JP2004506616A - ポリマー結合金属含有組成物を用いた微生物の存在の制限方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、微生物とポリマー結合金属含有組成物とを接触させることにより、微生物の存在を制限する方法を提供するものである。組成物は、金属含有モノマーを反応または重合させて調製できる金属含有化合物を含んでいる。微生物は、ポリマー結合金属含有組成物と接触した液体中に存在してよい。あるいは、微生物は、ポリマー結合金属含有組成物と接触した固体中に存在してもよい。
【選択図】図1
【選択図】図1
Description
【0001】
本発明は、ポリマー結合金属含有組成物、ならびにそのような組成物を用いてウイルス、バクテリア、および真菌の増殖を制限する方法に関する。
【0002】
だ液、涙、血液、およびリンパなどの生物学的液体中に病原性のバクテリアやウイルスが潜んでいる可能性は、重大な懸念事項であるが、かかる微生物が医療用具の表面に移動する(また逆に表面から移動する)可能性も同様である。そうした理由から、家庭や病院ならびに保育所での病原菌の伝染を最小限にする方法は重要である。
【0003】
多数の物理的および化学的方法によって微生物を死滅させたり、活力をなくさせたりすることができる。物理的方法としては、加熱や照射がある。ウイルス、真菌、およびバクテリアの増殖を制限するために用いられてきた化学物質は多数ある。その例としては、アルコール類(通常は、70容量%のエチルアルコールまたはイソプロピルアルコール水溶液)、フェノールやフェノール誘導体(ヘキサクロロフェンなど)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、酸化エチレン、エーテル、界面活性剤、グルコン酸クロルヘキシジン、重金属(銀、銅、および水銀など)、水銀の有機化合物(マーキュロクロームなど)、ならびに酸化剤(過酸化水素、沃素、次亜塩素酸塩、および塩素など)がある。
【0004】
バシトラシン、セファロスポリン、サイクロセリン、ペニシリン、バンコマイシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、テトラサイクリン、スルホンアミド、およびアミノグリコシド抗生物質(ストレプトマイシン、ネオマイシン、およびゲンタマイシンなど)などの抗生物質が、バクテリアを死滅させる微生物によって作られる、化学物質として伝統的に定義されてきた。抗生物質はウイルスに対しては効果がない。
【0005】
そのような治療法の多くは、永続的なものでも持続するものでもない。したがって、殺菌性を回復させるために、使用中も使用後も治療を繰り返さなければならないことがある。持続的抗菌性のある自己殺菌特性を表面や液体に付与することを意図した高分子組成物が知られている。一般に、それらは、抗菌剤とポリマーを混合物の形で含んでおり、制御放出されるよう抗菌剤を浸出させることができるようになっている。ある場合には、ポリマーから浸出する抗菌剤は、有毒であったり、浸出した形の物質に望ましくない特性を与えることがある。このようなわけで、自己殺菌性(内在性の殺微生物力を有する)の非浸出物質にかなりの関心が向けられている。
【0006】
ポリマーに共有結合した抗菌性部分を含んでいる高分子組成物の例もある。たとえば、ローズベンガルをポリ(スチレン)に共有結合させたり、ポルフィリンをアクリル酸樹脂に結合させたものがあり、どちらの場合も得られたポリマーは抗菌力を有するが浸出性のないものである。
【0007】
多種多様な微生物を死滅させるのに使用される一重項酸素が、好中球およびマクロファージで生成される。“光力学的効果”という用語は、酸素と光の存在下での三重項増感剤による細胞や病原菌の破壊を表すのに使用される。酸素濃度が高く、還元剤が存在しないような条件下では、一重項酸素は破壊作用物質と考えられている。一重項酸素とは、寿命の短い励起状態にある分子酸素のことである。溶液中でこの酸素は、1マイクロ秒の寿命があるので、不活性化されて三重項分子酸素になるまでに約0.1ミクロン拡散することが可能である。空気中の気相での一重項酸素の寿命は約1ミリ秒であり、この場合、不活性化されて三重項酸素になるまでに最大1ミリメートル拡散することが可能である。ある種の光増感剤、酸素、および光を組み合わせると、生きている組織にとって有毒であることが明らかになってきたが、これは、一重項酸素が形成される結果と考えられている。
【0008】
かくして、メロシアニンや水溶性亜鉛フタロシアニンなどの感光色素が、抗菌物質として使用できるものとして開示された。ある種の光増感剤でコーティングした表面には、自己殺菌性を持たせることができる。一重項酸素を生成しかつ基底状態の光増感剤を再生する、光増感剤と酸素との反応には、触媒的な性質があるため、そのようなコーティングの抗菌力は基本的に永続的なものにすることができる。加えて、ある種の固定化光増感剤は、一重項酸素が拡散するため、少し離れていても抗菌力を示すことが明らかになった。
【0009】
ポリマーと混ぜた、またはポリマーと共有結合させた光増感剤を使用して、実質的に非浸出性の自己殺菌物質を調製することは知られている。たとえば、共有結合させたポルフィリン、フタロシアニン、およびローズベンガルの各光増感剤を含んでいるさまざまなポリマーが知られている。
【0010】
本出願人の譲受人の米国特許出願第09/004,892号(出願日:1998年1月9日)は、金属含有化合物を高分子組成物(たとえば、多孔質繊維)で使用する方法を開示している。そこに記載されている化合物の特定の実施態様の場合、具体的には、そこでR1が、たとえば8個または9個の炭素原子を含んでいる長鎖有機基を含んでいる場合、抗菌力は観察されなかった。これらの発見は、抗菌力を付与するには金属含有化合物が浸出する必要があるという理論と調和している。
【0011】
本発明の一態様によれば、微生物の存在を制限する方法が提供される。この方法は、微生物とポリマー結合金属含有組成物とを接触させることを含む。前記組成物は、以下の式の化合物を含んでいる。
【化4】
ここで、
Z1とZ2は各々別個に5〜14個の環原子を有する芳香族炭化水素核を表し;
G1とG2は各々別個に、G1とG2がZ1およびZ2のうちの少なくとも1つの内部に含まれるか、またはそれから張り出していてもよいような金属配位子化基を表し;
Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシルアミノ基、アルコキシ基、スルホンアミド基、アリール基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニル基、アルキルスルホキシルまたはアリールスルホキシル基、アリールオキシル基、ヒドロキシル基、チオアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ホルミル基、アシル基、ウレイド基、アリールオキシカルボニル基、シリル基、またはスルホアルコキシ基を表し;
L1は、R1またはR2で置換、またはR1とR2の両方で置換された窒素複素環を表し;
R1とR2は各々別個に、ポリマー結合基、水素、ハロゲン原子、アルキル基、ビニル基、ヒドロキシアルキル基、アシルアミノ基、アルコキシ基、スルホンアミド基、アリール基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリル(alyl)スルホニル基、アルキルスルホキシル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、シリル基、またはスルホアルコキシ基を表し;ここで、R1およびR2のうちの少なくとも1つがポリマー結合基を表し;
L2は、単座または多座配位子を表し;
Xは、窒素またはメチン基を表し;
Mは、白金またはパラジウム原子を表し;そして
k、m、およびnは4以下の整数である。
【0012】
一実施態様によれば、ポリマー結合金属含有組成物は、以下の式の化合物を含んでいる。
【化5】
ここで、
R1とR2は各々別個に、Hまたはポリマー結合基を表し(ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはポリマー結合基を表す。);Xは窒素またはメチン基を表し;そして、Mは白金またはパラジウム原子を表す。
【0013】
本発明の別の態様によれば、以下の式のポリマー結合金属含有化合物が提供される。
【化6】
ここで、
R1とR2は各々別個に、Hまたはポリウレタン結合基を表し(ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはポリウレタン結合基を表す。);
Xは窒素またはメチン基を表し;そして
Mは白金またはパラジウム原子を表す。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、プレポリマーまたはポリマーと、以下の式の金属含有モノマー:
【化7】
(ここで、
R1とR2は各々別個に、HまたはCH2OHを表し(ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはCH2OHを表す);
Xは窒素またはメチン基を表し;そして
Mは白金またはパラジウム原子を表す。)
とを反応させることを含む、ポリマー結合金属含有化合物の製造方法が提供される。
【0015】
一実施態様によれば、前記方法は、イソシアネート機能性プレポリマーまたはポリマーを前記モノマーと反応させることを含む。
【0016】
定義
“ポリマー結合”とは、共有結合または立体的絡み合いのいずれかによってポリマーに非可逆的に結合する基を指す。複素環上の置換基であるポリマー結合基は、主鎖原子、側鎖原子、またはポリマー鎖末端原子のいずれかを介して複素環に共有結合したポリマーであってよい。あるいは、ポリマー結合基は、ポリマー鎖と立体的に絡み合う基(前もって形成された重合体マトリックスの存在下で、複素環に結合した反応性基の二量化、オリゴマー化、または重合によって生じることがあるようなもの)であってもよい。好ましくは、ポリマー結合基には、複素環に共有結合したポリマーが含まれる。
【0017】
“金属含有化合物”とは、前記化合物が、1つ以上の配位遷移金属原子、好ましく白金またはパラジウムを含んでいることを指す。
【0018】
本発明の目的においては、“微生物の存在の制限”または“抗菌力”という用語には、少なくとも1つのウイルス、少なくとも1つのバクテリア、少なくとも1つの真菌、またはそれらの組み合わせの存在を制限することが含まれる。微生物の存在を制限することには、微生物の増殖を制限することが含まれる。この用語には、微生物の抑制、不活性化、死滅、あるいは微生物の複製の阻止または微生物の数の低減も含まれる。種々の微生物に、さまざまな用語を使用できる。
【0019】
ここで用いられる“ウイルスの存在の制限”、“ウイルスの不活性化”、“殺ウイルス力”、および“殺ウイルス”という用語は、本発明の組成物と接触しているサンプル中に存在するウイルスの量が減少することを指す。これらの用語はまた、本発明の組成物と接触しているサンプル中に存在していて、細胞中に入り込むことができる、または細胞中で複製できる(あるいはその両方が可能な)ウイルスの量が減少することも指す。好ましくは、これらの用語は、前記組成物の表面で検出される少なくとも1種のウイルスの量が、同一条件下で金属含有化合物を含んでいない同様の組成物と比較して、以下の実施例4で説明するテスト方法を用いた場合に、少なくとも約50%減少することを指す。さらに好ましくは、本発明の組成物によれば、少なくとも1種のウイルスの量が少なくとも約75%減少し、よりさらに好ましくは、少なくとも約90%減少し、最も好ましくは、少なくとも1種のウイルスが少なくとも約99%減少する。
【0020】
ここで用いられる“真菌またはバクテリアの存在の制限”という用語は、本発明の組成物を用いて、前記組成物の表面に存在するバクテリアまたは真菌の抑制、死滅、あるいはそれらの複製の阻止またはそれらの数の低減を行う方法を指す。好ましくは、この用語は、実施例5で説明するテスト方法を用いた場合に、同一条件下で表面に検出される少なくとも1種の真菌またはバクテリアの量が、本発明の組成物の場合、金属含有化合物を含んでいない同様の組成物と比較して、少なくとも約40%減少すること(たとえば、増殖の阻止または死滅によって明白になる)を指す。たとえば、バクテリアまたは真菌の増殖は、本発明の組成物から切り取ったディスクにより、好ましくは、このディスク上に置かれたバクテリアまたは真菌の少なくとも約40%以上が死滅させられるときに、前記組成物によって制限される。この死滅は、元のバクテリアまたは真菌を洗い落とし、寒天表面でコロニーを増殖させ、元の種菌および対照(本発明の1つ以上のポリマー結合金属含有組成物を含んでいないもの)の場合と比べて増殖コロニーの数の減少を観察することにより明らかになる。以下の実施例5で説明するテスト方法を用いて、同一条件下で、金属含有化合物を含んでいない同様の組成物と比較した場合、本発明の組成物の表面で検出される少なくとも1種の真菌またはバクテリアの量は、本発明の組成物によれば、さらに好ましくは、少なくとも約75%減少し、よりさらに好ましくは、少なくとも約90%減少し、最も好ましくは、少なくとも約99%の減少する。
【0021】
本発明の1つ以上の金属含有化合物の“有効量”とは、微生物の存在を制限するのに十分なポリマー結合金属含有化合物の濃度を指す。
【0022】
本発明の方法で用いられている“接触させる”という用語は、本発明の組成物をウイルス、バクテリア、または真菌と物理的に接触させること、あるいはウイルス、バクテリア、または真菌と直接的に物理的接触をさせずに本発明の組成物に曝すことのいずれかを含む。本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、本発明のポリマー結合金属含有組成物の多くは、明るい所で、ウイルス、バクテリア、または真菌に対する抗菌効果を実現する拡散性物質(一重項酸素など)を形成することができる。したがって、直接的な物理的接触は必要でない場合がある。
【0023】
“静菌性”という用語は、ここでは、バクテリアの増殖を抑制する性質のことを指し、必ずしもバクテリアを死滅させることではない。“殺菌性”という用語は、バクテリアを死滅させることを指す。“静真菌性”という用語は、ここでは、真菌の増殖を抑制する性質のことを指し、必ずしも真菌を死滅させることではない。“殺真菌性”という用語は、真菌を死滅させることを指す。したがって、本発明の組成物は、殺菌性か、静菌性か、殺真菌性か、静真菌性か、または殺ウイルス性のいずれかである。バクテリアまたは真菌の存在を制限する方法には、“殺”(すなわち、死滅)力が含まれる。殺微生物という用語は、殺菌、殺真菌、および殺ウイルスという用語を包含する。
【0024】
“実質的に非浸出性”という用語は、2.0mlの生体媒質(たとえば、Trypticase Soy液体培地)に室温で24時間浸した高分子物質の113mm2のサンプル(任意の厚さの直径6mmのディスク)から浸出する金属(配位金属として)が、約200ナノグラム未満であることを意味する。金属濃度の測定は、たとえば、実施例で説明されている誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively−coupled Plasma−Mass Spectrometry)(ICP−MS)を使用して行うことができる。所与のポリマー光増感剤組成物の浸出値が低いことは(該当する金属の浸出についてのテストで測定)、ポリマー結合金属含有組成物の、結合していない金属含有化合物のレベルが低いことと調和している。
【0025】
本発明は、ポリマー結合金属含有組成物を提供するものである。本発明のポリマー結合金属含有組成物は、以下の式の化合物を含んでいる。
【化8】
ここで、
Z1とZ2は各々別個に5〜14個の環原子を有する芳香族炭化水素核を表し;
G1とG2は各々別個に、米国特許第5,180,705号および第5,314,998号に記載されている、G1とG2がZ1およびZ2のうちの少なくとも1つの内部に含まれるか、またはそれから張り出していてもよいような金属配位子化基(たとえば、酸素、硫黄、アミン、置換アミン、アシルアミド、スルホンアミド)を表し;
Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、メチルキ、エチル基、ヘキシル基など)、アシルアミノ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、アセトアミド基、ベンズアミド基、ヘキサンアミド基など)、アルコキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基など)、スルホンアミド基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基など)、アリール基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、フェニル基、4−クロロフェニル基など)、チオール基、アルキルチオ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、メチルチオ、ブチルチオ基など)、アリールチオ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、フェニルチオ基、4−メトキシフェニルチオ基など)、アルキルアミノ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、シクロヘキシルアミノ基、メチルアミノ基など)、アリールアミノ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、アニリノ基、4−メトキシフェニルアミノ基など)、アミノ基、アルコキシカルボニル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基など)、アシルオキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、ブタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基など)、アルキルスルホキシルまたはアリールスルホキシル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、ブタンスルホキシル基、ベンゼンスルホキシル基など)、アリールオキシル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、フェノキシ基など)、ヒドロキシル基、チオアミド基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、ブタンチオアミド基、ベンゼンチオカルバモイルアミド基など)、カルバモイルキ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、カルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基など)、スルファモイル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、N−アリールスルファモイル基など)、ホルミル基、アシル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、アセチル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基など)、ウレイド基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、N−エチルウレイド基など)、アリールオキシカルボニル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、フェノキシカルボニル基、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基など)、シリル基(たとえば、トリメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基など)、またはスルホアルコキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、スルホメトキシ基など)を表し;
L1は、窒素複素環で、好ましくは、ピリジン部分またはイミダゾール部分などの5員または6員環を有するものを表し(ただし、複素環はR1またはR2で、あるいはR1とR2の両方で置換されている);
R1とR2は、各々別個に、水素、ハロゲン原子(沃素、塩素、または臭素原子など)、アルキル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(ビニル基、ヒドロキシアルキル基などを含む)、アシルアミノ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルコキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、スルホンアミド基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アリール基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルキルチオ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルキルアミノ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルコキシカルボニル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アシルオキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アリル(alyl)スルホニル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルキルスルホキシル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルキルカルバモイル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルキルスルファモイル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、ホルミル基、アシル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、シリル基、またはスルホアルコキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの;あるいはポリマー結合基を表してもよい。R1およびR2のうちの少なくとも1つはポリマー結合基である。
【0026】
ポリマー結合基は、主鎖原子、側鎖原子、またはポリマー鎖末端原子のいずれかを介して複素環に共有結合したポリマーであってよい。あるいは、ポリマー結合基は、ポリマー鎖と立体的に絡み合う基(前もって形成された重合体マトリックスの存在下で、複素環に結合した反応性基の二量化、オリゴマー化、または重合によって生じることがあるようなもの)であってもよい。好ましくは、ポリマー結合基としては、複素環に共有結合したポリマーが含まれる。
【0027】
R1またはR2がポリマー結合基を表す場合、前記ポリマーは、付加重合体、縮合重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体など、およびそれらの組み合わせなど、当技術分野で知られている任意の好適なタイプのポリマーでよい。好ましい基としては、付加重合体および縮合重合体などのポリマータイプがある。付加重合体の例としては、アクリレート(米国特許第5,585,407号(Patel)に開示されているものなど)ポリマー、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリオレフィンポリマーおよびオレフィンポリマー;ポリアクリレート;ポリウレタン;再生セルロース(たとえば、ビスコースレーヨン);およびセルロースエステル(たとえば、酢酸セルロース)、ならびにコポリマーがあるが、これらに限定されるわけではない。縮合重合体の例としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリイミド、ポリウレア、およびポリアミン、ならびにコポリマーがあるが、これらに限定されるわけではない。ある種のシリコーンエラストマー(ヒドロシラン化(hydrosilation)およびシラン縮合反応によって形成されるものなど)、ならびにエポキシ樹脂も好適であることがある。好ましいポリマーとしては、ビニルポリマー、ビニルコポリマー、およびポリウレタンがある。
【0028】
L2は、水;アンモニア;ハロゲン化物(たとえば、弗素、塩素など);チオシアネート;シアン化物(−1);アジ化物(−1);一酸化炭素;アルキルおよびアリールイソシアニド(たとえば、メチルイソシアニド、フェニルイソシアニドなど);アルキルおよびアリールニトリル(たとえば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど);ホスフィン類P(R2)3、アミン類N(R2)3、アルシン類As(R2)3、スルフィド類S(R2)2(ここで、R2は各々別個にアルキル基またはアリール基を表す);複素芳香族炭化水素(たとえば、ピリジン、キノリンなど)、硝酸塩(−1);およびスルフェート(−2);アルキレンおよびアリーレンジアミン(arylenediamines)(たとえば、エチレンジアミン、1,2−ベンゼンジアミン、テトラメチレンジアミンなど);2個以上の芳香族窒素原子を持つ多環式芳香族炭化水素(たとえば、ビピリジル、1,10−フェナントロリンなど);オキサレート(−2);アルキルジケトネート(alkyldiketonates)(たとえば、アセチルアセトネート(acetylacetonate)(−1)など);N,N−ジアルキルジチオカルバメート(−1);エチレンジアミン;8−ヒドロキシキノレート(8−hydroxyquinolate)(−1);およびジアリールギロキシメート(diarylgyloximates)(−2)などの単座または多座(たとえば、二座)配位子を表し;
Xは、窒素またはメチン基を表し;
Mは、白金またはパラジウム原子を表し;そして
k、m、およびnは4以下の整数である。
【0029】
好ましいポリマー結合金属含有組成物は、以下の式を有する化合物を含んでいる。
【化9】
ここで、
R1とR2は各々別個に、Hおよびポリマー結合基を表し(ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはポリマー結合基である);そして
Xは窒素またはメチン基を表す。
【0030】
上式の特に好ましい化合物としては、R1が、ビニルポリマー、ビニルコポリマー、およびポリウレタンからなる群より選ばれたポリマーを含むポリマー結合基を表し、R2がHを表し、そしてXが窒素またはメチン基を表すような化合物が挙げられる。
【0031】
上式の好ましい金属含有化合物は、プレポリマーまたはポリマーを、以下の式の金属含有モノマーと反応させることおよび/または金属含有モノマーを重合または共重合させることを含む方法によって調製できる。
【化10】
ここで、
R1とR2は各々別個に、H、ビニル、およびCH2OHを表し(ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはビニルまたはCH2OHである)、そして
Xは窒素またはメチン基を表す。
【0032】
上式の特に好ましい金属含有モノマーとしては、R1がビニルまたはCH2OHを表し、R2がHを表し、そしてXが窒素またはメチン基を表す場合が挙げられる。
【0033】
本発明の金属含有モノマーは、対応するO,O’−ジヒドロキシアゾまたはO,O’−ジヒドロキシアゾメチン化合物ジアニオンから、必要なテトラクロロメタレート(tetrachlorometallate)における3個の塩素の置換ならびに窒素複素環の置換と同時のその後の残っている塩素の損失によって合成することができる。本発明の金属含有アゾモノマーの合成方法は、米国特許第5,166,326号(Smith)、第5,461,155号(Smith)、第5,180,705号(Smith)および第5,314,998号(Smith)、ならびに米国特許出願第09/004,892号(出願日:1998年1月9日)に記載されている。本発明の金属含有アゾメチンモノマーの合成方法は、米国特許出願第09/004,892号(出願日:1998年1月9日)に記載されている。
【0034】
金属含有モノマーを含んでいる組成物は、種々の方法で調製することができる。たとえば、ポリマーは、1つ以上の金属含有モノマーを重合反応(たとえば、付加重合または縮合重合)に含めて、金属含有化合物をポリマーに組み込むことにより、調製することができる。たとえば、金属含有ビニルモノマーをラジカル重合反応に含めて、金属含有モノマーを組み込んだホモポリマーまたはコポリマーを生成させることができる。別の例としては、ヒドロキシ機能性金属含有モノマーをイソシアネート機能性プレポリマーまたはポリマーと反応させて、金属含有モノマーを組み込んだポリウレタンを生成させることができる。
【0035】
あるいは、そのようなポリマーは、適切な置換を行った金属含有化合物またはその前駆物質をポリマーと反応させることにより、作ることができる(金属(metallated)色素分子をポリマーにグラフトさせるときに生じる)。
【0036】
置換基の説明で“基”または“核”という用語を用いている場合、置換基での置換を予期している。たとえば、“アルキル基”としては、ビニル基、エーテル基(たとえば、CH3−CH2−CH2−O−CH2−)、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキルなどがある。同様に、“芳香族炭化水素核”という用語は、たとえば、フェニルだけでなく、クロロフェニル、エチルフェニル、およびナフチルも指す。
【0037】
本発明の組成物の金属含有化合物の濃度、光源、強度または放射照度、光源のスペクトル特性、および照明の継続時間は、組成物の性能に影響を与え得る。過度の実験を行わなくても、本発明の組成物の金属含有化合物の濃度、光の強度などをこの明細書に鑑みて最適化できることを、当業者なら理解するであろう。好ましい手法および構成については、これらの組成物の増殖抑制特性を最適化するための方法が実施例に示されている。その他のテスト方法は、特に、実施例全体を通して示されている指針に鑑み、また臨床検査基準や手引き書に鑑みるならば、当業者が容易に編み出すことができる。
【0038】
注目に値すべき点として、本発明のポリマー結合金属含有組成物は、微生物の存在の制限方法に使用することができる。通常、これには、微生物の存在下で前記組成物を光に曝すことが関係する。その結果として一重項酸素が形成されると考えられるが、必ずしもそのことに限定することを意図するものではない。
【0039】
本出願人の譲受人の米国特許出願第09/004,892号(出願日:1998年1月9日)は、金属含有化合物を高分子組成物(たとえば、多孔質繊維)で使用する方法を開示している。通常、抗菌力が示されるには金属含有化合物が浸出する必要があった。そこに記載されている化合物の特定の実施態様の場合、具体的には、そこでR1が、たとえば8個または9個の炭素原子を含んでいる長鎖有機基を含んでいる場合、抗菌力は観察されなかった。本発明の組成物は、浸出性金属の量が少ない。したがって、ポリマー結合金属含有組成物が抗菌力を有していることは驚くべきことである。また、本発明では、本発明の組成物から有色の光増感剤が浸出し、その結果、前記組成物が接触している物質を着色するという可能性についての不安を取り除くことにもなる。かくして、本発明は、米国特許出願第09/004,892号に開示されている利点の他にも、利点をもたらすものである。
【0040】
露光には、有向光源に曝すことまたは周辺光に曝すことを含めることができる。好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも約200ナノメートル(nm)で、かつ約900nmより小さい波長の光に曝される。さらに好ましくは、光の波長は、少なくとも約400nmで、かつ約850nmより小さい。簡便かつ十分な光源は、実験室や事務所の蛍光照明に通常使用されるもの、ならびに発光ダイオード(LED)源、白熱光源、太陽光、およびレーザーである。本発明の特定の組成物は、最適には特定波長の光で活性化させることができる。本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、光源のスペクトル出力は、組成物内で測定した場合に、組成物のポリマー結合金属含有化合物の吸収スペクトルと部分的に重なっている可能性がある。一実施態様によれば、組成物は、約5分間、少なくとも270mW/cm2の放射照度に曝すが、光源が明るければ、照明の継続時間を少なくすることができることを、当業者なら容易に理解するであろう。
【0041】
光活性化は、継続的、断続的、または周期的に露光することで生じさせることができる。最適な活性化が光の強度や継続時間に依存すること、また本発明の光反応性組成物を活性化させるのに、ある範囲の露光の強度や継続時間を使用できることを、当業者なら理解するであろう。
【0042】
一実施態様によれば、微生物は、ウイルス、たとえば、HIVなど被膜ウイルス(enveloped virus)、ヘルペスウイルス属のもの、あるいはインフルエンザウイルスである。別の実施態様によれば、微生物は、グラム陽性菌またはグラム陰性菌などのバクテリアである。別の実施態様によれば、微生物は、抗生物質耐性のグラム陽性菌または抗生物質耐性のグラム陰性菌である。さらに別の実施態様によれば、微生物は、酵母菌などの真菌である。
【0043】
光と組み合わせて本発明の組成物を使用すると、DNAおよびRNAウイルス(RNAレトロウイルスを含む)は両方とも不活性化され、グラム陰性菌、グラム陽性菌、および真菌は増殖が制限される。
