JP2004357863A - 食器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】天然繊維3のリッチな繊維層5aと、その表裏両側に設けられた、天然繊維のプアな又はこれを含まない樹脂層5bとからなる複合樹脂組成物で食器を製作する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、碗、鉢、皿(トレーも含む)等の食器に関するもので、特に家庭用、あるいは学校・病院等の給食用食器として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
学校給食や病院給食等の大量の食器が必要とされる現場では、アルミ等の金属製軽量食器が多用されているが、この種の食器は変形し易く、洗浄性に難がある等の問題点がある。この点から、近年では、給食用食器として、この種の欠点の少ない強化磁器食器を採用する傾向にある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−263680号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、強化磁器食器は一般に重いために搬送性が悪く、かつ衝突時の衝撃も大きいことから破損率も高いという欠点がある。また、破損時や不要となった際の廃棄処分が難しく、環境負荷の面で問題が多い。
【0005】
そこで、本発明は、軽量で耐久性が高く、かつ廃棄処分時の環境負荷も小さい食器の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的の達成のため、本発明では食器を、51重量%以上の天然繊維を包含する複合樹脂組成物で形成した。
【0007】
この食器は樹脂組成物で形成されているから軽量であり、かつ天然繊維が強化材として機能するから、食器として十分な強度を備え、耐衝撃性に富むものとなる。また強化材として天然繊維を使用するから、ガラス繊維等を使用する場合に比べ、廃棄処分時の環境負荷も小さい。一般に天然繊維はポーラスであり、かつ繊維間の空隙に含まれる空気で成形後も多数の気泡が形成されるため、断熱性を高めることができ、高い保温性を有する食器を提供することができる。また、この断熱性から、食器に盛った食品温度に応じて食器(特に縁部分)が極端に熱くなったり冷たくなることもなく、持ち運びも容易となる。
【0008】
この食器においては、厚さ方向に、天然繊維のリッチな繊維層と、樹脂を主体とし、天然繊維のプアな又はこれを含まない樹脂層とを設け、内外面のうち、少なくとも内面を前記樹脂層で被覆するのが好ましい。
【0009】
内外面のうち、内面は食器に盛られた食品と接する面である。この内面に天然繊維のリッチな繊維層が露出していると、水分が繊維自身あるいは繊維間の空隙に吸い込まれたり、あるいは母材から天然繊維分が脱落して食品中に混入するおそれがあり、衛生性等の面で問題を生じる。これに対し、この内面を樹脂層で覆えば、水分の出入を遮断してこの種の問題を回避することができる。また、内面のみならず、外面も樹脂層で被覆することもでき、これによって例えば使用者が食器を持った際の触感を改善することができる。このように繊維層の厚さ方向両側を樹脂層で覆うことにより、片側のみに樹脂層を形成する場合に比べて断熱性をさらに高めることができる。
【0010】
一般に繊維層では、これに含まれる天然繊維分に由来した色合いが外観に現れるため、食器としての見栄えが悪くなることが懸念される。この場合、食器の内面(さらには外面)を樹脂層で覆えば、この樹脂層に色合い・風合い等の外観改善策を講じることにより、食器全体の見栄えを改善することができる。外観改善策の例としては、例えば樹脂層を着色したり、あるいは樹脂層に表面装飾処理を施すことが考えられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明にかかる食器の断面およびその拡大図を示す。図示のようにこの食器1は、天然繊維3を包含した複合樹脂組成物で形成される。図示例の食器1は、その厚さ方向において、天然繊維3がリッチな繊維層5aと、これよりも天然繊維がプアな若しくは天然繊維を含まない樹脂層5bとの積層構造をなし、繊維層5aの内外両側が樹脂層5bで覆われている。なお、図示は省略するが、図示例の食器1では、その周縁部も樹脂層5bで覆われている。
