JP2004505637A - ガン関連sim2遺伝子 - Google Patents
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Abstract
【構成】生物学的試料におけるSIM2核酸やタンパク質を検出することによって、その試料におけるガンを検出する方法を開示する。また、ガンの治療方法及びSIM2発現を調節する化合物を同定する方法も開示する。
Description
【0001】
関連特許
本出願は、2000年12月22日に出願された米国仮出願第60/257,965号及び2000年8月4日に出願された米国仮出願第60/223,531号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に分子生物学,遺伝子学,生物情報学,病理学,医学の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、選り抜かれたガンにおいて調節される遺伝子発現の新規な有用性に関する。
【0003】
発明の背景
ヒト全ゲノムを配列する最近の努力成果によって、何万もの遺伝子が同定されている。例えば、ベェンターら(2001)サイエンス,291:1304−51参照。この業績にもかかわらず、これらの同定された遺伝子の多くはまだ機能的に明らかになっていない。これらの遺伝子の機能が明らかになれば、それらが種々の異なる病気に関する新たな診断上及び治療上の標的を同定するのに有用であることがわかるだろう。
【0004】
本発明の要約
本発明は、健康な細胞よりも選り抜かれたガン細胞において高レベルで発現する特定のポリヌクレオチド配列の発見に関する。このポリヌクレオチド配列は国立ガン研究所のガン遺伝子分析プロジェクト(CGAP)データベースを分析するためのDDDM(デジタル微分表示ツールを一部改良したもの)としてここで言及される一部改良されたデータマイニングツールを用いて同定された。特に、DDDMは、対応する非ガン組織ライブラリーよりもガン組織ライブラリーにおいてより一般的に、種々の発現遺伝子配列断片(ESTs)を同定するのに用いられた。この同定されたESTsは、ガンと関連する特定の単一遺伝子を同定するのに用いられた。同定されたポリヌクレオチド配列に基づき、発現が大腸ガン,前立腺ガン,膵臓ガンで選択的に増加するSIM2(シングルマインド相同体2(Single Minded homolog2))と称する遺伝子が同定された。
【0005】
天然ヒトSIM2遺伝子は、既にクローニングされ配列が解析されている。クラストら(1997)Genome Res.,7:615−624。2.7,3,4.4,6kbのmRNAを含む数種の異なるmRNAがSIM2遺伝子から発現するということがノーザンブロット分析で示された。多数のmRNAは、5’や3’の非翻訳配列の選択的スプライシング,重複転写又は別の利用のためにあると思われている。SIM2遺伝子の少なくとも2つの異なる形状が特徴付けられている。この長形型(ジェンバンク 登録番号U80456;SEQ ID NO:1)は3901bpであり、74kDの見かけ上の分子量をもつアミノ酸667個のタンパク質をコードする。この短形型(ジェンバンク 登録番号U80457;SEQ ID NO:2)は2859bpであり、64kDの見かけ上の分子量をもつアミノ酸570個のタンパク質をコードする。SIM2タンパク質の両形状のN末端は、ファミリーの別のメンバーであるSIM1と同様に、互いに広範囲な配列の同一性を示す。これらのタンパク質の全N末端には4つの認識ドメイン、すなわちbHLH,PAS1,PAS2とHSTが含まれる。これらのドメインは時々転写因子で見られる。これらのタンパク質のC末端はいくつかの類似点を示すが、独自の配列も含む。
【0006】
SIM2は今までダウン症候群との関連が知られていたが、ガンとの関連は知られていなかった。
【0007】
したがって、本発明は組織試料におけるガンの検出方法を開示する。この検出方法は:(a)この組織試料を準備する工程と;(b)SIM2マーカーの存在によりこの組織試料を分析する工程とを含む。組織試料におけるSIM2マーカーの存在は、この組織試料がガンを含んでいることを示す。本検出方法において、この組織試料は、大腸の組織試料,前立腺の組織試料,又は膵臓の組織試料であってもよい。
【0008】
本発明内で利用されるSIM2マーカーは、例えば、SIM2mRNAや天然SIM2核酸などのSIM2核酸であってもよい。この天然SIM2核酸は、SEQ ID NO:1やSEQ ID NO:2のヌクレオチド配列を有していてもよい。このSIM2マーカーは、天然SIM2タンパク質のような例えば、SEQ ID NO:3やSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有するSIM2タンパク質であってもよい。
【0009】
前述の検出方法において、組織試料を準備する工程は、ヒトの客体から組織試料を入手することを含んでいてもよく;組織試料を分析する工程は、組織試料からRNAを単離し、単離されたRNAからcDNAsを作成し、PCRによってcDNAsを増幅させPCR産物を作成し、PCR産物を電気泳動的に分離し電気泳動パターンを得ることを含んでいてもよい。PCRによってcDNAsを増幅させるこの工程は、例えば、SEQ ID NOs:7,8,15と16のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行うことができる。またこの方法において、PCRによってcDNAsを増幅させるこの工程は、第1のオリゴヌクレオチドプライマーと第2のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行ってもよい。この第1のオリゴヌクレオチドプライマーとしては、SEQ ID NOs:7又は15のヌクレオチド配列が含まれる。この第2のオリゴヌクレオチドプライマーとしては、SEQ ID NOs:8又は16のヌクレオチド配列が含まれる。この方法の特定の実施例において、電気泳動パターンでの472塩基対の核酸の存在は、その組織試料にガンが含まれていることを示す。
【0010】
また前述の検出方法において、SIM2核酸について組織試料を分析する工程は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列,SEQ ID NO:2のアミノ酸配列,SEQ ID NO:1の補体,又はSEQ ID NO:2の補体を有するポリヌクレオチドとハイブリッド形成するオリゴヌクレオチドプローブを組織試料に接触させることを含んでいてもよい。例えば、このオリゴヌクレオチドプローブとしては、SEQ ID NO:9の核酸が含まれる。この方法のオリゴヌクレオチドプローブはまた、検出可能な標識を含んでいてもよい。
【0011】
前述の検出方法の変形例において、SIM2マーカーは天然SIM2タンパク質のようなSIM2タンパク質である(例えば、SEQ ID NO:3やSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有するもの)。この変形例において、組織試料を準備する工程はヒトの客体から組織試料を入手することを含んでいてもよく、そして組織試料を分析する工程は、SIM2タンパク質と特異的に結合するプローブを組織試料の少なくとも一部に接触させることを含んでいてもよい。このプローブとしては、検出可能な標識及び/又は抗体がある(例えば、SEQ ID NO:14のペプチドと特異的に結合する抗体)。この方法の別の変形例において、この組織試料は糞,尿や末梢血から分離された細胞を含む。
【0012】
別の特徴において、本発明はSIM2遺伝子発現の調節方法を開示する。この調節方法は:(a)SIM2遺伝子を発現する細胞を準備する工程と;(b)その細胞内のSIM2遺伝子の発現を調節する薬剤をその細胞に導入する工程とを含む。この薬剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド等のオリゴヌクレオチドであってもよい。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSIM2タンパク質をコード化するポリヌクレオチドとハイブリッド形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてもよく、少なくとも18個のヌクレオチドの長さがありSIM2タンパク質をコード化するアミノ酸の補体である配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。例えば、このアンチセンスオリゴヌクレオチドはSEQ ID NOs:11や12の核酸配列を含んでいてもよい。
【0013】
本発明はまた、細胞内でSIM2遺伝子の発現を調節する被験化合物の同定方法も含む。この同定方法は:(a)SIM2遺伝子を発現する細胞を準備する工程と;(b)被験化合物をこの細胞に接触させる工程と;(c)SIM2遺伝子の発現における調節を検出する工程とを含む。この調節の検出は、被験化合物がSIM2遺伝子の発現を調節することを示す。この同定方法において、この細胞は大腸の組織試料,前立腺の組織試料,又は膵臓の組織試料から得ることができる。また、この同定方法において、SIM2遺伝子の発現における調節を検出する工程は、SIM2マーカーの細胞間濃度における細胞の変化を分析することを含んでいてもよい。
【0014】
さらに、本発明はSIM2タンパク質を発現する細胞を含むガンの生育速度を低下させる方法を開示する。この方法は細胞内のSIM2タンパク質の発現を阻害する薬剤をその細胞に接触させる工程を含む。
【0015】
この薬剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド等のオリゴヌクレオチドであってもよい。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSIM2タンパク質をコード化するポリヌクレオチドとハイブリッド形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてもよく、少なくとも18個のヌクレオチドの長さがあり、SIM2タンパク質をコード化するアミノ酸の補体である配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。例えば、このアンチセンスオリゴヌクレオチドはSEQ ID NOs:11や12の核酸配列を含んでいてもよい。
【0016】
この方法の変形例において、このガンは大腸ガン,前立腺ガン,又は膵臓ガンであってもよい。また、哺乳類等の動物におけるガンであってもよい。
【0017】
さらに別の特徴において、本発明は細胞内のSIM2遺伝子の発現を調節するキットを開示する。このキットには、細胞内のSIM2遺伝子の発現を調節する薬剤と、細胞内のSIM2遺伝子の発現を調節する薬剤の取り扱い説明書とが含まれる。
【0018】
特に定義しない限り、ここで使用される全ての専門用語は、本発明が属する技術における通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。分子生物学の用語の一般に理解される定義は、リーガーら著(1991)遺伝子学用語集:第5版,スプリンガー−ヴァーラグ:ニューヨーク、及びレウィン著(1994)遺伝子 V,オックスフォード大学出版:ニューヨークにおいて見出すことができる。
【0019】
「遺伝子」と言った専門用語は、特定のタンパク質、又はある場合において、機能上のRNA分子や構造上のRNA分子をコードする核酸分子を意味する。例えば、SIM2遺伝子はSIM2タンパク質をコードする。
【0020】
ここで用いられる「核酸」や「核酸分子」とは、RNA(リボ核酸)及びDNA(デオキシリボ核酸)のような二つ以上のヌクレオチド鎖を意味する。「精製した」核酸分子とは、細胞内の別の核酸配列やこの核酸が天然に存在する生物(例えば、30,40,50,60,70,80,90,95,96,97,98,99,100%汚染物質のない)から実質上分離されるものである。この専門用語には、例えばベクターの中に組み込まれる組換え核酸分子,プラスミド,ウイルス,原核生物や真核生物のゲノムが含まれる。精製核酸の例として、cDNAs,ゲノム核酸のフラブメント,ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって作成される核酸,ゲノム核酸の制限酵素処理によって形成される核酸,組換え核酸,化学的に合成された核酸分子が含まれる。「組換え型」核酸分子は、例えば化学合成や、遺伝子工学の技術で単離された核酸の断片の操作によって、2つの別に分離された塩基配列の断片の人工合成により作り出されたものである。
【0021】
「SIM2遺伝子」,「SIM2ポリヌクレオチド」,又は「SIM2核酸」と言った専門用語は、天然のSIM2をコードする核酸配列を意味し、例えば、天然SIM2遺伝子;天然長形型SIM2cDNA(SEQ ID NO:1);天然短形型SIM2cDNA(SEQ ID NO:2);SIM2cDNAを転写できる配列を持つ核酸;及び/又は前記の対立突然変異体と相同体が挙げられる。この専門用語には二本鎖DNA,一本鎖DNA及びRNAが含まれる。
【0022】
ここで用いられるような、「タンパク質」や「ポリペプチド」は、例えば、グリコシル化やリン酸化の長さや翻訳後の修飾に関係なく、アミノ酸の任意のペプチド結合した鎖を意味している。「精製した」ポリペプチドとは、細胞内の別のポリペプチドやこのポリペプチドが天然に存在する生物(例えば、30,40,50,60,70,80,90,95,96,97,98,99,100%汚染物質のない)から実質上分離されるものである。
【0023】
「SIM2タンパク質」や「SIM2ポリペプチド」と言った専門用語は、例えば、天然長形型SIM2タンパク質(SEQ ID NO:3)、天然短形型SIM2タンパク質(SEQ ID NO:4)や前記のいずれか一つと少なくとも65%(しかし、好ましくは75,80,85,90,95,96,97,98,99%)のアミノ酸配列の同一性を共有し、天然SIM2タンパク質の機能的活性を表すタンパク質のようなSIM2遺伝子の発現産物を意味する。タンパク質の「機能的活性」とは、タンパク質の生理学的機能と関連する任意の活性のことである。例えば、天然のSIM2タンパク質の機能的活性には、DNA結合活性及びある腫瘍性組織における選択的発現が含まれていてもよい。
【0024】
核酸やポリペプチドを示す場合、「天然」と言う専門用語は自然発生的(例えば、「野生型」)な核酸やポリペプチドを示す。SIM2遺伝子の「相同体」とは、ヒト以外の生物から分離されたSIM2ポリペプチドをコードする遺伝子配列のことである。同様に、天然SIM2ポリペプチドの「相同体」とは、SIM2遺伝子相同体の発現産物である。
【0025】
ここで用いられているような、「SIM2マーカー」とは、任意の分子であって、試料(例えば、細胞)内のその分子の存在はSIM2遺伝子がその試料で発現することを示す。SIM2マーカーは、SIM2核酸及びSIM2タンパク質を含む。「SIM2遺伝子を発現する」又はそのような語句は、試料がSIM2の転写産物(例えば、メッセンジャーRNA、すなわち「mRNA」)やSIM2タンパク質をコード化する核酸(例えば、SIM2タンパク質)の翻訳産物を含むことを意味する。細胞が検出可能なレベルのSIM2核酸やSIM2タンパク質を含む時、その細胞がSIM2遺伝子を発現する。
【0026】
SIM2核酸の「フラグメント」は、完全長より短く、ストリンジェントなハイブリッド形成条件下で特に天然SIM2核酸とハイブリッド形成可能な少なくとも最低限の長さからなるSIM2核酸のタンパク質である。そのようなフラグメントの長さは、天然SIM2核酸配列の好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも20ヌクレオチド、最も好ましくは30ヌクレオチドである。SIM2ポリペプチドの「フラグメント」は、完全長(例えば、天然SIM2タンパク質の5,10,15,20,30,40,50,75,100又は100以上のアミノ酸からなるポリペプチド)より短いSIM2ポリペプチドの一部であり、好ましくは天然SIM2タンパク質の少なくとも一つの機能活性を保持する。
【0027】
別に核酸のハイブリッド形成を参照すると、「低ストリンジェンシーの条件」とは10%ホルムアミド,5X デンハルト溶液,6X SSPE,0.2%SDSを含む溶液中での42℃でインキュベーションし、次いで1X SSPE,0.2%SDSを用いた50℃で洗浄することを意味する;「中ストリンジェンシーの条件」とは50%ホルムアミド,5X デンハルト溶液,5X SSPE,0.2%SDSを含む溶液中での42℃でインキュベーションし、次いで0.2X SSPE,0.2%SDSを用いた65℃で洗浄することを意味する;「高ストリンジェンシーの条件」とは50%ホルムアミド,5X デンハルト溶液,5X SSPE,0.2%SDSを含む溶液中での42℃でインキュベーションし、次いで0.1X SSPE,0.1%SDSを用いた65℃で洗浄することを意味する。「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」とは、低,中,高程度のストリンジェンシーの条件を意味する。
【0028】
ここで用いられているような、「配列の同一性」は、二つの塩基配列をサブユニットのマッチングが最大になるように、すなわち隙間と挿入を考慮して並べたときの、二つの塩基配列に対応する位置における同一のサブユニットの百分率を意味する。二つの配列の双方におけるサブユニット位置が同じヌクレオチドやアミノ酸によって占められた場合、例えば、各二つのDNA分子においてアデニンが所定位置を占めたならば、その時その二つの分子がその位置で同一である場合、配列の同一性が存在する。例えば、配列10ヌクレオチドの長さにおいて7つの位置が第2の10ヌクレオチド配列に対応する位置と同一であるならば、その時二つの配列は70%配列の同一性を有する。塩基配列の同一性は、一般的に、塩基配列分析ソフトフェア(例えば、遺伝子コンピューターグループの塩基配列分析ソフトフェアパッケージ、ウィスコンシン大学生物工学センター、WI53705、マディソン、ユニバーシティーアベニュー1710)を用いて測定される。
【0029】
核酸分子における突然変異について参照すると、「サイレント」変異とはヌクレオチド配列における一つ以上の塩基対が置換するものであるが、配列によってコード化されたポリペプチドのアミノ酸配列は置換しない。「保守的な」変異とは、核酸配列によってコード化されたポリペプチドの少なくとも一つのアミノ酸が同様の特性を有する別のアミノ酸と置換するような核酸のタンパク質コード領域において少なくとも一つのコドンを変異させているものである。保守的なアミノ酸置換の例としては、アラニン(ala),トレオニン(thr),システイン(cys)をセリン(ser)に置換した変異;アルギニン(arg)をリシン(lys)に置換した変異;アスパラギン(asn),ヒスチジン(his),リシン(lys)をグルタミン(gln)に置換した変異;アスパラギン(asn)をヒスチジン(his)に置換した変異;アスパラギン酸(asp),リシン(lys)をグルタミン酸(glu)に置換した変異;ヒスチジン(his),グルタミン(gln)をアスパラギン(asn)に置換した変異;グルタミン酸(glu)をアスパラギン酸(asp)に置換した変異;グリシン(gly)をプロリン(pro)に置換した変異;イソロイシン(ile),フェニルアラニン(phe),メチオニン(met),バリン(val)をロイシン(leu)に置換した変異;イソロイシン(ile),ロイシン(leu)をバリン(val)に置換した変異;ロイシン(leu),メチオニン(met),バリン(val)をイソロイシン(ile)に置換した変異;リシン(lys)をアリギニン(arg)に置換した変異;フェニルアラニン(phe)をメチオニン(met)に置換した変異;フェニルアラニン(phe),トリプトファン(trp)をチロシン(tyr)に置換した変異;セリン(ser)をトレオニン(thr)に置換した変異;チロシン(tyr)をトリプトファン(trp)に置換した変異;チロシン(tyr)をフェニルアラニン(phe)に置換した変異が挙げられる。
【0030】
ここで用いられているような、「ベクター」は、別の核酸と連結して、運搬可能な核酸分子のことを指す。好ましいベクターのある種類としてはエピゾームが挙げられ、すなわち、染色体外での複製が可能な核酸である。好適なベクターとは、自律増殖が可能であるもの及びベクターを連結している核酸の発現が可能であるものが挙げられる。操作可能なように連結する遺伝子の発現を指示することができるベクターを「発現ベクター」としてここに言及する。
【0031】
第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能上関係がある状態に置かれる時に、第1の核酸配列は第2の核酸配列と「操作可能に」連結する。例えば、プロモーターがコード配列の転写や発現に作用する場合、プロモーターはコード配列と操作可能に連結する。一般に、操作可能に連結される核酸配列は隣接し、そこではリーディングフレームにおいて二つのタンパク質のコード領域を結合する必要がある。
【0032】
例えば、組換えベクターのような、外来性の核酸を導入している細胞,組織,生物体は「形質転換」,「形質導入」や「遺伝子組換え」であると考えられる。「遺伝子組換え」や「形質転換」された細胞や生物体は、交差において親として「遺伝子組換え」された細胞や生物体等を用いる同系交配から生産される子孫を含み、細胞や生物体の子孫も含む。例えば、SIM2の遺伝子組換え生物体は、SIM2核酸を導入しているものである。
【0033】
「SIM2特異的抗体」という専門用語は、SIM2タンパク質に結合する抗体であり、SIM2タンパク質として同じ抗原決定因子を共有するもの以外に別の天然に生じるタンパク質と実質的に結合しないことを示す抗体を意味する。この専門用語は、抗体フラグメントばかりでなくポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む。
【0034】
ここで用いられている、「結合」,「結合する」,「相互作用する」は、試料で1分子が特定の第2分子を認識し、付着するということを意味するが、その試料で他の構造的に関係のない試料中に存在する分子に実質的に認識または付着しない。一般に、第2の分子と「特異的に結合する」第1の分子は、その第2分子に約105〜106モル/リットルより大きい結合親和性を有する。
【0035】
プローブや抗体に関して、「標識された」という専門用語は、プローブや抗体に検出可能な物質を結合させる(すなわち、物理化学的結合)ことによって直に標識化しているプローブや抗体を含むことを意図している。
【0036】
しかしながら、ここで説明されたものと同様や同等の方法及び材料を本発明の実施や実験で用いることができ、適切な方法及び材料を以下に説明する。ここで言及されたすべての出版物,特許出願,特許権,及びその他の参考文献は、完全に参考文献として組み込まれている。抵触する場合は、定義を含む本明細書は規制される。以下で論議される特定の実施例だけが説明されるが、これに限定されることを意図したものではない。
【0037】
発明の詳細な説明
本発明は、ガンと関連のある遺伝子発現に関する成分および方法を含む。下記に記載の好適な実施例は、これらの成分及び方法の適応を説明する。それでもなお、これらの実施例の説明から本発明の別の特徴を以下に示される説明書に基づいて作成及び/又は実施することが可能である。
【0038】
生物学的方法
通常の分子生物学技法を伴う方法をここに記載する。そのような分子生物学技法は一般に当業者に知られており、分子クローニングなどの手順専門書で詳細に記載される:実験マニュアル,第2版,vol. 1−3 Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; 分子生物学における最近のプロトコール,ed. Ausubel et al., Greene Publishing and Wiley−Interscience, New York, 1992(定期更新)。ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いる種々の技法は、例えば、Innis et al.,PCRのプロトコール:方法及び応用へのガイド,アカデミック出版局:サンディエゴ,1990に記述されている。その目的に合ったコンピュータープログラムを用いる等の既知の技法によって既知の配列からPCRプライマー対を得ることができる(例えば、プライマー, Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge, MA.)。本発明で、あるポリヌクレオチド配列を同定し増幅するのに用いられる逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法としては、エリックら(2000)In Vivo,14:172−182に記述されるように行った。核酸の化学合成法は、例えば、Beaucage and Carruthers (1981), Tetra. Letts. 22:1859−1862 及びMatteucci et al. (1981), J. Am. Chem. Soc. 103:3185に記載されている。核酸の化学合成は、例えば、市販のオリゴヌクレオチド自動合成機で行うことができる。免疫学的方法(例えば、抗原特異的抗体,免疫沈降,免疫ブロットの準備)は、例えば、免疫学における最近のプロトコール,編集者コーリガンら(1991),John Wiley and Sons, New Yorkと、免疫学的分析法,編集者マセイフ ら(1992),John Wiley and Sons, New Yorkに記載されている。遺伝子導入と遺伝子治療の従来の方法も本発明で用いることができる。例えば、遺伝子治療:原理と応用,編集者T.ブラッケンシュタイン(1999),Springer Verlag;遺伝子治療プロトコール(分子医学における方法),編集者P.D.ロビン(1997),ヒューマナ出版;ヒト遺伝子治療のためのレトロベクター,編集者C.P.ハドソン(1996),Springer Verlag参照。
【0039】
SIM2タンパク質をコード化する核酸
本発明で使用する好適な核酸分子としては、登録番号U80456Sとしてジェンバンクに寄託され、SEQ ID NO:1としてここに示される天然SIM2の長形型ポリヌクレオチド、及び登録番号U80457としてジェンバンクに寄託され、SEQ ID NO:2としてここに示される天然SIM2の短形型ポリヌクレオチドがある。本発明の種々の面で用いられる別の核酸は、SEQ ID NOs:3又は4のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする精製核酸(ポリヌクレオチド)を含む。天然SIM2遺伝子は、元来ヒト胎児腎臓cDNAライブラリーからクローニングされたので、本発明のポリペプチドをコード化する核酸分子は、ヒト胎児腎臓cDNAライブラリーやここで記述される従来のクローニング法によるヒト胎児腎臓組織から得ることができる。
【0040】
本発明で利用される核酸分子は、RNAの形状やDNAの形状(例えば、cDNA,ゲノムDNA,合成DNA)であってもよい。このDNAは二本鎖や一本鎖であってもよく、一本鎖ならば暗号(有意)鎖や非暗号(反意)鎖であってもよい。天然SIM2タンパク質をコード化するコード配列は、SEQ ID NOs:1又は2のヌクレオチド配列と同一であってもよく、又はそれが遺伝子コードの重複や縮重の結果として異なるコード配列であってもよく、SEQ ID NOs:1又は2のポリヌクレオチドのような同じポリペプチドをコード化する。本発明内の別の核酸分子は、例えば、天然SIM2タンパク質のフラグメント,類似物,派生物をコード化するもののような種々の天然SIM2遺伝子である。そのような変異体は、例えば、天然SIM2遺伝子の自然に生じる対立形質変異体や,天然SIM2遺伝子の相同体や,天然SIM2遺伝子の自然に生じない変異体であってもよい。これらの変異体は、一つ以上の塩基において天然SIM2遺伝子と異なるヌクレオチド配列を持つ。例えば、このような変異体のヌクレオチド配列は、天然SIM2遺伝子の一つ以上のヌクレオチドの欠失,付加,置換を特徴とすることができる。核酸の挿入は、好ましくは約1〜10の連続したヌクレオチドであり、欠失は、好ましくは約1〜30の連続したヌクレオチドである。
【0041】
別の用途において、コード化したポリペプチドで決して変化しないヌクレオチドを置換させることによって、構造において本質的な変化を示す変異体SIM2タンパク質を作成することができる。このようなヌクレオチドの置換の例としては、(a)ポリペプチド骨格の構造;(b)ポリペプチドの電荷や疎水性;(c)アミノ酸側鎖の大部分において変化させるものである。タンパク質特性において、最大の変化をもたらすと一般に期待されるヌクレオチドの置換は、コドンで革新的な変化を起こすものである。タンパク質構造における多数の変化をもたらす可能性の高いコドン変化の例としては、(a)疎水性残基(例えば、ロイシン,イソロイシン,フェニルアラニン,バリン,アラニン)の代わりに(又は、疎水性残基よって)親水性残基(例えば、セリンやトレオニン)に置換する;(b)任意の別の残基の代わりに(又は、任意の別の残基よって)システインやプロリンに置換する;(c)電気的陰性の残基(例えば、グルタミンやアスパラギン)の代わりに(又は、電気的陰性の残基によって)電気的陽性の側鎖を有する残基(例えば、リシン,アルギニン,ヒスチジン)に置換する;(d)側鎖を一つも持たないもの(例えば、グリシン)の代わりに(又は、側鎖を一つも持たないものによって)大きな側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)に置換するものがある。
【0042】
本発明で天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsの自然に発生する対立形質変異体は、天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsと少なくとも75%(例えば、76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,99%)の同一配列を有し、天然SIM2タンパク質と類似の構造を有するポリペプチドをコード化するヒト組織から分離された核酸である。本発明で天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsの相同体は、天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsと少なくとも75%(例えば、76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,99%)の同一配列を有し、天然SIM2タンパク質と似た構造を有するポリペプチドをコード化する別の種から分離された核酸である。公有の核酸データーベース及び/又は専有の核酸データーベースは、天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsと高パーセント(例えば、70,80,90%又はそれ以上)の配列を有する同一の別の核酸分子を調べることができる。
【0043】
不自然に発生するSIM2遺伝子やmRNAの変異体は、自然に発生せず(例えば、ヒトの手によって作られる)、天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsと少なくとも75%(例えば、76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,99%)の同一配列を有し、天然SIM2タンパク質と似た構造を有するポリペプチドをコード化する核酸である。不自然に発生するSIM2遺伝子変異体の例としては、SIM2タンパク質のフラグメントをコード化するもの,ストリンジェントな条件下で天然SIM2遺伝子や天然SIM2遺伝子の補体とハイブリッド形成するもの,天然SIM2遺伝子やその補体と少なくとも65%の同一配列を共有するもの,及びSIM2融合タンパク質をコード化するものである。
【0044】
本発明の天然SIM2タンパク質のフラグメントをコード化する核酸は、例えば、2,5,10,25,50,100,150,200,250,300,又はそれ以上の天然SIM2タンパク質のアミノ酸残基をコード化するものである。天然SIM2タンパク質のフラグメントをコード化する核酸をコード化したり又はその核酸とハイブリッド形成する短いオリゴヌクレオチド(例えば、6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,30,50,100,125,150,200塩基対の長さ)を、プローブ,プライマー,アンチセンス分子として用いることができる。天然SIM2タンパク質のフラグメントをコード化する核酸をコード化したり又はその核酸とハイブリッド形成する長いポリヌクレオチド(例えば、300,400,500,600,700,800,900,1000,1100,1200,1300,1400,1500,1600,1700,1800塩基対)を、本発明の変形例で用いることもできる。完全長の天然SIM2遺伝子,SIM2mRNAやcDNA,または前記の変異体の酵素的消化(例えば、制限酵素を用いて)や化学的分解によって、天然SIM2タンパク質のフラグメントをコード化する核酸を作成することができる。
【0045】
ストリンジェントな条件下で、SEQ ID NOs:1又は2の核酸やSEQ ID NOs:1又は2の補体とハイブリッド形成する核酸を本発明において用いることもできる。例えば、そのような核酸は、低ストリンジェンシーの条件,中ストリンジェンシーの条件,高ストリンジェンシーの条件下で、SEQ ID NOs:1又は2やSEQ ID NOs:1又は2の補体とハイブリッド形成するものであってもよく、それらは本発明の範囲内である。そのような好適な核酸は、SEQ ID NOs:1又は2の全て又は一部の補体であるヌクレオチド配列を有するものである。本発明内の天然SIM2遺伝子の別の変異体は、SEQ ID NOs:1又は2やSEQ ID NOs:1又は2の補体と少なくとも65%(例えば、65,70,75,80,85,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99%)の同一配列を共有するポリヌクレオチドである。
