JP2004352829A - メガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

メガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 Download PDF

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Yasuhiro Hirai
康裕 平井
Toshihiko Yamazaki
俊彦 山崎
Kazuo Okazaki
一雄 岡崎
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Abstract

【課題】紫外線吸収能および耐候性、金型汚染性に優れ、かつ耐衝撃性、耐熱性、色調安定性、透明性に優れ、さらに耐薬品性、離型性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなるメガネレンズを提供することにある。
【解決手段】(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、
(b)数平均分子量が200〜1000の飽和脂肪族炭化水素0.05〜2重量部、
(c)25℃における蒸気圧が1×10−8Pa以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.05〜0.4重量部、
(d)亜リン酸エステル系安定剤0.01〜2重量部、
を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】 なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。詳しくは、紫外線吸収能及び耐候性、金型汚染性、耐加水分解性に優れ、耐衝撃性、耐熱性、色調安定性、透明性、耐薬品性および離型性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および該組成物を成形してなるメガネレンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂(以下、単に「ポリカーボネート樹脂」という)は、強度、剛性が大きく、また耐摩擦磨耗性が優れているので、例えば、自動車部品、各種精密機械部品等に広く用いられている。
しかしながら、ポリカーボネート樹脂は耐候性が十分ではなく、例えば、屋外での使用または蛍光灯照射下での室内使用においては、製品の変色あるいは強度の低下が見られるとこから使用がある程度制限されていた。
このため、ポリカーボネート樹脂には、従来から種々の光安定剤が単独であるいは数種組み合わせて用いられており、特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤はその効果が比較的大きいので一般に用いられている。
また、ポリカーボネート樹脂は高屈折率を有し透明性や耐衝撃性にすぐれた特性を有することから、レンズ用材料として使用されてきており、近年メガネレンズ用材料として、視力補正用レンズ、サングラスや保護メガネ等に用いられている。最近は、メガネレンズに紫外線吸収能を付与し、目を有害な紫外線から保護しようとする要望が高くなってきている。ポリカーボネート樹脂製メガネレンズに紫外線級収能を付与するために、ポリカーボネート樹脂に紫外線吸収剤を添加したメガネレンズ用素材としてのポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂100重量部とベンゾトリアゾリルフェノール基を2個有する紫外線吸収剤0.5〜3重量部を配合してなる樹脂組成物より形成されたメガネレンズについて開示されている。しかしながら、特許文献1に使用される紫外線吸収剤は、従来のベンゾトリアゾリルフェノール基を1個有する紫外線吸収剤に比べ、金型汚染性は改善されるものの紫外線吸収剤の添加量が多いため、金型汚染性は未だ充分に満足すべきものでなく、また、耐薬品性が不十分である。
【0004】
また、特許文献2にはポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して特定の構造で表されるアルキリデンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物を0.001〜5重量部添加された耐候性の改善されたポリカーボネート樹脂組成物が開示されており、前記化合物(紫外線吸収剤)の添加により、高圧水銀灯による紫外線照射前後の黄色度の変化(ΔYI)が低下したことを示している。しかしながら、滞留成形性及び金型汚染性、耐加水分解性についてはなんら言及されておらず、また、耐薬品性についても不十分である。
【0005】
本出願人は、メガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物として、粘度平均分子量20,000〜50,000を有するポリカーボネート樹脂100重量部に、25℃における蒸気圧が1×10−8Pa以下の特定のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、および亜リン酸エステル系安定剤を配合した、紫外線吸収能および耐候性に優れ、金型汚染性がなく、耐加水分解性、耐熱性、耐衝撃性、色調安定性を有し、透明性に優れたポリカーボネート樹脂組成物および該組成物を成形したメガネレンズについて出願した(特願2003−14319号)。
メガネレンズ用材料は、透明性に優れると共に耐衝撃性などの機械的強度に優れることが必要であり、また化粧品や整髪料などが付着し劣化しやすいことから、さらに耐薬品性も要求されている。
【0006】
ポリカーボネート樹脂の有する透明性を損なわずにポリカーボネート樹脂の耐薬品性を改良するために、共重合ポリエステルおよび耐候性改良剤(紫外線吸収剤)を配合することが提案されている(例えば、特許文献3)。これは所謂ポリカーボネート樹脂成形材料に関するもので、目を保護しようとするメガネレンズ用に向けられたものでない。
また、ポリカーボネート樹脂に成形時の離型性を付与するために、通常離型剤が添加される。離型剤としては、高級脂肪酸エステル、ポリシロキサン化合物、パラフィンワックス、ポリカプロラクトンなどが使用される。これらのうち、特に透明性を求められる分野では一般に飽和脂肪酸エステルが用いられてきた。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−291205号公報
【特許文献2】
特公平6−51840号公報
【特許文献3】
