JP2004500902A - 切り詰められたegfレセプター - Google Patents
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Abstract
本発明は、切り詰められたEGFレセプター分子およびこれらの分子を含む薬学的組成物に関する。また本発明は、EGFレセプターリガンドをスクリーニングする方法およびこれらの分子の使用を含む治療方法にも関する。特に本発明は、全長のEGFR細胞外ドメインと比較して少なくとも一つのEGFRリガンドに対して増大した結合親和性を有するように、CR2ドメインの実質的な部位を欠いた、切り詰められたEGFR細胞外ドメインに関する。本発明は、乾癬、および乳房、脳、卵巣、頸、膵臓、肺、頭および首部のガン、および黒色腫、横紋筋肉腫、中皮腫および神経膠芽細胞腫を含むがこれらに限定されない腫瘍状態を治療または予防する方法を提供する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、切り詰められたEGFレセプター分子およびこれらの分子を含む薬学的組成物に関する。また本発明は、EGFレセプターリガンドをスクリーニングする方法およびこれらの分子の使用を含む治療方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
上皮成長因子レセプター(EGFR)ファミリーは、四つの別個のチロシンキナーゼレセプター、EGFR/HER/ErbB1、HER2/Neu/ErbB2、HER3/ErbB3およびHER4/ErbB4からなる(1)。これらのレセプターは、上皮、間葉およびニューロンの組織に広く発現され、発達と分化の際に重要な役割を演じる。これらは、EGFRホモローグのホモ−またはヘテロ−二量体化(dimerisation)を誘導する少なくとも12のリガンドのファミリーによって活性化される。ErbB2は、それ自体にリガンドを結合させることはできないが、EGFR/HER/ErbBファミリーの他のメンバーと共発現された場合には、全てのリガンドにとっての強力なコレセプターである。
【0003】
EGFRは、大きな(1186残基)、非触媒性制御領域に隣接した単一トランスメンブレン領域と細胞質チロシンキナーゼドメインとを備えた単量体糖タンパクである。配列分析により、細胞外ドメイン(残基1−621)が4つのサブドメイン、ここではL1、CR1、L2およびCR2と称する(LおよびCRはそれぞれ大きい(large)およびCys−リッチ(Cys−rich)の頭文字である)、を含むことが示された(2,3)。L1およびL2ドメインは、それぞれドメインIおよびIIIとも称される(4)。CRドメインは、以前は、ドメインIIおよびIV(4)、またはS1.1−S1.3およびS2.1−S2.3(Sは小さい(small)の略である)(2)と称されていた。
【0004】
多くのガン細胞が、活性型EGFR(constitutively active EGFR)(5)または他のEGFRファミリーメンバー(6)を発現する。高レベルの活性化EGFRが、膀胱、乳房、肺および脳の腫瘍に生じる。EGFRに対する抗体は、EGFRのリガンド活性化、および多くの上皮細胞系統の成長を阻害することができる。ヒト化キメラ抗EGFRモノクローナル抗体(Mab)の繰り返し投与を受けた患者は、疾患安定の徴候を示した。大量投与の必要性、およびヒト化Mabの生産コストから、この種の治療の適用が制限され得る。これらの知見は、EGFレセプターアンタゴニストの開発が、魅力的な抗ガン剤であるかもしれないことを示唆している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明者らは、EGFR細胞外ドメインのCR2ドメインにおける残基の欠失が、(EGF)のような上皮成長因子および/またはトランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)に対して増強された親和性を備えた切り詰められた(truncated)細胞外ドメインを生じるという驚くべき知見を得た。この知見は、CR2領域における欠失または変異が、EGFに対するEGFR結合親和性を低減することを示した最近報告された結果(8)に反するものである。
【0006】
当業者であれば理解できるように、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、EGFレセプターのリガンドのスクリーニングアッセイにおいて、大きな感度(鋭敏度)を示すことができる。さらに、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、そのリガンドに対する高い親和性、および、そのin vitroにおけるEGF誘導増殖反応を競合的に阻害する能力から、治療可能性を有する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従って、本発明の第一の態様は、切り詰められたEGFR細胞外ドメインを提供し、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインはCR2ドメインの実質的な部位を欠き、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、全長のEGFR細胞外ドメインと比較して、少なくとも一つのEGFRリガンドに対して増大した結合親和性を有する。
【0008】
このEGFRリガンドは、例えば、アンフィレグリン(amphiregulin)、ヘパリン結合EGF、β−セルリン、EGFまたはTGF−αとすることができる。第一の態様の好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、EGFおよび/またはTGF−αに対する増大した結合親和性を有する。
【0009】
第一の態様のさらに好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、CR2ドメインの少なくとも第3から第7モジュールを欠失したものである。さらに好ましい実施態様では、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、CR2ドメインの少なくとも第2から第7モジュールを欠失したものである。この切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、CR2ドメインの第1モジュールの一部をさらに欠失したものであってもよい。
【0010】
さらに好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、残基514−621を欠失したものである。さらに好ましい実施態様では、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、残基502−621を欠失したものである。
【0011】
さらなる欠失または変異が、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインのL1、CR1および/またはL2サブドメインに成されてもよい。ただし、これらのさらなる欠失または変異は、切り詰められたEGFR細胞外ドメインの結合親和性に実質的に影響しないことを条件とする。好ましくは、しかしながら、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、L1、CR1およびL2サブドメインを含む。
【0012】
さらに好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、EGFR細胞外ドメインの残基1−492を含む。より好ましくは、切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、EGFR細胞外ドメインの残基1−501または残基1−513を含む。
【0013】
さらに好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、Kdが30nM未満、さらに好ましくは25nM未満であるような、EGFに対する親和性を備える。
【0014】
さらに好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、Kdが45nM未満、さらに好ましくは40nM未満であるような、TGF−αに対する親和性を有する。
【0015】
第二の態様では、本発明は、第一の態様の切り詰められたEGFR細胞外ドメインをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0016】
第三の態様では、本発明は、第二の態様のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0017】
第四の態様では、本発明は、第三の態様の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0018】
第五の態様では、本発明は、第一の態様の切り詰められたEGFR細胞外ドメインを産生する方法を提供し、この方法は、切り詰められたEGFR細胞外ドメインの産生を可能にする条件下で第四の態様の宿主細胞を培養すること、および当該切り詰められたEGFR細胞外ドメインを単離することを含む。
【0019】
第六の態様では、本発明は第一の態様にかかる切り詰められたEGFR細胞外ドメインと、薬学的に許容できるキャリアーまたは希釈剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0020】
第七の態様では、本発明は、推定化合物を、EGFレセプターの活性を変更する能力に関してスクリーニングする方法を提供し、この方法は、推定化合物を、第一の態様にかかる切り詰められたEGFR細胞外ドメインに曝し、かつ、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインの活性をモニタリングすることを含む。
【0021】
第七の態様に関連して、適切なアッセイ処理が、マイクロプレートフォーマットで競合結合アッセイを含んでもよく、ここでは推定化合物が、切り詰められたEGFレセプター細胞外ドメインに対するIGF−1またはIGF−2のようなラベル化リガンドの結合を阻害する能力について調べられる。ラベルは、125Iのようなラジオラベル化タグ、またはフルオレセインイソチオシアナートのような蛍光タグ、またはユーロピウムのようなランタニドイオンとすることができる。
【0022】
第八の態様では、本発明は、患者のEGFレセプターファミリーの分子によるシグナリングと関連した疾患を治療または予防する方法を提供し、この方法は、第一の態様にかかる切り詰められたEGFR細胞外ドメインを患者に投与することを含む。
【0023】
第八の態様の好ましい実施態様では、EGFレセプターファミリーの分子によるシグナリングと関連した疾患は、乾癬、および乳房、脳、卵巣、頸、膵臓、肺、頭および首部のガン、および黒色腫、横紋筋肉腫、中皮腫および神経膠芽細胞腫を含むがこれらに限定されない腫瘍状態から選択される。
【0024】
第八の態様の方法は、単独で、または、他の治療法と組み合わせて用いることができる。例えば、第四の態様の方法は、腫瘍状態の治療における、抗EGFR抗体のような細胞傷害モダリティー、放射線療法または化学療法と組み合わせて用いることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
ここで用いるにあたり、用語“EGFR”は、EGFレセプター、ErbB2、ErbB3およびErbB4のようなEGFレセプターファミリーのメンバーを含むと解される。一般に、EGFレセプターファミリー分子は、類似のドメイン配列を示し、顕著な配列同一性、好ましくは少なくとも40%の同一性を占める。
【0026】
ここで用いるにあたり、用語“全長のEGFR細胞外ドメイン”は、EGFレセプターの残基1−621からなる細胞外ドメインを指す。全長の細胞外ドメインのアミノ酸配列は、以前に記載されている(13)。全長の細胞外ドメインは、L1、CR1、L2およびCR2と称する4つのサブドメインを含む。ここで、LおよびCRはそれぞれ大きい(large)およびCys−リッチ(Cys−rich)の頭文字である。
【0027】
CR2サブドメインは、2または3のアミノ酸残基のリンカーにより連結され、以下のシステイン残基により結合された、以下の7つのモジュールからなる。
第1モジュール: cys残基 482−499
第2モジュール: cys残基 502−511
第3モジュール: cys残基 515−531
第4モジュール: cys残基 534−555
第5モジュール: cys残基 558−567
第6モジュール: cys残基 571−593
第7モジュール: cys残基 596−612
【0028】
ここに示された結果は、EGFR細胞外ドメインのCR2領域における欠失が、EGFおよび/またはTGF−αの細胞外ドメインの結合親和性を予期することなく増加させることを示す。この情報を考慮すると、当業者であれば、多数の候補の切り詰められた細胞外ドメインを容易に生成し、これらの候補について、増加したリガンド親和性および治療能力をスクリーニングすることができる。
【0029】
例えば、切り詰められた細胞外ドメインは、ここに記載または先に記載(8)されたような、組み換えDNA技術により調製することもできる。あるいは、切り詰められた細胞外ドメインは、全長の細胞外ドメインまたは全長のレセプターを、先に記載(9)されたような制限されたタンパク分解で処理することによっても調製できる。
【0030】
結合親和性および阻害力は、バイオセンサー技術を用いて、切り詰められた細胞外ドメインの候補について測定することができる。
【0031】
本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、実質的に単離された形態とすることができる。このタンパクは、タンパクの所望の目的を妨げないキャリアーまたは希釈剤と混合されてもよく、また、実質的に単離されたものであってもよい。本発明の切り詰められた細胞外ドメインは、実質的に精製された形態であってもよく、その場合には、調製物中にタンパクを90%より多く含み、例えば、本発明のタンパクが、調製物中に95%、98%または99%とされる。
【0032】
