JP2004507922A - 区分ブロック周波数領域適応フィルタ - Google Patents
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- H03H21/0027—Particular filtering methods filtering in the frequency domain
Abstract
本発明による区分ブロック周波数領域適応フィルタは、複数の並列に配置されたフィルタ区画より成る。各フィルタ区画は適応フィルタのインパルス応答の一部をモデル化し、巡回畳み込み利用することによってフィルタ区画のフィルタ係数を更新する更新手段を有する。更新手段は、巡回畳み込みの巡回折り返しアーティファクトを除去することによって断続的にフィルタ係数を制限する。更新手段は折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択しおよび除去する。選択手段は、方形制限ウインドウの近似を利用して、比較的小さな計算労力で実現することができる。
Description
【0001】
本発明が関連する区分ブロック周波数領域適応フィルタ(partitioned block frequency domain adaptive filter)は、制御信号に依存して入力信号をフィルタ処理し、複数の並列に配置されたフィルタ区画より成り、各フィルタ区画は適応フィルタのインパルス応答の一部をモデル化するよう形成され、各フィルタ区画は、入力信号を表わす信号と制御信号を表わす信号を巡回畳み込みをすることによって、フィルタ区画のフィルタ係数を更新する更新手段を有し、前記更新手段が、巡回畳み込みの巡回折り返しアーティファクトを除去することによって断続的にフィルタ係数を制限する制限手段より成る。
【0002】
更に本発明は、そのような区分されたブロック周波数領域適応フィルタを形成する音響エコー・キャンセラ、および制御信号に依存して入力信号を適応的にフィルタ処理する方法にも関連する。
【0003】
本願の前提とする区分ブロック周波数領域適応フィルタ(PBFDAF: partitioned block frequency domain adaptive filter)は、例えば次のような文献により知られている:“Mutidelay block frequency domain adaptive filter”, IEEE Transactions on Acoustics, Speech and Signal Processing, vol. 38, no. 2, pp. 373−376, by J.S. Soo and K.K. Pang. 適応フィルタは、ディジタル信号処理のいくつかの用途で非常に有効である。そのような例として挙げられるのは:チャネル等化、アレイ信号処理およびノイズ・エコー消去である。ここで、音響エコー・キャンセラ(AFC: Acoustic Echo Canceller)は、本発明を説明するための手段としてのみ使用され、本発明がその特定の用途に制限されないことに留意を要する。音響エコー・キャンセラは、例えば、遠距離会議システムまたは音声認識システムで使用される。AFCの構造は図1に示され、これは遠距離会議システムの一部分として説明される。
【0004】
2つの異なる部屋の中に2つのスピーカを備えた遠距離会議システムにおいて、AFCが2回行なわれている。遠端スピーカから音声信号x[k]は、拡声器14により近接端の部屋で生成される。拡声器14およびマイクロフォン16の間の伝送は、室内インパルス応答によりモデル化することが可能である。マイクロフォン16により拾われるエコー信号e[k]は、その室内インパルス応答との信号x[k]の畳み込みとして観測され得る。両者が喋っている場合において(すなわち、2重会話)、マイクロフォン16は近接端音声信号s[k]も拾う。適応フィルタが存在しないならば、その信号は
【0005】
【数4】
であり、これは遠方端スピーカに直接的に伝送される。所望の近接端音声信号に並んで、遠方端スピーカはそれ自身の音声信号のエコーも聞く。その結果、遠距離会議システム全体として、これら2つのスピーカの間は最適な通信にはならない。
【0006】
更新手段または相関手段10および畳み込み手段12により形成される適応フィルタは、実際の部屋のインパルス応答を有限インパルス応答(FIR: Finite Impulse Response)フィルタを利用してモデル化することによって、不要なエコーを抑制する。このFIRフィルタのフィルタ係数またはフィルタ重みw[k]は、残留信号r[k]を入力信号x[k]と相関させることによって更新手段10で更新される。相関によりすなわち相関手段12で入力信号x[k]をフィルタ係数w[k]と相関させることにより、適応フィルタは、
【0007】
【外1】
で示される未知の音響エコー信号を推定する。このエコーの推定値は減算器18を利用して実際のエコーから減算される。その結果として、エコー・レベルは減少し、スピーカ間の改善された通信に導く。
【0008】
適応フィルタの効果的な実現に関し、高速の畳み込み(フィルタ処理)を実行する高速フーリエ変換(FFTs: Fast Fourier Transforms)との組み合わせにおけるブロック信号処理を利用することが知られており、これは演算効率よく周波数領域におけるフィルタ・パラメータの適応化を可能にする。これを行なうために、入力サンプルのブロックが収集され、周波数領域で適応フィルタ処理が実行される。一般に、高速フーリエ変換(FFTs)は、時間領域データによる周波数領域データを計算するために使用されるが、この目的に関しては他の変換(例えば(I)DCT変換)も利用可能である点に留意すべきである。
【0009】
2つの周波数領域ベクトルの要素的な乗算(elementwise multiplication)は、時間領域における畳み込みに対応する。両ベクトルが高速フーリエ変換で変換されるならば、その畳み込みは巡回畳み込み(circular convolution)である。適応フィルタでは、巡回畳み込みの代わりに線形変換が必要とされ、有限長の入力データ・ストリームを有限長のベクトルと畳み込む。オーバーラップ・セーブ(OLS: Overlap−Save)と呼ばれる手法を利用すると、線形変換はFFT/IFFTsを利用して実行され得る。オーバーラップ・アッド(OLA: Overlap−Add)は、無限長ベクトルを有限長ベクトルと効率的に畳み込むために使用され得る。しかしながら、通常OLSは、OLA手法を利用する適応フィルタよりも計算が複雑でない。
【0010】
適応フィルタは線形変換部10および線形畳み込み部12より成る。畳み込み部12は、入力信号をフィルタ重みを利用してフィルタ処理するために必要とされ、相関部10は、これらの適応フィルタ重みを更新するために必要とされる勾配推定値を計算する。収束した後に、適応重みは、最適解に調整され、その部屋のインパルス応答を表現する。相関部10および畳み込み部12の両者は、オーバーラップ・セーブ手法を利用して実行され得る。相関部10は畳み込み部12と同様なものであり、両部分では線形畳み込みが計算される。相関部10が畳み込み部12と異なるのは、相関部10では、ある入力ブロックが時間反転される必要のあることである。この時間反転は、図2に示されるような複素共役演算子32を利用して周波数領域で実行され得る。
【0011】
ブロック周波数領域適応フィルタ(50%オーバーラップ)の欠点は、ブロック処理に起因するNサンプルの遅延である。先ず、ブロックが処理される前に、入力サンプルに関する完全なブロックが収集される。この問題は、適応フィルタの区分化(partitioning)によりブロック・サイズを減少させるPBFDAFにより解決される。PBFDAFは、インパルス応答の小部分により全体がモデル化される複数のBFDAFの並列処理として考察することが可能である。
【0012】
図2は、PBFDAFのブロック図を示す。入力信号x[k]のサンプルは、直列並列変換器20および50%オーバーラップ・ブロック22を利用して、50%の重複をもってブロックに収集される。これら入力サンプルのブロックは、FFT26により周波数領域に変換される。ブロック42では、残留信号または制御信号r[k]のNサンプル・ブロックの左側にN個のゼロを付加する。2N個の時間領域値に関する結果のブロックは、その後他のFFT26により周波数領域に変換される。次に、周波数領域信号の電力が、要素乗算器40における規格化因子を利用する要素乗算によって規格化される。
【0013】
各区画は、複素共役演算子32、更新ブロック34および要素乗算器36より成る。更に、最も左側の区画を除く総ての区画は、ブロック遅延要素30を有する。更新手段または相関手段10は、複素共役演算子32および更新ブロック34より成る。畳み込み手段12は、要素乗算器36より成る。複素共役演算子32の出力は入力信号を表わす信号である。要素乗算器36の出力は制御信号を表わす信号である。更新ブロック34は、入力信号を表わす信号および制御信号を表わす信号に基づいて、フィルタ係数を更新および出力する。次に、更新されたフィルタ係数は、要素乗算器36を利用して入力信号のサンプルのブロックと畳み込まれる。総ての区画における要素乗算器36の出力、すなわち総ての部分的畳み込みの結果は、加算器38で共に加算され、全体的な畳み込みの結果を形成する。この全体的な畳み込みの結果は、IFFT28によって時間領域に変換される。最後に、全体的な畳み込みの結果の2N個の時間領域サンプルのブロックに関する最も左側のNサンプルは破棄され、推定されたエコー信号
【0014】
【外2】
を形成する。この推定されたエコー信号は、減算器18を利用して、近接端で拾われた信号から減算される。この減算の結果は残留信号r[k]となる。
【0015】
図3は、更新ブロック34の例に関するブロック図を示す。この例では、適応重みが時間領域で格納される。指標iは区画番号を示す。更に、変数W i 2Nが次のように定義される:
【0016】
【数5】
入力信号を表わす信号および制御信号を表わす信号は、要素乗算器50によって互いに要素的に乗算される。この周波数領域における要素乗算は、時間領域における巡回畳み込み(circular convolution)を形成する。この畳み込みの結果は、巡回折り返しアーティファクト(circular wrap−around artifact)を形成し、IFFT52,要素処分ウインドウ54、ゼロ付加器60およびFFT62によって形成される方形時間領域制限ウインドウを利用して除去される。先ず、畳み込みの結果がIFFT52によって時間領域に変換される。次に、ウインドウ54が畳み込みの結果のNポイントを破棄する。これは、オーバーラップ・セーブ手法による巡回折り返しアーティファクトを除去するために必要とされる。残余のNサンプルに関し、加算器56および遅延要素58を利用して適応重みを更新する。この更新の後に、N個のゼロが増加される。これは、オーバーラップ・セーブ手法を利用して、入力信号に関する適応重みの効率的な畳み込みに必要とされる。最後に、その結果は周波数領域に戻るべく変換される。
【0017】
2つの反転演算子JNは、ベクトルw i 2N[κN]を、時間の逆の順序で格納することによって削除することが可能である。更に、2つの時間領域ウインドウのFFTおよびIFFTは、時間領域の勾配制限演算子(gradient constraint operator)で結合可能である。勾配制限演算子または制限演算子の結果として、適応係数は、時間領域に代えて周波数領域で格納および更新される必要がある。これらの周波数領域の係数は、W i 2Nにより記される。制限演算子および適応係数の分離は、以下の導出過程によって示される:
【0018】
【数6】
ここで、diag{G2N × 2N}=g 2Nは、方形制限ウインドウ(rectangular constraint window)ベクトルであり、最初のN個の要素におけるものと最後のN個の要素におけるゼロを含む。制限手段はこの方形制限ウインドウを形成する。図4は、方形制限ウインドウを有する周波数領域の係数更新を示す。
【0019】
留意すべきことは、周波数領域重みが時間領域重みに比較して更なる格納要素を要するにも拘らず、周波数領域において適応重みを更新および格納する理由があることである。最も重要な理由は、計算の複雑さを減少させるために、勾配制限を省略する可能性である。
【0020】
主に、方形制限は更新の前に置かれるが、図5に示すように、この制限を更新の後に置くことは賢明である。両者の状況に対して(図4および図5)、無限の精度で方形制限を計算すれば、同一の結果を与える。しかしながら、有限の精度で図4における重み更新を計算すると、数値的丸め誤差が重み更新に蓄積される。最終的には、重み更新の多数の繰り返しの後に、その係数に関する最後のNポイントに大きな誤差を与える。これら蓄積された誤差の補正は、この制限の右半分によって妨害される。図5に示すように重み更新の後に制限を置くと、その制限による計算後の結果も、有限精度における数値的丸め誤差を包含する。しかしながら、制限演算は実際の係数に関して実行されるので、長期間にわたる問題(long−term problem)を招くそのような誤差の蓄積はない。したがって、方形制限操作は、重み更新の後に置くのが好ましい。
【0021】
図6は、更新ブロック34の例のブロック図であり、上記文献に開示されているPBFDAFの動作を示す。方形制限ウインドウ82を利用すると、計算が比較的複雑になる。この複雑さは、特定の区画の係数ベクトルにのみ時々制限をかけることによって、低減させることが可能である。このため、更新ブロック34は2つのスイッチ80,84を形成する。これらのスイッチ80,84の動作は次の機能により説明される:
【0022】
【数7】
この式において、パラメータKは複数の区画の番号を示し、パラメータPはそのアルゴリズムのブロック反復数における代替的な制限期間である。スイッチ80,84が共に1の位置にある場合にのみ、方形制限ウインドウが計算される。スイッチ80,84が共に0の位置にある場合は、畳み込みの結果は全く制限されない。
【0023】
