(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る電気音響変換器について説明する。図1A〜Dは、実施の形態1に係る電気音響変換器の構成を示す図である。具体的には、図1Aは、電気音響変換器の断面図であり、図1Bは、電気音響変換器に用いられるマグネットの斜視図であり、図1Cは、電気音響変換器に用いられる駆動コイルの平面図であり、図1Dは、電気音響変換器の斜視図である。図2は、図1Aに示す第1および第2のマグネットによって生じる磁束ベクトルを示す図である。図3は、図1Aに示す振動板の面上における中心軸から径方向への距離と磁束密度との関係を示す図である。
図1Aは、図1Dに示すA−B断面の断面図である。図1Aにおいて、電気音響変換器は、第1のマグネット101と、第2のマグネット102と、駆動コイル103と、振動板104と、筐体105および106とを備えている。
筐体105および106は非磁性体であり、例えばPC(ポリカーボネイト)のような樹脂材料が用いられる。図1Aおよび図1Dに示すように、筐体105は、一端が開口した円筒形状である。筐体105の他端には中央に空気孔109が設けられる。空気孔109の周囲には空気孔108が設けられる。空気孔108および109は、放音のために設けられる。なお、筐体106は筐体105と同様の構成であり、筐体106には空気孔110および111が設けられる。また、筐体105および106は互いの開口部が接合される。このように接合された筐体105および106の内部に各マグネット101および102、駆動コイル103、ならびに振動板104が配置される。なお、以下において、説明の容易化を目的として、接合された2つの筐体(実施の形態1においては、筐体105および106)を、ケーシングと呼ぶことがある。
図1Bに示すように、第1のマグネット101は、リング形状である。また、第1のマグネットの断面は長方形である。第1のマグネット101は、その外形形状が円柱形状であり、円柱の中心軸に沿って円柱状の空洞が設けられた形状である。以上のように、第1のマグネット101は、その中央部に空間を有する形状である。これによって、当該空間を有しない形状のマグネット(例えば、図16に示す円柱形のマグネット)と比べて、着磁方向に平行なマグネット断面における横方向(着磁方向と垂直な方向)に対する縦方向(着磁方向)の長さの比率を大きくすることができるので、マグネットの動作点を改善することができる。つまり、マグネットのパーミアンス係数を大きくすることができる。なお、図1Bにおいては第1のマグネット101のみを図示するが、第2のマグネット102は第1のマグネット101と同じ形状である。また、各マグネット101および102は、例えば、エネルギー積が39(MGOe)であるネオジウムマグネットで構成される。
図1Cに示すように、駆動コイル103は、所定長の半径を有する円形コイルである。駆動コイル103の半径は、各マグネット101および102の外周半径とほぼ等しい長さであるが、詳細は後述する。
図1Aにおいて、第1のマグネット101は、第1のマグネット101の中心軸と筐体105の中心軸とがともに中心軸107に一致するように筐体105上に固定されている。中心軸107は、図1Dに示すような円柱形状である電気音響変換器の中心を通る軸である。また、第2のマグネット102は、第2のマグネット102の中心軸と筐体106の中心軸とがともに中心軸107に一致するように筐体106上に固定されている。また、駆動コイル103は、各マグネット101および102と同心になるように、つまり、駆動コイル103の中心が中心軸107と一致するように振動板104上に配置されている。実施の形態1においては、駆動コイル103および振動板104は、接着剤によって接着されている。例えば、駆動コイル103は、振動板104の一方の面に接着される。また、実施の形態1においては、振動板104は円形である。振動板104の周辺部(外周部分)は、筐体105および106に挟まれることによって固定されている。振動板104は、駆動コイル103が各マグネット101および102の間の中央に位置するように固定されている。以上のように、各マグネット101および102、駆動コイル103、振動板104、ならびに筐体105および106は、中心が中心軸107で同一となるように構成される。
上述のように、振動板104の外周部分は、同一の形状である筐体105および106によって固定される。つまり、駆動コイル103は、第1のマグネット101と第2のマグネット102との中間に位置するように保持される。換言すれば、駆動コイル103は、各マグネット101および102から等距離にある面(振動板104が設けられる面)に設けられる。従って、駆動コイル103に電気信号が入力された場合、駆動コイル103が第1のマグネット101による磁界から受ける力は、駆動コイル103が第2のマグネット102による磁界から受ける力と等しくなる。
実施の形態1において、各マグネット101および102の着磁方向は、リング形状の縦方向、すなわち、図1Aに示す上下方向である。さらに、各マグネット101および102は、それぞれの着磁方向が逆になるように固定されている。つまり、各マグネット101および102の着磁方向は反対である。例えば、第1のマグネット101が下向き、すなわち、第1のマグネット101から第2のマグネット102への方向の着磁であれば、第2のマグネット102は上向き、すなわち、第2のマグネット102から第1のマグネット101への方向の着磁である(図1Aに示す矢印参照。)。以上のように、振動板104を中心として対向して設けられるリング形状の2つのマグネットは、振動板104に垂直な方向に着磁され、当該2つのマグネットの着磁方向は互いに逆方向となるように設けられる。
駆動コイル103に電気信号が入力されていない場合には、図1Aに示すように着磁された各マグネット101および102によって図2に示すような磁束が生じる。各マグネット101および102の着磁方向は逆向きであるので、それぞれから放射された磁束は反発し、その結果、各マグネット101および102の中央付近において磁束ベクトルはほぼ垂直に曲がる。その結果、各マグネット101および102の中央付近である振動板104および駆動コイル103の配置位置付近では、振動板104の振動方向(図1Aに示す中心軸107の方向)に垂直な磁束で構成される磁場が形成される。また、各マグネット101および102はリング形状であるので、マグネットの内周側(中心軸107に近い側。図2では、左側)と外周側(中心軸107に遠い側。図2では、右側)とでは磁束ベクトルは逆方向になる。
