JP2004342509A - 紙製通電シート - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の紙発熱体は、紙パルプ中にカーボン短繊維を、均等にかつ通電可能な状態で拡散混入して薄いシート材を形成し、シート材の左右両縁に帯状の電極を付設し、電極を含むシート材の一面を防水性のある絶縁性合成樹脂フィルムで被覆した構造である。従って、表面発熱特性に欠ける虞があり、効率的な発熱、及び導電効果が期待できないものと考えられる。
【構成】本発明は、パルプ繊維とカーボン繊維及び熱可塑性重合繊維を撹拌混合し、泥状化したパルプ素材を生成し、パルプ素材をシート状に延展し、パルプ繊維の表面及び内部にカーボン繊維を混在した構成の通電シートであって、通電シートの表面に混在する可撓性の電極に、リード線を接続し、この通電シート及びリード線を、可撓性を備える無公害で焼却可能とした絶縁シートで囲繞することを特徴とした紙製通電シートである。従って、可撓性を備えた無公害で焼却できる構造であって、通電性の良い安価な繊維を利用して製造した紙製通電シートを提供できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、可撓性を備えた無公害で焼却可能とした絶縁シートで囲繞することを特徴とした紙製通電シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の通電シートとしては、通電シート本体を、ステンレス薄肉ヒータ、コード線(線状)ヒータ等のヒータを、絶縁シートで囲繞する構造が知られている。この構造は、薄肉ヒータを介在して、一部に可撓性を備えた薄くて、コンパクトに処理できる通電シートの提供を意図する。しかし、通電シート本体と、電極等を金属製で構成し、また接着材にプラスチック部材を使用することから、廃棄処分、又は焼却等の際に二次公害の発生の可能性がある。また肉薄構造となってはいるが、その薄さには限界があり、所望の域まで至っていないのが現況である。
【0003】
そして、この課題を解決する手段として、従来の文献を参考として説明する。以下、文献1、文献2とする。先ず文献1は、特開平8−31553号の紙発熱体である。その内容は、紙パルプ中にカーボン短繊維を、均等にかつ通電可能な状態で拡散混入して薄いシート材を形成し、このシート材の左右両縁に帯状の電極を付設し、この電極を含む前記シート材の少なくとも一面を防水性のある絶縁性合成樹脂フィルムで被覆した構造である。その特徴は、温暖マット、座布団等の暖房用、或いは鏡板、ガラスの裏面に貼着し、曇り止め用の発熱シートとして便宜に使用可能とすることを意図する。また熱効率と経済性に優れ、しかも薄くて使用勝手がよく、しかも低コストの紙発熱体を提供することにある。また文献2は、特開平7−3697号のカーボンブラック含有紙である。その内容は、カーボンブラックを分散したセルロース系繊維スラリーに、カルボキシ変性ポリマーのアニオン系ラテックスを加えた後、定着し、抄紙して製造することを特徴とするカーボンブラック含有紙である。その特徴は、カーボンブラック含有量が大で、粉体の脱離が小さく、かつ強度の大きい紙が得られること、又はこのカーボンブラック含有紙は、静電気防止材、電磁波シールド材、面状発熱体等として汎用的な使用ができることにある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記文献1は、紙パルプに含有されたカーボン短繊維は、単にランダムに配合された構成の紙発熱体である。従って、表面発熱特性に欠ける虞があり、効率的な発熱、及び導電効果が期待できないものと考えられる。
【0005】
前記文献2は、カーボンブラックを含有するセルロース系繊維スラリーに、樹脂性接着材と、水性分散材等を加えたカーボンブラック含有紙である。従って、静電防止材、面状発熱体等の効果は図れる。しかし、この発明は、カーボンブラックを、セルロース系繊維スラリーに含有させた構成であることから、このカーボンブラックの剥離の問題が発生すること、導電特性に対する信頼性の保証が十分とは考えられないこと、等の問題がある。また使用後の廃棄に対して、配慮を要する問題点も含まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、可撓性を備えた無公害で焼却できる構造であって、通電性の良い安価な繊維を利用して製造した紙製通電シートを提供する。またカーボン繊維のエンドロスの廃材処理を有効利用、又は再利用を図ることを意図する。さらにパルプ繊維とカーボン繊維及び熱可塑性重合繊維との基本材料を利用して、コストが低廉で、成形(製造)に適した構造の紙製通電シートを提供する。また従来廃棄処理されていた、例えば、カーボン繊維のエンドロスの有効利用、廃棄に伴う弊害回避等を達成しつつ、本発明が意図する特性を備えた紙製通電シートを提供する。