【0044】
本発明の方法を用いると、種々のウイルスを不活性化させることができる。そのようなウイルスには、一本鎖または二本鎖の核酸ゲノム、DNAまたはRNAウイルスが含まれ、被膜ウイルスならびに被膜のない(non−enveloped)一部のウイルスも含まれる。本発明の組成物を用いて不活性化される好ましいウイルスは、被膜ウイルスである。(以下の)実施例では、本発明の組成物および露光により、ある特定タイプのウイルス、真菌、またはバクテリアが抑制されるかどうかを判定するための、具体的な典型的方法を示してある。本発明に従って、また微生物学の技術に鑑みて、過度の実験を行わなくても、本発明の特定の化合物が、ウイルス、バクテリア、または真菌の存在を制限するかどうかを、微生物学の分野の当業者なら判断できるであろう。
【0045】
陰性一本鎖RNAゲノムを有するウイルスには、オルソミクソウイルス科、ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、およびフィロウイルス科が含まれる。これらは、被膜ウイルスである。オルソミクソウイルス科には、インフルエンザウイルスA型、B型、およびC型が含まれる。ラブドウイルス科には、狂犬病ウイルスや水疱性口内炎ウイルスが含まれる。パラミクソウイルス科には、ほ乳動物のパラインフルエンザウイルス(流行性耳下腺炎ウイルスを含む)および肺炎ウイルス属(人間や家畜のRSウイルスなど)が含まれる。ブニヤウイルス科には、ハンタウイルス属(朝鮮出血性熱やハンタウイルス肺症候群を引き起こすもの)が含まれる。フィロウイルス科には、マールブルグウイルスやエボラウイルスが含まれる。
【0046】
陽性一本鎖RNAゲノムを有するウイルスには、ピコルナウイルス科(被膜なし)、レトロウイルス科、およびトガウイルス科が含まれる。ピコルナウイルス科には、ポリオビールス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、およびライノウイルスが含まれる。レトロウイルス科には、たとえば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、およびウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)が含まれる。トガウイルス科には、セムリキ森林熱ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介ウイルス、および風疹ウイルスが含まれる。パルボウイルス(被膜なし)は、一本鎖ネガティブセンス(Negative−sense)DNAゲノムを有する唯一のウイルスである。このウイルスは、主に猫や犬に感染する。
【0047】
その他のDNAウイルスはすべて二本鎖である。二本鎖ウイルスとしては、パポバウイルス科、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、およびヘパドナウイルス科が挙げられる。ヘルペスウイルス科を除いて、これらのウイルスは被膜なしのウイルスである。パポバウイルス科には、いぼや腫瘍を生じさせる乳頭腫ウイルスが含まれる。アデノウイルス科には、マストアデノウイルス属および気道に感染する種々のウイルスが含まれる。ヘルペスウイルス科には、単純ヘルペス1型および2型、水痘−帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、多発性硬化症の原因として現在知られている抗体、およびヒトヘルペスウイルス7型が含まれる。ポックスウイルス科には、天然痘およびその他の痘疹性ウイルスが含まれる。ヘパドナウイルス科には、ヒトB型肝炎ウイルスが含まれる。
【0048】
本発明のポリマー結合金属含有組成物を光と組み合わせると、種々のバクテリアの増殖が抑制される。そうしたバクテリアには、腸球菌faecium、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌が含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明の組成物の存在下での増殖抑制に関してテストできるその他のバクテリアとしては、連鎖球菌属、コリネバクテリウム属、リステリア属、ナイセリア、および腸内細菌科(これには、エシェリキア属、サルモネラ属、赤痢菌属の各属が含まれる)といったその他の種が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。大腸菌は、グラム陰性かん状体(一般には、腸内細菌科のもの)である。これらのバクテリアは、病気と関連している。
【0049】
光と組み合わせた本発明の組成物中に存在する微生物は、増殖が制限されることになるが、増殖を制限するために、微生物が組成物中に含まれていなければならないわけではない。本発明の組成物を塗布した表面に接触する液体中の微生物も、同様に増殖が制限される。また、本発明の組成物と接触する、またはそれに近接する固体中に存在する微生物も、一重項酸素が他方の表面へ拡散するため、増殖を制限することができる。
【0050】
数種類の病原性の真菌(鵞口瘡カンジダを含む)が存在するが、これは、鵞口瘡として知られる口腔の酵母菌感染および外陰部膣炎として知られる女性の生殖器の感染を引き起こす。鵞口瘡カンジダは、感染や病原性後遺症を引き起こす作用因子としてますます一般的になってきている。種々の真菌について本発明の組成物に対する感受性をテストできることを、微生物学の分野の当業者なら理解するであろう。
【0051】
本発明のポリマー結合金属含有組成物は、望ましい物理特性や機能特性を得られるよう必要に応じて他の物質をさらに含むことができる。たとえば、本発明の組成物は、ポリマー結合金属含有化合物としてだけでなく、組成物中に存在する未結合ポリマーとしても、ポリマーを含むことができる。そのようなポリマーは、化学薬品供給業者から購入したり、あるいはポリマー合成の分野の当業者に知られている方法に従って調製することもできる。本発明では、種々のポリマーを使用できる。ポリマーは、好ましくは、一重項酸素の作用に耐えるようなものを選択する。
【0052】
好適なポリマーの例としては、付加重合体、たとえば、アクリレート(米国特許第5,585,407号(Patel)に開示されているものなど)ポリマー、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリオレフィンポリマーおよびオレフィンポリマー;ポリアクリレート;ポリウレタン;再生セルロース(たとえば、ビスコースレーヨン);セルロースエステル(たとえば、酢酸セルロース);縮合重合体(ポリエステルなど);ポリカーボネート;ポリエーテル;ポリイミド;ポリウレア;およびポリアミン;ならびにコポリマーがあるが、これらに限定されるわけではない。ある種のシリコーンエラストマー(ヒドロシラン化およびシラン縮合反応によって形成されるものなど)、ならびにエポキシ樹脂も好適であることがある。好適なポリマーは、水溶性または溶剤可溶性固体の形で、あるいは水または溶剤中に分散させるか乳濁させたものとして入手できる。市販のポリマーの例としては、STANCE床仕上げ剤(3M社、(St.Paul,MN))、VITELポリエステル(Goodyear Chemicals(Akron,OH))、およびポリカーボネート樹脂(Aldrich Chemical(Milwaukee,WI))がある。好ましくは、ある特定の実施態様の場合、ポリマーは塗布可能であるが、これは必須要件ではない。別の実施態様では、ポリマーは押出可能である。特に好ましい特定の実施態様では、非セルロース系のポリマーが好ましく、付加重合体以外のポリマーが一層好ましい。これは、多数のオレフィン付加重合体には、アリル水素を持つ炭素−炭素二重結合が存在するためであり、また望ましくないポリマー劣化が一重項酸素との反応の結果生じることがあるためである。
【0053】
本発明の組成物に含まれるポリマーは、硬化させることができる。組成物の硬化は、液体ポリマーを凝固させたり、ポリマー溶液または分散液から溶剤を蒸発させたり、ポリマーを架橋または別の仕方で硬化させて不溶性にしたり、ポリマーを押出加工または成形するなどによって実施できる。硬化ポリマーとは、必ずしもポリマーが硬質て柔軟性がないという意味ではなく、むしろ、ポリマーが硬化しているか、あるいは固体状態になっているという意味である。実際、柔軟性のある、または変形しうる基体上のコーティングなどの特定の応用例では、柔軟な“硬化”ポリマー組成物が好ましいことがある。さらに、ポリマーのタイプによっては、“硬化”ポリマーは、冷却して凝固されたものであったり(熱可塑性樹脂樹脂の場合)、あるいはポリマー前駆物質から硬化(つまり、重合および/または架橋)させられたものである場合がある。
【0054】
本発明のポリマー結合金属含有組成物は、たとえば、繊維、フリースタンディングフィルム(free−standing film)、またはコーティングの形であってよい。それは、注形品、成形品、または押出品であってよい。本発明の組成物は、織物品、たとえば、掃除用の布地、雑巾、手術用ガウン、医療器具、シーツや枕カバー、創傷被覆材、および包帯という形を取ることができる。あるいは、自立フィルム(たとえば、食品包装用や創傷包帯用のもの)という形を取ることもできる。創傷用包帯は、使用する前に光に曝して殺菌し、その後、傷の上に置いたならば、光への暴露を制限または除去するために覆うことができる。これは、有害であって傷の状況に望ましくないことのある一重項酸素の形成を停止させるためである。
【0055】
本発明の組成物および物品は、家庭および病院用の医療および臨床補助材、たとえば、透析処置(たとえば、腎臓透析)で使用する管状材料、バッグ、およびマット用として役立つ。前記物品は、衛生用品用の、抗菌表面を持つポリマー積層物という形を取ることができる。その場合、積層物の1つまたは複数の層がポリマー結合金属含有組成物を含んでいるか、あるいはそれから構成される。好ましくは、積層物の少なくとも1つの表面が、ポリマー結合金属含有組成物を含んでいるか、あるいはそれから構成される。
【0056】
本発明の組成物は、抗菌雑巾用の布に混ぜることができる。同様に、前記組成物は、表面の殺菌、たとえば、家庭、保育所、工場、および病院の場面において、おもちゃ、備品、医療用具、および調理台の洗浄に使用できる。種々の備品、消耗品や道具類(縫合糸や包帯など)、皮下注射針および容器は、本発明に従って組成物を用いて殺菌することができる。
【0057】
本発明の金属含有化合物は、極めて光安定性および熱安定性がある。金属含有化合物の溶液は、金属含有化合物の最大吸収の波長400nm〜約700nmにおいて光吸収が約1.0のDMSOに溶かして調製できる。このようにして調製した溶液は、室内灯のもとで1年間保管した後も、吸収スペクトル(光学濃度を含む)の変化を実質的に示さなかった。また金属含有化合物は、最大で少なくとも300℃の温度で安定である。
【0058】
以下の実施例は、ポリマー結合金属含有組成物の調製法を例示したものである。また、それらの実施例は、一重項酸素の生成、ウイルスの不活性化、ウイルス複製の抑制、およびバクテリアおよび真菌の増殖または存在の抑制における、前記組成物の性能またはその性能をテストする手段を例示したものでもある。すべての文献および刊行物は、参照によりこの開示に含まれる。
【0059】
本発明を、以下の例を用いて説明する。特定の実施例、物質、量、および手順は、ここに記載する本発明の範囲および精神に従って、広く解釈されるものと理解すべきである。
【0060】
実施例1
金属含有モノマーの合成
化学合成用の試薬は、特に断りがなければ、Aldrich(Milwaukee,WI)から入手したものである。白金アゾおよびパラジウムアゾ色素モノマーは、公知の文献の手順に従って合成できる。具体的には、モノマー1A(R1=ビニル、R2=H、X=N、M=Pt)は、米国特許第5,180,705号(Smith)に開示されているとおりに合成した。モノマー1B(R1=CH2OH,R2=H,X=N,M=Pt)は、ビニルピリジンの代わりに4−ヒドロキシメチルピリジンを使用したこと以外は、米国特許第5,180,705号(Smith)で教示されているとおりに、実施例3で用いられている手順に従って合成した。白金アゾメチンおよびパラジウムアゾメチン色素は、モノマー1Cおよびモノマー1Dについて以下に説明する手順に従って合成することができる。室温は周囲温度であり、一般には約20℃〜約25℃である。
【0061】
モノマー1C(R1=ビニル、R2=H、X=CH、M=Pt)の合成
【化11】
2−サリシリデンアミノフェノール(2−salicylideneaminophenol)(0.320グラム(g)、1.5ミリモル(mmol)、TCI−America(Portland、Oreg))をジメチルスルホキシド(15ミリリットル(ml))に溶かした100℃の溶液を、テトラクロロ白金酸カリウム(0.685g、1.65mmol)をジメチルスルホキシド(15ml)に溶かした100℃の溶液に加えた。次に、炭酸カリウム(0.600g)を加えて、得られた混合物を10分間(min)150℃で加熱した。反応混合物を100℃に冷却してから、4−ビニルピリジン(0.600ml)を加えた。反応混合物を室温で18時間(h)攪拌した。反応混合物を水(50ml)に注いでから、ジエチルエーテル(150ml)で1回、クロロホルム(150ml)で1回抽出した。ジエチルエーテルの抽出物とクロロホルムの抽出物を一緒にした。一緒にした抽出物を3N塩酸(50mlで2回)、水(100mlで2回)、およびブライン(100ml)で順次洗浄した。この有機溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して有機固体を得た。この固体を最小限のクロロホルムに溶かし、シリカゲルのカラム(20×5センチメートル(cm))を通過させ、その間中、カラムをクロロホルム(250ml)で溶離させた。その溶離液を濃縮してオレンジ色の固体を得た。その固体をエタノールで再結晶させて、0.068グラムの次のような1Cをオレンジ色の固体として得た。1HNMR(500MHz;CDCl3):δ5.70(d,1H,J=10.8Hz);6.14(d,1H,J=17.6Hz);6.70−6.82(m,3H);7.10−7.17(m,2H);7.26−7.28(m,1H);7.46−7.51(m,3H);7.66(dd,1H,J1=7.9Hz,J2=1.6Hz);7.81(d,1H,J=8.3Hz);8.65(s,1H);9.16(dd,1H,J1=5.4Hz,J2=1.6Hz);13C{1H}NMR(125MHz;CDCl3):δ114.21,115.23,116.08,117.77,121.14,121.56,121.67,128.16,132.34,133.04,133.25,140.00,142.77,146.45,149.26,161.75,167.01。
【0062】
モノマー1D(R1=CH2OH、R2=H、X=CH、M=Pt)の合成
【化12】
2−サリシリデンアミノフェノール(0.320g、1.5mmol、TCI−America(Portland,OR))をジメチルスルホキシド(15ml)に溶かした100℃の溶液を、テトラクロロ白金酸カリウム(0.685g、1.65mmol)をジメチルスルホキシド(15ml)に溶かした100℃の溶液に加えた。次に、炭酸カリウム(0.600g)を加えて、得られた混合物を150℃で10分間加熱した。反応混合物を100℃に冷却してから、4−ピリジンカルビノール(0.607g)を加えた。その反応混合物を室温で18時間攪拌した。
【0063】
反応混合物を水(50ml)に注いでから、ジエチルエーテル(150ml)で1回、クロロホルム(150ml)で1回抽出した。ジエチルエーテルの抽出物とクロロホルムの抽出物を一緒にした。一緒にした抽出物を、3N塩酸(50mlで2回)、水(100mlで2回)、および飽和NaCl水溶液(1回)で順次洗浄した。その有機溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮してオレンジ色の固体を得た。その固体をエタノールで再結晶させて、0.080グラムの次のような1Dを暗褐色結晶として得た。1HNMR(500MHz;d6−DMSO):δ4.70(d,2H,J=5.6Hz);5.67(t,1H,J=5.6Hz);6.67(dt,1H,J1=7.3Hz,J2=1.6Hz);6.78(t,1H,J=7.3Hz);7.00−7.08(m,2H);7.21(d,1H,J=8.3Hz);7.47(dt,1H,J1=7.7Hz,J2=1.7Hz);7.66(d,2H,J=6.6Hz);7.88(dd,1H,J1=8.1Hz,J2=1.7Hz);8.09(d,1H,J=8.4Hz)。
【0064】
実施例2
ポリマー結合金属含有組成物の調製
組成物調製用の試薬は、特に断りがなければ、Aldrich(Milwaukee,WI)から入手したものである。
【0065】
サンプルA:1%のモノマー1Bを用いて調製したポリウレタン結合金属含有組成物
