JP2004342635A - セラミックス基板接合用金属板およびセラミックス回路基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】セラミックス基板に回路用金属板を接合するときに、接合の位置合せ精度が高いセラミックス回路基板を提供する。
【解決手段】セラミックス基板に接合される回路用金属板であって、この金属板は、幅狭な架橋部を介して一体化されていると共に、セラミックス基板との接合時における位置合せ手段と、さらに金属板の側面部には機械的加工手段により形成された傾斜面とを備えている回路用金属板である。さらに本発明は、この回路用金属板が、回路用金属板の側面部からろう材層がはみ出すようにセラミックス基板にろう材層を介して接合されたセラミックス回路基板であって、接合後に架橋部と突出部が除去された構成であるセラミックス回路基板である。
【選択図】 図1
【解決手段】セラミックス基板に接合される回路用金属板であって、この金属板は、幅狭な架橋部を介して一体化されていると共に、セラミックス基板との接合時における位置合せ手段と、さらに金属板の側面部には機械的加工手段により形成された傾斜面とを備えている回路用金属板である。さらに本発明は、この回路用金属板が、回路用金属板の側面部からろう材層がはみ出すようにセラミックス基板にろう材層を介して接合されたセラミックス回路基板であって、接合後に架橋部と突出部が除去された構成であるセラミックス回路基板である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス回路基板、特にパワー半導体モジュールに使用される導電性回路用の金属板、およびこの金属板を接合したセラミックス回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パワー半導体モジュールに使用される基板としては、窒化アルミニウムや窒化珪素からなる絶縁性セラミックス基板の一方の面(主面)に回路となる導電性金属板を接合し、他の面にも放熱用の金属板を接合したセラミックス回路基板が広く用いられている。この金属板としては、銅板またはアルミニウム板が使用されている。そして、回路となる導電性金属板の上面には、半導体チップ等が接続される。また、セラミックス基板と金属板との接合は、ろう材による活性金属法が広く採用されている。
【0003】
近年、電動車両用インバータとして高電圧、大電流動作が可能なパワー半導体モジュール(IGBT、MOS FET等)が用いられている。このような大電力モジュールにおいては、回路となる銅板等の金属板に接続されている半導体チップから発生する熱量も増大する。その結果、セラミックス回路基板に繰り返して発生する熱応力も増大している。この熱応力に耐えられなくなると、セラミックス基板には、反りや割れ等の不具合が発生することになる。窒化アルミニウムまたは窒化珪素製のセラミックス基板は、電気絶縁性および熱伝導性は優れているが、上記のように、セラミックス回路基板に繰り返して負荷される熱衝撃に一層対応できるセラミックス回路基板の開発が要求されている。
【0004】
従来から、上記のような繰り返しの熱衝撃に対応できるセラミックス回路基板については、種々の改良技術が提案されている。例えば、下記の特許文献が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2797011号公報(明細書第2頁〜第4頁、第1図)
【特許文献2】
特開平11−340598号公報(明細書第3頁〜第5頁、図1、図2、図4)
【特許文献3】
特開平11−322455号公報(明細書第2頁〜第4頁、図3)
【特許文献4】
特開平3−21095号(明細書第2頁〜第3頁、図1、図5)
【特許文献5】
特開平4−96258号公報(明細書第3頁〜第6頁、第1図〜第6図)
【特許文献6】
特開平11−4061(明細書第2頁〜第4頁、図1、図3)
【特許文献7】
特開2002−359453号公報(明細書第12頁〜第13頁、図12、図14)
【0006】
上記特許文献1には、アルミナまたは窒化アルミニウムのセラミックス部材と銅または銅合金の金属部材との接合体から構成される電子部品搭載用絶縁基板において、熱衝撃による割れを抑えるために、セラミックス部材面上に少なくとも0.25mm以上の幅で金属部材の周囲を包囲するフィレット(ろう材の露出部材)が、焼成ペーストによって形成された接合体が記載されている。
【0007】
上記特許文献2には、割れや破壊を招くことがなく、大きくたわむことが可能なセラミックス回路基板の提供を目的として、セラミックス基板の少なくとも主面にろう材層を介して金属板を接合し、金属板をエッチング処理することにより所定の金属回路パターンを形成したセラミックス回路基板において、ろう材層が金属回路パターンの側面よりも外方に張り出すように形成されているセラミックス回路基板が記載されている。さらに特許文献2には、金属回路パターンの側面は、エッチング処理によって滑らかな曲面状の傾斜面を形成することにより、接合端部に作用する集中応力を緩和させることが記載されている。
【0008】
上記特許文献3には、耐熱衝撃性に優れたセラミックス/金属接合体の提供を目的として、金属板の端部において、端面が金属板の辺縁へ行くにしたがってセラミックス基板側へ近づくように傾斜させ、かつ金属板に垂直な平面で切断した端面の形状がセラミックス基板側に凸であるセラミックス/金属接合体が記載されている。
【0009】
上記特許文献4には、製造の容易性、回路基板表面の凹凸の改善を目的として、打抜加工により隣合う回路導体が細いブリッジで連結された打抜回路パターンを形成し、この打抜回路パターンとプリプレグシートを積層し、これをホットプレス加圧して、絶縁基板面に打抜回路パターンを埋め込んだ後、上記ブリッジを切断する大電流回路基板の製造方法が記載されている。
【0010】
上記特許文献5には、高い寸法精度でかつ低コストで製造することができる半導体装置用絶縁基板の製造方法の提供を目的として、回路パターンの各部に相当する平面形状を有し、比較的厚く形成された複数の本体部分と、この複数の本体部分を相互に接続し、かつ比較的薄く形成された接続部分とが一体化された金属パターン板を絶縁膜上にこの金属パターン板を固定した後、上記薄く形成された接続部分を除去する絶縁基板の製造方法が記載されている。また、この接続部分の除去は、エッチングまたは機械的な切断により除去することが記載されている。
【0011】
上記特許文献6には、機械的な加工により回路パターンを形成することにより小規模な加工設備での製造を可能とすると共に、回路変更や少量製造への対応を容易にした回路基板の製造方法の提供を目的として、導体板を溝状に穿つ分割帯により所望の回路を形成する複数の配線路に離隔することによって回路パターンを形成し、この導体板をベース材に接合する回路基板の製造方法が記載されている。さらに同特許文献6には、分割帯は穿孔による開口部の連結によって形成され、この分割帯の形成を任意位置で中断して、離隔する配線路の間を部分的につなぐ橋絡部を形成し、導体板をベース板に接合した後に橋絡部を除去することが記載されている。
【0012】
上記特許文献7には、絶縁基板上に残るエッチング残渣を簡単に除去することができ、金属製の冷却フィン等を強固に固定することができるように接合体全体の反りを制御することができる回路基板の提供を目的として、金属板にプレス加工を行って回路パターンを形成するときに、回路間を連結するブリッジも形成し、絶縁基板上にこの金属板を接合した後に、このブリッジをパンチまたはニッパー等を用いて切断することが記載されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1、および特許文献2に記載の発明は、セラミックス基板に回路用金属板をろう材を介して接続したときに、この回路用金属板の側面(端面)から所定の長さほどろう材のはみ出し部を設けることにより、セラミックス基板と回路用金属板の端面との接合面における熱応力の集中を緩和させ、さらに、特許文献2に記載の発明においては、回路用金属板の端面を滑らかな曲面状に傾斜させることにより、熱応力の集中をより緩和させようとするものである。
【0014】
しかし、パワー半導体モジュールに使用されるセラミックス回路基板においては、熱伝導性および熱衝撃に対する強度の改善の他に、製造工程を単純化して製造コストを低減することが強く要求されている。このためには、セラミックス基板に接合する回路用金属板のパターン作成において、手間のかかるエッチング工程を極力無くすることができる回路用金属板の形状、およびその製造方法が重要になる。特許文献1および特許文献2には、このような製造工程を単純化した回路用金属板の製造方法、形状については記載されていない。
【0015】
特許文献2、および特許文献3には、回路用金属板の側面にエッチング処理により傾斜面を形成し、この傾斜面により、セラミックス基板と回路用金属板の端面における応力集中を防止させることが記載されている。しかし、エッチング処理により回路用金属板の側面に傾斜面を形成すると、セラミックス基板との接合境界線となるこの傾斜面下端部においては、直線性は低下し、微細な凹凸が生じる。近年のセラミックス回路基板においては、集積密度の向上も要求され、複数の回路用金属板間の間隔は、1.5mm以下に設定することが要求されている。このような微小な間隔、および上記の傾斜面をエッチング処理により形成すると、上記のような凹凸の発生により直線性が低下し、使用時に電流の短絡が発生する危険性も生じる。さらに、高価なフォトレジスト装置も必要になり、製造工程の複雑化と高コスト化を招くことになる。
【0016】
