JP2004508331A - α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を含む興奮性シナプス伝達を調節する薬剤 - Google Patents

α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を含む興奮性シナプス伝達を調節する薬剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2004508331A
JP2004508331A JP2002524500A JP2002524500A JP2004508331A JP 2004508331 A JP2004508331 A JP 2004508331A JP 2002524500 A JP2002524500 A JP 2002524500A JP 2002524500 A JP2002524500 A JP 2002524500A JP 2004508331 A JP2004508331 A JP 2004508331A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
compound
alkyl
substituted
aryl
synaptic transmission
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002524500A
Other languages
English (en)
Inventor
ケリー、ジョン シアラー
ホッジキス、ジョセフ ピーター
シャーキー、ジョン
Original Assignee
藤沢薬品工業株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 藤沢薬品工業株式会社 filed Critical 藤沢薬品工業株式会社
Publication of JP2004508331A publication Critical patent/JP2004508331A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/395Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins
    • A61K31/495Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having six-membered rings with two or more nitrogen atoms as the only ring heteroatoms, e.g. piperazine or tetrazines
    • A61K31/4965Non-condensed pyrazines
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/14Drugs for disorders of the nervous system for treating abnormal movements, e.g. chorea, dyskinesia
    • A61P25/16Anti-Parkinson drugs
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/18Antipsychotics, i.e. neuroleptics; Drugs for mania or schizophrenia
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/20Hypnotics; Sedatives
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/22Anxiolytics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/24Antidepressants
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/28Drugs for disorders of the nervous system for treating neurodegenerative disorders of the central nervous system, e.g. nootropic agents, cognition enhancers, drugs for treating Alzheimer's disease or other forms of dementia
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Psychiatry (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Hospice & Palliative Care (AREA)
  • Psychology (AREA)
  • Anesthesiology (AREA)
  • Pain & Pain Management (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

本発明は、有効成分としてα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を含む興奮性シナプス伝達を調節する薬剤、及びこのような薬剤の製造に関する。本発明は更に、医薬上許容される担体又は賦形剤と共にこのような化合物を含む医薬組成物、及びこのような組成物を投与することを含む興奮性シナプス伝達の調節方法に関する。α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を指標として使用することを含む、興奮性シナプス伝達の調節のための薬剤のスクリーニング方法も提供する。本発明は、痴呆、健忘症、躁うつ病、精神分裂病、パーキンソン病、及び心身症を含む脳障害の予防及び/又は治療に有用である。