本発明は、計算が比較的複雑でなく、改善された収束性を有するPBFDAFを提供することを目的とする。この目的は本発明によるPBFDAFにより達成され、その特徴とすることは、更新手段が更に折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択しおよび除去する選択手段より成り、選択手段が方形制限ウインドウを近似したものを形成することである。巡回折り返しアーティファクトの制限は断続的に実行されるので、すなわち時折行なわれるに過ぎないので、これらの制限の間で過剰な巡回折り返しアーティファクトの蓄積が生じ、比較的良好でない収束性を示す結果となる。これは、巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択しおよび除去するために、方形制限ウインドウの近似を導入することによって抑制される。方形制限ウインドウの近似は、計算効率の観点から、巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部を除去することを可能にする。
【0024】
本発明によるPBFDAFの例によれば、フィルタ係数が制限手段によって制限されない場合に、巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択するよう選択手段が形成される。この基準によって、使用されない場合、すなわち巡回折り返しアーティファクトが制限手段により除去される場合に、巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部の選択および除去は実行されない。
【0025】
本発明によるPBFDAFの例によれば、近似に関する時間領域の値がゼロより大きい又は等しい。時間領域ウインドウにおける負の値は、適応重みの発散を回避するために避ける必要がある。制限ウインドウにおける負の値により発散する理由は、直感的に説明することが可能である。負の値に起因して、相関部分は、残留信号とマイナスで相関する結果物を生成する。このため適応重みは良好でない方向に更新される。適応重みの精度が低くなると、更なる負の相関が生じ、次のブロック反復毎に重み付けを悪化させてゆく。
【0026】
本発明によるPBFDAFの例によれば、時間領域における近似が、方形制限ウインドウにおける遷移の位置に対応する位置近傍で大きな傾斜を有する。この基準により、ゼロでない値に収束する巡回結果の比較的多くの量が、選択手段により除去される。例えば、50%オーバーラップを利用する場合に、0およびNの間に大きな傾斜が位置付けられ、ここでNはフィルタのブロック・サイズであり、2NはFFTサイズである。75%オーバーラップを利用する場合は、0および3Nの間で大きな傾斜を位置付け、ここでNはフィルタのブロック・サイズであり、4NがFFTサイズである。
【0027】
本発明によるPBFDAFの例によれば、近似に関する周波数領域の値が、実数値および共役複素数値より成り、虚数値の少なくとも一部が、乗算により順次得ることの可能な数の行を形成する。この基準により、近似の周波数領域値の少なくとも一部が簡易に計算することが可能になり、すなわち他の周波数領域値を単に乗算因子に乗じることによって、比較的少ない計算労力を利用するPBFDAFが得られる。
【0028】
本発明によるPBFDAFの例によれば、近似に関する周波数領域値が:
【0029】
【数8】
により定義され、iは指標数であり、mは乗算因子であり、aは平均値である。制限ウインドウにおいて連続する周波数成分の間の関係に起因して、複素エルミート信号に関するウインドウの周波数領域巡回畳み込みが、非常に効率的に計算され得る。
【0030】
本発明の上記目的および特徴は、図面を参照しながら以下の好適実施例の説明を通じて一層明らかになるであろう。
【0031】
図中、同一の部分には同一の参照番号が与えられる。
【0032】
図面および明細書において、大文字は周波数領域変数を記すために使用し、小文字は時間領域変数を記すために使用する。太字のフォントは行列を示すために使用され、ベクトルは下線を施したフォントで示される。更に、添え字のt、*およびhは、転置、複素共役および複素共役転置(エルミート(Hermitian))をそれぞれ示すために使用される。ONおよびINは、はゼロおよび単位行列を示し、添え字は行列の次元を示す。一般に、上付き添え字は次元を示し、下付き添え字はベクトルまたは行列の要素数を示す。ここで使用される主なベクトルおよび行列は、2N×1および2N×2Nの次元を有し、上付き添え字を省略したベクトル又は行列は、長さ2Nのベクトル又は次元が2N×2Nの行列を示すものとする。角括弧内の指標(例えば、x[k])は、時間的指標を示す。diag{・}は、2N×1ベクトルを、対角要素としてそのベクトルを含むが他の要素がゼロである2N×2N行列に変換するところの演算子を示す。数学的な期待値はε{・}で示される。
【0033】
2N次元ベクトルにおけるL個の位置にわたるデータの巡回シフト(circular shift)は、次の行列によって実行される:
【0034】
【数9】
ゼロ行列Oは、適切な次元を有するものとする。D2N 0=I2Nに留意すべきである。2N次元ベクトルのデータは、2N×2N反転行列(mirrored matrix)J2Nにより反転され、これは次式で定義される:
【0035】
【数10】
D2N Lと反対方向のL個の位置に関する逆巡回シフトは、次の行列により実行される:
【0036】
【数11】
ここで、J2N 0=J2Nである。
【0037】
数学的な説明と並んで、信号処理ブロックに関する図面も使用される。これらのブロックの説明については、本説明の最後にまとめられている。本明細書で使用する記号のまとめも記載されている。この説明では、ブロックのオーバーラップ(HOL)または50%オーバーラップが使用されているが、本発明はその特定のオーバーラップに制限されない。本発明は他のパーセンテージのオーバーラップにも使用され得る。
【0038】
dBにおける規格化された二乗平均誤差(NMSE: Normalized Mean Square Error)は、適応フィルタの実行性の目安であり、次式で定義される:
【0039】
【数12】
ここで、Nはブロック長であり、目下計算するNMSE[k]に関する残留サンプルを含む。定常状態NMSEは、適応フィルタの収束後のNMSEの値であり、残留エコーの目安である。定常状態NMSEが低いほど、適応フィルタの実行性が良い。
【0040】
適応フィルタの他の実行性基準であるCTCは、アルゴリズムの遷移中におけるNMSE曲線の傾斜として定義される。学習曲線(learning curve)の初期の部分は線形であると仮定する。CTCはdB/msで定義される。
【0041】
IFFTおよびFFT操作並びに要素乗算は、時間領域における係数のヌル・ハーフ(null half)のために、その制限を計算する必要がある。これは、O(NlobN)の演算を要し、ここで、2NはFFT/IFFTの長さである。この制限は、周波数領域で巡回畳み込みを直接的に計算することによっても実行可能である。巡回畳み込みのこの直接的な計算は、O(N2)の操作を必要とする。方形制限を利用する巡回畳み込みについての周波数領域係数(G 2N)iは、次式で与えられる:
【0042】
【数13】
第1近似を利用すると、実数係数のみが使用され、互いに複素共役の最初の2つが利用される。これは、正弦的制約ウインドウとなり、FFT/IFFTを利用するよりも少ない計算の複雑さで周波数領域で計算可能である。当然ながら、方形制限ウインドウの他の低次近似を利用することも可能である。
【0043】
50%オーバーラップ(ハーフ・オーバーラップ)以外の制限ウインドウは、実数および複素数の両者の値を有する周波数成分を含む。したがって、そのような計算には、50%オーバーラップ・ウインドウと比較して更に多くの複雑な計算を必要とする。上述したように、実際にはハーフ・オーバーラップ制限ウインドウが多く使用されている。
【0044】
方形制限は更新の後に配置される必要がある。しかしながら、これは制限近似に関して異なる。更新の後に近似が置かれるならば、時間領域適応重みは、その近似ウインドウの重みが定常的に乗算される。近似ウインドウにおける主な重みは一般に1に等しくないので、ブロック反復毎の重みの調整を導入し、適応フィルタは収束に向かわないであろう。したがって、総ての制限近似は、更新の前に、例えば加算器56の前に良好に適用される。
【0045】
時間領域ウインドウにおける負の値は、適応重みの発散を回避するために避ける必要がある。制限ウインドウにおける負の値に関する発散の理由は、直感的に説明可能である。負の値に起因して、相関部は、残留信号とマイナスで相関する結果を生じる。このため、適応重みは好ましくない方向に更新される。適応重みが低い精度になると、更なる負の相関が生じ、以降のブロック反復における重みを悪化させる。
【0046】
式3.8の周波数領域係数は時間領域係数になるので、その周波数係数を尺度変更する必要がある。制限近似においてより多くの周波数成分を使用すると、より良い実行性となるが、計算の複雑さを増加させる。低い計算の複雑さで最適な実行性を達成するために、制限のどの特性が重要であるかが調査される。2つの制限ウインドウに関する実験を行なう。
【0047】
制限ウインドウ1は、式3.8に従って、実数と最初の3つの互いに共役な複素成分を包含する。因子5/6によるスケーリングが行なわれ、ウインドウの負の値を回避する。第2ウインドウは、第1のウインドウと比較して同一の傾斜の勾配を有するが、その傾斜の間で一層正確なものである(方形制限ウインドウに関して)。ステップ・サイズ・パラメータ2αは、0.5/Kの値に設定される。両制限近似ウインドウは、完全な制限の場合に比較して、少ない精度の定常状態NMSEに導く。しかしながら、この2つの近似ウインドウの間の差は、大きく相違しない。明らかに、これら傾斜間における値は、収束性の挙動には重要ではない。これは、その傾斜間の時間領域適応重みはランダムな値(ノイズ)により更新されるということにより説明可能である。したがって、重みは収束せず、平均的にはゼロである。このことは、その傾斜に近接する巡回アーティファクトには真ではない。これら傾斜に近接する適応重みは、ゼロでない値に収束し、隣接部分が結合されるので、PBFDAFアルゴリズムの畳み込み部分に誤差を導入する。ゼロでない値に収束させる巡回結果(circular result)に相当する分を削除するため、方形制限ウインドウにおける遷移が存在する2つの場所で、より高い傾斜が作成される。
【0048】
より高い傾斜は良好な収束の挙動を得るのに重要であるので、できるだけ多くの周波数成分が使用される。方形巡回畳み込みアルゴリズムを利用する場合に、より多くの周波数成分を導入することは、計算の複雑さを線形に増加させることを招く。したがって、方形巡回畳み込みアルゴリズムは使用されるべきでない。
【0049】
方形制限の近似に関する信号の畳み込みの効果的な手法で想定することは、式3.8における奇数の周波数成分が隣接する奇数成分と乗算因子により関連付けられることである。このウインドウは高次の周波数成分も含むので、この制限近似の傾斜も非常に急である。したがって、このウインドウは高傾斜(high−slope)制限ウインドウと呼ばれる。この高傾斜制限ウインドウG 2Nは、50%オーバーラップ区画に関する周波数領域において、次式で定義される:
【0050】
【数14】
上記の制限ウインドウに関する2つの連続する周波数の間の関係に起因して、複素数値エルミート信号を有するこのウインドウの周波数領域巡回畳み込みは、非常に効率的に計算され得る。
【0051】
実験によれば、時間領域における制限ウインドウg2Nが、以下の条件を加える場合に、良好な結果が得られた:
【0052】
【数15】
2.i=0およびi=Nの場合は高スロープ
更なる実験によれば、i=0およびi=N(すなわち高スロープ)は、N≦i<2Nの範囲でヌルより重要である。m=2.166およびa=0.57を選択すると、高スロープ制限ウインドウ
【0053】
【数16】
は、上記の第1条件を制限し、条件2で提案されるような中間で傾斜の導関数を最大化する。このmの最適値は経験的に見出される。aの値を利用して、ゼロ・レベルおよび高スロープ・ウインドウの間の領域が調整され得る。a=0.57の場合に、0≦i<Nの範囲における平均振幅は1に規格化される。
【0054】
高スロープ・ウインドウを複素エルミート入力信号と畳み込みを行う効率的なアルゴリズムを導出するため、次の巡回畳み込みの定義を行なう:
【0055】
【数17】
巡回畳み込みは線形演算であるため、それらを重ね合わせることが可能であり且つG 2Nを有する巡回畳み込みを、以下の3つの部分に分けることが可能である:
【0056】
【数18】
式4.5と式4.6の間に直接的な関係があるので、必要なことは、アルゴリズムにおけるこれら巡回畳み込みの一方を計算することである。2つの式の間の関係は、以下の補助定理により表現される:
補助定理4.2.1
【0057】
【数19】
したがって、アルゴリズムの次の導出において、我々は式4.5の巡回畳み込みを考察するのみである。各々の次の畳み込み要素(G 1 2N)k+2は、実際の畳み込み要素(G 1 2N)kの関数として表現され、非常に効率的な畳み込みアルゴリズムが導出される。反復表現は次の補助定理で定式化される:
補助定理4.2.2
【0058】
【数20】
上記の導出と同様に、畳み込み要素(G 1 2N)kの関数として畳み込み要素(G 1 2N)k−2を計算する表現を導出することが可能である。それは次式によるものである:
【0059】
【数21】
因子m−1の乗算に起因して、上記2つの表現は数値的に安定な反復である点に留意を要する。因子mの乗算が各反復で行われる表現を導出することも可能である:しかしながら、そのような表現は、精度の悪い結果を導く。
【0060】
周波数領域における高スロープ制約で畳み込みを計算するために、原則として以下の副次的計算を実行する必要がある:
1.(スケール操作)
【0061】
【数22】
の計算。
【0062】
2.
