JP2004509065A - α−MSHおよびその誘導体を用いる遺伝子治療システムおよび方法 - Google Patents
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Abstract
α−MSHおよび/またはその誘導体の遺伝子治療における補充法としての使用を明細書に開示している。1つの態様では、遺伝子治療ベクターはα−MSHおよび/またはその誘導体を発現する核酸を含む。炎症または免疫応答遺伝子プロモーターはα−MSHおよび/またはその誘導体の発現を制御できる。この配列は内部リボゾームエントリー部位配列を使用し、治療遺伝子とともに発現できる。別の態様では、薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、適当な遺伝子を担持する遺伝子治療ベクター投与の前、後または同時に投与できる。
Description
【0001】
【発明の分野】
本発明は遺伝子治療の分野に属する。
【0002】
【発明の背景】
種々の疾患は、環境因子によって生存中に改変または遺伝される欠陥遺伝子をその原因とする。このような疾患の例としては、種々の型の癌、血友病またはLDL受容体欠損症などがある。遺伝子治療または遺伝子補充療法は上記の欠陥遺伝子を置換、増強または阻害することにより、これらの疾患を根本的に治癒することを約束する。
【0003】
治療遺伝子または核酸を導入するための通常のベクターにはウイルスおよび非ウイルスベクターがある。ウイルス供給システムは遺伝子を細胞に供給するうで最も効率的と考えられてきたが、それは炎症または免疫応答を引き起こす危険性があることから限定的となる場合がある。Forbes, S.J. Review Atricle: Gene Therapy in Gastroenterology and Hepatology, Aliment Pharmacol. Ther. 11:823−826(1997)。
【0004】
ペンシルベニア大学ヒト遺伝子治療機関(the Institute for Human Gene Therapy, University of Pennsylvania)における遺伝子治療の臨床試験に参加中、1999年9月17日に死亡したボランティアであったジェシー・ゲルシンガー(Jesse Gelsinger)の死亡により、最近、遺伝子治療の使用および安全性についての論争が激しくなっている。この臨床試験は改変アデノウイルスベクターを用いたオルニチントランスカルボミラーゼ(OTC)の処置を目的としていた。しかし、ゲルシンガーにベクターを投与すると、「異常かつ致死的な免疫系の応答が誘発され、多臓器不全と死をもたらした」。予備的所見;1999年12月2日、ペンシルベニア大学健康システム、ヒト遺伝子治療機関<http://www.med.upenn.edu/ihgt/findings.html>。アデノウイルスベクターは広範な細胞に感染でき、レトロウイルスベクターのように複製細胞にだけ限定されない点において他のウイルスベクターに比べて幾つかの利点を提供するが、ゲルシンガーの場合に見られるように免疫系を活性化させることがあり、初期用量や反復導入の効果はそれが生命に危険を及ぼさない場合、低くなることがある。Forbes, S.J.(前掲)を参照。
【0005】
さらに、遺伝子治療に対する免疫応答の可能性は使用するベクターに限定されない。ベクターは「外来性」と認識され得るタンパク質、ポリペプチド、酵素をコードする遺伝子配列を宿主に導入するので、そのような配列を発現する細胞および発現産物に対する免疫応答が遺伝子治療の有効性を制限する。例えば、第VIII因子または第IX因子遺伝子を治療遺伝子として使用する血友病実験では、新たに発現されたタンパク質に対して抗体が生成され、それが治療の有効性を制限することがあった。Forbes, S.J.(前掲):またHerzog, R., Problems and Prospects in Gene Therapy for Hemophilia, Current Opinions in Hematology, 5:321−326(1998)も参照。好中球などの細胞傷害性T細胞も「外来」遺伝子またはウイルスベクター遺伝子を発現する細胞を攻撃することがあり、ここでも遺伝子治療の有効性が長期にわたって制限を受けることになる。
従って、免疫系の有害作用の幾つかを緩和することにより遺伝子治療の安全性および効能を増大させる要求が存在する。
【0006】
【発明の概要】
本発明は、α−MSHおよび/またはその誘導体を補助的に遺伝子治療に使用するものである。本発明の1つの態様では、遺伝子治療ベクターはα−MSHおよび/またはその誘導体を発現する核酸配列、およびその発現を制御できる炎症または免疫応答遺伝子プロモーターを含む。その核酸配列はまた、内部リボゾームエントリー部位配列を使用して治療遺伝子とともに発現させることができる。別の態様では、適当な遺伝子を担持する遺伝子治療ベクターの投与の前、後および/または同時に、薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を投与できる。
【0007】
【発明の一般的な説明】
以下に引用する文献はその引用により本明細書に完全に記載されているものとする。本発明は、α−メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)および/またはその誘導体を補助療法として使用する遺伝子治療のための方法およびシステムに関する。α−MSHおよび/またはその誘導体はその抗炎症および解熱活性のため、遺伝子治療ベクターまたは発現タンパク質に対する患者の炎症応答を制限することにより遺伝子治療応用を補充(補完)することができる。他の免疫抑制剤とは異なり、α−MSHおよび/またはその誘導体は、同時に生体を感染から防ぐことのできる抗微生物特性をも有しており、かつ免疫系の陰性効果を制限できる。
【0008】
本発明の1つの態様では、薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、適当な治療遺伝子または核酸を担持する遺伝子治療ベクターを投与する前、後および/または同時に投与することができる。あるいは、α−MSHおよび/またはその誘導体は、遺伝子治療ベクターとともにカクテルとして投与することもできる。遺伝子治療ベクターには、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルス関連ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクター、およびリポソーム、リン酸カルシウム、抗体または受容体基本導入ベクター、エレクトロポレーション、または核酸の直接注入などの非ウイルスベクターの両者が包含され得る。
