JP2004354512A - 光伝送体 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光伝送体に関する。より具体的には、従来の光伝送体では実現が困難であった高い透明性と耐熱性を合わせ持った光伝送体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、電気特性、耐薬品性、防水性、撥水撥油性、光学特性に優れるため、半導体をはじめとする電子部品の保護膜、インクジェットプリンタのヘッドの撥水膜、フィルタの防水防油コートおよびプラスチック光ファイバー(POF)等の光伝送体などに用いられている。この重合体は単独での利用もされているが、各種の添加剤、改質剤などを混合し新たな機能を付与する試みもなされている。しかし、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は極性基を有さないため、添加剤、改質剤などとして使用される種々の低分子量化合物の溶解性が低く、これら低分子量化合物を混合した場合に均一に溶解混合せず、重合体が本来有している電気的特性、機械的特性、表面特性および透明性などの優れた特性を損なうことがしばしばある。
【0003】
一方、屈折率分布型プラスチック光伝送体用の樹脂材料としては、C−H結合を有しない非結晶性の主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体が知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、この含フッ素重合体に溶融拡散可能で、この含フッ素重合体とは屈折率の異なる物質をこの重合体中に分布させることにより得られる屈折率分布型プラスチック光伝送体が開示されている。この光伝送体は、メチルメタクリレート樹脂、カーボネート樹脂、ノルボルネン樹脂など従来の非含フッ素樹脂製の光伝送体では達しえなかった近赤外領域で低損失である光伝送体を与えることが知られている。
【0004】
上記の含フッ素重合体中に分布させる屈折率の異なる物質としては、含フッ素多環式化合物が有効であることが知られている(特許文献2参照)。しかしながら、上記したように、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、種々の低分子量化合物の溶解性が低い。このため、屈折率分布を形成するために、含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体中に該含フッ素重合体とは屈折率の異なる物質として、含フッ素多環式化合物を分布させた場合、両者の相溶性が低いために得られる光伝送体の散乱が大きくなり伝送損失が増大する問題がある。
【0005】
一方、含フッ素芳香環構造を有する重合体として、水素を重水素で置換したものを含む含フッ素ポリスチレンを用いて光ファイバを製造した例が非特許文献1に挙げられている。しかしながら、同文献に開示されている光ファイバは、水素を重水素で置換したものを含む含フッ素ポリスチレンをコアとし、フルオロアクリルメタクリレート共重合体をクラッドとした段階屈折率型光ファイバのみである。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−5848号公報
【特許文献2】
特開2001−302935号公報
【非特許文献1】
Applied Physics Letter、(米国)、1986年、48巻、p.757−758
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、含フッ素重合体の優れた透明性を損なうことなく、従来の光学樹脂材料が有する課題を解決し、光伝送損失が低く、伝送帯域の大きい光伝送体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、
屈折率の高いコアと、前記コアよりも屈折率が低いクラッドと、からなるコアクラッド構造を有し、
前記コアクラッド構造のうち、少なくとも前記コアが、式1の繰返し単位を有する重合体中に、屈折率調整物質として含フッ素低分子量化合物を含有させてなる光伝送体を提供する。
【化2】
ここで、X1 、X2 およびX3 は、それぞれ独立に、F、DおよびClからなる群から選択される。
【0009】
本発明の光伝送体において、前記屈折率調整物質である含フッ素低分子量化合物は、ペルフルオロ(トリフェニルトリアジン)、ペルフルオロ(1、3、5−トリフェニルベンゼン)およびクロロトリフルオロエチレンオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
本発明の光伝送体の好ましい態様は、屈折率分布型光ファイバである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の光伝送体は、屈折率の高いコアと、該コアよりも屈折率が低いクラッドと、からなるコアクラッド構造を有し、光をその内部(伝送路)に通過させて伝送する機能を有する部材をいう。ここで、コアとは、光パワーの大部分が閉じ込められて伝送される光伝送体の部分をいい、クラッドとは、コアを取り囲んでいる、コアよりも屈折率の低い部分をいう。また、コア径とは、コア中心部の光量の5%以上の光量を示す領域の直径について考える。
本発明における光伝送体は、一般的に光伝送体として知られるものを広く含み、具体的には例えば、光ファイバ、ロッドレンズ、光導波路、光分岐器、光合波器、光分波器、光減衰器、光スイッチ、光アイソレータ、光送信モジュール、光受信モジュール、カプラ、偏向子、光集積回路などのそのものやその光伝送部分などが挙げられる。