【0063】
【数23】
の初期計算。
【0064】
3.補助定理4.2.2を利用した畳み込みの反復計算。
【0065】
4.上記の計算による
【0066】
【数24】
の計算。
【0067】
平均値に関する畳み込みは、因子aに関する入力信号X 2Nをスケール化することによって計算され得る。高スロープ制限ウインドウを有する巡回畳み込みより多く実行する場合に(PBFDAFアルゴリズムにおける場合のように)、その平均値を有する畳み込み(2N)−1・(G 1 2N)0は、ただ1つの乗算を行うことによって実行され得る。
【0068】
【数25】
の計算には、巡回畳み込みの反復計算の第1の反復を、奇数点に関して1つおよび偶数点に関して1つ必要とする。式3.8のほんの最初の互いに複素共役な周波数成分の和は、総ての互いに複素共役な周波数成分の和にほぼ等しいので、G 1 2Nの総ての係数に基づいて、
【0069】
【数26】
を計算する必要はない。
【0070】
そこで、以下の計算に基づく初期の計算を実行する:
【0071】
【数27】
【0072】
【数28】
の計算において、ほんの1つ又は2つのG 1 2Nの係数が考慮され(例えば、Q=1,3)、正確な結果が得られる。
【0073】
補助定理4.2.2における因子
【0074】
【数29】
は、入力データX 2Nに先立って予め計算することが可能である。補助定理4.2.2に記載されているように、aに関する乗算は他の部分でも実行されるので、先行計算因子は
【0075】
【数30】
である。大きなNに関し、先行計算因子は近似的にm/2になる。m=2.166ならば、1.083の先行計算因子となる。我々はこの値を1.0に近似することが可能であり、2N乗算の複雑さを減少させ、しかも以下の条件に違反しない。
【0076】
【数31】
2の乗算をシフト操作で実行すると、反復ステップの複雑さは、更に減少させ得る。1.0の先行計算因子およびm=2を利用すると、制限ウインドウはゼロより下に僅かに落ち込み、0≦i<2Nに関して(g 2N)i≧0という条件に違反する。
【0077】
この制限における負の値は回避されるべきであるので、m=2を利用することは適切ではない。1.0の先行乗算に関する反復計算を実行すると、2つの加算と1つの乗算を行なって、畳み込みアルゴリズムにおける単独の反復が行なわれる。
【0078】
補助定理4.2.1に従って、G 2N 1およびG 2N 2の間の関係に起因して、G 1が計算される必要がある。周波数領域ベクトルはエルミートなので、
【0079】
【数32】
の出力点の半分が計算される必要がある。
【0080】
図7は、更新ブロック34の例を示し、例えば高スロープ制限ウインドウのような方形制限ウインドウ92の近似は、方形制限ウインドウまたは制限手段82との組み合わせにおいて使用される。この例では選択手段により方形制限ウインドウ92の近似を形成する。スイッチ80,84は更新ブロック34の動作を制御する。スイッチ80,84が1の側にある場合、厳密な方形制限ウインドウ82を利用して、蓄積される総ての巡回折り返しアーティファクトを削除する。この厳密な方形制限は比較的複雑な計算が多く、これは時折実行されるに過ぎない。両スイッチ80,84が0の側にある場合、方形制限ウインドウ92の近似が利用され、計算効率よく巡回折り返しアーティファクトの大部分を除去する。こうして、比較的良好でない収束の挙動となる巡回折り返しアーティファクトの過剰な蓄積が生じるのを防止する。
【0081】
実験により示されたことは、上述の文献に述べられているようなPBFDAFは、方形制限82が利用される時点における収束曲線上でジャンプし:その時点におけるNMSEがそれまでに比べて急激に悪くなることである。NMSEにおける劣化は、その方形制限が利用された後に厳密に生じるので、巡回誤差の除去はこの現象に対処することになる。明らかに、適応重みに蓄積された巡回誤差は、その部屋のインパルス応答モデルに何らかの影響を与え、方形制限を利用してその巡回誤差を除去することは、次のブロック反復におけるNMSEの一次的な劣化となる。
【0082】
分析を始めるに際して、いくつかの折り返しアーティファクトを補償することが有益である。この分析は、適応フィルタにおける畳み込み部分の図形構成を利用して行われる。この分析の後に、補償信号z i 2N[κN]がどのように形成されるかを示す。
【0083】
方形制限が導入された後に、他の区画における除去された巡回誤差を補償することによって、既知のPBFDAFの収束曲線における一次的な劣化を除去することが可能である。その結果として、区画された畳み込みの出力は、制限が導入されなかった場合と近似的に同じになる。この手法の説明に関し、時間領域における入力ブロックを示す図8を考察する。入力信号ブロックに関する残留信号の巡回補償が実行された後に、その結果は範囲[0...N−1]に所望の線形相関を含む一方、範囲[N...2N−1]は巡回折り返しアーティファクトに汚染される。完全に制限されたPBFDAFでは、これら総ての折り返しアーティファクトは削減される。この分析において、相関出力Nおよび2N近傍の結果は線形相関に近似することが考えられることを想定する。PBFDAFでは、電力規格化なしに、(N個のゼロ点を増加した)時間領域における残留信号を、図8の入力信号ブロックに相関付けることによって容易に理解され得る。高いけれどもNに近い相関出力点に関し、折り返しアーティファクト量は低い。これは、低いけれども2Nに近い点についても真である。3N/2に向かう相関出力点に関し、折り返しアーティファクト量が増加するにつれて近似は悪くなる。そこで、より高いけれどもNに近い相関出力点を左テール(tail)と呼び、より低いけれども2Nに近い点を右テールと呼ぶ。右テールは負の時間遅延に関する線形相関を近似するので、図9に示すように主要な区間を変更することが好ましい。両テールは線形相関の近似的な結果であるので、適応重みにおけるテールの係数w i 2N[κN](時間領域)は、近似的に適切な値に収束する。これら適応重みのテールは、既知のPBFDAFの収束曲線における一次的な劣化を削除するために良好に使用することが可能である。他方、(折り返しアーティファクト量の多い)3N/2の近傍における相関結果は使用されず、これは、長さNの2つの入力ブロック間で約50%の折り返しが存在することに起因する。したがって、相関結果は線形相関に関して行なうものがない。これらの相関結果はランダムであると想定されるので、適応フィルタにおける適応重みもランダムに更新される。その結果、適応重みにおけるこれらの部分が揺らぎ、定常的な値に収束しなくなる。したがって、2つのテールの間のこれらの値はノイズ部分として言及される。
【0084】
巡回折り返しアーティファクトは、適応フィルタの畳み込み部分に誤差を導入する。なぜなら、その畳み込みにおいて隣接する区画が結合されるからである。線形相関の近似的な結果である値を含む2つのテールに起因して、方形制限が既知のPBFDAFに導入される場合にこれら2つのテールを再利用し得る。これは、適応フィルタにおけるブロック畳み込みの出力が近似的に不変になるようにして実行され、その特定の区画における総ての巡回折り返しアーティファクト(すなわち、2つのテールおよびノイズ部分)が除去される。これを達成する方法は、左テールを次の区画に補償し、右テールを先行する区画に補償することによるものである。
【0085】
補償の手法を図形によって説明する。図10において、適応フィルタの2つの重みベクトルが図示されている。適応重みベクトルw i 2N[κN]に関し、左部分は適切な線形相関に基づく重みを表現する。このベクトルの右側は、巡回折り返しアーティファクトに汚染された重みを含む。この重みは先に上述した2つのテールから形成される。左テールは番号1で示され、右テールは番号2で示される。これらテールの間において、重みはノイズ的であり、したがって使用されない。
【0086】
先行する部分において、線形相関および巡回折り返しアーティファクトに関連する結果から構成されるような適応フィルタの重みが議論された。これら折り返しアーティファクトの部分(2つのテール)は有益な結果物であることも説明された。ここで説明される補償は、これらのテールがどのようにして再利用され得るかを説明する。目下我々は2つの有益なテールを有するので、それらを前方(forward)および後方(backward)補償に使用する。
【0087】
w i 2N[κN]に関するx i 2N[κN]の巡回畳み込みは、ある信号(例えば適応重み)を反転し、この信号を右側にシフトすることによって、図形的に実行され得る;これは図11に示される。ある畳み込み反復における両信号の積の総和は、特定の反復の出力要素である。我々は巡回畳み込みを実行するので、適応重みをシフトすることは、実際には2N長ベクトルの回転である。畳み込み出力は次式に示される:
【0088】
【数33】
図11では、畳み込み出力の図形構成の3つの段階が示されている。この図は、時間領域における巡回畳み込みを示し、有利な実施例では、巡回畳み込みが周波数領域で実行される。
【0089】
図11では、k=0、Nおよび2N−1に関する相関出力の図形構成が示される。k=0ないしk=N−1の畳み込み結果は、何の役割も果たさない。というのは、PBFDAFにおけるIFFTの後のウインドウがそれらを破棄するからである。w i 2N[κN]におけるポイントNないし2N−1に関し、テール1の畳み込みは入力ブロックB2に対して大きく考慮される。テールが小さいと仮定する場合には、この畳み込みは、次の区画のテールと入力ブロックB2との相関によって近似され得る。これは、図12に示されるように、適応重みの右側でテール1を除去し、このテールを次の区画の適応重みの最初のNポイントに配置することによって達成される。小さなテールに関し、この区画における当初のテール1を考察する相関出力は、次の区画におけるこのテールの相関出力に近似的に等しいことがわかる。
【0090】
他方、図12において、番号2で示される右テールも存在する。相関出力のポイントNないし2N−1に関し、テール2の畳み込みはブロックB2にも大きく考慮されることがわかる。2N−1に近い畳み込み出力に関し、ブロックB3に関する小さな折り返しのみが存在する。再び、小さなテールに関し、入力ブロックB2に関するテール2の畳み込みは、先行する区画でも(近似的に)取得され得る。
【0091】
テール2の行き先は図11に示されている。適応重みが、図9のような修正された基本区間に関連して示される場合に、図13に示されるような区画iにおける補償を視覚化することが可能である。中央のK−2個の区画に関してこれは良好に働くが、最初および最後の区画に関しては問題がある。この話題については後述する。
【0092】
図14は、前方および後方補償信号を生成する生成手段の実施例のブロック図を示し、図15は図14の生成手段の操作を説明するためのいくつかの信号を示す。方形制限により制限された重みベクトル全体に関し、前方および後方補償信号Cf i 2N[κN]およびCb i 2N[κN]が生成される。説明の便宜上、総ての信号は時間領域で形成されるものとする。線形畳み込み部およびテール巡回折り返しアーティファクトから形成されるような制限されていない重みベクトルを考察するならば、図14の信号1ないし6は図15のように描くことができる。この補償を利用するPBFDAFは改善された収束曲線を有し、これは、厳密な方形制限が行なわれる場合に、NMSEにおける大きな劣化を有しない。方形制限が導入される場合に、補償の良好な効果は明確に見られる。補償された形式のものは改善されていることを示すが、既知のPBFDAFはこれら3つの場合におけるNMSEの大きな劣化を示す。この改善は、巡回折り返しアーティファクトがゼロに制限される一方、近似的に線形な相関結果に関する有用な情報が保存されることに起因する。さらに、1つの区画から隣接区画への巡回誤差の補償は、収束時間定数またはCTCにおいて良好な影響を与える。
【0093】
巡回折り返しアーティファクトからのN/2時間領域ポイントを次のものへ、およびN/2時間領域ポイントを先行区画へ補償する。これらN/2ポイントの部分のみが近似的に線形であって(すなわち図中におけるテール)有用であり、それらテール間のポイントは約50%折り返しを有するアーティファクトに汚染され、これはノイズ的または有益でないとすることが可能である。図14に示されるようなノイズ状アーティファクトを補償する場合には、定常状態NMSEが僅かに悪化する。この問題に対する解決手段は、ノイズ状部分を補償せずに、2つのテールのみを補償することである。このため、方形制限の近似として、シヌソイド(sinusoid)ウインドウを利用する補償代替制限手法が使用される。シヌソイド・ウインドウは更新におけるノイズ状部分を制限する一方、2つのテールが補償のために残る。
【0094】
制限されていないPBFDAFを利用すると、収束の挙動が悪くなり、収束領域は完全に制限されたPBFDAFの場合に比べて小さくなる。上記の代替制限手法におけるシヌソイド制限近似g2Nを導入すると、制限されていないPBFDAFと比較して改善された結果が得られる。シヌソイド制限近似g2Nは次式で定義される:
【0095】
【数34】
