JP2004503235A - コドン最適化組換えヒョウヒダニ(Dermaphagoides)アレルゲン - Google Patents

コドン最適化組換えヒョウヒダニ(Dermaphagoides)アレルゲン Download PDF

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Abstract

本発明は、哺乳動物細胞中で効率良く発現され且つイエダニであるヒョウヒダニ(Dermaphagoides)に由来する昆虫タンパク質をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドに関する。特に、これらの最適化コドンポリヌクレオチドは、ヤケヒョヒダニ(Dermaphagoides pteronyssinus)に由来するタンパク質(例えばDerP1やproDerP1等)をコードする。また本発明は、このようなコドン最適化ポリヌクレオチドの発現を含む医薬組成物の製造方法、並びにこのようなポリヌクレオチドを含むベクター及び形質転換宿主細胞も提供する。

Description

【0001】
本発明は、哺乳動物細胞中で効率良く発現され且つ塵中のダニであるヒョウヒダニ(Dermaphagoides)のイエダニに由来する昆虫タンパク質をコードするコドン最適化ポリヌクレオチド(codon optimised polynucleotide)に関する。特に、これらの最適化コドンポリヌクレオチドは、ヤケヒョヒダニ(Dermaphagoides pteronyssinus)に由来するタンパク質(例えばDerP1やproDerP1等)をコードする。また本発明は、このようなコドン最適化ポリヌクレオチドの発現を含む医薬組成物の調製方法、並びにこのようなポリヌクレオチドを含むベクター及び形質転換宿主細胞も提供する。
【0002】
家屋塵(ハウスダスト)中のダニであるヒョウヒダニ(Dermatophagoides)に由来するアレルゲンは、喘息等のアレルギー性過敏反応に関係があると随分前から認識されていた[1]。これらの分子の中でもDer p1は、最も強力なIgE媒介性免疫反応を誘発する免疫優性アレルゲンである[2,3]。Der p1のシステインプロテイナーゼ活性は、その強力なアレルゲン性を増幅することが分かった[4,5]。Der p1をコードするcDNA配列を見ると、多くの哺乳動物及び植物のプロテイナーゼと同様に、Der p1が320個のアミノ酸残基からなる不活性プレプロ酵素として合成された後、プロセシングをうけて222アミノ酸の成熟形態となることが分かる[6,7]。ProDer p1の成熟については現在のところ不明であるが、このアレルゲンは80塩基のプロ領域の切断によってプロセシングされると考えられる。
【0003】
イエダニ菌体の培養物から成熟Der p1を精製することには成功したが、全体的収率は低かった[8]。アレルゲンの組換え産生は、種々の実験手法のため(例えば免疫学的研究、診断、免疫療法によるIgE媒介性アレルギー疾患の治療、及び構造と機能との関係の理解のため等)に、所定の物質を高い収率で得る効率的な方法である[9]。細菌及び酵母においてDer p1を発現させる過去の試みでは、このアレルゲンの発現レベルは低く、主に不溶性形態で発現されることが示された [10〜12]。更に、細菌中で発現された組換えDer p1は、IgE結合活性が低いことが分かった。酵母中で産生された組換えタンパク質は、特定のIgEによって認識されたが、天然タンパク質に比べて低いレベルであった。
【0004】
天然の非最適化ヒョウヒダニ(Dermaphagoides)遺伝子によりコードされる、酵素活性が低い組換えDerP1アレルゲンは、国際特許出願公開番号第WO99/25823号に記載されている。その他の組換えヒョウヒダニ(Dermaphagoides)アレルゲンとしては、DerP1(米国特許第6,077,518号)、DerPII(米国特許第6,132,734号)、並びにDerFI及びDerFII(米国特許第5,973,132号、同第5,958,415号及び同第5,876,722号)が挙げられる。
【0005】
医薬品やワクチンの製造または診断アッセイにおいて使用するための組換えヒョウヒダニ(Dermaphagoides)アレルゲンの効率的発現を可能にすることが望ましいことは明らかである。さらに、天然ヒョウヒダニ(Dermaphagoides)アレルゲンと同じコンホメーション及び免疫学的特性を有する組換えアレルゲンを高レベルで産生する発現系が望まれている。
【0006】
本発明は、ヒョウヒダニ(Dermaphagoides)タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列であって、そのポリヌクレオチド配列のコドンの使用パターンを、高レベルで発現される哺乳動物遺伝子のものと類似するよう改変されたポリヌクレオチド配列を提供することによって、上記のような利点を達成する。よって、recProDer p1のクローニング及び発現を、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)において高効率で行い、天然の精製DerP1に非常に良く似たIgE反応性を示す産物を生成する。
【0007】
DNAコードは4文字(A、T、C及びG)あり、これらを用いて3文字の「コドン」を形成する。これらの「コドン」は、生物の遺伝子中にコードされるタンパク質のアミノ酸を表す。DNA分子に沿ったコドンの直鎖状配列は、これらの遺伝子によりコードされるタンパク質(1種もしくは複数)の中のアミノ酸の直鎖状配列に翻訳される。このコードは高度に縮重しており、61種類のコドンは20種類のアミノ酸をコードし、3種類のコドンは「停止」シグナルを表す。このように、多くのアミノ酸は2種類以上のコドンでコードされる。事実、幾つかのアミノ酸は4つ以上の異なるコドンによってコードされる。
【0008】
所与のアミノ酸をコードするために2種類以上のコドンが利用される場合、生物のコドン使用頻度パターンは、常にランダムにあるわけではないことが分かった。種が異なると、そのコドン選択は異なった偏りを見せ、更に、単一の種において高レベルで発現される遺伝子と低レベルで発現される遺伝子との間では、コドンの利用が大きく異なる場合がる。この偏りは、ウイルス、植物、細菌、昆虫及び哺乳動物細胞において異なるものであり、幾つかの種は、他の種に比べて、ランダムなコドン選択とはかけ離れた非常に大きな偏りを見せる。例えば、ヒト及び他の哺乳動物は、ある種の細菌又はウイルスに比べて偏りが少ない。これらの理由により、大腸菌中で発現される哺乳動物遺伝子又は哺乳動物細胞中で発現されるウイルス遺伝子が効率の良い発現に適さないコドン分布を有する、という可能性が大いにある。しかし、大腸菌での発現に適したコドン使用頻度パターンを有する遺伝子が、ヒトにおいても効率的に発現される場合もある。異種DNA配列の中に、発現が起こる宿主細胞中において滅多に見られないコドンからなるクラスターが存在すると、その宿主中において異種遺伝子の発現レベルが低くなる可能性が高い、と予想される。
【0009】