本発明の内容において、切り詰められたEGFR細胞外ドメインのアミノ酸配列は変性されてもよい。但し、その変性が、少なくとも一つのEGFRリガンドに関する、前記切り詰められた細胞外ドメインの結合親和性に負の影響を与えないことが条件である。例えば、変性された細胞外ドメインは、結合活性に必要でない、残基または配列の種々の置換、もしくは末端または内部残基または配列の欠失により、作製することができる。一般的に、置換は保存的に成されるべきである。すなわち、最も好ましい置換アミノ酸は、置換される残基と似た物理化学的特徴を有するものである。同様に、欠失または挿入法を用いる場合には、生物学的活性に与える欠失または挿入の可能性のある効果を考慮すべきである。切り詰められた細胞外ドメインの生物学的活性を保存するために、欠失および置換は、相同または保存的に置換された配列に行われ、これはすなわち所定の残基が生物学的に類似の残基で置換されることを意味する。保存的置換の例は、一つの脂肪残基を別のものと置換、例えばIle、Val、Leu、MetまたはAla同士で置換すること、または一つの極性残基を別のものと置換、例えばLysとArgの間、GluとAspの間、またはGlnとAsnの間で置換することを含む。他のかかる保存的置換、例えば、類似の疎水特性を有する全体領域の置換が周知である。さらに、ヒト、マウスおよび他の哺乳動物のEGFR間のアミノ酸の差異は、切り詰められたEGFR細胞外ドメインの本質的な生物学的特徴を変更することなく行うことができるさらなる保存的置換を示唆している。
【0033】
本発明に包含される変性は、結合親和性を維持する一次タンパクの種々の構造形態を含む。イオン化しうるアミノおよびカルボキシル基の存在により、例えば切り詰められた細胞外ドメインは、酸性または塩基性の塩の形態であってもよく、また、中性の形態であってもよい。また、個々のアミノ酸残基が、酸化または還元により変性されてもよい。
【0034】
一次アミノ酸構造は、他の化学種、例えば、グリコシル基、脂質、ホスファート、アセチル基等と共有的または集合的接合を形成することにより、または、アミノ酸配列変異体を作製することにより変性することもできる。本発明の範囲内に含まれる他の変性は、例えば、N末端またはC末端融合のような組み換え培養における合成による、切り詰められた細胞外ドメインと、他のタンパクまたはポリペプチドとの共有的または集合的接合を含む。例えば、接合したポリペプチドは、タンパクのN末端領域におけるシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列であってもよい。これは、翻訳時または翻訳後に、タンパクの合成部位から、細胞膜または壁の内部または外部の機能部位へと、タンパクを輸送させる(例えば、イーストα−因子リーダー)。切り詰められたEGFR細胞外融合物は、切り詰められた細胞外ドメインの精製または同定を容易にするため(例えばポリHis)、またはin vivoで細胞外ドメインの安定性または輸送を増強するために添加されたペプチドを含んでもよい。
【0035】
また、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、イムノグロブリン分子の定常ドメインに融合されてもよい。例えば、イムノグロブリン分子重鎖および軽鎖のいずれかまたは両方の可変ドメインに代えて置換された切り詰められたEGFR細胞外ドメイン、および、未変性の定常領域ドメインを有する組み換えキメラ抗体分子が産生されてもよい。これは、二価に示された切り詰められたEGFR細胞外ドメインを有する単一のキメラ抗体を生じてもよい。切り詰められたEGFR細胞外ドメインのかかる多価形態は、増強されたEGFRリガンドの結合親和性を有する。かかるキメラ抗体分子の構成に関する詳細は、WO89/09622およびEP315062に開示されている。
【0036】
TGFαは膜結合型で存在するので、本発明の切り詰められた細胞外ドメインは、ガン細胞に化合物を仕向けるために用いることができる。従って、切り詰められたEGFR細胞外ドメイン融合物は、薬剤、アイソトープまたは毒素のようなガン細胞の診断または治療に用いられる化合物を含むことができる。
【0037】
切り詰められたEGFR細胞外ドメイン誘導体は、システインおよびリシン残基において、M−マレイミドベンゾイルスクシニミドエステルおよびN−ヒドロキシスクシニミドのような架橋結合剤によって得ることもできる。切り詰められた細胞外ドメインは、例えば、臭化シアン活性化、ビスオキシラン(bisoxirane)活性化、カルボニルジイミダゾール活性化、またはトシル活性化アガロース構造のような種々の不溶性基質に対して反応性側鎖基を介して、あるいは、ポリオレフィン表面に対して(グルタルアルデヒド架橋結合を伴うまたは伴わずに)吸着させることにより、共有結合されてもよい。基質に結合したら、切り詰められた細胞外ドメインは、抗EGFR抗体またはEGFに選択的に結合(アッセイまたは精製の目的で)させるために用いることができる。
【0038】
構造的に束縛された本発明の細胞外ドメインの誘導体を用いることも望ましい。構造的束縛とは、ペプチドによって呈される三次元形状の安定性および好ましいコンホメーションを指す。構造的束縛は、ペプチドの一残基のコンホメーション可動性を制限することを含む局所的束縛;一部の二次構造ユニットを形成しうる残基の一つの基のコンホメーション可動性を制限することを含む領域的束縛;および全体的なペプチド構造に関与する全体的な束縛を含む。
【0039】
本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、免疫原、レセプターベースのイムノアッセイ試薬、または、EGFまたは他の結合リガンドの親和精製処理の結合試薬として用いることができると解される。
【0040】
切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、安定にトランスフェクトされたEGF応答性レポーター遺伝子を取り込む細胞ベースのアッセイを用いて、レセプター活性を変更する能力について調べることができる(10)。このアッセイは、新たなリガンドの存在下における、レポーター遺伝子を活性化するEGFの能力に関する。極めて敏感な検出システム(化学発光)を用いて、高速(6−8時間以内のホルモン暴露で結果を生じる)、高処理能力(アッセイは、自動化計測用の96ウェルフォーマットで行われる)の分析法を与える。候補化合物が同定されたら、EGF−Rを介したシグナル伝達と拮抗するそれらの能力について、EGF媒介細胞増殖の阻害のような、多数の機械的なin vitro細胞アッセイを用いて評価することができる。最後に、腫瘍治療剤としての切り詰められたEGFR細胞外ドメインの効力を、記載されているように(11、12)、腫瘍の同系移植片および異種移植片を有する動物においてin vitroで試験することができる。
【0041】
本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン(および本発明のアッセイ方法によって同定された物質)は、好ましくは、本発明の組成物を成すために、種々の成分と組み合わせられてもよい。好ましくは、組成物は、薬学的組成物(ヒトまたは動物に使用される)を生成するために、薬学的に許容できるキャリアーまたは希釈剤と組み合わせられる。適切なキャリアーおよび希釈剤は、例えばリン酸塩緩衝生理食塩水のような等張生理食塩水を含む。この組成物は、例えば、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口または経皮的投与用に製剤化することができる。通常、各タンパクは、0.01〜30mg/kg体重、好ましくは0.1〜10mg/kg、さらに好ましくは0.1〜1mg/kg体重の投与量で投与することができる。
【0042】
上記投与経路および投与量は、医師が特定の患者および状態について最適な投与経路および投与量を容易に決定できるものであることから、指針に過ぎない。本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインがEGFRリガンドに強く結合できる能力から、切り詰められた細胞外ドメインは、EGFRリガンドの診断アッセイ、および診断および治療に使用するためのEGFRに対する抗体を生じることに有益である。さらに、精製された切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、直接的に治療に用いられて、EGFRリガンドを結合または取り除き、その結果、これらのリガンドの活性を制御する手段を提供する。特に、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、EGF依存反応を阻害する目的で投与することができる。
【0043】
この明細書を通して、用語“含む”は、記載の成分、数または工程、あるいは成分、数または工程の群の包含を意味するが、その他の成分、数または工程、あるいは成分、数または工程の群の排除を意味するものではないと解する。
【0044】
本願明細書に含まれる刊行物、作用、物質、装置、物品などに関するあらゆる議論は、本発明の内容を提供するためのものに過ぎない。これらのいずれかまたは全ての事項が、本願の各クレームの優先日以前にオーストラリアに存在していたことから、従来技術の水準の一部を形成し本発明の属する分野の常識であるとされることには承認できるものではない。
【0045】
実験の詳細
材料と方法
切り詰められた形態のhEGFR細胞外ドメインの発現に使用されるプラスミドの作製。切り詰められたhEGFR cDNAの作製に用いられたプラスミドpEGFRは、プラスミドpUC18の多重クローニング部位にhEGFRのヌクレオチド167−3970を含む(13)。コーディングは、LacZαペプチドに対して反対のセンスであり、挿入はpUC18のXbaI部位の下流である。このプラスミドを、哺乳動物の発現ベクターpEE14に挿入するための切り詰められた構成物の切除の際に後で用いた。
【0046】
pEGFR476の作製。hEGFRのヌクレオチド167−3150を含有する最初のプラスミドを、pEGFRからのXbaI/NsiIフラグメントとXbaI/PstI−切断pBluescript KS+とのライゲーションにより作製した。このプラスミドから、4kbpのフラグメントBbsI/BglIIフラグメント(全体のpBluescript KS+とEGFRのヌクレオチド167−1150および2951−3150を含む)と、528bp BbsI/PvuIIフラグメント(ヌクレオチド1151−1679)を、hEGFRのアミノ酸474−476、エンテロキナーゼ切断部位、および精製を容易にするためのc−mycエピトープタグをコードする70bp PCR誘導PvuIIおよびBglIIフラグメントを用いてリゲートした。前記70bpのPCRカセットは、鋳型として類似する先の構成物(15)を用いて作製した。哺乳動物細胞トランスフェクション用のプラスミド、pEGFR476は、1.6kbp XbaI/EcoRVフラグメントのXbaI/SmaI−切断pEE14を用いたライゲーションにより、前記プラスミドから作製した。
【0047】
pEGFR501およびpEGFR513の作製。いずれの作製においても、3つのオリゴヌクレオチドを用いたPCRを用いて、hEGFR cDNAのフラグメント(それぞれ、ヌクレオチド1121〜1760または1121〜1797)、それに続くエンテロキナーゼ切断部位、c−mycエピトープタグ、および終止コドンをコードする配列を製造した。PCRの上流プライマーは、hEGFR cDNAのヌクレオチド1121−1140の任意の選択に対応するが、二つの重複する下流プライマーは、それぞれヌクレオチド1760または1797に隣接するさらなる配列を構成するように用いられた。このPCR産物を、pCR−Scriptベクター(Stratagene)を用いてクローン化した。いずれの場合も、これによって、hEGFRのヌクレオチド1738から始まる新たに作製された配列を有するApaIフラグメントを切断することが可能となり、これが後に、pEGFRの巨大なApaIフラグメント(ヌクレオチド1737までのhEGFR cDNAを備えた全体のpUC18配列を含む)に挿入されて、コード配列に隣接するXbaI制限部位を備えた切り詰められたhEGFRをコードするプラスミドを調製する。これらのpUC18ベースのプラスミドから、切り詰められたhEGFR cDNAを有するフラグメントをXbaI切断によって切断し、プラスミドpEE14のXbaI部位に挿入し、哺乳動物細胞トランスフェクション用のプラスミドpEGFR501およびpEGFR513をそれぞれ調製した。
【0048】
突然変異誘発。pEGFR501の切り詰められたhEGFR cDNAを有する1.7kbpのフラグメントを、突然変異誘発のためにM13mp18(16)に導入した。USB−T7 GenTM in vitro突然変異誘発キットを用いて、オリゴヌクレオチド指向in vitro突然変異誘発を行って、切り詰められたヒトsEGFR501細胞外ドメインの3つの単一部位変異体を生じた。すなわち、残基Glu367、Gly441およびGlu472をそれぞれ、Lysに変異させて、ニワトリのEGFRの対応する残基に調和させた(4)。変異を含むクローンを、プローブとして32P−ラベル化変異原オリゴヌクレオチドを用いたコロニーハイブリダイゼーション(17)によって同定し、変異をDNA配列分析によって確認した(18)。哺乳動物細胞発現のためのビヒクルは、XbaI切断によりM13 RF−DNAから変異sEGFR501 cDNAを有する1.7kbpフラグメントを切断し、プラスミドpEE14(16)のXbaI部位にそれを挿入することによって各変異体について生成した。
【0049】
細胞培養、DNAトランスフェクションおよびタンパク分析。一時的トランスフェクションアッセイのために、10%の胎児ウシ血清(FCS)を添加したDMEMに維持したヒト293T繊維芽細胞を、製造者の指示するところに従ってFuGENE(Roche Molecular Biochemicals, Sydney, NSW)を用いてプラスミドDNAでトランスフェクトした。上清を、トランスフェクションから48時間後に回収し、細胞溶解物をNP−40溶解バッファーに調製した。分泌されたEGFR変異体を特徴決定するために、上清および溶解物の分注物を、c−mycタグへのモノクローナル抗体(9E10)、またはMab225(HB−8508, American Type Culture Collection)、すなわちhEGFRの細胞外ドメインを認識する構造依存モノクローナル抗体(19)で免疫沈降させた。免疫複合体を、プロテインA−セファロースビーズ(Zymed Laboratories, Bioscientific Pty. Ltd., Gymea, NSW)で回収し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(10%ゲル)で分画しニトロセルロース膜に移した。切り詰められたhEGFR細胞外ドメインと変異体を、膜にホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−接合Mab9E10(Roche)でプロービングし、Pierce Super Signal基質で化学発光検出することによって同定した。
【0050】
sEGFR501を発現する安定な細胞系統を、選択可能なマーカーとしてグルタミンシンテターゼを用いて、CHOK(7)からLec8変異細胞系統に確立した(15)。メチオニンスルホキシミン(MSX)耐性細胞コロニーの上清を、バイオセンサー分析によって(以下参照)、またはニトロセルロースへのドットブロッティングおよびHRP−Mab9E10でプロービングすることによって、分泌されたレセプターに関してスクリーニングした。単一の細胞系統を、限界希釈によってクローニングのために選択した。
