JP2004353678A - 燃焼装置の噴射ノズル - Google Patents

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昭夫 山崎
Hirotsugu Yamazaki
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Abstract

【目的】 燃料をより細かな粒子にして霧状に噴射することを実現する。
【構成】 中空部を有するノズル本体1と、該ノズル本体1に形成され中空部1から外部にかけて貫通する取付孔10と、この取付孔10に装着される噴口部材80とを備える。噴口部材80は、基端部側に形成され取付孔10に装着される装着部82と、先端部側に形成され取付孔10の内壁との間に所定の間隙を形成する噴口形成部83と、基端から噴口形成部83に至る燃料導入通路とを有する。
【選択図】 図16

Description

この発明は、ディーゼルエンジン,ガソリンエンジン等の燃焼装置において、その燃料噴射部に装着される噴射ノズルに関する。
図25は、エンジンに装着される従来の燃料噴射ノズルを示す縦断面図である。
ノズル本体1の先端部には中空状のノズルサック2が形成してあり、このノズルサック2から外部にかけて噴口3が貫通している。ノズルサック2は基端側が燃料供給口2aとなっている。この燃料供給口2aは、ニードル弁4の軸方向の移動によって開閉する。図示しない燃料供給装置から供給路5を経由して送られてきた液体燃料は、ニードル弁4の開放動作に伴い、燃料供給口2aからノズルサック2へと充填され、さらに噴口3から霧状に噴射される。
さて、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の燃焼装置においては、燃焼室内へ霧状に噴射する液体燃料をなるべく微粒子化した方が、燃焼効率を向上させることができ好ましい。このような噴射燃料の微粒子化を実現するためには、噴射ノズルの噴口3をより細径にすることが望まれる。
しかしながら、従来の燃料噴射ノズルにおける噴口3は、ドリルなどの工具を用いた機械加工により、ノズル本体1に直接形成していたので、直径0.17〜0.28mm程度が限界であり、それより小さく形成することは困難であった。
この発明は、上述したような事情に鑑みてなされたもので、燃料をより細かな粒子にして霧状に噴射することのできる燃焼装置の噴射ノズルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者は各種構成の噴射ノズルを開発した。
すなわち、第一の噴射ノズルは、中空部を有するノズル本体と、該ノズル本体に形成され上記中空部から外部にかけて貫通する取付孔と、この取付孔に装着される噴口部材とを備えている。そして、噴口部材の外周または取付孔の内周に、一端から他端にかけて延在するスリットを形成し、このスリットによって噴口を形成した構成となっている。
また、第二の噴射ノズルは、中空部を有するノズル本体と、上記中空部に開口した燃料供給口と、該ノズル本体に形成され上記中空部から外部にかけて貫通する噴口とを備えた燃焼装置の噴射ノズルにおいて、外周の一端から他端にかけて延在するスリットを有した隔壁部材により、上記ノズル本体の中空部内を上記燃料供給口と噴口との間で仕切った構成としてある。
さらに、第三の噴射ノズルは、中空部を有するノズル本体と、該ノズル本体に形成され上記中空部から外部にかけて貫通する取付孔と、この取付孔に装着される噴口部材とを備え、上記噴口部材が、一端から他端にかけて貫通する透孔を有した部材本体と、その透孔内に隙間なく埋設された細孔を有する管状部材とを含む構成となっている。
そして、第四の噴射ノズルは、中空部を有するノズル本体と、上記中空部に開口した燃料供給口と、該ノズル本体に形成され上記中空部から外部にかけて貫通する噴口とを備えた燃焼装置の噴射ノズルにおいて、ノズル本体の中空部内を上記燃料供給口と噴口との間で隔壁部材により仕切った構成としてある。ここで、隔壁部材は、一端から他端にかけて貫通する透孔を有した部材本体と、上記透孔内に隙間なく埋設された細孔を有する管状部材とで形成してある。
また、第五の噴射ノズルは、中空部を有するノズル本体と、該ノズル本体に形成され上記中空部から外部にかけて貫通する取付孔と、この取付孔に装着される噴口部材とを備えている。そして、噴口部材が、筒状の部材本体と、この部材本体の中空部内に嵌着される柱状部材とを含み、かつ部材本体の内周または柱状部材の外周に、一端から他端にかけて延在するスリットを形成した構成となっている。
