【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透磁率を向上させ、保磁力を低減させることにより磁気特性を向上させた軟磁性材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気電子部品の高密度化および小型化が図られており、モータコアやトランスコアなどにおいて、より精密な制御を小電力で行えることが求められている。このため、これらの電気電子部品に使用される軟磁性材料であって、中高周波領域において優れた磁気的特性を有する軟磁性材料の開発が進められている。軟磁性材料が中高周波領域で優れた磁気的特性を有するためには、高い飽和磁束密度、高い透磁率および高い電気抵抗率を併せ持つ必要がある。
【0003】
軟磁性材料を交流磁場で使用した場合、鉄損と呼ばれるエネルギー損失が生じる。この鉄損は、主に低周波領域において発生するヒステリシス損と、主に高周波領域において発生する渦電流損とに大別される。ヒステリシス損とは、軟磁性材料の磁束密度を変化させるために必要なエネルギーによって生じるエネルギー損失をいう。たとえば軟磁性材料の圧縮成形時に歪、転位が生じるとヒステリシス損は増大する。また、渦電流損とは、粉末軟磁性材料の場合は主として軟磁性材料を構成する金属磁性粒子間を流れる渦電流によって生じるエネルギー損失をいう。軟磁性材料には、この鉄損の発生を小さくする磁気的特性が求められる。
【0004】
上記の磁気的特性を達成するため、たとえば、ボロシロキサン樹脂を主成分とする樹脂を磁性金属粉とともに圧縮成形することにより、樹脂で磁性金属粉を絶縁被覆した圧粉磁心を得る方法が提案されている(特許文献1)。この方法では、圧縮成形後に550℃以上で磁性金属粉の歪み取りのための熱処理を行なっている。一方、鉄を主成分とする軟磁性粉末とSiO2酸化物微粒子とを混合後、得られた混合粉末を成形プレスする方法も提案されている(特許文献2)。これにより、軟磁性粉末がSiO2酸化物微粒子を含む絶縁層で被膜され、その絶縁層を介して軟磁性粉末同士が接合された圧粉磁心が形成される。さらに成形プレスの後、軟磁性粉末内に生じている歪を開放することを目的として、その圧粉磁心を800℃以上1000℃以下の温度で焼鈍している。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−29114
【0006】
【特許文献2】
特開平9−180924
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示されている製造方法では、550℃以上で歪み取りのための焼鈍を行なっている。しかし、焼鈍時の温度が高すぎるために、ボロシロキサン樹脂を主成分とする樹脂で構成された絶縁被膜の一部が熱分解し、磁性金属粉に拡散する。したがって絶縁被膜の一部が消失したり、磁性金属粉に拡散した絶縁被膜の熱分解物が磁性金属粉中の不純物となり、圧粉磁心の磁気的特性を低下させる原因となる。
【0008】
また、特許文献2に開示されている圧粉磁心の製造方法においても、800℃以上1000℃以下の温度で歪取り用の焼鈍を行なっている。焼鈍時の温度が高すぎるために、SiO2酸化物微粒子が鉄を主成分とする軟磁性粉末に拡散する。SiO2酸化物微粒子の拡散によって、SiO2酸化物微粒子を含む絶縁層が消失したり、軟磁性粉末に含まれる不純物が増加する。これにより、圧粉磁心の磁気的特性が劣化するという問題が発生する。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決し、高透磁率と低保磁力を確保し、優れた磁気的特性を有する軟磁性材料の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る軟磁性材料の製造方法は、金属磁性粒子とその金属磁性粒子の表面を取り囲むリン酸塩を含む絶縁被膜とを有する複数の複合磁性粒子を成形して成形体を形成する工程と、成形体に第1の熱処理を行なう工程と、第1の熱処理後に温度400℃以上500℃以下で1時間以上第2の熱処理を行なう工程とを含む。第1の熱処理工程の後、さらに第2の熱処理工程を設けることにより、金属磁性粒子内の歪、転位をより完全に近く解消することができる。また、熱処理工程を2回設けることにより、400℃以上500℃以下という比較的低い温度で熱処理を行なうことが可能となるため、リン酸塩を含む絶縁被膜を用いた場合にも、絶縁被膜の熱分解が生じにくく、渦電流の増大を効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明の製造方法で金属磁性粒子の絶縁被覆に用いる被膜はリン酸塩を含む。リン酸塩を含む絶縁被膜を用いた場合、400℃以上500℃以下の熱処理温度において渦電流の増大を抑制する効果は、他の塩や酸化物を用いる場合と比べて著しく高い。