【0013】
繊維層5aは、多数の天然繊維を、繊維間に空隙を残してバインダで結着することにより構成される。天然繊維としては、長繊維同士が複雑に絡み合った綿状のものを使用するのが成形性や断熱性を考慮すると望ましいが、これらが特に問題とならない限り、ばらばらになった短繊維状のものを使用し、バインダと共に混合してもよい。
【0014】
天然繊維の種類は、複合樹脂組成物の強化材として使用可能である限り特に問わず、例えば竹繊維、麻繊維(ジュート等)、ヤシ繊維等が使用可能である。この中でも爆砕処理によって得られた竹繊維は、ジュート繊維等に比べ、ヤング率が熱影響を受けにくいという特徴を有するので、例えば給食用食器のように食器洗い機で長時間高温に晒される用途においては特に好ましい。ここで「爆砕」は、高温高圧水蒸気下に対象物質を一定時間保持した後、圧力を瞬時に解放することにより物質成分を分解する手段をいう。なお、天然繊維として、一種類の繊維を単独で使用する他、必要に応じて二種以上の繊維を混合して使用することもできる。
【0015】
一方、樹脂層5bは樹脂を主体とするもので、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用途や製造方法に応じて選択使用される。この樹脂層5bによって繊維層5aが密封され、成形後は繊維層5aに含まれる空気が気泡となる。さらなる環境負荷の低減のため、樹脂として生分解性樹脂を使用することもできる。
【0016】
なお、図面では、理解の容易化のため、繊維層5aと樹脂層5bとを直線的に明瞭に区分しているが、実際にはこのように明確に区画されることは少なく、一般にその境界は不明瞭である。
【0017】
上述のように繊維層5aでは、天然繊維自体がポーラスであり、かつ繊維間には多くの空気(気泡)が存在している。そのため、繊維層5aでは高い断熱効果が得られる。従って、熱いものは冷めないように、冷たいものは温まらないように超時間保温可能な食器が得られる。この断熱効果は、特に図示例のように繊維層5aを厚さ方向の中間部分に配置する(繊維層5aの内外両側に樹脂層5bを配置する)ことでさらに向上させることができる。
【0018】
また、天然繊維は強化材としても機能するから、食器の強度、特に耐衝撃性を向上させることができる。その一方、天然繊維を使用することから、ガラス繊維などの不燃繊維で強化する場合と異なり、焼却しても食器全体を燃焼させることができ、その廃棄処分も容易となって、低環境負荷型の食器を提供することができる。天然繊維の配合量を全体の51重量%以上とすることにより、低環境負荷となる他、樹脂成分が適量となって廃棄物が固形燃料として適当なカロリーを有するようになるので、燃焼炉の損傷を抑えて廃棄物からのエネルギー回収が可能となる。固形燃料としての有用性、さらには成形性を考慮すると天然繊維の配合量は80重量%以下とするのが望ましい。
【0019】
ところで、上記構成においては、樹脂層5bが通常は透明であることから、繊維層5aの外観が外部から視認可能となる。従って、天然繊維の種類によっては、天然繊維固有の色合いによって食器としての見栄えが悪くなることも起こり得るが、この不具合は樹脂層5bを着色したり、あるいは樹脂層5bに表面装飾処理を施すことによって解消することができる。着色方法としては、樹脂自体に顔料を練りこんで色づけする方法が好ましいが、その他にも成形後の染色や塗装によって着色することもできる。学校給食用として使用する場合、学年ごとに色分けすることにより枚数管理も容易なものとなる。表面装飾処理の具体例としては、印刷、ホットスタンプ、フィルムやシートの接着等の手段が考えられる。
【0020】
以上に述べた食器1は、例えば以下に例示する方法で製造することができる。
【0021】
第一の方法としてホットプレス法がある。すなわち、図2に示すように、先ず天然繊維を少量のバインダ、例えばPP等の熱可塑性樹脂繊維と混合し、綿状に絡み合わせた天然繊維ウェブ7を製作する。バインダは天然繊維同士を結着してその定形性を確保するために添加される。バインダが少なすぎると定形性が確保されず、多すぎると繊維層5aの空隙容積が減少して断熱性に悪影響を与えるので、バインダ配合量は天然繊維ウェブ7の5〜30重量%程度が望ましい。次にこの天然繊維ウェブ7の表裏両面に熱可塑性樹脂繊維からなるウェブ9を積層し、この積層体をニードルパンチ等の手段で仮止めした後、型に入れて所定形状にホットプレス成形する。
