JP2004513117A - 疼痛治療のためのn−型カルシウムチャンネル拮抗薬 - Google Patents

疼痛治療のためのn−型カルシウムチャンネル拮抗薬 Download PDF

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Abstract

本発明は疼痛治療のためのN−型カルシウムチャンネル拮抗薬を提供することを目的とする。
疼痛の治療に有用な構造式I(式中、R、R、R、R、R、AおよびDは本明細書で定義された通りである)の化合物、このような化合物を使用する医薬組成物および治療法が開示されている。
【化1】

Description

【0001】
本発明は疼痛または侵害受容の治療または予防のための化合物および方法に関する。
【0002】
疼痛はかなりの苦痛をもたらし、触覚、圧力、熱および冷たさの感覚とは異なる知覚経験である。それはしばしば患者により「鮮やかな、鈍い、うずく、チクチクする、鋭い、またはヒリヒリする」のような言葉で表現され、一般に元の感覚とその感覚に対する反応の両方を含むと考えられる。この感覚の幅および様々な個体による疼痛感覚のばらつきは疼痛の正確な定義を困難なものにしている。疼痛が侵害受容器の刺激により“起こり”、無傷の神経経路を伝わる場合、これは侵害受容性疼痛と呼ばれる。疼痛は神経構造の損傷により起こることもあり、また疼痛はしばしば神経性過敏として現われ、このタイプの疼痛は神経因性疼痛と呼ばれる。
【0003】
疼痛が感知される刺激のレベルを“痛覚閾値”という。痛覚閾値が例えば鎮痛剤の投与により上昇する場合、痛みを感じるまでより大きい強度またはより長時間の刺激が必要である。鎮痛剤はこのような治療が必要な患者への投与後に意識を失うことなく痛みを緩和する薬剤の類である。これは他の痛みを緩和する薬剤、例えば意識を途切れさせることにより痛みを緩和する全身麻酔薬、または末梢神経線維の伝達をブロックし、それにより疼痛を予防する局所麻酔薬とは著しく異なる。
【0004】
タキキニン拮抗薬は動物での抗侵害受容作用を誘発することが報告されており、それはヒトでの鎮痛作用と似ていると考えられる(MaggiらのJ. Auton. Pharmacol.13, 23〜93(1993年)を参照)。特に、非ペプチドNK−1受容体拮抗薬はこのような鎮痛作用を示すことがわかっており、例えば化学的侵害受容の典型的な試験(フェニルベンゾキノンが誘発する身もだえおよびホルマリン試験)においてNK−1受容体拮抗薬RP67,580はモルヒネに匹敵する効力の鎮痛作用を示した(GarretらのProc. Natl. Acad. Sci. 米国, 88, 10208〜10212(1993年))。
【0005】
オピオイド鎮痛薬は良く知られている類の鎮痛剤である。一般に、これらの化合物は総称的な意味でモルヒネ様作用を有するすべての天然または合成の薬剤を包含する。合成および半合成のオピオイド鎮痛薬は5種の化学物質:フェナントレン;フェニルヘプチルアミン;フェニルピペリジン;モルフィナンおよびベンゾモルファンの誘導体である。これらの化合物は薬理学的に異なる活性を有し、あるものはオピオイド受容体の強力なアゴニストであり(例えばモルヒネ)、他のものは中程度〜軽度のアゴニストであり(例えばコデイン)、また他のものは混合したアゴニスト−アンタゴニスト活性を示し(例えばナルブフィン)、さらに他のものは部分アゴニストである(例えばナロルフィン)。ナロルフィンのようなオピオイド部分アゴニスト(モルヒネのN−アルキル類似体)はモルヒネの鎮痛作用を中和するが、それは単独で投与されるとそれ自体で強力な鎮痛剤となる。すべてのオピオイド鎮痛薬のうち、モルヒネが最も広く使用されており、好適な典型化合物である。残念なことに、モルヒネはその有用な治療的特性の他に呼吸抑制、胃腸運動の低下(便秘を引き起こす)を含む幾つかの欠点も有し、患者によっては嘔気嘔吐を催すことがある。他の特徴はこのような化合物の臨床使用を限定する耐性の発生および身体的依存である。
【0006】
滑膜炎症の阻止または軽減に関し、それにより機能を改善する抗炎症化合物、および疼痛の軽減に関する鎮痛薬は現在リウマチ性疾患および関節炎を治療する主要な方法である。アスピリンおよび他のサリチル酸塩化合物はしばしば炎症性過程の進行を止め、一時的に痛みを和らげる治療に使用される。これらの目的に使用される他の薬剤化合物にはイブプロフェンおよびナプロキシンのようなフェニルプロピオン酸誘導体、スリンダク、フェニルブタゾン、コルチコステロイド;クロロキンおよびヒドロキシクロロキンスルフェートのような抗マラリア薬、およびフェネメートがある。リウマチ性疾患の治療に使用される種々の薬剤の詳細な検討のために、J. Hosp. Pharm., 36:622(1979年5月)を参照されたい。
【0007】
カルシウムチャンネルは細胞外液から細胞へのCa++イオンの制御された流入を可能にする膜貫通性の多重−サブユニットタンパク質である。このようなチャンネルは動物界全体に存在し、細菌、真菌および植物細胞で確認されている。一般に、カルシウムチャンネルは電位に依存する。このようなチャンネルにおいて、“開放”は細胞へのCa++イオンの初期流入を可能にし、チャンネルを有する細胞の内部と細胞を浸す細胞外媒質の間の電位差を少なくする。細胞へのCa++イオンの流入率はこの電位差に依存する。動物のすべての“興奮性”細胞、例えば中枢神経系(“CNS”)の神経細胞、末梢神経細胞、並びに骨格筋、心筋、静脈および動脈の平滑筋などの筋細胞は電位依存性カルシウムチャンネルを有する。カルシウムチャンネルは細胞内のCa++イオン濃度を調整するのに中心的な役割を果たすため生理学的に重要である。これらの濃度は細胞の生存および機能に関して重要である。したがって、細胞内のCa++イオン濃度は動物における幾つかの重要な過程、例えば神経伝達物質の放出、筋収縮、ペースメーカー活動、およびホルモンの分泌に関与する。
【0008】
カルシウムチャンネルは特定の疾患状態に関与すると考えられる。ヒトを含む動物の様々な心臓血管疾患を治療するのに有用な化合物の幾つかは心臓および/または血管の平滑筋に存在する電位依存性カルシウムチャンネルの機能を調整することにより有益な効果を示すと考えられる。これらの化合物の多くはカルシウムチャンネルと結合し、細胞膜の脱分極に反応して細胞へのCa++イオンの流入を阻止する、またはその流入率を減少させる。中枢神経系のような他の臓器系のカルシウムチャンネルと相互作用する化合物の薬理学的特性、およびこれらの特定のサブタイプのヒトカルシウムチャンネルと相互作用して、例えば神経変性疾患の治療において所望の治療効果を示す化合物を合理的に設計する能力の理解は特にCNSに存在する異なるタイプのカルシウムチャンネルの数または個々のサブタイプの分子的性質を独立して測定することができないことや特定のサブタイプのチャンネルの純粋な標本、すなわちカルシウムチャンネルに作用する化合物の特異性を評価する系を入手できないことにより妨げられている。
【0009】
多重タイプのカルシウムチャンネルは様々な組織(例えば骨格筋、心筋、肺、平滑筋および脳)からの様々な哺乳動物細胞の電気生理学的および薬理学的試験に基づいて検出されている(Bean, B. P. のAnnu. Rev. Physiol. 51:367〜384(1989年)およびHess, P. のAnnu. Rev. Neurosci. 56:337(1990年))。これらの異なるタイプのカルシウムチャンネルは現在の速度論、保有する潜在的感受性やカルシウムチャンネルアゴニストおよびアンタゴニストに対する感受性により区別されるL−、T−、N−およびp−型の4つのクラスに幅広く分類されている。4つのサブタイプの神経細胞電位依存性カルシウムチャンネルが提唱されている(Swandulla, D. らのTrends Neurosci, 14:46(1991年))。L−、N−およびp−型のチャンネルはそれぞれ侵害受容に関与しているが、N−型チャンネルだけが常に急性、持続性および神経因性の疼痛に関与している。合成ω−コノトキシンMVIIA、すなわち食魚性の海生巻き貝、ヤキイモ(Conus magus)の毒由来の25−アミノ酸ペプチドはヒトにおいて鞘内的に使用されており、疼痛の治療ではモルヒネよりも高い効力を示し、〜85%の成功率である。