【0009】
本発明の別の態様では、遺伝子治療ベクターはα−MSHおよび/またはその誘導体を宿主細胞において発現するための配列を含むDNA分子を担持する。通常の分子クローニング技術により、α−MSHおよび/またはその誘導体の遺伝子配列をウイルスベクターまたは発現プラスミドベクターにクローニングできる。サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなどの構成プロモーターまたは誘導プロモーターにより発現させることができる。好ましくは、誘導プロモーターは、インターロイキン、具体的にはIL−6プロモーターなどの炎症遺伝子プロモーター、または補体系遺伝子プロモーターを利用する。他の炎症遺伝子プロモーターには、TNF−αまたはNF−κB応答因子のプロモーターがある。
【0010】
α−MSHおよび/またはその誘導体を担持する遺伝子治療ベクターはまた、目的とする適当な治療遺伝子または核酸を担持できる。これはα−MSHおよび/またはその誘導体の発現を、目的の治療遺伝子が発現する領域に局在させる。α−MSHおよび/またはその誘導体のこの局在効果により、宿主の全身免疫系を損なうことなく、局所炎症応答を阻害することができる。これはさらに、遺伝子治療ベクターが導入された細胞を、好中球またはT細胞の炎症細胞傷害作用から防護する。本発明の好ましい態様では、α−MSHおよび/またはその誘導体の遺伝子および関連プロモーターを、目的の治療遺伝子を担持する同じDNAベクターにクローニングし、これによりこの同時局在効果を得ることができる。
【0011】
あるいは、α−MSHおよび/またはその誘導体は内部リボゾームエントリー部位(IRES)を用いて発現させることができる。IRES配列は治療遺伝子とα−MSHおよび/またはその誘導体の遺伝子との間に配置できる。従って、これら2つの遺伝子は二重シストロン性mRNA転写体として単一のプロモーターから転写され、次いでこの二重シストロン性mRNA転写体は5’末端およびIRES配列において同時に翻訳され得る。治療遺伝子由来のタンパク質とα−MSHおよび/またはその誘導体とはともに単一の転写体から産生されるので、単一の細胞がこれら両タンパク質を発現する可能性は高いであろう。IRES配列およびベクターは市販されており、例えばClontech Laboratories, パロアルト、カリフォルニアから入手可能である(pIRES、カタログNo.6028−1)。
【0012】
さらに、多重IRES配列を用いたα−MSHおよび/またはその誘導体のストリンジング多重遺伝子により、α−MSHおよび/またはその誘導体の産生を増大させることができる。α−MSHおよび/またはその誘導体の遺伝子上流に分泌シグナルペプチドをクローニングすることにより、α−MSHおよび/またはその誘導体をそれらを必要とする細胞外環境に輸送させることもできる。このような分泌ペプチドシグナルの例としては、上皮成長因子、塩基性フィブロブラスト成長因子またはインターロイキン−6のシグナルペプチドが挙げられる。
【0013】
実施例1
この実施例は、α−MSHおよび/またはその誘導体の抗炎症、解熱および抗微生物活性を説明する。
α−MSHは古くからの13アミノ酸ペプチド、SYSMEHFRWGKPV(α−MSH(1−13))であり、これは比較的大きな前駆体分子であるプロピオメラノコルチンの翻訳後プロセッシングにより産生される。α−MSHは、これもプロピオメラノコルチンから誘導される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と1−13アミノ酸配列を共有している。α−MSHは、下垂体細胞、単球、メラニン細胞およびケラチノサイトなどの多くの細胞型から分泌されることが知られている。これは、ラットの皮膚、ヒトの表皮、または無傷および下垂体切除ラットの消化管の粘膜バリアーにおいて観察できる。例えば、Eberie, A.N., The Melanotrophins, Karger, Basel, Switzerland (1998); Lipton, J.M., et. al., Anti−inflammatory Influence of the Neuroimmunomodulator α−MSH, Immunol. Today 18, 140−145 (1997); Thody, A.J., et.al., MSH Peptides are Present in Mammalian Skin, Peptides 4, 813−815 (1983); Fox, J.A., et.al., Immunoreactive α−Melanocyte Stimulating Hormone, Its Distribution in the Gastrointestinal Tract of Intact and Hypophysectomized Rats, Life. Sci. 18, 2127−2132 (1981) を参照のこと。
【0014】
α−MSHおよび/またはその誘導体は強力な解熱作用および抗炎症作用を有していることは知られているが、それに加え、これらは毒性が極めて低い。α−MSHおよび/またはその誘導体は宿主細胞の炎症誘発性メディエーターの産生をインビトロにおいて減少でき、さらに炎症の動物モデルにおいて局所および全身反応の生成をも減少させることができる。「コア」α−MSH配列(4−10)は例えば、学習および記憶行動効果を有しているが、解熱活性および抗炎症活性は殆ど有していない。対照的に、解熱活性および抗炎症活性の活性メッセージ配列はα−MSHのC末端アミノ酸配列、即ちリジン−プロリン−バリン(Lys−Pro−ValまたはKPV)に存在する。このトリペプチドは親分子と同等なインビトロおよびインビボ活性を有している。