【0022】
第二の方法として、RI(レジンインジェクション成形)もしくはRTM(レジントランスファ成形)が考えられる。これは、図3に示すように、適当なバインダで結着した天然繊維ウェブ7を型に入れた後、型内にゲート11から熱硬化樹脂を充填して硬化させるものである。
【0023】
第三の方法として、射出成形が考えられる。これは、図4に示すように、型内に二種類のゲート11a、11bを設け、キャビティの中央部に突出したゲート11aから天然繊維3と熱可塑性樹脂の混合物を供給すると共に、型の成形面に開口したゲート11bから熱可塑性樹脂のみを供給し、型内にてこれらを硬化させる方法である。天然繊維3を含む原料樹脂として、予め天然繊維3を含む形でペレット化した樹脂を使用することもできる。
【0024】
これらの成形工程においては、天然繊維を使用する関係上、天然繊維の含有水分による型表面の発錆が懸念されるところであるが、何れの方法でも天然繊維と型の表面との間には樹脂層5bを形成する樹脂が介在するので、水分が型表面と直接接触することはなく、従って型表面の発錆も回避することができる。
【0025】
なお、上記何れの成形方法においても、成形品表面の仕上がり状態が不十分な場合、真空成形や圧空成形等の手段で食器の表面形状に対応した形状の樹脂フィルムを成形し、これを成形品表面に溶着してもよい。これによって滑らかな表面が得られ、かつ溶着した樹脂フィルムによって確実に樹脂層5bを形成することができる。
【0026】
以上の説明では、食器1の全体を樹脂層5bで覆う場合を例示したが、樹脂層5bは食器1表面に部分的に形成し、一部では繊維層5aを露出させることもできる。この場合、例えば食器1に盛られた食品との接触側の面(内面1a)に繊維層5aが露出していると、天然繊維3自体の気孔や繊維間の空隙に水分が取り込まれ、衛生上問題を生じるので、少なくとも内面1aは樹脂層5bで被覆するのが望ましい。食器1の外面1bにも樹脂層5bを形成すれば、使用者が食器を持った際の触感を改善することができる。
【0027】
また、図1では、樹脂層5bが天然繊維3を含まない層として描かれているが、必ずしも天然繊維3を全く含まない層とする必要はなく、繊維層5aの繊維量よりも少ない範囲で天然繊維3を含ませることもできる。この時、一部の天然繊維3が樹脂層5bの表面(内面1a)に露出することとなるが、例えば天然繊維として竹繊維を使用すると、その抗菌作用により、樹脂層5b表面に露出した竹繊維が雑菌の繁殖を抑制するので、衛生管理上都合が良い。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、軽量で十分な強度を備える食器を安価に製造することができる。この食器は廃棄時の環境負荷も低く、環境保全に寄与することができる。また、天然繊維の有する断熱性により食器の熱伝導率を下げることができ、高い保温性を持つ食器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる食器の断面図および一部拡大断面図である。
【図2】本発明にかかる食器の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明にかかる食器の他の製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明にかかる食器の他の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
1 食器
1a 内面
3 天然繊維
5a 繊維層
5b 樹脂層
7 天然繊維ウェブ
9 樹脂繊維ウェブ
11a ゲート
11b ゲート
Claims (4)
- 51重量%以上の天然繊維を包含する複合樹脂組成物で形成したことを特徴とする食器。
- 厚さ方向に、天然繊維のリッチな繊維層と、樹脂を主体とし、天然繊維のプアな又はこれを含まない樹脂層とを備え、内外面のうち、少なくとも内面が前記樹脂層で覆われている請求項1記載の食器。
- 前記樹脂層を着色した請求項2記載の食器。
- 前記樹脂層に、表面装飾処理を施した請求項2記載の食器。
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