さらに、本発明の光伝送体には、熱延伸などで紡糸することで上記の光伝送体とされる母材、すなわちプリフォームも含まれる。
【0012】
これら光伝送体において、光伝送路を形成する構造は段階屈折率型であってもよいが、後述する理由により屈折率分布構造を有するもの(以下屈折率分布型という)であることが好ましい。
また、光伝送体において、光伝送路は、単一モードであっても、マルチモードであってもよい。
【0013】
本発明の光伝送体は、コアクラッド構造のうち、少なくともコアが、下記式1の繰返し単位を有する重合体中に、屈折率調整物質として含フッ素低分子化合物を含有させて形成されている。
式1中、X1 、X2 およびX3 は、それぞれ独立に、F、DおよびClからなる群から選択される。
【0014】
したがって、光伝送体が、段階屈折率型である場合、コアのみが式1の繰返し単位を有する重合体中に含フッ素低分子化合物を含有させて屈折率が調整されており、クラッドは、上記の重合体のみで形成することでコアクラッド間に屈折率の差を与えてもよい。または、クラッドに、コアとは屈折率が異なる他の材料を用いてもよい。
但し、光伝送路は、コアクラッド構造が全て上記式1の繰返し単位を有する重合体で形成されており、該重合体には、含フッ素低分子化合物が光伝送体の光伝送路の中心軸から周辺方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している屈折率分布型光伝送体であることが好ましい。
【0015】
本発明の光伝送体は、コアクラッド構造が上記式1の繰返し単位を有する非結晶性の重合体で形成されているため、光の散乱がなくしかも可視光から近赤外光まで広範囲の波長帯で透明性がきわめて高いため、多種多様な波長に対して優れた光伝送特性を有する。また、ガラス転移点が比較的高くとれる式1の繰返し単位を有する重合体でコアクラッド構造が形成された光伝送体は、耐熱性が飛躍的に向上されており、室温以上の高温に長時間曝された場合においても、伝送帯域の低下が防止されている。
【0016】
本発明において、重合体は、式1の繰返し単位のみで構成された含フッ素ポリスチレン単独重合体であってもよいが、他の重合体成分との共重合体であってもよい。他の重合体成分としては、C−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体が好ましく、さらに主鎖に環構造を有する含フッ素重合体であることがより好ましい。主鎖に環構造を有する含フッ素重合体としては、含フッ素脂肪族環構造、含フッ素イミド環構造、含フッ素トリアジン環構造または含フッ素芳香族環構造を有する含フッ素重合体が好ましい。含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体では含フッ素脂肪族エーテル環構造を有するものがさらに好ましい。
【0017】
重合体が共重合体である場合、重合体中における式1の繰返し単位の割合が10モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。式1の繰返し単位の割合が10モル%以上であると、含有させる含フッ素低分子量化合物との相溶性に優れており、該低分子量化合物を高い濃度で含有させても相分離をおこすことなく開口数NAを大きくでき、曲げに強い光伝送体を得ることができる。また、相溶性に優れることで、含フッ素低分子量化合物を含有させた後において、重合体と該低分子量化合物とが均質になっており、散乱が小さいために光伝送体の伝送損失が小さい。
【0018】
本発明において、重合体の溶融状態における粘度は、溶融温度200℃〜300℃において103 〜105 ポイズが好ましい。重合体の溶融粘度が上記の範囲であると、光伝送体を成形する上で好ましく、かつ光伝送体が屈折率分布型である場合に、含フッ素低分子量化合物が重合体中で好ましく拡散し、所望の屈折率分布が達成される。さらにまた、電子機器や自動車等、高温に晒される光伝送体として用いられる場合に、軟化せず、光の伝送性能が低下することがない。
【0019】
重合体の数平均分子量は、10,000〜5,000,000が好ましく、より好ましくは50,000〜1,000,000である。分子量が上記の範囲であると、耐熱性に優れており、かつ光伝送体が屈折率分布型である場合に、所望の屈折率分布が達成される。
【0020】
式1を繰返し単位とする重合体の製造は、公知の方法で実施することができる。ここで、式1を繰返し単位とする重合体、すなわち含フッ素ポリスチレンは、ポリスチレンのすべての水素がフッ素に置きかえられていてもよいが、重合性をより上げるためには本来は主鎖の水素を残した方が好ましい。しかしながら、炭素−水素結合の伸縮振動の倍音は近赤外領域で大きな吸収となり、光伝送体の伝送損失を大きくしてしまうため、重合性を低下させることなく光学的に吸収の小さな重水素に置き替える必要がある。これら合成法は特に制限を受けないが、例えば、特開昭61−225143号公報に記載の方法で合成することができる。
【0021】
上記重合体中に、屈折率調整物質として含有させる含フッ素低分子量化合物は、屈折率が重合体と異なるものであればよく、高屈折率であっても低屈折率であってもよい。但し、通常は重合体よりも高屈折率の物質を用いる。ここで、含フッ素低分子量化合物は、重合体との屈折率の差が0.001以上であることが好ましく、より好ましくは0.005以上であり、0.01以上であることがより好ましい。重合体中への含フッ素低分子量化合物の含有は、混合物のガラス転移点の低下につながるが、含フッ素低分子量化合物に重合体との屈折率が大きい物質を用いれば、光伝送体のコアクラッド間の屈折率の差を所望の大きさに必要な含フッ素低分子量化合物の量が少なくてよいため、ガラス転移点の低下が少ない。その結果、製造される光伝送体が耐熱性に優れている。