【0012】
第1の熱処理における処理温度は、250℃以上500℃以下であることが好ましい。250℃以上500℃以下であれば、複合磁性粒子内の歪、転位を効果的に解消でき、かつ絶縁被膜の熱分解を防ぐことができる。
【0013】
第2の熱処理における処理温度は、400℃以上500℃以下であり、より好ましくは450℃以上500℃以下である。処理温度が400℃より低い場合、複合磁性粒子内の歪、転位を十分に解消して良好な透磁率を確保することができず、処理温度が500℃より高い場合、絶縁被膜の熱分解による渦電流の増大が生じる。
【0014】
第2の熱処理における処理時間は1時間以上であり、さらに好ましくは1時間以上100時間以下、最も好ましくは5時間以上100時間以下である。処理時間が1時間より短い場合、複合磁性粒子内の歪、転位を十分に解消することができず、良好な透磁率を確保できない。一方処理時間は100時間以上でもよいが、100時間以下とした場合には、より良好な生産効率を確保できる。
【0015】
本発明は、第1の熱処理工程と、第2の熱処理工程とを必須に含むが、3つ以上の熱処理工程を含むものであってもよい。
【0016】
成形体を形成する工程は、好ましくは複数の複合磁性粒子が有機物で接合された成形体を形成する工程を含む。このように構成された軟磁性材料の製造方法によれば、複数の複合磁性粒子の各々の間には有機物が介在している。そこで有機物は、潤滑剤としての機能を発揮する。このため、成形体を形成する工程において絶縁被膜が破壊されることを抑制できる。これにより、所望の磁気的特性を有する軟磁性材料を形成することができる。
【0017】
有機物は、熱可塑性樹脂または非熱可塑性樹脂が特に好ましい。ここで非熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂に似た特性を有するが、融点が熱分解温度以下の温度で存在しない樹脂をいう。
【0018】
一方、成形体を形成する工程は、複数の複合磁性粒子と不可避的不純物とのみからなる成形体を形成する工程を含んでもよい。ここで不可避的不純物とは、可能な限り精製してもなお複合磁性粒子中に含まれる微量の不純物を指し、たとえばCu、Mn、P等の金属不純物、H、C、Si、N、O、S等の非金属不純物やその化合物がある。複合磁性粒子と不可避的不純物のみからなる軟磁性材料を用いた場合、成形体の単位体積に占める複合磁性粒子の割合が高くなり、小さい外部磁界から効率良く大きい磁束密度を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
発明者等は、軟磁性材料に求められる磁気的特性を実現するために、高い透磁率と低い保磁力を備えた軟磁性材料の製造方法を完成させるに至った。以下に本発明の好ましい実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
本発明に係る軟磁性材料の製造方法は、リン酸塩を含む絶縁性被膜層を有する複合磁性粒子を成形して得られた成形体にまず第1の熱処理を行ない、次いで400℃以上500℃以下で1時間以上第2の熱処理を行なうことにより達成される。
【0020】
成形体の熱処理、特に第2の熱処理を所定の温度で行なうことによって、成形体の歪および転位を取り除くことができる。これにより、保磁力を小さくするとともに、透磁率を大きくすることによって、軟磁性材料の鉄損を低減させることができる。加えて、高温の熱処理による効果によって、軟磁性材料の破壊強度を向上させることもできる。
【0021】
また、成形体を形成する工程は、好ましくは複数の複合磁性粒子が有機物で接合された成形体を形成する工程を含み、まず金属磁性粒子と絶縁被膜とを有する複合磁性粒子を得た後、有機物と混合する方法等を用いることができる。
【0022】
なお、平均粒径とは、ふるい法によって測定した粒径のヒストグラム中、粒径の小さいほうからの質量の和が総質量の50%に達する粒子の粒径、つまり50%粒径Dをいう。
【0023】
また、リン酸塩を含む被膜は絶縁層として作用して渦電流損を抑制する。リン酸塩としては、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム等が挙げられる。
【0024】
