JP2004501389A - 累進眼鏡レンズ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】主子午線に沿う非点隔差偏差、即ち処方箋の非点隔差と実際の非点隔差との差が0.2dptより小さく、最大非点隔差偏差が、遠用基準点での平均「装用」屈折力と近用基準点での「装用」屈折力との差(DBF)として定義される加入度の1.2倍より小さく、最大非点隔差偏差が主子午線の鼻側で生じ、鼻側の最大非点隔差偏差の値がこめかみ側の最大非点隔差偏差の値より多くとも0.15dptだけ大きくする。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は特許請求項1の前文に従う累進眼鏡レンズに関する。
【0002】
累進眼鏡レンズ(可変焦点レンズ、多焦点レンズ等とも呼ばれる)は通常は眼鏡装用者がそれを通して遠距離にある物体を眺める領域―これ以降「遠用部」と呼ばれる―内の屈折力が、眼鏡装用者がそれを通して近距離物体を眺める領域(近用部)内の屈折力とは異なる(より小さな)眼鏡レンズであると解釈される。
【0003】
遠用部と近用部の間にはいわゆる累進帯が配置され、そこでは眼鏡レンズの屈折力が遠用部の屈折力から近用部の屈折力まで連続的に増加する。屈折力増加の大きさは「加入度」とも呼ばれる。
【0004】
一般に遠用部は眼鏡レンズの上部に配置され「無限遠に向かって」見るために設計され、一方近用部は下の領域に配置され特に読書用に設計される。特殊用途の眼鏡(パイロット用あるいはモニターワークステーション用の眼鏡が例として挙げられる)においては遠用部および近用部がこれと異なって配置されてもよいし、かつ/あるいは他の距離に対して設計されてもよい。さらに複数の近用部および/または遠用部と、対応する累進帯が存在することも可能である。
【0005】
一定の屈折率を有する累進眼鏡レンズについては、遠用部と近用部間の屈折力が、片面または両面の曲率が遠用部から近用部まで連続的に変化するように増加することが必要である。
【0006】
眼鏡レンズの表面は通常はいわゆる表面の各点における主曲率半径R1およびR2により特徴付けられる(主曲率半径の代わりに主曲率K1=1/R1およびK2=1/R2で示される場合もある)。ガラス材料の屈折率nとともに主曲率半径は表面の眼科学的特性にしばしば用いられるパラメータを決定する。
【0007】
【式1】
【0008】
面屈折力はそれにより遠用部から近用部までの屈折力増加が達成されるパラメータである。面非点隔差(分りやすく円筒屈折力と呼ばれる)は「錯乱特性」である。なぜなら約0.5dptの値を超える非点隔差は(補正されるべき先天的な非点隔差を目が有していない限り)網膜上に不明瞭に見える像をもたらすからである。
【0009】
【従来の技術】
面非点隔差により視覚が「錯乱される」ことなく面屈折力の増加を成し遂げるのに必要な面曲率の変化は(平面または曲面の)子午面に沿っては比較的簡単に得られるけれども、この子午面の側方ではかなりの面の交差が生じ、レンズの上記子午線の側方領域を多少害する大きな面非点隔差をもたらす。
【0010】
従って遠用部から近用部まで増加する面屈折力を有する表面については子午面の横側の領域を生理学的に錯乱させる面非点隔差のない(即ち非点隔差がない、あるいは所定の非点隔差を示す)状態に「維持する」ことは表面理論の理由から不可能である(ミンクウィッツの命題)。
【0011】
遠用部における曲率は変化してはならないので広い範囲内で遠用部が非常に小さい面非点隔差(<0.5dpt)をもつように累進面の遠用部を設計することは比較的簡単であり、「0」の面非点隔差値をもつように設計することさえできる。その一方で中間領域に対して横方向の領域の整形の「質」は関係眼鏡装用者にとって眼鏡レンズの満足度に関する決定的な重要性をもっている。
【0012】
従ってあらゆる累進眼鏡レンズの設計における基本目的は中間領域内の横領域を、また必要なら近用部の横領域も、遠用部に何ら許容できない害を与えないで眼鏡レンズが眼鏡装用者に可能な限り受け入れられるように整形することである。
【0013】