【0022】
含フッ素低分子量化合物は、上記重合体と屈折率が異なるものを広く含む。但し、C−H結合を実質的に含まない、すなわち、C−H結合が全てフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、もしくは重水素で置換された含フッ素芳香族炭化水素化合物または含フッ素脂肪族炭化水素化合物であることが好ましい。本発明において、低分子量化合物とは、数平均分子量が10,000以下のものを指す。したがって、通常低分子化合物として知られるもの以外に、オリゴマーも含む。含フッ素低分子量化合物は、数平均分子量が300〜10,000であることが好ましい。含フッ素低分子量化合物の数平均分子量が上記の範囲であると、重合体との相溶性に優れており、かつ重合体との混合物におけるガラス転移温度が低くならず、製造される光伝送体の耐熱温度が低下しない。含フッ素低分子量化合物の数平均分子量は、300〜5,000であると、屈折率分布型光伝送体を製造する際に、低分子量化合物が重合体中で拡散しやすいのでより好ましい。
【0023】
本発明において、特に好ましい含フッ素低分子量化合物は、C−H結合を実質的に含まない含フッ素芳香族炭化水素化合物として、含フッ素多環式化合物であるペルフルオロ(トリフェニルトリアジン)およびペルフルオロ(1、3、5−トリフェニルベンゼン)が挙げられ、C−H結合を実質的に含まない含フッ素脂肪族炭化水素化合物として、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーが挙げられる。クロロトリフルオロエチレンオリゴマーについて、数平均分子量が500〜1,500であることが好ましい。
【0024】
式1の繰返し単位を有する重合体は、含フッ素フェニル基を有するため分極率が大きく、含フッ素多環式化合物であるペルフルオロ(トリフェニルトリアジン)およびペルフルオロ(1,3,5−トリフェニルベンゼン)を屈折率調整物質として用いた場合にも、両者の溶解度パラメータが近いため、良く相溶する。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーは、主鎖に環構造を有する式1の繰返し単位を有する重合体との相溶性が良好である。したがって、これらを屈折率調整物質として、高い濃度を拡散しても相分離をおこすことなく開口数NAを大きくでき、曲げに強い光伝送体を得ることができる。また、相溶性が高いことから、拡散後も分子レベルで均質となり、散乱が小さいために伝送損失が小さい。
【0025】
上記の含フッ素低分子量化合物は、1種類のみを重合体中に含有させてもよいが、複数種類の含フッ素低分子量化合物を重合体中に含有させてもよい。
【0026】
重合体に対する含フッ素低分子量化合物の含有割合は、両者の合計に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がより好ましい。この割合は重合体全体における平均の存在割合を意味するとともに、重合体中に含フッ素低分子量化合物が不均一に存在している場合であってもその最大存在部分が上記割合の上限以下であることを意味する。なお、重合体中に含フッ素低分子量化合物が不均一に存在する場合、最大存在部分の割合の下限は0.1質量%であることが好ましく、1質量%であることがより好ましい。
一方、含フッ素低分子量化合物が重合体中に均一に存在している場合、または不均一に存在している場合に重合体全体に平均して存在すると仮定して計算した場合、その割合の下限は0.001質量%であることが好ましい。
【0027】
本発明の光伝送体は、重合体中に、屈折率調整物質として該重合体との相溶性に優れる含フッ素低分子量化合物を含有させて形成するため、コアクラッド構造における屈折率分布が所望になるように、重合体中に含フッ素低分子量化合物を分布させた屈折率分布型光伝送体であることが好ましい。本発明の光伝送体の最も好ましい態様は、屈折率分布型光ファイバおよびそのプリフォームである。この光ファイバにおいては、含フッ素低分子量化合物が重合体中で、中心から周辺方向に沿って濃度勾配を有して分布している。好ましくは、含フッ素低分子量化合物が、重合体よりも高屈折率の物質であり、該低分子量化合物が中心から周辺方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している光ファイバーおよびそのプリフォームである。なお、屈折率の分布は、放物線様であることが好ましい。ある場合には含フッ素低分子量化合物が重合体よりも低屈折率であり、該低分子量化合物が光ファイバーの周辺から中心方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している光ファイバーも有用である。前者の光ファイバーなどの光伝送体は、通常含フッ素低分子量化合物を中心に配置し周辺方向に向かって拡散させることにより製造できる。後者の光ファイバーなどの光伝送体は含フッ素低分子量化合物を周辺から中心方向に拡散させることによって製造できる。
【0028】
周知のように屈折率分布型光ファイバは中心軸部分の屈折率が最大で中心軸から周辺方向に沿って屈折率が徐々に(通常二次曲線に沿って)低下する構造を有する。このような屈折率分布を形成する方法の一つとして拡散法が知られている。拡散法は、マトリックス(重合体)中でマトリックスと異なる屈折率を有する屈折率調整物質(含フッ素低分子量化合物)を中心軸から周辺方向に沿って(屈折率調整物質がマトリックスよりも高屈折率である場合)拡散させることにより上記屈折率分布を形成する方法である。マトリックス中の屈折率調整物質の濃度が高い部分が高屈折率でその濃度が低下するほど低屈折率となる。