複合磁性粒子は、有機物と混合して混合粉末とする。なお、混合方法に特に制限はなく、たとえばメカニカルアロイング法、振動ボールミル、遊星ボールミル、メカノフュージョン、共沈法、化学気相蒸着法(CVD法)、物理気相蒸着法(PVD法)、めっき法、スパッタリング法、蒸着法またはゾル−ゲル法などのいずれを使用することも可能である。
【0025】
有機物には、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドまたはポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂、全芳香族ポリエステルまたは全芳香族ポリイミドなどの非熱可塑性樹脂を用いることができる。このような有機物を設けることによって、複数の複合磁性粒子の各々の間で有機物が潤滑剤として機能する。これにより、成形工程時において、絶縁被膜が破壊されることを抑制できる。
【0026】
混合粉末の成形工程においては、温間成形法、金型潤滑法等の公知の方法を用いることにより、成形体の高密度化、占積率の向上を実現させ、磁気的特性を向上させることができる。温間成形時の粉末温度は100〜180℃が好ましい。
【0027】
次に、得られた成形体に対し、たとえば温度250℃以上500℃以下で第1の熱処理を行なう。加圧成形の工程を経た成形体の内部には、歪および転位が多数発生している。この歪および転位を取り除くことと、成形体に含まれる有機物を軟化させて、複数の複合磁性粒子間に有機物を入り込ませることとを目的として、成形体に対して熱処理を行なう。この雰囲気も大気であってもよいが、好ましくは、不活性ガス、減圧ガスとする。不活性ガスとしては窒素ガスが製造コスト上有利であるが、アルゴンガス、ヘリウムガスでも良い。
【0028】
本発明に係る製造方法では、上記の熱処理後に残留している歪、転位をさらに取り除くために、成形体に対して400℃以上500℃以下で第2の熱処理を行なう。雰囲気は大気であってもよいが、好ましくは、不活性ガス、減圧ガスとする。不活性ガスとしては窒素ガスが製造コスト上有利であるが、アルゴンガス、ヘリウムガスでも良い。
【0029】
第2の熱処理の処理時間は、1時間以上、特に1時間以上100時間以下とすることが好ましい。この場合、熱処理によって成形体から歪および転位を取り除くとともに、軟磁性材料の生産効率を向上させることができる。
【0030】
以上に説明した工程によって軟磁性材料が完成する。実施の形態1においては、軟磁性材料が有機物によって接合されているため物理的強度に優れ、成形時の絶縁被膜の破壊を防ぐことができる。
【0031】
実施の形態1に記載の軟磁性材料の製造方法では、複合磁性粒子と有機物とを混合する工程を行なったが、本発明の別の局面に従えば、複合磁性粒子と不可避的不純物とのみからなる成形体を形成する工程を含み、複合磁性粒子を形成後、その複合磁性粒子を加圧成形することによって成形体を形成する製造方法をも採用することができる。この場合、得られる軟磁性材料の単位体積に占める複合磁性粒子の割合が高いため、小さい外部磁界で高い磁束密度を効率良く得ることができる。
【0032】
なお、実施の形態1に記載の製造方法によって得られた軟磁性材料を、チョークコイル、スイッチング電源素子および磁気ヘッドなどの電子部品、各種モータ部品、自動車用ソレノイド、各種磁気センサならびに各種電磁弁などに使用することができる。
【0033】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示す。
【0034】
鉄系粉末99.9質量部とポリフェニレンサルファイド0.1質量部とを、ボールミルを用いて36rpmで2時間混合し、得られた混合粉末を金型に入れて圧縮成形した。成形方法としては、窒素ガス雰囲気中、面圧9t/cm2で、密度が7.5g/cm3となるようプレスし、「プレス体」サンプルを得た。なお、鉄系粉末としては、リンと鉄とを含む金属酸化物被膜を有するヘガネス社製の商品名「ソマロイ500」を使用した。この粉末は、鉄粉の平均粒径が150μm以下であり、リン酸化合物被膜の平均厚みは20nmである。またポリフェニレンサルファイドとしては、ガラス転移点が約85℃、融点が約285℃である大日本インキ化学工業(株)製の商品名「FZ−2200」を用いた。
【0035】
「プレス体」に、窒素ガス雰囲気中、温度300℃で1H(1H=1時間、以下同様)第1の熱処理を行なって焼成し、「焼成後」サンプルを得た。さらに、「焼成後」サンプルに400℃×10H、400℃×100H、450℃×10H、450℃×100H、500℃×10H、500℃×100Hの6条件で第2の熱処理を行ない、「400℃10H」、「400℃100H」、「450℃10H」、「450℃100H」、「500℃10H」、「500℃100H」の6サンプルを得た。