Description

【0001】
本発明は、有効成分としてα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を含む興奮性シナプス伝達を調節する薬剤、及びこのような薬剤の製造に関する。本薬剤は、痴呆及び健忘症を含む脳障害の予防及び/又は治療に有用である。本発明は更に、医薬上許容される担体又は賦形剤と共にα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を含む医薬組成物、及びこのような組成物を投与することを含む興奮性シナプス伝達の調節方法に関する。本発明はまた更に、α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を指標として使用することを含む、興奮性シナプス伝達を調節する薬剤のスクリーニング方法に関する。
【0002】
海馬体として知られる脳部位は、学習及び記憶に重要な役割を持つと言われている。アルツハイマー病(AD)及び関連する痴呆症は、大脳皮質及び海馬における特徴的病巣が認知障害及びコリン作動性ニューロンの異常と関連している進行性の神経変性疾患であるが、その病因はいまだに明らかにされていない(Davies, & Maloney, 1976; Bartus ら, 1982; Araujo ら, 1988; Gallagher & Colombo, 1995)。コリン作動性神経の機能低下及び特徴的な病理像の出現は認知障害と関連するが、直接的な因果関係は明確ではない(Fibiger, 1991; Francis ら, 1999)。ADにおいては、大脳皮質及び海馬へ、コリン作動性神経ばかりではなくノルアドレナリン作動性及びセロトニン作動性の求心性神経の投射も変性しており(Palmer, 1996; Kasaら, 1997)、現在、確実な治療法はまだ開発されていないのが現状である。治療法が存在しない状況で、対症療法としては、残存するコリン作動性ニューロンの機能を活性化することが期待されている。末梢組織と同様に脳において、遊離される伝達物質の量を増加させることによってシナプス前側に、又はシナプス後側のレセプターの活性を調節することによって、若しくは伝達物質の分解を減少させることによってシナプス後側のいずれかに、シナプス伝達を増大させることは可能である。ADにおいて、他の治療もいくつか候補に挙げられるものの(Chorvatら,1995;Mucke,1998;Kelly,1999)、コリンアセチルトランスフェラーゼChAtの低下があることから(参考文献としてKasaら,1997参照)、特にAchEの阻害によって(Francisら,1999)、脳におけるコリン作動性伝達を活性化させる治療法が最も有望視されている。海馬でのソマトスタチン作動性ニューロンの活性化は、認知機能を促進するためにコリン作動性神経の活性を増強させる間接的手段になり得るかもしれないということも示唆されている(Yamazakiら,1996)。
【0003】
本発明者らの鋭意研究の結果として、α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物が興奮性シナプス伝達の調節効果を有するということが新たに知見された。この新規知見に基づき、本発明者らはα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物の投与により、痴呆、健忘症、躁うつ病、精神分裂病、パーキンソン病、心身症などの脳障害の予防及び/又は治療ができることを見出し、本発明を完成させた。
【0004】
従って、本発明は以下のことを提供する:
(1)有効成分としてα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を含む興奮性シナプス伝達を調節する薬剤;
(2)α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を有効量投与することを含む、興奮性シナプス伝達の調節方法;
(3)興奮性シナプス伝達を調節するための薬剤の製造のためのα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物の使用;
(4)α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物、及び医薬上許容される担体又は賦形剤を含む、興奮性シナプス伝達の調節のための医薬組成物。
(5)脳障害の予防及び/又は治療のためである、(1)、(2)又は(4)のいずれか1項に記載の薬剤、方法及び医薬組成物;並びに脳障害の予防及び/又は治療のための薬剤の製造のためである、(3)に記載の使用。
(6)痴呆又は健忘症の予防及び/又は治療のためである、(5)に記載の薬剤、方法及び医薬組成物;並びに痴呆又は健忘症の予防及び/又は治療のための薬剤の製造のためである、(5)に記載の使用。
(7)α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を指標として使用することを含む、興奮性シナプス伝達を調節する薬剤のスクリーニング方法。
(8)抗痴呆剤又は抗健忘症剤のスクリーニング方法である、(7)に記載のスクリーニング方法。
(9)α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物が(8)に記載のスクリーニング方法によって得られる、(1)〜(4)に記載の薬剤、方法、使用及び医薬組成物。
(10)(8)又は(9)のいずれか1項に記載のスクリーニング方法によって選択される化合物。
【0005】
本発明で使用されるα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物は、このような活性化特性を有する如何なる化合物をも包含する。その好ましい例には、以下の式の化合物が含まれる:
▲1▼式[I]
【0006】
【化21】
Figure 2004508331
【0007】
[式中、
は、低級アルキル、アリール、アル(低級)アルコキシ又は複素環基であって、それらの各々はハロゲンで置換されていてもよく、
は、水素原子又は低級アルキルであり、
は、シクロ(低級)アルキル、アリール又はアル(低級)アルキルであって、それらの各々はハロゲンで置換されていてもよく、
Aは、−CO−、−SO−又は低級アルキレンであり、及び
Yは、−CO−、−SO−又は−CONH−である]
(EP公報第436734号)(以後、化合物[I]ともいう)及びその医薬上許容される塩、及び
【0008】
▲2▼式[II−1]:
【0009】
【化22】
Figure 2004508331
【0010】
[式中、
はアシルであり、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルアミノ、低級アルケニル、低級アルケニルオキシ、低級アルケニルアミノ、低級アルキニル、低級アルキニルオキシ、低級アルキニルアミノ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、シクロ(低級)アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、複素環基又は複素環基で置換されたアミノであって、それらの各々は適切な置換基で置換されていてもよく;又はアシルであり;
Zは、単結合、−CO−又は−SO−であり、
Eは、適切な置換基で置換されていてもよい低級アルキレンであり、
Xは、CH又はNであり、
Jは、単結合、低級アルキレン又は
【0011】
【化23】
Figure 2004508331
【0012】
(式中、Rは、水素、低級アルキル、置換された低級アルキル、N保護基、アリール、アシル又は複素環基である)であり、
Qは、−CH−、−CO−、−SO−又は−N=CH−であり、及び
及びRは各々、水素又は低級アルキルであり、あるいは一緒になって、環状炭化水素又は複素環と縮合していてもよい低級アルキレンを形成し、但し、XがNであるとき、
1)Jは単結合であり、及びQは、−CH−、−CO−又は−SO−であり、あるいは
2)Jは低級アルキレンである]
(以後、化合物[II−1]ともいう)及びその医薬上許容される塩。
【0013】
好ましい化合物[I]は、Rとして低級アルキル、フェニル、ナフチル又はチエニル、Rとして水素又は低級アルキル、Rとしてハロゲンで置換されていてもよいフェニル、Aとして−CO−、及びYとして−CO−又は−SO−を有するものである。
【0014】
より好ましい化合物[I]は、Rとして低級アルキル、Rとして水素、Rとしてハロゲンで置換されているフェニル、Aとして−CO−、及びYとして−CO−を有するものである。
【0015】
最も好ましい化合物[I]は、N−(4−アセチル−1−ピペラジニル)−p−フルオロベンズアミド一水和物(化合物1)(国際公開第WO 98/25914号)であり、それはFK960と命名され、式:
【0016】
【化24】
Figure 2004508331
【0017】
を有する。
【0018】
Zが単結合であり、Eがエチレンであり、及びRとRとが一緒になってエチレンを形成するとき、好ましい化合物[II−1]は、以下の一般式[II−2]:
【0019】
【化25】
Figure 2004508331
【0020】
[式中、
はアシルであり、
は、アリール、アリールオキシ又はアリールアミノであって、それらの全てのアリール部分はハロゲンで置換されていてもよい;ピリジル;又はピリジルアミノであり、
Xは、CH又はNであり、
Jは、単結合、低級アルキレン又は
【0021】
【化26】
Figure 2004508331
【0022】
(式中、Rは、水素、低級アルキル又はN保護基である)であり、
Qは、−CH−、−CO−又は−SO−であり、但し、XがNであるとき、Jは単結合又は低級アルキレンである]
(以後、化合物[II−2]ともいう)及びその医薬上許容される塩によって表すことができる。
【0023】
好ましい化合物[II−2]は、Rとして低級アルカノイル、エステル化カルボキシ、置換若しくは非置換のアロイル、低級アルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、又はシクロ(低級)アルキルカルボニル、Rとしてアリール又はアリールアミノ(その各々のアリールは、ハロゲンで置換されていてもよい)、XとしてCH又はN、Jとして単結合、低級アルキレン、又は
【0024】
【化27】
Figure 2004508331
【0025】
(式中、Rは、水素、低級アルキル又はN保護基である)、
及びQとして−CH−、−CO−又は−SO−を有し、但し、XがNのとき、Jが単結合又は低級アルキレンであるもの、及びその医薬上許容される塩である。
【0026】
より好ましい化合物[II−2]は、Rとして低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アロイル、ハロ(低級)アルコキシで置換されたアロイル、低級アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロゲンで置換されたアリールスルホニル、又はシクロ(低級)アルキルカルボニル、Rとしてアリール又はアリールアミノ(その各々のアリールは、ハロゲンで置換されていてもよい)、XとしてCH、Jとして単結合又は−NH−、及びQとして−CO−又は−SO−を有するもの、及びその医薬上許容される塩である。
【0027】
特により好ましい化合物[II−2]は、Rとして低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アロイル、ハロ(低級)アルコキシで置換されたアロイル、低級アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロゲンで置換されたアリールスルホニル、又はシクロ(低級)アルキルカルボニル、Rとしてアリール又はアリールアミノ(その各々のアリールは、ハロゲンで置換されていてもよい)、XとしてCH、Jとして−NH−、Qとして−CO−を有するもの、及びその医薬上許容される塩である。
【0028】
最も好ましい化合物[II−2]は、
N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミド、
N−(1−アセチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−フルオロフェニル)尿素、
4−(4−フルオロベンゾイルアミノ)−1−メトキシカルボニルピペリジン、4−(4−フルオロベンゾイルアミノ)−1−(4−フルオロフェニルスルホニル)ピペリジン、
4−(4−フルオロベンゾイルアミノ)−1−(4−トリフルオロメトキシベンゾイル)ピペリジン、
4−(4−フルオロベンゾイルアミノ)−1−メチルスルホニルピペリジン、
N−(1−メトキシカルボニルピペリジン−4−イル)−N’−(4−フルオロフェニル)尿素、
N−(1−(4−フルオロフェニルスルホニル)ピペリジン−4−イル)−N’−(4−フルオロフェニル)尿素、
N−(1−ベンゾイルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミド、
N−(1−ピバロイルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミド、及び
N−(1−シクロプロピルカルボニルピペリジン−4−イル)−4−フルオロベンズアミド
からなる群から選択されるものである。
【0029】
本明細書の上記の、及び以下の説明で、本発明の範囲内に含まれる種々の定義の適切な例を、以下に詳細に説明する。
【0030】
「低級」という用語は、特にことわらない限り、1〜6個の炭素原子を有する基を意味するように意図されている。
「低級アルケニル」、「低級アルケニルオキシ」、「低級アルケニルアミノ」、「低級アルキニル」、「低級アルキニルオキシ」及び「低級アルキニルアミノ」という用語中の低級部分は、2〜6個の炭素原子を有する基を意味するように意図されている。
「シクロ(低級)アルキル」、「シクロ(低級)アルキルオキシ」及び「シクロ(低級)アルキルアミノ」という用語中の低級部分は、3〜6個の炭素原子を有する基を意味するように意図されている。
適切な「低級アルキル」、並びに「置換された低級アルキル」、「アル(低級)アルキル」、「ハロ(低級)アルキル」、「低級アルキルアミノ」、「低級アルキルシリル」、「低級アルキルチオ」及び「低級アルキルスルホニル」という用語中の低級アルキル部分は、直鎖又は分岐鎖のC−Cアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、エチルプロピル、ヘキシルなどであり得、その中で好ましいものはメチルである。
適切な「低級アルケニル」、並びに「低級アルケニルオキシ」及び「低級アルケニルアミノ」という用語中の低級アルケニル部分は、直鎖又は分岐鎖のC−Cアルケニル、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、イソプロペニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニルなどであり得、その中で好ましいものは、エテニル、プロペンチル又はブタジエニルである。
【0031】
適切な「低級アルキニル」、並びに「低級アルキニルオキシ」及び「低級アルキニルアミノ」という用語中の低級アルキニル部分は、直鎖又は分岐鎖のC−Cアルキニル、例えば、エチニル、プロパルギル、ブチニルなどであり得、その中で好ましいものはエチニルである。
適切な「シクロ(低級)アルキル」、並びに「シクロ(低級)アルキルオキシ」及び「シクロ(低級)アルキルアミノ」という用語中のシクロ(低級)アルキル部分は、シクロ(C−C)アルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルであり得、その中で一般式[II−1]及び[II−2]の定義で好ましいものは、シクロプロピルである。
【0032】
一般式[I]の定義で適切な「アリール」は、フェニル、ナフチル、トリル、キシリル、メシチル、クメニルなどであり得、その中で好ましいものはフェニル又はナフチルである。
一般式[I]の定義で適切な「アル(低級)アルコキシ」は、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、フェニルプロポキシ、ベンズヒドリルオキシ、トリチルオキシなどであり得る。
一般式[II−1]及び[II−2]の定義で、適切な「アリール」、並びに「アル(低級)アルコキシ」、「アリールオキシ」、「アリールアミノ」、「アリールスルホニル」、「アロイル」及び「アル(低級)アルキル」という用語中のアリール又はアル部分は、フェニル、ナフチル、低級アルキルで置換されたフェニル[例えば、トリル、キシリル、メシチル、クメニル、ジ(tert−ブチル)フェニルなど]などであり得、その中で好ましいものは、フェニル又はトリルである。
適切な「アル(低級)アルキル」は、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、ベンズヒドリル、トリチルなどであり得、その中で一般式[II−1]及び[II−2]の定義で好ましいものはベンジルである。
【0033】
一般式[I]の定義で適切な「低級アルキレン」は、メチレン、エチレン、プロピレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンなどであり得る。
一般式[II−1]及び[II−2]の定義で、適切な「低級アルキレン」、並びに「低級アルキレンジオキシ」という用語中の低級アルキレン部分は、直鎖又は分岐鎖のC−Cアルキレン、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、エチルエチレンなどであり得、その中で好ましいものは、メチレン、エチレン又はトリメチレンである。
適切な「低級アルコキシ」、並びに「アル(低級)アルコキシ」及び「ハロ(低級)アルコキシ」という用語中の低級アルコキシ部分は、直鎖又は分岐鎖のC−Cアルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、メチルプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどであり得、その中で好ましいものはメトキシ又はtert−ブトキシである。
【0034】
一般式[I]の定義で適切な「複素環基」は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のような少なくとも1個のヘテロ原子を含む、飽和又は不飽和の、単環又は多環の基を含み得る。このように定義された「複素環基」の好ましい例は、1〜4個の窒素原子を含む、不飽和の、3〜8員、より好ましくは5又は6員の複素単環基、例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリジルN−オキシド、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、トリアゾリル、テトラジニル、テトラゾリルなど;
1〜5個の窒素原子を含む、不飽和の、縮合複素環基、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリルなど;
1〜2個の酸素原子及び1〜3個の窒素原子を含む、不飽和の、3〜8員の複素単環基、例えば、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリルなど;
1〜2個の酸素原子及び1〜3個の窒素原子を含む、飽和の、3〜8員の複素単環基、例えば、モルホリノ、シドノニルなど;
1〜2個の酸素原子及び1〜3個の窒素原子を含む、不飽和の、縮合複素環基、例えば、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリルなど;
1〜2個の硫黄原子及び1〜3個の窒素原子を含む、不飽和の、3〜8員の複素単環基、例えば、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリルなど;
1〜2個の硫黄原子を含む、不飽和の、3〜8員の複素単環基、例えば、チエニルなど;
1〜2個の硫黄原子及び1〜3個の窒素原子を含む、不飽和の、縮合複素環基、例えば、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリルなど;
1個の酸素原子を含む、不飽和の、3〜8員の複素単環基、例えば、フリルなど;
1〜2個の硫黄原子を含む、不飽和の、縮合複素環基、例えば、ベンゾチエニルなど;
1〜2個の酸素原子を含む、不飽和の、縮合複素環基、例えば、ベンゾフラニルなど;などであり得る。
【0035】
一般式[I]の定義で、上記「低級アルキル」、「アリール」、「アル(低級)アルコキシ」、「複素環基」、「シクロ(低級)アルキル」及び「アル(低級)アルキル」は、ハロゲン[例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素]で置換されていてもよい。
適切な「ハロゲン」、及び「ハロ(低級)アルキル」という用語のハロ部分は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素であり得、その中で好ましいものは、フッ素、塩素又はヨウ素である。
適切な「ハロ(低級)アルキル」は、1個以上のハロゲンで置換された低級アルキル、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタクロロエチルなどであり得、その中で好ましいものはトリフルオロメチルである。
適切な「ハロ(低級)アルコキシ」は、1個以上のハロゲンで置換された低級アルコキシ、例えば、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、ペンタクロロメトキシなどであり得、その中で好ましいものはトリフルオロメトキシである。