特開2001−207064号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、紫外線吸収能及び耐候性、金型汚染性、耐加水分解性に優れ、耐衝撃性、耐熱性、色調安定性、透明性、耐薬品性および離型性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および該樹脂組成物を成形してなるメガネレンズを提供することにある。特に紫外線吸収能及び耐候性、金型汚染性に優れ、透明性を有し、耐薬品性および離型性に優れたポリカーボネート樹脂組成物および該樹脂組成物を成形してなるメガネレンズを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく種々検討を行い、紫外線吸収剤と共に、特定範囲の分子量を有する飽和脂肪族炭化水素(ワックス類)を配合することにより金型汚染性の問題がなく、透明性を低下することなく離型性に優れ耐薬品性を向上させ得ることが見出された。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、
(1)(a)粘度平均分子量が20,000〜50,000の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(b)数平均分子量が200〜1,000の飽和脂肪族炭化水素0.05〜2重量部、(c)25℃における蒸気圧が1×10−8Pa以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.05〜0.4重量、(d)亜リン酸エステル系安定剤0.01〜2重量部を含有するメガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【0011】
(2)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(b)が下記一般式(1)あるいは(2)、およびその混合物であることを特徴とする上記(1)記載のメガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【化5】
Figure 2004352829
【化6】
Figure 2004352829
【0012】
(3)亜リン酸エステル系安定剤(d)が、下記一般式(3)および/または下記一般式(4)に示される化合物であることを特徴とする上記(1)または2に記載のメガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【化7】
Figure 2004352829
(式中、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表す)
【化8】
Figure 2004352829
(式中、R〜Rは、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、m及びnは、それぞれ0〜4の整数を表す)
【0013】
(4)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、さらに(e)フェノール系抗酸化剤0.01〜2重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のメガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【0014】
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなるメガネレンズ。
を要旨とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、メガネレンズ用素材として、特に紫外線吸収能及び耐候性、金型汚染性に優れ、透明性を有し、耐薬品性および離型性に優れたポリカーボネート樹脂組成物であり、(a)粘度平均分子量が20,000〜50,000の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、(b)数平均分子量が200〜1000の飽和脂肪族炭化水素0.05〜2重量部、(c)25℃における蒸気圧が1×10−8Pa以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.05〜0.4重量部、(d)上記一般式(1)および(2)で表される亜リン酸エステル系安定剤0.01〜2重量部を、さらに必要に応じ(e)フェノール系抗酸化剤0.01〜2重量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0016】
本発明におけるポリカーボネート樹脂(a)としては、芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。なお、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法については、限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)あるいは、溶融法(エステル交換法)等いずれでも製造することができる。
【0017】
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテルなどが挙げられ、これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独で、または2種以上を混合して使用することもできる。
【0018】
分岐したポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノールなどを前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、使用量は、0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0019】
本発明において、ポリカーボネート樹脂(a)としては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。
また、エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する場合に用いられる炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等が挙げられる。
【0020】
ポリカーボネート樹脂(a)の分子量は、溶媒として塩化メチレンを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、20,000〜50,000である。粘度平均分子量が20,000より小さいと、レンズ成形品の耐衝撃性が低下し、割れが発生する虞があるので好ましくなく、50000より大きいと、流動性が悪くなり、成形性に問題がある。好ましい粘度平均分子量は20,000〜40,000であり、より好ましくは21,000〜30,000である。
本発明において粘度平均分子量(Mv)は、塩化メチレンを溶媒として、ウベローデ粘度計によって25℃の温度で極限粘度[η]を測定し、次式により算出した値である。
【数1】