さらに、第六の噴射ノズル(本出願に係る発明)は、中空部を有するノズル本体と、該ノズル本体に形成され上記中空部から外部にかけて貫通する取付孔と、この取付孔に装着される噴口部材とを備えるとともに、噴口部材が、基端部側に形成され上記取付孔に装着される装着部と、先端部側に形成され上記取付孔の内壁との間に所定の間隙を形成する噴口形成部と、基端から前記噴口形成部に至る燃料導入通路とを有した構成となっている。
ここで、上記第六の噴射ノズルにおける噴口部材には、噴口形成部の先端から前方へ延出する突出部を形成してもよい。この突出部は、先端に向かって径が細くなるテーパ状に形成してもよく、また、突出部の周面に螺旋状の溝を形成してもよい。
上述したように、第一の噴射ノズルは、噴口部材の外周、またはノズル本体における取付孔の内周に形成したスリットによって、噴口を形成するようになっている。ここで、スリットは、周知の加工手段によってもきわめて幅狭に形成することができる。例えば、ワイヤカット放電加工によれば、幅0.02mm程度のスリットを容易かつ高精度に形成することができる。したがって、このような幅狭なスリットを噴口として、そこから燃料を噴射させれば、きわめて微細な粒子となってその燃料を霧状に放散することができる。
上記第二の噴射ノズルでは、ノズル本体の中空部内で、隔壁部材に形成したスリットが燃料を微細な霧状に分散し、噴口から放出する。この場合にも、スリットはきわめて幅狭に形成することができるので、そのスリットから噴射した燃料は微細な粒子となって噴口から放散する。
一方、上記第三の噴射ノズルでは、噴口部材の部材本体内に埋設された管状部材の細孔により噴口を形成するようになっている。複雑形状のノズル本体に細径の噴口を形成するには自ずとその直径に限界があるが、直線的な管状部材であれば、比較的容易に直径0.025mm程度の細孔を形成することが可能である。
しかしながら、管状部材を直接ノズル本体に装着するのは、管状部材自体が微細部品のため、加工中に作用する外力等によって管状部材が潰れて細孔が閉塞するおそれがあるなど、加工に困難性を伴う。
そこで、第三の噴射ノズルでは、細径を有する管状部材を部材本体内に埋設して比較的大形部品である噴口部材を形成し、その噴口部材をノズル本体の取付孔に装着することによって、細径の噴口をノズル本体に形成し、燃料を微細な霧状に噴射することを可能とした。
上記第四の噴射ノズルでも同様に細孔を有する管状部材を利用して隔壁部材を形成し、ノズル本体の中空部内でこの隔壁部材に埋設した管状部材の細孔から燃料を噴射し、噴口から放出するようにしている。
上記第五の噴射ノズルでは、部材本体の中空部内に柱状部材を嵌着することにより、該部材本体の内周または柱状部材の外周に形成したスリットが微小な開口面積の噴口を形成する。このようにして噴口が形成された噴口部材を、ノズル本体の取付孔に装着することで、ノズル本体の中空部内に供給された燃料を該噴口から微細な霧状にして噴射することができる。
なお、これらの発明において、燃料を噴射するスリットまたは細孔の断面積は必然的に小さくなる。そこで、従来と同程度の燃料供給圧力で同じ燃料噴射量を確保するため、スリットまたは細孔(管状部材)は複数本設けることが好ましい。
さて、上記のようにスリットまたは細孔(管状部材)の本数により燃料の噴射量を調節する場合、加工に手間がかかることは否めない。
そこで、上記第六の噴射ノズル(本願に係る発明)では、取付孔に装着する噴口部材の噴口形成部と取付孔の内壁との間に間隙を形成し、この間隙をもって噴口とするようになっている。この間隙の段面積は、噴口部材における噴口形成部の寸法を変えることによって容易且つ高精度に調整することができる。噴口を形成する間隙には、燃料導入通路を介して燃料が導かれ、該間隙から外部に噴射する。
上記間隙により形成した噴口は、ノズル本体の外面へ環状に開口することになるが、このような環状の噴口から燃料を噴射した場合、噴射燃料に囲まれる部分にエアポケットが生じ、噴射燃料が内側へと引き込まれてしまうおそれがある。燃焼装置によっては、燃料を放射状に広い範囲にわたって噴射することを必要とするものもある。そのような燃焼装置にこの発明の噴射ノズルを適用する場合には、噴口形成部の先端から前方へ突出部を延出し、上記のようなエアポケットの形成を阻止する構成とすることが好ましい。該突出部をテーパ状に形成したり、突出部の周面に螺旋状の溝を形成することで、一層広い角度で放射状に燃料を噴射することが可能となる。