特許文献4〜特許文献7に記載の発明は、架橋部で接続された複数の回路用金属板を打ち抜き加工で製作して、この回路用金属板をセラミックス等の基板に接合した後、架橋部をエッチング処理あるいはニッパー等の工具を用いて切断するものである。セラミックス基板上には、金属箔状の回路用金属板を正確に位置決めした状態で接合する必要がある。上記特許文献には、セラミックス基板上に回路用金属板を接合するときに、両者の位置合せ手段については記載されていない。
また、特許文献7では、サンドブラストを使用し、ろう材層を効率良く除去する方法が示されているが、この場合、ろう材層のはみ出し部を形成することはできない。
【0017】
本発明の目的は、従来のセラミックス回路基板の耐熱応力性を改善すると共に、回路用金属板を構成する複数の金属板間において、電流の短絡を防止でき、さらに、セラミックス回路基板上に回路用金属板を接合するときに正確な位置合せができる回路用金属板、およびこの回路用金属板を用いたセラミックス回路基板を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、セラミックス基板に接合される回路用また放熱用の金属板であって、前記金属板には前記セラミックス基板との接合時における位置合せ手段が備わっていることを特徴とするセラミックス基板接合用金属板である。
本発明は、セラミックス基板に接合される回路用の金属板であって、前記金属板は、幅狭な架橋部を介して一体化されていると共に、前記セラミックス基板との接合時における位置合せ手段とを備えていることを特徴とするセラミックス基板接合用金属板である。
前記セラミックス基板に接合した後、金属板の前記位置合せ手段は削除され、その削除跡には機械的加工手段により形成された仕上面あるいは端面から突出または欠落する残存面を備えている回路用金属板である。
【0019】
本発明において、前記位置合せ手段は、セラミックス基板との接合時において、回路用金属板の側面部がセラミックス基板の側面部方向に延設された突出部から構成したものである。また、この位置合せ手段としては、架橋部に形成された孔部から構成したものでもよい。さらに、この位置合せ手段は、回路用金属板に上記の突出部と孔部との少なくとも一方の手段を構成したものでも良い。
【0020】
本発明は、上記の金属板を、セラミックス基板の一方の面にろう材層を介して回路用金属板として接合し、また前記セラミックス基板の他方の面にろう材層を介して放熱用金属板として接合し、これら金属板の側面部からろう材層がはみ出すようにしたセラミックス回路基板であって、前記セラミックス基板に接合した回路用金属板は接合後に前記架橋部と前記突出部が除去され、また前記セラミックス基板に接合した放熱用金属板は接合後に前記突出部が除去された構成であるセラミックス回路基板である。
【0021】
さらに、本発明は、前記架橋部及び/又は突出部の除去跡に前記金属板の端面に沿った仕上面あるいは端面から突出または欠落する残存面が形成されているセラミックス回路基板である。
【0022】
なお、本発明の回路用金属板において、金属板の厚さをT、架橋部の厚さをtとしたときに、(T−t)を0.1mm以上にすることが望ましい。この理由は次の通りである。
(T−t)は、言わば架橋部の下に形成された隙間である。セラミックス基板と金属板をろう付けにより接合する時、セラミックス基板と金属板の間からろう材がしみ出る。このしみ出たろう材が架橋部の下面に接触した場合、そのまま下面をつたわって広がり、架橋部の下面にはしみ出たろう材の溜まり部が形成される。このようなろう材の溜まり部は0.1mm以上になることがある。そうすると、隙間が0.1mmより小さい場合、ろう材の溜まりはセラミックス基板上に接触していまい、結果的に隣りの金属板に接触した短絡が発生する原因となる。このため、0.1mm以上の隙間を確保しておくことにより、架橋部下面にろう材がつたわったとしてもろう材の溜まりはセラミックス基板に接触することがないようにし、短絡を未然に防止することができる。
【0023】
さらに、回路用金属板に形成した複数の架橋部の全体積は、回路となる複数の金属板の体積の0.1〜2%になるように架橋部を設けることが望ましい。この理由は次の通りである。本発明に使用する回路用金属板の厚さは、上記のように0.2mm〜1.0mmの薄板を使用する。このため、架橋部の全体積が回路となる金属板の全体積の0.1%未満では、架橋部の剛性が低下する。そのため、セラミックス基板にこの金属板を接合するときの熱処理の際歪が発生し、架橋部で接続された複数の金属板の配線間隔を維持することができず、短絡あるいは寸法不良が発生する危険性が生じるからである。この短絡あるいは寸法不良の発生を防止しようとすると、接合時にこの金属板の位置決め手段を設ける必要が生じる。また、2%より大きくなると、上記の(金属板の厚さT)−(架橋部の厚さt)を0.1mm以上確保することができず、しみ出たろう材が架橋部の下面に接触して広がり、金属板間の短絡発生の原因になると共に、厚い架橋部を除去するための作業工数が増大するからである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1〜図3は、本発明の回路用金属板の一実施形態を示す図であり、それぞれ平面図、A−A線縦断面図、B−B線縦断面を示す。
【0025】
図1〜図3において、回路用金属板1は、厚さTが0.2〜1.0mmの銅または銅合金からなる平板状の板材からなっている。回路用金属板1は、図4に示すように、微小な突出部P1、P2が形成された平板状で、平面視で長方形状の銅板2を機械的加工手段により、複数個の幅狭の架橋部6a、6b、6c、6dを介して接続された3個の金属板3、4、5から構成されている。図2に示すように、架橋部6a(6b、6c、6d)の厚さtは、金属板3、4、5の厚さTの1/4〜1/2程度、長さLは各金属板3、4、5の間隔Kと同一であり、1.2〜1.5mmである。また、架橋部6a(6b、6c、6d)の幅W(長さLと直交する方向の長さ)は、板厚Tを考慮して1.5〜3mmにするとよい。なお、上記金属板3、4、5等の個数は、セラミックス回路基板の設計仕様に基づいて決定されるものである。ただし、これら架橋部の配置については、金属板のコーナー部は避けることが望ましい。これは、コーナー部が最大応力発生の部位となる傾向があるため残存面が形成された場合、更に応力を増大させるからである。
【0026】
3分割状に形成された金属板3、4、5の各側面部の全周には、架橋部6a、6b、6c、6dとの接続部を除いて、応力緩和のため垂直方向に対する傾斜角度αが30°〜80°である傾斜面3a、4a、5aが機械的加工手段により形成されることが望ましい。このように傾斜面3a、4a、5aを形成した金属板3、4、5について、その表面積が小さくなる面3b、4b、5bが回路面側となって半導体チップ等が接続され、同じく表面積が大きくなる面3c、4c、5cがセラミックス基板7との接合面になる。
【0027】
さらに、本発明の回路用金属板1には、図1に示すように、位置合せ手段となる突出部P1、P2を形成している。この突出部P1、P2が回路用金属板1の側面部から突出する長さはそれぞれD1、D2に設定している。この突出長さD1、D2は、図7に示すように、セラミックス基板7に回路用金属板1を接合したときに、セラミックス基板7の側面部と回路用金属板1の側面部との間隔と同一にする必要がある。また、突出部P1、P2の幅は、架橋部6a、6b等の幅Wの1〜4倍程度に設定する。
【0028】
従って、突出部P1、P2は、回路用金属板1をセラミックス基板7に接合するときに、セラミックス基板7の側面部に隣接している金属板3の側面部に形成する。また、この突出部P1、P2は、接合の位置合せ精度をさらに向上させるために、回路用金属板1の同一側面部に複数個形成してもよく、さらに、セラミックス基板7の側面部に沿う少なくとも2側面部に形成することが望ましい。
【0029】
本発明において、機械的加工手段とは、プレスによる打ち抜き加工、塑性圧縮加工を示す。これらの加工手段を用いて、まず、銅製薄板から図4に示す突出部P1、P2を有する金属素材板2をプレス打ち抜きにより製作する。この金属素材板2から回路用金属板1の製作は、次の方法(1)、または(2)により実施することができる。
【0030】
(方法1)
図2に示す回路用金属板1の上面部、下面部および側面部の形状を備えた金型を準備し、プレス加工により、金属素材板2の切断と塑性圧縮を行う。このとき、隣合う金属板3、4、5の間は、架橋部6a、6b、6c、6dを残して切断して除去すると共に、架橋部6a、6b、6c、6dには塑性圧縮を施して、厚さtに圧縮する。さらに、突出部P1、P2の厚さも各架橋部6a等の厚さtと同じ程度t’に圧縮加工を施す。また、この加工と同時に、金型に設けた傾斜面により、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2との接続部を除いた金属板3、4、5の側面部の全周にわたって、傾斜面3a、4a、5aを塑性圧縮により形成する。これにより、図2に示すように、金属板3、4、5の半導体チップとの接合面3b、4b、5bが同一平面状となり、かつ傾斜面3a、4a、5aを有する回路用金属板1を得ることができる。
【0031】
(方法2)
同じく、図2に示す回路用金属板1の上面部、側面部の形状を備えた金型を準備し、プレス加工により、金属素材板2の切断と塑性圧縮を行う。このとき、隣合う金属板3、4、5の間は、架橋部6a、6b、6c、6dを残して切断して除去すると共に、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2には塑性圧縮を施して、厚さt,t’に圧縮する。続いて、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2との接続部を除いた金属板3、4、5の側面部の全周にわたって傾斜面を形成するための金型を使用して、プレス加工による塑性圧縮を施し、傾斜面3a、4a、5aを形成する。
