JP2004357706A - 酵素活性検出用基板及びそれを用いた酵素活性の検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の酵素活性検出用基板は、基板と、前記基板に直接結合した、又は、前記基板に一端が固定化された第1化合物を介して前記基板に結合した第1蛍光基と、前記第1蛍光基と酵素によって切断されるペプチド結合で結合した第2化合物と、を備える。
【選択図】図1
Description
例えば、(特許文献1)には、「タンパク質分解酵素の1種であるカスパーゼが特異的に切断する基質ペプチドの両端を、蛍光共鳴エネルギー移動が起こる蛍光基で修飾した蛍光プローブ」が記載されている。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、溶液中に入れた蛍光プローブの基質ペプチドが酵素によって切断された結果、基質ペプチドの両端の蛍光基が蛍光共鳴エネルギーを起こし蛍光波長や蛍光強度が変化するので、これを測定することによって酵素活性を検出するものである。酵素活性の測定としては、蛍光測定用マイクロプレートに形成された開口部を有するセルに検体溶液を注入し、プレートリーダ上で蛍光を同時並行測定することにより高速測定を行う方法がある。この方法に用いる蛍光測定用マイクロプレートのセルの開口部の開口面積は、溶液を注入できるだけの十分な大きさに形成する必要がある。近年の医学的分野や研究的分野の発展に伴って、研究効率等を高めるために複数の酵素の活性を可能な限り高速で、かつ少量のサンプルで測定する必要性が増しており、蛍光測定用マイクロプレートのセルサイズを可能な限り小さくするとともにセルの数を増やす必要性が増している。しかしながら、原理的に検体溶液のセルサイズに限界があり、現行では96穴等のミリメートルサイズのセルを有するマイクロプレート上での測定が可能であるにすぎないという課題を有していた。
(2)そのため、蛍光測定を行う際にはマイクロプレートの交換に時間を要し、測定効率を高めることができず測定に時間を要するという課題を有していた。
また、本発明は、微量の検体溶液でも酵素活性の検出を行うことができ、また検出感度を高くできるとともに測定時間を短縮化することができ作業性を高め測定効率を高めることができ、さらに種類の異なるペプチド等の各々に蛍光基が結合した酵素活性検出用基板を用いることで複数の酵素を含む検体溶液の酵素活性を短時間で測定できる酵素活性の検出方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に記載の酵素活性検出用基板は、基板と、前記基板に直接結合した、又は、前記基板に一端が固定化された第1化合物を介して前記基板に結合した第1蛍光基と、前記第1蛍光基と酵素によって切断されるペプチド結合で結合した第2化合物と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)基板に結合した第1蛍光基と、第1蛍光基に酵素によって切断されるペプチド結合で結合した第2化合物とを備えているので、酵素と反応させてペプチド結合の切断が起こると第2化合物が遊離される。第2化合物が遊離した第1蛍光基の蛍光波長又は所定の波長における蛍光強度は第2化合物とペプチド結合した第1蛍光基とは異なるので、蛍光強度等の変化を指標として酵素活性を検出することができる。
(2)基板に蛍光基が結合しているので、酵素を含む極微量の検体溶液を接触させ基板の蛍光強度等を測定するだけで酵素活性を検出することができ、酵素活性を検出できる検出部の集積度を飛躍的に高めることができる。
(3)酵素を含む極微量の検体溶液を接触させるだけで酵素活性を検出することができるので、測定の際に多量の検体溶液を必要とせず、微量の検体溶液でも酵素活性の検出を行うことができる。
第1化合物や第2化合物は、C末端のアミノ酸を基板上に固定しペプチドをC末端から伸長していく固相法等の通常のペプチド合成法を用いて合成することができる。また、目的とするアミノ酸配列のC末端側からN末端側へ逐次伸長していく逐次伸長法や、複数の短いペプチド断片を合成しペプチド断片間のカップリングにより伸長させる断片縮合法等を用いることができる。また、ペプチド合成機を用いて9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸やt−ブチルオキシカルボニル(Boc)アミノ酸等を導入して合成することもできる。さらに、プロテアーゼを用いてペプチド結合を生成したり、遺伝子工学を利用して合成することもできる。
縮合反応を行う前に、公知の手段により、アミノ酸やペプチド中の反応に関与しないカルボキシル基,アミノ基等を保護したり、また反応に関与するカルボキシル基,アミノ基を活性化することもできる。
第1蛍光基と結合する第2化合物のアミノ酸は、酵素によってC末端側のペプチド結合が選択的に切断されるものが用いられる。これにより、第1蛍光基と結合していた第2化合物を遊離させて第1蛍光基の特定波長領域における蛍光強度を変化させることができるからである。
また、第2化合物を所定の長さ(例えば15Å程度)以上のペプチド鎖で形成することにより、個々のアミノ酸に対する基質特異性が高くなく、むしろ比較的長いペプチド鎖を切断作用に必要とするエラスターゼ等の酵素の検出もできるようにすることができ、検出できる酵素の種類を増やすことができる。
この構成により、請求項1に記載の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第3化合物又は第4化合物と結合し基板に結合した第2蛍光基と、第3化合物又は第4化合物と酵素によって切断されるペプチド結合で結合した第5化合物と、第5化合物に結合し第2蛍光基と蛍光共鳴エネルギー移動がみられる第3蛍光基と、を備えているので、酵素によってペプチド結合が切断されると第2蛍光基と第3蛍光基との距離が離れることにより蛍光共鳴エネルギー移動が起こらなくなり、第2蛍光基(又は第3蛍光基)からの蛍光スペクトルから第3蛍光基(又は第2蛍光基)からの蛍光スペクトルへのスペクトル変化を酵素活性の測定指標にすることができ、これにより、蛍光強度等の変化を指標として酵素活性を検出することができる。
(2)第2蛍光基と第3蛍光基を選択することにより、第2蛍光基の蛍光波長を可視部領域に設定することが可能になるので、市販のCCDカメラ等の可視光検出装置を用いて測定することが可能になり汎用性に優れる。
(3)第5化合物を所定の長さ(例えば15Å程度)以上のペプチド鎖で形成することにより、個々のアミノ酸に対する基質特異性が高くなく、むしろ比較的長いペプチド鎖を切断作用に必要とするエラスターゼ等の酵素の検出もできるようにすることができ、検出できる酵素の種類を増やすことができるとともに検出感度を高めることができる。
これらのドナーやアクセプターのいずれが第2蛍光基になっても第3蛍光基になっても構わない。第2蛍光基にスペクトル変化が生じれば酵素活性の測定指標にすることができるからである。