コドンを、その宿主中において稀であるコドンから宿主が選好する(host−preferred)コドンに変更する(「コドン最適化」)ことにより異種発現レベルが上昇した例が幾つかある。例えば、BPV(ウシ乳頭腫ウイルス)後期遺伝子L1及びL2は、コドンが哺乳動物のコドン使用頻度パターンに最適化されたものであり、これは、哺乳動物(Cos−1)細胞培養において、野生型HPV配列に比べて発現レベルが高くなることが分かった(Zhouら, J. Virol. 1999. 73, 4972−4982)。この研究では、哺乳動物中に比べてBPVにおいて2倍を超える頻度(使用比>2)で発生する全てのBPVコドン、及び使用比が1.5を超える多くのコドンが、哺乳動物において優先的に使用されるコドンによって保存的に置換された。国際特許出願第WO97/31115号、第WO97/48370号及び第WO98/34640号(Merck & Co., Inc.)において、その最適化の対象である宿主哺乳動物中においてコドン最適化配列がDNAワクチンとして用いられる場合に、HIV遺伝子又はそのセグメントのコドン最適化によって、タンパク質発現が上昇し及び免疫原性が改善されることが示された。各々のウイルスコドンは、対象となる宿主にとって最適なコドンにより保存的に置換されるため、この研究では、配列全体を最適化されたコドンで構成する(ただしそれが望ましくない制限部位やイントロンスプライス部位等を導入する場合を除く)。
【0010】
発明の概要
第1の態様に従って、本発明は、ヒョウヒダニのダニタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列であって、そのポリヌクレオチド配列のコドン使用頻度パターンが高レベルで発現される哺乳動物遺伝子のものと類似しているポリヌクレオチド配列を提供する。
【0011】
好ましくは、ポリヌクレオチド配列はDNA配列である。望ましくは、ポリヌクレオチド配列のコドン使用頻度パターンは、高レベルで発現されるヒト遺伝子に典型的なパターンである。好ましくは、以下に記載する本発明の態様の全てにおいて、イエダニのタンパク質は、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)又はコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)に由来するものである。最も好ましくは、ヤケヒョウヒダニタンパク質は、DerP1、ProDerP1又はDerP2である。
【0012】
従って、本発明の第1の態様においては、ヒョウヒダニタンパク質をコードする複数のコドンを含む合成遺伝子であって、組換え昆虫タンパク質のアミノ酸配列をコードするのに使用することができるコドンの選択が、最適化された哺乳動物のコドン使用頻度をそっくり真似るように変更されて、その合成遺伝子中でのコドンの使用頻度が、同じタンパク質をコードする哺乳動物遺伝子と実質的に同じとなった合成遺伝子を提供する。
【0013】
この第1の態様において好ましくは、そのタンパク質中に存在する全てのアミノ酸タイプが、そのアミノ酸をコードするために使用されるコドンが既知の哺乳動物においてそのアミノ酸を表すためにそのコドンが使用される頻度と同じ頻度で使用されるように、最適化される。更に、好適な最適化コドン合成遺伝子は、そのヒョウヒダニタンパク質の最適化されていない天然遺伝子を用いて同じ発現系から産生されるタンパク質の量に比べて、そのタンパク質収量が20%を超える、より好ましくは50%を超える、及び最も好ましくは100%を超えて高い発現系において使用される。
【0014】
或いは、本発明の第2の態様においては、ヒョウヒダニ(Dermaphagoides)タンパク質をコードする単離された核酸分子であって、各アミノ酸をコードするために用いられる前記ポリヌクレオチド中に存在するコドンが、以下の表1に記載された頻度と実質的に同じ頻度で現れるよう選択されることを特徴とする、上記単離された核酸を提供する。
【0015】
【表2】
Figure 2004503235
【0016】
本明細書において、「実質的に」とは、特定のコドンの使用頻度(%)が表に記載された数字±20%、より好ましくは±15%、よりさらに好ましくは±10%、及び理想的には±5%であることを意味する。
【0017】
或いは、本発明の第3の態様においては、ヒョウヒダニタンパク質をコードする複数のコドンを一緒に含む合成遺伝子であって、各アミノ酸タイプが、理論的に哺乳動物遺伝子で見られる同じアミノ酸タイプの対応するχ値とは有意に差がない(信頼区間が80〜99%である)χ値を有することを特徴とする、上記合成遺伝子を提供する。ここでχ値は、以下の式:
【数1】
Figure 2004503235
(式中xijは、配列iの中のタイプjのコドンの数であり、nは、その配列中の特定のアミノ酸kを表すコドンの合計数であり、xはその2つの配列中のタイプjのコドンの合計数である)
を用いて算出される。変数の自由度は、種々の可能性あるコドンの数から1を引いた数に等しい。
【0018】
上記と同様に、本発明は、ヒョウヒダニタンパク質をコードする複数のコドンを一緒に含む合成遺伝子であって、その合成遺伝子中に存在する異なるタイプのアミノ酸の60〜100%が最適化されることを特徴とする上記合成遺伝子を提供するものとして表すこともできる。但し、以下の表:
【表3】
Figure 2004503235
Figure 2004503235
の中に記載された特定のアミノ酸についてその合成遺伝子中のχ値が有意性の極限χ値(5%)より小さい場合に、そのアミノ酸タイプは最適化されたとみなされることを特徴とするものである。前記χ値は、以下の式:
【数2】
Figure 2004503235
(式中xijは、配列i中のタイプjのコドンの数であり、nは、その配列中の特定のアミノ酸kを表すコドンの合計数であり、xは2つの配列中のタイプjのコドンの合計数である)
を用いて算出される。変数の自由度は、種々の可能性あるコドンの数から1を引いた数に等しい。好ましくは、70%を超えるアミノ酸が最適化され、より好ましくは80%を超えるアミノ酸が最適化され、最も好ましくは90%を超えるコドンが最適化される。
【0019】
驚くべきことに、このように最適化されたヒョウヒダニ遺伝子は、CHO細胞等の哺乳動物細胞中で非常に良好に発現するだけでなく、酵母のコドン使用頻度が異なるにもかかわらず、酵母細胞中においても良好に発現する。
【0020】
また本発明は、ヒョウヒダニアミノ酸配列をコードする本発明の第1〜第3の態様のポリヌクレオチド配列を含み且つその発現を指令することができる発現ベクターであって、そのポリヌクレオチド配列のコドン使用頻度パターンが、高レベルで発現される哺乳動物遺伝子(好ましくは高レベルで発現されるヒト遺伝子)に典型的なパターンであることを特徴とする発現ベクターも提供する。このベクターは、細菌、昆虫又は哺乳動物細胞(特にヒト細胞)における異種DNAの発現を駆動するのに適している。
【0021】
本発明の第1の態様のポリヌクレオチド配列または第2の態様の発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。この宿主細胞は細菌(例えば大腸菌)または哺乳動物(例えばヒト)細胞であってもよいし、あるいは昆虫細胞であってもよい。本発明のベクターを含む哺乳動物細胞は、in vitroでトランスフェクトされた培養細胞であってもよいし、またはベクターを哺乳動物に投与することによりin vivoでトランスフェクトされたものであってもよい。
【0022】
本発明のポリヌクレオチド又はコドンが最適化されたポリヌクレオチド配列によって発現される組換えヒョウヒダニタンパク質を含む医薬組成物もまた提供される。
【0023】
