JP2004347439A - 無線機の空中線電力推定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】無線機電波発信ステップ1において、反射箱5内で無線機から電波を発信させる。無線機電波受信ステップ2において、無線機から発信された電波を反射箱5内の受信アンテナで受信する。電界強度累積分布関数算出ステップ3において、受信した無線機の電波信号の統計量を統計量測定装置6を用いて測定し、反射箱5における電界強度累積分布関数を算出する。そして、空中線電力推定ステップ4において、算出された電界強度累積分布関数の累積確率63.2%値と予め算出された反射箱損とに基づいて無線機の空中線電力を推定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,空中線電力推定技術に関し、特に、反射箱内での電界強度時間変動分布の統計量に基づく無線機の空中線電力推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロニクスの発展に伴い無線設備はますます小型・軽量化され、例えばアンテナが取り外しできない機器も開発されている。従来の無線機の空中線電力測定法としては、例えば、6面の電波無反射室あるいは反射波を抑圧した試験場におけるアンテナ置換法による測定(平成8年度、電気通信技術審議会答申、「アンテナ一体型無線設備の空中線電力の測定法に関する技術的条件」)がある。
【0003】
また、電波暗箱を利用し、無線機から受信した直接波に基づいて、無線機の空中線電力を推定する方法もある(例えば、非特許文献1参照)。また、反射箱内において、受信アンテナの方向を調整し、無線機から反射波のみを受信し、受信した反射波の電力の平均をとって無線機の空中線電力を推定する方法もある。
【0004】
【非特許文献1】
蒔田好行,宮澤義幸,杉山功、田中稔泰,清水優輝,“アンテナ一体型無線機の試験法に関する検討,”2001信学総大,B−4−28,Mar.2001.
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術のうち、電波無反射室、電波暗箱を用いて空中線電力を推定する方法は、費用がかかるという問題がある。また、反射波のみを用いて空中線電力を推定する方法は、受信アンテナの方向の調整という煩雑な操作が必要である。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、煩雑な操作を必要とせずに、送受信アンテナの向きにかかわらず、しかも安価に無線機の空中線電力を推定できる方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため,本発明は,反射箱内での電界強度時間変動分布の統計量に基づいて、無線機の空中線電力を推定する。
【0008】
すなわち、本発明は、無線機の空中線電力推定方法であって、反射箱内で無線機から電波を発信するステップと、前記反射箱内で前記無線機から発信された電波を受信するステップと、受信した電波に基づいて、前記反射箱内での電界強度累積分布関数を算出するステップと、算出された電界強度累積分布関数に基づいて、前記無線機の空中線電力の推定値を算出するステップとを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、無線機の空中線電力推定方法であって、反射箱内で無線機から電波を発信するステップと、前記反射箱内で前記無線機から発信された電波を受信するステップと、受信した電波に基づいて、前記反射箱内での電界強度累積分布関数を算出するステップと、算出された電界強度累積分布関数の累積確率63.2%値と予め算出された反射箱損の値とに基づいて、前記無線機の空中線電力の推定値を算出するステップとを有することを特徴とする。
【0010】
本発明を用いることにより、煩雑な操作を必要とせずに、無線機から発信される直接波および反射波双方を用いて、しかも安価に無線機の空中線電力を推定することが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、図を用いて、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の無線機空中線電力推定方法の概要を示す図である。図1において、1は無線機電波発信ステップ、2は無線機電波受信ステップ、3は電界強度累積分布関数算出ステップ、4は空中線電力推定ステップである。また、5は反射箱、6は統計量測定装置である。ここで、反射箱5は、箱内の回転する羽根で媒質を時間的に変動させる装置であり、統計量測定装置6は、変動する電波信号の統計量を測定する測定装置である。