この基本目的を達成するために、屈折力変化に寄与する累進眼鏡レンズの設計は過去においては「面設計の背骨」としてやはり主子午線または主線と呼ばれる一平面内にある、あるいは一平面内で湾曲する子午線から出発してきた。この子午線は上端から下端まで表面に沿って伸び、その道筋は視線の移行、特に視線の下降の間に眼鏡レンズ面を通る視線の貫通点を辿る。この子午線の各点の主曲率は遠用部から近用部に至る面屈折力の所望の増加(やはり加入度と呼ばれる)が達成されるように選択されてきた。この子午線から出発して、次に面の横方向領域が(大体)適当に計算されてきた。
【0014】
横領域の整形に関して、多くの解決策が知られている。累進眼鏡レンズの計算の初期の頃、累進面専用の純理論的面最適化が実行され、一番の関心事は錯乱性の面非点隔差をできる限り減らすことであり、あるいは「面非点隔差」の眼鏡レンズの横下領域への「ずらし」であった。
【0015】
このやり方の典型は米国特許第2878721号またはドイツ特許第AS2044639号で知られる眼鏡レンズ用累進面であり、そこでは(累進面が前面であるとすれば)累進面と、主子午線に対して水平に伸びる平面(水平断面)あるいは主子午線に対して垂直な平面(直交断面)との交線の曲率が円錐曲線あるいはより高次の曲線であり、その曲率は遠用部では増加し、近用部では減少する。遠用部における曲率の増加と、近用部における減少との間の遷移が累進帯に生じる。
【0016】
このやり方は横領域における屈折力差の減少、またそれによる面交差の減少をもたらす。しかしながら横領域における屈折力差の減少のために縁領域を介した視界の方向定位が困難になり、またその設計のために横領域を介して見たときに非常に錯乱性の揺れ効果を感じるという欠点をもつ。さらに水平断面に沿う面屈折力が比較的強く変化する。
【0017】
このため遠用部または近用部における曲率を主子午線の両側の細長い領域においてのみ減少または増加させ、この細長い領域の外側では曲率の変化を逆にすることがドイツ特許第2814936号で提案された。
【0018】
しかしながらこれらのアプローチの全てに共通することは純粋な面絡みの累進面最適化であるということである。この純粋な面絡みのアプローチはドイツ特許第C−4238067号または第C−4342234号等のより最近の特許公報にも見受けられる。
【0019】
最後に触れた公報においてはあるアプローチが述べられ、そこでは面非点隔差と面屈折力の勾配に関する一定の条件が維持されなければならない。例えば面が立体スプラインにより記述されるときにこれらの勾配が全く定まらないという状況にかかわりなく、この純粋に面絡みの最適化はやはり一定の生理学的必要条件を無視している。
【0020】
累進面を装用位置において最適化されるアプローチが欧州特許第A−677177号、米国特許第4606622号およびドイツ特許第19612284号に述べられている。
【0021】
装用位置において累進面を計算することに関し、装用状況が確立される。個々のパラメータが個々の装用位置において特別に決定され、累進面が別々に計算されまた製造されてきた特定のユーザにも、また例えばDIN58208Part2に述べられているような平均値にもこのことは関係する。
【0022】
しかしながら装用位置に対して計算されてきた既知の眼鏡レンズでさえも多くの欠点を有している。
【0023】
例えば米国特許第4606622号で知られる累進面では5dptと7dptの面屈折力値を有する線に対する等面非点隔差線の道筋に沿ってピークが存在する。
【0024】
多分この理由は面絡みと装用位置絡みのアプローチが計算において混合されたからであろう。
【0025】
ドイツ特許第A−19612284は近用部における周辺に向かっての平均屈折力の減少を扱っている。遠用部においても屈折力は周辺に向かって過度に増加すべきではないのでこれは不適当なアプローチである。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
発明は特許請求項1の前文に従う累進眼鏡を大きな遠用部と大きな近用部を有するだけでなく、近用部における周辺に向かっての平均「装用」屈折力の減少も、遠用部における周辺に向かっての平均「装用」屈折力の増加も非常に小さく、かつ/あるいは所定の非点隔差からの偏差が非常に小さく、かつ眼鏡装用者を錯乱させないようにさらに発展させる目的に基づいている。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明によるこの目的の達成はクレーム1と2に特徴付けられる。
【0028】