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83
【0021】
本発明におけるポリカーボネート樹脂の製造法において、分子量を調節するためには、芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として一価芳香族ヒドロキシ化合物が用いられる。一価芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、m−及p−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール及びp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。
本発明において、ポリカーボネート樹脂(a)としては、単独のみならず、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
【0022】
本発明に用いられる飽和脂肪族炭化水素(b)は、通常はパラフィンワックスとよばれるもので、その主成分はn−パラフィンおよび/またはi−パラフィンで、融点が50〜80℃の無色無臭の固体である。この飽和脂肪族炭化水素は、通常離型剤として使用されており、優れた離型性を付与することができる。しかしながら、ポリカーボネート樹脂に対しては相溶性が低く成形品が不透明になることがあることから、特に透明性が重視されるレンズ用素材には、通常、飽和脂肪酸エステルが離型剤として用いられていた。
本発明においては特定範囲の分子量を有する飽和脂肪族炭化水素を配合することにより透明性を損なうことなく、良好な離型性を有し耐薬品性を付与し得たものである。
本発明において使用される飽和脂肪族炭化水素は数平均分子量が200〜1000である飽和脂肪族炭化水素である。数平均分子量が200より小さい場合は、成形時に揮発しやすいため金型汚染の問題があり、また耐薬品性および離型性が不充分となる。一方、数平均分子量が1000より大きい場合には、透明性が低下する虞があり好ましくない。本発明に適用するのに好ましい飽和脂肪族炭化水素の数平均分子量は300〜800である。
【0023】
本発明に用いられる上記飽和脂肪族炭化水素(b)の配合量としてはポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対して0.05〜2重量部であり、好ましくは0.07〜1.7重量部であり、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。飽和脂肪炭化水素の配合量が0.05重量部よりも少ない場合は耐薬品性の付与効果が不十分であり、一方2重量部より大きいと、成形時の揮発による金型汚染や成形品の透明性が損なわれる虞がある。
【0024】
本発明に用いられる紫外線吸収剤(c)は、25℃における蒸気圧1×10−8Pa以下のベンゾトリアゾール構造を有する紫外線吸収剤である。
上記の蒸気圧を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、好ましくは、下記構造式(1)もしくは(2)に示されるものが挙げられる。
【化9】
Figure 2004352829
【化10】
Figure 2004352829
【0025】
このような紫外線吸収剤を用いることにより、成形性を阻害することなく、かつ透明性を損なうことなく、さらに、成形加工時において、紫外線吸収剤の昇華による金型汚染性を抑えることができる組成物を得ることができる。
【0026】
本発明に用いられる上記紫外線吸収剤(c)の配合量としては、ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対して0.05〜0.4重量部であり、好ましくは0.07〜0.35重量部である。紫外線吸収剤の配合量が0.05重量部よりも少ない場合には、所期の紫外線吸収能を発揮することができず、一方0.4重量部を超えると、金型汚染の虞があり好ましくない。
【0027】
次に、本発明において用いられる亜リン酸エステル系安定剤(d)(以下、単に「リン系安定剤」ということがある)としては、種々のものが使用されるが、耐加水分解性が要求される組成物については、ペンタエリスリトール構造を有する亜リン酸エステル系安定剤の使用は、プレッシャークッカ−試験(120℃,100%RH,5hr)後に、成形品が白濁する場合があり好ましくない。
【0028】
本発明において用いられる亜リン酸エステル系安定剤(d)としては、下記一般式(3)および/または一般式(4)で示される亜リン酸エステル系安定剤(c)が好ましい亜リン酸エステル系安定剤として用いられる。
【化11】
Figure 2004352829
(Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す)
【化12】
Figure 2004352829
(R〜Rは、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、m及びnは、それぞれ0〜4の整数を表す。)
【0029】
これらRおよびR〜Rで示される基としては、それぞれ、例えば、炭素数1〜20のアルキル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基などの脂環族炭化水素基、フェニル基などの芳香族炭化水素基が好ましい。また、これらの基はヒドロキシル基などの置換基で置換されていてもよい。
【0030】
上記一般式(3)または(4)の構造を有する亜リン酸エステル系安定剤としては、具体的には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレ]ンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイト及びトリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。これらの安定剤のうち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0031】
本発明において、亜リン酸エステル系安定剤(d)の配合量としては、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対して0.01〜2重量部である。配合量が0.01重量部より少ないと、安定剤としての効果が不十分であり、一方、2重量部を超えて添加してもそれ以上の安定剤としての効果は得られない。亜リン酸エステル系安定剤の配合量は,0.02〜1重量部が好ましい。
【0032】
上記リン系安定剤を用いることにより耐候性、耐衝撃性、透明性、色調安定性に優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られるが、このリン系安定剤に加えて、さらにフェノール系抗酸化剤を配合することにより、さらなる耐候性、色調安定性が優れたポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