【0029】
拡散法による屈折率分布型光ファイバの製造方法は特開平8−5848号や特開平11−167030号公報などに記載されている。特に回転成形により屈折率分布型光ファイバ製造用プリフォーム(以下、単にプリフォームという)を製造し、プリフォームから紡糸して光ファイバとする方法が好ましい。含フッ素低分子量化合物の拡散はプリフォーム製造工程、プリフォームを加熱維持して拡散を行う工程、プリフォームからの紡糸工程、またはそれら工程の2以上の工程で行い得る。また含フッ素低分子量化合物の拡散を行いながら押出し紡糸を行って光ファイバを1段で製造することもできる(WO94/04949公報記載の方法参照)。この拡散を行いながら押出しする方法で屈折率分布型のプリフォームを製造することもできる。
【0030】
本発明の屈折率分布型光ファイバを製造するのに用いるプリフォームは、必ずしも屈折率分布を有していなくてもよく、含フッ素低分子量化合物の拡散工程前のものであってよい。この場合、含フッ素低分子量化合物は中心軸部分のみに存在する。このプリフォームを加熱状態に維持して含フッ素低分子量化合物を拡散させ屈折率分布を有するプリフォームとし得る。しかし通常はプリフォームの成形工程において拡散も行い屈折率分布を有するプリフォームとする。プリフォームの形状は通常円柱状である。しかし形状はこれに限られず、回転成形で通常得られる孔の径がごく小さい円筒状のものであってもよい。円筒状プリフォームではその内表面に含フッ素低分子量化合物を存在させてそこから外表面方向に拡散させて屈折率分布を形成し得る。円筒状プリフォームの孔を潰しながら紡糸を行って光ファイバとし得る。
【0031】
以下に実施例を示すが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
[実施例1]
Applied Physics Letter、(米国)、1986年、48巻、p.757−758に記載の方法より得られたペンタフルオロトリ重水素スチレンの重合体(数平均分子量100,000、屈折率1.38)(以下、重合体aという)と、パーフルオロ−1、3、5−トリフェニルベンゼン(屈折率1.48)の混合物[後者を混合物中15重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体aという)を得た。成形体aの屈折率は1.40、Tgは80℃であった。NAは0.25だった。
次に、重合体aのみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この円筒管中空部に成形体aを挿入し220℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、650nmで45dB/km、850nmで21dB/km、1300nmで18dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。また、曲げ損失を測定すると、R10mmの180°曲げにおいて、0.1dBと曲げに強いファイバーであることがわかった。また、伝送帯域は450MHz・kmであった。
【0032】
[比較例]
重合体aをコアとし、フルオロアクリレートをクラッドとする非特許文献1に開示されたものと同様のステップインデックス型光ファイバを作製した。得られた光ファイバの光伝送特性は、650nmで120dB/km、850nmで85dB/km、1300nmで57dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。伝送帯域は23MHz・kmと低かった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の光伝送体は、式1の繰返し単位を有する非結晶性の重合体で形成されているため、光の散乱がなくしかも可視光から近赤外光まで広範囲の波長帯で透明性がきわめて高いため、多種多様な波長に対して優れた光伝送特性を示す。
また本発明の光伝送体は、自動車のエンジンルームなどでの過酷な使用条件に耐える耐熱性、耐薬品性、耐湿性、不燃性を備えている。特に耐熱性については、Tgが比較的高くとれる式1の繰返し単位を有する重合体で形成されているため、飛躍的向上されており、室温以上の高温に長時間曝された場合においても、伝送帯域の低下が防止されている。
また、本発明の光伝送体は、式1の繰返し単位を有する重合体と、屈折率調整物質として含有される含フッ素低分子量化合物との相溶性が良好であるため、高い濃度を拡散しても相分離をおこすことなく開口数NAを大きくでき、曲げに強いファイバーを得ることができる。また、相溶性が高いことから、拡散後も分子レベルで均質であり、散乱が小さいために伝送損失が小さい。
また、中心から外周に向かって屈折率の異なる拡散物質濃度を低下させて屈折率分布型光伝送体とすれば、ステップインデックスタイプの光伝送体と比較して、伝送帯域を大きくすることが可能である。
