JP2004508056A - 5−ヒドロキシトリプタミン受容体遺伝子多型、および治療に対する応答 - Google Patents

5−ヒドロキシトリプタミン受容体遺伝子多型、および治療に対する応答 Download PDF

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Abstract

5−ヒドロキシトリプタミン3受容体遺伝子の多型および/またはUGT1A4遺伝子の多型と、5−ヒドロキシトリプタミンリガンドによる治療に対する被験体の表現型応答との相関関係を記載する。治療を助けるために被験体をスクリーニングする方法、5HTリガンドをスクリーニングする方法、および治療方法を提示する。

Description

【0001】
発明の分野
本研究は、5−ヒドロキシトリプタミン3受容体(5HT3R)遺伝子の多型、UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ1A4(UGT1A4)遺伝子中の多型、およびそれらに関連するまたは相関関係のある表現型に関する。特に、本研究は、このような多型と、医薬治療に対する胃腸障害(過敏性腸症候群(IBS)など)を患う被験体の応答との相関関係に関する。本研究は、さらに、薬物活性について化合物をスクリーニングする方法に関する。本研究はまた、予測目的のために被験体を遺伝子型決定する方法に関する。
【0002】
発明の背景
過敏性腸症候群(IBS)を含む病因が未知の多くの胃腸障害は、多因子障害であると考えられている。これらの障害の多くにおいて、生化学的マーカーは見つかっておらず、診断は主に臨床的症状の観察によりなされる。単一遺伝子性メンデル障害とは異なり、糖尿病、片頭痛および心血管疾患などの複雑な障害は、多因子性である傾向があり、1つ以上の感受性遺伝子と環境的要因との相互作用により引き起こされる。現在、IBSについての個々の感受性遺伝子は、連鎖研究または関連研究のいずれによっても確認されていない。
【0003】
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛、腹部不快感、および便通習慣異常を特徴とする、よくある胃腸障害である。IBSは、便秘(便秘優勢サブタイプ)または下痢(下痢優勢サブタイプ)のいずれか、または交代性の便秘および下痢(交代(alternator)サブタイプ)の便通習慣異常症状を特徴とし得る。現在、IBSの病態生理学マーカーまたは診断マーカーは1つもない。しかし、IBSについての様々な診断的基準が利用可能である(例えば、Thompsonら, Gastroent. Int., 2:92 (1989);Manningら, Br. Med. J. 2:653 (1978);Thompsonら, Gut 45:1143 (1999))。塩酸アロセトロンなどによる、5−ヒドロキシトリプタミン(5HT、またはセロトニン)受容体における拮抗作用は、下痢優勢型過敏性腸症候群の治療において有用であることが示されている。
【0004】
塩酸アロセトロン(CAS登録番号:CAS−122852−69−1;米国特許第5,360,800号を参照)は、5−HT3受容体アンタゴニストである。動物およびヒトでの研究のいずれもが、5−HT3受容体遮断が、過敏性腸症候群(特に、下痢優勢型IBS)の治療において治療的価値を有することを示している。(本明細書で引用する全ての米国特許の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。)
二重盲検プラセボ対照試験では、塩酸アロセトロンは、主な腸症状が下痢である女性IBS患者において、痛みを緩和し、腸機能を改善することが示されている。Bardhanら, Aliment Pharmacol Ther 2000 Jan;14(1):23−34;Jonesら, Aliment Pharmacol Ther 1999 Nov;13(11):1419−27;Camilleriら, Aliment Pharmacol Ther 1999 Sep;13(9):1149−59;Mangelら, Aliment Pharmacol Ther 1999 May;13 Suppl 2:77−82を参照のこと。アロセトロンはさらに、カルチノイド下痢の症状緩和のための可能性のある治療として示唆されている。Saslowら, Gut 1998 May;42(5):628−34。
【0005】
5− ヒドロキシトリプタミン受容体
分子クローニングにより、少なくとも15の5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)受容体サブタイプの存在が明らかになり、これらは構造および機能に基づき様々なサブファミリーに分けられる。5−ヒドロキシトリプタミン受容体は、単一の組織種類に限定されず、脳、脊髄、心臓および胃腸管、ならびに他の細胞型においてみとめられる。5−HT3受容体は、リガンド依存性(ligand−gated)イオンチャンネルである(Daviesら, Nature 397:359 (1999))が、他の5−HT受容体は、Gプロテイン共役型受容体のスーパーファミリーに属する。Gerhardtら, Eur J Pharmacol 1997 Sep 3:334(1):1−23。分子クローニング技術により、薬理学的または機能的データが殆どまたは全く存在しない推定5−HT受容体がさらに明らかになった。Sleightら, Ann NY Acad Sci 1998 Dec 15;861:91−6。
【0006】
胃腸管においては、5HT3、5HT4および5HT1a受容体を含む様々な5−ヒドロキシトリプタミン受容体が同定および特徴決定されており、これらの受容体は腸運動および内臓知覚伝導路をモジュレートする。様々な5HT3受容体アンタゴニスト(例えば、アロセトロン、グラニセトロンおよびオンダンセトロン)が、IBSの治療のために同定されている。このクラスの薬剤は、内臓知覚感度を低下させ、遠位腸における運動活性に対する阻害的効果を有すると思われる。完全および部分5HT4アゴニスト(例えば、HTF919、テガセロド)は、便秘優勢型IBSを改善するための潜在的な治療薬である。予備的研究では、これらの物質がIBSにおいて治療的な可能性を有し得ることが示唆されている。Farthingら, Baillieres Best Pract Res Clin Gastroenterol. 1999 Oct;13(3):461−71。5HT4アンタゴニスト(ピボセロド、SB−207266A)も、IBSの治療のために示唆されている。
【0007】
UDP− グルクロノシルトランスフェラーゼ
UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGTまたはUDPGT;EC 2.4.1.17)は、様々な内因性物質(ステロイド、胆汁酸およびビリルビンを含む)のグルクロン酸抱合を触媒する。その生成物はより極性となり、それにより細胞から排出され易くなる。UGTの大きなファミリーが存在し、それらは多数の構造的に多様な化合物のグルクロン酸抱合を可能にする(TukeyおよびStrassburg, Ann Rev Pharmacol Toxicol 40:581, 2000)。全体的な構造的類似性に基づき、公知のUGTは、UGT1またはUGT2遺伝子のいずれかから誘導される。ヒトUGT1タンパク質は、少なくとも12のプロモーター/第一エキソン(それぞれタンパク質のアミノ末端部分の約285アミノ酸をコードする)を含む2番染色体上の単一の複合遺伝子座にコードされる(Ritterら, J. Biol. Chem 267:3257 (1992);Strassburgら, Mol. Pharmacol 52:212 (1997))。エキソン2〜5は、UGT1タンパク質のカルボキシル末端側の半分をコードする。スプライシングによりユニークなUGT1転写産物が生成され、別々のアミノ末端領域をコードするが同一のカルボキシル末端部分を有するmRNAが得られる。UGT遺伝子スーパーファミリーの命名はMackenzieら, Pharmacogenetics 7:255 (1997)で議論されている。
【0008】
発明の要旨