図2に示すような静磁場が生じる場合において、振動板104の面上における、中心軸107から径方向への距離と磁束密度との関係を図3に示す。実施の形態1では各マグネット101および102がリング形状であるので、図3に示すように、中心軸107から約2(mm)の位置および中心軸107から約5(mm)の位置において磁束密度が極値となる。つまり、磁束密度の絶対値が最大となる。ここで、駆動コイル103は、最も効率よく駆動力を得るために、図3に示す磁束密度分布の中で磁束密度の絶対値が最大となる位置に配置されることが好ましい。そのため、実施の形態1では、駆動コイル103の配置位置は図3に示す枠線で囲まれた範囲、すなわち、中心軸107から5(mm)の位置を含む範囲とされる。
ここで、磁束密度が極値となる位置は、第1のマグネット101の外周部を振動板104に投影した位置付近、および、第1のマグネット101の内周部を振動板104に投影した位置付近である。従って、実施の形態1では、駆動コイル103は、第1のマグネット101の外周部を振動板104に投影した位置に配置される。この位置は、図1Aにおいては、各マグネット101および102の外縁を結ぶ線を含む位置である。すなわち、駆動コイル103は、その中心が中心軸107と一致するように配置され、かつ、各マグネット101および102の外周半径より大きい外周半径を有し、各マグネット101および102の外周半径より小さい内周半径を有する。
以上のように構成された電気音響変換器について、駆動コイル103に交流電気信号が入力された場合における動作を説明する。駆動コイル103に交流電気信号が入力された場合、駆動コイル103を流れる電流の方向および振動板104の振動方向に垂直な磁束に比例するように駆動力が発生する。駆動コイル103に接着されている振動板104は、この駆動力によって振動し、その振動は音として放射される。
図2に示したように、各マグネット101および102から放射される磁束ベクトルは、駆動コイル103の配置位置付近では、駆動コイル103を流れる電流方向および振動板104の振動方向に垂直な磁束が支配的である。さらに、図3に示したように、駆動コイル103は、磁束密度の絶対値が最も高くなる位置に配置される。以上より、図16に示す従来の構成に比べて駆動コイル103の駆動力が大きくなる。その結果、電気音響変換器の再生音圧が高くなる。
また、図16に示す従来の構成の場合、マグネット3がコイン形状である。従って、電気音響変換器の薄型化を目的としてマグネットの薄型化を図ろうとするとマグネットの動作点が低下してしまうので、マグネットを効率よく使用することが困難となる。これに対して、実施の形態1では、各マグネット101および102がリング形状であるので、マグネットの薄型化に伴う動作点の低下を抑えることが可能である。例えば、マグネットの直径が9.6(mm)である場合、リング形状のマグネットのパーミアンス係数は、コイン形状のマグネットのパーミアンス係数と比較して3.5倍になる。このため、実施の形態1に係る電気音響変換器は、従来の構成による電気音響変換器よりも高温に強く、より高温の環境下でも動作可能となる。
また、図16に示す従来の構成ではマグネットが1つであるので、振動板が振動する際、振動板とマグネットとの距離に応じて磁束密度の大きさが変化する。すなわち、振動板がマグネットから近い位置では磁束密度は大きくなり、マグネットのから遠い位置では磁束密度が小さくなる。従って、振動板が振動する際において駆動コイル5に生じる駆動力は、振動の中心位置に対してマグネットに近い側と遠い側とで非対称になる。駆動力のこのような非対称性は、2次歪として音質を悪化させる原因となる。これに対して、実施の形態1においては、各マグネット101および102は、駆動コイル103に対して上下対称に構成される。そのため、振動板104が振動する際において駆動コイル103に生じる駆動力は、振動の中心位置に対して対称である。従って、実施の形態1においては、各マグネット101および102という2つのマグネットを用いた磁気回路構造によって2次歪を低減することができ、高音質化を図ることができる。
なお、実施の形態1では、第1のマグネット101の外周部を振動板104に投影した位置に駆動コイル103を設けた(図1A参照)が、第1のマグネット101の内周部を振動板104に投影した位置に駆動コイル103を設けてもよい。この位置付近でも磁束密度が極値をとる(図3参照)ので、駆動コイル103に生じる駆動力を図1Aに示す場合と同様にすることができる。また、第1のマグネット101の内周部を振動板104に投影した位置に駆動コイル103を設けることによって、各マグネット101および102の外径と同程度にまでケーシングの内径を縮小することができる。従って、電気音響変換器を小型化することができる。
なお、実施の形態1では各マグネット101および102にネオジウムマグネットを用いたが、目標音圧や形状等に合わせて、フェライト、サマリウムコバルト等のマグネットを用いてもよい。また、実施の形態1と同様、以降に説明する実施の形態2〜5においても、マグネットはどのような材質であっても構わない。
また、図1Aでは振動板104の形状をほぼフラットに図示したが、振動板104に図4に示すようなエッジ部を設けてもよい。図4は、実施の形態1における振動板104の変形例を示す図である。なお、図4は、振動板の断面図である。エッジ部は、所望の最低共振周波数および最大振幅を満足するように設けられる。エッジ部の断面の具体的な形状としては、例えば、図4Aに示すような半円(円弧)形状のエッジ部112a、図4Bに示すような半楕円形状のエッジ部112b、図4Cに示すような形状のエッジ部112c、および、図4Dに示すような波形形状のエッジ部112d等が考えられる。また、実施の形態1と同様、以降に説明する第2から実施の形態5においても、振動板の断面はどのような形状であっても構わない。
なお、実施の形態1では筐体105および106に非磁性体材料を用いたが、磁性体材料を用いてもよい。磁性体材料を用いることによって、各マグネット101および102の筐体側への漏れ磁束を軽減することができる。
なお、実施の形態1では各マグネット101および102の外形形状を円柱形状としたが、これらの外形形状は、電気音響変換器の外形形状に応じて楕円柱、直方体形状等、他の形状であってもよい。その場合、振動板104の形状をマグネットの外形形状に合わせてもよい。つまり、各マグネット101および102の外形形状が楕円柱である場合には振動板104を楕円形状とし、各マグネット101および102の外形形状が直方体である場合には振動板104を矩形形状としてもよい。