【0036】
各々の軟磁性材料サンプルの保磁力、最大透磁率を常温にて測定した。図1は実施例に係る軟磁性材料の保磁力を示す図、図2は実施例に係る軟磁性材料の最大透磁率を示す図である。測定用サンプルは内径25mm、外径35mm、厚み5mmのリング片の試験片とし、磁場を印加するコイルの1次巻き数を300回、2次巻き数を20回として、2次コイルの出力を測定した。
【0037】
50Hz〜100000Hzの範囲で周波数を変えた100(エルステッド)(=8.0×103(A/m))の交流磁場を常温で印加し、各周波数における透磁率μAを測定した。得られたμAの値を、交流磁場の周波数が50Hzのときの透磁率μBを1とした相対値で表した。図3は実施例に係る軟磁性材料の透磁率(μA/μB)を示す図である。また、交流磁場の周波数を50Hzから高周波数側に変化させた場合に、透磁率μAが透磁率μBの5%減となる周波数(Hz)を求めた。図4は実施例に係る軟磁性材料において透磁率μAが透磁率μBの5%減となる周波数を示す図である。
【0038】
図1および図2から分かるように、本発明に係る製造方法により2回の熱処理を行なったサンプルは、6つの熱処理条件すべてにおいて、「焼成後」と比較して低い保磁力と高い最大透磁率を有する。なお、図3、図4から分かるように、本発明に係る製造方法により2回の熱処理を行なったサンプルは、印加する交流磁場の周波数を高くした際の透磁率の低下挙動自体、および50Hzにおける透磁率の5%減の透磁率となる周波数には「焼成後」と比べて優位性は見られない。しかし、本発明に係る軟磁性材料において、熱処理による効果は最大透磁率の著しい向上という点で十分得られており、優れた磁気的性能を有していることが確認できる。
【0039】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、低い保磁力と高い透磁率を示し、優れた磁気的特性を有する軟磁性材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る軟磁性材料の保磁力を示す図である。
【図2】実施例に係る軟磁性材料の最大透磁率を示す図である。
【図3】実施例に係る軟磁性材料の透磁率(μA/μB)を示す図である。
【図4】実施例に係る軟磁性材料において透磁率μAが透磁率μBの5%減となる周波数を示す図である。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a method for manufacturing a soft magnetic material having improved magnetic properties by improving magnetic permeability and reducing coercive force.
[0002]
[Prior art]
In recent years, the density and size of electric and electronic components have been increased, and it has been demanded that more precise control can be performed with low power in motor cores and transformer cores. For this reason, the development of soft magnetic materials used in these electric and electronic components, which have excellent magnetic properties in the mid-high frequency range, is being promoted. In order for a soft magnetic material to have excellent magnetic properties in the mid-high frequency range, it is necessary to have both high saturation magnetic flux density, high magnetic permeability, and high electric resistivity.