本発明者らは、5−ヒドロキシルトリプタミン−3受容体(5HT3R)遺伝子の多型が、医薬治療に対する過敏性腸症候群(IBS)を患う被験体の応答と相関することを確認した。特に、本発明者らは、5HT3R遺伝子のC178T多型(本明細書中において定義する)が、5HTアンタゴニストによる治療に対するIBSを患う患者の応答と関連することをみとめ、さらに、アロセトロンによって治療された場合に、(5HT3R遺伝子の同じ部位において別の多型を有する患者と比べて)IBS症状の十分な緩和がより高率でみられる、IBS患者の遺伝的サブセットを同定した。
【0009】
本発明の第一の態様は、患者集団をスクリーニングして、胃腸障害のための5HTリガンドによる治療に対して好ましく応答する見込みが高い被験体を識別する方法である。被験体がIBSを患っていると予め診断されていてもよいし、またはそのスクリーニングをIBS診断の試みと併せて用いてもよい。
【0010】
本発明のさらなる態様は、5HTリガンドによる治療に対する被験体の応答を予想する上での助けとして、5−ヒドロキシトリプタミン(5HT)リガンドで治療可能な胃腸疾患を患う被験体をスクリーニングする方法である。本方法は、被験体のDNAのサンプルを得ること、および5HT3R遺伝子中の多型アレル部位における被験体の遺伝子型を決定することを含む方法であり、かつ、該部位における異なる遺伝子型は、5HTリガンドによる治療に対する異なる割合で示される表現型応答と関連している。そのサンプルにおいて検出される遺伝子型は、被験体がその遺伝子型に関連する表現型応答をおそらく示すことを示唆する。さらに、被験体の遺伝子型は、UGT1A4遺伝子の多型部位において決定してもよく、該部位における異なる遺伝子型は、5HTリガンドによる治療に対する異なる割合で示される表現型応答と関連している。
【0011】
本発明のさらなる態様は、5HTリガンドによる治療に対する被験体の応答を予想する上での助けとして、過敏性腸症候群(IBS)を患う被験体をスクリーニングする方法である。本方法は、被験体のDNAのサンプルを得ること、および5HT3R遺伝子中の多型アレル部位における被験体の遺伝子型を決定することを含む方法であり、かつ、該部位における異なる遺伝子型は、5HTリガンドによる治療に対する異なる割合で示される表現型応答と関連している。
【0012】
本発明のさらなる態様は、胃腸障害を患う被験体の遺伝子亜集団間での測定可能な表現型効果の多様性について、5−ヒドロキシトリプタミン(5HT)リガンドをスクリーニングする方法である。本方法は、胃腸障害を患う被験体集団に5HTリガンドを投与すること、およびそれぞれの被験体からDNAサンプルを得ることを含む。このDNAサンプルは5HT3R遺伝子の多型アレルについて遺伝子型決定され、さらに、多型アレル遺伝子型と、被験体集団における表現型応答の出現との相関関係が決定される。所望の治療応答または副作用の出現率の増加または低下(別の遺伝子型を有する被験体における出現率と比較した場合)と相関する遺伝子型の検出は、胃腸障害の治療におけるリガンドの有効性が遺伝子亜集団間で異なることを示す。
【0013】
本発明のさらなる態様は、5HT3受容体アンタゴニストで治療された場合にIBS症状の十分な緩和がより高率でみられるかまたは副作用の出現率がより低いことが予測される5HT3R遺伝子の多型を有する患者に5HT3受容体アンタゴニストを投与することにより、過敏性腸症候群を患う被験体を治療する方法である。5HT3R遺伝子の同じ部位において別の多型を有する被験体と比べ、その緩和の割合は高い(そしてその副作用の割合は低い)。
【0014】
本発明のさらなる態様は、アロセトロンで治療された場合に(5HT3R遺伝子の同じ部位において別の多型を有する被験体に比べて)IBS症状の緩和がより高率でみられることおよび/または副作用の出現率がより低いことが予測される5HT3R遺伝子の多型を有する被験体に対して、アロセトロンを投与することにより、過敏性腸症候群を患うそのような被験体を治療する方法である。
【0015】
本発明のさらなる態様は、5HT3R遺伝子の多型アレル部位における被験体の遺伝子型(この部位における異なる遺伝子型が、5HT受容体リガンドによるIBSの治療に対する異なる割合で示される表現型応答と関連する)を同定することを用いて、過敏性腸症候群(IBS)を患う被験体を治療する方法である。同定された遺伝子型を有する被験体において好ましい表現型応答の割合の増大と関連付けられる5HT受容体リガンドを、その被験体に投与する。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、5HT受容体により仲介される胃腸障害の治療、特に過敏性腸症候群(IBS)の治療に関する。本発明者らは、5HT3RおよびUGT1A4遺伝子における多型性変異が、医薬治療、特に5HT受容体リガンドによる治療、より具体的にはアロセトロンを含む5HT3受容体アンタゴニストによる治療に対する応答と、相関または関連し得ることを確認した。本発明者らは、5HT3RおよびUGT1A4遺伝子の多型が、5HT受容体リガンドによる治療に対する胃腸障害を患う被験体の応答と相関することを確認した。
【0017】
本研究では、遺伝子サンプルを、非便秘優勢型IBSの治療のためのアロセトロンの2つの臨床治験に登録した237人の被験体から得た。この遺伝子サンプルを、5HT3受容体(5HT3R)遺伝子のC178T多型(本明細書中において定義)の存在、およびUGT1A4遺伝子(以下に記載)のC70A多型(本明細書中において定義)の存在について、当該分野で公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、スクリーニングした。
【0018】
5HT3R
ヒト5HT3受容体のヌクレオチド配列、およびエキソン−イントロン構造はGenBankアクセッション番号AJ005205に開示されている(Brussら, Neuropharmacology 39:308 (2000))。ヒト5HT3受容体のmRNA配列は、GenBankアクセッション番号D49394(Miyakeら, Mol. Pharmacology 48:407 (1995))として提供され、以下の通りである:
Figure 2004508056
Figure 2004508056
Figure 2004508056
Figure 2004508056
(配列番号3および配列番号4)。
【0019】
ヒト5HT3R遺伝子の5’領域における多型は、−42位(atg開始コドンの表示「A」を+1とする)に影響を及ぼし、−42位にあるシトシン(c)残基がチミン(t)に置き換わる。このヌクレオチド位置は、上記において太字下線の活字で示している。本明細書で使用する場合、この多型をC178T多型と称する。遺伝子の5’ヌクレオチド配列における多型変化は、転写効率に影響を与え得る。
【0020】
UGT:
ヒトUGT1A4アイソザイムのエキソン1のヌクレオチド配列は、GenBank受託番号M84128として提供され、以下の通りである:
Figure 2004508056
Figure 2004508056
(配列番号1および配列番号2)。一部の個体においては、UGT1A4のエキソン1にコードされる24番目のアミノ酸(上記配列において太字の活字で示される)がプロリンではなくトレオニンである多型がみとめられる。これは、コドンの最初のヌクレオチドが、「C」ではなく(コドン=ccc、プロリン)、「A」である(コドン=acc、トレオニン)場合に生じる。この多型は、C70A多型と称され得る。というのも、atg開始コドンの「a」を+1とすると、C→A変化が70番目のヌクレオチドで生じるからである。
【0021】
本発明者らは、5HT3R遺伝子のC178T多型について、ホモ接合性遺伝子型(上記番号付けに従うと、−42位にあるCに対してホモ接合性、または−42位にあるTに対してホモ接合性のいずれか)が、5HT3受容体アンタゴニストにより治療された場合にIBS症状の十分な緩和が高い割合でみられることと関連しており、従って、5HT3受容体アンタゴニストによる治療に対する好ましい治療的応答の高い出現率(同じ5HT3受容体アンタゴニストにより治療された、ヘテロ接合性(1,2)遺伝子型を有する被験体と比べて(表1を参照))と関連することを、確認した。5HT受容体リガンドでの胃腸疾患の治療に関して、C178T多型はマーカー多型または機能的多型のいずれでもあり得る。