α−MSHおよび/またはその誘導体の抗炎症活性は以下の2つの特許および文献に記載されている(これらは引用により本明細書に包含される;1991年7月2日発行のU.S. Patent No. 5,028,592、発明者:Lipton, J.M., 名称:Antipyretic and Anti−inflammatory Lys Pro Val Compositions and Method of Use; 1992年10月20日発行のU.S. Patent No. 5,157,023, 発明者 Lipton, J.M., 名称: Antipreytic and Anti−inflammatory Lys Pro Val Compositions and Method of Use、また次も参照のこと: Catania, A., et. al., α−Melanocyte Stimulating Hormone in the Modulation of Host Reactions, Endocr. Rev. 14, 564−576 (1993); Lipton, J. M., et.al., Anti−inflammatory Influence of the Neuroimmunomodulator of −MSH, Immunol. Today 18, 140−145 (1997); Rajora, N., et.al., α−MSH Production Receptors and Influence on Neopterin, in a Human Monocyte/macrophage Cell Line, J. Leukoc. Biol. 59, 248−253 (1996); Star, R.A., et.al., Evidence of Autocrine Modulation of Macrophage Nitric Oxide Synthase by α−MSH, Proc. Nat’l. Acad. Sci. (USA) 92, 8015−8020 (1995); Lipton, J.M., et.al., Anti−inflammatory Effects of the Neuropeptide α−MSH in Acute Chronic and Systemic inflammation, Ann. N.Y. Acad. Sci. 741, 137−148 (1994); Fajora, N., et.al., α−MSH Modulates Local and Circulating tumor Necrosis Factor−α in Experimental Brain Inflammation, J. Neuroosci, 17, 2181−2186 (1995); Richards, D.B., et.al., Effect of α−MSH (11−13) (lysine−proline−valine) on Fever in the Rabbit, Peptides 5, 815−817 (1984); Hiltz, M.E., et.al., Anti−inflammatory Activity of a COOH−terminal Fragment of the Neuropeptide α−MSH, FASEB J. 3, 2282−2284 (1989))。
【0015】
α−MSH誘導体としては、次のアミノ酸配列を有するペプチド:アミノ酸配列KPV(α−MSH(11−13))、MEHFRWG(α−MSH(4−10))またはHFRWGKPV(α−MSH(6−13))が挙げられるが、これらに限定されない。これらの誘導体には上記ペプチドのホモ二量体またはヘテロ二量体も含まれるが、これらは上記ポリペプチドのN末端にシステイン残基を付加し、2つのポリペプチドのシステインにジスルフィド結合を形成させることにより得ることができる。これらのペプチドはNアセチル化および/またはCアミド化されていてもよい。
【0016】
特定のアミノ酸残基を置換または欠失させることにより、生物学的に機能的な誘導体をペプチドの効能を改変することなく、作製することができる。例えば、α−MSH配列を安定化させれば、ペプチドの活性を大幅に増大させることができ、D−アミノ酸体をL−体に置換することによりペプチドの効能を改善または減少させることができることが知られている。α−MSHの安定アナログである[Nle4,D−Phe7]−α−MSHはメラニン細胞およびメラノーマ細胞に対して顕著な生物活性を有することが知られており、これは解熱作用において親ペプチドよりもおよそ10倍も強力である。さらに、α−MSH(11−13)配列のC末端にアミノ酸を付加することにより、解熱作用を減少または増大させることができる。グリシンを付加してこの10−13配列を形成させると、その強度が若干減少した:9−13配列は活性を殆ど欠いていたが、8−13配列の強度は11−13配列よりも大きかった。Ac−[D−K11]−α−MSH11−13−NH2はトリペプチドα−MSH(11−13)のL体と同じ一般的強度を有していることが知られいてる。しかし、このトリペプチドの12位のD−プロリンを置換すると、不活性になった。例えばHoldeman, M., et.al., Antipyretic Activity of a Potent α−MSH Analog, Peptides 6, 273−5 (1985). Deeter, L.B., et.al., Antipyretic Properties of Centrally Administered α−MSH Fragments in the Rabbit, Peptides 9, 1285−8 (1989). Hiltz, M.E., Anti−inflammatory Activity of α−MSH (11−13) Analogs: Influences of Alterations in Stereochemistry, Peptides 12, 767−71 (1991) を参照のこと。
【0017】
類似しているハイドロパシー(疎水性親水性指標)値を有するアミノ酸と置換することにより、生物学的に機能的な等価体を得ることができる。例えば、疎水性親水性指標+4.5および+3.8をそれぞれ有するイソロイシンおよびロイシンは、疎水性親水性指標+4.2を有するバリンと置換することができ、同様の生物活性を有するタンパク質を得ることができる。あるいは、別のスケール方面では、リジン(−3.9)をアルギニン(−4.5)などと置換することができる。一般に、あるアミノ酸が成功裏に置換できるのは、そのようなアミノ酸が、置換されるアミノ酸の疎水性親水性指標単位がおよそ+/−1の範囲内の疎水性親水性スコアを有する場合と考えられる。
【0018】
