JP2004362110A - 伝達特性の同定方法またはその同定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】すくなくとも1つ以上の予め定めた伝達特性モデルの係数を推定し、この伝達特性モデルの推定された係数を基にして伝達特性の最適な構造と係数を進化的なアルゴリズムで推定する際の初期値を決定する。
前記伝達特性の最適な構造と係数を進化的なアルゴリズムで推定する際の初期値を、最小二乗法で決定する。
前記対象は少なくとも電動機と負荷機械で構成し、当該対象への入力は前記電動機へのトルク指令または速度指令または位置指令であり、対象の出力は前記電動機または負荷機械に結合している検出器から出力される位置情報または速度情報である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、機械システムや電気回路網など、伝達要素が組み合わされた対象の伝達特性を進化的なアルゴリズムにより同定する伝達特性の同定方法またはその同定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械システムや電気回路網などのように、伝達要素が組み合わされて対象が構成されている場合には、この対象の入力と出力を基にして、伝達関数などの伝達特性を表すモデルの係数を、従来は最小二乗法などによって推定していた。しかしながら近年では、当該対象の構造を事前に知ることができない場合でも、進化的なアルゴリズムを用いることにより、モデルの構造の探索や係数パラメータの同定などを効率良く行うことが可能になってきている。この進化的なアルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムで代表される確率的な探索法の一手法であり、生物の進化過程をモデル化したものである。
【0003】
図5は一般的な遺伝的アルゴリズムの処理を示したフローチャートである。この図5において、操作するのはビット列で表現される染色体で構成された個体の集合であって、この初期集団作成(処理2)の段階では、染色体のビット列の値はランダムに生成される。適応評価(判断1)の段階では、この個体集合の中に終了条件を満たす解が含まれているか,あるいは一定の条件を満たしているときに、遺伝的アルゴリズムの世代(すなわち計算回数)が所定数に達していることを条件にして探索を終了させるが、これらの条件を満たしていないときは選択(処理3)の段階へ進む。選択の段階では個体集合中の各個体について適応度を求め、この適応度に基づいて次の世代に残す個体を決定する。交叉(処理4)の段階では、個体集合内の個体をランダムに2個ずつ組み合わせ、ある確率で2つの個体の遺伝子列を部分的に交換することにより、染色体の構造を受け継いだ新しい個体を作る。突然変異(処理5)の段階では、染色体の一部がある確率で変化するものである。このような構成により、交叉と突然変異を繰り返すことにより染色体を変化させ、適応評価と選択により適応度が低い個体は順次淘汰される仕組みにより、大域的な空間でも最適解に到達することができる。
【0004】
図6は遺伝的アルゴリズムを利用して伝達特性を同定する従来の伝達特性同定装置のブロック図であり、図7は遺伝的アルゴリズムにおける染色体の構成の一例を示したブロック図である。個体における染色体は、下記の数式1に示す伝達関数の係数を、任意のビットのコードに変換し、すべての係数をつなぎ合わせたビット列として用いる。
【0005】
【数1】
図6に図示の従来の伝達特性同定装置は、同定する対象20,応答変換部21,評価部22および進化処理部23で構成している。進化処理部23は図5で既述の選択(処理3)と交叉(処理4)と突然変異(処理5)を実効する場である。応答変換部21と評価部22とは同じ図5で既述の適応評価(判断1)に相当し、応答変換部21は対象20の出力とすべての伝達関数の出力とを比較して、それぞれの適応度を算出する。
【0006】
このように構成することで、世代の回数または集団すべての適応度の平均値を最適化の終了条件にすることにより、適応度の低い個体を順次淘汰していけば、対象20と伝達関数の出力量の適応度が高くなる。最適化の終了後に、最も適応度の高い染色体を伝達関数に変換すれば、伝達特性を同定することになる。なお、対象20の入力と出力はメモリに蓄えられ、演算は計算機で実現することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら図6で既述の従来例では、初期集団の生成の仕方によっては、要求される仕様まで適応度を収束させるのに長い時間を必要とする不具合を生じることがあるし、世代数が少ない場合は、局所最適解に落ちたまま遺伝的アルゴリズムの計算が終了してしまうような恐れもある。