【0022】
さらに、遺伝子間相互作用を確認した。5HT3R遺伝子のC178T部位においてホモ接合性(1,1または2,2)である被験体のうち、UGT1A4多型(本明細書中で定義)についてホモ接合性(1,1)でもあった被験体は、ヘテロ接合性1,2 UGT1A4遺伝子型を有する被験体と比較して、本研究の間に5〜12週間で十分な緩和がみられた確率が高かった。本研究においてどの被験体もUGT1A4についてホモ接合性2,2遺伝子型を有していなかったため、この被験体グループがどのように応答するかは確認されなかった。5HT受容体リガンドによる胃腸疾患の治療に関して、C70A多型はマーカー多型または機能的多型のいずれでもあり得る。
【0023】
本方法によれば、5HTリガンドにより治療可能な胃腸疾患を患う被験体を遺伝学的にスクリーニングして、このような治療に対するそれらの応答を予測する助けとすることができる。スクリーニングは、被験体からDNAのサンプルを得ること、および、DNAを分析して5−ヒドロキシトリプタミン3受容体(5HT3R)遺伝子中の所定の多型部位における遺伝子型(多型アレルの存在/不在)を決定することを含む。ここで、その所定部位における異なる遺伝子型は、胃腸疾患のための5HTリガンドによる治療に対する異なる割合で示される表現型応答と予め関連付けられたものである。遺伝子スクリーニングは、UGT1A4遺伝子中の所定の多型部位における遺伝子型(多型アレルの存在/不在)を決定することをさらに含み得る。ここで、該部位における異なる遺伝子型は、胃腸疾患のための5HTリガンドによる治療に対する異なる割合で示される表現型応答と予め関連付けられたものである。本方法は、5HT3R遺伝子型およびUGT1A4遺伝子型の両方により、被験体を分類することを含んでいてもよく、ここで、これらの遺伝子の多型アレルの特定の組合せは、胃腸疾患のための5HTリガンドによる治療に対する異なる割合で示される表現型応答と関連することが確認されている。
【0024】
従って、特定の所定の遺伝子型の存在は、個々の被験体がその関連付けられた表現型を示す可能性が高いことを示す。遺伝子型によって絶対的に予測されることはめったにない(すなわち、特定の遺伝子型を有する集団は特定の表現型を高い出現率で示すが、この遺伝子型を有する全ての個体がその表現型を示すものではない)。しかし、本明細書に記載するように被験体を遺伝子型決定することが、5HTリガンドによる治療を受ける被験体の応答を予測する助けになり、従って治療決定の助けになることが当業者には明らかであろう。
【0025】
本明細書に使用する「規定されたゲノム遺伝子座にある多型アレルについて被験体(またはDNAサンプル)を遺伝子型決定する」または「多型アレル部位における遺伝子型を決定する」とは、被験体(またはサンプル)においてどの形態のアレルが存在するかを検出することを意味する。当該分野で周知であるように、個体は特定のアレルについてヘテロ接合性またはホモ接合性であり得る。マイクロサテライトマーカーでの場合のように3つ以上の形態のアレルが存在する場合があり得るし、従って、4つ以上の遺伝子型が存在し得る。
【0026】
本明細書で使用する集団の「遺伝的サブセット」は、特定の遺伝子型を有する集団のメンバーからなる。二対立遺伝子多型の場合には、集団は、潜在的に3つのサブセットに分けられる:すなわち、アレル1に対してホモ接合性(1,1)、ヘテロ接合性(1,2)、およびアレル2に対してホモ接合性(2,2)。
【0027】
本明細書で使用する、多型アレルの遺伝子型決定に基づき特定の表現型応答を示す「素因を有する」被験体は、その多型アレルにおいて異なる遺伝子型を有する個体よりもその表現型を示す可能性が高い。表現型応答が二対立遺伝子多型に基づく場合、その応答は、3つの可能性のある遺伝子型間で異なる可能性がある。
【0028】
本明細書で使用する「5HTリガンドにより治療可能な」胃腸疾患は、(適切な製薬剤形で、および治療有効量での)5HTリガンドの投与により、許容できない副作用を生じることなく症状を低減または緩和することが示されたものである。このような治療有効性は、通常は、医薬品の規制当局(例えば、FDA、EMEA)の認可により、またはピア・レビューされた医学雑誌への臨床研究結果の公開により立証される。そのような化合物の治療有効量は、例えば用量−応答研究を用いて当業者により容易に決定できる。本明細書で使用する、「5HTリガンド」という用語は、部分アゴニストを含む5HT受容体のアンタゴニストおよびアゴニスト、ならびに5−ヒドロキシトリプタミン輸送体(5HTT)と相互作用する薬剤(例えば、選択的セロトニン再取り込みインヒビター、SSRI)を包含する。5HTリガンドは、5HT3および5HT4受容体を含む5HT受容体のあらゆるサブタイプに結合し得るが、リガンドは特定の受容体サブタイプに特異的である場合もある。
【0029】
公知の5HT−関連化合物としては、5HT3受容体アンタゴニスト(例えば、アロセトロン、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ミルタザピン、イタセトロン、パンコプリド(pancopride)、ザトセトロン(zatosetron)、アザセトロン、クリアンセトロン(cliansetron)、YM−144(Yamanouchi)およびRS17017(Roche))が挙げられる。
【0030】
テガセロド、プルカロプリド、ノルシサプリド、およびY−34959(Yoshitomi Pharmaceuticals)として知られる4−アミノ−5−クロロ−2−メトキシ−N−(1−置換ピペリジン−4−イル)ベンズアミドなどを含む5HT4アゴニスト、ならびにブスピロンも知られている。便秘優勢型IBSを治療するための5HT4アゴニストの使用が提案されている。5HT4アンタゴニストとしては、ピボセロド(SmithKline Beecham)が挙げられる。
【0031】
5HT3および5HT4受容体二重アゴニストとしては、レンザプリド(renzapride)(SmithKline Beecham)およびE3620(Eisai)が挙げられる。5HT1a受容体アゴニストも、LY315535(Eli Lilly)として知られている。
【0032】
選択的セロトニン再取り込みインヒビターとしてはフルオキセチンなどが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用する「副作用」とは、治療化合物の投与に対する所望でない応答(すなわち、治療される疾患の症状または原因の緩和に向けられない作用)である。副作用は、比較的重要でない不都合からより深刻な事象にまでわたる。本明細書で使用する、治療に対する「好ましい」表現型応答は、症状(例えば、痛み、切迫性、便通習慣異常)の十分な緩和が、許容可能なレベルの副作用にて得られる応答のことである。特定の表現型応答が、他のものより好ましい(例えば、症状のより大規模な緩和が得られる)ことがあり得る。
【0034】
多型は、機能的影響を示すかまたは示さないヒトゲノム内の変異型配列である。これらの変異型は、遺伝学的研究のあらゆる局面(遺伝疾患の分析および診断、法医学、進化学的研究および集団研究を含む)において使用できる。2つの種類の遺伝学的分析、すなわち、連鎖研究および関連研究が通常行われる。
【0035】
連鎖研究は、遺伝子の機能についての予備知識または仮説無しに遺伝子マップ情報を提供する。連鎖研究では、DNA多型を用い、染色体上の位置が疾患アレルのものと近いマーカー(多型)についてアレル共有頻度がより高くなるとの見込みにより、罹患近親者間で同一である染色体領域を同定する。連鎖領域の物理的クローニングにより、候補疾患遺伝子を有する可能性のあるDNA配列を絞り込む。連鎖解析により疾患遺伝子座は特定の染色体または染色体領域に位置決定されるが、遺伝子を検索するDNA領域は、通常は数百万塩基対の規模がある大きいものである。
【0036】