適切な「低級アルキルアミノ」は、モノ又はジ(低級)アルキルアミノ、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、イソブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ、N−メチルエチルアミノなどであり得、その中で好ましいものはジメチルアミノである。
適切な「低級アルキルシリル」は、モノ、ジ、又はトリ(低級)アルキルシリル、例えば、トリメチルシリル、ジメチルシリル、トリエチルシリルなどであり得、その中で好ましいものはトリメチルシリルである。
適切な「低級アルキレンジオキシ」は、メチレンジオキシ、エチレンジオキシなどであり得、その中で好ましいものはメチレンジオキシである。
【0036】
一般式[II−1]及び[II−2]の定義で適切な「複素環基」は、窒素、硫黄及び酸素原子から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むものであり得、飽和又は不飽和の、単環又は多環の複素環基を含み得、好ましい複素環基は、以下のようなN含有複素環基であり得る;
1〜4個の窒素原子を含む、不飽和の、3〜6員の複素単環基、例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル[例えば、4H−1,2,4−トリアゾリル、1H−1,2,3−トリアゾリル、2H−1,2,3−トリアゾリルなど]、テトラゾリル[例えば、1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリルなど]など;
1〜4個の窒素原子を含む、飽和の、3〜7員の複素単環基[例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ホモピペラジニルなど];
1〜5個の窒素原子を含む、不飽和の、縮合複素環基、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾピリジル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル[例えば、テトラゾロ[1,5−b]ピリダジニルなど]、キノキサリニルなど;
1個の酸素原子を含む、不飽和の、3〜6員の複素単環基、例えば、ピラニル、フリルなど;
1個の酸素原子を含む、飽和の、3〜6員の複素単環基、例えば、1H−テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニルなど;
1〜2個の硫黄原子を含む、不飽和の、3〜6員の複素単環基、例えば、チエニルなど;
1〜2個の酸素原子及び1〜3個の窒素原子を含む、不飽和の、3〜6員の複素単環基、例えば、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル[例えば、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリルなど]、オキサゾリニル[例えば、2−オキサゾリニルなど] など;
1〜2個の酸素原子及び1〜3個の窒素原子を含む、飽和の、3〜6員の複素単環基[例えば、モルホリニルなど];
1〜2個の酸素原子及び1〜3個の窒素原子を含む、不飽和の、縮合複素環基[例えば、ベンゾフラザニル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリルなど];
1〜2個の硫黄原子及び1〜3個の窒素原子を含む、不飽和の、3〜6員の複素単環基、例えば、チアゾリル、チアジアゾリル[例えば、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリルなど]など;
1〜2個の硫黄原子及び1〜3個の窒素原子を含む、飽和の、3〜6員の複素単環基[例えば、チアゾリジニルなど];
1〜2個の硫黄原子及び1〜3個の窒素原子を含む、不飽和の、縮合複素環基[例えば、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリルなど];
1〜2個の酸素原子を含む、不飽和の、縮合複素環基[例えば、ベンゾフラニル、ベンゾジオキソリル、クロマニルなど]など。
該「複素環基」は、上記例示のように、低級アルキルで置換されていてもよく、その中で好ましいものは、チエニル、ピリジル、メチルピリジル、キノリル、インドリル、キノキサリニル、ベンゾフラニル又はテトラメチルクロマニルであり、より好ましいものはピリジルである。
【0037】
適切な「アシル」は、カルボキシ;エステル化カルボキシ;低級アルキル、アリール、アル(低級)アルキル、アリールスルホニル、低級アルキルスルホニル又は複素環基で置換されたカルバモイル;置換又は非置換のアリールスルホニル;低級アルキルスルホニル;シクロ(低級)アルキルカルボニル;低級アルカノイル;置換又は非置換のアロイル;複素環カルボニルなどであり得る。
エステル化カルボキシは、置換又は非置換の低級アルコキシカルボニル[例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、2−ヨードエトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルなど]、置換又は非置換のアリールオキシカルボニル[例えば、フェノキシカルボニル、4−ニトロフェノキシカルボニル、2−ナフチルオキシカルボニルなど]、置換又は非置換のアル(低級)アルコキシカルボニル[例えば、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニルなど]などであり得、その中で好ましいものは、非置換の低級アルコキシカルボニルであり、より好ましいものは、メトキシカルボニル又はtert−ブトキシカルボニルである。
【0038】
低級アルキルで置換されたカルバモイルは、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、プロピルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、N−メチル−N−エチルカルバモイルなどであり得る。
アリールで置換されたカルバモイルは、フェニルカルバモイル、ナフチルカルバモイル、低級アルキル−置換フェニルカルバモイル[例えば、トリルカルバモイル、キシリルカルバモイルなど]などであり得る。
アル(低級)アルキルで置換されたカルバモイルは、ベンジルカルバモイル、フェネチルカルバモイル、フェニルプロピルカルバモイルなどであり得、その中で好ましいものはベンジルカルバモイルである。
アリールスルホニルで置換されたカルバモイルは、フェニルスルホニルカルバモイル、トリルスルホニルカルバモイルなどであり得る。
低級アルキルスルホニルで置換されたカルバモイルは、メチルスルホニルカルバモイル、エチルスルホニルカルバモイルなどであり得る。
複素環基で置換されたカルバモイルは、一般式[II−1]及び[II−2]の定義に関して上述した複素環基で置換されたものであり得る。
【0039】
低級アルカノイルは、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイルなどであり得、その中で好ましいものは、アセチル又はピバロイルである。
置換又は非置換のアロイルは、ベンゾイル、ナフトイル、トルオイル、ジ(tert−ブチル)ベンゾイル、ハロ(低級)アルコキシベンゾイル[例えば、トリフルオロメトキシベンゾイルなど]などであり得、その中で好ましいものは、ベンゾイル又はトリフルオロメトキシベンゾイルである。
置換又は非置換のアリールスルホニルは、フェニルスルホニル、トリルスルホニル、ハロフェニルスルホニル[例えば、フルオロフェニルスルホニルなど]などであり得、その中で好ましいものはフルオロフェニルスルホニルである。
低級アルキルスルホニルは、メチルスルホニル、エチルスルホニルなどであり得、その中で好ましいものはメチルスルホニルである。
【0040】
シクロ(低級)アルキルカルボニルは、シクロ(C−C)アルキルカルボニル、例えば、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル又はシクロヘキシルカルボニルであり得、その中で好ましいものは、シクロプロピルカルボニルである。
用語「複素環カルボニル」中の複素環部分は、一般式[II−1]及び[II−2]の定義に関し複素環基として上述されたものであり得る。
【0041】
適切な「N保護基」は、置換又は非置換の低級アルカノイル[例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、トリフルオロアセチルなど]、低級アルコキシカルボニル[例えば、tert−ブトキシカルボニル、tert−アミルオキシカルボニルなど]、置換又は非置換のアラルキルカルボニル[例えば、ベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニルなど]、9−フルオレニルメトキシカルボニル、置換又は非置換のアレーンスルホニル[例えば、ベンゼンスルホニル、トシルなど]、ニトロフェニルスルフェニル、アラルキル[例えば、トリチル、ベンジルなど]などの通常のN保護基であり得、その中で好ましいものは低級アルコキシカルボニルであり、より好ましいものはtert−ブトキシカルボニルである。
【0042】
適切な「環状炭化水素」は、飽和又は不飽和の環状炭化水素、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレン、インダン、インデンなどであり得る。
適切な「置換された低級アルキル」は、ハロゲン、アリール、アシル、低級アルコキシ、アリールオキシなどで置換された低級アルキルであり得、その中で好ましいものはベンジルである。
適切な「複素環」は、水素を加えた、一般式[II−1]及び[II−2]の定義に関し上述された複素環基であるものであり得る。
環状炭化水素と縮合した適切な低級アルキレンは、ベンゼンなどと縮合した低級アルキレンであり得、その中で好ましいものは、ベンゼンと縮合したエチレンである。
複素環と縮合した適切な低級アルキレンは、ピリジンなどと縮合した低級アルキレンであり得、その中で好ましいものは、ピリジンと縮合したエチレンである。
【0043】
として好ましい「アシル」は、低級アルカノイル;低級アルコキシカルボニル;ハロ(低級)アルコキシで置換されていてもよいアロイル;ハロゲンで置換されていてもよいアリールスルホニル;低級アルキルスルホニル;又はシクロ(低級)アルキルカルボニルであり得、その中でより好ましいものは、アセチル、ピバロイル、メトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ベンゾイル、トリフルオロメトキシベンゾイル、フルオロフェニルスルホニル、メチルスルホニル又はシクロプロピルカルボニルである。
【0044】
としての低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルアミノ、低級アルケニル、低級アルケニルオキシ、低級アルケニルアミノ、低級アルキニル、低級アルキニルオキシ、低級アルキニルアミノ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、シクロ(低級)アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、複素環基又は複素環基で置換されたアミノの置換基として好ましい「適切な置換基」は、ハロ(低級)アルキル、ハロ(低級)アルコキシ、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルキルアミノ、アシルアミノ、アシル、低級アルキルシリル、低級アルコキシ、アリール、低級アルキレンジオキシ、アシルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロゲン、アリールオキシ、低級アルキルチオなどであり得る。
【0045】
として好ましい「適切な置換基で置換されていてもよいアリール」は、ハロゲンで置換されていてもよいアリールであり得、その中でより好ましいものは、フルオロフェニルである。
として好ましい「適切な置換基で置換されていてもよいアリールアミノ」は、ハロゲンで置換されていてもよいアリールアミノであり得、その中で好ましいものは、フェニルアミノ又はフルオロフェニルアミノである。
として好ましい「適切な置換基で置換されていてもよいアリールオキシ」は、ハロゲンで置換されていてもよいアリールオキシであり得、その中で好ましいものは、フルオロフェノキシである。
【0046】
Jとして好ましい「低級アルキレン」は、メチレンであり得る。
JのRとして好ましい「低級アルキル」はメチルであり得る。
JのRとして好ましい「N保護基」はtert−ブトキシカルボニルであり得る。
Eとしての低級アルキレンの置換基として好ましい「適切な置換基」は、オキソ、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル又はアシルであり得、その中でより好ましいものは、オキソ、ジオキソ、メチル、ジメチル、ヒドロキシメチル、又はベンジルカルバモイルである。
Eとして好ましい「低級アルキレン」は、メチレン、エチレン又はトリメチレンであり得、より好ましいものはエチレンである。
及びRとして好ましい「低級アルキル」はメチルであり得る。
好ましい「R及びRが一緒になって形成する低級アルキレン」は、エチレン又はトリメチレンであり得る。
好ましい「低級アルキレンが縮合する環状炭化水素」はベンゼンであり得る。
【0047】
別のより好ましい化合物[II−2]は、Rとして、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アロイル、ハロ(低級)アルコキシで置換されたアロイル、低級アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロゲンで置換されたアリールスルホニル、又はシクロ(低級)アルキルカルボニル、Rとしてアリール又はアリールアミノ(その各々のアリールは、ハロゲンで置換されていてもよい)、XとしてN、Jとして単結合、及びQとして−CO−を有するものである。
【0048】
別の最も好ましい化合物[II−2]は、
1−アセチル−4−(4−フルオロフェニルカルバモイル)ピペラジン、
1−tert−ブトキシカルボニル−4−(4−フルオロフェニルカルバモイル)ピペラジン、
1−(4−フルオロフェニルカルバモイル)−4−(4−トリフルオロメトキシベンゾイル)ピペラジン、及び
1−メトキシカルボニル−4−(4−フルオロフェニルカルバモイル)ピペラジン
からなる群から選択されるものである。
【0049】
一般式[I]、[II−1]及び[II−2]の化合物の適切な医薬上許容される塩は、通常の非毒性塩であり、酸付加塩、例えば、無機酸付加塩[例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など]、有機酸付加塩[例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩など]、アミノ酸との塩[例えば、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など]、アルカリ金属塩[例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など]及びアルカリ土類金属塩[例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など]のような金属塩などを含む。
【0050】
式[I]の化合物及びその塩は、EP公報第436734号に開示された方法により製造できる。
化合物[II−2]を含む式[II−1]の化合物及びその塩は、国際公開第WO 00/42011号に開示された方法により製造できる。
化合物[I]、[II−1]及び[II−2]は、不斉炭素原子及び二重結合による光学異性体又は幾何異性体のような1つ以上の立体異性体を含み得、このような異性体の全て及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に包含されることに注意すべきである。
更に、化合物[I]、[II−1]及び[II−2]並びにそれらの医薬上許容される塩の任意の溶媒和物[例えば、包接化合物(例えば、水和物など)]もまた本発明に包含されることに注意すべきである。
【0051】
本発明のスクリーニング方法に付すべき試験化合物は、何の特定の制限も無く、天然産物、化学合成化合物、遺伝子工学によって得られた核酸、ペプチド、抗体など、及びそれらのライブラリーから選択され得る。試験化合物は好ましくは純物質であるが、混合物又はラセミ化合物であってもよい。試験化合物はまた、放射性同位元素で標識するように修飾されてもよく、又はライブラリーの構築の間になされた修飾を含んでもよい。得られた試験化合物を化学合成方法などによって最適化することができる。
【0052】
本発明のスクリーニング方法を用いて試験化合物を選択することによって、興奮性シナプス伝達を調節する薬剤、特に、抗痴呆剤、抗健忘症剤などをスクリーンすることができる。
本発明のスクリーニング方法によって選択される試験化合物、及びこの化合物を最適化することによって得られる化合物は全て、本発明の範囲内に包含される。
【0053】
α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する本発明の化合物は、直腸投与、肺(経鼻又はバックル吸入)、点鼻、点眼、外用(局所)、経口又は非経口(皮下、静脈内又は筋肉内)投与など、脳、脊髄液、脳室などの疾患領域への直接投与、又は吸入に適した、有機又は無機の担体又は賦形剤と共に、固体、半固体又は液体製剤の投与形態で使用することができる。
【0054】
α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物は、錠剤、ペレット、トローチ、カプセル、坐薬、クリーム、軟膏、エアロゾル、吸入粉末薬、液体、エマルション、懸濁液などの、使用に適した投与形態のために通常使用される、医薬上許容され、実質的に非毒性の担体又は賦形剤と混合することができる。必要な場合、補助剤、安定剤、粘着付与剤、着色剤、及び着香剤を使用することができる。
【0055】
本発明の興奮性シナプス伝達を調節する薬剤、特に、抗痴呆剤及び抗健忘症剤は、関係分野で通常使用される方法で製造することができる。必要な場合、この技術分野で常套的に使用される方法を用いて、改善された生物学的利用性のためにこれらの薬剤を製造することができる。
【0056】
本発明の興奮性シナプス伝達を調節する薬剤、特に、抗痴呆剤及び抗健忘症剤は、好ましくは、ヒト又は動物に適用するとき、静脈内(点滴への添加を含む)、筋肉内、又は経口で投与される。
本発明の興奮性シナプス伝達を調節する薬剤、特に、抗痴呆剤及び抗健忘症剤は、疾患の進行及び症状に対し所望の予防及び/又は治療効果を提供するのに十分な量が製剤中に含まれる。
【0057】
α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物の量及び投与経路は、化合物の種類、予防及び/又は治療の対象である患者の年齢及び症状により変化させる。化合物1を使用するとき、例えば、上記疾患の治療及び/又は予防のために、経口投与で1日の投与量は0.01−10mg/kg体重であり、それは1日1回から数回投与される。
【0058】
ラット海馬スライスのCA1ニューロンにおけるグルタミン酸作動性伝達に対する上記化合物FK960の効果に関する研究により、本発明者によってなされた発明を詳細に記載する。FK960は、in vivoでラットにおけるスコポラミンによって誘発される記憶障害を改善させ(Yamazakiら,1996)、in vitroではモルモット海馬における長期増強の発現を増大させる(Matsuoka & Satoh, 1998)ことが以前に示されている。また最近では、FK960は、ラット海馬の増強されていない場電位(population spike)の大きさを増大させることも示されている(Matsuyamaら, 2000)。これらの研究によって、FK960の作用に対するソマトスタチン作動性システム、コリン作動性システム及びセロトニン作動性システムの関与が示されたが、FK960がシナプス前部あるいはシナプス後部に作用するのか、又はその作用にグルタミン酸又はGABAのような他の伝達システムが関与するのか否かについては明らかでない。記憶におけるグルタミン酸作動性伝達の役割は、CX516(1−(キノキサリン−6−イルカルボニル)ピペリジン、BDP−12、Cortex Pharmaceuticalsとしても挙げられた)を始めとするAMPAカイン類(AMPAkines)及び関連化合物を用いた研究によって進められており、これらの化合物が記憶を増強させること(Grangerら,1996;Lynchら,1996)、長期増強の程度及び持続時間を増大させること(Staubliら,1994)、及びAMPAレセプターの脱感作及び/又は不活化の状態を変化させることによって海馬中のEPSPの大きさおよび持続時間を増大させること(Araiら,1996a,b;Sirvioら, 1996, Arai & Lynch, 1998)などがこれまでに知られている。本発明者らの研究により、FK960が海馬中のCA1ニューロンでAMPA作動性シナプスでの伝達物質の放出を増大させることが示されていることから、FK960が神経終末で作用して伝達物質の放出を増大させるという可能性がある。ニコチンが同様の作用を有することを示した最近の研究があることから、FK960の作用におけるメチルリカコニチン(methyllycaconitine)又はα−ブンガロトキシンによるα7−サブタイプのニコチンレセプターの拮抗作用も、このAChレセプターサブタイプの関与(もしあれば)を検討した。