【0051】
sEGFR501タンパクを発現するLec8細胞を、1.7Lの作動容積で、70gのFibra−Cell Disksを用いて、Celligen Plusバイオリアクター(New Brunswick Scientific, New Jersey, USA)で培養した。非必須アミノ酸、ヌクレオシドおよび10%FCSを添加したグルタミンを含まないDMEM/F12培地を用いた連続潅流培養を、6週間行った。選択圧は、発酵の間、25μM MSXで維持した。潅流速度は、残留グルコースレベルが1.0−1.5g/L、対応する乳酸濃度が2.0−2.3g/Lとするのに必要な値に調節した。
【0052】
切り詰められたEGFR細胞外ドメインの精製。バイオセンサーおよびAUC分析のために、sEGFR切り詰められたタンパク(4L)を含有する調整培地を、アジ化ナトリウム(0.02%(w/v))を含むTris−HCl(Sigma)(TBSA)でpH8.0に調節し、遠心して微粒子を除いてから、アガロースに共有結合したモノクローナル抗体9E10のカラムで4℃で親和的精製により、ペプチド溶出を用いて、c−myc−タグタンパクを回収した(15)。溶出したタンパクを、Superdex 200(HR10/30, Amersham Pharmacia Biotech)で、室温で、TBSAバッファーを用いて、0.8ml/分の流速で、サイズ排除クロマトグラフィーによりさらに精製した。タンパクを、280nmの吸収により検出した。
【0053】
BIAcore結合アッセイ。タンパク−タンパク相互作用を、表面プラスモン共鳴検出(BIAcore 2000または3000, BIAcore, Uppsala, Sweden)を用いて、機器光学バイオセンサーで、リアルタイムにモニタした。組み換えhEGFまたはhTGF−α(Gropep, Adelaide, Australia)を、先に記載されているように(20)、SMARTシステム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いた微小調整用RP−HPLCによって、固定化の直前に精製した。このタンパクを、4μl/分の流速で、アミンカップリング化学(N−ヒドロキシスクシニミドとN−エチル−N’−ジメチルアミノプロピル−カルボジイミド)を用いてバイオセンサー表面に固定化した。通常、100−200RUが、0.1−0.2ng/mm2で固定される(20)。固定化レベルの自動化ターゲッティングは、BIAcore 3.1コントロールソフトウェア(21)を用いて行われる。
【0054】
分析の前に、sEGFR621(23)、sEGFR501およびsEGFR501変異体サンプルを、微小調整用サイズ排除クロマトグラフィー(Superose 12 3.2/30, Amersham Pharmacia Biotech)により特徴決定してサイズ均質性を確かめ(20)、プールされた画分を、適切な濃度までBIAcoreバッファー(HBS:3.4mM EDTA, 0.15mM NaCl,および0.005%(v/v)Tween 20を含む10mM Hepes pH7.4)に希釈した。通常、10−1000nMの濃度のサンプル(30μl)を、流速5または10μl/分で、センサー表面に連続的に注入した。注入段階の完了後、分離を同じ流速でBIAcoreバッファーで観察した。センサー表面およびサンプルブロックを25℃に維持した。結合したレセプターを溶出し、注入間で40μlの10mM HClを用いて表面を再生した。この処理は、レセプターの再注入において同じシグナルを示すことから示されるように、センサー表面に固定されているhEGFまたはhTGF−αを変性しなかった。
【0055】
速度論的速度定数(ka、kd)は、先に記載されているように(22)BIAevaluation 3.02ソフトウェア(http//www.biacore.com/products/eval3.html)を用いて、あるいはCLAMP(23、24)一般的な分析法を用いて決定された。平衡結合定数(KA、KD)を、定常状態平衡を定義する等式を用いて(KA*Conc*Rmax/(KA*Conc*n); BIAevaluation 3.1)、結合データの直接非線形最小自乗分析によって決定した。また、このデータをスキャッチャードフォーマットにプロットした(Req/nC対Req、Reqは平衡におけるバイオセンサー反応であり、nは結合価、Cは濃度である)(25)。
【0056】
分析的超遠心。先に記載されているように(23)、石英窓を有するセルを備えたAn60−Tiローターを用いて、吸収光学を備えたBeckman XL−A分析的超遠心(Beckman Coulter, Inc., Fullerton, CA)を用いて実験を行った。遠心実験は、100μlのサンプルボリュームを用いて20℃で行った。12000および20000rpmで得られた平衡沈降分布を280または290nmでモニタし、プログラムSEDEQ1Bを用いて分析した(26)。EGFの部分比容積は、0.71ml/gとされた(23)。
【0057】
化学架橋結合。化学的架橋結合したsEGFR501ダイマーを、室温で1時間150mM NaClを含む20mM HEPES pH7.4においてsEGFR501(5μM)をmEGF(20μM)とインキュベーションし、終濃度0.5mMまでビス(スルホスクシニミジル)スベラート(BS3, Pierce, Rockford, IL, USA)を添加し、かつ、さらに30分間インキュベーションすることによって生成した。この反応を、Tris−HClバッファー(pH7.5)を終濃度10mMとなるまで添加して終了した。モノマー−ダイマー分離を、Novex非還元SDS−PAGEゲル(10%)で行った。タンパクを、ポリ(ビニルジフルオリド)(PVDF)膜(Bio−Rad, Hercules, CA, USA)に移し、抗EGFR Mab528(19)(0.5μg/ml)、ホースラディッシュペルオキシダーゼラベル化ヤギ抗マウスIgG(Bio−Rad)でインキュベーションし、ECL検出(Amersham Pharmacia Biotech)することによって同定した。
【0058】
細胞増殖アッセイ。BaF/3ERX細胞、すなわちヒトEGFRでトランスフェクトしたBaF/3細胞から得られた細胞系統(Ludwig Institute for Cancer Research, Melboruneから入手)を三回洗浄し、残留IL−3を除き、RPMI1640+10%FCSに再懸濁した。細胞を、200μl当たり2x104細胞で、Biomek 2000ロボティックオートサンプラー(Beckman)を用いて96ウェルプレートにまき、10%CO2で37℃で4時間インキュベートした。適切な濃度のsEGFR501またはsEGFR621または抗EGFRモノクローナル抗体Mab528を、最初の滴定点まで添加し、一定量のmEGF(207pM)を用いて、または用いずに二重に96ウェルを通じて二倍希釈で滴定した。3H−チミジン(0.5μCi/ウェル)を添加し、プレートを5%CO2で37℃で20時間インキュベートした。次いで細胞を30分間室温で0.5MのNaOHで溶解した後、自動ハーベスターを用いてニトロセルロースフィルターマットに回収した(Tomtec, Connecticut, USA)。このマットを、マイクロ波中で乾燥させ、プラスチックカウンティングバッグに移し、シンチラント(10ml)を添加した。3Hチミジンの取り込みを、自動化ベータカウンター(1205 Betaplate, Wallac, Finland)を用いて調べた。
【0059】
【実施例】
実施例1:切り詰められたEGFR細胞外ドメインの生成および精製
一時的にsEGFR476、sEGFR501およびsEGFR513を発現する細胞からの調整培地の事前分析は、後者の二つの切り詰められたレセプターのみが、BIAcoreバイオセンサーに固定されたhEGFに対して検出可能な結合を与えたことを示した(データ示さず)。sEGFR501を発現する安定にトランスフェクトされたLec8細胞を生成し、物理的−化学的特徴決定のために、〜1.8mg/L発酵培地の収量の切り詰められたレセプタータンパクを生成するために用いた。
【0060】
ペプチド溶出を用いたMab9E10抗−c−mycペプチド親和性カラムから精製されたsEGFR501は、サイズ排除クロマトグラフィーで単一の対称ピークを示し(〜80kDaの見かけの分子量)、還元条件下でSDS−PAGEで〜70kDaの単一バンドとして移動した(示さず)。sEGFR501は、N末端アミノ酸配列分析において独特の予想される配列、LEEKKVXQGT(13)を与えた。サイクル7のXは、その位置にジスルフィド結合したシステイン残基が存在するためである。ヒトsEGFR501アポプロテインの計算された分子量は〜57.5kDaであることから、SED−PAGEで約70kDaの見かけの分子量は、グリコシレーション不完全Lec8細胞について報告された残留グリコシレーションによるものである(33)。sEGFR501に8つの潜在的N結合グリコシレーション部位が存在し(13)、37℃でsEGFR501をペプチド−N−グリコシダーゼ(PNGアーゼ)とインキュベーションすることにより、57−58kDaの見かけの分子量で、SDS−PAGE上を移動する主要なバンドの生成がもたらされる(データ示さず)。グリコシレーションが正しいプロセッシングに必要であるが、生物学的活性に必要でないという考えと一致して、以前に、BIAcore分析を用いて、PNGアーゼを用いた炭水化物の除去が固定されたリガンドに対するsEGFR621の結合に影響しないことを示した。次の全ての実験は、〜70kDaのsEGFR501を用いて実施した。
【0061】
実施例2:sEGFR501の親和的結合
BIAcoreバイオセンサーを用いて、sEGFR501とhEGFまたはhTGF−αとの間の相互作用の平衡結合定数および速度の両方を調べた。この相互作用は以前に詳細に研究されているので(23、27)、全長の細胞外ドメイン(sEGFR621)を、表面反応性のための陽性コントロールとして用いた。
【0062】
sEGFR501またはsEGFR621と、hEGFまたはTGF−αとの間の相互作用の典型的センサグラム(sensorgram)を図1に示す。視覚的検定は、試験した濃度範囲にわたって曲線が平衡に近づいたことを示した。さらに、hTGF−αセンサグラムは、より速く、かつ事実上完全な分離を示すと思われる。スキャッチャードフォーマット(図2)の平衡結合データの熱力学的分析は、sEGFR501と、固定されたhEGFまたはhTGF−αとの間の相互作用については30および47nMのKD値(それぞれ、相関係数R=0.993および0.999)を示し、かつ、sEGFR621との対応する相互作用については412および961nM(それぞれ、R=0.997および0.999)を示した。スキャッチャードトランスフォーメーションにより得られた値は、安定状態平衡を定義する等式(KA*Conc*Rmax/(KA*Conc*n); BIAevaluation 3.1)を用いて、結合データの直接非線形最小自乗分析によっても確認した(データ示さず)。この分析を用いて、32および46nMのKD値を、sEGFR501と、固定されたhEGFおよびhTGF−αとの間の相互作用についてそれぞれ算出し、かつ、全長細胞外ドメイン(sEGFR621)と、固定されたhEGFおよびhTGF−αとの間の相互作用についてそれぞれ570および959nMを算出した。sEGFR621を用いて得られた値は、以前に報告されていたものと一致し(23)、表面能力を確認できる。
【0063】
個々の速度定数は、一次速度論が影響する思われる曲線の一部から決定され(27、28)、対応する分離定数が計算される(表1)。この方法で計算されたKD値と平衡結合データから得られた値との間には良好な一致が存在する。hTGF−αに対してsEGFR501およびsEGFR621の両方を用いて得られた結合曲線が、hEGF表面に対しての対応するデータよりも、1:1モデルによりよく適合すると思われることは興味深い(事実上完全な分離によって示唆される)。
【表1】
【0064】
実施例3:sEGFR501のアンタゴニスト活性
高い親和性でsEGFR501がEGFに結合するという観察から、sEGFR501が、BaF/3ERX細胞系統を用いた細胞ベースアッセイにおいて、EGFRの細胞分裂促進性刺激の競合阻害剤として作用しうるか否かを調べてみることにした。この細胞系統は、約30pMのEC50でmEGFに反応する(図3A)。競合アッセイ(図3B)は、最大刺激を引き起こす(図3A)一定濃度のmEGF(207pM)、および種々のレベル(0.00045−0.5μM)のsEGFR501、sEGFR621、またはヒト類表皮癌細胞系統A431における上皮成長因子レセプターに対して生じた中和抗EGFRモノクローナル抗体Mab528を用いた(19)。この抗体は、ヌードマウスにおいて、高い数のEGFレセプターを有するA431細胞異種移植の増殖を妨げることを示している。sEGFR501(IC50=0.02μM)は、全長細胞外ドメイン(IC50=0.15μM)よりもほぼ10倍強力であり、Mab528抗EGFRモノクローナル抗体(IC50=0.06μM)よりも約3倍強力であった。
【0065】
実施例4:sEGFR501の二量体化
化学的架橋結合は、sEGFR501がリガンドの存在下で二量化複合体を形成したことを示した。20μMのmEGFの存在下で、単一の高分子量種(見かけMrが180000Da)が、化学的架橋結合後に形成された。これは、架橋結合がリガンドの不在下で試みられた場合には、検出できなかった(図4)。ウェスタンブロッティングを用いて、観察されたバンドの信頼性を確認したが、同様のデータは銀またはクーマシーブルー染色で得られた。さらに、0.25ml/分の流速でPBSの移動相で展開したTSK G2000SWカラムを用いて、反応混合物のサイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより、ダイマーに対応する見かけのMr158000のピークが示された(データ示さず)。同様の結果が、sEGFR621を用いて以前に得られている。
【0066】
分析的超遠心は、sEGFR501のEGF結合部位が等モル比のリガンドおよびレセプターで飽和し、2:2EGF/sEGFR501複合体の形成を導いた(図5)。20μMのEGFのみのこのデータは(図5A)、分子量5980Daの単一の溶質を示唆し、これは、アミノ酸組成から計算された値(6040Da)と一致する。10μMのsEGFR501単独について調べた分子量(65600Da)および部分比容積(partial specific volume)(0.71ml/g)は、沈降平衡分布(図5A)から計算され、既知のアミノ酸組成、および炭水化物組成について12%(w/w)の計算された値に基づいている。