以上のように、本発明は、含フッ素重合体の優れた透明性を損なうことなく、従来の光学樹脂材料が有する課題を解決し、伝送損失が低く、伝送帯域の大きい光伝送体を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光伝送体に関する。より具体的には、従来の光伝送体では実現が困難であった高い透明性と耐熱性を合わせ持った光伝送体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、電気特性、耐薬品性、防水性、撥水撥油性、光学特性に優れるため、半導体をはじめとする電子部品の保護膜、インクジェットプリンタのヘッドの撥水膜、フィルタの防水防油コートおよびプラスチック光ファイバー(POF)等の光伝送体などに用いられている。この重合体は単独での利用もされているが、各種の添加剤、改質剤などを混合し新たな機能を付与する試みもなされている。しかし、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は極性基を有さないため、添加剤、改質剤などとして使用される種々の低分子量化合物の溶解性が低く、これら低分子量化合物を混合した場合に均一に溶解混合せず、重合体が本来有している電気的特性、機械的特性、表面特性および透明性などの優れた特性を損なうことがしばしばある。
【0003】
一方、屈折率分布型プラスチック光伝送体用の樹脂材料としては、C−H結合を有しない非結晶性の主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体が知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、この含フッ素重合体に溶融拡散可能で、この含フッ素重合体とは屈折率の異なる物質をこの重合体中に分布させることにより得られる屈折率分布型プラスチック光伝送体が開示されている。この光伝送体は、メチルメタクリレート樹脂、カーボネート樹脂、ノルボルネン樹脂など従来の非含フッ素樹脂製の光伝送体では達しえなかった近赤外領域で低損失である光伝送体を与えることが知られている。
【0004】
上記の含フッ素重合体中に分布させる屈折率の異なる物質としては、含フッ素多環式化合物が有効であることが知られている(特許文献2参照)。しかしながら、上記したように、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、種々の低分子量化合物の溶解性が低い。このため、屈折率分布を形成するために、含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体中に該含フッ素重合体とは屈折率の異なる物質として、含フッ素多環式化合物を分布させた場合、両者の相溶性が低いために得られる光伝送体の散乱が大きくなり伝送損失が増大する問題がある。
【0005】
一方、含フッ素芳香環構造を有する重合体として、水素を重水素で置換したものを含む含フッ素ポリスチレンを用いて光ファイバを製造した例が非特許文献1に挙げられている。しかしながら、同文献に開示されている光ファイバは、水素を重水素で置換したものを含む含フッ素ポリスチレンをコアとし、フルオロアクリルメタクリレート共重合体をクラッドとした段階屈折率型光ファイバのみである。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−5848号公報
【特許文献2】
特開2001−302935号公報
【非特許文献1】
Applied Physics Letter、(米国)、1986年、48巻、p.757−758
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、含フッ素重合体の優れた透明性を損なうことなく、従来の光学樹脂材料が有する課題を解決し、光伝送損失が低く、伝送帯域の大きい光伝送体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、
屈折率の高いコアと、前記コアよりも屈折率が低いクラッドと、からなるコアクラッド構造を有し、
前記コアクラッド構造のうち、少なくとも前記コアが、式1の繰返し単位を有する重合体中に、屈折率調整物質として含フッ素低分子量化合物を含有させてなる光伝送体を提供する。
【化2】
ここで、X1 、X2 およびX3 は、それぞれ独立に、F、DおよびClからなる群から選択される。
【0009】
本発明の光伝送体において、前記屈折率調整物質である含フッ素低分子量化合物は、ペルフルオロ(トリフェニルトリアジン)、ペルフルオロ(1、3、5−トリフェニルベンゼン)およびクロロトリフルオロエチレンオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
本発明の光伝送体の好ましい態様は、屈折率分布型光ファイバである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の光伝送体は、屈折率の高いコアと、該コアよりも屈折率が低いクラッドと、からなるコアクラッド構造を有し、光をその内部(伝送路)に通過させて伝送する機能を有する部材をいう。ここで、コアとは、光パワーの大部分が閉じ込められて伝送される光伝送体の部分をいい、クラッドとは、コアを取り囲んでいる、コアよりも屈折率の低い部分をいう。また、コア径とは、コア中心部の光量の5%以上の光量を示す領域の直径について考える。
本発明における光伝送体は、一般的に光伝送体として知られるものを広く含み、具体的には例えば、光ファイバ、ロッドレンズ、光導波路、光分岐器、光合波器、光分波器、光減衰器、光スイッチ、光アイソレータ、光送信モジュール、光受信モジュール、カプラ、偏向子、光集積回路などのそのものやその光伝送部分などが挙げられる。
さらに、本発明の光伝送体には、熱延伸などで紡糸することで上記の光伝送体とされる母材、すなわちプリフォームも含まれる。
【0012】
これら光伝送体において、光伝送路を形成する構造は段階屈折率型であってもよいが、後述する理由により屈折率分布構造を有するもの(以下屈折率分布型という)であることが好ましい。