連鎖とは異なり、関連付けは、集団内の多型と表現型の共存を示す。関連付け研究は、連鎖不均衡(マーカー多型が機能的多型に近接して位置付けられる場合にマーカーと表現型との間で生じる現象)に基づく。マーカーおよび機能的多型が近接しているため、集団中でそれらを分離するためには多数の世代の組換えが必要になる。従って、これらは期待されるよりも高頻度で、同じ染色体上に共存する傾向がある。マーカーは、他方の表現型グループにおける頻度よりも一方の表現型グループにおいてその頻度が有意に高い場合、そのマーカーは特定の表現型と関連すると言われる。一般的に、マーカーが機能的多型部位に近ければ近いほど、関連は強い。
【0037】
関連研究は、連鎖領域を細かくマッピングしたり、連鎖分析では扱いにくい遺伝子座をマッピングしたり、未知の素因遺伝子座をマッピングしたりする機会を提供する。互いに連鎖不均衡である多型が、広い領域にわたって間隔が空いている場合もある。連鎖不均衡は、小さくて1キロベース、大きくて500キロベースの領域において報告されている。遺伝子全体にわたる多型は、互いに連鎖不均衡であり、ゲノム構造全体(イントロン、エキソン、プロモーターおよび転写調節領域、ならびに3’および5’非翻訳領域)を研究する上で有用であり得る。機能的多型と連鎖不均衡であるマーカーを、表現型との相関関係についてテストしてもよい。
【0038】
本発明者らは、5HT3RおよびUGT1A4遺伝子の多型が、IBSの医薬治療に対する被験体の応答に影響を及ぼすことを確認した。従って、これらの遺伝子の(直接的または遺伝子の発現産物を介する)遺伝子型決定は、被験体の遺伝子型間で異なる測定可能な効果を示す治療化合物を同定するのに有用である。当業者に明らかなように、測定される効果は、具体的な胃腸状態、治療化合物および患者集団に依存する。測定可能な効果は、病理的徴候もしくは症状の緩和もしくは変化、または化合物投与に関連する副作用の発生であり得る。測定は、客観的であっても、または主観的(例えば、患者自身による報告)であってもよい。5HT3Rおよび/またはUGT1A4遺伝子型と治療応答との関連は、個別の被験体が、胃腸疾患のための5HTリガンドによる治療に対して特定の様式で応答する確率を決定する方法を提供する。遺伝子型決定では、通常測定される特徴は、遺伝子またはその発現産物の多型により影響され得るものである。本明細書で使用する多型という用語は、単一ヌクレオチド多型(SNP)、挿入/欠失多型、マイクロサテライト多型、およびタンデム反復の可変数(VNTR)多型を含む。
【0039】
本方法によれば、5HTリガンド活性を有する化合物を、胃腸障害を患う被験体の遺伝子亜集団間でのその効果の変動についてスクリーニングし得る。このような方法は、5HT介在型胃腸障害を患う被験体の集団に化合物を投与すること、その被験体からDNAサンプルを得ること(これは、化合物の投与前または後のいずれかにおいて行われ得る)、5HT3R遺伝子および/またはUGT1A4遺伝子における多型アレル部位を遺伝子型決定すること、ならびに被験体の遺伝子型を、治療に対するそれらの表現型応答(好ましい応答または不都合な応答の両方)と相関させることを伴う。多型アレル部位において別の遺伝子型を有する被験体における出現率と比べて割合が高い所望の治療応答(または割合の低い所望でない副作用)と相関する遺伝子型は、このような胃腸障害を治療する際の化合物の有効性が遺伝子亜集団間で異なることを示す。
【0040】
別の言い方をすれば、本発明の方法は、既知の5HT3R多型アレルおよび/または既知のUGT1A4多型アレルと、5HTリガンドによる治療に対する胃腸障害(IBSなど)を患う被験体の応答との相関関係を決定するために使用され得る。目的の疾患を患う被験体は、特定の多型アレルについての遺伝子型に従って分類され、さらに、治療薬剤に対するそれらの応答が(将来の応答または過去の応答のいずれかについて)評価され、遺伝子型間で比較される。治療薬剤に対する応答は、所望の治療的応答(例えば、徴候または症状の緩和)および所望でない副作用のいずれかまたは両方を含み得る。このようにして、高い(もしくは低い)割合の治療効力、または特定の副作用の高い(もしくは低い)出現率と関連する遺伝子型が同定され得る。応答の増加または低下は、他の遺伝子型と比べたもの、または集団全体としてのものである。
【0041】
多型アレルは、通常、当該分野で公知の任意の適切な技術を用いて、被験体から得たポリヌクレオチドまたはタンパク質中の多型配列の存在を直接決定することにより検出される。このようなポリヌクレオチドは、典型的にはゲノムDNA、またはこのゲノムポリヌクレオチドから得られるポリヌクレオチド断片、例えば個体から得たゲノム物質を用いて作製したライブラリー(例えば、cDNAライブラリー)に含まれる断片である。本発明の方法を実施する前のポリヌクレオチドまたはタンパク質の処理は、以下でさらに説明する。通常、多型の存在は、個体のポリヌクレオチドまたはタンパク質を多型に対する特異的結合剤と接触させること、および該剤が該ポリヌクレオチドまたはタンパク質と結合するか否かを決定し、その結合が多型が存在することを示すことを含む方法において決定される。結合剤は、多型の片脇または両脇に隣接するヌクレオチドおよびアミノ酸(例えば、合計でまたはそれぞれの側で少なくとも2、5、10、15以上の隣接ヌクレオチドまたはアミノ酸)にも結合し得る。一実施形態では、その結合剤は、多型位置に隣接するヌクレオチドまたはアミノ酸と結合することにより、対応する野生型配列と結合可能である。その結合の様式は、多型ポリヌクレオチドまたはタンパク質の結合と異なり得るが、この違いは検出可能である(例えば、これは、以下で説明する配列特異的PCRにおいて実施し得る)。
【0042】
ポリヌクレオチドにおける多型の存在を決定する場合、二本鎖形態で検出することもできるが、通常は一本鎖形態で検出される。
【0043】
結合剤は、典型的に少なくとも10ヌクレオチド(例えば、少なくとも15、20、30、またはそれ以上のヌクレオチド)の長さを有するポリヌクレオチド(一本鎖または二本鎖)であり得る。この結合剤は、ワトソン−クリック塩基対合に参加可能なユニット(プリンまたはピリミジン)を含む構造的に類似したポリヌクレオチドである分子であり得る。結合剤は、典型的に少なくとも10アミノ酸(例えば、少なくとも20、30、50もしくは100またはそれ以上のアミノ酸)の長さを有するタンパク質であり得る。結合剤は、抗体(多型に結合可能な、このような抗体のフラグメントを含む)であり得る。
【0044】
本方法において使用されるポリヌクレオチド剤は、一般的に、目的の多型および隣接配列に、配列特異的な様式で結合し(すなわち、ワトソン−クリック塩基対合によりハイブリダイズし)、従って、通常は、多型および隣接領域の配列に完全にまたは部分的に相補的な配列を有する。
【0045】
本方法の一実施形態では、結合剤をプローブとして使用する。プローブは、標識化されてもよいし、間接的に標識可能であってもよい。標識の検出を利用して、個体のポリヌクレオチドまたはタンパク質上の(つまりそれに結合した)プローブの存在を検出し得る。プローブとポリヌクレオチドもしくはタンパク質との結合を利用して、プローブまたはポリヌクレオチドもしくはタンパク質のいずれかを固定化することもできる(そして、それを1つの組成物または溶液から分離し得る)。
【0046】
本発明の別の実施形態では、個体のポリヌクレオチドまたはタンパク質を、固体支持体上に固定化し、プローブと接触させる。次いで、(多型への結合を介して)固体支持体に固定化されたプローブの存在を、プローブ上の標識を検出することにより直接的に、またはプローブをプローブに結合する成分と接触させることにより間接的に、検出する。ポリヌクレオチド多型を検出する場合、固体支持体は、一般的にニトロセルロースまたはナイロン製である。タンパク質多型の場合には、本方法はELISA系に基づき得る。
【0047】
本方法は、2種のオリゴヌクレオチドプローブを使用するオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイに基づき得る。これらのプローブは、多型を含むポリヌクレオチド上の隣接領域に結合し、これによって(結合後に)適切なリガーゼ酵素により2種のプローブを互いにライゲートさせる。しかし、2本のプローブは、多型を含むポリヌクレオチドにのみ(ライゲーション可能にする様式で)結合し、従って、ライゲートした生成物の検出を利用して多型の存在を決定できるものである。