[0003]
When a soft magnetic material is used in an alternating magnetic field, energy loss called iron loss occurs. The iron loss is roughly classified into a hysteresis loss mainly occurring in a low frequency region and an eddy current loss mainly occurring in a high frequency region. The hysteresis loss refers to an energy loss caused by energy required to change the magnetic flux density of the soft magnetic material. For example, if distortion or dislocation occurs during compression molding of a soft magnetic material, the hysteresis loss increases. The eddy current loss refers to energy loss caused by eddy current flowing mainly between metal magnetic particles constituting the soft magnetic material in the case of a powder soft magnetic material. Soft magnetic materials are required to have magnetic properties to reduce the occurrence of iron loss.
[0004]
In order to achieve the above magnetic characteristics, for example, a method has been proposed in which a resin having a borosiloxane resin as a main component is compression-molded together with a magnetic metal powder to obtain a dust core insulated with the magnetic metal powder with the resin. (Patent Document 1). In this method, heat treatment is performed at 550 ° C. or higher after compression molding to remove distortion of the magnetic metal powder. On the other hand, a method has been proposed in which after soft magnetic powder containing iron as a main component and SiO 2 oxide fine particles are mixed, the resulting mixed powder is molded and pressed (Patent Document 2). Thus, the soft magnetic powder is coated with the insulating layer containing the SiO 2 oxide fine particles, and a dust core in which the soft magnetic powders are bonded to each other via the insulating layer is formed. Further, after the forming press, the dust core is annealed at a temperature of 800 ° C. or more and 1000 ° C. or less for the purpose of releasing the strain generated in the soft magnetic powder.
[0005]
[Patent Document 1]
JP-A-6-29114
[0006]
[Patent Document 2]
JP-A-9-180924
[0007]
[Problems to be solved by the invention]
In the manufacturing method disclosed in Patent Literature 1, annealing is performed at 550 ° C. or higher to remove strain. However, since the temperature at the time of annealing is too high, a part of the insulating coating composed of a resin containing a borosiloxane resin as a main component thermally decomposes and diffuses into the magnetic metal powder. Therefore, a part of the insulating coating disappears, or a thermal decomposition product of the insulating coating diffused into the magnetic metal powder becomes an impurity in the magnetic metal powder, which causes a reduction in the magnetic characteristics of the dust core.
[0008]
Also, in the method for manufacturing a dust core disclosed in Patent Document 2, annealing for strain relief is performed at a temperature of 800 ° C. or more and 1000 ° C. or less. Since the temperature at the time of annealing is too high, the SiO 2 oxide fine particles diffuse into the soft magnetic powder containing iron as a main component. By diffusion of SiO 2 oxide fine particles, an insulating layer is lost or containing SiO 2 oxide fine particles, the impurities contained in the soft magnetic powder increases. This causes a problem that the magnetic characteristics of the dust core are deteriorated.
[0009]
An object of the present invention is to solve the above problems and to provide a method for producing a soft magnetic material having high magnetic permeability and low coercive force and excellent magnetic properties.
[0010]
[Means for Solving the Problems]
The method for producing a soft magnetic material according to the present invention includes a step of molding a plurality of composite magnetic particles having metal magnetic particles and an insulating coating containing phosphate surrounding the surface of the metal magnetic particles to form a molded body. And a step of performing a first heat treatment on the compact and a step of performing a second heat treatment at a temperature of 400 ° C. or more and 500 ° C. or less for 1 hour or more after the first heat treatment. By providing a second heat treatment step after the first heat treatment step, strains and dislocations in the metal magnetic particles can be almost completely eliminated. Further, by providing the heat treatment step twice, heat treatment can be performed at a relatively low temperature of 400 ° C. or more and 500 ° C. or less. Therefore, even when an insulating film containing phosphate is used, Thermal decomposition does not easily occur, and an increase in eddy current can be effectively suppressed.
[0011]
The coating used for the insulating coating of the metal magnetic particles in the production method of the present invention contains a phosphate. When an insulating coating containing phosphate is used, the effect of suppressing an increase in eddy current at a heat treatment temperature of 400 ° C. or more and 500 ° C. or less is significantly higher than when other salts or oxides are used.