【0046】
ストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する核酸や、SEQ ID NOs:1又は2やSEQ ID NOs:1又は2の補体と少なくとも65%の同一配列を共有する核酸は、例えば、天然SIM2遺伝子における突然変異体の作成や,このような核酸を発現する生物体(例えば、対立形質変異体)から分離することによって当業者は既知の方法によって得ることができる。
【0047】
SIM2融合タンパク質をコードする核酸分子も本発明の範囲内である。SIM2融合タンパク質を発現する作成物(例えば、発現ベクター)を準備することによって、適切な宿主に作成物を導入した時、このような核酸を作成することができる。例えば、このような作成物は、適切な発現系においてこの作成物の発現が融合タンパク質をもたらすような別のタンパク質をコード化する第2のポリヌクレオチドと、フレームに融合するSIM2タンパク質をコード化する第1のポリヌクレオチドとを結合させることによって作成できる。
【0048】
本発明の核酸分子は、例えば、分子の安定性,ハイブリダイゼーションなどを改善するために塩基の一部分,糖の一部分,リン酸骨格を修飾してもよい。例えば、本発明の核酸分子は、例えば、ペプチド(例えば、生体内の標的宿主細胞の受容体),細胞膜を横切る輸送を促進する薬剤(例えば、リスティンガーら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:648−652;PCT公開番号WO88/09810,公開日12.5,1998参照),ハイブリダイゼーションを起こす分割剤(例えば、コールら(1998)Bio Techniques 6:958−976参照),挿入剤(例えば、ゾーン(1998)Pharm. Res. 5:539−549参照)などのグループを活用してもよい。
【0049】
天然SIM2遺伝子のヌクレオチド配列及び天然SIM2タンパク質のアミノ酸配列を用いることを今まで報告したが、当業者は、例えば、標準核酸の突然変異誘発技法や化学合成によって、それらのヌクレオチド配列で少数の変異体を有する核酸分子を作り出すことができる。変異体SIM2核酸分子は、変異体SIM2タンパク質を生成するために発現させることができる。
【0050】
アンチセンス,リボザイム,三重技法
本発明の別の特徴としては、SIM2の発現を抑制する精製されたアンチセンス核酸の使用に関する。本発明内のアンチセンス核酸分子は、SIM2タンパク質の発現を抑制する形、例えば、転写及び/又は翻訳を抑制することによって、SIM2タンパク質をコード化する細胞のmRNA及び/又はゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリッド形成する(例えば、結合する)ものである。この結合とは、従来の塩基対相補性によるものや、例えば、DNA二本鎖と結合する場合、二重らせんの大きな溝に特異的な相互作用を介すものであってもよい。
【0051】
アンチセンス作成物を送達してもよく、例えば、発現プラスミドが細胞内で転写したとき、SIM2タンパク質をコード化するこの細胞のmRNAの少なくとも他と異なる一部と相補性のあるRNAを作成する。あるいは、アンチセンス作成物は、生体外で生成するオリゴヌクレオチドプローブの形をとることができ、SIM2タンパク質発現細胞にアンチセンス作成物を導入したとき、SIM2タンパク質をコード化するmRNA及び/又はゲノム配列とハイブリッド形成することによってSIM2タンパク質発現を抑制する。このようなオリゴヌクレオチドプローブは、例えば、エキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼなどの内因性ヌクレアーゼに抵抗性のあるオリゴヌクレオチドを好ましくは修飾し、その結果生体内で安定である。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いる典型的な核酸分子は、ホスホラミダイト,ホスホチオネート及びメチルホスホネートのDNAの類似物(例えば、U.S. Pat. Nos. 5,176,996;5,264,564;5,256,775参照)である。さらに、アンチセンス治療で有用なオリゴマーを作成する一般的な方法は、例えば、Van der Korl et al.(1988)Biotechniques 6:958−976;Stein et al. (1988) Cancer Res. 48:2659−2668で検討されている。アンチセンスDNAについては、翻訳開始部位から派生するオリゴデオキシリボヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド配列をコード化するSIM2タンパク質の−10と+10領域の間が好ましい。
【0052】
アンチセンスアプローチは、SIM2mRNAと相補性のあるオリゴヌクレオチド(DNAかRNAのどちらか一方)のデザインに関係している。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、SIM2mRNA転写に結合し、翻訳を阻止するであろう。しかしながら好ましくは、絶対的な相補性を必要としない。ハイブリッド形成能力は、相補性の程度とアンチセンス核酸の長さの双方に依存するであろう。通常、ハイブリッド形成する長い核酸は、RNAに多数の不適性塩基を含み、なお、安定な二本鎖や三本鎖を形成してもよい。当業者は、ハイブリッド形成された複合体の融点を測定する一般的な方法によって不適性の許容程度を確認することができる。メッセージの5’末端、例えば、AUG開始コドンを含むまでの5’非翻訳配列と相補性のあるオリゴヌクレオチドは、翻訳を妨げるのにより効率的に作用するであろう。また一方、mRNAsの3’非翻訳配列と相補的な配列は、同様にmRNAsの翻訳を妨げるのに有効であることが示されている(Wagner, R. (1994) Nature 372:333)。したがって、SIM2遺伝子の非コード領域で、5’か3’のいずれか一方の非翻訳配列と相補的なオリゴヌクレオチドを、内因性のSIM2mRNAの翻訳を阻害するためにアンチセンスアプローチで用いることができた。mRNAの5’非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、AUG開始コドンの補体を好ましくは含むべきである。しかしながら、mRNAコード領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、通常翻訳に有効な阻害剤が少ないにもかかわらず、本発明でこれらを用いることができた。SIM2mRNAの5’,3’やコード領域とハイブリッド形成するようにデザインされるであろうが、好ましいアンチセンス核酸は長さが約100未満のヌクレオチドである(例えば、約30,25,20,18未満)。通常、有効であるために、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが18かそれ以上のヌクレオチドであるべきである。ここに、SEQ ID NO:11として典型的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを示す。
【0053】
特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドでは、遺伝子発現を抑制するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの能力を評価するために、試験管内の研究によって効果を調べることができる。このような好適な研究は、(1)オリゴヌクレオチドのアンチセンス遺伝子抑制と非特異的な生物学的影響との間を区別するためにコントロール(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドと同じ大きさの非アンチセンスオリゴヌクレオチド)を利用する,(2)標的RNAやタンパク質のレベルを内部標準RNAやタンパク質のレベルと比較する。
【0054】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドには、少なくとも一つの修飾塩基や修飾糖の一部分が含まれていてもよい。典型的な修飾塩基は、5−フルオロウラシル,5−ブロモウラシル,5−クロロウラシル,5−ヨードウラシル,ヒポキサンチン,キサンチン,4−アセチルシトシン,5−(カルボキシハイドロキシエチル)ウラシル,5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン,5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル,ジヒドロウラシル,ベーター−D−ガラクトシルクエオシン,イノシン,N6−イソペンテニルアデニン,1−メチルグアニン,1−メチルイノシン,2,2−ジメチルグアニン,2−メチルアデニン,2−メチルグアニン,3−メチルシトシン,5−メチルシトシン,N6−アデニン,7−メチルグアニン,5−メチルアミノメチルウラシル,5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル,ベーター−D−マンノシルクエオシン,5’−メトキシカルボキシメチルウラシル,5−メトキシウラシル,2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン,ウラシル−5−オキシ酢酸(V),偽ウラシル,クエオシン,2−チオサイトシン,5−メチル−2−チオウラシル,2−チオウラシル,4−チオウラシル,5−メチルウラシル,ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル,ウラシル−5−オキシ酢酸(V),5−メチル−2−チオウラシル,3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル,(acp3)w,2,6−ジアミノプリンを含む。典型的な修飾糖の一部分は、アラビノース,2−フルオロアラビノース,キシロース,ヘキソースを含む。ある実施例において、本発明のアンチセンスヌクレオチドは、例えば、ホスホロチオネート,ホスホロジチオネート,ホスホラミドチオネート,ホスホラミダイト,ホスホジアミダイト,メチルホスホネート,アルキルホスホトリエステル,ホルムアセタール又はその類似物などの少なくとも一つ修飾したリン酸骨格を含んでもよい。
【0055】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、アルファー−アノマーオリゴヌクレオチドであってもよい。Gautier et al. (1987) Nucl. Acids Res. 15:6625−6641参照。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’−0−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al. (1987) Nucl. Acids Res. 15:6131−6148)やキメラのRNA−DNA類似物(Inoue et al. (1987) FEBS Lett. 215:327−330)であってもよい。
【0056】
例えば、DNA自動合成機の使用などその技術で既知の一般的な方法によって、本発明のオリゴヌクレオチドを合成してもよい。ホスホロチオネートオリゴヌクレオチドは、Stein et al. (1988) Nucl. Acids Res. 16:3209の方法によって合成可能である。メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、制御された孔のガラスポリマー担体を用いることによって調製することができる(Sarin et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448−7451)。
【0057】
本発明は、SIM2を発現する細胞の中に上記で述べた一つ以上の核酸分子を送達する方法も提供する。細胞の中にアンチセンスDNAやRNAを送達するための多くの方法が開発されている。例えば、アンチセンス分子は、電気穿孔法,リポゾーム形質移入,塩化カルシウム形質移入や遺伝子銃の使用によって細胞の中に直に導入することができる。望ましい細胞(例えば、受容体や標的細胞表面上に発現する抗原に特異的に結合するペプチドや抗体と結合するアンチセンスヌクレオチド)を標的とするように計画された修飾核酸分子を用いてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドの高い細胞内濃度に達するために(内因性のmRNA上で翻訳を抑制する必要がある場合)、好ましいアプローチは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強いプロモーター(例えば、CMVプロモーター)の制御下に置かれる組換えDNA作成物を利用する。
【0058】
SIM2mRNA転写を触媒的に切断するようにデザインされたリボザイム分子を、SIM2mRNAの翻訳及びSIM2タンパク質の発現を抑制するために用いることもできる(例えば、Wright and Kearney (2001) Cancer Invest. 19:495;Lewin and Hauswirth (2001) Trends Mol. Med. 7:221;Sarver et al.(1990) Science 247:1222−1225 and U.S. Pat. No. 5,093,246参照)。一例として、標的mRNAが以下の共通の配列:5’−UG−3’を持ちさえすれば、標的mRNAと相補的な塩基対を形成するフランキング領域によって決められる位置でmRNAを切断するハンマーヘッドリボザイムを用いてもよい。例えば、Haseloff and Gerlach (1998) Nature 334:585−591参照。効率を上げ、非機能的mRNA転写の細胞内蓄積を最小限にするため、リボザイムは切断認識部位が標的SIM2mRNAの5’末端の近くに位置するように設計すべきである。本発明のリボザイムを下記に記述するようなベクターを用いて細胞に送達することができる。
【0059】
細胞内のSIM2遺伝子発現を減少させるために別の方法を用いることもできる。例えば、標的とされた相同的組換えを用いてSIM2遺伝子やプロモーターを不活化したり「ノッキングアウト」することによって、SIM2遺伝子発現を減少させることができる。例えば、Kempin et al. (1997) Nature 389:802;Smithies et al. (1985) Nature 317:230−234;Thomas and Capecchi (1987) Cell 51:503−512;Thompson et al. (1989) Cell 5:313−321参照。例えば、生体内でSIM2タンパク質を発現する細胞を移入するために、選択マーカー及び/又は非選択マーカーを用いて又は用いずに、内因性SIM2遺伝子(SIM2遺伝子のコード領域か制御領域のどちらか一方)に対して側面にDNA相同体が並べられた突然変異体である非機能的SIM2遺伝子変異体(又は、完全に関連のないDNA配列)を用いることができる。
【0060】
SIM2遺伝子の制御領域(例えば、SIM2プロモーター及び/又はエンハンサー)に、標的細胞でSIM2遺伝子の転写を防止する三重らせん構造を形成するデオキシリボヌクレオチド配列補体を標的に定めることによってSIM2遺伝子発現を減少させることもできる。一般に、Helene, C. (1991) Anticancer Drug Des. 6 (6) :569−84;Helene, C., et al. (1992) Ann. N.Y. Acad. Sci. 660:27−36;Maher, L.J. (1992) Bioassays 14 (12) :807−15参照。この技法で用いられる核酸分子は好ましくは一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチドからなる。このヌクレオチドの塩基組成は、ホッグスティーン(Hoogsteen)塩基対法則によって三重らせん構造を促進するように選択されるべきであり、二本鎖の一本の鎖に存在するプリンかピリミジンのどちらか一方のかなりの伸展を必要とする。ヌクレオチド配列はピリミジン塩基であってもよく、生じる二重らせんの3本の関連する鎖に渡って、TAT及びCGCになるだろう。ピリミジンの多い分子は、二本鎖の一本の鎖と平行方向に二本鎖の一本の鎖のプリンの多い領域と塩基相補性を備える。加えて、核酸分子は、プリンが多い方を選んでもよく、例えば、G残基の伸展を含む。これらの分子は、GC対で豊富なDNA二本鎖を持つ三重らせんを形成するであろう、そこで多くのプリン残基は標的とされる二本鎖の一本の鎖上に位置し、三重鎖における三本の鎖に渡ってCGCとなる。三重らせん構造を標的とすることができる可能性のある配列は、「スイッチバック」と呼ばれる核酸分子をつくることによって増やすことができる。プリンかピリミジンのどちらか一方のかなりの伸展が二本鎖の一本鎖上に存在するような必要を排除しながら、スイッチバック分子は二本鎖の第1の一本鎖と塩基対をつくり、次いでもう一本の鎖と塩基対をつくるので、交互の5’−3’,3’−5’の様態で合成される。
【0061】
本発明のアンチセンスRNA及びDNA,リボザイム,三重らせん分子をDNA分子及びRNA分子の合成のために、その技術で知られる方法によって調製してもよい。これは、例えば、固相ホスホラミド化学合成などのその技術でよく知られるオリゴデオキシリボヌクレオチド及びオリゴリボヌクレオチドを化学的に合成する技法を含む。アンチセンスRNA分子をコード化するDNA配列の転写を生体外及び生体内で、RNA分子を生成してよい。適切なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込む幅広い種々のベクターの中にこのようなDNA配列を組み込ませてもよい。あるいは、使用されるプロモーターに構成的に又は誘導的に依存するアンチセンスRNAを合成するアンチセンスcDNA作成物を、培養細胞株の中に安定して導入することができる。
【0062】
プローブ及びプライマー
本発明は、オリゴヌクレオチドプローブ(すなわち、例えば、放射性同位元素,リガンド,化学発光剤や酵素などの検出可能な標識やレポータ分子と結合する単離された核酸分子)及びオリゴヌクレオチド(すなわち、プライマーと標的DNA鎖との間にハイブリッド形成するため、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的な標的DNA鎖とアニールすることができる単離された核酸分子、その後、例えば、DNAポリメラーゼなどのポリメラーゼによって標的DNA鎖を次々と伸展させる)も提供する。プライマー対は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)や別の従来の核酸増幅方法によって、核酸配列の増幅を行うことができる。本発明のプローブ及びプライマーは、通常15ヌクレオチドやそれ以上の長さがあり、好ましくは20ヌクレオチドやそれ以上、さらに好ましくは25ヌクレオチド、そして最も好ましくは30ヌクレオチドやそれ以上である。好ましいプローブやプライマーは、高ストリンジェンシーの条件下で、天然のSIM2遺伝子(又はcDNAやmRNA)配列(例えば、SEQ ID NOs:1又は2)とハイブリッド形成するものであり、少なくとも中ストリンジェンシーの条件下でSIM2遺伝子相同体とハイブリッド形成するものである。好ましくは、本発明のプローブ及びプライマーは、天然のSIM2核酸配列と完全に同一の配列をもつ。しかしながら、ストリンジェントな条件下で、天然のSIM2遺伝子配列とハイブリッド形成する能力を維持するこの配列と異なるプローブは、従来の方法によって作成してもよく、本発明で用いることができる。例えば、天然のSIM2遺伝子やcDNAを再クローニング及び配列決定することによって、従来の方法により開示されたSIM2遺伝子配列を確認する(及び、修正のために必要ならば)ために、ここで開示されるSIM2遺伝子配列に基づくプローブ及びプライマーを用いることができる。本発明で使用する特に好ましいプライマーをSEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:8として示す。本発明で使用する特に好ましいオリゴヌクレオチドプローブをSEQ ID NO:9として示す。
【0063】
SIM2タンパク質
別の特徴において、本発明は、本発明の核酸によってコード化される精製されたSIM2タンパク質を利用する。SIM2の好適な形状は、SEQ ID NOs:3又は4の推定されるアミノ酸配列をもつ精製された天然のSIM2タンパク質である。例えば、天然SIM2タンパク質のフラグメント,類似物及び派生物などの種々の天然SIM2タンパク質も本発明の範囲内である。このような変異体は、例えば、天然SIM2遺伝子の自然に生じる対立形質変異体によってコード化されるポリペプチド,天然SIM2遺伝子の別の接合形状によってコード化されるポリペプチド,天然SIM2遺伝子の相同体によってコード化されるポリペプチド,及び天然SIM2遺伝子の自然に生じる変異体によってコード化されるポリペプチドを含む。
【0064】
SIM2タンパク質変異体は、一つ以上のアミノ酸において天然のSIM2タンパク質と異なるペプチド配列を有する。このような変異体のペプチド配列は、天然SIM2ポリペプチドの一つ以上のアミノ酸の欠失,付加,置換を示すことができる。アミノ酸挿入は好ましくは約1〜4の連続したアミノ酸であり、欠失は好ましくは約1〜10の連続アミノ酸である。ある適用において、変異体SIM2タンパク質は、天然SIM2タンパク質の機能的な活性(例えば、ガンとの関連や転写を調節する能力)を実質的に維持する。別の適用については、変異体SIM2タンパク質は、SIM2タンパク質の機能的な活性において著しい減少がないか又は著しい減少を示す。SIM2タンパク質の機能的な活性を保つようにデザインされた場合、サイレント変異や保守的な変異を示す本発明の核酸分子を発現させることによって好適なSIM2タンパク質変異体を作成することができる。機能的な活性において、実質的な変化を有する変異体SIM2タンパク質を、決して保守的な変異を示さない本発明内の核酸分子を発現することによって作成することができる。
【0065】
一つ以上の特有のモチーフ及び/又はドメイン、あるいは任意のサイズ例えば、長さが少なくとも5,10,25,50,75,100,125,150,175,200,250,300,及び350アミノ酸と対応するSIM2タンパク質フラグメントは、本発明の範囲内である。SIM2タンパク質の単離されたペプチジル部は、そのようなペプチドをコード化する核酸の対応するフラグメントから組換えて生成されるペプチドをスクリーニングすることによって得ることができる。加えて、例えば、従来のメリーフィールド(Merrifield)固相f−Moc化学やt−Boc化学などのその技術で既知の技法を用いてフラグメントを化学的に合成できる。例えば、本発明のSIM2タンパク質は、フラグメントの重複のない望まれた長さのフラグメントを任意に分け、好ましくは望まれた長さの重複するフラグメントに分けてもよい。このフラグメントは、天然のSIM2タンパク質の作動剤か拮抗剤のどちらか一方として機能することができるペプチジルフラグメントを同定するために生成(組換えて、あるいは化学的な合成によって)し、検査することができる。
【0066】
本発明の別の特徴は、SIM2タンパク質の組換え形成に関する。天然のSIM2タンパク質に加えて、本発明で望まれる組換えポリペプチドは、SEQ ID NOs:1又は2の核酸配列で少なくとも85%の配列同一性(例えば、85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,100%)をもつ核酸によってコード化される。好適な実施例において、変異体SIM2タンパク質は、天然SIM2タンパク質の一つ以上の機能的活性をもつ。
【0067】
その技術で知られる種々の技法によって、SIM2タンパク質変異体を生成することができる。突然変異誘発によって、例えば、分離した点突然変異を導入することによって、又は切断することによってSIM2タンパク質変異体を作成することができる。突然変異は、実質上同じか単に天然SIM2タンパク質の機能的活性の部分重合をもつSIM2タンパク質変異体を起こすことができる。あるいは、例えば、SIM2タンパク質と相互に作用する別の分子と競争的に結合することによって、タンパク質の自然に起こる形状の機能を阻害することができるタンパク質の反対の形状を作り出すことができる。加えて、一つ以上のSIM2の機能的活性を構成的に発現するタンパク質の拮抗的な形状を作り出すことができる。引き起こすことのできるSIM2タンパク質の別の変異体は、例えば、プロテアーゼ標的配列を変える突然変異のため、タンパク質分解に抵抗力のあるものを含む。ペプチドのアミノ酸配列における変化が天然SIM2タンパク質の一つ以上の機能的活性をもつSIM2タンパク質変異体に帰着するかどうかは、天然SIM2タンパク質の機能的活性に対する変異体を検査することによって容易に決定することができる。
【0068】
別の例として、変性オリゴヌクレオチド配列からSIM2タンパク質変異体を作成することができる。変性遺伝子配列の化学合成はDNA自動合成機で行うことができ、その後合成遺伝子を適した発現ベクターの中に連結する。遺伝子の変性セットの目的は、一つの混合物で潜在的なSIM2タンパク質配列の望まれたセットをコード化する配列の全てを提供することである。変性オリゴヌクレオチドの合成は、その技術でよく知られている(例えば、Narang, SA(1983)Tetrahedron 39:3;Itakura et al.(1981)Rcombinant DNA, Proc 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, ed. AG Walton, Amsterdam:Elsevier pp 273−289;Itakura et al.(1984)Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakura et al.(1984)Science 198:1056;Ike et al.(1983)Nucleic Acid Res. 11:477参照)。このような技法は、別のタンパク質の有向展開で使用されている(例えば、Scott et al.(1990)Science 249:386−390;Roberts et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:2429−2433;Devlin et al. (1990) Science 249:404−406;Cwirla et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378−6382;U.S. Pat. Nos. 5,223,409;5,198,346;5,096,815参照)。
【0069】
同様に、コード配列フラグメントのライブラリーは、一つ以上の天然SIM2タンパク質の機能的活性を有するフラグメントのスクリーニングと後の選択でSIM2タンパク質フラグメントの多彩な個体群を発生させるために、SIM2遺伝子クローンを提供することができる。種々の技法は、化学合成を含むそのようなライブラリーを作成するためその技術で知られている。ある実施例において、コード配列フラグメントのライブラリーは、(i)1分子当たり約1回だけニッキングが起こる条件下でヌクレアーゼを用いてSIM2遺伝子コード配列の二本鎖PCRフラブメントを処理する;(ii)この二本鎖DNAを変性させる;(iii)異なるニックの産物からセンス/アンチセンス対を含有できる二本鎖DNAを形成するためにこのDNAを再生する;(iv)S1ヌクレアーゼで処理することによって再編成された二本鎖から一本鎖部分を除去する;(v)発現ベクターの中にその結果生じるフラグメントライブラリーを連結させることによって作成することができる。この典型的な方法によって、発現ライブラリーは、N末端,C末端及び種々のサイズの内部フラグメントをコード化することで得られる。
【0070】
点突然変異や切断によって作られるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするために、及びある特性を有する遺伝子産物に関するcDNAライブラリーをスクリーニングするために広範囲の技法がその技術で知られている。このような技法は、SIM2遺伝子変異体のコンビナトリアル変異誘発によって起こる遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングを行うのに通常適しているであろう。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするのに最も広く用いられている技法は、複製可能な発現ベクターの中に遺伝子ライブラリーをクローニングし、その結果生じるベクターのライブラリーと適した細胞を形質転換し、望まれる活性の検出が検出された遺伝子産物をコード化するベクターの比較的簡単な分離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現することを含む。
【0071】
コンビナトリアル変異誘発は、例えば、1026分子のオーダーで変異タンパク質の非常に大きなライブラリーを生成する可能性を有する。多くのタンパク質変異体を選別するために、ランダムなライブラリーで非機能的なタンパク質の非常に高い割合を避けることを可能にし、機能的なタンパク質の頻度を容易に増加させる(従って、複雑さを減少させることは、配列スペースの有用なサンプリングを得るのに必須である)技法を用いることができる。例えば、適切な選択やスクリーニング方法が用いられる場合、ライブラリーで機能的な変異体の頻度を増加させるアルゴリズムである帰納的集団変異誘発(REM)を用いてもよい。Arkin and Yourvan(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7811−7815;Yourvan et al.(1992)Parallel Problem Solving from Nature, 2., In Maenner and Manderick, eds., Elsevier Publishing Co., Amsterdam, pp 401−410;Delgrave et al.(1993)Protein Engineering 6(3):327−331。
【0072】
本発明は、天然SIM2タンパク質が相互作用する別のタンパク質や分子とSIM2タンパク質との結合を切ることができる模倣体、例えば、ペプチド剤や非ペプチド剤を生成するSIM2タンパク質の低減も提供する。したがって、例えば、SIM2タンパク質の上流(例えば、SIM2機能的活性の活性化因子や抑制因子)で機能できる別のタンパク質とSIM2タンパク質との結合、又はSIM2タンパク質の下流で機能できるタンパク質や核酸とSIM2タンパク質との結合、及びそのような分子がSIM2タンパク質によってプラスやマイナスに制御されるかどうかに関わる分子間相互作用に関係するSIM2タンパク質の決定因子を染色体上に位置づけるためにここに説明される変異誘発性技法を用いることもできる。分子認識に関与するSIM2タンパク質の重要な残基を説明するために、例えば、SIM2タンパク質や、SIM2タンパク質の上流や下流の別の成分を決定でき、SIM2タンパク質とその成分との結合を競合的に阻害するSIM2タンパク質由来のペプチド模倣体を生成するのに用いることができる。別の細胞外タンパク質との結合に関与するSIM2タンパク質のアミノ酸残基を解読するためにスクリーニング変異誘発を用いることによって、天然SIM2タンパク質のその残基を模倣するペプチド模倣化合物を生成することができる。その結果、SIM2タンパク質の通常の機能を阻害するためにそのような模倣体を用いてもよい。例えば、そのような残基の非加水分解性のペプチド類似体は、ベンゾジアゼピン(例えば、フレディンガーら、ペプチド:化学と生物、編集者G.R.マーシャル、エスコム出版社:ライデン、オランダ、1988を参照),アゼピン(例えば、ハフマンら、ペプチド:化学と生物、編集者G.R.マーシャル、エスコム出版社:ライデン、オランダ、1988を参照),置換されたガンマーラクタム環(ガーベイら、ペプチド:化学と生物、編集者G.R.マーシャル、エスコム出版社:ライデン、オランダ、1988),ケト−メチレン偽ペプチド(エベンソンら(1986)J. Med. Chem. 29:295、そしてエベンソンら、ペプチド:構造と機能、「第9回アメリカペプチドシンポジュームの公報」ピースケミカル社、ロックランド、第3版、1985),ベーター−ターンジペプチド核(長井ら(1985) Tetrahedron Lett 26:647、そして佐藤ら(1986) J. Chem. Soc. Parkin. Trans 1:1231),そしてベーター−アミノアルコール(ゴドンら(1985) Biochem. Biophys. Res. Commun. 134:71)を用いて生成することができる。別の化学的成分、例えば、グリコシル基,脂質,リン酸エステル,アセチル基及びそのようなものと共有結合や凝集結合を形成することによって、SIM2タンパク質誘導体を作成するためにSIM2タンパク質を化学的に修飾してもよい。SIM2タンパク質の共有結合誘導体は、そのタンパク質又はポリペプチドのN末端やC末端のアミノ酸側鎖上にある官能基に化学的な成分を結合させることによって作成することができる。
【0073】