また、光伝送体において、光伝送路は、単一モードであっても、マルチモードであってもよい。
【0013】
本発明の光伝送体は、コアクラッド構造のうち、少なくともコアが、下記式1の繰返し単位を有する重合体中に、屈折率調整物質として含フッ素低分子化合物を含有させて形成されている。
式1中、X1 、X2 およびX3 は、それぞれ独立に、F、DおよびClからなる群から選択される。
【0014】
したがって、光伝送体が、段階屈折率型である場合、コアのみが式1の繰返し単位を有する重合体中に含フッ素低分子化合物を含有させて屈折率が調整されており、クラッドは、上記の重合体のみで形成することでコアクラッド間に屈折率の差を与えてもよい。または、クラッドに、コアとは屈折率が異なる他の材料を用いてもよい。
但し、光伝送路は、コアクラッド構造が全て上記式1の繰返し単位を有する重合体で形成されており、該重合体には、含フッ素低分子化合物が光伝送体の光伝送路の中心軸から周辺方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している屈折率分布型光伝送体であることが好ましい。
【0015】
本発明の光伝送体は、コアクラッド構造が上記式1の繰返し単位を有する非結晶性の重合体で形成されているため、光の散乱がなくしかも可視光から近赤外光まで広範囲の波長帯で透明性がきわめて高いため、多種多様な波長に対して優れた光伝送特性を有する。また、ガラス転移点が比較的高くとれる式1の繰返し単位を有する重合体でコアクラッド構造が形成された光伝送体は、耐熱性が飛躍的に向上されており、室温以上の高温に長時間曝された場合においても、伝送帯域の低下が防止されている。
【0016】
本発明において、重合体は、式1の繰返し単位のみで構成された含フッ素ポリスチレン単独重合体であってもよいが、他の重合体成分との共重合体であってもよい。他の重合体成分としては、C−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体が好ましく、さらに主鎖に環構造を有する含フッ素重合体であることがより好ましい。主鎖に環構造を有する含フッ素重合体としては、含フッ素脂肪族環構造、含フッ素イミド環構造、含フッ素トリアジン環構造または含フッ素芳香族環構造を有する含フッ素重合体が好ましい。含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体では含フッ素脂肪族エーテル環構造を有するものがさらに好ましい。
【0017】
重合体が共重合体である場合、重合体中における式1の繰返し単位の割合が10モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。式1の繰返し単位の割合が10モル%以上であると、含有させる含フッ素低分子量化合物との相溶性に優れており、該低分子量化合物を高い濃度で含有させても相分離をおこすことなく開口数NAを大きくでき、曲げに強い光伝送体を得ることができる。また、相溶性に優れることで、含フッ素低分子量化合物を含有させた後において、重合体と該低分子量化合物とが均質になっており、散乱が小さいために光伝送体の伝送損失が小さい。
【0018】
本発明において、重合体の溶融状態における粘度は、溶融温度200℃〜300℃において103 〜105 ポイズが好ましい。重合体の溶融粘度が上記の範囲であると、光伝送体を成形する上で好ましく、かつ光伝送体が屈折率分布型である場合に、含フッ素低分子量化合物が重合体中で好ましく拡散し、所望の屈折率分布が達成される。さらにまた、電子機器や自動車等、高温に晒される光伝送体として用いられる場合に、軟化せず、光の伝送性能が低下することがない。
【0019】
重合体の数平均分子量は、10,000〜5,000,000が好ましく、より好ましくは50,000〜1,000,000である。分子量が上記の範囲であると、耐熱性に優れており、かつ光伝送体が屈折率分布型である場合に、所望の屈折率分布が達成される。
【0020】
式1を繰返し単位とする重合体の製造は、公知の方法で実施することができる。ここで、式1を繰返し単位とする重合体、すなわち含フッ素ポリスチレンは、ポリスチレンのすべての水素がフッ素に置きかえられていてもよいが、重合性をより上げるためには本来は主鎖の水素を残した方が好ましい。しかしながら、炭素−水素結合の伸縮振動の倍音は近赤外領域で大きな吸収となり、光伝送体の伝送損失を大きくしてしまうため、重合性を低下させることなく光学的に吸収の小さな重水素に置き替える必要がある。これら合成法は特に制限を受けないが、例えば、特開昭61−225143号公報に記載の方法で合成することができる。
【0021】
上記重合体中に、屈折率調整物質として含有させる含フッ素低分子量化合物は、屈折率が重合体と異なるものであればよく、高屈折率であっても低屈折率であってもよい。但し、通常は重合体よりも高屈折率の物質を用いる。ここで、含フッ素低分子量化合物は、重合体との屈折率の差が0.001以上であることが好ましく、より好ましくは0.005以上であり、0.01以上であることがより好ましい。重合体中への含フッ素低分子量化合物の含有は、混合物のガラス転移点の低下につながるが、含フッ素低分子量化合物に重合体との屈折率が大きい物質を用いれば、光伝送体のコアクラッド間の屈折率の差を所望の大きさに必要な含フッ素低分子量化合物の量が少なくてよいため、ガラス転移点の低下が少ない。その結果、製造される光伝送体が耐熱性に優れている。
【0022】