好ましくは、この医薬組成物は、本発明の第2の態様のDNAベクターを含む。好適な実施形態において、この組成物は、ヒョウヒダニアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列をコードするベクターを含むDNAでコーティングされた複数の粒子(好ましくは金粒子)を含み、このポリヌクレオチド配列のコドン使用頻度パターンは、高レベルで発現される哺乳動物遺伝子(特にヒト遺伝子)に典型的なパターンであることを特徴とする。他の実施形態において、この組成物は、製薬上許容可能な賦形剤及び本発明の第2の態様のDNAベクターを含む。またこの組成物はアジュバントも含み得る。
【0024】
他の態様において、本発明は、医薬組成物の作製方法を提供し、該方法は、野生型ヒョウヒダニのヌクレオチド配列のコドン使用頻度パターンを改変するか、またはポリヌクレオチド配列を合成により生成して、高レベルで発現される哺乳動物遺伝子に典型的なコドン使用頻度パターンを有し且つ野生型ヒョウヒダニのアミノ酸配列又はその野生型配列にそのポリペプチドの1つ以上の天然の機能を不活化するのに十分なアミノ酸の変更を加えた突然変異型ヒョウヒダニアミノ酸配列をコードする配列を生成する工程を含む。この方法は更に、哺乳動物宿主細胞における合成ポリヌクレオチド配列の発現、発現された組換えタンパク質の精製、及び製薬上許容可能な賦形剤を用いた製剤化を含む。製薬上許容可能な賦形剤としてアジュバントを含む場合、ワクチンの調製方法が提供される。アジュバントは、当分野において周知である(Vaccine Design − The Subunit and Adjuvant Approach, 1995, Pharmaceutical Biotechnology, 第6巻, Powell, M.F.及びNewman, M.J.編, Plenum Press, New York and London, ISBN 0−306−44867−X)。
【0025】
哺乳動物(ヒトを含む)のコドン使用頻度パターンは文献に記載されている(例えばNakamuraら, Nucleic Acids Research 1996, 24:214−215を参照されたい)。
【0026】
本発明のポリヌクレオチドは、in vitro、in vivo又はex vivoで発現し得るコードされたタンパク質の発現による産生において有用である。従ってこのヌクレオチドは、例えば収量を高めるために組換えタンパク質合成において利用してもよいし、又は実際それ自体を、DNAワクチン接種技法で用いられる治療薬として用いることもできる。本発明のポリヌクレオチドを、コードされるタンパク質のin vitroもしくはex vivo産生で用いる場合、発現すべきポリヌクレオチドを含むように細胞(例えば細胞培養物)を改変する。このような細胞には、一過性のまたは好ましくは安定な哺乳動物細胞系が含まれる。本発明のポリペプチドをコードするベクターの挿入により改変しうる細胞の具体的な例には、哺乳動物HEK293T、CHO、HeLa、293及びCOS細胞が含まれる。好ましくは、選択される細胞系は、安定であるだけでなく、ポリペプチドの成熟グルコシル化及び細胞表面発現をも可能とする細胞系である。発現は、形質転換された卵母細胞中で行われる。ポリペプチドは、トランスジェニック非ヒト動物(好ましくはマウス)の細胞内で本発明のポリヌクレオチドから発現され得る。本発明のポリヌクレオチドからポリペプチドを発現するトランスジェニック非ヒト動物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドが治療薬として(例えばDNAワクチン接種において)用いられる場合、核酸はワクチン接種しようとする哺乳動物(例えばヒト等)に投与される。RNAやDNA等の核酸(好ましくはDNA)は、哺乳動物の細胞内で発現され得るベクターの形態(例えば上記に記載されたもの等)で提供される。ポリヌクレオチドは、任意の利用可能な技法によって投与することができる。例えば、核酸は、注射針によって好ましくは皮内、皮下又は筋肉内に導入することができる。或いは、核酸は、核酸送達装置(例えば粒子を媒体としたDNA送達(PMDD)等)を用いて皮膚内に直接送達してもよい。この方法では、不活性粒子(例えば金ビーズ等)を核酸でコーティングし、例えば発射装置から高圧力下で放出することにより、これらの粒子が受容者の表面(例えば皮膚)を貫通することができるように十分な速度に加速させる。(本発明の核酸分子でコーティングされた粒子及びこのような粒子を装填した送達装置は、本発明の範囲内に含まれる)。
【0028】
裸の(naked)ポリヌクレオチドまたはベクターを患者の体内に導入するのに適した技法としては、適当なビヒクルを用いた局所塗布が挙げられる。核酸は、皮膚に、又は粘膜表面に(例えば鼻腔内、口腔内、膣内又は直腸内投与によって)局所投与することができる。裸のポリヌクレオチド又はベクターは、製薬上許容可能な賦形剤(例えばリン酸緩衝化生理食塩水PBSなど)と共に存在させてもよい。ブピバカインなどの促進剤を別途用いることによって又はDNA製剤に配合することによって、DNAの取込みを更に促進することができる。受容者に核酸を直接投与するための他の方法としては、超音波、電気刺激、エレクトロポレーション及びミクロシーディング(microseeding)(米国特許第5,697,901号に記載)が挙げられる。
【0029】
核酸構築物の取込みは、幾つかの公知のトランスフェクション技法(例えばトランスフェクション試薬を使用するものを含む)によって向上させることができる。これらのトランスフェクション試薬の例としては、カチオン性試薬(例えばリン酸カルシウム及びDEAE−デキストラン等)、並びにリポフェクション試薬(リポフェクタント)(例えばリポフェクタム及びトランスフェクタム)が挙げられる。核酸の投与量は、変更することができる。核酸は、粒子を媒体とした遺伝子送達の場合は典型的には1pg〜1mg、好ましくは1pg〜10μgの量で投与され、他の経路で投与する場合は10μg〜1mgの量で投与される。
【0030】
本発明の核酸配列は、遺伝子治療で有用な専用送達ベクターを用いて投与することもできる。遺伝子治療の手法は、例えばVermeら, Nature 1997, 389: 239−242に記載されている。ウイルスベクター系及び非ウイルスベクター系のいずれを用いることもできる。ウイルスに基づく系としては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、カナリア痘ウイルス及びワクシニアウイルスに基づく系が挙げられる。ウイルスに基づかない系としては、核酸の直接投与、微小球カプセル化技術(ポリ乳酸グリコール酸共重合体)及びリポソームに基づく系が挙げられる。一回目のワクチン接種後に追加免疫注射を行うことが望ましい場合、ウイルス送達系及び非ウイルス送達系を組み合せてもよい(例えばプラスミドなどの非ウイルスベクターを用いた一回目の「初回抗原刺激」DNAワクチン接種の後にウイルスベクターもしくはウイルスに基づかない系を用いた1回以上の「追加免疫」ワクチン接種を行う等)。
【0031】
本発明の核酸配列は、形質転換細胞によって投与することもできる。このような細胞としては、被験者から採取した細胞が挙げられる。本発明の裸のポリヌクレオチド又はベクターをこのような細胞の中にin vitroで導入した後、その形質転換細胞を被験者の体内に戻すことができる。本発明のポリヌクレオチドは、相同性組換えによって細胞内に既に存在する核酸の中に組み込むことができる。形質転換細胞は、所望により、in vitroで増殖させて、得られた細胞の1つ以上を本発明で用いることができる。細胞は、既知の外科的技法又は顕微手術技法(例えば移植(埋込)、マイクロインジェクション法等)によって患者の体内の適当な部位に提供することができる。
【0032】