【0010】
既知の薬物療法を応用することができるが、それらの使用には欠点がある。例えば、患者の痛みを軽減するのに医薬品が効果を示すためには6ヶ月の継続使用を要する薬剤が幾つかある。結果として、特定の患者は医者がその治療が有効であるかどうかを判断するまで6ヶ月は治療を受け、病気に苦しまなければならない。多くの現存の薬剤は特定の患者に対して相当の有害な副作用を示すため患者を注意深く監視しなければならない。また、殆んどの現存の薬剤は患者の苦痛を一時的に取り除くに過ぎず、除痛を持続させるためには毎日または毎週継続して投与しなければならない。最終的に、病気の進行に伴なって痛みを和らげるのに必要な薬剤の量は増加するため、潜在的な副作用も増大する。したがって、痛みを和らげる有効で安全な治療法が必要である。
【0011】
ある見地において、本発明は疼痛の治療に有用なN−型カルシウムチャンネルで選択的な作用を示す化合物を提供する。
【0012】
N−型カルシウムチャンネルで選択的な作用を示す本発明の化合物は構造式I
【化9】
Figure 2004513117
[式中、Rは−N(Eであり、ここでEはそれぞれ独立して水素、C1−6アルキルおよびC1−3アルキルカルボニルから選択され;
Aは単結合、−CH=CH−基および縮合した5−、6−または7−員のシクロアルキル環から選択され;
DはC1−6アルキル、チエニルおよびフェニルから選択され;
は水素、ハロゲン、C1−6アルキル、ペルフルオロC1−6アルキルおよびC1−6アルコキシから選択され;
は水素およびC1−3アルキルから選択され;そして
およびRはそれぞれ独立して水素、C1−3アルキルおよびC1−3アルコキシから選択される]の化合物である。
【0013】
特定の本発明の化合物はR、R、R、RおよびRは前記で定義された通りであり;
Aは単結合であり;そして
Dはフェニルである構造式Iの化合物である。
【0014】
他の本発明の化合物はR、R、RおよびRは前記で定義された通りであり;
Aは単結合であり;
Dはフェニルであり;そして
は水素、フルオロおよびクロロから選択される構造式Iの化合物である。
さらに他の本発明の化合物はR、R、RおよびRは前記で定義された通りであり;
Aはエテニルであり;
Dはフェニルであり;そして
は水素およびフルオロから選択される構造式Iの化合物である。
【0015】
さらに他の本発明の化合物はRは水素、C1−6アルキルおよびC1−3アルキルカルボニルから選択され;
Aは縮合した6−または7−員のシクロアルキル環であり;
Dはフェニルであり;
、R、RおよびRは水素である構造式Iの化合物である。
【0016】
多くの特定の本発明の化合物を本明細書で例示する。
別の見地において、本発明は疼痛を軽減するのに有効な量の構造式Iの化合物を投与することからなる疼痛の治療にこのような化合物を使用する方法を提供する。
【0017】
本発明の方法の一態様は急性、持続性または神経因性疼痛の治療が必要な患者に疼痛を軽減するのに有効な量の構造式Iの化合物を投与することからなる。
他の見地において、本発明は構造式Iの化合物を製造する方法を提供する。
さらに他の見地において、本発明は構造式Iの化合物を下記のような賦形剤、希釈剤または安定剤と一緒に含有する急性、持続性および神経因性疼痛の治療に有用な医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明の化合物は一般的な説明の範囲内の化合物、特に下記で例示する化合物である。
本発明の化合物の適当な薬学的に許容しうる塩にはメタンスルホン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、マレイン酸塩、およびリン酸や硫酸と生成する塩のような酸付加塩がある。
【0019】
本発明の化合物がキラル中心を有する場合、本発明はこのような化合物のすべての光学異性体およびジアステレオマーを包含する。
本発明の化合物が互変異性化する場合、本発明はこのような化合物のすべての互変異性体を包含する。
本発明の化合物が非溶媒和物および溶媒和物形態、例えば水和物形態として存在する場合、本発明はすべてのこのような溶媒和物および非溶媒和物形態を包含する。
【0020】
他の見地において、本発明は本発明の化合物の製造法を提供する。一態様において、本法はa)下記のようにして新規な構造式IIの3−置換−3−オキソ−プロピオン酸エチルエステル(β−ケトエステル)を製造し
【化10】
Figure 2004513117
(式中、Rは前記で定義されたような構造式Iの化合物のR−D−A−部分である)
【0021】
b)下記のようにして構造式IIのβ−ケトエステルを構造式IIIのエナミンに変換し
【化11】
Figure 2004513117
【0022】
c)下記のようにして構造式IIIのエナミンを環化して構造式IVの化合物を生成し
【化12】
Figure 2004513117
【0023】
d)下記のようにして構造式IVの化合物を構造式Iの化合物に変換し
【化13】
Figure 2004513117
【0024】
工程a)、b)、c)およびd)において、必要に応じて何れかの官能基を保護基で保護し、その後
e)上記保護基を除去し
f)本明細書で開示した方法A〜Lに記載の手順に従って構造式Iの化合物を他の構造式Iの化合物に変換し、そして
g)構造式Iの化合物を必要な程度まで精製し、必要に応じて製薬上許容しうる塩を生成することからなる。
【0025】
他の態様において、Aが−CH=CH−基である構造式Iの化合物の製造法はa)下記のようにして構造式Iの化合物を製造し
【化14】
Figure 2004513117
【0026】
その後
b)下記のようにして構造式Iの化合物を還元して他の構造式Iの化合物を生成する
【化15】
Figure 2004513117
ことからなる。
【0027】
他の態様において、Aが縮合した5−、6−または7−員のシクロアルキル環である構造式Iの化合物の製造法はa)下記のようにして構造式Vの化合物を構造式VIの化合物と反応させて構造式Iの化合物を生成する
【化16】
Figure 2004513117
ことからなる。
【0028】
他の見地において、本発明は下記のようにして本発明の化合物の前駆体を製造する
【化17】
Figure 2004513117
方法を提供する。
【0029】
さらに他の見地において、本発明は下記のようにしてピリジル環の3−位に置換基を有する本発明の化合物の前駆体をイサチンから製造する
【化18】
Figure 2004513117
方法を提供する。
【0030】
ヒトなどの哺乳動物における疼痛の治療的処置(予防的処置を含む)に本発明の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を使用するために、本化合物を標準的な製薬実務に従って医薬組成物として製剤化することができる。したがって、別の見地において、本発明は本明細書で定義されたような構造式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩を賦形剤または担体のような薬学的に許容しうる添加剤と一緒に含有する医薬組成物を提供する。
【0031】
本発明の化合物を含有する適当な医薬組成物は慣用の方法で、例えば経口、局所、非経口、口腔内、鼻腔内、膣内または経腸投与により、あるいは吸入により投与することができる。これらの目的のために、本発明の化合物を当該技術分野で知られている方法により、例えば錠剤、カプセル剤、水性または油性液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、鼻腔内スプレー剤、座剤、微細粉末または吸入用エアゾル剤、さらに非経口使用(静脈内、筋肉内または注入を含む)のためには無菌の水性または油性液剤または懸濁剤または無菌乳剤の形態に製剤化することができる。好ましい投与経路は錠剤またはカプセル剤による経口投与である。