フラスコに、トリメチロールプロパン(0.5g)、ジメチロールプロピオン酸(4.0g、Trimet Technical Products,Mallinckrodt,Inc.、(Allentown,PA.))、テゴジオールHSi2311(27.0g、Goldschmidt Chemical Corporation)、FMDA11ポリジメチルシロキサン、MW1000(22.0g、チッソ株式会社、シリコン化学品事業部(日本、東京))、Terathane2000ポリテトラメチレンエーテルオキシドジオール、MW2000(14.46g、デュポン社(Wilmington,DE))、N−メチルピロリドン(15g、BASF)、Tinuvin292紫外線安定剤(0.50g、チバ・ガイギー社(USA))、およびTinuvin284紫外線安定剤(1.0g、チバ・ガイギー社(USA))を充填し、その後、Desmodur−Wイソシアネート(32.5g、バイエル社(USA))を充填した。それらの成分を2分間攪拌し、その後0.04グラムのT−12(ジブチル錫ジラウレート、AirProducts)を加えた。その混合物を、不活性雰囲気下で8時間80℃で攪拌した。反応が終了する前に、1グラムのモノマー1B(R1=CH2OH、R2=H、X=N,M=Pt)をそのプレポリマーに加えた。イソシアネートの滴定(標準ジブチルアミン−稀HCl滴定)ですべてのイソシアネートが反応したことが示されたときに、反応が終了したと判断した。その後、混合物の一部の100グラムを、強いせん断力を加えながら水(280g)の中に分散させ、その分散液中にトリエチルアミン(2.61g)、エチレンジアミン(0.5g)およびDICYKAN(4,4ジアミノジシクロヘキシル−メタン;BASF(USA)、12グラムのN−メチルピロリドン中に7グラム)の溶液を加えた。それらの成分を4分間強いせん断力を加えながら混合した。その分散液を高圧ホモジナイザー(4000psi)に移して、10分間均質化し、その後、再び500rpmで3時間混合した。ポリウレタンフィルムをポリエステル剥離ライナー上にキャストし、20℃で7日間硬化させた。その後、それらについて、色素の浸出、殺微生物力、および一重項酸素生成のテストを以下に説明するとおりに行った。
【0066】
サンプルB:0.5%のモノマー1Bを用いて調製したポリウレタン結合金属含有組成物
0.5%のモノマー1Bを使用したこと以外は、サンプルAの調製と同様の方法でサンプルBを調製した。
【0067】
サンプルC:モノマー1Aを用いて調製したポリマー結合金属含有組成物を含んでいる多孔質TIPS膜
TIPS(熱誘起相分離(Thermally Induced Phase Separation))膜(ポリプロピレンの膜)は、米国特許第4,539,256号(Shipman)に従って調製できる。モノマー1A(R1=ビニル、R2=H、X=N、M=Pt)を含んでいるTIPS膜は、4−ビニルピリジン(1g)、ジビニルベンゼン(50mg)、色素1A(14mg)およびIrgacure651光開始剤(46mg、CibaSpecialtyChemicals,USA)を混合して調製した。その溶液を、13cm×13cmの一枚のポリプロピレンTIPS膜に吸収させてから、2枚の剥離ライナーの間に挟んだ。過剰のモノマー溶液を絞り出し、フィルムの両側に紫外線ランプを10分間照射し、メタノールで2回洗浄し、その後真空中で5分間乾燥させた。得られたTIPS膜について、色素の浸出、殺微生物力、および一重項酸素生成のテストを以下に説明するとおりに行った。
【0068】
サンプルD:0.25%のモノマー1Aを用いて調製したポリプロピレン結合金属含有組成物
安定化されていないポリプロピレン(130g、3%のポリエチレンを含んでいるQuantum8310、Equistar Petrochemicals Limited(Houston,TX))を、0.33gのモノマー1A(R1=ビニル、R2=H、X=N、M=Pt)および0.25mlのLupersol開始剤(Elf Atochem North America,Inc.(Philidelphia,PA))と混合し、その後170℃のHakke溶融ミキサーの混合室に移した。混合室の温度を15分間170℃に保ち、その後5分間150℃に冷却した。得られたポリマーをフィルムに成形し(以下に注記のある場合は除く)、特徴を記述して、以下に説明するとおりに色素の浸出、殺微生物力、および一重項酸素生成のテストを行った。
【0069】
サンプルE:1%のモノマー1Aを用いて調製したポリプロピレン結合金属含有組成物
サンプルEは、1%のモノマー1Bを使用したこと以外は、サンプルDと同様の方法で調製した。
【0070】
実施例3
ポリマー結合金属含有組成物からの色素の浸出のテスト:
組成物からの金属の浸出は、ICP−MSを用いて測定した。組成物の6mmディスク状サンプル(113mm2)を2.0mlのTrypticase Soy液体培地(VWRによるBDL、カタログ#4311771)に室温で24時間浸した。その後、0.5gのサンプルを正確に測って、金属を含まない15mlの遠心管に入れた。各サンプルは2度分析した。40%HCl/10%HNO3の溶液(1ml)と10mlの10ppmビスマス内標準をそれぞれのサンプルに加えた。脱イオン水を加えて10mlの溶液とした。
【0071】
サンプルをPerkin−Elmer ELAN6000ICP−MSで分析した。結果は、10億分の1単位(テストサンプル1グラム当たりの金属元素のナノグラム数に等しい)で示してある。(テストした2ml(約2g)のサンプルでは、200ナノグラム金属/1グラム・サンプルは、100ppbの浸出に等しく、このレベルより低い場合、サンプルは実質的に非浸出性であるとみなされる。)
【0072】
【表1】
【0073】
結果は、ポリマー結合金属含有組成物と調和している。
【0074】
実施例4
ポリマー結合金属含有組成物の殺微生物力のテスト
ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に対する組成物の殺ウイルス力のテスト:
前述の組成物についてEIAVに対する殺ウイルス力のテストを、馬の皮膚(ED)細胞(ATCC CCL57)に対する伝染力の消失を測定して行った。用いた手法は以下のとおりである。
【0075】
第1日目:ED細胞を、ウェル当たり5×105個の細胞の割合で、6ウェル組織培養プレート(Corning Co.、#25810)の、20%ウシ胎児血清(Gibco BRLCo.,#26140−038)の入ったダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)(#D5648)に入れた。細胞は、“第2日目”まで37℃で(CO2雰囲気下)培養した。
【0076】
第2日目:ウイルスを組成物(6mmディスク)で処理するが、これは、ウイルスを含んだハンクス緩衝液を、組成物で処理した表面かまたは組成物をその表面に有する物体上に置くことにより行う。(特別に断りがなければ、すべての実験操作は周辺光のもとで行う。)
【0077】
1.“試験液”の調製
塩化カルシウムも硫酸マグネシウムも含んでいないハンクス平衡緩衝液(1.0ml、104個の感染ウイルス単位を有する)(HBSS、Sigma Chemical Co.、#H2387)で、2%のウシ胎児血清を含んでいるものを、組成物と接触させる。サンプルを、対の24ウェル組織培養プレート(Corning、#25820)の各ウェルに入れる。一方のプレートをアルミニウム箔で包み、対照試料を用いる実験の暗所での対照として用いる。もう一方のプレートは、実験台上に置いて、室温で30分間室内蛍光灯に曝す(以下に注記のある場合は除く)(輻射照度=272μW/cm2)。
【0078】
2.6ウェルプレートに入ったED細胞にポリブレン(Sigma Chemical Co.、#P4515)を注入して最終濃度を8mg/mlにし、ポリマー結合金属含有組成物(6mmディスク)を含んでいる試験液(ステップ1のもの)を入れる。細胞を暗所で5日間37℃で培養する。
【0079】
第7日目:ウイルス感染細胞の免疫組織化学的検出
1.培地を吸引し、細胞を3mlのTNF(10mM Tris(pH7.5)、150mMNaCl,1%ウシ胎児血清)で1回すすいでから、5分間100%メタノールで固定する。細胞を3mlのTNFで2回すすいでから、0.5mlの馬の抗EIAV血清(回復期血清、HBSS中に1:800で希釈)で、30分間揺らしながら培養する。
【0080】
2.細胞を3mlのTNFで3回すすいでから、0.5mlの抗馬HRP抗体(Cappel/Organon Teknika Corp.、ロット#35426)で、30分間揺らしながら培養する。
【0081】
3.細胞を3mlのTN(FBSなし)で3回すすいでから、0.05M酢酸ナトリウム/N,N−ジメチルホルムアミド(Sigma Chemical Co.、#D8654)緩衝液に入れたAEC基質(Sigma Chemical Co.、#A6926)2mlで、20分間暗所で培養する。細胞は蒸留水ですすいでから、乾燥させる。
【0082】
4.明白な感染細胞の増殖巣を光学顕微鏡でカウントし、接種物1ml当たりの増殖巣形成単位(FFU)数を計算する。潜在的殺ウイルス組成物と光で処理したサンプルのFFUを、暗所に保存したサンプルのものと比較する。
【0083】
このプロトコルが、ここで説明している組成物の殺ウイルス力を評価するのに使用できることを、微生物学の分野の当業者なら認めるであろう。
【0084】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)および単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)に対するポリマー結合金属含有組成物の殺ウイルス力のテスト:
これらのテストは、以下の手法に従って、Southern Research Institute(Birmingham,Alabama)が実施することができる。
【0085】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)のテスト:
濃縮HIV/RF(0.1ml)を、24ウェルプレートの1つのウェル内に入れた組成物のディスク上に置く。前記プレートを、実験室の作業台に置いて、通常の蛍光照明の下で30分間放置する。テストするそれぞれの濃度ごとに暗所での対照を実施する。次に、ウェルのサンプルから一連の希釈液を作り、それを用いて104細胞/ウェルでMT2細胞を接種する。プレートを、37℃で5%CO2の下、7日間定温放置する。結果を、ウイルス力価の対数減少で報告する。
【0086】
単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)のテスト:
HSV−1テストのプロトコルは、HIV−1テストのプロトコルと基本的には同一であるが、ベロ(Vero)細胞に、ポリマー結合金属含有組成物で処理したHSV−1粒子を接種するという点で異なる。
【0087】
実施例5
ポリマー結合金属含有組成物のバクテリアおよび真菌の増殖制限のテスト
サンプルA(1重量%のモノマー1Bを用いて調製したポリウレタン結合金属含有組成物)の腸球菌faeciumの増殖制限能力のテスト
貯蔵の腸球菌faeciumをTSB寒天培地上に平板培養し、一晩中37℃で成長させ、その時点で、いくつかのコロニーをPBS(緩衝液)に移して、最終濃度108バクテリア/mlの溶液を得た。その溶液10マイクロリットルを、9990マイクロリットルのPBSに加えて、105バクテリア/mlを含んでいる溶液10mlを得た。最後に、その溶液100マイクロリットルを2mlのtrypticase soy液体培地に加えて、濃度が5000バクテリア/mlの約2mlのバクテリア試験溶液を得た。
【0088】
これらのバクテリアを含んだ液体培地2mlが入っているバイアルに、サンプルAの6mmディスク6枚を入れた。これらのバイアルを、点灯した2個の15Wフィリップス昼光電球(放射照度=1.35mW/cm2)の6インチ上にある37℃のインキュベーターに18時間入れた。この実験については、暗所での対照は実施しなかった。
【0089】
結果:
液体培地は透明であったので、E.faeciumのコロニーの数が増えなかったことを示している。
【0090】
サンプルE(1重量%のモノマー1Aを用いて調製したポリプロピレン結合金属含有組成物)のテスト
貯蔵の腸球菌faeciumをTSB寒天培地上に平板培養し、一晩中37℃で成長させ、その時点で、いくつかのコロニーをPBS(緩衝液)に移して、最終濃度108バクテリア/mlの溶液を得た。この溶液を使用して、別の2つのTSB寒天プレートに綿棒で塗り、それぞれのプレートに潜在的バクテリアローン(bacterial lawn)を作り、それらの潜在的ローンにサンプルCの6mmディスクを置いた。一方のプレートはアルミニウム箔で包んで、37℃のインキュベーターに一晩中入れた。他方は、室温で可視光線を一晩中照射し(放射照度=40mW/cm2)、その後一晩中、暗所で37℃のインキュベーター内に置いた。
【0091】
結果:
暗所の対照では抑制のゾーンは見られなかったが、可視光線を照射したサンプルでは1−mmのゾーンが見られた。これは、光と組み合わせたポリマー結合金属含有組成物により、バクテリアの増殖が制限されたことを示している。
【0092】
本発明の組成物によるバクテリアの増殖の制限能力をテストするために用いたのと同様のテスト方法を、真菌の増殖の制限をテストする場合にも使用できることを、当業者なら理解するであろう。
【0093】
実施例6
ポリマー結合金属含有組成物の一重項酸素生成のテスト
一重項酸素の生成は、エタンジオールジベンゾアートエステル(DPE)(これは、一重項酸素と2,3−ジフェニル−p−ジオキサン(DPD)との反応で形成される)のクロマトグラフ検出によって間接的に測定した。
【0094】
サンプルB上に2,3−ジフェニル−p−ジオキサンをメタノールでキャストしたものに、2cmの距離から13Wの蛍光ランプで照射した。2.5時間後に、そのポリウレタンをメタノールですすぎ、それをガス・クロマトグラフィーで分析した。一重項酸素活性を示す出発原料からジエステルへの転換を、図1に示す。
【0095】
実施例7
サンプルC(ポリプロピレン結合金属含有組成物を含んでいるTIPS膜)の一重項酸素生成のテスト
1枚(1cm×1cm)のサンプルCを、10−3MのDPD溶液(2ml)に入れて、2時間照射(13Wの蛍光ランプ)した。ジエステルへのDPDの転換を図2に示す。
【0096】
同様の手法を用いて、フィルム成形されていない顆粒状(100mg)のサンプルD(0.25%の色素1Aを含んでいる)(ここで、[DPD]=10−4M)をテストした。樹脂を含んでいる溶液に、7.2cmの距離から8個の8Wの白色蛍光ランプ(cool fluoresent light)を用いて照射した。DPDの転換を図3に示す。
【0097】
本発明の方法により、ウイルス、バクテリア、または真菌を含んでいる物品または表面の微生物の増殖を抑制できるようになることを、当業者なら理解するであろう。その他のウイルス、バクテリア、および真菌についても、過度の実験を行わなくても本発明の方法を用いて同様にテストできる。
【0098】
ここに引用されているすべての特許、特許出願、および刊行物の完全な開示は、個々のものが示されている場合のように、ここに参考のために示す。この発明の範囲と精神から逸脱しない範囲で、本発明のさまざまな修正や変更は当業者にとっては明らかになるであろう。また、本発明が、ここに述べた説明のための実施態様に不当にも限定されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
出発原料からジエステルへの転換を示すガスクロマトグラムは、一重項酸素活性を示している。DPD:2,3−ジフェニル−p−ジオキサン;DPE:エタンジオールジベンゾアートエステル。
【図2】
一重項酸素の発生(PVP−TIPS)。DPDからDPEへの転換はPVP−TIPS膜における一重項酸素活性を示している。DPD(M)は、DPDのモル濃度を示す。
【図3】
一重項酸素の発生(ポリプロピレン顆粒)。DPDからDPEへの転換はポリ(プロピレン)顆粒における一重項酸素活性を示している。DPD(M)はDPDのモル濃度を示す。
本発明は、ポリマー結合金属含有組成物、ならびにそのような組成物を用いてウイルス、バクテリア、および真菌の増殖を制限する方法に関する。
【0002】
だ液、涙、血液、およびリンパなどの生物学的液体中に病原性のバクテリアやウイルスが潜んでいる可能性は、重大な懸念事項であるが、かかる微生物が医療用具の表面に移動する(また逆に表面から移動する)可能性も同様である。そうした理由から、家庭や病院ならびに保育所での病原菌の伝染を最小限にする方法は重要である。
【0003】
多数の物理的および化学的方法によって微生物を死滅させたり、活力をなくさせたりすることができる。物理的方法としては、加熱や照射がある。ウイルス、真菌、およびバクテリアの増殖を制限するために用いられてきた化学物質は多数ある。その例としては、アルコール類(通常は、70容量%のエチルアルコールまたはイソプロピルアルコール水溶液)、フェノールやフェノール誘導体(ヘキサクロロフェンなど)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、酸化エチレン、エーテル、界面活性剤、グルコン酸クロルヘキシジン、重金属(銀、銅、および水銀など)、水銀の有機化合物(マーキュロクロームなど)、ならびに酸化剤(過酸化水素、沃素、次亜塩素酸塩、および塩素など)がある。