【0048】
一実施形態では、プローブをヘテロ二重鎖分析に基づく系において使用して、多型を検出する。このような系では、多型を含むポリヌクレオチド配列にプローブが結合した場合、多型が生じる部位においてヘテロ二重鎖が形成される(つまり、二本鎖構造が形成されない)。このようなヘテロ二重鎖構造は、一本鎖又は二本鎖特異的な酵素を使用することにより検出できる。典型的には、プローブはRNAプローブであり、使用する酵素は、ヘテロ二本鎖領域を切断して、切断産物を検出する手段により多型の検出を可能にするRNアーゼHである。
【0049】
本方法は、例えば、PCR Methods and Applications 3:268−71 (1994)およびProc. Natl. Acad. Sci. 85:4397−4401 (1998)に記載されている蛍光化学切断ミスマッチ分析に基づき得る。
【0050】
一実施形態では、ポリヌクレオチド剤は、多型を含むポリヌクレオチドと結合する場合にのみ、PCR反応用のプライマー(すなわち、配列またはアレル特異的PCR系)としてはたらき得る。従って、PCR生成物は、個体のポリヌクレオチドに多型が存在する場合にのみ生成される。従って、多型の存在は、PCR生成物の検出により判定され得る。多型に相補的なプライマーの領域は、プライマーの3’末端にまたはその付近にあることが好ましい。この系の一実施形態では、そのポリヌクレオチド剤は、野生型配列には結合するが、PCR反応のプライマーとしては作用しない。
【0051】
本方法は、制限断片長多型(RFLP)に基づく系であり得る。これは、ポリヌクレオチド中の多型の存在が、制限酵素により認識される制限部位を形成するかまたは破壊する場合に使用できる。従って、このような多型を有するポリヌクレオチドの処理により、対応する野生型配列と比べて異なる生成物が生じる。従って、特定の制限消化生成物の存在を検出することを利用して、多型の存在を決定できる。
【0052】
多型の存在は、多型の存在がもたらす、ゲル電気泳動の際のポリヌクレオチドまたはタンパク質の移動度の変化に基づき決定し得る。ポリヌクレオチドの場合、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析を使用してもよい。これは、対応する野生型ポリヌクレオチドと比較した、変性ゲル上の一本鎖ポリヌクレオチドの移動度を測定し、移動度の違いの検出により多型の存在を示す。変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)は、ポリヌクレオチドを変性勾配ゲルを通じて電気泳動させる類似の系であり、対応する野生型ポリヌクレオチドと比較した移動度の違いが多型の存在を示す。
【0053】
多型の存在は、蛍光染料および消光剤利用型PCRアッセイ(TAQMANTM PCR検出系など)を用いて決定され得る。簡単に言うと、このアッセイは、多型周囲配列および多型を含有する配列を含むアレル特異的プライマーを使用する。特異的プライマーを、その5’端において蛍光色素で、その3’端において消光剤で、そしてそれに対するヌクレオチドの付加を予防する3’リン酸基で標識化する。通常、該色素の蛍光は、同じプライマー中に存在する消光剤により消光される。アレル特異的プライマーは、多型を含む5’側アレルのいずれにもハイブリダイズ可能な第2のプライマーと共に使用する。
【0054】
アッセイにおいて、多型を含むアレルが存在する場合、Taq DNAポリメラーゼは、特異的プライマーに到達するまで非特異的プライマーにヌクレオチドを付加する。そして、エンドヌクレアーゼ活性により、ポリヌクレオチドから特異的プライマーの消光剤および蛍光色素を解放する。従って、蛍光色素は、もはや消光剤の近くにないので蛍光を発する。多型を含まないアレルの存在下では、特異的プライマーと鋳型との間のミスマッチによりTaqのエンドヌクレアーゼ活性が阻害され、蛍光色素は消光剤から解放されない。従って、発光した蛍光を測定することにより、多型の存在または不在を検出できる。
【0055】
多型を検出する別の方法では、多型領域を含むポリヌクレオチドを、多型を含む領域全体にわたり配列決定して、多型の存在を決定する。
【0056】
従って、遺伝子型決定のための本方法において、当該分野で公知の以下の技術の任意のものを利用し得る:
・全般技術:DNA配列決定、ハイブリダイゼーションによる配列決定;
・走査技術:PTT(タンパク質末端切断技術)、SSCP(一本鎖高次構造分析)、DGGE(変性勾配ゲル電気泳動)、TGGE(温度勾配ゲル電気泳動)、Cleavase、ヘテロ二重鎖分析、CMC(化学ミスマッチ切断)、酵素ミスマッチ切断;
・ハイブリダイゼーションベースの技術:固相ハイブリダイゼーション(ドットブロット、MASDA、逆ドットブロット、オリゴヌクレオチドアレイ(チップ));液相ハイブリダイゼーション(TAQMANTM、モレキュラー・ビーコン法(Molecular Beacons));
・伸長ベースの技術:ARMS(増幅不応突然変異系(Amplication Refractory Mutation System))、ALEX(増幅不応突然変異系直鎖状伸長(Amplification Refractory Mutation System Linear Extension))、SBCE(単一塩基鎖伸長(Single Base Chain Extension));
・組み込みベースの技術:ミニ配列決定(Mini−sequencing)、APEX;(アレイ化プライマー伸長(Arrayed Primer Extension))
・制限酵素ベースの技術:RFLP(制限断片長多型)
・ライゲーションベースの技術:OLA(オリゴヌクレオチド伸長アッセイ)
・その他の技術:インベーダー法(Invader)(Third Wave Technologies)。
【0057】
本発明はまた、予測(患者管理)テストまたはテストキットも提供する。このようなテストは、遺伝子型と、胃腸疾患を治療する際の5HTリガンドに対する表現型応答との予め定められた関連に基づき、胃腸疾患の疾患管理を助ける。このようなテストは、以下の(a)および(b)を包含する様々な形式を取り得る。
【0058】
(a)所定の多型の存在についてDNAまたはRNAを分析する分子テスト。適切なテストキットは、以下の試薬または機器を1つ以上含み得る:すなわち、前記薬剤と多型との結合を検出する手段、ポリヌクレオチドに作用可能な酵素(通常は、ポリメラーゼまたは制限酵素)、酵素試薬のための適切な緩衝液、多型に隣接する領域に結合するPCRプライマー、陽性または陰性対照(または両方)、ゲル電気泳動装置、ならびにサンプルからDNAを単離する手段。本製品は、現行技術により説明されているチップ技術の1つを利用し得る。テストキットは、特定の多型または遺伝子型の存在と、5HTリガンドによる治療に対してIBSなどの胃腸疾患を患う被験体が好ましく応答する見込みとの相関関係を示した、印刷されたまたは機械で読取り可能な指示書を含み得る。
【0059】
(b)所定の多型の存在を示す、被験体の身体から得られる材料(タンパク質または代謝産物を含む)を分析する生化学テスト。適切なテストキットは、所定の多型領域(もしくは多型に隣接する特異的領域)と特異的に結合する分子、アプタマー、ペプチドもしくは抗体(抗体フラグメントを含む)、または本明細書で定義した結合剤を含む。本製品は、(当該分野で公知の)1つ以上の追加の試薬または機器をさらに含み得る。テストキットはまた、特定の多型または遺伝子型の存在と、5HTリガンドによる治療に対してIBSを患う被験体が好ましく応答する見込みとの相関関係を示した、印刷されたまたは機械で読取り可能な指示書を含み得る。
【0060】
本発明は、5HTリガンドにより治療可能なIBSまたは別の胃腸障害を患っていると診断された被験体をスクリーニングして、5HTリガンド、特に5HT3受容体アンタゴニスト、特にアロセトロンによる治療に対して特定の様式で応答する見込みを決定する方法を提供する。本方法は、(他の遺伝子型を有する被験体における割合と比べて)高いかもしくは低い割合で示される特定の所望の治療的結果と予め関連付けられた、または(他の遺伝子型を有する被験体における出現率と比べて)所望でない副作用の高いかもしくは低い出現率と関連付けられた、5HT3R遺伝子および/またはUGT1A4遺伝子の多型について被験体をスクリーニングすることを含む。被験体は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0061】