今、以下の実施例及び添付図面に言及することによって、本発明を更に説明する。
【0059】
【実施例】
方法
雄性ラット(Sprague Dawley (SD),Charles Rivers社, 50−100g)を断頭し、脳を取り出し、4℃で十分に酸素を供給した、以下の組成:NaCl, 126mM; KCI, 2.75mM; NaHCO, 26mM; NaHPO, 1.25mM; D−グルコース, 10mM; MgS0, 1.8mM; CaCl, 2.5mMを有する人工脳脊髄液(aCSF)中に置いた。次いで、その脳をトリミング台の腹側を底面に向けて置き、4つに切断して海馬を単離した。シアノアクリル接着剤を数滴用い、得られた組織のブロックを組織切片作製装置(Vibroslice, Campden Instruments)の台に付け、450μmの厚さの横断スライスを切断した。そのスライスを、室温で十分に酸素を供給したaCSF中に置き、少なくとも1時間以上放置させた。α−ブンガロトキシンを用いた実験においては、保持チャンバーのaCSFにも500nM α−ブンガロトキシンを添加した。切片を作製した1〜7時間後、室温下で記録チャンバーにスライスを移した。流量は2.5−3.0ml/分であり、実験の間中ずっとモニターした;流量が2.5ml/分未満に低下した細胞から得たデータは除外した。aCSFには、95%O、5%COの混合ガスを供給した。かみそりを用いて切断することによりCA1野からCA3野を単離した。スライスがチャンバー内で動かないように、白金製のおもりによって固定した。放射状層に刺入したステンレススチールワイヤ刺激電極を用いて、EPSPを誘発した。
【0060】
Narishige P83垂直引抜装置で作製したパッチ電極を、以下の溶液;グルコン酸K, 120; KCl, 10; NaCl, 5; EGTA, 10;HEPES, 10; MgCl, 2; CaCl, 1; NaATP, 2; NaGTP, 1; KOHでpH7.3にしたもので満たした。EPSCでFK960をFR212436(藤沢薬品工業〔株〕;CX516(1−(キノキサリン−6−イルカルボニル)ピペリジン,Cortex Pharmaceuticalsとしても知られる)と比較した実験において、ニューロン発火を防止するために、4mM QX314(Tocris, UK)をピペット内に充填した。FK960はaCSFに溶解し、10mM(2.833mg/ml)のストック溶液を得た。このストック溶液を希釈し、必要な最終濃度溶液を調製した。FK960のストック溶液はそれぞれの実験日に新しく作製した。FR212436はDMSOに溶解し、1Mのストック溶液を得、それをaCSFに希釈して最終バス濃度溶液を調製した。メチルリカコニチン(Tocris)は50%エタノールに溶解し、α−ブンガロトキシン(Sigma 及びCalbiochem)は蒸留水に溶解し、100μMのストック溶液を得、それを希釈して最終バス濃度溶液を調製した。
【0061】
過分極電流パルスに対する電圧応答落ち込みを特徴とするCA1錘体ニューロンから、細胞内記録を行った。−54mVより大きな静止膜電位及び70mVより大きい活動電位を基準として、ニューロンを選択した。次いで、バス溶液を対照aCSF(ピクロトキシン(100μM)、ビククリン(10μM)及びD−AP5(50μM)を含む)に変えた。GABAレセプター及びNMDAレセプターを十分にブロックするために、調製液を15分間対照aCSFに暴露した。過分極電流パルス(強度0.05nA、持続時間400ms)を注入することによって、ニューロンの入力抵抗を開始時及び実験中ずっと測定した。EPSPに対するFK960の作用の検討においては、EPSPを誘発する「最小」の刺激強度を調整した。これにより、1)1つだけ又は少数の軸索が興奮し、及び2)刺激によって誘発されたEPSPは、対照及び試験条件下、活動電位放電のための閾下であることが確保された。神経を刺激する周波数は0.25Hzであった。EPSPが誘発され、5分後に、バス溶液を以下のもの;対照aCSF;対照aCSF中のメチルリカコニチン(10又は100nM)、又は対照aCSF中のα−ブンガロトキシン(300nM)のいずれかに15分間変えた。次いで、前処理薬剤の存在下で、調製液を、aCSF(どちらかのFK960が(濃度100nMで)加えられた)、又は前処理薬剤のみを含む対照aCSFのいずれかに暴露した。データは、少なくとも更に24分間以上集めた。
【0062】
僅かな圧力をかけるか、又は電流注入による下落を相殺することのいずれかによって防ぐことができるEの小さな下落によって、膜パッチのシールを確認した。FK960への適用に伴いt=−1分40秒と+21分40秒との間で、Eが3.0mVより大きく変化した場合には、その細胞のデータを採用しなかった。
【0063】
パッチと電圧クランプ、又はSignalソフトウエア(CED、Cambridge)のいずれかを用いて、EPSPの大きさを測定した。2個のカーソルをそれぞれの記録上に置いた;1つのカーソルは刺激人工物の前にベースライン上に置き、2つ目はEPSPのピーク上に置いた。EPSPの上昇相の傾きは、ピークの大きさの10%及び50%にカーソルを置き、Signal(CED,Cambridge)プログラムを用いてこれらの2点間の傾きを測定することにより測定した。別の一連の実験においては、CA1ニューロンを連続モードで−70mVで電圧クランプし(Axoclamp 2A、Axon Insruments)、EPSCを誘発した;定期的に5又は10mVの過分極電圧パルスをかけることによって、一連の抵抗をチェックした。EPSC消失の時定数は、単一の指数関数に基づいて解析した(パッチ及び電圧クランプソフトウエア6.0版、Cambridge Electronic Design, Cambridge UK)。AMPAレセプターおよびNMDAレセプターを、それぞれ15μM CNQX(6−シアノ−7−ニトロキノキサリン−2,3−ジオン,Tocris, UK)及び50μM D−AP5(D(−)−2−アミノ−5−ホスホノペンタン酸,Tocris, UK)でブロックした後、0.1Hzの頻度で誘発されたGABA作動性IPSCも検討した。
【0064】
シナプス前機能の基準である素量数(quantal content)(mcv)を、「分散」法(del Castillo & Katz, 1954;Martin, 1977)によって決定したが、それは試行と試行の間のEPSPの大きさの変動は素量放出機構の確率的組織化を反映しているという考えに基づく。素量数(mcv)は、対照aCSF又はFK960のいずれかの処理前に記録した100のEPSPから、及びFK960又は対照aCSFのいずれかへ21分間暴露した後に測定した同数のEPSPから測定した。ノイズの大きさ及び分散を測定するために、2つのカーソルを刺激人工物の前にベースライン上に置き、第3のカーソルをEPSPのピークに置き、カーソルは互いにほぼ等距離であったことを除き、EPSPの大きさは、上記のように詳細に測定した。一連のEPSPの平均(E)及び標準偏差(σ)を決定した。我々の実験条件下で、Schaffer側枝(collateral−commissural axons)とCA1ニューロンとの間のシナプスでの放出は、ポアソンの法則に従うものと仮定した。次いでノイズの分散(σ = σ −σ )(ここで、σ はEPSPの分散であり、σ はノイズの分散である)を補正した後、(Martin 1977):
cv=1/CV    (1)
ここで、CV=σ/E=σ/E   (2)
この計算は素量サイズの変動の補正を含まず、従って、上で計算したCVは、素量分布のCVより多少大きくなることが考えられる。
平均が6mV未満であるEPSPの非線形合計に関しては補正を行わなかった。
【0065】
伝達物質の素量のシナプス後効果の基準である素量サイズは、素量数に対するEPSPの大きさの比から決定した。自発的EPSPの周波数を決定するために、各刺激後1秒は解析から省き、各刺激前の3秒間の事象のみを解析に含めた。
【0066】
マイクロソフトエクセルのRAND機能を用いて発生させたシーケンスを用い、実験を擬似乱数的に行った。サンプリング時間の間、1より多いEPSPが閾上であるならば、細胞を採用しなかった。Sigmastat解析ソフトウエア(v2.0,Jandel)を用い、データの統計的解析を行った。FK960への暴露前(t=−1分40秒、以後簡単に−1分)及び前処理溶液中のFK960又はFK960を加えていない前処理溶液のいずれかへの暴露後(t=+21分40秒、簡単に21分)にEPSPの大きさ及び傾きを測定した。21分40秒という時間は、100nM FK960への20分暴露した後50の連続したEPSPを測定するサンプリング時間の中間点を表す。
【0067】
結果
CA1ニューロンからの細胞内記録は通常1時間以上安定していた。細胞膜を破壊してホールセル(whole−cell)モードに入り、安定した記録が得られることを確認した後、NMDAレセプター及びGABAレセプターをブロックするために、バス溶液を50μM D−AP5、100μMピクロトキシン及び10μMビククリンを含むもの(aCSF)に交換した。対照aCSFへの暴露15分後に得られた1つのCA1ニューロンからの記録を図1に示す。放射状層の刺激によって、EPSPの大きさが変動した。この実験では、その範囲は0.2mV〜5.8mVであった(図1C)。対照aCSF中での50の連続したEPSPの平均記録を図1Aに示す。ピークの大きさの10%〜50%で測定した上昇相の傾きは326.7mV/秒であった。この実験では、GABAレセプターはブロックしなかったため、EPSPの後、遅くて達しないGABA抑制性シナプス後電位(IPSP)が続いた。次いで、バス溶液を100nM FK960を含むものに交換し、次の30分間の経過中にEPSPの大きさがゆるやかに増加した(図1B)。FK960適用中の21分後に記録された50の連続したEPSPの平均記録は、図1Aにおいて対照の記録と重ねて示してある。EPSPの上昇相の傾きは742.8mV/秒に増加し、それに付随して平均EPSPの大きさが2.6mV(n=50)から5.5mVに対応して増加し、大きさヒストグラムの右方シフトに反映した(図1C、D)。素量数(1/CV)はまた実験経過中に増加し(図1B)、FK960への暴露前に測定した225のEPSP及びFK960への20分暴露後に測定した287全てのEPSPからの測定により、FK960の添加によりEPSPは6.4から13.4に上昇した。
【0068】
(a)FK960の用量反応関係
FK960の使用濃度は、0、50、100及び200nMの濃度のFK960の興奮性シナプス後電位(EPSP)の傾きに対する効果を検討した一連の予備実験の結果に基づいて決定した。傾きの最大増加は、100nM FK960で観察され(EPSPの傾きが55%±13(SEM,n=5)増加した)(図2)、これは対照aCSFで観察された11.0±10%の増加よりも有意に大きく(P=0.04、1要因分散分析)、他の群はどれも対照と有意差がなかった。Matsuoka及びSatoh(1998)は、100nM FK960がモルモット海馬で長期増強の発現を有意に増加させることを見出している。従って、本明細書で報告した実験では、100nM FK960を使用した(初期の実験の幾つかでは、94nMを使用した)。
【0069】
(b)膜電位及び入力抵抗に対するFK960の効果
CA1ニューロンの膜特性に対するFK960(94nM及び100nM)の効果を試験し、静止膜電位(対照aCSFで−60.3mV±0.9(n=11)及びFK960で−59.4mV±0.7(P=0.13、繰り返しのあるt−検定)であった)、又は入力抵抗(対照aCSFで175.3MΩ±23.8(n=11)及びFK960で164.2MΩ±221.7(P=0.09、繰り返しのあるt−検定))のいずれにも有意な差はなかった。平均暴露時間は30±2分であった。
【0070】
(c)EPSPに対するFK960の効果
海馬スライスを対照aCSFのみに暴露した実験では、EPSPの平均の大きさは1.9mV±0.2(n=10)で安定していた(図3A)。一方、FK960適用ではEPSPの平均の大きさが2.3mV±0.2(n=9)から3.8mV±0.4へと65%の増加が見られた(図3B)。FK960に暴露されたニューロンにおけるEPSPの大きさの増加は、対照aCSFに暴露されたものよりも有意に大きかった(P=0.004、1要因分散分析)。100nM FK960で、EPSPの傾きの平均は、21分後、357.8mV/秒±74.0(n=9)から540.5mV/秒±99.8%へと51%増加した(図1、3D)。対照aCSFでは、EPSPの傾きは、227.8mV/秒 ±31.4 (n=10)から 209.1mV/秒± 28.2へと8%減少した(図3C)。FK960で認められた傾きの増加は、対照で見られた増加よりも有意に大きかった(P=0.001、1要因分散分析)。
【0071】
素量数(1/CV)は、対照aCSF又は100nM FK960のいずれかを暴露する前に記録された100のEPSPの大きさの平均及び分散から計算した。1/CVはまた、対照aCSF又はFK960のいずれかを21分間暴露した後に記録された100のEPSPの大きさから同じニューロンを用いて測定した。対照aCSFへ戻した時、10のCA1ニューロンでは、1/CVの平均値は6.2(範囲3.2−9.0、図3E)から5.8(範囲2.3−9.2、図3E)へと6.5%減少した。しかし、100nM FK960に暴露されたニューロンでは、1/CVは6.4(範囲2.8−9.6、図3F)から9.8(範囲5.4−16.3、図3F)へと53%増加した。対照aCSF又はFK960のいずれかへ切り換えた後、1/CVの変化は、EPSPの大きさの変化に対応していた(図1B、3)。対照aCSFでは、平均素量サイズは0.33mV±0.05(n=8)であり、21分後には0.37mV±0.05であった。更なる7つのニューロンでは、平均素量サイズは0.39mV±0.10であり、100nM FK960へ21分暴露した後は0.42mV±0.10であった。素量サイズにおけるこれらの変化は有意ではなかった(P>0.8、t−検定)。
【0072】
4つのニューロンで、スパイク依存性及びスパイク非依存性応答を含む自発EPSPの頻度は、100nM FK960への切り換え前10分間には0.65自発EPSP/秒、K960への暴露後20−30分間では0.54自発EPSP/秒であった。この頻度の低下は有意ではなかった(P=0.25、繰り返しのあるt−検定)。
【0073】
(d)GABA作動性IPSCに対するFK960の効果
GABA遊離の抑制がEPSPに対するFK960の作用に関与する可能性を排除するために、抑制性シナプス後電流(IPSC)に対するFK960の効果を検討した。放射状層を電気刺激することによって、AMPAレセプター及びNMDAレセプターをそれぞれ15□M CNQX及び50□M D−AP5で抑制した後、−70mV又は−75mVのいずれかでクランプした電圧で、IPSCをニューロン中で誘発した。時にはより小さいGABA成分も存在していたが、IPSCは主にGABA成分からなっていた(図4)。図4で示した実験で、IPSCの大きさは対照aCSFでは39pAであり(図4A)、FK960処理21分後の大きさが38pAであり、変わらなかった(図4B、C)。3つの実験におけるIPSCの平均の大きさは、対照aCSFでは48pA±10であり、FK960では46pA±4であって(図4D)、有意差はなかった(P=0.9、繰り返しのあるt−検定)。
【0074】
(e)興奮性シナプス後電流(EPSC)に対するFK960の効果
FK960の暴露後のEPSCの大きさの増加は、消失定数(τEPSC)に有意な変化を伴わなかった(図5C)。4つの実験において(スパイキングを防止するために4mM QX314をピペット溶液内に添加した)、100nM FK960の20−22分暴露により、98.3pA ±14.5から158.3pA±15(P=0.047、 繰り返しのあるt−検定)へとEPSCの大きさが増加した。τEPSCは22.2ms±3.1 から28.4ms±6.1へ増加したが、有意ではなかった(P=0.23、 繰り返しのあるt−検定)。
スライスを5−10分間2mM FR212436に暴露した実験では、EPSCの大きさは73.3pA±8.9(n=3)から239.7±49.7へ増加し、τEPSCは21.5ms±3.7から46.7ms±5.4へ有意に増加した(P=0.046、繰り返しのあるt−検定)(図5B)。200μM FR212436に20分間暴露したとき、EPSCの大きさは84pA±36.6(n=3)から181.3pA±46.8へ増加し、τEPSCは15.0ms±2.2から22.4ms±5.0へ増加したが、どちらの変化も統計的有意差はなかった(P>0.2、繰り返しのあるt−検定)(図5A)。
【0075】
(f)EPSPの大きさの変化の時間経過
FK960の暴露後、EPSPの大きさは時間と共に増加し、この増加は21分を超える時間維持された(図1、6)。その時間全てのニューロンで細胞内記録を維持させることは難しかったため、長時間のデータが記録できたニューロンは限られていた。
FK960で27分後にEPSPの大きさが2.2mV±0.3(n=7) から3.6mV±0.5へと64%増加した。この時に、EPSPの平均の大きさは、対照aCSF群では2.0mV±0.3(SEM,n=7)から1.9mV±0.3へと5%低下した。EPSPの大きさの変化は、対照aCSF群よりもFK960群で有意に大きかった(P=0.03、t−検定)。
【0076】
(g)α7ニコチン性AChレセプターアンタゴニストの存在下でのEPSPの大きさに対するFK960の効果
α7nAChレセプターアンタゴニストであるメチルリカコニチン(濃度10nM及び100nM)及びα−ブンガロトキシン(濃度300nM)のFK960によるEPSP増強に対する作用を検討した。α−ブンガロトキシン(100nM)は中枢ニューロンに対するニコチンの作用を抑制することが知られている(McGeheeら, 1995; Grayら, 1996)。本明細書で報告する実験では、300nM α−ブンガロトキシンを用い、15分の前処理時間中に抑制されることを確かめた。
濃度100nMのα7nAChレセプターアンタゴニストであるメチルリカコニチン(MLA)は、EPSPに対するFK960の作用を完全にブロックしたばかりでなく、それ自身EPSPに対して作用を示さなかった(図7、9A)。4つのCA1ニューロンで、EPSPの平均の大きさは、MLA aCSFで21分後に2.9mV±0.4で変わらなかった(図7A、9A)。別の5つのCA1ニューロンでは、EPSPの平均の大きさは、MLA中100nM FK960へ21分間暴露した後2.6mV±0.3で不変であった(図7A、9A)。これらの値のいずれも有意差はなかった。EPSPの全体の傾き及び1/CV値も、同様に変わらなかった(図7)。
【0077】
10nM MLAの適用により、EPSPの大きさは、MLA aCSFで21分後、2.2mV±0.2(n=3)から5%低下したが、FK960存在下では平均3.1mV±0.4(n=3)から10%上昇した。
【0078】
EPSPの平均の大きさは、α−ブンガロトキシン aCSFで21分後、1.9mV±0.3(n=5)から1.6mV±0.3へと低下した(図8A、9B)。別の5つのCA1ニューロンでは、EPSPの平均の大きさは、α−ブンガロトキシン aCSFで1.8mV±0.2からFK960で2.0mV±0.3へと11%増加した(図8B、9B)。2群の実験において、EPSPの平均の大きさのこれらの変化に有意差はなかった(P>0.05、1要因分散分析)。α−ブンガロトキシン aCSF又はFK960のいずれかに暴露された個々のニューロンで見られる大きさの変化は、EPSPの傾き及び1/CVの対応する変化に相関していた(図8)。FK960のバスへの添加により認められる大きさの増加は(図1、6)、海馬スライスがMLAで前処理されたときと比べて明らかに減少した(図9A)。スライスをα−ブンガロトキシンで前処理した時には減少は僅かに目立たなくなったが(図9B)、FK960は、α−ブンガロトキシンの存在下ではEPSPに対して有意な作用を有しなかった(P>0.05、1要因分散分析)。α−ブンガロトキシンの作用の更なる特徴は、それ自身が、バスに導入した後40分を超える時間でEPSPの大きさの減少を引き起こすことであった(図9B)。
【0079】
プールしたEPSPの大きさのデータの統計的解析によって、対照aCSF前処理群では、FK960へ21分間暴露したニューロンから得られたデータと、同じ時間対照ACSFに暴露したものとの間には有意差があることが示された(P=0.001、1要因分散分析)。
【0080】