この構成によって、請求項1又は請求項2に記載の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第6化合物を所定の長さのペプチド等で形成することにより、基板と酵素作用点(第7化合物と第8化合物との間のペプチド結合)との距離を適正化して、基板の影響を受けずに酵素を作用させることができ酵素活性をより正確に検出することができ検出感度を高め、さらに、個々のアミノ酸に対する基質特異性が高くなく、むしろ比較的長いペプチド鎖を切断作用に必要とするエラスターゼ等の酵素の検出もできるようにすることができ、検出できる酵素の種類を増やすことができる。
この構成によって、請求項2又は3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第4化合物又は第7化合物が第2蛍光基又は第4蛍光基と酵素によって切断されるペプチド結合で結合しているので、第4化合物と第5化合物等は検体溶液内の酵素で切断されないようなアミノ酸で配列させることができ設計の自由度を高めることができる。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第2化合物、第5化合物等の末端基や、第3化合物の側鎖に導入された第2蛍光基がアセチル化されているので、N末端のペプチド結合に作用するアミノペプチダーゼ等のエキソペプチダーゼの活性を著しく低下させることができ、検体溶液中にこれらの酵素が含まれている場合でも基質特異性の高いエンドペプチダーゼ等の酵素活性を正確に検出することができる。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)酵素を含む極微量の検体溶液を基板に接触させた後、基板の蛍光強度等を測定するだけで酵素活性を検出することができるので、測定時間を短縮化することができ作業性を高め測定効率を高めることができる。
(2)酵素を含む極微量の検体溶液を接触させるだけで酵素活性を検出することができるので、測定の際に多量の検体溶液を必要とせず、微量の検体溶液でも酵素活性の検出を行うことができる。
(3)蛍光測定によって酵素活性を検出するので、検出感度と測定精度を高めることができる。
(4)種類の異なるペプチド等の各々に蛍光基が結合した酵素活性検出用基板を用い、イメージセンサ等で広範囲の画像解析を行うことにより、複数の酵素を含む検体溶液の酵素活性を短時間で網羅的に測定し解析することができ測定効率を飛躍的に高めることができる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)第2化合物が遊離した第1蛍光基の蛍光波長又は所定の波長における蛍光強度は第2化合物とペプチド結合した第1蛍光基とは異なるので、蛍光強度等の変化を指標として酵素活性を検出することができる汎用性に優れた酵素活性検出用基板を提供することができる。
(2)基板に蛍光基が結合しているので、酵素を含む極微量の検体溶液を接触させ基板の蛍光強度等を測定するだけで酵素活性を検出することができ、検出部の集積度を飛躍的に高めることができ、検体溶液を注入するためのセル等を形成することなく第1蛍光基を結合させただけの平板状等で、例えば縦2cm横3cmの大きさの基板上に10000個以上の検出部を有する蛍光測定用マイクロプレートを実現することができる。
(3)酵素を含む極微量の検体溶液を接触させるだけで酵素活性を検出することができるので、測定の際に多量の検体溶液を必要とせず、微量の検体溶液でも酵素活性の検出を行うことができ操作性に優れた酵素活性検出用基板を提供することができる。
(1)酵素によってペプチド結合が切断されると第2蛍光基と第3蛍光基との距離が離れることにより蛍光共鳴エネルギー移動が起こらなくなり、第2蛍光基(又は第3蛍光基)からの蛍光スペクトルから第3蛍光基(又は第2蛍光基)からの蛍光スペクトルへのスペクトル変化を酵素活性の測定指標にすることができ、これにより、蛍光強度等の変化を指標として酵素活性を検出することができる汎用性に優れた酵素活性検出用基板を提供することができる。
(2)第2蛍光基と第3蛍光基を選択することにより、第2蛍光基の蛍光波長を可視部領域に設定することが可能になるので、市販のCCDカメラ等の可視光検出装置を用いて測定することが可能になり汎用性に優れた酵素活性検出用基板を提供することができる。
(3)第5化合物を所定の長さ(例えば15Å程度)以上のペプチド鎖で形成することにより、個々のアミノ酸に対する基質特異性が高くなく、むしろ比較的長いペプチド鎖を切断作用に必要とするエラスターゼ等の酵素の検出もできるようにすることができ、検出できる酵素の種類を増やすことができるとともに検出感度を高めることができる酵素活性検出用基板を提供することができる。
(1)基板と酵素作用点との距離を適正化して、基板の影響を受けずに酵素を作用させることができ酵素活性をより正確に検出することができ検出感度を高め、さらに、個々のアミノ酸に対する基質特異性が高くなく、むしろ比較的長いペプチド鎖を切断作用に必要とするエラスターゼ等の酵素の検出もできるようにすることができ、検出できる酵素の種類を増やすことができる酵素活性検出用基板を提供することができる。
(1)第4化合物と第5化合物等は酵素特異性を有さないように配列させることができ設計の自由度を高めることができる酵素活性検出用基板を提供することができる。
(1)N末端のペプチド結合に作用するアミノペプチダーゼ等のエキソペプチダーゼの活性を著しく低下させることができ、検体溶液中にこれらの酵素が含まれている場合でも基質特異性の高いエンドペプチダーゼ等の酵素活性を正確に検出することができる検出精度に優れた酵素活性検出用基板を提供することができる。
(1)酵素を含む極微量の検体溶液を基板に接触させた後、基板の蛍光強度等を測定するだけで酵素活性を検出することができるので、測定時間を短縮化することができ作業性を高め測定効率を高めることができる酵素活性の検出方法を提供することができる。
(2)酵素を含む極微量の検体溶液を接触させるだけで酵素活性を検出することができるので、測定の際に多量の検体溶液を必要とせず、微量の検体溶液でも酵素活性の検出を行うことができる酵素活性の検出方法を提供することができる。
(3)蛍光測定によって酵素活性を検出するので、検出感度の高い酵素活性の検出方法を提供することができる。
(4)種類の異なるペプチド等の各々に蛍光基が結合した酵素活性検出用基板を用い、イメージセンサ等で広範囲の画像解析を行うことにより、複数の酵素を含む検体溶液の酵素活性を短時間で網羅的に測定し解析することができ測定効率を飛躍的に高めることができる酵素活性の検出方法を提供することができる。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における酵素活性検出用基板の酵素活性検出原理を示す模式図である。