【0032】
本発明の化合物の他に、本発明の医薬組成物はさらに1種以上の別の薬理学的に活性な物質を含有することができる。あるいは、本発明の化合物を含有する医薬組成物は1種以上の別の適合する薬理学的に活性な物質と同時にまたは連続的に投与することができる。
【0033】
本発明の医薬組成物は一般に患者が疼痛を軽減するのに有効な1日量を服用するように投与される。1日量は必要に応じて分割投与量で投与することができ、投与する化合物の厳密な量および投与経路は治療する患者の体重、年齢および性別、並びに当該技術分野で知られている方法に従って治療される特定の疾患状態に依存する。好ましい投薬計画は1日に1回である。
【0034】
他の本発明の態様はヒトのような温血動物のN−型カルシウムチャンネルと結合させるのに有用な薬剤の製造における構造式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。
さらに他の本発明の態様は動物に有効な量の構造式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩を投与することからなる、本発明の化合物を疼痛の治療が必要なヒトのような温血動物のN−型カルシウムチャンネルと結合させる方法を提供する。
他の見地において、本発明は本明細書で定義されたような本発明の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を賦形剤または担体のような薬学的に許容しうる添加剤と一緒に含有する医薬組成物を提供する。
さらに他の見地において、本発明は本発明の化合物またはその薬学的に許容しうる塩の投与を含むヒトまたは動物体の治療法を提供する。
【0035】
定義
本明細書で使用される「ハロ」または「ハロゲン」はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する;
置換基が一群の置換基から「選択される」または「独立して選択される」場合、包含される化合物はすべての置換基が同じである化合物および各置換基が異なる化合物である;
本明細書で使用される「アルキル」なる用語、例えばC1−6アルキルは特に断りがなければ直鎖状および分枝鎖状のアルキル基を包含する。個々のアルキル基に言及すると、例えば「プロピル」は通常の直鎖形態、すなわちn−プロピルを意味する;
本明細書で使用される「C1−6アルキル」のような用語は1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキル基およびC1−4アルキルのような集合基を意味し、メチル、エチル、イソプロピルおよびt−ブチルのような直鎖状および分枝状基を包含し、同様に「C1−3アルコキシ」のような用語はメトキシ、エトキシおよびプロポキシのような特定の基を包含し、特に断りがなければ本明細書で使用される用語はそれらの慣用的に理解されている意味を有する。
【0036】
下記の方法および実施例は本発明を説明するためのものであって限定するものではない。方法および実施例において、特に断りがなければ:
濃縮は真空下で回転蒸発により行なった;
操作は窒素雰囲気下、周囲温度、すなわち18〜26℃で行なった;
カラムクロマトグラフィー(フラッシュ法による)はメルク・キーゼルゲル・シリカ(Art.9385)において行なった;
収率は単なる例示であり、必ずしも達成可能な最大値ではない;
本発明の化合物の構造は一般に慣用のNMRおよび質量スペクトルにより確認し、ピーク多重度をs,一重線;bs,幅広い一重線;d,二重線;ABまたはdd,二重線の二重線;t,三重線;dt,三重線の二重線;m,多重線;bm,幅広い多重線で示し;FABm/sデータはプラットホーム分光計(マイクロマス製)を使用してエレクトロスプレー法により得、適切な場合には陽イオンデータまたは陰イオンデータを集めた。(M+H)を示す;
中間体の純度は一般にm/sまたはNMR分析により評価した;
【0037】
使用される次の略語は下記の通りの意味を有する:
DCMはジクロロメタンであり、
DMFはN,N−ジメチルホルムアミドであり、
DMSOはジメチルスルホキシドであり、
CDClは重水素化クロロホルムであり、
FABは高速原子衝撃であり、
M/sは質量分析または質量スペクトルであり、
NMRは核磁気共鳴であり、
NMPはN−メチルピロリジノンであり、そして
THFはテトラヒドロフランである。
【0038】
生物学的方法:
I. N−チャンネルFLIPR(蛍光レーザーイメージングプレートリーダー)アッセイ
ここで開示した方法は化学的に神経表現型に分化したヒト由来の神経芽細胞腫細胞株において天然形態で発現するN−型カルシウムチャンネルを通過するカルシウム流を阻害する試験化合物の有効性および効力の信頼できるFLIPRに基く読み出し法を提供する。化合物が特定の濃度でN−チャンネルカルシウム流を阻害する程度は化合物が存在するピークカルシウム増加の振幅を化合物を含まないウェル中の80mMの K刺激(対照)と比較することにより定量した。このFLIPRアッセイで得られた結果を2つの方法により有効であると確認した:
a)N−チャンネル特異的ペプチド毒、コノトキシンMVIIAは既知の文献値に適合するIC50=3nM(5点濃度−反応分析に適合させて定量した)を示し;そして
b)IC50値は特定の本発明の化合物について定量した(IC50範囲:2.37〜10.54)。
N−型カルシウム電流の阻害剤としてのこれらの試験化合物の効力はまた、神経細胞的に分化したIMR−32細胞、または単離したばかりのラット上頚部神経節神経細胞の直接電気生理学的測定により定量した。2つの方法による化合物のpIC50は非常に似ていた(r=0.91;p<0.001)。
【0039】
A. 細胞培養
ATCC(製品番号CCL−127)から入手したヒト神経芽細胞腫細胞由来の不死化細胞株、IMR32をすべての実験で使用した。細胞をイーグルの最少必須培地(MEM)w/アール塩、およびグルタミンを含まない非必須アミノ酸(カタログ番号SLM−034−B,スペシャリティ・メディア, フィリプスバーグ,NJ)、10% FBSおよび1%グルタミンを含有するT75フラスコ中で増殖させた。継代培養前に細胞を(目視顕微鏡検査により)約70〜80%の培養密度まで増殖させた。培養ストックを維持するために、摩砕により細胞懸濁液を生成し、約20mLの新鮮な培地を含有する新しいフラスコ中に最終比を達成するのに十分な量の細胞懸濁液をピペットで加えることにより培養物を1:3〜1:4の比で分けた。一般に、継代培養を週に2回行なった。96ウェルプレートの標本(黒壁;カタログ番号3603, コスター社,ケンブリッジ, MA)のため、所望の培養密度の細胞を含有するT75フラスコを培地で120mLの容量にした。次に、細胞を摩砕により遊離させ、細胞懸濁液を12〜96のウェルプレートに注入して100μLの最終ウェル容量にした。
【0040】
B. 神経表現型への細胞分化
細胞をMEM、10% FBS、1%グルタミン、1μMの2−ブチル−cAMP(49.1mg/100mLの培地(カタログ番号D−0627, シグマ社,セントルイス, MO)、および2.5mMのブロモ−デオキシ−ウリジン(ストック:30.7mg/10mLの培地、25mLの上記ストック/100mLの培地;シグマ,カタログ番号B−9285)からなる分化培地で分化させた。分化を引き起こすために、細胞を96ウェルプレートでの平板培養開始2日後に(完全な培地交換により)分化培地で処理した。この時点で培養密度は約40%であった。その後、新しく調製した分化培地との完全な培地交換を2〜3日毎に行なった。 細胞をこれらの分化条件に6〜11日間暴露してからFLIPR実験に使用した。
【0041】
C. 標準実験溶液
次の組成(mM)の溶液を実験に使用した(スペシャリティ・メディアから購入したプロベネシドを含まない緩衝液(緩衝液AおよびB:カタログ番号BSS053A;緩衝液CおよびD:カタログ番号BSS056A))。