シヌソイド制限を導入すると、3N/2の近傍におけるノイズ部分が減少する。一方、この近似制限によりテールは実質的に減少しないが、先に説明した手法を利用して、隣接する区画に良好に補償され得る。図14における長さN/2の方形ウインドウの用途では、2つの余分なFFTを必要とする。方形ウインドウを、図16に示すような上昇コサイン(raised cosine)および上昇逆(raised inverse)コサイン・ウインドウに置換することによって、その複雑さを削減することが可能である。図14では、選択手段は、ウインドウ・ブロック104および/またはウインドウ・ブロック106より成る。
【0096】
図16は前方および後方補償信号を生成する生成手段の他の実施例のブロック図を示し、図17は図16に示される生成手段の動作を説明するためのいくつかの信号を示す。再び、説明の便宜上、総ての信号は時間領域で形成されるものとする。上昇コサイン・ウインドウは、余分なFFTを利用することなしに、周波数領域で容易に実現可能である。信号1ないし6は、シヌソイド制限近似によってノイズ状部分が大幅に削減される点を除いて、図14および15におけるものと同じである。N≦i<2Nの範囲における後方補償に関するウインドウは、シヌソイド制限ウインドウおよび上昇逆コサイン・ウインドウを乗算することによって計算され得る。前方補償に関するウインドウは、シヌソイド制限ウインドウおよび上昇コサイン・ウインドウを乗算することによって計算され得る。図18は後方補償に関するウインドウを示す。図19は前方補償に関するウインドウを示す。選択手段はここではシヌソイド・ウインドウと上昇コサイン・ウインドウの組み合わせ(ブロック104)および/またはシヌソイド・ウインドウと上昇逆コサイン・ウインドウの組み合わせ(ブロック106)より成る。
【0097】
図20において、補償は、隣接区画の更新ブロック34の間の結びつきを導入することがわかる。第1区画に関し、先行する区画に関する補償はない。最終区画に関し、次の区画(実在しない)に対する補償を省略する。最終区画に関する前方補償を省略することは、巡回折り返しアーティファクトの除去に結び付き、これは高次のインパルス応答をモデル化するのに有用である。図20における更新ブロック34は、上述したような補償手法を利用する。これらの更新ブロック34の構造は図21に示される。
【0098】
係数更新142の前にシヌソイド制限140は置かれ、方形制限150は係数更新142,144の後に置かれる。補償信号は、Cf i 2N[κN](前方)およびCb i 2N[κN](後方)を利用して示される。方形制限が導入されない場合は、補償信号は省略される(すなわち、スイッチ146,148,152,154が状態0にある。)。方形制限の線形化が導入されると、スイッチ146,148,152,154は次式による:
【0099】
【数35】
方形制限が導入される場合に近似制限を行なうことは必要ないかもしれない。しかしながら、方形制限導入後の補償は、(シヌソイド制限の省略に起因する)折り返しアーティファクトにおける余分なノイズをも補償する。これは収束挙動における劣化を招く。したがって、その補償を利用して(図21)方形制限を導入する場合に、近似制限も導入することが好ましい。
【0100】
補償と共に方形制限を実現するには、補償部分に関して更なる計算を要する。この理由は、次のおよび前の区画の補償に関する2つのテールに分割すること、および2つの個々のテールに関する時間領域シフトを行なうことを必要とするからである。図14のような直接的な実現化は可能ではあるが、総ての演算は時間領域で行なわれるので、余分な多くの計算を必要とする。周波数領域で信号を生成する場合には、より効率的な実現が行なわれ得る。時間領域におけるシフトは、2Nポイント信号h 2 2Nとなる2Nポイント信号h 1 2NのNポイント・シフトである。周波数領域において、これらの信号はH 1 2N等によって表現される。このシフトは、シフト定理を利用する補助定理5.3.1により周波数領域で容易に実現され得る。
【0101】
補助定理5.3.1
【0102】
【数36】
図14の時間領域信号2,3および4の生成は、周波数領域で容易に計算され得る。図22はこの効果的な実現例を示す。なお、(−1 2N)i=(−1)iである点に留意すべきである。このベクトルによる周波数領域の要素乗算は、Nポイントの時間領域シフトを実現する。補償信号は隣接区画に加算されることを要するので、加算および減算両者を利用するならば、−1および1によるこれら要素乗算は省略され得る。ここで、上昇コサイン・ウインドウは周波数領域で導入される。その他(上昇コサイン・ウインドウ)は、単なる減算により計算され、計算を節約する。1/2およびj/4の乗算は、単なるシフト操作として実現され得る点に留意を要する。
【0103】
最終区画において後方補償を実行することは困難であることは既に説明した。通常、この左テールの巡回折り返しアーティファクトは、方形制限によってヌル化される(nulled)。このテールの折り返しアーティファクトは、適応フィルタの高次数(>KN)に使用され得るので、このテールを非制限にしておくことが可能である。最終区画における補償の実現例は、図23に示される。この実施例の計算の複雑さは図22の実施例に比較して僅かに低い点に留意を要する。
【0104】
図22および23の実施例において、選択手段は、IEFT160、ゼロ付加器162、FFT164および畳み込みブロック168より成る。
【0105】
PBFDAFにおける第1区画は、先行する区画から前方補償を取り出さず、その第1区画は後方補償信号を生成する必要がないことは既に説明した。第1区画における更新ブロックの実現は、減少した計算の複雑さと共に実現され得る。
【0106】
区分されたBFDAFアルゴリズムに関する良好な近似は、完全に制限されたPBFDAFに比較して、最適なものに近い収束挙動にはならない。これは制限されていない巡回折り返しアーティファクトにより引き起こされ、それは重み更新において蓄積され、異なる区画が結合される場合にPBFDAFの畳み込み部分における問題を引き起こす。代替的な制限機構を利用して制限近似を組み合わせると、改善することが可能であるが、依然として最適でない収束挙動を行なう。制限近似によって除去されない蓄積された折り返しアーティファクトの特定の部分は、その代替的な制限機構により時々除去される。この特定の部分は線形相関の近似的な結果であり、隣接する区画で良好に再利用(補償)され得る。この補償手法を、制限近似の最も簡潔な形式(すなわち、シヌソイド制限)と組み合わせると、完全に制限されたPBFDAFに比較して最適なものに近い収束挙動が得られ、計算の複雑さを大幅に削減することができる。4つおよびそれ以上に関し、PBFDAFの演算数は因子2により減少される。シミュレーションは、非常に相関性があり静的でない入力信号に対しても、この制限機構の実行性が非常に良好であることを示す。
【0107】
本発明によるPBFDAFは、ハードウエアによってもソフトウエアによってもまたは両者の結合によっても実現することが可能である。ディジタル信号プロセッサを利用して、本発明のPBFDAFを実行することが好ましい。
【0108】
本発明の範囲は明示した実施例に限定されない。本発明は新規な特徴および特徴の組み合わせにおいて具現化される。参照番号は本発明の範囲を限定するものではない。原文における“comprising”なる用語は、請求項に列挙されたもの以外の他の要素又はステップの存在を排除するものではない。原文において要素に先行する“a”または“an”なる用語は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。
【0109】
以下、本願で使用した記号を列挙する。
【0110】
a 制限近似の平均値
α 適応制限
Ai 区画iに関する更新ブロック
【0111】
【外3】
付加数
Cb i[κN] 区画iによる後方補償信号
Cf i[κN] 区画iによる前方補償信号
DN 2N 回転行列
【0112】
【外4】
分割数
e[k] 所望の信号(AECにおけるエコー)
【0113】
【外5】
所望の信号の推定
【0114】
【外6】
s[k]に関して劣化した所望信号
【0115】
【外7】
フーリエ変換行列
G 2N 一般化制限ウインドウ
【0116】
【外8】
確率勾配(stochastic gradient)ベクトル
h[k] インパルス応答ベクトル
IN 単位行列
j 虚数単位
JN 反転行列
K PBFDAFアルゴリズムにおける区画数
Kt ハイブリッド制限PBFDAFに関する閾値区画
κ ブロック時間指標
m 高傾斜制限近似に関する乗算因子
【0117】
【外9】
リアル乗算数
Θ メモリ占有
N ブロック長
0,O ゼロ ベクトル,行列
P 代替制限期間
P x[k] 規格化(電力)因子
【0118】
【外10】
P xの推定
Ψ 計算の複雑さの基準
r[k] 残留信号
s[k] 近接端信号
以下、信号処理のブロックを列挙する。
【0119】
FFT
【0120】
【数37】
逆FFT
【0121】
【数38】
ハーフ・オーバーラップ
【0122】
【数39】
巡回シフト
【0123】
【数40】
直列−並列変換器
【0124】
【数41】
並列/直列変換器
【0125】
【数42】
1−2スイッチ
【0126】
【数43】
2−1スイッチ
【0127】
【数44】
右へのゼロの付加
【0128】
【数45】
左へのゼロの付加
【0129】
【数46】
右側のヌル化
【0130】
【数47】
処理要素
【0131】
【数48】
上昇コサイン・ウインドウ
【0132】
【数49】
方形制限
【0133】
【数50】
高傾斜ウインドウ
【0134】
【数51】
シヌソイド・ウインドウ
【0135】
【数52】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、音響エコー・キャンセラの例のブロック図を示す。
【図2】図2は、更新ブロック34を形成するPBFDAFの例のブロック図を示す。
【図3】図3ないし7は、更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図4】図3ないし7は、更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図5】図3ないし7は、更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図6】図3ないし7は、更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図7】図3ないし7は、更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図8】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図9】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図10】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図11】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図12】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図13】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図14】図14は、前方および後方補償信号を生成する生成手段の例のブロック図を示す。
【図15】図15は、図14に示されるような生成手段の動作を説明するためのいくつかの信号を示す。
【図16】図16は、前方および後方補償信号を生成する生成手段の他の例のブロック図を示す。
【図17】図17は、図16に示されるような生成手段の動作を説明するためのいくつかの信号を示す。
【図18】図18および図19は、生成手段の動作を説明するいくつかの信号波形を示す。
【図19】図18および図19は、生成手段の動作を説明するいくつかの信号波形を示す。
【図20】図20は、本発明によるPBFDAFの例のブロック図を示す。
【図21】図21は、図20のPBFDAFで使用する更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図22】図22は、前方および後方補償信号を生成する生成手段の更なる例のブロック図を示す。
【図23】図23は、後方補償信号を生成する生成手段の例のブロック図を示す。
本発明が関連する区分ブロック周波数領域適応フィルタ(partitioned block frequency domain adaptive filter)は、制御信号に依存して入力信号をフィルタ処理し、複数の並列に配置されたフィルタ区画より成り、各フィルタ区画は適応フィルタのインパルス応答の一部をモデル化するよう形成され、各フィルタ区画は、入力信号を表わす信号と制御信号を表わす信号を巡回畳み込みをすることによって、フィルタ区画のフィルタ係数を更新する更新手段を有し、前記更新手段が、巡回畳み込みの巡回折り返しアーティファクトを除去することによって断続的にフィルタ係数を制限する制限手段より成る。