図中、1は実施の形態1における酵素活性検出用基板、2はハロゲン化炭化水素類,エステル類等の溶媒に不溶性の合成樹脂(ポリスチレン等)製やガラス製等で平板状や球面等の湾曲面状等に形成された基板、3は基板2にペプチド結合等で直接結合し後述する第2化合物4とのペプチド結合が後述する酵素5によって切断される前後において、蛍光波長や蛍光強度に変化が生じる蛍光基の1種である4−メチルクマリル−7−アミド(MCA)等の第1蛍光基、4は第1蛍光基3と後述する酵素5によって切断されるペプチド結合で結合したアミノ酸,ペプチド等の第2化合物、5は第1蛍光基3と第2化合物4とのペプチド結合を選択的に切断するセリンプロテアーゼ等の基質特異性を有する酵素、6は酵素5によって選択的に第2化合物4が遊離されたことにより蛍光波長等が変化した第1蛍光基である。
図1(a)に示す酵素活性検出用基板1の4−メチルクマリル−7−アミド(MCA)等の第1蛍光基3は特定波長領域において非蛍光物質であり蛍光を示さない。この酵素活性検出用基板1に酵素5を含む検体溶液を接触させ反応させると、基質特異性を有するセリンプロテアーゼ等の酵素5は、第1蛍光基3と第2化合物4との間のペプチド結合を選択的に切断する(図1(b)参照)。
第2化合物4が遊離した第1蛍光基6は7−アミノ−メチルクマリン(AMC)等の蛍光物質となり、蛍光波長又は該特定波長領域における蛍光強度は、第2化合物4とペプチド結合した第1蛍光基3とは異なるので、蛍光強度等の変化を指標として酵素活性を検出することができる(図1(c)参照)。
(1)基板に蛍光基が結合しているので、これを検出部として酵素を含む極微量の検体溶液を接触させ所定時間後における基板の蛍光強度等を測定するだけで、酵素の作用を受けて修飾された分子の数に相当する蛍光強度等の変化を指標として酵素の量や酵素の種類等による酵素活性を検出することができ、基板に検体溶液を注入するセル等を形成する必要がなく検出部を微小化できるので、基板において検出部の集積度を飛躍的に高めることができる。
(2)酵素を含む極微量の検体溶液を接触させるだけで酵素活性を検出することができるので、測定の際に多量の検体溶液を必要とせず、微量の検体溶液でも酵素活性の検出を行うことができる。
図2は本発明の実施の形態2における酵素活性検出用基板の酵素活性検出原理を示す模式図である。なお、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、10は実施の形態2における酵素活性検出用基板、11は基板2に一端が固定化されたアミノ酸,ペプチド等の第3化合物、12は第3化合物11の側鎖に導入され後述する第3蛍光基14と蛍光共鳴エネルギー移動がみられる(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル(MOAc),トリプトファン(Trp)等の第2蛍光基、13は第3化合物11と酵素5によって切断されるペプチド結合で結合したアミノ酸,ペプチド等の第5化合物、14は第5化合物13に結合したジニトロフェニル(Dnp),5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸(Dns)等の第3蛍光基である。第2蛍光基12と第3蛍光基14は互いに蛍光共鳴エネルギー移動がみられる距離(100Å以下)で結合している。15は第3蛍光基14が結合した第5化合物13が酵素5によって選択的に遊離されたことにより蛍光波長等が変化した第2蛍光基である。
図2(a)に示す酵素活性検出用基板10の第2蛍光基12と第3蛍光基14は互いに蛍光共鳴エネルギー移動がみられる距離で結合しているので、第2蛍光基12の蛍光スペクトルと第3蛍光基14の励起スペクトルとが重なりをもち、第2蛍光基12の励起波長のエネルギーを当てると本来観察されるはずの第2蛍光基12の蛍光が減衰し、代わりに第3蛍光基14の蛍光が観察される。
酵素活性検出用基板10に酵素5を含む検体溶液を接触させ反応させると、基質特異性を有する酵素5は、第3化合物11と第5化合物13との間のペプチド結合を切断する(図2(b)参照)。
第3蛍光基14が結合した第5化合物13が遊離すると、第3蛍光基14と第2蛍光基12との間で蛍光共鳴エネルギー移動がみられなくなるので、第2蛍光基12の励起波長のエネルギーを当てると本来観察されるはずの第2蛍光基12の蛍光波長が観察されるようになり、酵素5の反応前の蛍光波長とは異なるため、蛍光強度等の変化を指標として酵素活性を検出することができる(図2(c)参照)。
(1)第2蛍光基と第3蛍光基を選択することにより、第2蛍光基の蛍光波長を可視部領域に設定することが可能になるので、市販のCCDカメラ等の可視光検出装置を用いて測定することが可能になり汎用性に優れる。
(2)第5化合物を所定の長さ(例えば15Å程度)以上のペプチド鎖で形成することにより、個々のアミノ酸に対する基質特異性が高くなく、むしろ比較的長いペプチド鎖を切断作用に必要とするエラスターゼ等の酵素の検出もできるようにすることができ、検出できる酵素の種類を増やすことができるとともに検出感度を高めることができる。
図3は本発明の実施の形態3における酵素活性検出用基板の模式図である。なお、実施の形態2と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、20は実施の形態3における酵素活性検出用基板、21は基板2と直接結合する複数の反応点を有するトリプトファン(Trp)等の第2蛍光基12が側鎖若しくは末端等に導入されたアミノ酸,ペプチド等の第4化合物である。第5化合物13は第4化合物21と酵素によって切断されるペプチド結合で結合している。
実施の形態3における酵素活性検出用基板が実施の形態2と異なる点は、基板2と直接結合した第2蛍光基12が、第4化合物21と結合している点である。
以上のように構成された実施の形態3の酵素活性検出用基板における酵素活性の検出原理は、実施の形態2で説明したものと同様のものなので、説明を省略する。
図4は本発明の実施の形態4における酵素活性検出用基板の模式図である。なお、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、30は実施の形態4における酵素活性検出用基板、31は一端が基板2と結合したアミノ酸,ペプチド等の第6化合物、32はひとつの反応点が第6化合物31と結合したトリプトファン(Trp)等の第4蛍光基、33は第4蛍光基32の別の反応点が結合したアミノ酸,ペプチド等の第7化合物、34は第7化合物33と酵素によって切断されるペプチド結合で結合したアミノ酸,ペプチド等の第8化合物、35は第8化合物34と結合し第4蛍光基32と蛍光共鳴エネルギー移動がみられる5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸(Dns)等の第5蛍光基である。
以上のように構成された実施の形態4の酵素活性検出用基板における酵素活性の検出原理は、実施の形態2で説明したものと同様のものなので、説明を省略する。
(1)第6化合物31を所定の長さのペプチド等で形成することにより、基板2と酵素作用点(第7化合物33と第8化合物34との間のペプチド結合)との距離を適正化して、基板2の影響を受けずに酵素を作用させることができ酵素活性をより正確に検出することができ検出感度を高め、さらに、個々のアミノ酸に対する基質特異性が高くなく、むしろ比較的長いペプチド鎖を切断作用に必要とするエラスターゼ等の酵素の検出もできるようにすることができ、検出できる酵素の種類を増やすことができる。