【0004】
バシトラシン、セファロスポリン、サイクロセリン、ペニシリン、バンコマイシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、テトラサイクリン、スルホンアミド、およびアミノグリコシド抗生物質(ストレプトマイシン、ネオマイシン、およびゲンタマイシンなど)などの抗生物質が、バクテリアを死滅させる微生物によって作られる、化学物質として伝統的に定義されてきた。抗生物質はウイルスに対しては効果がない。
【0005】
そのような治療法の多くは、永続的なものでも持続するものでもない。したがって、殺菌性を回復させるために、使用中も使用後も治療を繰り返さなければならないことがある。持続的抗菌性のある自己殺菌特性を表面や液体に付与することを意図した高分子組成物が知られている。一般に、それらは、抗菌剤とポリマーを混合物の形で含んでおり、制御放出されるよう抗菌剤を浸出させることができるようになっている。ある場合には、ポリマーから浸出する抗菌剤は、有毒であったり、浸出した形の物質に望ましくない特性を与えることがある。このようなわけで、自己殺菌性(内在性の殺微生物力を有する)の非浸出物質にかなりの関心が向けられている。
【0006】
ポリマーに共有結合した抗菌性部分を含んでいる高分子組成物の例もある。たとえば、ローズベンガルをポリ(スチレン)に共有結合させたり、ポルフィリンをアクリル酸樹脂に結合させたものがあり、どちらの場合も得られたポリマーは抗菌力を有するが浸出性のないものである。
【0007】
多種多様な微生物を死滅させるのに使用される一重項酸素が、好中球およびマクロファージで生成される。“光力学的効果”という用語は、酸素と光の存在下での三重項増感剤による細胞や病原菌の破壊を表すのに使用される。酸素濃度が高く、還元剤が存在しないような条件下では、一重項酸素は破壊作用物質と考えられている。一重項酸素とは、寿命の短い励起状態にある分子酸素のことである。溶液中でこの酸素は、1マイクロ秒の寿命があるので、不活性化されて三重項分子酸素になるまでに約0.1ミクロン拡散することが可能である。空気中の気相での一重項酸素の寿命は約1ミリ秒であり、この場合、不活性化されて三重項酸素になるまでに最大1ミリメートル拡散することが可能である。ある種の光増感剤、酸素、および光を組み合わせると、生きている組織にとって有毒であることが明らかになってきたが、これは、一重項酸素が形成される結果と考えられている。
【0008】
かくして、メロシアニンや水溶性亜鉛フタロシアニンなどの感光色素が、抗菌物質として使用できるものとして開示された。ある種の光増感剤でコーティングした表面には、自己殺菌性を持たせることができる。一重項酸素を生成しかつ基底状態の光増感剤を再生する、光増感剤と酸素との反応には、触媒的な性質があるため、そのようなコーティングの抗菌力は基本的に永続的なものにすることができる。加えて、ある種の固定化光増感剤は、一重項酸素が拡散するため、少し離れていても抗菌力を示すことが明らかになった。
【0009】
ポリマーと混ぜた、またはポリマーと共有結合させた光増感剤を使用して、実質的に非浸出性の自己殺菌物質を調製することは知られている。たとえば、共有結合させたポルフィリン、フタロシアニン、およびローズベンガルの各光増感剤を含んでいるさまざまなポリマーが知られている。
【0010】
本出願人の譲受人の米国特許出願第09/004,892号(出願日:1998年1月9日)は、金属含有化合物を高分子組成物(たとえば、多孔質繊維)で使用する方法を開示している。そこに記載されている化合物の特定の実施態様の場合、具体的には、そこでR1が、たとえば8個または9個の炭素原子を含んでいる長鎖有機基を含んでいる場合、抗菌力は観察されなかった。これらの発見は、抗菌力を付与するには金属含有化合物が浸出する必要があるという理論と調和している。
【0011】
本発明の一態様によれば、微生物の存在を制限する方法が提供される。この方法は、微生物とポリマー結合金属含有組成物とを接触させることを含む。前記組成物は、以下の式の化合物を含んでいる。
【化4】
ここで、
Z1とZ2は各々別個に5〜14個の環原子を有する芳香族炭化水素核を表し;
G1とG2は各々別個に、G1とG2がZ1およびZ2のうちの少なくとも1つの内部に含まれるか、またはそれから張り出していてもよいような金属配位子化基を表し;
Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシルアミノ基、アルコキシ基、スルホンアミド基、アリール基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニル基、アルキルスルホキシルまたはアリールスルホキシル基、アリールオキシル基、ヒドロキシル基、チオアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ホルミル基、アシル基、ウレイド基、アリールオキシカルボニル基、シリル基、またはスルホアルコキシ基を表し;
L1は、R1またはR2で置換、またはR1とR2の両方で置換された窒素複素環を表し;
R1とR2は各々別個に、ポリマー結合基、水素、ハロゲン原子、アルキル基、ビニル基、ヒドロキシアルキル基、アシルアミノ基、アルコキシ基、スルホンアミド基、アリール基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリル(alyl)スルホニル基、アルキルスルホキシル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、シリル基、またはスルホアルコキシ基を表し;ここで、R1およびR2のうちの少なくとも1つがポリマー結合基を表し;
L2は、単座または多座配位子を表し;
Xは、窒素またはメチン基を表し;
Mは、白金またはパラジウム原子を表し;そして
k、m、およびnは4以下の整数である。
【0012】
一実施態様によれば、ポリマー結合金属含有組成物は、以下の式の化合物を含んでいる。
【化5】
ここで、
R1とR2は各々別個に、Hまたはポリマー結合基を表し(ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはポリマー結合基を表す。);Xは窒素またはメチン基を表し;そして、Mは白金またはパラジウム原子を表す。
【0013】
本発明の別の態様によれば、以下の式のポリマー結合金属含有化合物が提供される。
【化6】
ここで、
R1とR2は各々別個に、Hまたはポリウレタン結合基を表し(ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはポリウレタン結合基を表す。);
Xは窒素またはメチン基を表し;そして
Mは白金またはパラジウム原子を表す。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、プレポリマーまたはポリマーと、以下の式の金属含有モノマー:
【化7】
(ここで、
R1とR2は各々別個に、HまたはCH2OHを表し(ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはCH2OHを表す);
Xは窒素またはメチン基を表し;そして
Mは白金またはパラジウム原子を表す。)
とを反応させることを含む、ポリマー結合金属含有化合物の製造方法が提供される。
【0015】
一実施態様によれば、前記方法は、イソシアネート機能性プレポリマーまたはポリマーを前記モノマーと反応させることを含む。
【0016】
定義
“ポリマー結合”とは、共有結合または立体的絡み合いのいずれかによってポリマーに非可逆的に結合する基を指す。複素環上の置換基であるポリマー結合基は、主鎖原子、側鎖原子、またはポリマー鎖末端原子のいずれかを介して複素環に共有結合したポリマーであってよい。あるいは、ポリマー結合基は、ポリマー鎖と立体的に絡み合う基(前もって形成された重合体マトリックスの存在下で、複素環に結合した反応性基の二量化、オリゴマー化、または重合によって生じることがあるようなもの)であってもよい。好ましくは、ポリマー結合基には、複素環に共有結合したポリマーが含まれる。
【0017】
“金属含有化合物”とは、前記化合物が、1つ以上の配位遷移金属原子、好ましく白金またはパラジウムを含んでいることを指す。
【0018】
本発明の目的においては、“微生物の存在の制限”または“抗菌力”という用語には、少なくとも1つのウイルス、少なくとも1つのバクテリア、少なくとも1つの真菌、またはそれらの組み合わせの存在を制限することが含まれる。微生物の存在を制限することには、微生物の増殖を制限することが含まれる。この用語には、微生物の抑制、不活性化、死滅、あるいは微生物の複製の阻止または微生物の数の低減も含まれる。種々の微生物に、さまざまな用語を使用できる。
【0019】
ここで用いられる“ウイルスの存在の制限”、“ウイルスの不活性化”、“殺ウイルス力”、および“殺ウイルス”という用語は、本発明の組成物と接触しているサンプル中に存在するウイルスの量が減少することを指す。これらの用語はまた、本発明の組成物と接触しているサンプル中に存在していて、細胞中に入り込むことができる、または細胞中で複製できる(あるいはその両方が可能な)ウイルスの量が減少することも指す。好ましくは、これらの用語は、前記組成物の表面で検出される少なくとも1種のウイルスの量が、同一条件下で金属含有化合物を含んでいない同様の組成物と比較して、以下の実施例4で説明するテスト方法を用いた場合に、少なくとも約50%減少することを指す。さらに好ましくは、本発明の組成物によれば、少なくとも1種のウイルスの量が少なくとも約75%減少し、よりさらに好ましくは、少なくとも約90%減少し、最も好ましくは、少なくとも1種のウイルスが少なくとも約99%減少する。
【0020】
ここで用いられる“真菌またはバクテリアの存在の制限”という用語は、本発明の組成物を用いて、前記組成物の表面に存在するバクテリアまたは真菌の抑制、死滅、あるいはそれらの複製の阻止またはそれらの数の低減を行う方法を指す。好ましくは、この用語は、実施例5で説明するテスト方法を用いた場合に、同一条件下で表面に検出される少なくとも1種の真菌またはバクテリアの量が、本発明の組成物の場合、金属含有化合物を含んでいない同様の組成物と比較して、少なくとも約40%減少すること(たとえば、増殖の阻止または死滅によって明白になる)を指す。たとえば、バクテリアまたは真菌の増殖は、本発明の組成物から切り取ったディスクにより、好ましくは、このディスク上に置かれたバクテリアまたは真菌の少なくとも約40%以上が死滅させられるときに、前記組成物によって制限される。この死滅は、元のバクテリアまたは真菌を洗い落とし、寒天表面でコロニーを増殖させ、元の種菌および対照(本発明の1つ以上のポリマー結合金属含有組成物を含んでいないもの)の場合と比べて増殖コロニーの数の減少を観察することにより明らかになる。以下の実施例5で説明するテスト方法を用いて、同一条件下で、金属含有化合物を含んでいない同様の組成物と比較した場合、本発明の組成物の表面で検出される少なくとも1種の真菌またはバクテリアの量は、本発明の組成物によれば、さらに好ましくは、少なくとも約75%減少し、よりさらに好ましくは、少なくとも約90%減少し、最も好ましくは、少なくとも約99%の減少する。
【0021】
本発明の1つ以上の金属含有化合物の“有効量”とは、微生物の存在を制限するのに十分なポリマー結合金属含有化合物の濃度を指す。
【0022】
本発明の方法で用いられている“接触させる”という用語は、本発明の組成物をウイルス、バクテリア、または真菌と物理的に接触させること、あるいはウイルス、バクテリア、または真菌と直接的に物理的接触をさせずに本発明の組成物に曝すことのいずれかを含む。本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、本発明のポリマー結合金属含有組成物の多くは、明るい所で、ウイルス、バクテリア、または真菌に対する抗菌効果を実現する拡散性物質(一重項酸素など)を形成することができる。したがって、直接的な物理的接触は必要でない場合がある。
【0023】
“静菌性”という用語は、ここでは、バクテリアの増殖を抑制する性質のことを指し、必ずしもバクテリアを死滅させることではない。“殺菌性”という用語は、バクテリアを死滅させることを指す。“静真菌性”という用語は、ここでは、真菌の増殖を抑制する性質のことを指し、必ずしも真菌を死滅させることではない。“殺真菌性”という用語は、真菌を死滅させることを指す。したがって、本発明の組成物は、殺菌性か、静菌性か、殺真菌性か、静真菌性か、または殺ウイルス性のいずれかである。バクテリアまたは真菌の存在を制限する方法には、“殺”(すなわち、死滅)力が含まれる。殺微生物という用語は、殺菌、殺真菌、および殺ウイルスという用語を包含する。
【0024】
“実質的に非浸出性”という用語は、2.0mlの生体媒質(たとえば、Trypticase Soy液体培地)に室温で24時間浸した高分子物質の113mm2のサンプル(任意の厚さの直径6mmのディスク)から浸出する金属(配位金属として)が、約200ナノグラム未満であることを意味する。金属濃度の測定は、たとえば、実施例で説明されている誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively−coupled Plasma−Mass Spectrometry)(ICP−MS)を使用して行うことができる。所与のポリマー光増感剤組成物の浸出値が低いことは(該当する金属の浸出についてのテストで測定)、ポリマー結合金属含有組成物の、結合していない金属含有化合物のレベルが低いことと調和している。
【0025】
本発明は、ポリマー結合金属含有組成物を提供するものである。本発明のポリマー結合金属含有組成物は、以下の式の化合物を含んでいる。
【化8】
ここで、
Z1とZ2は各々別個に5〜14個の環原子を有する芳香族炭化水素核を表し;
G1とG2は各々別個に、米国特許第5,180,705号および第5,314,998号に記載されている、G1とG2がZ1およびZ2のうちの少なくとも1つの内部に含まれるか、またはそれから張り出していてもよいような金属配位子化基(たとえば、酸素、硫黄、アミン、置換アミン、アシルアミド、スルホンアミド)を表し;
Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、メチルキ、エチル基、ヘキシル基など)、アシルアミノ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、アセトアミド基、ベンズアミド基、ヘキサンアミド基など)、アルコキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基など)、スルホンアミド基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基など)、アリール基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、フェニル基、4−クロロフェニル基など)、チオール基、アルキルチオ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、メチルチオ、ブチルチオ基など)、アリールチオ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、フェニルチオ基、4−メトキシフェニルチオ基など)、アルキルアミノ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、シクロヘキシルアミノ基、メチルアミノ基など)、アリールアミノ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、アニリノ基、4−メトキシフェニルアミノ基など)、アミノ基、アルコキシカルボニル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基など)、アシルオキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、ブタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基など)、アルキルスルホキシルまたはアリールスルホキシル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、ブタンスルホキシル基、ベンゼンスルホキシル基など)、アリールオキシル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、フェノキシ基など)、ヒドロキシル基、チオアミド基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、ブタンチオアミド基、ベンゼンチオカルバモイルアミド基など)、カルバモイルキ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、カルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基など)、スルファモイル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、N−アリールスルファモイル基など)、ホルミル基、アシル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、アセチル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基など)、ウレイド基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、N−エチルウレイド基など)、アリールオキシカルボニル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、フェノキシカルボニル基、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基など)、シリル基(たとえば、トリメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基など)、またはスルホアルコキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(たとえば、スルホメトキシ基など)を表し;