【0067】
EGF(20μM)およびsEGFR501(10μM)の混合物の沈降平衡データは、二つの種を仮定して分析された(図5A)。第一の種の分子量は、フリーのEGF(6000Da)について得られた値に固定され、第二の種の分子量および重量フラクションは適切なパラメーターとして用いられた。かかる条件下では、第二の種の分子量は、sEGFR501とその複合体の重量平均分子量に良好な近似を与える。最適値は、重量平均MW106400Daの複合体を示し、1:1複合体に予想される値(71600Da)より高く、二量体2:2EGF/sEGFR501複合体の顕著な比率の形成とより一致する(以下参照)。高速メニスカス消耗実験(High−speed meniscus depletion experiment)を行って、EGFを用いたsEGFR501の飽和に必要なモル比を調べた(図5B)。sEGFR501(5μM)の溶液をEGFで滴定して、フリーのEGFがメニスカスで検出可能であるモル比を調べた。この結果は、これが5μM EGF以上で起こることを示し、等モル比がsEGFR501のEGF結合部位の飽和に必要であることを示唆した。平衡分析(図5A)から得られたEGF/sEGFR501複合体の観察された重量平均分子量と併せて考慮して、これらのデータは、EGF/sEGFR501二量化種の化学量論が2:2であり2:1でないことを確認する。
【0068】
沈降平衡を、ある範囲のEGF濃度の存在下で、sEGFR501(5μM)について得られたデータの分析に用いた(図5C)。“第二の”種に得られた重量平均分子量は、EGF/sEGFR501の比が1:1に増加するにつれ急速に増加し、2:1より上の比率で約108000付近でプラトーになる(図5C)。図5Aのデータも、1:1および2:2の混合物が、単量体および二量体sEGFR501複合体の重量フラクション、それぞれ57%と31%で複合体形成すると仮定して適合化できた。同様のデータはsEGFR621を用いて得られた(23)。
【0069】
実施例5:sEGFR501−441変異体結合研究
バイオセンサー分析を用いて、固定されたhEGFおよびhTGF−α表面の両方に対する一時的に発現されたsEGFR501変異体の結合を分析した。トランスフェクトされた細胞系統からの培養上清における変異体タンパクの存在を、抗EGFRモノクローナル抗体Mab528を用いたイムノブロッティング、および、表面に固定されたMab528を用いたバイオセンサー分析の両方によって調べた。全細胞系統からの培養上清は、Mab表面に対する明白な結合を示した(441>472=wt>367)(データ示さず)。
【0070】
以前の実験では、Glu367Lys変異体およびGlu472Lys変異体が、hEGFセンサー表面を通過させた際に、sEGFR501に対して類似した結合特性を示した(データ示さず)。Mab528表面はGly441Lys変異体がsEGFR501よりも高い濃度で存在していたことを示したが、Gly441Lys変異体は、はるかに低い結合を示した。興味深いことに、同一サンプルを平行hTGF−αセンサー表面に通したときに、Gly441Lys変異体は最も高い結合を示したが、Glu367Lys変異体、Glu472Lys変異体、および野生型sEGFR501の結合は類似しているがより低かった。
【0071】
全バイオセンサー分析のために、一時的にトランスフェクトされた293T繊維芽細胞からの調節培地に存在する変異タンパクを、9E10モノクローナル抗体を用いた親和精製、およびSuperdex 200およびSuperose 12でのサイズ排除クロマトグラフィーを組み合わせることによって濃縮および精製した。固定されたhEGFおよびhTGF−α表面(それぞれ、160および132RU固定化)で得られたセンサグラムは、図6A、Bに示されている。以前の実験で観察したように、Glu367LysとGlu472Lys変異体の結合特性は、図1に示されているsEGFR501から本質的に区別できないが(データ示さず)、Gly441Lys変異体は、hTGF−α表面に選択的結合を示した(図6A、B)。平衡結合データのスキャッチャード分析(図6C、D)は、TGF−α表面に対する結合がsEGFR501を用いて観察したときと似ているが(KD=77nM、相関係数R=0.999)、Gly441Lys変異体のEGF表面への反応性は顕著に低減していた(KD=455nM、R=0.995)。同様の値(78nMおよび469nM)は、安定状態平衡を定義する等式を用いて結合データ(データ示さず)の直接非線形最小自乗分析によって得られた。
【0072】
結合データの速度論的分析(表2)は、固定されたTGF−αとの相互作用は、5.2−6.9x10−5M−1s−1の結合速度定数(ka)かつ0.025s−1の分離速度定数(kd)によって記述され、36−44nMのKD=kd/kaを与えることを示した。EGFとの対応する相互作用は、1.9−2.3x10−5M−1s−1のka、および0.103s−1の顕著に速いkdにより記述され、442−545nMのKD=kd/kaを与え、熱力学的分析の結果と一致する。
【0073】
【表2】
【0074】
論考
高い親和性でhEGFおよびhTGF−αに結合する切り詰められた形態のEGFR細胞外ドメイン(sEGFR501)の特徴(表1、図1および2)が記載されている。hEGFがsEGFR501に結合する際の13−21nMのKD値は、全長のEGFR細胞外ドメインの化学的に架橋したダイマーに観察される値(15−30nM)と類似しており、A431腫瘍細胞、トランスフェクトされたSf9昆虫細胞、またはCHO細胞のいずれから誘導される可溶性全長EGFR細胞外ドメインについて一般的に報告されている値よりも10〜25倍も高い。
【0075】
CR2の殆どを欠くsEGFR501は、リガンド誘導レセプター二量化を示し(図4および5)、二量体化に重要な領域がCR2を含みそうもないことを示した。また、ErbB2/ErbB3ヘテロダイマーおよびニューレグリン(neuregulin)の状況とは対照的に、膜固定は、高い親和性ダイマーの生成に必要でないことも確認される。超遠心分析は、sEGFR501の結合部位が飽和され、sEGFR501が5μMという比較的低い濃度であっても(320μg/ml)、1:1よりも高いモル比で(図5C)、二量体化の程度がプラトーになり始めたことを示した。これは、有利に小角X線散乱データ、および以前の分析的超遠心分析と匹敵する。これは、EGF/sEGFRの比が1:1である場合に、EGFまたはTGF−α結合により誘導されたsEGFR621二量化が最大に達することを示したものである。
【0076】
リガンドに対するその高い親和性およびモデル細胞システムにおけるEGF誘導増殖反応を競合的に阻害できる能力から(図3)、sEGFR501が治療的能力を備えることが考えられる。この阻害は、レセプターに対して生じた中和モノクローナル抗体(Mab528)(そのキメラ形態(C225)が現在のところ臨床試験中である)を用いた同様のアッセイで達成される阻害よりも大きい。
【0077】
sEGFR501は、ニワトリのEGFRを用いて観察されたhTGF−αおよびhEGFとの間の差別的結合の原因となる残基を調べるためにも用いられた(9)。これらのデータは、hEGFRにおけるGly441に対応する、ニワトリのEGFRにおけるLys442が、hTGF−αおよびhEGF結合間の区別の原因残基であることを示す。
【0078】
上記明細書に挙げた全ての刊行物を、参照として含める。本発明の記載された方法およびシステムの種々の修正および変更は、本発明の範囲および精神から離れることなく、当業者にとって自明である。本発明は特定の好ましい実施態様に関連して記載されているが、請求の範囲に記載した発明がかかる特定の実施態様に不当に制限されるべきでないと解するべきである。分子生物学または関連する技術分野の当業者にとって明らかな、本発明を実施するための記載された方式の種々の変更は、本発明の範囲内である。
【0079】
「参考文献」
【図面の簡単な説明】
【図1】sEGFR501およびsEGFR621と、固定されたhEGFまたはhTGF−αとの間の相互作用のBIAcore分析。[A]:sEGFR501(140、120、100、80、60および40nM)を、固定されたhEGF(160RU固定化)上に通過させた。サンプル(30μl)を10μl/分の流速で注入した。[B]:sEGFR501を固定されたhTGF−α(132RU固定化)上に通過させた。実験の詳細はパネルAの通りであった。[C]:sEGFR621(1000、900、800、700、600および500nM)を固定されたhEGF上に通過させた。[D]EGFR621(パネルCの濃度)を固定されたhTGF−α上に通過させた。実施温度は25℃であった。注入段階の最後に、分離をセンサー表面を流れるバッファーのみでモニタした。この表面を、10mMのHClを用いてサンプル間に再生した。サンプルが平行の空のチャネル(parallel blank channel)を通ったときに得られたシグナルを電子的に差し引いて、比感度(specific response)を与えた。
【図2】平衡結合データのスキャッチャード分析。分離定数(KD=1/KA)を、図1で得られた平衡結合反応から、スキャッチャードフォーマットにそのデータをプロットすることにより算出した(Req/nCに対するReq;実験方法を参照)。このデータに適合する直線の傾きがKAを与える。[A]:sEGFR501対hEGF;[B]:sEGFR501対hTGF−α;[C]:sEGFR621対hEGF;[D]:sEGFR621対hTGFα。
【図3】sEGFR501によるEGF−刺激化細胞有糸分裂誘発の阻害。[A]mEGFの連続希釈を用いたBaF/3ERX細胞による3H−チミジン取り込みの刺激。このデータを、シグモイダル関数に適合させ[−]EC50を決定した。[B]:mEGF(207pM)を用いて刺激した細胞BaF/3ERX細胞の有糸分裂反応の、sEGFR501(■−■)、sEGFR621(●−●)、または抗EGFR抗体Mab528(▲−▲)による阻害。各点は、三重にアッセイされた。誤差棒が示されている。
【図4】mEGFとインキュベートした後のsEGFR501ダイマーの共有架橋。sEGFR501(5μM)を、150mMのNaClを含む20mM HEPES(pH7.4)中のmEGF(20μM)と共に(+)または伴わずに(−)室温で1時間インキュベートし、次いでビス(スルホスクシニミジル)スベラート(BS3, Pierce, Rockford, IL, USA)を0.5mMの終濃度まで添加し、さらに30分間インキュベーションを行った。この反応を終了させ、ダイマー形成の程度を、SDS−PAGE、および抗EGFR Mab528[7](0.5μg/ml)およびホースラディッシュペルオキシダーゼラベル化ヤギ抗マウスIgG(Bio−Rad)を用いたイムノブロッティングでモニタし、ECLで検出した(Amersham Pharmacia Biotech)。sEGFR501を検出するために用いられた抗体(Mab528)はコンホメーション依存性であることから、非還元SDS−PAGEによる分析が必要である。
【図5】分析的超遠心を用いたEGF/sEGFR501相互作用の分析。[A]EGF、sEGFR501、およびEGFとsEGFR501との混合物の沈降平衡分析。平衡分布は、12000rpmで、20℃で16時間遠心した後に得られた。(□)20μM EGF;(○)10μM sEGFR501、(△)20μM EGF+10μM sEGFR501。EGFおよびsEGFR501のデータに引かれた最適な線は、単一種に対するものであり、それぞれ、6000および65600の分子量値に対するものである。EGF/sEGFR501混合物に対するデータに引かれた線は、6000に固定された第一種の分子量と、第二種の分子量について106400の適合した値を備えた二つの種を仮定して計算した最適の線である。はめ込み:EGF/sEGFR501混合物の最適に対する残りのプロット。[B]sEGFR501に対するEGF結合の化学量論のメニスカス消耗沈降分析。5μMのsEGFR501と異なるモル比のEGF:EGFRとを含む溶液を、16時間、20000rpm、20℃でXLA分析的超遠心により遠心した。かかる条件下で、sEGFR501および、そのEGFとの複合体を、上清におけるメニスカス残留未結合EGFから消耗する。280nmにおける光学密度測定は、メニスカスに近い未結合EGFの量を評価可能にする。[C]上記のパネルAの条件下で示された濃度におけるsEGFR501(5μM)およびEGFの混合物について計算した“第二”種の重量平均分子量について得られたデータ。実線は、KDが30nM、二量体化定数が4μMに基づく模擬曲線に対応する。
【図6】固定されたhEGFおよびhTGF−αに対するGly441Lys sEGFR501変異体の結合のBIAcore分析。精製したGly441Lys sEGFR501(24−385nM)を、図1に記載した実験条件を用いて、固定されたhTGF−α(パネルA)またはhEGF(パネルB)上に通した。これらのセンサーグラム(sensorgram)から得られた平衡結合値を用いた、対応するスキャッチャード分析が、下に示されている(パネルC、D)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、切り詰められたEGFレセプター分子およびこれらの分子を含む薬学的組成物に関する。また本発明は、EGFレセプターリガンドをスクリーニングする方法およびこれらの分子の使用を含む治療方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
上皮成長因子レセプター(EGFR)ファミリーは、四つの別個のチロシンキナーゼレセプター、EGFR/HER/ErbB1、HER2/Neu/ErbB2、HER3/ErbB3およびHER4/ErbB4からなる(1)。これらのレセプターは、上皮、間葉およびニューロンの組織に広く発現され、発達と分化の際に重要な役割を演じる。これらは、EGFRホモローグのホモ−またはヘテロ−二量体化(dimerisation)を誘導する少なくとも12のリガンドのファミリーによって活性化される。ErbB2は、それ自体にリガンドを結合させることはできないが、EGFR/HER/ErbBファミリーの他のメンバーと共発現された場合には、全てのリガンドにとっての強力なコレセプターである。
【0003】
EGFRは、大きな(1186残基)、非触媒性制御領域に隣接した単一トランスメンブレン領域と細胞質チロシンキナーゼドメインとを備えた単量体糖タンパクである。配列分析により、細胞外ドメイン(残基1−621)が4つのサブドメイン、ここではL1、CR1、L2およびCR2と称する(LおよびCRはそれぞれ大きい(large)およびCys−リッチ(Cys−rich)の頭文字である)、を含むことが示された(2,3)。L1およびL2ドメインは、それぞれドメインIおよびIIIとも称される(4)。CRドメインは、以前は、ドメインIIおよびIV(4)、またはS1.1−S1.3およびS2.1−S2.3(Sは小さい(small)の略である)(2)と称されていた。