【0007】
請求項1は、パルプ繊維とカーボン繊維及び熱可塑性重合繊維を撹拌混合し、泥状化したパルプ素材を生成し、このパルプ素材をシート状に延展し、パルプ繊維の表面及び内部にカーボン繊維を混在した可撓性を備える無公害で焼却可能とした通電シートであって、
この通電シートの表面に混在する可撓性の電極に、リード線を接続し、前記通電シート及びリード線を、可撓性を備える無公害で焼却可能とした絶縁シートで囲繞することを特徴とした紙製通電シートである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成し、また本発明は、紙製通電シートに最適な配合比を開示する。
【0009】
請求項2は、請求項1に記載のパルプ繊維とカーボン繊維及び熱可塑性重合繊維を次の配合比とすることを特徴とした紙製通電シートである。
【0010】
配合比、
パルプ繊維を100重量%、カーボン繊維を1〜20重量%、熱可塑性重合繊維を0〜20重量%
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成し、また本発明は、紙製通電シートに最適な製造方法、又は低コストにより製造できる製造方法の提供を意図する。
【0011】
請求項3は、請求項1に記載の延展を、ロール成形により製造することを特徴とした紙製通電シートである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1の目的を達成し、また本発明は、電極の可撓性を確保して、人体に対する接触の有利性と、各種の用途への適合性の確保とを図りつつ、かつ無公害による焼却処分を介して環境保護と、処理の容易化等を意図する。
【0013】
請求項4は、請求項1に記載の可撓性の電極を、紙製により製造することを特徴とした紙製通電シートである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明すると、図1に示すフローチャートの如く、解繊機、叩解機等の機械にパルプ繊維及び/又はカーボン繊維等を投入し、当該パルプ繊維、カーボン繊維を所定の寸法に粉砕する。この作業で、投入したパルプ繊維、カーボン繊維で導電性を備えた粉砕粒子が生成される。この粉砕粒子に、水分を媒体として撥水又は耐水処理を行い、水溶性の粉砕粒子とする(泥状化したパルプ素材、所謂、スラリーとする)。この工程において、水分を媒体として泥状化したパルプ素材とする。この操作により、作業の効率化、簡略化等を図り、かつ確実で品質の良い泥状化したパルプ素材が生成できる。その後、この例では二つのルート(以下の▲1▼、▲2▼)を辿る。この各ルートを個別に説明する。この水分の付与は、何れの方法でも可能であり、例えば、噴霧、充填、塗布等があり、簡便かつ確実な方法を採用する。
【0015】
▲1▼ 第一のルートは、抄製工程を経由して、紙抄きの感覚で通電シートを作製する。この通電シートを乾燥した後に(又は乾燥しつつ)、紙粉防止処理を行う。この紙粉防止処理は、水分を媒体として泥状化したパルプ素材に、水溶性エマルジョン等の薬剤を、何れの方法で添加する。その添加は、例えば、噴霧、充填、塗布等があり、簡便かつ確実な方法を採用する。そして、この工程において、紙粉防止処理を行うのは、乾燥工程により表面に噴き出た紙紛を確実に押えて、平面平滑性を確保できる。また後工程での紙紛落下と、この落下に基づくトラブルの解消と、又は作業の効率化、簡略化等を図り、かつ確実で品質の良い通電シート(通電シート構造体)の製造に役立つ特徴がある。尚、この紙粉防止処理は、後工程の例えば、積層及び/又は熱圧着工程においてロールプレス機等の熱プレスで、熱による圧着を利用し、略自然の状態で、前記紙紛の押え及び/又は平面平滑性が確保できるので、有益である。この工程の積層及び/又は熱圧着工程では、芯材として、例えば、牛乳パックの再生品、ダンボール芯、又は他の紙製芯材(再利用が図れ有益である)、プラスチック芯材(分解性プラスチックが理想である)を利用して通電シートを製造する。この通電シートの枚数は一枚でも可能であるが、枚数が増加すればそれなりの暖房効果は期待できる。さらに通電シートを一枚のみで利用する場合には、強度、引張り等による破壊等を問題としない場合に有益である。この積層及び/又は熱圧着工程で製造された通電シートは、二つのルートがある。このルートは、エアー工程を利用して付着した塵、埃又は滓等を排除して完成品とするか、又はプレス成形機等によるプレス成形で、所定の形状の通電シートを製造するかの何れかである。そして、この通電シートの製造にエアー工程を利用することも可能である。