α−MSHおよび/またはその誘導体の抗微生物特性については、WO00/59527として公開されているPCT出願番号PCT/US00/06917(発明の名称:α−メラニン細胞刺激ホルモンから誘導される抗微生物性アミノ酸配列(Anti−microbial Amino Acid Sequences Derived from alpha−Melanocyte Stimulating Hormone)、2000年3月17日出願、発明者:Catania, A.およびLipton, J.、発明の名称:α−メラニン細胞刺激ホルモンから誘導される抗微生物性アミノ酸配列(Anti−microbial Amino Acid Sequences Derived from alpha−Melanocyte Stimulating Hormone)として1999年3月24日出願の米国仮出願番号60/126,233の優先権を主張)に記載されている。このPCT公開および仮出願は引用によって本明細書に包含される。
【0019】
実施例II
この実施例は、遺伝子治療とともにα−MSHおよび/またはその誘導体を使用することを説明する。
α−MSHおよび/またはその誘導体の調製および精製には、通常の固相ペプチド合成手法および逆相高速液体クロマトグラフィー手法を使用できる。遺伝子治療を受ける患者には注射または経口投与のいずれによっても、薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を投与できる。例えば、注射は遺伝子治療が標的とする特定部位に応じて、静脈内、腹腔内または皮内に行うことができる。次いで、α−MSHおよび/またはその誘導体の投与後、医師の監督下に、目的の治療遺伝子または核酸を含有する遺伝子治療ベクターの薬理学的有効量を通常の遺伝子治療プロトコールに従って患者に投与することができる。要すれば、遺伝子治療ベクターの投与後、α−MSHおよび/またはその誘導体を追加的に投与してもよい。
あるいは、遺伝子治療ベクターの供給カクテルは、協働してまたは同時に患者に投与される薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を含むことができる。
【0020】
実施例III
この実施例は、α−MSHおよび/またはその誘導体を発現する遺伝子治療ベクターの構築を説明する。
α−MSHおよび/またはその誘導体を発現する遺伝子配列の調製および精製には、数ある手法の中でも、通常のオリゴヌクレオチド合成手法を使用できる。相補的オリゴヌクレオチドを作製しアニーリングすることで、クローニングできる二本鎖DNA分子が形成される。適当な制限酵素部位を有する付加的な配列をオリゴヌクレオチドそれぞれの末端に施すことができる。好ましくは、α−MSH配列の下流のオリゴヌクレオチド配列には終止コドン(TAG)を含む。
【0021】
さらに、ポリメラーゼ鎖反応を使用し、IL−6cDNAのシグナルペプチドに想到する断片、ヌクレオチド33−120(Genbank受入番号J03783)を合成し、pBluescript KS(Stratagene, サンジェゴ、CA)などのベクターにクローニングできる。同様に、IL−6またはNF−κBのプロモーター領域も適当なマッチング制限酵素部位を有するオリゴヌクレオチドを使用して合成でき、それを、シグナル配列を担持するpBluescriptの上流にクローニングできる。標準的な制限酵素消化およびDNA連結により、α−MSHおよび/またはその誘導体配列をシグナル配列およびプロモーターに連結できる。
【0022】
内部リボゾームエントリー部位(IRES)配列が所望であれば、上記のオリゴヌクレオチド配列はそのような配列を含むことができ、またはそれは通常のPCR手法によってPCRプライマーに組込み、連結できる。あるいは、α−MSHおよび/またはその誘導体配列はClontech LaboratoriesのpIRESベクターにクローニングできる。多重α−MSHおよび/またはその誘導体は、所望であれば多重IRES配列を用いて構築できる。これらの構築物および目的の治療遺伝子を含む発現プラスミドの有効量は、リポソームなどの非ウイルスベクター、エレクトロポレーションまたは遺伝子銃を用いて、直接的に患者に注射または導入できる。
【0023】
さらに、α−MSHおよび/またはその誘導体構築物は、標準的な制限酵素および連結手法、平滑末端クローニングまたはPCR手法によって適当な複製欠陥レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスまたはアデノウイルス関連ウイルスベクターに挿入できる。
【0024】
組換えウイルスの力価をまず測定し、適当量のウイルス粒子を患者または宿主に導入すればよい。ウイルスベクターは既に、α−MSHおよび/またはその誘導体に加えて、治療遺伝子または核酸を含有している場合があると考えられる。
【0025】
組換えウイルスを細胞に導入すると、細胞はα−MSHおよび/またはその誘導体を発現し、次いで炎症を阻害する。NF−κB活性化の阻害を介した細胞におけるα−MSH発現の抗炎症効果がIchiyama, et. al., Autocrine α−Melanocyte−Stimulating Hormone Inhibits NF−κB Activation in Human Glioma, J. Neurosci. Res. 58:684−689 (1999)に報告されており、これも引用によって本明細書に包含される。
【0026】
上記実施例を改変しても、本発明の精神を逸脱しないことは理解されよう。また、各実施例はそれぞれ単独でまたは相互に組み合わせて実施できることも理解されよう。
【発明の分野】
本発明は遺伝子治療の分野に属する。
【0002】
【発明の背景】
種々の疾患は、環境因子によって生存中に改変または遺伝される欠陥遺伝子をその原因とする。このような疾患の例としては、種々の型の癌、血友病またはLDL受容体欠損症などがある。遺伝子治療または遺伝子補充療法は上記の欠陥遺伝子を置換、増強または阻害することにより、これらの疾患を根本的に治癒することを約束する。
【0003】
治療遺伝子または核酸を導入するための通常のベクターにはウイルスおよび非ウイルスベクターがある。ウイルス供給システムは遺伝子を細胞に供給するうで最も効率的と考えられてきたが、それは炎症または免疫応答を引き起こす危険性があることから限定的となる場合がある。Forbes, S.J. Review Atricle: Gene Therapy in Gastroenterology and Hepatology, Aliment Pharmacol. Ther. 11:823−826(1997)。
【0004】