さらに、本発明は客体SIM2タンパク質の製造方法に関する。例えば、ペプチドの発現が起こるように、客体ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列の発現を指示する核酸ベクターが形質導入された宿主を適当な条件下で培養することができる。この細胞を収集し、溶解し、そのタンパク質を単離することができる。イオン交換クロマトグラフィー,ゲルろ過クロマトグラフィー,限外ろ過,電気泳動とそのようなタンパク質に特異的な抗体を用いる免疫親和性精製を含むタンパク質を精製するために、その技術で既知の技法を用いて宿主から組換えSIM2タンパク質を単離することができる。
【0074】
例えば、細胞内でSIM2タンパク質を発現した後、免疫親和性クロマトグラフィーを用いて単離することができる。例えば、抗SIM2抗体(例えば、下記に説明されるように生成される)をカラムクロマトグラフィーマトリックスに固定化することができ、そのマトリックスを標準的な方法(例えば、オースベルら、supraを参照)によって細胞溶菌液からSIM2タンパク質を精製する免疫親和性クロマトグラフィーに用いることができる。免疫親和性クロマトグラフィー後、別の標準的な方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(例えば、フィッシャー、生物化学と分子生物学における実験方法、編集者ワークそしてバードン、エルゼビア、1980を参照)によって、さらにSIM2タンパク質を精製することができる。別の実施例において、その精製を容易にする親和性タグ(例えば、GST)を含む融合タンパク質としてSIM2タンパク質を発現する。
【0075】
SIM2タンパク質に特異的な抗体
本発明で有用な抗体を増加させるためにSIM2タンパク質(又は免疫原性フラグメントやその類似体)を用いることができる。このようなタンパク質は、上記に記述したような組換え技法や合成によって生成することができる。通常、SIM2タンパク質は、例えば、オースベルら、supraに記載されるようなKLHなどの担体タンパク質に結合させ、アジュバントと混合させ、宿主哺乳動物に投与することができる。その後、その動物で生成される抗体をペプチド抗原親和性クロマトグラフィーによって精製することができる。特に、SIM2タンパク質やその抗原性フラグメントを注入することにより種々の宿主動物に免疫を与えることができる。通常用いられる宿主動物は、ウサギ,ネズミ,モルモットとラットを含む。免疫反応を増強するのに用いることができる種々のアジュバントは、宿主の種に依存し、フロイントのアジュバント(完全及び不完全),ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム),表面活性物質(例えば、リゾレチン,プルロニックポリオール,ポリアニオン,ペプチド,油性エマルジョン,キーホールリンペットヘモシニアン,ジニトロフェノール)を含む。別の潜在的に有用なアジュバントはBCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パーバムを含む。
【0076】
ポリクローナル抗体は、免疫が与えられた動物の血清中に含まれる抗体分子の異種の集合体である。したがって、本発明の抗体はポリクローナル抗体、さらにモノクローナル抗体,単鎖抗体,Fabフラグメント,F(ab’)2フラグメント,Fab発現ライブラリーを用いて生成される分子を含む。特異的抗原に対する抗体の単一の集合体であるモノクローナル抗体は、上記に記載のSIM2タンパク質及び標準的なハイブリドーマ技術(例えば、コーラーら(1975)Nature 256:495、コーラーら(1976)Eur. J. Immunol. 6:511、コーラーら(1976)Eur. J. Immunol. 6:292、ハンマーリングら(1981)「モノクローナル抗体とT細胞ハイブリドーマ」エルスビア、ニューヨーク、オースベルらsupraを参照)を用いて作成することができる。特に、例えば、コーラーら, Nature 256:495, 1975と米国特許第4,376,110号;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(コスバーら(1983)Immunology Tody 4:72、コールら(1983)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026)及びEBV−ハイブリドーマ技術(コールら(1983)モノクローナル抗体と癌治療、アラン アール. リス、インク. 77−96ページ)に記載されるような培養で連続的な細胞株による抗体分子の生産を提供するある技法によってモノクローナル抗体を得ることができる。そのような抗体は、IgG,IgM,IgE,IgA,IgDとそのサブクラスを含む任意の免疫グロブリン類であってもよい。本発明のmAbを生産するハイブリドーマは、生体内又は生体外で培養可能である。生体内で高力価のmAbsを生産する能力は、特に有用な生産方法を作り出す。
【0077】
一度生産されたポリクローナル抗体やモノクローナル抗体は、例えば、オースベルらsupraで説明されているような標準的な方法によるウエスタンブロッド法や免疫沈降法によって特異的SIM2認識検査をすることができる。SIM2を特異的に認識し、結合する抗体は、本発明で有用である。例えば、哺乳動物によって生産されるSIM2タンパク質のレベルをモニターするための免疫測定法でこのような抗体を用いることができる(例えば、SIM2タンパク質の量や細胞下の位置を決定すること)。
【0078】
好ましくは、本発明のSIM2タンパク質の選択性抗体は、高い保存領域の外側に位置し、例えば、高頻度の荷電残基などの基準によって抗原性であるかのように見えるSIM2タンパク質のフラグメントを用いて生産される。交差反応性の抗SIM2タンパク質抗体は、この種のタンパク質の膜間に保存されるSIM2タンパク質のフラグメントを用いて生産される。ある具体的な例として、PCRの標準的な方法によってこのようなフラグメントを生産することができ、その後pGEX発現ベクター(オースベルらsupra)内でこのフラグメントをクローニングする。大腸菌で融合タンパク質を発現させ、オースベルらsupraで説明されるようなグルタチオンアガロースアフィニティーマトリックスを用いて精製する。
【0079】
ある場合において、抗血清の低親和性や特異性の潜在的な問題を最小限にすることが望まれる。そのような場合、一つのタンパク質当り2つか3つの融合物を生成することができ、各融合物を少なくとも二匹のウサギに投与することができる。好ましくは少なくとも3回の免疫追加注射を含み、一連の投与により抗血清を増加させることができる。また抗血清は、組換えSIM2タンパク質やコントロールタンパク質(例えば、糖質コルチコイド,CAT,ルシフェラーゼなど)を免疫沈降することによってその能力がチェックされる。
【0080】
例えば、生物学的試料においてSIM2タンパク質の検出に本発明の抗体を用いることができる。SIM2タンパク質の発現や局在化上の候補化合物の効果を測定するためのスクリーニング検査で抗体を用いることもできる。さらに、SIM2タンパク質とSIM2タンパク質に結合する別の分子との相互作用を妨げるためにこのような抗体を用いることができる。
【0081】
SIM2タンパク質やそのフラグメントに備えて単鎖抗体を作成するために、単鎖抗体の生成が記載された方法(例えば、米国特許第4,946,778号,4,946,778号,4,704,692号)を適応することができる。アミノ酸架橋を介してFv領域のH鎖とL鎖を結合することによって形成することができ、その結果単鎖ポリペプチドになる。
【0082】
特異的なエピトープを認識し、結合する抗体フラグメントを既知方法によって生成することができる。例えば、このようなフラグメントは、抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab’)2フラグメント、及びF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を変形することによって生成されるFabフラグメントを含むがこれに限定されるものではない。あるいは、望まれた特性をもつモノクローナルFabフラグメントの迅速で容易な同定を可能にするためFab発現ライブラリーを構成することができる(ヒューズら(1989)Science 246:1275)。
【0083】
既知の方法を用いて、SIM2タンパク質と特異的に結合するヒトの抗体やヒト類似生物の抗体を生成することもできる。例えば、血清中にこのような抗体を有するヒト客体、例えば、SIM2タンパク質に備えて抗体産生を刺激する抗原が与えられた客体からポリクローナル抗体を採取することもできる。別の例として、SIM2タンパク質に対してヒト抗体を、例えばマウスのような動物の中でヒト抗体を生成する既知の方法を適用することによって作成することもできる。例えば、Fishwild, D. M. et al., Nature Biotechnology 14(1996):845−851;Heijnen, I. et al., Journal of Clinical Investigation 97(1996):331−338;Lonberg, N. et al., Nature 368(1994):856−859;Morrison, S. L., Nature 368(1994):812−813;Neuberger, M., Nature Biotechnology 14(1996):826;米国特許第5,545,806号;5,569,825号;5,877,397号;5,939,598号;6,075,181号;6,091,001号;6,114,598号;6,130,314号;参照。SIM2備えてヒト類似生物の抗体を、例えば、米国特許第5,530,101号;5,585,089号;5,693,761号;5,693,762号に記載されるような既知の方法を適応することによってヒト以外の抗体から作成することができる。
【0084】
SIM2と結合するタンパク質
本発明は、SIM2タンパク質と結合するポリペプチドを同定する方法も開示する。タンパク質とタンパク質の相互作用を検出するのに適する任意の方法は、SIM2タンパク質と結合するポリペプチドを検出するのに用いることができる。このような方法の例としては、細胞可溶化物とSIM2タンパク質の使用から得られる細胞可溶化物やタンパク質の勾配やクロマトグラフィーカラムを通して免疫共沈降,架橋と同時精製が含まれ、SIM2タンパク質と相互作用するこの細胞可溶化物の中のタンパク質を同定する。これらの分析について、SIM2タンパク質は、完全長のSIM2タンパク質,SIM2タンパク質の特定のドメイン又はある別の適当なSIM2タンパク質であってもよい。一度単離されたこのような相互作用するタンパク質を同定し、クローン化し、その後、それが相互作用するSIM2タンパク質の活性を変えるために標準的な技法と併せて使用することができる。例えば、その技術の当業者によく知られる技法、例えば、エドマン分解法を用いてSIM2タンパク質と相互作用するタンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部を明らかにすることができる。得られたこのアミノ酸配列は、相互作用するタンパク質をコード化する遺伝子配列を選別するために用いることができるオリゴヌクレオチド混合物の産生の導きに使用することができる。例えば、標準的なハイブリダイゼーションやPCR法によって、スクリーニングを行うことができる。オリゴヌクレオチド混合物の産生法及びこの技法はよく知られている(Ausubel et al., supra;and ”PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications”,Innis et al., eds. Academic Press, Inc., NY, 1990)。
【0085】
さらに、SIM2タンパク質と相互作用するタンパク質をコード化する遺伝子を直に同定する方法を用いることができる。これらの方法は、例えば、ラベル化されたSIM2タンパク質やSIM2融合タンパク質(例えば、酵素,蛍光染料,蛍光タンパク質などのマーカーやIgFcドメインと融合されるSIM2タンパク質やドメイン)を用いて、lgt11ライブラリーの抗体探索のよく知られる技法と同様の方法で発現ライブラリーをスクリーニングすることを含む。
【0086】
生体内でタンパク質とタンパク質の相互作用を検出できる利用可能な方法もある。例えば、ここで説明されるように二重ハイブリッドシステムは、生体内でこのような相互作用を検出するのに用いることができる。例えば、Chien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9578,1991参照。要するに、このようなシステムを利用する一つの例として、二重ハイブリッドタンパク質をコード化するプラスミドを作成する:一つのプラスミドには、SIM2タンパク質,SIM2タンパク質変異体やSIM2融合タンパク質をコード化するヌクレオチド配列と融合される転写活性因子タンパク質のDNA結合ドメインをコード化するヌクレオチド配列が含まれ、もう一方のプラスミドには、cDNAライブラリーの一部としてこのプラスミドに組み込まれている未知のタンパク質をコード化するcDNAと融合される転写活性因子タンパク質の活性化ドメインをコード化するヌクレオチド配列が含まれる。転写活性因子の結合部位を含むレポータ遺伝子(例えば、HBSやlacZ)の制御領域を包含する酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の菌株に、DNA結合ドメイン融合プラスミド及びcDNAライブラリーを形質転換する。どちらのハイブリッドタンパク質も単独では、レポータ遺伝子の転写を活性化することはできない:このDNA結合ドメインハイブリッドは活性化機能を備えていないために活性化できず、そしてこの活性化ドメインは活性因子の結合部位に位置することができないため活性化できない。この二重ハイブリッドタンパク質の相互作用は機能的な活性因子タンパク質を再構成し、レポータ遺伝子産物の分析で検出されるレポータ遺伝子が結果として発現する。
【0087】
「 ベイト(bait)」遺伝子産物と相互作用するタンパク質の活性化ドメインライブラリーを選別するために、二重ハイブリッドシステムや同様の方法を用いることができる。限定するつもりはないが、一例として、SIM2タンパク質をこのベイトとして用いてもよい。全ゲノム配列やcDNA配列は、活性化ドメインをコード化するDNAと融合する。このライブラリーと、DNA結合ドメインと融合されるベイトSIM2タンパク質のハイブリッドをコード化するプラスミドとを酵母レポータ菌株に同時形質転換し、その結果生じる形質転換体からレポータ遺伝子を発現するものを選別する。例えば、ベイトSIM2遺伝子配列、例えば、SIM2タンパク質やSIM2タンパク質のドメインをコード化するような遺伝子配列を、GAL4タンパク質のDNA結合ドメインをコード化するDNAと翻訳後に融合されるようなベクターでクローン化できる。これらのコロニーを精製し、レポータ遺伝子発現を引き起こすこのライブラリープラスミドを単離する。その後、ライブラリープラスミドによってコード化されたタンパク質を同定するためにDNA配列決定を用いる。ベイトSIM2タンパク質と相互作用し、検出されるタンパク質から株化細胞のcDNAライブラリーは、その技術で通常行われる方法を用いて作成できる。ここに記述される特定のシステムによれば、例えば、cDNAフラグメントをGAL4の転写活性化ドメインと翻訳後に融合されるようなベクターに挿入することができる。GAL4活性化配列を含有するプロモーターによって促進されるlacZ遺伝子を含む酵母菌株の中に融合プラスミドをコード化しているSIM2−GAL4と共に、このライブラリーを同時形質転換することができる。GAL4の転写活性化ドメインと融合し、ベイトSIM2タンパク質と相互作用するコード化されたcDNAは、活性化GAL4タンパク質を再構成し、その結果、HIS3遺伝子が発現する。その後、HIS3を発現するコロニー菌株から精製し、生産するために使用し、その技術で通常行われている技法を用いてベイトSIM2タンパク質と相互作用するタンパク質を単離することができる。
【0088】
SIM2ポリヌクレオチドとタンパク質の検出
本発明は、生物学的試料においてSIM2タンパク質やSIM2核酸の存在の検出方法の他に、生物学的試料においてSIM2タンパク質やSIM2核酸のレベルの測定方法も包含する。このような方法は、SIM2発現と関連するガン(例えば、大腸ガン)の診断に有用である。
【0089】
生物学的試料においてSIM2タンパク質や核酸の存在や不存在の典型的な検出方法は、被験客体から生物学的試料を得て、SIM2タンパク質(例えば、mRNAやゲノムDNA)をコード化するSIM2タンパク質や核酸を検出可能な化合物や作動剤を生物学的試料に接触させ、洗浄後この試料とこの化合物や作動剤との結合を分析することを含む。化合物や作動剤と特異的な結合を有するこれらの試料はSIM2タンパク質をコード化するSIM2タンパク質や核酸を発現する。
【0090】
SIM2タンパク質をコード化する核酸を検出する好ましい作動剤とは、SIM2タンパク質をコード化する核酸とハイブリッド形成可能な標識化された核酸プローブである。この核酸プローブは、例えば、SIM2遺伝子自身(例えば、SEQ ID NOs:1又は2の配列を有する核酸分子)の全てか一部、又はSIM2遺伝子の補体の全てか一部であってもよい。同様に、このプローブはSIM2遺伝子変異体の全てか一部、又はSIM2遺伝子変異体の補体の全てか一部であってもよい。例えば、ストリンジェントな条件下で天然SIM2核酸や天然SIM2核酸の補体と特異的にハイブリッド形成する少なくとも15,30,50,100,250又は500ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを本発明でプローブとして用いることができる。好ましいプローブは、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有する。SIM2タンパク質を検出する好ましい作動剤は、SIM2タンパク質と結合可能な抗体であり、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。このような抗体はポリクローナルであってもよく、さらに好ましくはモノクローナルである。完全な抗体やそのフラグメント(例えば、FabやF(ab’)2)を用いることができる。
【0091】
生体外と同様に生体内において、生物学的試料でSIM2タンパク質をコード化しているmRNA,SIM2タンパク質をコード化しているゲノムDNA,SIM2タンパク質を検出するために本発明の検出方法を用いることができる。例えば、生体外においてSIM2タンパク質をコード化しているmRNAsの検出法は、PCR増幅法,ノーザンブロット法,ハイブリット形成法を含む。生体外においてSIM2タンパク質の検出法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISAs),ウエスタンブロット法,免疫沈降法と免疫蛍光法を含む。生体外においてSIM2をコード化しているゲノムDNAの検出法は、サザンブロット法を含む。さらに、生体内においてSIM2タンパク質の検出法は、生物学的試料や被験客体に標識された抗SIM2抗体を導入することを含む。例えば、生物学的試料や被験客体において、放射性マーカーの存在と位置を示す標識をつけることのできるこの抗体は、画像処理技術によって検出することができる。
【0092】
SIM2タンパク質と相互作用する化合物のスクリーニング
本発明は、SIM2タンパク質と特異的に結合する化合物の同定法も含む。その一方法は、精製され固定化されたSIM2タンパク質と少なくとも一つの被験化合物を準備する工程;この被験化合物をこの固定化されたSIM2タンパク質に接触させる工程;この固定化されたタンパク質と結合していない物質を洗い流す工程;この被験化合物がこの固定化されたタンパク質と結合したかどうかを検出する工程を含む。固定化されたタンパク質と結合したままのこの化合物は、SIM2タンパク質と特異的に結合するものである。
【0093】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。実施例は、本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、好適な実施例の例示と解されるべきである。
【0094】
第1実施例:DDDMを使用したCGAPデータベースデータマイニングによる腫瘍関連発現遺伝子配列断片(EST)の同定
CGAPデータベースにアクセス(http://www.cgap.gov)し、そしてここに記載されているように改良されたデータベースの使用説明書に準じてデジタル微分表示(DDD)ツールを使用した。DDDは、種々のライブラリーからESTsが特別なユニジーンの集団に割り当てられる回数を比較するためにユニジーンデータベースを使用する。2つのウェブサイト(http://www.ncbi.nim.nih.gov/Omim/)及びジーンカードサイト(http://bioibformatics.weizmann.ac.il/cards/)から作成された情報を使用して、既知のヒットを主な集団に分類した。新規のESTsは別々のデータベースでまとめられ、腫瘍及び組織の選択的な遺伝子の発見を容易にするために、各ヒットに対して組織から得られた所定のcDNAライブラリーの中の所定のESTの存在または不存在を予測する目的で、ユニジーンデータベースにアクセスして、電子表示プロファイル(E−ノーザン)を開設した。
【0095】
6つの異なる固形の腫瘍から生成されたESTsライブラリー(乳房,大腸,肺,卵巣,膵臓,及び前立腺)に対応する正常組織で生成されたライブラリーは、DDD(N=110)から選択された。ESTに特異的な腫瘍と臓器の同定において、全ての他の臓器及び腫瘍から生成されたESTライブラリー(N=327)は、6つの腫瘍形態との比較のために選択された。ライブラリー(正常,前腫瘍または腫瘍)の種類は、CGAPデータとユニデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene)を比較することにより確認した。2つのデータベース間の定義との矛盾を示すこれらの少数のライブラリーを排除した。
【0096】
DDDは各臓器の種類に応じて行われた。DDDは、オンラインツールを用いるDDD2法に適した腫瘍(プールA)と対応する正常臓器(プールB)、又はDDD1法に適したEST(プールA)と対応する正常臓器(プールB)を含む他の全臓器と腫瘍から腫瘍から得られたcDNAライブラリーからESTsを用いて行った。その出力は、ユニジーン集団に位置づけられたそのプールの内部にある配列の断片を示す各プールにおける絶対値と絶対値に対応するドットの強度を示した。DDDMはこのデータから比較されるライブラリー間の折り重なりの相違を計算するために使用した。DDDMの詳細な説明については、2000年4月28日出願の米国仮出願第60/200,292号を参照。DDD分析から得られた数値は、プールA/プールBの比として表した。下記に記載される実施例で説明するように、DDDM分析は腫瘍で排他的な存在や不存在を予測されたESTを迅速に同定する結果となった。
【0097】
第2実施例:逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)解析
RT−PCRは、ヒト組織ネットワーク協同体(CHTN,バーミンガム,アラバマ)から得られた腫瘍及び正常な組織で行われた。全RNAはトリゾールによって単離された(ライフテクノロジーズ,ゲーサーズバーグ,MD)(エレケットアル,「インビボ」14:172−182,2000年を参照)。ランダム六量体及びスパースクリプト逆転写酵素(ライフテクノロジーズ)を用いて、全RNAの1マイクログラムを逆転写した。遺伝子に特有のプライマーを使用し、cDNAの1/4をPCRで増幅した。PCRプライマーは、ワールドワイドウェブ上のプライマー3プログラム(http://www−genome.wi.mit.edu//cgi−bin/primer/primer3_www.cgi)を使用して設計されたものである。プライマーの選択パラメーターは(1)プライマーのサイズ=20〜24塩基対,(2)アニーリング温度=60〜65℃,(3)GC含量=最小値50%,(4)自己相補性=なし;及び,(5)非重複性ESTの相同性=なしである。各々のPCRプライマーの配列は、選択されたEST配列に対して100%の相同性を確保するためにBLAST算法を使用しているNCBIESTデータベースに対して確認された。
【0098】
SIM2短形型核酸(SEQ ID NO:2)を検出するために、SEQ ID NO:14(センス)及び15(アンチセンス)としてここに示された配列をもつPCRプライマーが選ばれた。別の場合においては、SEQ ID NO:7(センス)及び8(アンチセンス)として、ここに示された配列をもつPCRプライマーを使用してSIM2を検出した。このPCRのパラメーターは、94℃で7分後、94℃で45秒,62℃で45秒,72℃で90秒の条件で、35〜40周期で増幅しそして最後に、パーキンエルマー9600により72℃で10分間伸長させた。RT−マイナスコントロール及びゲノムDNAコントロールは、RTから得られた産物(例えばエルク他,アンチキャンサーレス,20:53−58,2000参照)を確認するために通常用いられた。増幅された産物の1/2は、2%アガロースゲル上で電気泳動により単離され、そしてそのゲルのエチジウムブロマイド染色を施すことによって検出された。PCRにより増幅された産物は、端末に標識化された内部のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリット形成することにより確認された。RNAの性質を確認するために、内部標準アクチンRT−PCRが全試料上で同時に行われた。
【0099】
第3実施例:大腸に特異的なESTsのRT−PCR検証
DDDMにより同定された大腸に特異的なESTsを、組織試料において特異的な発現のRT−PCR検証のために選択した。プライマーを実施例2で記載されたように設計した。正常組織及び大腸腫瘍の適合した1組からランダムにプライマー化されたcDNAを、逆転写酵素(RT)を用いて作成し、同定された17個のEST(エレク他,「インビボ」14:172−182,2000参照)のそれぞれに対して分析を行った。分析された17個のESTの中でユニジーンHs.#146186に属する1つのESTは、大腸腫瘍組織の中で存在したが、正常組織の中では存在しなかった。これらの実験において、ユニジーン#146186は472塩基対のRT依存PCR産物を示した(SEQ ID NO:10を参照)。この産物はコントロールのRT−マイナス反応では見られなかった。ユニジーン#146186はその集団に与えられる7個のESTを持っている。このユニジーンの最長EST(ジェンバンク番号#AI7333801)の配列は、長さで541塩基対あり(SEQ ID NO:5)、1001塩基対のコンティグ(SEQ ID NO:6)として伸長可能であった。このヌクレオチド配列データベースに対するコンティグ配列の整列は、シングルマインド遺伝子2(single minded gene2)(SIM2,ジェンバンク登録番号U80456)と称する遺伝子に対して非常に高い相同性を示した。このSIM2遺伝子は、染色体21(21q22.2)にあるダウン症候群染色体座に位置し、推測される転写因子である。SIM2タンパク質は、発育上制御され、そして特に腎臓において、胎児と大人の組織で非常に制限された発現を示すが、その他のほとんどの正常組織においては見られない(クラスト他,「ゲノムリサーチ」7:615−624,1997年)。SIM2遺伝子は転写因子であると思われる、なぜなら既知の二量化モチーフを有するからである。セリン/スレオニン/プロリンの多くある領域に対してコード化するSIM2遺伝子のC末端は、転写抑制物質及び転写活性物質の両方において見られる。そして、SIM2遺伝子のC末端部分は、その他の既知の転写活性物質(へリックス・ループ・へリックス及びPASタンパク質のような物質)から分岐するので、SIM2遺伝子は転写抑制物質と考えられる(クラスト他,「ゲノムリサーチ」7:615−624,1997年)。
【0100】
SIM2タンパク質の発現は発育上制御化され、特に腎臓において、胎児と大人の組織で非常に制限された発現をする示すが、その他のほとんどの正常組織においては見られない(クラスト他,「ゲノムリサーチ」7:615−624,1997年)。それはダウン症候群の発生に対して非常に重要な遺伝子であると見られているが、ガンとの関係は知られていない。SIM2遺伝子によってコード化されたタンパク質は、種々の遺伝子の転写活性化と抑制化の双方に対して別のタンパク質因子と同様の働きをする。
【0101】
この実施例の実験の中で、SEQ ID NO:7(センス)及びSEQ ID NO:8(アンチセンス)の核酸は、腫瘍組織と正常組織の適合した1組からSIM2の発現を比較するために、RT−PCRプライマーとして用いられた。このcDNAsは、逆転転写酵素があってもなくても作られ、プライマーとしてSEQ ID NO:7及び8の核酸を用いてPCRにより増幅された。増幅後、この生成物をアガロースゲル電気泳動にかけた。このゲルをエチジウムブロマイドで染色し、核酸に対応するバンドをUV照射により視覚化した。電気的な予測を続けた結果、増幅された472塩基対の産物が、大腸腫瘍組織で検出されたが、正常大腸組織では検出されなかった。そのPCR産物は、RT依存性であった。
【0102】
第4実施例:オリゴヌクレオチドプローブを使用したハイブリット形成によるSIM2遺伝子の検出
32P−dNTPで標識されたオリゴヌクレオチドプローブを使用してSIM2遺伝子を検出した。SEQ ID NO:9に対応するオリゴヌクレオチドを合成し、次にポリヌクレオチドキナーゼを使ってガンマ32P−dATPで端部を標識化した。RT−PCR産物を8種類の異なる腫瘍及び正常大腸組織試料の適合した1組からRTが存在してもしなくとも作成し、ニトロセルロース細胞膜に移し、そして32Pで標識されたオリゴヌクレオチドプローブとハイブリット形成した。このプローブは腫瘍から得られたcDNAの中で472塩基対産物とハイブリット形成したが、正常組織cDNA中ではしなかった。
【0103】
第5実施例:多様な正常ヒト組織におけるSIM2発現の欠如
大腸組織内のSIM2遺伝子の発現特性を評価するために、正常ヒト組織から生成されたcDNAのパネルをクロンテック研究所(パロアルト,CA)から得た。これらのcDNAは、SEQ ID NO:7及び8として個々に記載されているセンスプライマーとアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅を行なった。これらのcDNAのRT−PCR分析は、本明細書に記載されているように行った。SIM2遺伝子は腎臓と扁桃腺で検出されたが、心臓,脳,胎盤,肝臓,骨格筋,脾臓,胸腺,精巣,末梢血リンパ球,リンパ節,骨髄,胎児肝臓,乳房,大腸,肺,卵巣,膵臓,及び前立腺では検出されなかった。試料は、内部標準としてアクチン発現に対して同時に分析された。
【0104】
第6実施例:非大腸から摘出された固形腫瘍におけるSIM2遺伝子発現
大腸腫瘍におけるSIM2発現の特性をさらに評価するために、5つの別の固形腫瘍(乳房,肺,卵巣,前立腺及び膵臓)から摘出されたランダムプライマー化されたcDNAを本明細書に記載されているRT方法を用いて作成した。これらのcDNAをSEQ ID NO:7及び8に記載されているセンス及びアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅を行なった。増幅された産物は、大腸,前立腺及び膵臓腫瘍から検出されたが、乳房,肺または卵巣腫瘍からは検出されなかった。この試料は、内部標準としてアクチン発現に対して同時に分析された。
【0105】
第7実施例:ガンに対する創薬を促すための細胞培養モデルの同定
大腸ガン(SW−480,HCT−116,RKO,及びOM−1),膵臓ガン(CAPAN−1,CAPAN−2,HPAC及びBxPc3)及び前立腺ガン(LN−CAP,DU−CAP,及びPC−3)から摘出された株化細胞中のSIM2の発現を詳しく研究した。cDNAを全系統から作成し、SEQ ID NO:7及び8のプライマーを用いてRT−PCRによって増幅した。増幅後、その産物をアガロースゲル電気泳動にかけた。このゲルをエチジウムブロマイドで染色して、核酸に対応するバンドはUV照明を用いて視覚化された。SIM2の発現は、全3種の腫瘍形態を表す異なる株化細胞の全てから検出された。
【0106】
第8実施例:大腸腫瘍に特異的なSIM2遺伝子の促進
SIM2遺伝子の発現が大腸腫瘍に特有のものであるという更なる証明は、14種の適合した正常組織または腫瘍大腸組織に由来するcDNAを使用して得られた。ランダムプライマー化したcDNAをこれらの組織から得られた全RNAから生成し、そしてcDNAをSEQ ID NO:7及び8に記載されたセンス及びアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅した。増幅後、その産物をアガロースゲル電気泳動にかけた。その後、その産物をニトロセルロースに移し、そしてSIM2遺伝子に対して特異的にハイブリット形成する32Pで標識されたオリゴヌクレオチドプローブとハイブリット形成した。その結果、SIM2遺伝子は、大腸腫瘍の各組織の中で促進したが、その適合した正常組織では促進しなかった。
【0107】
第9実施例:初期大腸腫瘍におけるSIM2発現の検出
SIM2遺伝子の発現をヒトの客体から単離されたポリープ,腺腫及び悪性腫瘍を含む大腸ガンの初期段階から得られたcDNAを使用して分析した。ランダムプライマー化されたcDNAをこれらの組織から得られた全RNAから生成し、そのcDNAをSEQ ID NO:7や8に記載されているセンスとアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅した。増幅後、生産物をアガロースゲル電気泳動にかけた。SIM2発現は、ポリープ,腺腫,及び悪性腫瘍組織試料分析で検出されたが、正常大腸組織では検出されなかった。実施例8で記載したプローブ、またはポリープや腺腫などの初期段階(例えば、早期ガン性の段階)の大腸腫瘍においてSIM2遺伝子の発現を検出するための類似プローブとして特に用いることができるであろう。