緩衝液A(最初の洗浄緩衝液):クレブス・リンガー・HEPES(KRH)緩衝液:NaCl:125、KCl:5、MgSO:1.2、KHPO:1.2、CaCl 2HO:2、グルコース:6、HEPES:25、pH:7.4 (NaOHで調整したpH)。
緩衝液B(色素ローディング緩衝液):2.5μMのプロベネシドを含むKRH緩衝液:緩衝液Aと同じであるが、プロベネシドを2.5μMの最終濃度まで加えた。プロベネシド(カタログ番号P−8761, シグマ・ケミカル社,セントルイス,MO)の250mMストック溶液を作った。
緩衝液C(色素ウォッシュアウト緩衝液):0mMのKおよび2.5μMのプロベネシドを含むKRH緩衝液:NaCl:130、MgSO:1.2、NaHPO:1.2、CaCl 2HO:2、グルコース:6、HEPES:25、pH:7.4(NaOHで調整したpH)。
緩衝液D(化合物希釈緩衝液):0.1% w/vのウシ血清アルブミン(BSA;シグマ)を含む緩衝液C。
【0042】
D. 薬理学的標準および化合物
次の溶液を使用して本明細書に記載のデータを得た。
ニトレンジピン:(RBIケミカル,ナティック,MA):ストック:10mMのDMSO溶液;ピペットで加える溶液:9μM;ピペットで20μLをウェル中の120μLの容量に加えて最終ウェル濃度:1μMとした。
w−コノトキシンMVIIA:(カタログ番号H−8210;バケム社,トランス,CA):ストック:0.1% BSAを含むHPLCグレードの1mM水溶液;ピペットで加える溶液:4.5μM;ピペットで20μlをウェル中の140μlの容量に加えて最終ウェル濃度:1μMとした。
試験化合物ストックおよび溶液の調製:化合物を毎日、100%DMSO中の10mMストックとして調製した;ピペットで加える溶液:45μMまたはその連続希釈液;ピペットで20μLをウェル中の140μLの容量に加えて最終ウェル濃度:1μMまたはその10倍希釈液とした。
高カリウム(脱分極)溶液:240mMのKを加えた緩衝液C;ピペットで80μLをウェル中の160μLの容量に加えて最終ウェル濃度:80mMのKとした。
【0043】
E. 蛍光色素による細胞ローディング
蛍光色素溶液の調製:カルシウム指示色素、フルオ−4アセチルメチルエステル(フルオ4−AM;カタログ番号F−124201;モレキュラー・プローブ,ユージン,OR)を使用してFLIPRにより細胞内遊離カルシウムの変化を測定した。1mMのフルオ−4 AMストック溶液をDMSOに溶解することにより作った。次に、このストックを緩衝液Bで希釈して4.6μM(フルオ−4AM使用液)にした。
細胞ローディングの手順:自動細胞洗浄器(型番号:5161552, ラボシステムOy,ヘルシンキ,フィンランド)を使用し、その制御設定を次のパラメーター:細胞の高さ:C/D;細胞パルス:4/5、洗浄:3;容量:5;ドライ位置設定にして細胞を含有するプレートを緩衝液Aで洗浄した。これらの設定により各ウェルにおいて細胞上の緩衝液の残余の深さが70μLになった。次に、100μLのフルオ−4 AM使用液を各ウェルに加えて最終フルオ−4AM濃度を2.7μMとした。この溶液中で細胞を37℃で1〜1.5時間インキュベートした。次に、洗浄:5;ウェット位置設定であることを除けば上記のプレローディング洗浄と同じパラメーターで細胞洗浄器を使用して細胞を緩衝液Cで5回洗浄した。次に、パラメーターを洗浄:1;容量:2に変えて最終洗浄を行なった。これにより最終ウェル容量は120μLになった。細胞をこの条件下で10分間平衡させ、FLIPRプロトコルに使用した。
【0044】
F. FLIPRプロトコル
計測:想定上のN−チャンネル阻害剤の不在または存在下でカリウムが誘発する脱分極に反応する細胞内遊離カルシウムの実時間変化をFLIPR IまたはFLIPR II(96ウェルの構成に合わせて設定された)計測器(モレキュラー・デバイス,サニーベール, CA)により測定した。それぞれの計測器について同じ設定およびプロトコルを使用し、2つの計測器から得られた結果は一連の標準ベンチマーク化合物に関して見分けがつかなかった。
FLIPRハードウェア設定:レーザー出力を約0.3ワットに設定した。励起波長を488nmのピークに、そして発光波長を540nmに設定した。カメラの絞りを2に設定した。すべての実験を室温(20〜22℃)で行なった。
プレート配置−参照信号:各プレートにおいて特定のウェルを標準に割り当て、最小および最大の特異的蛍光信号を測定して化合物の阻害効果を正規化した。参照標準を端部および内部のウェルを含むプレート位置に分配した。
【0045】
最大信号(N−チャンネル+非特異的):12個のウェルをニトレンジピン(1μM)溶液中でインキュベートし、80mMのKを加えてN−チャンネル+非特異的が関与する最大Ca2+増加(後者は非−L−,非−N−チャンネルが関与する蛍光増加)を測定した。蛍光単位でのKが誘発するピーク増加に関するこれらのウェルの変動係数は典型的に12%未満であった。
最小信号(非特異的):6個のウェルをニトレンジピン(1μM)+w−コノトキシンMVIIA中でインキュベートし、80mMのKを加えてすべてのN−チャンネルが薬理学的に閉鎖されたバックグラウンドCa2+を測定した。非特異的信号成分のピークは典型的に最大信号のピーク振幅の15%未満であった。
N−チャンネル参照小分子:FLIPRおよびパッチクランプ電気生理学においてN−チャンネル阻害活性に関して幅広く特性決定された化合物を三重反復試験の各プレートに1μM(IC50付近)で含ませて基準点とした。
試験化合物:5種の試験化合物の効力を各プレートで評価した。それぞれの化合物を半対数単位にわたり、典型的には10μMの最大濃度に到達する5種の増加する濃度で試験した。それぞれの濃度について三重のウェルで反復試験した。
【0046】
プロトコルの構成:FLIPRプロトコルを3種の溶液添加/試料採取工程(下記参照)として構成した。コノトキシン(1μMの最終濃度)を適当なウェルに加えた後、プレートをFLIPR計測器に配置した。ウェルが最初に含有する溶液の全容量は100μlであり、すべての3種の溶液を添加した後の含有量は240μlである。任意の(ピペットによる)活性混合はどの工程でも行なわなかった。
ニトレンジピン添加工程:全期間は28秒。1Hzで2秒間蛍光信号の試料を採取し、その後20μLのニトレンジピン標準溶液を10μL/秒で添加し、0.5Hzで24秒間試料採取した。
試験化合物添加工程:全期間は64秒。0.5Hzで4秒間試料採取し、40μLの試験溶液を20μL/秒で添加し、その後0.2Hzで60秒間試料採取した。
化合物のインキュベーション、細胞の脱分極およびカルシウムの読み出し工程:全期間は1024秒。0.0167Hzで840秒間試料採取し、その後80μLの高K(脱分極)溶液を添加し、1Hzで180秒間試料採取した。この最後の180秒の試料採取期間は活性N−チャンネルを通した流入による細胞内カルシウムのピーク増加が起こる時期であることを示した。
【0047】
G. データ分析
FLIPRソフトウエア:転送前に、データをFLIPRソフトウエアモジュールで2つの効果について正規化した。
ベースラインの補正: 試料番号57(KClの添加直前)で“ゼロ化”することによりベースラインを補正した。この正規化は関連する誘発した蛍光増加の開始直前にすべての痕跡が共通点を有するように各ウェルからの蛍光痕跡のy軸オフセットを補正するのに役立った。
空間的均一性の補正因子:最初の試料から蛍光単位のプレート全体の平均を計算し、次に各ウェルからのデータに最初の試料の値をこの平均値に調整するスカラを掛ける手順によりデータを正規化した。このようにして、細胞密度または色素ローディングの違いにより生じた各ウェルの蛍光の絶対的なベースラインの違いについて正規化した。
外部ソフトウエア:データをFLIPRからExcelに“.squ”拡張子ファイルとして転送した。転送後、操作をExcelで行なって各ウェルのカリウム添加後の蛍光増加の(ゼロ化したベースラインに対する)最大ピーク振幅を計算した。次に、試験化合物を加えたウェルの測定値を上記のように最大(100%)および非特異的(0%)信号成分を与える参照ウェルの平均振幅の百分率として正規化した。得られた試験化合物による阻害率はN−型チャンネルのカルシウム流の阻害を反映すると考えた。