【0016】
▲2▼ 第二のルートは、抄製工程とともに成形し、紙抄きの感覚と成形とを一体に行い、湿潤状態の通電シート素材を作製する。この通電シート素材に、紙粉防止処理を行う。その特徴は前述の例に準ずる。その後、芯材とともに熱プレス機等によるプレス成形で、所定の形状の通電シートを製造する。他の構成及び/又は特徴は前述の例に準ずる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を説明する。
【0018】
1はパルプ繊維1aとカーボン繊維1b及び熱可塑性重合繊維1cを撹拌混合し、泥状化したパルプ素材を生成し、パルプ素材をシート状に延展し、パルプ繊維1aの表面及び内部にカーボン繊維1bを混在した構成の通電シートである。この通電シート1に含有するカーボン繊維1bを、当該通電シート1の表面に浮き出るように設けることで、後述する紙製の電極との導通を図ること、又は発熱効率の拡充を図ること等を意図する。そして、この表面のカーボン繊維1bと内部のカーボン繊維1bとは導通できる構造となっている。
【0019】
2は電極であり、この電極2は、パルプ繊維2aとカーボン繊維2b及び熱可塑性重合繊維2cを撹拌混合して構成し、泥状化したパルプ素材を生成し、パルプ素材をシート状に延展し、パルプ繊維2aの表面及び内部にカーボン繊維2bを混在した構成である。また電極2は通常の金属製も可能である。
【0020】
3は電極2に接続されたコード線で、このコード線3にはプラグ4が設けられている。
【0021】
5は通電シート1の少なくとも一面(裏面)に設けた絶縁シートである。また表面及び/裏面をコーティングにより簡易に被覆することも可能であり、簡易、低コスト化等に途を開く特性もあり得る。
【0022】
尚、本発明の紙製通電シート1は、車輌用のシートA内に設置して、緩衝特性を備えた暖房用としての利用、また車輌用の敷物B内に、例えば、数個を個別に設置し、表面コーティングを行って、簡易な暖房用としての利用、又は洗面台Cのガラス裏面に設置して、曇り防止としての利用(図7参照)、便器(便座D)の暖房用としての利用(図8参照)等の如く、種々の使用を図る。また図示しないが、作業場所、又は各部屋、工場等の暖房用としての利用、又は椅子、机、カーテン等の暖房用としての利用、更には衣服、レインコート等の暖房、乾燥用としての利用等の如く、多用途の利用が図れる。さらに熱帯魚用水槽のヒータマット、人のヒータマットとしての利用も可能である。そして、温度のコントロールは、パルプ繊維2a中のカーボン繊維2bの混合割合による構造的な手段、又は電圧、電流の通電手段による各種の手段を利用して行うことで対処できる。そして、この通電シート1の一部又は全部を、絶縁シート5、他のコーティング等を行って、ラミネートすることで、熱効率の向上に寄与できる。
【0023】
尚、図11に示した一例は、二輪車、自転車、耕運機等の車輌用のグリップEに本発明の通電シート1を利用した例であり、捲装した状態でグリップEに介在する。この グリップEは、鋳込み成形、又は捲装成形等の各成形方法が採用できる。この電源は、コード線3を利用してバッテリーよりの給電、電池、充電器等よりの給電を利用する。
【0024】
そして、図12〜図16に示した実験例では、安定した昇温効果が期待できた。その条件は、通電シート1を9ブロックに区画して、12V(1.2A)直流電気を利用し、かつ時間を区切って温度測定を行ったので、その状況を図12〜図16に示した。尚、図中の1〜9は、通電シート1を9ブロックに区画した箇所をそれぞれ示す。また10は室温を示す。この実験データでは、かなりの熱効率の向上と、ヒータの安定性、安全性が図れることが判明した。尚、この実験に使用した通電シート1は、熱可塑性重合繊維1cの添加物として、水酸化アルミニュウムを用いた構成であり、例えば、焼成は行わずに製造した。この水酸化アルミニュウムの自消性を利用して、難燃効果の利用と、自消効果等が図れる特徴がある。従って、車輌、電車、航空機等のシートマットとしての利用には最適である。この実験結果を総合的に考えると、冬季の車輌では、暖房による血行改善効果、筋肉の弛緩効果、疲労・肩こり等の軽減化、長距離走行の疲労の減少化、健康増進又はしもやけ、凍傷等の弊害回避効果等が図れる特徴がある。
【0025】
【発明の効果】
請求項1の発明は、パルプ繊維とカーボン繊維及び熱可塑性重合繊維を撹拌混合し、泥状化したパルプ素材を生成し、パルプ素材をシート状に延展し、パルプ繊維の表面及び内部にカーボン繊維を混在した可撓性を備える無公害で焼却可能とした通電シートであって、通電シートの表面に混在する可撓性の電極に、リード線を接続し、この通電シート及びリード線を、可撓性を備える無公害で焼却可能とした絶縁シートで囲繞することを特徴とした紙製通電シートである。