【0108】
第10実施例:前立腺腫瘍に特異的なSIM2遺伝子の促進
SIM2遺伝子発現は、ヒトの客体から単離された前立腺ガン及び株化細胞から得られた前立腺腫瘍でも検出された。ランダムプライマー化されたcDNAを前立腺腫瘍,良性前立腺過形性(BPH)及び正常組織から得られた全RNAから生成し、このcDNAをSEQ ID NO:7及び8に記載されているセンス及びアンチセンスプライマーを使用してPCR−増幅した。増幅後、産物をアガロースゲル電気泳動にかけた。そのゲルをエチジウムブロマイドで染色し、核酸に対応するバンドはUV照明を使用して視覚化された。その結果は、SIM2遺伝子の発現が、株化細胞,良性前立腺過形性及び腫瘍中で検出されるが、正常前立腺では検出されないということを示した。
【0109】
第11実施例:診断方法
SIM2遺伝子の発現の評価は、ガンの診断方法として特に想定される。この方法において、検査される組織を、患者(例えばポリープ,腫瘍,悪性腫瘍等からの細胞は定期結腸鏡検査から得られる)から摘出した。その後、これらの細胞から得られた全RNAを、cDNAを開始するためにランダムプライマー又はオリゴdTのどちらかを用いてcDNAに転換した。得られたcDNAをSEQ ID NO:7及び8として本明細書に記載されているセンス及びアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅した。PCR増幅された産物を、その後アガロースゲル電気泳動にかけ、その後ゲルを核酸バンドとして視覚化されるように染色した。472塩基対の生産物の存在はガンが存在する可能性を示唆するものである。
【0110】
第12実施例:ハイブリッド形成によるSIM2遺伝子の検出
ハイブリット形成法技術を用いて、SIM2遺伝子の発現をSEQ ID NO:9としてここに記載されているオリゴヌクレオチドプローブによって検出することができる。このオリゴヌクレオチドは放射性又は非放射性のラベルで標識化され、そして標識化されたプローブは、フィルタ(例えば、ニトロセルロース)の上に産物を移動させることによって、ノザンブロット法で分析される試料から得られたRNAと反応させる。この方法は、分析された試料に含まれるゲノムDNAから生成されるRT−PCR反応産物のサザンブロット法でも実施可能である。オリゴヌクレオチドプローブとハイブリット形成した後、そのフィルタを洗浄し,X線フィルムにさらし,そしてオートラジオグラフにかけた。プローブとハイブリット形成されたバンドは、オートラジオグラムにより確認することができる。そのオリゴヌクレオチドプローブは、組織内のSIM2遺伝子の発現を直接検出するためにハイブリッド形成反応を用いることもできる。
【0111】
第13実施例:転移性のガン細胞の検出
転移性ガン細胞検出の方法が、特に想定される。この方法は、被験者(例えば、ガン患者)から得られた組織試料を含み、状況に応じてこの試料から核酸(例えば、PCR増幅によって)又はタンパク質を単離し、SIM2ゲノムDNA,mRNAやcDNA,又は対応するポリペプチド産物(例えば、SIM2タンパク質)に特異的に結合する分子をもつこの試料や単離された核酸/タンパク質を精査した。例えば、この方法のある変形例において、全RNAを糞便または末梢血試料から得られるガン細胞から単離した。その後、そのRNAをプライマーとしてSEQ ID NO:7及び8のオリゴヌクレオチドを用いたRT−PCRによってSIM2mRNAの存在について分析した。別の例として、オリゴヌクレオチドプローブとしてのSEQ ID NO:9を用いたハイブリッド形成法によりこれらの試料の細胞で、SIM2遺伝子の発現を検出することができる。さらに別の例として、SIM2タンパク質に特異的な抗体は、直接細胞試料(例えば、従来の免疫蛍光検査法,組織化学染色法を用いる)を精査するために用いることができ、又は免疫沈降法及び電気泳動法,ウエスタンブロット法によりSIM2タンパク質を検出するために用いることができる。SIM2の発現は腫瘍膵臓試料でも検出されたが、正常膵臓試料では検出されなかったので、糞便の中から取り除かれた転移性の膵臓腫瘍細胞もまたこの方法で検出可能である。
【0112】
第14実施例:治療標的としてのSIM2
SIM2遺伝子の産物は既知の機能を有する。それは、DNA結合の転写制御因子であり、成長制御に関与する他の遺伝子を制御するヘテロ二量体としての他のタンパク質因子と一致した機能がある。例えば、山口及び久尾,「生化学薬理学」50:1295−1302,1995年、モフェット他,「J.モル.セルバイオロジー」17,4933−4947,1997年を参照。このSIM2タンパク質は、アリルヒドロカーボンレセプター(AHR)及びアリルヒドロカーボンレセプター核輸送体(ARNT)と相同性を共有する。SIM2タンパク質は細胞基質であって、熱ショックタンパク質(HSP90)のようなタンパク質と同様にAHR及びARNTと相互作用する。この相互作用は、ダイオキシン,ベンゾピレン,及びその他の生態異物のようなリガンドに結合することができる複合体を形成する。リガンドに結合する際、その複合体は核に転移し、そして生体異物反応要素(XRE)の活性化の原因になり、制御因子は種々標的遺伝子の転写制御に関与した。山口Y及び久尾MT,「生化学薬理学」50,1295−1302,1995年を参照。
【0113】
従って、SIM2遺伝子の発現の抑制は発がん物質の効力を和らげることができる。さらに、SIM2は特定のガンに選択的に発現するので、抗腫瘍性の薬剤に対する潜在標的であると考えられる。SIM2遺伝子の発現の抑制は、アンチセンス核酸を使用して達成することができる。例えば、SIM2遺伝子の5’プライムコード領域と特異的にハイブリット形成するアンチセンス核酸の適した長さ(例えば、18〜25塩基対)を合成し、次に標的の組織又は細胞(例えば、電気穿孔法又はベクターを経由した送達)又はリポソ−ムに導入する。その後、アンチセンス核酸がSIM2遺伝子から転写されたmRNAとハイブリット形成可能な条件下に、標的の組織や細胞を置く。このハイブリット形成法は翻訳を抑制し、その結果選択的にSIM2タンパク質の発現を抑制する。例えば楢山,「R.インビボ8」,787−794,1994年を参照。別の例として、前述のアンチセンス核酸を遺伝子治療のための生体内に送達できる安定な組換え作成物として生成することもできる。例えば、ヒギンズ他,「プロックナットルアシッドSci.米国90」9901−9905,1993年を参照。
【0114】
本実施例のある変形例として、アンチセンス核酸はSEQ ID NO:11として示されたオリゴヌクレオチドである。このオリゴヌクレオチドを核酸骨格で様々な構成要素と置換することができる。腫瘍関連タンパク質は、ナラヤナンR及びアカ−ターS,「クルオピニオンオンコル8」509−515,1996年、ヒギンス他,「プロックナットルアカッドSci米国90」9901−9905,1993年、及びナラヤナンR,「Jナットルガンインスト89」107−109,1997年に記載されているそれらに対応した方法を用いてこのアンチセンスオリゴヌクレオチドに適した処理を行なうことができる。そのアンチセンスオリゴヌクレオチドを単独または従来の化学療法又は放射線治療プロトコールを組み合わせて用いることができる。
【0115】
第15実施例:創薬標的としてのSIM2
SIM2遺伝子機能を選択的に抑制する薬剤の発見方法が想定される。SIM2タンパク質は、転写を制御する特異的な遺伝子と関連する制御領域でDNAと結合して、特定の遺伝子の発現を調節することによって機能することが考えられる。この特性は、DNAと結合するSIM2タンパク質を抑制する物質を選別するために利用することが可能であり、したがってSIM2タンパク質のこの機能を抑制する。この方法において、SIM2遺伝子を取り込んでいる発現ベクターは、SIM2タンパク質が細胞内で生成される条件の下で宿主細胞内に導入され発現する。このような方法で生成されたSIM2タンパク質の産物は、その後精製され、DNAの異常な伸展と結合する能力を抑制する化合物を選別するための生体内高処理検定法で用いることができる。例えば、ルビン他,「モル.セルバイオ12」444−454,1992年、ナラヤナン他,「サイエンス256」367−370,1992年、そしてナラヤナン他,「モルセルバイオ13」3802−3810,1993年を参照。
【0116】
成長抑制検定法においてSIM2発現をする腫瘍から得られた株化細胞を使用して、SIM2発現の抑制因子を同定することができる。例えば、選別される物質がSIM2発現を調節するかどうかを見るために、SIM2を発現する細胞を含む培地にその物質を添加してもよい。別の方法において、SIM2プロモータに操作可能に結合するレポータ遺伝子(例えばクロラムフェニコールアセチル基転移酵素,ルシフェラーゼ,ベータガラクトシダーゼをコード化するもの)を含む組換え型作成物を形質導入された株化細胞は、SIM2遺伝子の発現を抑制する物質を同定するために使用することができる。例えば、そのレポータの発現を選択的に抑制する化合物は、SIM2選択的抑制物として同定されるであろう。
【0117】
SIM2は大腸,前立腺及び膵臓腫瘍で選択的に発現するが、乳房,肺,または卵巣腫瘍では発現しないので、化合物はSIM2発現性腫瘍の選択的成長を抑制する能力を選別することができる。この方法で同定された化合物は、上記に記載されたSIM2プロモーターレセプター遺伝子作成物を用いて、SIM2の特異的な抑制をさらに評価することができる。
【0118】
第16実施例:SIM2タンパク質の抗体検出
免疫組織化学法又は免疫蛍光法のような技術を使用してSIM2タンパク質の発現を測定することにより、SIM2遺伝子産物の腫瘍の選択的な発現を検出することができる。後述の技術の一例として、大腸腫瘍のパラフィン固定切片とそれに対応する正常組織を、SIM2短形型タンパク質のC末端に対して特異的な抗体(親和精製ウサギ抗ヒトSIM2短形型抗体,キャット#sc−8715,サンタクルズバイオテクノロジー,サンタクルズ,Ca.)又は実施例17で下記に記載されるように調製された抗体を使用して分析した。SIM2タンパク質の免疫組織化学検出は、シュール他,「アンチキャンサー.Res.20」2091−2096,2000年に記載されるように行なった。要するに、その切片を5分間2回キシレン槽でパラフィンを除去し、次に等級アルコールを通して蒸留水で再水和した。スライドを第一の抗SIM2短形型抗体で培養した。結合された第一抗体は、ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン第二抗体と結合した西洋わさびペルオキシダーゼで標識されたデキストラン高分子でその切片を染色することにより検出された。そのスライドは、染色基質としてジアミノベンジジン溶液(DAB)を用いて発色させた。その切片をヘマトキシリンで対比染色し、エタノールで脱水し、パーマウント(フィッシャーサイエンフィック)に固定した。この方法を用いると、SIM2タンパク質は腫瘍試料(6/6)から検出されたが、対応する正常組織では検出されなかった。SIM2タンパク質は、腺腫のような初期段階の大腸腫瘍からも検出された。ウエスタンブロット法又はELISA法における抗SIM2抗体の使用は、SIM2が結合した悪性腫瘍に対する診断上の検定法又は予測検定法のような組織試料内でSIM2タンパク質を検出するための方法で特に用いることができるであろう。
【0119】
第17実施例:SIM2短形に特異的な抗体の産生
完全なフロイントアジュバントで乳化されたSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を持つ200μgのペプチドを含んだ製剤を、シグマゲノサイスTXによって複製されたウサギに注入した。その後、そのウサギは不完全なフロイントアジュバントで乳化されたペプチド100μgで、2週間隔(3回)で免疫性を与え、そして49日目に採血した。そのウサギに再び完全なフロイントアジュバントで乳化されたペプチド100μgで、25日間隔で免疫性を与えた。69日目及び102日目に採血した血清をELISA法により分析し、この結果、この血清がぺプチド抗原に対する抗体を含むことが確認された。免疫性が与えられたウサギから得られたその血清、及び免疫前の血清(コントロール)を、患者から摘出された大腸腫瘍からのタンパク質可溶化液及びRKO細胞株可溶化液を使用して、ドットブロット分析により検査した。免疫性が与えられたウサギから得られた血清の使用は、大腸腫瘍試料中のSIM2短形型タンパク質の存在を検出したが、それに対し免疫前の血清では検出されなかった。これらの実験のデータに基づいて、血清の適した希釈率(例えば1:200〜1:2000)は、ここに記載された免疫組織化学分析法を使用するのに選択された。
【0120】
第18実施例:タンパク質に基づいたSIM2の診断/治療の使用
SIM2タンパク質に対して生成された抗体は、上記に記載されたような宿主動物の免疫付与によって得ることができる。SIM2に特異的な抗体によるSIM2タンパク質の結合性は、ポリペプチドの機能活性を抑制することが想定される。なぜならアンチSIM2抗体はSIM2タンパク質(例えば、大腸,膵臓,そして前立腺腫瘍から得られた細胞)を発現する細胞と選択的に結合するので、そのような細胞を発現するSIM2を標的とする及び/又は破壊するための方法で用いることができるからである。例えば、SIM2に特異的な抗体は生体内の画像化(例えば、大腸ガンを診断するためのヒト客体の骨盤部分)に使用するために標識(例えば放射性または磁力的に)することができる。別の例として、SIM2に関連するガンを治療するために、細胞毒性の薬剤(例えば、リシンや125I)を標識するSIM2に特異的な抗体を、ガンを持つ動物(例えば、腫瘍内への注射により)に投与した。細胞に吸収されることができる抗体を修飾する方法は、既知である。例えば、抗体はレセプターが細胞表面に発見されるリガンドと結合することができる。リガンドを結合する際に、細胞質内に入ることが可能なように、抗体リガンド複合体は吸収することができる。
【0121】
第19実施例:アンチセンスオリゴヌクレオチドを備えた細胞の治療
RKO大腸ガン細胞は、10%の牛胎仔血清で補われたDMEM培地において成長した。急激に成長するRKO細胞は、製造業者の指示に従ってデリバリー溶媒とOpti−MEM培地としてリポペクチン(BRL−ライフテクノロジー)を使用して、異なる量のアンチセンス(SEQ ID NO:12)またはコントロール逆アンチセンス(SEQ ID NO:13)オリゴヌクレオチドによって処理した。トランスフェクションして4時間後、その細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、そして10%ウシ胎仔血清で補われたDMEM培地で24〜72時間培養した。その細胞を光学顕微鏡使用により形質的な変化について観察した。その細胞を免疫組織化学法により培養皿でメタノール固定し、トリプシン処理することにより培養皿から取り除き、そしてDNA又はRNAの分析が行われた。300nMが反応を引き起こすためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果的な濃度であることが予備分析で示された。従って、以下に記載された実験は別の方法が示されない限り、300nMのアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用した。例えば、MDA乳ガン細胞(SIM2短形型を発現しない)のような他の株化細胞は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに特異的な効果を実証するためここに記載される様々な実験でさらなるコントロールとして用いられた。
【0122】
第20実施例:アポトーシスの測定
処理に応じて死をプログラム化された細胞(アポトーシス)は、容易に測定可能である多様な変化を表した。例えば、アポトーシスを代表する一つは、DNAの断片化である(例えば、アポトーシス.アフォード,とランドハワS,モル.パソール.53(2):55−63,2000年、ガンの中のアポトーシス:原因と治療.カウフマン,S.H,及びゴレス,G.J:バイオエッサイズ22(11):1007−17,2000年を参照)。アポトーシスされた細胞から得られたゲノムDNAの断片化は、アガロースゲル電気泳動後オリゴソームのラダーの存在を検出することにより測定することができる。アポトーシスを分析するため、アンチセンスオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:12)又はコントロールの逆アンチセンスオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:13)のいずれか一方で処理されたRKO大腸ガン細胞から得られたゲノムDNAを、DNAゾルキット(BRL−ライフテクノロジーズ)を使用して単離した。その後、単離されたDNAを1%アガロースゲルで分離した。次に、ゲル上の分離産物をニトロセルロース細胞膜に移動させた。細胞膜は親RKO大腸ガン細胞から生成された32Pが標識されるゲノムDNAプローブとハイブリット形成された。このハイブリット形成されたブロットは、その後68℃高厳密(0.1XSSC,0.1%SDS)下で洗浄し、そしてオートラジオグラフにかけた。その結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチド処理を受けた細胞は、コントロールオリゴヌクレオチドで処理された細胞よりも多くのDNA断片化(ラダー形成により決定される場合)を著しく表すことを示した。
【0123】
別の実験においては、アポトーシスはアポタグ(TUNELアッセイ)検出システムキット(インタージーンカンパニー,NY)を用いて分析された。このキットで、単細胞内のDNA断片化を修飾されたヌクレオチド(ジゴケシゲニン−dNTP)でDNA断片化から生成される3’ヒドロキシ末端を標識する末端デオキシトランスフェラーゼ(TdT)を使用することにより測定可能である。次に、ペルオキシダーゼが複合したアンチジゴケシゲニン抗体は、顕微鏡下でペロキシダーゼ基質を用いることにより、断片化されたDNAを含有する細胞を検出するのに使用された。ゴールド,「R,ラボラトリーインヴェス.71」219−222,1994年を参照。これらの実験において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの処理を受けたRKO細胞はコントロールオリゴヌクレオチドで処理された細胞よりも多くのDNA断片化(アポタグ方法で決定される場合)を著しく示した。
【0124】
第21実施例:Bcl−2の免疫組織化学分析
Bcl−2発現の免疫組織化学分析は、アンチセンス処理した大腸ガン細胞で始められた。RKO大腸ガン細胞を、300nMのアンチセンス(SEQ ID NO:12)又はコントロールの逆アンチセンス(SEQ ID NO:13)のいずれかにより72時間上記に記述されるように処理し、そしてその細胞はBcl−2ポリクローナル抗体(サンタクルズバイオテクノロジー)を使用した免疫組織化学法により分析した。Bcl−2の免疫組織化学検出を、第一のアンチBcl−2抗体と共に処理されたRKO細胞を培養することによってスケール他,「アンチセンサーレス.20」2091−2096,2000年に記載されたように実施した。結合された第一抗体を、ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン第二抗体と結合した西洋わさびペルオキシダーゼで標識されたデキストラン高分子でその細胞を染色することにより検出した。そのスライドは、染色基質としてジアミノベンジジン溶液(DAB)を用いて発色させた。その細胞を、ヘマトキシリンによって対比染色し、エタノールで脱水し、そしてパーマウント(フィッシャーサイエンティフィック)に固定した。その結果は、bcl−2タンパク質のレベルはコントロールの逆アンチセンス処理された細胞と比較してアンチセンス処理した細胞で低下し、アンチセンス処理はRKO細胞中のアポトーシスを誘発するという考えと一致する発見であるということを示した。別の例として(表示せず)、Bcl−2のmRNAのレベルは、コントロールの逆アンチセンス処理された細胞と比較してアンチセンス処理した細胞で低下した。
【0125】
第22実施例:前立腺腫瘍におけるSIM2短形型に特異的な抗体の診断上の使用
1人の患者から得られた生体由来の前立腺腫瘍と正常組織を、パラフィン切片として準備し、実施例17の上記に記載されたSEQ ID NO:14のペプチドに対するポリクローナル抗体を用いる実施例16に記載されるような免疫組織化学法によって分析した。その結果は、SIM2短形型の発現は腫瘍では検出されるが、正常組織では検出されないことを示した。同様の実験において、表1(下記)を参照すると、SIM2短形型は良性前立腺過形性の一部及び前立腺ガンの一部で検出されたが、適合する正常前立腺組織では検出されなかった。正常前立腺組織(6/6)では染色されないが、SIM2短形型の存在に対して陽性に染色される免疫組織化学法により検査された。同様に、間質過形性(通常、前立腺ガンにならない)試料の大部分は陰性(15/18)であった。BPH及び前立腺間質性異常増殖/腫瘍症(PIN)の両方を備えた患者から得られた全試料は、陽性染色(6/6)を示した。更に、段階に関係なく前立腺ガン(グリーソン段階I−IVで検査される)の全試料は、SIM2短形型について陽性に染色されたことが示された。
【0126】
【表1】
【0127】
第23実施例:大腸腫瘍におけるSIM2短形型に特異的な抗体の診断上の使用
1人の患者から得られた生体由来の前立腺腫瘍と正常組織を、パラフィン切片として準備し、実施例17の上記に記載されたSEQ ID NO:13のペプチドに対するポリクローナル抗体を用いる実施例16に記載されるような免疫組織化学法によって分析した。これらの実験において、大腸組織試料(正常=CN−15;腫瘍=CT15)の適合した1組におけるSIM2短形型の発現を免疫組織化学法により分析した。SIM2短形型の発現は腫瘍切片では検出されたが、正常組織切片では検出されなかった。別の実験において、表1を参照すると腺腫を含む3/3の初期大腸ガンはSIM2短形型について陽性に染色した。一方、5/5の正常大腸組織試料検査はSIM2短形型に対して陰性であった。全腫瘍(6/6)検査はSIM2短形型に対して陽性染色を示した。従って、大腸ガン診断方法において、SIM2短形型に対して定期結腸鏡検査を行なった患者から得られた大腸細胞を検査することができる。さらに、大腸細胞は剥がれて糞便に含まれるので、SIM2短形型の存在について糞便物質分析をすることにより大腸ガンの初期段階を検出することが可能であるだろう。
【0128】
第24実施例:膵臓腫瘍におけるSIM2短形型に特異的な抗体の診断上の使用
1人の患者から得られた生体由来の前立腺腫瘍と正常組織を、パラフィン切片として準備し、実施例17に記載されたSEQ ID NO:14のペプチドに対するポリクローナル抗体を用いる実施例16に記載されるような免疫組織化学法によって分析した。これらの実験において、SIM2短形型の発現は、膵臓腫瘍の適合した2組において検査された。SIM2短形型は腫瘍切片で検出されたが、正常組織切片では検出されなかった。加えて、表1を参照すると、多様の正常膵臓組織(6/6)はSIM2短形型の発現に対して陰性であったが、腺腫(腫瘍初期段階)と同様に進行した腫瘍(6/6)は両方とも、SIM2短形型の染色で陽性を示した。従って、SIM2短形型を膵臓ガンのマーカーとして使用することができる。そして膵臓ガン細胞は剥がれて糞便に含まれるので、この検出方法は糞便から得られた物質を使用することが可能である。
【0129】
第25実施例:大腸,膵臓および前立腺腫瘍患者における転移の検出
SIM2短形型タンパク質の発現は、骨髄細胞又は末梢血リンパ球では検出されていない。転移性のガン細胞はしばしば血液またはリンパ球の循環を経由して転移するので、SIM2短形型の発現に対してこれら組織を検査することによって転移を同定することができるであろう。
【0130】
第26実施例:治療の検査応答
薬剤や大腸,膵臓,又は前立腺ガンの手術で治療された患者は、例えば、血液,骨髄,又は糞便などの物質中にあるSIM2短形型の発現を測定することによってガンの再発を検査することができる。これらの物質中におけるSIM2短形型の存在により腫瘍が再発していることがわかるであろう。
【0131】
第27実施例:SIM2短形型の治療上の使用:アンチセンス抑制
大腸悪性腫瘍細胞(RKO細胞)を、SEQ ID NO:12のアンチセンスオリゴヌクレオチド,そのコントロールのSEQ ID NO:13の逆アンチセンスオリゴヌクレオチド,又は溶媒(生理食塩水)で72時間処理し、そしてそれらの増殖率を評価した。成長を24時間隔で顕微鏡により評価し、なおアンチセンスやコントロールのオリゴヌクレオチドで処理された培養においてその細胞の生存密度を、トリパンブルー色素排除及び血球計数器を用いて評価した。その光学顕微鏡検査により、アンチセンス処理した細胞はコントロールの細胞と比較しての細胞質総数の増加と、完全な細胞核の低下を示すということが明らかとなった。アンチセンス処理した細胞の成長は、いずれのコントロールと比較しても有意に示された。そのアンチセンス処理された細胞は、細胞結合,細胞質の増加,及び核膜の消失を含むプログラム化された細胞死(アポトーシス)の様々な特徴も示した。ガン細胞中のアポトーシスの誘発はガンを殺す方法なので、ガン細胞を殺すためにアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、SEQ ID NO:12のアンチセンスオリゴヌクレオチド)を治療で用いることができるであろう。
【0132】
別の実験において、RT−PCR法で測定したとき、アンチセンス処理したRKO大腸悪性腫瘍細胞はSIM2短形型mRNAのレベルが低下していることを示した。RKO大腸悪性腫瘍細胞を、300nMのアンチセンス(SEQ ID NO:12)または逆アンチセンス(SEQ ID NO:13)のいずれかで72時間処理した。これらの細胞から得られた全RNAを単離し、逆転写して、そしてcDNAをSEQ ID NO:15(センス)とSEQ ID NO:16(アンチセンス)で示すようなSIM2短形型に特異的なPCRプライマーを用いてPCRで分析した。このプライマー対は、短形型に特有の619塩基対産物の単位複製配列を決定する。C−15=SIM2短形型及びアクチン=ハウスキーピング遺伝子制御。陰性=マイナスPCR制御の鋳型である。
【0133】
同じ細胞において、より多くのゲノムDNAは、処理されたRKO細胞から得られた全ゲノムDNAとハイブリット形成された後、DNAのサザンブロッット解析で測定したとき、コントロールの逆アンチセンスオリゴヌクレオチド処理した細胞に比べてオリゴヌクレオチド処理された細胞において、オリゴソーム(ラダー形成)に変化して分解された。これらの結果によって、アンチセンス(SEQ ID NO:12)は標的タンパク質の特異的な抑制によってガン細胞を殺し、そしてこの抑制結果はアポトーシスを含むということが示された。
【0134】
別の実験において、細胞内のニックDNAを測定するアポタグキット(インターグリン社,NY)を用いて生体位で処理された細胞の中にあるDNAラダーを検査することにより、アンチセンス処理されたアポトーシスの誘発を分析した。このRKO細胞を、SEQ ID NO:12のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はSEQ ID NO:13のコントロール逆アンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれか1つで処理した。アンチセンス処理した細胞はコントロールの逆アンチセンス処理した細胞よりさらに濃く着色された、この場合アポトーシスが起こったことを示している。
【0135】
Bcl−2遺伝子の発現は様々な腫瘍に生成し、腫瘍細胞内のアポトーシスの抑制に関与している。細胞がアポトーシスの発生を受けるならば、細胞によって発現されるbcl−2タンパク質のレベルは低下するであろう。RKO大腸ガン細胞を、300nMのアンチセンス(SEQ ID NO:12)又はコントロールの逆アンチセンス(SEQ ID NO:13)のいずれか一つで72時間処理し、その細胞はbcl−2(サンタクルズバイオテクノロジー)のポリクローナル抗体を用いて免疫組織化学法により分析した。この結果により、アンチセンス処理した細胞はコントロールの逆アンチセンス処理した細胞よりかなり低いレベルのbcl−2を発現することが示された。同様の細胞を用いた別の実験では、コントロールの逆アンチセンス処理された細胞と比較したとき、bcl−2mRNAのレベルがアンチセンス処理された細胞の中で低下した。
【0136】
SIM2短形型発現の抑制やアンチセンスオリゴヌクレオチド処理によって生じる可能性のある毒性をさらに研究するために、SIM2短形型を発現しない乳がん細胞株(MDA−231、ACCTから入手可能)を300nMのアンチセンス(SEQ ID NO:12)又はコントロールの逆アンチセンス(SEQ ID NO:13)のいずれかで72時間処理した。いずれの場合においても、成長の抑制は見られなかった。別の実験において、これらの細胞から得られたDNAはアポトーシスを表すラダーを示さなかった。さらに、例えば、前立腺上皮細胞や腎臓近位上皮性細胞(クロネティクス)などの初期の正常ヒト細胞は、同じアンチセンスで72時間処理した場合、成長抑制を示さず、そしてDNAラダーの形跡は無かった。
【0137】
第28実施例:SIM2アンチセンスオリゴヌクレオチドをもった動物の治療
非放射性Ncr nu/nuマウス(5−6週齢,体重22−24g)に1×106RKO大腸悪性腫瘍細胞を皮下注射した。開始から24時間後、1mg/kgの溶媒(PBS,コントロール),EZ−1(アンチセンス;SEQ ID NO:12)又はEZ−3(逆アンチセンス;SEQ ID NO:13)を、RKO注射の反対側に週に2回注射した(N=6/セット)。これらのオリゴヌクレオチドは、第二の産物のオリゴヌクレオチド(すなわち、ホスホロチオネート2−O−メチルキメラ骨格)オリゴス他「ウィルソンビル」,OR,97070による)として合成され、HPLCによって精製された。そのオリゴヌクレオチドを、注射される前に10mg/ml(原液)をリン酸緩衝生理食塩水(溶媒)で調製した。そのマウスに、10mg/kgの投与量で、溶媒(PBS),EZ−1又はEZ−3のいずれかで28日間週2回皮下投与し、腫瘍のサイズと平均体重を測定した。この処理は21日間続けられた。図1で示されるように、各々の動物における腫瘍量を種々の時点で測定した。左側のグラフは全毒性の測定として平均体重を表し、右のグラフは治療の有効性を表す。EZ−1(アンチセンス;SEQ ID NO:12)で処理されたグループは、コントロールのグループよりかなり遅い腫瘍成長を示した。
【0138】
その他の実施例
本記述は、発明の構成および方法をどのように作り実行することができるかの実施例である。当業者は、種々の内容が変更されてその他の詳述された実施例が成功する際に、様々な詳細が修正されるかもしれないことを認識するであろう、そしてこれらの実施例のその多くは発明の範囲内で生じるであろう。
【図面の簡単な説明】
本発明では、付記される請求項において詳細な事項を示す。本発明の上記及びそれ以上の利点は、添付している図面と併せて以下の説明を参照することによってより理解されるであろう。
【図1】
図1は、動物モデルにおいて、腫瘍細胞の成長におけるSIM2アンチセンスオリゴヌクレオチドの影響を示す一連の二つのグラフである。E−Z−1及びE−Z−3は、それぞれSEQ ID NOs:12及び13に相当する。
関連特許
本出願は、2000年12月22日に出願された米国仮出願第60/257,965号及び2000年8月4日に出願された米国仮出願第60/223,531号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に分子生物学,遺伝子学,生物情報学,病理学,医学の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、選り抜かれたガンにおいて調節される遺伝子発現の新規な有用性に関する。
【0003】
発明の背景
ヒト全ゲノムを配列する最近の努力成果によって、何万もの遺伝子が同定されている。例えば、ベェンターら(2001)サイエンス,291:1304−51参照。この業績にもかかわらず、これらの同定された遺伝子の多くはまだ機能的に明らかになっていない。これらの遺伝子の機能が明らかになれば、それらが種々の異なる病気に関する新たな診断上及び治療上の標的を同定するのに有用であることがわかるだろう。
【0004】
本発明の要約
本発明は、健康な細胞よりも選り抜かれたガン細胞において高レベルで発現する特定のポリヌクレオチド配列の発見に関する。このポリヌクレオチド配列は国立ガン研究所のガン遺伝子分析プロジェクト(CGAP)データベースを分析するためのDDDM(デジタル微分表示ツールを一部改良したもの)としてここで言及される一部改良されたデータマイニングツールを用いて同定された。特に、DDDMは、対応する非ガン組織ライブラリーよりもガン組織ライブラリーにおいてより一般的に、種々の発現遺伝子配列断片(ESTs)を同定するのに用いられた。この同定されたESTsは、ガンと関連する特定の単一遺伝子を同定するのに用いられた。同定されたポリヌクレオチド配列に基づき、発現が大腸ガン,前立腺ガン,膵臓ガンで選択的に増加するSIM2(シングルマインド相同体2(Single Minded homolog2))と称する遺伝子が同定された。
【0005】