そこでこの発明の目的は、要求仕様まで適応度を収束させる時間を短縮させ、且つ世代数が少ない場合に局所最適解に落ちたまま遺伝的アルゴリズムの計算が終了するのを回避することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、この発明の伝達特性の同定方法またはその同定装置は、
すくなくとも1つ以上の予め定めた伝達特性モデルの係数を推定し、この伝達特性モデルの推定された係数を基にして伝達特性の最適な構造と係数を進化的なアルゴリズムで推定する際の初期値を決定する。
前記伝達特性の最適な構造と係数を進化的なアルゴリズムで推定する際の初期値を、最小二乗法で決定する。
【0009】
前記対象は少なくとも電動機と負荷機械で構成し、当該対象への入力は前記電動機へのトルク指令または速度指令または位置指令であり、対象の出力は前記電動機または負荷機械に結合している検出器から出力される位置情報または速度情報である。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1実施例である遺伝的アルゴリズムの処理を表したフローチャートであるが、この図1に図示の適応評価(判断1),選択(処理3),交叉(処理4)および突然変異(処理5)の各段階の名称・用途・機能は、図5で既述の一般的な遺伝的アルゴリズムの処理を示したフローチャートと同じであるから、これらの説明は省略する。
図1に図示の第1実施例フローチャートにおいて、伝達関数モデル作成(処理11)の段階では対象に対してユーザが予測する範囲で下記の数式2乃至数式4に示すような少なくとも1つ以上の伝達関数モデルの構造を決定し、その範囲で任意の数の伝達関数モデルを作成する。
【0011】
【数2】
【0012】
【数3】
【0013】
【数4】
次いで伝達関数モデルの係数推定(処理12)の段階では、予め準備した伝達関数モデルの係数K,a,bを、例えば最小二乗法などにより推定する。次の染色体作成(処理13)の段階では、推定された係数により構成された伝達関数を、従来例と同様にコード化してビット列に繋いで染色体とする。
図2は本発明の第1実施例における染色体のビット列を表したブロック図である。前述の図1に図示の処理13の段階で作成された染色体に関しては、初期集団としてそれぞれの係数が意味する値を中心に染色体を生成する。よって、例えばこの図2を参照し、係数が8ビットにコード化されて染色体が構成されている場合は、その他の染色体を下位4ビットの範囲で集団の数だけランダムに振り分けてからコード化し、初期集団を作成するのが初期集団作成(処理2)の段階である。これ以降は適応評価(判断1),選択(処理3),交叉(処理4)および突然変異(処理5)の各段階を繰り返すことで、適応度の低い個体を順次淘汰させ、対象と伝達関数の出力量の適応度を高めて伝達特性を同定する。
【0014】
図3は本発明の第2実施例を表したブロック図であるが、この図3に図示の対象20,応答変換部21,評価部22および進化処理部23の名称・用途・機能は、図6で既述の従来例と同じであるから、同じ部分の説明は省略する。
この第2実施例における初期推定部25は図1で既述の処理11〜処理13に対応しており、対象20の入力と出力から伝達関数モデルの作成とこの伝達関数モデルの係数の推定と染色体の作成とを行う。
図4は同定の対象が電動機と負荷機械で構成されている機械システムの場合の構成図であって、機械システム30はトルク制御器31,電力変換器32,電動機33ならびに負荷機械34で構成している。この機械システム30への入力はトルク指令であり、トルク制御器31は電動機33のトルクを入力に追従するように電力変換器32を制御する。電動機33には負荷機械34が結合されており、速度検出器35が当該機械システム30の出力として電動機33の回転速度を検出している。このような構成にすることで、機械システム30の入力であるトルク指令と出力である速度検出値とを伝達特性同定装置36へ入力すれば、当該機械システム30の伝達特性を同定することができる。
【0015】
【発明の効果】