【0032】
なお、図5に示す放熱側に接合される放熱用金属板11についても、同様にして、銅製薄板から突出部P1、P2を有する金属素材板2を製作した後、突出部P1、P2部分を除いた側面部に、上記の機械的加工手段により傾斜面を形成する。突出部P1、P2による金属板の位置合わせは回路用金属板、放熱用金属板と区別無く実施でき、その効果も同様に得られる。
【0033】
次に、本発明のセラミックス回路基板の構成例を図5に基づいて説明する。図5において、7は厚さ0.2〜1.0mm、熱伝導率70W/m・K以上の窒化珪素からなるセラミックス基板である。セラミックス基板7の一方の面(主面)には、金属板3、4、5がろう材層8、9、10を介して接合されている。このとき、セラミックス基板7と金属板3、4、5との接合は、上記した各金属板3、4、5の接合面3c、4c、5cがセラミックス基板7の主面に接合される。すなわち、金属板3、4、5は、セラミックス基板7との接合面積が大きくなるような面である接合面3c、4c、5cが、セラミックス基板7と接合される。なお、ろう材層8、9、10は金属板3、4、5のセラミックス基板7側の面に直接塗布して形成してもよい。この際、ろう材はみ出し部は、接合時の加圧力により金属板3、4、5とセラミックス基板7の接合面から流れ出したろう材により形成することができる。
【0034】
一方、セラミックス基板7の他一の面(放熱側となる下面)には、平板状の放熱用金属板(銅板)11がろう材層12を介して接合される。金属板11は、その側面部の全周にも傾斜面11aが形成され、金属板11の表面積が大になる面11bがセラミックス基板7の下面に接合される。傾斜面11aは、プレス加工により上記傾斜面3a、4a、5aの傾斜角度αと同様に30°〜80°に設定するとよい。また、ろう材層8、9、10、12の厚さは、5〜50μmにする。
【0035】
本発明のセラミックス回路基板においては、図5に示すように、セラミックス基板7に金属板3、4、5、および11をろう材層により接合したときに、これらろう材層8、9、10、および12は、各回路用金属板3、4、5、放熱用金属板11の側面部から所定の距離Hほどはみ出させている。このはみ出し長さHは、少なくとも0.2mm以上、好ましくは0.25〜1.2mmにすると、本発明のセラミックス基板を使用しているときに、セラミックス基板7と金属板3、4、5、および11の側面部に集中する熱応力を緩和させることができる。また、本発明においては、各金属板3、4、5の側面部に傾斜面3a、4a、5aを設けているので、セラミックス基板7と金属板3、4、5、および11の側面部に集中する熱応力を一層緩和させることができる。
【0036】
さらに、上記した本発明の回路用金属板1においては、回路用金属板1の厚さをT、各架橋部6a、6b、6c、6dの厚さをtとしたとき、隙間T1=T−tを0.1mm以上に設定することが重要である。この理由は、次の通りである。本発明に使用する回路用金属板1は、その厚さが0.2mm〜1.0mmの銅または銅合金製の薄板を使用する。このため、隙間T1を0.1mmより小さくすると、セラミックス基板7とこの回路用金属板1をろう付けにより接合する時、例えば、図8(b)に示すように、セラミックス基板7と金属板3(4、5)の間のろう材層8(9、10)からしみ出したろう材rが架橋部6a(6b、6c、6d)の下面60aにつたわりながら延びてろう材が溜まる。そして、ついにはセラミックス基板7上の隙間T1に沿って流れることになり、これが進行するとろう材rはセラミックス基板7と反応層を形成し、ろう材rが架橋部6a(6b、6c、6d)の下面60aにつたわりろう材が溜まった場合、架橋部の除去工数が増大し、更にはセラミックス基板と反応層を形成し短絡した場合には、機械的加工手段によるろう材除去はできず化学エッチングのような別の除去工程が必要となる原因になるからである。
【0037】
さらに、本発明の回路用金属板1においては、複数個設けた架橋部6a、6b、6c、6dの全体積は、複数の金属板3、4、5の全体積の0.1〜2%にすることが重要である。この理由は次の通りである。
本発明に使用する回路用金属板1の厚さは、上記のように0.2mm〜1.0mmの剛性が低い銅製薄板を使用する。このため、架橋部6a、6b、6c、6dの全体積が回路となる金属板3、4、5の全体積の0.1%未満では、架橋部6a、6b、6c、6dの剛性が著しく低下するので、セラミックス基板7にこの金属板3、4、5を接合するときに、架橋部6a、6b、6c、6dで接続された複数の金属板3、4、5間の配線間隔Kを維持することができず、短絡あるいは寸法不良が発生する危険性が生じるからである。この短絡あるいは寸法不良の発生を防止しようとすると、接合時にこの金属板の位置決め手段を設ける必要が生じる。
【0038】
また、2%より大きくなると、上記T1を0.1mm以上確保することが困難になり、しみ出したろう材rが架橋部6a、6b、6c、6dとセラミックス基板7のすき間に沿って流れるため、ろう材が付着した架橋部6a、6b、6c、6dを除去するための作業工数が増大し、更にはろう材rがセラミックス基板7に接した形態で反応層を形成しながら金属板3、4、5間で短絡した場合、ろう材rを除去する工程が必要となるからである。
【0039】
さらに、本発明のセラミックス回路基板においては、図8に示すように、隣り合う金属板3、4、5間の間隔Kは1.3mm以上にすることが好ましく、間隔K内にはみ出しているろう材層の端部どうしの間隔Pは、0.8mm以上に設定することが好ましい。この理由は、セラミックス基板7に塗布するろう材層8、9、10の厚さSを5〜50μmにすれば、しみ出したろう材rが流れ出して隣のろう材層と接触することを防止できるようになるからである。
【0040】
続いて、本発明のセラミックス回路基板の製造方法について説明する。まず、図1に示す回路用金属板1の縦横寸法よりも若干大きい寸法を有するセラミックス基板7を準備する。
なお、セラミックス基板7は、下記の方法により製造することができる。まず、公知のドクターブレード法等により窒化珪素を主成分とする薄板状のグリーンシートを製作する。続いて、このグリーンシートを脱脂、焼結した後、所望の寸法、例えば、縦横80mm×100mmの大きさに切断することにより、厚さ0.2〜1.0mmのセラミックス基板を得ることができる。
【0041】
次に、図6に示すように、セラミックス基板7の主面にスクリーン印刷によりろう材をその厚さが5〜50μmになるように塗布して、ろう材層8、9、10を形成する。このとき、セラミックス基板7の主面にろう材を塗布する範囲は、金属板3、4、5を接合する範囲より間隔H、すなわち0.2〜1.2mmほど外側にはみ出すように塗布する。セラミックス基板7の放熱側面(裏面)にも同様にろう材層12を塗布する。
【0042】
続いて、図7に示すように、ろう材を塗布したセラミックス基板7の主面には図1に示す回路用金属板1を、セラミックス基板7の放熱側面には銅板11を、正確に位置合わせして、加圧状態で保持する。このとき、各金属板3、4、5および銅板11の側面部全周からろう材層8、9、10が間隔Hほどはみ出るように、さらに、セラミックス基板7の側面部と回路用金属板1の側面部とは間隔D1、D2を設けた状態にして、セラミックス基板7に回路用金属板1を正確に位置決めする必要がある。
【0043】
本発明の回路用金属板1および放熱側の銅板11には、位置合せ用の突出部P1、P2を形成しているので、この突出部P1、P2を利用して正確な位置合せを行うことができる。この位置合せの手順を説明すると次のようになる。
【0044】
まず、セラミックス基板7の隣合う側面部に沿って、垂直方向に延びる垂直壁14、15を設けた位置合せ冶具16(図10(a)に示す)を準備する。そして、放熱側の銅板11をその位置決め用突出部P1、P2の先端部がこの冶具16の内壁面14a、15aに当接した状態にして、治具16の底に置く。
【0045】
続いて、ろう材層を塗布したセラミックス基板7の隣合う側面部をこの位置合せ冶具16の内壁面14a、15aと接触させた状態で、金属板11の上に置く。これにより、銅板11とセラミックス基板7とは正確に位置合せを行った状態で重ね合わせることができる。
【0046】
続いて、回路用金属板1の側面部に設けられている位置決め用突出部P1、P2の先端部を、冶具16の内壁面14a、15aに接触させた状態でセラミックス基板7上に重ねることにより、図7に示す間隔D1、D2を確保した状態で、セラミックス基板7の主面に回路用金属板1と金属板11を重ね合わせることができる。
【0047】
次に、回路用金属板1と放熱用金属板11を重ね合わせたセラミックス基板7を数枚積み重ねて加圧した状態で保持し、約800℃の温度で所定時間加熱した後、冷却することにより、セラミックス基板7の主面に回路用金属板1、放熱側面に銅板11を強固にろう材層を介して接合することができる。
【0048】
続いて、回路用金属板1に設けられている架橋部6a、6b、6c、6d、および回路用金属板1と銅板11の突出部P1、P2を、数値制御の工作機械を使用し、極細のエンドミル工具により除去して、図5に示すようなセラミックス回路基板を得ることができる。なお、上記エンドミル工具により架橋部6a、6b、6c、6dを除去するときに、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2と金属板3、4、5との接続部に、すなわち、架橋部および突出部P1、P2の除去跡にも予め形成されている金属板の傾斜面3a、4a、5aに連なる傾斜面を形成することができる。