以上説明したように、この発明の燃焼装置の噴射ノズルによれば、燃料をより細かな粒子にして霧状に噴射することができ、燃焼装置の燃焼効率を向上させることができる。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1乃至図3は、上記第一の噴射ノズルの構成例を説明するためのもので、図1は図25に示した噴射ノズルの先端部に相当する部分を拡大して示す縦断面図である。
ノズル本体1は、先端部以外は図25に示した従来の噴射ノズルとほぼ同様の構成となっている。ノズル本体1の先端部内には、燃料溜りとなるノズルサック(中空部)2が形成してある。そして、ノズル本体1の先端部壁面には、ノズルサック2から外部にかけて貫通する取付孔10が形成してある。後述するように、この取付孔10の部分に燃料噴射用の噴口が形成される。噴口の数および噴口角度(噴射角度)は、その噴射ノズルが装着される燃焼装置の設計内容に応じて適宜設定すべきものであり、そのように設定された噴口の数および噴口角度に対応して、取付孔10の数および形成箇所を設定することが望ましい。
取付孔10の内周面は平滑面に形成してあり、しかもノズルサック2側の端縁が広く、外端縁に向かって徐々に内径が小さくなっている。
図2は噴口部材を示す縦断面図、図3は同部材の左側面図である。この噴口部材11は、上述した取付孔10内に嵌め込み固定される。すなわち、噴口部材11の本体11a部分は取付孔10の全長とほぼ同じ長さとなっており、外周面は取付孔10の内周面に対応して基端から先端にかけてテーパ状に直径が小さくなっている。
噴口部材11の外周には、複数箇所(図3では4箇所)に基端から先端にかけて延びるスリット12が形成してある。このスリット12は、例えば、ワイヤカット放電加工によれば、最小0.025mm程度というきわめて狭い幅で形成することができる。
この噴口部材11の取付孔10への嵌入は、ノズル本体1のノズルサック2側から行なう。取付孔10内に嵌入した噴口部材11は、外周面が取付孔10の内周面と密着する。
そして、噴口部材11に形成したスリット12が、ノズル本体1のノズルサック2から外部へと貫通する噴口を形成する。このようにスリット12によって形成した噴口の開口面積は、スリット12の先端部における幅と深さによって決まる。したがって、スリット12の幅および深さを適宜調整することによって、所望の開口面積をした噴口を形成することができる。
上述したように、スリット12は現在知られている加工技術によっても0.025mm程度の最小幅に形成でき、深さについても該最小幅と同程度の(もしくは、それよりも小さな)寸法に加工することができるため、該スリット12によってきわめて小さな開口面積の噴口を形成することができる。
図25に示したニードル弁4を開放すると、ノズルサック2の基端側に開口する燃料供給口2aから液体燃料がノズルサック2内に供給される。そして、ノズルサック2内に充填された液体燃料は、供給圧力によって図1に示すスリット12から外部(燃焼室)へと霧状に噴射される。この霧状となった液体燃料の粒子径は、スリット12の開口面積が小さいほど小径となる。上述のように、この構成例では、スリット12をきわめて小さな開口面積とすることができるので、液体燃料を微細な粒子にして霧状に噴射でき、その結果、燃焼装置の燃焼効率を向上させることができる。
また、取付孔10と噴口部材11の嵌合面はノズルサック2側が広くなったテーパ状に形成してあるので、燃料の供給圧力により噴口部材11がさらに強固に嵌合する。したがって、噴口部材11がノズル本体1から脱落するおそれがない。
図1に示す噴射ノズルでは、さらに安全を期するために、抜け止め部材13によって噴口部材11の抜けを規制している。すなわち、抜け止め部材13は、ノズルサック2内に嵌め込み式(ねじ込み式でもよい)に装着され、先端で噴口部材11の基端面を押圧して同部材11の抜けを防止する。この抜け止め部材13は、筒状に形成してあり、燃料供給口から供給される燃料は、その中空部を通って、スリット12へと導かれる。
なお、上述した第一の噴射ノズルでは、噴口部材11の外周にスリット12を形成したが、取付孔10の内周に一端から他端にかけて延在するスリットを形成し、その取付孔10内に噴口部材11(スリットは有しない)を装着しても、上記構成例と同様の噴口を形成することができる。
図4および図5は、上記第二の噴射ノズルの構成例を説明するためのもので、図4は図25に示した噴射ノズルの先端部に相当する部分を拡大して示す縦断面図である。