L1は、窒素複素環で、好ましくは、ピリジン部分またはイミダゾール部分などの5員または6員環を有するものを表し(ただし、複素環はR1またはR2で、あるいはR1とR2の両方で置換されている);
R1とR2は、各々別個に、水素、ハロゲン原子(沃素、塩素、または臭素原子など)、アルキル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの(ビニル基、ヒドロキシアルキル基などを含む)、アシルアミノ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルコキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、スルホンアミド基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アリール基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルキルチオ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルキルアミノ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルコキシカルボニル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アシルオキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アリル(alyl)スルホニル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルキルスルホキシル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルキルカルバモイル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、アルキルスルファモイル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、ホルミル基、アシル基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの、シリル基、またはスルホアルコキシ基で好ましくは8個未満の炭素原子を有するもの;あるいはポリマー結合基を表してもよい。R1およびR2のうちの少なくとも1つはポリマー結合基である。
【0026】
ポリマー結合基は、主鎖原子、側鎖原子、またはポリマー鎖末端原子のいずれかを介して複素環に共有結合したポリマーであってよい。あるいは、ポリマー結合基は、ポリマー鎖と立体的に絡み合う基(前もって形成された重合体マトリックスの存在下で、複素環に結合した反応性基の二量化、オリゴマー化、または重合によって生じることがあるようなもの)であってもよい。好ましくは、ポリマー結合基としては、複素環に共有結合したポリマーが含まれる。
【0027】
R1またはR2がポリマー結合基を表す場合、前記ポリマーは、付加重合体、縮合重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体など、およびそれらの組み合わせなど、当技術分野で知られている任意の好適なタイプのポリマーでよい。好ましい基としては、付加重合体および縮合重合体などのポリマータイプがある。付加重合体の例としては、アクリレート(米国特許第5,585,407号(Patel)に開示されているものなど)ポリマー、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリオレフィンポリマーおよびオレフィンポリマー;ポリアクリレート;ポリウレタン;再生セルロース(たとえば、ビスコースレーヨン);およびセルロースエステル(たとえば、酢酸セルロース)、ならびにコポリマーがあるが、これらに限定されるわけではない。縮合重合体の例としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリイミド、ポリウレア、およびポリアミン、ならびにコポリマーがあるが、これらに限定されるわけではない。ある種のシリコーンエラストマー(ヒドロシラン化(hydrosilation)およびシラン縮合反応によって形成されるものなど)、ならびにエポキシ樹脂も好適であることがある。好ましいポリマーとしては、ビニルポリマー、ビニルコポリマー、およびポリウレタンがある。
【0028】
L2は、水;アンモニア;ハロゲン化物(たとえば、弗素、塩素など);チオシアネート;シアン化物(−1);アジ化物(−1);一酸化炭素;アルキルおよびアリールイソシアニド(たとえば、メチルイソシアニド、フェニルイソシアニドなど);アルキルおよびアリールニトリル(たとえば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど);ホスフィン類P(R2)3、アミン類N(R2)3、アルシン類As(R2)3、スルフィド類S(R2)2(ここで、R2は各々別個にアルキル基またはアリール基を表す);複素芳香族炭化水素(たとえば、ピリジン、キノリンなど)、硝酸塩(−1);およびスルフェート(−2);アルキレンおよびアリーレンジアミン(arylenediamines)(たとえば、エチレンジアミン、1,2−ベンゼンジアミン、テトラメチレンジアミンなど);2個以上の芳香族窒素原子を持つ多環式芳香族炭化水素(たとえば、ビピリジル、1,10−フェナントロリンなど);オキサレート(−2);アルキルジケトネート(alkyldiketonates)(たとえば、アセチルアセトネート(acetylacetonate)(−1)など);N,N−ジアルキルジチオカルバメート(−1);エチレンジアミン;8−ヒドロキシキノレート(8−hydroxyquinolate)(−1);およびジアリールギロキシメート(diarylgyloximates)(−2)などの単座または多座(たとえば、二座)配位子を表し;
Xは、窒素またはメチン基を表し;
Mは、白金またはパラジウム原子を表し;そして
k、m、およびnは4以下の整数である。
【0029】
好ましいポリマー結合金属含有組成物は、以下の式を有する化合物を含んでいる。
【化9】
ここで、
R1とR2は各々別個に、Hおよびポリマー結合基を表し(ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはポリマー結合基である);そして
Xは窒素またはメチン基を表す。
【0030】
上式の特に好ましい化合物としては、R1が、ビニルポリマー、ビニルコポリマー、およびポリウレタンからなる群より選ばれたポリマーを含むポリマー結合基を表し、R2がHを表し、そしてXが窒素またはメチン基を表すような化合物が挙げられる。
【0031】
上式の好ましい金属含有化合物は、プレポリマーまたはポリマーを、以下の式の金属含有モノマーと反応させることおよび/または金属含有モノマーを重合または共重合させることを含む方法によって調製できる。
【化10】
ここで、
R1とR2は各々別個に、H、ビニル、およびCH2OHを表し(ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはビニルまたはCH2OHである)、そして
Xは窒素またはメチン基を表す。
【0032】
上式の特に好ましい金属含有モノマーとしては、R1がビニルまたはCH2OHを表し、R2がHを表し、そしてXが窒素またはメチン基を表す場合が挙げられる。
【0033】
本発明の金属含有モノマーは、対応するO,O’−ジヒドロキシアゾまたはO,O’−ジヒドロキシアゾメチン化合物ジアニオンから、必要なテトラクロロメタレート(tetrachlorometallate)における3個の塩素の置換ならびに窒素複素環の置換と同時のその後の残っている塩素の損失によって合成することができる。本発明の金属含有アゾモノマーの合成方法は、米国特許第5,166,326号(Smith)、第5,461,155号(Smith)、第5,180,705号(Smith)および第5,314,998号(Smith)、ならびに米国特許出願第09/004,892号(出願日:1998年1月9日)に記載されている。本発明の金属含有アゾメチンモノマーの合成方法は、米国特許出願第09/004,892号(出願日:1998年1月9日)に記載されている。
【0034】
金属含有モノマーを含んでいる組成物は、種々の方法で調製することができる。たとえば、ポリマーは、1つ以上の金属含有モノマーを重合反応(たとえば、付加重合または縮合重合)に含めて、金属含有化合物をポリマーに組み込むことにより、調製することができる。たとえば、金属含有ビニルモノマーをラジカル重合反応に含めて、金属含有モノマーを組み込んだホモポリマーまたはコポリマーを生成させることができる。別の例としては、ヒドロキシ機能性金属含有モノマーをイソシアネート機能性プレポリマーまたはポリマーと反応させて、金属含有モノマーを組み込んだポリウレタンを生成させることができる。
【0035】
あるいは、そのようなポリマーは、適切な置換を行った金属含有化合物またはその前駆物質をポリマーと反応させることにより、作ることができる(金属(metallated)色素分子をポリマーにグラフトさせるときに生じる)。
【0036】
置換基の説明で“基”または“核”という用語を用いている場合、置換基での置換を予期している。たとえば、“アルキル基”としては、ビニル基、エーテル基(たとえば、CH3−CH2−CH2−O−CH2−)、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキルなどがある。同様に、“芳香族炭化水素核”という用語は、たとえば、フェニルだけでなく、クロロフェニル、エチルフェニル、およびナフチルも指す。
【0037】
本発明の組成物の金属含有化合物の濃度、光源、強度または放射照度、光源のスペクトル特性、および照明の継続時間は、組成物の性能に影響を与え得る。過度の実験を行わなくても、本発明の組成物の金属含有化合物の濃度、光の強度などをこの明細書に鑑みて最適化できることを、当業者なら理解するであろう。好ましい手法および構成については、これらの組成物の増殖抑制特性を最適化するための方法が実施例に示されている。その他のテスト方法は、特に、実施例全体を通して示されている指針に鑑み、また臨床検査基準や手引き書に鑑みるならば、当業者が容易に編み出すことができる。
【0038】
注目に値すべき点として、本発明のポリマー結合金属含有組成物は、微生物の存在の制限方法に使用することができる。通常、これには、微生物の存在下で前記組成物を光に曝すことが関係する。その結果として一重項酸素が形成されると考えられるが、必ずしもそのことに限定することを意図するものではない。
【0039】
本出願人の譲受人の米国特許出願第09/004,892号(出願日:1998年1月9日)は、金属含有化合物を高分子組成物(たとえば、多孔質繊維)で使用する方法を開示している。通常、抗菌力が示されるには金属含有化合物が浸出する必要があった。そこに記載されている化合物の特定の実施態様の場合、具体的には、そこでR1が、たとえば8個または9個の炭素原子を含んでいる長鎖有機基を含んでいる場合、抗菌力は観察されなかった。本発明の組成物は、浸出性金属の量が少ない。したがって、ポリマー結合金属含有組成物が抗菌力を有していることは驚くべきことである。また、本発明では、本発明の組成物から有色の光増感剤が浸出し、その結果、前記組成物が接触している物質を着色するという可能性についての不安を取り除くことにもなる。かくして、本発明は、米国特許出願第09/004,892号に開示されている利点の他にも、利点をもたらすものである。
【0040】
露光には、有向光源に曝すことまたは周辺光に曝すことを含めることができる。好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも約200ナノメートル(nm)で、かつ約900nmより小さい波長の光に曝される。さらに好ましくは、光の波長は、少なくとも約400nmで、かつ約850nmより小さい。簡便かつ十分な光源は、実験室や事務所の蛍光照明に通常使用されるもの、ならびに発光ダイオード(LED)源、白熱光源、太陽光、およびレーザーである。本発明の特定の組成物は、最適には特定波長の光で活性化させることができる。本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、光源のスペクトル出力は、組成物内で測定した場合に、組成物のポリマー結合金属含有化合物の吸収スペクトルと部分的に重なっている可能性がある。一実施態様によれば、組成物は、約5分間、少なくとも270mW/cm2の放射照度に曝すが、光源が明るければ、照明の継続時間を少なくすることができることを、当業者なら容易に理解するであろう。
【0041】
光活性化は、継続的、断続的、または周期的に露光することで生じさせることができる。最適な活性化が光の強度や継続時間に依存すること、また本発明の光反応性組成物を活性化させるのに、ある範囲の露光の強度や継続時間を使用できることを、当業者なら理解するであろう。
【0042】
一実施態様によれば、微生物は、ウイルス、たとえば、HIVなど被膜ウイルス(enveloped virus)、ヘルペスウイルス属のもの、あるいはインフルエンザウイルスである。別の実施態様によれば、微生物は、グラム陽性菌またはグラム陰性菌などのバクテリアである。別の実施態様によれば、微生物は、抗生物質耐性のグラム陽性菌または抗生物質耐性のグラム陰性菌である。さらに別の実施態様によれば、微生物は、酵母菌などの真菌である。
【0043】
光と組み合わせて本発明の組成物を使用すると、DNAおよびRNAウイルス(RNAレトロウイルスを含む)は両方とも不活性化され、グラム陰性菌、グラム陽性菌、および真菌は増殖が制限される。
【0044】
本発明の方法を用いると、種々のウイルスを不活性化させることができる。そのようなウイルスには、一本鎖または二本鎖の核酸ゲノム、DNAまたはRNAウイルスが含まれ、被膜ウイルスならびに被膜のない(non−enveloped)一部のウイルスも含まれる。本発明の組成物を用いて不活性化される好ましいウイルスは、被膜ウイルスである。(以下の)実施例では、本発明の組成物および露光により、ある特定タイプのウイルス、真菌、またはバクテリアが抑制されるかどうかを判定するための、具体的な典型的方法を示してある。本発明に従って、また微生物学の技術に鑑みて、過度の実験を行わなくても、本発明の特定の化合物が、ウイルス、バクテリア、または真菌の存在を制限するかどうかを、微生物学の分野の当業者なら判断できるであろう。
【0045】
陰性一本鎖RNAゲノムを有するウイルスには、オルソミクソウイルス科、ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、およびフィロウイルス科が含まれる。これらは、被膜ウイルスである。オルソミクソウイルス科には、インフルエンザウイルスA型、B型、およびC型が含まれる。ラブドウイルス科には、狂犬病ウイルスや水疱性口内炎ウイルスが含まれる。パラミクソウイルス科には、ほ乳動物のパラインフルエンザウイルス(流行性耳下腺炎ウイルスを含む)および肺炎ウイルス属(人間や家畜のRSウイルスなど)が含まれる。ブニヤウイルス科には、ハンタウイルス属(朝鮮出血性熱やハンタウイルス肺症候群を引き起こすもの)が含まれる。フィロウイルス科には、マールブルグウイルスやエボラウイルスが含まれる。