なお、実施の形態1では、例えば内磁型スピーカのようにマグネットとヨークとの間に形成される磁気ギャップに駆動コイルを挿入する必要がない。すなわち、駆動コイルは、各マグネット101および102の間の空間に存在すればよいので、駆動コイル103の巻き幅を一様にする必要がない。ここで、一般的に、銅線を巻くことによって構成される駆動コイルは、工法上の理由から円形形状に比べて縦横比の大きな形状(例えば、楕円もしくは矩形形状)に構成することは難しい。特に、縦横比の大きな形状の場合、コイルの巻き幅を一様にすることは難しい。これに対して、実施の形態1では、駆動コイル103の巻き幅を一様にする必要がないので、駆動コイル103の形状を縦横比の大きな形状にすることが容易になる。従って、実施の形態1によれば、駆動コイル103の設計自由度が増し、細長い形状の電気音響変換器を容易に実現することができる。
なお、実施の形態1では、ケーシングの上下面または側面の少なくともいずれかに少なくとも1つの音孔を設ける構成とすることによって、振動板とケーシングとで構成される空室の影響による最低共振周波数の上昇を防ぐことが可能となる。ここで、実施の形態1では、空気孔108および109をケーシングの上下面に設けたが、側面に設けて再生音を横出しにしてもよい。また、最低共振周波数における尖鋭度を制御するために空気孔上に制動布を設けてもよい。なお、実施の形態1と同様、以降に説明する第2から実施の形態5においても、空気孔はどのような位置に設けられても構わないし、空気孔に制動布が設けられてもよい。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る電気音響変換器について、図5および図6を用いて説明する。図5は、実施の形態2に係る電気音響変換器の断面図である。図6は、実施の形態2における各マグネットによって生じる磁束ベクトルを示す図である。なお、電気音響変換器の外観は、空気孔の位置を除いて実施の形態1と同様であるので、実施の形態2に係る電気音響変換器の概観図は省略する。
図5は、円柱形状である電気音響変換器の中央を通る中心軸207を通る平面の断面図である。図5において、電気音響変換器は、第1のマグネット201と、第2のマグネット202と、駆動コイル203と、振動板204と、筐体205および206とを備えている。実施の形態2に係る電気音響変換器の形状は、以下に説明する第1から第3の相違点を除いて、実施の形態1と同様である。以下、実施の形態2と実施の形態1との相違点を説明する。
第1の相違点は、振動板204がフラットな形状ではなく、内周部(中央部)および外周部の断面が円弧形状(半円形状)をしている点である。具体的には、駆動コイル203が接着される部分の内周側および外周側において、断面が円弧形状となっている。このように、振動板204の断面を円弧形状とすることによって、フラットな形状に比べて振動板204の振幅を大きく取ることができる。また、振動板204中央部の剛性を上げることができる。第2の相違点は、空気孔208が筐体205の側面に設けられ、空気孔209が筐体206の側面に設けられる点である。これによって、実施の形態1に係る電気音響変換器とは異なった向きで電気音響変換器を電子機器内に取り付けることができる。
第3の相違点は、各マグネット201および202の着磁方向が異なる点である。図5に示すように、各マグネット201および202は、リング形状の中心からマグネットの外周に向かう方向、つまり径方向(図5に示す矢印参照)に着磁されている(以下、「ラジアル着磁」と呼ぶ。)。なお、ラジアル着磁の方向は、リング形状のマグネットの内周側から外周側へ向かう方向であってもよいし、外周側から内周側へ向かう方向であってもよい。ただし、第1のマグネット201の着磁方向および第2のマグネット202の着磁方向は、同じ方向である。
以上のように構成された電気音響変換器について、その動作を説明する。各マグネット201および202によって駆動コイル203の付近には磁場が形成されるので、駆動コイル203に交流電気信号が入力されると駆動力が発生する。この駆動力によって駆動コイル203と接着している振動板204が振動することによって、音が放射される。以上の点において、実施の形態2の動作は実施の形態1の動作と同様である。
ここで、実施の形態2においては、上述のように、各マグネット201および202がラジアル着磁されている。各マグネット201および202によって生じる磁束ベクトルを図6に示す。上述のように、振動板204の上下に配置されている各マグネット201および202は、それぞれの内周および外周の極が同じになるようにラジアル着磁されている。従って、各マグネット201および202から放射された磁束が反発する結果、図6に示すように、磁気ギャップGにおいては径方向(図6では、横方向)の成分が支配的である磁場が形成される。
実施の形態2では径方向の成分が支配的な磁場が形成されるので、各マグネット201および202の内縁を結ぶ線と外縁を結ぶ線との間において、磁束密度が一様に高くなる。このように、実施の形態2では、図5に示す磁気ギャップGの中央における中心軸207から径方向への距離と磁束密度との関係は、各マグネット201および202の内縁から外縁部分までの広い範囲で磁束密度が高い特性となる。すなわち、振動板204の面上においては、磁束密度が高い範囲は、内周半径が各マグネット201および202の内周半径と等しく、外周半径が各マグネット201および202の外周半径と等しい環状の範囲となる。また、振動板204の面上においては、当該環状の範囲において磁束密度がほぼ均一になる。なお、ここで、「振動板の面」とは、振動板204の平坦な部分の面をいい、断面が円弧形状等である部分を指すものではない。
なお、上述したように、実施の形態1では、マグネットの着磁方向は、リング形状の中心軸方向(図1Aに示す中心軸107の方向)であった。そのため、実施の形態1では、マグネットの内周部分および外周部分において磁束密度が高くなるものの、その他の部分では磁束密度が低くなっていた(図3参照)。これに対して、実施の形態2では、マグネットの内周部分から外周部分までの範囲であれば、一様に磁束密度が高くなる。従って、実施の形態2では、駆動コイル203を実施の形態1に比べて広い範囲で設置することができる。そのため、駆動コイルのターン数や長さ等を実施の形態1に比べて大きくすることができ、駆動力を大きくすることができる。また、ほぼ均一な磁束密度分布が形成されるので、駆動コイル203の位置に依存する変化である、振動方向に関する磁束密度の変化が小さくなる。従って、組立時における音圧のばらつきを抑えることができる。さらに、駆動コイル203を設ける範囲を実施の形態1に比べて広くとれるために、駆動コイル203および振動板204の形状の自由度が大きくなる。