天然ヒトSIM2遺伝子は、既にクローニングされ配列が解析されている。クラストら(1997)Genome Res.,7:615−624。2.7,3,4.4,6kbのmRNAを含む数種の異なるmRNAがSIM2遺伝子から発現するということがノーザンブロット分析で示された。多数のmRNAは、5’や3’の非翻訳配列の選択的スプライシング,重複転写又は別の利用のためにあると思われている。SIM2遺伝子の少なくとも2つの異なる形状が特徴付けられている。この長形型(ジェンバンク 登録番号U80456;SEQ ID NO:1)は3901bpであり、74kDの見かけ上の分子量をもつアミノ酸667個のタンパク質をコードする。この短形型(ジェンバンク 登録番号U80457;SEQ ID NO:2)は2859bpであり、64kDの見かけ上の分子量をもつアミノ酸570個のタンパク質をコードする。SIM2タンパク質の両形状のN末端は、ファミリーの別のメンバーであるSIM1と同様に、互いに広範囲な配列の同一性を示す。これらのタンパク質の全N末端には4つの認識ドメイン、すなわちbHLH,PAS1,PAS2とHSTが含まれる。これらのドメインは時々転写因子で見られる。これらのタンパク質のC末端はいくつかの類似点を示すが、独自の配列も含む。
【0006】
SIM2は今までダウン症候群との関連が知られていたが、ガンとの関連は知られていなかった。
【0007】
したがって、本発明は組織試料におけるガンの検出方法を開示する。この検出方法は:(a)この組織試料を準備する工程と;(b)SIM2マーカーの存在によりこの組織試料を分析する工程とを含む。組織試料におけるSIM2マーカーの存在は、この組織試料がガンを含んでいることを示す。本検出方法において、この組織試料は、大腸の組織試料,前立腺の組織試料,又は膵臓の組織試料であってもよい。
【0008】
本発明内で利用されるSIM2マーカーは、例えば、SIM2mRNAや天然SIM2核酸などのSIM2核酸であってもよい。この天然SIM2核酸は、SEQ ID NO:1やSEQ ID NO:2のヌクレオチド配列を有していてもよい。このSIM2マーカーは、天然SIM2タンパク質のような例えば、SEQ ID NO:3やSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有するSIM2タンパク質であってもよい。
【0009】
前述の検出方法において、組織試料を準備する工程は、ヒトの客体から組織試料を入手することを含んでいてもよく;組織試料を分析する工程は、組織試料からRNAを単離し、単離されたRNAからcDNAsを作成し、PCRによってcDNAsを増幅させPCR産物を作成し、PCR産物を電気泳動的に分離し電気泳動パターンを得ることを含んでいてもよい。PCRによってcDNAsを増幅させるこの工程は、例えば、SEQ ID NOs:7,8,15と16のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行うことができる。またこの方法において、PCRによってcDNAsを増幅させるこの工程は、第1のオリゴヌクレオチドプライマーと第2のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行ってもよい。この第1のオリゴヌクレオチドプライマーとしては、SEQ ID NOs:7又は15のヌクレオチド配列が含まれる。この第2のオリゴヌクレオチドプライマーとしては、SEQ ID NOs:8又は16のヌクレオチド配列が含まれる。この方法の特定の実施例において、電気泳動パターンでの472塩基対の核酸の存在は、その組織試料にガンが含まれていることを示す。
【0010】
また前述の検出方法において、SIM2核酸について組織試料を分析する工程は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列,SEQ ID NO:2のアミノ酸配列,SEQ ID NO:1の補体,又はSEQ ID NO:2の補体を有するポリヌクレオチドとハイブリッド形成するオリゴヌクレオチドプローブを組織試料に接触させることを含んでいてもよい。例えば、このオリゴヌクレオチドプローブとしては、SEQ ID NO:9の核酸が含まれる。この方法のオリゴヌクレオチドプローブはまた、検出可能な標識を含んでいてもよい。
【0011】
前述の検出方法の変形例において、SIM2マーカーは天然SIM2タンパク質のようなSIM2タンパク質である(例えば、SEQ ID NO:3やSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有するもの)。この変形例において、組織試料を準備する工程はヒトの客体から組織試料を入手することを含んでいてもよく、そして組織試料を分析する工程は、SIM2タンパク質と特異的に結合するプローブを組織試料の少なくとも一部に接触させることを含んでいてもよい。このプローブとしては、検出可能な標識及び/又は抗体がある(例えば、SEQ ID NO:14のペプチドと特異的に結合する抗体)。この方法の別の変形例において、この組織試料は糞,尿や末梢血から分離された細胞を含む。
【0012】
別の特徴において、本発明はSIM2遺伝子発現の調節方法を開示する。この調節方法は:(a)SIM2遺伝子を発現する細胞を準備する工程と;(b)その細胞内のSIM2遺伝子の発現を調節する薬剤をその細胞に導入する工程とを含む。この薬剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド等のオリゴヌクレオチドであってもよい。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSIM2タンパク質をコード化するポリヌクレオチドとハイブリッド形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてもよく、少なくとも18個のヌクレオチドの長さがありSIM2タンパク質をコード化するアミノ酸の補体である配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。例えば、このアンチセンスオリゴヌクレオチドはSEQ ID NOs:11や12の核酸配列を含んでいてもよい。
【0013】
本発明はまた、細胞内でSIM2遺伝子の発現を調節する被験化合物の同定方法も含む。この同定方法は:(a)SIM2遺伝子を発現する細胞を準備する工程と;(b)被験化合物をこの細胞に接触させる工程と;(c)SIM2遺伝子の発現における調節を検出する工程とを含む。この調節の検出は、被験化合物がSIM2遺伝子の発現を調節することを示す。この同定方法において、この細胞は大腸の組織試料,前立腺の組織試料,又は膵臓の組織試料から得ることができる。また、この同定方法において、SIM2遺伝子の発現における調節を検出する工程は、SIM2マーカーの細胞間濃度における細胞の変化を分析することを含んでいてもよい。
【0014】
さらに、本発明はSIM2タンパク質を発現する細胞を含むガンの生育速度を低下させる方法を開示する。この方法は細胞内のSIM2タンパク質の発現を阻害する薬剤をその細胞に接触させる工程を含む。
【0015】
この薬剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド等のオリゴヌクレオチドであってもよい。例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSIM2タンパク質をコード化するポリヌクレオチドとハイブリッド形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてもよく、少なくとも18個のヌクレオチドの長さがあり、SIM2タンパク質をコード化するアミノ酸の補体である配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。例えば、このアンチセンスオリゴヌクレオチドはSEQ ID NOs:11や12の核酸配列を含んでいてもよい。
【0016】
この方法の変形例において、このガンは大腸ガン,前立腺ガン,又は膵臓ガンであってもよい。また、哺乳類等の動物におけるガンであってもよい。
【0017】
さらに別の特徴において、本発明は細胞内のSIM2遺伝子の発現を調節するキットを開示する。このキットには、細胞内のSIM2遺伝子の発現を調節する薬剤と、細胞内のSIM2遺伝子の発現を調節する薬剤の取り扱い説明書とが含まれる。
【0018】
特に定義しない限り、ここで使用される全ての専門用語は、本発明が属する技術における通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。分子生物学の用語の一般に理解される定義は、リーガーら著(1991)遺伝子学用語集:第5版,スプリンガー−ヴァーラグ:ニューヨーク、及びレウィン著(1994)遺伝子 V,オックスフォード大学出版:ニューヨークにおいて見出すことができる。
【0019】
「遺伝子」と言った専門用語は、特定のタンパク質、又はある場合において、機能上のRNA分子や構造上のRNA分子をコードする核酸分子を意味する。例えば、SIM2遺伝子はSIM2タンパク質をコードする。
【0020】
ここで用いられる「核酸」や「核酸分子」とは、RNA(リボ核酸)及びDNA(デオキシリボ核酸)のような二つ以上のヌクレオチド鎖を意味する。「精製した」核酸分子とは、細胞内の別の核酸配列やこの核酸が天然に存在する生物(例えば、30,40,50,60,70,80,90,95,96,97,98,99,100%汚染物質のない)から実質上分離されるものである。この専門用語には、例えばベクターの中に組み込まれる組換え核酸分子,プラスミド,ウイルス,原核生物や真核生物のゲノムが含まれる。精製核酸の例として、cDNAs,ゲノム核酸のフラブメント,ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって作成される核酸,ゲノム核酸の制限酵素処理によって形成される核酸,組換え核酸,化学的に合成された核酸分子が含まれる。「組換え型」核酸分子は、例えば化学合成や、遺伝子工学の技術で単離された核酸の断片の操作によって、2つの別に分離された塩基配列の断片の人工合成により作り出されたものである。
【0021】
「SIM2遺伝子」,「SIM2ポリヌクレオチド」,又は「SIM2核酸」と言った専門用語は、天然のSIM2をコードする核酸配列を意味し、例えば、天然SIM2遺伝子;天然長形型SIM2cDNA(SEQ ID NO:1);天然短形型SIM2cDNA(SEQ ID NO:2);SIM2cDNAを転写できる配列を持つ核酸;及び/又は前記の対立突然変異体と相同体が挙げられる。この専門用語には二本鎖DNA,一本鎖DNA及びRNAが含まれる。
【0022】
ここで用いられるような、「タンパク質」や「ポリペプチド」は、例えば、グリコシル化やリン酸化の長さや翻訳後の修飾に関係なく、アミノ酸の任意のペプチド結合した鎖を意味している。「精製した」ポリペプチドとは、細胞内の別のポリペプチドやこのポリペプチドが天然に存在する生物(例えば、30,40,50,60,70,80,90,95,96,97,98,99,100%汚染物質のない)から実質上分離されるものである。
【0023】
「SIM2タンパク質」や「SIM2ポリペプチド」と言った専門用語は、例えば、天然長形型SIM2タンパク質(SEQ ID NO:3)、天然短形型SIM2タンパク質(SEQ ID NO:4)や前記のいずれか一つと少なくとも65%(しかし、好ましくは75,80,85,90,95,96,97,98,99%)のアミノ酸配列の同一性を共有し、天然SIM2タンパク質の機能的活性を表すタンパク質のようなSIM2遺伝子の発現産物を意味する。タンパク質の「機能的活性」とは、タンパク質の生理学的機能と関連する任意の活性のことである。例えば、天然のSIM2タンパク質の機能的活性には、DNA結合活性及びある腫瘍性組織における選択的発現が含まれていてもよい。
【0024】
核酸やポリペプチドを示す場合、「天然」と言う専門用語は自然発生的(例えば、「野生型」)な核酸やポリペプチドを示す。SIM2遺伝子の「相同体」とは、ヒト以外の生物から分離されたSIM2ポリペプチドをコードする遺伝子配列のことである。同様に、天然SIM2ポリペプチドの「相同体」とは、SIM2遺伝子相同体の発現産物である。
【0025】
ここで用いられているような、「SIM2マーカー」とは、任意の分子であって、試料(例えば、細胞)内のその分子の存在はSIM2遺伝子がその試料で発現することを示す。SIM2マーカーは、SIM2核酸及びSIM2タンパク質を含む。「SIM2遺伝子を発現する」又はそのような語句は、試料がSIM2の転写産物(例えば、メッセンジャーRNA、すなわち「mRNA」)やSIM2タンパク質をコード化する核酸(例えば、SIM2タンパク質)の翻訳産物を含むことを意味する。細胞が検出可能なレベルのSIM2核酸やSIM2タンパク質を含む時、その細胞がSIM2遺伝子を発現する。
【0026】
SIM2核酸の「フラグメント」は、完全長より短く、ストリンジェントなハイブリッド形成条件下で特に天然SIM2核酸とハイブリッド形成可能な少なくとも最低限の長さからなるSIM2核酸のタンパク質である。そのようなフラグメントの長さは、天然SIM2核酸配列の好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも20ヌクレオチド、最も好ましくは30ヌクレオチドである。SIM2ポリペプチドの「フラグメント」は、完全長(例えば、天然SIM2タンパク質の5,10,15,20,30,40,50,75,100又は100以上のアミノ酸からなるポリペプチド)より短いSIM2ポリペプチドの一部であり、好ましくは天然SIM2タンパク質の少なくとも一つの機能活性を保持する。
【0027】
別に核酸のハイブリッド形成を参照すると、「低ストリンジェンシーの条件」とは10%ホルムアミド,5X デンハルト溶液,6X SSPE,0.2%SDSを含む溶液中での42℃でインキュベーションし、次いで1X SSPE,0.2%SDSを用いた50℃で洗浄することを意味する;「中ストリンジェンシーの条件」とは50%ホルムアミド,5X デンハルト溶液,5X SSPE,0.2%SDSを含む溶液中での42℃でインキュベーションし、次いで0.2X SSPE,0.2%SDSを用いた65℃で洗浄することを意味する;「高ストリンジェンシーの条件」とは50%ホルムアミド,5X デンハルト溶液,5X SSPE,0.2%SDSを含む溶液中での42℃でインキュベーションし、次いで0.1X SSPE,0.1%SDSを用いた65℃で洗浄することを意味する。「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」とは、低,中,高程度のストリンジェンシーの条件を意味する。
【0028】
ここで用いられているような、「配列の同一性」は、二つの塩基配列をサブユニットのマッチングが最大になるように、すなわち隙間と挿入を考慮して並べたときの、二つの塩基配列に対応する位置における同一のサブユニットの百分率を意味する。二つの配列の双方におけるサブユニット位置が同じヌクレオチドやアミノ酸によって占められた場合、例えば、各二つのDNA分子においてアデニンが所定位置を占めたならば、その時その二つの分子がその位置で同一である場合、配列の同一性が存在する。例えば、配列10ヌクレオチドの長さにおいて7つの位置が第2の10ヌクレオチド配列に対応する位置と同一であるならば、その時二つの配列は70%配列の同一性を有する。塩基配列の同一性は、一般的に、塩基配列分析ソフトフェア(例えば、遺伝子コンピューターグループの塩基配列分析ソフトフェアパッケージ、ウィスコンシン大学生物工学センター、WI53705、マディソン、ユニバーシティーアベニュー1710)を用いて測定される。
【0029】
核酸分子における突然変異について参照すると、「サイレント」変異とはヌクレオチド配列における一つ以上の塩基対が置換するものであるが、配列によってコード化されたポリペプチドのアミノ酸配列は置換しない。「保守的な」変異とは、核酸配列によってコード化されたポリペプチドの少なくとも一つのアミノ酸が同様の特性を有する別のアミノ酸と置換するような核酸のタンパク質コード領域において少なくとも一つのコドンを変異させているものである。保守的なアミノ酸置換の例としては、アラニン(ala),トレオニン(thr),システイン(cys)をセリン(ser)に置換した変異;アルギニン(arg)をリシン(lys)に置換した変異;アスパラギン(asn),ヒスチジン(his),リシン(lys)をグルタミン(gln)に置換した変異;アスパラギン(asn)をヒスチジン(his)に置換した変異;アスパラギン酸(asp),リシン(lys)をグルタミン酸(glu)に置換した変異;ヒスチジン(his),グルタミン(gln)をアスパラギン(asn)に置換した変異;グルタミン酸(glu)をアスパラギン酸(asp)に置換した変異;グリシン(gly)をプロリン(pro)に置換した変異;イソロイシン(ile),フェニルアラニン(phe),メチオニン(met),バリン(val)をロイシン(leu)に置換した変異;イソロイシン(ile),ロイシン(leu)をバリン(val)に置換した変異;ロイシン(leu),メチオニン(met),バリン(val)をイソロイシン(ile)に置換した変異;リシン(lys)をアリギニン(arg)に置換した変異;フェニルアラニン(phe)をメチオニン(met)に置換した変異;フェニルアラニン(phe),トリプトファン(trp)をチロシン(tyr)に置換した変異;セリン(ser)をトレオニン(thr)に置換した変異;チロシン(tyr)をトリプトファン(trp)に置換した変異;チロシン(tyr)をフェニルアラニン(phe)に置換した変異が挙げられる。
【0030】
ここで用いられているような、「ベクター」は、別の核酸と連結して、運搬可能な核酸分子のことを指す。好ましいベクターのある種類としてはエピゾームが挙げられ、すなわち、染色体外での複製が可能な核酸である。好適なベクターとは、自律増殖が可能であるもの及びベクターを連結している核酸の発現が可能であるものが挙げられる。操作可能なように連結する遺伝子の発現を指示することができるベクターを「発現ベクター」としてここに言及する。
【0031】
第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能上関係がある状態に置かれる時に、第1の核酸配列は第2の核酸配列と「操作可能に」連結する。例えば、プロモーターがコード配列の転写や発現に作用する場合、プロモーターはコード配列と操作可能に連結する。一般に、操作可能に連結される核酸配列は隣接し、そこではリーディングフレームにおいて二つのタンパク質のコード領域を結合する必要がある。
【0032】
例えば、組換えベクターのような、外来性の核酸を導入している細胞,組織,生物体は「形質転換」,「形質導入」や「遺伝子組換え」であると考えられる。「遺伝子組換え」や「形質転換」された細胞や生物体は、交差において親として「遺伝子組換え」された細胞や生物体等を用いる同系交配から生産される子孫を含み、細胞や生物体の子孫も含む。例えば、SIM2の遺伝子組換え生物体は、SIM2核酸を導入しているものである。
【0033】
「SIM2特異的抗体」という専門用語は、SIM2タンパク質に結合する抗体であり、SIM2タンパク質として同じ抗原決定因子を共有するもの以外に別の天然に生じるタンパク質と実質的に結合しないことを示す抗体を意味する。この専門用語は、抗体フラグメントばかりでなくポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む。
【0034】
ここで用いられている、「結合」,「結合する」,「相互作用する」は、試料で1分子が特定の第2分子を認識し、付着するということを意味するが、その試料で他の構造的に関係のない試料中に存在する分子に実質的に認識または付着しない。一般に、第2の分子と「特異的に結合する」第1の分子は、その第2分子に約105〜106モル/リットルより大きい結合親和性を有する。
【0035】
プローブや抗体に関して、「標識された」という専門用語は、プローブや抗体に検出可能な物質を結合させる(すなわち、物理化学的結合)ことによって直に標識化しているプローブや抗体を含むことを意図している。
【0036】
しかしながら、ここで説明されたものと同様や同等の方法及び材料を本発明の実施や実験で用いることができ、適切な方法及び材料を以下に説明する。ここで言及されたすべての出版物,特許出願,特許権,及びその他の参考文献は、完全に参考文献として組み込まれている。抵触する場合は、定義を含む本明細書は規制される。以下で論議される特定の実施例だけが説明されるが、これに限定されることを意図したものではない。
【0037】
発明の詳細な説明
本発明は、ガンと関連のある遺伝子発現に関する成分および方法を含む。下記に記載の好適な実施例は、これらの成分及び方法の適応を説明する。それでもなお、これらの実施例の説明から本発明の別の特徴を以下に示される説明書に基づいて作成及び/又は実施することが可能である。
【0038】
生物学的方法
通常の分子生物学技法を伴う方法をここに記載する。そのような分子生物学技法は一般に当業者に知られており、分子クローニングなどの手順専門書で詳細に記載される:実験マニュアル,第2版,vol. 1−3 Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; 分子生物学における最近のプロトコール,ed. Ausubel et al., Greene Publishing and Wiley−Interscience, New York, 1992(定期更新)。ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いる種々の技法は、例えば、Innis et al.,PCRのプロトコール:方法及び応用へのガイド,アカデミック出版局:サンディエゴ,1990に記述されている。その目的に合ったコンピュータープログラムを用いる等の既知の技法によって既知の配列からPCRプライマー対を得ることができる(例えば、プライマー, Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge, MA.)。本発明で、あるポリヌクレオチド配列を同定し増幅するのに用いられる逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法としては、エリックら(2000)In Vivo,14:172−182に記述されるように行った。核酸の化学合成法は、例えば、Beaucage and Carruthers (1981), Tetra. Letts. 22:1859−1862 及びMatteucci et al. (1981), J. Am. Chem. Soc. 103:3185に記載されている。核酸の化学合成は、例えば、市販のオリゴヌクレオチド自動合成機で行うことができる。免疫学的方法(例えば、抗原特異的抗体,免疫沈降,免疫ブロットの準備)は、例えば、免疫学における最近のプロトコール,編集者コーリガンら(1991),John Wiley and Sons, New Yorkと、免疫学的分析法,編集者マセイフ ら(1992),John Wiley and Sons, New Yorkに記載されている。遺伝子導入と遺伝子治療の従来の方法も本発明で用いることができる。例えば、遺伝子治療:原理と応用,編集者T.ブラッケンシュタイン(1999),Springer Verlag;遺伝子治療プロトコール(分子医学における方法),編集者P.D.ロビン(1997),ヒューマナ出版;ヒト遺伝子治療のためのレトロベクター,編集者C.P.ハドソン(1996),Springer Verlag参照。
【0039】
SIM2タンパク質をコード化する核酸
本発明で使用する好適な核酸分子としては、登録番号U80456Sとしてジェンバンクに寄託され、SEQ ID NO:1としてここに示される天然SIM2の長形型ポリヌクレオチド、及び登録番号U80457としてジェンバンクに寄託され、SEQ ID NO:2としてここに示される天然SIM2の短形型ポリヌクレオチドがある。本発明の種々の面で用いられる別の核酸は、SEQ ID NOs:3又は4のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする精製核酸(ポリヌクレオチド)を含む。天然SIM2遺伝子は、元来ヒト胎児腎臓cDNAライブラリーからクローニングされたので、本発明のポリペプチドをコード化する核酸分子は、ヒト胎児腎臓cDNAライブラリーやここで記述される従来のクローニング法によるヒト胎児腎臓組織から得ることができる。
【0040】
本発明で利用される核酸分子は、RNAの形状やDNAの形状(例えば、cDNA,ゲノムDNA,合成DNA)であってもよい。このDNAは二本鎖や一本鎖であってもよく、一本鎖ならば暗号(有意)鎖や非暗号(反意)鎖であってもよい。天然SIM2タンパク質をコード化するコード配列は、SEQ ID NOs:1又は2のヌクレオチド配列と同一であってもよく、又はそれが遺伝子コードの重複や縮重の結果として異なるコード配列であってもよく、SEQ ID NOs:1又は2のポリヌクレオチドのような同じポリペプチドをコード化する。本発明内の別の核酸分子は、例えば、天然SIM2タンパク質のフラグメント,類似物,派生物をコード化するもののような種々の天然SIM2遺伝子である。そのような変異体は、例えば、天然SIM2遺伝子の自然に生じる対立形質変異体や,天然SIM2遺伝子の相同体や,天然SIM2遺伝子の自然に生じない変異体であってもよい。これらの変異体は、一つ以上の塩基において天然SIM2遺伝子と異なるヌクレオチド配列を持つ。例えば、このような変異体のヌクレオチド配列は、天然SIM2遺伝子の一つ以上のヌクレオチドの欠失,付加,置換を特徴とすることができる。核酸の挿入は、好ましくは約1〜10の連続したヌクレオチドであり、欠失は、好ましくは約1〜30の連続したヌクレオチドである。
【0041】
別の用途において、コード化したポリペプチドで決して変化しないヌクレオチドを置換させることによって、構造において本質的な変化を示す変異体SIM2タンパク質を作成することができる。このようなヌクレオチドの置換の例としては、(a)ポリペプチド骨格の構造;(b)ポリペプチドの電荷や疎水性;(c)アミノ酸側鎖の大部分において変化させるものである。タンパク質特性において、最大の変化をもたらすと一般に期待されるヌクレオチドの置換は、コドンで革新的な変化を起こすものである。タンパク質構造における多数の変化をもたらす可能性の高いコドン変化の例としては、(a)疎水性残基(例えば、ロイシン,イソロイシン,フェニルアラニン,バリン,アラニン)の代わりに(又は、疎水性残基よって)親水性残基(例えば、セリンやトレオニン)に置換する;(b)任意の別の残基の代わりに(又は、任意の別の残基よって)システインやプロリンに置換する;(c)電気的陰性の残基(例えば、グルタミンやアスパラギン)の代わりに(又は、電気的陰性の残基によって)電気的陽性の側鎖を有する残基(例えば、リシン,アルギニン,ヒスチジン)に置換する;(d)側鎖を一つも持たないもの(例えば、グリシン)の代わりに(又は、側鎖を一つも持たないものによって)大きな側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)に置換するものがある。
【0042】
本発明で天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsの自然に発生する対立形質変異体は、天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsと少なくとも75%(例えば、76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,99%)の同一配列を有し、天然SIM2タンパク質と類似の構造を有するポリペプチドをコード化するヒト組織から分離された核酸である。本発明で天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsの相同体は、天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsと少なくとも75%(例えば、76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,99%)の同一配列を有し、天然SIM2タンパク質と似た構造を有するポリペプチドをコード化する別の種から分離された核酸である。公有の核酸データーベース及び/又は専有の核酸データーベースは、天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsと高パーセント(例えば、70,80,90%又はそれ以上)の配列を有する同一の別の核酸分子を調べることができる。
【0043】
不自然に発生するSIM2遺伝子やmRNAの変異体は、自然に発生せず(例えば、ヒトの手によって作られる)、天然SIM2遺伝子や天然SIM2mRNAsと少なくとも75%(例えば、76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,99%)の同一配列を有し、天然SIM2タンパク質と似た構造を有するポリペプチドをコード化する核酸である。不自然に発生するSIM2遺伝子変異体の例としては、SIM2タンパク質のフラグメントをコード化するもの,ストリンジェントな条件下で天然SIM2遺伝子や天然SIM2遺伝子の補体とハイブリッド形成するもの,天然SIM2遺伝子やその補体と少なくとも65%の同一配列を共有するもの,及びSIM2融合タンパク質をコード化するものである。
【0044】
本発明の天然SIM2タンパク質のフラグメントをコード化する核酸は、例えば、2,5,10,25,50,100,150,200,250,300,又はそれ以上の天然SIM2タンパク質のアミノ酸残基をコード化するものである。天然SIM2タンパク質のフラグメントをコード化する核酸をコード化したり又はその核酸とハイブリッド形成する短いオリゴヌクレオチド(例えば、6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,30,50,100,125,150,200塩基対の長さ)を、プローブ,プライマー,アンチセンス分子として用いることができる。天然SIM2タンパク質のフラグメントをコード化する核酸をコード化したり又はその核酸とハイブリッド形成する長いポリヌクレオチド(例えば、300,400,500,600,700,800,900,1000,1100,1200,1300,1400,1500,1600,1700,1800塩基対)を、本発明の変形例で用いることもできる。完全長の天然SIM2遺伝子,SIM2mRNAやcDNA,または前記の変異体の酵素的消化(例えば、制限酵素を用いて)や化学的分解によって、天然SIM2タンパク質のフラグメントをコード化する核酸を作成することができる。
【0045】
ストリンジェントな条件下で、SEQ ID NOs:1又は2の核酸やSEQ ID NOs:1又は2の補体とハイブリッド形成する核酸を本発明において用いることもできる。例えば、そのような核酸は、低ストリンジェンシーの条件,中ストリンジェンシーの条件,高ストリンジェンシーの条件下で、SEQ ID NOs:1又は2やSEQ ID NOs:1又は2の補体とハイブリッド形成するものであってもよく、それらは本発明の範囲内である。そのような好適な核酸は、SEQ ID NOs:1又は2の全て又は一部の補体であるヌクレオチド配列を有するものである。本発明内の天然SIM2遺伝子の別の変異体は、SEQ ID NOs:1又は2やSEQ ID NOs:1又は2の補体と少なくとも65%(例えば、65,70,75,80,85,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99%)の同一配列を共有するポリヌクレオチドである。
【0046】
ストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する核酸や、SEQ ID NOs:1又は2やSEQ ID NOs:1又は2の補体と少なくとも65%の同一配列を共有する核酸は、例えば、天然SIM2遺伝子における突然変異体の作成や,このような核酸を発現する生物体(例えば、対立形質変異体)から分離することによって当業者は既知の方法によって得ることができる。
【0047】
SIM2融合タンパク質をコードする核酸分子も本発明の範囲内である。SIM2融合タンパク質を発現する作成物(例えば、発現ベクター)を準備することによって、適切な宿主に作成物を導入した時、このような核酸を作成することができる。例えば、このような作成物は、適切な発現系においてこの作成物の発現が融合タンパク質をもたらすような別のタンパク質をコード化する第2のポリヌクレオチドと、フレームに融合するSIM2タンパク質をコード化する第1のポリヌクレオチドとを結合させることによって作成できる。
【0048】
本発明の核酸分子は、例えば、分子の安定性,ハイブリダイゼーションなどを改善するために塩基の一部分,糖の一部分,リン酸骨格を修飾してもよい。例えば、本発明の核酸分子は、例えば、ペプチド(例えば、生体内の標的宿主細胞の受容体),細胞膜を横切る輸送を促進する薬剤(例えば、リスティンガーら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:648−652;PCT公開番号WO88/09810,公開日12.5,1998参照),ハイブリダイゼーションを起こす分割剤(例えば、コールら(1998)Bio Techniques 6:958−976参照),挿入剤(例えば、ゾーン(1998)Pharm. Res. 5:539−549参照)などのグループを活用してもよい。
【0049】
天然SIM2遺伝子のヌクレオチド配列及び天然SIM2タンパク質のアミノ酸配列を用いることを今まで報告したが、当業者は、例えば、標準核酸の突然変異誘発技法や化学合成によって、それらのヌクレオチド配列で少数の変異体を有する核酸分子を作り出すことができる。変異体SIM2核酸分子は、変異体SIM2タンパク質を生成するために発現させることができる。
【0050】
アンチセンス,リボザイム,三重技法