本発明の医薬組成物は、アジュバント化合物、又はDNAによりコードされるタンパク質により誘導される免疫反応を強化することができる他の物質を含んでもよい。これらは、抗原とは別にまたは抗原との融合体としてDNAによりコードされるものであってもよいし、その製剤の非DNA成分として含まれても良い。本発明の製剤中に含まれ得るアジュバント型物質の例としては、ユビキチン、リソソーム結合膜タンパク質(LAMP)、B型肝炎ウイルスのコア抗原、FLT3−リガンド(特殊な抗原提示細胞(特に樹状細胞等)の生成において重要なサイトカイン)並びにIFN−γ及びGMCSFなどの他のサイトカインが挙げられる。
【0033】
本発明の方法に従ってコドンを最適化することができる他のダニアレルゲンの例としては、DerF3及びDP15が挙げられる。DerF3は、コナヒョウヒダニに由来するセリンプロテアーゼ(受託番号D63858NID/g1311456)である。DP15は、ヤケヒョウヒダニに由来する主要なアレルゲンpDp15=グルタチオンS−トランスフェラーゼ相同体(受託番号S75286/g807137)である。
【0034】
DerF3及びDP15のコドン使用頻度パターンを以下の表に表す。
【0035】
【表4】
Figure 2004503235
Figure 2004503235
太字で表した数値は、統計学的に有意な数値である(コドンが最適化されていないアミノ酸である)。
【0036】
最適化された遺伝子は、R.S. Hale及びG Thompson(Protein Expression and Purification, 第12巻, pp.185−188(1998))により記載されたカルクジーン(Calcgene)と呼ばれるビジュアル・ベーシック・プログラム(Visual Basic Program)を用いて設計することができる。元の配列の中の各アミノ酸残基毎に、高レベルで発現される哺乳動物又はヒトの遺伝子において現れる確率に基づいてコドンを割り当てた。マイクロソフトのウィンドウズ3.1環境下で動作するこのプログラムの詳細は、上記著者らから得ることができる。この文献では、その遺伝子の効率的な発現を損ないかねない稀なコドンがまとまって形成されたクラスターが生じる可能性を回避するために、一定の稀なコドンを最適化プロセスから除いた。従って本発明に関して、当業者は、最適化された遺伝子の中に稀なコドンからなるクラスターが存在しないことを確かめるためにそのポリヌクレオチド配列を目でチェックしてもよいし、或いは、最適化プロセスから1つ以上の稀なコドンを除外してもよい。
【0037】
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【0038】
本発明を例示するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0039】
実施例1: COS 細胞及び CHO 細胞における RecProDer P1 の発現
ProDer p1 合成遺伝子の構築
14個の部分的に重複するオリゴヌクレオチドのセットを用いて、「ヒト化」ProDer p1遺伝子を合成した。これらのプライマーは、高レベルで発現されるヒト遺伝子のコドン使用頻度に基づいて設計し、394 DNA/RNA Applied Biosystem合成装置によって生成した。縮重してコードされるアミノ酸を、最も優勢である(prevalent)コドンによってコードするようにしたのではなく、個々のコドンの頻度を考慮に入れてコードした。例えば、ヒスチジン残基はCAC又はCATによりコードされ、高レベルで発現されるヒト遺伝子においてこれらのコドンはそれぞれ79%及び21%の頻度で現れる。従って、本発明者らは、合成ProDer p1において各ヒスチジン残基についてCACコドンのみを選択するのではなく、同じコドン頻度となるように試みた。天然Der p1シグナル配列を、効率の高いVZV糖蛋白E(gE)のリーダーペプチドと交換して、分泌し易くした。オリゴヌクレオチドは以下のものを使用した。
【0040】
Figure 2004503235
Figure 2004503235
【0041】
PCR反応で合成ProDer p1遺伝子を増幅させるために、これらのオリゴヌクレオチドを一緒にインキュベートした。典型的には、高忠実度(HiFi)ポリメラーゼ(ベーリンガー社)を用いて以下の条件でPCRを行った:30サイクル、94℃にて30秒間変性、50℃にて30秒間アニーリング、及び72℃にて30秒間伸長。こうして生成された産物を、3’及び5’末端プライマー(オリゴ1及び14)を同じ条件で用いて増幅した。得られた1080bpの断片をpCRII−TOPOクローニングベクター(インビトロゲン社)中にクローニングした。得られたプラスミドpNIV4845を用いて大腸菌TOP10株(インビトロゲン社)を形質転換した。
【0042】
天然遺伝子及びコドン最適化遺伝子の配列を、それらによりコードされるアミノ酸配列と一緒に、以下に記載する(それぞれ配列番号15、16及び17)。これらの配列は全長ProDer P1をコードし、下線を付した核酸又はアミノ酸は、Pro領域の切断により得られる成熟DerP1配列の開始地点を表す。
【0043】
Figure 2004503235
Figure 2004503235
Figure 2004503235
Figure 2004503235
【0044】
ヒト化 ProDer p1 発現ベクターの構築
8個の細菌クローンの配列決定を行ったところ、合成ProDer p1遺伝子の中に幾つかの突然変異が見られたので、pNIV4845を担持する細菌クローンに由来する4つのProDer p1 DNA断片から出発して、安定な発現のためのプラスミドを作製した。クローンn°5およびn°20をそれぞれHindIII−BssHII及びSphI−BglIIにより二重消化して、228bpのHindIII−BssHII及び272bpのSphI−BglII ProDer p1 DNA断片を単離した。クローンn°7をBssHII−SphI及びBglII−XbaIで制限処理して239bpのBssHII−SphI及び329bpのBglII−XbaI ProDer p1 DNA断片を作製した。これらの断片を、HindIII−XbaIで切断したpEE14発現ベクター(Celltech)[16]中に挿入して、最終的なプラスミドpNIV4846を作製した。DNA配列決定によって正しい組換え体を確認した。
【0045】
recProDer p1 を産生する安定 CHO−K1 系の一過性トランスフェクション及び選択
recProDer p1の発現レベルを測定するために、リン酸カルシウム共沈殿法により、10μgのpNIV4846又はpNIV4853(原物に忠実な(authentic)ProDer p1遺伝子を担持するプラスミド)でCOS細胞(ATCC)を一過性のトランスフェクションにかけた。安定なrecProDer p1発現のために、リポフェクションによりpNIV4846プラスミドでCHO−K1細胞(ATCC)をトランスフェクトした。25μMメチオニルスルホキシミン(MSX、シグマ社)選択を3週間行った後、100μM MSXを用いて遺伝子増幅を1回行った。
【0046】
CHO 細胞における組換えアレルゲンの発現
産生効率の高い組換えCHO−K1クローンを、2%ウシ胎児血清(ギブコ社)を添加したGMEM培地(インビトロゲン社)中で細胞工場(cell factory)のいて培養した。培養に使われた培地を72時間経過毎に回収し、精製するまで−20℃で保存した。
【0047】
天然のダニ菌体抽出物からの天然 Der p1 の精製