【0004】
多くのガン細胞が、活性型EGFR(constitutively active EGFR)(5)または他のEGFRファミリーメンバー(6)を発現する。高レベルの活性化EGFRが、膀胱、乳房、肺および脳の腫瘍に生じる。EGFRに対する抗体は、EGFRのリガンド活性化、および多くの上皮細胞系統の成長を阻害することができる。ヒト化キメラ抗EGFRモノクローナル抗体(Mab)の繰り返し投与を受けた患者は、疾患安定の徴候を示した。大量投与の必要性、およびヒト化Mabの生産コストから、この種の治療の適用が制限され得る。これらの知見は、EGFレセプターアンタゴニストの開発が、魅力的な抗ガン剤であるかもしれないことを示唆している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明者らは、EGFR細胞外ドメインのCR2ドメインにおける残基の欠失が、(EGF)のような上皮成長因子および/またはトランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)に対して増強された親和性を備えた切り詰められた(truncated)細胞外ドメインを生じるという驚くべき知見を得た。この知見は、CR2領域における欠失または変異が、EGFに対するEGFR結合親和性を低減することを示した最近報告された結果(8)に反するものである。
【0006】
当業者であれば理解できるように、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、EGFレセプターのリガンドのスクリーニングアッセイにおいて、大きな感度(鋭敏度)を示すことができる。さらに、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、そのリガンドに対する高い親和性、および、そのin vitroにおけるEGF誘導増殖反応を競合的に阻害する能力から、治療可能性を有する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従って、本発明の第一の態様は、切り詰められたEGFR細胞外ドメインを提供し、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインはCR2ドメインの実質的な部位を欠き、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、全長のEGFR細胞外ドメインと比較して、少なくとも一つのEGFRリガンドに対して増大した結合親和性を有する。
【0008】
このEGFRリガンドは、例えば、アンフィレグリン(amphiregulin)、ヘパリン結合EGF、β−セルリン、EGFまたはTGF−αとすることができる。第一の態様の好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、EGFおよび/またはTGF−αに対する増大した結合親和性を有する。
【0009】
第一の態様のさらに好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、CR2ドメインの少なくとも第3から第7モジュールを欠失したものである。さらに好ましい実施態様では、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、CR2ドメインの少なくとも第2から第7モジュールを欠失したものである。この切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、CR2ドメインの第1モジュールの一部をさらに欠失したものであってもよい。
【0010】
さらに好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、残基514−621を欠失したものである。さらに好ましい実施態様では、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、残基502−621を欠失したものである。
【0011】
さらなる欠失または変異が、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインのL1、CR1および/またはL2サブドメインに成されてもよい。ただし、これらのさらなる欠失または変異は、切り詰められたEGFR細胞外ドメインの結合親和性に実質的に影響しないことを条件とする。好ましくは、しかしながら、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、L1、CR1およびL2サブドメインを含む。
【0012】
さらに好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、EGFR細胞外ドメインの残基1−492を含む。より好ましくは、切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、EGFR細胞外ドメインの残基1−501または残基1−513を含む。
【0013】
さらに好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、Kdが30nM未満、さらに好ましくは25nM未満であるような、EGFに対する親和性を備える。
【0014】
さらに好ましい実施態様では、切り詰められたEGFR細胞外ドメインが、Kdが45nM未満、さらに好ましくは40nM未満であるような、TGF−αに対する親和性を有する。
【0015】
第二の態様では、本発明は、第一の態様の切り詰められたEGFR細胞外ドメインをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0016】
第三の態様では、本発明は、第二の態様のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0017】
第四の態様では、本発明は、第三の態様の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0018】
第五の態様では、本発明は、第一の態様の切り詰められたEGFR細胞外ドメインを産生する方法を提供し、この方法は、切り詰められたEGFR細胞外ドメインの産生を可能にする条件下で第四の態様の宿主細胞を培養すること、および当該切り詰められたEGFR細胞外ドメインを単離することを含む。
【0019】
第六の態様では、本発明は第一の態様にかかる切り詰められたEGFR細胞外ドメインと、薬学的に許容できるキャリアーまたは希釈剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0020】
第七の態様では、本発明は、推定化合物を、EGFレセプターの活性を変更する能力に関してスクリーニングする方法を提供し、この方法は、推定化合物を、第一の態様にかかる切り詰められたEGFR細胞外ドメインに曝し、かつ、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインの活性をモニタリングすることを含む。
【0021】
第七の態様に関連して、適切なアッセイ処理が、マイクロプレートフォーマットで競合結合アッセイを含んでもよく、ここでは推定化合物が、切り詰められたEGFレセプター細胞外ドメインに対するIGF−1またはIGF−2のようなラベル化リガンドの結合を阻害する能力について調べられる。ラベルは、125Iのようなラジオラベル化タグ、またはフルオレセインイソチオシアナートのような蛍光タグ、またはユーロピウムのようなランタニドイオンとすることができる。
【0022】
第八の態様では、本発明は、患者のEGFレセプターファミリーの分子によるシグナリングと関連した疾患を治療または予防する方法を提供し、この方法は、第一の態様にかかる切り詰められたEGFR細胞外ドメインを患者に投与することを含む。
【0023】
第八の態様の好ましい実施態様では、EGFレセプターファミリーの分子によるシグナリングと関連した疾患は、乾癬、および乳房、脳、卵巣、頸、膵臓、肺、頭および首部のガン、および黒色腫、横紋筋肉腫、中皮腫および神経膠芽細胞腫を含むがこれらに限定されない腫瘍状態から選択される。
【0024】
第八の態様の方法は、単独で、または、他の治療法と組み合わせて用いることができる。例えば、第四の態様の方法は、腫瘍状態の治療における、抗EGFR抗体のような細胞傷害モダリティー、放射線療法または化学療法と組み合わせて用いることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
ここで用いるにあたり、用語“EGFR”は、EGFレセプター、ErbB2、ErbB3およびErbB4のようなEGFレセプターファミリーのメンバーを含むと解される。一般に、EGFレセプターファミリー分子は、類似のドメイン配列を示し、顕著な配列同一性、好ましくは少なくとも40%の同一性を占める。
【0026】
ここで用いるにあたり、用語“全長のEGFR細胞外ドメイン”は、EGFレセプターの残基1−621からなる細胞外ドメインを指す。全長の細胞外ドメインのアミノ酸配列は、以前に記載されている(13)。全長の細胞外ドメインは、L1、CR1、L2およびCR2と称する4つのサブドメインを含む。ここで、LおよびCRはそれぞれ大きい(large)およびCys−リッチ(Cys−rich)の頭文字である。
【0027】
CR2サブドメインは、2または3のアミノ酸残基のリンカーにより連結され、以下のシステイン残基により結合された、以下の7つのモジュールからなる。
第1モジュール: cys残基 482−499
第2モジュール: cys残基 502−511
第3モジュール: cys残基 515−531
第4モジュール: cys残基 534−555
第5モジュール: cys残基 558−567
第6モジュール: cys残基 571−593
第7モジュール: cys残基 596−612
【0028】
ここに示された結果は、EGFR細胞外ドメインのCR2領域における欠失が、EGFおよび/またはTGF−αの細胞外ドメインの結合親和性を予期することなく増加させることを示す。この情報を考慮すると、当業者であれば、多数の候補の切り詰められた細胞外ドメインを容易に生成し、これらの候補について、増加したリガンド親和性および治療能力をスクリーニングすることができる。
【0029】
例えば、切り詰められた細胞外ドメインは、ここに記載または先に記載(8)されたような、組み換えDNA技術により調製することもできる。あるいは、切り詰められた細胞外ドメインは、全長の細胞外ドメインまたは全長のレセプターを、先に記載(9)されたような制限されたタンパク分解で処理することによっても調製できる。
【0030】
結合親和性および阻害力は、バイオセンサー技術を用いて、切り詰められた細胞外ドメインの候補について測定することができる。
【0031】
本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、実質的に単離された形態とすることができる。このタンパクは、タンパクの所望の目的を妨げないキャリアーまたは希釈剤と混合されてもよく、また、実質的に単離されたものであってもよい。本発明の切り詰められた細胞外ドメインは、実質的に精製された形態であってもよく、その場合には、調製物中にタンパクを90%より多く含み、例えば、本発明のタンパクが、調製物中に95%、98%または99%とされる。
【0032】
本発明の内容において、切り詰められたEGFR細胞外ドメインのアミノ酸配列は変性されてもよい。但し、その変性が、少なくとも一つのEGFRリガンドに関する、前記切り詰められた細胞外ドメインの結合親和性に負の影響を与えないことが条件である。例えば、変性された細胞外ドメインは、結合活性に必要でない、残基または配列の種々の置換、もしくは末端または内部残基または配列の欠失により、作製することができる。一般的に、置換は保存的に成されるべきである。すなわち、最も好ましい置換アミノ酸は、置換される残基と似た物理化学的特徴を有するものである。同様に、欠失または挿入法を用いる場合には、生物学的活性に与える欠失または挿入の可能性のある効果を考慮すべきである。切り詰められた細胞外ドメインの生物学的活性を保存するために、欠失および置換は、相同または保存的に置換された配列に行われ、これはすなわち所定の残基が生物学的に類似の残基で置換されることを意味する。保存的置換の例は、一つの脂肪残基を別のものと置換、例えばIle、Val、Leu、MetまたはAla同士で置換すること、または一つの極性残基を別のものと置換、例えばLysとArgの間、GluとAspの間、またはGlnとAsnの間で置換することを含む。他のかかる保存的置換、例えば、類似の疎水特性を有する全体領域の置換が周知である。さらに、ヒト、マウスおよび他の哺乳動物のEGFR間のアミノ酸の差異は、切り詰められたEGFR細胞外ドメインの本質的な生物学的特徴を変更することなく行うことができるさらなる保存的置換を示唆している。
【0033】
本発明に包含される変性は、結合親和性を維持する一次タンパクの種々の構造形態を含む。イオン化しうるアミノおよびカルボキシル基の存在により、例えば切り詰められた細胞外ドメインは、酸性または塩基性の塩の形態であってもよく、また、中性の形態であってもよい。また、個々のアミノ酸残基が、酸化または還元により変性されてもよい。
【0034】
一次アミノ酸構造は、他の化学種、例えば、グリコシル基、脂質、ホスファート、アセチル基等と共有的または集合的接合を形成することにより、または、アミノ酸配列変異体を作製することにより変性することもできる。本発明の範囲内に含まれる他の変性は、例えば、N末端またはC末端融合のような組み換え培養における合成による、切り詰められた細胞外ドメインと、他のタンパクまたはポリペプチドとの共有的または集合的接合を含む。例えば、接合したポリペプチドは、タンパクのN末端領域におけるシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列であってもよい。これは、翻訳時または翻訳後に、タンパクの合成部位から、細胞膜または壁の内部または外部の機能部位へと、タンパクを輸送させる(例えば、イーストα−因子リーダー)。切り詰められたEGFR細胞外融合物は、切り詰められた細胞外ドメインの精製または同定を容易にするため(例えばポリHis)、またはin vivoで細胞外ドメインの安定性または輸送を増強するために添加されたペプチドを含んでもよい。
【0035】
また、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、イムノグロブリン分子の定常ドメインに融合されてもよい。例えば、イムノグロブリン分子重鎖および軽鎖のいずれかまたは両方の可変ドメインに代えて置換された切り詰められたEGFR細胞外ドメイン、および、未変性の定常領域ドメインを有する組み換えキメラ抗体分子が産生されてもよい。これは、二価に示された切り詰められたEGFR細胞外ドメインを有する単一のキメラ抗体を生じてもよい。切り詰められたEGFR細胞外ドメインのかかる多価形態は、増強されたEGFRリガンドの結合親和性を有する。かかるキメラ抗体分子の構成に関する詳細は、WO89/09622およびEP315062に開示されている。