本発明によれば表面値は何も考慮されず、装用位置に関係するパラメータ、即ち所定の非点隔差(非点隔差なしの眼に対して0dpt、あるいは大きさと円筒軸に関する処方箋)からの偏差と眼鏡レンズの「屈折力」の尺度としての平均「装用」屈折力Dのみが考慮される。
【0029】
平均「装用」屈折力Dは像距離即ち後側焦点距離の逆数S’1およびS’2の平均値引く物体距離即ち前側焦点距離の逆数Sである。
【0030】
【式2】
【0031】
本発明によれば以下が非点隔差偏差に適用される。
− 主子午線に沿う非点隔差偏差、即ち所定の非点隔差と実際の非点隔差の差が0.2dpt以下
− 最大非点隔差偏差は加入度(add)の1.2倍以下で、加入度は遠用基準点における平均「装用」屈折力(DBF)と近用基準点における平均「装用」屈折力(DBN)との差として定義される。
− 最大非点隔差偏差は主子午線の鼻側に生じる。
− 鼻側の最大非点隔差偏差値はこめかみ側の最大非点隔差偏差値より多くとも0.15dptだけ大きい。
【0032】
以下が平均「装用」屈折力に適用される。
− 芯取り点BZの上方領域における、即ちy>y(BZ)に対する平均「装用」屈折力Dfは以下で与えられる。
【0033】
【式3】
【0034】
− y<<(BZ)−7mmである領域における「装用」屈折力DNは以下で与えられる。
【0035】
【式4】
【0036】
− 遠用基準点、即ちy=y(BF)のレベルにおける0.5dptの非点隔差偏差に対する等値線の間隔、xA(BF)は以下で与えられる。
【0037】
【式5】
【0038】
− 遠用基準点における平均「装用」屈折力からの0.25dptの偏差に対する等値線の間隔、xD(BF)は遠用基準点、即ちy=y(BF)のレベルにおいて以下で与えられる。
【0039】
【式6】
【0040】
− 近用基準点、即ちy=y(BN)のレベルにおける0.5dptの非点隔差偏差に対する等値線の間隔、xA(BN)は以下で与えられる。
【0041】
【式7】
【0042】
− 近用基準点における平均「装用」屈折力からの0.25dptの偏差に対する等値線の間隔、xA(BN)は近用基準点、即ちy=y(BN)のレベルにおいて以下で与えられる。
【0043】
【式8】
【0044】
【発明の実施の形態】
以下において発明は、図面に関連する実施例の助けを借りて、一般的な発明概念の限定をしないで、例として説明するが、これは本文ではあまり明示的に説明されない詳細発明の全ての開示に関して特別に注意を引かせるためである。
【0045】
図1および2はいわゆる芯取り点の下4mmにある点を中心とする半径20mmの円内の本発明の実施例の非点隔差偏差と平均「装用」屈折力を示す。遠用基準点と近用基準点は円で示され、それらの位置はそれぞれの図から分る。
【0046】
図1には眼鏡/眼システムのいわゆる非点隔差偏差、即ち「残存非点隔差」がいわゆる等値線により0.5dptの等値線を手始めに表される。等値線は円筒処方箋からの大きさと円筒軸に関する非点隔差偏差を示し、円筒処方箋は非点隔差のない眼の場合ゼロである。
【0047】
図2には平均「装用」屈折力D即ち後側焦点距離(像距離)の逆数S’1とS’2の平均値引く物体距離即ち前側焦点距離の逆数S
【0048】
【式9】
が等値線の形式で0.75dptの等値線を手始めに示される。
【0049】
両図において横軸(x軸)は装用位置における水平軸であり、縦軸(y軸)は装用位置における垂直軸である。
【0050】
遠用部も近用部も比較的大きいことを図は示す。さらに平均「装用」屈折力が遠用部においてはほとんど周辺に向かって増加せず、また近用部においてはほとんど減少しない。最大非点隔差偏差は非常に小さく、鼻側とこめかみ側の最大偏差はわずかである。
【0051】
図3は主子午線に沿う以下の値を示す(横軸は主子午線上の点のy値を示す)。
1. dptで示す平均「装用」屈折力の増加:
0.0から3.0まで縦軸上に番号付けした実線a
2.度で示す非点隔差偏差の円筒軸:
0から200まで縦軸上に番号付けした実線b
3. dptで示す非点隔差偏差:
0.00から0.16まで縦軸に番号付けした鎖線
【0052】
図4に示す実施例は−1dptの球面屈折力(平均「装用」屈折力)および遠用基準点における2dptの加入度Aを有する。非点隔差の処方箋はない。全ての図において、装用位置において横軸(x軸)は水平軸であり、縦軸(y軸)は垂直軸である。
【0053】
図4b〜eにおいて遠用および近用基準点はそれぞれ円により示され、芯取り点は十字で示され、それらの位置は図から分る。さらに主子午線の道筋が示される。