この構成例でも、ノズル本体1の全体構成は、図25に示した従来の噴射ノズルとほぼ同様の構成となっている。また、ノズル本体1の先端部についても、図25に示した従来の噴射ノズルと同程度か若しくはそれよりも大きな直径の噴口3が形成してある点でほぼ同様の構成となっている。したがって、この噴射ノズルは、従来の噴射ノズル(図25の構造のものに限らず、一般の燃料噴射ノズルを含めて)を大きく設計変更することなく利用できるという特徴を有している。
この構成例では、ノズル本体1の先端部に形成したノズルサック(中空部)2内を、隔壁部材20によって仕切った構造が付加されている。すなわち、ノズルサック2内には、燃料供給口2aと噴口3との間で、噴口3に近い内壁部分にテーパ面1aが形成してある。このテーパ面1aは、燃料供給口2a側(ノズルサック2の基端部側)が広く、噴口3を形成した側(先端側)へいくにしたがって狭くなっている。
一方、隔壁部材20は、図4,図5に示すように、外周面がテーパ面となった円柱台形に形成してあり、その外周面がノズルサック2内のテーパ面1aに密着して嵌合する。
さらに、隔壁部材20の外周には、基端から先端にかけて延びるスリット21が複数箇所(図5では4箇所)に形成してある。これらのスリット21は、前述した第一の噴射ノズルのスリット12と同様の機能を有し、その加工精度も、例えば、ワイヤカット放電加工によって、最小0.025mm程度というきわめて狭い幅で形成することができる。
図25に示したニードル弁4を開放すると、ノズルサック2の基端側に開口する燃料供給口2aから液体燃料がノズルサック2内に供給される。その液体燃料は、供給圧力によって図4に示す隔壁部材20のスリット21内に圧入され、先端開口部から霧状の微粒子になって噴射される。ここで、前記第一の噴射ノズルと同様、スリット21の先端側の開口面積はきわめて小さく形成することができるので、噴射される燃料は、充分に小さな粒子径となる。このようにして隔壁部材20のスリット21から噴射した霧状の燃料は、ノズル本体1に形成した噴口3から外部(燃焼室)へと放出される。
図6乃至図12は、上記第三の噴射ノズルの構成例を説明するためのもので、図6は図25に示した噴射ノズルの先端部に相当する部分を拡大して示す縦断面図である。
この噴射ノズルは、前述した第一の噴射ノズルにおける噴口部材11の構成を変えたものであり、それ以外の構成は第一の噴射ノズルと同様であるため、詳細な説明は省略する。
この構成例の噴口部材30は、図6および図7に示すように、部材本体31に管状部材32を埋設した構成となっている。部材本体31は、外周面がノズル本体1の取付孔10に嵌合するテーパ面となっており、さらに軸方向の一端から他端にかけて貫通する透孔31aが複数箇所に形成してある。
管状部材32は、内径0.025mm程度のきわめて小さな細孔32aを有している。この管状部材32は、例えば、引抜き加工や金属粉末射出成形の技術を応用することによって製作することができる。
ここで、引抜き加工とは、比較的大きな内径(例えば、φ0.5mm以上)の管状部材32を軸方向に引き延ばすことによって、外径とともにその内径を細くしていく加工法である。この引抜き加工を応用することによって、内径0.025mm程度といった極めて小さな細孔32aを有する管状部材32を成形することができる。なお、用途に応じて細孔32aの内径を大きくすることもできる。
また、金属粉末射出成形とは、金属粉とバインダーとを均一に混ぜ合わせ(混練)、それをペレット化(造粒)した後、金型内に射出成形して成形体を製造し、さらに成形体内のバインダーを除去(脱脂)して焼結するという工程を経て製品を製造する方法であり、現在、各種複雑形状の精密小形部品の製造に利用されている。
この金属粉末射出成形の技術を応用し、すなわち金型内の軸方向に細線(金属線,炭素線等)を配置し、射出成形後、この細線を除去することによって上述したようなきわめて小さな細孔32aを有する管状部材32を成形することができる。
図8および図9は、引抜き加工を応用して管状部材32を製作する手段を示している。
まず、外径および内径がともに大きな線材40を用意し、この線材40を図8に示すようにダイス41の加工孔41aに通して引き抜いていく。太径の線材40は、通常の押出し加工等によって容易に製作することができる。ダイス41の加工孔41aは、一端開口部から他端開口部にかけてテーパ状に径が細くなっており、径が太い側の開口部から線材40を通し、径の細い他方の開口部から引き抜くことによって、該線材40を軸方向に引き延ばして外径,内径ともに細い線材とすることができる。