本発明の別の特徴としては、SIM2の発現を抑制する精製されたアンチセンス核酸の使用に関する。本発明内のアンチセンス核酸分子は、SIM2タンパク質の発現を抑制する形、例えば、転写及び/又は翻訳を抑制することによって、SIM2タンパク質をコード化する細胞のmRNA及び/又はゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリッド形成する(例えば、結合する)ものである。この結合とは、従来の塩基対相補性によるものや、例えば、DNA二本鎖と結合する場合、二重らせんの大きな溝に特異的な相互作用を介すものであってもよい。
【0051】
アンチセンス作成物を送達してもよく、例えば、発現プラスミドが細胞内で転写したとき、SIM2タンパク質をコード化するこの細胞のmRNAの少なくとも他と異なる一部と相補性のあるRNAを作成する。あるいは、アンチセンス作成物は、生体外で生成するオリゴヌクレオチドプローブの形をとることができ、SIM2タンパク質発現細胞にアンチセンス作成物を導入したとき、SIM2タンパク質をコード化するmRNA及び/又はゲノム配列とハイブリッド形成することによってSIM2タンパク質発現を抑制する。このようなオリゴヌクレオチドプローブは、例えば、エキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼなどの内因性ヌクレアーゼに抵抗性のあるオリゴヌクレオチドを好ましくは修飾し、その結果生体内で安定である。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いる典型的な核酸分子は、ホスホラミダイト,ホスホチオネート及びメチルホスホネートのDNAの類似物(例えば、U.S. Pat. Nos. 5,176,996;5,264,564;5,256,775参照)である。さらに、アンチセンス治療で有用なオリゴマーを作成する一般的な方法は、例えば、Van der Korl et al.(1988)Biotechniques 6:958−976;Stein et al. (1988) Cancer Res. 48:2659−2668で検討されている。アンチセンスDNAについては、翻訳開始部位から派生するオリゴデオキシリボヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド配列をコード化するSIM2タンパク質の−10と+10領域の間が好ましい。
【0052】
アンチセンスアプローチは、SIM2mRNAと相補性のあるオリゴヌクレオチド(DNAかRNAのどちらか一方)のデザインに関係している。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、SIM2mRNA転写に結合し、翻訳を阻止するであろう。しかしながら好ましくは、絶対的な相補性を必要としない。ハイブリッド形成能力は、相補性の程度とアンチセンス核酸の長さの双方に依存するであろう。通常、ハイブリッド形成する長い核酸は、RNAに多数の不適性塩基を含み、なお、安定な二本鎖や三本鎖を形成してもよい。当業者は、ハイブリッド形成された複合体の融点を測定する一般的な方法によって不適性の許容程度を確認することができる。メッセージの5’末端、例えば、AUG開始コドンを含むまでの5’非翻訳配列と相補性のあるオリゴヌクレオチドは、翻訳を妨げるのにより効率的に作用するであろう。また一方、mRNAsの3’非翻訳配列と相補的な配列は、同様にmRNAsの翻訳を妨げるのに有効であることが示されている(Wagner, R. (1994) Nature 372:333)。したがって、SIM2遺伝子の非コード領域で、5’か3’のいずれか一方の非翻訳配列と相補的なオリゴヌクレオチドを、内因性のSIM2mRNAの翻訳を阻害するためにアンチセンスアプローチで用いることができた。mRNAの5’非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、AUG開始コドンの補体を好ましくは含むべきである。しかしながら、mRNAコード領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、通常翻訳に有効な阻害剤が少ないにもかかわらず、本発明でこれらを用いることができた。SIM2mRNAの5’,3’やコード領域とハイブリッド形成するようにデザインされるであろうが、好ましいアンチセンス核酸は長さが約100未満のヌクレオチドである(例えば、約30,25,20,18未満)。通常、有効であるために、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが18かそれ以上のヌクレオチドであるべきである。ここに、SEQ ID NO:11として典型的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを示す。
【0053】
特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドでは、遺伝子発現を抑制するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの能力を評価するために、試験管内の研究によって効果を調べることができる。このような好適な研究は、(1)オリゴヌクレオチドのアンチセンス遺伝子抑制と非特異的な生物学的影響との間を区別するためにコントロール(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドと同じ大きさの非アンチセンスオリゴヌクレオチド)を利用する,(2)標的RNAやタンパク質のレベルを内部標準RNAやタンパク質のレベルと比較する。
【0054】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドには、少なくとも一つの修飾塩基や修飾糖の一部分が含まれていてもよい。典型的な修飾塩基は、5−フルオロウラシル,5−ブロモウラシル,5−クロロウラシル,5−ヨードウラシル,ヒポキサンチン,キサンチン,4−アセチルシトシン,5−(カルボキシハイドロキシエチル)ウラシル,5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン,5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル,ジヒドロウラシル,ベーター−D−ガラクトシルクエオシン,イノシン,N6−イソペンテニルアデニン,1−メチルグアニン,1−メチルイノシン,2,2−ジメチルグアニン,2−メチルアデニン,2−メチルグアニン,3−メチルシトシン,5−メチルシトシン,N6−アデニン,7−メチルグアニン,5−メチルアミノメチルウラシル,5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル,ベーター−D−マンノシルクエオシン,5’−メトキシカルボキシメチルウラシル,5−メトキシウラシル,2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン,ウラシル−5−オキシ酢酸(V),偽ウラシル,クエオシン,2−チオサイトシン,5−メチル−2−チオウラシル,2−チオウラシル,4−チオウラシル,5−メチルウラシル,ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル,ウラシル−5−オキシ酢酸(V),5−メチル−2−チオウラシル,3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル,(acp3)w,2,6−ジアミノプリンを含む。典型的な修飾糖の一部分は、アラビノース,2−フルオロアラビノース,キシロース,ヘキソースを含む。ある実施例において、本発明のアンチセンスヌクレオチドは、例えば、ホスホロチオネート,ホスホロジチオネート,ホスホラミドチオネート,ホスホラミダイト,ホスホジアミダイト,メチルホスホネート,アルキルホスホトリエステル,ホルムアセタール又はその類似物などの少なくとも一つ修飾したリン酸骨格を含んでもよい。
【0055】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、アルファー−アノマーオリゴヌクレオチドであってもよい。Gautier et al. (1987) Nucl. Acids Res. 15:6625−6641参照。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’−0−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al. (1987) Nucl. Acids Res. 15:6131−6148)やキメラのRNA−DNA類似物(Inoue et al. (1987) FEBS Lett. 215:327−330)であってもよい。
【0056】
例えば、DNA自動合成機の使用などその技術で既知の一般的な方法によって、本発明のオリゴヌクレオチドを合成してもよい。ホスホロチオネートオリゴヌクレオチドは、Stein et al. (1988) Nucl. Acids Res. 16:3209の方法によって合成可能である。メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、制御された孔のガラスポリマー担体を用いることによって調製することができる(Sarin et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448−7451)。
【0057】
本発明は、SIM2を発現する細胞の中に上記で述べた一つ以上の核酸分子を送達する方法も提供する。細胞の中にアンチセンスDNAやRNAを送達するための多くの方法が開発されている。例えば、アンチセンス分子は、電気穿孔法,リポゾーム形質移入,塩化カルシウム形質移入や遺伝子銃の使用によって細胞の中に直に導入することができる。望ましい細胞(例えば、受容体や標的細胞表面上に発現する抗原に特異的に結合するペプチドや抗体と結合するアンチセンスヌクレオチド)を標的とするように計画された修飾核酸分子を用いてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドの高い細胞内濃度に達するために(内因性のmRNA上で翻訳を抑制する必要がある場合)、好ましいアプローチは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強いプロモーター(例えば、CMVプロモーター)の制御下に置かれる組換えDNA作成物を利用する。
【0058】
SIM2mRNA転写を触媒的に切断するようにデザインされたリボザイム分子を、SIM2mRNAの翻訳及びSIM2タンパク質の発現を抑制するために用いることもできる(例えば、Wright and Kearney (2001) Cancer Invest. 19:495;Lewin and Hauswirth (2001) Trends Mol. Med. 7:221;Sarver et al.(1990) Science 247:1222−1225 and U.S. Pat. No. 5,093,246参照)。一例として、標的mRNAが以下の共通の配列:5’−UG−3’を持ちさえすれば、標的mRNAと相補的な塩基対を形成するフランキング領域によって決められる位置でmRNAを切断するハンマーヘッドリボザイムを用いてもよい。例えば、Haseloff and Gerlach (1998) Nature 334:585−591参照。効率を上げ、非機能的mRNA転写の細胞内蓄積を最小限にするため、リボザイムは切断認識部位が標的SIM2mRNAの5’末端の近くに位置するように設計すべきである。本発明のリボザイムを下記に記述するようなベクターを用いて細胞に送達することができる。
【0059】
細胞内のSIM2遺伝子発現を減少させるために別の方法を用いることもできる。例えば、標的とされた相同的組換えを用いてSIM2遺伝子やプロモーターを不活化したり「ノッキングアウト」することによって、SIM2遺伝子発現を減少させることができる。例えば、Kempin et al. (1997) Nature 389:802;Smithies et al. (1985) Nature 317:230−234;Thomas and Capecchi (1987) Cell 51:503−512;Thompson et al. (1989) Cell 5:313−321参照。例えば、生体内でSIM2タンパク質を発現する細胞を移入するために、選択マーカー及び/又は非選択マーカーを用いて又は用いずに、内因性SIM2遺伝子(SIM2遺伝子のコード領域か制御領域のどちらか一方)に対して側面にDNA相同体が並べられた突然変異体である非機能的SIM2遺伝子変異体(又は、完全に関連のないDNA配列)を用いることができる。
【0060】
SIM2遺伝子の制御領域(例えば、SIM2プロモーター及び/又はエンハンサー)に、標的細胞でSIM2遺伝子の転写を防止する三重らせん構造を形成するデオキシリボヌクレオチド配列補体を標的に定めることによってSIM2遺伝子発現を減少させることもできる。一般に、Helene, C. (1991) Anticancer Drug Des. 6 (6) :569−84;Helene, C., et al. (1992) Ann. N.Y. Acad. Sci. 660:27−36;Maher, L.J. (1992) Bioassays 14 (12) :807−15参照。この技法で用いられる核酸分子は好ましくは一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチドからなる。このヌクレオチドの塩基組成は、ホッグスティーン(Hoogsteen)塩基対法則によって三重らせん構造を促進するように選択されるべきであり、二本鎖の一本の鎖に存在するプリンかピリミジンのどちらか一方のかなりの伸展を必要とする。ヌクレオチド配列はピリミジン塩基であってもよく、生じる二重らせんの3本の関連する鎖に渡って、TAT及びCGCになるだろう。ピリミジンの多い分子は、二本鎖の一本の鎖と平行方向に二本鎖の一本の鎖のプリンの多い領域と塩基相補性を備える。加えて、核酸分子は、プリンが多い方を選んでもよく、例えば、G残基の伸展を含む。これらの分子は、GC対で豊富なDNA二本鎖を持つ三重らせんを形成するであろう、そこで多くのプリン残基は標的とされる二本鎖の一本の鎖上に位置し、三重鎖における三本の鎖に渡ってCGCとなる。三重らせん構造を標的とすることができる可能性のある配列は、「スイッチバック」と呼ばれる核酸分子をつくることによって増やすことができる。プリンかピリミジンのどちらか一方のかなりの伸展が二本鎖の一本鎖上に存在するような必要を排除しながら、スイッチバック分子は二本鎖の第1の一本鎖と塩基対をつくり、次いでもう一本の鎖と塩基対をつくるので、交互の5’−3’,3’−5’の様態で合成される。
【0061】
本発明のアンチセンスRNA及びDNA,リボザイム,三重らせん分子をDNA分子及びRNA分子の合成のために、その技術で知られる方法によって調製してもよい。これは、例えば、固相ホスホラミド化学合成などのその技術でよく知られるオリゴデオキシリボヌクレオチド及びオリゴリボヌクレオチドを化学的に合成する技法を含む。アンチセンスRNA分子をコード化するDNA配列の転写を生体外及び生体内で、RNA分子を生成してよい。適切なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込む幅広い種々のベクターの中にこのようなDNA配列を組み込ませてもよい。あるいは、使用されるプロモーターに構成的に又は誘導的に依存するアンチセンスRNAを合成するアンチセンスcDNA作成物を、培養細胞株の中に安定して導入することができる。
【0062】
プローブ及びプライマー
本発明は、オリゴヌクレオチドプローブ(すなわち、例えば、放射性同位元素,リガンド,化学発光剤や酵素などの検出可能な標識やレポータ分子と結合する単離された核酸分子)及びオリゴヌクレオチド(すなわち、プライマーと標的DNA鎖との間にハイブリッド形成するため、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的な標的DNA鎖とアニールすることができる単離された核酸分子、その後、例えば、DNAポリメラーゼなどのポリメラーゼによって標的DNA鎖を次々と伸展させる)も提供する。プライマー対は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)や別の従来の核酸増幅方法によって、核酸配列の増幅を行うことができる。本発明のプローブ及びプライマーは、通常15ヌクレオチドやそれ以上の長さがあり、好ましくは20ヌクレオチドやそれ以上、さらに好ましくは25ヌクレオチド、そして最も好ましくは30ヌクレオチドやそれ以上である。好ましいプローブやプライマーは、高ストリンジェンシーの条件下で、天然のSIM2遺伝子(又はcDNAやmRNA)配列(例えば、SEQ ID NOs:1又は2)とハイブリッド形成するものであり、少なくとも中ストリンジェンシーの条件下でSIM2遺伝子相同体とハイブリッド形成するものである。好ましくは、本発明のプローブ及びプライマーは、天然のSIM2核酸配列と完全に同一の配列をもつ。しかしながら、ストリンジェントな条件下で、天然のSIM2遺伝子配列とハイブリッド形成する能力を維持するこの配列と異なるプローブは、従来の方法によって作成してもよく、本発明で用いることができる。例えば、天然のSIM2遺伝子やcDNAを再クローニング及び配列決定することによって、従来の方法により開示されたSIM2遺伝子配列を確認する(及び、修正のために必要ならば)ために、ここで開示されるSIM2遺伝子配列に基づくプローブ及びプライマーを用いることができる。本発明で使用する特に好ましいプライマーをSEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:8として示す。本発明で使用する特に好ましいオリゴヌクレオチドプローブをSEQ ID NO:9として示す。
【0063】
SIM2タンパク質
別の特徴において、本発明は、本発明の核酸によってコード化される精製されたSIM2タンパク質を利用する。SIM2の好適な形状は、SEQ ID NOs:3又は4の推定されるアミノ酸配列をもつ精製された天然のSIM2タンパク質である。例えば、天然SIM2タンパク質のフラグメント,類似物及び派生物などの種々の天然SIM2タンパク質も本発明の範囲内である。このような変異体は、例えば、天然SIM2遺伝子の自然に生じる対立形質変異体によってコード化されるポリペプチド,天然SIM2遺伝子の別の接合形状によってコード化されるポリペプチド,天然SIM2遺伝子の相同体によってコード化されるポリペプチド,及び天然SIM2遺伝子の自然に生じる変異体によってコード化されるポリペプチドを含む。
【0064】
SIM2タンパク質変異体は、一つ以上のアミノ酸において天然のSIM2タンパク質と異なるペプチド配列を有する。このような変異体のペプチド配列は、天然SIM2ポリペプチドの一つ以上のアミノ酸の欠失,付加,置換を示すことができる。アミノ酸挿入は好ましくは約1〜4の連続したアミノ酸であり、欠失は好ましくは約1〜10の連続アミノ酸である。ある適用において、変異体SIM2タンパク質は、天然SIM2タンパク質の機能的な活性(例えば、ガンとの関連や転写を調節する能力)を実質的に維持する。別の適用については、変異体SIM2タンパク質は、SIM2タンパク質の機能的な活性において著しい減少がないか又は著しい減少を示す。SIM2タンパク質の機能的な活性を保つようにデザインされた場合、サイレント変異や保守的な変異を示す本発明の核酸分子を発現させることによって好適なSIM2タンパク質変異体を作成することができる。機能的な活性において、実質的な変化を有する変異体SIM2タンパク質を、決して保守的な変異を示さない本発明内の核酸分子を発現することによって作成することができる。
【0065】
一つ以上の特有のモチーフ及び/又はドメイン、あるいは任意のサイズ例えば、長さが少なくとも5,10,25,50,75,100,125,150,175,200,250,300,及び350アミノ酸と対応するSIM2タンパク質フラグメントは、本発明の範囲内である。SIM2タンパク質の単離されたペプチジル部は、そのようなペプチドをコード化する核酸の対応するフラグメントから組換えて生成されるペプチドをスクリーニングすることによって得ることができる。加えて、例えば、従来のメリーフィールド(Merrifield)固相f−Moc化学やt−Boc化学などのその技術で既知の技法を用いてフラグメントを化学的に合成できる。例えば、本発明のSIM2タンパク質は、フラグメントの重複のない望まれた長さのフラグメントを任意に分け、好ましくは望まれた長さの重複するフラグメントに分けてもよい。このフラグメントは、天然のSIM2タンパク質の作動剤か拮抗剤のどちらか一方として機能することができるペプチジルフラグメントを同定するために生成(組換えて、あるいは化学的な合成によって)し、検査することができる。
【0066】
本発明の別の特徴は、SIM2タンパク質の組換え形成に関する。天然のSIM2タンパク質に加えて、本発明で望まれる組換えポリペプチドは、SEQ ID NOs:1又は2の核酸配列で少なくとも85%の配列同一性(例えば、85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,100%)をもつ核酸によってコード化される。好適な実施例において、変異体SIM2タンパク質は、天然SIM2タンパク質の一つ以上の機能的活性をもつ。
【0067】
その技術で知られる種々の技法によって、SIM2タンパク質変異体を生成することができる。突然変異誘発によって、例えば、分離した点突然変異を導入することによって、又は切断することによってSIM2タンパク質変異体を作成することができる。突然変異は、実質上同じか単に天然SIM2タンパク質の機能的活性の部分重合をもつSIM2タンパク質変異体を起こすことができる。あるいは、例えば、SIM2タンパク質と相互に作用する別の分子と競争的に結合することによって、タンパク質の自然に起こる形状の機能を阻害することができるタンパク質の反対の形状を作り出すことができる。加えて、一つ以上のSIM2の機能的活性を構成的に発現するタンパク質の拮抗的な形状を作り出すことができる。引き起こすことのできるSIM2タンパク質の別の変異体は、例えば、プロテアーゼ標的配列を変える突然変異のため、タンパク質分解に抵抗力のあるものを含む。ペプチドのアミノ酸配列における変化が天然SIM2タンパク質の一つ以上の機能的活性をもつSIM2タンパク質変異体に帰着するかどうかは、天然SIM2タンパク質の機能的活性に対する変異体を検査することによって容易に決定することができる。
【0068】
別の例として、変性オリゴヌクレオチド配列からSIM2タンパク質変異体を作成することができる。変性遺伝子配列の化学合成はDNA自動合成機で行うことができ、その後合成遺伝子を適した発現ベクターの中に連結する。遺伝子の変性セットの目的は、一つの混合物で潜在的なSIM2タンパク質配列の望まれたセットをコード化する配列の全てを提供することである。変性オリゴヌクレオチドの合成は、その技術でよく知られている(例えば、Narang, SA(1983)Tetrahedron 39:3;Itakura et al.(1981)Rcombinant DNA, Proc 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, ed. AG Walton, Amsterdam:Elsevier pp 273−289;Itakura et al.(1984)Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakura et al.(1984)Science 198:1056;Ike et al.(1983)Nucleic Acid Res. 11:477参照)。このような技法は、別のタンパク質の有向展開で使用されている(例えば、Scott et al.(1990)Science 249:386−390;Roberts et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:2429−2433;Devlin et al. (1990) Science 249:404−406;Cwirla et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378−6382;U.S. Pat. Nos. 5,223,409;5,198,346;5,096,815参照)。
【0069】
同様に、コード配列フラグメントのライブラリーは、一つ以上の天然SIM2タンパク質の機能的活性を有するフラグメントのスクリーニングと後の選択でSIM2タンパク質フラグメントの多彩な個体群を発生させるために、SIM2遺伝子クローンを提供することができる。種々の技法は、化学合成を含むそのようなライブラリーを作成するためその技術で知られている。ある実施例において、コード配列フラグメントのライブラリーは、(i)1分子当たり約1回だけニッキングが起こる条件下でヌクレアーゼを用いてSIM2遺伝子コード配列の二本鎖PCRフラブメントを処理する;(ii)この二本鎖DNAを変性させる;(iii)異なるニックの産物からセンス/アンチセンス対を含有できる二本鎖DNAを形成するためにこのDNAを再生する;(iv)S1ヌクレアーゼで処理することによって再編成された二本鎖から一本鎖部分を除去する;(v)発現ベクターの中にその結果生じるフラグメントライブラリーを連結させることによって作成することができる。この典型的な方法によって、発現ライブラリーは、N末端,C末端及び種々のサイズの内部フラグメントをコード化することで得られる。
【0070】
点突然変異や切断によって作られるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするために、及びある特性を有する遺伝子産物に関するcDNAライブラリーをスクリーニングするために広範囲の技法がその技術で知られている。このような技法は、SIM2遺伝子変異体のコンビナトリアル変異誘発によって起こる遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングを行うのに通常適しているであろう。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするのに最も広く用いられている技法は、複製可能な発現ベクターの中に遺伝子ライブラリーをクローニングし、その結果生じるベクターのライブラリーと適した細胞を形質転換し、望まれる活性の検出が検出された遺伝子産物をコード化するベクターの比較的簡単な分離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現することを含む。
【0071】
コンビナトリアル変異誘発は、例えば、1026分子のオーダーで変異タンパク質の非常に大きなライブラリーを生成する可能性を有する。多くのタンパク質変異体を選別するために、ランダムなライブラリーで非機能的なタンパク質の非常に高い割合を避けることを可能にし、機能的なタンパク質の頻度を容易に増加させる(従って、複雑さを減少させることは、配列スペースの有用なサンプリングを得るのに必須である)技法を用いることができる。例えば、適切な選択やスクリーニング方法が用いられる場合、ライブラリーで機能的な変異体の頻度を増加させるアルゴリズムである帰納的集団変異誘発(REM)を用いてもよい。Arkin and Yourvan(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7811−7815;Yourvan et al.(1992)Parallel Problem Solving from Nature, 2., In Maenner and Manderick, eds., Elsevier Publishing Co., Amsterdam, pp 401−410;Delgrave et al.(1993)Protein Engineering 6(3):327−331。
【0072】
本発明は、天然SIM2タンパク質が相互作用する別のタンパク質や分子とSIM2タンパク質との結合を切ることができる模倣体、例えば、ペプチド剤や非ペプチド剤を生成するSIM2タンパク質の低減も提供する。したがって、例えば、SIM2タンパク質の上流(例えば、SIM2機能的活性の活性化因子や抑制因子)で機能できる別のタンパク質とSIM2タンパク質との結合、又はSIM2タンパク質の下流で機能できるタンパク質や核酸とSIM2タンパク質との結合、及びそのような分子がSIM2タンパク質によってプラスやマイナスに制御されるかどうかに関わる分子間相互作用に関係するSIM2タンパク質の決定因子を染色体上に位置づけるためにここに説明される変異誘発性技法を用いることもできる。分子認識に関与するSIM2タンパク質の重要な残基を説明するために、例えば、SIM2タンパク質や、SIM2タンパク質の上流や下流の別の成分を決定でき、SIM2タンパク質とその成分との結合を競合的に阻害するSIM2タンパク質由来のペプチド模倣体を生成するのに用いることができる。別の細胞外タンパク質との結合に関与するSIM2タンパク質のアミノ酸残基を解読するためにスクリーニング変異誘発を用いることによって、天然SIM2タンパク質のその残基を模倣するペプチド模倣化合物を生成することができる。その結果、SIM2タンパク質の通常の機能を阻害するためにそのような模倣体を用いてもよい。例えば、そのような残基の非加水分解性のペプチド類似体は、ベンゾジアゼピン(例えば、フレディンガーら、ペプチド:化学と生物、編集者G.R.マーシャル、エスコム出版社:ライデン、オランダ、1988を参照),アゼピン(例えば、ハフマンら、ペプチド:化学と生物、編集者G.R.マーシャル、エスコム出版社:ライデン、オランダ、1988を参照),置換されたガンマーラクタム環(ガーベイら、ペプチド:化学と生物、編集者G.R.マーシャル、エスコム出版社:ライデン、オランダ、1988),ケト−メチレン偽ペプチド(エベンソンら(1986)J. Med. Chem. 29:295、そしてエベンソンら、ペプチド:構造と機能、「第9回アメリカペプチドシンポジュームの公報」ピースケミカル社、ロックランド、第3版、1985),ベーター−ターンジペプチド核(長井ら(1985) Tetrahedron Lett 26:647、そして佐藤ら(1986) J. Chem. Soc. Parkin. Trans 1:1231),そしてベーター−アミノアルコール(ゴドンら(1985) Biochem. Biophys. Res. Commun. 134:71)を用いて生成することができる。別の化学的成分、例えば、グリコシル基,脂質,リン酸エステル,アセチル基及びそのようなものと共有結合や凝集結合を形成することによって、SIM2タンパク質誘導体を作成するためにSIM2タンパク質を化学的に修飾してもよい。SIM2タンパク質の共有結合誘導体は、そのタンパク質又はポリペプチドのN末端やC末端のアミノ酸側鎖上にある官能基に化学的な成分を結合させることによって作成することができる。
【0073】
さらに、本発明は客体SIM2タンパク質の製造方法に関する。例えば、ペプチドの発現が起こるように、客体ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列の発現を指示する核酸ベクターが形質導入された宿主を適当な条件下で培養することができる。この細胞を収集し、溶解し、そのタンパク質を単離することができる。イオン交換クロマトグラフィー,ゲルろ過クロマトグラフィー,限外ろ過,電気泳動とそのようなタンパク質に特異的な抗体を用いる免疫親和性精製を含むタンパク質を精製するために、その技術で既知の技法を用いて宿主から組換えSIM2タンパク質を単離することができる。
【0074】
例えば、細胞内でSIM2タンパク質を発現した後、免疫親和性クロマトグラフィーを用いて単離することができる。例えば、抗SIM2抗体(例えば、下記に説明されるように生成される)をカラムクロマトグラフィーマトリックスに固定化することができ、そのマトリックスを標準的な方法(例えば、オースベルら、supraを参照)によって細胞溶菌液からSIM2タンパク質を精製する免疫親和性クロマトグラフィーに用いることができる。免疫親和性クロマトグラフィー後、別の標準的な方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(例えば、フィッシャー、生物化学と分子生物学における実験方法、編集者ワークそしてバードン、エルゼビア、1980を参照)によって、さらにSIM2タンパク質を精製することができる。別の実施例において、その精製を容易にする親和性タグ(例えば、GST)を含む融合タンパク質としてSIM2タンパク質を発現する。
【0075】
SIM2タンパク質に特異的な抗体
本発明で有用な抗体を増加させるためにSIM2タンパク質(又は免疫原性フラグメントやその類似体)を用いることができる。このようなタンパク質は、上記に記述したような組換え技法や合成によって生成することができる。通常、SIM2タンパク質は、例えば、オースベルら、supraに記載されるようなKLHなどの担体タンパク質に結合させ、アジュバントと混合させ、宿主哺乳動物に投与することができる。その後、その動物で生成される抗体をペプチド抗原親和性クロマトグラフィーによって精製することができる。特に、SIM2タンパク質やその抗原性フラグメントを注入することにより種々の宿主動物に免疫を与えることができる。通常用いられる宿主動物は、ウサギ,ネズミ,モルモットとラットを含む。免疫反応を増強するのに用いることができる種々のアジュバントは、宿主の種に依存し、フロイントのアジュバント(完全及び不完全),ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム),表面活性物質(例えば、リゾレチン,プルロニックポリオール,ポリアニオン,ペプチド,油性エマルジョン,キーホールリンペットヘモシニアン,ジニトロフェノール)を含む。別の潜在的に有用なアジュバントはBCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パーバムを含む。