【0049】
なお、本発明においては、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2厚さ、長さ、幅は極めて微小な寸法にしているので、従来と同様に、短時間のエッチングにより架橋部6a、6b、6c、6d、突出部P1、P2を除去することも可能である。また、これら架橋部、突出部の除去は、ニッパー等の切断工具を用いて手作業により除去することもできる。また、架橋部6a、6b、6c、・・、の個数は、回路用金属板の厚さTを考慮して適切な個数ほど設けるようにするとよい。
【0050】
また、本発明においては、架橋部6a、6b、6c、6d、および突出部P1、P2と金属板3、4、5との接続部は、この架橋部および突出部をエンドミル等を用いた切削工具により除去するときに、他の側面部の傾斜面3a、4a、5aと同様な傾斜面を形成することが望ましいが、架橋部6a、6b、6c、6dの幅Wは微小であるので、傾斜面を形成しなくても架橋部除去後の端面から突出または欠落する適宜の残存面のままでも本発明の効果を発揮させることができる。なお、通常、最大応力発生部位は回路のコーナー部になる傾向があるので、架橋部は回路コーナー部を避けることが望ましい。さらに最適な架橋部の設置位置を決定する際、コンピュータシミュレーション等による応力解析を活用することが有効である。
【0051】
続いて、回路用金属板の第2の実施形態を図9に基づいて説明する。第2の実施形態である回路用金属板1aは、図1に示す第1の実施形態に、さらに、架橋部6a、6b、等に位置合せ用の孔部13を形成したものである。この孔部13は、全ての架橋部6a、6b、6c、6dに形成する必要はなく、1〜3個の架橋部に形成するようにする。また、1個の架橋部に孔部13を2個以上形成してもよい。孔部13の直径は、架橋部の幅Wを3mm程度に設定したときには、1〜2mm程度に設定するとよい。なお、孔部13は、上記した傾斜面3a、4a、5aを形成する工程において、打ち抜きプレス加工により形成することができる。
【0052】
孔部13は、回路用金属板1aをセラミックス基板7に接合するときの位置合せ手段として作用すると共に、位置合せした後、特にセラミックス基板7を加熱してろう材を溶融させる工程において、回路用金属板1aとセラミックス基板7との位置ずれを防止する作用も行う。
【0053】
回路用金属板1aをセラミックス基板7に接合するとき、回路用金属板1aをセラミックス基板7に位置合せする手順は次の通りである。
(1)図10(a)に示すように、互いに直交する垂直壁14、15を有する位置合せ冶具16を準備する。まず、放熱側の銅板11をその位置決め用突出部P1、P2の先端部がこの冶具16の内壁面14a、15aに当接した状態にして、治具16の底に置く。続いて、ろう材層を塗布したセラミックス基板7の隣合う側面部をこの位置合せ冶具16の内壁面14a、15aと接触させた状態で、銅板11の上に置く。これにより、銅板11とセラミックス基板7とは正確に位置合せを行った状態で重ね合わせることができる。
【0054】
(2)続いて、回路用金属板1aをセラミックス基板7上に載置する。このとき、回路用金属板1aの突出部P1が内壁面14aに、突出部P2が内壁面15aと接触した状態で、セラミックス基板7上に回路用金属板1aを載置する。これにより、セラミックス基板7上には回路用金属板1aが正確に位置合せされた状態で重ね合わせることができる。
【0055】
(3)続いて、セラミックス基板7とほぼ同一な形状をなし、架橋部に形成した孔部13に嵌合する突起17を設けたスペーサ18を回路用金属板1a上に載置する。このとき、図10(b)に示すように、突起17を架橋部6a、6b、6dに形成した孔部13に嵌合させると共に、スペーサ18の隣合う側面部が内壁面14a、15aと接触させるようにする。
【0056】
(4)上記(1)〜(3)の作業を繰り返して行い、放熱用金属板11と回路用金属板1aを重ね合わせたセラミック基板7がスペーサ板18を介して5〜10個程度、治具16内に積層する。そして、この積層体を上下方向に適度な押圧力を付与した状態で位置合せ冶具16に固定し、続いて、この積層体を800℃程度に加熱した後、冷却すると、セラミックス基板7に回路用金属板1aおよび放熱用金属板11が正確な位置にろう付けされたセラミックス基板7を得ることができる。なお、スペーサ18に設けた突起17は、回路用金属板1aに形成されている各孔部13と嵌合するように、スペーサ18の表面の正確な位置に設ける必要がある。また、中間板18の材質は、耐熱性の素材、例えば、カーボン製の材質を使用するとよい。
【0057】
(5)続いて、上記した回路用金属板1と同様に、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2を、極細のエンドミル工具を装着した工作機械を使用して除去すると、図5に示すようなセラミックス回路基板を得ることができる。また、上記エンドミル工具により架橋部6a、6b、6c、6d、突出部P1、P2を除去するときに、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2と金属板3、4、5との接続部にも傾斜面3a、4a、5aを形成してもよい。
【0058】
上記した第2の実施形態の回路用金属板1aにおいては、スペーサ18に設けた突起17が架橋部6a、6b、6dに形成した孔部13に嵌合しているので、セラミックス基板7上の所定の位置に、回路用金属板1aを正確に位置合せできると共に、加熱時においても、セラミックス基板7と回路用金属板1aとの位置ずれを防止することができる。
【0059】
図11は、回路用金属板の第3の実施形態を示す。この第3の実施形態である回路用金属板1bは、図9に示す第2の実施形態について、突出部P1、P2の形成を省略して、位置合わせ手段を架橋部に形成した孔部13のみとしたものである。この回路用金属板1bをセラミックス基板7上に位置合わせする作業は、回路用金属板1bに形成した孔部13にスペーサ18の突起17を嵌合させた後、上記した回路用金属板1、1aと同様に、位置合せ治具を使用して行うことができる。この際、孔部13は加熱時の金属板1bとスペーサ18の熱膨張差を考慮し、突起17に対して寸法を大きくしておくことが望ましい。また、孔部13を用いた位置合せによれば、金属板1bとセラミックス基板7との位置合せをそれぞれの中央部付近で行うことが可能であり、且つ、スペーサをセラミックス基板7と同等の熱膨張係数材を用いることにより、より高い寸法精度での接合が可能となる。なお、この第3の実施形態においては、セラミックス基板7の放熱側に接合する金属板11には、位置合わせ用の突出部P1、P2を形成することが望ましい。
【0060】
【発明の効果】
以上に説明した本発明は、次の効果を有している。
(1)本発明のセラミックス基板接合用金属板は、プレス加工等による機械的加工手段により製造することができる。これにより、製作コストの低減を図ることができると共に、側面部の直線性が向上した回路用金属板を得ることができるので、より一層、集積密度を向上させ、かつ耐熱応力性を向上させたセラミックス回路基板を提供することができる。
(2)セラミックス基板と放熱用金属板および/または回路用金属板の接合において、その位置合わせ精度が高く且つ容易に行えて、所定量のはみ出し部を形成することが出来る。そして回路用金属板を構成する複数個の金属板間の配線間隔を、所定の値に確保することができるので、回路間の短絡が発生しないセラミックス回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回路用金属板について、第1の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線の縦断面図である。
【図3】図1のB−B線の縦断面図である。
【図4】図1に示すセラミックス回路基板用金属板の切断加工前を示す平面図である。
【図5】本発明のセラミックス回路基板の一例を示す縦断面図である。
【図6】図5に示すセラミックス回路基板を構成するセラミックス基板にろう材層を塗布したときの状態を示す平面図である。
【図7】図6に示すセラミックス基板に図1に示すセラミックス回路基板用金属板を接合したときの状態を示す平面図である。
【図8】(a)は図5の要部の拡大を示す図であり、(b)はT−tの隙間T1が所定の値より小さい場合の架橋部の状況を示す図である。
【図9】本発明の回路用金属板について、第2の実施形態を示す平面図である。
【図10】本発明において、セラミックス基板に本発明の回路用金属板を接合するときの手順を説明するための図であり、(a)は平面図、図10(b)は縦断面を示す。
【図11】本発明の回路用金属板について、第3実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
1:回路用金属板
2:金属素材板
3、4、5:金属板
3a、4a、5a:傾斜面
3b、4b、5b:半導体チップとの接合面
3c、4c、5c:セラミックス基板との接合面
6a、6b、6c、6d:架橋部
7:セラミックス基板
8、9、10:ろう材層
11:金属板
12:ろう材層
13:孔部
16:位置合せ冶具
17:突起
18:スペーサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス回路基板、特にパワー半導体モジュールに使用される導電性回路用の金属板、およびこの金属板を接合したセラミックス回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パワー半導体モジュールに使用される基板としては、窒化アルミニウムや窒化珪素からなる絶縁性セラミックス基板の一方の面(主面)に回路となる導電性金属板を接合し、他の面にも放熱用の金属板を接合したセラミックス回路基板が広く用いられている。この金属板としては、銅板またはアルミニウム板が使用されている。そして、回路となる導電性金属板の上面には、半導体チップ等が接続される。また、セラミックス基板と金属板との接合は、ろう材による活性金属法が広く採用されている。
【0003】
近年、電動車両用インバータとして高電圧、大電流動作が可能なパワー半導体モジュール(IGBT、MOS FET等)が用いられている。このような大電力モジュールにおいては、回路となる銅板等の金属板に接続されている半導体チップから発生する熱量も増大する。その結果、セラミックス回路基板に繰り返して発生する熱応力も増大している。この熱応力に耐えられなくなると、セラミックス基板には、反りや割れ等の不具合が発生することになる。窒化アルミニウムまたは窒化珪素製のセラミックス基板は、電気絶縁性および熱伝導性は優れているが、上記のように、セラミックス回路基板に繰り返して負荷される熱衝撃に一層対応できるセラミックス回路基板の開発が要求されている。
【0004】
従来から、上記のような繰り返しの熱衝撃に対応できるセラミックス回路基板については、種々の改良技術が提案されている。例えば、下記の特許文献が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2797011号公報(明細書第2頁〜第4頁、第1図)
【特許文献2】
特開平11−340598号公報(明細書第3頁〜第5頁、図1、図2、図4)
【特許文献3】
特開平11−322455号公報(明細書第2頁〜第4頁、図3)
【特許文献4】
特開平3−21095号(明細書第2頁〜第3頁、図1、図5)
【特許文献5】
特開平4−96258号公報(明細書第3頁〜第6頁、第1図〜第6図)
【特許文献6】
特開平11−4061(明細書第2頁〜第4頁、図1、図3)
【特許文献7】
特開2002−359453号公報(明細書第12頁〜第13頁、図12、図14)
【0006】
上記特許文献1には、アルミナまたは窒化アルミニウムのセラミックス部材と銅または銅合金の金属部材との接合体から構成される電子部品搭載用絶縁基板において、熱衝撃による割れを抑えるために、セラミックス部材面上に少なくとも0.25mm以上の幅で金属部材の周囲を包囲するフィレット(ろう材の露出部材)が、焼成ペーストによって形成された接合体が記載されている。
【0007】
上記特許文献2には、割れや破壊を招くことがなく、大きくたわむことが可能なセラミックス回路基板の提供を目的として、セラミックス基板の少なくとも主面にろう材層を介して金属板を接合し、金属板をエッチング処理することにより所定の金属回路パターンを形成したセラミックス回路基板において、ろう材層が金属回路パターンの側面よりも外方に張り出すように形成されているセラミックス回路基板が記載されている。さらに特許文献2には、金属回路パターンの側面は、エッチング処理によって滑らかな曲面状の傾斜面を形成することにより、接合端部に作用する集中応力を緩和させることが記載されている。
【0008】
上記特許文献3には、耐熱衝撃性に優れたセラミックス/金属接合体の提供を目的として、金属板の端部において、端面が金属板の辺縁へ行くにしたがってセラミックス基板側へ近づくように傾斜させ、かつ金属板に垂直な平面で切断した端面の形状がセラミックス基板側に凸であるセラミックス/金属接合体が記載されている。
【0009】
上記特許文献4には、製造の容易性、回路基板表面の凹凸の改善を目的として、打抜加工により隣合う回路導体が細いブリッジで連結された打抜回路パターンを形成し、この打抜回路パターンとプリプレグシートを積層し、これをホットプレス加圧して、絶縁基板面に打抜回路パターンを埋め込んだ後、上記ブリッジを切断する大電流回路基板の製造方法が記載されている。
【0010】
上記特許文献5には、高い寸法精度でかつ低コストで製造することができる半導体装置用絶縁基板の製造方法の提供を目的として、回路パターンの各部に相当する平面形状を有し、比較的厚く形成された複数の本体部分と、この複数の本体部分を相互に接続し、かつ比較的薄く形成された接続部分とが一体化された金属パターン板を絶縁膜上にこの金属パターン板を固定した後、上記薄く形成された接続部分を除去する絶縁基板の製造方法が記載されている。また、この接続部分の除去は、エッチングまたは機械的な切断により除去することが記載されている。
【0011】
上記特許文献6には、機械的な加工により回路パターンを形成することにより小規模な加工設備での製造を可能とすると共に、回路変更や少量製造への対応を容易にした回路基板の製造方法の提供を目的として、導体板を溝状に穿つ分割帯により所望の回路を形成する複数の配線路に離隔することによって回路パターンを形成し、この導体板をベース材に接合する回路基板の製造方法が記載されている。さらに同特許文献6には、分割帯は穿孔による開口部の連結によって形成され、この分割帯の形成を任意位置で中断して、離隔する配線路の間を部分的につなぐ橋絡部を形成し、導体板をベース板に接合した後に橋絡部を除去することが記載されている。
【0012】
上記特許文献7には、絶縁基板上に残るエッチング残渣を簡単に除去することができ、金属製の冷却フィン等を強固に固定することができるように接合体全体の反りを制御することができる回路基板の提供を目的として、金属板にプレス加工を行って回路パターンを形成するときに、回路間を連結するブリッジも形成し、絶縁基板上にこの金属板を接合した後に、このブリッジをパンチまたはニッパー等を用いて切断することが記載されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1、および特許文献2に記載の発明は、セラミックス基板に回路用金属板をろう材を介して接続したときに、この回路用金属板の側面(端面)から所定の長さほどろう材のはみ出し部を設けることにより、セラミックス基板と回路用金属板の端面との接合面における熱応力の集中を緩和させ、さらに、特許文献2に記載の発明においては、回路用金属板の端面を滑らかな曲面状に傾斜させることにより、熱応力の集中をより緩和させようとするものである。
【0014】
しかし、パワー半導体モジュールに使用されるセラミックス回路基板においては、熱伝導性および熱衝撃に対する強度の改善の他に、製造工程を単純化して製造コストを低減することが強く要求されている。このためには、セラミックス基板に接合する回路用金属板のパターン作成において、手間のかかるエッチング工程を極力無くすることができる回路用金属板の形状、およびその製造方法が重要になる。特許文献1および特許文献2には、このような製造工程を単純化した回路用金属板の製造方法、形状については記載されていない。
【0015】
特許文献2、および特許文献3には、回路用金属板の側面にエッチング処理により傾斜面を形成し、この傾斜面により、セラミックス基板と回路用金属板の端面における応力集中を防止させることが記載されている。しかし、エッチング処理により回路用金属板の側面に傾斜面を形成すると、セラミックス基板との接合境界線となるこの傾斜面下端部においては、直線性は低下し、微細な凹凸が生じる。近年のセラミックス回路基板においては、集積密度の向上も要求され、複数の回路用金属板間の間隔は、1.5mm以下に設定することが要求されている。このような微小な間隔、および上記の傾斜面をエッチング処理により形成すると、上記のような凹凸の発生により直線性が低下し、使用時に電流の短絡が発生する危険性も生じる。さらに、高価なフォトレジスト装置も必要になり、製造工程の複雑化と高コスト化を招くことになる。
【0016】
特許文献4〜特許文献7に記載の発明は、架橋部で接続された複数の回路用金属板を打ち抜き加工で製作して、この回路用金属板をセラミックス等の基板に接合した後、架橋部をエッチング処理あるいはニッパー等の工具を用いて切断するものである。セラミックス基板上には、金属箔状の回路用金属板を正確に位置決めした状態で接合する必要がある。上記特許文献には、セラミックス基板上に回路用金属板を接合するときに、両者の位置合せ手段については記載されていない。
また、特許文献7では、サンドブラストを使用し、ろう材層を効率良く除去する方法が示されているが、この場合、ろう材層のはみ出し部を形成することはできない。
【0017】
本発明の目的は、従来のセラミックス回路基板の耐熱応力性を改善すると共に、回路用金属板を構成する複数の金属板間において、電流の短絡を防止でき、さらに、セラミックス回路基板上に回路用金属板を接合するときに正確な位置合せができる回路用金属板、およびこの回路用金属板を用いたセラミックス回路基板を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、セラミックス基板に接合される回路用また放熱用の金属板であって、前記金属板には前記セラミックス基板との接合時における位置合せ手段が備わっていることを特徴とするセラミックス基板接合用金属板である。
本発明は、セラミックス基板に接合される回路用の金属板であって、前記金属板は、幅狭な架橋部を介して一体化されていると共に、前記セラミックス基板との接合時における位置合せ手段とを備えていることを特徴とするセラミックス基板接合用金属板である。
前記セラミックス基板に接合した後、金属板の前記位置合せ手段は削除され、その削除跡には機械的加工手段により形成された仕上面あるいは端面から突出または欠落する残存面を備えている回路用金属板である。
【0019】