なお、実施の形態2では、第1のマグネット201は、1固まりの(一体の)マグネットにラジアル着磁を施すことによって実現される。ここで、他の実施形態においては、マグネットをいくつかに分割し、着磁した後、再度合体することで、ラジアル着磁を実現してもよい。第2のマグネット202についても、第1のマグネット201と同様である。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る電気音響変換器について説明する。図7A〜Cは、実施の形態3に係る電気音響変換器の構成を示す図である。すなわち、図7Aは、電気音響変換器の断面図であり、図7Bは、電気音響変換器の斜視図であり、図7Cは、電気音響変換器の駆動コイルの平面図である。図8は、図7Aに示す振動板平面上における中心軸から径方向への距離と磁束密度との関係を示す図である。図9A〜Eは、実施の形態3におけるマグネットとヨークとの関係を示す図である。
図7Aは、図7Bに示すC−D断面の断面図である。図7Aにおいて、電気音響変換器は、第1のマグネット301と、第2のマグネット302と、第1の駆動コイル303と、第2の駆動コイル311と、振動板304と、筐体305および306と、第1のヨーク309と、第2のヨーク310とを備えている。各マグネット301および302は実施の形態1と同じマグネットである。また、振動板304は実施の形態2と同じ振動板である。図7Aに示す電気音響変換器は、以下に示す相違点を除いて、実施の形態1または2と同様である。
第1の相違点は、図7AおよびBに示すように、第1のマグネット301の周囲に第1のヨーク309が設けられ、第2のマグネット302の周囲に第2のヨーク310が設けられている点である。各ヨーク309および310は、例えば鉄等の磁性体材料が用いられる。また、筐体305は、第1のヨーク309の外周部に接続するように設けられ、筐体306は、第2のヨーク310の外周部に接続するように設けられる。なお、第1のヨーク309には、放音のための空気孔308および312が設けられる。同様に、第2のヨーク310には空気孔313および314が設けられる。
第2の相違点は、電気音響変換器が第1および第2の駆動コイル303および311という2つの駆動コイルを有する点である。図7Cに示すように、2つの駆動コイルは、第1の駆動コイル303が第2の駆動コイル311の周囲に設けられるという二重構造である。ここで、第1の駆動コイル303は、第1のマグネット301の外周部を振動板304に投影した位置に設けられる。また、第2の駆動コイル311は、第1のマグネット301の内周部を振動板304に投影した位置に設けられる。換言すれば、半径が各マグネット301および302の外周半径とほぼ等しい第1の駆動コイル303が、振動板304の面上に配置される。また、半径が各マグネット301および302の内周半径とほぼ等しい第2の駆動コイル311が、振動板304の面上に配置される。また、第1の駆動コイル303の巻方向と第2の駆動コイル311の巻方向とは逆向きである。
以上のように構成された電気音響変換器について、その動作を説明する。各マグネット301および302と、各ヨーク309および310とによって磁場が形成される。この磁場は、実施の形態1と同様、振動板304の振動方向に垂直な磁束で構成される。このような磁場が生じる場合の振動板304の面上における中心軸307から径方向への距離と磁束密度との関係を図8に示す。各駆動コイル303および第2の駆動コイル311は、最も効率よく駆動力を得るために、図3に示す磁束密度分布の中で磁束密度が極値となる位置に配置される。すなわち、図8に示すように、各マグネット301および302の外縁を結ぶ線を含む位置に第1の駆動コイル303が配置される。また、各マグネット301および302の内縁を結ぶ線を含む位置に第2の駆動コイル311が配置される。このように配置された各駆動コイル303および311に交流電気信号が入力されると、各駆動コイル303および311に駆動力が発生する。この駆動力によって各駆動コイル303および311と接着している振動板304が振動し、音が放射される。なお、各駆動コイル303および311に流れる電流の方向は逆向きである。
実施の形態3においては、電気音響変換器は各ヨーク309および310を有する構成である。このような構成では、第1のマグネット301と第1のヨーク309とによって磁路が形成され、第2のマグネット302と第2のヨーク310とによって磁路が形成される。従って、第1のマグネット301から放射された磁束が第1のヨーク309によって磁気ギャップGに導かれ、第2のマグネット302から放射された磁束が第2のヨーク310によって磁気ギャップGに導かれる結果、磁気ギャップG内の磁束密度が高くなる。そのため、磁気ギャップG内において各駆動コイル303および311が設けられる位置の磁束密度も高くなるので、磁束密度に比例して各駆動コイル303および311に生じる駆動力が大きくなり、再生音圧を向上することができる。また、各ヨーク309および310を設けることによって、電気音響変換器の外部への漏れ磁束を抑制することができる。
以上のように、各マグネット301および302の周囲に各ヨーク309および310をそれぞれ設けることによって、各マグネット301および302からの磁束は、各ヨーク309および310に集束される。その結果、各駆動コイル303および311に生じる駆動力が大きくなる。さらに、磁気ギャップG内の位置の内、他の位置より大きな磁束密度が生じる位置に2つの駆動コイルを配置することによって、振動板304を振動させるためのトータルの駆動力を増加させることができる。また、2つの駆動コイルを用いることによって振動板304を複数箇所で駆動することになるので、振動時に発生する振動モードを制御しやすくなる。
なお、実施の形態3では第1のヨーク309の内周部と第1のマグネット301の外周部との間、および、第2のヨーク310の内周部と第2のマグネット302の外周部との間にスリットが設けられた。ここで、図7Aに示す各ヨーク309および310は、図9A〜Eに示すような形状および配置であってもよい。図9A〜Eは、図7Aに示す第2のヨーク310の変形例を示す図である。まず、図9Aは、図7Aに示す構成と同様の構成である。これに対して、電気音響変換器の外径を小さくすることや、振動板304の外周部分に設けられる断面が円弧形状の部分を拡げること等を目的として、図9Bに示す構成としてもよい。図9Bに示す構成は、スリットを設けず、第2のマグネット302の外周部と第2のヨーク310の内周部とを密着させる構成である。また、図9Cに示すように、リング形状を有するヨーク315を第2のマグネット302の側面のみに設けてもよいし、図9Dに示すように、ヨーク315を第2のマグネット302の側面に密着させてもよい。さらに、図9Eに示すように、円盤状のヨーク316を第2のマグネット302の底面部のみに配置してもよい。なお、各マグネット301および302の外形形状が直方体である場合には、各マグネット301および302の側面の周囲すべてにヨークが設けられる必要はなく、各マグネット301および302の側面の周囲の一部にヨークが設けられる構成であってもよい。また、図9A〜Eにおいては第2のヨーク310を例として説明したが、第1のヨーク309についても図9A〜Eと同様のバリエーションが考えられる。