【0076】
ポリクローナル抗体は、免疫が与えられた動物の血清中に含まれる抗体分子の異種の集合体である。したがって、本発明の抗体はポリクローナル抗体、さらにモノクローナル抗体,単鎖抗体,Fabフラグメント,F(ab’)2フラグメント,Fab発現ライブラリーを用いて生成される分子を含む。特異的抗原に対する抗体の単一の集合体であるモノクローナル抗体は、上記に記載のSIM2タンパク質及び標準的なハイブリドーマ技術(例えば、コーラーら(1975)Nature 256:495、コーラーら(1976)Eur. J. Immunol. 6:511、コーラーら(1976)Eur. J. Immunol. 6:292、ハンマーリングら(1981)「モノクローナル抗体とT細胞ハイブリドーマ」エルスビア、ニューヨーク、オースベルらsupraを参照)を用いて作成することができる。特に、例えば、コーラーら, Nature 256:495, 1975と米国特許第4,376,110号;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(コスバーら(1983)Immunology Tody 4:72、コールら(1983)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026)及びEBV−ハイブリドーマ技術(コールら(1983)モノクローナル抗体と癌治療、アラン アール. リス、インク. 77−96ページ)に記載されるような培養で連続的な細胞株による抗体分子の生産を提供するある技法によってモノクローナル抗体を得ることができる。そのような抗体は、IgG,IgM,IgE,IgA,IgDとそのサブクラスを含む任意の免疫グロブリン類であってもよい。本発明のmAbを生産するハイブリドーマは、生体内又は生体外で培養可能である。生体内で高力価のmAbsを生産する能力は、特に有用な生産方法を作り出す。
【0077】
一度生産されたポリクローナル抗体やモノクローナル抗体は、例えば、オースベルらsupraで説明されているような標準的な方法によるウエスタンブロッド法や免疫沈降法によって特異的SIM2認識検査をすることができる。SIM2を特異的に認識し、結合する抗体は、本発明で有用である。例えば、哺乳動物によって生産されるSIM2タンパク質のレベルをモニターするための免疫測定法でこのような抗体を用いることができる(例えば、SIM2タンパク質の量や細胞下の位置を決定すること)。
【0078】
好ましくは、本発明のSIM2タンパク質の選択性抗体は、高い保存領域の外側に位置し、例えば、高頻度の荷電残基などの基準によって抗原性であるかのように見えるSIM2タンパク質のフラグメントを用いて生産される。交差反応性の抗SIM2タンパク質抗体は、この種のタンパク質の膜間に保存されるSIM2タンパク質のフラグメントを用いて生産される。ある具体的な例として、PCRの標準的な方法によってこのようなフラグメントを生産することができ、その後pGEX発現ベクター(オースベルらsupra)内でこのフラグメントをクローニングする。大腸菌で融合タンパク質を発現させ、オースベルらsupraで説明されるようなグルタチオンアガロースアフィニティーマトリックスを用いて精製する。
【0079】
ある場合において、抗血清の低親和性や特異性の潜在的な問題を最小限にすることが望まれる。そのような場合、一つのタンパク質当り2つか3つの融合物を生成することができ、各融合物を少なくとも二匹のウサギに投与することができる。好ましくは少なくとも3回の免疫追加注射を含み、一連の投与により抗血清を増加させることができる。また抗血清は、組換えSIM2タンパク質やコントロールタンパク質(例えば、糖質コルチコイド,CAT,ルシフェラーゼなど)を免疫沈降することによってその能力がチェックされる。
【0080】
例えば、生物学的試料においてSIM2タンパク質の検出に本発明の抗体を用いることができる。SIM2タンパク質の発現や局在化上の候補化合物の効果を測定するためのスクリーニング検査で抗体を用いることもできる。さらに、SIM2タンパク質とSIM2タンパク質に結合する別の分子との相互作用を妨げるためにこのような抗体を用いることができる。
【0081】
SIM2タンパク質やそのフラグメントに備えて単鎖抗体を作成するために、単鎖抗体の生成が記載された方法(例えば、米国特許第4,946,778号,4,946,778号,4,704,692号)を適応することができる。アミノ酸架橋を介してFv領域のH鎖とL鎖を結合することによって形成することができ、その結果単鎖ポリペプチドになる。
【0082】
特異的なエピトープを認識し、結合する抗体フラグメントを既知方法によって生成することができる。例えば、このようなフラグメントは、抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab’)2フラグメント、及びF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を変形することによって生成されるFabフラグメントを含むがこれに限定されるものではない。あるいは、望まれた特性をもつモノクローナルFabフラグメントの迅速で容易な同定を可能にするためFab発現ライブラリーを構成することができる(ヒューズら(1989)Science 246:1275)。
【0083】
既知の方法を用いて、SIM2タンパク質と特異的に結合するヒトの抗体やヒト類似生物の抗体を生成することもできる。例えば、血清中にこのような抗体を有するヒト客体、例えば、SIM2タンパク質に備えて抗体産生を刺激する抗原が与えられた客体からポリクローナル抗体を採取することもできる。別の例として、SIM2タンパク質に対してヒト抗体を、例えばマウスのような動物の中でヒト抗体を生成する既知の方法を適用することによって作成することもできる。例えば、Fishwild, D. M. et al., Nature Biotechnology 14(1996):845−851;Heijnen, I. et al., Journal of Clinical Investigation 97(1996):331−338;Lonberg, N. et al., Nature 368(1994):856−859;Morrison, S. L., Nature 368(1994):812−813;Neuberger, M., Nature Biotechnology 14(1996):826;米国特許第5,545,806号;5,569,825号;5,877,397号;5,939,598号;6,075,181号;6,091,001号;6,114,598号;6,130,314号;参照。SIM2備えてヒト類似生物の抗体を、例えば、米国特許第5,530,101号;5,585,089号;5,693,761号;5,693,762号に記載されるような既知の方法を適応することによってヒト以外の抗体から作成することができる。
【0084】
SIM2と結合するタンパク質
本発明は、SIM2タンパク質と結合するポリペプチドを同定する方法も開示する。タンパク質とタンパク質の相互作用を検出するのに適する任意の方法は、SIM2タンパク質と結合するポリペプチドを検出するのに用いることができる。このような方法の例としては、細胞可溶化物とSIM2タンパク質の使用から得られる細胞可溶化物やタンパク質の勾配やクロマトグラフィーカラムを通して免疫共沈降,架橋と同時精製が含まれ、SIM2タンパク質と相互作用するこの細胞可溶化物の中のタンパク質を同定する。これらの分析について、SIM2タンパク質は、完全長のSIM2タンパク質,SIM2タンパク質の特定のドメイン又はある別の適当なSIM2タンパク質であってもよい。一度単離されたこのような相互作用するタンパク質を同定し、クローン化し、その後、それが相互作用するSIM2タンパク質の活性を変えるために標準的な技法と併せて使用することができる。例えば、その技術の当業者によく知られる技法、例えば、エドマン分解法を用いてSIM2タンパク質と相互作用するタンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部を明らかにすることができる。得られたこのアミノ酸配列は、相互作用するタンパク質をコード化する遺伝子配列を選別するために用いることができるオリゴヌクレオチド混合物の産生の導きに使用することができる。例えば、標準的なハイブリダイゼーションやPCR法によって、スクリーニングを行うことができる。オリゴヌクレオチド混合物の産生法及びこの技法はよく知られている(Ausubel et al., supra;and ”PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications”,Innis et al., eds. Academic Press, Inc., NY, 1990)。
【0085】
さらに、SIM2タンパク質と相互作用するタンパク質をコード化する遺伝子を直に同定する方法を用いることができる。これらの方法は、例えば、ラベル化されたSIM2タンパク質やSIM2融合タンパク質(例えば、酵素,蛍光染料,蛍光タンパク質などのマーカーやIgFcドメインと融合されるSIM2タンパク質やドメイン)を用いて、lgt11ライブラリーの抗体探索のよく知られる技法と同様の方法で発現ライブラリーをスクリーニングすることを含む。
【0086】
生体内でタンパク質とタンパク質の相互作用を検出できる利用可能な方法もある。例えば、ここで説明されるように二重ハイブリッドシステムは、生体内でこのような相互作用を検出するのに用いることができる。例えば、Chien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9578,1991参照。要するに、このようなシステムを利用する一つの例として、二重ハイブリッドタンパク質をコード化するプラスミドを作成する:一つのプラスミドには、SIM2タンパク質,SIM2タンパク質変異体やSIM2融合タンパク質をコード化するヌクレオチド配列と融合される転写活性因子タンパク質のDNA結合ドメインをコード化するヌクレオチド配列が含まれ、もう一方のプラスミドには、cDNAライブラリーの一部としてこのプラスミドに組み込まれている未知のタンパク質をコード化するcDNAと融合される転写活性因子タンパク質の活性化ドメインをコード化するヌクレオチド配列が含まれる。転写活性因子の結合部位を含むレポータ遺伝子(例えば、HBSやlacZ)の制御領域を包含する酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の菌株に、DNA結合ドメイン融合プラスミド及びcDNAライブラリーを形質転換する。どちらのハイブリッドタンパク質も単独では、レポータ遺伝子の転写を活性化することはできない:このDNA結合ドメインハイブリッドは活性化機能を備えていないために活性化できず、そしてこの活性化ドメインは活性因子の結合部位に位置することができないため活性化できない。この二重ハイブリッドタンパク質の相互作用は機能的な活性因子タンパク質を再構成し、レポータ遺伝子産物の分析で検出されるレポータ遺伝子が結果として発現する。
【0087】
「 ベイト(bait)」遺伝子産物と相互作用するタンパク質の活性化ドメインライブラリーを選別するために、二重ハイブリッドシステムや同様の方法を用いることができる。限定するつもりはないが、一例として、SIM2タンパク質をこのベイトとして用いてもよい。全ゲノム配列やcDNA配列は、活性化ドメインをコード化するDNAと融合する。このライブラリーと、DNA結合ドメインと融合されるベイトSIM2タンパク質のハイブリッドをコード化するプラスミドとを酵母レポータ菌株に同時形質転換し、その結果生じる形質転換体からレポータ遺伝子を発現するものを選別する。例えば、ベイトSIM2遺伝子配列、例えば、SIM2タンパク質やSIM2タンパク質のドメインをコード化するような遺伝子配列を、GAL4タンパク質のDNA結合ドメインをコード化するDNAと翻訳後に融合されるようなベクターでクローン化できる。これらのコロニーを精製し、レポータ遺伝子発現を引き起こすこのライブラリープラスミドを単離する。その後、ライブラリープラスミドによってコード化されたタンパク質を同定するためにDNA配列決定を用いる。ベイトSIM2タンパク質と相互作用し、検出されるタンパク質から株化細胞のcDNAライブラリーは、その技術で通常行われる方法を用いて作成できる。ここに記述される特定のシステムによれば、例えば、cDNAフラグメントをGAL4の転写活性化ドメインと翻訳後に融合されるようなベクターに挿入することができる。GAL4活性化配列を含有するプロモーターによって促進されるlacZ遺伝子を含む酵母菌株の中に融合プラスミドをコード化しているSIM2−GAL4と共に、このライブラリーを同時形質転換することができる。GAL4の転写活性化ドメインと融合し、ベイトSIM2タンパク質と相互作用するコード化されたcDNAは、活性化GAL4タンパク質を再構成し、その結果、HIS3遺伝子が発現する。その後、HIS3を発現するコロニー菌株から精製し、生産するために使用し、その技術で通常行われている技法を用いてベイトSIM2タンパク質と相互作用するタンパク質を単離することができる。
【0088】
SIM2ポリヌクレオチドとタンパク質の検出
本発明は、生物学的試料においてSIM2タンパク質やSIM2核酸の存在の検出方法の他に、生物学的試料においてSIM2タンパク質やSIM2核酸のレベルの測定方法も包含する。このような方法は、SIM2発現と関連するガン(例えば、大腸ガン)の診断に有用である。
【0089】
生物学的試料においてSIM2タンパク質や核酸の存在や不存在の典型的な検出方法は、被験客体から生物学的試料を得て、SIM2タンパク質(例えば、mRNAやゲノムDNA)をコード化するSIM2タンパク質や核酸を検出可能な化合物や作動剤を生物学的試料に接触させ、洗浄後この試料とこの化合物や作動剤との結合を分析することを含む。化合物や作動剤と特異的な結合を有するこれらの試料はSIM2タンパク質をコード化するSIM2タンパク質や核酸を発現する。
【0090】
SIM2タンパク質をコード化する核酸を検出する好ましい作動剤とは、SIM2タンパク質をコード化する核酸とハイブリッド形成可能な標識化された核酸プローブである。この核酸プローブは、例えば、SIM2遺伝子自身(例えば、SEQ ID NOs:1又は2の配列を有する核酸分子)の全てか一部、又はSIM2遺伝子の補体の全てか一部であってもよい。同様に、このプローブはSIM2遺伝子変異体の全てか一部、又はSIM2遺伝子変異体の補体の全てか一部であってもよい。例えば、ストリンジェントな条件下で天然SIM2核酸や天然SIM2核酸の補体と特異的にハイブリッド形成する少なくとも15,30,50,100,250又は500ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを本発明でプローブとして用いることができる。好ましいプローブは、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有する。SIM2タンパク質を検出する好ましい作動剤は、SIM2タンパク質と結合可能な抗体であり、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。このような抗体はポリクローナルであってもよく、さらに好ましくはモノクローナルである。完全な抗体やそのフラグメント(例えば、FabやF(ab’)2)を用いることができる。
【0091】
生体外と同様に生体内において、生物学的試料でSIM2タンパク質をコード化しているmRNA,SIM2タンパク質をコード化しているゲノムDNA,SIM2タンパク質を検出するために本発明の検出方法を用いることができる。例えば、生体外においてSIM2タンパク質をコード化しているmRNAsの検出法は、PCR増幅法,ノーザンブロット法,ハイブリット形成法を含む。生体外においてSIM2タンパク質の検出法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISAs),ウエスタンブロット法,免疫沈降法と免疫蛍光法を含む。生体外においてSIM2をコード化しているゲノムDNAの検出法は、サザンブロット法を含む。さらに、生体内においてSIM2タンパク質の検出法は、生物学的試料や被験客体に標識された抗SIM2抗体を導入することを含む。例えば、生物学的試料や被験客体において、放射性マーカーの存在と位置を示す標識をつけることのできるこの抗体は、画像処理技術によって検出することができる。
【0092】
SIM2タンパク質と相互作用する化合物のスクリーニング
本発明は、SIM2タンパク質と特異的に結合する化合物の同定法も含む。その一方法は、精製され固定化されたSIM2タンパク質と少なくとも一つの被験化合物を準備する工程;この被験化合物をこの固定化されたSIM2タンパク質に接触させる工程;この固定化されたタンパク質と結合していない物質を洗い流す工程;この被験化合物がこの固定化されたタンパク質と結合したかどうかを検出する工程を含む。固定化されたタンパク質と結合したままのこの化合物は、SIM2タンパク質と特異的に結合するものである。
【0093】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。実施例は、本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、好適な実施例の例示と解されるべきである。
【0094】
第1実施例:DDDMを使用したCGAPデータベースデータマイニングによる腫瘍関連発現遺伝子配列断片(EST)の同定
CGAPデータベースにアクセス(http://www.cgap.gov)し、そしてここに記載されているように改良されたデータベースの使用説明書に準じてデジタル微分表示(DDD)ツールを使用した。DDDは、種々のライブラリーからESTsが特別なユニジーンの集団に割り当てられる回数を比較するためにユニジーンデータベースを使用する。2つのウェブサイト(http://www.ncbi.nim.nih.gov/Omim/)及びジーンカードサイト(http://bioibformatics.weizmann.ac.il/cards/)から作成された情報を使用して、既知のヒットを主な集団に分類した。新規のESTsは別々のデータベースでまとめられ、腫瘍及び組織の選択的な遺伝子の発見を容易にするために、各ヒットに対して組織から得られた所定のcDNAライブラリーの中の所定のESTの存在または不存在を予測する目的で、ユニジーンデータベースにアクセスして、電子表示プロファイル(E−ノーザン)を開設した。
【0095】
6つの異なる固形の腫瘍から生成されたESTsライブラリー(乳房,大腸,肺,卵巣,膵臓,及び前立腺)に対応する正常組織で生成されたライブラリーは、DDD(N=110)から選択された。ESTに特異的な腫瘍と臓器の同定において、全ての他の臓器及び腫瘍から生成されたESTライブラリー(N=327)は、6つの腫瘍形態との比較のために選択された。ライブラリー(正常,前腫瘍または腫瘍)の種類は、CGAPデータとユニデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene)を比較することにより確認した。2つのデータベース間の定義との矛盾を示すこれらの少数のライブラリーを排除した。
【0096】
DDDは各臓器の種類に応じて行われた。DDDは、オンラインツールを用いるDDD2法に適した腫瘍(プールA)と対応する正常臓器(プールB)、又はDDD1法に適したEST(プールA)と対応する正常臓器(プールB)を含む他の全臓器と腫瘍から腫瘍から得られたcDNAライブラリーからESTsを用いて行った。その出力は、ユニジーン集団に位置づけられたそのプールの内部にある配列の断片を示す各プールにおける絶対値と絶対値に対応するドットの強度を示した。DDDMはこのデータから比較されるライブラリー間の折り重なりの相違を計算するために使用した。DDDMの詳細な説明については、2000年4月28日出願の米国仮出願第60/200,292号を参照。DDD分析から得られた数値は、プールA/プールBの比として表した。下記に記載される実施例で説明するように、DDDM分析は腫瘍で排他的な存在や不存在を予測されたESTを迅速に同定する結果となった。
【0097】
第2実施例:逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)解析
RT−PCRは、ヒト組織ネットワーク協同体(CHTN,バーミンガム,アラバマ)から得られた腫瘍及び正常な組織で行われた。全RNAはトリゾールによって単離された(ライフテクノロジーズ,ゲーサーズバーグ,MD)(エレケットアル,「インビボ」14:172−182,2000年を参照)。ランダム六量体及びスパースクリプト逆転写酵素(ライフテクノロジーズ)を用いて、全RNAの1マイクログラムを逆転写した。遺伝子に特有のプライマーを使用し、cDNAの1/4をPCRで増幅した。PCRプライマーは、ワールドワイドウェブ上のプライマー3プログラム(http://www−genome.wi.mit.edu//cgi−bin/primer/primer3_www.cgi)を使用して設計されたものである。プライマーの選択パラメーターは(1)プライマーのサイズ=20〜24塩基対,(2)アニーリング温度=60〜65℃,(3)GC含量=最小値50%,(4)自己相補性=なし;及び,(5)非重複性ESTの相同性=なしである。各々のPCRプライマーの配列は、選択されたEST配列に対して100%の相同性を確保するためにBLAST算法を使用しているNCBIESTデータベースに対して確認された。
【0098】
SIM2短形型核酸(SEQ ID NO:2)を検出するために、SEQ ID NO:14(センス)及び15(アンチセンス)としてここに示された配列をもつPCRプライマーが選ばれた。別の場合においては、SEQ ID NO:7(センス)及び8(アンチセンス)として、ここに示された配列をもつPCRプライマーを使用してSIM2を検出した。このPCRのパラメーターは、94℃で7分後、94℃で45秒,62℃で45秒,72℃で90秒の条件で、35〜40周期で増幅しそして最後に、パーキンエルマー9600により72℃で10分間伸長させた。RT−マイナスコントロール及びゲノムDNAコントロールは、RTから得られた産物(例えばエルク他,アンチキャンサーレス,20:53−58,2000参照)を確認するために通常用いられた。増幅された産物の1/2は、2%アガロースゲル上で電気泳動により単離され、そしてそのゲルのエチジウムブロマイド染色を施すことによって検出された。PCRにより増幅された産物は、端末に標識化された内部のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリット形成することにより確認された。RNAの性質を確認するために、内部標準アクチンRT−PCRが全試料上で同時に行われた。
【0099】
第3実施例:大腸に特異的なESTsのRT−PCR検証
DDDMにより同定された大腸に特異的なESTsを、組織試料において特異的な発現のRT−PCR検証のために選択した。プライマーを実施例2で記載されたように設計した。正常組織及び大腸腫瘍の適合した1組からランダムにプライマー化されたcDNAを、逆転写酵素(RT)を用いて作成し、同定された17個のEST(エレク他,「インビボ」14:172−182,2000参照)のそれぞれに対して分析を行った。分析された17個のESTの中でユニジーンHs.#146186に属する1つのESTは、大腸腫瘍組織の中で存在したが、正常組織の中では存在しなかった。これらの実験において、ユニジーン#146186は472塩基対のRT依存PCR産物を示した(SEQ ID NO:10を参照)。この産物はコントロールのRT−マイナス反応では見られなかった。ユニジーン#146186はその集団に与えられる7個のESTを持っている。このユニジーンの最長EST(ジェンバンク番号#AI7333801)の配列は、長さで541塩基対あり(SEQ ID NO:5)、1001塩基対のコンティグ(SEQ ID NO:6)として伸長可能であった。このヌクレオチド配列データベースに対するコンティグ配列の整列は、シングルマインド遺伝子2(single minded gene2)(SIM2,ジェンバンク登録番号U80456)と称する遺伝子に対して非常に高い相同性を示した。このSIM2遺伝子は、染色体21(21q22.2)にあるダウン症候群染色体座に位置し、推測される転写因子である。SIM2タンパク質は、発育上制御され、そして特に腎臓において、胎児と大人の組織で非常に制限された発現を示すが、その他のほとんどの正常組織においては見られない(クラスト他,「ゲノムリサーチ」7:615−624,1997年)。SIM2遺伝子は転写因子であると思われる、なぜなら既知の二量化モチーフを有するからである。セリン/スレオニン/プロリンの多くある領域に対してコード化するSIM2遺伝子のC末端は、転写抑制物質及び転写活性物質の両方において見られる。そして、SIM2遺伝子のC末端部分は、その他の既知の転写活性物質(へリックス・ループ・へリックス及びPASタンパク質のような物質)から分岐するので、SIM2遺伝子は転写抑制物質と考えられる(クラスト他,「ゲノムリサーチ」7:615−624,1997年)。
【0100】
SIM2タンパク質の発現は発育上制御化され、特に腎臓において、胎児と大人の組織で非常に制限された発現をする示すが、その他のほとんどの正常組織においては見られない(クラスト他,「ゲノムリサーチ」7:615−624,1997年)。それはダウン症候群の発生に対して非常に重要な遺伝子であると見られているが、ガンとの関係は知られていない。SIM2遺伝子によってコード化されたタンパク質は、種々の遺伝子の転写活性化と抑制化の双方に対して別のタンパク質因子と同様の働きをする。
【0101】
この実施例の実験の中で、SEQ ID NO:7(センス)及びSEQ ID NO:8(アンチセンス)の核酸は、腫瘍組織と正常組織の適合した1組からSIM2の発現を比較するために、RT−PCRプライマーとして用いられた。このcDNAsは、逆転転写酵素があってもなくても作られ、プライマーとしてSEQ ID NO:7及び8の核酸を用いてPCRにより増幅された。増幅後、この生成物をアガロースゲル電気泳動にかけた。このゲルをエチジウムブロマイドで染色し、核酸に対応するバンドをUV照射により視覚化した。電気的な予測を続けた結果、増幅された472塩基対の産物が、大腸腫瘍組織で検出されたが、正常大腸組織では検出されなかった。そのPCR産物は、RT依存性であった。
【0102】
第4実施例:オリゴヌクレオチドプローブを使用したハイブリット形成によるSIM2遺伝子の検出
32P−dNTPで標識されたオリゴヌクレオチドプローブを使用してSIM2遺伝子を検出した。SEQ ID NO:9に対応するオリゴヌクレオチドを合成し、次にポリヌクレオチドキナーゼを使ってガンマ32P−dATPで端部を標識化した。RT−PCR産物を8種類の異なる腫瘍及び正常大腸組織試料の適合した1組からRTが存在してもしなくとも作成し、ニトロセルロース細胞膜に移し、そして32Pで標識されたオリゴヌクレオチドプローブとハイブリット形成した。このプローブは腫瘍から得られたcDNAの中で472塩基対産物とハイブリット形成したが、正常組織cDNA中ではしなかった。
【0103】
第5実施例:多様な正常ヒト組織におけるSIM2発現の欠如
大腸組織内のSIM2遺伝子の発現特性を評価するために、正常ヒト組織から生成されたcDNAのパネルをクロンテック研究所(パロアルト,CA)から得た。これらのcDNAは、SEQ ID NO:7及び8として個々に記載されているセンスプライマーとアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅を行なった。これらのcDNAのRT−PCR分析は、本明細書に記載されているように行った。SIM2遺伝子は腎臓と扁桃腺で検出されたが、心臓,脳,胎盤,肝臓,骨格筋,脾臓,胸腺,精巣,末梢血リンパ球,リンパ節,骨髄,胎児肝臓,乳房,大腸,肺,卵巣,膵臓,及び前立腺では検出されなかった。試料は、内部標準としてアクチン発現に対して同時に分析された。
【0104】
第6実施例:非大腸から摘出された固形腫瘍におけるSIM2遺伝子発現
大腸腫瘍におけるSIM2発現の特性をさらに評価するために、5つの別の固形腫瘍(乳房,肺,卵巣,前立腺及び膵臓)から摘出されたランダムプライマー化されたcDNAを本明細書に記載されているRT方法を用いて作成した。これらのcDNAをSEQ ID NO:7及び8に記載されているセンス及びアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅を行なった。増幅された産物は、大腸,前立腺及び膵臓腫瘍から検出されたが、乳房,肺または卵巣腫瘍からは検出されなかった。この試料は、内部標準としてアクチン発現に対して同時に分析された。
【0105】
第7実施例:ガンに対する創薬を促すための細胞培養モデルの同定
大腸ガン(SW−480,HCT−116,RKO,及びOM−1),膵臓ガン(CAPAN−1,CAPAN−2,HPAC及びBxPc3)及び前立腺ガン(LN−CAP,DU−CAP,及びPC−3)から摘出された株化細胞中のSIM2の発現を詳しく研究した。cDNAを全系統から作成し、SEQ ID NO:7及び8のプライマーを用いてRT−PCRによって増幅した。増幅後、その産物をアガロースゲル電気泳動にかけた。このゲルをエチジウムブロマイドで染色して、核酸に対応するバンドはUV照明を用いて視覚化された。SIM2の発現は、全3種の腫瘍形態を表す異なる株化細胞の全てから検出された。
【0106】
第8実施例:大腸腫瘍に特異的なSIM2遺伝子の促進
SIM2遺伝子の発現が大腸腫瘍に特有のものであるという更なる証明は、14種の適合した正常組織または腫瘍大腸組織に由来するcDNAを使用して得られた。ランダムプライマー化したcDNAをこれらの組織から得られた全RNAから生成し、そしてcDNAをSEQ ID NO:7及び8に記載されたセンス及びアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅した。増幅後、その産物をアガロースゲル電気泳動にかけた。その後、その産物をニトロセルロースに移し、そしてSIM2遺伝子に対して特異的にハイブリット形成する32Pで標識されたオリゴヌクレオチドプローブとハイブリット形成した。その結果、SIM2遺伝子は、大腸腫瘍の各組織の中で促進したが、その適合した正常組織では促進しなかった。
【0107】
第9実施例:初期大腸腫瘍におけるSIM2発現の検出
SIM2遺伝子の発現をヒトの客体から単離されたポリープ,腺腫及び悪性腫瘍を含む大腸ガンの初期段階から得られたcDNAを使用して分析した。ランダムプライマー化されたcDNAをこれらの組織から得られた全RNAから生成し、そのcDNAをSEQ ID NO:7や8に記載されているセンスとアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅した。増幅後、生産物をアガロースゲル電気泳動にかけた。SIM2発現は、ポリープ,腺腫,及び悪性腫瘍組織試料分析で検出されたが、正常大腸組織では検出されなかった。実施例8で記載したプローブ、またはポリープや腺腫などの初期段階(例えば、早期ガン性の段階)の大腸腫瘍においてSIM2遺伝子の発現を検出するための類似プローブとして特に用いることができるであろう。
【0108】
第10実施例:前立腺腫瘍に特異的なSIM2遺伝子の促進
SIM2遺伝子発現は、ヒトの客体から単離された前立腺ガン及び株化細胞から得られた前立腺腫瘍でも検出された。ランダムプライマー化されたcDNAを前立腺腫瘍,良性前立腺過形性(BPH)及び正常組織から得られた全RNAから生成し、このcDNAをSEQ ID NO:7及び8に記載されているセンス及びアンチセンスプライマーを使用してPCR−増幅した。増幅後、産物をアガロースゲル電気泳動にかけた。そのゲルをエチジウムブロマイドで染色し、核酸に対応するバンドはUV照明を使用して視覚化された。その結果は、SIM2遺伝子の発現が、株化細胞,良性前立腺過形性及び腫瘍中で検出されるが、正常前立腺では検出されないということを示した。
【0109】
第11実施例:診断方法
SIM2遺伝子の発現の評価は、ガンの診断方法として特に想定される。この方法において、検査される組織を、患者(例えばポリープ,腫瘍,悪性腫瘍等からの細胞は定期結腸鏡検査から得られる)から摘出した。その後、これらの細胞から得られた全RNAを、cDNAを開始するためにランダムプライマー又はオリゴdTのどちらかを用いてcDNAに転換した。得られたcDNAをSEQ ID NO:7及び8として本明細書に記載されているセンス及びアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅した。PCR増幅された産物を、その後アガロースゲル電気泳動にかけ、その後ゲルを核酸バンドとして視覚化されるように染色した。472塩基対の生産物の存在はガンが存在する可能性を示唆するものである。
【0110】
第12実施例:ハイブリッド形成によるSIM2遺伝子の検出
ハイブリット形成法技術を用いて、SIM2遺伝子の発現をSEQ ID NO:9としてここに記載されているオリゴヌクレオチドプローブによって検出することができる。このオリゴヌクレオチドは放射性又は非放射性のラベルで標識化され、そして標識化されたプローブは、フィルタ(例えば、ニトロセルロース)の上に産物を移動させることによって、ノザンブロット法で分析される試料から得られたRNAと反応させる。この方法は、分析された試料に含まれるゲノムDNAから生成されるRT−PCR反応産物のサザンブロット法でも実施可能である。オリゴヌクレオチドプローブとハイブリット形成した後、そのフィルタを洗浄し,X線フィルムにさらし,そしてオートラジオグラフにかけた。プローブとハイブリット形成されたバンドは、オートラジオグラムにより確認することができる。そのオリゴヌクレオチドプローブは、組織内のSIM2遺伝子の発現を直接検出するためにハイブリッド形成反応を用いることもできる。