本発明において、前記位置合せ手段は、セラミックス基板との接合時において、回路用金属板の側面部がセラミックス基板の側面部方向に延設された突出部から構成したものである。また、この位置合せ手段としては、架橋部に形成された孔部から構成したものでもよい。さらに、この位置合せ手段は、回路用金属板に上記の突出部と孔部との少なくとも一方の手段を構成したものでも良い。
【0020】
本発明は、上記の金属板を、セラミックス基板の一方の面にろう材層を介して回路用金属板として接合し、また前記セラミックス基板の他方の面にろう材層を介して放熱用金属板として接合し、これら金属板の側面部からろう材層がはみ出すようにしたセラミックス回路基板であって、前記セラミックス基板に接合した回路用金属板は接合後に前記架橋部と前記突出部が除去され、また前記セラミックス基板に接合した放熱用金属板は接合後に前記突出部が除去された構成であるセラミックス回路基板である。
【0021】
さらに、本発明は、前記架橋部及び/又は突出部の除去跡に前記金属板の端面に沿った仕上面あるいは端面から突出または欠落する残存面が形成されているセラミックス回路基板である。
【0022】
なお、本発明の回路用金属板において、金属板の厚さをT、架橋部の厚さをtとしたときに、(T−t)を0.1mm以上にすることが望ましい。この理由は次の通りである。
(T−t)は、言わば架橋部の下に形成された隙間である。セラミックス基板と金属板をろう付けにより接合する時、セラミックス基板と金属板の間からろう材がしみ出る。このしみ出たろう材が架橋部の下面に接触した場合、そのまま下面をつたわって広がり、架橋部の下面にはしみ出たろう材の溜まり部が形成される。このようなろう材の溜まり部は0.1mm以上になることがある。そうすると、隙間が0.1mmより小さい場合、ろう材の溜まりはセラミックス基板上に接触していまい、結果的に隣りの金属板に接触した短絡が発生する原因となる。このため、0.1mm以上の隙間を確保しておくことにより、架橋部下面にろう材がつたわったとしてもろう材の溜まりはセラミックス基板に接触することがないようにし、短絡を未然に防止することができる。
【0023】
さらに、回路用金属板に形成した複数の架橋部の全体積は、回路となる複数の金属板の体積の0.1〜2%になるように架橋部を設けることが望ましい。この理由は次の通りである。本発明に使用する回路用金属板の厚さは、上記のように0.2mm〜1.0mmの薄板を使用する。このため、架橋部の全体積が回路となる金属板の全体積の0.1%未満では、架橋部の剛性が低下する。そのため、セラミックス基板にこの金属板を接合するときの熱処理の際歪が発生し、架橋部で接続された複数の金属板の配線間隔を維持することができず、短絡あるいは寸法不良が発生する危険性が生じるからである。この短絡あるいは寸法不良の発生を防止しようとすると、接合時にこの金属板の位置決め手段を設ける必要が生じる。また、2%より大きくなると、上記の(金属板の厚さT)−(架橋部の厚さt)を0.1mm以上確保することができず、しみ出たろう材が架橋部の下面に接触して広がり、金属板間の短絡発生の原因になると共に、厚い架橋部を除去するための作業工数が増大するからである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1〜図3は、本発明の回路用金属板の一実施形態を示す図であり、それぞれ平面図、A−A線縦断面図、B−B線縦断面を示す。
【0025】
図1〜図3において、回路用金属板1は、厚さTが0.2〜1.0mmの銅または銅合金からなる平板状の板材からなっている。回路用金属板1は、図4に示すように、微小な突出部P1、P2が形成された平板状で、平面視で長方形状の銅板2を機械的加工手段により、複数個の幅狭の架橋部6a、6b、6c、6dを介して接続された3個の金属板3、4、5から構成されている。図2に示すように、架橋部6a(6b、6c、6d)の厚さtは、金属板3、4、5の厚さTの1/4〜1/2程度、長さLは各金属板3、4、5の間隔Kと同一であり、1.2〜1.5mmである。また、架橋部6a(6b、6c、6d)の幅W(長さLと直交する方向の長さ)は、板厚Tを考慮して1.5〜3mmにするとよい。なお、上記金属板3、4、5等の個数は、セラミックス回路基板の設計仕様に基づいて決定されるものである。ただし、これら架橋部の配置については、金属板のコーナー部は避けることが望ましい。これは、コーナー部が最大応力発生の部位となる傾向があるため残存面が形成された場合、更に応力を増大させるからである。
【0026】
3分割状に形成された金属板3、4、5の各側面部の全周には、架橋部6a、6b、6c、6dとの接続部を除いて、応力緩和のため垂直方向に対する傾斜角度αが30°〜80°である傾斜面3a、4a、5aが機械的加工手段により形成されることが望ましい。このように傾斜面3a、4a、5aを形成した金属板3、4、5について、その表面積が小さくなる面3b、4b、5bが回路面側となって半導体チップ等が接続され、同じく表面積が大きくなる面3c、4c、5cがセラミックス基板7との接合面になる。
【0027】
さらに、本発明の回路用金属板1には、図1に示すように、位置合せ手段となる突出部P1、P2を形成している。この突出部P1、P2が回路用金属板1の側面部から突出する長さはそれぞれD1、D2に設定している。この突出長さD1、D2は、図7に示すように、セラミックス基板7に回路用金属板1を接合したときに、セラミックス基板7の側面部と回路用金属板1の側面部との間隔と同一にする必要がある。また、突出部P1、P2の幅は、架橋部6a、6b等の幅Wの1〜4倍程度に設定する。
【0028】
従って、突出部P1、P2は、回路用金属板1をセラミックス基板7に接合するときに、セラミックス基板7の側面部に隣接している金属板3の側面部に形成する。また、この突出部P1、P2は、接合の位置合せ精度をさらに向上させるために、回路用金属板1の同一側面部に複数個形成してもよく、さらに、セラミックス基板7の側面部に沿う少なくとも2側面部に形成することが望ましい。
【0029】
本発明において、機械的加工手段とは、プレスによる打ち抜き加工、塑性圧縮加工を示す。これらの加工手段を用いて、まず、銅製薄板から図4に示す突出部P1、P2を有する金属素材板2をプレス打ち抜きにより製作する。この金属素材板2から回路用金属板1の製作は、次の方法(1)、または(2)により実施することができる。
【0030】
(方法1)
図2に示す回路用金属板1の上面部、下面部および側面部の形状を備えた金型を準備し、プレス加工により、金属素材板2の切断と塑性圧縮を行う。このとき、隣合う金属板3、4、5の間は、架橋部6a、6b、6c、6dを残して切断して除去すると共に、架橋部6a、6b、6c、6dには塑性圧縮を施して、厚さtに圧縮する。さらに、突出部P1、P2の厚さも各架橋部6a等の厚さtと同じ程度t’に圧縮加工を施す。また、この加工と同時に、金型に設けた傾斜面により、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2との接続部を除いた金属板3、4、5の側面部の全周にわたって、傾斜面3a、4a、5aを塑性圧縮により形成する。これにより、図2に示すように、金属板3、4、5の半導体チップとの接合面3b、4b、5bが同一平面状となり、かつ傾斜面3a、4a、5aを有する回路用金属板1を得ることができる。
【0031】
(方法2)
同じく、図2に示す回路用金属板1の上面部、側面部の形状を備えた金型を準備し、プレス加工により、金属素材板2の切断と塑性圧縮を行う。このとき、隣合う金属板3、4、5の間は、架橋部6a、6b、6c、6dを残して切断して除去すると共に、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2には塑性圧縮を施して、厚さt,t’に圧縮する。続いて、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2との接続部を除いた金属板3、4、5の側面部の全周にわたって傾斜面を形成するための金型を使用して、プレス加工による塑性圧縮を施し、傾斜面3a、4a、5aを形成する。
【0032】
なお、図5に示す放熱側に接合される放熱用金属板11についても、同様にして、銅製薄板から突出部P1、P2を有する金属素材板2を製作した後、突出部P1、P2部分を除いた側面部に、上記の機械的加工手段により傾斜面を形成する。突出部P1、P2による金属板の位置合わせは回路用金属板、放熱用金属板と区別無く実施でき、その効果も同様に得られる。
【0033】
次に、本発明のセラミックス回路基板の構成例を図5に基づいて説明する。図5において、7は厚さ0.2〜1.0mm、熱伝導率70W/m・K以上の窒化珪素からなるセラミックス基板である。セラミックス基板7の一方の面(主面)には、金属板3、4、5がろう材層8、9、10を介して接合されている。このとき、セラミックス基板7と金属板3、4、5との接合は、上記した各金属板3、4、5の接合面3c、4c、5cがセラミックス基板7の主面に接合される。すなわち、金属板3、4、5は、セラミックス基板7との接合面積が大きくなるような面である接合面3c、4c、5cが、セラミックス基板7と接合される。なお、ろう材層8、9、10は金属板3、4、5のセラミックス基板7側の面に直接塗布して形成してもよい。この際、ろう材はみ出し部は、接合時の加圧力により金属板3、4、5とセラミックス基板7の接合面から流れ出したろう材により形成することができる。
【0034】