【0012】
無線機電波発信ステップ1では、反射箱5内において無線機から電波を発信させる。無線機電波受信ステップ2では、無線機から発信された電波を反射箱5内の受信アンテナで受信する。電界強度累積分布関数算出ステップ3では、受信した無線機の電波信号の統計量を統計量測定装置6を用いて測定し、反射箱5における電界強度累積分布関数を算出する。また、空中線電力推定ステップ4では、算出された電界強度累積分布関数に基づいて無線機の空中線電力を推定する。
【0013】
以下に、まず、本発明の原理を説明する。図2は、電界強度累積分布関数を示す図である。反射箱5内に波源と波源の作る電磁界を検出するセンサが存在するとき、波源からセンサへは直接波のほかに多数の反射波が到達する。センサではこれらの合成波が受信される。波源・センサ・媒質いずれもが静止していればセンサで検出される合成波の包絡線レベルは一定になるが、その値は波源・センサの位置により大幅に異なる。
【0014】
波源・センサが移動する、あるいは媒質が変動すれば包絡線レベルは変動し、受信レベルは一種の確率変数と見なせる。反射箱5内には、回転する羽根を設け、媒質を時間的に変動させる。
【0015】
合成波の受信アンテナ出力電圧をv(t)、その包絡線r(t)の確率密度関数(PDF:Probability density function)をp(r)とするとき、多数の反射波をマルチパス波と見なすならば、包絡線rが区間[r,r+dr]に入る確率は、r≧0に対して、
【0016】
【数1】
【0017】
で与えられる。
【0018】
ここで、σ2 はマルチパス波の電力、A2 /2は直接波の電力、I0 は0次(0th−order )変形ベッセル関数である。式(1)は2つのパラメータAとσを含んでいる。ここで新たなパラメータρ(直接波の電力とマルチパス波の電力との比)
【0019】
【数2】
【0020】
を定義し、包絡線rを直接波とマルチパス波の電力和の平方根で規格化すると、
【0021】
【数3】
【0022】
ただし、
【0023】
【数4】
【0024】
と表される。ここで分子の係数1/√2は包絡線の2乗平均を1にするために付けている。
【0025】
包絡線の2乗平均は、
E[r2 (t)]=A2 +2σ2 (5)
で与えられる。従って、
【0026】
【数5】
【0027】
となる。
【0028】
式(3)をRで積分することにより、例えば、図2に示す累積分布関数F(R)(CDF:Cumulative distribution function)が算出される。この累積分布関数F(R)(CDF)が、本発明における電界強度累積分布関数である。
【0029】
単位階段関数(ステップ関数)をUとするとき、ρ→∞のときはF(R)=U(R−1)となり、ρ=0のときはレイリー分布になるから、F(R)=1−exp(−R2 )となる。したがって累積確率1−e−1=0.632において両者は交叉する。両者の中間のρに対しては、交叉点はずれるが、累積確率0.632において、そのずれは高々0.5dBであることが判る(図2参照)。すなわち電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値はρに関わらずほぼ一定の値になる。これは、反射箱内がレイリー分布でもライス分布でも電力和の平方根で規格化すれば、一定の値となるということである。
【0030】
本発明では、この電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値がほぼ一定であることを利用して、無線機空中線電力を推定する。具体的な推定方法については後述する。
【0031】
次に、電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値がほぼ一定であることを具体的に検証する。図3は、本発明の実施の形態において測定に用いた反射箱の諸元を示す図である。
【0032】
反射箱5のサイズは、5.5m×4.5m×3mである。反射箱5内の攪拌翼(スターラー)のサイズは2m×0.7m、設置場所は、天井、正面、右、左の壁からの距離70cmの位置、回転速度は、最高120rpmであり、4枚別々に回転可能である。また、シールド特性は、150MHz−10GHzに対して100dB以上、18GHzに対して90dB以上である。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態において測定に用いた統計量測定装置6の諸元を示す図である。統計量測定装置6はスペクトルアナライザ(スペアナ)のビデオ出力信号をA/D変換し、指定された時間区間における種々の統計量を実時間計測する装置である。
