊離ヌクレオチド産物を表す、ユニバーサル支持体からオリゴヌクレオチドを切断する機構を示す。
【図4】ハイスループット自動合成におけるユニバーサルリンカーの使用に関する問題を図解するスキームである。「ユニバーサルリンカーの除去」と表示した工程は、約18時間かかる。
【図5】第2世代ユニバーサルリンカーの反応機構を表すスキームを示す。これらリンカーは、リトル(Lyttle)ら、Nucleosides and Nucleotides. 18: 1809−1824 (1999)に述べられている。
【図6】図6Aおよび図6Bは、濃水酸化アンモニウムを用いた、95℃、75分での切断・脱保護(図6A)を、95℃、80 psi、60分での20量体の気相切断・脱保護(図6B)と比較するHPLCクロマトグラムを示す。
【図7】2時間の気相工程を使用して切断・脱保護されたオリゴヌクレオチドの質量スペクトログラフを示す。
発明の背景
発明の分野
本発明は、オリゴヌクレオチド−リンカー複合体をアンモニアなどの気体状求核試薬に接触させる段階を含む、オリゴヌクレオチドからリンカーを実質的に切断する工程に関する。
【0002】
関連する技術分野
様々な固相オリゴヌクレオチド合成技術が、当業者に知られている。このような技術には、ホスホロアミダイト法、ホスホトリエステル法、ホスホジエステル法、ホスファイト法、およびH−ホスホネート法等が含まれる。これらはいずれも、化学、生化学、および分子生物学の分野において一般的に知られている。例えば、β−シアノエチルホスホロアミダイト法が、カルサース(Caruthers)らに対して発行された米国特許第4,458,066号、発明の名称「ポリヌクレオチドを調整する方法(Process for Preparing Polynucleotides)」に述べられている。上記特許は参照として本明細書に組み入れられる。
【0003】
現在、DNAの化学合成に用いられる最も標準的な手法は、合成されるオリゴヌクレオチドの3’末に対応する塩基であらかじめ官能性が付与された細孔性ガラス(controlled pore glass (CPG))に依拠している。ここでは、合成されるオリゴの3’末端の所望の塩基次第で特異的なCPGが使用されるために、4つの異なるCPGを使用する必要がある(図1)。標準的なDNA合成機においては、この標準的なスキームが不都合であるということはほとんどないが、96ウェルプレートを利用して多くの異なるオリゴを同時に作成するハイスループットDNA合成機とともに使用する際には、問題が大きくなる。96ウェルのそれぞれに正しいCPGを載せることが難しいため、間違ったCPGを一つまたはそれ以上のウェルに不正確に載せてしまう危険性を伴う。加えて、それぞれの塩基に異なる支持体を用いることにより、保存し管理しなければならない未加工の材料の数を増やすことになる。このため、単一のCPGがオリゴ3’末のどの塩基にも適合するシステムの開発が、非常に望ましい。
【0004】
ユニバーサルリンカーと呼ばれる多くのリンカーが、3’末端の塩基を固相支持体、例えばCPG、に連結するために開発されており、3’末がいかなる塩基でも、オリゴヌクレオチドの合成に単一のCPGを使用できる(図2)。市販のリンカーの多くは、環状ビシナルジオールを含み、これに第一の塩基が連結する。切断・脱保護に際し、オリゴはリンカーから切断され、3’ホスフェートは環状ホスホジエステルを形成することにより除去される(図3)。通常、この切断・脱保護には、オリゴを長時間(〜18時間)濃アンモニア水とともに加熱するか、または、さらなる除去段階を必要とするLiCl等の塩添加物を濃NH4OHとともに使用する必要がある。加えて、切断・脱保護は水酸化アンモニウム/メチルアミン(ammonium hydroxide/methylamine (AMA))で達成することができるが、この試薬では、オリゴにメチルアミンが組み込まれることを避けるために、dCに関して特別な保護基を使用する必要がある。
【0005】