太径の線材40から上記噴射ノズルで使用できる細径(例えば、内径0.025〜0.50mm)の線材まで、単一のダイス41によって加工するには無理があるため、段階的に加工孔41aの径を小さくした複数のダイス41を使用し、順次加工孔41aの小さなダイス41に移行して引抜き加工を実施することにより、細径の線材を形成する。このようにして形成した細径の線材を適宜の長さに切断すれば、細孔32aを有する管状部材32が製作できる。
引抜き加工を応用して製作した管状部材32の細孔32aの内壁は、軸方向に多数の突条が形成され平滑性に劣ることは否めない。用途によって、細孔32aの内壁に平滑性が求められる場合には、図9に示すように、ダイヤモンドペースト42を周面に塗布したワイヤ43を管状部材32の細孔32aに通し、該細孔32aの内周面を研磨する工程を挿入する。
一方、図10は、金属粉末射出成形の技術を応用して管状部材32を製作する手段を示している。
この製作手段では、まず、管状部材32の素材となる金属粉と、この金属粉を固めるためのバインダーとを混ぜ合わせ(混練)、かつペレット化して成形機50への供給を容易にする(造粒)。
成形機50は、例えば図10に示すように、管状部材32の外形に対応した形状の内面を有する成形型51、この成形型51に一端から材料を供給する射出ノズル52、及び成形型51の他端で細線53を挾持するクランプ部材54を備えている。射出ノズル52には、細線53の供給管52aが設けてあり、この供給管52aを通して成形型51内に細線53を自動供給できるようになっている。
射出ノズル52から自動供給された細線53の先端は、成形型51の内部を通って他端から導き出されてクランプ部材54に挾持され、さらに射出ノズル52とクランプ部材54との間で引っ張られて弛みのない状態で成形型51の中心軸部に配置される。
続いて、ペレット化した金属粉とバインダーの混練物を射出ノズル52から成形型51内に供給し、管状部材32を形作る。この管状部材32の内部には中心軸部分に細線53が埋設されている。この管状部材32を成形型51から取り出し、添加してあるバインダーを除去する(脱脂)とともに、管状部材32内に埋設した細線53を引き抜く。
細線53が引き抜かれた管状部材32の中心軸部には、細孔32aが形成される。この細孔32aの内径は使用した細線53の直径に相当する。したがって、この細線53の選択によっては、例えば、内径0.025mm程度という微小な細孔32aを形成することができる。
ここで、細線53としては、各種金属線や炭素線等を使用できるが、好ましくは引張強度の大きなタングステン線やステンレス線等を使用する方が、管状部材32からの引き抜き時の破断が少なく、歩留りが向上する。
バインダーの除去及び細線53の引き抜きを終了した後、管状部材32を焼結して細孔32aを有する管状部材32の製作が完了する。なお、この焼結によって管状部材32は僅かながら収縮するので、この線収縮率を考慮して寸法及び細線53の直径を設定することが好ましい。
上記のようにして製作した管状部材32を部材本体31に埋設して噴口部材30を製作する。
例えば、図11に示すように、部材本体31の透孔31aに、それぞれ管状部材32を嵌め込み、透孔31aの内壁と管状部材32との隙間にろう材55を供給して、該隙間を閉塞するとともに、管状部材32を部材本体31に固着する。
隙間へのろう材55の供給は、同図に示すように、透孔31aの開口端部にろう材55を配置し、加熱によってそのろう材55を溶解し、毛細管現象を利用して隙間内に浸透させて行なうことができる。
また、図12に示すように、溶融したろう材55が充填してある恒温容器56の中へ部材本体31を嵌入してもよい。すると、嵌入により生じた圧力又は毛細管現象によって、透孔31aの内壁と管状部材32との隙間にろう材55が吸いあげられてその隙間内に充填され、該隙間を閉塞するとともに管状部材32を部材本体31に固着することができる。
透孔31aの内壁と管状部材32との隙間に満遍なくろう材55が行き渡ったら、恒温容器56内を大気に開放して、部材本体31を引き出す。その後、管状部材32および部材本体31を切削または研削して、図6に示したノズル本体1の取付孔10に嵌装できる形状に加工する。
この噴射ノズルによっても、ノズルサック2内に充填された液体燃料は、供給圧力によって管状部材32の細孔32aから外部(燃焼室)へと霧状に噴射される。この霧状となった液体燃料の粒子径は、細孔32aの開口面積が小さいほど小径となる。この構成例では、上述したとおり管状部材32の細孔32aをきわめて小さな開口面積とすることができるので、液体燃料を微細な粒子にして霧状に噴射でき、その結果、燃焼装置の燃焼効率を向上させることができる。