本発明者らは、FK960へ暴露した後に海馬CA1ニューロンで見られるEPSPの大きさ及び傾きの増加が、伝達物質の放出が増加することによって説明できることを証明した。FK960は、CA1ニューロンの膜特性又はEPSCの消失のいずれにも有意な効果を有しなかった。EPSCの消失定数(τEPSC)に対するFK960の作用を検討し、その作用を記憶増進薬FR212436(CX516)と比較した(Arai ら,1996a, b; Arai & Lynch, 1998)。Araiらは、ミリモル濃度のFR212436がτEPSCを増加させることを確認したが、τEPSCに対して100nM FK960で同様の効果を証明することはできなかった。親和性並びに脱感作及び不活化の速度論のようなレセプター特性は、速い興奮性AMPA作動性シナプスでのシナプス電流の大きさ及び時間経過を制御する重要な因子である(Edmondsら, 1995; Jones及びWestbrook, 1996)。ベンゾイルピロリジン系AMPAカイン(AMPAkine)であるCX516及びBDP−20(Araiら, 1996a, b; Arai & Lynch, 1998)、及びアニラセタム(Tang ら, 1991; Isaacson & Nicoll, 1991)は、レセプターの脱感作を抑制することによって、及び/又は不活化を遅延させることによって(Arai & Lynch, 1998)、興奮性シナプス後電流(EPSC)及び電場電位(fEPSP)の大きさ及び持続時間を増大させる。興味深いことに、チオシアネートは、脱感作状態への変換を増強し、それによって切り出したパッチにおけるAMPAレセプター電流を減少させることによって、AMPA結合親和性を増加させることにより、脱感作を促進させる(Arai ら, 1995)。しかし、脱感作を劇的に減少させるシクロチアジドのような化合物(Vyklicky, ら, 1991 ; Yamada & Tang, 1993)は、ある状況下では、このメカニズムのみによってはシナプス電流にほとんど効果を及ぼさないようである(Arai & Lynch, 1998)。シクロチアジドはまた、シナプス前で作用してグルタミン酸放出を増加させる(Vyklicky, ら, 1991; Bellingham & Walmsley, 1999)。本研究におけるFK960はτEPSCに何の効果も及ぼさないという知見、及び間接的に測定した素量サイズは有意には変化しなかったという知見は、FK960がCA1ニューロンに対するシナプス後部側AMPA作動性グルタミン酸レセプターの特性には作用を持たないことを示唆する。これらの知見から、FK960はシナプス後部側に対して有意な作用を持たないことが明らかとなった。
【0081】
GABA遊離の抑制によるグルタミン酸作動性神経終末の脱抑制に対する阻害作用によりFK960がその作用を発揮するかもしれないという可能性は否定できない。しかしながら、FK960がIPSCの大きさを(また、消失定数(τIPSC)も明らかには)有意には変えなかった(図4参照)ことから、この可能性は極めて低いものと考えられる。
【0082】
分散法(del Castillo & Katz, 1954; Martin, 1977)を用いるEPSPの素量解析を用いれば、FK960が神経終末に作用して伝達物質の遊離を増加させるかもしれない可能性を検証することができる。FK960は、対照aCSFの暴露よりも、EPSPの素量数を増加させた。どちらの処理も素量サイズの有意の変化を伴わなかった。FK960への暴露後、素量数が増加する程度に変動があり、それはFK960がその作用部位に有効濃度を到達させるのに時間がかかったためか、あるいはFK960の特徴的な用量反応関係の結果であると考えられた。場電位の細胞外記録を用いる実験において(それは「ブラインドパッチ」技術で通常許容されるよりもずっと長い記録時間が必要である)、FK960は、2時間まで場電位の大きさを増大し続けることが知られている(Matsuyama ら, 2000)。
【0083】
FK960の添加によりEPSPの大きさが有意に増加した間(21分暴露)自発EPSPの頻度に有意な変化はなかった。従って、FK960が神経終末からの無刺激時の伝達物質遊離に効果を及ぼさないことが示唆された。これを確認するためには、全てのスパイク依存性伝達物質放出をブロックするためにナトリウムチャネルブロッカーであるテトロドトキシンの存在下、微少EPSPの頻度を測定することが必要であろう。
【0084】
FK960の作用がメチルリカコニチン(Macallanら,1988)及びα−ブンガロトキシンによって抑制されたことから、α7型のニコチン性アセチルコリン(α7nACh)レセプターサブタイプの活性化がFK960の作用に関与していることが考えられた。α7nAChレセプター(Couturier ら, 1990; McGehee ら, 1995; McGehee & Role 1995; Gray ら, 1996)は、単量体で存在し(Seguela ら, 1993; McGehee & Role 1995; MacDermott ら, 1999; しかし Yum ら, 1996; Albuquerque ら, 1997b; Wonnacott, 1997参照)、哺乳動物の中枢神経系に広く分布することが知られている(Seguela ら, 1993; MacDermott, 1999; Whiteaker, ら, 1999)。
【0085】
α7nAChレセプターは、興味深い特徴を有する。カルシウムイオンに高い透過性を有し(McGhee & Role, 1995; McGhee ら, 1995; Gray ら, 1996)、20の桁のPCa/PNaを有し(Seguela ら, 1993)、海馬並びに他の広い脳領域(McGhee & Role, 1995; MacDermott ら, 1999)でシナプス前に局在している(McGehee ら, 1995; Alkondon ら, 1996; Gray ら, 1996)ことから、AChによる伝達物質放出の調節に重要な役割を果たしていると考えられている(McGehee ら, 1995; Alkondon ら, 1996; Gray ら, 1996; Wonnacott ; 1997, Radcliffe & Dani, 1998; MacDermott ら, 1999)。しかし、現在、このような作用に関与するACh神経系終末が中隔海馬求心性神経(septo−hippocampal afferents)由来のものか、又は局所介在ニューロン由来のものかは不明である(Alkondon ら, 1998; Vizi, 2000)。海馬の中隔海馬系コリン作動性神経支配は、本研究で用いた体重50−100gのラット(誕生後21−34日)ではほぼ完全に成熟していることが知られている(Milnerら,1983)。
【0086】
最近、シナプス後部側α7nAChレセプターが脱感作から回復している間にシナプス前α7nAChレセプターとは異なる挙動をとり得ることが(McGehee ら, 1995; Khiroug ら, 1998; Frazier ら, 1998b)発表された(Frazier ら, 1998a, b; Alkondon ら, 1998)。しかし、これまでの検討においてFK960は高親和性放射性標識リガンドのコリン作動性レセプターへの結合を抑制することはなく、それ以外にもコリン作動性活性は示さなかった。
【0087】
グルタミン酸及びGABAによって開かれる神経伝達物質ゲート型イオンチャネルを、他のモジュレーター;例えば、GABAレセプターの場合にはステロイド及びバルビツレート、並びにNMDAレセプターの場合にはグリシン及びポリアミンによって調節することができることが良く知られている。α7nAChレセプターについては、α7サブユニット上のある部位を介して調節を受けやすいようである(Schrattenholz ら, 1996; Albuquerque ら, 1997a)。本実験では、FK960がこの特定の部位に作用するかどうかについて結論を出すことはできないが、このような機序を介してニコチン性神経伝達の活性を調節することによって、FK960がその作用を発揮し得るという可能性が考えられる。このことを検証するための1つのアプローチは、CA1ニューロンでのニコチンによるEPSCの大きさ及びmEPSCの周波数の増大がFK960によって更に増加するかどうか、並びにこれがモノクローナル抗体FK1によってブロックされるかどうか(Schrattenholz ら, 1996)を確かめることであろう。しかし、EPSPに対するFK960の作用は、最大効果が得られるまでに何十分のというゆっくりとした時間をかけてから発現したことから、上述のような直接作用は持たないかもしれない。
【0088】
本発明者らは、FK960の用量反応関係がこれまでの報告と同じく逆U字型であることを見出した(Yamazaki ら, 1996; Matsuoka & Satoh, 1998; Matsuyamaら, 2000)。より高濃度のFK960が、低濃度のFK960が作用する作用点とは異なる部位で作用するかどうかを検証するのは難しく、本明細書で報告する実験でもこれについては取り扱わなかった。FK960の逆U字型の用量反応関係が、単離した脳スライス(Matsuoka & Satoh, 1998; Matsuyama, ら, 2000)及び個体動物(Yamazaki ら, 1996; Matsuyama, ら, 2000)での実験で一貫して認められていることは興味深い。ニコチンレセプターに直接作用するガランタミン(及び5−HT)も、逆U字型の用量反応関係を示す(Ach誘発電流に対する相対値と1−メチル−ガランタミン濃度との関係、Schrattenholz ら, 1996)ことは、α7nAChレセプターにに対するFK960の作用を示唆するに余りあると考えられる。一方、記憶増強薬CX516(FR21243)(ピーク電流の増加% 対 CX−516濃度)の用量反応関係は、通常のシグモイド型を示す (Arai ら, 1996b)。
【0089】
FK960の作用機序に関する仮説のひとつは、FK960が直接的又は間接的にソマトスタチン作動性ニューロンを活性化するというものである(Yamazaki ら, 1996; Matsuoka & Satoh, 1998)。これらの実験によって、システアミン(脳の中のソマトスタチンレベルを減少させる薬剤(Yamazaki ら, 1996))の動物への前処理は、in vitro(脳スライスにおけるLTP、Matsuoka & Satoh, 1998)及びin vivo(受動回避試験及びモリス水迷路試験におけるスコポラミン誘発記憶障害の改善作用、Yamazaki ら, 1996))のいずれにおいても、FK960の作用を有意に減弱させることが示された。Yamazakiら,1996の検討には脳損傷実験も含まれており、その研究からセロトニン作動性(serotinergic)、及び、多分驚くべきことではないが、コリン作動性神経系がFK960の作用に関与することが示されているが、これらの伝達物質系の関係の詳細は未解明である。更に、本研究は、FK960が活性を示す伝達物質系の候補としてグルタミン酸作動性シナプスを加えるものである。
【0090】
伝達物質の遊離に対するFK960の作用に時間がかかることは、非常に興味深い。その機構は、明らかにFK960が細胞内レセプターと相互作用するために神経終末に入る速度論と関係するかもしれない。しかし、FK960が経口吸収された後脳に容易に移行することを考えれば、この可能性は考えにくい。別の仮説としては、FK960が特定のレセプターと相互作用して細胞内メッセンジャーの形成を引き起こすか、又は定常状態で活性を有する酵素反応を阻害することにより、リン酸化タンパク等のレベルを変動させる結果として伝達物質の遊離を制御するというものであろう。アドレナリン刺激後にグルタミン酸作動性シナプスで素量伝達物質の遊離が同様にゆっくりと増加することが最近報告された。その機構には、酸化窒素非依存性グアニリルシクラーゼの活性化が含まれ、結果として、神経終末内のcGMPの蓄積及びプロテインキナーゼGの活性化が起こる(Yawo, 1999)。
【0091】
結論として、本明細書で記載したデータは、FK960が神経インパルスに反応して放出される素量数を増加させ、それによって、素量サイズに何の効果も与えずにEPSPの大きさ及び傾きを増加させることを示す。他の伝達物質系にも関連するAMPA作動性伝達の活性増強する調節作用が認知行動の増強にどのように関係するかその重要性は不明であるが、本発明者らはα7nAChレセプターの活性化がFK960の選択的な作用に関与していることを示した。例えばAMPAカインによるAMPA作動性伝達の増強が、幾つかの状況下でヒトにおける認知機能の有意な改善を十分に促進させることは、十分確立されている(Lynchら,1996)。従って、FK960によって増大したグルタミン酸作動性伝達が、直接的あるいは間接的に記憶能における治療上の利益に寄与することが期待される。
【0092】
参考文献
ALBUQUEQUE, E. X., ALKONDON, M., PEREIRA, E. F.,CASTRO, N. G., SCHRATTENHOLZ, A., BARBOSA, C. T. F.,BONFANTE−CABARCAS, R., ARACAVA, Y., EISENBERG, H. M. &MAELICKE, A. (1997a). Properties of neuronal nicotinic acetylcholine receptors: Pharmacological characterization and modulation of synaptic function. J. Pharmac. Exp. Therap. 280, 1117−1136.
ALBUQUEQUE, E. X., PEREIRA, E. F., ALKONDON, M.,SCHRATTENHOLZ, A. & MAELICKE, A. (1997b). Nicotinic acetylcholine receptors on hippocampal neurons: distribution on the neuronal surface and modulation of receptor activity. J. Recept. Signal Transduct. Res. 17, 243−266.
ALKONDON, M., ROCHA, E. S., MAELICKE, A. &ALBUQUEQUE, E. X. (1996). Diversity of nicotinic acetylcholine receptors in rat brain. V. alpha−Bungarotoxin−sensitive nicotinic receptors in olfactory bulb neurones and presynaptic modulation of glutamate release.  J. Pharmac. Exp. Therap. 278, 1460−1471.
ALKONDON, M., PEREIRA, E. F. & ALBUQUEQUE, E. X. (1998). α−Bungarotoxin−and methyllycaconitine−sensitive nicotinic receptors mediate fast synaptic transmission in interneurones of rat hippocampal slices. Brain Res. 810, 257−263.
ARAI, A., SILBERG, J., KESSLER, M. & LYNCH, G. (1995). Effect of thiocyanate on AMPA receptor mediated responses in excised patches and hippocampal slices. Neuroscience 66, 815−827.
ARAI, A., KESSLER, M., AMBROS−INGERSON, J., QUAN,A., YIGITER, E., ROGERS, G. & LYNCH, G. (1996a). Effects of a centrally active benzoylpyrrolidine drug on AMPA receptor kinetics. Neuroscience 75, 573−585.
ARAI, A., KESSLER, M., ROGERS, G. & LYNCH, G. (1996b). Effects of a memory−enhancing drug on DL−α−amino−3−hydroxy−5−methyl−4−isoxazolepropionic acid receptor currents and synaptic transmission in hippocampus. J. Pharmac. Exp. Therap. 278, 627−638.
ARAI, A. & LYNCH, G. (1996). Response to repetitive stimulation of AMPA receptors in patches excised from fields CA1 and CA3 of the hippocampus. Brain Res. 716, 202−206.
ARAI, A. & LYNCH, G. (1998). The waveform of synaptic transmission at hippocampal synapses is not determined by AMPA receptor desensitization. Brain Res. 799, 230−234.
ARAUJO, D. M., LAPCHAK, P. A., ROBITAILLE, Y.,GAUTHIER, S. & QUIRION, R. (1988). Differential alteration of various cholinergic markers in cortical and subcortical regions of human brain in Alzheimer’s Disease. J. Neurochem 50, 1914−1923.
【0093】
BARTUS, R. T., DEAN, R. L., BEER, B. & LIPPA, A. S.(1982). The cholinergic hypothesis of geriatric memory dysfunction. Science 217, 408−417.
BELLINGHAM, M. C. & WALMSLEY, B. (1999). A novel presynaptic inhibitory mechanism underlies paired pulse depression at a fast central synapse. Neuron 23, 159−170.
CHORVAT, R. J., EARL, R. A. & ZACZEK, R. (1995). Acetylcholine release enhancing agents: potential therapeutics for Alzheimer’s disease. Drugs of the Future 20, 1145−1162.
COUTURIER, S., BERTRAND, D., MATTER, J. M.,HERNANDEZ, M. C., BERTRAND, S., MILLAR, N., VALERA, S., BARKAS, T. & BALLIVET, M. (1990). A neuronal nicotinic acetylcholine receptor subunit (α7) is developmentally regulated and forms a homo−oligomeric channel blocked by α−BTX. Neuron 5, 847−856.
DAVIES, P. & MALONEY, A. J. R. (1976). Selective loss of central cholinergic neurones in Alzheimer’s Disease. Lancet 2, 1403−1405.
DEL CASTILLO, J. & KATZ, B. (1954). Quantal components of the end−plate potential. J. Physiol. 124, 560−573.
EDMONDS, B., GIBB, A. J. & COLQUHOUN, D. (1995). Mechanisms of activation of glutamate receptors and the time course of excitatory syanptic currents. Annu. Rev. Physiol. 57, 495−519.
FIBIGER, H. C. (1991). Cholinergic mechanisms in learning, memory and dementia: a review of recent evidence. Trends Neurosci. 14, 220−223.
FRANCIS, P. T., PALMER, A. M., SNAPE, M. & WILCOCK,G. K. (1999). The cholinergic hypothesis of Alzheimer’s Disease; a review of progress. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 66, 137−147.
FRAZIER, C. J., BUHLER, A. V., WEINER, J. L. & DUNWIDDIE, T. V. (1998a). Synaptic potentials mediated via α−bungarotoxin−sensitive nicotinic acetylcholine receptors in rat hippocampal interneurones. J. Neurosci. 18, 8228−8235.
【0094】
FRAZIER, C. J., ROLLINS, Y. D., BREESE, C. R., LEONARD, S., FREEDMAN, R. & DUNWIDDIE, T. V. (1998b). Acetylcholine activates an α−bungarotoxin−sensitive nicotinic current in rat hippocampal interneurones, but not pyramidal cells. J. Neurosci. 18, 1187−1195.
GALLAGHER, M. & COLOMBO, P. J. (1995). Ageing: the cholinergic hypothesis of cognitive decline. Curr. Opin. Biol. 5, 161−168.