ユニバーサルリンカーの使用は、望ましくはあるが、その厳格な条件、および、ユニバーサルリンカーからオリゴを切断するために必要な時間が現時点で長いことから、実用的でないことは明らかである。オリゴヌクレオチド合成にユニバーサルリンカーを用いる際、少なくとも3つの反応が、切断・脱保護段階中に同時に起こる。第一に、ユニバーサルリンカーと固相支持体との間のエステル結合が切断される。第二に、オリゴヌクレオチド上の環外アミノ基が脱保護される。そして最後に、ユニバーサルリンカーと新たに合成されたオリゴヌクレオチドの3’末端塩基との間のホスホジエステル結合が切断される(図4)。これら反応の最初の2つは比較的速やかに起こる(〜1時間)が、オリゴヌクレオチドからユニバーサルリンカーを切断する工程は遅く、普通は、液状の切断・脱保護試薬とともに18時間インキュベーションする必要がある。さらに、通常、遊離ユニバーサルリンカー産物を除去する段階を加える必要がある。これらの問題のため、明らかに有利であるにも関わらず、ユニバーサルリンカーを用いるオリゴヌクレオチド製造業者はあまりいない。
【0006】
バイオサーチ テクノロジーズ社(Biosearch Technologies, Inc.)は、最近、脱保護・切断中、固相支持体に結合したままとなる、ビシナルジオールを含む新世代ユニバーサルリンカーを紹介した(Lyttleら、Nucleosides and Nucleotides 18: 1809−1824 (1999);図5)。これは、最終オリゴヌクレオチド溶液から、混入しているリンカーを除去することに関する問題に対処したものだが、この新世代ユニバーサルリンカーでも、完全に切断・脱保護するためにはやはり熱水酸化アンモニウムで長時間処理する必要がある。
【0007】
米国特許第5,514,789号には、新しく合成されたオリゴヌクレオチドを、気体アンモニア、水酸化アンモニウムの蒸気、またはメチルアミンなどの気体状の切断/脱保護試薬を用いて標準的な固相支持体から切断・脱保護する方法が記述されている。
【0008】
気体状の求核性アミノ化合物を使用することによって、新しく合成されたオリゴヌクレオチドを、それらを固相基質に連結させているリンカーから、迅速かつ効果的に切断できることが現時点で見出されている。この新しい方法によって、切断/脱保護に要する時間が約18時間から2時間未満にまで減少し、ハイスループットオリゴヌクレオチド合成において、より効率的にユニバーサルリンカーが使用される。
【0009】
発明の概要
本発明は、オリゴヌクレオチドを固相に連結させるリンカーをオリゴヌクレオチドから実質的に切断して、遊離オリゴヌクレオチドを提供する方法に関し、オリゴヌクレオチド−リンカー−固相複合体を、リンカーが除去される条件下で有効量の気体状求核性アミノ化合物に接触させ、遊離オリゴヌクレオチドを製造する段階を含む方法に関する。
【0010】
具体的には、本発明は、リンカーをオリゴヌクレオチドから切断する方法に関し、オリゴヌクレオチド;ビシナルジオールを含むリンカー(これは3’末端のヌクレオチドではない);および固相支持体、を含む複合体を、オリゴヌクレオチドの第一の構成要素(通常、3’末端ヌクレオチドの3’−OH)と、リンカーのホスフェートとの間のエステル結合が切断される条件下で、気体状の求核性組成物に接触させ、リンカーからオリゴヌクレオチドを切断する段階を含む方法に関する。オリゴヌクレオチドからリンカーを除去する際、リンカーはリン(phosphorous)を含む複素環、最も好ましくは環状ホスホジエステルを形成する。より具体的には、本発明は、(同一または異なる構造を有する)一つ以上の気体状求核性アミノ化合物を用いて、(同一または異なる構造を有する)一つ以上のユニバーサルリンカーから遊離される、(同一または異なる配列の)一つ以上のオリゴヌクレオチドの切断に関する。固相支持体からオリゴヌクレオチドを切断する方法と比較すると、本発明の方法は、リンカー、特にユニバーサルリンカー、からオリゴヌクレオチドを切断することに関しており、一方で、固相支持体から切断する方法は、固相支持体に直接結合したオリゴヌクレオチドを切断することに関連している(図1Aおよび図1B)。
【0011】
好ましい態様において、オリゴヌクレオチド、リンカー、固相支持体複合体を、室温程度から約150℃の間の温度で、約1分から約240分間、切断試薬で反応させる。
【0012】
ある最も好ましい態様においては、オリゴヌクレオチド、リンカー、固相支持体複合体を、約95℃で約120分間、水和アンモニアの蒸気で反応させうる。そして、切断されたオリゴヌクレオチドは、固相を水または緩衝液で洗浄することにより単離される。
【0013】
オリゴヌクレオチド、リンカー、固相支持体複合体は、以下の一般構造を有しうる:
【化2】