一方、セラミックス基板7の他一の面(放熱側となる下面)には、平板状の放熱用金属板(銅板)11がろう材層12を介して接合される。金属板11は、その側面部の全周にも傾斜面11aが形成され、金属板11の表面積が大になる面11bがセラミックス基板7の下面に接合される。傾斜面11aは、プレス加工により上記傾斜面3a、4a、5aの傾斜角度αと同様に30°〜80°に設定するとよい。また、ろう材層8、9、10、12の厚さは、5〜50μmにする。
【0035】
本発明のセラミックス回路基板においては、図5に示すように、セラミックス基板7に金属板3、4、5、および11をろう材層により接合したときに、これらろう材層8、9、10、および12は、各回路用金属板3、4、5、放熱用金属板11の側面部から所定の距離Hほどはみ出させている。このはみ出し長さHは、少なくとも0.2mm以上、好ましくは0.25〜1.2mmにすると、本発明のセラミックス基板を使用しているときに、セラミックス基板7と金属板3、4、5、および11の側面部に集中する熱応力を緩和させることができる。また、本発明においては、各金属板3、4、5の側面部に傾斜面3a、4a、5aを設けているので、セラミックス基板7と金属板3、4、5、および11の側面部に集中する熱応力を一層緩和させることができる。
【0036】
さらに、上記した本発明の回路用金属板1においては、回路用金属板1の厚さをT、各架橋部6a、6b、6c、6dの厚さをtとしたとき、隙間T1=T−tを0.1mm以上に設定することが重要である。この理由は、次の通りである。本発明に使用する回路用金属板1は、その厚さが0.2mm〜1.0mmの銅または銅合金製の薄板を使用する。このため、隙間T1を0.1mmより小さくすると、セラミックス基板7とこの回路用金属板1をろう付けにより接合する時、例えば、図8(b)に示すように、セラミックス基板7と金属板3(4、5)の間のろう材層8(9、10)からしみ出したろう材rが架橋部6a(6b、6c、6d)の下面60aにつたわりながら延びてろう材が溜まる。そして、ついにはセラミックス基板7上の隙間T1に沿って流れることになり、これが進行するとろう材rはセラミックス基板7と反応層を形成し、ろう材rが架橋部6a(6b、6c、6d)の下面60aにつたわりろう材が溜まった場合、架橋部の除去工数が増大し、更にはセラミックス基板と反応層を形成し短絡した場合には、機械的加工手段によるろう材除去はできず化学エッチングのような別の除去工程が必要となる原因になるからである。
【0037】
さらに、本発明の回路用金属板1においては、複数個設けた架橋部6a、6b、6c、6dの全体積は、複数の金属板3、4、5の全体積の0.1〜2%にすることが重要である。この理由は次の通りである。
本発明に使用する回路用金属板1の厚さは、上記のように0.2mm〜1.0mmの剛性が低い銅製薄板を使用する。このため、架橋部6a、6b、6c、6dの全体積が回路となる金属板3、4、5の全体積の0.1%未満では、架橋部6a、6b、6c、6dの剛性が著しく低下するので、セラミックス基板7にこの金属板3、4、5を接合するときに、架橋部6a、6b、6c、6dで接続された複数の金属板3、4、5間の配線間隔Kを維持することができず、短絡あるいは寸法不良が発生する危険性が生じるからである。この短絡あるいは寸法不良の発生を防止しようとすると、接合時にこの金属板の位置決め手段を設ける必要が生じる。
【0038】
また、2%より大きくなると、上記T1を0.1mm以上確保することが困難になり、しみ出したろう材rが架橋部6a、6b、6c、6dとセラミックス基板7のすき間に沿って流れるため、ろう材が付着した架橋部6a、6b、6c、6dを除去するための作業工数が増大し、更にはろう材rがセラミックス基板7に接した形態で反応層を形成しながら金属板3、4、5間で短絡した場合、ろう材rを除去する工程が必要となるからである。
【0039】
さらに、本発明のセラミックス回路基板においては、図8に示すように、隣り合う金属板3、4、5間の間隔Kは1.3mm以上にすることが好ましく、間隔K内にはみ出しているろう材層の端部どうしの間隔Pは、0.8mm以上に設定することが好ましい。この理由は、セラミックス基板7に塗布するろう材層8、9、10の厚さSを5〜50μmにすれば、しみ出したろう材rが流れ出して隣のろう材層と接触することを防止できるようになるからである。
【0040】
続いて、本発明のセラミックス回路基板の製造方法について説明する。まず、図1に示す回路用金属板1の縦横寸法よりも若干大きい寸法を有するセラミックス基板7を準備する。
なお、セラミックス基板7は、下記の方法により製造することができる。まず、公知のドクターブレード法等により窒化珪素を主成分とする薄板状のグリーンシートを製作する。続いて、このグリーンシートを脱脂、焼結した後、所望の寸法、例えば、縦横80mm×100mmの大きさに切断することにより、厚さ0.2〜1.0mmのセラミックス基板を得ることができる。
【0041】
次に、図6に示すように、セラミックス基板7の主面にスクリーン印刷によりろう材をその厚さが5〜50μmになるように塗布して、ろう材層8、9、10を形成する。このとき、セラミックス基板7の主面にろう材を塗布する範囲は、金属板3、4、5を接合する範囲より間隔H、すなわち0.2〜1.2mmほど外側にはみ出すように塗布する。セラミックス基板7の放熱側面(裏面)にも同様にろう材層12を塗布する。
【0042】
続いて、図7に示すように、ろう材を塗布したセラミックス基板7の主面には図1に示す回路用金属板1を、セラミックス基板7の放熱側面には銅板11を、正確に位置合わせして、加圧状態で保持する。このとき、各金属板3、4、5および銅板11の側面部全周からろう材層8、9、10が間隔Hほどはみ出るように、さらに、セラミックス基板7の側面部と回路用金属板1の側面部とは間隔D1、D2を設けた状態にして、セラミックス基板7に回路用金属板1を正確に位置決めする必要がある。
【0043】
本発明の回路用金属板1および放熱側の銅板11には、位置合せ用の突出部P1、P2を形成しているので、この突出部P1、P2を利用して正確な位置合せを行うことができる。この位置合せの手順を説明すると次のようになる。
【0044】
まず、セラミックス基板7の隣合う側面部に沿って、垂直方向に延びる垂直壁14、15を設けた位置合せ冶具16(図10(a)に示す)を準備する。そして、放熱側の銅板11をその位置決め用突出部P1、P2の先端部がこの冶具16の内壁面14a、15aに当接した状態にして、治具16の底に置く。
【0045】
続いて、ろう材層を塗布したセラミックス基板7の隣合う側面部をこの位置合せ冶具16の内壁面14a、15aと接触させた状態で、金属板11の上に置く。これにより、銅板11とセラミックス基板7とは正確に位置合せを行った状態で重ね合わせることができる。
【0046】
続いて、回路用金属板1の側面部に設けられている位置決め用突出部P1、P2の先端部を、冶具16の内壁面14a、15aに接触させた状態でセラミックス基板7上に重ねることにより、図7に示す間隔D1、D2を確保した状態で、セラミックス基板7の主面に回路用金属板1と金属板11を重ね合わせることができる。
【0047】
次に、回路用金属板1と放熱用金属板11を重ね合わせたセラミックス基板7を数枚積み重ねて加圧した状態で保持し、約800℃の温度で所定時間加熱した後、冷却することにより、セラミックス基板7の主面に回路用金属板1、放熱側面に銅板11を強固にろう材層を介して接合することができる。
【0048】
続いて、回路用金属板1に設けられている架橋部6a、6b、6c、6d、および回路用金属板1と銅板11の突出部P1、P2を、数値制御の工作機械を使用し、極細のエンドミル工具により除去して、図5に示すようなセラミックス回路基板を得ることができる。なお、上記エンドミル工具により架橋部6a、6b、6c、6dを除去するときに、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2と金属板3、4、5との接続部に、すなわち、架橋部および突出部P1、P2の除去跡にも予め形成されている金属板の傾斜面3a、4a、5aに連なる傾斜面を形成することができる。
【0049】
なお、本発明においては、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2厚さ、長さ、幅は極めて微小な寸法にしているので、従来と同様に、短時間のエッチングにより架橋部6a、6b、6c、6d、突出部P1、P2を除去することも可能である。また、これら架橋部、突出部の除去は、ニッパー等の切断工具を用いて手作業により除去することもできる。また、架橋部6a、6b、6c、・・、の個数は、回路用金属板の厚さTを考慮して適切な個数ほど設けるようにするとよい。
【0050】
また、本発明においては、架橋部6a、6b、6c、6d、および突出部P1、P2と金属板3、4、5との接続部は、この架橋部および突出部をエンドミル等を用いた切削工具により除去するときに、他の側面部の傾斜面3a、4a、5aと同様な傾斜面を形成することが望ましいが、架橋部6a、6b、6c、6dの幅Wは微小であるので、傾斜面を形成しなくても架橋部除去後の端面から突出または欠落する適宜の残存面のままでも本発明の効果を発揮させることができる。なお、通常、最大応力発生部位は回路のコーナー部になる傾向があるので、架橋部は回路コーナー部を避けることが望ましい。さらに最適な架橋部の設置位置を決定する際、コンピュータシミュレーション等による応力解析を活用することが有効である。
【0051】