GRANGER, R., DEADWYLER, S., DAVIS, M., MOSKOVITZ,B., KESSLER, M., ROGERS, G. & LYNCH, G. (1996). Facilitation of glutamate receptors reverses an age−associated memory impairment in rats. Synapse 22, 332−337.
GRAY, R., RAJAN, A. S., RADCLIFFE, K. A., YAKEHIRO, M. & DANI, J. A. (1996). Hippocampal synaptic transmission enhanced by low concentrations of nicotine. Nature 383, 713−716.
ISAACSON, J. & NICOLL, R. A. (1991). Aniracetam reduces glutamate receptor desensitization and slows the decay of fast excitatory synaptic currents in the hippocampus. Proc. Natl. Acad. Sci. 88, 10936−10940.
JONES, M. V. & WESTBROOK, G. L. (1996). The impact of receptor desensitization on fast synaptic transmission. Trends Neurosci. 19, 96−101.
KASA, P., RAKONCZAY, Z. & GULYA, K. (2000). The Cholinergic System in Alzheimer’s Disease. Prog. Neurobiol. 52, 511−535.
KELLY, J. S. (1999). Alzheimer’s disease: the tacrine legacy. Trends Pharmacol. Sci. 20, 127−129.
KHIROUG, L., SOKOLOVA, E., GINIATULLIN, R., AFZALOV,R. & NISTRI, A. (1998). Recovery from desensitization of neuronal nicotinic acetylcholine receptors of rat chromaffin cells is modulated by intracellular calcium through distinct second messengers. J. Neurosci. 18, 2458−2466.
LYNCH, G., KESSLER, M., ROGERS, G., AMBROS−INGERSON, J. & GRANGER, R. (1996). Psychological effects of a drug that facilitates brain AMPA receptors. Int. Clin. Psychopharm. 11, 13−19.
【0095】
MACALLAN, D. R., LUNT, G. G., WONNACOTT, S. S., SWANSON, K. L., RAPOPORT, H. & ALBUQUERQUE, E. X. (1988). Methyllycaconitine and (+)anatoxin−a differentiate between nicotinic receptors in vertebrate and invertebrate nervous systems. FEBS Lett, 226, 357−363.
MACDERMOTT, A. B., ROLE, L. & SIEGELBAUM, S. (1999). Presynaptic ionotropic receptors and the control of transmitter release. Annu. Rev. Neurosci. 22, 443−485.
MARTIN, A. R. (1977). Junctional Transmission II. Presynaptic mechanisms. In Handbook of Physiology, eds. BROOKHART, J. M. & MOUNTCASTLE, V. B. pp. 329−355. Bethesda, Maryland: American Physiological Soc.
MATSUOKA, M. & SATOH, M. (1998). FK960, a novel potential anti−dementia drug, augments long−term potentiation in mossy fiber−CA3 pathway of guinea−pig hippocampal slices. Brain Res. 794, 248−254.
MATSUYAMA, S., NOMURA, T. & NISHIZAKI, T. (2000). Sustained facilitatory action of FK960 on hippocampal neurotransmission. Brain Res. 857, 317−320.
MCGEHEE, D. S., HEATH, M. J. S., GELBER, S., DEVAY, P. & ROLE, L. W. (1995). Nicotine enhancemant of fast synaptic transmission in CNS by presynaptic receptors. Science 269, 1692−1696.
MCGEHEE, D. S. & ROLE, L. W. (1995). Physiological diversity of nicotinic acetylcholine receptors expressed by vertebrate neurons. Annu. Rev. Physiol. 57, 521−546.
MILNER, T. A., LOT, R. & AMARAL, D. G. (1983). An anatomical study of the development of the septo−hippocampal projection in the rat. Brain Res. Dev Brain Research 8, 343−371.
MUCKE, H. A. M. (1998). Drug treatments for Alzheimer’s disease. Pharmaceut. News 5, 10−14.
PALMER, A. M. (1996). Neurochemical studies of Alzheimer’s Disease. Neurodegeneration 5, 381−391.
【0096】
RADCLIFFE, K. A. & DANI, J. A. (1998). Nicotinic stimulation produces multiple forms of increased glutamatergic synaptic transmission. J. Neurosci. 18, 7075−7083.
SCHRATTENHOLZ, A., PEREIRA, E. F., ROTH, U., WEBER,K., ALBUQUEQUE, E. X. & MAELICKE, A. (1996). Agonist responses of neuronal nicotinic acetylcholine receptors are potentiated by a novel class of allosterically acting ligands. Mol Pharmacol. 49, 1−6.
SEGUELA, P., WADICHE, J., DINELY−MILLER, K., DANI, J.A. & PATRICK, J. W. (1993). Molecular cloning, functional properties and distribution of rat brain α7: A nicotinic cation channel highly permeable to calcium. J. Neurosci. 13, 596−604.
SIRVIO, J., LARSON, J., QUACH, C. N., ROGERS, G. A. &LYNCH, G. (1996). Effects of pharmacologically facilitating glutamatergic transmission in the trisynaptic intrahippocampal circuit. Neuroscience 74, 1025−1035.
STAUBLI, U., PEREZ, Y., FANGBO, X., ROGERS, G., INGVAR, M., STONE−ELANDER, S. & LYNCH, G. (1994). Centrally active modulators of glutamate receptors facilitate the induction of long−term potentiation in vivo. Proc. Natl. Acad. Sci. 91, 11158−11162.
TANG, C. M., SHI, Q. Y., KATCHMAN, A. & LYNCH, G. (1991). Modulation of the time course of fast EPSCs and glutamate channel kinetics by aniracetam. Science 254, 288−290.
VIZI, E. S. (2000). Role of high affinity receptors and membrane transporters in nonspecific communication and drug action in the central nervous system. Pharmacol. Rev. 52, 63−89.
VYKLICKY, L., PATNEAU, D. K. & MAYER, M. L. (1991). Modulation of excitatory synaptic transmission by drugs that reduce desensitization at AMPA/kainate receptors. Neuron 7, 971−984.
WHITEAKER, P., DAVIES, A. R. L., MARKS, M. J., BLAGBROUGH, I. S., POTTER, B. V. L., WOLSTENHOLME, A. J., COLLINS, A. C. & WONNACOTT, S. (1999). An autoradiographic study of the distribution of binding sites for the novel α7−selective nicotinic radioligand [H]−methyllycaconitine in the mouse brain. European Journal of Neuroscience 11, 2689−2696.
WONNACOTT, S. (1997). Presynaptic nicotinic ACh receptors. Trends Neurosci. 20, 92−98.
【0097】
YAMADA, K. A. & TANG, C. M. (1993). Benzothiadiazides inhibit rapid glutamate receptor desensitization and enhance glutamatergic synaptic currents. J. Neurosci. 13, 3904−3915.
YAMAZAKI, M., MATSUOKA, M., MAEDA, N., OKHUBO, Y. & YAMAGUCHI, I. (1996). FK960 N−(4−Acetyl−1−piperazinyl)−p−fluorobenzamide monohydrate ameliorates the memory deficits in rats through a novel mechanism of action. J. Pharmac. Exp. Therap. 279, 1157−1173.
YAWO, H. (1999). Involvement of cGMP−dependent protein kinase in adrenergic potentiation of transmitter release from calyx−type presynaptic terminal. J. Neurosci 19, 5293−5300.
YUM, L., WOLF, K. M. & CHIAPPINELLI, V. A. (1996). Nicotinic acetylcholine receptors in separate brain regions exhibit different affinities for methyllycaconitine. Neuroscience 72, 545−555.
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、EPSPの大きさ及び素量数に対するFK960の効果を示す。FK960の暴露前1分40秒及び暴露後21分40秒の海馬CA1ニューロンから記録した50の連続した興奮性シナプス後電位(EPSP)の平均記録を(A)に示す。この実験で、平均EPSPの上昇相の傾きは、326.7mV/秒から742.8mV/秒に増加し、127%の増加であった。EPSPの平均の大きさ(白円)及び1/CV(素量数の基準、黒円)において対応する増加があり、その時間経過を(B)に示す;FK960はt=15分で加え、各点は50の連続したEPSPより求めた。100nM FK960への暴露前(C)及び暴露後(D)のEPSPの大きさのヒストグラム。EPSPの平均の大きさは、対照aCSFで2.6mV±1.0(SD、n=225)であり、それはFK960では5.8mV±1.6(SD、n=287)へ123%増加した(分布の右方シフトによって示される)。ベースラインのノイズの分散を補正した後、素量数は、6.4から13.4に増加し、109%の上昇であった。
【図2】
図2は、EPSPの傾きに対するFK960の効果の用量反応関係を示す。グラフは21のニューロンから得たデータに基づく。FK960未処理では、21分後、傾きに11%±10(SEM、n=6)の増加が見られた。これは、100nM FK960への暴露後に見られた55%±13(n=5)[これは、対照より有意に大きかった(P=0.04、1要因分散分析)]と対照的であった。50nM及び200nMではEPSPの傾きの増加はより小さく、有意ではなかった。
【図3】
図3は、EPSPの大きさ、傾き、及び素量数に対するFK960の効果を示す。EPSPの大きさ(A、B)、傾き(C、D)及び素量数(1/CV、分散係数の二乗の逆数、E、F)を、暴露の前(対照前)及びFK960(FK960後、n=9ニューロン)又は対照aCSF(対照後、n=10ニューロン)のいずれかへの暴露後21分40秒に測定した。EPSPの大きさを個別に測定し、対照aCSF(A)又はFK960(B)のいずれかへの切り換えの前後で50の連続したEPSPの平均を求めた。適当な時点で50の連続したEPSPを平均し、ピークの大きさの10%と50%との間で平均したEPSPの上昇相の傾きを計算することによって傾きを決定した。EPSPの大きさ及び傾きの増加は、FK960で処理した後では有意に大きかった。1/CV値(放出された素量の平均数の基準)を溶液の切り換え前(対照前)に記録された100のEPSPから決定し、対照aCSF(E)又はFK960(F)のいずれかへ20分暴露した後に記録された同数のEPSPから決定したものと比較した。対照aCSFに暴露されたニューロンは、1/CVで平均6.5%の減少を示し(E)、一方、FK960に暴露された群では平均53%の増加が見られた(F)。μ
【図4】
図4は、抑制性シナプス後電流(IPSC)に対するFK960の効果を示す。100nM FK960は、CA1ニューロンでIPSCに有意な効果を及ぼさなかった。海馬スライスを、CNQX(15μM)及びD−AP5(50μM)を含むaCSF(対照aCSF)に暴露し、それぞれAMPAレセプター及びNMDAレセプターをブロックした。これらのアンタゴニストの存在下、0.1Hzで放射状層を刺激することにより、GABA成分とGABA成分からなる応答を誘発した。対照aCSF中で−75mVでクランプしたCA1ニューロン電圧から記録した15のIPSCの平均記録をAに示す;IPSCは39pAのピークの大きさを有した。B、FK960へ21分間暴露した後、ピークの大きさは38pAであった。C、対照及びFK960で記録した記録を、Cで重ねて示す。IPSCは−55mVで逆転した(示さず)。D、FK960前及び後の3実験からプールしたIPSCの平均データを示すヒストグラムであり、有意差は無かった(P=0.9)。
【図5】
図5は、EPSCに対するFK960及びFR212436の効果を示す。−70mVでクランプしたCA1ニューロン電圧で記録した興奮性シナプス後電流(EPSC)は、200μM(42pAから95pA、A)及び2mM(87pAから247pA、B)でFR212436へ暴露した後に大きさが増加した。対照電流をFR212436の存在下で見られる同じピークの大きさまで拡大した(点線)とき、EPSCの消失相においてより高濃度で有意で明らかに遅延した。一方、FK960は、このニューロンでEPSC消失定数を有意に変化させることなくEPSCの大きさを103pAから175pAへ増加させた(C);拡大した対照のトレースを、FK960で見られるトレースに重ねる。
【図6】
図6は、EPSPの大きさに対するFK960の作用の時間経過を示す。15分で(第1の水平点線)、バス溶液を対照aCSFから100nM FK960(黒円、n=9ニューロン)又は対照aCSF(白円、n=10ニューロン)のいずれかを含む溶液に変え、実験の持続時間中この溶液と接触させたままにしておいた。最初の15分間、2群のニューロン間に差異は無かったが、FK960の適用でEPSPの大きさに連続的な増加があった。対照的に、対照aCSF群では対応する変化は無かった。FK960で21分後に見られる大きさの増加は、対照aCSF群で見られるものより有意に大きかった。
【図7】
図7は、EPSPに対するFK960の作用がメチルリカコニチン(methyllycaconitine)(MLA)による前処理によってブロックされることを示す。EPSPの大きさ(A、B)、傾き(C、D)及び素量数(1/CV、分散係数の二乗の逆数、E、F)を、暴露の前(MLA前)及びFK960(FK960後、n=5ニューロン)又はMLA aCSF(MLA後、n=4ニューロン)のいずれかへの暴露後21分に測定した。EPSPの大きさを個別に測定し、MLA aCSF(A)又はFK960(B)のいずれかへの切り換えの前及び後に50の連続したEPSPの平均を決定した。適当な時点で50の連続したEPSPを平均し、平均EPSPの上昇相の傾きを計算することによって、傾きを決定した。1/CV値(放出された素量の平均数の基準)は、切り換え前15分間に記録された100のEPSPから決定し、いずれかでMLA aCSF(E)又はFK960(F)のいずれかへの21分後に記録された同数と比較した。EPSPに対するFK960の作用は、MLAによって消失する。
【図8】
図8は、EPSPに対するFK960の作用がα−ブンガロトキシンによる前処理によって減弱することを示す。EPSPの大きさ(A、B)、傾き(C、D)及び素量数(1/CV、分散係数の二乗の逆数、E、F)を、暴露の前(bung前)、及びFK960(FK960後、n=5ニューロン)又はα−ブンガロトキシン aCSF(bung後、n=5ニューロン)のいずれかへの暴露後21分に測定した。EPSPの大きさを個別に測定し、α−ブンガロトキシン aCSF(A)又はFK960(B)のいずれかへの切り換えの前及び後で50の連続したEPSPの平均を決定した。適当な時点で50の連続したEPSPを平均し、平均EPSPの上昇相の傾きを計算することによって、傾きを決定した。1/CV値(放出された素量の平均数の基準)を切り換え前の間に記録された100のEPSPから決定し、α−ブンガロトキシン aCSF(E)又はFK960(F)のいずれかへ21分暴露した後に記録された同数のEPSPから決定されたものと比較した。EPSPの大きさ又は傾きのいずれかに対するFK960の作用は有意ではなく、α−ブンガロトキシンの存在下で1/CVに対する作用は明確ではなかった。
【図9】
図9は、α7nAChレセプターアンタゴニストがEPSPの大きさに対するFK960の作用を抑制することを示す。A、100nMメチルリカコニチン(MLA)aCSFをt=0分で加え、その後調製液と接触させ続けた。t=15分で(第1の水平点線で示す)、バス溶液をFK960(黒い記号、n=5ニューロン)又はMLA aCSF(白い記号、n=4ニューロン)のいずれかを含むものに交換した。21分後、FK960では2群の間で有意差は無かった。B、同様の結果が、300nM α−ブンガロトキシンで得られ、それはまた、EPSPの大きさに対するFK960の作用を弱めた。t=15分で、バス溶液をFK960(黒い記号)又はα−ブンガロトキシン aCSF(白い記号)を含むものに交換した。