【0048】
II. L−チャンネルFLIPRアッセイ
下記の方法によりヒト由来の神経芽細胞腫細胞株、SK−N−SHにおいて天然形態で発現するL−型カルシウムチャンネルを通過するカルシウム流を阻害する試験化合物の有効性および効力の信頼できるFLIPRに基く読み出し法が得られた。化合物が所定の濃度でL−チャンネルを阻害する程度は試験ウェルの80mMのK刺激に対するピークカルシウム増加の振幅を化合物を含まないウェルのピーク増加と比較することにより定量した。本アッセイは5点濃度−反応曲線を作成し、それにより参照L−チャンネル阻害剤のニトレンジピン(30nM)、ニフェジピンおよびベラパミルに関する IC50値を定量することにより有効であると確認した。これらの値はL−チャンネルを通過するCa2+流を阻害するこれらの薬剤に関する既知の文献値と適合した。
【0049】
A. 細胞培養:
ヒト神経芽細胞腫細胞由来の不死化細胞株、SK−N−SH(ATCC 製品番号HTB−11)をすべての実験で使用した。細胞をイーグルの最少必須培地(MEM)w/アール塩を0.1mMの非必須アミノ酸、1.0mMのピルビン酸ナトリウムおよび10%ウシ胎児血清(FBS;カタログ番号SLM−034−B,スペシャリティ・メディア)と一緒に含有するT75フラスコ中で増殖させた。継代培養前に細胞を(目視顕微鏡検査により)100%の培養密度まで増殖させた。細胞を最初に3mLのPBSで洗浄し、そのPBSを0.25%トリプシンを含有するPBSと交換することにより1:3の比で継代培養し、細胞を表面から分離した。1mLの得られた懸濁液を10mLの新鮮な培地を含有する新しいフラスコに加えた。次に、細胞をインキュベート(37℃、5%CO)し、培地を継代培養の約3日後に交換した。
【0050】
B. 実験用細胞の調製:
実験に使用した細胞は培養密度が100%の成長段階である。それぞれのフラスコは3個の96ウェルプレートに供給するのに十分な細胞を含んだ。継代培養プロトコルで説明したように0.25%トリプシンを加えることにより細胞をフラスコから分離した。分離後直ちに7mLの新鮮な培地をフラスコに加え、溶液を穏やかに摩砕した。次に、さらに20mLの培地を加え、100μLのこの最終細胞懸濁液を96ウェルプレートのそれぞれのウェルに加えた。実験に使用する前に、プレートを5%CO中、37℃でインキュベートして細胞の培養密度を100%に到達させた(1〜2日)。
【0051】
C. 実験手順:
溶液の組成、ハードウエアの設定、プレートの配置、FLIPRプロトコルの構成、並びに分析の設定および手順は上記のN−チャンネルアッセイで説明したものと同じであるが、プレートの配置と参照信号は次のように異なる。
最大信号(L−チャンネル+非特異的):最初の溶液添加工程で12個のウェルに20μLの緩衝液だけ(ニトレンジピンを含まない)を加えてL−チャンネル+非特異的が関与する最大のK−誘発Ca2+増加(後者は非−L−チャンネルが関与する蛍光増加)を測定した。蛍光単位でのKが誘発するピーク増加に関するこれらのウェルの変動係数は典型的に12%未満であった。
最小信号(非特異的):6個のウェルをニトレンジピン(1μM)中でインキュベートし、80mMのK を加えてすべてのL−チャンネルが薬理学的に閉鎖されたバックグラウンドCa2+を測定した。非特異的信号成分のピークは典型的に最大信号のピーク振幅の15%未満であった。
L−チャンネル参照小分子:ニトレンジピンを各プレートにおいて三重のウェルに30nM(IC50付近)で含ませて参照表示値とした。
【0052】
III. N−チャンネルパッチ固定電気生理学
慣用の全細胞記録技術を使用して試験化合物のN−型カルシウムチャンネルを通過するCa2+電流を阻害する能力を直接測定した。N−型の電流を神経細胞的に分化したIMR−32 細胞、および生後間もないラットの上頚部神経節から分離したばかりの天然の神経細胞の両方を使用して記録した。毎日、両方のタイプの細胞の電流を脱分極工程中に全内向き電流の90%以上が最大上の濃度(3mM)のw−コノトキシンMVIIAにより阻害されたことを示すN−電流として確認した。さらに、w−コノトキシンMVIIAの効力は定期的に定量したところ約3nM(IC50)であり、文献で報告された値と一致した。両方のタイプの細胞で試験した一部の化合物についての結果に有意な違いはなく、そのためデータは特に断りがなければ1組のデータとみなす。
【0053】
A. IMR−32細胞の培養および分化:
分化細胞を96ウェルプレートではなく35mmのプレキシガラス培養皿で平板培養することを除けば上記のFLIPR N−チャンネルアッセイで説明した手順と同様にしてIMR32細胞を培養し、神経細胞的に分化させた。
【0054】
B. ラット上頚部神経節(SCG)神経細胞の分離:
7−10日齢の子供のラットを高いCO雰囲気の部屋で安楽死させた。直ちに、SCGを外科的に単離し、摘出し、氷冷ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に入れた。SCGの鞘を取り除き、切開し、20U/mLのパパインを含有するHBSS溶液(37℃)に15分間入れた。次に、パパイン溶液を16mg/mLのジスパーゼおよび400U/mLのコラゲナーゼを含有するHBSS(37℃)と40分間交換し、その間15分毎に組織を穏やかに摩砕した。細胞を遠心分離して回収し、同じ日に使用するため4℃のL−15培地で保存した。記録するために、1滴の細胞を含有する溶液をポリ−L−リシンで被覆された35mmのプレキシガラス培養皿に入れ、細胞を数分間接着させた。
【0055】
C. 電気生理学的方法:
溶液:記録溶液はThompsonおよびWongのJ. Physiol., 439:671−689(1991年)に記載の溶液を適合させた。溶液を実験の1ヶ月前はアリコートとして保存した(細胞内−20℃、細胞外4℃)。ピペット(細胞内)溶液は130mMのTRIS;10mMのCsBAPTA;10mMのHEPES;5mMのMg2+ATPを含有し、pHはメタンスルホン酸で7.3に調整され、浸透圧は〜315ミリオスモルである。細胞外溶液は120mMのTRIS;5mMのCsCl;10mMのHEPES;1mMのMg2+Cl;5mMのBa2+Cl;25mMのグルコース;15mMの塩化テトラエチルアンモニウム;200mMのテトロドトキシン(実験時に加えた)を含有し、pHはメタンスルホン酸で7.4に調整され、浸透圧は〜320ミリオスモルである。
【0056】
全細胞の記録および分析:HamillらのPfluegers Arch. 391:85−100(1981年)に記載のようなパッチ固定法の全細胞電圧固定配置を使用して膜電位依存性カルシウム電流を分離した。細胞を含有する培養皿を倒立顕微鏡の試料台上のチェンバーに入れた。 すべての実験を室温(20−22℃)で行なった。パッチピペットをブラウン・フレーミングP−86プラー(DC抵抗:3−6MΩ;スッター・インスツルメンツ社, ノバート,CA)において薄壁ガラス(外径1.5mm,内径1.12mm;ワールド・プレシジョン・インスツルメンツ,ニューヘブン,CN)から製造した。アキソパッチ1B増幅器(アキソン・インスツルメンツ,フォスターシティ,CA)を使用して電流信号を獲得し、これをTL−1(サイエンティフィク・ソルーションズ,ソロン,OH)またはデジデータ1200(アキソン・インスツルメンツ)インターフェースによりパーソナルコンピューターに接続させた。神経細胞を閉鎖する直前に浴中に浸漬させたピペットでバランスをとって電流信号をゼロにした。 閉鎖抵抗は1〜10GΩ以上の範囲であった。直列抵抗は通常10MΩ以下であり、電気的に補償しなかった。デジタル化データの収集および電圧ステップ法のプロトコルをpClamp6.0ソフトウエア(アキソン・インスツルメンツ)により行なった。データをデジタル化する前にデジタルサンプリングの半分以下の速度で低域通過フィルターを通した。化合物の阻害効力を評価(定常濃度−反応分析)するためのN−型電流を記録するために、+10mVまでの200ミリ秒の電圧ステップを15秒間隔で−90mVの保持電位から供給した。記録した電流からpClampソフトウエアのP−4またはP−6サブパルスプロトコルによりオンラインで漏れ電流を引いた。化合物の開放チャンネル阻害を評価するために、+10mVまでの10ミリ秒の電圧ステップをオンラインで漏れ電流を引くことなく様々な頻度で−90mVの保持電位から供給した。これらの電圧プロトコルは何れも5〜10分の記録の間ずっと一定の内向き電流振幅を与えた。pClampソフトウエアのクランプフィットモジュールを使用してピーク電流振幅を分析した。オリジン5.0ソフトウエア(マイクロカル社,ノーサンプトン, MA)を使用して濃度−反応データをヒルの標準式に繰り返し適合させ、電流の痕跡について図形表示し、データを分析した。