含フッ素低分子量化合物は、上記重合体と屈折率が異なるものを広く含む。但し、C−H結合を実質的に含まない、すなわち、C−H結合が全てフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、もしくは重水素で置換された含フッ素芳香族炭化水素化合物または含フッ素脂肪族炭化水素化合物であることが好ましい。本発明において、低分子量化合物とは、数平均分子量が10,000以下のものを指す。したがって、通常低分子化合物として知られるもの以外に、オリゴマーも含む。含フッ素低分子量化合物は、数平均分子量が300〜10,000であることが好ましい。含フッ素低分子量化合物の数平均分子量が上記の範囲であると、重合体との相溶性に優れており、かつ重合体との混合物におけるガラス転移温度が低くならず、製造される光伝送体の耐熱温度が低下しない。含フッ素低分子量化合物の数平均分子量は、300〜5,000であると、屈折率分布型光伝送体を製造する際に、低分子量化合物が重合体中で拡散しやすいのでより好ましい。
【0023】
本発明において、特に好ましい含フッ素低分子量化合物は、C−H結合を実質的に含まない含フッ素芳香族炭化水素化合物として、含フッ素多環式化合物であるペルフルオロ(トリフェニルトリアジン)およびペルフルオロ(1、3、5−トリフェニルベンゼン)が挙げられ、C−H結合を実質的に含まない含フッ素脂肪族炭化水素化合物として、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーが挙げられる。クロロトリフルオロエチレンオリゴマーについて、数平均分子量が500〜1,500であることが好ましい。
【0024】
式1の繰返し単位を有する重合体は、含フッ素フェニル基を有するため分極率が大きく、含フッ素多環式化合物であるペルフルオロ(トリフェニルトリアジン)およびペルフルオロ(1,3,5−トリフェニルベンゼン)を屈折率調整物質として用いた場合にも、両者の溶解度パラメータが近いため、良く相溶する。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーは、主鎖に環構造を有する式1の繰返し単位を有する重合体との相溶性が良好である。したがって、これらを屈折率調整物質として、高い濃度を拡散しても相分離をおこすことなく開口数NAを大きくでき、曲げに強い光伝送体を得ることができる。また、相溶性が高いことから、拡散後も分子レベルで均質となり、散乱が小さいために伝送損失が小さい。
【0025】
上記の含フッ素低分子量化合物は、1種類のみを重合体中に含有させてもよいが、複数種類の含フッ素低分子量化合物を重合体中に含有させてもよい。
【0026】
重合体に対する含フッ素低分子量化合物の含有割合は、両者の合計に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がより好ましい。この割合は重合体全体における平均の存在割合を意味するとともに、重合体中に含フッ素低分子量化合物が不均一に存在している場合であってもその最大存在部分が上記割合の上限以下であることを意味する。なお、重合体中に含フッ素低分子量化合物が不均一に存在する場合、最大存在部分の割合の下限は0.1質量%であることが好ましく、1質量%であることがより好ましい。
一方、含フッ素低分子量化合物が重合体中に均一に存在している場合、または不均一に存在している場合に重合体全体に平均して存在すると仮定して計算した場合、その割合の下限は0.001質量%であることが好ましい。
【0027】
本発明の光伝送体は、重合体中に、屈折率調整物質として該重合体との相溶性に優れる含フッ素低分子量化合物を含有させて形成するため、コアクラッド構造における屈折率分布が所望になるように、重合体中に含フッ素低分子量化合物を分布させた屈折率分布型光伝送体であることが好ましい。本発明の光伝送体の最も好ましい態様は、屈折率分布型光ファイバおよびそのプリフォームである。この光ファイバにおいては、含フッ素低分子量化合物が重合体中で、中心から周辺方向に沿って濃度勾配を有して分布している。好ましくは、含フッ素低分子量化合物が、重合体よりも高屈折率の物質であり、該低分子量化合物が中心から周辺方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している光ファイバーおよびそのプリフォームである。なお、屈折率の分布は、放物線様であることが好ましい。ある場合には含フッ素低分子量化合物が重合体よりも低屈折率であり、該低分子量化合物が光ファイバーの周辺から中心方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している光ファイバーも有用である。前者の光ファイバーなどの光伝送体は、通常含フッ素低分子量化合物を中心に配置し周辺方向に向かって拡散させることにより製造できる。後者の光ファイバーなどの光伝送体は含フッ素低分子量化合物を周辺から中心方向に拡散させることによって製造できる。
【0028】
周知のように屈折率分布型光ファイバは中心軸部分の屈折率が最大で中心軸から周辺方向に沿って屈折率が徐々に(通常二次曲線に沿って)低下する構造を有する。このような屈折率分布を形成する方法の一つとして拡散法が知られている。拡散法は、マトリックス(重合体)中でマトリックスと異なる屈折率を有する屈折率調整物質(含フッ素低分子量化合物)を中心軸から周辺方向に沿って(屈折率調整物質がマトリックスよりも高屈折率である場合)拡散させることにより上記屈折率分布を形成する方法である。マトリックス中の屈折率調整物質の濃度が高い部分が高屈折率でその濃度が低下するほど低屈折率となる。
【0029】