【0026】
従って、請求項1は、可撓性を備えた無公害で焼却できる構造であって、通電性の良い安価な繊維を利用して製造した紙製通電シートを提供できる。またカーボン繊維のエンドロスの廃材処理の有効利用、又は再利用が図れる特徴がある。さらにパル プ繊維とカーボン繊維及び熱可塑性重合繊維との基本材料を利用して、コストが低廉で、成形(製造)に適した構造の紙製通電シートを提供できる。また従来廃棄処理されていた、例えば、カーボン繊維のエンドロスの有効利用、廃棄に伴う弊害回避等を達成しつつ、本発明が意図する特性を備えた紙製通電シートを提供できる。
【0027】
請求項2の発明は、請求項1に記載のパルプ繊維とカーボン繊維及び熱可塑性重合繊維を次の配合比とすることを特徴とした紙製通電シートである。
【0028】
配合比、
パルプ繊維を100重量%、カーボン繊維を1〜20重量%、熱可塑性重合繊維を0〜20重量%
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成し、また本発明は、紙製通電シートに最適な配合比を開示できる。
【0029】
請求項3の発明は、請求項1に記載の延展を、ロール成形により製造することを特徴とした紙製通電シートである。
【0030】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成し、また本発明は、紙製通電シートに最適な製造方法の提供と、又は低コストにより製造できる製造方法の提供とができる特徴がある。
【0031】
請求項4の発明は、請求項1に記載の可撓性の電極を、紙製により製造することを特徴とした紙製通電シートである。
【0032】
従って、請求項4は、請求項1の目的を達成し、また本発明は、電極の可撓性を確保して、人体に対する接触の有利性と、各種の用途への適合性の確保とを図りつつ、かつ無公害による焼却処分を介して環境保護と、処理の容易化等が図れる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の通電シートの製造工程の一例を示すフローチャート
【図2】本発明の通電シートの一例を示す斜視図
【図3】本発明の通電シートの一例を示す平面図
【図4】本発明の通電シートを車輌のシートに使用した一例を示す一部欠截の斜視図
【図5】本発明の通電シートを車輌の敷物に使用した一例を示す斜視図
【図6】図5の敷物の一部を欠截した状態を示す平面図
【図7】本発明の通電シートを車輌の敷物に使用した他の一例を示す斜視図
【図8】図7の敷物の一部を欠截した状態を示す平面図
【図9】本発明の通電シートを洗面所に使用した一例を示す斜視図
【図10】本発明の通電シートを便器に使用した一例を示す平面図
【図11】本発明の通電シートをグリップに使用した一例を示す斜視図
【図12】本発明の通電シートを実験用として利用し、9ブロックに区画した一例を示す拡大平面図
【図13】本発明の通電シート温度経過推移1を示した1日から2.5日までの図
【図14】図13のグラフとした図
【図15】本発明の他の通電シート温度経過推移2を示した3日から同15日までの図
【図16】図15のグラフとした図
【符号の説明】
1 通電シート
1a パルプ繊維
1b カーボン繊維
1c 熱可塑性重合繊維
2 電極
2a パルプ繊維
2b カーボン繊維
2c 熱可塑性重合繊維
3 コード線
4 プラグ
5 絶縁シート
A シート
B 敷物
C 洗面台
D 便座
E グリップ

Claims (4)

  1. パルプ繊維とカーボン繊維及び熱可塑性重合繊維を撹拌混合し、泥状化したパルプ素材を生成し、このパルプ素材をシート状に延展し、パルプ繊維の表面及び内部にカーボン繊維を混在した可撓性を備える無公害で焼却可能とした通電シートであって、
    この通電シートの表面に混在する可撓性の電極に、リード線を接続し、前記通電シート及びリード線を、可撓性を備える無公害で焼却可能とした絶縁シートで囲繞することを特徴とした紙製通電シート。
  2. 請求項1に記載のパルプ繊維とカーボン繊維及び熱可塑性重合繊維を次の配合比とすることを特徴とした紙製通電シート。
    配合比、
    パルプ繊維を100重量%、カーボン繊維を1〜20重量%、熱可塑性重合繊維を0〜20重量%
  3. 請求項1に記載の延展を、ロール成形により製造することを特徴とした紙製通電シート。
  4. 請求項1に記載の可撓性の電極を、紙製により製造することを特徴とした紙製通電シート。
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