【0057】
薬剤/化合物の調製およびデリバリー:試験化合物をDMSO中の10mMストック溶液として調製し、適当な量のこれらのストック溶液を細胞外緩衝液に溶解して所望の濃度とした。薬剤/化合物を含有する溶液を記録した神経細胞から〜100mm離れた所に位置する6個の直線的に配置されたガラス内張り管(外径200mm,ヒューレット・パッカード,ウィルミントン, DE)の何れかから焦点に適用した。それぞれの溶液を電子制御されたソレノイドバルブ装置(BMEシステム,ボルチモア,MD)により所望の管から放出した。この装置は記録する特性を混乱させることなく細胞外相で薬剤溶液の迅速な(<100ミリ秒)平衡を達成した。
【0058】
IV. ホルマリン試験
ホルマリン試験は経口投与されたN−型カルシウムチャンネル拮抗薬のラットでのホルマリンが誘発する侵害防御行動における阻害効果を評価する。ホルマリン試験は十分に確立した疼痛試験(DubuissonおよびDennisら,1977年;Wheeler−Acetoら,1990年;Coderreら,1993年)である。この試験は2つの異なる時期のホルマリンが誘発する行動からなる。0〜5分で起こる第1期の反応は足に注入された有害化学物質(ホルマリン)に対する急性侵害受容により引き起こされる。この後、注入後5〜15分の静止期が続く。15分後に起こり、60分まで続く第2期の反応は背角の中枢神経細胞の感作により引き起こされる。中枢神経の感作は有害な求心性入力を増加し、より強い痛みが連続して脳内に伝わる。第2期の反応の阻害は薬物作用の中心機構を示す。
【0059】
ホルマリン試験の手順は次の通りである:雄のラットをプレキシガラス室に入れ、それらの基本の活動を知るために30〜45分間観察する。多数グループの動物を賦形剤または様々な投与量の試験化合物で前処置する。動物に当該薬剤を腹腔内投与の場合は40分間、または経口投与の場合は90分間投与してから後足にホルマリンを注入する(背部の皮下注射;0.05mLの滅菌5%ホルマリン)。第1期(0〜5分)および第2期(20〜35分)で足を引っ込めたり、なめたりする回数を数え、記録する。足を引っ込めたり、なめたりする反応を食塩水の対照グループの平均回数と比べた阻害率として計算する。薬剤の効力を50%の最大阻害効果を引き起こす用量(“ID50”)として表す。スチューデントのt−検定を使用して統計分析して薬剤効果の有意性を決定する。化合物はそれらの足を引っ込める反応を阻害する能力に基づいて活性とみなす。
【0060】
V. 慢性収縮性損傷試験
慢性収縮性損傷(“CCI”)試験または神経因性疼痛モデルは外傷および圧迫から直接的に、または感染症からガン、代謝状態、毒素、栄養不足、免疫機能障害および筋骨格の変化までの幅広い疾患から間接的に起こる神経損傷を伴なう神経因性疼痛を評価する。CCIモデル(BennettおよびXie,1988年)において、片側性末梢神経障害をラットで部分神経結紮により引き起こす。
【0061】
スプレーグ・ドーリーラット(250〜350g)をナトリウムペントバルビタールで麻酔し、大腿二頭筋の鈍的剥離により総挫骨神経を大腿の中央部で露出させる。挫骨の三分岐に近い神経部分(約7mm)を露出させ、クロミックガット縫合糸で4回結紮する。縫合糸を約1mmの間隔で結んで結紮する。切開部を層状に閉じ、動物を回復させる。 足を引っ込める試験(Hargreavesら, 1988年)を使用して温熱性痛覚過敏を測定する。部分神経結紮による神経圧迫は普通の足または擬似手術した足と比べて足を引っ込める潜伏時間をより短くする。動物を高架ガラス床に慣れさせる。放射熱源を皮膚の損傷を予防するために20秒中断しながらガラス床を通して後足の底の中央部(挫骨神経領域)にあてる。両足の引っ込め反射の潜伏時間を記録する。試験化合物に対する反応を経口投与後の異なる時間に評価して薬物作用の開始および持続時間を決定する。用量反応試験を多数グループのCCIラットに賦形剤または試験化合物を5日間経口投与して行なう。最初の用量を投与する前に足を引っ込める潜伏時間を毎日測定する。データ分析を多重平均比較(Dunnett’の検定)により行ない、薬剤の効力を50%の最大効果を引き起こす用量(“EC50”)として表す。
【0062】
化学的方法:
方法A:
本明細書で開示した典型的な化合物のカルボン酸前駆体(下記の表1を参照)を次の方法と同様にして製造した。
3−メチル−2−フェニル−4−キノリンカルボン酸
エタノール(40mL)中におけるイサチン(5.00g、34.0ミリモル)、プロピオフェノン(5.47g、5.43mL、40.8ミリモル)および水酸化カリウムペレット(6.73g、102ミリモル)の溶液を還流下で23時間攪拌した。冷却後、溶媒を真空下で除去して褐色の残留物を得た。残留物を水(75mL)に溶解し、ジエチルエーテル(4×100mL)で洗浄した。氷(〜50g)を加えて水層を冷却し、濃HClを攪拌しながら滴加してpH〜1まで酸性にした。固体沈殿物をろ過により集め、水で洗浄し、乾燥して表題化合物を黄色がかった淡褐色の固体(7.59g、85%)として得、それをさらに精製することなく使用した。MS(API+): M+1:264(45%), 220(100); %); H NMR(300MHz, DMSO−d) d 2.39(s, 3H), 7.49−7.57(m, 3H), 7.59−7.72(m, 3H), 7.76−7.84(m, 2H), 8.06(d, J=8.5Hz, 1H), 14.20(v br s, 1H, 交換可能)。
【0063】
方法B:
本明細書で開示した典型的な化合物の中間体(下記の表1を参照)を次の方法と同様にして製造した。
8−メチル−2−フェニル−4−キノリンカルボン酸
無水エタノール(50mL)中における2−メチルアニリン(1.07g、1.07mL、10.0ミリモル)、ピルビン酸(0.88g、0.70mL、10.0ミリモル)およびベンズアルデヒド(1.06g、1.01mL、10.0ミリモル)の溶液を還流下で3時間攪拌した。冷却後、溶媒を真空下で除去して3.52gの黄色のペーストを得、それを連続して新しいヘキサン(3×100mL)で摩砕した。固体をろ過により集め、自然乾燥して表題化合物(1.21g)を黄オレンジ色の固体として得、それをさらに精製することなく使用した。MS (API+): M+1: 309 (100%)。
【0064】
方法C:
典型的な化合物15、6−メトキシ−2−フェニル−4−キノリンアミン(下記の表1を参照)を次の方法により製造した。適当な前駆体から方法Cにより製造した他の化合物を表1に記載する。
6−メトキシ−2−フェニル−4−キノリンアミン