図13は上記第四の噴射ノズルの構成例を説明するためのもので、図25に示した噴射ノズルの先端部に相当する部分を拡大して示す縦断面図である。
この噴射ノズルは、前述した第二の噴射ノズルにおける隔壁部材20の構成を変えたものであり、それ以外の構成は第二の噴射ノズルと同様であるため、詳細な説明は省略する。
この構成例の隔壁部材60は、図13に示すように、部材本体61に管状部材62を埋設した構成となっている。部材本体61は、外周面がノズルサック2の内壁に形成したテーパ面1aに嵌合するテーパ面となっており、さらに軸方向の一端から他端にかけて貫通する透孔61aが複数箇所に形成してある。
管状部材62は、内径0.25mm程度というきわめて小さな細孔62aを有している。この管状部材62は、上述した第三の噴射ノズルと同様の手段をもって製作することができる(図8乃至図10参照)。
そして、管状部材62を部材本体61の透孔61aに埋設して隔壁部材60を製作する。この管状部材62の埋設も前述した第三の噴射ノズルと同様に、ろう材55を使用して容易に行なうことができる(図11,図12参照)。
この噴射ノズルによっても、ノズルサック2内に供給された液体燃料が、隔壁部材60を形成する管状部材62の細孔62a内に圧入され、先端開口部から霧状の微粒子となって噴射される。ここで、管状部材62の細孔62aは、前記第三の噴射ノズルと同様、きわめて小径にできるので、そこから噴射される燃料を充分に小さな粒子径とすることができる。このようにして管状部材62の細孔62aから噴射した霧状の燃料は、ノズル本体1に形成した噴口3から外部(燃焼室)へと放出される。
図14および図15は、上記第五の噴射ノズルに使用する噴口部材の構成例を示している。
この構成例では、先に説明した第一の噴射ノズルにおける噴口部材11(図1参照)を、筒状の部材本体70と、この部材本体70の中空部70aに嵌着される柱状部材71とによって形成してある。部材本体70の外周は、第一の噴射ノズルにおけるノズル本体1の取付孔10に嵌合するようにテーパ状となっている。さらに、部材本体70の内周面もテーパ面となっており、筒状部材の外周はこれに対応してテーパ状に形成してある。
そして、柱状部材71の外周には、一端から他端にかけて延在する幅狭のスリット72が複数本(図15では4本)形成してあり、この柱状部材71を部材本体70の中空部70aに嵌め込むことによって、スリット72が噴口を形成するようになっている。ここでも、スリット72はきわめて幅狭に形成できるので、このスリット72によって微小な噴口を構成することができる。
このように部材本体70と柱状部材71とによって構成した噴口部材73を、第一の噴射ノズルで示したノズル本体1の取付孔10に装着することによって、ノズルサック2内に供給された燃料を、スリット72で形成した噴口から微細な粒子の霧状にして噴射することができる。
この第五の噴射ノズルの変形例として、スリット72を部材本体70の内周面に一端から他端にかけて延在して形成してもよい。このような構成によっても、部材本体70と柱状部材71(スリットは形成せず)との嵌合によって、上記構成例と同様に噴口を形成することができる。
図16乃至図19は、上記第六の噴射ノズルの構成例(本願発明の実施例)を説明するためのもので、図16は図25に示した噴射ノズルの先端部に相当する部分を拡大して示す縦断面図である。
この実施例の噴射ノズルは、前述した第一の噴射ノズル(図1参照)における噴口部材11の構成を変えたものであり、それ以外の構成は第一の噴射ノズルと同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、この実施例では、取付孔10を、先に示した第一の噴射ノズルのようなテーパ形状ではなく、基端から先端にかけて直径の等しい透孔としてある。
この実施例の噴口部材80は、図17および図18に示すように、段付きの円柱状に加工してあり、中間部に形成した加工時の逃げ溝81より基端部側が装着部82、先端部側が噴口形成部83となっている。装着部82は、ノズル本体1に形成した取付孔10の内径とほぼ等しい外径となっており、該取付孔10に密接して嵌合する。
噴口形成部83は、取付孔10の内径より短い任意の外径に加工してあり、図16に示すように取付孔10の内壁との間に、隙間84を形成するようになっている。この隙間84が噴口としての機能を有する。
また、噴口部材80の基端には、装着部より大きな外形の鍔部85が形成してあり、この鍔部85がノズル本体1における取付孔10周囲の内面と係合し、噴口部材80の外部への飛び出しを規制している。