【0033】
本発明において使用されるフェノール系抗酸化剤(e)としては,特に制限はないがヒンダードフェノール系が好適に用いられる。代表的な例としてはペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0034】
上記のうちで、特にペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。
【0035】
上記フェノール系抗酸化剤(e)の配合量としては、ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対して0.01〜2重量部である。配合量が0.01重量部より少ない場合には、抗酸化剤としての効果が不十分であり、一方、2重量部を超えて添加してもそれ以上の抗酸化剤としての効果は得られない。フェノール系抗酸化剤の配合量は、0.02〜1重量部が好ましい。
【0036】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、(a)ポリカーボネート樹脂、(b)飽和脂肪族炭化水素、(c)紫外線吸収剤、(d)亜リン酸エステル系安定剤、必要であれば(e)フェノール系抗酸化剤を一括溶融混練する方法、あるいは(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)飽和脂肪族炭化水素、(c)紫外線吸収剤、(d)亜リン酸エステル系熱安定剤を予め混練後、必要であれば(e)フェノール系抗酸化剤を配合し、溶融混練する方法などが挙げられる。
【0037】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、上記の(a)〜(e)の成分の他に、必要に応じ、離型剤、イオウ系酸化防止剤、ベンゾフラノ−2−オン化合物、防曇剤、帯電防止剤、顔料、染料などの添加剤を配合することができる。
【0038】
離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、ポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれた少なくとも1種の化合物等芳香族ポリカーボネート樹脂に使用されるものが用いられる。これらの中で、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0039】
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0040】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
【0041】
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
【0042】
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0043】
離型剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して5重量部以下であり、好ましくは1重量部以下である。5重量部を超えると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。該離型剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
【0044】
イオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などをあげることができる。上記のうち、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
【0045】
イオウ系酸化防止剤を添加すると、特にリサイクル安定性、すなわち本発明のメガネレンズのリサイクル品を再度成形品材料として再使用する場合、成形品の着色を抑制するという効果がある。イオウ系酸化防止剤の添加量はポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜2重量部である。配合量が0.01重量部より少ないと、成形時のリサイクル安定性が不十分であり、2重量部を越えて添加してもそれ以上の効果は得られない。イオウ系酸化防止剤の添加量は好ましくは0.02〜1重量部であり、より好ましくは0.03〜0.5重量部である。
【0046】
また、必要に応じて添加される防曇剤、帯電防止剤、顔料や染料は、従来から目的に応じてポリカーボネート樹脂に適宜使用されるそれ自体公知のものが使用される。
【0047】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、紫外線吸収能および耐薬品性にすぐれており、その他に透明性、金型汚染性、耐衝撃性などの諸物性に優れているので、特にメガネレンズの用途に適している。本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いてメガネレンズを製造する方法は特に限定されるものではなく、例えば、金型を用いた射出成形による製造法等が挙げられる。本発明樹脂組成物を使用した眼鏡レンズとしては、通常の凹レンズ、凸レンズのみならず、サングラス、保護眼鏡等のレンズ、レンズと枠、ブリッジ部等を一体成形したゴーグル型眼鏡等も含まれる。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例においては次に記載の原材料を用いた。
【0049】
(1)ポリカーボネート樹脂−1:粘度平均分子量が25,000のポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート
(2)ポリカーボネート樹脂−2:粘度平均分子量が18,000のポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート
【0050】
(3)飽和脂肪族炭化水素−1:日本精蝋製「パラフィンワックス155」(平均分子量約480)
(4)飽和脂肪族炭化水素−2:ヘキスト社製「ヘキストワックスPE520」(平均分子量約2000)
【0051】
(5)紫外線吸収剤−1:下記構造式(1)で表される紫外線吸収剤 (25℃における蒸気圧:6.0×10−13Pa)
【化13】
Figure 2004352829
【0052】
(6)紫外線吸収剤−2:下記一般式(2)で表される紫外線吸収剤
(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール)(25℃における蒸気圧:2.0×10−10 Pa)
【化14】
Figure 2004352829
【0053】
(7)紫外線吸収剤−3:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)フェノール