【0034】
統計量測定装置6の単位観測時間は、約1秒、欠測時間は、約10ミリ秒、サンプリング速度は、20Mサンプル/秒(50ns)、振幅分解能は、256段階である。統計量測定装置6としては、例えば、APD測定装置などを用いることができる。
【0035】
また、測定可能データは、確率密度分布(PDF:Probability density function)、振幅確率分布(1−CDFに対応)(APD:Amplitude probability distribution)、交差率分布(CRD:Crossing rate distribution)、パルス幅分布(PDD:Pulse duration distribution)、パルス間隔分布(PSD:Pulse separation distribution)である。
【0036】
ここで、反射箱5内では、無線機から送信された電波が壁や攪拌翼で反射するので、受信アンテナにはその振幅がランダムに変動する信号が受信される。しかし、このランダムな信号は攪拌翼の配置状況に依存するので周期性を持っている。従ってその周期に対応した時間のデータを取得することにより適正なデータ処理が可能になる。そのため、適切なデータ取得時間を得るために受信信号の自己相関関数を求めた。
【0037】
図5の網かけ部分は、後述する図11に示す反射箱5において、回転速度を攪拌翼B:120rpm、攪拌翼D:117rpmとした場合の統計量測定装置6により得られた測定値(PDF,測定時間1秒)をプロットしたものである。5分間での各測定データ(300本、網かけ部分)はランダム信号の周期に満たないため、ばらつきが大きく、このままでは適切なデータ処理が不可能であることがわかる。
【0038】
攪拌翼の配置状況に依存する受信ランダム信号の周期tは、第1の攪拌翼と第2の攪拌翼の回転速度をf1 及びf2 とし、N1 とN2 を整数としたとき、
t=(N1 −N2 )/2(f1 −f2 ) (7)
で求まる。例えば、第1の攪拌翼の回転速度を120rpm、第2の攪拌翼の回転速度を117rpmとした場合のランダム信号の周期は式(7)からt=10秒と計算される。以下、図6の測定系統を用いて、上記計算結果を検証する。
【0039】
図6において、7は電波信号を発生する信号発生器、8はスペクトルアナライザ、9はスペクトルアナライザのビデオ出力を測定するデジタルオシロスコープ、51は電波を送信する送信アンテナ、12は反射箱、52は電波を受信する受信アンテナ、53は攪拌翼A、54は攪拌翼B、55は攪拌翼C、56は攪拌翼Dである。
【0040】
信号発生器7から1GHz、0dBの出力を送信アンテナ51に加え、受信アンテナ52の受信レベルをスペクトルアナライザ8で受信する。スペクトルアナライザ8はゼロスパンとし、スペクトルアナライザ8のビデオ出力をデジタルオシロスコープ9(20ksample/sec)で測定する。このデジタルオシロスコープ9の時系列データから自己相関時間を求めると、図7のように、式(7)を用いたランダム信号の周期の計算結果と同じく10秒毎に自己相関がとれていることがわかる。
【0041】
ここで、後述する図11の反射箱5内における攪拌翼B54の回転速度を120rpm、攪拌翼D56の回転速度を117rpm、攪拌翼A53、攪拌翼C55の回転速度を0rpmの設定で、10秒を測定時間としたときの5分間のPDF測定結果を図5の実線(黒線部分)に示す。このデータは30本の線に該当するが、それらはほぼ重なっており、統計量取得に適切なデータ処理が可能になると思われる。
【0042】
以上の自己相関の分析結果から、本発明の実施の形態では、反射箱内の攪拌翼B54と攪拌翼D56の攪拌翼の回転速度をそれぞれ120rpmと117rpm、単位測定時間10秒間としたデータを用いて解析を行った。
【0043】
また、本発明の実施の形態で用いた統計量測定装置6は、信号強度をA/D変換し、そのADCコードに対応した確率分布を求める。図8にADCコードに対応するスペアナ指示値を示す。この図からADCコードとスペアナ指示値とが直線性よく対応できていることがわかる。
【0044】
反射箱内で、送信アンテナと受信アンテナを対向させた場合、送信アンテナから放射された電波は、受信アンテナにおいて直接波のみではなく攪拌翼や壁で反射されたマルチパス波(マルチパス波)との合成波が受信される。そこで、電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値がほぼ一定であることを検証するため、以下の測定を行った。