[0012]
The processing temperature in the first heat treatment is preferably from 250 ° C to 500 ° C. When the temperature is 250 ° C. or more and 500 ° C. or less, distortion and dislocation in the composite magnetic particles can be effectively eliminated, and thermal decomposition of the insulating film can be prevented.
[0013]
The processing temperature in the second heat treatment is from 400 ° C to 500 ° C, and more preferably from 450 ° C to 500 ° C. When the processing temperature is lower than 400 ° C., distortion and dislocation in the composite magnetic particles cannot be sufficiently eliminated and a good magnetic permeability cannot be ensured. When the processing temperature is higher than 500 ° C., thermal insulation of the insulating coating is caused. An increase in eddy currents occurs.
[0014]
The processing time in the second heat treatment is 1 hour or more, more preferably 1 hour to 100 hours, and most preferably 5 hours to 100 hours. If the treatment time is shorter than 1 hour, distortion and dislocation in the composite magnetic particles cannot be sufficiently eliminated, and good magnetic permeability cannot be secured. On the other hand, the processing time may be 100 hours or more, but when it is 100 hours or less, better production efficiency can be secured.
[0015]
The present invention essentially includes a first heat treatment step and a second heat treatment step, but may include three or more heat treatment steps.
[0016]
The step of forming a formed body preferably includes a step of forming a formed body in which a plurality of composite magnetic particles are joined with an organic substance. According to the method of manufacturing a soft magnetic material configured as described above, an organic substance is interposed between each of the plurality of composite magnetic particles. Therefore, the organic substance exhibits a function as a lubricant. For this reason, it is possible to prevent the insulating coating from being destroyed in the step of forming the molded body. Thereby, a soft magnetic material having desired magnetic properties can be formed.
[0017]
The organic substance is particularly preferably a thermoplastic resin or a non-thermoplastic resin. Here, the non-thermoplastic resin refers to a resin having characteristics similar to a thermoplastic resin, but having no melting point at a temperature equal to or lower than the thermal decomposition temperature.
[0018]
On the other hand, the step of forming a molded body may include a step of forming a molded body composed of only a plurality of composite magnetic particles and unavoidable impurities. Here, the unavoidable impurities refer to trace impurities contained in the composite magnetic particles even if they are purified as much as possible. For example, metal impurities such as Cu, Mn, and P, H, C, Si, N, O, There are nonmetallic impurities such as S and compounds thereof. When a soft magnetic material consisting only of the composite magnetic particles and the unavoidable impurities is used, the ratio of the composite magnetic particles in the unit volume of the molded body increases, and a large magnetic flux density can be efficiently obtained from a small external magnetic field.
[0019]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
The present inventors have completed a method for manufacturing a soft magnetic material having high magnetic permeability and low coercive force in order to realize magnetic properties required for the soft magnetic material. Hereinafter, preferred embodiments of the present invention will be described.
(Embodiment 1)
In the method for producing a soft magnetic material according to the present invention, a first heat treatment is first performed on a molded body obtained by molding a composite magnetic particle having an insulating coating layer containing a phosphate, and then 400 ° C. or more and 500 ° C. This is achieved by performing the second heat treatment for at least one hour below.
[0020]
By performing the heat treatment of the molded body, particularly the second heat treatment at a predetermined temperature, it is possible to remove distortion and dislocation of the molded body. This makes it possible to reduce the coercive force and increase the magnetic permeability, thereby reducing the iron loss of the soft magnetic material. In addition, the breaking strength of the soft magnetic material can be improved by the effect of the high-temperature heat treatment.
[0021]
In addition, the step of forming a molded body preferably includes a step of forming a molded body in which a plurality of composite magnetic particles are joined by an organic substance, and after first obtaining composite magnetic particles having metal magnetic particles and an insulating coating, A method of mixing with an organic substance or the like can be used.
[0022]
In addition, the average particle diameter refers to a particle diameter of a particle whose sum of masses from the smaller particle diameter reaches 50% of the total mass, that is, a 50% particle diameter D in a histogram of particle diameters measured by a sieving method. .
[0023]
The coating containing phosphate acts as an insulating layer to suppress eddy current loss. Examples of the phosphate include zinc phosphate and calcium phosphate.