【0002】
更に本発明は、そのような区分されたブロック周波数領域適応フィルタを形成する音響エコー・キャンセラ、および制御信号に依存して入力信号を適応的にフィルタ処理する方法にも関連する。
【0003】
本願の前提とする区分ブロック周波数領域適応フィルタ(PBFDAF: partitioned block frequency domain adaptive filter)は、例えば次のような文献により知られている:“Mutidelay block frequency domain adaptive filter”, IEEE Transactions on Acoustics, Speech and Signal Processing, vol. 38, no. 2, pp. 373−376, by J.S. Soo and K.K. Pang. 適応フィルタは、ディジタル信号処理のいくつかの用途で非常に有効である。そのような例として挙げられるのは:チャネル等化、アレイ信号処理およびノイズ・エコー消去である。ここで、音響エコー・キャンセラ(AFC: Acoustic Echo Canceller)は、本発明を説明するための手段としてのみ使用され、本発明がその特定の用途に制限されないことに留意を要する。音響エコー・キャンセラは、例えば、遠距離会議システムまたは音声認識システムで使用される。AFCの構造は図1に示され、これは遠距離会議システムの一部分として説明される。
【0004】
2つの異なる部屋の中に2つのスピーカを備えた遠距離会議システムにおいて、AFCが2回行なわれている。遠端スピーカから音声信号x[k]は、拡声器14により近接端の部屋で生成される。拡声器14およびマイクロフォン16の間の伝送は、室内インパルス応答によりモデル化することが可能である。マイクロフォン16により拾われるエコー信号e[k]は、その室内インパルス応答との信号x[k]の畳み込みとして観測され得る。両者が喋っている場合において(すなわち、2重会話)、マイクロフォン16は近接端音声信号s[k]も拾う。適応フィルタが存在しないならば、その信号は
【0005】
【数4】
であり、これは遠方端スピーカに直接的に伝送される。所望の近接端音声信号に並んで、遠方端スピーカはそれ自身の音声信号のエコーも聞く。その結果、遠距離会議システム全体として、これら2つのスピーカの間は最適な通信にはならない。
【0006】
更新手段または相関手段10および畳み込み手段12により形成される適応フィルタは、実際の部屋のインパルス応答を有限インパルス応答(FIR: Finite Impulse Response)フィルタを利用してモデル化することによって、不要なエコーを抑制する。このFIRフィルタのフィルタ係数またはフィルタ重みw[k]は、残留信号r[k]を入力信号x[k]と相関させることによって更新手段10で更新される。相関によりすなわち相関手段12で入力信号x[k]をフィルタ係数w[k]と相関させることにより、適応フィルタは、
【0007】
【外1】
で示される未知の音響エコー信号を推定する。このエコーの推定値は減算器18を利用して実際のエコーから減算される。その結果として、エコー・レベルは減少し、スピーカ間の改善された通信に導く。
【0008】
適応フィルタの効果的な実現に関し、高速の畳み込み(フィルタ処理)を実行する高速フーリエ変換(FFTs: Fast Fourier Transforms)との組み合わせにおけるブロック信号処理を利用することが知られており、これは演算効率よく周波数領域におけるフィルタ・パラメータの適応化を可能にする。これを行なうために、入力サンプルのブロックが収集され、周波数領域で適応フィルタ処理が実行される。一般に、高速フーリエ変換(FFTs)は、時間領域データによる周波数領域データを計算するために使用されるが、この目的に関しては他の変換(例えば(I)DCT変換)も利用可能である点に留意すべきである。
【0009】
2つの周波数領域ベクトルの要素的な乗算(elementwise multiplication)は、時間領域における畳み込みに対応する。両ベクトルが高速フーリエ変換で変換されるならば、その畳み込みは巡回畳み込み(circular convolution)である。適応フィルタでは、巡回畳み込みの代わりに線形変換が必要とされ、有限長の入力データ・ストリームを有限長のベクトルと畳み込む。オーバーラップ・セーブ(OLS: Overlap−Save)と呼ばれる手法を利用すると、線形変換はFFT/IFFTsを利用して実行され得る。オーバーラップ・アッド(OLA: Overlap−Add)は、無限長ベクトルを有限長ベクトルと効率的に畳み込むために使用され得る。しかしながら、通常OLSは、OLA手法を利用する適応フィルタよりも計算が複雑でない。
【0010】
適応フィルタは線形変換部10および線形畳み込み部12より成る。畳み込み部12は、入力信号をフィルタ重みを利用してフィルタ処理するために必要とされ、相関部10は、これらの適応フィルタ重みを更新するために必要とされる勾配推定値を計算する。収束した後に、適応重みは、最適解に調整され、その部屋のインパルス応答を表現する。相関部10および畳み込み部12の両者は、オーバーラップ・セーブ手法を利用して実行され得る。相関部10は畳み込み部12と同様なものであり、両部分では線形畳み込みが計算される。相関部10が畳み込み部12と異なるのは、相関部10では、ある入力ブロックが時間反転される必要のあることである。この時間反転は、図2に示されるような複素共役演算子32を利用して周波数領域で実行され得る。
【0011】
ブロック周波数領域適応フィルタ(50%オーバーラップ)の欠点は、ブロック処理に起因するNサンプルの遅延である。先ず、ブロックが処理される前に、入力サンプルに関する完全なブロックが収集される。この問題は、適応フィルタの区分化(partitioning)によりブロック・サイズを減少させるPBFDAFにより解決される。PBFDAFは、インパルス応答の小部分により全体がモデル化される複数のBFDAFの並列処理として考察することが可能である。
【0012】
図2は、PBFDAFのブロック図を示す。入力信号x[k]のサンプルは、直列並列変換器20および50%オーバーラップ・ブロック22を利用して、50%の重複をもってブロックに収集される。これら入力サンプルのブロックは、FFT26により周波数領域に変換される。ブロック42では、残留信号または制御信号r[k]のNサンプル・ブロックの左側にN個のゼロを付加する。2N個の時間領域値に関する結果のブロックは、その後他のFFT26により周波数領域に変換される。次に、周波数領域信号の電力が、要素乗算器40における規格化因子を利用する要素乗算によって規格化される。
【0013】
各区画は、複素共役演算子32、更新ブロック34および要素乗算器36より成る。更に、最も左側の区画を除く総ての区画は、ブロック遅延要素30を有する。更新手段または相関手段10は、複素共役演算子32および更新ブロック34より成る。畳み込み手段12は、要素乗算器36より成る。複素共役演算子32の出力は入力信号を表わす信号である。要素乗算器36の出力は制御信号を表わす信号である。更新ブロック34は、入力信号を表わす信号および制御信号を表わす信号に基づいて、フィルタ係数を更新および出力する。次に、更新されたフィルタ係数は、要素乗算器36を利用して入力信号のサンプルのブロックと畳み込まれる。総ての区画における要素乗算器36の出力、すなわち総ての部分的畳み込みの結果は、加算器38で共に加算され、全体的な畳み込みの結果を形成する。この全体的な畳み込みの結果は、IFFT28によって時間領域に変換される。最後に、全体的な畳み込みの結果の2N個の時間領域サンプルのブロックに関する最も左側のNサンプルは破棄され、推定されたエコー信号
【0014】
【外2】
を形成する。この推定されたエコー信号は、減算器18を利用して、近接端で拾われた信号から減算される。この減算の結果は残留信号r[k]となる。
【0015】
図3は、更新ブロック34の例に関するブロック図を示す。この例では、適応重みが時間領域で格納される。指標iは区画番号を示す。更に、変数W i 2Nが次のように定義される:
【0016】
【数5】
入力信号を表わす信号および制御信号を表わす信号は、要素乗算器50によって互いに要素的に乗算される。この周波数領域における要素乗算は、時間領域における巡回畳み込み(circular convolution)を形成する。この畳み込みの結果は、巡回折り返しアーティファクト(circular wrap−around artifact)を形成し、IFFT52,要素処分ウインドウ54、ゼロ付加器60およびFFT62によって形成される方形時間領域制限ウインドウを利用して除去される。先ず、畳み込みの結果がIFFT52によって時間領域に変換される。次に、ウインドウ54が畳み込みの結果のNポイントを破棄する。これは、オーバーラップ・セーブ手法による巡回折り返しアーティファクトを除去するために必要とされる。残余のNサンプルに関し、加算器56および遅延要素58を利用して適応重みを更新する。この更新の後に、N個のゼロが増加される。これは、オーバーラップ・セーブ手法を利用して、入力信号に関する適応重みの効率的な畳み込みに必要とされる。最後に、その結果は周波数領域に戻るべく変換される。
【0017】
2つの反転演算子JNは、ベクトルw i 2N[κN]を、時間の逆の順序で格納することによって削除することが可能である。更に、2つの時間領域ウインドウのFFTおよびIFFTは、時間領域の勾配制限演算子(gradient constraint operator)で結合可能である。勾配制限演算子または制限演算子の結果として、適応係数は、時間領域に代えて周波数領域で格納および更新される必要がある。これらの周波数領域の係数は、W i 2Nにより記される。制限演算子および適応係数の分離は、以下の導出過程によって示される:
【0018】
【数6】
ここで、diag{G2N × 2N}=g 2Nは、方形制限ウインドウ(rectangular constraint window)ベクトルであり、最初のN個の要素におけるものと最後のN個の要素におけるゼロを含む。制限手段はこの方形制限ウインドウを形成する。図4は、方形制限ウインドウを有する周波数領域の係数更新を示す。
【0019】
留意すべきことは、周波数領域重みが時間領域重みに比較して更なる格納要素を要するにも拘らず、周波数領域において適応重みを更新および格納する理由があることである。最も重要な理由は、計算の複雑さを減少させるために、勾配制限を省略する可能性である。
【0020】
主に、方形制限は更新の前に置かれるが、図5に示すように、この制限を更新の後に置くことは賢明である。両者の状況に対して(図4および図5)、無限の精度で方形制限を計算すれば、同一の結果を与える。しかしながら、有限の精度で図4における重み更新を計算すると、数値的丸め誤差が重み更新に蓄積される。最終的には、重み更新の多数の繰り返しの後に、その係数に関する最後のNポイントに大きな誤差を与える。これら蓄積された誤差の補正は、この制限の右半分によって妨害される。図5に示すように重み更新の後に制限を置くと、その制限による計算後の結果も、有限精度における数値的丸め誤差を包含する。しかしながら、制限演算は実際の係数に関して実行されるので、長期間にわたる問題(long−term problem)を招くそのような誤差の蓄積はない。したがって、方形制限操作は、重み更新の後に置くのが好ましい。
【0021】
図6は、更新ブロック34の例のブロック図であり、上記文献に開示されているPBFDAFの動作を示す。方形制限ウインドウ82を利用すると、計算が比較的複雑になる。この複雑さは、特定の区画の係数ベクトルにのみ時々制限をかけることによって、低減させることが可能である。このため、更新ブロック34は2つのスイッチ80,84を形成する。これらのスイッチ80,84の動作は次の機能により説明される:
【0022】
【数7】
この式において、パラメータKは複数の区画の番号を示し、パラメータPはそのアルゴリズムのブロック反復数における代替的な制限期間である。スイッチ80,84が共に1の位置にある場合にのみ、方形制限ウインドウが計算される。スイッチ80,84が共に0の位置にある場合は、畳み込みの結果は全く制限されない。
【0023】
本発明は、計算が比較的複雑でなく、改善された収束性を有するPBFDAFを提供することを目的とする。この目的は本発明によるPBFDAFにより達成され、その特徴とすることは、更新手段が更に折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択しおよび除去する選択手段より成り、選択手段が方形制限ウインドウを近似したものを形成することである。巡回折り返しアーティファクトの制限は断続的に実行されるので、すなわち時折行なわれるに過ぎないので、これらの制限の間で過剰な巡回折り返しアーティファクトの蓄積が生じ、比較的良好でない収束性を示す結果となる。これは、巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択しおよび除去するために、方形制限ウインドウの近似を導入することによって抑制される。方形制限ウインドウの近似は、計算効率の観点から、巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部を除去することを可能にする。