拡散法による屈折率分布型光ファイバの製造方法は特開平8−5848号や特開平11−167030号公報などに記載されている。特に回転成形により屈折率分布型光ファイバ製造用プリフォーム(以下、単にプリフォームという)を製造し、プリフォームから紡糸して光ファイバとする方法が好ましい。含フッ素低分子量化合物の拡散はプリフォーム製造工程、プリフォームを加熱維持して拡散を行う工程、プリフォームからの紡糸工程、またはそれら工程の2以上の工程で行い得る。また含フッ素低分子量化合物の拡散を行いながら押出し紡糸を行って光ファイバを1段で製造することもできる(WO94/04949公報記載の方法参照)。この拡散を行いながら押出しする方法で屈折率分布型のプリフォームを製造することもできる。
【0030】
本発明の屈折率分布型光ファイバを製造するのに用いるプリフォームは、必ずしも屈折率分布を有していなくてもよく、含フッ素低分子量化合物の拡散工程前のものであってよい。この場合、含フッ素低分子量化合物は中心軸部分のみに存在する。このプリフォームを加熱状態に維持して含フッ素低分子量化合物を拡散させ屈折率分布を有するプリフォームとし得る。しかし通常はプリフォームの成形工程において拡散も行い屈折率分布を有するプリフォームとする。プリフォームの形状は通常円柱状である。しかし形状はこれに限られず、回転成形で通常得られる孔の径がごく小さい円筒状のものであってもよい。円筒状プリフォームではその内表面に含フッ素低分子量化合物を存在させてそこから外表面方向に拡散させて屈折率分布を形成し得る。円筒状プリフォームの孔を潰しながら紡糸を行って光ファイバとし得る。
【0031】
以下に実施例を示すが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
[実施例1]
Applied Physics Letter、(米国)、1986年、48巻、p.757−758に記載の方法より得られたペンタフルオロトリ重水素スチレンの重合体(数平均分子量100,000、屈折率1.38)(以下、重合体aという)と、パーフルオロ−1、3、5−トリフェニルベンゼン(屈折率1.48)の混合物[後者を混合物中15重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体aという)を得た。成形体aの屈折率は1.40、Tgは80℃であった。NAは0.25だった。
次に、重合体aのみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この円筒管中空部に成形体aを挿入し220℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、650nmで45dB/km、850nmで21dB/km、1300nmで18dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。また、曲げ損失を測定すると、R10mmの180°曲げにおいて、0.1dBと曲げに強いファイバーであることがわかった。また、伝送帯域は450MHz・kmであった。
【0032】
[比較例]
重合体aをコアとし、フルオロアクリレートをクラッドとする非特許文献1に開示されたものと同様のステップインデックス型光ファイバを作製した。得られた光ファイバの光伝送特性は、650nmで120dB/km、850nmで85dB/km、1300nmで57dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。伝送帯域は23MHz・kmと低かった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の光伝送体は、式1の繰返し単位を有する非結晶性の重合体で形成されているため、光の散乱がなくしかも可視光から近赤外光まで広範囲の波長帯で透明性がきわめて高いため、多種多様な波長に対して優れた光伝送特性を示す。
また本発明の光伝送体は、自動車のエンジンルームなどでの過酷な使用条件に耐える耐熱性、耐薬品性、耐湿性、不燃性を備えている。特に耐熱性については、Tgが比較的高くとれる式1の繰返し単位を有する重合体で形成されているため、飛躍的向上されており、室温以上の高温に長時間曝された場合においても、伝送帯域の低下が防止されている。
また、本発明の光伝送体は、式1の繰返し単位を有する重合体と、屈折率調整物質として含有される含フッ素低分子量化合物との相溶性が良好であるため、高い濃度を拡散しても相分離をおこすことなく開口数NAを大きくでき、曲げに強いファイバーを得ることができる。また、相溶性が高いことから、拡散後も分子レベルで均質であり、散乱が小さいために伝送損失が小さい。
また、中心から外周に向かって屈折率の異なる拡散物質濃度を低下させて屈折率分布型光伝送体とすれば、ステップインデックスタイプの光伝送体と比較して、伝送帯域を大きくすることが可能である。
以上のように、本発明は、含フッ素重合体の優れた透明性を損なうことなく、従来の光学樹脂材料が有する課題を解決し、伝送損失が低く、伝送帯域の大きい光伝送体を提供することができる。
Claims (3)
- 前記屈折率調整物質である含フッ素低分子化合物が、ペルフルオロ(トリフェニルトリアジン)、ペルフルオロ(1,3,5−トリフェニルベンゼン)およびクロロトリフルオロエチレンオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の光伝送体。
- 光伝送体が、屈折率分布型光ファイバである請求項1または2に記載の光伝送体。
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