本実施例で説明するアミノ酸、ペプチド、保護基、溶媒等は、当該技術分野で慣用されている略号又はIUPAC-IUBの命名委員会で採用された略号を使用している。例えば、以下の略号を使用している。Ala:アラニン、Pro:プロリン、Lys:リジン、Phe:フェニルアラニン、Aca:アミノカプロン酸、Ac:アセチル、ACC:7−アミノ−4−カルボキシメチルクマリン、Boc:t−ブチルオキシカルボニル、Lys(Boc):側鎖t-ブチルオキシカルボニル保護リジン、DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド、DCM:ジクロロメタン、DIEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、EtOH:エタノール、Fmoc:9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、HATU:o−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、HBTU:o−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、HOAt:1−ヒドロキシ−7−アゾベンゾトリアゾール、HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、TFA:トリフルオロ酢酸、Trp:トリプトファン、Dns:5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸。
実施例1では、酵素活性検出用基板としてのペプチジル蛍光基結合球状基板を合成して酵素の活性測定を行った。以下、その方法について説明する。
<ペプチジル蛍光基結合球状基板の合成>
基板としては球状の市販のNH2-PEGA-resin(渡辺化学工業製)を用いた。固相合成用ベッセルを垂直に固定し、NH2-PEGA-resin(0.05 mmol/g, 0.5 g)を入れてコックを開いた状態でDMF(10 ml)を流し溶媒を置換した。次いで、ベッセルのコックを閉じ、Fmoc-Aca-OH (0.13 mmol, 44 mg), HBTU(0.13 mmol, 48 mg), DIEA(0.13 mmol, 0.022ml)をDMF(2 ml)に溶解させて加え、一晩反応させた。反応後、コックを開きDMF(10 ml)および メタノール(10 ml)で洗浄し、Fmoc-Aca-PEGA resinを得た。
次に、ベッセル中のFmoc-Aca-PEGA resin(0.05 mmol/g, 0.5 g)に、コックを開いた状態でDMF(10 ml)を流し、溶媒置換および洗浄を行った。コックを閉じて20%ピペリジン/DMFを入れ、30分反応させ、脱Fmocを行った。その後、コックを開いて20%ピペリジン/DMFを除去し、次いでDMF(10 ml) を用いて洗浄した。次に、コックを閉じた状態でFmoc-Aca-OH(3 eq), HATU(3 eq), HOAt(3eq), DIEA(5eq)をDMF(2 ml)に溶解させて加え、3時間反応させた。その後コックを開け、DMF(10 ml),メタノール(10 ml)を用いて洗浄し、基板(PEGA resin)に第1化合物(Aca-Aca-)が結合したFmoc-Aca-Aca-PEGA resinを得た。
次に、20%ピペリジン/DCM (1 mL) を用いて30分撹拌してFmoc基の除去を行った。DCM(1 ml)で3回、DMF (1 ml)で1回洗浄した後、DMF 1 mlに溶解させたFmoc-Lys(Boc)-ACC-OH (36 mg, 54 mmol), DCC (11 mg, 54 mmol), HOBt・H2O (8.3 mg, 54 mmol)を加え24 時間反応させた。反応終了後、DMF (1 ml)で2回、DCM (1 ml)で2回、EtOH (1 ml)で2回、DCM (1 ml)で2回洗浄した後、減圧下乾燥させて第1蛍光基(ACC)が第1化合物(Aca-Aca-)に結合したFmoc-Lys(Boc)-ACC-Aca-Aca- PEGA resin を得た。
その後、DMF (1 ml)で1回洗浄し、DIEA (32 ml, 183 mmol) および無水酢酸(8.5 ml, 90 mmol)をDMF (1 ml)に希釈して加え1時間撹拌させた。その後、DMF (1 ml)で3回、 DCM (1 ml)で3回洗浄を行い、未反応物のアセチル化を行った。
次いで、20%ピペリジン/DCM (1 ml) を用いて30分撹拌してFmoc基の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、DMF (1 ml) 洗浄を行った後、Fmoc-Pro-OH (18 mg, 54mmol), HATU (20 mg, 54 mmol), HOAt (7 mg, 54 mmol), DIEA (16 ml, 90 mmol) をDMF (1 ml)に溶解させて加え1時間反応させた。その後、DMF (1 ml)で3回、DCM (1 ml)で3回洗浄しFmoc-Pro-Lys(Boc)- ACC-Aca-Aca- PEGA resinを得た。
以下、Fmoc-Pro-Lys(Boc)-ACC-Aca-Aca-PEGA resin にFmoc-Ala-OHを用いて同様の操作を繰り返しペプチドを伸長し、第1蛍光基(ACC)に第2化合物(Ala-Ala-Pro-Lys)が結合したAla-Ala-Pro-Lys(Boc)-ACC-Aca-Aca-PEGA resinを得た。その後、コックを閉じてDIEA (2.5 mmol, 0.435 ml),無水酢酸(1.25 mmol, 0.117 ml)をDMF(2 ml)に希釈して加え1時間反応させて第2化合物の末端基がアセチル化されたAc-Ala-Ala-Pro-Lys(Boc)-ACC-Aca-Aca-PEGA resinを得た。
ベッセルにAc-Ala-Ala-Pro-Lys(Boc)-ACC-Aca-Aca-PEGA resin(0.05 mmol, 0.5 mg)を入れ、コックを開いた状態でDCM(10 ml)を流し溶媒を置換した後、コックを閉じて25%TFA/DCM(2 ml)を入れ、30分反応させ、脱Bocを行った後、DCM(10 ml),H2O (10 ml)を用いて洗浄し、目的とする実施例1のペプチジル蛍光基結合球状基板(Ac-Ala-Ala-Pro-Lys-ACC-Aca-Aca-PEGA resin)を得た。
96ウェルの蛍光測定用マイクロプレートのウェルA〜Dに、実施例1の酵素活性検出用基板としてのペプチジル蛍光基結合球状基板Ac-Ala-Ala-Pro-Lys-ACC-Aca-Aca-PEGA resinと以下の溶液を入れ、実験開始時の蛍光値と30分後の蛍光値との差を測定した。蛍光値は、WALLAC ARVOTM SX 1420 マルチラベルカウンタ(パーキンエルマー製)を用いて励起波長370nm、蛍光波長460nmで測定した。