ペンシルベニア大学ヒト遺伝子治療機関(the Institute for Human Gene Therapy, University of Pennsylvania)における遺伝子治療の臨床試験に参加中、1999年9月17日に死亡したボランティアであったジェシー・ゲルシンガー(Jesse Gelsinger)の死亡により、最近、遺伝子治療の使用および安全性についての論争が激しくなっている。この臨床試験は改変アデノウイルスベクターを用いたオルニチントランスカルボミラーゼ(OTC)の処置を目的としていた。しかし、ゲルシンガーにベクターを投与すると、「異常かつ致死的な免疫系の応答が誘発され、多臓器不全と死をもたらした」。予備的所見;1999年12月2日、ペンシルベニア大学健康システム、ヒト遺伝子治療機関<http://www.med.upenn.edu/ihgt/findings.html>。アデノウイルスベクターは広範な細胞に感染でき、レトロウイルスベクターのように複製細胞にだけ限定されない点において他のウイルスベクターに比べて幾つかの利点を提供するが、ゲルシンガーの場合に見られるように免疫系を活性化させることがあり、初期用量や反復導入の効果はそれが生命に危険を及ぼさない場合、低くなることがある。Forbes, S.J.(前掲)を参照。
【0005】
さらに、遺伝子治療に対する免疫応答の可能性は使用するベクターに限定されない。ベクターは「外来性」と認識され得るタンパク質、ポリペプチド、酵素をコードする遺伝子配列を宿主に導入するので、そのような配列を発現する細胞および発現産物に対する免疫応答が遺伝子治療の有効性を制限する。例えば、第VIII因子または第IX因子遺伝子を治療遺伝子として使用する血友病実験では、新たに発現されたタンパク質に対して抗体が生成され、それが治療の有効性を制限することがあった。Forbes, S.J.(前掲):またHerzog, R., Problems and Prospects in Gene Therapy for Hemophilia, Current Opinions in Hematology, 5:321−326(1998)も参照。好中球などの細胞傷害性T細胞も「外来」遺伝子またはウイルスベクター遺伝子を発現する細胞を攻撃することがあり、ここでも遺伝子治療の有効性が長期にわたって制限を受けることになる。
従って、免疫系の有害作用の幾つかを緩和することにより遺伝子治療の安全性および効能を増大させる要求が存在する。
【0006】
【発明の概要】
本発明は、α−MSHおよび/またはその誘導体を補助的に遺伝子治療に使用するものである。本発明の1つの態様では、遺伝子治療ベクターはα−MSHおよび/またはその誘導体を発現する核酸配列、およびその発現を制御できる炎症または免疫応答遺伝子プロモーターを含む。その核酸配列はまた、内部リボゾームエントリー部位配列を使用して治療遺伝子とともに発現させることができる。別の態様では、適当な遺伝子を担持する遺伝子治療ベクターの投与の前、後および/または同時に、薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を投与できる。
【0007】
【発明の一般的な説明】
以下に引用する文献はその引用により本明細書に完全に記載されているものとする。本発明は、α−メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)および/またはその誘導体を補助療法として使用する遺伝子治療のための方法およびシステムに関する。α−MSHおよび/またはその誘導体はその抗炎症および解熱活性のため、遺伝子治療ベクターまたは発現タンパク質に対する患者の炎症応答を制限することにより遺伝子治療応用を補充(補完)することができる。他の免疫抑制剤とは異なり、α−MSHおよび/またはその誘導体は、同時に生体を感染から防ぐことのできる抗微生物特性をも有しており、かつ免疫系の陰性効果を制限できる。
【0008】
本発明の1つの態様では、薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、適当な治療遺伝子または核酸を担持する遺伝子治療ベクターを投与する前、後および/または同時に投与することができる。あるいは、α−MSHおよび/またはその誘導体は、遺伝子治療ベクターとともにカクテルとして投与することもできる。遺伝子治療ベクターには、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルス関連ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクター、およびリポソーム、リン酸カルシウム、抗体または受容体基本導入ベクター、エレクトロポレーション、または核酸の直接注入などの非ウイルスベクターの両者が包含され得る。
【0009】
本発明の別の態様では、遺伝子治療ベクターはα−MSHおよび/またはその誘導体を宿主細胞において発現するための配列を含むDNA分子を担持する。通常の分子クローニング技術により、α−MSHおよび/またはその誘導体の遺伝子配列をウイルスベクターまたは発現プラスミドベクターにクローニングできる。サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなどの構成プロモーターまたは誘導プロモーターにより発現させることができる。好ましくは、誘導プロモーターは、インターロイキン、具体的にはIL−6プロモーターなどの炎症遺伝子プロモーター、または補体系遺伝子プロモーターを利用する。他の炎症遺伝子プロモーターには、TNF−αまたはNF−κB応答因子のプロモーターがある。
【0010】
α−MSHおよび/またはその誘導体を担持する遺伝子治療ベクターはまた、目的とする適当な治療遺伝子または核酸を担持できる。これはα−MSHおよび/またはその誘導体の発現を、目的の治療遺伝子が発現する領域に局在させる。α−MSHおよび/またはその誘導体のこの局在効果により、宿主の全身免疫系を損なうことなく、局所炎症応答を阻害することができる。これはさらに、遺伝子治療ベクターが導入された細胞を、好中球またはT細胞の炎症細胞傷害作用から防護する。本発明の好ましい態様では、α−MSHおよび/またはその誘導体の遺伝子および関連プロモーターを、目的の治療遺伝子を担持する同じDNAベクターにクローニングし、これによりこの同時局在効果を得ることができる。
【0011】
あるいは、α−MSHおよび/またはその誘導体は内部リボゾームエントリー部位(IRES)を用いて発現させることができる。IRES配列は治療遺伝子とα−MSHおよび/またはその誘導体の遺伝子との間に配置できる。従って、これら2つの遺伝子は二重シストロン性mRNA転写体として単一のプロモーターから転写され、次いでこの二重シストロン性mRNA転写体は5’末端およびIRES配列において同時に翻訳され得る。治療遺伝子由来のタンパク質とα−MSHおよび/またはその誘導体とはともに単一の転写体から産生されるので、単一の細胞がこれら両タンパク質を発現する可能性は高いであろう。IRES配列およびベクターは市販されており、例えばClontech Laboratories, パロアルト、カリフォルニアから入手可能である(pIRES、カタログNo.6028−1)。