式中、Xはオリゴヌクレオチド(通常3’ヌクレオチド)の末端であり、Sは固相支持体であり、Rは選択的に置換されたテトラヒドロフラン環、フェニル環、またはシクロペンタン環であり、およびR’は保護基であり、ならびにZはO、S、またはSeである。リンカーの例は図2に示す。R基における置換がもしあれば、ヒドロキシル、アミノ、チオール、エステル、アミド、窒素塩基、およびその他の官能基を含みうる。
【0014】
本発明の詳細な説明
定義
次の記述においては、化学、生化学、および分子生物学の分野において用いられる多くの用語が広く用いられている。本明細書および特許請求の範囲を、より明確に矛盾なく理解するために、そのような用語に与えられた範囲を含め、以下に定義する。
【0015】
ユニバーサルリンカー
この用語は、本明細書に用いられるように、固相支持体にヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを連結させるよう機能する分子を意味し、このとき、そのリンカー分子は、合成されるオリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオチドではない。ユニバーサル支持体の目立った特徴としては、これに限定されないが、所望の3’末端ヌクレオチドを直接ユニバーサルリンカーに連結させてから固相に連結させうる能力が挙げられる。通常この結合は、3’末端ヌクレオチドの3’ヒドロキシルに対するホスホジエステル結合を含む。オリゴヌクレオチド合成および求核試薬によるユニバーサルリンカーの除去が完了した際には、末端ヌクレオチドの3’ヒドロキシルは再生し、ホスフェートはユニバーサルリンカーに結合して環状ホスホジエステルを形成する。
【0016】
リンカーの切断または除去
この語句は、本明細書に用いられるように、オリゴヌクレオチドの末端構成成分、好ましくは末端ヌクレオチドの3’ヒドロキシルと、ホスフェート部分との間のエステル結合を実質的に切断し、完全な3’ヒドロキシル基を含む遊離オリゴヌクレオチド、および、リン(phosphorous)を含む複素環、最も好ましくは環状ホスホジエステル、を含むリンカーを形成することを意味する。切断試薬と接触させた後に、例えばHPLCで測定して、単離されたオリゴヌクレオチドの少なくとも80%、好ましくは90%以上が連結したリンカーを含まない場合、切断は実質的と考えられる。これには固相支持体からリンカーが切断される必要はなく、固相支持体からの切断は、同時に起こる別の反応である。
【0017】
好ましい態様の説明
本発明は、オリゴヌクレオチドを固相支持体に連結させるリンカーを、オリゴヌクレオチドから実質的に切断する方法に関し、リンカー−オリゴヌクレオチド−固相複合体を、有効量の、気体状求核性アミノ化合物などの気体状切断試薬に接触させることを含む方法に関する。
【0018】
具体的には、本発明は、リンカーをオリゴヌクレオチドから切断する方法に関し、この方法は、オリゴヌクレオチド;ビシナルなヘテロ原子(例えば、ビシナルジオール、ビシナルアミノアルコール、またはビシナルチオールアルコール)を含むリンカー、これは3’末端のヌクレオチドではない;および固相支持体、を含む複合体を、オリゴヌクレオチドの3’−OHと、リンカーのホスフェートとの間のエステル結合が切断される条件下で、気体状の求核性組成物に接触させ、リンカーからオリゴヌクレオチドを切断することを含む。オリゴヌクレオチドからリンカーを除去する際、リン(phosphorous)を含む複素環、最も好ましくは環状ホスホジエステルが製造される。本発明の、ある最も好ましい局面において、リンカーはユニバーサルリンカーである。
【0019】
本態様の好ましい局面において、ビシナルジオールの、オリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオチドのホスフェートに結合していない酸素上に、保護基が結合される。このような許容可能な保護基には、DMTr基、アシル基、アリール基、シリル基、トリフルオロアセチル基、ベンジル基、または、置換されたベンジル基もしくはアリール基が含まれる。
【0020】
好ましい態様において、オリゴヌクレオチド、リンカー、固相支持体複合体を、室温程度から約150℃の間の温度で、約1分から約5時間、切断試薬で反応させる。
【0021】
ある最も好ましい態様においては、オリゴヌクレオチド、リンカー、固相支持体複合体を、約95℃で約120分、アンモニアの蒸気で反応させる。遊離オリゴヌクレオチドは、固相を水または緩衝液で洗浄することにより単離される。