A:Ac-Ala-Ala-Pro-Lys-ACC-Aca-Aca-PEGA resin (wet) 5 mg、20 mM Tris HCl buffer(pH 7.2, 100 mM NaCl, 50 mM CaCl2 )240 μl、トリプシン(1 mg/1 ml)から10μl
B:Ac-Ala-Ala-Pro-Lys-ACC-Aca-Aca-PEGA resin (wet) 5 mg、20 mM Tris HCl buffer(pH 7.2, 100 mM NaCl, 50 mM CaCl2 )240 μl、キモトリプシン(1 mg/1 ml)から10 μl
C:Ac-Ala-Ala-Pro-Lys-ACC-Aca-Aca-PEGA resin (wet) 5 mg、20 mM Tris HCl buffer(pH 7.2, 100 mM NaCl, 50 mM CaCl2 )250μl
D:20 mM Tris HCl buffer (pH 7.2, 100 mM NaCl, 50 mM CaCl2 )250μl,
なお、ウェルAとウェルBとの異なる点は酵素の種類であり、ウェルA(又はウェルB)とウェルCとの異なる点は酵素の有無であり、ウェルA(又はウェルB,C)とウェルDとの異なる点は酵素活性検出用基板の有無である。
各ウェルについて実験開始時の蛍光値と30分後の蛍光値との差を(表1)に示す。
これにより、実施例1の酵素活性検出用基板は酵素によって特異性を有するため、活性を有する酵素の定性分析が可能であることが示された。また、同一の種類の酵素活性検出用基板に同一種類の酵素を含有する検体溶液を接触させ所定時間後における蛍光値を測定すれば、蛍光値の変化は酵素の作用を受けて修飾された分子の数に対応するので、酵素の定量分析が可能であると推察された。
実施例2では、酵素活性検出用基板としてのペプチジル蛍光基結合平面基板を合成して酵素の活性測定を行った。以下、その方法について説明する。
<ペプチジル蛍光基結合平面基板の合成>
基板としては、ペプチド合成用多板状合成樹脂製担体(ミモートプス社製ランタンシリーズ(登録商標))を1プレートだけ切り離し平面状とした合成樹脂製担体を用いた。
スクリュー管に 基板としてのlantern 1個 (ミモートプス社D-series, 導入率18 mmol / 個) を入れ、20%ピペリジン/DCM (1 mL) を用いて30分撹拌しFmoc基の除去を行った。DCM (1 ml)で3回、DMF (1 ml) で洗浄した後、Fmoc-Aca-OH(19 mg 54 mmol), DCC (17 mg 81 mmol), HOBt・H2O (8 mg 54 mmol)をDMF (1 ml)に溶解させて加え24時間反応させた。反応終了後、DMF (1 ml)で2回、DCM (1 ml)で2回、EtOH (1 ml)で2回、DCM (1 ml)で2回洗浄した後、減圧下乾燥させてFmoc-Aca-lanternを得た。
次に、20%ピペリジン/DCM (1 ml) を用いて30分撹拌してFmoc基 の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、DMF (1 ml) 洗浄を行った後、Fmoc-Aca-OH (19 mg, 54mmol), HATU (20 mg, 54 mmol), HOAt (7 mg, 54 mmol), DIEA (16 ml, 90 mmol) をDMF (1 ml)に溶解させて加え1時間反応させた。その後、DMF (1 ml)で3回、DCM (1 ml)で3回洗浄し、基板(lantern)に第1化合物(Aca-Aca)の一端が固定化したFmoc-Aca-Aca-lanternを得た。
次いで、20%ピペリジン/DCM (1 mL) を用いて30分撹拌してFmoc基の除去を行った。DCM(1 ml)で3回、DMF (1 ml)で1回洗浄してlanternを膨潤させ、DMF 1 mlに溶解させたFmoc-Lys(Boc)-ACC-OH (36 mg, 54 mmol), DCC (11 mg, 54 mmol), HOBt・H2O (8.3 mg, 54 mmol)を加え24 時間反応させた。反応終了後、DMF (1 ml)で2回、DCM (1 ml)で2回、EtOH (1 ml)で2回、DCM (1 ml)で2回洗浄した後、減圧下乾燥させて第1化合物(Aca-Aca)に第1蛍光基(ACC)が結合したFmoc-Lys(Boc)-ACC-Aca-Aca-lanternを得た。
次に、20%ピペリジン/DCM (1 ml) を用いて30分撹拌してFmoc基 の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、DMF (1 ml) 洗浄を行った後、Fmoc-Pro-OH (18 mg, 54mmol), HATU (20 mg, 54 mmol), HOAt (7 mg, 54 mmol), DIEA (16 ml, 90 mmol) をDMF (1 ml)に溶解させて加え1時間反応させた。その後、DMF (1 ml)で3回、DCM (1 ml)で3回洗浄しFmoc-Pro-Lys(Boc)-ACC-Aca-Aca-lanternを得た。
以下、Fmoc-Pro-Lys(Boc)-ACC-Aca-Aca-lantern にFmoc-Ala-OHを用いて同様の操作を2回繰り返してペプチドを伸長させ、第1蛍光基(ACC)に第2化合物(Ala-Ala-Pro-Lys)が結合したFmoc-Ala-Ala-Pro-Lys(Boc)-ACC-Aca-Aca- lanternを得た。
その後、20%ピペリジン/DCM (1 ml) を用いて30分撹拌してFmoc基 の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、DMF (1 ml) 洗浄を行った後、DMF (1 mL)、DIEA 32 ml (183 mmol) および無水酢酸8.5 ml(90 mmol) をDMF (1 mL)に希釈して加え、1時間撹拌させた。その後、DMF (1 ml)で3回、DCM (1 ml)で3回lanternを洗浄し、25% TFA/DCMを用いて30分反応させてBoc基の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、H2O (1 ml)で5回、DCM(1 ml)で3回洗浄し、減圧乾燥を行い、第2化合物(Ala-Ala-Pro-Lys)の末端基がアセチル化されたAc-Ala-Ala-Pro-Lys(Boc)-ACC-Aca-Aca- lanternを得た。
25%TFA/DCM(1ml)を用いてLys側鎖のBoc基を除去し、目的とする実施例2の酵素活性検出用基板(Ac-Ala-Ala-Pro-Lys-ACC-Aca-Aca-lantern)を得た。
実施例2の酵素活性検出用基板に、20 mM Tris HCl buffer(pH 7.2, 100 mM NaCl, 50 mM CaCl2)を100 μl, メタノール100 μl, トリプシン(1 mg/1 ml)を 50 μl加え、反応前と反応後の蛍光値を測定した。蛍光値は、WALLAC ARVOTM SX 1420 マルチラベルカウンタ(パーキンエルマー製)を用いて励起波長370nm、蛍光波長460nmで測定した。