DMF(10mL)中における方法Aに記載の方法と同様にして製造した6−メトキシ−2−フェニル−4−キノリンカルボン酸(0.53g、1.9ミリモル)およびトリエチルアミン(0.29g、0.40mL、2.9ミリモル)の溶液に、ジフェニルホスホリルアジド(0.78g、0.61mL、2.9ミリモル)を周囲温度で攪拌しながら一度に加えた。周囲温度で1.5時間攪拌した後、水(1.5mL、83ミリモル)を加え、反応混合物を100℃まで2時間加熱した。冷却後、溶媒を真空下で除去し、残留物を1N NaOH(50mL)中の1% NHOHで処理し、酢酸エチル(100mL)で抽出した。抽出物を水(4×50mL)、ブライン(15mL)で洗浄し、NaSOおよび脱色炭上で乾燥し、珪藻土を通してろ過し、溶媒を真空下で除去して0.44gの黄色の油状物を得た。生成物を酢酸エチル:ジエチルエーテル(1:1、75mL)に溶解した。その溶液にジエチルエーテル中の1N塩化水素溶液4mLを加えた。得られた沈殿物を真空ろ過により集め、自然乾燥して表題化合物の塩酸塩を明黄色の固体(388mg、71%)として得た。MS(API+): M+1:251(100%); H NMR(300MHz, DMSO−d) d 3.95(s, 3H), 7.05(s, 1H), 7.60−7.75(m, 4H), 7.90−8.00(m, 3H), 8.17(d, J=9.3Hz, 1H), 9.00(br s, 2H, 交換可能)。
【0065】
方法D:
典型的な化合物7、N−[2−[(E)−2−フェニルエテニル]−4−キノリニル]アセトアミド(下記の表1を参照)を次の方法により製造した。適当な前駆体から方法Dにより製造した他の化合物を表1に記載する。
N−[2−[(E)−2−フェニルエテニル]−4−キノリニル]アセトアミド
4−アミノキナルジン(2−メチル−4−キノリンアミン) (3.00g、19.0ミリモル)、ベンズアルデヒド(6.05g、5.80mL、57.0ミリモル)および無水酢酸(5.82g、5.38mL、57.0ミリモル)の混合物を還流下で5時間攪拌した。冷却後、その容量を真空下で減らして褐色の油状物を得、それをジエチルエーテルで一晩摩砕した。生成した固体をろ過により集め、自然乾燥して表題化合物を黄色の固体(3.52g、64%)として得た。MS(API+): M+1:289(100%); H NMR(300MHz, DMSO−d) d 2.30(s, 3H), 7.32−7.51(m, 4H), 7.55−7.65(m, 1H), 7.70−7.80(m, 4H), 8.00(d, J=7.7Hz, 1H), 8.32(d, J=8.1Hz, 1H), 8.38(s, 1H), 10.24(s, 1H, 交換可能)。
【0066】
方法E:
典型的な化合物24、6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2−b]キノリン−8−アミン(下記の表1を参照)を次の方法により製造した。適当な前駆体から方法Eにより製造した他の化合物を表1に記載する。
6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2−b]キノリン−8−アミン
25mLの無水トルエン中におけるアントラニロニトリル(0.69g、5.8ミリモル)および1−ベンゾスベロン(1.03g、0.96mL、6.4ミリモル)の溶液に、三フッ化ホウ素エテラート(0.91g、0.81mL、6.4ミリモル)を窒素雰囲気下、シリンジでゆっくりと加えた。反応混合物を22時間加熱還流した。冷却後、水酸化ナトリウム溶液(25mL、2M、50ミリモル)を加えた。反応混合物を23時間加熱還流した。冷却後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水(3×50mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、溶媒を真空下で除去した。残留物(1.46g)を微量のメタノール(3mL)と共に酢酸エチル:ジエチルエーテル(1:1、100mL)に溶解した。その溶液にジエチルエーテル中の1N HCl溶液7mLを加えた。得られた沈殿物を真空ろ過により集め、自然乾燥して表題化合物の塩酸塩をオフホワイト色の固体(1.30g、75%)として得た。MS(API+): M+1:261(100%); H NMR(300MHz, DMSO−d/TFA−d) d 2.13−2.29(br m, 2H), 2.51−2.56(br m, 2H), 2.56−2.75(br m, 2H), 7.49(d, J=7.0Hz, 1H), 7.55−7.65(m, 2H), 7.67−7.74(m, 1H), 7.79(d, J=7.8Hz, 1H), 7.91−7.98(m, 1H), 8.05(d, J=8.7Hz, 1H), 8.57(d, J=8.7Hz, 1H)。
【0067】
方法F:
典型的な化合物8、2−[(E)−2−フェニルエテニル]−4−キノリンアミン(下記の表1を参照)を次の方法により製造した。適当な前駆体から方法Fにより製造した他の化合物を表1に記載する。
2−[(E)−2−フェニルエテニル]−4−キノリンアミン
6N塩酸(10mL)中におけるN−[2−[(E)−2−フェニルエテニル]−4−キノリニル]アセトアミド(1.00g、3.5ミリモル)の懸濁液を還流下で4時間攪拌した。周囲温度まで冷却し、18時間攪拌した後、固体をろ過により集めた。その固体を周囲温度で一晩攪拌しながら10%水酸化アンモニウム溶液(60mL)で処理し、酢酸エチル(30mL)で抽出した。酢酸エチル層を分離し、水(50mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、溶媒を真空下で除去して表題化合物を黄オレンジ色の固体(0.72g、84%)として得た。MS(API+): M+1:247(100%); H NMR(300MHz, DMSO−d) d 6.79(br s, 2H, 交換可能), 6.81(s, 1H), 7.26(d, J=16.2Hz, 1H), 7.30−7.46(m, 4H), 7.55−7.61(m, 1H), 7.62(d, J=16.2Hz, 1H), 7.67−7.73(m, 2H), 7.77(d, J=8.4Hz, 1H), 8.12(d, J=8.5Hz, 1H)。
【0068】
方法G:
典型的な化合物11、2−(3−フルオロフェニル)−N,N−ジメチル−4−キノリンアミン(下記の表1を参照)を次の方法および6−ブロモ基の水添分解により製造した。
3−(3−フルオロフェニル)−3−オキソ−プロピオン酸エチルエステル:
添加ロート、窒素流入口、磁気攪拌器、加熱マントル、熱電対および冷却器を備えた2Lの三つ口丸底フラスコに21.7g(0.543モル)の水素化ナトリウムの60%油分散液を入れた。これに1Lの乾燥ヘキサンを加え、得られた懸濁液を15分間攪拌した。攪拌を止め、固体を沈降させ、次にヘキサンおよび溶解した油状物を含有する透明な上澄みをカニューレで取り出した。炭酸ジエチル(1L)を固体に加え、懸濁液を120℃まで加熱した。温懸濁液に250mLの炭酸ジエチルに溶解した100g(0.494モル)のm−フルオロアセトフェノンの溶液を40分にわたって注意しながら滴加した。添加が進むにつれて反応が開始し、水素が発生し、色が淡褐色に変化した。アセトフェノン誘導体の添加が終了した後、反応混合物をさらに1時間加熱した。反応混合物を冷却し、2Lの分液ロートに注いだ。炭酸ジエチル層を10%酢酸溶液で2回洗浄し、MgSO上で乾燥し、ろ過した。生成物を真空蒸留(沸点114〜117℃/0.8〜0.9mmHg)により精製した(収率91%)。
【0069】
3−(4−ブロモ−フェニルアミノ)−3−(3−フルオロフェニル)−アクリル酸ブチルエステル:
冷却器、磁気攪拌器および窒素流入口と共にソックスレー抽出器装置を備えた1リットルの単口丸底フラスコに50.25g(0.183モル)の3−(4−シクロヘキシルフェニル)−3−オキソ−プロピオン酸エチルエステル、25g(0.167モル)の4−ブロモアニリン、1.55g(0.008モル)の4−ブロモアニリン塩酸塩および500mLの乾燥n−ブタノールを入れた。ソックスレーシンブル(33×118mm)に高活性4Åシーブ(1.7〜2.4mmのビーズ)を入れた。これらのシーブを使用直前に高真空下で加熱(400℃、30分間)して活性化した。次に、混合物をブタノールとの共沸混合物として水が除去されるように還流して平衡反応を促進し、そしてシーブにより水をブタノールから除去した後、反応ポットに戻した。反応を48時間続けた。投入するシーブを最初の24時間後に取り替えることが必要であった。エタノールの除去を伴なうブチルエステルへのエステル交換はエナミン生成と同時に起こる。48時間後、反応ポットを冷却し、−40℃の冷凍庫に入れ、結晶を24時間生成させた。結晶を真空ろ過により集め、固体を冷エタノールで洗浄した。次に、生成物を真空オーブンで乾燥して73.8g(98%)の所望のエナミンを得た。