5HTリガンドによる被験体の治療は、有効量の医薬薬剤をそれを必要とする被験体に投与することを含む。薬剤の用量は、製薬分野において公知および認知されている方法により決定されるが、これは当業者により決定できる。アロセトロンの適切な用量範囲および血漿中濃度は、米国特許第5,360,800号の開示に提示されている(該文献の開示全体を参照により本明細書に援用する)。
【0062】
「連鎖不均衡」は、異なるゲノム位置において、偶然に期待されるよりも高頻度で特定のアレルが共に現れる傾向を指す。連鎖不均衡(LD)は、当該分野で公知の方法により数量化され得る(例えば、DevlinおよびRisch, Genomics 29:311 (1995);BS Weir, Genetic Data Analysis II, Sinauer Associates, Sunderland, MD (1996)を参照)。例えば、アレルの任意の特定の組合せ(すなわちハプロタイプ)の頻度がそれら各々の集団頻度の積である場合、所定の遺伝子座にあるアレルは完全均衡にあると定義され得る。通常使用される連鎖不均衡の指標はrである:
【数1】
Figure 2004508056
[式中、
【数2】
Figure 2004508056
である。]
nrは、二対立遺伝子マーカーについて自由度1のカイ二乗分布で近似される。0.05レベルにおける有意なカイ二乗統計量に対応するrを示す遺伝子座は、連鎖不均衡にあるとみなされる(BS Weir 1996 Genetic Data Analysis II Sinauer Associates, Sunderland, MD)。
【0063】
本発明の方法が、特定の表現型と関連することが示されたアレルと連鎖不均衡にあるアレル、好ましくは完全連鎖不均衡にあるアレルを検出することにより実施され得ることは当業者には明らかであろう。
【0064】
以下で説明する本研究は、過敏性腸症候群(IBS)のアロセトロンによる治療に対する応答(痛みおよび不快感の十分な緩和)において、2つの候補遺伝子が関与することを示す。アロセトロンで治療される被験体の中で、1,1または2,2 5HT3R遺伝子型を有する被験体は、1,2 5HT3R遺伝子型を有する被験体よりも応答の割合が高かった。これらのデータは、なぜヘテロ接合性グループの応答の程度が低いのかを説明するものではない。
【0065】
アロセトロンで治療される被験体の中で、決定樹分析およびコクラン−マンテル−ヘンツェル(Cochran−Mantel−Hanzel)統計から得た結果は、遺伝子間相互作用(5HT3RおよびUGT1A4)を示唆した。ただし、これは、従来の回帰モデリングでは確認されなかった。このパターンは、5HT3R−C178Tについて1,1または2,2遺伝子型、およびUGT1A4−C70Aについて1,1遺伝子型を有する被験体が、他の遺伝子型と比べて、IBSに対するアロセトロンによる治療に対して高い割合で応答を示すことを示唆した。
【0066】
プラセボで処置された被験体の中で、1,1 UGTA14−C701A遺伝子型を有する被験体は、1,2 UGTA14遺伝子型を有する被験体と比べて、より好ましい応答を示す割合が高かった。同じ1,1パターンが高い割合で示される応答(治療グループの遺伝子間相互作用の一部としてもみとめられる)と関連付けられることから、この遺伝子は、より穏やかな程度の疾患またはより程度の低い痛みに対するマーカーであり得る。
【0067】
実施例
実施例1:臨床研究および遺伝子型決定
当該分野では周知である遺伝子型決定方法を使用して、非便秘優勢型IBSの治療のためのアロセトロンの臨床治験に登録された237人の被験体から遺伝子データを得た。被験体のDNAのサンプルを、(上述したように)5HT3R遺伝子におけるC178T多型の存在、およびUGT1A4遺伝子におけるC70A多型の存在についてタイピングすることを含めて遺伝子型決定した。
【0068】
二重盲検プラセボ対照臨床治験においては、女性被験体がアロセトロンまたはプラセボのいずれかにより12週間までの治療を受けた。被験体がIBS症状である痛みおよび不快感の十分な緩和を報告した場合に、アロセトロンに対する好ましい応答であると定義し、症状緩和の持続期間を記録した。次いで、臨床治験条件におけるアロセトロンに対するそれぞれの被験体の応答を、遺伝子型データと共に分析して、高い(または低い)割合で示される治療効力と関連する遺伝子型を同定した。
【0069】
実施例2:臨床治験データの分析
結果の変数として「痛みおよび不快感からの十分な緩和」(本明細書において「十分な緩和」と称する)を用いて、臨床治験データを分析した。分析は、3つの異なる符号化(coding)スキームを用いて実施した:すなわち、連続的(0週間から12週間までの十分な緩和)、3レベル(0週間、1〜4週間、または5〜12週間に及び得られた緩和)、および二分法(dichotomous)(0〜4週間の十分な緩和、対、5〜12週間の十分な緩和)。
【0070】
再帰的分割(recursive partitioning)分析(決定樹)を実施して、治療応答と関連する候補遺伝子を同定した。再帰的分割のために2つのソフトウェアアプリケーションを使用して、結果を比較した。SAS(統計分析ソフトウェア)を用いて、確証的ロジスティック回帰、線形回帰、およびコクラン−マンテル−ヘンツェル統計を作成した。
【0071】
実施例3:3レベル符号化スキームについての再帰的分割結果
(プラセボと比べて)アロセトロンによる治療は、治療応答について最も強く識別された因子であった(p=0.0055)。
【0072】
再帰的分割分析(表1および2を参照)により、臨床治験においてアロセトロンに対する高い割合で示された応答と関連付けられた2つの遺伝子の多型を同定した。これらは、(本明細書において定義される)5HT3R遺伝子のC178T多型、および(定義される)UGT1A4遺伝子のC70A多型であった。
【0073】
5HT3RおよびUGT1A4遺伝子の多型を含む様々な多型の存在に従って、被験体のDNAを符号化した。5HT3R遺伝子中のC178T多型部位における「C」についてホモ接合性である被験体は1,1と符号化し;C178T多型部位における「T」についてホモ接合性である被験体は2,2と符号化し;およびヘテロ接合性状態は1,2と符号化した。UGT1A4遺伝子中のC70A多型部位における「C」についてホモ接合性である被験体は1,1と符号化し;C70A多型部位における「A」についてホモ接合性である被験体は2,2と符号化し;およびヘテロ接合性状態は1,2と符号化した。
【0074】
UGT1A4および5HT3R多型についての結果が被験体のDNAデータから欠けている場合には(0,0と符号化)、データを分析から排除した。
【0075】
それぞれの治療グループについて、候補遺伝子による応答の予想を評価した(表1)。
【0076】
アロセトロンにより治療された被験体中、
・5HT3R−C178Tについてヘテロ接合性(1,2)である被験体は、該部位においてホモ接合性(1,1または2,2)である被験体と比べて良好な治療応答を示す可能性が低かった。
【0077】
・5HT3R−C178Tについて1,1または2,2の被験体の中で、UGT1A4−C70Aについて1,1でもあった被験体は、UGT1A4−C70Aについて1,2の被験体と比べて良好な治療応答を示す可能性が高かった(p=0.002)。
【0078】
プラセボで治療された被験体中、
・UGT1A4−C70Aについて1,1であった被験体は、UGT1A4−C70Aについて1,2であった被験体よりもより良好な治療応答を示した(p=0.06)。
【0079】
【表1】
Figure 2004508056
【0080】
【表2】
Figure 2004508056
【0081】
実施例4:ロジスティック回帰結果