以前に記載されたように[13]、ダニ菌体培養物から天然Der p1を精製した。簡単に説明すると、ヤケヒョウヒダニ抽出物を60%飽和となるまで(NHSO沈降法にかけた。沈殿物を、超音波遠心分離により回収し、1Mの(NHSOを含むPBS中に再懸濁したものを、1Mの(NHSOを含むPBS で平衡化したリソースフェニルカラム(Resource Phenyl column)(ファルマシア社)にアプライした。カラムから水でDer p1を溶出した。Der p1富化画分のpH及び伝導率を調節した後、このプールを、20mM Tris−HCl pH9で平衡化したQセファロース・ファストフローカラム(fast flow column)(ファルマシア社)にアプライした。開始バッファー中に200mM NaClを入れた溶液を加えて、Der p1を溶出した。Der p1の精製は、PBS pH7.3で平衡化したスーパーデックス(superdex)−75カラム(ファルマシア社)でのゲル濾過クロマトグラフィーにより行った。精製したDer p1を濃縮し、−20℃にて保存した。
【0048】
CHO の培養に使われた培地からの recProDer p1 の精製
CHOの培養に使われた培地を水で2倍に希釈し、pHを7.2に調節した。修正した上清を、20mM Tris−HCl pH7.2で平衡化したQセファロース・ファストフローカラム(5×10cm、ファルマシア社)(同じバッファーで調整したヒドロキシアパタイトカラム(2.6×15cm、バイオ・ラド社)に連結されている)にアプライした。両方のカラムのrecProDer p1を含む流出画分をpH9に調節し、20mM Tris−HCl pH9で平衡化したQセファロース・ファストフローカラム(1.6×10cm)にアプライした。カラムを開始バッファー及び同バッファーに100mM NaClを添加したもので洗浄した。ProDer p1を、NaClの一次勾配(100〜300mM, 15カラム体積)で溶出した。recProDer p1富化画分をプールし、フィルトロン膜(Omegaシリーズ、カットオフ:10kD)で限外濾過により濃縮した。recProDer p1の精製は、PBS pH7.3で平衡化したスーパーデックス−75カラム(1×30cm、ファルマシア社)でのゲル濾過クロマトグラフィーにより行った。精製したrecProDer p1を濃縮し、−20℃にて保存した。
【0049】
SDS PAGE 及びウェスタンブロット分析
12.5%ポリアクリルアミドゲル上でのSDS−PAGEによりタンパク質を分析した。電気泳動後、半乾式トランスブロットシステム(バイオ・ラド社)を用いてタンパク質をニトロセルロース膜に移した。膜は、TBS−T(50mM Tris HCl pH7.5, 150mM NaCl, 0.1% Tween 80)中に0.5%インスタゲル(Instagel)(PBゼラチン)で30分間飽和させ、ブロッキング溶液で希釈したDer p1ペプチド(245〜267)に対するウサギポリクローナル血清(1:5000)(フランスのパスツール研究所(Institut Pasteur de Lille)のペステル博士(Dr. Pestel)により提供)と共にインキュベートした[17]。アルカリホスファターゼを結合させたヤギ抗ウサギ抗体(プロメガ社、1:7500)及び5−ブロモ,4−クロロ, 3−インドリルホスフェート(BCIP、ベーリンガー社)/ニトロブルーテトラゾリウム(NBT、シグマ社)を基質として用いて、免疫反応性物質を検出した。
【0050】
グリカン分析
以下に挙げるレクチンを用い、グリカン識別キット(Glycan Differenciation Kit)(ベーリンガー社)を用いて炭水化物分析を行った:スノードロップ(Galanthus nivalis)凝集素(GNA)、セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)凝集素(SNA)、イヌエンジェ(Maackia amurensis)凝集素(MAA)、落花生凝集素(PNA)及びヨウシュチョウセンアサガオ(Datura stramonium)凝集素(DSA)。簡単にまとめると、精製したタンパク質をSDS−PAGEからニトロセルロース膜に移した。膜を、ジゴキシゲニンに結合させた種々のレクチンと一緒にインキュベートした。アルカリホスファターゼに結合させた抗ジゴキシゲニン抗体を用いて複合体を検出した。
【0051】
酵素アッセイ
1mM EDTA及び20mM L−システインを含む50mM Tris−HCl pH7中で、25℃にて全量1mlで酵素アッセイを行った。Cbz−Phe−Arg−7−アミノ−4−メチルクマリン(Cbz−Phe−Arg−AMC)及びBoc−Gln−Ala−Arg−7−アミノ−4−メチルクマリン(Boc−Gln−Ala−Arg−AMC)(シグマ社)(いずれの基質も最終濃度は100μM)の加水分解を、SLM8000分光蛍光計を用いてλex=380nm及びλem=460nmでモニターした。システイン活性化アレルゲンを最終濃度が100nMとなるように加えることにより、アッセイを開始した。アッセイの前に、精製したDerp1又はrecProDer p1を、アプロチニン−アガロース樹脂とp−アミノベンズアミジン−アガロース樹脂との混合物(シグマ社)と一緒にインキュベートして、セリンプロテアーゼ活性の推定される微量活性をすべて除去した。
【0052】
タンパク質測定
標準としてウシ血清アルブミンを用いたビシンコニニン酸手法(MircoBCA、Pierce)により、総タンパク質濃度を測定した。
【0053】
Der p1 ELISA
ELISAキットで、Der p1特異的モノクローナル抗体5H8及び4C1(インドア・バイオテクノロジーズ社(Indoor Biotechnologies))を用いて、Der p1又はrecProDer p1を検出した。アッセイにおいて、Der p1標準物(UVA93/03)は、濃度2.5μg/mlで用いた。
【0054】
IgE− 結合活性
イムノプレートをDer p1又はrecProDer p1(500ng/ウェル)で4℃にて一晩かけてコーティングした。次にプレートをウェルあたり100μlのTBS−Tweenバッファー(50mM Tris−HCl pH7.5, 150mM NaCl, 0.1% Tween 80)で5回洗浄し、同バッファーに1%BSA(シグマ社)を加えたもの150μlで37℃にて1時間飽和させた。次に、ヤケヒョウヒダニに対するアレルギー患者から得た血清を8倍希釈したものを、37℃にて1時間インキュベートした。実験で用いた95個の血清のうち、16個の血清の特異的抗ヤケヒョウヒダニIgE値(RASTアッセイ)は58.1kU/L〜99kU/Lであり、79個は100kU/Lのカットオフ上限値を超えていた。プレートをTBS−Tweenバッファーで5回洗浄し、マウス抗−ヒトIgE抗体(サザンバイオテクノロジー・アソシエーツ社(Southern Biotechnology Associates))及びアルカリホスファターゼに結合させたヤギ抗−マウスIgG抗体(TBS−Tweenバッファー中で1/7500に希釈、プロメガ社)と一緒にインキュベートした後に、アレルゲン−IgE複合体を検出した。ジエタノールアミンバッファー(pH9.8)に溶解したp−ニトロフェニルホスフェート基質(シグマ社)を用いて酵素活性を測定した。バイオラド・ナバパスELISAリーダー(Biorad Novapath ELISA reader)で、OD410nmを測定した。
【0055】