従来は、初期集団において、ビット列で表現される染色体をランダムに配置していたのに対して、本発明では任意に設定した伝達特性モデルの係数を推定し、初期集団生成の際に、それぞれの個体は推定された伝達特性モデルに相当する染色体を中心に配置するため、、ユーザが同定対象の構造をある程度把握できるならば、且つ伝達特性モデルを的確に設定できるならば、従来に比べて伝達特性の同定を高速で行うことができる効果が得られる。更に、本発明における伝達特性は、伝達関数の他に状態方程式や、零点・極・ゲインの組み合わせでも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例である遺伝的アルゴリズムの処理を表したフローチャート
【図2】本発明の第1実施例における染色体のビット列を表したブロック図
【図3】本発明の第2実施例を表したブロック図
【図4】同定の対象が電動機と負荷機械で構成されている機械システムの場合の構成図
【図5】一般的な遺伝的アルゴリズムの処理を示したフローチャート
【図6】遺伝的アルゴリズムを利用して伝達特性を同定する従来の伝達特性同定装置のブロック図
【図7】遺伝的アルゴリズムにおける染色体の構成の一例を示したブロック図
【符号の説明】
1 判断
2〜5 処理
11〜13 処理
20 対象
21 応答変換部
22 評価部
23 進化処理部
25 初期推定部
30 機械システム
31 トルク検出器
32 電力変換器
33 電動機
34 負荷機械
35 速度検出器
36 伝達特性同定装置
Claims (5)
- 対象への入力と出力から伝達特性を同定する伝達特性の同定方法において、
すくなくとも1つ以上の予め定めた伝達特性モデルの係数を推定し、この伝達特性モデルの推定された係数を基にして伝達特性の最適な構造と係数を進化的なアルゴリズムで推定する際の初期値を決定することを特徴とする伝達特性の同定方法。 - 請求項1に記載の伝達特性の同定方法において、
前記伝達特性の最適な構造と係数を進化的なアルゴリズムで推定する際の初期値を、最小二乗法で決定することを特徴とする伝達特性の同定方法。 - 請求項1または請求項2に記載の伝達特性の同定方法において、
前記対象は少なくとも電動機と負荷機械で構成し、当該対象への入力は前記電動機へのトルク指令または速度指令または位置指令であり、対象の出力は前記電動機または負荷機械に結合している検出器から出力される位置情報または速度情報であることを特徴とする伝達特性の同定方法。 - 対象の入力と出力から伝達特性を同定するにあたって、染色体の選択と交叉と突然変異を実行する進化処理部と、この進化処理部での処理結果からすべての個体の染色体を伝達関数に変換すると共に、前記対象への入力から伝達関数の出力を算出する応答変換部と、この応答変換部から得られるすべての伝達関数と前記対象の出力とを比較してその適合度を算出した結果を前記進化処理部へ与える評価部とを備えている伝達特性の同定装置において、
予め定めた少なくとも1つ以上の伝達関数モデルならびに前記対象の入力出力から推定した当該伝達関数モデルの係数とにより得られる伝達関数モデルをコード化して得られる染色体から初期集団を生成する初期推定部を備えることを特徴とする伝達特性の同定装置。 - 請求項4に記載の伝達特性の同定装置において、
前記初期推定部での前記伝達関数モデルの係数は、最小二乗法により推定することを特徴とする伝達特性の同定装置。
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JP2003157744A JP2004362110A (ja) | 2003-06-03 | 2003-06-03 | 伝達特性の同定方法またはその同定装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2006117839A1 (ja) * | 2005-04-26 | 2006-11-09 | Japan Gain The Summit Co., Ltd. | 遺伝的アルゴリズムによる非線形データの同定方法、非線形データ記録方法、非線形データ記録装置、非線形データ再生装置及びプログラム |
CN107367938A (zh) * | 2017-08-10 | 2017-11-21 | 上海理工大学 | 一种用于机械臂时间最优轨迹规划方法 |
CN108614591A (zh) * | 2018-04-27 | 2018-10-02 | 宁波工程学院 | 一种卷绕张力控制系统辨识方法 |
-
2003
- 2003-06-03 JP JP2003157744A patent/JP2004362110A/ja active Pending
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