ロジスティック回帰分析を用いて、混在する結果での再帰的分割を検証した。初期ロジスティックモデルには3レベル結果応答(0、1〜4、5〜12週間)を使用した。全ての可能性のある予測値を含む完全モデルは、応答の唯一の有意な予測要因が、治療(アロセトロン 対 プラセボ)と5HT3R−C178T遺伝子型との相互作用であったことを示唆した(p=0.004)。この有意な相互作用条件のために、その後の分析は治療グループに分類して実施した(表3)。
【0082】
プラセボ被験体についてのモデルは、遺伝子も、遺伝子間相互作用のいずれも、p<0.05レベルで有意でなかったことを示したのみであった。UGT1A4−C70Aについて、再帰的分割分析における境界線は、ロジスティック回帰分析においてp=0.07まで降下した(表3)。しかし、本明細書で使用した三分法(trichotomous)ロジスティック回帰は、結果=2(5〜12週間) 対 0(0週間)または1(1〜4週間)のオッズと、1(1〜4週間)または2(5〜12週間) 対 0(0週間)のオッズとを比較しており、これは決定樹分析で使用するアルゴリズムとはいくらか異なることを留意されたい。しかし、p=0.06からp=0.07への変化は、1,1 UGT1A4遺伝子型を有する被験体においてより良い応答の傾向があることを示唆する。
【0083】
アロセトロンで治療された被験体についてのモデルは、1,1 UGT1A4遺伝子型、および1,1または2,2のいずれかの5HT3R遺伝子型を有する被験体が、他の遺伝子型と比べて良好な応答を示す可能性がより高いという、決定樹と同じ遺伝子間相互作用を示唆したのみであった(p=0.057)。
【0084】
二分法(2元(binary))評価項目(0〜4週間 対 5〜12週間の十分な緩和)を用いたロジスティック回帰は、プラセボグループについて有意な遺伝子型効果を明らかにしなかった。
【0085】
アロセトロンで治療されたグループにおける二分法評価項目(0〜4週間 対 5〜12週間の十分な緩和)を用いたロジスティック回帰は、5HT3R−C178Tが治療応答と有意に関連するが(p=0.034)、5HT3RおよびUGT1A4の遺伝子間相互作用は有意ではないことを示した(表3)。治療グループにより分類された、遺伝子関連付けによる応答のコクラン−マンテル−ヘンツェル統計により、5HT3RおよびUGT1A4が、それぞれ治療およびプラセボグループに対する応答と有意に関連することを確認した(表5)。
【0086】
実施例5:線形回帰結果
上述したような治療と候補遺伝子との相互作用のため、アロセトロンおよびプラセボを受けている被験体について別々にモデルを作成して、全体的な結果の解釈を容易にした。
【0087】
プラセボグループのうち、週の合計数を評価項目とした線形モデルにより、UGT1A4−C70A 1,1遺伝子型を有する被験体が、1,2遺伝子型を有する被験体と比べてより良好な応答(より長い週にわたる緩和)を示すことを確認した(p=0.037)。(表4)
アロセトロン治療グループ中、線形モデルの結果は、5HT3R遺伝子型1,1または2,2を有する被験体が、5HT3R 1,2を有する被験体グループよりも良好な応答(より長い週にわたる緩和)を示したロジスティック回帰および再帰的分割と合致したが(p=0.038)、遺伝子間相互作用は数が少なすぎて評価できなかった。(表4)
【表3】
Figure 2004508056
【0088】
【表4】
Figure 2004508056
【0089】
【表5】
Figure 2004508056
【0090】
実施例6: 5HT3R および UGT1A4 多型についての個体の遺伝子型決定
胃腸疾患を患う被験体の集団からDNAサンプルを得て、標準的手順を用いて(自動化抽出またはキット形式を使用)ゲノムDNAを抽出した。PCR、PCR−RFLP、TAQMANTMアレル識別アッセイのいずれか、または当該分野で公知の任意の他の適切な技術を使用して、被験体および利用した全ての対照個体の遺伝子型を、5HT3RおよびUGT1A4遺伝子配列中の多型について決定した。
【0091】
増幅産物に十分な物理的サイズの特定の多型(例えば複数の塩基の挿入/欠失多型)が存在する場合、単純な大きさ分別アッセイを採用して、個体の遺伝子型を決定できる。この場合、2種のプライマーを使用して、多型の部位周辺の領域について目的の遺伝子を特異的に増幅させる。PCR増幅を行い、それらが有する遺伝子型(挿入または欠失)に応じて長さが異なる産物を生成させる。ゲル電気泳動に供した場合、大きさの異なる産物が分離し、可視化され、特定の遺伝子型が直接的に解明される。
【0092】
PCR−RFLP(ポリメラーゼ連鎖反応−制限断片長多型)アッセイも当該分野で公知なように、多型を検出するために利用できる。それぞれの多型部位について、PCR−RFLPアッセイは、2種の遺伝子特異的プライマーを使用してアニールさせ、目的の多型部位周辺のゲノムDNAのセグメントを特異的に増幅する。PCR増幅後、特異的な制限エンドヌクレアーゼ酵素を使用して、生成したPCR産物を消化する。アッセイのために利用する酵素は、それが結合する必要があるその特異的認識配列に従って選択され、多型の存在/不在下においてPCR産物を切断して、多型部位において存在する特定の塩基を判定できる断片を産生する。制限酵素による切断後、ゲル電気泳動を使用して、生成された断片を分離および可視化する。
【0093】
当該分野で公知のTAQMANTM(PE Applied Biosystems, Foster City, CA)アッセイも、多型を同定するために利用できる。それぞれの多型部位について、アレル分別アッセイは、5’端において異なる蛍光色素で標識化されているが、3’端において共通の消化剤で標識化された、2種のアレル特異的プローブを使用する。両方のプローブとも3’リン酸基を有し、Taqポリメラーゼがそれらにヌクレオチドを付加できないようになっている。アレル特異的プローブは、多型部位を含みかつこの部位における配列が異なっている。アレル特異的プローブは、適切な部位に対してミスマッチを生ずること無くハイブリダイズ可能である。
【0094】
アレル特異的プローブは、2種のプライマーと共に使用され、その一方は、2種の特異的プローブの5’側の鋳型にハイブリダイズし、他方は2種のプローブの3’側の鋳型にハイブリダイズする。特異的プローブの一方に対応するアレルが存在する場合、特異的プローブは、鋳型に完全にハイブリダイズする。そうすると、5’プライマーを伸長させるTaqポリメラーゼは、特異的プローブからヌクレオチドを除去し、蛍光色素および消光剤の両方を放出する。これは、もはや消光剤に近接して存在しない色素から、蛍光の増加を生じる。
【0095】
アレル特異的プローブが、他のアレルとハイブリダイズする場合、多型部位におけるミスマッチがTaqの5’→3’エンドヌクレアーゼ活性を阻害して、蛍光色素の放出を妨害する。
【0096】
ABI7700配列検出系を使用して、サーマルサイクリングPCR完了時に、PCR反応チューブ中において直接、それぞれの特定の色素からの蛍光の増加を測定する。次いで、反応から得た情報を分析する。個体が特定のアレルについてホモ接合性である場合、その特定のプローブからの色素に対応する蛍光のみが放出されるが、個体がヘテロ接合性である場合には両方の色素が蛍光を発する。
【0097】
次いで、個体の遺伝子型を、5HTリガンドによる治療に対するそれらの表現型応答と相関させる。遺伝子亜集団間で異なる応答を識別する。

Claims (41)

  1. 5−ヒドロキシトリプタミン(5HT)リガンドにより治療可能な胃腸疾患を患う被験体を、該治療に対する被験体の応答を予測する助けとして、スクリーニングする方法であって、
    (a)被験体からDNAのサンプルを得ること、および
    (b)5ヒドロキシトリプタミン(5HT)受容体遺伝子中の多型アレル部位における該DNAの遺伝子型を決定し、但し該部位における異なる遺伝子型が、異なる割合で示される該治療に対する表現型応答と関連するものであること、
    を含み、該検出された遺伝子型が、該被験体は該遺伝子型に関連する表現型応答を示す可能性が高いことを示す、前記方法。