続いて、回路用金属板の第2の実施形態を図9に基づいて説明する。第2の実施形態である回路用金属板1aは、図1に示す第1の実施形態に、さらに、架橋部6a、6b、等に位置合せ用の孔部13を形成したものである。この孔部13は、全ての架橋部6a、6b、6c、6dに形成する必要はなく、1〜3個の架橋部に形成するようにする。また、1個の架橋部に孔部13を2個以上形成してもよい。孔部13の直径は、架橋部の幅Wを3mm程度に設定したときには、1〜2mm程度に設定するとよい。なお、孔部13は、上記した傾斜面3a、4a、5aを形成する工程において、打ち抜きプレス加工により形成することができる。
【0052】
孔部13は、回路用金属板1aをセラミックス基板7に接合するときの位置合せ手段として作用すると共に、位置合せした後、特にセラミックス基板7を加熱してろう材を溶融させる工程において、回路用金属板1aとセラミックス基板7との位置ずれを防止する作用も行う。
【0053】
回路用金属板1aをセラミックス基板7に接合するとき、回路用金属板1aをセラミックス基板7に位置合せする手順は次の通りである。
(1)図10(a)に示すように、互いに直交する垂直壁14、15を有する位置合せ冶具16を準備する。まず、放熱側の銅板11をその位置決め用突出部P1、P2の先端部がこの冶具16の内壁面14a、15aに当接した状態にして、治具16の底に置く。続いて、ろう材層を塗布したセラミックス基板7の隣合う側面部をこの位置合せ冶具16の内壁面14a、15aと接触させた状態で、銅板11の上に置く。これにより、銅板11とセラミックス基板7とは正確に位置合せを行った状態で重ね合わせることができる。
【0054】
(2)続いて、回路用金属板1aをセラミックス基板7上に載置する。このとき、回路用金属板1aの突出部P1が内壁面14aに、突出部P2が内壁面15aと接触した状態で、セラミックス基板7上に回路用金属板1aを載置する。これにより、セラミックス基板7上には回路用金属板1aが正確に位置合せされた状態で重ね合わせることができる。
【0055】
(3)続いて、セラミックス基板7とほぼ同一な形状をなし、架橋部に形成した孔部13に嵌合する突起17を設けたスペーサ18を回路用金属板1a上に載置する。このとき、図10(b)に示すように、突起17を架橋部6a、6b、6dに形成した孔部13に嵌合させると共に、スペーサ18の隣合う側面部が内壁面14a、15aと接触させるようにする。
【0056】
(4)上記(1)〜(3)の作業を繰り返して行い、放熱用金属板11と回路用金属板1aを重ね合わせたセラミック基板7がスペーサ板18を介して5〜10個程度、治具16内に積層する。そして、この積層体を上下方向に適度な押圧力を付与した状態で位置合せ冶具16に固定し、続いて、この積層体を800℃程度に加熱した後、冷却すると、セラミックス基板7に回路用金属板1aおよび放熱用金属板11が正確な位置にろう付けされたセラミックス基板7を得ることができる。なお、スペーサ18に設けた突起17は、回路用金属板1aに形成されている各孔部13と嵌合するように、スペーサ18の表面の正確な位置に設ける必要がある。また、中間板18の材質は、耐熱性の素材、例えば、カーボン製の材質を使用するとよい。
【0057】
(5)続いて、上記した回路用金属板1と同様に、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2を、極細のエンドミル工具を装着した工作機械を使用して除去すると、図5に示すようなセラミックス回路基板を得ることができる。また、上記エンドミル工具により架橋部6a、6b、6c、6d、突出部P1、P2を除去するときに、架橋部6a、6b、6c、6dおよび突出部P1、P2と金属板3、4、5との接続部にも傾斜面3a、4a、5aを形成してもよい。
【0058】
上記した第2の実施形態の回路用金属板1aにおいては、スペーサ18に設けた突起17が架橋部6a、6b、6dに形成した孔部13に嵌合しているので、セラミックス基板7上の所定の位置に、回路用金属板1aを正確に位置合せできると共に、加熱時においても、セラミックス基板7と回路用金属板1aとの位置ずれを防止することができる。
【0059】
図11は、回路用金属板の第3の実施形態を示す。この第3の実施形態である回路用金属板1bは、図9に示す第2の実施形態について、突出部P1、P2の形成を省略して、位置合わせ手段を架橋部に形成した孔部13のみとしたものである。この回路用金属板1bをセラミックス基板7上に位置合わせする作業は、回路用金属板1bに形成した孔部13にスペーサ18の突起17を嵌合させた後、上記した回路用金属板1、1aと同様に、位置合せ治具を使用して行うことができる。この際、孔部13は加熱時の金属板1bとスペーサ18の熱膨張差を考慮し、突起17に対して寸法を大きくしておくことが望ましい。また、孔部13を用いた位置合せによれば、金属板1bとセラミックス基板7との位置合せをそれぞれの中央部付近で行うことが可能であり、且つ、スペーサをセラミックス基板7と同等の熱膨張係数材を用いることにより、より高い寸法精度での接合が可能となる。なお、この第3の実施形態においては、セラミックス基板7の放熱側に接合する金属板11には、位置合わせ用の突出部P1、P2を形成することが望ましい。
【0060】
【発明の効果】
以上に説明した本発明は、次の効果を有している。
(1)本発明のセラミックス基板接合用金属板は、プレス加工等による機械的加工手段により製造することができる。これにより、製作コストの低減を図ることができると共に、側面部の直線性が向上した回路用金属板を得ることができるので、より一層、集積密度を向上させ、かつ耐熱応力性を向上させたセラミックス回路基板を提供することができる。
(2)セラミックス基板と放熱用金属板および/または回路用金属板の接合において、その位置合わせ精度が高く且つ容易に行えて、所定量のはみ出し部を形成することが出来る。そして回路用金属板を構成する複数個の金属板間の配線間隔を、所定の値に確保することができるので、回路間の短絡が発生しないセラミックス回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回路用金属板について、第1の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線の縦断面図である。
【図3】図1のB−B線の縦断面図である。
【図4】図1に示すセラミックス回路基板用金属板の切断加工前を示す平面図である。
【図5】本発明のセラミックス回路基板の一例を示す縦断面図である。
【図6】図5に示すセラミックス回路基板を構成するセラミックス基板にろう材層を塗布したときの状態を示す平面図である。
【図7】図6に示すセラミックス基板に図1に示すセラミックス回路基板用金属板を接合したときの状態を示す平面図である。
【図8】(a)は図5の要部の拡大を示す図であり、(b)はT−tの隙間T1が所定の値より小さい場合の架橋部の状況を示す図である。
【図9】本発明の回路用金属板について、第2の実施形態を示す平面図である。
【図10】本発明において、セラミックス基板に本発明の回路用金属板を接合するときの手順を説明するための図であり、(a)は平面図、図10(b)は縦断面を示す。
【図11】本発明の回路用金属板について、第3実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
1:回路用金属板
2:金属素材板
3、4、5:金属板
3a、4a、5a:傾斜面
3b、4b、5b:半導体チップとの接合面
3c、4c、5c:セラミックス基板との接合面
6a、6b、6c、6d:架橋部
7:セラミックス基板
8、9、10:ろう材層
11:金属板
12:ろう材層
13:孔部
16:位置合せ冶具
17:突起
18:スペーサ
Claims (7)
- セラミックス基板に接合される金属板であって、前記金属板には前記セラミックス基板との接合時における位置合せ手段が備わっていることを特徴とするセラミックス基板接合用金属板。
- セラミックス基板に接合される回路用の金属板であって、前記金属板は、幅狭な架橋部を介して一体化されていると共に、前記セラミックス基板との接合時における位置合せ手段とを備えていることを特徴とするセラミックス基板接合用金属板。
- 前記位置合せ手段は、セラミックス基板との接合時において、前記金属板の側面部が前記セラミックス基板の側面部方向に延設された突出部から構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス基板接合用金属板。
- 前記位置合せ手段は、架橋部に形成された孔部から構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス基板接合用金属板。
- 前記位置合せ手段は、前記突出部と前記架橋部に形成された孔部から構成される手段の少なくとも一方の手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス基板接合用金属板。
- 請求項1から請求項5の何れかに記載の金属板を、前記セラミックス基板の一方の面にろう材層を介して回路用金属板として接合し、また前記セラミックス基板の他方の面にろう材層を介して放熱用金属板として接合し、これら金属板の側面部からろう材層がはみ出すようにしたセラミックス回路基板であって、前記セラミックス基板に接合した回路用金属板は接合後に前記架橋部と前記突出部が除去され、また前記セラミックス基板に接合した放熱用金属板は接合後に前記突出部が除去された構成であることを特徴とするセラミックス回路基板。
- 前記架橋部及び/又は突出部の除去跡に前記金属板の端面に沿った仕上面あるいは端面から突出または欠落する残存面が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のセラミックス回路基板。
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