[0024]
The composite magnetic particles are mixed with an organic substance to form a mixed powder. There is no particular limitation on the mixing method. For example, mechanical alloying, vibration ball mill, planetary ball mill, mechanofusion, coprecipitation, chemical vapor deposition (CVD), physical vapor deposition (PVD), plating Any of a sputtering method, a sputtering method, an evaporation method, and a sol-gel method can be used.
[0025]
Organic materials include thermoplastic polyimide, thermoplastic polyamide, thermoplastic polyamide-imide, polyphenylene sulfide, polyamide imide, polyether sulfone, thermoplastic resin such as polyether imide or polyether ether ketone, wholly aromatic polyester or wholly aromatic polyimide For example, a non-thermoplastic resin can be used. By providing such an organic substance, the organic substance functions as a lubricant between each of the plurality of composite magnetic particles. Thereby, it can suppress that an insulating film is destroyed at the time of a shaping | molding process.
[0026]
In the molding process of the mixed powder, by using a known method such as a warm compaction method and a mold lubrication method, it is possible to realize a high density of the compact, an improvement in the space factor, and an improvement in magnetic properties. Can be. The powder temperature during warm compaction is preferably from 100 to 180 ° C.
[0027]
Next, a first heat treatment is performed on the obtained molded body, for example, at a temperature of 250 ° C. or more and 500 ° C. or less. A large number of strains and dislocations are generated in the inside of the compact after the pressure molding step. A heat treatment is performed on the molded body for the purpose of removing the strain and dislocation and softening the organic matter contained in the molded body so that the organic matter enters between the plurality of composite magnetic particles. This atmosphere may be the air, but is preferably an inert gas or a reduced pressure gas. As the inert gas, nitrogen gas is advantageous in terms of production cost, but argon gas and helium gas may be used.
[0028]
In the manufacturing method according to the present invention, a second heat treatment is performed on the compact at 400 ° C. or more and 500 ° C. or less in order to further remove strains and dislocations remaining after the heat treatment. The atmosphere may be air, but preferably an inert gas or a reduced pressure gas. As the inert gas, nitrogen gas is advantageous in terms of production cost, but argon gas and helium gas may be used.
[0029]
It is preferable that the treatment time of the second heat treatment be 1 hour or more, particularly 1 hour or more and 100 hours or less. In this case, strain and dislocation can be removed from the compact by heat treatment, and the production efficiency of the soft magnetic material can be improved.
[0030]
The soft magnetic material is completed by the steps described above. In the first embodiment, since the soft magnetic material is joined by an organic substance, it has excellent physical strength and can prevent the insulating coating from being broken during molding.
[0031]
In the method for manufacturing a soft magnetic material according to the first embodiment, the step of mixing the composite magnetic particles and the organic substance is performed. However, according to another aspect of the present invention, only the composite magnetic particles and the unavoidable impurities are used. The method may further include a step of forming a molded body, and after forming the composite magnetic particles, a method of forming the molded body by press-molding the composite magnetic particles may be employed. In this case, since the ratio of the composite magnetic particles to the unit volume of the obtained soft magnetic material is high, a high magnetic flux density can be efficiently obtained with a small external magnetic field.
[0032]
The soft magnetic material obtained by the manufacturing method described in Embodiment 1 is used for electronic components such as choke coils, switching power supply elements and magnetic heads, various motor components, automotive solenoids, various magnetic sensors, various solenoid valves, and the like. Can be used for
[0033]
【Example】
Hereinafter, examples of the present invention will be described.
[0034]
99.9 parts by mass of the iron-based powder and 0.1 parts by mass of polyphenylene sulfide were mixed at 36 rpm for 2 hours using a ball mill, and the obtained mixed powder was put into a mold and compression-molded. As a forming method, a sample was pressed in a nitrogen gas atmosphere at a surface pressure of 9 t / cm 2 and a density of 7.5 g / cm 3 to obtain a “pressed body” sample. As the iron-based powder, “Somaroy 500” manufactured by Höganäs having a metal oxide film containing phosphorus and iron was used. In this powder, the average particle size of the iron powder is 150 μm or less, and the average thickness of the phosphate compound film is 20 nm. As the polyphenylene sulfide, "FZ-2200" manufactured by Dainippon Ink and Chemicals, having a glass transition point of about 85 ° C and a melting point of about 285 ° C, was used.