【0012】
さらに、多重IRES配列を用いたα−MSHおよび/またはその誘導体のストリンジング多重遺伝子により、α−MSHおよび/またはその誘導体の産生を増大させることができる。α−MSHおよび/またはその誘導体の遺伝子上流に分泌シグナルペプチドをクローニングすることにより、α−MSHおよび/またはその誘導体をそれらを必要とする細胞外環境に輸送させることもできる。このような分泌ペプチドシグナルの例としては、上皮成長因子、塩基性フィブロブラスト成長因子またはインターロイキン−6のシグナルペプチドが挙げられる。
【0013】
実施例1
この実施例は、α−MSHおよび/またはその誘導体の抗炎症、解熱および抗微生物活性を説明する。
α−MSHは古くからの13アミノ酸ペプチド、SYSMEHFRWGKPV(α−MSH(1−13))であり、これは比較的大きな前駆体分子であるプロピオメラノコルチンの翻訳後プロセッシングにより産生される。α−MSHは、これもプロピオメラノコルチンから誘導される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と1−13アミノ酸配列を共有している。α−MSHは、下垂体細胞、単球、メラニン細胞およびケラチノサイトなどの多くの細胞型から分泌されることが知られている。これは、ラットの皮膚、ヒトの表皮、または無傷および下垂体切除ラットの消化管の粘膜バリアーにおいて観察できる。例えば、Eberie, A.N., The Melanotrophins, Karger, Basel, Switzerland (1998); Lipton, J.M., et. al., Anti−inflammatory Influence of the Neuroimmunomodulator α−MSH, Immunol. Today 18, 140−145 (1997); Thody, A.J., et.al., MSH Peptides are Present in Mammalian Skin, Peptides 4, 813−815 (1983); Fox, J.A., et.al., Immunoreactive α−Melanocyte Stimulating Hormone, Its Distribution in the Gastrointestinal Tract of Intact and Hypophysectomized Rats, Life. Sci. 18, 2127−2132 (1981) を参照のこと。
【0014】
α−MSHおよび/またはその誘導体は強力な解熱作用および抗炎症作用を有していることは知られているが、それに加え、これらは毒性が極めて低い。α−MSHおよび/またはその誘導体は宿主細胞の炎症誘発性メディエーターの産生をインビトロにおいて減少でき、さらに炎症の動物モデルにおいて局所および全身反応の生成をも減少させることができる。「コア」α−MSH配列(4−10)は例えば、学習および記憶行動効果を有しているが、解熱活性および抗炎症活性は殆ど有していない。対照的に、解熱活性および抗炎症活性の活性メッセージ配列はα−MSHのC末端アミノ酸配列、即ちリジン−プロリン−バリン(Lys−Pro−ValまたはKPV)に存在する。このトリペプチドは親分子と同等なインビトロおよびインビボ活性を有している。α−MSHおよび/またはその誘導体の抗炎症活性は以下の2つの特許および文献に記載されている(これらは引用により本明細書に包含される;1991年7月2日発行のU.S. Patent No. 5,028,592、発明者:Lipton, J.M., 名称:Antipyretic and Anti−inflammatory Lys Pro Val Compositions and Method of Use; 1992年10月20日発行のU.S. Patent No. 5,157,023, 発明者 Lipton, J.M., 名称: Antipreytic and Anti−inflammatory Lys Pro Val Compositions and Method of Use、また次も参照のこと: Catania, A., et. al., α−Melanocyte Stimulating Hormone in the Modulation of Host Reactions, Endocr. Rev. 14, 564−576 (1993); Lipton, J. M., et.al., Anti−inflammatory Influence of the Neuroimmunomodulator of −MSH, Immunol. Today 18, 140−145 (1997); Rajora, N., et.al., α−MSH Production Receptors and Influence on Neopterin, in a Human Monocyte/macrophage Cell Line, J. Leukoc. Biol. 59, 248−253 (1996); Star, R.A., et.al., Evidence of Autocrine Modulation of Macrophage Nitric Oxide Synthase by α−MSH, Proc. Nat’l. Acad. Sci. (USA) 92, 8015−8020 (1995); Lipton, J.M., et.al., Anti−inflammatory Effects of the Neuropeptide α−MSH in Acute Chronic and Systemic inflammation, Ann. N.Y. Acad. Sci. 741, 137−148 (1994); Fajora, N., et.al., α−MSH Modulates Local and Circulating tumor Necrosis Factor−α in Experimental Brain Inflammation, J. Neuroosci, 17, 2181−2186 (1995); Richards, D.B., et.al., Effect of α−MSH (11−13) (lysine−proline−valine) on Fever in the Rabbit, Peptides 5, 815−817 (1984); Hiltz, M.E., et.al., Anti−inflammatory Activity of a COOH−terminal Fragment of the Neuropeptide α−MSH, FASEB J. 3, 2282−2284 (1989))。