【0111】
第13実施例:転移性のガン細胞の検出
転移性ガン細胞検出の方法が、特に想定される。この方法は、被験者(例えば、ガン患者)から得られた組織試料を含み、状況に応じてこの試料から核酸(例えば、PCR増幅によって)又はタンパク質を単離し、SIM2ゲノムDNA,mRNAやcDNA,又は対応するポリペプチド産物(例えば、SIM2タンパク質)に特異的に結合する分子をもつこの試料や単離された核酸/タンパク質を精査した。例えば、この方法のある変形例において、全RNAを糞便または末梢血試料から得られるガン細胞から単離した。その後、そのRNAをプライマーとしてSEQ ID NO:7及び8のオリゴヌクレオチドを用いたRT−PCRによってSIM2mRNAの存在について分析した。別の例として、オリゴヌクレオチドプローブとしてのSEQ ID NO:9を用いたハイブリッド形成法によりこれらの試料の細胞で、SIM2遺伝子の発現を検出することができる。さらに別の例として、SIM2タンパク質に特異的な抗体は、直接細胞試料(例えば、従来の免疫蛍光検査法,組織化学染色法を用いる)を精査するために用いることができ、又は免疫沈降法及び電気泳動法,ウエスタンブロット法によりSIM2タンパク質を検出するために用いることができる。SIM2の発現は腫瘍膵臓試料でも検出されたが、正常膵臓試料では検出されなかったので、糞便の中から取り除かれた転移性の膵臓腫瘍細胞もまたこの方法で検出可能である。
【0112】
第14実施例:治療標的としてのSIM2
SIM2遺伝子の産物は既知の機能を有する。それは、DNA結合の転写制御因子であり、成長制御に関与する他の遺伝子を制御するヘテロ二量体としての他のタンパク質因子と一致した機能がある。例えば、山口及び久尾,「生化学薬理学」50:1295−1302,1995年、モフェット他,「J.モル.セルバイオロジー」17,4933−4947,1997年を参照。このSIM2タンパク質は、アリルヒドロカーボンレセプター(AHR)及びアリルヒドロカーボンレセプター核輸送体(ARNT)と相同性を共有する。SIM2タンパク質は細胞基質であって、熱ショックタンパク質(HSP90)のようなタンパク質と同様にAHR及びARNTと相互作用する。この相互作用は、ダイオキシン,ベンゾピレン,及びその他の生態異物のようなリガンドに結合することができる複合体を形成する。リガンドに結合する際、その複合体は核に転移し、そして生体異物反応要素(XRE)の活性化の原因になり、制御因子は種々標的遺伝子の転写制御に関与した。山口Y及び久尾MT,「生化学薬理学」50,1295−1302,1995年を参照。
【0113】
従って、SIM2遺伝子の発現の抑制は発がん物質の効力を和らげることができる。さらに、SIM2は特定のガンに選択的に発現するので、抗腫瘍性の薬剤に対する潜在標的であると考えられる。SIM2遺伝子の発現の抑制は、アンチセンス核酸を使用して達成することができる。例えば、SIM2遺伝子の5’プライムコード領域と特異的にハイブリット形成するアンチセンス核酸の適した長さ(例えば、18〜25塩基対)を合成し、次に標的の組織又は細胞(例えば、電気穿孔法又はベクターを経由した送達)又はリポソ−ムに導入する。その後、アンチセンス核酸がSIM2遺伝子から転写されたmRNAとハイブリット形成可能な条件下に、標的の組織や細胞を置く。このハイブリット形成法は翻訳を抑制し、その結果選択的にSIM2タンパク質の発現を抑制する。例えば楢山,「R.インビボ8」,787−794,1994年を参照。別の例として、前述のアンチセンス核酸を遺伝子治療のための生体内に送達できる安定な組換え作成物として生成することもできる。例えば、ヒギンズ他,「プロックナットルアシッドSci.米国90」9901−9905,1993年を参照。
【0114】
本実施例のある変形例として、アンチセンス核酸はSEQ ID NO:11として示されたオリゴヌクレオチドである。このオリゴヌクレオチドを核酸骨格で様々な構成要素と置換することができる。腫瘍関連タンパク質は、ナラヤナンR及びアカ−ターS,「クルオピニオンオンコル8」509−515,1996年、ヒギンス他,「プロックナットルアカッドSci米国90」9901−9905,1993年、及びナラヤナンR,「Jナットルガンインスト89」107−109,1997年に記載されているそれらに対応した方法を用いてこのアンチセンスオリゴヌクレオチドに適した処理を行なうことができる。そのアンチセンスオリゴヌクレオチドを単独または従来の化学療法又は放射線治療プロトコールを組み合わせて用いることができる。
【0115】
第15実施例:創薬標的としてのSIM2
SIM2遺伝子機能を選択的に抑制する薬剤の発見方法が想定される。SIM2タンパク質は、転写を制御する特異的な遺伝子と関連する制御領域でDNAと結合して、特定の遺伝子の発現を調節することによって機能することが考えられる。この特性は、DNAと結合するSIM2タンパク質を抑制する物質を選別するために利用することが可能であり、したがってSIM2タンパク質のこの機能を抑制する。この方法において、SIM2遺伝子を取り込んでいる発現ベクターは、SIM2タンパク質が細胞内で生成される条件の下で宿主細胞内に導入され発現する。このような方法で生成されたSIM2タンパク質の産物は、その後精製され、DNAの異常な伸展と結合する能力を抑制する化合物を選別するための生体内高処理検定法で用いることができる。例えば、ルビン他,「モル.セルバイオ12」444−454,1992年、ナラヤナン他,「サイエンス256」367−370,1992年、そしてナラヤナン他,「モルセルバイオ13」3802−3810,1993年を参照。
【0116】
成長抑制検定法においてSIM2発現をする腫瘍から得られた株化細胞を使用して、SIM2発現の抑制因子を同定することができる。例えば、選別される物質がSIM2発現を調節するかどうかを見るために、SIM2を発現する細胞を含む培地にその物質を添加してもよい。別の方法において、SIM2プロモータに操作可能に結合するレポータ遺伝子(例えばクロラムフェニコールアセチル基転移酵素,ルシフェラーゼ,ベータガラクトシダーゼをコード化するもの)を含む組換え型作成物を形質導入された株化細胞は、SIM2遺伝子の発現を抑制する物質を同定するために使用することができる。例えば、そのレポータの発現を選択的に抑制する化合物は、SIM2選択的抑制物として同定されるであろう。
【0117】
SIM2は大腸,前立腺及び膵臓腫瘍で選択的に発現するが、乳房,肺,または卵巣腫瘍では発現しないので、化合物はSIM2発現性腫瘍の選択的成長を抑制する能力を選別することができる。この方法で同定された化合物は、上記に記載されたSIM2プロモーターレセプター遺伝子作成物を用いて、SIM2の特異的な抑制をさらに評価することができる。
【0118】
第16実施例:SIM2タンパク質の抗体検出
免疫組織化学法又は免疫蛍光法のような技術を使用してSIM2タンパク質の発現を測定することにより、SIM2遺伝子産物の腫瘍の選択的な発現を検出することができる。後述の技術の一例として、大腸腫瘍のパラフィン固定切片とそれに対応する正常組織を、SIM2短形型タンパク質のC末端に対して特異的な抗体(親和精製ウサギ抗ヒトSIM2短形型抗体,キャット#sc−8715,サンタクルズバイオテクノロジー,サンタクルズ,Ca.)又は実施例17で下記に記載されるように調製された抗体を使用して分析した。SIM2タンパク質の免疫組織化学検出は、シュール他,「アンチキャンサー.Res.20」2091−2096,2000年に記載されるように行なった。要するに、その切片を5分間2回キシレン槽でパラフィンを除去し、次に等級アルコールを通して蒸留水で再水和した。スライドを第一の抗SIM2短形型抗体で培養した。結合された第一抗体は、ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン第二抗体と結合した西洋わさびペルオキシダーゼで標識されたデキストラン高分子でその切片を染色することにより検出された。そのスライドは、染色基質としてジアミノベンジジン溶液(DAB)を用いて発色させた。その切片をヘマトキシリンで対比染色し、エタノールで脱水し、パーマウント(フィッシャーサイエンフィック)に固定した。この方法を用いると、SIM2タンパク質は腫瘍試料(6/6)から検出されたが、対応する正常組織では検出されなかった。SIM2タンパク質は、腺腫のような初期段階の大腸腫瘍からも検出された。ウエスタンブロット法又はELISA法における抗SIM2抗体の使用は、SIM2が結合した悪性腫瘍に対する診断上の検定法又は予測検定法のような組織試料内でSIM2タンパク質を検出するための方法で特に用いることができるであろう。
【0119】
第17実施例:SIM2短形に特異的な抗体の産生
完全なフロイントアジュバントで乳化されたSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を持つ200μgのペプチドを含んだ製剤を、シグマゲノサイスTXによって複製されたウサギに注入した。その後、そのウサギは不完全なフロイントアジュバントで乳化されたペプチド100μgで、2週間隔(3回)で免疫性を与え、そして49日目に採血した。そのウサギに再び完全なフロイントアジュバントで乳化されたペプチド100μgで、25日間隔で免疫性を与えた。69日目及び102日目に採血した血清をELISA法により分析し、この結果、この血清がぺプチド抗原に対する抗体を含むことが確認された。免疫性が与えられたウサギから得られたその血清、及び免疫前の血清(コントロール)を、患者から摘出された大腸腫瘍からのタンパク質可溶化液及びRKO細胞株可溶化液を使用して、ドットブロット分析により検査した。免疫性が与えられたウサギから得られた血清の使用は、大腸腫瘍試料中のSIM2短形型タンパク質の存在を検出したが、それに対し免疫前の血清では検出されなかった。これらの実験のデータに基づいて、血清の適した希釈率(例えば1:200〜1:2000)は、ここに記載された免疫組織化学分析法を使用するのに選択された。
【0120】
第18実施例:タンパク質に基づいたSIM2の診断/治療の使用
SIM2タンパク質に対して生成された抗体は、上記に記載されたような宿主動物の免疫付与によって得ることができる。SIM2に特異的な抗体によるSIM2タンパク質の結合性は、ポリペプチドの機能活性を抑制することが想定される。なぜならアンチSIM2抗体はSIM2タンパク質(例えば、大腸,膵臓,そして前立腺腫瘍から得られた細胞)を発現する細胞と選択的に結合するので、そのような細胞を発現するSIM2を標的とする及び/又は破壊するための方法で用いることができるからである。例えば、SIM2に特異的な抗体は生体内の画像化(例えば、大腸ガンを診断するためのヒト客体の骨盤部分)に使用するために標識(例えば放射性または磁力的に)することができる。別の例として、SIM2に関連するガンを治療するために、細胞毒性の薬剤(例えば、リシンや125I)を標識するSIM2に特異的な抗体を、ガンを持つ動物(例えば、腫瘍内への注射により)に投与した。細胞に吸収されることができる抗体を修飾する方法は、既知である。例えば、抗体はレセプターが細胞表面に発見されるリガンドと結合することができる。リガンドを結合する際に、細胞質内に入ることが可能なように、抗体リガンド複合体は吸収することができる。
【0121】
第19実施例:アンチセンスオリゴヌクレオチドを備えた細胞の治療
RKO大腸ガン細胞は、10%の牛胎仔血清で補われたDMEM培地において成長した。急激に成長するRKO細胞は、製造業者の指示に従ってデリバリー溶媒とOpti−MEM培地としてリポペクチン(BRL−ライフテクノロジー)を使用して、異なる量のアンチセンス(SEQ ID NO:12)またはコントロール逆アンチセンス(SEQ ID NO:13)オリゴヌクレオチドによって処理した。トランスフェクションして4時間後、その細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、そして10%ウシ胎仔血清で補われたDMEM培地で24〜72時間培養した。その細胞を光学顕微鏡使用により形質的な変化について観察した。その細胞を免疫組織化学法により培養皿でメタノール固定し、トリプシン処理することにより培養皿から取り除き、そしてDNA又はRNAの分析が行われた。300nMが反応を引き起こすためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果的な濃度であることが予備分析で示された。従って、以下に記載された実験は別の方法が示されない限り、300nMのアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用した。例えば、MDA乳ガン細胞(SIM2短形型を発現しない)のような他の株化細胞は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに特異的な効果を実証するためここに記載される様々な実験でさらなるコントロールとして用いられた。
【0122】
第20実施例:アポトーシスの測定
処理に応じて死をプログラム化された細胞(アポトーシス)は、容易に測定可能である多様な変化を表した。例えば、アポトーシスを代表する一つは、DNAの断片化である(例えば、アポトーシス.アフォード,とランドハワS,モル.パソール.53(2):55−63,2000年、ガンの中のアポトーシス:原因と治療.カウフマン,S.H,及びゴレス,G.J:バイオエッサイズ22(11):1007−17,2000年を参照)。アポトーシスされた細胞から得られたゲノムDNAの断片化は、アガロースゲル電気泳動後オリゴソームのラダーの存在を検出することにより測定することができる。アポトーシスを分析するため、アンチセンスオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:12)又はコントロールの逆アンチセンスオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:13)のいずれか一方で処理されたRKO大腸ガン細胞から得られたゲノムDNAを、DNAゾルキット(BRL−ライフテクノロジーズ)を使用して単離した。その後、単離されたDNAを1%アガロースゲルで分離した。次に、ゲル上の分離産物をニトロセルロース細胞膜に移動させた。細胞膜は親RKO大腸ガン細胞から生成された32Pが標識されるゲノムDNAプローブとハイブリット形成された。このハイブリット形成されたブロットは、その後68℃高厳密(0.1XSSC,0.1%SDS)下で洗浄し、そしてオートラジオグラフにかけた。その結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチド処理を受けた細胞は、コントロールオリゴヌクレオチドで処理された細胞よりも多くのDNA断片化(ラダー形成により決定される場合)を著しく表すことを示した。
【0123】
別の実験においては、アポトーシスはアポタグ(TUNELアッセイ)検出システムキット(インタージーンカンパニー,NY)を用いて分析された。このキットで、単細胞内のDNA断片化を修飾されたヌクレオチド(ジゴケシゲニン−dNTP)でDNA断片化から生成される3’ヒドロキシ末端を標識する末端デオキシトランスフェラーゼ(TdT)を使用することにより測定可能である。次に、ペルオキシダーゼが複合したアンチジゴケシゲニン抗体は、顕微鏡下でペロキシダーゼ基質を用いることにより、断片化されたDNAを含有する細胞を検出するのに使用された。ゴールド,「R,ラボラトリーインヴェス.71」219−222,1994年を参照。これらの実験において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの処理を受けたRKO細胞はコントロールオリゴヌクレオチドで処理された細胞よりも多くのDNA断片化(アポタグ方法で決定される場合)を著しく示した。
【0124】
第21実施例:Bcl−2の免疫組織化学分析
Bcl−2発現の免疫組織化学分析は、アンチセンス処理した大腸ガン細胞で始められた。RKO大腸ガン細胞を、300nMのアンチセンス(SEQ ID NO:12)又はコントロールの逆アンチセンス(SEQ ID NO:13)のいずれかにより72時間上記に記述されるように処理し、そしてその細胞はBcl−2ポリクローナル抗体(サンタクルズバイオテクノロジー)を使用した免疫組織化学法により分析した。Bcl−2の免疫組織化学検出を、第一のアンチBcl−2抗体と共に処理されたRKO細胞を培養することによってスケール他,「アンチセンサーレス.20」2091−2096,2000年に記載されたように実施した。結合された第一抗体を、ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン第二抗体と結合した西洋わさびペルオキシダーゼで標識されたデキストラン高分子でその細胞を染色することにより検出した。そのスライドは、染色基質としてジアミノベンジジン溶液(DAB)を用いて発色させた。その細胞を、ヘマトキシリンによって対比染色し、エタノールで脱水し、そしてパーマウント(フィッシャーサイエンティフィック)に固定した。その結果は、bcl−2タンパク質のレベルはコントロールの逆アンチセンス処理された細胞と比較してアンチセンス処理した細胞で低下し、アンチセンス処理はRKO細胞中のアポトーシスを誘発するという考えと一致する発見であるということを示した。別の例として(表示せず)、Bcl−2のmRNAのレベルは、コントロールの逆アンチセンス処理された細胞と比較してアンチセンス処理した細胞で低下した。
【0125】
第22実施例:前立腺腫瘍におけるSIM2短形型に特異的な抗体の診断上の使用
1人の患者から得られた生体由来の前立腺腫瘍と正常組織を、パラフィン切片として準備し、実施例17の上記に記載されたSEQ ID NO:14のペプチドに対するポリクローナル抗体を用いる実施例16に記載されるような免疫組織化学法によって分析した。その結果は、SIM2短形型の発現は腫瘍では検出されるが、正常組織では検出されないことを示した。同様の実験において、表1(下記)を参照すると、SIM2短形型は良性前立腺過形性の一部及び前立腺ガンの一部で検出されたが、適合する正常前立腺組織では検出されなかった。正常前立腺組織(6/6)では染色されないが、SIM2短形型の存在に対して陽性に染色される免疫組織化学法により検査された。同様に、間質過形性(通常、前立腺ガンにならない)試料の大部分は陰性(15/18)であった。BPH及び前立腺間質性異常増殖/腫瘍症(PIN)の両方を備えた患者から得られた全試料は、陽性染色(6/6)を示した。更に、段階に関係なく前立腺ガン(グリーソン段階I−IVで検査される)の全試料は、SIM2短形型について陽性に染色されたことが示された。
【0126】
【表1】
【0127】
第23実施例:大腸腫瘍におけるSIM2短形型に特異的な抗体の診断上の使用
1人の患者から得られた生体由来の前立腺腫瘍と正常組織を、パラフィン切片として準備し、実施例17の上記に記載されたSEQ ID NO:13のペプチドに対するポリクローナル抗体を用いる実施例16に記載されるような免疫組織化学法によって分析した。これらの実験において、大腸組織試料(正常=CN−15;腫瘍=CT15)の適合した1組におけるSIM2短形型の発現を免疫組織化学法により分析した。SIM2短形型の発現は腫瘍切片では検出されたが、正常組織切片では検出されなかった。別の実験において、表1を参照すると腺腫を含む3/3の初期大腸ガンはSIM2短形型について陽性に染色した。一方、5/5の正常大腸組織試料検査はSIM2短形型に対して陰性であった。全腫瘍(6/6)検査はSIM2短形型に対して陽性染色を示した。従って、大腸ガン診断方法において、SIM2短形型に対して定期結腸鏡検査を行なった患者から得られた大腸細胞を検査することができる。さらに、大腸細胞は剥がれて糞便に含まれるので、SIM2短形型の存在について糞便物質分析をすることにより大腸ガンの初期段階を検出することが可能であるだろう。
【0128】
第24実施例:膵臓腫瘍におけるSIM2短形型に特異的な抗体の診断上の使用
1人の患者から得られた生体由来の前立腺腫瘍と正常組織を、パラフィン切片として準備し、実施例17に記載されたSEQ ID NO:14のペプチドに対するポリクローナル抗体を用いる実施例16に記載されるような免疫組織化学法によって分析した。これらの実験において、SIM2短形型の発現は、膵臓腫瘍の適合した2組において検査された。SIM2短形型は腫瘍切片で検出されたが、正常組織切片では検出されなかった。加えて、表1を参照すると、多様の正常膵臓組織(6/6)はSIM2短形型の発現に対して陰性であったが、腺腫(腫瘍初期段階)と同様に進行した腫瘍(6/6)は両方とも、SIM2短形型の染色で陽性を示した。従って、SIM2短形型を膵臓ガンのマーカーとして使用することができる。そして膵臓ガン細胞は剥がれて糞便に含まれるので、この検出方法は糞便から得られた物質を使用することが可能である。
【0129】
第25実施例:大腸,膵臓および前立腺腫瘍患者における転移の検出
SIM2短形型タンパク質の発現は、骨髄細胞又は末梢血リンパ球では検出されていない。転移性のガン細胞はしばしば血液またはリンパ球の循環を経由して転移するので、SIM2短形型の発現に対してこれら組織を検査することによって転移を同定することができるであろう。
【0130】
第26実施例:治療の検査応答
薬剤や大腸,膵臓,又は前立腺ガンの手術で治療された患者は、例えば、血液,骨髄,又は糞便などの物質中にあるSIM2短形型の発現を測定することによってガンの再発を検査することができる。これらの物質中におけるSIM2短形型の存在により腫瘍が再発していることがわかるであろう。
【0131】
第27実施例:SIM2短形型の治療上の使用:アンチセンス抑制
大腸悪性腫瘍細胞(RKO細胞)を、SEQ ID NO:12のアンチセンスオリゴヌクレオチド,そのコントロールのSEQ ID NO:13の逆アンチセンスオリゴヌクレオチド,又は溶媒(生理食塩水)で72時間処理し、そしてそれらの増殖率を評価した。成長を24時間隔で顕微鏡により評価し、なおアンチセンスやコントロールのオリゴヌクレオチドで処理された培養においてその細胞の生存密度を、トリパンブルー色素排除及び血球計数器を用いて評価した。その光学顕微鏡検査により、アンチセンス処理した細胞はコントロールの細胞と比較しての細胞質総数の増加と、完全な細胞核の低下を示すということが明らかとなった。アンチセンス処理した細胞の成長は、いずれのコントロールと比較しても有意に示された。そのアンチセンス処理された細胞は、細胞結合,細胞質の増加,及び核膜の消失を含むプログラム化された細胞死(アポトーシス)の様々な特徴も示した。ガン細胞中のアポトーシスの誘発はガンを殺す方法なので、ガン細胞を殺すためにアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、SEQ ID NO:12のアンチセンスオリゴヌクレオチド)を治療で用いることができるであろう。
【0132】
別の実験において、RT−PCR法で測定したとき、アンチセンス処理したRKO大腸悪性腫瘍細胞はSIM2短形型mRNAのレベルが低下していることを示した。RKO大腸悪性腫瘍細胞を、300nMのアンチセンス(SEQ ID NO:12)または逆アンチセンス(SEQ ID NO:13)のいずれかで72時間処理した。これらの細胞から得られた全RNAを単離し、逆転写して、そしてcDNAをSEQ ID NO:15(センス)とSEQ ID NO:16(アンチセンス)で示すようなSIM2短形型に特異的なPCRプライマーを用いてPCRで分析した。このプライマー対は、短形型に特有の619塩基対産物の単位複製配列を決定する。C−15=SIM2短形型及びアクチン=ハウスキーピング遺伝子制御。陰性=マイナスPCR制御の鋳型である。
【0133】
同じ細胞において、より多くのゲノムDNAは、処理されたRKO細胞から得られた全ゲノムDNAとハイブリット形成された後、DNAのサザンブロッット解析で測定したとき、コントロールの逆アンチセンスオリゴヌクレオチド処理した細胞に比べてオリゴヌクレオチド処理された細胞において、オリゴソーム(ラダー形成)に変化して分解された。これらの結果によって、アンチセンス(SEQ ID NO:12)は標的タンパク質の特異的な抑制によってガン細胞を殺し、そしてこの抑制結果はアポトーシスを含むということが示された。
【0134】
別の実験において、細胞内のニックDNAを測定するアポタグキット(インターグリン社,NY)を用いて生体位で処理された細胞の中にあるDNAラダーを検査することにより、アンチセンス処理されたアポトーシスの誘発を分析した。このRKO細胞を、SEQ ID NO:12のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はSEQ ID NO:13のコントロール逆アンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれか1つで処理した。アンチセンス処理した細胞はコントロールの逆アンチセンス処理した細胞よりさらに濃く着色された、この場合アポトーシスが起こったことを示している。
【0135】
Bcl−2遺伝子の発現は様々な腫瘍に生成し、腫瘍細胞内のアポトーシスの抑制に関与している。細胞がアポトーシスの発生を受けるならば、細胞によって発現されるbcl−2タンパク質のレベルは低下するであろう。RKO大腸ガン細胞を、300nMのアンチセンス(SEQ ID NO:12)又はコントロールの逆アンチセンス(SEQ ID NO:13)のいずれか一つで72時間処理し、その細胞はbcl−2(サンタクルズバイオテクノロジー)のポリクローナル抗体を用いて免疫組織化学法により分析した。この結果により、アンチセンス処理した細胞はコントロールの逆アンチセンス処理した細胞よりかなり低いレベルのbcl−2を発現することが示された。同様の細胞を用いた別の実験では、コントロールの逆アンチセンス処理された細胞と比較したとき、bcl−2mRNAのレベルがアンチセンス処理された細胞の中で低下した。
【0136】
SIM2短形型発現の抑制やアンチセンスオリゴヌクレオチド処理によって生じる可能性のある毒性をさらに研究するために、SIM2短形型を発現しない乳がん細胞株(MDA−231、ACCTから入手可能)を300nMのアンチセンス(SEQ ID NO:12)又はコントロールの逆アンチセンス(SEQ ID NO:13)のいずれかで72時間処理した。いずれの場合においても、成長の抑制は見られなかった。別の実験において、これらの細胞から得られたDNAはアポトーシスを表すラダーを示さなかった。さらに、例えば、前立腺上皮細胞や腎臓近位上皮性細胞(クロネティクス)などの初期の正常ヒト細胞は、同じアンチセンスで72時間処理した場合、成長抑制を示さず、そしてDNAラダーの形跡は無かった。
【0137】
第28実施例:SIM2アンチセンスオリゴヌクレオチドをもった動物の治療
非放射性Ncr nu/nuマウス(5−6週齢,体重22−24g)に1×106RKO大腸悪性腫瘍細胞を皮下注射した。開始から24時間後、1mg/kgの溶媒(PBS,コントロール),EZ−1(アンチセンス;SEQ ID NO:12)又はEZ−3(逆アンチセンス;SEQ ID NO:13)を、RKO注射の反対側に週に2回注射した(N=6/セット)。これらのオリゴヌクレオチドは、第二の産物のオリゴヌクレオチド(すなわち、ホスホロチオネート2−O−メチルキメラ骨格)オリゴス他「ウィルソンビル」,OR,97070による)として合成され、HPLCによって精製された。そのオリゴヌクレオチドを、注射される前に10mg/ml(原液)をリン酸緩衝生理食塩水(溶媒)で調製した。そのマウスに、10mg/kgの投与量で、溶媒(PBS),EZ−1又はEZ−3のいずれかで28日間週2回皮下投与し、腫瘍のサイズと平均体重を測定した。この処理は21日間続けられた。図1で示されるように、各々の動物における腫瘍量を種々の時点で測定した。左側のグラフは全毒性の測定として平均体重を表し、右のグラフは治療の有効性を表す。EZ−1(アンチセンス;SEQ ID NO:12)で処理されたグループは、コントロールのグループよりかなり遅い腫瘍成長を示した。
【0138】
その他の実施例
本記述は、発明の構成および方法をどのように作り実行することができるかの実施例である。当業者は、種々の内容が変更されてその他の詳述された実施例が成功する際に、様々な詳細が修正されるかもしれないことを認識するであろう、そしてこれらの実施例のその多くは発明の範囲内で生じるであろう。
【図面の簡単な説明】
本発明では、付記される請求項において詳細な事項を示す。本発明の上記及びそれ以上の利点は、添付している図面と併せて以下の説明を参照することによってより理解されるであろう。
【図1】
図1は、動物モデルにおいて、腫瘍細胞の成長におけるSIM2アンチセンスオリゴヌクレオチドの影響を示す一連の二つのグラフである。E−Z−1及びE−Z−3は、それぞれSEQ ID NOs:12及び13に相当する。
Claims (17)
- 組織試料におけるガンの検出方法であって、
(a)前記組織試料を準備する工程と、
(b)SIM2短形型マーカーの存在により前記組織試料を分析する工程とから構成される方法において、前記SIM2短形型マーカーの存在によって前記組織試料中にガンが含まれていることが示されることを特徴とする方法。 - 前記組織試料は、大腸組織試料,前立腺組織試料,及び膵臓組織試料からなるグループから選択されたことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記組織試料は、糞,尿,末梢血からなるグループから選択された原料から単離された細胞からなることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記SIM2短形型マーカーは、SEQ ID NO:2の核酸配列を有するSIM2短形型核酸であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 組織試料を準備する前記工程(a)は、ヒトの客体から組織試料を得ることから構成され、前記組織試料を分析する前記工程(b)は、前記組織試料からRNAを単離することと、単離されたRNAからcDNAを作成することと、PCRによってcDNAを増幅させPCR産物を作成することと、PCR産物を電気泳動的に分離し電気泳動パターンを得ることとから構成されることを特徴とする請求項4記載の方法。
- PCRによってcDNAを増幅させる前記工程は、SEQ ID NO:15及び16からなるグループから選択されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行われ、電気泳動パターンでの619塩基対の核酸の存在によって前記組織試料中にガンが含まれていることが示されることを特徴とする請求項5記載の方法。
- 前記SIM2短形型マーカーがSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を持つSIM2短形型タンパク質であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 組織試料を準備する前記工程(a)は、ヒトの客体から組織試料を得ることから構成され、前記組織試料を分析する前記工程(b)は、SIM2タンパク質と特異的に結合するプローブを組織試料の少なくとも一部に接触させることから構成され、前記プローブは抗体からなることを特徴とする請求項7記載の方法。
- SIM2短形型遺伝子発現の調節方法であって、
(a)SIM2短系型遺伝子を発現する細胞を準備する工程と、
(b)細胞内の前記SIM2短形型遺伝子の発現を調節する薬剤を細胞に導入する工程とからなることを特徴とする方法。 - 前記薬剤が、少なくとも18個のヌクレオチドの長さを持つアンチセンスオリゴヌクレオチドであってストリンジェントな条件下でSIM2短形型タンパク質をコード化する核酸の補体であるポリヌクレオチドとハイブリット形成する配列からなることを特徴とする請求項9記載の方法。
- 細胞内でSIM2短形型遺伝子の発現を調節する被験化合物の同定方法であって、
(a)SIM2短形型遺伝子を発現する細胞を準備する工程と、
(b)前記被験化合物を前記細胞に接触させる工程と、
(c)前記SIM2短形型遺伝子の前記発現における調節を検出する工程とから構成される方法において、前記調節の検出によって前記被験化合物が前記SIM2短形型遺伝子の発現を調節することが示されることを特徴とする方法。 - 前記細胞は、大腸の組織試料,前立腺の組織試料,及び膵臓の組織試料からなるグループから選択された組織試料から得られることを特徴とする請求項11記載の方法。
- SIM2短形型タンパク質を発現する細胞を含むガンの生育速度を低下させる方法であって、この方法は、細胞内の前記SIM2短形型タンパク質の発現を阻害する薬剤をその細胞に接触させる工程からなることを特徴とする方法。
- 前記薬剤は、ストリンジェントなハイブリット形成条件下で、前記SIM2短形型タンパク質をコード化するポリヌクレオチドとハイブリット形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項13記載の方法。
- 前記ガンは、大腸ガン,前立腺ガン,及び膵臓ガンからなるグループから選択されたことを特徴とする請求項13記載の方法。
- SIM2短形型遺伝子の発現を調節するための精製アンチセンス核酸であって、前記アンチセンス核酸は、ストリンジェントな条件下で、SEQ ID NO:12のポリヌクレオチドの補体とハイブリット形成する少なくとも18個のヌクレオチドの長さがあるオリゴヌクレオチドを基本的に含むことを特徴とする精製アンチセンス核酸。
- 前記核酸は、SEQ ID NO:12の前記ヌクレオチド配列からなることを特徴とする請求項16記載の精製アンチセンス核酸。
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