【0046】
陽性一本鎖RNAゲノムを有するウイルスには、ピコルナウイルス科(被膜なし)、レトロウイルス科、およびトガウイルス科が含まれる。ピコルナウイルス科には、ポリオビールス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、およびライノウイルスが含まれる。レトロウイルス科には、たとえば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、およびウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)が含まれる。トガウイルス科には、セムリキ森林熱ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介ウイルス、および風疹ウイルスが含まれる。パルボウイルス(被膜なし)は、一本鎖ネガティブセンス(Negative−sense)DNAゲノムを有する唯一のウイルスである。このウイルスは、主に猫や犬に感染する。
【0047】
その他のDNAウイルスはすべて二本鎖である。二本鎖ウイルスとしては、パポバウイルス科、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、およびヘパドナウイルス科が挙げられる。ヘルペスウイルス科を除いて、これらのウイルスは被膜なしのウイルスである。パポバウイルス科には、いぼや腫瘍を生じさせる乳頭腫ウイルスが含まれる。アデノウイルス科には、マストアデノウイルス属および気道に感染する種々のウイルスが含まれる。ヘルペスウイルス科には、単純ヘルペス1型および2型、水痘−帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、多発性硬化症の原因として現在知られている抗体、およびヒトヘルペスウイルス7型が含まれる。ポックスウイルス科には、天然痘およびその他の痘疹性ウイルスが含まれる。ヘパドナウイルス科には、ヒトB型肝炎ウイルスが含まれる。
【0048】
本発明のポリマー結合金属含有組成物を光と組み合わせると、種々のバクテリアの増殖が抑制される。そうしたバクテリアには、腸球菌faecium、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌が含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明の組成物の存在下での増殖抑制に関してテストできるその他のバクテリアとしては、連鎖球菌属、コリネバクテリウム属、リステリア属、ナイセリア、および腸内細菌科(これには、エシェリキア属、サルモネラ属、赤痢菌属の各属が含まれる)といったその他の種が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。大腸菌は、グラム陰性かん状体(一般には、腸内細菌科のもの)である。これらのバクテリアは、病気と関連している。
【0049】
光と組み合わせた本発明の組成物中に存在する微生物は、増殖が制限されることになるが、増殖を制限するために、微生物が組成物中に含まれていなければならないわけではない。本発明の組成物を塗布した表面に接触する液体中の微生物も、同様に増殖が制限される。また、本発明の組成物と接触する、またはそれに近接する固体中に存在する微生物も、一重項酸素が他方の表面へ拡散するため、増殖を制限することができる。
【0050】
数種類の病原性の真菌(鵞口瘡カンジダを含む)が存在するが、これは、鵞口瘡として知られる口腔の酵母菌感染および外陰部膣炎として知られる女性の生殖器の感染を引き起こす。鵞口瘡カンジダは、感染や病原性後遺症を引き起こす作用因子としてますます一般的になってきている。種々の真菌について本発明の組成物に対する感受性をテストできることを、微生物学の分野の当業者なら理解するであろう。
【0051】
本発明のポリマー結合金属含有組成物は、望ましい物理特性や機能特性を得られるよう必要に応じて他の物質をさらに含むことができる。たとえば、本発明の組成物は、ポリマー結合金属含有化合物としてだけでなく、組成物中に存在する未結合ポリマーとしても、ポリマーを含むことができる。そのようなポリマーは、化学薬品供給業者から購入したり、あるいはポリマー合成の分野の当業者に知られている方法に従って調製することもできる。本発明では、種々のポリマーを使用できる。ポリマーは、好ましくは、一重項酸素の作用に耐えるようなものを選択する。
【0052】
好適なポリマーの例としては、付加重合体、たとえば、アクリレート(米国特許第5,585,407号(Patel)に開示されているものなど)ポリマー、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリオレフィンポリマーおよびオレフィンポリマー;ポリアクリレート;ポリウレタン;再生セルロース(たとえば、ビスコースレーヨン);セルロースエステル(たとえば、酢酸セルロース);縮合重合体(ポリエステルなど);ポリカーボネート;ポリエーテル;ポリイミド;ポリウレア;およびポリアミン;ならびにコポリマーがあるが、これらに限定されるわけではない。ある種のシリコーンエラストマー(ヒドロシラン化およびシラン縮合反応によって形成されるものなど)、ならびにエポキシ樹脂も好適であることがある。好適なポリマーは、水溶性または溶剤可溶性固体の形で、あるいは水または溶剤中に分散させるか乳濁させたものとして入手できる。市販のポリマーの例としては、STANCE床仕上げ剤(3M社、(St.Paul,MN))、VITELポリエステル(Goodyear Chemicals(Akron,OH))、およびポリカーボネート樹脂(Aldrich Chemical(Milwaukee,WI))がある。好ましくは、ある特定の実施態様の場合、ポリマーは塗布可能であるが、これは必須要件ではない。別の実施態様では、ポリマーは押出可能である。特に好ましい特定の実施態様では、非セルロース系のポリマーが好ましく、付加重合体以外のポリマーが一層好ましい。これは、多数のオレフィン付加重合体には、アリル水素を持つ炭素−炭素二重結合が存在するためであり、また望ましくないポリマー劣化が一重項酸素との反応の結果生じることがあるためである。
【0053】
本発明の組成物に含まれるポリマーは、硬化させることができる。組成物の硬化は、液体ポリマーを凝固させたり、ポリマー溶液または分散液から溶剤を蒸発させたり、ポリマーを架橋または別の仕方で硬化させて不溶性にしたり、ポリマーを押出加工または成形するなどによって実施できる。硬化ポリマーとは、必ずしもポリマーが硬質て柔軟性がないという意味ではなく、むしろ、ポリマーが硬化しているか、あるいは固体状態になっているという意味である。実際、柔軟性のある、または変形しうる基体上のコーティングなどの特定の応用例では、柔軟な“硬化”ポリマー組成物が好ましいことがある。さらに、ポリマーのタイプによっては、“硬化”ポリマーは、冷却して凝固されたものであったり(熱可塑性樹脂樹脂の場合)、あるいはポリマー前駆物質から硬化(つまり、重合および/または架橋)させられたものである場合がある。
【0054】
本発明のポリマー結合金属含有組成物は、たとえば、繊維、フリースタンディングフィルム(free−standing film)、またはコーティングの形であってよい。それは、注形品、成形品、または押出品であってよい。本発明の組成物は、織物品、たとえば、掃除用の布地、雑巾、手術用ガウン、医療器具、シーツや枕カバー、創傷被覆材、および包帯という形を取ることができる。あるいは、自立フィルム(たとえば、食品包装用や創傷包帯用のもの)という形を取ることもできる。創傷用包帯は、使用する前に光に曝して殺菌し、その後、傷の上に置いたならば、光への暴露を制限または除去するために覆うことができる。これは、有害であって傷の状況に望ましくないことのある一重項酸素の形成を停止させるためである。
【0055】
本発明の組成物および物品は、家庭および病院用の医療および臨床補助材、たとえば、透析処置(たとえば、腎臓透析)で使用する管状材料、バッグ、およびマット用として役立つ。前記物品は、衛生用品用の、抗菌表面を持つポリマー積層物という形を取ることができる。その場合、積層物の1つまたは複数の層がポリマー結合金属含有組成物を含んでいるか、あるいはそれから構成される。好ましくは、積層物の少なくとも1つの表面が、ポリマー結合金属含有組成物を含んでいるか、あるいはそれから構成される。
【0056】
本発明の組成物は、抗菌雑巾用の布に混ぜることができる。同様に、前記組成物は、表面の殺菌、たとえば、家庭、保育所、工場、および病院の場面において、おもちゃ、備品、医療用具、および調理台の洗浄に使用できる。種々の備品、消耗品や道具類(縫合糸や包帯など)、皮下注射針および容器は、本発明に従って組成物を用いて殺菌することができる。
【0057】
本発明の金属含有化合物は、極めて光安定性および熱安定性がある。金属含有化合物の溶液は、金属含有化合物の最大吸収の波長400nm〜約700nmにおいて光吸収が約1.0のDMSOに溶かして調製できる。このようにして調製した溶液は、室内灯のもとで1年間保管した後も、吸収スペクトル(光学濃度を含む)の変化を実質的に示さなかった。また金属含有化合物は、最大で少なくとも300℃の温度で安定である。
【0058】
以下の実施例は、ポリマー結合金属含有組成物の調製法を例示したものである。また、それらの実施例は、一重項酸素の生成、ウイルスの不活性化、ウイルス複製の抑制、およびバクテリアおよび真菌の増殖または存在の抑制における、前記組成物の性能またはその性能をテストする手段を例示したものでもある。すべての文献および刊行物は、参照によりこの開示に含まれる。
【0059】
本発明を、以下の例を用いて説明する。特定の実施例、物質、量、および手順は、ここに記載する本発明の範囲および精神に従って、広く解釈されるものと理解すべきである。
【0060】
実施例1
金属含有モノマーの合成
化学合成用の試薬は、特に断りがなければ、Aldrich(Milwaukee,WI)から入手したものである。白金アゾおよびパラジウムアゾ色素モノマーは、公知の文献の手順に従って合成できる。具体的には、モノマー1A(R1=ビニル、R2=H、X=N、M=Pt)は、米国特許第5,180,705号(Smith)に開示されているとおりに合成した。モノマー1B(R1=CH2OH,R2=H,X=N,M=Pt)は、ビニルピリジンの代わりに4−ヒドロキシメチルピリジンを使用したこと以外は、米国特許第5,180,705号(Smith)で教示されているとおりに、実施例3で用いられている手順に従って合成した。白金アゾメチンおよびパラジウムアゾメチン色素は、モノマー1Cおよびモノマー1Dについて以下に説明する手順に従って合成することができる。室温は周囲温度であり、一般には約20℃〜約25℃である。
【0061】
モノマー1C(R1=ビニル、R2=H、X=CH、M=Pt)の合成
【化11】
2−サリシリデンアミノフェノール(2−salicylideneaminophenol)(0.320グラム(g)、1.5ミリモル(mmol)、TCI−America(Portland、Oreg))をジメチルスルホキシド(15ミリリットル(ml))に溶かした100℃の溶液を、テトラクロロ白金酸カリウム(0.685g、1.65mmol)をジメチルスルホキシド(15ml)に溶かした100℃の溶液に加えた。次に、炭酸カリウム(0.600g)を加えて、得られた混合物を10分間(min)150℃で加熱した。反応混合物を100℃に冷却してから、4−ビニルピリジン(0.600ml)を加えた。反応混合物を室温で18時間(h)攪拌した。反応混合物を水(50ml)に注いでから、ジエチルエーテル(150ml)で1回、クロロホルム(150ml)で1回抽出した。ジエチルエーテルの抽出物とクロロホルムの抽出物を一緒にした。一緒にした抽出物を3N塩酸(50mlで2回)、水(100mlで2回)、およびブライン(100ml)で順次洗浄した。この有機溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して有機固体を得た。この固体を最小限のクロロホルムに溶かし、シリカゲルのカラム(20×5センチメートル(cm))を通過させ、その間中、カラムをクロロホルム(250ml)で溶離させた。その溶離液を濃縮してオレンジ色の固体を得た。その固体をエタノールで再結晶させて、0.068グラムの次のような1Cをオレンジ色の固体として得た。1HNMR(500MHz;CDCl3):δ5.70(d,1H,J=10.8Hz);6.14(d,1H,J=17.6Hz);6.70−6.82(m,3H);7.10−7.17(m,2H);7.26−7.28(m,1H);7.46−7.51(m,3H);7.66(dd,1H,J1=7.9Hz,J2=1.6Hz);7.81(d,1H,J=8.3Hz);8.65(s,1H);9.16(dd,1H,J1=5.4Hz,J2=1.6Hz);13C{1H}NMR(125MHz;CDCl3):δ114.21,115.23,116.08,117.77,121.14,121.56,121.67,128.16,132.34,133.04,133.25,140.00,142.77,146.45,149.26,161.75,167.01。
【0062】
モノマー1D(R1=CH2OH、R2=H、X=CH、M=Pt)の合成
【化12】
2−サリシリデンアミノフェノール(0.320g、1.5mmol、TCI−America(Portland,OR))をジメチルスルホキシド(15ml)に溶かした100℃の溶液を、テトラクロロ白金酸カリウム(0.685g、1.65mmol)をジメチルスルホキシド(15ml)に溶かした100℃の溶液に加えた。次に、炭酸カリウム(0.600g)を加えて、得られた混合物を150℃で10分間加熱した。反応混合物を100℃に冷却してから、4−ピリジンカルビノール(0.607g)を加えた。その反応混合物を室温で18時間攪拌した。
【0063】
反応混合物を水(50ml)に注いでから、ジエチルエーテル(150ml)で1回、クロロホルム(150ml)で1回抽出した。ジエチルエーテルの抽出物とクロロホルムの抽出物を一緒にした。一緒にした抽出物を、3N塩酸(50mlで2回)、水(100mlで2回)、および飽和NaCl水溶液(1回)で順次洗浄した。その有機溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮してオレンジ色の固体を得た。その固体をエタノールで再結晶させて、0.080グラムの次のような1Dを暗褐色結晶として得た。1HNMR(500MHz;d6−DMSO):δ4.70(d,2H,J=5.6Hz);5.67(t,1H,J=5.6Hz);6.67(dt,1H,J1=7.3Hz,J2=1.6Hz);6.78(t,1H,J=7.3Hz);7.00−7.08(m,2H);7.21(d,1H,J=8.3Hz);7.47(dt,1H,J1=7.7Hz,J2=1.7Hz);7.66(d,2H,J=6.6Hz);7.88(dd,1H,J1=8.1Hz,J2=1.7Hz);8.09(d,1H,J=8.4Hz)。
【0064】
実施例2
ポリマー結合金属含有組成物の調製
組成物調製用の試薬は、特に断りがなければ、Aldrich(Milwaukee,WI)から入手したものである。
【0065】
サンプルA:1%のモノマー1Bを用いて調製したポリウレタン結合金属含有組成物
フラスコに、トリメチロールプロパン(0.5g)、ジメチロールプロピオン酸(4.0g、Trimet Technical Products,Mallinckrodt,Inc.、(Allentown,PA.))、テゴジオールHSi2311(27.0g、Goldschmidt Chemical Corporation)、FMDA11ポリジメチルシロキサン、MW1000(22.0g、チッソ株式会社、シリコン化学品事業部(日本、東京))、Terathane2000ポリテトラメチレンエーテルオキシドジオール、MW2000(14.46g、デュポン社(Wilmington,DE))、N−メチルピロリドン(15g、BASF)、Tinuvin292紫外線安定剤(0.50g、チバ・ガイギー社(USA))、およびTinuvin284紫外線安定剤(1.0g、チバ・ガイギー社(USA))を充填し、その後、Desmodur−Wイソシアネート(32.5g、バイエル社(USA))を充填した。それらの成分を2分間攪拌し、その後0.04グラムのT−12(ジブチル錫ジラウレート、AirProducts)を加えた。その混合物を、不活性雰囲気下で8時間80℃で攪拌した。反応が終了する前に、1グラムのモノマー1B(R1=CH2OH、R2=H、X=N,M=Pt)をそのプレポリマーに加えた。イソシアネートの滴定(標準ジブチルアミン−稀HCl滴定)ですべてのイソシアネートが反応したことが示されたときに、反応が終了したと判断した。その後、混合物の一部の100グラムを、強いせん断力を加えながら水(280g)の中に分散させ、その分散液中にトリエチルアミン(2.61g)、エチレンジアミン(0.5g)およびDICYKAN(4,4ジアミノジシクロヘキシル−メタン;BASF(USA)、12グラムのN−メチルピロリドン中に7グラム)の溶液を加えた。それらの成分を4分間強いせん断力を加えながら混合した。その分散液を高圧ホモジナイザー(4000psi)に移して、10分間均質化し、その後、再び500rpmで3時間混合した。ポリウレタンフィルムをポリエステル剥離ライナー上にキャストし、20℃で7日間硬化させた。その後、それらについて、色素の浸出、殺微生物力、および一重項酸素生成のテストを以下に説明するとおりに行った。