【0045】
受信される合成波のうち、直接波のみを測定するために図9の測定系統図により、6面の電波暗箱において測定を行った。
【0046】
図9において、11は電波暗箱、100は送信アンテナ、101は受信アンテナである。信号発生器7により発生した電波信号に基づき、送信アンテナ100から受信アンテナ101へ電波を発信し、受信アンテナ101において受信された電波レベルをスペクトルアナライザ8で受信し、スペクトルアナライザ8の出力を統計量測定装置6で測定する。この場合、マルチパス波は存在せず直接波のみであるため、ρは∞に近く包絡線レベルの変動がない。
【0047】
次に、マルチパス波のみを測定するため、反射箱内に金属フェンスを送受アンテナ間に設置し、攪拌翼を回転させ図10に示す測定系統図により測定を行った。
【0048】
図10において、13は反射箱、57は金属フェンスである。なお、受信アンテナ52には壁や攪拌翼から反射した電波が様々な角度から受信されるため、受信アンテナ52の方向をX(Horizontal 0deg)、Y(Horizontal 90deg)、Z(Vertical 0deg)と変えた場合それぞれについて測定を行った。この場合直接波は存在しないのでρは0に近い。
【0049】
また、直接波とマルチパス波との合成波を受信するため、図10の測定系統図の金属フェンス57を取り除き、図11に示す測定系統で反射箱5内の攪拌翼を回転させ測定を行った。なお、本来直接波は受信アンテナ52がX方向のもののみ受信されるはずであるが、マルチパス波測定時と同様に受信アンテナ52の方向をX,Y,Zと変えて測定を行った。直接波とマルチパス波の電力比ρは不明であるが、理論によると累積確率63.2%値はρに依存しないはずである。
【0050】
図12(A)は図9の測定系統で測定した直接波の測定結果(CDF)、図12(B)は図10の測定系統で測定したマルチパス波の測定結果(CDF)、図12(C)は図11の測定系統で測定した合成波の測定結果(CDF)である。横軸は電力和の平方根で規格化したRである。
【0051】
図12(A)に示す直接波は、受信アンテナ101がX方向のものである。また、図12(B)に示すマルチパス波は、受信アンテナ52の向きがX,Y,およびZ方向の場合の測定結果が重なっている。このことから、マルチパス波は受信アンテナ52の向きを変えても一様な信号であることがわかる。
【0052】
図12(C)に示す合成波は、受信アンテナ52の向きを変えた場合にレベルの変動がある。そこで、受信アンテナ52の向きをX,Y,およびZと変えて受信した信号を平均することにより、受信アンテナ52のすべての向きによる信号を受信していると考え、図13(A)に直接波のCDFおよび受信アンテナ52の向きがX方向,Y方向,およびZ方向の測定結果を平均したマルチパス波と合成波のCDF、図13(B)に直接波のPDFおよび受信アンテナ52の向きがX方向,Y方向,およびZ方向の測定結果を平均したマルチパス波と合成波のPDFを示す。
【0053】
図13(A)によると、直接波、マルチパス波及び合成波が電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値において交叉しており、原理と同様に累積確率63.2%値は直接波の電力とマルチパス波の電力との比ρに依拠しないことがわかる。このことから、電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値がほぼ一定であることが実証できたと言える。
【0054】
図14は、本発明の無線機の空中線電力の推定値の具体的な算出原理を示す図である。反射箱5内で、図14(A)に示すように、送信アンテナ51のアンテナ端電力をP1 としたときの受信アンテナ52端での電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値をP2 とする。また、図14(B)に示すように、送信アンテナ51の代わりに空中線電力Px の無線機58を入れたときの受信アンテナ52端での電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値をP3 とする。上記実証された原理より電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値がρに関わらず一定となるので、次式が成り立つ。