なお、実施の形態3に示すように電気音響変換器がヨークを備える場合には、駆動コイルは、ヨークの外周よりも内側に配置されることが好ましい。すなわち、図7Aにおいて、駆動コイル303は、各マグネット301および302の外縁を結ぶ線を含む位置であって、かつ、各ヨーク309および310の外縁を結ぶ線よりも内側(中心軸307に近い側)に配置されればよい。
なお、実施の形態3に係る電気音響変換器は、2つの駆動コイル303および311を備える構成であったが、他の実施の形態においては、電気音響変換器は、第1の駆動コイル303または第2の駆動コイル311のいずれか一方のみを備える構成であってもよい。すなわち、実施の形態1に係る電気音響変換器に第1および第2のヨーク309および310を備える構成であってもよい。なお、マグネットの側面にヨークを配置しない場合(図9E参照)において、第2の駆動コイル311のみを備える構成とする場合には、マグネットの大きさをケーシングの内径まで大きくすることができる。
また、実施の形態3に係る電気音響変換器はヨークを備える構成であったが、ヨークを備えない構成であってもよい。すなわち、実施の形態1に係る電気音響変換器に第1の駆動コイル303および第2の駆動コイル311を備える構成であってもよい。この場合でも、振動板304を振動させるためのトータルの駆動力を増加させることができる。また、2つの駆動コイルを用いることによって振動板304を複数箇所で駆動することになるので、振動時に発生する振動モードをより制御しやすくなる。なお、各駆動コイルは磁束密度の絶対値が最大となる位置にそれぞれ設けられることが好ましい。ここで、振動板の面上における磁束の向きはマグネットの外縁と内縁との中心を境に変化する。具体的には、図2および図3に示す場合には、振動板の面上における磁束は、当該中心よりも外側では外側を向き、当該中心よりも内側では内側を向く。また、マグネットの着磁方向が図2および図3とは逆の場合には、振動板の面上における磁束は、当該中心よりも外側では内を向き、当該中心よりも内側では外側を向く。従って、巻方向が互いに逆である2つの駆動コイルを用いる場合には、外周側に配置されるコイルを当該中心よりも外側に配置し、内周側に配置されるコイルを当該中心よりも内側に配置するようにすればよい。
なお、実施の形態3では、接続されるヨークと筐体とを別部材としたが、磁性体材料を用いた一体部材としてもよい。これによって、部品点数を少なくすることができる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る実施形態について説明する。ここで、図10AおよびBは、実施の形態4に係る電気音響変換器の構成を示す図である。すなわち、図10Aは、電気音響変換器の断面図であり、図10Bは、電気音響変換器の斜視図である。図11A〜Cは、実施の形態4に係る電気音響変換器の構成に用いられるマグネット、駆動コイルおよび振動板を示す図である。すなわち、図11Aは、マグネットの斜視図であり、図11Bは、駆動コイルの平面図であり、図11Cは、振動板の平面図である。
図10Aは、図10Bに示すE−F断面の断面図である。図10Aにおいて、電気音響変換器は、第1のマグネット401と、第2のマグネット402と、第3のマグネット412と、第4のマグネット413と、第1の駆動コイル403と、第2の駆動コイル411と、振動板404と、筐体405および406とを備えている。なお、中心軸407は、図10Bに示すz軸に平行な直線であって電気音響変換器の中心を通る直線である。
実施の形態4に示す電気音響変換器が実施の形態1に示す電気音響変換器と異なる点は、その外形形状が直方体である点である。また、電気音響変換器の外形形状に応じて、振動板404、各駆動コイル403および411、ならびに各マグネット401、402、412および413(以下、「各マグネット401〜413」と記載する。)の形状が実施の形態3に示す各部材と異なっている。
図10Aおよび図10Bに示すように、筐体405は、1つの面が開口した直方体形状である。開口した面と向かい合う面には、中央に空気孔415が設けられ、空気孔415の両側に空気孔408および414が設けられる。空気孔408、414および415は、放音のために設けられる。なお、筐体406は筐体405と同様の構成であり、筐体406には空気孔416、417および418が設けられる。また、筐体405および406は互いの開口部が接合される。なお、筐体405および406は非磁性体であり、例えばPC(ポリカーボネイト)のような樹脂材料が用いられる。
図11Aに示すように、第1のマグネット401は、直方体形状を有している。図11Aにおいては第1のマグネット401のみを図示するが、他のマグネット402、412および413は第1のマグネット401と同じ形状である。また、各マグネット401〜413の着磁方向は、同じ方向である。図11Aにおいては、各マグネット401〜413は、図11Aに示すz軸方向に着磁されているものとする。なお、マグネットの各辺のうち最も長い辺の方向を長手方向と呼ぶ。図11Aにおいては、図11Aに示すx軸方向が長手方向である。
各マグネット401〜413は、長手方向が一致するように配置される。第1のマグネット401は、空気孔415と空気孔414との間に固定される。第2のマグネット402は、振動板404に関して第1のマグネット401と対向する位置に配置される。すなわち、第2のマグネット402は、空気孔416と空気孔417との間に配置される。第3のマグネット412は、空気孔415および408の間に配置される。第4のマグネット413は、振動板404に関して第3のマグネット412と対向する位置に配置される。また、第1および第3のマグネット401および412は、中心軸407に対して対称となるように、筐体405に固定される。これと同様に、第2および第4のマグネット402および413は、中心軸407に対して対称となるように、筐体406に固定される。
また、各マグネット401〜413は、着磁方向が振動板404の振動方向と平行な方向となるように配置される。具体的には、第1および第3のマグネット401および412の着磁方向が同じになるように配置され、第2および第4のマグネット402および413の着磁方向が同じになるように配置される。さらに、第1および第3のマグネット401および412の着磁方向と、第2および第4のマグネット402および413の着磁方向とが逆向きになるように配置される。例えば、第1および3のマグネット401および412が下向き(第1のマグネット401から第2のマグネット402への方向)の着磁であれば、第2および第4のマグネット402および413は上向き(第2のマグネット402から第1のマグネット401への方向)の着磁である(図10Aに示す矢印参照)。