(25℃における蒸気圧:1.0×10−5Pa)
【0054】
(8)共重合ポリエステル樹脂:三菱化学株式会社製「ノバペックス NC102Z」:ナフタレンジカルボン酸8モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂、極限粘度0.81
【0055】
(9)リン系安定剤−1:トリス(2,4―ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
(10)リン系安定剤−2:2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト
【0056】
(11)フェノール系抗酸化剤:ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、(商品名:IRGANOX1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
【0057】
試験片の物性評価は次に記載のように行った。
【0058】
(A)曇価(Haze):日本製鋼所製J−50EP成形機を用いて厚さ3mmのプレートを290℃で通常成形した。得られた成形品(プレート)について、濁度計NDH−2000(日本電色工業(株)製)で測定した。
【0059】
(B)UVカット波長:日本製鋼所製J−50EP成形機を用いて厚さ2mmのプレートを290℃で通常成形した。得られた成形品(プレート)を用いて分光光度計UV−3100PC((株)島津製作所製)を用いて、JIS−K7361に準拠して測定した。
【0060】
(C)成形品の耐薬品性試験:厚み4mmのISO試験片に0.5%の歪みを与え、20℃、濃度100wt%のブタノール中に試験片を浸漬し、クラック発生までの時間を測定した。
○:クラック発生までの時間が60sec以上
△:クラック発生までの時間が30〜60sec
×:クラック発生までの時間が30sec未満
【0061】
(D)成形品の離型性:コップ金型を用いて、成形温度290℃でコップ型成形品を成形した際の離型性を評価した。
○:離型性が良好、△:離型性が普通、×:離型性が不良
【0062】
(E)メガネレンズ成形品の不良率:レンズ金型を用いて、成形温度290℃でメガネレンズ成形品を500個成形した際の成形品の不良個数を求めた。
成形品の不良率(%)={成形品の不良個数/成形個数(500個)}×100
【0063】
(F)メガネレンズの耐衝撃性試験:レンズ、レンズ枠およびブリッジ部のフロント部ならびにパット部が一体に成形されたゴーグル型金型で厚さ2mmのレンズ部を有する保護メガネを成形後、直径6cm,重さ1.05kgの鉄球を1.8mの高さから落下させる方法による落球衝撃試験を行って評価した。
○:落球衝撃試験後割れず。×:落球衝撃試験後割れ発生。
【0064】
実施例1〜8,比較例1〜9
表1〜4に示す配合処方で、原料を秤量し、タンブラーによって20分混合した後、40mmφ単軸押出機を用いて、シリンダー温度290℃でペレット化した。得られたペレットを用い、射出成形機にて、シリンダー温度290℃にて3mm厚プレートを成形し、上記(A)(B)の評価を行った。成形品の耐薬品性については、上記(C)記載の方法で行い、成形品の離型性については上記(D)記載の方法で行った。レンズ成形品の不良率については、上記(E)記載の方法で行い、また、上記したゴーグル型金型で厚さ2mmのレンズ部を有する保護メガネを成形後、上記(F)記載の試験法により衝撃試験を行った。
評価結果を表1〜4に示す。
【0065】
【表1】
Figure 2004352829
【0066】
【表2】
Figure 2004352829
【0067】
【表3】
Figure 2004352829
【0068】
【表4】
Figure 2004352829
【0069】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、紫外線吸収能及び耐候性、金型汚染性、耐加水分解性に優れ、耐衝撃性、耐熱性、色調安定性、透明性、耐薬品性、離型性に優れており、特にメガネレンズ用素材として極めて有用である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られるメガネレンズは紫外線吸収能に優れ、透明性を維持し優れた耐衝撃性を有し、耐薬品性に優れたものである。

Claims (5)

  1. (a)粘度平均分子量が20,000〜50,000の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、
    (b)数平均分子量が200〜1,000の飽和脂肪族炭化水素0.05〜2重量部
    (c)25℃における蒸気圧が1×10−8Pa以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤05〜0.4重量部、および
    (d)亜リン酸エステル系安定剤0.01〜2重量部、
    を含有することを特徴とするメガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. (b)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が下記一般式(1)あるいは(2)、およびその混合物であることを特徴とする請求項1記載のメガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2004352829
    Figure 2004352829
  3. (d)亜リン酸エステル系安定剤が、下記一般式(3)および/または下記一般式(4)に示される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のメガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2004352829
    (式中、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表す)
    Figure 2004352829
    (式中、R〜Rは、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、m及びnは、それぞれ0〜4の整数を表す)
  4. (a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、さらに(e)フェノール系抗酸化剤0.01〜2重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のメガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなるメガネレンズ。
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