【0022】
本発明は、オリゴヌクレオチドから、リンカー、特にユニバーサルリンカーを除去する既存の方法をこえる、重要な改良法を提供する。具体的には、実質的に完全に切断するためには少なくとも18時間を必要とする既存の方法に対して、本発明により、0〜5時間、最も好ましくは1〜2時間で、オリゴヌクレオチドからユニバーサルリンカーを除去することができる。さらに、リンカーを除去する時間が減少したことにより、ハイスループットオリゴヌクレオチド合成において、ユニバーサルリンカーを、より効率的に使用できるようになった。
【0023】
以上に論じたとおり、固相支持体からの切断、脱保護、およびユニバーサルリンカーの除去は、普通、液体水酸化アンモニウムなどの液状切断/脱保護試薬により、同一反応中で達成される。この方法の主要な問題は、オリゴヌクレオチドからリンカーを除去するために必要な時間の長さである(〜18時間)。このことにより、ユニバーサルリンカーを用いれば単一の固相支持体を用いるだけですむという利点にも関わらず、ユニバーサルリンカーは、ハイスループットオリゴヌクレオチド合成において、広く用いられずにいる。気相切断試薬を用いることで、オリゴヌクレオチドからリンカーを切断するために必要な時間が、0〜5時間、最も好ましくは1〜2時間に減少することが発見された。
【0024】
求核性アミノ化合物は、アンモニアの蒸気(例えば、ある量の水酸化アンモニウムを下部に含む密閉可能なチャンバーを加熱することにより得られる)、または、C1−6アルキルアミノ化合物でありうる。アルキル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。そのようなアルキルアミノ化合物の例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec−ブチルアミン、ペンチルアミン、および、ヘキシルアミンが含まれる。または、求核性アミノ化合物は、気相において反応することができる求核性部分を含む多くの化合物のいずれでもよい(例えば、ナトリウムメトキシド、硫化水素、ある一定の水酸化物、またはアルコキシド)。オリゴヌクレオチドは、求核性アミノ化合物に可溶性でないため、求核性アミノ化合物は濾過により除去されうる。DNAは、濾過中は固相支持体に結合したままで、その後、緩衝液で溶出可能である。
【0025】
オリゴヌクレオチドは、周知の方法、例えば、ホスホロアミダイト法、ホスホトリエステル法、ホスホジエステル法、ホスファイト法、およびH−ホスホネート法、により調製しうる。これらはいずれも、化学、生化学、および分子生物学の分野において一般的に知られている。例えば、β−シアノエチルホスホロアミダイト法が、カルサース(Caruthers)らに対して発行された米国特許第4,458,066号、発明の名称「ポリヌクレオチドを調整する方法(Process for Preparing Polynucleotides)」に述べられている。上記特許は参照として本明細書に組み入れられる。E.エクスタイン(E. Eckstein)(編)、「オリゴヌクレオチドおよび類似体、実践的研究法(Oligonucleotides and Analogs, A Practical Approach)」、IRLプレス(IRL Press)、オックスフォード(Oxford)(1991);GB 2,125,789;ならびに、米国特許第4,415,732号、米国特許第4,739,044号、および米国特許第4,757,141号も参照のこと。このようなオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、DNAとRNAとの混合物、DNAおよびRNAの誘導体、ならびにそれらの混合物でもよい。
【0026】
本発明の最も好ましい態様において、オリゴヌクレオチドは、3’末端ヌクレオチドの3’ヒドロキシルに対するホスホジエステル結合によって、ユニバーサルリンカーに連結される。リンカーは、典型的にはエステル結合によって、固相支持体に連結していてもよい。固相支持体にリンカーが連結している一方で、オリゴヌクレオチドからリンカーが除去される場合、固相支持体とリンカーとの間のエステル結合も、気体状の切断剤により切断されうる。リンカーを除去することにより、オリゴヌクレオチドは遊離し、そして、水または緩衝剤で固相を洗浄することにより回収されうる。
【0027】