【0066】
サンプルB:0.5%のモノマー1Bを用いて調製したポリウレタン結合金属含有組成物
0.5%のモノマー1Bを使用したこと以外は、サンプルAの調製と同様の方法でサンプルBを調製した。
【0067】
サンプルC:モノマー1Aを用いて調製したポリマー結合金属含有組成物を含んでいる多孔質TIPS膜
TIPS(熱誘起相分離(Thermally Induced Phase Separation))膜(ポリプロピレンの膜)は、米国特許第4,539,256号(Shipman)に従って調製できる。モノマー1A(R1=ビニル、R2=H、X=N、M=Pt)を含んでいるTIPS膜は、4−ビニルピリジン(1g)、ジビニルベンゼン(50mg)、色素1A(14mg)およびIrgacure651光開始剤(46mg、CibaSpecialtyChemicals,USA)を混合して調製した。その溶液を、13cm×13cmの一枚のポリプロピレンTIPS膜に吸収させてから、2枚の剥離ライナーの間に挟んだ。過剰のモノマー溶液を絞り出し、フィルムの両側に紫外線ランプを10分間照射し、メタノールで2回洗浄し、その後真空中で5分間乾燥させた。得られたTIPS膜について、色素の浸出、殺微生物力、および一重項酸素生成のテストを以下に説明するとおりに行った。
【0068】
サンプルD:0.25%のモノマー1Aを用いて調製したポリプロピレン結合金属含有組成物
安定化されていないポリプロピレン(130g、3%のポリエチレンを含んでいるQuantum8310、Equistar Petrochemicals Limited(Houston,TX))を、0.33gのモノマー1A(R1=ビニル、R2=H、X=N、M=Pt)および0.25mlのLupersol開始剤(Elf Atochem North America,Inc.(Philidelphia,PA))と混合し、その後170℃のHakke溶融ミキサーの混合室に移した。混合室の温度を15分間170℃に保ち、その後5分間150℃に冷却した。得られたポリマーをフィルムに成形し(以下に注記のある場合は除く)、特徴を記述して、以下に説明するとおりに色素の浸出、殺微生物力、および一重項酸素生成のテストを行った。
【0069】
サンプルE:1%のモノマー1Aを用いて調製したポリプロピレン結合金属含有組成物
サンプルEは、1%のモノマー1Bを使用したこと以外は、サンプルDと同様の方法で調製した。
【0070】
実施例3
ポリマー結合金属含有組成物からの色素の浸出のテスト:
組成物からの金属の浸出は、ICP−MSを用いて測定した。組成物の6mmディスク状サンプル(113mm2)を2.0mlのTrypticase Soy液体培地(VWRによるBDL、カタログ#4311771)に室温で24時間浸した。その後、0.5gのサンプルを正確に測って、金属を含まない15mlの遠心管に入れた。各サンプルは2度分析した。40%HCl/10%HNO3の溶液(1ml)と10mlの10ppmビスマス内標準をそれぞれのサンプルに加えた。脱イオン水を加えて10mlの溶液とした。
【0071】
サンプルをPerkin−Elmer ELAN6000ICP−MSで分析した。結果は、10億分の1単位(テストサンプル1グラム当たりの金属元素のナノグラム数に等しい)で示してある。(テストした2ml(約2g)のサンプルでは、200ナノグラム金属/1グラム・サンプルは、100ppbの浸出に等しく、このレベルより低い場合、サンプルは実質的に非浸出性であるとみなされる。)
【0072】
【表1】
【0073】
結果は、ポリマー結合金属含有組成物と調和している。
【0074】
実施例4
ポリマー結合金属含有組成物の殺微生物力のテスト
ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に対する組成物の殺ウイルス力のテスト:
前述の組成物についてEIAVに対する殺ウイルス力のテストを、馬の皮膚(ED)細胞(ATCC CCL57)に対する伝染力の消失を測定して行った。用いた手法は以下のとおりである。
【0075】
第1日目:ED細胞を、ウェル当たり5×105個の細胞の割合で、6ウェル組織培養プレート(Corning Co.、#25810)の、20%ウシ胎児血清(Gibco BRLCo.,#26140−038)の入ったダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)(#D5648)に入れた。細胞は、“第2日目”まで37℃で(CO2雰囲気下)培養した。
【0076】
第2日目:ウイルスを組成物(6mmディスク)で処理するが、これは、ウイルスを含んだハンクス緩衝液を、組成物で処理した表面かまたは組成物をその表面に有する物体上に置くことにより行う。(特別に断りがなければ、すべての実験操作は周辺光のもとで行う。)
【0077】
1.“試験液”の調製
塩化カルシウムも硫酸マグネシウムも含んでいないハンクス平衡緩衝液(1.0ml、104個の感染ウイルス単位を有する)(HBSS、Sigma Chemical Co.、#H2387)で、2%のウシ胎児血清を含んでいるものを、組成物と接触させる。サンプルを、対の24ウェル組織培養プレート(Corning、#25820)の各ウェルに入れる。一方のプレートをアルミニウム箔で包み、対照試料を用いる実験の暗所での対照として用いる。もう一方のプレートは、実験台上に置いて、室温で30分間室内蛍光灯に曝す(以下に注記のある場合は除く)(輻射照度=272μW/cm2)。
【0078】
2.6ウェルプレートに入ったED細胞にポリブレン(Sigma Chemical Co.、#P4515)を注入して最終濃度を8mg/mlにし、ポリマー結合金属含有組成物(6mmディスク)を含んでいる試験液(ステップ1のもの)を入れる。細胞を暗所で5日間37℃で培養する。
【0079】
第7日目:ウイルス感染細胞の免疫組織化学的検出
1.培地を吸引し、細胞を3mlのTNF(10mM Tris(pH7.5)、150mMNaCl,1%ウシ胎児血清)で1回すすいでから、5分間100%メタノールで固定する。細胞を3mlのTNFで2回すすいでから、0.5mlの馬の抗EIAV血清(回復期血清、HBSS中に1:800で希釈)で、30分間揺らしながら培養する。
【0080】
2.細胞を3mlのTNFで3回すすいでから、0.5mlの抗馬HRP抗体(Cappel/Organon Teknika Corp.、ロット#35426)で、30分間揺らしながら培養する。
【0081】
3.細胞を3mlのTN(FBSなし)で3回すすいでから、0.05M酢酸ナトリウム/N,N−ジメチルホルムアミド(Sigma Chemical Co.、#D8654)緩衝液に入れたAEC基質(Sigma Chemical Co.、#A6926)2mlで、20分間暗所で培養する。細胞は蒸留水ですすいでから、乾燥させる。
【0082】
4.明白な感染細胞の増殖巣を光学顕微鏡でカウントし、接種物1ml当たりの増殖巣形成単位(FFU)数を計算する。潜在的殺ウイルス組成物と光で処理したサンプルのFFUを、暗所に保存したサンプルのものと比較する。
【0083】
このプロトコルが、ここで説明している組成物の殺ウイルス力を評価するのに使用できることを、微生物学の分野の当業者なら認めるであろう。
【0084】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)および単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)に対するポリマー結合金属含有組成物の殺ウイルス力のテスト:
これらのテストは、以下の手法に従って、Southern Research Institute(Birmingham,Alabama)が実施することができる。
【0085】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)のテスト:
濃縮HIV/RF(0.1ml)を、24ウェルプレートの1つのウェル内に入れた組成物のディスク上に置く。前記プレートを、実験室の作業台に置いて、通常の蛍光照明の下で30分間放置する。テストするそれぞれの濃度ごとに暗所での対照を実施する。次に、ウェルのサンプルから一連の希釈液を作り、それを用いて104細胞/ウェルでMT2細胞を接種する。プレートを、37℃で5%CO2の下、7日間定温放置する。結果を、ウイルス力価の対数減少で報告する。
【0086】
単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)のテスト:
HSV−1テストのプロトコルは、HIV−1テストのプロトコルと基本的には同一であるが、ベロ(Vero)細胞に、ポリマー結合金属含有組成物で処理したHSV−1粒子を接種するという点で異なる。
【0087】
実施例5
ポリマー結合金属含有組成物のバクテリアおよび真菌の増殖制限のテスト
サンプルA(1重量%のモノマー1Bを用いて調製したポリウレタン結合金属含有組成物)の腸球菌faeciumの増殖制限能力のテスト
貯蔵の腸球菌faeciumをTSB寒天培地上に平板培養し、一晩中37℃で成長させ、その時点で、いくつかのコロニーをPBS(緩衝液)に移して、最終濃度108バクテリア/mlの溶液を得た。その溶液10マイクロリットルを、9990マイクロリットルのPBSに加えて、105バクテリア/mlを含んでいる溶液10mlを得た。最後に、その溶液100マイクロリットルを2mlのtrypticase soy液体培地に加えて、濃度が5000バクテリア/mlの約2mlのバクテリア試験溶液を得た。
【0088】
これらのバクテリアを含んだ液体培地2mlが入っているバイアルに、サンプルAの6mmディスク6枚を入れた。これらのバイアルを、点灯した2個の15Wフィリップス昼光電球(放射照度=1.35mW/cm2)の6インチ上にある37℃のインキュベーターに18時間入れた。この実験については、暗所での対照は実施しなかった。
【0089】
結果:
液体培地は透明であったので、E.faeciumのコロニーの数が増えなかったことを示している。
【0090】
サンプルE(1重量%のモノマー1Aを用いて調製したポリプロピレン結合金属含有組成物)のテスト
貯蔵の腸球菌faeciumをTSB寒天培地上に平板培養し、一晩中37℃で成長させ、その時点で、いくつかのコロニーをPBS(緩衝液)に移して、最終濃度108バクテリア/mlの溶液を得た。この溶液を使用して、別の2つのTSB寒天プレートに綿棒で塗り、それぞれのプレートに潜在的バクテリアローン(bacterial lawn)を作り、それらの潜在的ローンにサンプルCの6mmディスクを置いた。一方のプレートはアルミニウム箔で包んで、37℃のインキュベーターに一晩中入れた。他方は、室温で可視光線を一晩中照射し(放射照度=40mW/cm2)、その後一晩中、暗所で37℃のインキュベーター内に置いた。
【0091】
結果:
暗所の対照では抑制のゾーンは見られなかったが、可視光線を照射したサンプルでは1−mmのゾーンが見られた。これは、光と組み合わせたポリマー結合金属含有組成物により、バクテリアの増殖が制限されたことを示している。
【0092】
本発明の組成物によるバクテリアの増殖の制限能力をテストするために用いたのと同様のテスト方法を、真菌の増殖の制限をテストする場合にも使用できることを、当業者なら理解するであろう。
【0093】
実施例6
ポリマー結合金属含有組成物の一重項酸素生成のテスト
一重項酸素の生成は、エタンジオールジベンゾアートエステル(DPE)(これは、一重項酸素と2,3−ジフェニル−p−ジオキサン(DPD)との反応で形成される)のクロマトグラフ検出によって間接的に測定した。
【0094】
サンプルB上に2,3−ジフェニル−p−ジオキサンをメタノールでキャストしたものに、2cmの距離から13Wの蛍光ランプで照射した。2.5時間後に、そのポリウレタンをメタノールですすぎ、それをガス・クロマトグラフィーで分析した。一重項酸素活性を示す出発原料からジエステルへの転換を、図1に示す。
【0095】
実施例7
サンプルC(ポリプロピレン結合金属含有組成物を含んでいるTIPS膜)の一重項酸素生成のテスト
1枚(1cm×1cm)のサンプルCを、10−3MのDPD溶液(2ml)に入れて、2時間照射(13Wの蛍光ランプ)した。ジエステルへのDPDの転換を図2に示す。
【0096】
同様の手法を用いて、フィルム成形されていない顆粒状(100mg)のサンプルD(0.25%の色素1Aを含んでいる)(ここで、[DPD]=10−4M)をテストした。樹脂を含んでいる溶液に、7.2cmの距離から8個の8Wの白色蛍光ランプ(cool fluoresent light)を用いて照射した。DPDの転換を図3に示す。
【0097】
本発明の方法により、ウイルス、バクテリア、または真菌を含んでいる物品または表面の微生物の増殖を抑制できるようになることを、当業者なら理解するであろう。その他のウイルス、バクテリア、および真菌についても、過度の実験を行わなくても本発明の方法を用いて同様にテストできる。
【0098】
ここに引用されているすべての特許、特許出願、および刊行物の完全な開示は、個々のものが示されている場合のように、ここに参考のために示す。この発明の範囲と精神から逸脱しない範囲で、本発明のさまざまな修正や変更は当業者にとっては明らかになるであろう。また、本発明が、ここに述べた説明のための実施態様に不当にも限定されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
出発原料からジエステルへの転換を示すガスクロマトグラムは、一重項酸素活性を示している。DPD:2,3−ジフェニル−p−ジオキサン;DPE:エタンジオールジベンゾアートエステル。
【図2】
一重項酸素の発生(PVP−TIPS)。DPDからDPEへの転換はPVP−TIPS膜における一重項酸素活性を示している。DPD(M)は、DPDのモル濃度を示す。
【図3】
一重項酸素の発生(ポリプロピレン顆粒)。DPDからDPEへの転換はポリ(プロピレン)顆粒における一重項酸素活性を示している。DPD(M)はDPDのモル濃度を示す。
Claims (10)
- 微生物の存在の制限方法であって、前記方法が、微生物と、下記の式:
Z1とZ2は各々別個に5〜14個の環原子を有する芳香族炭化水素核を表し;
G1とG2は各々別個に、G1とG2がZ1およびZ2のうちの少なくとも1つの内部に含まれるか、またはそれから張り出していてもよいような金属配位子化基を表し;
Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシルアミノ基、アルコキシ基、スルホンアミド基、アリール基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニル基、アルキルスルホキシルまたはアリールスルホキシル基、アリールオキシル基、ヒドロキシル基、チオアミド、カルバモイル基、スルファモイル基、ホルミル基、アシル基、ウレイド基、アリールオキシカルボニル基、シリル基、またはスルホアルコキシ基を表し;
L1は、R1またはR2で置換、またはR1とR2の両方で置換された窒素複素環を表し;
R1とR2は各々別個に、ポリマー結合基、水素、ハロゲン原子、アルキル基、ビニル基、ヒドロキシアルキル基、アシルアミノ基、アルコキシ基、スルホンアミド基、アリール基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリルスルホニル基、アルキルスルホキシル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、シリル基、またはスルホアルコキシ基を表し;ここで、R1およびR2のうちの少なくとも1つがポリマー結合基を表し;
L2は、単座または多座配位子を表し;
Xは、窒素またはメチン基を表し;
Mは、白金またはパラジウム原子を表し;そして
k、m、およびnは4以下の整数である。)
を有する化合物を含んでいるポリマー結合金属含有組成物とを接触させることを含む、微生物の存在の制限方法。 - 前記方法が、前記組成物を活性化させるのに十分な量の光に前記組成物を曝すことをさらに含む請求項1に記載の方法。
- 前記微生物がウイルスである請求項1に記載の方法。
- 前記ウイルスがHIVである請求項4に記載の方法。
- 前記ウイルスがヘルペスウイルス群の1つである請求項4に記載の方法。
- 前記ウイルスがインフルエンザウイルスである請求項4に記載の方法。
- 前記微生物がバクテリアである請求項1に記載の方法。
- 前記微生物が真菌である請求項1に記載の方法。
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