【0015】
α−MSH誘導体としては、次のアミノ酸配列を有するペプチド:アミノ酸配列KPV(α−MSH(11−13))、MEHFRWG(α−MSH(4−10))またはHFRWGKPV(α−MSH(6−13))が挙げられるが、これらに限定されない。これらの誘導体には上記ペプチドのホモ二量体またはヘテロ二量体も含まれるが、これらは上記ポリペプチドのN末端にシステイン残基を付加し、2つのポリペプチドのシステインにジスルフィド結合を形成させることにより得ることができる。これらのペプチドはNアセチル化および/またはCアミド化されていてもよい。
【0016】
特定のアミノ酸残基を置換または欠失させることにより、生物学的に機能的な誘導体をペプチドの効能を改変することなく、作製することができる。例えば、α−MSH配列を安定化させれば、ペプチドの活性を大幅に増大させることができ、D−アミノ酸体をL−体に置換することによりペプチドの効能を改善または減少させることができることが知られている。α−MSHの安定アナログである[Nle4,D−Phe7]−α−MSHはメラニン細胞およびメラノーマ細胞に対して顕著な生物活性を有することが知られており、これは解熱作用において親ペプチドよりもおよそ10倍も強力である。さらに、α−MSH(11−13)配列のC末端にアミノ酸を付加することにより、解熱作用を減少または増大させることができる。グリシンを付加してこの10−13配列を形成させると、その強度が若干減少した:9−13配列は活性を殆ど欠いていたが、8−13配列の強度は11−13配列よりも大きかった。Ac−[D−K11]−α−MSH11−13−NH2はトリペプチドα−MSH(11−13)のL体と同じ一般的強度を有していることが知られいてる。しかし、このトリペプチドの12位のD−プロリンを置換すると、不活性になった。例えばHoldeman, M., et.al., Antipyretic Activity of a Potent α−MSH Analog, Peptides 6, 273−5 (1985). Deeter, L.B., et.al., Antipyretic Properties of Centrally Administered α−MSH Fragments in the Rabbit, Peptides 9, 1285−8 (1989). Hiltz, M.E., Anti−inflammatory Activity of α−MSH (11−13) Analogs: Influences of Alterations in Stereochemistry, Peptides 12, 767−71 (1991) を参照のこと。
【0017】
類似しているハイドロパシー(疎水性親水性指標)値を有するアミノ酸と置換することにより、生物学的に機能的な等価体を得ることができる。例えば、疎水性親水性指標+4.5および+3.8をそれぞれ有するイソロイシンおよびロイシンは、疎水性親水性指標+4.2を有するバリンと置換することができ、同様の生物活性を有するタンパク質を得ることができる。あるいは、別のスケール方面では、リジン(−3.9)をアルギニン(−4.5)などと置換することができる。一般に、あるアミノ酸が成功裏に置換できるのは、そのようなアミノ酸が、置換されるアミノ酸の疎水性親水性指標単位がおよそ+/−1の範囲内の疎水性親水性スコアを有する場合と考えられる。
【0018】
α−MSHおよび/またはその誘導体の抗微生物特性については、WO00/59527として公開されているPCT出願番号PCT/US00/06917(発明の名称:α−メラニン細胞刺激ホルモンから誘導される抗微生物性アミノ酸配列(Anti−microbial Amino Acid Sequences Derived from alpha−Melanocyte Stimulating Hormone)、2000年3月17日出願、発明者:Catania, A.およびLipton, J.、発明の名称:α−メラニン細胞刺激ホルモンから誘導される抗微生物性アミノ酸配列(Anti−microbial Amino Acid Sequences Derived from alpha−Melanocyte Stimulating Hormone)として1999年3月24日出願の米国仮出願番号60/126,233の優先権を主張)に記載されている。このPCT公開および仮出願は引用によって本明細書に包含される。
【0019】
実施例II
この実施例は、遺伝子治療とともにα−MSHおよび/またはその誘導体を使用することを説明する。
α−MSHおよび/またはその誘導体の調製および精製には、通常の固相ペプチド合成手法および逆相高速液体クロマトグラフィー手法を使用できる。遺伝子治療を受ける患者には注射または経口投与のいずれによっても、薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を投与できる。例えば、注射は遺伝子治療が標的とする特定部位に応じて、静脈内、腹腔内または皮内に行うことができる。次いで、α−MSHおよび/またはその誘導体の投与後、医師の監督下に、目的の治療遺伝子または核酸を含有する遺伝子治療ベクターの薬理学的有効量を通常の遺伝子治療プロトコールに従って患者に投与することができる。要すれば、遺伝子治療ベクターの投与後、α−MSHおよび/またはその誘導体を追加的に投与してもよい。
あるいは、遺伝子治療ベクターの供給カクテルは、協働してまたは同時に患者に投与される薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を含むことができる。
【0020】
実施例III
この実施例は、α−MSHおよび/またはその誘導体を発現する遺伝子治療ベクターの構築を説明する。
α−MSHおよび/またはその誘導体を発現する遺伝子配列の調製および精製には、数ある手法の中でも、通常のオリゴヌクレオチド合成手法を使用できる。相補的オリゴヌクレオチドを作製しアニーリングすることで、クローニングできる二本鎖DNA分子が形成される。適当な制限酵素部位を有する付加的な配列をオリゴヌクレオチドそれぞれの末端に施すことができる。好ましくは、α−MSH配列の下流のオリゴヌクレオチド配列には終止コドン(TAG)を含む。