その結果、初期蛍光値は39000、18時間反応後の蛍光値は145000であり、蛍光値が約4倍変化することが確認された。これにより、基板としてlanternを用いた実施例2の酵素活性検出用基板においても、活性を有する酵素の検出が可能であることが示された。
実施例3では、酵素活性検出用基板としてのペプチジル蛍光基結合平面基板を合成して酵素の活性測定を行った。以下、その方法について説明する。
<ペプチジル蛍光基結合平面基板の合成>
基板としては、ペプチド合成用多板状合成樹脂製担体(ミモートプス社製ランタンシリーズ(登録商標))を1プレートだけ切り離し平面状とした合成樹脂製担体を用いた。
スクリュー管に基板としてのlantern 1個 (ミモートプス社D-series, 導入率18 mmol / 個) を入れ、20%ピペリジン / DCM (1 mL) を用いて30分撹拌しFmoc基を切り出した。 DCM洗浄 (1 ml×3) 後、DMF (1 ml×1) でlanternを膨潤させDMF 1 mlに溶解させたFmoc-Aca-OH 20.0 mg (56.6 mmol), DCC 17.5 mg (84.5 mmol), HOBt・H2O 8.8 mg (57.5 mmol)を加え23時間撹拌した。DMF (1 ml×2), DCM (1 ml×2), DCM / EtOH = 1:1 (1 ml×2), EtOH (1 ml×2), DCM (1 ml×1), ジエチルエーテル(1 ml×1)で樹脂を洗浄した後乾燥させ、Fmoc-Aca-lanternを得た。
20%ピペリジン/DCM (1 mL) を用いて30分撹拌してFmoc基を切り出しDCM洗浄 (1 ml×3)した後、DMF 1 mlに溶解させたFmoc-Aca-OH 23.0mg (65.1mmol), HATU 21.6 mg (56.8 mmol), HOAt 8.1 mg (59.5 mmol), DIEA 15.7 ml (90.2 mmol) を加え1時間撹拌させた。DMF (1 ml×3), DCM (1 ml×3) で洗浄し基板(lantern)に第1化合物(Aca-Aca)の一端が固定化したFmoc-Aca-Aca-lanternを得た。次いで、20%ピペリジン/DCM (1 mL) を用いて30分撹拌してFmoc基を除去し、DCM洗浄 (1 ml×3)を行ってH-Aca-Aca-lanternを得た。
次に、20%ピペリジン/DCM (1 mL) を用いて30分撹拌してFmoc基を除去し、DCM洗浄 (1 ml×3)した。次いで、DMF 1 mlに溶解させたFmoc-Pro-OH 24.7mg (73.2 mmol), HATU 21.4 mg (56.2 mmol), HOAt 8.2 mg (60.2 mmol), DIEA 15.7 ml (90.2 mmol) を加え1時間撹拌させた後、DMF (1 ml×3), DCM (1 ml×3)で洗浄しFmoc-Pro-Phe-ACC-Aca-Aca-lanternを得た。
以下、これと同様の操作を行ってFmoc-Ala-OHを2回導入し、第1蛍光基(ACC)に第2化合物(Ala-Ala-Pro-Phe)が結合したFmoc-Ala-Ala-Pro-Phe-ACC-Aca-Aca-lanternを得た。
その後、20%ピペリジン/DCM (1 mL) を用いて30分撹拌してFmoc基を除去し、DCM洗浄 (1 ml×3) 後、DMF (1 mL)、DIEA 32 ml (183 mmol) および無水酢酸8.5 ml(90 mmol) を加え、1時間撹拌させた。その後、DMF (1 ml×3), DCM (1 ml×3) で洗浄を行い、第2化合物(Ala-Ala-Pro-Phe)の末端基をアセチル化して、目的とする実施例3の酵素活性検出用基板としてのペプチジル蛍光基結合平面基板Ac-Ala-Ala-Pro-Phe-ACC-Aca-Aca-lanternを得た。
蛍光測定用マイクロプレートのウェルA,Cに実施例2の酵素活性検出用基板(導入率2μmol/基板)を、ウェルB,Dに実施例3の酵素活性検出用基板(導入率2μmol/基板)を入れ、各々に20 mM Tris HCl buffer(pH 7.2, 100 mM NaCl, 50 mM CaCl2)を100 μl, メタノール100 μlを加え、さらに以下の酵素50μgを加えて反応させた。
A:キモトリプシン
B:キモトリプシン
C:トリプシン
D:トリプシン
測定は、WALLAC ARVOTM SX 1420 マルチラベルカウンタ(パーキンエルマー製)を用いて励起波長370nm、蛍光波長460nmで、酵素を加える前の蛍光値と酵素を加えてから30分後の蛍光値とを測定し、その差を求めた。
各ウェルにおける算出された蛍光値の差を(表2)に示す。
これにより、第1蛍光基と結合する第2化合物のアミノ酸の種類を変えることにより、酵素の種類に対する活性検出能を変えられることが明らかになった。
実施例4では、酵素活性検出用基板としてのペプチジル蛍光基結合平面基板を合成して酵素の活性測定を行った。以下、その方法について説明する。
<ペプチジル蛍光基結合平面基板の合成>
基板としては、ペプチド合成用多板状合成樹脂製担体(ミモートプス社製ランタンシリーズ(登録商標))を1プレートだけ切り離し平面状とした合成樹脂製担体を用いた。
スクリュー管に 基板としてのlantern 1個 (ミモートプス社D-series, 導入率18μmol / 個) を入れ、20%ピペリジン/DCM (1 ml) を用いて30分撹拌しFmoc基の除去を行った。DCM (1 ml)で3回、DMF (1 ml) で2回洗浄した後、Fmoc-Aca-OH(19 mg, 54μmol), DCC (17 mg, 81μmol), HOBt・H2O (8 mg,54 mmol)をDMF (1 ml)に溶解させて加え24時間反応させた。反応終了後、DMF (1 ml)で2回、DCM (1 ml)で2回、EtOH (1 ml)で2回、DCM (1 ml)で2回洗浄した後、減圧下乾燥させてFmoc-Aca-lanternを得た。
次に、20%ピペリジン/DCM (1 ml) を用いて30分撹拌してFmoc基の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、DMF (1 ml) で2回洗浄を行った後、Fmoc-Aca-OH (19 mg, 54μmol), HATU (20 mg, 54μmol), HOAt (7 mg, 54μmol), DIEA (16μl, 90μmol) をDMF (1 ml)に溶解させて加え1時間反応させた。その後、DMF (1ml)で3回、DCM (1ml)で3回洗浄しFmoc-Aca-Aca-lanternを得た。