ユニバーサルリンカーは、多くの刊行物に記載されている(Nelsonら、Biotechniques. 22: 753−756 (1997);Goughら、Tetrahedron Let. 24: 5321−5324 (1983);およびLyttleら、Nucleosides Nucleotides. 18: 1809−1824 (1999))。オリゴヌクレオチド合成の慣例的な方法をこえる、ユニバーサルリンカーの有利な点は、それぞれ所望の3’末端塩基に対応する4つの異なる支持体を用いることに対して、対応するホスホロアミダイトを直接リンカーに自動的に結びつけて、オリゴヌクレオチドの所望の3’末端ヌクレオチドを付け加える能力である。オリゴヌクレオチドの合成が完了した際、3’ヒドロキシルは再生され、3’ホスフェートは環状ホスホジエステルの形で、ユニバーサルリンカーに連結されたままとなる。多くのユニバーサルリンカーが市販されているが、合成が完了した後、それらをオリゴヌクレオチドから除去するために長いインキュベーション時間が必要となるため、ユニバーサルリンカーの使用は限られている。これらリンカーの多くは、固相基盤に前もって連結されて売られており、いくつかの例としては、これらに限定されないが、グレン(Glen)、クロンテック(Clontech)、SPS/バイオサーチ(SPS/Biosearch)、およびベックマン(Beckman)の製品が含まれる(図2)。
【0028】
リンカーの除去は、好ましくは、加熱することのできる密閉可能なチャンバー(本発明に従って、開放式チャンバーも使用しうるが)中で実施される。このような密閉可能なチャンバーとしては、ねじ口バイアル、パー(Parr)ボトル等が含まれる。オリゴヌクレオチド合成および支持体からの切断は、市販のDNA合成機、例えば、ABI 380B DNA合成機、または、マルチウェルチャネル、例えば、96ウェルプレート(例えば、全体が参照として本明細書に組み入れられる、1999年2月5日提出の米国出願第245,023号を参照)でのハイスループット合成用に設定された、他の機器で実施してもよい。
【0029】
気体状の求核性切断試薬は、オリゴヌクレオチドからリンカーを切断するために効果的な量で存在させる。一般的には、気体状求核性切断試薬は、オリゴヌクレオチドに比べて過剰量存在させる。本発明に従って、多くの求核性アミノ化合物のいずれでも使用できる。アンモニアの場合、密閉可能なチャンバーは、約20 psiから約200 psi、最も好ましくは、約80 psiのアンモニアで満たされうる。一般に液体アルキルアミノ化合物から気体が生成されるが、液体アルキルアミノ化合物の最適量は、単なる定常の実験法で決定されうる。また、求核性アミノ化合物の気相は、直接使用可能である。
【0030】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の実例であるが、これらに限定されるものではない。分子生物学および化学、特にオリゴヌクレオチド合成において通常遭遇する多様な条件およびパラメーターの、本開示の観点から当業者に明らかな他の適した改変および改作は、本発明の意図および範囲内である。
【0031】
実施例
気体水酸化アンモニウムが、ユニバーサルリンカーからオリゴヌクレオチドを切断する速度を非常に速めることを発見した。図5Aおよび5Bは、95℃、80 psi、60分での20量体の気相切断・脱保護(図6A)と、95℃、75分での濃水酸化アンモニウム(図6B)とをHPLC比較で示す。これで、ユニバーサルリンカーをハイスループット環境で使用する可能性が、手中のものとなる。
【0032】
バイオサーチ テクノロジーズ社(Biosearch Technologies, Inc.)の2型ユニバーサル支持体(Universal Support Type 2)(ポリスチレン)を用いて、ハイスループット並行(parallel)DNA合成機で、以下の配列を合成した。
【0033】
合成後、オリゴを、ガス注入口、排出口、および安全放出弁を含む高圧反応器に入れた。容器を、95℃にて、前もって平衡化した。チャンバーを密閉した後、気相反応器を、圧力が80 PSIに達するまで水和アンモニアガスで満たした。この圧力を1.5時間維持した。そしてガスを通気口より放出し、オリゴをチャンバーから取り出した。水を用いてオリゴを支持体から溶出し、C18カラムを用いたイオン対合(ion pairing)HPLCにて解析した(65% Aから35% B、13分間。Aは20 mM NaH2PO4、5 mMテトラブチルアンモニウムホスフェート。溶媒Bはアセトニトリル)。1.9分におけるピークは、ベンズアミドからのものである。