IgE阻害アッセイ用に、同じ濃度(0.12μM)のDer p1又はrecProDer p1でプレートをコーティングした。アレルギー患者(RAST値>100kU/L)から得た20個のヒト血清からなるプールを、様々な濃度(3.6〜0.002μM)のDer p1又はrecProDer p1(インヒビターとして)と一緒に4℃にて一晩予めインキュベートしておき、ELISAプレートに加えた。IgE結合は上述したように検出した。
【0056】
ヒスタミン放出
アレルギードナーの末梢ヘパリン添加血から得た白血球を用いて、ヒスタミン−ELISAキット(イムノテック社(Immunotech))により、ヒスタミン放出について分析した。好塩基球をrecProDer p1又はDer p1の連続希釈液と一緒に37℃にて30分間インキュベートした。界面活性剤IGEPAL CA−630(シグマ社)で細胞を破壊した後に、好塩基球中のヒスタミンの合計量を定量した。
【0057】
結果
ヒト化 ProDer p1 遺伝子の合成
ProDer p1遺伝子のコドン優勢率(codon prevalence)は、高レベルで発現されるヒト遺伝子で使用されるものに比べて大きな多様性を示した(図1)。従って、哺乳動物細胞中でのアレルゲンの発現を最適化するための合成ProDer p1遺伝子を構築するために、オリゴヌクレオチドを設計した。図1に示すように、合成ProDer p1遺伝子における最終コドン頻度は、高レベルで発現される哺乳動物遺伝子で使用されるものと非常に類似していた。
【0058】
相互にプライミングするオリゴヌクレオチドから合成ProDer p1をアセンブルした後、これをPCRにより増幅した(図2)。PCRを一回行った後、増幅産物は、3000〜300bpの分子量を示した。次に、VZV gEリーダーペプチドの5’末端に相補的なプライマー及び合成ProDer p1遺伝子の3’末端に相補的なプライマーを用いて増幅を行ったところ、予想サイズ1072bpの断片が得られた。増幅断片をpCRIIクローニングベクターにクローニングした。組換えクローンの配列分析により、合成ProDer p1遺伝子の中の点突然変異及び欠失の存在が明らかとなった。最後に、3つの独立した細菌クローンから単離した4つの異なる断片をライゲートした後に、正しいコードカセットを得、これを哺乳動物発現ベクターpEE14中に挿入して、最終的なプラスミドpNIV4846を得た。
【0059】
rec ProDer p1 の一過性発現及び安定発現
合成ProDer p1構築物の発現効率を元の配列の発現効率と比較するために、COS細胞を、pNIV4846及びpNIV4853(原物に忠実なProDer p1 cDNAを担持するpEE14−由来プラスミド)でトランスフェクトした。上清のrecProDer p1発現レベルを、2つの抗Der p1モノクローナル抗体を用いて、ELISAアッセイにより評価した。図3に示すように、合成cDNAを担持する発現ベクターは、原物に忠実な遺伝子を含む同じベクターよりも効率良く、recProDer p1合成を指令した。ヒト化ProDer p1遺伝子の発現レベルは、最大450ng/ml/72時間まで強化された(基準構築物(75ng/ml/72時間)に比べて6倍増加)。予想通り、挿入体を含まない対照ベクターでトランスフェクトしたCOS細胞を用いた場合、recProDer p1の発現は検出されなかった。
【0060】
CHO−K1細胞をpNIV−4846でトランスフェクトし、25μM MSXに対して耐性を示すクローンを選択した。recProDer p1レベルをELISAにより分析したところ、3つの独立クローンが最大11μg/ml/72時間ものrecProDer p1を分泌したことが分かった。酪酸ナトリウム(培地中の組換えタンパク質の発現レベルを強化すると以前に報告された分子[18])を加えても、recProDer p1の合成に影響はなかった。25μM MSX−耐性クローンはさらに最大100μM MSXまで発現が増加した(培地中のrecProDer p1が26〜34μg/ml/72時間で上昇)。細胞工場においてrecProDer p1を大量に生産及び精製するために、クローンn°1を用いた。培養に使われた培地を72時間毎に回収した。回収は最多で9回行った。これらの条件において、最も高いrecProDer p1発現レベルは、精製前の培地中で15μg/ml上昇した。
【0061】
recProDer p1 の精製
recProDer p1の精製は、陰イオン交換、ヒドロキシアパタイト及びゲル濾過媒体を用いた3つのクロマトグラフィーステップを組み合せて行った。最終精製収量は培地1リットルあたりrecProDer p1(約6mg)であり、回収率は40%近くであった。SDS PAGEで、精製されたrecProDer p1は3つの免疫反応種として泳動し、そのうち2つの主要なバンドのそれぞれの分子量は41kD及び36kDであり、1つのマイナーバンドは38kDであった(図4)。天然Dr p1はSDS PAGE上を29kDバンドとして泳動するので、この結果は、発現及び精製ステップ中にはプロペプチド切断(成熟Der p1ができる)は起こらなかったことを示す。生成物の純度は90%を超えていた。
【0062】
ProDer p1 の生化学的特徴
全てのrecProDer p1種を、アミノ末端のアミノ酸配列決定にかけた。41kDa種及び38kDa種のN末端配列は全く同じであり、Arg19残基で始まっていた。配列は、Arg−Pro−Ser−Ser−Ileとして同定された。これは、Der p1プロペプチドのN末端配列に対応し、このことは、VZV gEシグナルペプチドの切断が効率良く進行したことを示す。驚くべきことに、36kDaバンドのN末端配列は、Ala38残基で始まっており(得られた配列はAla−Thr−Phe−Glu−Aspであった)、このことは、36kDa分子の場合、プロ配列の内部切断がTyr37とAla38との間で起こったことを示す。recProDer p1の炭水化物分析は、幾つかの特異的レクチンを用いたグリカン認識によって行った。用いた5つのレクチンのうち、GNAレクチンのみが36kDa recProDer p1と反応した。このことは、この分子上に末端マンノース残基が高マンノースN−グリカン鎖として又はハイブリッド鎖中の露出したマンノースとして存在することを示す(図5)。38kDaバンド及び41kDaバンドはそれぞれDSAレクチン及びMAAレクチンにより認識された。このことは、38kDa分子が、Nグリカン鎖中にN−アセチル−グルコサミンのβ(1−4)に結合した末端ガラクトースを担持していたが、上側のバンドの炭水化物構造はガラクトースのα(2−3)に結合したシアル酸で終わっていたことを示す。以前に記載されたように[13]、Der p1はどのレシチンとも結合しなかった。このことは、Der p1がグルコシル化されていないことを示す。Cbz−Phe−Arg−AMC及びBoc−Gln−Ala−Arg−AMCを基質として用いて、recProDer p1の酵素活性を測定した[19,20]。予想通り、Pro領域の存在により、recProDer p1は、本発明者らのアッセイにおいて完全に不活性であった。同じ実験条件において、蛍光原分子は、同じモル濃度で天然Der p1を用いることにより4分以内に完全に分解された。
【0063】
recProDer p1 IgG− 及び IgE− 反応性