次に、20%ピペリジン/DCM (1 ml) を用いて30分撹拌してFmoc基の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、DMF (1 ml) で2回洗浄を行った後、Fmoc-Lys(Boc)-OH (25 mg, 54μmol), HATU (20 mg, 54μmol), HOAt (7 mg, 54μmol), DIEA (16μl, 90μmol) をDMF (1 ml)に溶解させて加え1時間反応させた。その後、DMF (1 ml)で3回、DCM (1 ml)で3回洗浄しFmoc-Lys(Boc)-Lys(Ac-Trp(Boc)-)-Aca-Aca-lanternを得た。
以下、Fmoc-Lys(Boc)-Lys(Ac-Trp(Boc)-)-Aca-Aca-lantern にFmoc-Pro-OH、Fmoc-Ala-OHを導入する実施例3と同様の操作を繰り返してペプチドを伸長させ、更にDns-Clを反応させることによりDns-Ala-Ala-Pro-Lys(Boc)-Lys(Ac-Trp(Boc)-)-Aca-Aca- lanternを得た。
次いで、DMF (1 ml)で3回、DCM (1 ml)で3回lanternを洗浄し、25% TFA/DCMを用いて30分反応させてBoc基の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、H2O (1 ml)で5回、DCM(1 ml)で3回洗浄し、減圧乾燥を行い、第3化合物と第5化合物とが結合した(Ala-Ala-Pro-Lys-Lys-Aca-Aca)の側鎖に第2蛍光基としてのTrpと、末端に第3蛍光基としてのDnsとを備えた目的とする実施例4の酵素活性検出用基板Dns-Ala-Ala-Pro-Lys-Lys(Ac-Trp-)-Aca-Aca- lanternを得た。
実施例4の酵素活性検出用基板に、20 mM Tris・HCl buffer(pH 7.2, 100 mM NaCl, 50 mM CaCl2)を100 μl, メタノール100 μl, トリプシン(1 mg/1 ml)を 50 μl加え、反応前と反応後の蛍光値を測定した。蛍光値は、FP-6600蛍光分光光度計(Jasco製)を用いて励起波長280 nm、蛍光波長350 nmで測定した。
その結果、初期蛍光値は37、18時間反応後の蛍光値は567であり、蛍光値が約15倍変化することが確認された。これにより、実施例4の酵素活性検出用基板においても、活性を有する酵素の検出が可能であることが示された。
実施例4と同様にして、スクリュー管に 基板としてのlantern 1個 (ミモートプス社D-series, 導入率18μmol / 個) を入れ、ピペリジン/DCM を用いてFmoc基の除去を行った後、DCM、DMFで洗浄してlanternを膨潤させ、DMFに溶解させたFmoc-Trp(Boc)-OH、 DCC、 HOBt・H2Oを加え反応させた。反応終了後、DMF、DCM 、EtOH で洗浄し減圧下乾燥させて、基板(lantern)に(Fmoc-Trp(Boc)-)が結合したFmoc-Trp(Boc)-lanternを得た。
次に、ピペリジン/DCMを用いてFmoc基の除去を行い、DCM、DMFで洗浄した後、Fmoc-Lys(Boc)-OH、 HATU、 HOAt、DIEAをDMFに溶解させて加え反応させた。その後、DMF、DCMで洗浄しFmoc-Lys(Boc)-Trp(Boc)-lanternを得た。
以下、Fmoc-Lys(Boc)-Trp(Boc)-lantern にFmoc-Pro-OH、Fmoc-Ala-OHを導入する実施例3と同様の操作を繰り返してペプチドを伸長させ、更にDns-Clを反応させることによりDns-Ala-Ala-Pro-Lys(Boc)-Trp(Boc)-lanternを得た。
次いで、DMF、DCMでlanternを洗浄し、TFA/DCMを反応させてBoc基の除去を行った。その後、DCM、H2O、DCMで洗浄し、減圧乾燥を行い、第4化合物と第5化合物とが結合した(Ala-Ala-Pro-Lys)の末端に第2蛍光基としてのTrpと、末端に第3蛍光基としてのDnsとを備えた目的とする実施例5の酵素活性検出用基板Dns-Ala-Ala-Pro-Lys-Trp-lanternを得た。
実施例5の酵素活性検出用基板の酵素活性検出能を実施例4と同様にして測定したところ、実施例5の酵素活性検出用基板においても、実施例4とほぼ同様の検出能が確認された。これにより、実施例5の酵素活性検出用基板においても、活性を有する酵素の検出が可能であることが示され、反応点を複数有するトリプトファン等の蛍光基を用いることにより、基板に結合させるペプチド等のアミノ酸配列の設計の自由度をより高めることができることが明らかになった。
スクリュー管に 基板としてのlantern 1個 (ミモートプス社D-series, 導入率18μmol / 個) を入れ、実施例4と同様の操作によって、基板にFmoc-Aca-OHを導入し、Fmoc-Aca-Aca-lanternを得た。
次いで、ピペリジン/DCMを用いてFmoc基を除去し、DCM、DMFで洗浄してlanternを膨潤させ、DMFに溶解させたFmoc-Trp(Boc)-OH、 DCC、 HOBt・H2Oを加え反応させ、基板(lantern)に第6化合物(Aca- Aca)が結合したFmoc-Trp(Boc)-Aca- Aca-lanternを得た。
以下、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Ala-OHを導入する実施例3と同様の操作を繰り返してペプチドを伸長させ、更にDns-Clを反応させることによりDns -Ala-Ala-Pro-Lys(Boc)-Trp(Boc)-Aca-Aca-lanternを得た。
次いで、DMF 、DCMで洗浄し、TFA/DCMを用いてBoc基の除去を行った後、DCM、H2O、DCMで洗浄し、減圧乾燥を行い、第7化合物と第8化合物とが結合した(Ala-Ala-Pro-Lys-)が第4蛍光基としてのTrpに結合し、末端に第5蛍光基としてのDnsが結合した実施例6の酵素活性検出用基板Dns-Ala-Ala-Pro-Lys-Trp-Aca-Aca-lanternを得た。
実施例6の酵素活性検出用基板の酵素活性検出能を実施例4と同様にして測定したところ、実施例6の酵素活性検出用基板においても、実施例4とほぼ同様の検出能が確認された。これにより、実施例6の酵素活性検出用基板においても、活性を有する酵素の検出が可能であることが示され、反応点を複数有するトリプトファン等の蛍光基を用いることにより、基板に結合させるペプチド等のアミノ酸配列の設計の自由度をより高めることができることが明らかになった。
実施例7では、酵素活性検出用基板としてのペプチジル蛍光基結合平面基板を合成して酵素の活性測定を行った。以下、その方法について説明する。
<ペプチジル蛍光基結合平面基板の合成>
基板としては、ペプチド合成用多板状合成樹脂製担体(ミモートプス社製ランタンシリーズ(登録商標))を1プレートだけ切り離し平面状とした合成樹脂製担体を用いた。