【0024】
本発明によるPBFDAFの例によれば、フィルタ係数が制限手段によって制限されない場合に、巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択するよう選択手段が形成される。この基準によって、使用されない場合、すなわち巡回折り返しアーティファクトが制限手段により除去される場合に、巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部の選択および除去は実行されない。
【0025】
本発明によるPBFDAFの例によれば、近似に関する時間領域の値がゼロより大きい又は等しい。時間領域ウインドウにおける負の値は、適応重みの発散を回避するために避ける必要がある。制限ウインドウにおける負の値により発散する理由は、直感的に説明することが可能である。負の値に起因して、相関部分は、残留信号とマイナスで相関する結果物を生成する。このため適応重みは良好でない方向に更新される。適応重みの精度が低くなると、更なる負の相関が生じ、次のブロック反復毎に重み付けを悪化させてゆく。
【0026】
本発明によるPBFDAFの例によれば、時間領域における近似が、方形制限ウインドウにおける遷移の位置に対応する位置近傍で大きな傾斜を有する。この基準により、ゼロでない値に収束する巡回結果の比較的多くの量が、選択手段により除去される。例えば、50%オーバーラップを利用する場合に、0およびNの間に大きな傾斜が位置付けられ、ここでNはフィルタのブロック・サイズであり、2NはFFTサイズである。75%オーバーラップを利用する場合は、0および3Nの間で大きな傾斜を位置付け、ここでNはフィルタのブロック・サイズであり、4NがFFTサイズである。
【0027】
本発明によるPBFDAFの例によれば、近似に関する周波数領域の値が、実数値および共役複素数値より成り、虚数値の少なくとも一部が、乗算により順次得ることの可能な数の行を形成する。この基準により、近似の周波数領域値の少なくとも一部が簡易に計算することが可能になり、すなわち他の周波数領域値を単に乗算因子に乗じることによって、比較的少ない計算労力を利用するPBFDAFが得られる。
【0028】
本発明によるPBFDAFの例によれば、近似に関する周波数領域値が:
【0029】
【数8】
により定義され、iは指標数であり、mは乗算因子であり、aは平均値である。制限ウインドウにおいて連続する周波数成分の間の関係に起因して、複素エルミート信号に関するウインドウの周波数領域巡回畳み込みが、非常に効率的に計算され得る。
【0030】
本発明の上記目的および特徴は、図面を参照しながら以下の好適実施例の説明を通じて一層明らかになるであろう。
【0031】
図中、同一の部分には同一の参照番号が与えられる。
【0032】
図面および明細書において、大文字は周波数領域変数を記すために使用し、小文字は時間領域変数を記すために使用する。太字のフォントは行列を示すために使用され、ベクトルは下線を施したフォントで示される。更に、添え字のt、*およびhは、転置、複素共役および複素共役転置(エルミート(Hermitian))をそれぞれ示すために使用される。ONおよびINは、はゼロおよび単位行列を示し、添え字は行列の次元を示す。一般に、上付き添え字は次元を示し、下付き添え字はベクトルまたは行列の要素数を示す。ここで使用される主なベクトルおよび行列は、2N×1および2N×2Nの次元を有し、上付き添え字を省略したベクトル又は行列は、長さ2Nのベクトル又は次元が2N×2Nの行列を示すものとする。角括弧内の指標(例えば、x[k])は、時間的指標を示す。diag{・}は、2N×1ベクトルを、対角要素としてそのベクトルを含むが他の要素がゼロである2N×2N行列に変換するところの演算子を示す。数学的な期待値はε{・}で示される。
【0033】
2N次元ベクトルにおけるL個の位置にわたるデータの巡回シフト(circular shift)は、次の行列によって実行される:
【0034】
【数9】
ゼロ行列Oは、適切な次元を有するものとする。D2N 0=I2Nに留意すべきである。2N次元ベクトルのデータは、2N×2N反転行列(mirrored matrix)J2Nにより反転され、これは次式で定義される:
【0035】
【数10】
D2N Lと反対方向のL個の位置に関する逆巡回シフトは、次の行列により実行される:
【0036】
【数11】
ここで、J2N 0=J2Nである。
【0037】
数学的な説明と並んで、信号処理ブロックに関する図面も使用される。これらのブロックの説明については、本説明の最後にまとめられている。本明細書で使用する記号のまとめも記載されている。この説明では、ブロックのオーバーラップ(HOL)または50%オーバーラップが使用されているが、本発明はその特定のオーバーラップに制限されない。本発明は他のパーセンテージのオーバーラップにも使用され得る。
【0038】
dBにおける規格化された二乗平均誤差(NMSE: Normalized Mean Square Error)は、適応フィルタの実行性の目安であり、次式で定義される:
【0039】
【数12】
ここで、Nはブロック長であり、目下計算するNMSE[k]に関する残留サンプルを含む。定常状態NMSEは、適応フィルタの収束後のNMSEの値であり、残留エコーの目安である。定常状態NMSEが低いほど、適応フィルタの実行性が良い。
【0040】
適応フィルタの他の実行性基準であるCTCは、アルゴリズムの遷移中におけるNMSE曲線の傾斜として定義される。学習曲線(learning curve)の初期の部分は線形であると仮定する。CTCはdB/msで定義される。
【0041】
IFFTおよびFFT操作並びに要素乗算は、時間領域における係数のヌル・ハーフ(null half)のために、その制限を計算する必要がある。これは、O(NlobN)の演算を要し、ここで、2NはFFT/IFFTの長さである。この制限は、周波数領域で巡回畳み込みを直接的に計算することによっても実行可能である。巡回畳み込みのこの直接的な計算は、O(N2)の操作を必要とする。方形制限を利用する巡回畳み込みについての周波数領域係数(G 2N)iは、次式で与えられる:
【0042】
【数13】
第1近似を利用すると、実数係数のみが使用され、互いに複素共役の最初の2つが利用される。これは、正弦的制約ウインドウとなり、FFT/IFFTを利用するよりも少ない計算の複雑さで周波数領域で計算可能である。当然ながら、方形制限ウインドウの他の低次近似を利用することも可能である。
【0043】
50%オーバーラップ(ハーフ・オーバーラップ)以外の制限ウインドウは、実数および複素数の両者の値を有する周波数成分を含む。したがって、そのような計算には、50%オーバーラップ・ウインドウと比較して更に多くの複雑な計算を必要とする。上述したように、実際にはハーフ・オーバーラップ制限ウインドウが多く使用されている。
【0044】
方形制限は更新の後に配置される必要がある。しかしながら、これは制限近似に関して異なる。更新の後に近似が置かれるならば、時間領域適応重みは、その近似ウインドウの重みが定常的に乗算される。近似ウインドウにおける主な重みは一般に1に等しくないので、ブロック反復毎の重みの調整を導入し、適応フィルタは収束に向かわないであろう。したがって、総ての制限近似は、更新の前に、例えば加算器56の前に良好に適用される。
【0045】
時間領域ウインドウにおける負の値は、適応重みの発散を回避するために避ける必要がある。制限ウインドウにおける負の値に関する発散の理由は、直感的に説明可能である。負の値に起因して、相関部は、残留信号とマイナスで相関する結果を生じる。このため、適応重みは好ましくない方向に更新される。適応重みが低い精度になると、更なる負の相関が生じ、以降のブロック反復における重みを悪化させる。
【0046】
式3.8の周波数領域係数は時間領域係数になるので、その周波数係数を尺度変更する必要がある。制限近似においてより多くの周波数成分を使用すると、より良い実行性となるが、計算の複雑さを増加させる。低い計算の複雑さで最適な実行性を達成するために、制限のどの特性が重要であるかが調査される。2つの制限ウインドウに関する実験を行なう。
【0047】
制限ウインドウ1は、式3.8に従って、実数と最初の3つの互いに共役な複素成分を包含する。因子5/6によるスケーリングが行なわれ、ウインドウの負の値を回避する。第2ウインドウは、第1のウインドウと比較して同一の傾斜の勾配を有するが、その傾斜の間で一層正確なものである(方形制限ウインドウに関して)。ステップ・サイズ・パラメータ2αは、0.5/Kの値に設定される。両制限近似ウインドウは、完全な制限の場合に比較して、少ない精度の定常状態NMSEに導く。しかしながら、この2つの近似ウインドウの間の差は、大きく相違しない。明らかに、これら傾斜間における値は、収束性の挙動には重要ではない。これは、その傾斜間の時間領域適応重みはランダムな値(ノイズ)により更新されるということにより説明可能である。したがって、重みは収束せず、平均的にはゼロである。このことは、その傾斜に近接する巡回アーティファクトには真ではない。これら傾斜に近接する適応重みは、ゼロでない値に収束し、隣接部分が結合されるので、PBFDAFアルゴリズムの畳み込み部分に誤差を導入する。ゼロでない値に収束させる巡回結果(circular result)に相当する分を削除するため、方形制限ウインドウにおける遷移が存在する2つの場所で、より高い傾斜が作成される。
【0048】
より高い傾斜は良好な収束の挙動を得るのに重要であるので、できるだけ多くの周波数成分が使用される。方形巡回畳み込みアルゴリズムを利用する場合に、より多くの周波数成分を導入することは、計算の複雑さを線形に増加させることを招く。したがって、方形巡回畳み込みアルゴリズムは使用されるべきでない。
【0049】
方形制限の近似に関する信号の畳み込みの効果的な手法で想定することは、式3.8における奇数の周波数成分が隣接する奇数成分と乗算因子により関連付けられることである。このウインドウは高次の周波数成分も含むので、この制限近似の傾斜も非常に急である。したがって、このウインドウは高傾斜(high−slope)制限ウインドウと呼ばれる。この高傾斜制限ウインドウG 2Nは、50%オーバーラップ区画に関する周波数領域において、次式で定義される:
【0050】
【数14】
上記の制限ウインドウに関する2つの連続する周波数の間の関係に起因して、複素数値エルミート信号を有するこのウインドウの周波数領域巡回畳み込みは、非常に効率的に計算され得る。
【0051】
実験によれば、時間領域における制限ウインドウg2Nが、以下の条件を加える場合に、良好な結果が得られた:
【0052】
【数15】
2.i=0およびi=Nの場合は高スロープ
更なる実験によれば、i=0およびi=N(すなわち高スロープ)は、N≦i<2Nの範囲でヌルより重要である。m=2.166およびa=0.57を選択すると、高スロープ制限ウインドウ
【0053】
【数16】
は、上記の第1条件を制限し、条件2で提案されるような中間で傾斜の導関数を最大化する。このmの最適値は経験的に見出される。aの値を利用して、ゼロ・レベルおよび高スロープ・ウインドウの間の領域が調整され得る。a=0.57の場合に、0≦i<Nの範囲における平均振幅は1に規格化される。
【0054】
高スロープ・ウインドウを複素エルミート入力信号と畳み込みを行う効率的なアルゴリズムを導出するため、次の巡回畳み込みの定義を行なう:
【0055】
【数17】
巡回畳み込みは線形演算であるため、それらを重ね合わせることが可能であり且つG 2Nを有する巡回畳み込みを、以下の3つの部分に分けることが可能である:
【0056】
【数18】
式4.5と式4.6の間に直接的な関係があるので、必要なことは、アルゴリズムにおけるこれら巡回畳み込みの一方を計算することである。2つの式の間の関係は、以下の補助定理により表現される:
補助定理4.2.1
【0057】
【数19】
したがって、アルゴリズムの次の導出において、我々は式4.5の巡回畳み込みを考察するのみである。各々の次の畳み込み要素(G 1 2N)k+2は、実際の畳み込み要素(G 1 2N)kの関数として表現され、非常に効率的な畳み込みアルゴリズムが導出される。反復表現は次の補助定理で定式化される:
補助定理4.2.2
【0058】
【数20】
上記の導出と同様に、畳み込み要素(G 1 2N)kの関数として畳み込み要素(G 1 2N)k−2を計算する表現を導出することが可能である。それは次式によるものである:
【0059】
【数21】
因子m−1の乗算に起因して、上記2つの表現は数値的に安定な反復である点に留意を要する。因子mの乗算が各反復で行われる表現を導出することも可能である:しかしながら、そのような表現は、精度の悪い結果を導く。
【0060】
周波数領域における高スロープ制約で畳み込みを計算するために、原則として以下の副次的計算を実行する必要がある:
1.(スケール操作)
【0061】
【数22】
の計算。
【0062】
2.