【0055】
Px /P1 =P3 /P2 (8)
したがって、
Px =P3 (P1 /P2 ) (9)
ここで、P1 /P2 を反射箱損LC と定義すると、
Px =P3 LC (10)
となり、無線機58の電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値を測定し、この測定値と、予め求めておいた周波数毎の反射箱損LC とに基づいて、空中線電力Px を推定することができる。
【0056】
図15は、本発明の実施の形態における無線機空中線電力推定処理フローを示す図である。まず、反射箱5内で無線機から電波を発信する(ステップS1)。具体的には、図16に示す測定系統における反射箱5内において、無線機58から電波を発信する。なお、図16に示す測定系統においては、例えば、反射箱5内の攪拌翼B54の回転速度を120rpm、攪拌翼D56の回転速度を117rpm、攪拌翼A53、攪拌翼C55の回転速度を0rpmとし、10秒を測定時間とする設定で解析を行う。
【0057】
次に、反射箱5内で無線機58から発信された電波を受信する(ステップS2)。具体的には、無線機58から発信された電波を受信アンテナ52において受信する。
【0058】
そして、受信した電波に基づいて電界強度累積分布関数を算出する(ステップS3)。具体的には、受信アンテナ52が受信した電波レベルをスペクトルアナライザ8が受信し、統計量測定装置6がスペクトルアナライザ8のビデオ出力信号をA/D変換し、電界強度累積分布関数(CDF)を算出する。本発明の実施の形態においては、例えば、図17に示すような電界強度累積分布関数(CDF)が算出される。
【0059】
次に、算出された電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値と予め算出された反射箱損の値とに基づいて無線機の空中線電力の推定値を算出する(ステップS4)。具体的には、ステップS3で算出された電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値P3 を求め、予め算出された反射箱損LC と上記式(10)を用いて、無線機58の空中線電力Px を算出する。まず、ステップS3で算出された電界強度累積分布関数の累積確率63.2%値P3 は、図17より、−43.7dBmである。
【0060】
また、反射箱損LC は、予め以下の通り算出しておく。すなわち、図11に示す測定系統において、反射箱5内の送信アンテナ51から発信された電波を受信アンテナ52において受信し、受信電波レベルをスペクトルアナライザ8で受信した後、統計量測定装置6がスペクトルアナライザのビデオ出力信号をA/D変換して、下記の図18(A)に示す電界強度累積分布関数を算出し、算出された電界強度累積分布関数に基づいて、反射箱5の反射箱損LC を求める。
【0061】
図18(A),図18(B)は、それぞれ図13(A)、図13(B)の横軸を規格化せず、図8のスペアナ指示値対ADCコード値をもとにデシベル表示したものである。受信アンテナ52端での電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値P2 は図18(A)より−21.4dBmであり、また、送信アンテナ51の入力端電力は−5.1dBmである。
【0062】
従って、測定に用いた反射箱5の反射箱損LC は16.3dB(ただし、攪拌翼Bの回転速度120rpm、攪拌翼Dの回転速度117rpm,攪拌翼A、攪拌翼Cの回転速度0rpm,攪拌翼位置は壁面の中心、周波数1GHZの場合)と求まる。
【0063】
よって、無線機58の空中線電力Px は、式(10)より、Px =−43.7dBm+16.3dBm=−27.4dBmと推定される。
【0064】
上記無線機58のアンテナ入力端でのSG出力は、実際には−25.3dBmであり、上記空中線電力の推定値−27.4dBmとは、上述の設定では2.1dBの差が生じた。
【0065】
なお、反射箱内で無線機58を置く位置によりCDF63.2%値がどの程度変動するのか図19に示す反射箱10を用いて検討を行った。59は反射箱10のドアである。図20に無線機58を+y175cmから−y125cmまで移動させたときの統計量測定装置6で測定したEx 、Ey およびEz を示す。なお、Ex 、Ey およびEz は、受信アンテナ52がそれぞれX方向、Y方向およびZ方向の場合の電界強度累積分布関数(CDF)の累積確率63.2%値を示す。また、図20における実線はEx 、Ey およびEz の平均値を示す。