【0036】
TGFαは膜結合型で存在するので、本発明の切り詰められた細胞外ドメインは、ガン細胞に化合物を仕向けるために用いることができる。従って、切り詰められたEGFR細胞外ドメイン融合物は、薬剤、アイソトープまたは毒素のようなガン細胞の診断または治療に用いられる化合物を含むことができる。
【0037】
切り詰められたEGFR細胞外ドメイン誘導体は、システインおよびリシン残基において、M−マレイミドベンゾイルスクシニミドエステルおよびN−ヒドロキシスクシニミドのような架橋結合剤によって得ることもできる。切り詰められた細胞外ドメインは、例えば、臭化シアン活性化、ビスオキシラン(bisoxirane)活性化、カルボニルジイミダゾール活性化、またはトシル活性化アガロース構造のような種々の不溶性基質に対して反応性側鎖基を介して、あるいは、ポリオレフィン表面に対して(グルタルアルデヒド架橋結合を伴うまたは伴わずに)吸着させることにより、共有結合されてもよい。基質に結合したら、切り詰められた細胞外ドメインは、抗EGFR抗体またはEGFに選択的に結合(アッセイまたは精製の目的で)させるために用いることができる。
【0038】
構造的に束縛された本発明の細胞外ドメインの誘導体を用いることも望ましい。構造的束縛とは、ペプチドによって呈される三次元形状の安定性および好ましいコンホメーションを指す。構造的束縛は、ペプチドの一残基のコンホメーション可動性を制限することを含む局所的束縛;一部の二次構造ユニットを形成しうる残基の一つの基のコンホメーション可動性を制限することを含む領域的束縛;および全体的なペプチド構造に関与する全体的な束縛を含む。
【0039】
本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、免疫原、レセプターベースのイムノアッセイ試薬、または、EGFまたは他の結合リガンドの親和精製処理の結合試薬として用いることができると解される。
【0040】
切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、安定にトランスフェクトされたEGF応答性レポーター遺伝子を取り込む細胞ベースのアッセイを用いて、レセプター活性を変更する能力について調べることができる(10)。このアッセイは、新たなリガンドの存在下における、レポーター遺伝子を活性化するEGFの能力に関する。極めて敏感な検出システム(化学発光)を用いて、高速(6−8時間以内のホルモン暴露で結果を生じる)、高処理能力(アッセイは、自動化計測用の96ウェルフォーマットで行われる)の分析法を与える。候補化合物が同定されたら、EGF−Rを介したシグナル伝達と拮抗するそれらの能力について、EGF媒介細胞増殖の阻害のような、多数の機械的なin vitro細胞アッセイを用いて評価することができる。最後に、腫瘍治療剤としての切り詰められたEGFR細胞外ドメインの効力を、記載されているように(11、12)、腫瘍の同系移植片および異種移植片を有する動物においてin vitroで試験することができる。
【0041】
本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン(および本発明のアッセイ方法によって同定された物質)は、好ましくは、本発明の組成物を成すために、種々の成分と組み合わせられてもよい。好ましくは、組成物は、薬学的組成物(ヒトまたは動物に使用される)を生成するために、薬学的に許容できるキャリアーまたは希釈剤と組み合わせられる。適切なキャリアーおよび希釈剤は、例えばリン酸塩緩衝生理食塩水のような等張生理食塩水を含む。この組成物は、例えば、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口または経皮的投与用に製剤化することができる。通常、各タンパクは、0.01〜30mg/kg体重、好ましくは0.1〜10mg/kg、さらに好ましくは0.1〜1mg/kg体重の投与量で投与することができる。
【0042】
上記投与経路および投与量は、医師が特定の患者および状態について最適な投与経路および投与量を容易に決定できるものであることから、指針に過ぎない。本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインがEGFRリガンドに強く結合できる能力から、切り詰められた細胞外ドメインは、EGFRリガンドの診断アッセイ、および診断および治療に使用するためのEGFRに対する抗体を生じることに有益である。さらに、精製された切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、直接的に治療に用いられて、EGFRリガンドを結合または取り除き、その結果、これらのリガンドの活性を制御する手段を提供する。特に、本発明の切り詰められたEGFR細胞外ドメインは、EGF依存反応を阻害する目的で投与することができる。
【0043】
この明細書を通して、用語“含む”は、記載の成分、数または工程、あるいは成分、数または工程の群の包含を意味するが、その他の成分、数または工程、あるいは成分、数または工程の群の排除を意味するものではないと解する。
【0044】
本願明細書に含まれる刊行物、作用、物質、装置、物品などに関するあらゆる議論は、本発明の内容を提供するためのものに過ぎない。これらのいずれかまたは全ての事項が、本願の各クレームの優先日以前にオーストラリアに存在していたことから、従来技術の水準の一部を形成し本発明の属する分野の常識であるとされることには承認できるものではない。
【0045】
実験の詳細
材料と方法
切り詰められた形態のhEGFR細胞外ドメインの発現に使用されるプラスミドの作製。切り詰められたhEGFR cDNAの作製に用いられたプラスミドpEGFRは、プラスミドpUC18の多重クローニング部位にhEGFRのヌクレオチド167−3970を含む(13)。コーディングは、LacZαペプチドに対して反対のセンスであり、挿入はpUC18のXbaI部位の下流である。このプラスミドを、哺乳動物の発現ベクターpEE14に挿入するための切り詰められた構成物の切除の際に後で用いた。
【0046】
pEGFR476の作製。hEGFRのヌクレオチド167−3150を含有する最初のプラスミドを、pEGFRからのXbaI/NsiIフラグメントとXbaI/PstI−切断pBluescript KS+とのライゲーションにより作製した。このプラスミドから、4kbpのフラグメントBbsI/BglIIフラグメント(全体のpBluescript KS+とEGFRのヌクレオチド167−1150および2951−3150を含む)と、528bp BbsI/PvuIIフラグメント(ヌクレオチド1151−1679)を、hEGFRのアミノ酸474−476、エンテロキナーゼ切断部位、および精製を容易にするためのc−mycエピトープタグをコードする70bp PCR誘導PvuIIおよびBglIIフラグメントを用いてリゲートした。前記70bpのPCRカセットは、鋳型として類似する先の構成物(15)を用いて作製した。哺乳動物細胞トランスフェクション用のプラスミド、pEGFR476は、1.6kbp XbaI/EcoRVフラグメントのXbaI/SmaI−切断pEE14を用いたライゲーションにより、前記プラスミドから作製した。
【0047】
pEGFR501およびpEGFR513の作製。いずれの作製においても、3つのオリゴヌクレオチドを用いたPCRを用いて、hEGFR cDNAのフラグメント(それぞれ、ヌクレオチド1121〜1760または1121〜1797)、それに続くエンテロキナーゼ切断部位、c−mycエピトープタグ、および終止コドンをコードする配列を製造した。PCRの上流プライマーは、hEGFR cDNAのヌクレオチド1121−1140の任意の選択に対応するが、二つの重複する下流プライマーは、それぞれヌクレオチド1760または1797に隣接するさらなる配列を構成するように用いられた。このPCR産物を、pCR−Scriptベクター(Stratagene)を用いてクローン化した。いずれの場合も、これによって、hEGFRのヌクレオチド1738から始まる新たに作製された配列を有するApaIフラグメントを切断することが可能となり、これが後に、pEGFRの巨大なApaIフラグメント(ヌクレオチド1737までのhEGFR cDNAを備えた全体のpUC18配列を含む)に挿入されて、コード配列に隣接するXbaI制限部位を備えた切り詰められたhEGFRをコードするプラスミドを調製する。これらのpUC18ベースのプラスミドから、切り詰められたhEGFR cDNAを有するフラグメントをXbaI切断によって切断し、プラスミドpEE14のXbaI部位に挿入し、哺乳動物細胞トランスフェクション用のプラスミドpEGFR501およびpEGFR513をそれぞれ調製した。
【0048】
突然変異誘発。pEGFR501の切り詰められたhEGFR cDNAを有する1.7kbpのフラグメントを、突然変異誘発のためにM13mp18(16)に導入した。USB−T7 GenTM in vitro突然変異誘発キットを用いて、オリゴヌクレオチド指向in vitro突然変異誘発を行って、切り詰められたヒトsEGFR501細胞外ドメインの3つの単一部位変異体を生じた。すなわち、残基Glu367、Gly441およびGlu472をそれぞれ、Lysに変異させて、ニワトリのEGFRの対応する残基に調和させた(4)。変異を含むクローンを、プローブとして32P−ラベル化変異原オリゴヌクレオチドを用いたコロニーハイブリダイゼーション(17)によって同定し、変異をDNA配列分析によって確認した(18)。哺乳動物細胞発現のためのビヒクルは、XbaI切断によりM13 RF−DNAから変異sEGFR501 cDNAを有する1.7kbpフラグメントを切断し、プラスミドpEE14(16)のXbaI部位にそれを挿入することによって各変異体について生成した。
【0049】
細胞培養、DNAトランスフェクションおよびタンパク分析。一時的トランスフェクションアッセイのために、10%の胎児ウシ血清(FCS)を添加したDMEMに維持したヒト293T繊維芽細胞を、製造者の指示するところに従ってFuGENE(Roche Molecular Biochemicals, Sydney, NSW)を用いてプラスミドDNAでトランスフェクトした。上清を、トランスフェクションから48時間後に回収し、細胞溶解物をNP−40溶解バッファーに調製した。分泌されたEGFR変異体を特徴決定するために、上清および溶解物の分注物を、c−mycタグへのモノクローナル抗体(9E10)、またはMab225(HB−8508, American Type Culture Collection)、すなわちhEGFRの細胞外ドメインを認識する構造依存モノクローナル抗体(19)で免疫沈降させた。免疫複合体を、プロテインA−セファロースビーズ(Zymed Laboratories, Bioscientific Pty. Ltd., Gymea, NSW)で回収し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(10%ゲル)で分画しニトロセルロース膜に移した。切り詰められたhEGFR細胞外ドメインと変異体を、膜にホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−接合Mab9E10(Roche)でプロービングし、Pierce Super Signal基質で化学発光検出することによって同定した。
【0050】
sEGFR501を発現する安定な細胞系統を、選択可能なマーカーとしてグルタミンシンテターゼを用いて、CHOK(7)からLec8変異細胞系統に確立した(15)。メチオニンスルホキシミン(MSX)耐性細胞コロニーの上清を、バイオセンサー分析によって(以下参照)、またはニトロセルロースへのドットブロッティングおよびHRP−Mab9E10でプロービングすることによって、分泌されたレセプターに関してスクリーニングした。単一の細胞系統を、限界希釈によってクローニングのために選択した。
【0051】
sEGFR501タンパクを発現するLec8細胞を、1.7Lの作動容積で、70gのFibra−Cell Disksを用いて、Celligen Plusバイオリアクター(New Brunswick Scientific, New Jersey, USA)で培養した。非必須アミノ酸、ヌクレオシドおよび10%FCSを添加したグルタミンを含まないDMEM/F12培地を用いた連続潅流培養を、6週間行った。選択圧は、発酵の間、25μM MSXで維持した。潅流速度は、残留グルコースレベルが1.0−1.5g/L、対応する乳酸濃度が2.0−2.3g/Lとするのに必要な値に調節した。
【0052】
切り詰められたEGFR細胞外ドメインの精製。バイオセンサーおよびAUC分析のために、sEGFR切り詰められたタンパク(4L)を含有する調整培地を、アジ化ナトリウム(0.02%(w/v))を含むTris−HCl(Sigma)(TBSA)でpH8.0に調節し、遠心して微粒子を除いてから、アガロースに共有結合したモノクローナル抗体9E10のカラムで4℃で親和的精製により、ペプチド溶出を用いて、c−myc−タグタンパクを回収した(15)。溶出したタンパクを、Superdex 200(HR10/30, Amersham Pharmacia Biotech)で、室温で、TBSAバッファーを用いて、0.8ml/分の流速で、サイズ排除クロマトグラフィーによりさらに精製した。タンパクを、280nmの吸収により検出した。
【0053】
BIAcore結合アッセイ。タンパク−タンパク相互作用を、表面プラスモン共鳴検出(BIAcore 2000または3000, BIAcore, Uppsala, Sweden)を用いて、機器光学バイオセンサーで、リアルタイムにモニタした。組み換えhEGFまたはhTGF−α(Gropep, Adelaide, Australia)を、先に記載されているように(20)、SMARTシステム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いた微小調整用RP−HPLCによって、固定化の直前に精製した。このタンパクを、4μl/分の流速で、アミンカップリング化学(N−ヒドロキシスクシニミドとN−エチル−N’−ジメチルアミノプロピル−カルボジイミド)を用いてバイオセンサー表面に固定化した。通常、100−200RUが、0.1−0.2ng/mm2で固定される(20)。固定化レベルの自動化ターゲッティングは、BIAcore 3.1コントロールソフトウェア(21)を用いて行われる。
【0054】