【0063】
【数23】
の初期計算。
【0064】
3.補助定理4.2.2を利用した畳み込みの反復計算。
【0065】
4.上記の計算による
【0066】
【数24】
の計算。
【0067】
平均値に関する畳み込みは、因子aに関する入力信号X 2Nをスケール化することによって計算され得る。高スロープ制限ウインドウを有する巡回畳み込みより多く実行する場合に(PBFDAFアルゴリズムにおける場合のように)、その平均値を有する畳み込み(2N)−1・(G 1 2N)0は、ただ1つの乗算を行うことによって実行され得る。
【0068】
【数25】
の計算には、巡回畳み込みの反復計算の第1の反復を、奇数点に関して1つおよび偶数点に関して1つ必要とする。式3.8のほんの最初の互いに複素共役な周波数成分の和は、総ての互いに複素共役な周波数成分の和にほぼ等しいので、G 1 2Nの総ての係数に基づいて、
【0069】
【数26】
を計算する必要はない。
【0070】
そこで、以下の計算に基づく初期の計算を実行する:
【0071】
【数27】
【0072】
【数28】
の計算において、ほんの1つ又は2つのG 1 2Nの係数が考慮され(例えば、Q=1,3)、正確な結果が得られる。
【0073】
補助定理4.2.2における因子
【0074】
【数29】
は、入力データX 2Nに先立って予め計算することが可能である。補助定理4.2.2に記載されているように、aに関する乗算は他の部分でも実行されるので、先行計算因子は
【0075】
【数30】
である。大きなNに関し、先行計算因子は近似的にm/2になる。m=2.166ならば、1.083の先行計算因子となる。我々はこの値を1.0に近似することが可能であり、2N乗算の複雑さを減少させ、しかも以下の条件に違反しない。
【0076】
【数31】
2の乗算をシフト操作で実行すると、反復ステップの複雑さは、更に減少させ得る。1.0の先行計算因子およびm=2を利用すると、制限ウインドウはゼロより下に僅かに落ち込み、0≦i<2Nに関して(g 2N)i≧0という条件に違反する。
【0077】
この制限における負の値は回避されるべきであるので、m=2を利用することは適切ではない。1.0の先行乗算に関する反復計算を実行すると、2つの加算と1つの乗算を行なって、畳み込みアルゴリズムにおける単独の反復が行なわれる。
【0078】
補助定理4.2.1に従って、G 2N 1およびG 2N 2の間の関係に起因して、G 1が計算される必要がある。周波数領域ベクトルはエルミートなので、
【0079】
【数32】
の出力点の半分が計算される必要がある。
【0080】
図7は、更新ブロック34の例を示し、例えば高スロープ制限ウインドウのような方形制限ウインドウ92の近似は、方形制限ウインドウまたは制限手段82との組み合わせにおいて使用される。この例では選択手段により方形制限ウインドウ92の近似を形成する。スイッチ80,84は更新ブロック34の動作を制御する。スイッチ80,84が1の側にある場合、厳密な方形制限ウインドウ82を利用して、蓄積される総ての巡回折り返しアーティファクトを削除する。この厳密な方形制限は比較的複雑な計算が多く、これは時折実行されるに過ぎない。両スイッチ80,84が0の側にある場合、方形制限ウインドウ92の近似が利用され、計算効率よく巡回折り返しアーティファクトの大部分を除去する。こうして、比較的良好でない収束の挙動となる巡回折り返しアーティファクトの過剰な蓄積が生じるのを防止する。
【0081】
実験により示されたことは、上述の文献に述べられているようなPBFDAFは、方形制限82が利用される時点における収束曲線上でジャンプし:その時点におけるNMSEがそれまでに比べて急激に悪くなることである。NMSEにおける劣化は、その方形制限が利用された後に厳密に生じるので、巡回誤差の除去はこの現象に対処することになる。明らかに、適応重みに蓄積された巡回誤差は、その部屋のインパルス応答モデルに何らかの影響を与え、方形制限を利用してその巡回誤差を除去することは、次のブロック反復におけるNMSEの一次的な劣化となる。
【0082】
分析を始めるに際して、いくつかの折り返しアーティファクトを補償することが有益である。この分析は、適応フィルタにおける畳み込み部分の図形構成を利用して行われる。この分析の後に、補償信号z i 2N[κN]がどのように形成されるかを示す。
【0083】
方形制限が導入された後に、他の区画における除去された巡回誤差を補償することによって、既知のPBFDAFの収束曲線における一次的な劣化を除去することが可能である。その結果として、区画された畳み込みの出力は、制限が導入されなかった場合と近似的に同じになる。この手法の説明に関し、時間領域における入力ブロックを示す図8を考察する。入力信号ブロックに関する残留信号の巡回補償が実行された後に、その結果は範囲[0...N−1]に所望の線形相関を含む一方、範囲[N...2N−1]は巡回折り返しアーティファクトに汚染される。完全に制限されたPBFDAFでは、これら総ての折り返しアーティファクトは削減される。この分析において、相関出力Nおよび2N近傍の結果は線形相関に近似することが考えられることを想定する。PBFDAFでは、電力規格化なしに、(N個のゼロ点を増加した)時間領域における残留信号を、図8の入力信号ブロックに相関付けることによって容易に理解され得る。高いけれどもNに近い相関出力点に関し、折り返しアーティファクト量は低い。これは、低いけれども2Nに近い点についても真である。3N/2に向かう相関出力点に関し、折り返しアーティファクト量が増加するにつれて近似は悪くなる。そこで、より高いけれどもNに近い相関出力点を左テール(tail)と呼び、より低いけれども2Nに近い点を右テールと呼ぶ。右テールは負の時間遅延に関する線形相関を近似するので、図9に示すように主要な区間を変更することが好ましい。両テールは線形相関の近似的な結果であるので、適応重みにおけるテールの係数w i 2N[κN](時間領域)は、近似的に適切な値に収束する。これら適応重みのテールは、既知のPBFDAFの収束曲線における一次的な劣化を削除するために良好に使用することが可能である。他方、(折り返しアーティファクト量の多い)3N/2の近傍における相関結果は使用されず、これは、長さNの2つの入力ブロック間で約50%の折り返しが存在することに起因する。したがって、相関結果は線形相関に関して行なうものがない。これらの相関結果はランダムであると想定されるので、適応フィルタにおける適応重みもランダムに更新される。その結果、適応重みにおけるこれらの部分が揺らぎ、定常的な値に収束しなくなる。したがって、2つのテールの間のこれらの値はノイズ部分として言及される。
【0084】
巡回折り返しアーティファクトは、適応フィルタの畳み込み部分に誤差を導入する。なぜなら、その畳み込みにおいて隣接する区画が結合されるからである。線形相関の近似的な結果である値を含む2つのテールに起因して、方形制限が既知のPBFDAFに導入される場合にこれら2つのテールを再利用し得る。これは、適応フィルタにおけるブロック畳み込みの出力が近似的に不変になるようにして実行され、その特定の区画における総ての巡回折り返しアーティファクト(すなわち、2つのテールおよびノイズ部分)が除去される。これを達成する方法は、左テールを次の区画に補償し、右テールを先行する区画に補償することによるものである。
【0085】
補償の手法を図形によって説明する。図10において、適応フィルタの2つの重みベクトルが図示されている。適応重みベクトルw i 2N[κN]に関し、左部分は適切な線形相関に基づく重みを表現する。このベクトルの右側は、巡回折り返しアーティファクトに汚染された重みを含む。この重みは先に上述した2つのテールから形成される。左テールは番号1で示され、右テールは番号2で示される。これらテールの間において、重みはノイズ的であり、したがって使用されない。
【0086】
先行する部分において、線形相関および巡回折り返しアーティファクトに関連する結果から構成されるような適応フィルタの重みが議論された。これら折り返しアーティファクトの部分(2つのテール)は有益な結果物であることも説明された。ここで説明される補償は、これらのテールがどのようにして再利用され得るかを説明する。目下我々は2つの有益なテールを有するので、それらを前方(forward)および後方(backward)補償に使用する。
【0087】
w i 2N[κN]に関するx i 2N[κN]の巡回畳み込みは、ある信号(例えば適応重み)を反転し、この信号を右側にシフトすることによって、図形的に実行され得る;これは図11に示される。ある畳み込み反復における両信号の積の総和は、特定の反復の出力要素である。我々は巡回畳み込みを実行するので、適応重みをシフトすることは、実際には2N長ベクトルの回転である。畳み込み出力は次式に示される:
【0088】
【数33】
図11では、畳み込み出力の図形構成の3つの段階が示されている。この図は、時間領域における巡回畳み込みを示し、有利な実施例では、巡回畳み込みが周波数領域で実行される。
【0089】
図11では、k=0、Nおよび2N−1に関する相関出力の図形構成が示される。k=0ないしk=N−1の畳み込み結果は、何の役割も果たさない。というのは、PBFDAFにおけるIFFTの後のウインドウがそれらを破棄するからである。w i 2N[κN]におけるポイントNないし2N−1に関し、テール1の畳み込みは入力ブロックB2に対して大きく考慮される。テールが小さいと仮定する場合には、この畳み込みは、次の区画のテールと入力ブロックB2との相関によって近似され得る。これは、図12に示されるように、適応重みの右側でテール1を除去し、このテールを次の区画の適応重みの最初のNポイントに配置することによって達成される。小さなテールに関し、この区画における当初のテール1を考察する相関出力は、次の区画におけるこのテールの相関出力に近似的に等しいことがわかる。
【0090】
他方、図12において、番号2で示される右テールも存在する。相関出力のポイントNないし2N−1に関し、テール2の畳み込みはブロックB2にも大きく考慮されることがわかる。2N−1に近い畳み込み出力に関し、ブロックB3に関する小さな折り返しのみが存在する。再び、小さなテールに関し、入力ブロックB2に関するテール2の畳み込みは、先行する区画でも(近似的に)取得され得る。
【0091】
テール2の行き先は図11に示されている。適応重みが、図9のような修正された基本区間に関連して示される場合に、図13に示されるような区画iにおける補償を視覚化することが可能である。中央のK−2個の区画に関してこれは良好に働くが、最初および最後の区画に関しては問題がある。この話題については後述する。
【0092】
図14は、前方および後方補償信号を生成する生成手段の実施例のブロック図を示し、図15は図14の生成手段の操作を説明するためのいくつかの信号を示す。方形制限により制限された重みベクトル全体に関し、前方および後方補償信号Cf i 2N[κN]およびCb i 2N[κN]が生成される。説明の便宜上、総ての信号は時間領域で形成されるものとする。線形畳み込み部およびテール巡回折り返しアーティファクトから形成されるような制限されていない重みベクトルを考察するならば、図14の信号1ないし6は図15のように描くことができる。この補償を利用するPBFDAFは改善された収束曲線を有し、これは、厳密な方形制限が行なわれる場合に、NMSEにおける大きな劣化を有しない。方形制限が導入される場合に、補償の良好な効果は明確に見られる。補償された形式のものは改善されていることを示すが、既知のPBFDAFはこれら3つの場合におけるNMSEの大きな劣化を示す。この改善は、巡回折り返しアーティファクトがゼロに制限される一方、近似的に線形な相関結果に関する有用な情報が保存されることに起因する。さらに、1つの区画から隣接区画への巡回誤差の補償は、収束時間定数またはCTCにおいて良好な影響を与える。
【0093】
巡回折り返しアーティファクトからのN/2時間領域ポイントを次のものへ、およびN/2時間領域ポイントを先行区画へ補償する。これらN/2ポイントの部分のみが近似的に線形であって(すなわち図中におけるテール)有用であり、それらテール間のポイントは約50%折り返しを有するアーティファクトに汚染され、これはノイズ的または有益でないとすることが可能である。図14に示されるようなノイズ状アーティファクトを補償する場合には、定常状態NMSEが僅かに悪化する。この問題に対する解決手段は、ノイズ状部分を補償せずに、2つのテールのみを補償することである。このため、方形制限の近似として、シヌソイド(sinusoid)ウインドウを利用する補償代替制限手法が使用される。シヌソイド・ウインドウは更新におけるノイズ状部分を制限する一方、2つのテールが補償のために残る。
【0094】
制限されていないPBFDAFを利用すると、収束の挙動が悪くなり、収束領域は完全に制限されたPBFDAFの場合に比べて小さくなる。上記の代替制限手法におけるシヌソイド制限近似g2Nを導入すると、制限されていないPBFDAFと比較して改善された結果が得られる。シヌソイド制限近似g2Nは次式で定義される:
【0095】
【数34】
シヌソイド制限を導入すると、3N/2の近傍におけるノイズ部分が減少する。一方、この近似制限によりテールは実質的に減少しないが、先に説明した手法を利用して、隣接する区画に良好に補償され得る。図14における長さN/2の方形ウインドウの用途では、2つの余分なFFTを必要とする。方形ウインドウを、図16に示すような上昇コサイン(raised cosine)および上昇逆(raised inverse)コサイン・ウインドウに置換することによって、その複雑さを削減することが可能である。図14では、選択手段は、ウインドウ・ブロック104および/またはウインドウ・ブロック106より成る。
【0096】
図16は前方および後方補償信号を生成する生成手段の他の実施例のブロック図を示し、図17は図16に示される生成手段の動作を説明するためのいくつかの信号を示す。再び、説明の便宜上、総ての信号は時間領域で形成されるものとする。上昇コサイン・ウインドウは、余分なFFTを利用することなしに、周波数領域で容易に実現可能である。信号1ないし6は、シヌソイド制限近似によってノイズ状部分が大幅に削減される点を除いて、図14および15におけるものと同じである。N≦i<2Nの範囲における後方補償に関するウインドウは、シヌソイド制限ウインドウおよび上昇逆コサイン・ウインドウを乗算することによって計算され得る。前方補償に関するウインドウは、シヌソイド制限ウインドウおよび上昇コサイン・ウインドウを乗算することによって計算され得る。図18は後方補償に関するウインドウを示す。図19は前方補償に関するウインドウを示す。選択手段はここではシヌソイド・ウインドウと上昇コサイン・ウインドウの組み合わせ(ブロック104)および/またはシヌソイド・ウインドウと上昇逆コサイン・ウインドウの組み合わせ(ブロック106)より成る。
【0097】
図20において、補償は、隣接区画の更新ブロック34の間の結びつきを導入することがわかる。第1区画に関し、先行する区画に関する補償はない。最終区画に関し、次の区画(実在しない)に対する補償を省略する。最終区画に関する前方補償を省略することは、巡回折り返しアーティファクトの除去に結び付き、これは高次のインパルス応答をモデル化するのに有用である。図20における更新ブロック34は、上述したような補償手法を利用する。これらの更新ブロック34の構造は図21に示される。
【0098】