【0021】
さらに、ポリメラーゼ鎖反応を使用し、IL−6cDNAのシグナルペプチドに想到する断片、ヌクレオチド33−120(Genbank受入番号J03783)を合成し、pBluescript KS(Stratagene, サンジェゴ、CA)などのベクターにクローニングできる。同様に、IL−6またはNF−κBのプロモーター領域も適当なマッチング制限酵素部位を有するオリゴヌクレオチドを使用して合成でき、それを、シグナル配列を担持するpBluescriptの上流にクローニングできる。標準的な制限酵素消化およびDNA連結により、α−MSHおよび/またはその誘導体配列をシグナル配列およびプロモーターに連結できる。
【0022】
内部リボゾームエントリー部位(IRES)配列が所望であれば、上記のオリゴヌクレオチド配列はそのような配列を含むことができ、またはそれは通常のPCR手法によってPCRプライマーに組込み、連結できる。あるいは、α−MSHおよび/またはその誘導体配列はClontech LaboratoriesのpIRESベクターにクローニングできる。多重α−MSHおよび/またはその誘導体は、所望であれば多重IRES配列を用いて構築できる。これらの構築物および目的の治療遺伝子を含む発現プラスミドの有効量は、リポソームなどの非ウイルスベクター、エレクトロポレーションまたは遺伝子銃を用いて、直接的に患者に注射または導入できる。
【0023】
さらに、α−MSHおよび/またはその誘導体構築物は、標準的な制限酵素および連結手法、平滑末端クローニングまたはPCR手法によって適当な複製欠陥レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスまたはアデノウイルス関連ウイルスベクターに挿入できる。
【0024】
組換えウイルスの力価をまず測定し、適当量のウイルス粒子を患者または宿主に導入すればよい。ウイルスベクターは既に、α−MSHおよび/またはその誘導体に加えて、治療遺伝子または核酸を含有している場合があると考えられる。
【0025】
組換えウイルスを細胞に導入すると、細胞はα−MSHおよび/またはその誘導体を発現し、次いで炎症を阻害する。NF−κB活性化の阻害を介した細胞におけるα−MSH発現の抗炎症効果がIchiyama, et. al., Autocrine α−Melanocyte−Stimulating Hormone Inhibits NF−κB Activation in Human Glioma, J. Neurosci. Res. 58:684−689 (1999)に報告されており、これも引用によって本明細書に包含される。
【0026】
上記実施例を改変しても、本発明の精神を逸脱しないことは理解されよう。また、各実施例はそれぞれ単独でまたは相互に組み合わせて実施できることも理解されよう。
Claims (19)
- 少なくとも1つの治療遺伝子または核酸を有する遺伝子治療ベクター、およびその遺伝子治療ベクターに関連するα−MSHおよび/またはその誘導体の薬理学的有効量を含む、遺伝子治療システム。
- 薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、遺伝子治療ベクター投与の前、後または同時に投与する、請求項1記載の遺伝子治療システム。
- 薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、遺伝子治療ベクターが担持する核酸から発現させる、請求項1記載の遺伝子治療システム。
- 遺伝子治療ベクターが担持する核酸が治療遺伝子または核酸を含む、請求項3記載の遺伝子治療システム。
- 薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、炎症または免疫応答遺伝子プロモーターの制御下に発現させる、請求項3記載の遺伝子治療システム。
- 炎症遺伝子プロモーターがインターロイキン−6のプロモーターである、請求項5記載の遺伝子治療システム。
- 薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、少なくとも1つの内部リボゾームエントリー部位配列を有する核酸から発現させる、請求項3記載の遺伝子治療システム。
- 薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、少なくとも1つの分泌シグナルペプチドを有する核酸から発現させる、請求項3記載の遺伝子治療システム。
- 遺伝子治療ベクターがウイルスベクターである、請求項1記載の遺伝子治療システム。
- ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである、請求項9記載の遺伝子治療システム。
- 薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、少なくとも1つの治療遺伝子または核酸を有する遺伝子治療ベクター投与の前、後または同時に投与する遺伝子治療方法。
- 薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、遺伝子治療ベクターが担持する核酸から発現させる、請求項11記載の方法。
- 遺伝子治療ベクターが担持する核酸が治療遺伝子または核酸を含む、請求項11記載の方法。
- 薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、炎症または免疫応答遺伝子プロモーターの制御下に発現させる、請求項12記載の方法。
- 炎症遺伝子プロモーターがインターロイキン−6のプロモーターである、請求項14記載の方法。
- 薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、少なくとも1つの内部リボゾームエントリー部位配列を有する核酸から発現させる、請求項12記載の方法。
- 薬理学的有効量のα−MSHおよび/またはその誘導体を、少なくとも1つの分泌シグナルペプチドを有する核酸から発現させる、請求項12記載の方法。
- 遺伝子治療ベクターがウイルスベクターである、請求項11記載の方法。
- ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである、請求項11記載の方法。
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