スクリュー管に 基板としてのlantern 1個 (ミモートプス社D-series, 導入率18μmol / 個) を入れ、20%ピペリジン/DCM (1 mL) を用いて30分撹拌しFmoc基の除去を行った。DCM (1 ml)で3回、DMF (1 ml) で洗浄した後、Fmoc-Aca-OH(19 mg, 54μmol), DCC (17 mg, 81μmol), HOBt・H2O (8 mg,54μmol)をDMF (1 ml)に溶解させて加え24時間反応させた。反応終了後、DMF (1 ml)で2回、DCM (1 ml)で2回、EtOH (1 ml)で2回、DCM (1 ml)で2回洗浄した後、減圧下乾燥させてFmoc-Aca-lanternを得た。
次に、20%ピペリジン/DCM (1 ml) を用いて30分撹拌してFmoc基 の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、DMF (1 ml) で2回洗浄を行った後、Fmoc-Aca-OH (19 mg, 54μmol), HATU (20 mg, 54μmol), HOAt (7 mg, 54μmol), DIEA (16μl, 90μmol) をDMF (1 ml)に溶解させて加え1時間反応させた。その後、DMF (1 ml)で3回、DCM (1 ml)で3回洗浄しFmoc-Aca-Aca-lanternを得た。
次に、20%ピペリジン/DCM (1 ml) を用いて30分撹拌してFmoc基の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、DMF (1 ml) で2回洗浄を行った後、Fmoc-Phe-OH (21 mg, 54μmol), HATU (20mg, 54μmol), HOAt (7 mg, 54μmol), DIEA (16μl, 90μmol) をDMF (1 ml)に溶解させて加え1時間反応させた。その後、DMF (1 ml)で3回、DCM (1 ml)で3回洗浄しFmoc-Phe-Lys(Ac-Trp(Boc)-)-Aca-Aca-lanternを得た。
以下、Fmoc-Phe-Lys(Ac-Trp(Boc)-)-Aca-Aca-lantern にFmoc-Pro-OH、Fmoc-Ala-OHを導入する実施例3と同様の操作を繰り返してペプチドを伸長させ、更にDns-Clを反応させることによりDns-Ala-Ala-Pro-Phe-Lys(Ac-Trp(Boc)-)-Aca-Aca- lanternを得た。
DMF (1 ml)で3回、DCM (1 ml)で3回lanternを洗浄し、25% TFA/DCMを用いて30分反応させてBoc基の除去を行った。その後、DCM(1 ml)で3回、H2O (1 ml)で5回、DCM(1 ml)で3回洗浄し、減圧乾燥を行い、第3化合物と第5化合物とが結合した(Ala-Ala-Pro-Phe-Lys-Aca-Aca)の側鎖に第2蛍光基としてのTrpと、末端に第3蛍光基としてのDnsとを備えた目的とする実施例7の酵素活性検出用基板Dns-Ala-Ala-Pro-Phe-Lys(Ac-Trp-)-Aca-Aca- lanternを得た。
蛍光測定用マイクロプレートにウェルを4つ(A〜D)準備し、ウェルA,Cに実施例4の酵素活性検出用基板(導入率2μmol/基板)を、ウェルB,Dに実施例7の酵素活性検出用基板(導入率2μmol/基板)を入れ、各々に20 mM Tris HCl buffer(pH 7.2, 100 mM NaCl, 50 mM CaCl2)を100 μl, メタノール100 μlを加え、さらに以下の酵素50μgを加えて反応させた。
A:キモトリプシン
B:キモトリプシン
C:トリプシン
D:トリプシン
蛍光値は、FP-6600蛍光分光光度計(Jasco製)を用いて励起波長280nm、蛍光波長350nmで、酵素を加える前の蛍光値と酵素を加えてから20分後の蛍光値とを測定し、その差を求めた。
各ウェルにおける算出された蛍光値の差を(表3)に示す。
これにより、蛍光基が結合したペプチド等のアミノ酸配列の種類を変えることにより、酵素の種類に対する活性検出能を変えられることが明らかになった。本実施例ではキモトリプシンやトリプシンのように配列中のアミノ酸残基1つの違いで結果が変化する例を示したが、蛍光エネルギー移動が起こる範囲内で可能なかぎり、検出する酵素に対応するために配列全長にわたって自由にアミノ酸配列を設計することができるので、アミノ酸配列の設計によって無限の基質特異性を発現させ、多種多様な酵素の検出が可能な酵素活性検出用基板が得られることが明らかになった。
2 基板
3,6 第1蛍光基
4 第2化合物
5 酵素
11 第3化合物
12,15 第2蛍光基
13 第5化合物
14 第3蛍光基
21 第4化合物
31 第6化合物
32 第4蛍光基
33 第7化合物
34 第8化合物
35 第5蛍光基
Claims (6)
- 基板と、前記基板に直接結合した、又は、前記基板に一端が固定化された第1化合物を介して前記基板に結合した第1蛍光基と、前記第1蛍光基と酵素によって切断されるペプチド結合で結合した第2化合物と、を備えていることを特徴とする酵素活性検出用基板。
- 基板と、前記基板に一端が固定化された第3化合物の側鎖に導入され前記第3化合物を介して前記基板に結合した、又は、第4化合物と結合し前記基板に直接結合した第2蛍光基と、前記第3化合物又は前記第4化合物と酵素によって切断されるペプチド結合で結合した第5化合物と、前記第5化合物に結合し前記第2蛍光基と蛍光共鳴エネルギー移動がみられる第3蛍光基と、を備えていることを特徴とする酵素活性検出用基板。
- 基板と、前記基板に一端が固定化された第6化合物と、前記第6化合物に導入された第4蛍光基と、前記第4蛍光基に結合した第7化合物と、前記第7化合物と酵素によって切断されるペプチド結合で結合した第8化合物と、前記第8化合物に結合し前記第4蛍光基と蛍光共鳴エネルギー移動がみられる第5蛍光基と、を備えていることを特徴とする酵素活性検出用基板。
- 前記第5化合物又は前記第8化合物が、前記第4化合物又は前記第7化合物と前記酵素によって切断されるペプチド結合で結合しているのに代えて、前記第4化合物が前記第2蛍光基と前記酵素によって切断されるペプチド結合で結合している、又は、前記第7化合物が前記第4蛍光基と前記酵素によって切断されるペプチド結合で結合していることを特徴とする請求項2又は3に記載の酵素活性検出用基板。
- 前記第2化合物、前記第5化合物、前記第8化合物の末端基、及び/又は、前記第3化合物の側鎖に導入された前記第2蛍光基が、アセチル化されていることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1に記載の酵素活性検出用基板。
- 請求項1乃至5の内のいずれか1に記載の酵素活性検出用基板に酵素を含む検体溶液を接触させ反応させる工程と、前記酵素活性検出用基板の蛍光測定を行う工程と、を備えていることを特徴とする酵素活性の検出方法。
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