[0035]
The “pressed body” was subjected to a first heat treatment (1H = 1 hour, the same applies hereinafter) at a temperature of 300 ° C. in a nitrogen gas atmosphere and fired to obtain a “after firing” sample. Further, a second heat treatment is performed on the “after baking” sample under six conditions of 400 ° C. × 10 H, 400 ° C. × 100 H, 450 ° C. × 10 H, 450 ° C. × 100 H, 500 ° C. × 10 H, and 500 ° C. × 100 H, 6 ° C. 10 ° C., 400 ° C. 100 H, 450 ° C. 10 H, 450 ° C. 100 H, 500 ° C. 10 H, and 500 ° C. 100 H were obtained.
[0036]
The coercive force and the maximum magnetic permeability of each soft magnetic material sample were measured at room temperature. FIG. 1 is a diagram illustrating the coercive force of the soft magnetic material according to the example, and FIG. 2 is a diagram illustrating the maximum magnetic permeability of the soft magnetic material according to the example. The measurement sample was a test piece of a ring piece having an inner diameter of 25 mm, an outer diameter of 35 mm, and a thickness of 5 mm. The primary winding number of the coil to which a magnetic field was applied was 300 times, and the secondary winding number was 20 times. It was measured.
[0037]
An alternating magnetic field of 100 (Oersted) (= 8.0 × 10 3 (A / m)) with a frequency changed in the range of 50 Hz to 100,000 Hz was applied at room temperature, and the magnetic permeability μA at each frequency was measured. The obtained value of μA was expressed as a relative value where the magnetic permeability μB when the frequency of the AC magnetic field was 50 Hz was 1. FIG. 3 is a diagram showing the magnetic permeability (μA / μB) of the soft magnetic material according to the example. Further, when the frequency of the AC magnetic field was changed from 50 Hz to the high frequency side, a frequency (Hz) at which the magnetic permeability μA was reduced by 5% of the magnetic permeability μB was obtained. FIG. 4 is a diagram showing a frequency at which the magnetic permeability μA is reduced by 5% of the magnetic permeability μB in the soft magnetic material according to the example.
[0038]
As can be seen from FIGS. 1 and 2, the sample subjected to the two heat treatments by the manufacturing method according to the present invention has a lower coercive force and a higher maximum magnetic permeability as compared to “after firing” under all six heat treatment conditions. Having. As can be seen from FIGS. 3 and 4, the sample subjected to the two heat treatments by the manufacturing method according to the present invention has the magnetic permeability decreasing behavior itself when the frequency of the applied AC magnetic field is increased, and the sample at 50 Hz. There is no superiority in the frequency at which the magnetic permeability decreases by 5% as compared with “after firing”. However, in the soft magnetic material according to the present invention, the effect of the heat treatment is sufficiently obtained in that the maximum magnetic permeability is significantly improved, and it can be confirmed that the soft magnetic material has excellent magnetic performance.
[0039]
The embodiments and examples disclosed this time are to be considered in all respects as illustrative and not restrictive. The scope of the present invention is defined by the terms of the claims, rather than the description above, and is intended to include any modifications within the scope and meaning equivalent to the terms of the claims.
[0040]
【The invention's effect】
According to the present invention, a soft magnetic material having a low coercive force and a high magnetic permeability and having excellent magnetic properties can be obtained.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a diagram showing a coercive force of a soft magnetic material according to an example.
FIG. 2 is a diagram showing the maximum magnetic permeability of a soft magnetic material according to an example.
FIG. 3 is a diagram showing the magnetic permeability (μA / μB) of a soft magnetic material according to an example.
FIG. 4 is a diagram showing frequencies at which the magnetic permeability μA decreases by 5% of the magnetic permeability μB in the soft magnetic material according to the example.