分析の前に、sEGFR621(23)、sEGFR501およびsEGFR501変異体サンプルを、微小調整用サイズ排除クロマトグラフィー(Superose 12 3.2/30, Amersham Pharmacia Biotech)により特徴決定してサイズ均質性を確かめ(20)、プールされた画分を、適切な濃度までBIAcoreバッファー(HBS:3.4mM EDTA, 0.15mM NaCl,および0.005%(v/v)Tween 20を含む10mM Hepes pH7.4)に希釈した。通常、10−1000nMの濃度のサンプル(30μl)を、流速5または10μl/分で、センサー表面に連続的に注入した。注入段階の完了後、分離を同じ流速でBIAcoreバッファーで観察した。センサー表面およびサンプルブロックを25℃に維持した。結合したレセプターを溶出し、注入間で40μlの10mM HClを用いて表面を再生した。この処理は、レセプターの再注入において同じシグナルを示すことから示されるように、センサー表面に固定されているhEGFまたはhTGF−αを変性しなかった。
【0055】
速度論的速度定数(ka、kd)は、先に記載されているように(22)BIAevaluation 3.02ソフトウェア(http//www.biacore.com/products/eval3.html)を用いて、あるいはCLAMP(23、24)一般的な分析法を用いて決定された。平衡結合定数(KA、KD)を、定常状態平衡を定義する等式を用いて(KA*Conc*Rmax/(KA*Conc*n); BIAevaluation 3.1)、結合データの直接非線形最小自乗分析によって決定した。また、このデータをスキャッチャードフォーマットにプロットした(Req/nC対Req、Reqは平衡におけるバイオセンサー反応であり、nは結合価、Cは濃度である)(25)。
【0056】
分析的超遠心。先に記載されているように(23)、石英窓を有するセルを備えたAn60−Tiローターを用いて、吸収光学を備えたBeckman XL−A分析的超遠心(Beckman Coulter, Inc., Fullerton, CA)を用いて実験を行った。遠心実験は、100μlのサンプルボリュームを用いて20℃で行った。12000および20000rpmで得られた平衡沈降分布を280または290nmでモニタし、プログラムSEDEQ1Bを用いて分析した(26)。EGFの部分比容積は、0.71ml/gとされた(23)。
【0057】
化学架橋結合。化学的架橋結合したsEGFR501ダイマーを、室温で1時間150mM NaClを含む20mM HEPES pH7.4においてsEGFR501(5μM)をmEGF(20μM)とインキュベーションし、終濃度0.5mMまでビス(スルホスクシニミジル)スベラート(BS3, Pierce, Rockford, IL, USA)を添加し、かつ、さらに30分間インキュベーションすることによって生成した。この反応を、Tris−HClバッファー(pH7.5)を終濃度10mMとなるまで添加して終了した。モノマー−ダイマー分離を、Novex非還元SDS−PAGEゲル(10%)で行った。タンパクを、ポリ(ビニルジフルオリド)(PVDF)膜(Bio−Rad, Hercules, CA, USA)に移し、抗EGFR Mab528(19)(0.5μg/ml)、ホースラディッシュペルオキシダーゼラベル化ヤギ抗マウスIgG(Bio−Rad)でインキュベーションし、ECL検出(Amersham Pharmacia Biotech)することによって同定した。
【0058】
細胞増殖アッセイ。BaF/3ERX細胞、すなわちヒトEGFRでトランスフェクトしたBaF/3細胞から得られた細胞系統(Ludwig Institute for Cancer Research, Melboruneから入手)を三回洗浄し、残留IL−3を除き、RPMI1640+10%FCSに再懸濁した。細胞を、200μl当たり2x104細胞で、Biomek 2000ロボティックオートサンプラー(Beckman)を用いて96ウェルプレートにまき、10%CO2で37℃で4時間インキュベートした。適切な濃度のsEGFR501またはsEGFR621または抗EGFRモノクローナル抗体Mab528を、最初の滴定点まで添加し、一定量のmEGF(207pM)を用いて、または用いずに二重に96ウェルを通じて二倍希釈で滴定した。3H−チミジン(0.5μCi/ウェル)を添加し、プレートを5%CO2で37℃で20時間インキュベートした。次いで細胞を30分間室温で0.5MのNaOHで溶解した後、自動ハーベスターを用いてニトロセルロースフィルターマットに回収した(Tomtec, Connecticut, USA)。このマットを、マイクロ波中で乾燥させ、プラスチックカウンティングバッグに移し、シンチラント(10ml)を添加した。3Hチミジンの取り込みを、自動化ベータカウンター(1205 Betaplate, Wallac, Finland)を用いて調べた。
【0059】
【実施例】
実施例1:切り詰められたEGFR細胞外ドメインの生成および精製
一時的にsEGFR476、sEGFR501およびsEGFR513を発現する細胞からの調整培地の事前分析は、後者の二つの切り詰められたレセプターのみが、BIAcoreバイオセンサーに固定されたhEGFに対して検出可能な結合を与えたことを示した(データ示さず)。sEGFR501を発現する安定にトランスフェクトされたLec8細胞を生成し、物理的−化学的特徴決定のために、〜1.8mg/L発酵培地の収量の切り詰められたレセプタータンパクを生成するために用いた。
【0060】
ペプチド溶出を用いたMab9E10抗−c−mycペプチド親和性カラムから精製されたsEGFR501は、サイズ排除クロマトグラフィーで単一の対称ピークを示し(〜80kDaの見かけの分子量)、還元条件下でSDS−PAGEで〜70kDaの単一バンドとして移動した(示さず)。sEGFR501は、N末端アミノ酸配列分析において独特の予想される配列、LEEKKVXQGT(13)を与えた。サイクル7のXは、その位置にジスルフィド結合したシステイン残基が存在するためである。ヒトsEGFR501アポプロテインの計算された分子量は〜57.5kDaであることから、SED−PAGEで約70kDaの見かけの分子量は、グリコシレーション不完全Lec8細胞について報告された残留グリコシレーションによるものである(33)。sEGFR501に8つの潜在的N結合グリコシレーション部位が存在し(13)、37℃でsEGFR501をペプチド−N−グリコシダーゼ(PNGアーゼ)とインキュベーションすることにより、57−58kDaの見かけの分子量で、SDS−PAGE上を移動する主要なバンドの生成がもたらされる(データ示さず)。グリコシレーションが正しいプロセッシングに必要であるが、生物学的活性に必要でないという考えと一致して、以前に、BIAcore分析を用いて、PNGアーゼを用いた炭水化物の除去が固定されたリガンドに対するsEGFR621の結合に影響しないことを示した。次の全ての実験は、〜70kDaのsEGFR501を用いて実施した。
【0061】
実施例2:sEGFR501の親和的結合
BIAcoreバイオセンサーを用いて、sEGFR501とhEGFまたはhTGF−αとの間の相互作用の平衡結合定数および速度の両方を調べた。この相互作用は以前に詳細に研究されているので(23、27)、全長の細胞外ドメイン(sEGFR621)を、表面反応性のための陽性コントロールとして用いた。
【0062】
sEGFR501またはsEGFR621と、hEGFまたはTGF−αとの間の相互作用の典型的センサグラム(sensorgram)を図1に示す。視覚的検定は、試験した濃度範囲にわたって曲線が平衡に近づいたことを示した。さらに、hTGF−αセンサグラムは、より速く、かつ事実上完全な分離を示すと思われる。スキャッチャードフォーマット(図2)の平衡結合データの熱力学的分析は、sEGFR501と、固定されたhEGFまたはhTGF−αとの間の相互作用については30および47nMのKD値(それぞれ、相関係数R=0.993および0.999)を示し、かつ、sEGFR621との対応する相互作用については412および961nM(それぞれ、R=0.997および0.999)を示した。スキャッチャードトランスフォーメーションにより得られた値は、安定状態平衡を定義する等式(KA*Conc*Rmax/(KA*Conc*n); BIAevaluation 3.1)を用いて、結合データの直接非線形最小自乗分析によっても確認した(データ示さず)。この分析を用いて、32および46nMのKD値を、sEGFR501と、固定されたhEGFおよびhTGF−αとの間の相互作用についてそれぞれ算出し、かつ、全長細胞外ドメイン(sEGFR621)と、固定されたhEGFおよびhTGF−αとの間の相互作用についてそれぞれ570および959nMを算出した。sEGFR621を用いて得られた値は、以前に報告されていたものと一致し(23)、表面能力を確認できる。
【0063】
個々の速度定数は、一次速度論が影響する思われる曲線の一部から決定され(27、28)、対応する分離定数が計算される(表1)。この方法で計算されたKD値と平衡結合データから得られた値との間には良好な一致が存在する。hTGF−αに対してsEGFR501およびsEGFR621の両方を用いて得られた結合曲線が、hEGF表面に対しての対応するデータよりも、1:1モデルによりよく適合すると思われることは興味深い(事実上完全な分離によって示唆される)。
【表1】
【0064】
実施例3:sEGFR501のアンタゴニスト活性
高い親和性でsEGFR501がEGFに結合するという観察から、sEGFR501が、BaF/3ERX細胞系統を用いた細胞ベースアッセイにおいて、EGFRの細胞分裂促進性刺激の競合阻害剤として作用しうるか否かを調べてみることにした。この細胞系統は、約30pMのEC50でmEGFに反応する(図3A)。競合アッセイ(図3B)は、最大刺激を引き起こす(図3A)一定濃度のmEGF(207pM)、および種々のレベル(0.00045−0.5μM)のsEGFR501、sEGFR621、またはヒト類表皮癌細胞系統A431における上皮成長因子レセプターに対して生じた中和抗EGFRモノクローナル抗体Mab528を用いた(19)。この抗体は、ヌードマウスにおいて、高い数のEGFレセプターを有するA431細胞異種移植の増殖を妨げることを示している。sEGFR501(IC50=0.02μM)は、全長細胞外ドメイン(IC50=0.15μM)よりもほぼ10倍強力であり、Mab528抗EGFRモノクローナル抗体(IC50=0.06μM)よりも約3倍強力であった。
【0065】
実施例4:sEGFR501の二量体化
化学的架橋結合は、sEGFR501がリガンドの存在下で二量化複合体を形成したことを示した。20μMのmEGFの存在下で、単一の高分子量種(見かけMrが180000Da)が、化学的架橋結合後に形成された。これは、架橋結合がリガンドの不在下で試みられた場合には、検出できなかった(図4)。ウェスタンブロッティングを用いて、観察されたバンドの信頼性を確認したが、同様のデータは銀またはクーマシーブルー染色で得られた。さらに、0.25ml/分の流速でPBSの移動相で展開したTSK G2000SWカラムを用いて、反応混合物のサイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより、ダイマーに対応する見かけのMr158000のピークが示された(データ示さず)。同様の結果が、sEGFR621を用いて以前に得られている。
【0066】
分析的超遠心は、sEGFR501のEGF結合部位が等モル比のリガンドおよびレセプターで飽和し、2:2EGF/sEGFR501複合体の形成を導いた(図5)。20μMのEGFのみのこのデータは(図5A)、分子量5980Daの単一の溶質を示唆し、これは、アミノ酸組成から計算された値(6040Da)と一致する。10μMのsEGFR501単独について調べた分子量(65600Da)および部分比容積(partial specific volume)(0.71ml/g)は、沈降平衡分布(図5A)から計算され、既知のアミノ酸組成、および炭水化物組成について12%(w/w)の計算された値に基づいている。
【0067】
EGF(20μM)およびsEGFR501(10μM)の混合物の沈降平衡データは、二つの種を仮定して分析された(図5A)。第一の種の分子量は、フリーのEGF(6000Da)について得られた値に固定され、第二の種の分子量および重量フラクションは適切なパラメーターとして用いられた。かかる条件下では、第二の種の分子量は、sEGFR501とその複合体の重量平均分子量に良好な近似を与える。最適値は、重量平均MW106400Daの複合体を示し、1:1複合体に予想される値(71600Da)より高く、二量体2:2EGF/sEGFR501複合体の顕著な比率の形成とより一致する(以下参照)。高速メニスカス消耗実験(High−speed meniscus depletion experiment)を行って、EGFを用いたsEGFR501の飽和に必要なモル比を調べた(図5B)。sEGFR501(5μM)の溶液をEGFで滴定して、フリーのEGFがメニスカスで検出可能であるモル比を調べた。この結果は、これが5μM EGF以上で起こることを示し、等モル比がsEGFR501のEGF結合部位の飽和に必要であることを示唆した。平衡分析(図5A)から得られたEGF/sEGFR501複合体の観察された重量平均分子量と併せて考慮して、これらのデータは、EGF/sEGFR501二量化種の化学量論が2:2であり2:1でないことを確認する。
【0068】
沈降平衡を、ある範囲のEGF濃度の存在下で、sEGFR501(5μM)について得られたデータの分析に用いた(図5C)。“第二の”種に得られた重量平均分子量は、EGF/sEGFR501の比が1:1に増加するにつれ急速に増加し、2:1より上の比率で約108000付近でプラトーになる(図5C)。図5Aのデータも、1:1および2:2の混合物が、単量体および二量体sEGFR501複合体の重量フラクション、それぞれ57%と31%で複合体形成すると仮定して適合化できた。同様のデータはsEGFR621を用いて得られた(23)。
【0069】
実施例5:sEGFR501−441変異体結合研究
バイオセンサー分析を用いて、固定されたhEGFおよびhTGF−α表面の両方に対する一時的に発現されたsEGFR501変異体の結合を分析した。トランスフェクトされた細胞系統からの培養上清における変異体タンパクの存在を、抗EGFRモノクローナル抗体Mab528を用いたイムノブロッティング、および、表面に固定されたMab528を用いたバイオセンサー分析の両方によって調べた。全細胞系統からの培養上清は、Mab表面に対する明白な結合を示した(441>472=wt>367)(データ示さず)。
【0070】