以上のように、実施の形態4においては、実施の形態1における第1のマグネット101に代えて、2つのマグネット片である第1のマグネット401および第3のマグネット412が用いられる。また、実施の形態1における第2のマグネット102に代えて、2つのマグネット片である第2のマグネット402および第4のマグネット413が用いられる。実施の形態4においては、中心軸407に関して対向して配置される2つのマグネット片(第1のマグネット401および第3のマグネット412、あるいは、第2のマグネット402および第4のマグネット413)によって2つのマグネット片の間に空間が形成される。なお、これら2つのマグネット片を合わせて、「マグネット構造」と呼んでもよい。また、「マグネット構造」とは、実施の形態1における第1のマグネット101のように、1つのマグネットにより構成される構造を含む概念である。このように、2つのマグネット片の間に空間を形成する構成によっても、当該空間を有しない形状のマグネットと比べて、着磁方向に平行なマグネット断面における横方向に対する縦方向の長さの比率を大きくすることができ、マグネットの動作点を改善することができる。ここで、「当該空間を有しない形状のマグネット」としては、例えば、第1のマグネット401および第3のマグネット412を1つに結合した直方体のマグネットが考えられる。
図11Bに示すように、各駆動コイル403および411は、それぞれ矩形形状である。各駆動コイル403および411は、第1の駆動コイル403が第2の駆動コイル411の周囲に設けられるという二重構造である。各駆動コイル403および411は、その長手方向(長い方の辺の方向)が各マグネット401〜413の長手方向と一致するように、かつ、その中心が中心軸407と一致するように、振動板404上に配置されている。なお、各駆動コイル403および411は、接着剤によって振動板404と接着されている。
また、各駆動コイル403および411は、振動板404の面上において磁束密度の絶対値が最大となる位置に設けられる。具体的には、第1の駆動コイル403は、向かい合う2辺が、第1のマグネット401(または第3のマグネット412)の外側の辺を振動板404に投影した位置に配置される。ここで、「第1のマグネット401の外側の辺」とは、第1のマグネット401および中心軸407を含む断面において、中心軸から遠い側に位置する辺をいう。具体的には、図10Aにおいては、「第1のマグネット401の外側の辺」とは、辺420または辺421を指す。また、実施の形態4では、上記「向かい合う2辺」は、矩形の駆動コイル403の4辺の内、長い方の2辺である。なお、第2の駆動コイル411は、向かい合う2辺が、第1のマグネット401(または第3のマグネット412)の内側の辺を振動板404に投影した位置に配置される。
以上より、図10Aにおいて、第1の駆動コイル403の長辺の一方は、第1のマグネット401の外縁と第2のマグネット402の外縁とを結ぶ線上に設けられる。また、第1の駆動コイル403の長辺の他方は、第3のマグネット412の外縁と第4のマグネット413の外縁とを結んだ線上に設けられる。ここで、マグネットの外縁とは、中心軸407から遠い側に位置する辺(面)である。一方、図10Aにおいて、第2の駆動コイル411の長辺の一方は、第1のマグネット401の内縁と第2のマグネット402の内縁とを結ぶ線上に設けられる。また、第2の駆動コイル411の長辺の他方は、第3のマグネット412の内縁と第4のマグネット413の内縁とを結んだ線上に設けられる。ここで、マグネットの内縁とは、中心軸407から近い側に位置する辺(面)である。
図11Cに示すように、振動板404の外形形状は、楕円に近い形状である。また、図10Aに示すように、振動板404の第1の円弧部(中央部)404aおよび第2の円弧部404cの断面は円弧形状である。また、当該各円弧部404aおよび404cの間の部分404bは、断面が平坦である。各駆動コイル403および411は、当該部分404bに取り付けられる。また、第2の円弧部404cの外周側の周辺部404dの断面も部分404bと同様平坦である。
また、図10Aに示すように、振動板404の周辺部(外周部分)404dは、筐体405および406に挟まれることによって固定されている。振動板404の周辺部(外周部分)は、各駆動コイル403および411が第1のマグネット401および第2のマグネット402から等距離に位置するように、かつ、第3のマグネット412および第4のマグネット413から等距離に位置するように配置される。
以上のように構成された電気音響変換器について動作を説明する。各マグネット401〜413によって磁場が形成される。この磁場は、実施の形態1と同様、振動板404の振動方向に垂直な磁束で構成される。このような磁場において、各駆動コイル403および411は、上述したように、磁気ギャップG内において磁束密度の絶対値が最も大きくなる位置に配置される。そして、各駆動コイル403および411に交流電気信号が入力されると、駆動力が発生する。この駆動力によって各駆動コイル403および411と接着している振動板404が振動し、音が放射される。
以上のように、実施の形態4では、電気音響変換器の形状を直方体形状とすることができる。実施の形態4では、2組4個のマグネットで磁気回路を構成することによって、マグネットを薄型化することによって生じるマグネットの動作点の低下を抑えることができる。さらに、電気音響変換器を直方体形状とすることによって、携帯電話やPDA等の携帯情報端末へ電気音響変換器を取り付ける際のスペースファクターが改善される。
さらに、実施の形態4では、駆動コイルを2重構造とすることによって、振動板404を振動させるためのトータルの駆動力を増加させることができる。また、2つの駆動コイルを用いることによって振動板404を複数箇所で駆動することになるので、振動時に発生する振動モードをより制御しやすくなる。
なお、実施の形態4において、電気音響変換器は、実施の形態3のようにヨークをさらに備える構成であってもよい。具体的には、各マグネット401〜413の周囲にそれぞれヨークを設けるようにしてもよい。ヨークをさらに備えることによって、各マグネット401〜413と各ヨークとによって磁路が形成される。従って、実施の形態3と同様、磁気ギャップGにおいて高い磁束密度を得ることができる。なお、ヨークの形状は、前述した図9A〜Eに示す形状が考えられる。また、ヨークおよび筐体は別部材であってもよいし、磁性体材料を用いた一体部材としてもよい。