組換えアレルゲンが、特異的抗−Der p1 IgG及び抗−ヤケヒョウヒダニIgEに対するDer p1の反応性に似た反応性を示すか否かを判定するために、recProDer p1をELISAアッセイにてテストした。図6に示すように、等モル濃度のこれら2つのアレルゲンは、2つのDer p1特異的モノクローナル抗体及び配座抗体(conformational antibody)に対して同様に反応した。このことは、recProDer p1が天然アレルゲンの全体的な構造を表したことを示す。recProDer p1及びDer p1のIgE反応性を、イムノプレートをDer p1又はrecProDer p1で直接コーティングする直接型ELISAにおいて比較した。放射免疫吸着試験でヤケヒョウヒダニ抽出物に対して陽性であった95のヒト血清からなるセットを8倍希釈して使用した。IgE力価測定により、これら2つのアレルゲンに対するIgE反応性の密接な相関が明らかとなった。このことは、recProDer p1が、Der p1と非常に良く似たIgE結合特性(R=0.8171, p<0.0001)を有することを示す(図7)。
【0064】
recProDer p1 のヒスタミン放出活性
天然Der p1及びrecProDer p1のアレルゲン性活性を比較するために、1人のアレルギー患者から採取した好塩基球を、様々な濃度のこれら2つのアレルゲンを用いてin vitroでチャレンジし、放出されたヒスタミンを測定した。天然Der p1は、1ng/mlの濃度でも好塩基球からのヒスタミン放出を誘導することができた。これに対し、recProDer p1は、1000倍高い濃度になってやっとヒスタミンを放出することができた(図8)。この結果から、recProDer p1は、天然Der p1に比べてアレルゲン性が低いことが分かった。
【0065】
実施例2:ピヒア・パストリス酵母( Pichia pastoris) における RecProDerP1 の発現
ProDer p1 発現ベクターの構築
pNIV4846から得たProDer p1コードカセット(最適化された哺乳動物コドン使用頻度を有する全長1〜302アミノ酸のProDer p1 cDNA)を、以下のプライマーを用いたPCRにより増幅した:5’ACTGACAGGCCTCGGCCGAGCTCCATTAA3’(太字はStuI制限部位、フォワード)及び5’CAGTCACCTAGGTCTAGACTCGAGGGGAT3’(太字はAvrII制限部位、リバース)。増幅断片をpCR2.1 TOPOクローニングベクター中にクローニングした。正しいProDer p1カセットであることをDNA配列決定により確認した。組換えTOPOベクターを、StuI−AvrIIで消化して918bp断片を得、この断片を、SnaBI−AvrIIで制限処理したpPIC9K発現ベクター中に導入した。得られたプラスミドpNIV4878は、サッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisae)のα因子の下流にProDer p1カセットを含む。
【0066】
部位特異的突然変異誘発
非グリコシル化ProDer p1(N52Q、成熟Der p1における位置番号)を作製するための発現プラスミドは、4つのプライマーのセットを用いた重複伸長PCRによりpNIV4878から得た。以下のプライマー5’GGCTTTCGAACACCTTAAGACCCAG3’(プライマー1、太字はAflII制限部位、フォワード)及び5’GCTCCCTAGCTACGTA TCGGTAATAGC3’(プライマー2、太字はSnaBI制限部位、リバース)を用いて、ProDer p1アミノ酸配列71〜176をコードする317bpの断片を増幅した。以下のプライマー5’CCTCGCGTATCGGCAACAGAGCCTGGACC3’(プライマー3、太字は突然変異N52Q、フォワード)及び5’GGTCCAGGCTCT GTTGCCGATACGCGAGG3’(プライマー4、太字は突然変異N52Q、リバース)を用いて、ProDer p1配列中に突然変異N52Qを導入した。
【0067】
3ステップの手順により、突然変異型317bp AflII−SnaBI断片を作製した。1回目のPCRでは、プライマー1及び4をpNIV4878と混合しておよそ200bpの断片を作製した。2回目のPCRでは、プライマー2及び3をpNIV4878と混合して、およそ140bpの断片を作製した。これら2つのPCR産物をアガロースゲル上で精製し、3回目のPCRの鋳型として用いて、およそ340bpの断片を得た。この精製された断片を、pCR2.1 TOPOベクター中にクローニングした。DNA配列決定により、突然変異を確かめた。組換えTOPOベクターをAflII−SnaBIで消化して317bpの断片を作製し、これを、同様に消化したpNIV4878中にライゲートした。得られたプラスミドpNIV4883は、サッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisae)のα因子の下流にProDer p1 N52Qを含む。
【0068】
第4位、31位又は65位(成熟Der p1における位置番号)にDer p1システイン残基の突然変異を担持するProDer p1の非グリコシル化突然変異体を得るために、プラスミドpNIV4873、pNIV4875及びpNV4874を用いて、同じプライマーセットを用いた重複伸長PCRを行った。得られたプラスミドpNIV4884、4885及び4886はそれぞれ、ProDer p1のN52Q C4R、N52Q C31R及びN52Q C65Rをコードする。
【0069】
ピヒア・パストリス( P. pastoris )の形質転換
スフェロプラスト形質転換法を用いて、ピヒア・パストリス中にプラスミドpNIV4878を導入した。ヒスチジノール・デスヒドロゲナーゼ(His+)原栄養性の形質転換体を選択した。寒天中のG418の濃度を増加させた寒天上にクローンを植菌することにより、His+形質転換体のジェネチシン(G418)耐性についてスクリーニングを行った。
【0070】
組換え酵母による ProDer p1 の産生
BMG培地中でG418耐性クローンをOD600nmが2〜6になるまで30℃で増殖させた。遠心分離により細胞を回収し、BMG培地100ml中にOD600nmが1になるよう再懸濁した。メタノール0.5%を6日間毎日加えることにより、Proder p1発現を誘導した。遠心分離により上清を回収し、精製するまで−20℃にて保存した。
【0071】
酵母培養上清からの ProDer p1 の精製
上清を水で10倍希釈し、pHを9に調節した後、20mM Tris−HCl pH9で平衡化したQセファロースカラムに直接ローディングした。開始バッファーでカラムを洗浄した。バッファー中のNaCl濃度を段階的に増加させながら、タンパク質溶出を行った。ProDer p1富化画分をプールし、フィルトロン膜(Omegaシリーズ、カットオフ:10kD)で限外濾過により濃縮した。PBS pH7.3で平衡化したスーパーデックス−75カラム(1×30cm、ファルマシア社)上のゲル濾過クロマトグラフィーにより、ProDer p1精製を行った。精製したProDer p1を濃縮し、−20℃で保存した。驚くべきことに、酵母コドン使用頻度はそのヒトのプロファイルとは大きく異なるという事実を考えあわせると、このヒト化ProDer P1は、この系において非常に良好に発現され、タンパク質の収率は高かった。
【0072】
検討
大量のDer p1(ヤケヒョウヒダニに由来する主要なアレルゲン)を得られないことは、生化学及び免疫学の研究の発展の大きな障害である。実際に、ダニ菌体培養物は費用効率が良い。天然Der p1の増殖速度は遅く、精製収率は比較的低く、本発明者らの実験条件において1グラムのダニ菌体培養物から精製されるDer p1は約1mgである。さらに、細菌及び酵母中でDer p1を発現させる以前の試みは、このアレルゲンが発現レベルが低く、主に不溶性形態で発現されることを示した[10〜12]。この研究は、哺乳動物細胞中でのrecProDer p1の生成量が非常に低いことを明らかに示しており、このことは、プロ配列の存在がrecProDer p1の高レベル発現を誘導するのに十分ではないことを示している。