さらに、噴口部材80には、基端から逃げ溝81に至る縦溝86が形成してあり、この縦溝86および逃げ溝81によって燃料を隙間84に導く燃料導入通路を形成している。図18では、縦溝86を2本形成してあるが、これに限らず燃料の供給量に応じて任意本数の縦溝86を形成することができる。
上述した構成の噴口部材80は、例えば精密旋盤を用いた旋削によって容易に製作することができる。ここで、噴口形成部83は、1/100mmの単位で高精度に加工することも容易であり、したがって、きわめて微細な隙間84を形成することができる。また、噴口となる隙間84の段面積は、噴口形成部83の外径を変えることによって容易且つ高精度に所望の値とすることができる。
上述した噴口部材80は、図16に示すようにノズル本体1の内部側から取付孔10内に嵌合して装着する。このとき、鍔部85をノズル本体1の内面に接着または溶着してもよい。
図25に示したニードル弁4を開放すると、ノズルサック2の基端側に開口する燃料供給口2aから液体燃料がノズルサック2内に供給される。そして、ノズルサック2内に充填された液体燃料は、供給圧力によって図16に示す隙間(噴口)84から外部(燃焼室)へと霧状に噴射される。この霧状となった液体燃料の粒子径は、隙間84の開口面積が小さいほど小径となる。上述のように、この実施例では、隙間84をきわめて小さな開口面積とすることができるので、液体燃料を微細な粒子にして霧状に噴射でき、その結果、燃焼装置の燃焼効率を向上させることができる。
さて、噴口形成部83と取付孔10の内壁との間に形成した隙間(噴口)84は、図19に示すように環状を呈している。このような環状の隙間(噴口)84から燃料を噴射した場合、図20に示すように、隙間84から噴射した燃料Fに囲まれる部分がエアポケットAとなり、該エアポケットAの真空圧によって噴射燃料Fが内側へ引き込まれてしまうおそれがある。
エンジン等の燃焼装置では、燃料Fの噴射角度θをなるべく広くすることが要請されるため、上記のようなエアポケットAの発生による燃料の引込み現象を防止する手段を講じることが燃焼効率の向上につながる。
そこで、この発明者らは種々の実験を試み、噴口部材80を図21乃至図24に示すような構造とすることにより、上記エアポケットAの発生を抑止できることを確認した。
図21に示す噴口部材80では、噴口部材80の中心軸部に基端から先端に貫通する細孔87を形成してある。この細孔87は、例えば、噴口部材を縦割りに分割し、その分割面80aにワイヤカット放電加工などの加工技術をもって加工し、その後分割面を接着することにより形成することができる。また、先に示した第三の噴射ノズルでの手法を用いても細孔87を形成することができる。
ノズルサック2内に充填された液体燃料は、この中心軸部に形成した細孔87からも噴射するので、該噴射燃料が図20に示したようなエアポケットAの発生を阻止する。
また、図22に示す噴口部材80では、噴口形成部83の先端からさらに前方へ突出部88を延出してある。この突出部88は任意の形状とすることができ、単なる円柱状であってもエアポケットAの発生を阻止できたが、同図に示すように先端に向かって細くなるテーパ形状としたとき、隙間(噴口)84からの燃料の噴射角度θを一層広げることができた。
図23に示す噴口部材80では、テーパ形状の突出部88の周面に螺旋状の溝89を形成してある。このような構造にすると、隙間(噴口)84から噴射した燃料が、螺旋状の溝89に沿って流れながら飛散し、さらに広い範囲に燃料を放散することができた。このような螺旋状の溝89を形成した場合、図24に示すように突出部88を円柱状に形成しても、同様の効果が認められた。
なお、この発明は上述した構成例に限定されるものではない。
例えば、第三の噴射ノズルにおいて、ノズル本体1に対する噴口部材30の装着は、取付孔10の内周面と噴口部材30の外周面とに螺子を形成し、これら相互の螺子の螺合によって行なってもよい。第四の噴射ノズルにおいても同様に、ノズルサック2内の内壁と隔壁部材60の外周面とに螺子を形成し、これら相互の螺子の螺合によってノズル本体1内への隔壁部材60の装着を行なってもよい。
また、第一,第二の噴射ノズルで噴口部材11および隔壁部材20に形成したスリット12,21の断面形状は、任意に設定することができる。さらに、該スリット12,21の数、および第三,第四の噴射ノズルで噴口部材30,隔壁部材60の部材本体31,61に埋設した管状部材32,62の本数も、燃料の噴射量を考慮して任意に設定することができる。