なお、実施の形態4に係る電気音響変換器は、第1および第2の駆動コイル403および411を備える構成であったが、他の実施の形態においては、電気音響変換器は、第1の駆動コイル403または第2の駆動コイル411のいずれか一方のみを備える構成であってもよい。
なお、実施の形態4では、振動板404の外形形状は楕円に近い形状であるが、矩形形状でもよい。さらに、中央部分404aや外周部分404cの断面形状は円弧形状であるが、最低共振周波数および最大振幅を満足するように、波形や、楕円、コーン形状等としてもよい。
なお、本実施の形態では2組4個のマグネットを設けたが、3組6個もしくはそれ以上のマグネットを用いてもよい。その場合、駆動コイルも同様に増やす必要がある。例えば3組6個のマグネットを用いる場合、駆動コイルは2つ必要となる。
(実施の形態5)
次に、本発明に係る第5の電気音響変換器について説明する。ここで、図12AおよびBは、実施の形態5に係る電気音響変換器の構成を示す図である。すなわち、図12Aは、電気音響変換器の断面図であり、図12Bは、電気音響変換器の斜視図である。
図12Aは、図12Bに示すG−H断面の断面図である。図12Aにおいて、電気音響変換器は、第1のマグネット501と、第2のマグネット502と、第3のマグネット512と、第4のマグネット513と、駆動コイル503と、振動板504と、筐体505および506とを備えている。なお、中心軸507は、筐体505および506ならびに駆動コイル503の中心を通る直線である。図12Aに示す電気音響変換器の構成は、以下に示す相違点を除いて実施の形態4に係る電気音響変換器の構成と同様である。
第1の相違点は、第1から第4のマグネット501、502、512および513(以下、「各マグネット501〜513」と記載する。)が配置される向きである。実施の形態5では、各マグネット501〜513は、図12AおよびBに示すy軸方向に着磁される。具体的には、各マグネット501〜513は、中心軸507に関して対向して配置されるマグネットと着磁方向が逆向きになるように配置される。すなわち、第1のマグネット501は、第3のマグネット512と着磁方向が逆になるように配置され、第2のマグネット502は、第4のマグネット513と着磁方向が逆になるように配置される。これは、駆動コイル503のうち、中心軸507に関して対向する両側の部分に同じ方向の駆動力を発生させるためである。また、各マグネット501〜513は、振動板504に関して対向して配置されるマグネットと着磁方向が同じ向きになるように配置される。すなわち、第1のマグネット501は、第2のマグネットと着磁方向が同じ向きになるように配置され、第3のマグネット512は、第4のマグネット513と着磁方向が同じ向きになるように配置される。以上より、図12Aでは、第1および第2のマグネット501および502の着磁方向が右向きに配置され、第3および第4のマグネット512および513の着磁方向が左向きに配置される。以上のように、実施の形態5における各マグネット501〜513の着磁方向は、実施の形態2と同様、振動板504の面に平行であって、駆動コイル503に流れる電流の方向と垂直な方向であることを要する。これによって、振動板504の面付近において振動板504の振動方向に垂直な磁束が生成される。
なお、実施の形態5において、各マグネット501〜513の着磁方向は、振動板504の振動方向に垂直な方向であればよい。図12AおよびBでは、各マグネット501〜513の着磁方向はy軸方向であったが、x軸方向であってもよい。ただし、駆動コイル503に生じる駆動力を大きくするためには、各マグネット501〜513の着磁方向はy軸方向(駆動コイル503の短い方の辺の方向)であることが好ましい。
第2の相違点は、空気孔509が筐体505の側面に設けられている点である。これによって、実施の形態4に係る電気音響変換器とは異なった向きで電気音響変換器を電子機器内に取り付けることができる。なお、筐体506に設けられる空気孔508は、筐体506の底面に設けられる。
以上のように構成された電気音響変換器について、その動作および効果を説明する。各マグネット501〜513によって駆動コイル503の付近には磁場が形成されるので、駆動コイル503に交流電気信号が入力されると駆動力が発生する。この駆動力によって駆動コイル503と接着している振動板504が振動することによって、音が放射される。
ここで、実施の形態5においては、各マグネット501〜513が図12AおよびBに示すy軸方向に着磁されている。このため、実施の形態2と同様、マグネットから放射された磁束は反発する結果、磁気ギャップ内は駆動コイル503の径方向の成分が支配的な磁場が形成される。従って、第1および第2のマグネット501および502の間の空間、および、第3および第4のマグネット512および523の間の空間において高い磁束密度が生じる。以上より、駆動コイル503の設置範囲を広くとることができるので、駆動コイル503の巻き数や長さ等を大きくすることができ、その結果駆動コイル503の駆動力を大きくすることができる。また、上記空間においてほぼ均一な磁束密度分布が形成されるので、駆動コイル503の位置に依存する振動方向の磁束密度変化が小さくなる。従って、組立時における音圧のばらつきを抑えることができる。さらに、駆動コイル503を設ける範囲を実施の形態4と比べて広くとれるために、駆動コイル503および振動板504の形状の自由度が大きくなる。
さらに、実施の形態5においても実施の形態4と同様、電気音響変換器が直方体形状を有するので、携帯電話やPDA等の携帯情報端末へ電気音響変換器を取り付ける際のスペースファクターを改善することができる。
なお、実施の形態5においても実施の形態4と同様、振動板504の外形形状は楕円に近い形状であるが、矩形形状でもよい。さらに、振動板504の一部の断面形状は円弧形状であるが、最低共振周波数および最大振幅を満足するように、波形や、楕円、コーン形状等としてもよい。
次に、以上に説明した実施の形態1〜5の変形例を説明する。上記実施の形態1〜5においては、駆動コイルは、従来の巻き線コイルが用いられ、また、振動板と別体のコイルであるとして説明した。これに対して、本変形例は、振動板および駆動コイルを一体化して形成する点が特徴である。
図13A〜Cは、実施の形態1〜5の変形例における振動板および駆動コイルを示す図である。すなわち、図13Aは、振動板および駆動コイルの平面図であり、図13Bおよび図13Cは、振動板および駆動コイルの断面図である。なお、図13Bは、図13Aに示すI−J断面の断面図であり、図13Cは、図13Bに示す円形部分の拡大図である。