  2. 前記DNAのUGT1A4遺伝子の多型アレル部位における遺伝子型を決定し、但し該部位における異なるアレルが、異なる割合で示される前記治療に対する表現型応答と関連するものであること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 多型アレル部位がUGT1A4遺伝子のC70A多型である、請求項2に記載の方法。
  4. DNAサンプルがゲノムDNAである、請求項1に記載の方法。
  5. DNAサンプルがcDNAである、請求項1に記載の方法。
  6. 被験体が過敏性腸症候群(IBS)を患っている、請求項1に記載の方法。
  7. 前記5HT受容体リガンドが5HT3受容体アンタゴニストである、請求項1に記載の方法。
  8. 前記5HT受容体リガンドが5HT4受容体アゴニストである、請求項1に記載の方法。
  9. 前記多型アレルが、5HT3R遺伝子のC178T多型である、請求項1に記載の方法。
  10. 多型アレルが、5HT3R遺伝子について異なる5’配列を提供するものである、請求項9に記載の方法。
  11. 被験体を5HT受容体リガンドにより治療することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  12. 前記5HT受容体リガンドが、5HT3受容体アンタゴニスト、5HT4アンタゴニスト、および5HT4受容体アゴニストから選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記5HT受容体リガンドが、アロセトロン、オンダンセトロン、およびグラニセトロンから選択される、請求項11に記載の方法。
  14. 5−ヒドロキシトリプタミン(5HT)受容体リガンドによる治療に対する被験体の応答を予測する助けとして、過敏性腸症候群(IBS)を患う被験体をスクリーニングする方法であって、
    (a)被験体からDNAのサンプルを得ること、および
    (b)該DNAサンプルを遺伝子型決定し、5−ヒドロキシトリプタミン3受容体(5HT3R)遺伝子中の多型アレル部位における遺伝子型を決定し、但し該部位における異なる遺伝子型が、異なる割合で示される該治療に対する表現型応答と関連するものであること
    を含み、該遺伝子型が、該被験体は該遺伝子型に関連する表現型応答を示す可能性が高いことを示す、前記方法。
  15. 前記DNAのUGT1A4遺伝子中の多型アレル部位における遺伝子型を決定し、但し該部位における異なるアレルが、異なる割合で示される前記治療に対する表現型応答に関連すること、をさらに含む、請求項14に記載の方法。
  16. 多型アレル部位がUGT1A4遺伝子のC70A多型である、請求項15に記載の方法。
  17. 5HT受容体リガンドが、5HT3受容体アンタゴニスト、5HT4アンタゴニスト、および5HT4受容体アゴニストから選択される、請求項14に記載の方法。
  18. 5HT受容体リガンドが、アロセトロン、オンダンセトロン、およびグラニセトロンから選択される、請求項14に記載の方法。
  19. 前記多型が、5HT3R遺伝子のC178T多型である、請求項14に記載の方法。
  20. 前記多型アレルが、5HT3R遺伝子について異なる5’配列を提供するものである、請求項14に記載の方法。
  21. 前記遺伝子型が、5HT3受容体アンタゴニストにより治療された場合に、被験体が、別の遺伝子型を有する被験体と比べてIBS症状が緩和される素因を有することを示すものである、請求項14に記載の方法。
  22. 被験体を5HT受容体リガンドにより治療することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
  23. 5HT受容体リガンドが、5HT3受容体アンタゴニスト、5HT4アンタゴニスト、および5HT4受容体アゴニストから選択される、請求項14に記載の方法。
  24. 5HT受容体リガンドが、アロセトロン、オンダンセトロン、およびグラニセトロンから選択される、請求項14に記載の方法。
  25. 胃腸障害を患う被験体の遺伝子亜集団における表現型効果について5−ヒドロキシトリプタミン(5HT)リガンドをスクリーニングする方法であって、
    (a)該胃腸障害を患う被験体の集団に該リガンドを投与すること;
    (b)該被験体のそれぞれからDNAサンプルを得て、5−ヒドロキシトリプタミン3受容体(5HT3R)遺伝子の多型アレルについて遺伝子型決定すること;
    (c)該多型アレル遺伝子型と、該被験体集団における表現型応答の出現率との間の任意の相関関係を検出すること
    を含み、
    別の遺伝子型を有する被験体における割合と比べて高いかまたは低い割合で示される所望の治療応答と相関する遺伝子型の検出が、該胃腸障害の治療における該リガンドの有効性が該集団の遺伝子亜集団間で異なることを示す、前記方法。
  26. UGT1A4遺伝子の多型アレルについて遺伝子型決定すること、ならびに5HT3RおよびUGT1A4遺伝子の多型アレル遺伝子型と、該被験体集団における表現型応答の出現率との間の任意の相関関係を検出すること、をさらに含む、請求項25に記載の方法。
  27. 前記多型アレル部位がUGT1A4遺伝子のC70A多型である、請求項26に記載の方法。
  28. 前記5HTリガンドが、5HT3受容体アンタゴニスト、5HT4アンタゴニスト、および5HT4受容体アゴニストから選択される、請求項25に記載の方法。
  29. 胃腸障害が過敏性腸症候群である、請求項25に記載の方法。
  30. 前記多型的変異が、5HT3R遺伝子のC178T多型である、請求項25に記載の方法。
  31. 胃腸障害を患う被験体の遺伝子亜集団における表現型効果について5−ヒドロキシトリプタミン(5HT)リガンドをスクリーニングする方法であって、
    (a)該胃腸障害を患う被験体の集団に該リガンドを投与すること;
    (b)該被験体のそれぞれからDNAサンプルを得て、5−ヒドロキシトリプタミン3受容体(5HT3R)遺伝子の多型アレルについて遺伝子型決定すること;および
    (c)該多型アレル遺伝子型と、該被験体集団における表現型応答の出現率との間の任意の相関関係を検出すること
    を含み、別の遺伝子型を有する被験体における割合と比べて高いかまたは低い割合で示される副作用と相関する遺伝子型の検出が、該胃腸障害の治療における該リガンドの有効性が該集団の遺伝子亜集団間で異なることを示す、前記方法。
  32. UGT1A4遺伝子の多型アレルについて遺伝子型決定すること、ならびに5HT3RおよびUGT1A4遺伝子の多型アレル遺伝子型と、該被験体集団における表現型応答の出現率との間の任意の相関関係を検出すること、をさらに含む、請求項31に記載の方法。
  33. 前記多型アレル部位がUGT1A4遺伝子のC70A多型である、請求項32に記載の方法。
  34. 前記5HTリガンドが、5HT3受容体アンタゴニスト、5HT4受容体アンタゴニスト、および5HT4アゴニストから選択される、請求項31に記載の方法。
  35. 胃腸障害が過敏性腸症候群である、請求項31に記載の方法。
  36. 前記多型的変異が、5HT3R遺伝子のC178T多型である、請求項31に記載の方法。
  37. 高い割合で示されるIBS症状の緩和または低い割合で示される副作用に関連する遺伝子型を有する患者にアロセトロンを投与することを含む、過敏性腸症候群(IBS)を患う患者を治療する方法。
  38. 前記遺伝子型が、5HT3R遺伝子の多型を含む、請求項37に記載の方法。
  39. 5HT3受容体アンタゴニストで治療された場合に、5HT3受容体遺伝子の同じ部位において別の多型を有する被験体と比べて高い割合で示されるIBS症状の緩和または低い割合で示される副作用が予測される5HT3受容体遺伝子の多型を有する患者に、5HT3受容体アンタゴニストを投与することを含む、過敏性腸症候群(IBS)を患う被験体を治療する方法。
  40. 前記多型が、5HT3R遺伝子のC178T多型である、請求項39に記載の方法。
  41. 5HT3受容体アンタゴニストがアロセトロンである、請求項39に記載の方法。
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