Claims (31)

  1. 有効成分としてα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を含む、興奮性シナプス伝達を調節する薬剤。
  2. 化合物が、以下の式[I]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    は、低級アルキル、アリール、アル(低級)アルコキシ又は複素環基であって、それらの各々はハロゲンで置換されていてもよく、
    は、水素原子又は低級アルキルであり、
    は、シクロ(低級)アルキル、アリール又はアル(低級)アルキルであって、それらの各々はハロゲンで置換されていてもよく、
    Aは、−CO−、−SO−又は低級アルキレンであり、及び
    Yは、−CO−、−SO−又は−CONH−である]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項1に記載の興奮性シナプス伝達を調節する薬剤。
  3. 化合物が、以下の式[II−1]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    はアシルであり、
    は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルアミノ、低級アルケニル、低級アルケニルオキシ、低級アルケニルアミノ、低級アルキニル、低級アルキニルオキシ、低級アルキニルアミノ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、シクロ(低級)アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、複素環基又は複素環基で置換されたアミノであって、それらの各々は適切な置換基で置換されていてもよく;又はアシルであり;
    Zは、単結合、−CO−又は−SO−であり、
    Eは、適切な置換基で置換されていてもよい低級アルキレンであり、
    Xは、CH又はNであり、
    Jは、単結合、低級アルキレン又は
    Figure 2004508331
    (式中、Rは、水素、低級アルキル、置換された低級アルキル、N保護基、アリール、アシル又は複素環基である)であり、
    Qは、−CH−、−CO−、−SO−又は−N=CH−であり、及び
    及びRは各々、水素又は低級アルキルであり、あるいは一緒になって、環状炭化水素又は複素環と縮合していてもよい低級アルキレンを形成し、但し、XがNであるとき、
    1)Jは単結合であり、及びQは、−CH−、−CO−又は−SO−であり、あるいは
    2)Jは低級アルキレンである]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項1に記載の興奮性シナプス伝達を調節する薬剤。
  4. 化合物が、以下の式[II−2]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    はアシルであり、
    は、アリール、アリールオキシ又はアリールアミノであって、それらの全てのアリール部分はハロゲンで置換されていてもよい;ピリジル;又はピリジルアミノであり、
    Xは、CH又はNであり、
    Jは、単結合、低級アルキレン又は
    Figure 2004508331
    (式中、Rは、水素、低級アルキル又はN保護基である)であり、
    Qは、−CH−、−CO−又は−SO−であり、但し、XがNであるとき、Jは単結合又は低級アルキレンである]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項1に記載の興奮性シナプス伝達を調節する薬剤。
  5. 脳障害の予防又は治療のための薬剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の興奮性シナプス伝達を調節する薬剤。
  6. 痴呆又は健忘症の予防又は治療のための薬剤である、請求項5に記載の興奮性シナプス伝達を調節する薬剤。
  7. α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を有効量投与することを含む、興奮性シナプス伝達の調節方法。
  8. 化合物が、以下の式[I]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    は、低級アルキル、アリール、アル(低級)アルコキシ又は複素環基であって、それらの各々はハロゲンで置換されていてもよく、
    は、水素原子又は低級アルキルであり、
    は、シクロ(低級)アルキル、アリール又はアル(低級)アルキルであって、それらの各々はハロゲンで置換されていてもよく、
    Aは、−CO−、−SO−又は低級アルキレンであり、及び
    Yは、−CO−、−SO−又は−CONH−である]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項7に記載の興奮性シナプス伝達の調節方法。
  9. 化合物が、以下の式[II−1]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    はアシルであり、
    は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルアミノ、低級アルケニル、低級アルケニルオキシ、低級アルケニルアミノ、低級アルキニル、低級アルキニルオキシ、低級アルキニルアミノ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、シクロ(低級)アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、複素環基又は複素環基で置換されたアミノであって、それらの各々は適切な置換基で置換されていてもよく;又はアシルであり;
    Zは、単結合、−CO−又は−SO−であり、
    Eは、適切な置換基で置換されていてもよい低級アルキレンであり、
    Xは、CH又はNであり、
    Jは、単結合、低級アルキレン又は
    Figure 2004508331
    (式中、Rは、水素、低級アルキル、置換された低級アルキル、N保護基、アリール、アシル又は複素環基である)であり、
    Qは、−CH−、−CO−、−SO−又は−N=CH−であり、及び
    及びRは各々、水素又は低級アルキルであり、あるいは一緒になって、環状炭化水素又は複素環と縮合していてもよい低級アルキレンを形成し、但し、XがNであるとき、
    1)Jは単結合であり、及びQは、−CH−、−CO−又は−SO−であり、あるいは
    2)Jは低級アルキレンである]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項7に記載の興奮性シナプス伝達の調節方法。
  10. 化合物が、以下の式[II−2]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    はアシルであり、
    は、アリール、アリールオキシ、又はアリールアミノであって、それらの全てのアリール部分はハロゲンで置換されていてもよい;ピリジル;又はピリジルアミノであり、
    Xは、CH又はNであり、
    Jは、単結合、低級アルキレン又は
    Figure 2004508331
    (式中、Rは、水素、低級アルキル又はN保護基である)であり、
    Qは、−CH−、−CO−又は−SO−であり、但し、XがNであるとき、Jは単結合又は低級アルキレンである]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項7に記載の興奮性シナプス伝達の調節方法。
  11. 脳障害の予防又は治療方法である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の興奮性シナプス伝達の調節方法。
  12. 痴呆又は健忘症の予防及び/又は治療方法である、請求項11に記載の興奮性シナプス伝達の調節方法。
  13. 興奮性シナプス伝達の調節のための薬剤の製造のためのα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物の使用。
  14. 化合物が、以下の式[I]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    は、低級アルキル、アリール、アル(低級)アルコキシ又は複素環基であって、それらの各々はハロゲンで置換されていてもよく、
    は、水素原子又は低級アルキルであり、
    は、シクロ(低級)アルキル、アリール又はアル(低級)アルキルであって、それらの各々はハロゲンで置換されていてもよく、
    Aは、−CO−、−SO−又は低級アルキレンであり、及び
    Yは、−CO−、−SO−又は−CONH−である]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項13に記載のα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物の使用。
  15. 化合物が、以下の式[II−1]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    はアシル、
    は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルアミノ、低級アルケニル、低級アルケニルオキシ、低級アルケニルアミノ、低級アルキニル、低級アルキニルオキシ、低級アルキニルアミノ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、シクロ(低級)アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、複素環基又は複素環基で置換されたアミノであって、それらの各々は適切な置換基で置換されていてもよく;又はアシルであり;
    Zは、単結合、−CO−又は−SO−であり、
    Eは、適切な置換基で置換されていてもよい低級アルキレンであり、
    Xは、CH又はNであり、
    Jは、単結合、低級アルキレン又は
    Figure 2004508331
    (式中、Rは、水素、低級アルキル、置換された低級アルキル、N保護基、アリール、アシル又は複素環基である)であり、
    Qは、−CH−、−CO−、−SO−又は−N=CH−であり、及び
    及びRは各々、水素又は低級アルキルであり、あるいは一緒になって、環状炭化水素又は複素環と縮合されていてもよい低級アルキレンを形成し、但し、XがNであるとき、
    1)Jは単結合であり、及びQは、−CH−、−CO−又は−SO−であり、あるいは
    2)Jは低級アルキレンである]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項13に記載のα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物の使用。
  16. 化合物が、以下の式[II−2]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    はアシルであり、
    は、アリール、アリールオキシ、又はアリールアミノであって、それらの全てのアリール部分はハロゲンで置換されていてもよい;ピリジル;又はピリジルアミノであり、
    Xは、CH又はNであり、
    Jは、単結合、低級アルキレン又は
    Figure 2004508331
    (式中、Rは、水素、低級アルキル又はN保護基である)であり、
    Qは、−CH−、−CO−又は−SO−であり、但し、XがNであるとき、Jは単結合又は低級アルキレンである]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項13に記載のα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物の使用。
  17. 脳障害の予防及び/又は治療のための薬剤の製造のためである、請求項13〜16のいずれかに記載のα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物の使用。
  18. 痴呆又は健忘症の予防及び/又は治療のための薬剤の製造のためである、請求項17に記載のα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物の使用。
  19. α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物、及び医薬上許容される担体又は賦形剤を含む、興奮性シナプス伝達の調節のための医薬組成物。
  20. 化合物が、以下の式[I]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    は、低級アルキル、アリール、アル(低級)アルコキシ又は複素環基であり、それらの各々はハロゲンで置換されていてもよく、
    は、水素原子又は低級アルキルであり、
    は、シクロ(低級)アルキル、アリール又はアル(低級)アルキルであって、それらの各々はハロゲンで置換されていてもよく、
    Aは、−CO−、−SO−又は低級アルキレンであり、及び
    Yは、−CO−、−SO−又は−CONH−である]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項19に記載の興奮性シナプス伝達の調節のための医薬組成物。
  21. 化合物が、以下の式[II−1]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    はアシルであり、
    は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルアミノ、低級アルケニル、低級アルケニルオキシ、低級アルケニルアミノ、低級アルキニル、低級アルキニルオキシ、低級アルキニルアミノ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、シクロ(低級)アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、複素環基又は複素環基で置換されたアミノであって、それらの各々は適切な置換基で置換されていてもよく;又はアシルであり;
    Zは、単結合、−CO−又は−SO−であり、
    Eは、適切な置換基で置換されていてもよい低級アルキレンであり、
    Xは、CH又はNであり、
    Jは、単結合、低級アルキレン又は
    Figure 2004508331
    (式中、Rは、水素、低級アルキル、置換された低級アルキル、N保護基、アリール、アシル又は複素環基である)であり、
    Qは、−CH−、−CO−、−SO−又は−N=CH−であり、及び
    及びRは各々、水素又は低級アルキルであり、あるいは一緒になって、環状炭化水素又は複素環で縮合されていてもよい低級アルキレンを形成し、但し、XがNであるとき、
    1)Jは単結合であり、及びQは、−CH−、−CO−又は−SO−であり、あるいは
    2)Jは低級アルキレンである]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項19に記載の興奮性シナプス伝達の調節のための医薬組成物。
  22. 化合物が、以下の式[II−2]:
    Figure 2004508331
    [式中、
    はアシルであり、
    は、アリール、アリールオキシ、又はアリールアミノであって、それらの全てのアリール部分はハロゲンで置換されていてもよい;ピリジル;又はピリジルアミノであり、
    Xは、CH又はNであり、
    Jは、単結合、低級アルキレン又は
    Figure 2004508331
    (式中、Rは、水素、低級アルキル又はN保護基である)であり、
    Qは、−CH−、−CO−又は−SO−であり、但し、XがNであるとき、Jは単結合又は低級アルキレンである]
    を有するか、又はその医薬上許容される塩である、請求項19に記載の興奮性シナプス伝達の調節のための医薬組成物。
  23. 脳障害の予防又は治療のための医薬組成物である、請求項19〜22のいずれか1項に記載の興奮性シナプス伝達の調節のための医薬組成物。
  24. 痴呆又は健忘症の予防又は治療のための医薬組成物である、請求項23に記載の興奮性シナプス伝達の調節のための医薬組成物。
  25. α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を指標として使用することを含む、興奮性シナプス伝達の調節のための薬剤のスクリーニング方法。
  26. 抗痴呆剤又は抗健忘症剤のスクリーニング方法である、請求項25に記載のスクリーニング方法。
  27. α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物が、請求項25〜26のいずれか1項に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物である、請求項1に記載の興奮性シナプス伝達を調節する薬剤。
  28. α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物が、請求項25〜26のいずれか1項に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物である、請求項7に記載の興奮性シナプス伝達の調節方法。
  29. α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物が、請求項25〜26のいずれか1項に記載のスクリーニング方法によって得られる、請求項13に記載のα7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物の使用。
  30. α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物が、請求項25〜26のいずれか1項に記載のスクリーニング方法によって得られる化合物である、請求項19に記載の興奮性シナプス伝達の調節のための医薬組成物。
  31. 請求項25〜26のいずれか1項に記載のスクリーニング方法によって選択される化合物。
JP2002524500A 2000-09-06 2001-09-05 α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を含む興奮性シナプス伝達を調節する薬剤 Pending JP2004508331A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
GBGB0021885.9A GB0021885D0 (en) 2000-09-06 2000-09-06 New use
PCT/GB2001/003992 WO2002020016A1 (en) 2000-09-06 2001-09-05 AGENT FOR MODULATING EXCITATORY SYNAPTIC TRANSMISSION COMPRISING A COMPOUND HAVING ALPHA α7 NICOTINIC ACETYLCHOLINE RECEPTOR ACTIVATION PROPERTY