【0073】
Proder p1遺伝子のコドン優勢率は、高レベルで発現されるヒト遺伝子で最も頻繁に使用されるものとは異なる。CHO細胞中でのrecProDer p1発現に適したコドン使用頻度の重要性を評価するために、本発明者らは、哺乳動物において優勢であるコドンに基づいて合成ProDer p1遺伝子を遺伝子操作することに決めた。その研究結果は、哺乳動物細胞中でのrecProDer p1の高レベル発現を誘導するために、コドンの最適化が有益であることを明らかに示している。
【0074】
まとめると、コドン使用頻度の最適化は、CHO細胞中で産生することが難しいアレルゲンであるrecProDer p1の高レベル発現を誘導することができる。また、この戦略は、他のアレルゲンの発現に適用することもでき、他の発現系に応用することができるであろう。このように、適切なコドンを有する合成遺伝子は、アレルギー診断及び特定の免疫療法の新しいツールを提供する可能性がある。
【0075】
特異的IgEを検出するための診断テストでは、天然Der p1の代わりに固相に固定化させたrecProDer p1を用いることができるであろう。recProDer p1のアナフィラキシーを誘発する可能性が低下したことを考慮すると、この組換えアレルゲンは将来、免疫療法において一般に使用されているアレルゲン抽出物に代わる代替試薬として使用することができるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】
ProDer p1のコドン使用頻度及び高レベルで発現されるヒト(「高」)遺伝子を示す図である。コドン使用頻度の最適化を行った後の合成ProDer p1遺伝子(合成)のコドン使用頻度も表される。各対応アミノ酸についての各々のコドンの頻度(%)を表す。最も優勢なコドンは太字で示してある。
【図2】
ProDer p1 cDNAのPCR合成を示す図である。14個の相互にプライミングするオリゴヌクレオチドのセットを、合成ProDer p1 cDNAのPCR増幅に用いた。増幅を一回行った後、得られた増幅産物を、外側のプライマー(プラマー1及び14)を用いて2回目のPCR増幅に供した。この合成のPCR鋳型となったオリゴヌクレオチドを実線の棒で表す。真核生物pEE14発現ベクター中へのクローニングに用いた合成Proder p1 cDNA中へのユニークな制限部位を上に示す。これら2回のPCR増幅のそれぞれの後に、アガロースゲル上で増幅断片の電気泳動を行った結果も示す。
【図3】
一過性トランスフェクションアッセイにおける合成及び天然のProDer p1の発現を示す図である。Der p1 ELISAにおいて、天然又は合成ProDer p1をコードするプラスミド(それぞれpNIV4853及びpNIV4846)でトランスフェクトしたCOS細胞から得た上清中に、分泌されたrecProDer p1が存在するか否かについて分析した。挿入体を持たないプラスミドでトランスフェクトしたCOSから得た上清を対照として用いた。
【図4】
recProDer p1の精製を示す図である。精製したアレルゲンをSDS−PAGEにより分析し、クーマシーブルー染色(パネルA)、及びDer p1ペプチド245〜267に対するウサギポリクローナル血清を用いたイムノブロット(パネルB)によりタンパク質を検出した。レーン1:精製recProDer p1。レーン2:精製Der p1。
【図5】
recProDer p1の炭水化物分析を示す図である。精製したアレルゲンのグリコシル化を、スノードロップ(Galanthus nivalis)凝集素(GNA、レーン1、2)、ヨウシュチョウセナサガオ(Datura stramonium)凝集素(DSA、レーン3、4)、及びイヌエンジェ(Maackia amurensis)凝集素(MAA、レーン5、6)を用いたレシチン染色によって分析した。レーン1、3、5:精製Der p1。レーン2、4、6:精製recProDer p1。
【図6】
Der p1に対するモノクローナル抗体によるrecProDer p1の免疫認識を示す図である。モノクローナル抗体に対するDer p1(●)及びrecProDer p1(■)の反応性を、ツーサイトELISA(two−site ELISA)で分析した。これら2つのアレルゲンはいずれも、総タンパク質アッセイ(MicroBCA, Pierce)で決定した濃度と同じ濃度で用いた。
【図7】
recProDer p1とDer p1のIgE反応性の相関関係を示す図である。イムノプレートを、精製Der p1又はrecProDer p1(500ng/ウェル)でコーティングし、ヤケヒョウヒダニに対して放射線アレルゲン吸着陽性である95個の血清(8倍希釈したもの)と共にインキュベートした。結合したIgEを、マウス抗ヒトIgE及びアルカリホスファターゼで標識した抗マウスIgG抗体と一緒にインキュベートした後に酵素アッセイを行うことにより定量した。結果をOD410nm値で表す。
【図8】
recProDer p1のヒスタミン放出活性を示す図である。1個体のアレルギードナーの末梢血から単離した好塩基球を、天然Der p1(●)又はrecProDer p1(■)の連続希釈液で刺激した。細胞から放出されたヒスタミンをELISAにより測定した。好塩基球中のヒスタミンの合計量を、界面活性剤IGEPAL CA−630で細胞破壊した後に定量した。結果を、ヒスタミンの合計量に対するアレルゲンにより放出されたヒスタミンの比率で表す。

Claims (8)

  1. ヒョウヒダニ(Dematophagoides)のダニタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列であって、そのポリヌクレオチド配列のコドン使用頻度パターンが高レベルで発現される哺乳動物遺伝子のものと類似していることを特徴とするポリヌクレオチド配列。
  2. タンパク質中に存在する全てのアミノ酸タイプが、そのアミノ酸をコードするために使用されるコドンが既知の哺乳動物においてそのアミノ酸を表すためにそのコドンが使用される頻度と同じ頻度で使用されるように、最適化されていることを特徴とする請求項1記載のポリ核酸分子。
  3. ポリ核酸分子によりコードされるタンパク質がある発現系において発現されるときの収量が、そのヒョウヒダニタンパク質の最適化されていない天然遺伝子を用いて同じ発現系から生成されるタンパク質の量よりも20%を超えて高いことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ核酸分子。
  4. 各アミノ酸をコードするために使用される前記ポリヌクレオチド中に存在するコドンが、以下の表に記載された頻度と実質的に同じ頻度で現れるように選択されることを特徴とする、ヒョウヒダニタンパク質をコードするポリ核酸分子。
    Figure 2004503235
    Figure 2004503235
  5. DerP1をコードすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む発現系。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  8. 配列番号16のポリヌクレオチド。
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