【0066】
その結果、今回測定したyの範囲において、Ex 、Ey およびEz は最大で4dB近い変動があるが、Ex 、Ey およびEz の平均値に対して変動幅は最大で約1.5dBあった。
【0067】
反射箱損を測定するときにも同様の変動を与えるため、送信アンテナの位置、向き、放射パターンによる反射箱損の変動は空中線電力推定の主要な誤差要因となり得ることから、攪拌翼の回転周期を長くするなどして、反射箱内にランダムな電磁界を作る必要がある。
【0068】
【発明の効果】
本発明は、反射箱内での電界強度時間変動分布の統計量に基づいて空中線電力を推定する。従って、本発明によれば、煩雑な操作を必要とせずに、送受信アンテナの向きにかかわらず、しかも安価に無線機の空中線電力を推定できる方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無線機空中線電力推定方法の概要を示す図である。
【図2】電界強度累積分布関数を示す図である。
【図3】反射箱の諸元を示す図である。
【図4】統計量測定装置の諸元を示す図である。
【図5】確率密度関数(PDF)を示す図である。
【図6】自己相関時間算出のための測定系統図である。
【図7】デジタルオシロスコープの時系列データを示す図である。
【図8】ADCコードに対応するスペアナ指示値を示す図である。
【図9】直接波の測定系統を示す図である。
【図10】マルチパス波の測定系統を示す図である。
【図11】合成波の測定系統を示す図である。
【図12】直接波、マルチパス波及び合成波の測定結果(CDF)を示す図である。
【図13】直接波およびX,Y,およびZで平均したマルチパス波と合成波のCDF、PDFを示す図である。
【図14】無線機の空中線電力の推定値の具体的な算出原理を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態における無線機空中線電力推定処理フローを示す図である。
【図16】本発明の実施の形態における測定系統図である。
【図17】電界強度累積分布関数(CDF)を示す図である。
【図18】CDFまたはPDFを示す図である。
【図19】反射箱内で無線機を置く位置を変化させる場合の測定系統図である。
【図20】無線機の位置を変化させた場合のCDF63.2%値を示す図である。
【符号の説明】
1 無線機電波発信ステップ
2 無線機電波受信ステップ
3 電界強度累積分布関数算出ステップ
4 空中線電力推定ステップ
5、10、12、13 反射箱
6 統計量測定装置
7 信号発生器
8 スペクトルアナライザ
9 デジタルオシロスコープ
11 電波暗箱
51、100 送信アンテナ
52、101 受信アンテナ
53 攪拌翼A
54 攪拌翼B
55 攪拌翼C
56 攪拌翼D
57 金属フェンス
58 無線機
59 ドア
Claims (2)
- 無線機の空中線電力推定方法であって、
反射箱内で無線機から電波を発信するステップと、
前記反射箱内で前記無線機から発信された電波を受信するステップと、
受信した電波に基づいて、前記反射箱内での電界強度累積分布関数を算出するステップと、
算出された電界強度累積分布関数に基づいて、前記無線機の空中線電力の推定値を算出するステップとを有する
ことを特徴とする無線機の空中線電力推定方法。 - 無線機の空中線電力推定方法であって、
反射箱内で無線機から電波を発信するステップと、
前記反射箱内で前記無線機から発信された電波を受信するステップと、
受信した電波に基づいて、前記反射箱内での電界強度累積分布関数を算出するステップと、
算出された電界強度累積分布関数の累積確率63.2%値と予め算出された反射箱損の値とに基づいて、前記無線機の空中線電力の推定値を算出するステップとを有する
ことを特徴とする無線機の空中線電力推定方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003144309A JP3721406B2 (ja) | 2003-05-22 | 2003-05-22 | 無線機の空中線電力推定方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003144309A JP3721406B2 (ja) | 2003-05-22 | 2003-05-22 | 無線機の空中線電力推定方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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