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004508331A true JP2004508331A (ja) 2004-03-18

Family

ID=9898968

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002524500A Pending JP2004508331A (ja) 2000-09-06 2001-09-05 α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を含む興奮性シナプス伝達を調節する薬剤

Country Status (5)

Country Link
US (1) US20040092528A1 (ja)
EP (1) EP1315494A1 (ja)
JP (1) JP2004508331A (ja)
GB (1) GB0021885D0 (ja)
WO (1) WO2002020016A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014087904A1 (ja) * 2012-12-05 2014-06-12 国立大学法人大阪大学 破骨細胞が関与する疾患の予防又は治療剤

Families Citing this family (25)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20040029894A1 (en) * 2000-12-07 2004-02-12 Nobuya Matsuoka Nootropic effect enhancer
WO2003047625A1 (fr) * 2001-12-07 2003-06-12 Fujisawa Pharmaceutical Co., Ltd. Promoteurs de transmission neuronale
DE10164139A1 (de) 2001-12-27 2003-07-10 Bayer Ag 2-Heteroarylcarbonsäureamide
US20030236287A1 (en) * 2002-05-03 2003-12-25 Piotrowski David W. Positive allosteric modulators of the nicotinic acetylcholine receptor
GB0220581D0 (en) 2002-09-04 2002-10-09 Novartis Ag Organic Compound
AU2004261582C1 (en) 2003-07-22 2010-01-07 Arena Pharmaceuticals, Inc. Diaryl and arylheteroaryl urea derivatives as modulators of the 5-HT2A serotonin receptor useful for the prophylaxis and treatment of disorders related thereto
AR049401A1 (es) 2004-06-18 2006-07-26 Novartis Ag Aza-biciclononanos
GB0415746D0 (en) 2004-07-14 2004-08-18 Novartis Ag Organic compounds
GB0521508D0 (en) 2005-10-21 2005-11-30 Novartis Ag Organic compounds
GB0525673D0 (en) 2005-12-16 2006-01-25 Novartis Ag Organic compounds
GB0525672D0 (en) 2005-12-16 2006-01-25 Novartis Ag Organic compounds
TWI415845B (zh) 2006-10-03 2013-11-21 Arena Pharm Inc 用於治療與5-ht2a血清素受體相關聯病症之作為5-ht2a血清素受體之調節劑的吡唑衍生物
PL2463282T3 (pl) 2007-11-05 2014-01-31 Novartis Ag Pochodne 4-benzyloamino-1-karboksyacylopiperydyny jako inhibitory CETP do leczenia chorób takich jak hiperlipidemia lub miażdżyca tętnic
PT2229356E (pt) 2007-12-03 2012-01-20 Novartis Ag Derivados de 4-benzilamino-pirrolidina 1,2-dissubstituídos como inibidores de cetp úteis para o tratamento de doenças tais como hiperlipidemia ou arteriosclerose
US20110021538A1 (en) 2008-04-02 2011-01-27 Arena Pharmaceuticals, Inc. Processes for the preparation of pyrazole derivatives useful as modulators of the 5-ht2a serotonin receptor
US9126946B2 (en) 2008-10-28 2015-09-08 Arena Pharmaceuticals, Inc. Processes useful for the preparation of 1-[3-(4-bromo-2-methyl-2H-pyrazol-3-yl)-4-methoxy-phenyl]-3-(2,4-difluoro-phenyl)urea and crystalline forms related thereto
CN104784173B (zh) 2008-10-28 2019-07-26 艾尼纳制药公司 用于治疗5-ht2a5-羟色胺受体相关障碍的5-ht2a5-羟色胺受体调节剂组合物
PT3029039T (pt) 2010-05-17 2017-11-28 Forum Pharmaceuticals Inc Formulações farmacêuticas que compreendem formas cristalinas de cloridrato de (r)-7-cloro-n-(quinuclidin-3-il)benzo(b)tiofeno-2-carboxamida mono-hidratado
AU2013259871A1 (en) 2012-05-08 2014-11-20 Forum Pharmaceuticals Inc. Methods of maintaining, treating or improving cognitive function
CN109562085A (zh) 2015-06-12 2019-04-02 阿速万科学有限责任公司 用于预防和治疗rem睡眠行为障碍的二芳基和芳基杂芳基脲衍生物
RU2018103338A (ru) 2015-07-15 2019-08-15 Аксовант Сайенсиз Гмбх Производные диарил- и арилгетероарилмочевины для профилактики и лечения галлюцинаций, ассоциированных с нейродегенеративным заболеванием
JOP20190024A1 (ar) 2016-08-26 2019-02-19 Gilead Sciences Inc مركبات بيروليزين بها استبدال واستخداماتها
US10836769B2 (en) 2018-02-26 2020-11-17 Gilead Sciences, Inc. Substituted pyrrolizine compounds and uses thereof
EP3806956A4 (en) 2018-06-13 2022-08-10 Zachriel Neurosciences, Llc METHODS AND DOSAGE REGIMES FOR PREVENTING OR DELAYING THE ONSET OF ALZHEIMER'S DISEASE AND OTHER FORMS OF DEMENTIA AND MILD COGNITIVE IMPAIRMENT
US20240050502A1 (en) * 2020-12-16 2024-02-15 Caamtech, Inc. Amanita muscaria compounds

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5250528A (en) * 1989-08-02 1993-10-05 Fujisawa Pharmaceutical Co., Ltd. New aminopiperazine derivatives
GB8917687D0 (en) * 1989-08-02 1989-09-20 Fujisawa Pharmaceutical Co Aminopiperazine derivatives,processes for preparation thereof and pharmaceutical composition comprising the same
ZA957746B (en) * 1994-09-14 1996-07-25 Lundbeck & Co As H Carbamoyloxy amine compounds
ZA9710872B (en) * 1996-12-12 1998-06-15 Fujisawa Pharmaceutical Co N-(4-acetyl-1-piperazinyl)-4-fluorobenzamide hydrate.
WO1998048801A1 (fr) * 1997-04-26 1998-11-05 Sumitomo Pharmaceuticals Co., Ltd. Composes 2-azabicyclo
JPH1180027A (ja) * 1997-09-12 1999-03-23 Dai Ichi Seiyaku Co Ltd 向知性薬
US6344358B1 (en) * 1999-05-28 2002-02-05 Fujisawa Pharmaceutical Co., Ltd. Agent for expression of long-term potentiation of synaptic transmission comprising compound having brain somatostatin activation property

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014087904A1 (ja) * 2012-12-05 2014-06-12 国立大学法人大阪大学 破骨細胞が関与する疾患の予防又は治療剤
JPWO2014087904A1 (ja) * 2012-12-05 2017-01-05 国立大学法人大阪大学 破骨細胞が関与する疾患の予防又は治療剤

Also Published As

Publication number Publication date
WO2002020016A1 (en) 2002-03-14
EP1315494A1 (en) 2003-06-04
GB0021885D0 (en) 2000-10-18
US20040092528A1 (en) 2004-05-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2004508331A (ja) α7ニコチン性アセチルコリンレセプター活性化特性を有する化合物を含む興奮性シナプス伝達を調節する薬剤
Brockhaus et al. Synaptic inhibition in the isolated respiratory network of neonatal rats
Rock et al. Gabapentin actions on ligand-and voltage-gated responses in cultured rodent neurons
Kenny et al. Neurobiology of the nicotine withdrawal syndrome
Bunney et al. Dopamine and norepinephrine innervated cells in the rat prefrontal cortex: pharmacological differentiation using microiontophoretic techniques
McCrimmon et al. Involvement of excitatory amino acids in neurotransmission of inspiratory drive to spinal respiratory motoneurons
Montigny et al. Pre‐and postsynaptic effects of zimelidine and norzimelidine on the serotoninergic system: single cell studies in the rat
Szabo et al. Effects of the selective norepinephrine reuptake inhibitor reboxetine on norepinephrine and serotonin transmission in the rat hippocampus
Lanfumey et al. Further assessment of the antagonist properties of the novel and selective 5-HT1A receptor ligands (+)-WAY 100 135 and SDZ 216–525
Borsini et al. BIMT 17, a 5-HT 1A receptor agonist/5-HT 2A receptor antagonist, directly activates postsynaptic 5-HT inhibitory responses in the rat cerebral cortex
Kauer et al. Alpha bag cell peptide directly modulates the excitability of the neurons that release it
Kondratskaya et al. BN52021, a platelet activating factor antagonist, is a selective blocker of glycine-gated chloride channel
EP3131539B1 (en) Semicarbazide-sensitive amine oxidase inhibitors for use as analgesics in traumatic neuropathy and neurogenic inflammation
US20050228019A1 (en) Enhancement of ampakine-Induced facilitation of synaptic responses by cholinesterase inhibitors
US20040266851A1 (en) Materials and methods for treatment of neurological disorders involving overactivation of glutamatergic ionotropic receptors
Hayes et al. The depolarising action of capsaicin on rat isolated sciatic nerve
US20090197823A1 (en) Aliskiren modulation of neurogenesis
EP3258930A1 (en) Oxabicycloheptanes and oxabicycloheptenes for the treatment of depressive and stress disorders
Austgen et al. 5-hydroxytryptamine 2C receptors tonically augment synaptic currents in the nucleus tractus solitarii
Newberry et al. Actions of 5-HT on human neocortical neurones in vitro
Risso et al. Nicotine exerts a permissive role on NMDA receptor function in hippocampal noradrenergic terminals
Cunningham et al. Neurobehavioral pharmacology of cocaine: role for serotonin in its locomotor and discriminative stimulus effects
Candura et al. Investigation into vanadate-induced potentiation of smooth muscle contractility in the rabbit isolated ileum
Ninan et al. Calcium/calmodulin‐dependent kinase II is involved in the facilitating effect of clozapine on NMDA‐and electrically evoked responses in the medial prefrontal cortical pyramidal cells
Hwang et al. Serotonin modulates synaptic transmission in immature rat ventrolateral medulla neurons in vitro

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20050520