図13A〜Cにおいて、振動板601と駆動コイル602とは一体的に形成される。振動板601は、円形形状を有している。従って、電気音響変換器を構成する他の要素は、実施の形態1〜3のいずれかの要素が用いられる。また、振動板601は、実施の形態1と同様フラットな形状をしている。なお、図13A〜Cでは、駆動コイル602は、内側のコイルと外側のコイルとの2つのコイルによって構成されるが、1つのコイルによって構成されてもよい。また、図13A〜Cでは、振動板601および駆動コイル602は円形形状であるが、これらは矩形や楕円形であってもよい。この場合、電気音響変換器を構成する他の要素は、実施の形態4および5のいずれかの要素が用いられる。
本変形例が実施の形態1〜5と異なる点は、駆動コイル602が振動板601と一体に形成される点である。振動板601と駆動コイル602とを一体的に形成するための手段の1つとして、エッチング法が挙げられる。以下に、エッチング方について説明する。まず、ポリイミド等の振動板基材上に銅材を接着剤でラミネートさせる。その上にフォトレジスト層を形成した後、露光・現像することによって、銅材上にエッチングレジストが形成される。次に、エッチングレジストの除去によって、振動板基材上にコイル配線が形成される。なお、振動板601の一方の面に駆動コイル602を形成してもよく、両面に形成してもよい。図13BおよびCでは、振動板601の両面に第1のコイル602aおよび第2のコイル602bが形成されている。つまり、図13A〜Cに示す駆動コイル602は、第1および第2のコイル602aおよび602bからなる2層の駆動コイルである。
以上のように、駆動コイル602と振動板601とを一体化することで、振動板が振動する際に駆動コイルに生じる応力を低減することができるので、駆動コイルの断線を防止することができ、電気音響変換器の信頼性を向上することができる。また、電気音響変換器の製作の際に振動板と駆動コイルとの接着工程やリード線の引き出し工程が不要となるので、製作が容易になる。さらに、駆動コイルのパターンが自由に設計可能となり、従来の巻き線コイルでは困難であった二重構造の駆動コイル(図13A参照)も、実現が容易である。
なお、駆動コイルと振動板とを一体化する手法は、エッチング法の他、アディティブ法を用いてもよい。また、本変形例では駆動コイルは2層構造であったが、さらに積層させた構造としてもよい。
次に、応用例として、上記実施の形態1〜5に示した電気音響変換器を電子機器の一例である携帯電話機に用いた場合の例を説明する。図14AおよびBは、実施の形態1〜5の応用例における携帯電話機の外観を示す図である。すなわち、図14Aは、携帯電話機の正面図であり、図14Bは、携帯電話機の部分破断図である。図15は、実施の形態1〜5の応用例における携帯電話機の概略構成を示すブロック図である。
図14AおよびBにおいて、携帯電話機は、携帯電話機の筐体71と、筐体71に設けられた音孔72と、実施の形態1〜5のいずれかに係る電気音響変換器73とを備えている。電気音響変換器73の空気孔は、筐体71の内部に設けられ、音孔72に対向するように設けられている。
図15において、携帯電話機は、アンテナ81と、送受信回路82と、呼出信号発生回路83と、上記電気音響変換器73と、マイクロホン84とを備えている。また、送受信回路82は、復調部821と、変調部822と、信号切替部823と、留守録音部824とを備えている。
アンテナ81は、最寄りの基地局から出力された電波を受信する。復調部821は、アンテナ81から入力された変調波を復号して受信信号に変換し、受信信号を信号切替部823に与える。信号切替部823は、受信信号の内容に応じて信号処理を切り換える回路である。すなわち、受信信号が呼出信号の場合、受信信号は呼出信号発生回路83に与えられ、受信信号が音声信号の場合、受信信号は電気音響変換器73に与えられ、受信信号が留守録音の音声信号の場合、受信信号は留守録音部824に与えられる。留守録音部824は例えば半導体メモリで構成される。電源オン時の留守録音メッセージは留守録音部824に記憶されるが、携帯電話機がサービスエリア外にある時や電源がオフ時には、留守録音メッセージは基地局の記憶装置に記憶される。呼出信号発生回路83は呼出信号を生成し、電気音響変換器73に与える。また、従来の携帯電話機と同様に、小型のマイクロホン84が設けられている。変調部822は、ダイヤル信号や、マイクロホン84で変換された音声信号を変調し、アンテナ81に出力する回路である。
以上のような構成の携帯電話機の動作を説明する。基地局から出力された電波はアンテナ81で受信され、復調部821でベースバンドの受信信号に復調される。信号切替部823は、着信信号から呼出信号を検出すると、着信を携帯電話機の使用者に知らせることを目的として、着信信号を呼出信号発生回路83に出力する。呼出信号発生回路83は、信号切替部823から着信信号を受けると、可聴帯域の純音またはそれらの複合音の信号である呼出信号を出力する。電気音響変換器73は、呼出信号を音声に変換し、呼び出し音として出力する。携帯電話機の音孔72を介して電気音響変換器73から出力される呼び出し音を聞くことによって、使用者は着信を知る。
使用者が受話状態に入ると、信号切替部823は受信信号をレベル調整した後、音声信号を電気音響変換器73に直接出力する。電気音響変換器73はレシーバまたはスピーカとして動作し、音声信号を再生する。また、使用者の音声は、マイクロホン84で収音され、電気信号に変換されて変調部822に入力される。電気信号に変換された音声信号は変調され、所定の搬送波に変換されてアンテナ81から出力される。
また、携帯電話機の使用者が電源をオンにして留守録音状態にセットした場合、送話内容は留守録音部824に記憶される。なお、携帯電話機の使用者が電源をオフにしている場合、送話内容は基地局に一時記憶される。使用者がキー操作による留守録音の再生依頼を行うと、信号切替部823は、再生依頼に応じて、留守録音部824または基地局から録音メッセージの音声信号を取得する。さらに、その音声信号を拡声レベルに調整し、電気音響変換器73に出力する。この時、電気音響変換器73はレシーバまたはスピーカとして動作し、メッセージを出力する。
なお、本応用例では、電気音響変換器73を直接筐体71に取り付けたが、携帯電話機に内蔵されている基板上に取り付け、ポートを介して筐体に接続してもよい。また、携帯電話機以外の他の電子機器に電気音響変換器73を取り付けた場合も同様の動作であり、同様の効果を得ることができる。電気音響変換器73は、携帯電話機の他、例えば、ポケットベルに搭載され、着信時におけるアラーム音、メロディ音や音声の再生に用いることができる。また、テレビに搭載され、音声や音楽を再生するために使用することができる。その他、電気音響変換器73は、PDA(personal digital assistants)、パソコン、カーナビ等の電子機器に用いることができる。以上のように、電気音響変換器73を電子機器に内蔵することで、アラーム音や音声等を再生できる電子機器を実現することができる。