【0070】
6−ブロモ−2−(3−フルオロフェニル)−キノリン−4−オール:
ダウサームA(26.5%のジフェニルおよび73.5%の酸化ジフェニルの共融混合物) (1.2L)を冷却器、磁気攪拌器、熱電対、可変電圧コントローラーを有する加熱マントル、および窒素流入口を備えた丸底フラスコに入れ、250℃まで加熱した。これに48g(0.11モル)の3−(4−ブロモフェニルアミノ)−3−(3−フルオロフェニル)−アクリル酸ブチルエステルを注意しながら少しずつ加えた。分量を加えるにつれて、気体が発生し、泡立ちが生じた。生成物の結晶が生成し、側壁に付着し始めた。すべての物質を加えた後、反応混合物の加熱を1時間続けた。次に、混合物を室温まで冷却し、ヘキサンを加えた。固体生成物を真空ろ過により集め、ヘキサンで洗浄した。真空オーブンで乾燥した後、35.7g(90%)の生成物を回収した。
【0071】
6−ブロモ−4−クロロ−2−(3−フルオロフェニル)−キノリン:
6−ブロモ−2−(3−フルオロフェニル)−キノリン−4−オール(5.2g、16.3ミリモル)を冷却器、磁気攪拌器および窒素流入口を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに入れた。これに15.2mL(25.0g、163ミリモル、10当量)のオキシ塩化リンを攪拌しながら加えた。混合物を110℃まで4時間加熱した。この後、反応混合物を室温まで冷却し、すべてのPOClが消費されるまで水を注意しながら滴加した。物質を水から結晶させ、その固体をろ過により集めた。固体を水で洗浄し、250mLの三角フラスコに入れ、水で摩砕した。ろ過により集め、水で洗浄し、真空オーブンで乾燥した後、4.6g(84%)の生成物を得た。
【0072】
N−[6−ブロモ−2−(3−フルオロフェニル)−4−キノリニル]−N,N−ジメチルアミン:
6−ブロモ−4−クロロ−2−(3−フルオロフェニル)−キノリン(20g、59.4ミリモル)を磁気攪拌器、窒素流入口、気体流出口、冷却器および加熱浴を備えた500mLの三つ口丸底フラスコに入れ、150mLのN−メチルピロリジノンに溶解した。250mLの40%ジメチルアミン水溶液を攪拌しながら加えた。混合物を60℃まで48時間加温した。この後、反応混合物を冷却し、4Lの三角フラスコ中で3Lの水に加え、固体が生成するまで混合物を攪拌した。固体を真空ろ過により集め、真空オーブンで乾燥した。生成物を−20℃の冷凍庫でエタノールから再結晶して19.6g(収率95%)の所望の生成物を得た。
【0073】
[2−(3−フルオロフェニル)−4−キノリニル]−N,N−ジメチルアミン
200mLのエタノール中、N−[6−ブロモ−2−(3−フルオロフェニル)−4−キノリニル]−N,N−ジメチルアミン(2.5g、7.55ミリモル)および炭酸カルシウム支持体上の5%パラジウムからなる300mgの触媒を50psiの水素雰囲気下に置き、48時間振騰した。この後、水素雰囲気を窒素に換え、混合物を濃縮した。不溶性のキノリン臭化水素酸塩を含有する固体を酢酸エチルおよび5%水酸化ナトリウム溶液で洗浄し、残留固体をろ過により除去した。ろ液を合一し、層を分離し、有機層を回収し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。抽出した物質を塩化メチレンおよびヘキサンから再結晶して700mg(37%)の表題化合物を得た。
【0074】
典型的な化合物:
典型的な化合物1〜43を包括的に表1に記載し、各化合物の名称、化学式および分析値、その製造法および生物学的データを示す。
【0075】
【表1】
Figure 2004513117
【0076】
【表2】
Figure 2004513117
【0077】
【表3】
Figure 2004513117

Claims (10)

  1. 構造式I
    Figure 2004513117
    [式中、Rは−N(Eであり、ここでEはそれぞれ独立して水素、C1−6アルキルおよびC1−3アルキルカルボニルから選択され;
    Aは単結合、−CH=CH−基および縮合した5−、6−または7−員のシクロアルキル環から選択され;
    DはC1−6アルキル、チエニルおよびフェニルから選択され;
    は水素、ハロゲン、C1−6アルキル、ペルフルオロC1−6アルキルおよびC1−6アルコキシから選択され;
    は水素およびC1−3アルキルから選択され;そして
    およびRはそれぞれ独立して水素、C1−3アルキルおよびC1−3アルコキシから選択される]の化合物。
  2. 、R、R、RおよびRは請求項1で定義された通りであり;
    Aは単結合であり;そして
    Dはフェニルである、請求項1記載の化合物。
  3. 、R、RおよびRは請求項1で定義された通りであり;
    Aは単結合であり;
    Dはフェニルであり;そして
    は水素、フルオロおよびクロロから選択される、請求項1記載の化合物。
  4. 、R、RおよびRは請求項1で定義された通りであり;
    Aはエテニルであり;
    Dはフェニルであり;そして
    は水素およびフルオロから選択される請求項1記載の化合物。
  5. は−N(Eであり、ここでEはそれぞれ独立して水素、C1−6アルキルおよびC1−3アルキルカルボニルから選択され;
    Aは縮合した6−または7−員のシクロアルキル環であり;
    Dはフェニルであり;
    、R、RおよびRは水素である構造式Iの化合物。
  6. 疼痛の患者に疼痛を軽減するのに有効な量の請求項1記載の化合物を投与することからなる疼痛の治療法。
  7. 治療的に有効な量の請求項1記載の化合物を医薬上許容しうる賦形剤または希釈剤と一緒に含有する医薬組成物。
  8. a)下記のようにして新規な構造式IIの3−置換−3−オキソ−プロピオン酸エチルエステルを製造し
    Figure 2004513117
    (式中、Rは請求項1で定義された構造式Iの化合物のR−D−A−基である)
    b)下記のようにして構造式IIの3−置換−3−オキソ−プロピオン酸エチルエステルを構造式IIIのエナミンに変換し
    Figure 2004513117
    c)下記のようにして構造式IIIのエナミンを環化して構造式IVの化合物を生成 し
    Figure 2004513117
    d)下記のようにして構造式IVの化合物を構造式Iの化合物に変換し
    Figure 2004513117
    工程a)、b)、c)およびd)において、必要に応じて何れかの官能基を保護基で保護し、その後
    e)上記保護基を除去し
    f)本明細書で開示した方法A〜Lに記載の手順に従って構造式Iの化合物を他の構造式Iの化合物に変換し、そして
    g)構造式Iの化合物を必要な程度まで精製し、必要に応じて製薬上許容しうる塩を生成することからなる、請求項1記載の化合物の製造法。
  9. a)下記のようにして構造式Iの化合物を製造し
    Figure 2004513117
    その後
    b)下記のようにして構造式Iの化合物を還元して他の構造式Iの化合物を生成する
    Figure 2004513117
    ことからなるAが−CH=CH−基である請求項1記載の化合物の製造法。
  10. 下記のようにして構造式Vの化合物を構造式VIの化合物と反応させて構造式Iの化合物を生成する
    Figure 2004513117
    ことからなるAが縮合した5−、6−または7−員のシクロアルキル環である、請求項1記載の化合物の製造法。
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