係数更新142の前にシヌソイド制限140は置かれ、方形制限150は係数更新142,144の後に置かれる。補償信号は、Cf i 2N[κN](前方)およびCb i 2N[κN](後方)を利用して示される。方形制限が導入されない場合は、補償信号は省略される(すなわち、スイッチ146,148,152,154が状態0にある。)。方形制限の線形化が導入されると、スイッチ146,148,152,154は次式による:
【0099】
【数35】
方形制限が導入される場合に近似制限を行なうことは必要ないかもしれない。しかしながら、方形制限導入後の補償は、(シヌソイド制限の省略に起因する)折り返しアーティファクトにおける余分なノイズをも補償する。これは収束挙動における劣化を招く。したがって、その補償を利用して(図21)方形制限を導入する場合に、近似制限も導入することが好ましい。
【0100】
補償と共に方形制限を実現するには、補償部分に関して更なる計算を要する。この理由は、次のおよび前の区画の補償に関する2つのテールに分割すること、および2つの個々のテールに関する時間領域シフトを行なうことを必要とするからである。図14のような直接的な実現化は可能ではあるが、総ての演算は時間領域で行なわれるので、余分な多くの計算を必要とする。周波数領域で信号を生成する場合には、より効率的な実現が行なわれ得る。時間領域におけるシフトは、2Nポイント信号h 2 2Nとなる2Nポイント信号h 1 2NのNポイント・シフトである。周波数領域において、これらの信号はH 1 2N等によって表現される。このシフトは、シフト定理を利用する補助定理5.3.1により周波数領域で容易に実現され得る。
【0101】
補助定理5.3.1
【0102】
【数36】
図14の時間領域信号2,3および4の生成は、周波数領域で容易に計算され得る。図22はこの効果的な実現例を示す。なお、(−1 2N)i=(−1)iである点に留意すべきである。このベクトルによる周波数領域の要素乗算は、Nポイントの時間領域シフトを実現する。補償信号は隣接区画に加算されることを要するので、加算および減算両者を利用するならば、−1および1によるこれら要素乗算は省略され得る。ここで、上昇コサイン・ウインドウは周波数領域で導入される。その他(上昇コサイン・ウインドウ)は、単なる減算により計算され、計算を節約する。1/2およびj/4の乗算は、単なるシフト操作として実現され得る点に留意を要する。
【0103】
最終区画において後方補償を実行することは困難であることは既に説明した。通常、この左テールの巡回折り返しアーティファクトは、方形制限によってヌル化される(nulled)。このテールの折り返しアーティファクトは、適応フィルタの高次数(>KN)に使用され得るので、このテールを非制限にしておくことが可能である。最終区画における補償の実現例は、図23に示される。この実施例の計算の複雑さは図22の実施例に比較して僅かに低い点に留意を要する。
【0104】
図22および23の実施例において、選択手段は、IEFT160、ゼロ付加器162、FFT164および畳み込みブロック168より成る。
【0105】
PBFDAFにおける第1区画は、先行する区画から前方補償を取り出さず、その第1区画は後方補償信号を生成する必要がないことは既に説明した。第1区画における更新ブロックの実現は、減少した計算の複雑さと共に実現され得る。
【0106】
区分されたBFDAFアルゴリズムに関する良好な近似は、完全に制限されたPBFDAFに比較して、最適なものに近い収束挙動にはならない。これは制限されていない巡回折り返しアーティファクトにより引き起こされ、それは重み更新において蓄積され、異なる区画が結合される場合にPBFDAFの畳み込み部分における問題を引き起こす。代替的な制限機構を利用して制限近似を組み合わせると、改善することが可能であるが、依然として最適でない収束挙動を行なう。制限近似によって除去されない蓄積された折り返しアーティファクトの特定の部分は、その代替的な制限機構により時々除去される。この特定の部分は線形相関の近似的な結果であり、隣接する区画で良好に再利用(補償)され得る。この補償手法を、制限近似の最も簡潔な形式(すなわち、シヌソイド制限)と組み合わせると、完全に制限されたPBFDAFに比較して最適なものに近い収束挙動が得られ、計算の複雑さを大幅に削減することができる。4つおよびそれ以上に関し、PBFDAFの演算数は因子2により減少される。シミュレーションは、非常に相関性があり静的でない入力信号に対しても、この制限機構の実行性が非常に良好であることを示す。
【0107】
本発明によるPBFDAFは、ハードウエアによってもソフトウエアによってもまたは両者の結合によっても実現することが可能である。ディジタル信号プロセッサを利用して、本発明のPBFDAFを実行することが好ましい。
【0108】
本発明の範囲は明示した実施例に限定されない。本発明は新規な特徴および特徴の組み合わせにおいて具現化される。参照番号は本発明の範囲を限定するものではない。原文における“comprising”なる用語は、請求項に列挙されたもの以外の他の要素又はステップの存在を排除するものではない。原文において要素に先行する“a”または“an”なる用語は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。
【0109】
以下、本願で使用した記号を列挙する。
【0110】
a 制限近似の平均値
α 適応制限
Ai 区画iに関する更新ブロック
【0111】
【外3】
付加数
Cb i[κN] 区画iによる後方補償信号
Cf i[κN] 区画iによる前方補償信号
DN 2N 回転行列
【0112】
【外4】
分割数
e[k] 所望の信号(AECにおけるエコー)
【0113】
【外5】
所望の信号の推定
【0114】
【外6】
s[k]に関して劣化した所望信号
【0115】
【外7】
フーリエ変換行列
G 2N 一般化制限ウインドウ
【0116】
【外8】
確率勾配(stochastic gradient)ベクトル
h[k] インパルス応答ベクトル
IN 単位行列
j 虚数単位
JN 反転行列
K PBFDAFアルゴリズムにおける区画数
Kt ハイブリッド制限PBFDAFに関する閾値区画
κ ブロック時間指標
m 高傾斜制限近似に関する乗算因子
【0117】
【外9】
リアル乗算数
Θ メモリ占有
N ブロック長
0,O ゼロ ベクトル,行列
P 代替制限期間
P x[k] 規格化(電力)因子
【0118】
【外10】
P xの推定
Ψ 計算の複雑さの基準
r[k] 残留信号
s[k] 近接端信号
以下、信号処理のブロックを列挙する。
【0119】
FFT
【0120】
【数37】
逆FFT
【0121】
【数38】
ハーフ・オーバーラップ
【0122】
【数39】
巡回シフト
【0123】
【数40】
直列−並列変換器
【0124】
【数41】
並列/直列変換器
【0125】
【数42】
1−2スイッチ
【0126】
【数43】
2−1スイッチ
【0127】
【数44】
右へのゼロの付加
【0128】
【数45】
左へのゼロの付加
【0129】
【数46】
右側のヌル化
【0130】
【数47】
処理要素
【0131】
【数48】
上昇コサイン・ウインドウ
【0132】
【数49】
方形制限
【0133】
【数50】
高傾斜ウインドウ
【0134】
【数51】
シヌソイド・ウインドウ
【0135】
【数52】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、音響エコー・キャンセラの例のブロック図を示す。
【図2】図2は、更新ブロック34を形成するPBFDAFの例のブロック図を示す。
【図3】図3ないし7は、更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図4】図3ないし7は、更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図5】図3ないし7は、更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図6】図3ないし7は、更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図7】図3ないし7は、更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図8】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図9】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図10】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図11】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図12】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図13】図8ないし13は、本発明によるPBFDAFにおける巡回折り返しアーティファクトの補正の様子を図示する。
【図14】図14は、前方および後方補償信号を生成する生成手段の例のブロック図を示す。
【図15】図15は、図14に示されるような生成手段の動作を説明するためのいくつかの信号を示す。
【図16】図16は、前方および後方補償信号を生成する生成手段の他の例のブロック図を示す。
【図17】図17は、図16に示されるような生成手段の動作を説明するためのいくつかの信号を示す。
【図18】図18および図19は、生成手段の動作を説明するいくつかの信号波形を示す。
【図19】図18および図19は、生成手段の動作を説明するいくつかの信号波形を示す。
【図20】図20は、本発明によるPBFDAFの例のブロック図を示す。
【図21】図21は、図20のPBFDAFで使用する更新ブロック34の例のブロック図を示す。
【図22】図22は、前方および後方補償信号を生成する生成手段の更なる例のブロック図を示す。
【図23】図23は、後方補償信号を生成する生成手段の例のブロック図を示す。
Claims (21)
- 制御信号に依存して入力信号をフィルタ処理する区分ブロック周波数領域適応フィルタであって、複数の並列に配置されたフィルタ区画より成り、各フィルタ区画は適応フィルタのインパルス応答の部分をモデル化するよう形成され、各フィルタ区画は、入力信号を表わす信号と制御信号を表わす信号を巡回畳み込みをすることによって、フィルタ区画のフィルタ係数を更新する更新手段を有し、前記更新手段が、巡回畳み込みの巡回折り返しアーティファクトを除去することによって断続的にフィルタ係数を制限する制限手段より成り、前記更新手段が更に前記折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択しおよび除去する選択手段より成り、前記選択手段が方形制限ウインドウを近似したものを形成することを特徴とする区分ブロック周波数領域適応フィルタ。
- 前記フィルタ係数が前記制限手段によって制限されない場合に、前記巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択するよう前記選択手段が形成されることを特徴とする請求項1または2記載の区分ブロック周波数領域適応フィルタ。
- 近似に関する時間領域の値がゼロより大きい又は等しいことを特徴とする請求項1記載の区分ブロック周波数領域適応フィルタ。
- 時間領域における近似が、方形制限ウインドウにおける遷移の位置に対応する位置近傍で大きな傾斜を有することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の区分ブロック周波数領域適応フィルタ。
- 近似に関する周波数領域の値が、実数値および共役複素数値より成り、虚数値の少なくとも一部が、乗算により順次得ることの可能な数の行を形成することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の区分ブロック周波数領域適応フィルタ。
- mが2.166実質的に等しいことを特徴とする請求項6記載の区分ブロック周波数領域適応フィルタ。
- 制御信号に依存して入力信号をフィルタ処理する区分ブロック周波数領域適応フィルタを有する音響エコー・キャンセラであって、複数の並列に配置されたフィルタ区画より成り、各フィルタ区画は適応フィルタのインパルス応答の一部をモデル化するよう形成され、各フィルタ区画は、入力信号を表わす信号と制御信号を表わす信号を巡回畳み込みをすることによって、フィルタ区画のフィルタ係数を更新する更新手段を有し、前記更新手段が、巡回畳み込みの巡回折り返しアーティファクトを除去することによって断続的にフィルタ係数を制限する制限手段より成り、前記更新手段が更に前記折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択しおよび除去する選択手段より成り、前記選択手段が方形制限ウインドウを近似したものを形成することを特徴とする音響エコー・キャンセラ。
- 前記フィルタ係数が前記制限手段によって制限されない場合に、前記巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択するよう前記選択手段が形成されることを特徴とする請求項8記載の音響エコー・キャンセラ。
- 近似に関する時間領域の値がゼロより大きい又は等しいことを特徴とする請求項8または9記載の音響エコー・キャンセラ。
- 時間領域における近似が、方形制限ウインドウにおける遷移の位置に対応する位置近傍で大きな傾斜を有することを特徴とする請求項8ないし10の何れか1項に記載の音響エコー・キャンセラ。
- 近似に関する周波数領域の値が、実数値および共役複素数値より成り、虚数値の少なくとも一部が、乗算により順次得ることの可能な数の行を形成することを特徴とする請求項8ないし11の何れか1項に記載の音響エコー・キャンセラ。
- mが2.166実質的に等しいことを特徴とする請求項12記載の音響エコー・キャンセラ。
- 制御信号に依存して入力信号を適応的にフィルタ処理する方法であって:
_ 前記入力信号を区画に区分するステップ,
_ 各区画に関し、入力信号を表わす信号と制御信号を表わす信号を巡回畳み込みをすることによって、フィルタ係数を更新するステップ,
_ 各区画に関し、巡回畳み込みの巡回折り返しアーティファクトを除去することによって断続的にフィルタ係数を制限するステップ
より成り、更に、方形制限ウインドウの近似を利用して、巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部を選択しおよび除去するステップより成ることを特徴とする方法。 - 巡回折り返しアーティファクトの少なくとも一部の選択は、フィルタ係数が制限手段によって制限されない場合にのみ実行されることを特徴とする請求項15記載の方法。
- 近似に関する時間領域の値がゼロより大きい又は等しいことを特徴とする請求項15または16記載の方法。
- 時間領域における近似が、方形制限ウインドウにおける遷移の位置に対応する位置近傍で大きな傾斜を有することを特徴とする請求項15ないし17の何れか1項に記載の方法。
- 近似に関する周波数領域の値が、実数値および共役複素数値より成り、虚数値の少なくとも一部が、乗算により順次得ることの可能な数の行を形成することを特徴とする請求項15ないし18の何れか1項に記載の方法。
- mが2.166実質的に等しいことを特徴とする請求項20記載の方法。
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