【0054】
部分図4aは実施例の累進後面の頂点高さを示す。頂点高さは座標xおよびy(それぞれ眼鏡レンズの装用位置における水平および垂直軸)を有する点の面頂点からの距離を意味する。その表においてy値(−20から+20mm)が左側の列のそれぞれに入力され、x値(−20から+20mm)がそれぞれの上段に2列目から入力された。頂点高さもミリメートルで与えられている。値0はこれらのx、y座標には頂点高さが与えられなかったことを意味する。
【0055】
部分図4bはいわゆる芯取り点の下4mmにある点を中心とする半径30mmの円内の非点隔差偏差を示す。非点隔差偏差は眼鏡レンズ/眼システムの「残存非点隔差」であり、いわゆる等値線により0.25dptの等値線を手始めに表される。等値線は円筒処方箋からの大きさと円筒軸に関する非点隔差偏差を示し、円筒処方箋は非点隔差のない眼の場合、ゼロである。
【0056】
それに対して部分図4cは上記実施例の平均「装用」屈折力に対する等値線を示す。平均「装用」屈折力Dは後側焦点距離(像距離)の逆数S’1とS’2の平均値引く物体距離即ち前側焦点距離の逆数S
【0057】
【式10】
であり、これも等値線の形式で0.75dptの等値線を手始めに表される。
【0058】
これに対して面パラメータ、即ち面非点隔差および平均面屈折力の等値線が部分図4dおよび4eに示される。これらの面パラメータの定義に関しては説明の導入部に注意を払うこと。
【0059】
図4に示される実施例は以下の個々の装用条件を満足する。
【0060】
【表1】
【0061】
もちろん本発明の特徴は二つの累進面を有し、かつ/あるいはさらに屈折率変化を有する眼鏡レンズの計算と製造にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明による眼鏡レンズの非点隔差偏差を示す図である。
【図2】上記眼鏡レンズの平均「装用」屈折力を示す図である。
【図3】主子午線に沿う非点隔差偏差と平均「装用」屈折力を示す図である。
【図4a】実施例の累進面の頂点高さを示す図である。
【図4b】非点隔差偏差の等値線を示す図である。
【図4c】平均「装用」屈折力の等値線を示す図である。
【図4d】面非点隔差の等値線を示す図である。
【図4e】上記の実施例の平均面屈折力の等値線を示す図である。
【符号の説明】
Claims (2)
- 遠距離、特に「無限遠に向かって」見るために設計された領域(遠用部)と、近距離、特に「読書距離」を見るために設計された領域(近用部)と、眼鏡レンズの屈折力が、鼻に向かって湾曲する線(主子午線)に沿って、遠用部に位置する遠用基準点における値から近用部に位置する近用基準点における値まで増加する、遠用部と近用部との間に配置された累進帯とを備える眼鏡レンズであって、主子午線に沿う非点隔差偏差、即ち処方箋の非点隔差と実際の非点隔差との差が0.2dptより小さく、最大非点隔差偏差が、遠用基準点(DBF)における平均「装用」屈折力と近用基準点(DBN)における「装用」屈折力との差として定義される加入度の1.2倍より小さく、最大非点隔差偏差が主子午線の鼻側で生じ、鼻側の最大非点隔差偏差の値がこめかみ側の最大非点隔差偏差の値より多くとも0.15dptだけ大きいことを特徴とする眼鏡レンズ。
- 芯取り点Bzの上方領域における、即ちy>y(BZ)に対する平均「装用」屈折力Dfが
【式11】 で与えられ、y<<(BZ)−7mmである領域における「装用」屈折力DNが
【式12】 で与えられ、遠用基準点、即ちy=y(BF)のレベルにおける0.5dptの非点隔差偏差に対する等値線の間隔、xA(BF)が
【式13】 で与えられ、遠用基準点における平均「装用」屈折力からの0.25dptの偏差に対する等値線の間隔、xD(BF)が遠用基準点、即ちy=y(BF)のレベルにおいて
【式14】 で与えられ、近用基準点、即ちy=y(BN)のレベルにおける0.5dptの非点隔差偏差に対する等値線の間隔、xA(BN)が
【式15】 で与えられ、近用基準点における平均「装用」屈折力からの0.25dptの偏差に対する等値線の間隔、xA(BN)が近用基準点、即ちy=y(BN)のレベルにおいて
【式16】 で与えられることを特徴とする請求項1又は請求項1の前文記載の眼鏡レンズ。
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