第一の噴射ノズルで噴口部材11の脱落を防止するために装着した抜け止め部材13は、第三,第五の噴射ノズルにおける噴口部材30,73の脱落防止にも同様に利用することができる。
第六の噴射ノズルの噴口部材80では、装着部82を取付孔10に嵌合する構造としたが、取付孔10の内壁と噴口部材80の装着部82とに雌雄のねじを形成し、それらねじの螺合によって噴口部材を装着する構造とすることもできる。
この発明の噴射ノズルは、ノズル本体において噴口が形成される先端部分に特有の構成を備えている。そこで、ノズル本体を先端部分(ノズル先端部品)と他の部分(ノズル本体部品)とに分けて製作し、噴口部材や隔壁部材をノズル先端部品に組み込んだ後、該ノズル先端部品をノズル本体部品に装着(例えば、ねじ込み式に装着)してもよい。
このようにすれば、微小部品である噴口部材または隔壁部材の装着作業や、取付孔内周へのスリットの形成作業を容易に行なうことが可能となる。
この発明は、ディーゼルエンジン,ガソリンエンジンの噴射ノズルとして好適なものであるが、その他にもクリーンヒータのバーナ部分に装着する燃料噴射ノズルなど、燃料を微細な霧状にして噴射する必要のある各種燃焼装置の噴射ノズルとして適用できることは勿論である。
第一の噴射ノズルの先端部分を拡大して示す縦断面図である。 第一の噴射ノズルで使用する噴口部材の縦断面図である。 同じく左側面図である。 第二の噴射ノズルの先端部分を拡大して示す縦断面図である。 第二の噴射ノズルで使用する隔壁部材の正面図である。 第三の噴射ノズルの先端部分を拡大して示す縦断面図である。 第三の噴射ノズルで使用する噴口部材の図3に対応した左側面図である。 第三の噴射ノズルで使用する管状部材を引抜き加工を応用して製作する手段を示す縦断面図である。 引抜き加工によって製作した管状部材の細孔研磨手段を示す縦断面図である。 第三の噴射ノズルで使用する管状部材を金属粉末射出成形を応用して製作する手段を示す縦断面図である。 第三の噴射ノズルにおいて部材本体に管状部材を埋設して噴口部材を製作する手段を示す縦断面図である。 第三の噴射ノズルにおいて部材本体に管状部材を埋設して噴口部材を製作する他の手段を示す縦断面図である。 第四の噴射ノズルの先端部分を拡大して示す縦断面図である。 第五の噴射ノズルで使用する噴口部材を示す縦断面図である。 同噴口部材の構成部品である柱状部材を示す左側面図である。 第六の噴射ノズル(本願発明の実施例)の先端部分を拡大して示す縦断面図である。 第六の噴射ノズルで使用する噴口部材の正面図である。 同噴口部材を先端面側からみた底面図である。 第六の噴射ノズルに形成した噴口の横断面図である。 第六の噴射ノズルに形成した噴口からの燃料の噴射状況を模式的に示す縦断面図である。 第六の噴射ノズルに使用する噴口部材の変形例を図18に対応して示す底面図である。 同じく他の変形例を示す縦断面図である。 同じく図22とは別の変形例を示す縦断面図である。 同じく図22,図23とは別の変形例を示す縦断面図である。 従来の燃焼装置の噴射ノズルを示す縦断面図である。
符号の説明
1:ノズル本体 3:噴口
10:取付孔 11,30,73,80:噴口部材
12,21:スリット 20,60:隔壁部材
31,61:部材本体 32,62:管状部材
32a,62a:細孔 82:装着部
83:噴口形成部 84:隙間(噴口)
85:鍔部 86:縦溝
87:細孔 88:突出部
89:溝

Claims (4)

  1. 中空部を有するノズル本体と、該ノズル本体に形成され前記中空部から外部にかけて貫通する取付孔と、この取付孔に装着される噴口部材とを備えるとともに、
    前記噴口部材は、基端部側に形成され前記取付孔に装着される装着部と、先端部側に形成され前記取付孔の内壁との間に所定の間隙を形成する噴口形成部と、基端から前記噴口形成部に至る燃料導入通路とを有することを特徴とする燃焼装置の噴射ノズル。
  2. 請求項1記載の燃焼装置の噴射ノズルにおいて、前記噴口形成部の先端から前方へ延出する突出部を形成したことを特徴とする燃焼装置の噴射ノズル。
  3. 請求項2記載の燃焼装置の噴射ノズルにおいて、前記突出部を、先端に向かって径が細くなるテーパ状に形成したことを特徴とする燃焼装置の噴射ノズル。
  4. 請求項2または3記載の燃焼装置の噴射ノズルにおいて、前記突出部の周面に螺旋状の溝を形成したことを特徴とする燃焼装置の噴射ノズル。
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