【0034】
本明細書に記載の、すべての刊行物、特許、および特許出願は、本発明が属する技術分野における当業者の技術水準を示すものである。すべての刊行物、特許、および特許出願は、各刊行物または特許出願は、それぞれ、その全体が参照として組み入れられるよう、具体的に、かつ、個別に示されたように同程度までが参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aおよび図1Bは、標準的方法論およびユニバーサルリンカーの方法論を用いたオリゴヌクレオチド合成の一般的な方法を表すスキームを示す。
【図2】市販されているユニバーサルリンカーの構造の例を表す。
【図3】環状ホスホジエステルおよび遊離ヌクレオチド産物を表す、ユニバーサル支持体からオリゴヌクレオチドを切断する機構を示す。
【図4】ハイスループット自動合成におけるユニバーサルリンカーの使用に関する問題を図解するスキームである。「ユニバーサルリンカーの除去」と表示した工程は、約18時間かかる。
【図5】第2世代ユニバーサルリンカーの反応機構を表すスキームを示す。これらリンカーは、リトル(Lyttle)ら、Nucleosides and Nucleotides. 18: 1809−1824 (1999)に述べられている。
【図6】図6Aおよび図6Bは、濃水酸化アンモニウムを用いた、95℃、75分での切断・脱保護(図6A)を、95℃、80 psi、60分での20量体の気相切断・脱保護(図6B)と比較するHPLCクロマトグラムを示す。
【図7】2時間の気相工程を使用して切断・脱保護されたオリゴヌクレオチドの質量スペクトログラフを示す。
Claims (21)
- オリゴヌクレオチド、リンカー、および固相支持体を含む複合体を、オリゴヌクレオチドからリンカーを切断する条件下で、気体状の求核性組成物に接触させる段階を含む、オリゴヌクレオチドからリンカーを切断する方法。
- リンカーがユニバーサルリンカーである、請求項1記載の方法。
- オリゴヌクレオチドを固相支持体に連結させるリンカーが、3’末端ヌクレオチドではない、請求項1記載の方法。
- 切断される結合が、オリゴヌクレオチドの3’−OHと、リンカーのホスフェートとの間のエステル結合である、請求項1記載の方法。
- リンカーが、除去される際に、リンを含む複素環を製造する、請求項4記載の方法。
- リンカーが、2つのビシナルなヘテロ原子を含む、請求項1記載の方法。
- リンカーが、ビシナルジオールを含む、請求項1記載の方法。
- リンカーが、ビシナルアミノアルコールを含む、請求項1記載の方法。
- リンカーが、ビシナルチオールアルコールを含む、請求項1記載の方法。
- 気体状の求核性化合物が、アンモニアの蒸気である、請求項1記載の方法。
- 気体状の求核性化合物が、水和アンモニアの蒸気である、請求項1記載の方法。
- 条件として、約1分から約240分間、工程を実施することを含む、請求項1記載の方法。
- 条件として、約60分間、工程を実施することを含む、請求項11記載の方法。
- 条件として、室温程度から約150℃で工程を実施することを含む、請求項1記載の方法。
- 条件として、約95℃で工程を実施することを含む、請求項14記載の方法。
- オリゴヌクレオチドの末端ヌクレオチドの3’ヒドロキシルとリンカーとの間のエステル結合が、実質的に切断される、請求項1記載の方法。
- 切断されたオリゴヌクレオチドが、固相を水または緩衝液で洗浄することにより回収される、請求項16記載の方法。
- 水酸化アンモニウムの蒸気を、95℃および80 psiで120分、リンカー、オリゴヌクレオチド、および固相支持体を含む複合体に接触させ、オリゴヌクレオチドからリンカーを切断する段階を含む、オリゴヌクレオチドからリンカーを切断する方法。
- Xが、オリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオチドである、請求項19記載の方法。
- 保護基が、DMTr基、アシル基、アリール基、シリル基、トリフルオロアセチル基、ベンジル基、または置換されたベンジル基もしくはアリール基である、請求項19記載の方法。
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