以前の実験では、Glu367Lys変異体およびGlu472Lys変異体が、hEGFセンサー表面を通過させた際に、sEGFR501に対して類似した結合特性を示した(データ示さず)。Mab528表面はGly441Lys変異体がsEGFR501よりも高い濃度で存在していたことを示したが、Gly441Lys変異体は、はるかに低い結合を示した。興味深いことに、同一サンプルを平行hTGF−αセンサー表面に通したときに、Gly441Lys変異体は最も高い結合を示したが、Glu367Lys変異体、Glu472Lys変異体、および野生型sEGFR501の結合は類似しているがより低かった。
【0071】
全バイオセンサー分析のために、一時的にトランスフェクトされた293T繊維芽細胞からの調節培地に存在する変異タンパクを、9E10モノクローナル抗体を用いた親和精製、およびSuperdex 200およびSuperose 12でのサイズ排除クロマトグラフィーを組み合わせることによって濃縮および精製した。固定されたhEGFおよびhTGF−α表面(それぞれ、160および132RU固定化)で得られたセンサグラムは、図6A、Bに示されている。以前の実験で観察したように、Glu367LysとGlu472Lys変異体の結合特性は、図1に示されているsEGFR501から本質的に区別できないが(データ示さず)、Gly441Lys変異体は、hTGF−α表面に選択的結合を示した(図6A、B)。平衡結合データのスキャッチャード分析(図6C、D)は、TGF−α表面に対する結合がsEGFR501を用いて観察したときと似ているが(KD=77nM、相関係数R=0.999)、Gly441Lys変異体のEGF表面への反応性は顕著に低減していた(KD=455nM、R=0.995)。同様の値(78nMおよび469nM)は、安定状態平衡を定義する等式を用いて結合データ(データ示さず)の直接非線形最小自乗分析によって得られた。
【0072】
結合データの速度論的分析(表2)は、固定されたTGF−αとの相互作用は、5.2−6.9x10−5M−1s−1の結合速度定数(ka)かつ0.025s−1の分離速度定数(kd)によって記述され、36−44nMのKD=kd/kaを与えることを示した。EGFとの対応する相互作用は、1.9−2.3x10−5M−1s−1のka、および0.103s−1の顕著に速いkdにより記述され、442−545nMのKD=kd/kaを与え、熱力学的分析の結果と一致する。
【0073】
【表2】
【0074】
論考
高い親和性でhEGFおよびhTGF−αに結合する切り詰められた形態のEGFR細胞外ドメイン(sEGFR501)の特徴(表1、図1および2)が記載されている。hEGFがsEGFR501に結合する際の13−21nMのKD値は、全長のEGFR細胞外ドメインの化学的に架橋したダイマーに観察される値(15−30nM)と類似しており、A431腫瘍細胞、トランスフェクトされたSf9昆虫細胞、またはCHO細胞のいずれから誘導される可溶性全長EGFR細胞外ドメインについて一般的に報告されている値よりも10〜25倍も高い。
【0075】
CR2の殆どを欠くsEGFR501は、リガンド誘導レセプター二量化を示し(図4および5)、二量体化に重要な領域がCR2を含みそうもないことを示した。また、ErbB2/ErbB3ヘテロダイマーおよびニューレグリン(neuregulin)の状況とは対照的に、膜固定は、高い親和性ダイマーの生成に必要でないことも確認される。超遠心分析は、sEGFR501の結合部位が飽和され、sEGFR501が5μMという比較的低い濃度であっても(320μg/ml)、1:1よりも高いモル比で(図5C)、二量体化の程度がプラトーになり始めたことを示した。これは、有利に小角X線散乱データ、および以前の分析的超遠心分析と匹敵する。これは、EGF/sEGFRの比が1:1である場合に、EGFまたはTGF−α結合により誘導されたsEGFR621二量化が最大に達することを示したものである。
【0076】
リガンドに対するその高い親和性およびモデル細胞システムにおけるEGF誘導増殖反応を競合的に阻害できる能力から(図3)、sEGFR501が治療的能力を備えることが考えられる。この阻害は、レセプターに対して生じた中和モノクローナル抗体(Mab528)(そのキメラ形態(C225)が現在のところ臨床試験中である)を用いた同様のアッセイで達成される阻害よりも大きい。
【0077】
sEGFR501は、ニワトリのEGFRを用いて観察されたhTGF−αおよびhEGFとの間の差別的結合の原因となる残基を調べるためにも用いられた(9)。これらのデータは、hEGFRにおけるGly441に対応する、ニワトリのEGFRにおけるLys442が、hTGF−αおよびhEGF結合間の区別の原因残基であることを示す。
【0078】
上記明細書に挙げた全ての刊行物を、参照として含める。本発明の記載された方法およびシステムの種々の修正および変更は、本発明の範囲および精神から離れることなく、当業者にとって自明である。本発明は特定の好ましい実施態様に関連して記載されているが、請求の範囲に記載した発明がかかる特定の実施態様に不当に制限されるべきでないと解するべきである。分子生物学または関連する技術分野の当業者にとって明らかな、本発明を実施するための記載された方式の種々の変更は、本発明の範囲内である。
【0079】
「参考文献」
【図面の簡単な説明】
【図1】sEGFR501およびsEGFR621と、固定されたhEGFまたはhTGF−αとの間の相互作用のBIAcore分析。[A]:sEGFR501(140、120、100、80、60および40nM)を、固定されたhEGF(160RU固定化)上に通過させた。サンプル(30μl)を10μl/分の流速で注入した。[B]:sEGFR501を固定されたhTGF−α(132RU固定化)上に通過させた。実験の詳細はパネルAの通りであった。[C]:sEGFR621(1000、900、800、700、600および500nM)を固定されたhEGF上に通過させた。[D]EGFR621(パネルCの濃度)を固定されたhTGF−α上に通過させた。実施温度は25℃であった。注入段階の最後に、分離をセンサー表面を流れるバッファーのみでモニタした。この表面を、10mMのHClを用いてサンプル間に再生した。サンプルが平行の空のチャネル(parallel blank channel)を通ったときに得られたシグナルを電子的に差し引いて、比感度(specific response)を与えた。
【図2】平衡結合データのスキャッチャード分析。分離定数(KD=1/KA)を、図1で得られた平衡結合反応から、スキャッチャードフォーマットにそのデータをプロットすることにより算出した(Req/nCに対するReq;実験方法を参照)。このデータに適合する直線の傾きがKAを与える。[A]:sEGFR501対hEGF;[B]:sEGFR501対hTGF−α;[C]:sEGFR621対hEGF;[D]:sEGFR621対hTGFα。
【図3】sEGFR501によるEGF−刺激化細胞有糸分裂誘発の阻害。[A]mEGFの連続希釈を用いたBaF/3ERX細胞による3H−チミジン取り込みの刺激。このデータを、シグモイダル関数に適合させ[−]EC50を決定した。[B]:mEGF(207pM)を用いて刺激した細胞BaF/3ERX細胞の有糸分裂反応の、sEGFR501(■−■)、sEGFR621(●−●)、または抗EGFR抗体Mab528(▲−▲)による阻害。各点は、三重にアッセイされた。誤差棒が示されている。
【図4】mEGFとインキュベートした後のsEGFR501ダイマーの共有架橋。sEGFR501(5μM)を、150mMのNaClを含む20mM HEPES(pH7.4)中のmEGF(20μM)と共に(+)または伴わずに(−)室温で1時間インキュベートし、次いでビス(スルホスクシニミジル)スベラート(BS3, Pierce, Rockford, IL, USA)を0.5mMの終濃度まで添加し、さらに30分間インキュベーションを行った。この反応を終了させ、ダイマー形成の程度を、SDS−PAGE、および抗EGFR Mab528[7](0.5μg/ml)およびホースラディッシュペルオキシダーゼラベル化ヤギ抗マウスIgG(Bio−Rad)を用いたイムノブロッティングでモニタし、ECLで検出した(Amersham Pharmacia Biotech)。sEGFR501を検出するために用いられた抗体(Mab528)はコンホメーション依存性であることから、非還元SDS−PAGEによる分析が必要である。
【図5】分析的超遠心を用いたEGF/sEGFR501相互作用の分析。[A]EGF、sEGFR501、およびEGFとsEGFR501との混合物の沈降平衡分析。平衡分布は、12000rpmで、20℃で16時間遠心した後に得られた。(□)20μM EGF;(○)10μM sEGFR501、(△)20μM EGF+10μM sEGFR501。EGFおよびsEGFR501のデータに引かれた最適な線は、単一種に対するものであり、それぞれ、6000および65600の分子量値に対するものである。EGF/sEGFR501混合物に対するデータに引かれた線は、6000に固定された第一種の分子量と、第二種の分子量について106400の適合した値を備えた二つの種を仮定して計算した最適の線である。はめ込み:EGF/sEGFR501混合物の最適に対する残りのプロット。[B]sEGFR501に対するEGF結合の化学量論のメニスカス消耗沈降分析。5μMのsEGFR501と異なるモル比のEGF:EGFRとを含む溶液を、16時間、20000rpm、20℃でXLA分析的超遠心により遠心した。かかる条件下で、sEGFR501および、そのEGFとの複合体を、上清におけるメニスカス残留未結合EGFから消耗する。280nmにおける光学密度測定は、メニスカスに近い未結合EGFの量を評価可能にする。[C]上記のパネルAの条件下で示された濃度におけるsEGFR501(5μM)およびEGFの混合物について計算した“第二”種の重量平均分子量について得られたデータ。実線は、KDが30nM、二量体化定数が4μMに基づく模擬曲線に対応する。
【図6】固定されたhEGFおよびhTGF−αに対するGly441Lys sEGFR501変異体の結合のBIAcore分析。精製したGly441Lys sEGFR501(24−385nM)を、図1に記載した実験条件を用いて、固定されたhTGF−α(パネルA)またはhEGF(パネルB)上に通した。これらのセンサーグラム(sensorgram)から得られた平衡結合値を用いた、対応するスキャッチャード分析が、下に示されている(パネルC、D)。
Claims (22)
- 全長のEGFR細胞外ドメインと比較して少なくとも一つのEGFRリガンドに対して増大した結合親和性を有するように、CR2ドメインの実質的な部位を欠いた、切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- EGFおよび/またはTGF−αに対する増大した結合親和性を有する、請求項1記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- CR2ドメインの少なくとも第3から第7モジュールを欠失した、請求項1または2記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- CR2ドメインの少なくとも第2から第7モジュールを欠失した、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- CR2ドメインの第1モジュールの一部をさらに欠失した、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- 残基514−621を欠失した、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- 残基502−621を欠失した、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- L1、CR1およびL2サブドメインを含む、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- EGFR細胞外ドメインの残基1−492を含む、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- EGFR細胞外ドメインの残基1−501または残基1−513を含む、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- Kdが30nM未満であるようなEGFに対する親和性を備える、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- Kdが45nM未満であるようなTGF−αに対する親和性を備える、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメイン。
- 請求項1ないし12のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメインをコードするポリヌクレオチド。
- 請求項13記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
- 請求項14記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
- 請求項1ないし12のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメインを含むキメラまたは融合構成物。
- 切り詰められたEGFR細胞外ドメインがイムノグロブリン定常ドメインに接合した、請求項16記載のキメラまたは融合構成物。
- 切り詰められたEGFR細胞外ドメインの産生を可能にする条件下で請求項15記載の宿主細胞を培養すること、および当該切り詰められたEGFR細胞外ドメインを単離することを含む、切り詰められたEGFR細胞外ドメインを産生する方法。
- 請求項1ないし12のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメインまたは請求項16または17記載のキメラまたは融合構成物と、薬学的に許容できるキャリアーまたは希釈剤とを含む薬学的組成物。
- 推定化合物を、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメインに曝し、かつ、この切り詰められたEGFR細胞外ドメインの活性をモニタリングすることを含む、EGFレセプターの活性を変更する能力に関して推定化合物をスクリーニングする方法。
- 請求項1ないし12のいずれか一項に記載の切り詰められたEGFR細胞外ドメインを患者に投与することを含む、患者のEGFレセプターファミリーの分子によるシグナリングと関連した疾患を治療または予防する方法。
- 前記EGFレセプターファミリーの分子によるシグナリングと関連した疾患が、乾癬、並びに、乳房、脳、卵巣、頸、膵臓、肺、頭および首部のガン、および黒色腫、横紋筋肉腫、中皮腫および神経膠芽細胞腫を制限することなく含む腫瘍状態から選択される、請求項21記載の方法。
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